WO2017110881A1 - 医薬 - Google Patents

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    • A61P9/04Inotropic agents, i.e. stimulants of cardiac contraction; Drugs for heart failure

Abstract

本発明は、心不全を予防または治療するための医薬を提供する。より具体的には、本発明は、心不全の予防または治療するための、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-メトキシフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-5-(2-フルオロフェニル)-2,7,7-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、およびそれらの塩からなる群から選ばれる化合物を含有してなる、医薬を提供する。

Description

医薬
 本発明は、心不全を予防または治療するための医薬に関する。
[発明の背景]
 心不全とは、心筋細胞の機能不全によって心拍出量が低下した病態、および、心拍出量の維持機構による身体の負担から生じる病態を特徴とする疾患である。心筋細胞の機能は、収縮と弛緩であり、収縮および弛緩にはCa2+イオンが必要である。心筋細胞の収縮は、活動電位が横行小管に伝搬し、横行小管膜が脱分極する段階、横行小管の電位依存性L型Ca2+チャンネルからCa2+イオンが細胞内に流入する段階、および、流入したCa2+イオンが筋小胞体のCa2+放出チャンネル(リアノジン受容体、またはRYR)に結合し、筋小胞体から細胞質にCa2+イオンが放出される段階、細胞内に放出されたCa2+イオンがトロポニンCに結合して心筋細胞の収縮を誘導する段階により生じる。さらに心筋細胞の弛緩はCa2+放出ポンプ(SERCA)を介して筋小胞体にCa2+イオンが取り込まれ、細胞質内Ca2+イオンが低下し、トロポニンCからCa2+イオンから乖離することにより生じる。従って、上記の何らかの段階に異常が生じてCa2+イオンが細胞質に放出されないと、心筋細胞は機能不全をおこし、心不全を発症する。
 心不全治療薬としては、短期的な症状の改善や血行動態の安定化のために、β遮断薬、抗アルドステロン薬、利尿薬、ジキタリス等の強心薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII拮抗薬等が臨床現場では使用されている。しかしながらこれらの薬剤は、再入院率や長期生命予後を改善するには不十分であり、最近では、再入院率や長期生命予後を改善する新たな心不全治療薬の提供が望まれている。
 Ca2+イオン(以下、単にカルシウムともいう)は、神経および筋肉に加え内分泌細胞や外分泌細胞などのような様々な細胞の機能を維持・調節するのに本質的な役割を果たしている。このため、血中カルシウム濃度は厳密に狭い範囲で維持されている。副甲状腺ホルモン(PTH)は、この血中カルシウム濃度を維持するのに中心的な役割を果たしている。それ故、副甲状腺からのPTHの分泌は血中カルシウム濃度の変化に敏感に応答し、それに伴って調節されなければならない。事実、血中カルシウム濃度が変化すると、それに応じて血中PTH濃度は急速に変化する。細胞外カルシウム濃度が副甲状腺細胞によって感知され、情報が細胞に伝達されるという機構の可能性はBrownらによって指摘されていた。1993年に、彼らはウシの副甲状腺からカルシウム感受性受容体(CaSR;以下、単にカルシウム受容体という)のクローニングと性質決定に成功した(Nature, 366,575-580(1993))。
 カルシウム受容体は、N末端が全長600アミノ酸に及び、他のGタンパク質共役受容体と同様の7回膜貫通領域を有する大きな末端細胞外領域と、C末端が200以下のアミノ酸からなる細胞内領域からできている。
 細胞外カルシウム濃度が増加すると、ホスホリパーゼ(PL)-Cが活性化され、イノシトール三リン酸(IP)が増加して細胞内カルシウム濃度が増加し、PTH分泌が抑制されると考えられている。細胞外カルシウム濃度が高い値で維持されると、細胞内カルシウム濃度はその後連続して増加するので、細胞の外側からのカルシウムの流入もまた促進されると考えられている。細胞外カルシウムの増加によりPL-AおよびDは活性化されるが、これらはカルシウム受容体を介して同時に活性化されるプロテインキナーゼ(PK)-Cなどを介している可能性がある。カルシウム受容体はまたPL-Aの活性化によりGiタンパクを介しまたはアラキドン酸産生を介しアデニリルシクラーゼを抑制し、細胞内サイクリックAMPを減少させる(Bone, 20, 303-309 (1997))。
 (5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド(以下、「化合物A」ともいう)、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-メトキシフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド(以下、「化合物B」ともいう)、および(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-5-(2-フルオロフェニル)-2,7,7-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド(以下、「化合物C」ともいう)は、カルシウム感受性受容体(CaSR)の活性調節に関わること、および、副甲状腺ホルモン(PTH)の調節に関わることが知られている(特許文献1および特許文献2)。また、非特許文献1には、化合物AがCaSRのアンタゴニストであることが開示されている(非特許文献1)。
 非特許文献2および3には、副甲状腺ホルモン治療により心機能が改善することが記載されているが、非特許文献4には、副甲状腺ホルモン治療により心機能が悪化することが記載されている。従って、副甲状腺ホルモン治療と心機能改善との関係は十分に解明されていない。
 また、非特許文献5には、大動脈結紮(TAC)モデルにおいてCaSR阻害剤であるCalhex231が心肥大を改善することが記載されているが、心機能低下後の効果までは解明されていない。非特許文献6にはCalhex231を投薬した結果、心臓に負荷を与えてからの投薬では心機能低下が改善しないことが示されている。さらに、非特許文献7には、CaSRアンタゴニストが虚血プレコンディショニングモデルにおいて心保護作用の無効化を引き起こすことが記載されている。従って、CaSR阻害による心機能低下改善や生存率改善との関係は十分に解明されていない。
WO2004/017908 特開2005-239611
Bioorganic & Midicinal Chemistry 19: 1881-1894, 2011 Cardiovascular research, 77: 722-731, 2008 Cardiovascular research, 93: 330-339, 2012 Experimental and molecular medicine 42, 61-68, 2010 Cell Physiol. Biochem., 36: 1597-1612, 2015 Cell Physiol. Biochem., 33: 557-568, 2014 Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol., 299: H1309-H1317, 2010
 本発明は、心不全を予防または治療するための医薬を提供する。
 本発明者らは、化合物A、化合物B、および化合物C、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる化合物が心不全を予防および/または治療することに有効であることを見出した。本発明は上記知見に基づいてなされた発明である。
 すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]心不全の予防または治療するための、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-メトキシフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-5-(2-フルオロフェニル)-2,7,7-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、およびそれらの塩からなる群から選ばれる化合物を含有してなる、医薬。
[2]心不全を治療するための、上記[1]記載の医薬。
[3]心不全が急性非代償性心不全である、上記[1]記載の医薬。
[1a]哺乳動物に対して(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-メトキシフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-5-(2-フルオロフェニル)-2,7,7-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、およびそれらの塩からなる群から選ばれる化合物を投与することを特徴とする、該哺乳動物における心不全の予防または治療方法。
[2a]心不全の治療方法である、上記[1a]記載の方法。
[3a]心不全が急性非代償性心不全である、上記[1a]記載の方法。
[1b]心不全の予防または治療するための、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-メトキシフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-5-(2-フルオロフェニル)-2,7,7-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、およびそれらの塩からなる群から選ばれる化合物。
[2b]心不全を治療するための、上記[1b]記載の化合物。
[3b]心不全が急性非代償性心不全である、上記[1b]記載の化合物。
[1c]心不全の予防または治療剤を製造するための、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-メトキシフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-5-(2-フルオロフェニル)-2,7,7-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、およびそれらの塩からなる群から選ばれる化合物の使用。
[2c]心不全を治療するための、上記[1c]記載の使用。
[3c]心不全が急性非代償性心不全である、上記[1c]記載の使用。
 本発明によれば、心不全を予防または治療することができる。
図1は、化合物A’またはビヒクルを投与した心不全モデル動物のカプランマイヤー曲線を示す。
 本明細書では、用語「対象」とは、ほ乳動物であり、例えば、ヒトである。本明細書では、「心不全の対象」とは、心不全を患っている対象を意味する。対象がヒトである場合、該対象は「患者」と呼ばれる。心不全を患っている対象がヒトである場合、該対象は「心不全患者」と呼ばれる。
 本明細書では、用語「薬学的に許容し得る塩」とは、生体に投与した場合に許容される酸付加塩または塩基付加塩を意味する。
 本明細書では、用語「心不全」とは、心臓による血液拍出量(以下、「心拍出量」という)が低下した状態および/または心拍出量の低下を抑えるための調節機構により生じる症状であり、十分な血液の循環量を保てない身体状態を意味する。本明細書では、用語「心不全の治療」とは、心拍出量が低下した状態および/または心拍出量の低下を抑えるための調節機構により生じる症状を改善することを意味する。心不全の処置の一つとして、短期的な症状の改善や血行動態の安定化を目的に、β遮断薬、抗アルドステロン薬などが使用されているが、本発明では、これらの薬剤なしに、駆出率の低下を抑制し、生存率を改善させることができる。従って、本発明では、心不全(すなわち、心拍出量の低下等)を予防または治療することができる。
 本明細書では、用語「駆出率」(ejection fraction、EF)とは、心臓機能評価指標の一つであり、心拍毎に心臓が送り出す血液量(駆出量)を、心臓拡張時の左室容積で除して求められる値である。心不全の対象(心不全患者)において、駆出率の低下が観察され、駆出率の改善が心不全の治療の一つのゴールとなる。
 心不全の臨床状態は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)が重症度に応じて4段階に分類している。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 また、AHA/ACCステージ分類(American Heart Association/American College of Cardiology)が、重症度に応じて4段階に分類している。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 NYHA分類とAHA/ACCステージ分類との対応関係は概ね以下の通りとされている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 本明細書では、用語「心不全」は、心筋梗塞とは異なる病態であり、治療に用いられる薬の種類も心筋梗塞とは異なる。具体的には、心筋梗塞は、心筋細胞への血液供給が血管内に生じた塞栓などにより低下して心筋が虚血状態となって壊死してしまった状態である。従って、心筋梗塞の治療や予防は、塞栓の除去や塞栓形成の阻害により主に行われ、具体的には例えば、血栓溶解剤や抗血小板薬の投与、抗血液凝固法、抗虚血療法または高脂血治療により行われる。これに対して、心不全は、心臓による血液拍出量が低下した状態および/または心拍出量の低下を抑えるための調節機構により生じる症状であり、強心剤や利尿剤などにより治療が行われるように、異なる病態であるが故に治療法が異なる。このように、心不全は、心筋梗塞と異なる疾患である。但し、本明細書では、「心不全」には、心筋梗塞に罹患した対象における心拍出量の低下が含まれ、このような心拍出量の低下は本発明で治療することができる。すなわち、心筋梗塞に罹患した対象の一部は、心筋梗塞に加えて心不全を併発していると考えられるが、本発明では心筋梗塞に罹患した対象において心不全に起因する病態を予防または治療することができる。
 本明細書では、用語「代償性心不全」とは、一般に、心不全による心拍出量の低下に対応して体内でおきる血液循環を維持する調節機構(代償機転)により生じる状態である。したがって、代償性心不全も本発明で予防または治療することができる。代償としては、Frank-Starlingの法則による代償、心筋リモデリングによる代償および神経体液性の代償が挙げられる。
(1)Frank-Starlingの法則による代償
 Frank-Starlingの法則による代償では、前負荷の増大とこれによる1回拍出量の増大が生じて心拍出量の低下を改善するように代償作用が働く。しかし、動脈圧の増大によりこの代償作用の効果は限定的となり、更なる前負荷の増大が生じ、肺鬱血や末梢浮腫などの症状が発現する。
(2)心筋リモデリングによる代償
 心筋細胞に圧負荷がかかると、心臓の壁厚が増大して心室径が減少し、求心性肥大が発現する。すなわち、求心性肥大は、後負荷の増大に対して正常な収縮性を維持するための代償機構である。しかしながら、求心性肥大により左室の心筋の伸縮性が低下すると、循環血液量が少なくても室拡張期圧が増加し、鬱血が生じる。
 心筋細胞に容量負荷がかかると、心臓の内腔が拡大し、遠心性肥大が発現する。遠心性肥大では、心室の伸縮性が向上して前負荷が減少し、心拍出量が低下することになる。
 このように心筋リモデリングによる代償は、過剰に働くと心不全を増悪させ得る。
(3)神経体液性代償
 心不全により血液の心拍出量が低下し、動脈圧が低下すると、交感神経が活性化されてカテコールアミンが放出される。カテコールアミンは、心拍数の増大と心収縮力の増大、血管収縮、およびレニン分泌を引き起こす。動脈圧の低下は、腎の糸球体輸入細動脈圧の低下を引き起こすので、傍糸球体細胞からのレニンの分泌を促進する。レニンは、アンジオテンシンIIの酸性を促進し、動脈の収縮を引き起こし、後負荷の増大を生じる。アンジオテンシンIIはまた、腎臓でのナトリウムイオンと水分の再吸収を促進するので血液量が増加し、前負荷を増大させる。アンジオテンシンIIはさらに、カテコールアミンの分泌を促進する。この反応は一時的には心不全の対象の血液循環の改善を引き起こすが、長期にわたり交感神経刺激が持続すると刺激に対する反応性が低下し、この代償が機能しなくなる。
 本発明では、用語「急性心不全」は、一般に、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し、心室拡張末期圧の上昇や主要臓器への灌流不全を来たし、それに基づく症状や徴候が急性に出現、あるいは悪化した病態をいう。本明細書では、「急性心不全」には、慢性心不全の急性増悪期が包含される。急性心不全は以下の6つの病態:急性非代償性心不全、高血圧性急性心不全、急性心原性肺水腫、心原性ショック、高吐出性心不全、および急性右心不全に大別される。本発明では、急性心不全を予防または治療することができる。
 本発明では、用語「慢性心不全」は、一般に、慢性の心筋障害により心拍出量が低下し、末梢臓器の酸素需要に見合うだけの血液量を絶対的または相対的に拍出できない状態を意味し、これにより、肺、体静脈系またはその両方にうっ血を来たし、日常的に障害を生じる。慢性心不全の対象の一部では、心不全と慢性の心筋障害とが併発するが、本発明では、そのうち、心不全を予防または治療することができる。
 本明細書では、用語「急性非代償性心不全」とは、一般に、心不全の兆候や症状が軽度で、心原性ショック、肺水腫および高血圧性急性心不全などの診断基準を満たさない新規急性心不全または、慢性心不全が急性増悪したものを意味する。
 本明細書では、用語「高血圧性急性心不全」とは、高血圧を病因として心不全の兆候や症状を伴い、急性肺鬱血または肺水腫を伴うものを意味する。
 本明細書では、用語「急性心原性肺水腫」とは、呼吸困難や起座呼吸を認め、水泡音を呈し、肺水腫を伴うものを意味する。
 本明細書では、用語「心原性ショック」とは、心ポンプ失調により末梢および全身の腫瘍臓器の微小循環が著しく傷害され、組織低灌流に続発する重篤な病態を意味する。
 本明細書では、用語「高拍出性心不全」とは、甲状腺中毒症、貧血、シャント疾患、脚気心、パジェット病、医原性などを原因疾患とし、四肢は暖かいにも関わらず肺鬱血を認めるものを意味する。
 本明細書では、用語「急性右心不全」とは、静脈圧の上昇、肝腫大を伴った低血圧または低心拍出状態を呈しているものを意味する。
 本発明では、急性非代償性心不全を予防または治療することができる。
 心不全には、虚血性心不全と非虚血性心不全が挙げられる。
 虚血性心不全は、心筋における酸素の需要と供給のバランスが崩れて起こる心不全を意味する。虚血性心不全としては、狭心症や動脈硬化によるものが挙げられる。本発明では、虚血性心不全を予防または治療することができる。
 非虚血性心不全は、虚血性心不全以外の心不全である。本発明ではまた、非虚血性心不全を治療することができる。
 本明細書では、「うっ血性心不全」とは、一般に、心拍出量の低下に伴って肺や末梢の組織にむくみが生じる状態を意味する。うっ血性心不全は、例えば、不整脈、虚血性心疾患、急性心筋梗塞、高血圧、心筋症、心筋炎、先天性心疾患、その他の疾患などによる生じる心不全を含む。うっ血性心不全には、急性心不全および慢性心不全が挙げられる。うっ血性心不全もまた、本発明で予防または治療することができる。
 慢性心不全の症状としては、疲れやすさの増大、動作に伴う息切れ、食欲不振、運動能力低下、咳、動悸、下腿浮腫、むくみ、むくみを伴う体重増加、または就寝中の呼吸困難が挙げられ、本発明は、例えば、このような状態から選択される少なくとも1つの状態を治療することができる。また、急性心不全の症状としては、上記慢性心不全の症状の突発的な発現、呼吸困難、または意識がもうろうとするなどの症状が挙げられ、本発明は、例えば、このような状態から選択される少なくとも1つの状態を治療することができる。
 本発明では、化合物A、化合物B、および化合物C、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる化合物を対象に投与することで、対象において心不全の状態を予防または治療できる。
 従って、本発明によれば、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選ばれる化合物を含む、心不全を予防または治療することに用いるための医薬が提供される。
 化合物Aは以下の式により示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
 化合物Bは以下の式により示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 化合物Cは以下の式により示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 本発明では、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩は、心不全の予防または治療に用いることができる。従って、本発明によれば、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩からなる群から選ばれる化合物を含む、心不全を予防または治療することに用いるための医薬、特に心不全の対象において心拍出量を増大させることまたは心拍出量の低下を予防または治療することに用いるための医薬が提供される。
 本発明ではまた、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩は、心不全の対象において心拍出量の低下を予防または治療することができる。従って、本発明の医薬は、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される化合物を含む、心臓保護薬であり得る。
 本発明の特定の態様では、本発明の医薬は、虚血性心不全または非虚血性心不全の予防または治療に用いることができる。本発明の特定の態様では、本発明の医薬は、非虚血性心不全の予防または治療に用いることができる。本発明の更なる特定の態様では、本発明の医薬は、非虚血性心不全の治療に用いることができる。
 本発明の特定の態様では、本発明の医薬は、非代償性心不全の予防または治療に用いることができる。本発明の特定の態様では、本発明の医薬は、急性心不全の予防または治療に用いることができる。本発明の特定の態様では、本発明の医薬は、急性非代償性心不全の予防または治療に用いることができる。本発明の更なる特定の態様では、本発明の医薬は、急性非代償性心不全の予防または治療に用いることができる。
 本発明ではまた、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩は、心不全の対象において、駆出率(ejection fraction)低下を改善する、または駆出率を増加させることに用いることができる。従って、本発明の医薬は、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される化合物を含む、心不全の対象における駆出率低下と駆出率低下に伴う死亡を改善するための医薬(改善薬)であり得る。
 本発明ではまた、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩は、心不全の対象において、心機能の増悪を抑制すること、または憎悪の進行を抑制することができる。従って、本発明の医薬は、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される化合物を含む、心不全の対象における心機能の増悪を抑制すること、または憎悪の進行を抑制することに用いるための医薬であり得る。本発明の医薬は、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される化合物を含む、心不全の対象における心保護のための医薬であり得る。本発明ではまた、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩は、心不全の対象において、心臓の負荷を軽減することができ、心肥大を抑制することができ、間質繊維化を抑制することができ、およびアポトーシス増加を抑制することができる。従って、本発明の医薬は、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される化合物を含む、心不全の対象における、心臓の負荷の増大、心肥大、間質繊維化および/または心筋細胞のアポトーシス増加から選択される1以上の状態を治療することに用いるための医薬であり得る。
 本発明の特定の態様では、本発明の医薬は、NYHA分類によるI度の心不全、II度の心不全、III度の心不全、またはIV度の心不全の予防または治療に用いることができる。本発明の特定の態様では、本発明の医薬はまた、AHA/ACCステージ分類のA、B、CまたはDの心不全の予防または治療に用いることができる。
 化合物A、BおよびC並びにこれらの塩は、無溶媒和物であっても、溶媒和物であってもよい。溶媒和物は、エタノールや水などの溶媒であり得る。取り込まれる溶媒が水である溶媒和物は、水和物である。水和物には、化学量論的な水和物に加えて、様々な量の水を含むものが包含される。
 化合物A、BおよびC並びにこれらの塩は、同位元素(例、3H、13C、14C、18F、35S、125I)等で標識されていてもよい。
 さらに、1Hを2H(D)に変換した重水素変換体も、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩に包含される。
 さらに、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩は、薬学的に許容され得る共結晶または共結晶塩であってもよい。ここで、共結晶または共結晶塩とは、各々が異なる物理的特性(例えば、構造、融点、融解熱、吸湿性、溶解性および安定性等)を持つ、室温で二種またはそれ以上の独特な固体から構成される結晶性物質を意味する。共結晶または共結晶塩は、自体公知の共結晶化法に従い製造することができる。
 化合物A、BおよびCの塩としては、例えば、無機塩基との塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
 無機塩基との塩の好適な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などが挙げられる。
 有機塩基との塩の好適な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。
 無機酸との塩の好適な例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。
 有機酸との塩の好適な例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。
 塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられる。
 酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
 これらの塩のなかでも、薬学的に許容し得る塩が好ましい。
 本発明の特定の態様では、化合物Aの塩は、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)(以下、「化合物A’」ともいう)とすることができる。本発明の特定の態様では、化合物Bの塩は、塩酸塩(以下、「化合物B’」ともいう)とすることができる。本発明の特定の態様では、化合物Cの塩は、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)(以下、「化合物C’」ともいう)とすることができる。
 本発明の特定の態様では、化合物A、化合物A’、化合物B、化合物B’、化合物C、および化合物C’から選択される1つの化合物を心不全の予防または治療に用いることができる。本発明の特定の態様では、化合物Aまたは化合物A’を心不全の予防または治療に用いることができる。本発明の特定の態様では、化合物A’を心不全の予防または治療に用いることができる。
 化合物A、BおよびC並びにこれらの塩は、自体公知の方法(例えば、引用することによりその全体が本明細書に組込まれる、WO2004/017908およびYoshida M. et al., Bioorg. Med. Chem., 19: 1881-1894, 2011に記載の方法)により調製することができる。
 投与量は、投与対象、投与ルート、疾患、症状などにより異なるが、例えば、ヒト(体重約50kg)に経口投与する場合、化合物A、BまたはCとして約0.1mg~約500mgの範囲、好ましくは約1mg~約100mgの範囲、非経口投与の場合、約0.01mg~約100mgの範囲、好ましくは約0.1mg~約10mgの範囲から選択できる。この量を1日1ないし数回(例、1日1ないし3回)に分けて投与することができる。
 本発明の医薬は、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物と薬学的に許容し得る担体とを含んでいてもよい。
 薬学的に許容し得る担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、または崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、または無痛化剤などとして配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、着色剤、または甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
 本発明の医薬は、ある態様では、非経口投与用または経口投与用の医薬とすることができる。本発明の医薬はまた、経口投与用の医薬とすることができる。
 本発明の医薬は、他の心不全治療薬などの薬物と併用することができ、例えば、以下の薬物のいずれか1以上と併用することができる。
(1)心不全治療薬
(i)β受容体拮抗薬(β遮断薬)
 カルベジロール、メトプロロール、アテノロール等。
(ii)利尿薬
 ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、フロセミド、インダパミド、ベンドロフルアジド、シクロペンチアジド、ブメタニド、エタクリン酸等。
(iii)強心薬
 ジギタリス、ジゴキシン、ドブタミン等。
(iv)抗アルドステロン薬
 スピロノラクトン、エプレレノン
(v)心拍数低下薬
 イバブラジン等
(vi)静注強心薬
 h-ANP等
(vii)アンジオテンシン変換酵素阻害剤
 カプトプリル、エナラプリル、デラプリル等
(viii)アンジオテンシンII拮抗薬
カンデサルタン シレキセチル、カンデサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、オルメサルタン、オルメサルタン メドキソミル、アジルサルタン、アジルサルタン メドキソミル等
(ix)その他
 リラキシン等
(2)その他
(x)Ca感受性増強薬
 MCC-135等。
(xi)Caチャネル拮抗薬
 ニフェジピン、ジルチアゼム、ベラパミル、塩酸ロメリジン、ベシル酸アムロジピン等。
(xii)抗血小板薬、抗凝固薬
 ヘパリン、アスピリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、ピキサバン、エドキサバン等。
(xiii)HMG-CoA還元酵素阻害薬
 アトロバスタチン、シンバスタチン等。
(xiv)尿酸低下薬
 プロベネシド、アロプリノール、フェブキソスタット等
(xv)アルファ遮断薬
 ドキサゾシン等
(xvi)経口吸着薬
 クレメジン等
(xvii)高カリウム血しょう治療薬 カルチコール等
(xviii)高リン血しょう治療薬
 セベラマー、炭酸ランタン等
(xix)代謝アシドーシス改善薬
 重炭酸ナトリウム等
(xx)活性型ビタミン
 本発明の医薬と配合又は併用する医薬には、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物と併用薬物を含有する医薬として単一に製剤化されたもの、および化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物と併用薬物とが別個に製剤化されたもの(例えば、組合せ医薬)のいずれもが含まれる。以下、これらを総称して本発明の併用剤と略記する。
 本発明の併用剤は、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物及び併用薬物を、別々にあるいは同時に、そのまま若しくは薬学的に許容され得る担体などと混合し、上述した化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物を含む医薬と同様の方法により製剤化することができる。本発明の併用剤の一日投与量は、症状の程度;投与対象の年齢、性別、体重、感受性差;投与の時期、間隔、医薬の性質、調剤、種類;有効成分の種類などによって異なり、特に限定されない。
 本発明の併用剤を投与するに際しては、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物と併用薬物とを同時期に投与してもよいが、併用薬物を先に投与した後、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物を投与してもよいし、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物を先に投与し、その後で併用薬物を投与してもよい。時間差をおいて投与する場合、時間差は投与する有効成分、剤形、投与方法により異なるが、例えば、併用薬物を先に投与する場合、併用薬物を投与した後1分~3日以内、好ましくは10分~1日以内、より好ましくは15分~1時間以内に化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物を投与する方法が挙げられる。化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物を先に投与する場合、該化合物を投与した後、1分~1日以内、好ましくは10分~6時間以内、より好ましくは15分から1時間以内に併用薬物を投与する方法が挙げられる。
 化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物と併用薬物とを同時に含む本発明の併用剤において、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物および併用薬物のそれぞれの含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常、製剤全体に対して約0.01~90重量%、好ましくは約0.1~50重量%、さらに好ましくは約0.5~20重量%程度である。
 該併用剤における担体の含有量は、通常、製剤全体に対して、約0~99.8重量%、好ましくは約10~99.8重量%、さらに好ましくは約10~90重量%程度である。
 また、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物と併用薬物とを別個に含む併用剤において、併用薬物を含む併用剤は、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物と同様にして製造して用いることができる。
 本発明の医薬は、散剤、顆粒剤、錠剤若しくはカプセル剤などの固形製剤、または、シロップ剤若しくは乳剤などの液剤のいずれであってもよい。
 本発明の医薬は、製剤の形態に応じて、例えば、混和、混練、造粒、打錠、コーティング、滅菌処理、乳化などの慣用の方法で製造できる。なお、製剤の製造に関して、例えば日本薬局方製剤総則の各項などを参照できる。また本発明の医薬は、有効成分と生体内分解性高分子化合物とを含む徐放剤に成形してもよい。
 本発明のある態様では、心不全をその必要のある対象において予防または治療するための医薬であって、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物を含み、かつ、併用薬物と併用することに用いられる、医薬が提供される。
 本発明の別の側面では、心不全をその必要のある対象において予防または治療する方法であって、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物を該対象に投与することを含む方法が提供される。本発明の方法において、治療対象となる心不全は、本発明の医薬についての治療対象として説明した疾患または状態のいずれかとすることができる。本発明の方法において、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物を投与する場合、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物を含む医薬を投与してもよい。
 本発明の別の側面では、心不全をその必要のある対象において予防または治療することに用いるための医薬を製造するための、化合物A、BおよびC並びにこれらの塩から選択される一つの化合物の使用が提供される。上記医薬の治療対象となる心不全は、本発明の医薬についての治療対象として説明した疾患または状態のいずれかとすることができる。
 本発明のある特定の態様では、投与される化合物または医薬に含まれる化合物は、化合物Aのトシル酸塩である。
 化合物A’は、WO2004/017908およびYoshida M. et al., Bioorg. Med. Chem., 19: 1881-1894, 2011に記載される公知の方法で調製した。
 カルセクエクストリン(CSQ)の心臓特異的トランスジェニックマウス(CSQ-Tgマウス)は、Larry R. Jones et al., J. Clin. Invest. 101: 1385-1393, 1998で報告されたマウスをUniversity of Pennsylvaniaから入手し、自社で繁殖させたものを使用した。試験には雌雄のマウスを用い、5週齢から投薬を開始した。動物は室温20~26℃、湿度40~70%、照明時間12時間/日(7:00-19:00)の条件下で、固形飼料(CE-2、日本クレア)および水道水を与えた。CSQ-Tgマウスは、既に報告されているように、Ca2+の細胞内放出が抑制されて心筋収縮が低下し、心拍出量が低下して心肥大と心不全とを発症した。
実施例1:心不全モデル動物における化合物A’の心房重量低下作用
 本実施例では、CSQ-Tgマウスを心不全のモデル動物として用いて、化合物A’の心房重量の低下作用について評価した。
 化合物A’を0.5%メチルセルロース水溶液(以下、実施例において「ビヒクル」ということがある)に懸濁し(10mL/kg)、心不全を発症した5週齢の雄性CSQ-Tgマウスに30mg/kg体重/日の用量で1日1回(QD)の頻度で14日間にわたり経口投与した(n=7)。陰性対照(ビヒクル投与群)としては、0.5%メチルセルロース水溶液を投与した(n=9)。その後、心房重量を測定した。結果は、表4に示される通りであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 表4に示されるように、化合物A’を投与した群では、左心房の重量(mg)が低下することが示され、t-testにより有意差が確認された(p<0.05)。この結果から、化合物A’は、心不全における心リモデリングの改善作用(心房重量の低下作用)を有することが示された。
実施例2:化合物A’による心左室肥大及び肺重量増加改善効果
 本実施例では、心不全により生じる左室肥大及び肺重量増加の改善作用に対する化合物A’の効果を調べた。
 化合物A’を0.5%メチルセルロース水溶液に懸濁し(10mL/kg)、心不全を発症した5週齢の雌性CSQ-Tgマウスに30mg/kg体重/日の用量で1日1回(QD)の頻度で14日間にわたり経口投与した(n=10)。陰性対照(ビヒクル投与群)としては、0.5%メチルセルロース水溶液を投与した(n=10)。その後、肺の重量(Lung)、左心室の重量(LV)および体重(BW)をそれぞれ測定し、体重(BW)で標準化した。結果は、表5に示される通りであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 表5に示されるように、化合物A’投与群では、肺重量および左心室重量は共に、統計学的に有意に低下した(t検定、いずれもp<0.05)。この結果から、化合物A’は、心不全により引き起こされる左室肥大及び肺重量増加を改善することが示された。
実施例3:心不全モデル動物の生存率に対する化合物A’の効果
 本実施例は、心不全モデル動物を用いて生存率に対する化合物A’の効果を調べた。
5週齢の雌性CSQ-Tgマウス(n=30)に化合物A’を30mg/kg体重/日の用量で1日1回(QD)の頻度で30日間にわたり経口投与した。陰性対照(ビヒクル投与群)としては、0.5%メチルセルロース水溶液を投与した(n=30)。結果は、図1に示される通りであった。
 図1に示されるように、化合物A’投与群の、生存率はビヒクル群に対し、有意に改善した(log-rank検定、p<0.001)。このことから、化合物A’は、心不全状態を改善することができることが示された。これは、カルセクエクストリンの過剰発現によって生じた心機能低下による死亡を化合物A’が改善させることによる効果である。
 上記実施例の結果から、化合物A’は、心不全の対象において駆出率を改善することができ、これにより心不全を治療することができると理解される。化合物A’はまた、少なくとも、心不全時の心臓における負荷の低減作用を奏すること、および、心筋肥大の抑制、間質繊維化の抑制およびアポトーシスの抑制などを通じて心機能の進行または増悪を抑える作用を奏することが明らかとなった。これにより、化合物A’が心不全の治療効果に加えて心不全の予防効果を有すると理解される。
 本発明によれば、心不全を予防または治療する医薬が提供され、有用である。
 本明細書において引用された、学術文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
 本出願は,日本特許出願2015-253809号(2015年12月25日出願)に基づく優先権を主張しており、この内容は本明細書に参照として取り込まれる。

Claims (3)

  1.  心不全の予防または治療するための、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-メトキシフェニル)プロピル]-2,7,7-トリメチル-5-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、(5R)-N-[1-エチル-1-(4-エチルフェニル)プロピル]-5-(2-フルオロフェニル)-2,7,7-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド、およびそれらの塩からなる群から選ばれる化合物を含有してなる、医薬。
  2.  心不全を治療するための、請求項1記載の医薬。
  3.  心不全が急性非代償性心不全である、請求項1記載の医薬。
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