WO2019106838A1 - 電動機の制御方法及び電動機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
制御装置100は、トルク指令値に基づいて電動機9への供給電流の偏差を小さくする電圧値を示すフィードバック指令値とその指令値を補償するフィードフォワード補償値とを演算することで電流ベクトル制御の電圧指令値を出力する。電動機9の制御を電流ベクトル制御から電圧位相制御へ切り替える場合には、制御装置100は、電流ベクトル制御の演算値に基づいて電圧位相制御を初期化し、トルク指令値に基づいて所定の電圧位相指令値に対するフィードバック制御を実行することで電圧位相制御の電圧指令値を出力する。電圧位相制御を初期化する場合において制御装置100は、フィードバック指令値に対してその指令値の低周波成分を通過させるフィルタ処理を施し、フィードフォワード補償値及びフィルタ処理後のフィードバック指令値を用いて電圧位相指令値の初期値を演算する。
Description
本発明は、電動機の状態に応じて電動機の制御を他の制御に切り替える電動機の制御方法及び電動機の制御装置に関する。
電動機の制御手法としては、例えば、電動機への供給電流の値を電圧指令値にフィードバックする電流ベクトル制御、及び電動機の発生トルクの値を電圧位相指令値にフィードバックする電圧位相制御などが知られている。これらの制御については、電動機の作動状態に合わせていずれか一つの制御が実行されることが多い。
上述のような制御装置のひとつとして、電動機の制御を電流ベクトル制御から電圧位相制御へ切り替える際に、電流ベクトル制御の電圧指令値に基づいて電圧位相制御の制御状態変数を初期化する制御装置が提案されている(JP2007-143235A)。
しかしながら、上述の制御装置においては、電動機への供給電流を検出する電流センサなどの誤差特性により、電流ベクトル制御の電圧指令値にリップルが重畳されることがある。このような場合において、電動機の制御を電流ベクトル制御から電圧位相制御へ切り替えると、電圧指令値のリップル成分が原因となり、電動機のトルクに変動が生じる場合がある。
本発明の目的は、電動機の制御を電圧位相制御に切り替える際に生じる電動機のトルク変動を抑制する制御方法及び電動機の制御装置を提供することにある。
本発明のある態様によれば、電動機の制御方法は、電動機に供給される電力を制御するための電流ベクトル制御及び電圧位相制御のうちいずれか一つの制御を前記電動機の作動状態に応じて実行する。この電動機の制御方法は、前記電動機のトルク指令値に基づいて、前記電動機への供給電流の偏差を小さくする電圧値を示すフィードバック指令値及び当該指令値を補償するフィードフォワード補償値を演算することにより、前記電流ベクトル制御の電圧指令値を出力する電流制御ステップを含む。さらに電動機の制御方法は、前記電動機の制御を前記電流ベクトル制御から前記電圧位相制御へ切り替える場合には、前記電流ベクトル制御の演算値に基づいて前記電圧位相制御を初期化する切替制御ステップと、前記電動機のトルク指令値に基づいて、所定の電圧位相指令値に対するフィードバック制御を実行することにより、前記電圧位相制御の電圧指令値を出力する電圧位相制御ステップと、を含む。そして切替制御ステップは、前記フィードバック指令値に対して当該指令値の低周波成分を通過させるフィルタ処理を施し、前記フィードフォワード補償値及び前記フィルタ処理後のフィードバック指令値を用いて前記電圧位相指令値の初期値を演算する。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における電動機の制御装置100の構成例を示す図である。
図1は、本発明の第1実施形態における電動機の制御装置100の構成例を示す図である。
制御装置100は、あらかじめプログラムされた処理を実行することにより、電動機9に供給される電力を制御する。制御装置100は、例えば、1又は複数のコントローラにより構成される。
制御装置100は、電流ベクトル制御部1と、電圧位相制御部2と、制御切替部3と、座標変換器4と、PWM変換器5と、インバータ6と、バッテリ電圧検出器7と、電動機電流検出器8と、電動機9と、を備える。さらに制御装置100は、回転子検出器10と、回転速度演算器11と、座標変換器12と、初期値演算部13と、を備える。
電流ベクトル制御部1は、電動機9に生じるトルクが所定のトルク指令値T*に収束するように電流ベクトル制御を実行する。ここにいう電流ベクトル制御は、電動機9への供給電流に関するベクトルの向き及び大きさを変えることにより、電動機9の動作を制御する制御方式である。
電流ベクトル制御部1は、電動機9のトルク指令値T*に基づいて、バッテリ61からインバータ6を介して電動機9に供給される電力の電流値を電圧指令値vdi
*及びvqi
*にフィードバックするフィードバック制御を実行する。
本実施形態の電流ベクトル制御部1は、電動機9のトルク指令値T*、回転速度検出値N、及びバッテリ電圧検出値Vdcを用いて、d軸電流検出値idをd軸電圧指令値vdi
*にフィードバックし、q軸電流検出値iqをq軸電圧指令値vqi
*にフィードバックする。ここにいうd軸電流検出値id及びq軸電流検出値iqは、それぞれ、電動機9への供給電流のd軸成分の値及びq軸成分の値を示す。d軸及びq軸は、互いに直交する座標軸である。
電流ベクトル制御部1は、フィードバック制御により算出されたd軸電圧指令値vdi
*及びq軸電圧指令値vqi
*を制御切替部3に電流ベクトル制御の電圧指令値として出力する。
電圧位相制御部2は、電動機9に生じるトルクが上述のトルク指令値T*に収束するように電圧位相制御を実行する。ここにいう電圧位相制御は、電動機9の各相の供給電圧間の位相である電圧位相を変えることにより、電動機9の動作を制御する制御方式である。
電圧位相制御部2は、トルク指令値T*に基づいて、バッテリ61からインバータ6を介して電動機9に供給される電力の電流値を電圧指令値vdv
*及びvqv
*にフィードバックするフィードバック制御を実行する。
本実施形態の電圧位相制御部2は、トルク指令値T*、回転速度検出値N及びバッテリ電圧検出値Vdcを用いて所定の電圧振幅指令値及び電圧位相指令値を演算し、d軸及びq軸電流検出値id及びiqを用いて電圧位相指令値にフィードバックする。電圧位相制御部2は、フィードバック制御により算出されたd軸電圧指令値vdv
*及びq軸電圧指令値vqv
*を制御切替部3に電圧位相制御の電圧指令値として出力する。
制御切替部3は、制御モードフラグCNT_FLGに従って、電動機9の制御を電流ベクトル制御及び電圧位相制御のうちのいずれか一つの制御へ切り替える。
制御モードフラグCNT_FLGは、電動機9の作動状態に応じて識別子が変更される。本実施形態では、電流ベクトル制御を示す識別子が「1」であり、電圧位相制御を示す識別子が「2」であり、緊急時に実行される他の制御を示す識別子が「3」である。
電動機9の作動状態を表わすトルク指令値T*やd軸電流検出値id、回転速度検出値Nなどを用いて制御モードフラグCNT_FLGに識別子が設定される。例えば、電動機9のトルクが低い場合には、制御モードフラグCNT_FLGに電流ベクトル制御を示す識別子が設定され、電流ベクトルの大きさが所定の閾値に達した場合には、電圧位相制御を示す識別子が設定される。
制御切替部3は、少なくとも電流ベクトル制御及び電圧位相制御の中から選択した制御によって演算された値をd軸及びq軸の最終電圧指令値vd
*及びvq
*として座標変換器4に出力する。
座標変換器4は、式(1)のように、電動機9の電気角検出値θに基づいて、d軸及びq軸の最終電圧指令値vd
*及びvq
*を三相電圧指令値vu
*、vv
*及びvw
*に変換する。
PWM変換器5は、バッテリ61のバッテリ電圧検出値Vdcに基づいて、三相電圧指令値vu
*、vv
*及びvw
*を、インバータ6に配置されたパワー素子の各々を駆動するためのパワー素子駆動信号Duu
*、Dul
*、Dvu
*、Dvl
*、Dwu
*及びDwl
*に変換する。PWM変換器5は、変換したパワー素子駆動信号Duu
*、Dul
*、Dvu
*、Dvl
*、Dwu
*及びDwl
*をインバータ6の各パワー素子に供給する。
インバータ6は、パワー素子駆動信号Duu
*、Dul
*、Dvu
*、Dvl
*、Dwu
*及びDwl
*に基づいて、バッテリ61の直流電圧を、電動機9を駆動するための三相交流電圧vu、vv及びvwに変換する。インバータ6は、変換した三相交流電圧vu、vv及びvwを電動機9の各相に供給する。
バッテリ電圧検出器7は、インバータ6に対して接続されたバッテリ61の電圧を検出する。バッテリ電圧検出器7は、検出した電圧の値を示すバッテリ電圧検出値Vdcを、電流ベクトル制御部1及び電圧位相制御部2の各々に出力する。
電動機電流検出器8は、インバータ6から電動機9の各相に供給される三相交流電流iu、iv及びiwのうち少なくとも二相の交流電流を検出する。本実施形態の電動機電流検出器8は、U相及びV相の交流電流iu及びivを検出し、検出した交流電流iu及びivを座標変換器12に出力する。
電動機9は、複数の各相ごとに巻線(例えば、U、V及びWの三相巻線)を備え、各相の巻線に交流電力を供給することにより回転駆動するモータである。電動機9は、電動車両などの駆動源として用いることが可能である。例えば、電動機9は、IPM(Interior Permanent Magnet)型の三相同期電動機により実現される。
回転子検出器10は、電動機9の電気角を検出する。回転子検出器10は、検出した電気角の値を示す電気角検出値θを座標変換器4及び座標変換器12の各々に出力するとともに、その電気角検出値θを回転速度演算器11に出力する。
回転速度演算器11は、電気角検出値θの時間当たりの変化量から電動機9の回転速度を演算する。回転速度演算器11は、演算した回転速度の値を示す回転速度検出値Nを、電流ベクトル制御部1及び電圧位相制御部2の各々に出力する。
座標変換器12は、式(2)のように、電動機9の電気角検出値θに基づいて、U相及びV相の交流電流iu及びivをd軸電流検出値id及びq軸電流検出値iqに変換する。座標変換器12は、d軸電流検出値id及びq軸電流検出値iqを、電流ベクトル制御部1及び電圧位相制御部2の各々に出力する。
初期値演算部13は、電流ベクトル制御部1での演算値に基づいて、電圧位相制御部2を初期化する。例えば、初期値演算部13は、電動機9の制御が電流ベクトル制御から電圧位相制御へ切り替えられる場合に、電流ベクトル制御部1の演算値に基づき電圧位相制御部2の状態変数をリセットする。
本実施形態の初期値演算部13は、制御モードフラグCNT_FLGに示される識別子が「1」から「2」に切り替わった際に、電流ベクトル制御部1の演算値に基づいて電圧位相制御部2の状態変数を初期値に設定する。
図2は、本実施形態における電流ベクトル制御部1の構成例を示すブロック図である。d軸電圧指令値vdi
*を演算する構成と、q軸電圧指令値vqi
*を演算する構成とが同様の構成であるため、ここではd軸電圧指令値vdi
*を演算する構成についてのみ説明する。
電流ベクトル制御部1は、非干渉電圧演算器101と、電流目標値演算器102と、減算器103と、PI制御器104と、加算器105と、を備える。
非干渉電圧演算器101は、トルク指令値T*に基づいて、d軸電圧指令値vdi
*を補償するフィードフォワード補償値を演算する。
本実施形態における非干渉電圧演算器101は、トルク指令値T*、回転速度検出値N及びバッテリ電圧検出値Vdcに基づいて、d軸及びq軸間で互いに干渉する干渉電圧を打ち消す非干渉電圧値vd_dcpl
*をフィードフォワード補償値として演算する。そして非干渉電圧演算器101は、演算した非干渉電圧値vd_dcpl
*を加算器106に出力する。
例えば、非干渉電圧演算器101には、あらかじめ定められた非干渉テーブルが記憶されている。非干渉テーブルには、トルク指令値T*、回転速度検出値N及びバッテリ電圧検出値Vdcにより特定される動作点ごとに、非干渉電圧値vd_dcpl
*が対応付けられている。
非干渉電圧演算器101は、トルク指令値T*、回転速度検出値N及びバッテリ電圧検出値Vdcの各パラメータを取得する。そして非干渉電圧演算器101は、上述の非干渉テーブルを参照し、各パラメータにより電動機9の動作点を特定し、その動作点に対応付けられた非干渉電圧値vd_dcpl
*を算出する。
電流目標値演算器102は、トルク指令値T*に基づいて、電動機9の供給電流の偏差を小さくするために電動機9のd軸電流目標値id
*を演算する。
本実施形態における電流目標値演算器102は、非干渉電圧演算器101と同様、トルク指令値T*、回転速度検出値N及びバッテリ電圧検出値Vdcに基づいて、あらかじめ定められた電流テーブルを参照し、d軸電流目標値id
*を演算する。
例えば、電流テーブルには、トルク指令値T*、回転速度検出値N及びバッテリ電圧検出値Vdcにより特定される動作点ごとに、d軸電流目標値id
*が対応付けられている。電流テーブルのd軸電流目標値id
*には、電動機9がトルク指令値T*に従って動作するのに必要となる電動機9への電流値であって、電動機9の効率が最大となる電流値が格納される。
電流テーブルに格納される電流値は、実験データやシミュレーションなどを通じて適宜設定される。電流目標値演算器102は、演算したd軸電流目標値id
*を初期値演算部13及び減算器103の各々に出力する。
減算器103は、d軸電流目標値id
*からd軸電流検出値idを減算し、減算した値をd軸電流偏差としてPI制御器104に出力する。
PI制御器104は、トルク指令値T*に基づいて、電動機9の供給電流の偏差を小さくする電圧値を示すフィードバック指令値を演算する。
本実施形態におけるPI制御器104は、d軸電流検出値idがd軸電流目標値id
*に追従するようd軸電流偏差をd軸電圧指令値vdi
*にフィードバックする電流フィードバック制御を実行する。
例えば、PI制御器104は、式(3)のように、d軸電流偏差id_err(=id
*-id)に基づいて、電流FB電圧指令値vd_fb
*をフィードバック指令値として算出する。
ただし、Kdpはd軸比例ゲインであり、Kdiはd軸積分ゲインである。d軸比例ゲインKdp及びd軸積分ゲインKdiは、実験データやシミュレーション結果などを通じて求められる。
このように、PI制御器104は、d軸電流偏差id_errにd軸比例ゲインKdpを乗算した乗算値と、d軸電流偏差id_errの積分値(Kdi/s)との和を求めることにより、d軸の電流FB電圧指令値vd_fb
*を算出する。
PI制御器104は、電流FB電圧指令値vd_fb
*を初期値演算部13に出力するとともに、その電流FB電圧指令値vd_fb
*を加算器105に出力する。
加算器105は、式(4)のように電流FB電圧指令値vd_fb
*に非干渉電圧値vd_dcpl
*を加算し、加算した値を制御切替部3に電流ベクトル制御のd軸電圧指令値vdi
*として出力する。
このように、電流ベクトル制御部1は、トルク指令値T*に基づいて、d軸の電流FB電圧指令値vd_fb
*と、d軸のフィードフォワード補償値である非干渉電圧値vd_dcpl
*とを求めることにより、電流ベクトル制御のd軸電圧指令値vdi
*を出力する。
図2では、電流ベクトル制御のd軸電圧指令値vdi
*を演算する構成について説明したが、q軸電圧指令値vqi
*を演算する構成についても、図2に示した構成と同様の構成である。
したがって、電流ベクトル制御部1は、トルク指令値T*に基づいて、電動機9の供給電力のd軸及びq軸の電流成分の各偏差を小さくする電流FB電圧指令値vd_fb
*及びvq_fb
*を演算する。そして電流ベクトル制御部1は、演算した電流FB電圧指令値vd_fb
*及びvq_fb
*を補償するd軸及びq軸の非干渉電圧値vd_dcpl
*及びvq_dcpl
*を演算することにより、電流ベクトル制御のd軸及びq軸電圧指令値vdi
*及びvqi
*を算出する。
なお、電流ベクトル制御のq軸電圧指令値vqi
*を演算する構成については、説明が重複するため、ここでの説明を省略する。
図3は、本実施形態における初期値演算部13の構成例を示すブロック図である。
初期値演算部13は、d軸フィルタ131と、d軸加算器132と、q軸フィルタ133と、q軸加算器134と、電圧位相演算器135と、を備える。
d軸フィルタ131は、電流ベクトル制御部1の演算値であるd軸の電流FB電圧指令値vd_fbの低周波成分を通過させるローパスフィルタである。すなわち、d軸フィルタ131は、d軸電圧指令値vdi
*を構成するフィードバック指令値に対してそのフィードバック指令値の低周波成分を通過させるフィルタ処理を施す。これにより、電流フィードバック制御に起因するd軸電圧指令値vdi
*のリップル成分が除去される。
本実施形態のd軸フィルタ131は、式(5)のようなフィルタ処理をd軸の電流FB電圧指令値vd_fb
*に対して施す。なお、式(5)中のτyはフィルタの時定数であり、d軸電圧指令値vdi
*のリップル成分が除去されるように、実験データやシミュレーション結果などを通じて求められる。
d軸フィルタ131は、フィルタ処理後の電流FB電圧指令値vd_fb_flt
*をd軸加算器132に出力する。
d軸加算器132は、電流ベクトル制御部1の演算値であるd軸の非干渉電圧値vd_dcpl
*とフィルタ処理後の電流FB電圧指令値vd_fb_flt
*とを加算する。d軸加算器132は、加算した値をフィルタ処理後のd軸電圧指令値vd_flt
*として電圧位相演算器135に出力する。
q軸フィルタ133は、電流ベクトル制御部1の演算値であるq軸の電流FB電圧指令値vq_fbの低周波成分を通過させるローパスフィルタである。すなわち、q軸フィルタ133は、q軸電圧指令値vqi
*を構成するフィードバック指令値に対してそのフィードバック指令値の低周波成分を通過させるフィルタ処理を施す。
本実施形態のq軸フィルタ133は、d軸フィルタ131と同様、式(5)のようなフィルタ処理をq軸の電流FB電圧指令値vq_fb
*に対して施す。これにより、電流フィードバック制御に起因するq軸電圧指令値vqi
*のリップル成分が除去される。q軸フィルタ133は、フィルタ処理後の電流FB電圧指令値vq_fb_flt
*をq軸加算器134に出力する。
q軸加算器134は、電流ベクトル制御部1の演算値であるq軸の非干渉電圧値vq_dcpl
*とフィルタ処理後の電流FB電圧指令値vq_fb_flt
*とを加算する。q軸加算器134は、加算した値をフィルタ処理後のq軸電圧指令値vq_flt
*として電圧位相演算器135に出力する。
電圧位相演算器135は、電流ベクトル制御部1の演算値に基づいて、図1に示した電圧位相制御部2を初期化するための電圧位相指令値の初期値α_flt
*を演算する。
本実施形態における電圧位相演算器135は、フィルタ処理後のd軸及びq軸電圧指令値vd_flt
*及びvq_flt
*に基づいて、電圧位相指令値の初期値α_flt
*を演算する。すなわち、電圧位相演算器135は、非干渉電圧値vd_dcpl
*及びvq_dcpl
*とフィルタ処理後の電流FB電圧指令値vd_fb_flt
*及びvq_fb_flt
*とを用いて、電圧位相制御部2を初期化する。
例えば、電圧位相演算器135は、式(6)のように、フィルタ処理後のd軸及びq軸電圧指令値vd_flt
*及びvq_flt
*を用いて電圧位相指令値を演算し、その演算した値を電圧位相制御部2に初期値α_flt
*として出力する。
したがって、電圧位相演算器135は、回転速度検出値Nが0(ゼロ)以上である場合、すなわち電動機9が力行状態である場合には、式(6)の上段の式を用いて電圧位相指令値の初期値α_flt
*を算出する。そして回転速度検出値Nが0未満である場合、すなわち電動機9が回生状態である場合には、電圧位相演算器135は、下段の式を用いて初期値α_flt
*を算出する。
このように初期値演算部13は、電流ベクトル制御部1の電圧指令値vdi
*及びvqi
*のフィードバック成分(vd_fb
*及びvq_fb
*)に対してのみローパスフィルタ処理を施す。これにより、フィードフォワード成分(vd_dcpl
*及びvq_dcpl
*)にはローパスフィルタ処理が施されないため、電動機9の制御遅れを抑制しつつ電流フィードバック制御に起因する電圧指令値vdi
*及びvqi
*のリップル成分を的確に除去することができる。
したがって、電動機9の制御が電流ベクトル制御から電圧位相制御へ切り替えられたときに電圧位相制御部2の電圧位相指令値に設定される初期値α_flt
*の誤差が、電圧指令値vdi
*及びvqi
*のリップルノイズが原因で過大になる事態を回避することができる。
なお、本実施形態ではd軸及びq軸の電流FB電圧指令値vd_fb
*及びvq_fb
*の双方に対してリップル成分を除去するためのローパスフィルタ処理を施したが、少なくとも一方に対してローパスフィルタ処理を施すようにしてもよい。この場合であっても、電圧位相指令値の初期値α_flt
*の誤差を抑制することができる。
図4は、本実施形態における電圧位相制御部2の構成例を示すブロック図である。
電圧位相制御部2は、電圧振幅演算器201と、電圧位相演算器202と、トルク推定器203と、トルク偏差演算器204と、PI制御器205と、電圧位相加算器206と、dq軸電圧変換器207と、を備える。
電圧振幅演算器201は、あらかじめ定められた変調率指令値M*に基づいて、所定の電圧振幅指令値Va
*を演算する。ここにいう変調率指令値M*は、電圧位相制御における変調率の基準値を示す。電圧位相制御における変調率とは、電動機9における相間電圧の基本波成分の振幅のバッテリ電圧検出値Vdcに対する比率である。電動機9の相間電圧とは、例えば、U相とV相との間の電圧(vu-vv)のことである。
一般的に、電圧位相制御の変調率が0.0から1.0までの範囲は、PWM変調により疑似正弦波電圧が生成可能な通常変調領域に該当する。これに対して変調率が1.0を上回る範囲は、過変調領域に該当し、疑似正弦波を生成しようとしても相間電圧の基本波成分の最大値及び最小値が制限される。例えば、変調率が約1.1まで大きくなると、相間電圧の基本波成分はいわゆる矩形波電圧と同様の波形になる。
本実施形態の電圧振幅演算器201は、バッテリ電圧検出値Vdcに応じて電圧振幅指令値Va
*を変更する。例えば、電圧振幅演算器201は、式(7)のように、電圧振幅指令値Va
*を算出する。電圧振幅演算器201は、算出した電圧振幅指令値Va
*をdq軸電圧変換器207に出力する。
電圧位相演算器202は、フィードフォワード制御により、トルク指令値T*に基づいて、電動機9に供給すべき電圧の位相を示す電圧位相FF値αff
*を演算する。本実施形態の電圧位相演算器202は、トルク指令値T*、回転速度検出値N、及びバッテリ電圧検出値Vdcを用いて電圧位相FF値αff
*を算出する。
例えば、電圧位相演算器202には、あらかじめ定められた位相テーブルが記憶されている。この位相テーブルには、トルク指令値T*、回転速度検出値N、及びバッテリ電圧検出値Vdcにより特定される動作点ごとに、電圧位相FF値αff
*が対応付けられている。位相テーブルの電圧位相FF値αff
*としては、例えば、実験において電動機9の動作点ごとにノミナル状態で計測された電圧位相の値が用いられる。
電圧位相演算器202は、トルク指令値T*、回転速度検出値N、及びバッテリ電圧検出値Vdcの各パラメータを取得すると、位相テーブルを参照し、各パラメータにより特定される動作点に対応付けられた電圧位相FF値αff
*を算出する。そして電圧位相演算器202は、算出した電圧位相FF値αff
*を電圧位相加算器206に出力する。
トルク推定器203は、d軸電流検出値id及びq軸電流検出値iqに基づいてトルク推定値Tcalを演算する。トルク推定器203には、あらかじめ定められたトルクテーブルが記憶されている。トルクテーブルには、d軸電流検出値id及びq軸電流検出値iqにより特定められる動作点ごとに、トルク推定値Tcalが対応付けられている。トルクテーブルのトルク推定値Tcalとしては、例えば、実験においてdq軸電流により特定される電動機9の動作点ごとに計測したトルクの計測値が用いられる。
トルク推定器203は、d軸電流検出値id及びq軸電流検出値iqの各パラメータを取得すると、トルクテーブルを参照し、各パラメータにより特定される動作点に対応付けられたトルク推定値Tcalを算出する。トルク推定器203は、算出したトルク推定値Tcalをトルク偏差演算器204に出力する。
トルク偏差演算器204は、トルク指令値T*とトルク推定値Tcalとのトルク偏差Terrを演算する。本実施形態のトルク偏差演算器204は、トルク指令値T*からトルク推定値Tcalを減算した値をトルク偏差TerrとしてPI制御器205に出力する。
PI制御器205は、トルク指令値T*にトルク推定値Tcalが追従するようトルク偏差Terrを電圧位相指令値α*に対してフィードバックするトルクフィードバック制御を実行する。
本実施形態のPI制御器205は、式(8)のように、トルク偏差Terr(=T*-Tcal)に基づいて電圧位相FB値αfb
*を算出する。PI制御器205は、算出した電圧位相FB値αfb
*を電圧位相加算器206に出力する。
なお、Kαpは比例ゲインであり、Kαiは積分ゲインである。比例ゲインKαp及び積分ゲインKαiは、実験データやシミュレーション結果などを通じて求められる。式(8)中の(1/s)Terrは、PI制御器205の積分器に該当し、(1/s)は、トルク偏差Terrの積分値に該当する。
本実施形態におけるPI制御器205は、制御モードフラグCNT_FLGを参照する。そして制御モードフラグCNT_FLGが電流ベクトル制御から電圧位相制御への切り替わったことを示す場合は、PI制御器205は、初期値演算部13からの電圧位相指令値の初期値αflt
*に基づいてPI制御器205の積分器を初期化する。
具体的には、PI制御器205は、電圧位相指令値の初期値αflt
*から電圧位相FF値αff
*を減じた値(αflt
*-αff
*)をPI制御器205の積分器に設定する。すなわち、PI制御器205は、電圧位相加算器206の出力値が初期値αflt
*となるようにPI制御器205の積分値(1/s)をリセットする。
そしてPI制御器205は、電圧位相指令値の初期値αflt
*から電圧位相FF値αff
*を減じた値(αflt
*-αff
*)を電圧位相加算器206に電圧位相FB値αfb
*として出力する。
電圧位相加算器206は、電圧位相演算器202からの電圧位相FF値αff
*に電圧位相FB値αfb
*を加えて電圧位相指令値α*を算出する。電圧位相加算器206は、算出した電圧位相指令値α*をdq軸電圧変換器207に出力する。
dq軸電圧変換器207は、式(9)のように、電圧位相指令値α*、及び電圧振幅演算器201から出力される電圧振幅指令値Va*をd軸電圧指令値vdv
*及びq軸電圧指令値vqv
*に変換する。
dq軸電圧変換器207は、変換したd軸電圧指令値vdv
*及びq軸電圧指令値vqv
*を制御切替部3に電圧位相制御の電圧指令値として出力する。
このように、電圧位相制御部2は、トルク偏差Terrがゼロに収束するように電圧位相指令値α*を変更する。これにより、電圧振幅の過変調領域において電圧振幅指令値Va
*が固定された状態であっても電動機9のトルクを変化させることができる。
さらに電圧位相制御部2は、制御モードフラグCNT_FLGに従って電動機9の制御が電流ベクトル制御から電圧位相制御に切り替えられた場合には、電流ベクトル制御部1の演算値に基づいて求められた初期値αflt
*を電圧位相指令値α*に設定する。これにより、電圧位相制御に切り替えられた際の電動機9のトルク変動を低減することができる。
なお、本実施形態ではトルク偏差Terrに応じて電圧位相指令値α*を変更する構成であったが、これに限られるものではなく、例えば、電動機9の供給電流の偏差に応じて電圧位相指令値α*を変更する構成であってもよい。
図5は、電圧位相制御に切り替えた際の電動機9のトルク変動を説明する図である。
図5には、本実施形態での電動機9の状態変化、及びその比較例が示されている。この比較例は、電圧位相制御部2に設定される電圧位相指令値の初期値を演算するにあたり、電流ベクトル制御部1の出力であるd軸及びq軸電圧指令値vdi
*及びvqi
*の全体に対してローパスフィルタ処理を施したときの電動機9の状態変化を示す。
図5の比較例では、図5(a)に示すように、時刻T10において制御モードフラグCNT_FLGが「1」から「2」に変更される。このため、制御切替部3は、電動機9の制御を電流ベクトル制御から電圧位相制御に切り替える。
このとき、d軸及びq軸電圧指令値vdi
*及びvqi
*のフィードバック成分だけでなくフィードフォワード成分に対してもローパスフィルタ処理が施されるため、図5(c)に示すように、電動機9のトルクが急峻に低下している。
上述のようにトルク変動が生じている理由は、フィードフォワード成分に対して余計にローパスフィルタ処理が施されたことが原因となり、電動機9における実際の電圧位相と電圧位相指令値の初期値との間のズレが大きくなったからである。この例では、電圧位相指令値の初期値として、過剰なフィルタ処理により実際の電圧位相よりも小さな値が算出されている。
一方、図5の本実施形態では、図3に示した初期値演算部13によりd軸及びq軸電圧指令値vdi
*及びvqi
*のフィードバック成分に対してのみローパスフィルタ処理が施される。このため、図5(a)に示すように、時刻T0において電動機9の制御が電圧位相制御に切り替えられた際には、図5(c)に示すように電動機9のトルク変動が低減されている。
以上のように、本実施形態の初期値演算部13は、電圧位相指令値の初期値αflt
*を演算するあたり、d軸及びq軸電圧指令値vdi
*及びvqi
*のリップル成分を除去するためにフィードバック成分のみに対してローパスフィルタ処理を施す。
これにより、電流フィードバック制御に起因するd軸及びq軸電圧指令値vdi
*及びvqi
*のリップル成分を過不足なく除去しやすくなるので、電圧位相指令値の初期値を精度良く求めることができる。したがって、電動機9の制御が電流ベクトル制御から電圧位相制御へ切り替えられた際に生じ得る電動機9のトルク変動を低減することができる。
図6は、本実施形態における電動機9の制御方法に関する処理手順例を示すフローチャートである。本実施形態の処理手順については、所定の演算周期により繰返し行われる。
ステップS1において制御装置100は、電動機9の作動状態を検出する。例えば、制御装置100は、トルク指令値T*、d軸電流検出値id、q軸電流検出値iq、回転速度検出値N、及びバッテリ電圧検出値Vdcなどの各パラメータを取得する。
ステップS2において制御装置100は、少なくとも電流ベクトル制御及び電圧位相制御の中から、取得した各パラメータの数値に基づいて、電動機9に適用すべき制御を選択する。そして制御装置100は、選択した制御を示す識別子を制御モードフラグCNT_FLGに設定する。
一例として、制御装置100は、トルク指令値T*又はd軸電流検出値idが所定の閾値以下である場合には、電流ベクトル制御を選択する。そして制御装置100は、電流ベクトル制御を選択した状態においてトルク指令値T*又はd軸電流検出値idが所定の閾値を上回る場合に、電圧位相制御を選択する。さらに上記の選択条件に代えて又は加え、制御装置100は、q軸電流検出値iq及び回転速度検出値Nに基づいて、電動機9に適用すべき制御を選択するようにしてもよい。
ステップS3において制御装置100は、制御モードフラグCNT_FLGに設定された制御が電流ベクトル制御であるか電圧位相制御であるかを判断する。
ステップS4において電流ベクトル制御部1は、制御モードフラグCNT_FLGが電流ベクトル制御を示す場合には、電動機9のトルク指令値T*に基づきフィードフォワード補償値としてd軸及びq軸の非干渉電圧値vd_dcpl
*及びvq_dcpl
*を演算する。
ステップS5において電流ベクトル制御部1は、トルク指令値T*に基づいて電動機9への供給電流の電流偏差を求め、その電流偏差に基づきフィードバック指令値としてd軸及びq軸の電流FB電圧指令値vdi_fb
*及びvqi_fb
*を演算する。
ステップS6において電流ベクトル制御部1は、d軸及びq軸の電流FB電圧指令値vdi_fb
*及びvqi_fb
*に対してそれぞれ非干渉電圧値vd_dcpl
*及びvq_dcpl
*を加算することで、電流ベクトル制御のd軸及びq軸電圧指令値vdi
*及びvqi
*を出力する。
ステップS7において制御装置100は、d軸及びq軸電圧指令値vdi
*及びvqi
*を三相電圧指令値vu
*、vv
*及びvw
*に変換する。そしてインバータ6は、三相電圧指令値vu
*、vv
*及びvw
*に基づき電動機9に三相交流電圧を供給して、電動機9の制御方法についての一連の処理手順を終了する。
また、ステップS4で電動機9の制御が電圧位相制御に切り替えられた場合には、制御装置100は、ステップS8の処理に進む。
ステップS8において制御装置100は、フィードフォワード補償値と、ローパスフィルタ処理後のフィードバック指令値とを用いて、電圧位相指令値の初期値αflt
*を演算する。例えば、図3に示したように、初期値演算部13は、d軸及びq軸の電流FB電圧指令値vdi_fb
*及びvqi_fb
*に対してのみローパスフィルタ処理を施すことにより、電圧位相指令値の初期値αflt
*を算出する。
ステップS9において制御装置100は、電圧位相指令値の初期値αflt
*に基づいて電圧位相制御の状態変数を初期化する。例えば、制御装置100は、図4に示したPI制御器205の積分値(1/s)に対して、初期値αflt
*から電圧位相FF値αff
*を減じた値を設定する。電圧位相FF値αff
*は、トルク指令値T*に基づいて算出された所定の電圧位相指令値である。
ステップS10において電圧位相制御部2は、電圧位相指令値α*に対するフィードバック制御を実行することにより、電圧位相制御のd軸及びq軸電圧指令値vdv
*及びvqv
*を出力する。そして制御装置100は、ステップS7の処理に進み、ステップS7の処理を実行した後に、電動機9の制御方法を終了する。
本発明の本実施形態によれば、電動機9の制御方法における制御装置100は、電動機9に供給される電力を制御するための電流ベクトル制御及び電圧位相制御のうちのいずれか一つの制御を電動機9の作動状態に応じて実行する。そして制御装置100は、ステップS4乃至S6のように、電動機9のトルク指令値T*に基づいて、フィードバック指令値及びフィードフォワード補償値を演算することにより、電流ベクトル制御の電圧指令値vdi
*及びvqi
*を出力する。
上記のフィードバック指令値は、電動機9への供給電流の偏差を小さくする電動機9の電圧値を示すパラメータであり、例えば、d軸及びq軸の電流FB電圧指令値vqi_fb
*及びvqi_fb
*が挙げられる。また、フィードフォワード補償値は、フィードバック指令値を補償するパラメータであり、d軸及びq軸の非干渉電圧値vd_dcpl
*及びvq_dcpl
*や、駆動軸のねじり振動補償値などが挙げられる。
そして制御装置100は、ステップS9のように、電動機9の制御を電流ベクトル制御から電圧位相制御へ切り替える場合には、電流ベクトル制御の演算値に基づいて電圧位相制御を初期化する。制御装置100は、ステップS10のように、トルク指令値T*に基づいて、所定の電圧位相指令値α*に対するフィードバック制御を実行することにより、電圧位相制御の電圧指令値vdv
*及びvqv
*を出力する。
さらに制御装置100は、ステップS8のように、フィードバック指令値に対してフィードバック指令値の低周波成分を通過させるフィルタ処理を施す。そして制御装置100は、フィードフォワード補償値及びフィルタ処理後のフィードバック指令値を用いて、電圧位相指令値の初期値αflt
*を演算する。
このように構成することにより、電動機9の制御を電圧位相制御に切り替える際に生じ得る電動機9のトルク変動を抑制することができる。
詳細には、本実施形態によれば、フィードバック指令値に対してフィルタ処理を施すことにより、電流フィードバック制御に起因する電圧指令値vdi
*及びvqi
*のリップル成分を的確に除去することができる。このため、電圧位相制御の初期値を算出するにあたり、リップ成分の影響を軽減することができるので、電動機9の制御が電流ベクトル制御から電圧位相制御へ切り替えられた際に電圧位相制御の初期値を精度良く求めることができる。
これに加え、例えば、電動機9の回転速度が緩やかに上昇している状況においては、切替え直前における電圧指令値の基本波成分が、切替え直後の電圧位相指令値と一致しやすくなるので、切替えの際に電動機9のトルクが変動したり、電動機9のトルクに段差が生じたりすることなく、電動機9の制御を電圧位相制御に切り替えることができる。
そして、電動機9のトルクが急峻に変化している状況においては、電動機9の制御が電圧位相制御へ切り替えられた場合であっても、フィードバック指令値のみにフィルタ処理が施されるため、フィルタ処理による電動機9の制御遅れを小さくすることができる。
すなわち、本実施形態によれば、電動機9の制御が電圧位相制御に切り替えられたときに、電流フィードバック制御に起因する電動機9のトルク変動を低減することができるとともに、フィルタ処理に起因する電動機9の制御遅れの影響を軽減することができる。
また、本実施形態によれば、制御装置100は、図4で述べたように、電圧位相指令値の初期値αflt
*に基づいて、電圧位相制御部2におけるフィードバック制御を構成するPI制御器205の積分値を更新する。
これにより、電動機9の制御が電流ベクトル制御から電圧位相制御へ切り替わる際に、電流ベクトル制御の電圧指令値の電圧位相成分と、電圧位相制御の電圧位相指令値とのズレを低減することができる。したがって、電圧位相制御への切替えの際に生じる電動機9のトルク変動を抑制することができる。
さらに、本実施形態によれば、電圧位相制御部2は、図4に示したように、電圧位相指令値α*に対して電動機9に生じるトルクをフィードバックするフィードバック制御を実行する。そして初期値演算部13は、電圧位相制御部2で演算される電圧位相指令値α*のフィードフォワード成分としての電圧位相FF値αff
*を、電圧位相指令値の初期値αflt
*から減じたリセット値をPI制御器205の積分値に設定する。
このように電圧位相制御部2のフィードフォワード成分が考慮されるので、電圧位相制御部2において算出される電圧位相指令値α*と、電流ベクトル制御部1の演算値から得られる電圧位相指令値の初期値αflt
*との差分をさらに低減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
Claims (4)
- 電動機に供給される電力を制御するための電流ベクトル制御及び電圧位相制御のうち、いずれか一つの制御を前記電動機の作動状態に応じて実行する制御方法であって、
前記電動機のトルク指令値に基づいて、前記電動機への供給電流の偏差を小さくする電圧値を示すフィードバック指令値及び当該指令値を補償するフィードフォワード補償値を演算することにより、前記電流ベクトル制御の電圧指令値を出力する電流制御ステップと、
前記電動機の制御を前記電流ベクトル制御から前記電圧位相制御へ切り替える場合には、前記電流ベクトル制御の演算値に基づいて前記電圧位相制御を初期化する切替制御ステップと、
前記電動機のトルク指令値に基づいて、所定の電圧位相指令値に対するフィードバック制御を実行することにより、前記電圧位相制御の電圧指令値を出力する電圧位相制御ステップと、を含み、
前記切替制御ステップは、前記フィードバック指令値に対して当該指令値の低周波成分を通過させるフィルタ処理を施し、前記フィードフォワード補償値及び前記フィルタ処理後のフィードバック指令値を用いて前記電圧位相指令値の初期値を演算する、
電動機の制御方法。 - 請求項1に記載の電動機の制御方法であって、
前記切替制御ステップは、前記初期値に基づいて前記フィードバック制御の積分値を更新する、
電動機の制御方法。 - 請求項2に記載の電動機の制御方法であって、
前記フィードバック制御は、前記電圧位相指令値に対して前記電動機に生じるトルクをフィードバックする制御であり、
前記切替制御ステップは、前記初期値から前記電圧位相指令値のフィードフォワード成分を減じた値を前記積分値に設定する、
電動機の制御方法。 - 電動機に供給される電力を制御するための電流ベクトル制御及び電圧位相制御のうち、いずれか一つの制御を電動機の作動状態に応じて実行する制御装置であって、
前記電動機の制御に基づいて前記電動機に交流電力を供給するインバータと、
前記インバータから前記電動機に供給される電流を検出するセンサと、
前記電動機のトルク指令値に基づいて、前記電動機への供給電流の偏差を小さくする電圧値を示すフィードバック指令値及び当該指令値を補償するフィードフォワード補償値を演算することにより、前記電流ベクトル制御を実行するコントローラと、
前記フィードバック指令値に対して当該指令値の低周波成分を通過させるフィルタ処理を施すフィルタと、を含み、
前記コントローラは、前記電動機の制御を前記電圧位相制御に切り替える場合には、前記フィードフォワード補償値と前記フィルタの出力に基づいて、前記電圧位相制御を初期化する、
電動機の制御装置。
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