WO2017169602A1 - カチオン変性シリカ原料分散液 - Google Patents
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Abstract
【課題】カチオン変性シリカ分散液であって、時間経過による粘度の変化が抑制されるカチオン変性シリカ分散液を提供することを目的とし、ひいては、それを原料として使った製品(例えば、研磨剤)の性能のバラツキを抑制することを目的とする。 【解決手段】カチオン変性シリカ原料分散液であって、pH7.0未満に調整して保管されている、カチオン変性シリカ原料分散液。
Description
本発明は、カチオン変性シリカ原料分散液に関する。
近年、LSI(Large Scale Integration)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(chemical mechanical polishing;CMP)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線(ダマシン配線)形成において頻繁に利用される技術である。
CMPにおける研磨剤の砥粒の原料としては、シリカゾルが好適に使用されている。
しかし、シリカゾルは、酸性条件下で、シリカ同士が凝集してしまい、安定性に劣るといった問題が存在している。
その問題を解決しようと、シリカに対してカチオン変性を行う技術が存在する(特許文献1)。
上記のような、カチオン変性を行って得られたシリカゾルは、変性時にシランカップリング剤の凝集を防ぐため、pHが弱アルカリ領域に調整され、最終的な仕上がりのpHも弱アルカリ領域となっており、市販品もそのように調整されている。
しかし、その状態でシリカゾルを保管すると、時間経過による粘度の変化が生じることが分かった。粘度の変化が生じると、それを原料として使った製品(例えば、研磨剤)には性能のバラツキがあることが分かった。
よって、本発明は、カチオン変性シリカ分散液であって、時間経過による粘度の変化が抑制されるカチオン変性シリカ分散液を提供することを目的とし、ひいては、それを原料として使った製品(例えば、研磨剤)の性能のバラツキを抑制することを目的とする。
本発明者らは、その原因を追求すべく鋭意研究を積み重ねた。その過程で、アルカリ環境下でカチオン変性シリカを保管した場合、シリカゾルの粘度の変化が引き起こされていることを知見した。そして、カチオン変性シリカゾルの保管期間の長短によって、粘度に違いが生まれ、その結果が、研磨特性に影響を及ぼしているものと考えた。そして、研磨剤の粘度を、粘度調整剤で最終的に調整しても、研磨特性の影響を避けることはできないことも知見した。
そこで、本発明者らは、粘度に違いが出ることを抑制する方法について鋭意検討を行った。その結果、カチオン変性シリカゾル表面からシランカップリング剤が脱離しない酸性領域に調整して保管することで、粘度の変化を抑制できることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、カチオン変性シリカ原料分散液であって、pH7.0未満に調整して保管されている、カチオン変性シリカ原料分散液によって上記課題が解決される。
本発明によれば、カチオン変性シリカ分散液であって、時間経過による粘度の変化が抑制されるカチオン変性シリカ分散液を提供することができ、ひいては、それを原料として使った製品(例えば、研磨剤)の性能のバラツキを抑制することができる。
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
(カチオン変性シリカ原料分散液)
本発明は、カチオン変性シリカ原料分散液であって、pH7.0未満に調整して保管されている、カチオン変性シリカ原料分散液である。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明は、研磨剤の調製に用いられるカチオン変性シリカ原料分散液であって、pH7.0未満に調整して保管されている、カチオン変性シリカ原料分散液である。本発明を別の観点で考えれば、カチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整されている原料分散液である。そして、当該原料分散液をpH7.0未満に調整しておくことによって、時間経過による粘度の変化が抑制されるカチオン変性シリカ分散液を提供することができ、ひいては、それを原料として使った製品(例えば、研磨剤)の性能のバラツキを抑制することができる。
本発明は、カチオン変性シリカ原料分散液であって、pH7.0未満に調整して保管されている、カチオン変性シリカ原料分散液である。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明は、研磨剤の調製に用いられるカチオン変性シリカ原料分散液であって、pH7.0未満に調整して保管されている、カチオン変性シリカ原料分散液である。本発明を別の観点で考えれば、カチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整されている原料分散液である。そして、当該原料分散液をpH7.0未満に調整しておくことによって、時間経過による粘度の変化が抑制されるカチオン変性シリカ分散液を提供することができ、ひいては、それを原料として使った製品(例えば、研磨剤)の性能のバラツキを抑制することができる。
本発明の好ましい実施形態によれば、このカチオン変性シリカ原料分散液は、砥粒の原料となる、カチオン変性されたシリカの分散液を意味する。本発明の好ましい実施形態によれば、このカチオン変性シリカ原料分散液は、塗料用ビヒクル、バインダー、ナノパウダー、紙、繊維、鉄鋼等の分野で物性改良剤、無機質バインダーの原料となる、カチオン変性されたシリカの分散液を意味する。ここでカチオン変性とは、シリカ粒子の表面にカチオン性基(例えば、アミノ基または4級カチオン基)が結合した状態を意味する。
(シリカ)
シリカとしては、研磨傷の発生を抑制する観点から、コロイダルシリカを用いることが好ましい。
シリカとしては、研磨傷の発生を抑制する観点から、コロイダルシリカを用いることが好ましい。
コロイダルシリカは、例えば、ゾルゲル法によって製造されたものでありうる。ゾルゲル法によって製造されたコロイダルシリカは、半導体中に拡散性のある金属不純物や塩化物イオン等の腐食性イオンの含有量が少ないため好ましい。ゾルゲル法によるコロイダルシリカの製造は、従来公知の手法を用いて行うことができ、具体的には、加水分解可能なケイ素化合物(例えば、アルコキシシランまたはその誘導体)を原料とし、加水分解・縮合反応を行うことにより、コロイダルシリカを得ることができる。このケイ素化合物としては、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
(カチオン変性)
本発明によれば、シリカは、カチオン変性されている。そして、本発明の好ましい実施形態によれば、カチオン変性が、アミノ基修飾によるものである。かかる実施形態によれば、本発明の効果をより高めることができる。
本発明によれば、シリカは、カチオン変性されている。そして、本発明の好ましい実施形態によれば、カチオン変性が、アミノ基修飾によるものである。かかる実施形態によれば、本発明の効果をより高めることができる。
ここで、シリカをカチオン変性するには、シリカに、カチオン性基を有するシランカップリング剤を加えて、所要温度で、所要時間反応させればよい。
この際、用いられるシランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、γ-トリエトキシシリル-N-(α,γ-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランの塩酸塩、オクタデシルジメチル-(γ-トリメトキシシリルプロピル)-アンモニウムクロライド等が挙げられる。なかでも、コロイダルシリカとの反応性が良好であることから、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。なお、本発明において、シランカップリング剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
なお、シランカップリング剤は、親水性有機溶媒で希釈して、シリカに加えることが好ましい。親水性有機溶媒で希釈することによって、凝集物の生成を抑制することができる。
シランカップリング剤を親水性有機溶媒で希釈する場合、シランカップリング剤1質量部当り、5~50質量部、好ましくは10~20質量部の親水性有機溶媒に希釈すればよい。
親水性有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールなどを例示することができる。
シランカップリング剤の使用量は特に限定されないが、シリカに対して、0.01~3.0質量%、好ましくは0.1~1.0質量%程度である。
シランカップリング剤でシリカをカチオン変性する際の処理温度は特に限定されず、室温(例えば、25℃)から、シリカを分散する分散媒の沸点程度の温度であればよく、具体的には0~100℃、好ましくは室温(例えば、25℃)~90℃程度とされる。また、時間は、0.2~48時間程度、好ましくは2~12時間程度とされる。このような加熱による処理は、還流させながら行うことが好ましい。
(分散液)
上記のようにして得られたカチオン変性シリカの分散液において、当該カチオン変性シリカの平均一次粒子径、平均二次粒子径、および粒度分布や、当該分散液における含有量等については、公知の条件を適宜参照して適用することができる。
上記のようにして得られたカチオン変性シリカの分散液において、当該カチオン変性シリカの平均一次粒子径、平均二次粒子径、および粒度分布や、当該分散液における含有量等については、公知の条件を適宜参照して適用することができる。
また、カチオン変性シリカ原料分散液に用いられる分散媒は、特に制限されず、有機溶媒、水等が用いられる。水としては、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水が好ましい。
なお、本発明において、pH7.0未満に調整して保管される対象であるカチオン変性シリカ原料分散液は、市販品があれば、それを購入して準備してもよい。
(pH)
本発明のカチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整して保管されている。本発明の実施形態において、カチオン変性シリカ原料分散液の保管時のpHは7.0未満であれば特に制限されないが、粘度変化抑制の効果を効率よく発揮させる観点から、6.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましい。
本発明のカチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整して保管されている。本発明の実施形態において、カチオン変性シリカ原料分散液の保管時のpHは7.0未満であれば特に制限されないが、粘度変化抑制の効果を効率よく発揮させる観点から、6.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましい。
上記のように、本発明の好ましい実施形態によれば、pH4.0以下に調整されている。かかる実施形態によれば、粘度変化抑制の効果をより効率よく発揮することができる。なお、pHの下限としても特に制限はされないが、容器腐食や保管安全性の観点で、1.0以上、あるいは、1.1以上であることが好ましく、2.0超も好ましい。なお、本発明におけるpHの値は、実施例に記載の条件で測定した値を言うものとする。
本発明のカチオン変性シリカ原料分散液のpHを調整するためには、pH調整剤が用いられる。
pH調整剤の具体例としては、無機化合物および有機化合物のいずれであってもよいが、例えば、硫酸、硝酸、硫酸ジメチル、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸およびリン酸等の無機酸;クエン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、3-ヒドロキシイソ酪酸および乳酸などのカルボン酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸等の有機硫酸等の有機酸等が挙げられる。また、上記の酸で2価以上の酸(たとえば、硫酸、炭酸、リン酸、シュウ酸など)の場合、プロトン(H+)が1つ以上放出できるようであれば、塩の状態でもよい。具体的には、例えば、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウム(カウンター陽イオンの種類は基本的に何でもよいが、弱塩基の陽イオン(アンモニウム、トリエタノールアミンなど)が好ましい)。
中でも、研磨剤に適用した際、被研磨面の溶解を促進しないため、硫酸、硝酸、硫酸ジメチル、リン酸が好ましく、被研磨面の腐食の観点から、硝酸、リン酸がより好ましい。なお、pHを7.0未満に調整する際、必要に応じて、塩基性のpH調整剤(例えば、アンモニア等)を併用してもよい。
(保管、保管方法)
本発明のカチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整して保管されている。ここで、本発明の好ましい実施形態によれば、カチオン変性シリカ原料分散液の保管とは、撹拌等の操作を行わずに、静置または放置(輸送を含む)され、製品(例えば、研磨剤)の製造(調製)に用いられるまでの状態を言う。
本発明のカチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整して保管されている。ここで、本発明の好ましい実施形態によれば、カチオン変性シリカ原料分散液の保管とは、撹拌等の操作を行わずに、静置または放置(輸送を含む)され、製品(例えば、研磨剤)の製造(調製)に用いられるまでの状態を言う。
なお、本発明における「pH7.0未満に調整して保管されている」の概念には、カチオン変性シリカ原料分散液の物性等を測定するためにpH7.0未満に調整された状態は含まれない。その理由は、物性等を測定するためにpH7.0未満に調整されたカチオン変性シリカ原料分散液は、研磨剤の調製に用いられるものではなく、単に、物性等の測定のために供される試料に過ぎないからである。
本発明において、通常、保管の始期は、カチオン変性シリカ原料分散液が作製された後、撹拌等の操作を行わずに、静置または放置されることが開始された点であり、保管の終期は、本発明の好ましい実施形態によれば、製品(例えば、研磨剤)の製造(調製)に供された点である。
保管条件として、好ましい環境は、常圧(大気圧)である。また、温度は、好ましくは5~80℃であり、より好ましくは15~50℃であり、さらに好ましくは20~43℃である。また、相対湿度は、好ましくは15~70%RHであり、より好ましくは20~55%RHであり、さらに好ましく、25~45%RHである。
保管期間としても特に制限されないが、例えば、1時間~360日程度、1日~180日程度、2日~30日程度、あるいは、3日~7日程度である。
なお、本発明において、カチオン変性シリカ原料分散液は、作製された後、遅滞なく、pH7.0未満に調整しておくことが好ましいが、前記始期から前記終期までの全期間に亘ってpH7.0未満に調整しておかなければならないものではない。本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、pHが弱アルカリ領域(通常、pH8.0~9.0程度、あるいは、pH8.0~10.0程度)に調整されているカチオン変性シリカ原料分散液を準備(例えば、市販品の購入)した後は、遅滞なく、pH7.0未満に調整し、製品(例えば、研磨剤)の製造(調製)に供されるまで静置または放置しておくことも「pH7.0未満に調整して保管されている」の概念の範疇である。
ただし、カチオン変性シリカ原料分散液は、作製された後、経時的に粘度の変化が進むものと考えられるため、なるべく早くpH7.0未満に調整しておくことが好ましい。
このように、本発明においては、カチオン変性シリカ原料分散液の保管方法であって、pH7.0未満に調整して保管することを有する、カチオン変性シリカ原料分散液の保管方法も提供される。
(研磨剤の製造方法)
本発明においては、上記のpH7.0未満に調整して保管されたカチオン変性シリカ原料分散液を、研磨剤の原料として準備する、準備工程を有する、研磨剤の製造方法が提供される。
本発明においては、上記のpH7.0未満に調整して保管されたカチオン変性シリカ原料分散液を、研磨剤の原料として準備する、準備工程を有する、研磨剤の製造方法が提供される。
かかる研磨剤の製造方法は、特に制限されないが、上記のように、pH7.0未満に調整して保管されたカチオン変性シリカ原料分散液を、研磨剤の原料として準備し、カチオン変性シリカと、必要に応じて他の成分とを、分散媒中で攪拌混合することによって得ることができる。かかる分散媒としては、上記で挙げたものが好ましい。本発明の好ましい実施形態によれば、前記研磨剤は、カチオン変性シリカの合成に用いられた原料由来成分およびpH7.0未満にするために用いられたpH調整剤以外の成分を含みうる。よって、本発明においては、カチオン変性シリカの合成に用いられた原料由来成分およびpH7.0未満にするために用いられたpH調整剤以外の成分を含む製品(例えば、研磨剤)が提供される。
なお、他の成分としては、研磨用途に応じて決められ、特に制限されないが、pH調整剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤、水溶性高分子、防カビ剤等の成分が挙げられる。ただし、通常、研磨剤は、カチオン変性シリカ原料分散液に、pH調整剤を添加することによって、当該カチオン変性シリカ原料分散液とは異なるpHに調整されうる。また、例えば、下記で説明する研磨対象物として、タングステンを含む材料を研磨する場合、研磨剤は、カチオン変性シリカ原料分散液と、酸化剤、防食剤を混合することによって調製されうる。
各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10~40℃が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
なお、本発明の好ましい実施形態によれば、前記準備工程は、カチオン変性シリカ原料分散液の粘度の変化率を確認する、確認工程を有することが好ましい。かような工程を行うことによって、性能のバラツキを抑制することができるカチオン変性シリカ原料分散液であることを確認することができ、ユーザに対して更なる信頼性を与えることができる。
かかる変化率とは、前記保管の期間における任意の2点の粘度の変化率であって、相対的に高い粘度の数値を、相対的に低い粘度の数値で除した値(仮に、両者の数値が同じであれば、1.00となる)を言う。
例えば、カチオン変性シリカ原料分散液の市販品(pH:上記の弱アルカリ領域)を購入した後、好ましくは遅滞なく、pH7.0未満に調整して粘度の測定を行い、また、研磨剤の原料として供する前、好ましくは直前に、再度、粘度の測定を行い、相対的に高い粘度の数値を相対的に低い粘度数値で除すことで、変化率を算出することができる。
本発明の好ましい実施形態において、前記確認工程では、かかる変化率が、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.08以下、さらに好ましくは1.06以下になっていることを確認する。下限としては特に制限されないが、本発明の技術的効果が十分に発揮された場合における、両者の数値が同じになったときの「1.00」である。このように、確認工程を行った後、保管されたカチオン変性シリカ原料分散液を、研磨剤の調整に供することによって、研磨性能のバラツキを有意に低減することができる。
(研磨方法、基板の製造方法)
本発明においては、上記の研磨剤の製造方法によって研磨剤を得、それを使って研磨対象物を研磨する、研磨方法が提供される。また、本発明においては、研磨方法を有する、基板の製造方法も提供される。本発明の研磨方法を用いて、研磨前の基板を研磨することによって、性能が安定した基板を提供することができる。
本発明においては、上記の研磨剤の製造方法によって研磨剤を得、それを使って研磨対象物を研磨する、研磨方法が提供される。また、本発明においては、研磨方法を有する、基板の製造方法も提供される。本発明の研磨方法を用いて、研磨前の基板を研磨することによって、性能が安定した基板を提供することができる。
(研磨対象物)
研磨対象物としては、特に制限されず、含ケイ素材料や、各種金属材料等などが挙げられる。
研磨対象物としては、特に制限されず、含ケイ素材料や、各種金属材料等などが挙げられる。
含ケイ素材料としては、酸化ケイ素膜、BD(ブラックダイヤモンド:SiOCH)、FSG(フルオロシリケートグラス)、HSQ(水素シルセスキオキサン)、CYCLOTENE(ベンゾシクロブテン樹脂)、SiLK(水素化シルセスキオキサン)、MSQ(Methyl silsesquioxane)などのケイ素-酸素結合を有する研磨対象物;窒化ケイ素膜、SiCN(炭窒化ケイ素)などのケイ素-窒素結合を有する研磨対象物;ポリシリコン、アモルファスシリコン、単結晶シリコン、n型ドープ単結晶シリコン、p型ドープ単結晶シリコンなどのケイ素-ケイ素結合を有する研磨対象物などが挙げられ、各種金属材料としては、銅、アルミニウム、ハフニウム、コバルト、ニッケル、チタン、タングステン等などが挙げられる。
研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータ等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
前記研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨剤が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転速度は、10~500rpmが好ましく、キャリア回転速度は、10~500rpmが好ましく、研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.1~10psiが好ましい。研磨パッドに研磨剤を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明の研磨剤で覆われていることが好ましい。
(粘度変化抑制方法)
本発明においては、カチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整して保管されることによって、粘度の変化が抑制されている。
本発明においては、カチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整して保管されることによって、粘度の変化が抑制されている。
よって、本発明においては、カチオン変性シリカ原料分散液の粘度の変化を抑制する方法であって、前記カチオン変性シリカ原料分散液のpHを7.0未満に調整して保管することを有する方法が提供される。
かかる粘度変化抑制方法において、保管、pH、その他の説明については、上記の説明が適用できるため、ここではその説明は省略する。
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40~50%RHの条件下で行われた。
1.試験試料
・市販品のアミノ基修飾シリカの分散液(pH=9.28)(分散媒:水)(以下、市販分散液)と、
・pH調整剤としてリン酸(関東化学株式会社製、特級、95%)と、
を準備した。
・市販品のアミノ基修飾シリカの分散液(pH=9.28)(分散媒:水)(以下、市販分散液)と、
・pH調整剤としてリン酸(関東化学株式会社製、特級、95%)と、
を準備した。
pHの測定は、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(DS-70、株式会社堀場製作所製)を備えた卓上pHメーター(株式会社堀場製作所製 LAQUAF-73)を用いて測定した(液温:25℃)。
なお、上記の市販分散液は、コロイダルシリカの分散液に、メタノールおよび3-アミノプロピルトリメトキシシランの混合液を滴下した後、還流によりメタノールを除去することで得られたものである。
2.調製方法
上記市販分散液を1000mL量り取り、マグネティックスターラーにて攪拌しながらリン酸を用いて、pH1.22(実施例)、pH1.98(実施例)、pH3.75(実施例)、pH7.64(比較例)とした4点の試料を準備した。
上記市販分散液を1000mL量り取り、マグネティックスターラーにて攪拌しながらリン酸を用いて、pH1.22(実施例)、pH1.98(実施例)、pH3.75(実施例)、pH7.64(比較例)とした4点の試料を準備した。
3.保管(高温保管)
上記項目2.にて調製した試料4点およびリン酸を添加していない市販分散液(pH=9.28)を各300mLずつポリプロピレン容器に量り取り(試料点数:5点)、60℃、80℃に設定された恒温乾燥機(DK-600、ヤマト科学株式会社製)にて7日間保管した。なお、60℃および80℃による保管は、加速試験であり、常温(25℃)に換算すると、それぞれ、約80日、約300日に相当しうる。
上記項目2.にて調製した試料4点およびリン酸を添加していない市販分散液(pH=9.28)を各300mLずつポリプロピレン容器に量り取り(試料点数:5点)、60℃、80℃に設定された恒温乾燥機(DK-600、ヤマト科学株式会社製)にて7日間保管した。なお、60℃および80℃による保管は、加速試験であり、常温(25℃)に換算すると、それぞれ、約80日、約300日に相当しうる。
4.粘度の測定
粘度は、粘度計(キャノンフェンスケ、柴田科学株式会社製)を用いて測定し、次式に従い算出した(粘度の測定は25℃で行った)。
粘度は、粘度計(キャノンフェンスケ、柴田科学株式会社製)を用いて測定し、次式に従い算出した(粘度の測定は25℃で行った)。
粘度=比重×流出時間(秒)
表1中の「25℃ 0日」における粘度の数値は、上記5点を調製して(各300mLずつポリプロピレン容器に量り取って)遅滞なく、測定したものであり、表1中の「60℃ 7日」における粘度の数値は、60℃で7日間保管した後、25℃の環境下にて静置し、25℃に戻したものを測定したものであり、表1中の「80℃ 7日」における粘度の数値は、80℃で7日間保管した後、25℃の環境下にて静置し、25℃に戻したものを測定したものである。
表1中の「25℃ 0日」における粘度の数値は、上記5点を調製して(各300mLずつポリプロピレン容器に量り取って)遅滞なく、測定したものであり、表1中の「60℃ 7日」における粘度の数値は、60℃で7日間保管した後、25℃の環境下にて静置し、25℃に戻したものを測定したものであり、表1中の「80℃ 7日」における粘度の数値は、80℃で7日間保管した後、25℃の環境下にて静置し、25℃に戻したものを測定したものである。
結果を、表1に示す。
<考察>
表1に示されるように、実施例のカチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整して保管されているため、粘度の変化が抑制されている。よって、かようなカチオン変性シリカ原料分散液を、製品(例えば、研磨剤)の製造(調製)に用いた場合、研磨性能の影響を有意に低減することができることが示唆される。
表1に示されるように、実施例のカチオン変性シリカ原料分散液は、pH7.0未満に調整して保管されているため、粘度の変化が抑制されている。よって、かようなカチオン変性シリカ原料分散液を、製品(例えば、研磨剤)の製造(調製)に用いた場合、研磨性能の影響を有意に低減することができることが示唆される。
他方で、pHが7.0以上で保管された、比較例のカチオン変性シリカ原料分散液は、時間の経過とともに、粘度が変化してしまっている。よって、かようなカチオン変性シリカ原料分散液を、製品(例えば、研磨剤)の製造(調製)に用いた場合、研磨性能の影響を与えてしまうことが示唆される。
本出願は、2016年3月30日に出願された日本国特許出願第2016-067149号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
Claims (9)
- カチオン変性シリカ原料分散液であって、
pH7.0未満に調整して保管されている、カチオン変性シリカ原料分散液。 - pH4.0以下に調整されている、請求項1に記載のカチオン変性シリカ原料分散液。
- カチオン変性が、アミノ基修飾によるものである、請求項1または2に記載のカチオン変性シリカ原料分散液。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載のカチオン変性シリカ原料分散液を、研磨剤の原料として準備する、準備工程を有する、研磨剤の製造方法。
- 前記準備工程が、前記カチオン変性シリカ原料分散液の粘度の変化率を確認する、確認工程を有する、請求項4に記載の製造方法。
- カチオン変性シリカ原料分散液の保管方法であって、
pH7.0未満に調整して保管することを有する、カチオン変性シリカ原料分散液の保管方法。 - カチオン変性シリカ原料分散液の粘度の変化を抑制する方法であって、
前記カチオン変性シリカ原料分散液のpHを7.0未満に調整して保管することを有する、方法。 - 請求項4に記載の製造方法によって研磨剤を得;
前記研磨剤を使って、研磨対象物を研磨することを有する、研磨方法。 - 請求項8に記載の研磨方法を有する、基板の製造方法。
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