WO2019189801A1 - 正極活物質、それを用いた正極及び二次電池、並びに正極活物質の製造方法 - Google Patents

正極活物質、それを用いた正極及び二次電池、並びに正極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

良好なサイクル特性を示す電池を得ることができる正極活物質を提供する。{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、0.5~3.0μmのメジアン径D50を有し、粒径の標準偏差が0.10~0.20である、正極活物質。

Description

正極活物質、それを用いた正極及び二次電池、並びに正極活物質の製造方法
 本発明は、二次電池に用いられる正極活物質、それを用いた正極及び二次電池、並びに正極活物質の製造方法に関する。
 近年、二次電池は、パソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の電源として、あるいは自動車や電力貯蔵用の電源として、なくてはならない重要な構成要素となってきている。
 二次電池の中でも特にリチウムイオン二次電池は、他の二次電池よりもエネルギー密度が高く、高電圧での動作が可能という特徴を有している。そのため、小型軽量化を図りやすい二次電池として情報関連機器や通信機器に使用されており、近年、低公害車としての電気自動車やハイブリッド自動車用、電動工具用、ドローン用等の高出力且つ高容量のリチウムイオン二次電池の開発が進められている。
 リチウムイオン二次電池において、サイクル特性は電池の寿命に関する重要な特性であり、サイクル特性を向上するためのリチウムイオン二次電池が検討されている。リチウムイオン二次電池においては、通常、充放電時に正極活物質にリチウムイオンが出入りするため、正極活物質の劣化が原因でサイクル特性が低下する。そのため、良好な充放電容量を得るための正極活物質が検討されている。
 従来、一般的に用いられているコバルト酸リチウムは、固相反応で得られたものであり、図1に示すような板状粒子形状、または不定形粒子や板状粒子が積み重なった造粒形状を有する。
 また、非特許文献1では、発達した{001}面、{104}面、{101}面、及び{102}面を有する六角形の樽形形状を有するLiCoO2の正極活物質が提案されており、それまでのリチウムイオン二次電池と比べて良好な充放電容量を得ることができている。
Katsuya Teshima, et.al, Environmentally Friendly Growth of Well-Developed LiCoO2 Crystals for Lithium-Ion Rechargeable Batteries Using a NaCl Flux, Crystal Growth & Design, 2010, 10 (10), pp 4471-4475
 固相反応で得られたコバルト酸リチウム粒子は多結晶であるため、粒子内部に粒界があり、粒界ではリチウムイオンの拡散が阻害され、高速で移動しにくい。板状粒子形状、または不定形粒子や板状粒子が積み重なった造粒形状を有するコバルト酸リチウム粒子からリチウムイオンを高速で出入りさせると、コバルト酸リチウム粒子はへき開または岩塩およびスピネル相に相転移して、可逆的な充放電容量は急激に低下する。
 図2に、非特許文献1に記載される樽形形状を有するコバルト酸リチウム単結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。このような樽形形状を有するコバルト酸リチウム粒子は単結晶であるため、粒子内には粒界が存在しない。そのため、一つの粒子内ではリチウムイオンがスムーズに拡散できる。つまり、リチウムイオンの固体内拡散抵抗が小さく、リチウムイオンが速く移動することができる。そのため、高い電流密度でリチウムイオンを脱挿入しても、粒子内のリチウム組成の不均化は起こりにくくなることから、高電流密度条件下で繰り返して、リチウムイオンを脱挿入しても、結晶のへき開や相転移による不可逆容量の発生をある程度に抑制することができると考えられる。
 しかしながら、非特許文献1に記載される樽形形状を有するコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として用いても、電池のサイクル特性は未だ十分ではなく、2C~10C、特に5C~10C相当の電流密度条件下の急速充放電でも良好なサイクル特性を得ることができる正極活物質が求められている。
 本発明の要旨は以下のとおりである。
 (1){100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、0.5~3.0μmのメジアン径D50を有し、粒径の標準偏差が0.10~0.20である、正極活物質。
 (2){100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、1.5~5.0m2/gの比表面積を有する、正極活物質。
 (3){100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率が1.5~2.2である、正極活物質。
 (4){100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、
 (i)~(iii)のうち少なくとも2つを備える正極活物質:
 (i)0.5~3.0μmのメジアン径D50を有し、粒径の標準偏差が0.10~0.20である;
 (ii)1.5~5.0m2/gの比表面積を有する;及び
 (iii)粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率が1.5~2.2である。
 (5)大気中光電子分光装置で測定されるイオン化ポテンシャルが5.50~5.80eVである、上記(4)に記載の正極活物質。
 (6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の正極活物質を含む二次電池用の正極。
 (7)上記(6)に記載の正極を含む二次電池。
 (8)原料として、D50が0.3~1.0μmの酸化コバルト粉末と、リチウム源の粉末とを準備すること、
 フラックスとして塩化ナトリウム粉末を準備すること、
 前記酸化コバルト粉末、前記リチウム源の粉末、及び前記塩化ナトリウム粉末を混合して、混合物を得ること、
 前記混合物を、800~1000℃で熱処理し、100~300℃/hの降温速度で500℃以下まで冷却して、コバルト酸リチウム単結晶を含む反応物を得ること、並びに
 前記反応物から前記塩化ナトリウムを溶解除去して、正極活物質であるコバルト酸リチウム単結晶を単離すること、
 を含む、正極活物質の製造方法。
 (9)前記リチウム源が、水酸化リチウム、炭酸リチウム、及び塩化リチウムのうちの少なくとも1種である、上記(8)に記載の正極活物質の製造方法。
 (10)前記単離したコバルト酸リチウム単結晶を、600~800℃で熱処理することを含む、上記(8)または(9)に記載の正極活物質の製造方法。
 本開示によれば、良好なサイクル特性を示す電池を得ることができる正極活物質を提供することができる。
図1は、従来、一般的に用いられている固相反応で得られたコバルト酸リチウムの走査型電子顕微鏡写真である。 図2は、非特許文献1に記載される樽形形状を有するコバルト酸リチウム単結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 図3は、{001}面、{104}面、{101}面、及び{102}面を有する六角形の樽形形状を有するコバルト酸リチウム単結晶の模式図である。 図4は、本開示のコバルト酸リチウム単結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 図5は、コバルト源として用いられるCo34の走査型電子顕微鏡写真である。 図6は、実施例1及び比較例1で得られた正極活物質、並びに比較例2で用いた正極活物質の粒度分布を表すグラフである。 図7は、実施例1及び比較例1で得られた正極活物質、並びに比較例2で用いた正極活物質の粉末X線回折プロファイルである。 図8は、実施例1及び2並びに比較例2で作製した電池の2Cレートにおけるサイクル特性を表すグラフを示す。 図9は、実施例1及び2並びに比較例1及び2で作製した電池の5Cレートにおけるサイクル特性を表すグラフを示す。 図10は、実施例1並びに比較例1及び2で作製した電池の10Cレートにおけるサイクル特性を表すグラフを示す。 図11は、実施例1で作製した電池の充放電前の、正極表面の走査型電子顕微鏡写真である。 図12は、実施例1で作製した電池の100サイクル試験後の、正極表面の走査型電子顕微鏡写真である。 図13は、比較例1で作製した電池の充放電前の、正極表面の走査型電子顕微鏡写真である。 図14は、比較例1で作製した電池の100サイクル試験後の、正極表面の走査型電子顕微鏡写真である。 図15は、比較例2で作製した電池の充放電前の、正極表面の走査型電子顕微鏡写真である。 図16は、比較例2で作製した電池の100サイクル試験後の、正極表面の走査型電子顕微鏡写真である。
 (実施形態1)
 本実施形態は、{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、0.5~3.0μmのメジアン径D50を有し、粒径の標準偏差が0.10~0.20である、正極活物質を対象とする。
 このような微細で粒度分布が小さいコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として正極に用いた二次電池は、良好なサイクル特性を有することができ、2C~10C、特に5C~10Cの急速充放電でも良好なサイクル特性を有することができる。
 好ましくは、上記のD50及び粒径の標準偏差を有する正極活物質を正極に用いた二次電池は、0.5Cの充電及び10Cの放電でサイクル試験を行ったときの容量維持率が、1サイクル目の放電容量を100%とした時に対して100サイクル後で75%以上、500サイクル後で50%以上である。
 本実施形態の正極活物質は、{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子である。好ましくは、本開示の正極活物質は、{100}面、{104}面、{101}面、及び{102}面を備えた樽型形状のLiCoO2単結晶粒子である。
 本明細書において、樽型形状とは、切頂面および切稜面を有する多面体である。多面体形状には、正多面体、平行多面体、または斜方多面体が含まれる。図3に、{001}面、{104}面、{101}面、及び{102}面を有する四角形及び六角形の面で覆われた平行多面体の樽形形状を有するコバルト酸リチウム単結晶の模式図を示す。図4に、本開示のコバルト酸リチウム単結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。
 理論に束縛されるものではないが、{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、微細で粒度分布が小さいコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として用いることにより、リチウムイオンが非常にスムーズに且つ活物質毎に不均化することなく均一に、移動することができると考えられる。
 コバルト酸リチウム単結晶粒子からリチウムイオンが出入りする際にコバルト酸リチウムには体積変化が起こるが、粒径が大きいと体積変化による劣化が起きやすくなり、また粒度分布が大きいと、粒径が大きなコバルト酸リチウム単結晶粒子の劣化が進み、正極全体としてリチウムイオンが移動しにくくなると考えられる。
 これに対して、微細で粒度分布が小さいコバルト酸リチウム単結晶粒子は、体積変化による劣化が起きにくいと考えられる。そのため、本開示の正極活物質に高速でリチウムイオンを出入りさせても本開示の正極活物質は劣化しにくく、サイクル特性が向上すると考えられる。
 本実施形態の正極活物質のメジアン径D50は、好ましくは0.5~2.5μm、より好ましくは0.5~2.0μm、さらに好ましくは0.5~1.5μmである。メジアン径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。
 本実施形態の正極活物質の粒径の標準偏差は、好ましくは0.10~0.18、より好ましくは0.10~0.16である。粒径の標準偏差も、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。
 (実施形態2)
 本実施形態は、{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、1.5~5.0m2/gの比表面積を有する、正極活物質を対象とする。
 このような比表面積が大きいコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として正極に用いた二次電池は、良好なサイクル特性を有することができ、2C~10C、特に5C~10Cの急速充放電でも良好なサイクル特性を有することができる。
 好ましくは、上記の比表面積を有する正極活物質を正極に用いた二次電池は、0.5Cの充電及び10Cの放電でサイクル試験を行ったときの容量維持率が、1サイクル目の放電容量を100%とした時に対して100サイクル後で75%以上、500サイクル後で50%以上である。
 本実施形態の正極活物質は、実施形態1と同様の{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子である。
 理論に束縛されるものではないが、{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、比表面積が大きいコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として用いることにより、正極内でリチウムイオンが非常にスムーズに移動することができると考えられる。
 コバルト酸リチウム単結晶粒子の比表面積が大きいことにより、コバルト酸リチウム単結晶と、電解質、導電助剤、及び/または結着剤との接触点が多くなり、異相界面でのリチウムイオンや電子などの電荷の移動経路が増加する。
 コバルト酸リチウム単結晶粒子からリチウムイオンが出入りする際にコバルト酸リチウムには体積変化が起こるが、比表面積が大きいとコバルト酸リチウム単結晶粒子と、電解質、導電助剤、及び/または結着剤との接触点が多くなるので、体積変化によるコバルト酸リチウム単結晶の電荷移動速度や結着性の低下を抑制することができ、サイクル特性を向上することができると考えられる。
 本実施形態の正極活物質は、好ましくは2.0~5.0m2/g、より好ましくは2.5~5.0m2/g、さらに好ましくは3.0~5.0m2/gの比表面積を有する。
 (実施形態3)
 本実施形態は、{100}面及び{104}面を備えた樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率が1.5~2.2である、正極活物質を対象とする。
 このような{104}面が発達したコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として正極に用いた二次電池は、良好なサイクル特性を有することができ、2C~10C、特に5C~10Cの急速充放電でも良好なサイクル特性を有することができる。
 好ましくは、上記の{104}面が発達した正極活物質を正極に用いた二次電池は、0.5Cの充電及び10Cの放電でサイクル試験を行ったときの容量維持率が、1サイクル目の放電容量を100%とした時に対して100サイクル後で75%以上、500サイクル後で50%以上である。
 本実施形態の正極活物質は、実施形態1と同様の{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子である。
 理論に束縛されるものではないが、{100}面及び{104}面を備えた樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、{104}面が発達したコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として用いることにより、正極内でリチウムイオンが非常にスムーズに移動することができると考えられる。
 リチウムイオンは、コバルト酸リチウム単結晶の樽形形状の切頂面の{100}面と平行方向に容易に移動することはできるが、コバルト酸リチウム単結晶粒子と電解質との界面を{100}面を介しては移動しにくい。一方で、リチウムイオンは、樽型形状の側面の{104}面を介してコバルト酸リチウム単結晶粒子と電解質との界面を容易に移動することができる。
 そのため、104回折線の強度に対する003回折線の強度が低いほど、すなわち{003}面に対して{104}面が発達しているほど、{104}面を介してコバルト酸リチウム単結晶粒子と電解質との界面をリチウムイオンが移動しやすくなる。
 コバルト酸リチウム単結晶粒子からリチウムイオンが出入りする際にコバルト酸リチウムには体積変化が起こるが、{001)面に対して{104}面が発達しているほど、リチウムイオンの移動経路をより多く確保できるので、リチウムイオンの出入りが特定の{104}面に集中することを緩和して、{104}面の劣化を抑制することができ、サイクル特性を向上することができると考えられる。
 本実施形態の正極活物質は、粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率が、好ましくは1.5~2.0、より好ましくは1.5~1.8である。
 なお、従来、一般的に用いられている固相反応で得られるコバルト酸リチウムは、図1に示すような板状粒子形状、または不定形粒子や板状粒子が積み重なった造粒形状を有し、熱力学的に{100}面を多く含む晶相から構成されるため、リチウムイオンはコバルト酸リチウム単結晶粒子と電解質との界面を移動しにくい。
 (実施形態4)
 本実施形態は、{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、(i)~(iii)のうち少なくとも2つを備える正極活物質を対象とする:
 (i)0.5~3.0μmのメジアン径D50を有し、粒径の標準偏差が0.10~0.20である、
 (ii)1.5~5.0m2/gの比表面積を有する、及び
 (iii)粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率が1.5~2.2である。
 上記(i)~(iii)の構成は、実施形態1~3で説明した構成が適用される。
 (実施形態5)
 本実施形態は、実施形態4の正極活物質であって、さらにイオン化ポテンシャルが5.50~5.80eV以下を有する、正極活物質を対象とする。
 このようなイオン化ポテンシャルを有するコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として正極に用いた二次電池は、良好なサイクル特性を有することができ、2C~10C、特に5C~10Cの急速充放電でも良好なサイクル特性を有することができる。
 好ましくは、上記のイオン化ポテンシャルを有する正極活物質を正極に用いた二次電池は、0.5Cの充電及び10Cの放電でサイクル試験を行ったときの容量維持率が、1サイクル目の放電容量を100%とした時に対して100サイクル後で75%以上、500サイクル後で50%以上である。
 本実施形態の正極活物質は、実施形態1と同様の{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子である。
 イオン化ポテンシャルは、好ましくは5.75eV以下、より好ましくは5.70eV以下である。イオン化ポテンシャルの下限は、好ましくは5.55eV以上である。{100}面及び{104}面を備えた樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、上記範囲のイオン化ポテンシャルを有するコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として用いることにより、正極内リチウムイオンが非常にスムーズに移動することができると考えられる。
 層状岩塩型の結晶構造の3aサイトをコバルトイオンが占有することにより、コバルト酸リチウム単結晶粒子と電解質との界面におけるリチウムイオン拡散効率は著しく劣化する。この占有率はイオン化ポテンシャルに反映される。
 そのため、イオン化ポテンシャルが小さいほど、界面における抵抗は小さくなり、{104}面を介してコバルト酸リチウム単結晶粒子と電解質との界面をリチウムイオンが移動しやすくなる。
 コバルト酸リチウム単結晶粒子からリチウムイオンが出入りする際にコバルト酸リチウムには体積変化が起こるが、イオン化ポテンシャルが上記範囲にあることにより、リチウムイオンの移動経路をより多く確保できるので、サイクル特性を向上することができると考えられる。
 なお、従来、一般的に用いられている固相反応で得られるコバルト酸リチウムは、図1に示すような板状粒子形状、または不定形粒子や板状粒子が積み重なった造粒形状を有するが、イオン化ポテンシャルは上記範囲内に入るため、リチウムイオンは電解質界面を移動しやすい。しかし、メジアン径D50、粒径の標準偏差、比表面積、及び粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率の値が上記値を満たさないため、10Cの放電でサイクル試験を行ったときの容量維持率は低い。
 (実施形態6)
 本実施形態は、原料として、D50が0.3~1.0μmの酸化コバルト粉末と、リチウム源の粉末とを準備すること、
 フラックスとして塩化ナトリウム粉末を準備すること、
 前記酸化コバルト、前記リチウム源の粉末、及び前記塩化ナトリウム粉末を混合して、混合物を得ること、
 前記混合物を、800~1000℃で熱処理し、100~300℃/hの降温速度で500℃以下まで冷却して、コバルト酸リチウムを含む反応物を得ること、並びに
 前記反応物から前記塩化ナトリウムを溶解除去して、正極活物質であるコバルト酸リチウムを単離すること、
 を含む、正極活物質の製造方法を対象とする。
 本実施形態の方法によれば、フラックス法を用いてコバルト酸リチウム単結晶を成長させるため、{100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、0.5~3.0μmのメジアン径D50を有し、粒径の標準偏差が0.10~0.20である正極活物質、1.5~5.0m2/gの比表面積を有する正極活物質、粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率が1.5~2.2である正極活物質、またはそれらの組み合わせの正極活物質を得ることができる。
 本実施形態の方法においては、コバルト源として、酸化コバルト粉末を準備する。図5にコバルト源として用いられるCo34の走査型電子顕微鏡写真を示す。酸化コバルト粉末は、0.3~1.0μm、好ましくは0.3~0.6μmのメジアン径D50を有する。
 原料の酸化コバルト粉末が上記範囲の粒径を有することにより、サイクル特性に優れた二次電池用の正極を得ることできる。理論に限定されるものではないが、原料の酸化コバルトが上記範囲の微細な粒径を有することにより、粒径が微細で且つ粒度分布が小さいコバルト酸リチウム単結晶粒子、比表面積が大きいコバルト酸リチウム単結晶粒子、{104}面が発達したコバルト酸リチウム単結晶粒子、またはそれらの組み合わせのコバルト酸リチウム単結晶粒子を得ることができる、と考えられる。そして、このようなコバルト酸リチウム単結晶粒子を正極活物質として用いると、二次電池のサイクル特性を向上することができる。
 酸化コバルト粉末は、好ましくは、粒径の標準偏差が0.1~0.3である。原料として用いる酸化コバルト粉末の粒径の標準偏差が上記範囲にあることによって、得られるコバルト酸リチウム単結晶粒子の粒度をより揃えることができる。そのため、コバルト酸リチウム単結晶粒子へのリチウムイオンの出入りにともなう体積変化による劣化をより抑制することができる。
 酸化コバルト粉末は、好ましくは純度が99%以上である。原料として用いる酸化コバルト粉末の純度が高いほど、得られるコバルト酸リチウム単結晶中の欠陥が少なくなり、コバルト酸リチウム単結晶粒子へのリチウムイオンの出入りにともなう体積変化による劣化をより抑制することができる。
 リチウム源は、好ましくは、水酸化リチウム、炭酸リチウム、及び塩化リチウムのうち少なくとも一種であり、より好ましくは水酸化リチウムである。水酸化リチウム、炭酸リチウム、及び塩化リチウムは比較的低融点であり、溶融状態で化学反応を起こすことができることから、化学組成や分散性が均一なコバルト酸リチウム合成に有利であり、水酸化リチウムは、この中で最小の融点を有し、その効果が顕著である。
 フラックスとして塩化ナトリウム粉末を準備する。塩化ナトリウムは高温で粘度が低いため、塩化ナトリウム融液中での溶質イオンの移動が容易であり、フラックスとして好適である。また、塩化ナトリウムは安価である。さらには、塩化ナトリウムは無害であるため、取り扱いが容易である。
 酸化コバルト粉末、リチウム源の粉末、及び塩化ナトリウム粉末を混合して、混合物を得る。好ましくは、酸化コバルト粉末、リチウム源の粉末、及び塩化ナトリウム粉末を、Li/Co原子比が好ましくは1.05~1.25となるように、且つ目的物のコバルト酸リチウムの塩化ナトリウムに対する溶質濃度が好ましくは5~10mol%となるように、秤量し、次いで乾式混合して、混合物を得る。
 得られた混合物を、大気中で、800~1000℃、好ましくは850~950℃、より好ましくは900~925℃で熱処理する。上記温度範囲で熱処理し、次いで100~300℃/h、好ましくは120~250℃/h、より好ましくは180~220℃/hの降温速度で500℃以下まで冷却して、コバルト酸リチウム単結晶を含む反応物を得る。上記降温速度で500℃以下まで冷却した後は、室温まで放冷してもよい。
 上記温度範囲で熱処理を行い、さらに上記範囲の降温速度で500℃以下まで冷却することにより、塩化ナトリウムのフラックス中で酸化コバルトとリチウム源とを反応させ、コバルト酸リチウム単結晶を成長させることができる。
 上記熱処理温度までの昇温速度は特に限定されないが、例えば100~2000℃/hの昇温速度で加熱することができる。
 上記熱処理温度での保持時間は、好ましくは1~10時間である。
 得られた反応物から塩化ナトリウムを溶解除去して、コバルト酸リチウム単結晶を単離する。塩化ナトリウムを溶解除去するためには、塩化ナトリウムが溶けやすい液中に、得られた反応物を浸漬すればよい。
 好ましくは、得られた反応物を水中に浸漬し、塩化ナトリウムを溶解除去して、コバルト酸リチウム単結晶を単離する。より好ましくは、得られた反応物を50~100℃の温水中に浸漬し、塩化ナトリウムを溶解除去して、コバルト酸リチウム単結晶を単離する。塩化ナトリウムは水に溶けやすく、上記温度範囲の温水にはさらに溶けやすいため、コバルト酸リチウム単結晶の単離を短時間で行うことができる。
 好ましくは、単離したコバルト酸リチウム単結晶粒子をさらに、50~100℃で加熱乾燥する。加熱乾燥雰囲気は、空気中、不活性ガス中、減圧下、または真空中であることができ、好ましくは減圧下または真空中である。加熱乾燥時間は、好ましくは1~5時間である。
 単離したコバルト酸リチウム単結晶粒子、または単離して加熱乾燥したコバルト酸リチウム単結晶粒子をさらに熱処理(アニール)してもよい。熱処理温度は、好ましくは600~800℃である。前記熱処理温度での保持時間は、好ましくは3~5時間である。熱処理雰囲気は、酸素分圧が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは実質的に100%である。
 単離したコバルト酸リチウム単結晶粒子をさらに熱処理することによって、特に2C~5Cのレート範囲のサイクル特性をより向上することができる。
 (二次電池の構成)
 本開示の正極活物質を正極に用いて作製される二次電池は特に限定されず、例えば非水電解液系電池、全固体電池等の従来知られた二次電池であることができる。
 二次電池に含まれる正極及び負極の構成は、一般的な二次電池と同じであることができる。
 負極に含まれる負極活物質材料として、二次電池に従来用いられている材料を用いることができ、例えば、金属リチウム、グラファイト及びハードカーボン等の炭素材料、リチウムコバルト窒化物(LiCoN)、リチウムシリコン酸化物(LixSiyz)、またはチタン酸リチウム(LixTiOy)を用いることができる。
 正極及び負極は導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、二次電池に従来用いられている材料を用いることができ、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
 正極及び負極はバインダーを含んでもよい。バインダーとしては、二次電池に従来用いられている材料を用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PFDF)等を用いることができる。
 電解質は、非水系液体電解質、固体電解質、ポリマー電解質、ゲル電解質、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
 非水系液体電解質としては、正極及び負極との間でリチウムイオン等のイオンを交換することができる液体を用いることができ、非プロトン性有機溶媒、イオン液体、またはそれらの組み合わせであることができる。
 有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ニトロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ-ブチロラクトン、グライム類等が挙げられる。イオン液体としては、副反応を抑制することができる酸素ラジカル耐性の高いものが好ましく、例えばN-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(PP13TFSA)等が挙げられる。また、電解液として、上述のイオン液体と有機溶媒を組み合わせて用いることもできる。
 電解液には支持塩を溶解させてもよい。支持塩としては、リチウムイオンと、次に挙げるアニオン:
 Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物アニオン;BF4 -、B(CN)4 -、B(C242 -等のホウ素化物アニオン;(CN)2-、[N(CF32-、[N(SO2CF32-等のアミドアニオン又はイミドアニオン;RSO3 -(以下、Rは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を指す)、RSO4 -、RfSO3 -(以下、Rfは含フッ素ハロゲン化炭化水素基を指す)、RfSO4 -等のスルフェートアニオン又はスルフォネートアニオン;Rf 2P(O)O-、PF6 -、Rf 3PF3 -等のリン酸アニオン;SbF6等のアンチモンアニオン;またはラクテート、硝酸イオン、トリフルオロアセテート等のアニオン
 とからなる塩を用いることができ、
 例えばLiPF6、LiBF4、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiN(CF3SO22、以下、LiTFSAという)、LiCF3SO3、LiC49SO3、LiC(CF3SO23及びLiClO4等が挙げられ、LiTFSAが好ましく用いられる。このような支持塩を2種以上組み合わせて用いてもよい。また、電解液に対する支持塩の添加量は特に限定されないが、0.1~1mol/kg程度とすることが好ましい。
 固体電解質の材料としては、全固体電池の固体電解質として利用可能な材料を用いることができる。例えば、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P25、LiI-Li2S-B23、Li3PO4-Li2S-Si2S、Li3PO4-Li2S-SiS2、LiPO4-Li2S-SiS、LiI-Li2S-P25、LiI-Li3PO4-P25、若しくはLi2S-P25等の硫化物系非晶質固体電解質、Li2O-B23-P25、Li2O-SiO2、Li2O-B23、若しくはLi2O-B23-ZnO等の酸化物系非晶質固体電解質、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO43、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12(Aは、AlまたはGa、0≦x≦0.4、0<y≦0.6)、[(B1/2Li1/21-zz]TiO3(Bは、La、Pr、Nd、またはSm、CはSrまたはBa、0≦z≦0.5)、Li5La3Ta212、Li7La3Zr212、Li6BaLa2Ta212、若しくはLi3.6Si0.60.44等の結晶質酸化物、Li3PO(4-3/2w)w(w<1)等の結晶質酸窒化物、またはLiI、LiI-Al23、Li3N、若しくはLi3N-LiI-LiOH等を用いることができる。
 正極及び負極はそれぞれ固体電解質を含んでもよい。正極及び負極に固体電解質を含有させる場合、電極活物質と固体電解質との混合比率は、特に限定されないが、好ましくは電極活物質:固体電解質の体積比率が40:60~90:10である。
 ポリマー電解質は、イオン液体と共に用いることができ、リチウム塩及びポリマーを含有するものであってもよい。リチウム塩としては、従来、一般的に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではなく、例えば、上述した支持塩として用いられるリチウム塩等を挙げることができる。
 ゲル電解質は、例えばイオン液体と共に用いることができ、リチウム塩とポリマーと非水溶媒とを含有するものであることができる。リチウム塩としては、上述したリチウム塩を用いることができる。非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば上述した有機溶媒を用いることができる。これらの非水溶媒は、一種のみを用いてもよく、二種以上を混合して用いても良い。ポリマーとしては、ゲル化が可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロプレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリウレタン、ポリアクリレート、セルロース等が挙げられる。
 二次電池において、正極と負極との間にはセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布、ポリフェニレンスルフィド製不織布等の高分子不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の微多孔フィルム、またはこれらの組み合わせを用いることができる。液体電解液等の電解質をセパレータに含浸させて電解質層を形成してもよい。
 正極集電体の材料としては、導電性を有し正極集電体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。正極集電体としては、例えばステンレス、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、およびカーボン等を挙げることができ、ステンレス及びアルミニウムが好ましい。さらに、正極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状等を挙げることができ、中でも箔状が好ましい。
 負極集電体の材料としては、導電性を有し負極集電体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。例えばステンレス、銅、ニッケル、およびカーボン等を挙げることができ、ステンレス及び銅が好ましい。さらに、負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状等を挙げることができ、中でも箔状が好ましい。
 正極集電体及び負極集電体の厚みは、それぞれ、特に限定されるものではなく、例えば10~500μm程度の厚みの金属箔を用いることができる。
 本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
 本開示の正極活物質を用いて、当技術分野で公知の方法により二次電池を作製することができる。
 (実施例1)
 フラックス法を用いて以下の手順で正極活物質粒子を作製した。
 原料としてCo34粉末(株式会社三徳製)及びLiOH・2H2O粉末を用い、フラックスとしてNaCl粉末を用いた。Co34粉末は、結晶サイズ及びD50が共に0.5μmの一次粒子であった。Co34粉末は、粒径の標準偏差が0.215であった。結晶サイズは走査型電子顕微鏡により測定した。D50はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD-7100)により測定した。
 Li/Co原子比が1.25、NaClに対するLiCoO2の溶質濃度が5mol%となるように、Co34、LiOH・2H2O、及びNaClを秤量した。原料とフラックスを同時に乾式混合したのちに、アルミナ製るつぼに入れた。
 るつぼ上部にアルミナ製角板を乗せて蓋をして、これを電気炉で加熱処理した。加熱処理は、昇温速度900℃/hで900℃に加熱して、5時間保持することによって行った。
 5時間保持した後、降温速度200℃/hで500℃に冷却し、その後室温まで放冷して、LiCoO2単結晶粒子を含む反応物を得た。
 得られた反応物を80℃、1Lの温水中に浸漬し、超音波処理を行った後、1日間静置した後に上澄みを除いた。この操作を3回繰り返した後に、残留粉末を吸引ろ過してLiCoO2単結晶粒子を単離した。
 単離したLiCoO2単結晶粒子を、真空中で、60℃、2時間、加熱乾燥した。次いで、乾露点が-80℃以下、酸素値が5ppm以下に管理されたグローブボックス中で保管した。
 得られたLiCoO2単結晶粒子の粉末について、粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率を、粉末X線回折測定装置(リガク製、MiniFlexII)により測定した。
 LiCoO2単結晶粒子のD50及び標準偏差を、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD-7100)を用いて測定した。LiCoO2単結晶粒子を3分間粉砕し、粒度分布測定装置の測定セルに導入して、10分間、循環させた後にD50及び標準偏差を測定した。
 LiCoO2単結晶粒子の比表面積を、ガス吸着測定装置(マイクロトラック・ベル
製、BELSORP-mini)により測定した。真空中250℃で2時間脱気して、窒素吸着特性を調べた。得られた吸着等温線をBETプロットしてLiCoO2単結晶粒子の比表面積を得た。
 得られたLiCoO単結晶粒子のイオン化ポテンシャルを光電子分光装置(理研計器株式会社製、AC-3)により測定した。単離したLiCoO単結晶粒子の粉末試料を用い、4.2~7.0eVのエネルギー範囲で調べた。LiCoO単結晶粒子のサンプルを、測定直前までアルゴン雰囲気で保管し、測定中のみ大気暴露した。測定時間は5分以内だった。
 得られた結果について、エネルギーを横軸、規格化光電子収率の1/2乗を縦軸にプロットした。低エネルギー領域(概ね4.2~5.5eV)及び高エネルギー領域(概ね6.0~7.0eV)のプロットについて、それぞれ最小二乗法で近似直線を引き、その交点の横軸をイオン化ポテンシャルとして見積もった。
 LiCoO2正極を、還気露点が-40℃以下に制御された雰囲気中で、以下の方法で作製した。90質量%のLiCoO2単結晶粒子、5質量%のアセチレンブラック、及び5質量%のポリフッ化ビニリデンを、攪拌機で乾式混合した。これに120μlのN-メチルピロリドンを加えて撹拌、脱泡して、混合スラリーを得た。
 スキージを用いて、アルミ箔上に、得られた混合スラリーを70μmの厚さに塗布した。次いで、100℃のホットプレート上で15分間加熱して乾燥膜を得た。乾燥膜を、直径14mmの円盤状に切り出したのち、上下にガラスプレートを固定した。120℃のホットプレート上に置き、真空引きして10時間熱処理した。次いで、プレス機を用いて50kNで加圧して、LiCoO2正極を得た。
 露点が-80℃以下、酸素値が5ppm以下に管理されたグローブボックス中で、評価用電池セルを、以下の方法で組み立てた。2032型コインセル内に、得られたLiCoO2正極、ポリプロピレン製膜、金属リチウム箔、ステンレス製板、及びステンレス製スプリングを順に積み重ねた。さらに、セル内に1MのLiPF6溶液(溶媒は、炭酸エチル:炭酸ジメチル=3:7vol%の混合物)を210μL加えた。セルにガスケットをはめ込み、かしめ器で加圧した。
 電池のサイクル試験は以下の条件で行った。電圧範囲を2.4~4.2Vとし、充電過程は0.5C、放電過程は10Cで充放電を行った。なお、1CレートはLiCoO2の理論容量値を137mA・g-1として算出した。充電過程は、定電流・定電圧条件(電流下限0.03mA)とし、放電過程は定電流条件とした。充放電切り替え時に30分の休止期間を入れた。
 (実施例2)
 実施例1と同じ方法で作製し、単離したLiCoO2単結晶粒子を、真空中で、60℃、2時間、加熱乾燥した後、単離したコバルト酸リチウム単結晶粒子を酸素分圧100%の雰囲気下で、700℃で3時間、熱処理し、300℃/hで500℃に冷却し、その後室温まで放冷した。
 (比較例1)
 Co34として、50nm程度の結晶を有し、メジアン径D50が4μmの二次粒子を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で、正極を作製し、電池の評価を行った。
 (比較例2)
 固相反応で得られた板状コバルト酸リチウムを正極活物質として用いて電池を作製したこと以外は、実施例1と同じ方法で、サイクル特性の評価を行った。
 図6に、実施例1及び比較例1で得られた正極活物質、並びに比較例2で用いた正極活物質の粒度分布を表すグラフを示す。
 図7に、実施例1及び比較例1で得られた正極活物質、並びに比較例2で用いた正極活物質の粉末X線回折プロファイルを示す。
 図8に、実施例1及び2並びに比較例2で作製した電池の2Cレートにおけるサイクル特性を表すグラフを示す。図9に、実施例1及び2並びに比較例1及び2で作製した電池の5Cレートにおけるサイクル特性を表すグラフを示す。図10に、実施例1並びに比較例1及び2で作製した電池の10Cレートにおけるサイクル特性を表すグラフを示す。
 図11及び12に、実施例1で作製した電池の充放電前及び100サイクル試験後の、正極表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。サイクル試験前後で変化は見られなかった。
 図13及び14に、比較例1で作製した電池の充放電前及び100サイクル試験後の、正極表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。サイクル試験後に、コバルト酸リチウム単結晶粒子間にひび割れがみられた。
 図15及び16に、比較例2で作製した電池の充放電前及び100サイクル試験後の、正極表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。サイクル試験後に、コバルト酸リチウム単結晶粒子内にへき開が発生していた。
 表1に、実施例1及び比較例1で得られた正極活物質、並びに比較例2で用いた正極活物質のD50、粒径の標準偏差、BET比表面積、粉末X線回折(XRD)による003回折線/104回折線の強度比率、及びイオン化ポテンシャルを示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001

Claims (10)

  1.  {100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、0.5~3.0μmのメジアン径D50を有し、粒径の標準偏差が0.10~0.20である、正極活物質。
  2.  {100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、1.5~5.0m2/gの比表面積を有する、正極活物質。
  3.  {100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率が1.5~2.2である、正極活物質。
  4.  {100}面及び{104}面を含む樽型形状のコバルト酸リチウム単結晶粒子であって、(i)~(iii)のうち少なくとも2つを備える正極活物質:
     (i)0.5~3.0μmのメジアン径D50を有し、粒径の標準偏差が0.10~0.20である;
     (ii)1.5~5.0m2/gの比表面積を有する;及び
     (iii)粉末X線回折で測定される104回折線の強度に対する003回折線の強度の比率が1.5~2.2である。
  5.  大気中光電子分光装置で測定されるイオン化ポテンシャルが5.50~5.80eVである、請求項4に記載の正極活物質。
  6.  請求項1~5のいずれか一項に記載の正極活物質を含む二次電池用の正極。
  7.  請求項6に記載の正極を含む二次電池。
  8.  原料として、D50が0.3~1.0μmの酸化コバルト粉末と、リチウム源の粉末とを準備すること、
     フラックスとして塩化ナトリウム粉末を準備すること、
     前記酸化コバルト粉末、前記リチウム源の粉末、及び前記塩化ナトリウム粉末を混合して、混合物を得ること、
     前記混合物を、800~1000℃で熱処理し、100~300℃/hの降温速度で500℃以下まで冷却して、コバルト酸リチウム単結晶を含む反応物を得ること、並びに
     前記反応物から前記塩化ナトリウムを溶解除去して、正極活物質であるコバルト酸リチウム単結晶を単離すること、
     を含む、正極活物質の製造方法。
  9.  前記リチウム源が、水酸化リチウム、炭酸リチウム、及び塩化リチウムのうちの少なくとも1種である、請求項8に記載の正極活物質の製造方法。
  10.  前記単離したコバルト酸リチウム単結晶を、600~800℃で熱処理することを含む、請求項8または9に記載の正極活物質の製造方法。
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