WO2017037954A1 - スライドファスナーチェーン及びスライドファスナー - Google Patents

スライドファスナーチェーン及びスライドファスナー Download PDF

Info

Publication number
WO2017037954A1
WO2017037954A1 PCT/JP2015/075265 JP2015075265W WO2017037954A1 WO 2017037954 A1 WO2017037954 A1 WO 2017037954A1 JP 2015075265 W JP2015075265 W JP 2015075265W WO 2017037954 A1 WO2017037954 A1 WO 2017037954A1
Authority
WO
WIPO (PCT)
Prior art keywords
polyester resin
fastener
carbon atoms
fastener chain
acid
Prior art date
Application number
PCT/JP2015/075265
Other languages
English (en)
French (fr)
Inventor
道端 勇
結 橋本
弘和 亀山
Original Assignee
Ykk株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ykk株式会社 filed Critical Ykk株式会社
Priority to CN201580082817.0A priority Critical patent/CN108024602B/zh
Priority to PCT/JP2015/075265 priority patent/WO2017037954A1/ja
Priority to TW105128128A priority patent/TWI616521B/zh
Publication of WO2017037954A1 publication Critical patent/WO2017037954A1/ja

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A44HABERDASHERY; JEWELLERY
    • A44BBUTTONS, PINS, BUCKLES, SLIDE FASTENERS, OR THE LIKE
    • A44B19/00Slide fasteners
    • A44B19/24Details
    • A44B19/32Means for making slide fasteners gas or watertight

Abstract

 ポリエステル系樹脂材料を防水塗膜として使用したスライドファスナーチェーンにおいて、防水塗膜の柔軟性及び透明性を向上する。少なくとも一方の主表面上に防水塗膜が形成された一対のファスナーテープのそれぞれの側縁部に沿って取着されたファスナーエレメントの列が互いに噛み合った構成を有するファスナーチェーンであって、前記防水塗膜は炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基、炭素数10以上の脂肪族ジオール残基、及び炭素数10以上の脂環族ジオール残基よりなる群から選択される1種又は2種以上の残基を有する芳香族ポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂組成物により形成されているファスナーチェーン。

Description

スライドファスナーチェーン及びスライドファスナー
 本発明はスライドファスナーに関する。とりわけ本発明は防水機能を有するコイル型スライドファスナーに関する。
 スライドファスナーは衣料品、鞄類、靴類及び雑貨品といった日用品の開閉具として普及しているが、その他にも、宇宙服、化学防護服、ダイビングスーツ、救命ボート、サバイバルスーツ等の防護服類、輸送コンテナ用のカバー類やテント等にも使用されている。このような特殊用途にはスライドファスナーにも防水性が要求される。
 スライドファスナーは一般に、一対の長尺状のファスナーテープ、各テープの一側縁に沿って取着されるファスナーの噛合部分であるファスナーエレメント、及びファスナーエレメントを噛合及び分離することによりファスナーの開閉を制御するスライダーの三つの部分から主に構成される。防水性を与えるため、ファスナーテープに防水性を有する合成樹脂フィルムを貼付し、噛合時に、左右のファスナーテープの合成樹脂フィルムが密接することで防水性を発揮するスライドファスナーが従来知られている。
 例えば、特表2002-525143号公報(特許文献1)には、スライドファスナーにおけるファスナーテープの一面に、ポリウレタンフィルム等の耐水フィルムを、ニップローラ又は積層ローラを用いて転写積層法により貼付することが記載されている。当該公報にはフィルムは外側の耐摩耗層と内側の低温溶融材を有する多層構造とすることが好ましいことが記載されている。耐摩耗層を設けることで、耐摩耗性を増大するとともに摩擦係数を低減することで操作の容易化を図ることや、低温溶融層の一部をファスナーテープの材料内に埋め込むことで、フィルムとファスナーテープ間の接着強度を高めることが記載されている。ポリウレタンフィルムを、ポリウレタン接着剤、結合剤又はホットメルト接着剤からなる内側層によってコーティングすることも記載されている。
 中華民國専利第I220106号公報(特許文献2)には、PUゲルを塗り付けたファスナーテープ上から、離型紙付きのPUシートをローラ装置により加圧することでPUゲルとPUシートを結合させ、その後、加熱によりPUシートとPUゲルを熱塑性結合させて防水層を形成する方法が記載されている。
 特許第4312171号公報(特許文献3)には、液状ポリエステル合成樹脂系の防水材物質をファスナー布テープ組織内に浸透させて防水薄膜を形成する方法が記載されている。
 実公平1-14168号公報(特許文献4)には、防水シール材層としてシリコンゴム、ブチルゴム、ネオプレン、ポリウレタンゴム等の合成ゴムをファスナーテープにコーティングして乾燥付着することが記載されている。
 特許第3580725号(特許文献5)には、スライドファスナーにおけるファスナーテープの少なくとも一面に、低融点樹脂層と高融点樹脂層とから構成された積層合成樹脂フィルムを、低融点樹脂層がファスナーテープ面と対面して接する形で加熱加圧することで溶着することが記載されている。積層合成樹脂フィルムの材質としては、ウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂が開示されている。
 特許第5387912号公報(特許文献6)には、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、及びゴム熱可塑性材料等からなるコーティング層をファスナーテープの表面に押出成形する方法が記載されている。具体的には、当該方法は、押出成形ダイにファスナーテープを給送するステップと、ファスナーテープの表面に防水性ポリマーのコーティング層を押出成形して防水層を形成するステップとを備える。
 特開2012-24573号公報(特許文献7)には、エレメント側が膨らんだフィン形状のポリマー材料をファスナーテープの表面にコーティングすることが記載されている。ポリマー材料のコーティングはテープに押出成形されることも記載されている。ポリマー材料としてはポリクロロプレン、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられている。当該文献によれば、一対のフィン形状のポリマー材料が、スライドファスナーの閉鎖時に、互いに密閉することで、ポリマー材料の合わせ面での液体密封状態にできる。
特表2002-525143号公報 中華民國専利第I220106号公報 特許第4312171号公報 実公平1-14168号公報 特許第3580725号 特許第5387912号公報 特開2012-24573号公報
 近年の環境保護に対する意識の高まりを受けて、環境負荷の少ない製品作りが求められるようになっているが、従来の防水性スライドファスナーにおいては、防水フィルムとファスナーテープに使用する樹脂の種類を同一とする意識はなかった、そのため、防水フィルムの材質としてポリウレタン等の合成ゴムが主流であり、ファスナーテープは一般にポリエステル製であった。しかしながら、防水フィルムとファスナーテープで異なる種類の樹脂が使われると、リサイクル性が難しくなるという問題がある。
 また、従来は接着強度を確保するためにフィルムに接着剤を塗布した後にファスナーテープに貼り付けることが多く、工程数が増えて製造コストが増大するという問題があった。接着剤は人体に有害な成分も含まれているため、製造時に専門教育及び専門排気装置が必要であるという問題も抱えている。
 特許第4312171号公報(特許文献3)には、液状ポリエステル合成樹脂系の防水材物質をファスナー布テープ組織内に浸透させて防水薄膜を形成する方法が記載されており、特開2012-24573号公報(特許文献7)にも、ファスナーテープの表面をコーティングするポリマー材料としてポリエステルエラストマーが挙げられている。しかしながら、ポリエステル樹脂系材料を使用して防水フィルムを形成すると、防水フィルムの透明性が悪いために美観を損なうという問題がある。また、ポリエステル系樹脂材料でできた防水フィルムは柔軟性が低いために、スライダーの摺動性の悪化及びファスナーテープの風合いの低下という問題も生じる。
 本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、ポリエステル系樹脂材料を防水塗膜として使用したスライドファスナーチェーンにおいて、防水塗膜の柔軟性及び透明性を向上することを課題の一つとする。また、本発明はそのようなスライドファスナーチェーンを備えたスライドファスナーを提供することを別の課題の一つとする。
 本発明は一側面において、少なくとも一方の主表面上に防水塗膜が形成された一対のファスナーテープのそれぞれの側縁部に沿って取着されたファスナーエレメントの列が互いに噛み合った構成を有するファスナーチェーンであって、前記防水塗膜は炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基、炭素数10以上の脂肪族ジオール残基、及び炭素数10以上の脂環族ジオール残基よりなる群から選択される1種又は2種以上の残基を有する芳香族ポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂組成物により形成されているファスナーチェーンである。
 本発明に係るファスナーチェーンの一実施形態においては、前記芳香族ポリエステル樹脂中の全酸成分残基及び全ジオール成分残基の合計中の、前記炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基、前記炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基、前記炭素数10以上の脂肪族ジオール残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジオール残基の合計含有割合が0.5~8モル%である。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記芳香族ポリエステル樹脂が前記炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基の少なくとも一種をダイマー酸残基として有する。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記芳香族ポリエステル樹脂が前記炭素数10以上の脂肪族ジオール残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジオール残基の少なくとも一種をダイマージオール残基として有する。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記ダイマー酸残基が水添ダイマー酸残基である。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記ダイマージオール残基が水添ダイマージオール残基である。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記ポリエステル樹脂組成物がポリカルボジイミドを含有する。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記ポリエステル樹脂組成物が滑剤を含有する。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記ポリエステル樹脂組成物が紫外線吸収剤及び顔料のうち少なくとも一方を含有する。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記ポリエステル樹脂組成物中の前記芳香族ポリエステル樹脂の含有割合が60質量%以上である。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、ファスナーテープがポリエステル樹脂製である。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記防水塗膜はファスナーテープとの界面においてファスナーテープの主表面の凹凸に入り込んでいる。
 本発明に係るファスナーチェーンの更に別の一実施形態においては、前記防水塗膜が染色されている。
 本発明は別の一側面において、本発明に係るファスナーチェーンを備えたスライドファスナーである。
 本発明は更に別の一側面において、本発明に係るスライドファスナーを備えた物品である。
 本発明に係るスライドファスナーチェーンによれば以下のような効果が得られる。
(1)本発明に係る防水塗膜の透明性が高いため、防水塗膜を形成した後もファスナーテープの生地の色を維持可能である。このため、防水性と美観の両立を図ることができる。また、防水塗膜を染色する場合にも所望の色合いに調整することが容易である。
(2)本発明に係る防水塗膜は柔軟性が優れていることから、防水塗膜を形成することによるファスナーテープの風合いの低下やスライダー摺動性の悪化を抑制することができる。
(3)ファスナーテープをポリエステル樹脂系材料で構成する場合、ファスナーテープと防水塗膜が同一種類の樹脂となるので、リサイクル性が高く、環境に優しいファスナーチェーンとすることが可能である。
(4)本発明に係る防水塗膜は接着剤を使用せずにファスナーテープ上に直接形成することも可能である。このため、作業環境改善につながるとともに、特別な施設や教育が不要となる。また、防水フィルムを接着剤によって貼り付ける方法よりも工程数を少なくでき、製造コストを抑えることも可能となる。
本発明の一実施形態に係るスライドファスナーの平面図である。 本発明の一実施形態に係るスライドファスナーの断面図である。 本発明の一実施形態に係るスライドファスナーの斜視断面図である。 ファスナーチェーンへ防水塗膜を形成するための装置構成の一例を示す。 雨試験B法に用いる試験片の固定ジグの平面図と側面の断面図(A-A矢視図)を示す。 雨試験B法を実施する際の人工降雨装置の外観を示す。 散水により試験片を透過した水が、貯水部材の内部に溜まって、水溜が存在している状態を示す。 柔軟性試験装置の作動前の状態を示す。 柔軟性試験装置の作動中の状態を示す。
(1.ファスナーチェーン)
 以下、図面を参照しながら、本発明に係るファスナーチェーンの実施形態について詳述する。図1~3には、本発明に係るファスナーチェーンを備えたスライドファスナー10の一例を示している。図1はスライドファスナー10の全体の平面図、図2はファスナーエレメント11の列がスライダー12内で噛合した様子を示す断面図、図3はスライドファスナー10の一部の斜視断面図である。
 各ファスナーテープにエレメントの列が取り付けられた状態のものをファスナーストリンガーと呼ぶ。また、各ファスナーストリンガーを対にしてエレメント同士を噛み合わせたものをファスナーチェーンと呼ぶ。また、ファスナーチェーンにスライダー、上止及び下止などの部品を取り付けたものをスライドファスナーと呼ぶ。
 本発明に係るファスナーチェーンは一実施形態において、少なくとも一方の主表面上に防水塗膜が形成された一対のファスナーテープのそれぞれの側縁部に沿って取着されたファスナーエレメントの列が互いに噛み合った構成を有する。図2及び図3を参照すると、各ファスナーテープ18の一方の主表面上には、その一側縁に沿ってエレメント11の列が取り付けられている。左右のファスナーエレメント11の列の間にはスライダー12が挿通されており、スライダー12を摺動させることによりスライドファスナー10の開閉状態を制御可能となっている。また、図1に示すように上止め16を設けることができ、図示しないが、下止め、開離嵌挿具等を取り付けることも出来る。一対のファスナーテープ18は、一側縁同士が所与の間隔(図2中、s=30~600μm程度)で隣接していることが好ましい。両者に間隔を設けるのはスライダー12の摺動性を良くするためである。限定的ではないが、ファスナーテープ18は長尺矩形状であるのが一般的である。
 図示の実施形態においては、内部に芯紐13を挿通した線状タイプのコイル状ファスナーエレメント11の列が縫糸14によってそれぞれ縫着されている。ここでは縫糸14に対してミシンの二重環縫が適用されている。コイル状ファスナーエレメント11の列はポリアミド及びポリエステル等の合成樹脂のモノフィラメントから形成することができるが、リサイクル性を高めるという観点ではポリエステル樹脂製とすることが好ましい。スライダー12、縫糸14及びその他の部品の材質についても特に制限はないが、ポリエステル樹脂製にすることでリサイクル性を更に高めることができる。
(1-1.防水塗膜)
 図示の実施形態においては、各ファスナーテープ18の他方の主表面上にポリエステル樹脂組成物製の防水塗膜19が形成されている。本発明においては防水塗膜19が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基、炭素数10以上の脂肪族ジオール残基、及び炭素数10以上の脂環族ジオール残基よりなる群から選択される1種又は2種以上の残基(以下、これらの残基を「炭素数10以上の残基」と総称することがある。)を有する芳香族ポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂組成物により形成されていることが特徴の一つである。これにより、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、柔軟性及び透明性に優れた防水塗膜を形成することができるようになる。
 ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸(本発明において、「ジカルボン酸」にはそのエステル誘導体成分を含む。)と、脂肪族ジオール、脂環族ジオール及び芳香族ジオール等のジオール成分とがエステル化反応により連結した構造を繰り返し有する樹脂である。本発明に係る防水塗膜においては、ポリエステル樹脂の中でも芳香族ポリエステル樹脂を使用する点が特徴の一つである。芳香族ポリエステル樹脂を使用することにより耐熱性に優れるという利点が得られる。
 芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールの少なくとも一種をモノマーとして用いたポリエステル樹脂を指す。このため、芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸残基及び芳香族ジオール残基の少なくとも一種を複数有する。好ましい実施形態においては、芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸残基を複数有する。従って、本発明に係る芳香族ポリエステル樹脂の一実施形態においては、芳香族ジカルボン酸残基及び芳香族ジオール残基の1種又は2種以上と、炭素数10以上の残基の1種又は2種以上とを有する。
 ジカルボン酸としては芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸が挙げられる。耐熱性に優れるという理由により芳香族ジカルボン酸が好ましい。エステル誘導体成分としては、これらの酸のアルキルエステル及び酸ハライドが例示できる。脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールが挙げられる。脂環族ジオールの例としては、シクロヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。芳香族ジオールの例としては、4-ビスオキシエトキシベンゼン及びビスフェノールAが挙げられる。更なるジオールの例として、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリヘキサメチレングリコール等の高分子ジオールも挙げられる。これらの酸成分及びジオール成分は、それぞれ複数種併用したものであっても構わない。
 炭素数10以上の残基の1種又は2種以上を有する芳香族ポリエステル樹脂は、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂肪族ジオール、及び炭素数10以上の脂環族ジオールよりなる群から選択される1種又は2種以上の化合物をモノマーとして用いて、芳香族ポリエステル樹脂を構成する他のモノマーと共重合することで製造可能である。この場合、炭素数10以上の残基はポリエステルの骨格中に組み込まれた状態となることができる。炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂肪族ジオール、及び炭素数10以上の脂環族ジオールよりなる群から選択される1種又は2種以上の化合物をポリエステル樹脂と単に混合させただけでは所望の効果は得られない。
 炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂肪族ジオール、及び炭素数10以上の脂環族ジオールについて、透明性に優れるという理由により、炭素数は好ましくは20以上であり、より好ましくは30以上である。炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂肪族ジオール、及び炭素数10以上の脂環族ジオールについて、炭素数の上限は、特に設定されないが、耐溶剤性及び耐熱性の観点から、54以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。
 また、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂肪族ジオール、及び炭素数10以上の脂環族ジオールは、直鎖状及び分岐状の何れであってもよく、また、飽和及び不飽和の何れであってもよいが、柔軟性及び透明性に優れるため分岐状のものが好ましく、無色透明性に優れるため飽和の方が好ましい。
 炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸としては、限定的ではないが、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘプタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の直鎖状及び分岐状の脂肪族飽和ジカルボン酸、デセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸、トリデセン二酸、テトラデセン二酸、ヘプタデセン二酸、ヘキサデセン二酸等の直鎖状及び分岐状の脂肪族不飽和ジカルボン酸が挙げられる。
 炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸としては、限定的ではないが、例えば、シクロアルカン又はシクロアルケンに-A-COOH(式中、Aは化合物全体の炭素数が10以上となるように、炭素数1又は2以上の二価の飽和又は不飽和の鎖式炭化水素基を示す。)で表される官能基が二つ結合した化合物が挙げられる。シクロアルカンとしては、シクロヘキサン、シクロペンタン及びシクロヘプタン等が挙げられる。シクロアルケンとしてはシクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテン等が挙げられる。より具体的な例としては、シクロヘキサンの1位及び4位、又は、1位及び3位に、-(CH2n-COOH(nは1以上の整数を示す。)で表される基がそれぞれ結合した化合物、シクロペンタン環の1位及び3位に-(CH2n-COOH(nは1以上の整数を示す。)及び-(CH2m-COOH(mは2以上の整数を示す。)で表される基がそれぞれ結合した化合物が挙げられる。
 炭素数10以上の脂肪族ジオールとしては、限定的ではないが、例えば、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオール、イコサンジオール、ヘンイコサンジオール、ドコサンジオール、トリコサンジオール、テトラコサンジオール、ペンタコサンジオール、ヘキサコサンジオール、ヘプタコサンジオール、オクタコサンジオール、ノナコサンジオール、トリアコンタンジオール、ヘントリアコンタンジオール、ドトリアコンタンジオール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族飽和ジオール、デセンジオール、ドデセンジオール、テトラデセンジオール、ヘキサデセンジオール、オクタデセンジオール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族不飽和ジオールが挙げられる。
 炭素数10以上の脂環族ジオールとしては、限定的ではないが、例えば、シクロアルカン又はシクロアルケンに-B-OH(式中、Bは化合物全体の炭素数が10以上となるように、炭素数1又は2以上の二価の飽和又は不飽和の鎖式炭化水素基を示す。)で表される官能基が二つ結合した化合物が挙げられる。シクロアルカンとしては、シクロヘキサン、シクロペンタン及びシクロヘプタン等が挙げられる。シクロアルケンとしてはシクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテン等が挙げられる。より具体的な例としては、シクロヘキサン環の1位及び4位、又は、1位及び3位に、-(CH2n-OH(nは2以上の整数を示す。)で表される基がそれぞれ結合した化合物、シクロペンタン環の1位及び3位に-(CH2n-OH(nは2以上の整数を示す。)及び-(CH2m-OH(mは3以上の整数を示す。)で表される基がそれぞれ結合した化合物が挙げられる。
 本発明の好ましい実施形態においては、前記芳香族ポリエステル樹脂が前記炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基の少なくとも一種をダイマー酸残基として有する。
 「ダイマー酸」は、不飽和脂肪酸の二分子又はそれ以上の分子が二重結合部で重合反応して得られる多価カルボン酸である。ダイマー酸は二量体を主に指すが、三量体、四量体等の多量体も含む概念である。なお、一価の不飽和脂肪酸の単量体を使用してもエステル化反応を伴う共重合が進まないため、ポリエステルの高分子鎖を構成する骨格を形成することはできず、所望の効果は得られない。ダイマー酸は一種類を使用してもよいが、通常は2種類以上の混合物として得られるため、混合物として各種の用途に供されることが多い。例示的には、ダイマー酸は、炭素原子数8~22の直鎖状又は分岐状の不飽和脂肪酸を二量化することによって得ることができる。本発明においてはダイマー酸の不飽和結合を部分的に又は完全に水素化して得られる不飽和又は飽和ジカルボン酸であるダイマー酸の水素添加物(以下、「水添ダイマー酸」という。)もダイマー酸の概念に包含される。水添ダイマー酸は水素添加前のダイマー酸に比べて耐熱性や無色透明性に優れるという理由により好ましい。
 不飽和脂肪酸としては、エチレン性二重結合を1~4個有する炭素数8~22の脂肪酸が挙げられ、エチレン性二重結合を1又は2個有する炭素数14~22の脂肪酸が好ましい。
 不飽和脂肪酸の具体例としてはオクテン酸、ウンデセン酸、テトラデカジエン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデカジエン酸(リノール酸等)、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、オクタデカトリエン酸(リノレン酸等)、エイコサテトラエン酸(アラキドン酸等)、テトラデセン酸(ツズ酸、マッコウ酸、ミリストオレイン酸)、ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸等)、オクタデセン酸(オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸等)、エイコセン酸(ガドレイン酸等)、ドコセン酸(エルカ酸、セトレイン酸、ブラシジン酸等)等が挙げられる。これらは単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、ダイマー酸は不飽和脂肪酸の混合物であるトール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸などを原料としたものであってもよい。
 二量化反応は公知であるが、例えば、ルイス酸やブレンステッド酸型の液体又は固体状の触媒、好ましくはモンモリロナイト系白土を触媒として用いて、200~270℃程度の高温下の条件で反応を行うことができる。得られるダイマー酸は、通常、二重結合の結合部位や異性化によって、構造が異なるダイマー酸の混合物であり、分離して使用してもよいが、そのまま混合物として使用できる。さらに、得られるダイマー酸は、少量のモノマー酸(例えば6質量%以下、特に4質量%以下)やトリマー酸以上のポリマー酸等(例えば6質量%以下、特に4質量%以下)を含有していてもよい。
 ダイマー酸の例として、下記構造式(1)で表される鎖状ダイマー酸が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
 前記構造式(1)で表される鎖状ダイマー酸のほかに、下記構造式(2)又は(3)で表される環状ダイマー酸又はこれを含む混合物などが二量化反応によって得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
 工業的に入手可能なダイマー酸としては、例えば、ハリダイマー200、300(ハリマ化成(株)製)、ツノダイム205、395(築野食品工業(株)製)、EMPOL(登録商標)1008、1012、1026、1028、1061、1062(コグニス(株)製)、水素化ダイマー酸として例えば、Dimer acid hydrogenated(ALDRICH社製)、PRIPOL(登録商標)1009等(クローダ社製)などが挙げられる。
 本発明の別の好ましい実施形態においては、前記芳香族ポリエステル樹脂が前記炭素数10以上の脂肪族ジオール残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジオール残基の少なくとも一種をダイマージオール残基として有する。ダイマージオールは、上記ダイマー酸のカルボキシル基を還元することにより得ることができる。
 ダイマージオールの代表的なものとしては、PRIPOL(登録商標) 2033 (クローダ社製)、KX-501(荒川化学工業製)、Sovermol(登録商標) 650NS (BASF社製)、Sovermol 918(BASF社製)等がある。
 防水塗膜に優れた柔軟性及び透明性を付与する観点から、前記芳香族ポリエステル樹脂中の全酸成分残基及び全ジオール成分残基の合計中の、前記炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基、前記炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基、前記炭素数10以上の脂肪族ジオール残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジオール残基の合計含有割合が0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、2モル%以上であることが更により好ましい。防水塗膜が柔軟性を有していることにより、ファスナーテープの風合いが損なわれたり、スライダー摺動性が悪化したりするのを抑制できる。防水塗膜が透明性を有していることにより、従来のポリエステル系防水塗膜のようにファスナーテープの美観を損なうこともない。
 但し、ポリエステル樹脂中で炭素数10以上の残基の含有割合が過剰となると、ポリエステル樹脂の耐熱性を損ないやすい。そこで、防水塗膜に優れた耐熱性を付与する観点から、前記芳香族ポリエステル樹脂中の全酸成分残基及び全ジオール成分残基の合計中の、前記炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基、前記炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基、前記炭素数10以上の脂肪族ジオール残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジオール残基の合計含有割合が8モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、4モル%以下であることが更により好ましい。
 防水塗膜を構成するポリエステル樹脂組成物中には、染料、顔料、耐熱安定剤、耐候剤(紫外線吸収剤など)、耐加水分解剤、酸化防止剤、滑剤など常用の添加剤を適宜添加してもよい。各添加剤の添加量は、限定的ではないが、ポリエステル樹脂100質量部に対してそれぞれ10質量部以下であるのが通常であり、例えば0.1~5質量部とすることができ、0.3~3質量部とすることもできる。また、添加剤を加えたとしても、防水塗膜を構成するポリエステル樹脂組成物中で上記ポリエステル樹脂が占める割合は60質量%以上であるのが通常であり、70質量%以上であるのが典型的であり、80質量%以上であるのがより典型的であり、90質量%以上とすることもでき、95質量%以上とすることもでき、80~99質量%の範囲とすることもできる。
 防水塗膜を構成するポリエステル樹脂組成物には耐加水分解剤を添加することが可能であるが、本発明に係るポリエステル樹脂組成物は柔軟性が高いことから耐熱性が劣化しにくい耐加水分解剤を添加することが特に好ましい。中でも、ポリエステルとの相溶性に優れ、高温多湿の環境でもブリードアウトしにくい、白濁しにくい、200℃の高温でも揮散しにくいという理由により耐加水分解剤の一種であるポリカルボジイミドを添加することが特に好ましい。ポリカルボジイミドの添加量は、限定的ではないが、添加量が多すぎると耐熱性が低下しやすく、逆に添加量が少なすぎると耐加水分解性能の向上効果が得られにくいことから、ポリエステル樹脂100質量部に対して10質量部以下であるのが通常であり、例えば0.1~5質量部とすることができ、0.3~3質量部とすることもできる。
 前記ポリカルボジイミドとは、(-N=C=N-)で表される構造(カルボイジイミド基)を有する化合物であり、例えば、適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱し、脱炭酸反応で製造できる。数平均分子量が8000以上のポリカルボジイミドが用いられることが好ましい。ポリカルボジイミドの数平均分子量は、ポリカルボジイミド粉末をクロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)から選ばれる単一溶媒または2種以上の混合溶媒に溶解し、GPCを用いて分子量分布曲線のカーブを測定することで、ポリスチレンスタンダードから得た数平均分子量を用いることができる。
 前記ポリカルボジイミドの数平均分子量が、8000未満であると揮散性が大きくなるため反応速度定数の低下度合いが小さくなってしまう。また、前記ポリカルボジイミドの数平均分子量の上限は本発明の効果を損なわない限り特に限定はないが、ポリマー鎖の運動性の観点から、30000以下が好ましい。前記ポリカルボジイミドの数平均分子量としては、揮散性とポリマー鎖の運動性の観点から、8000~30000が好ましく、8000~15000が更に好ましい。
 前記ポリカルボジイミドは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートやこれらの混合物を重合して得られる化合物から選択できる。ポリカルボジイミドの具体例としては、ポリ(1,6-ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルベンゼン及び1,5-ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどを挙げることができる。また、市販品としては、ラインケミージャパン(株)製の「スタバクゾール」などを用いることができる。具体的には、前記ポリカルボジイミドとしては、スタバクゾールP(数平均分子量3000~4000、Rhein Chemie社製)、LA-1(数平均分子量約2000、日清紡ケミカル(株)製)、スタバクゾールP100(数平均分子量約10000、Rhein Chemie社製)、スタバクゾールP400(数平均分子量約20000、Rhein Chemie社製)を挙げることができる。その中でも、スタバクゾールP100及びスタバクゾールP400などの数平均分子量が大きいポリカルボジイミドが好ましい。
 また、本発明に係るポリエステル樹脂組成物は炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基等を有する芳香族ポリエステル樹脂を含有していることで粘着性が比較的高くなる傾向にある。そこで、スライダーと防水塗膜の間の摺動性を高めるため、ポリエステル樹脂組成物の粘着性を低下させてコンパウンド製造時にブレンドしやすくするため、更には、防水塗膜を塗工したファスナーチェーン同士が粘着しないようにするために、防水塗膜を構成するポリエステル樹脂組成物中に滑剤を添加することも好ましい。滑剤の添加量は、限定的ではないが、添加量が多すぎるとブリードアウトのおそれがあり、逆に添加量が少なすぎると所望の効果が得られにくいことから、ポリエステル樹脂100質量部に対して10質量部以下であるのが通常であり、例えば0.1~5質量部とすることができ、0.3~3質量部とすることもできる。
 滑剤は、例えば、合成樹脂系滑剤(フッ素系樹脂、アクリル系樹脂等)、パラフィン系滑剤(天然パラフィン、合成パラフィン等)、高級脂肪酸系滑剤(ステアリン酸、モンタン酸等)、エステル系滑剤(脂肪酸エステル、芳香族エステル等)、脂肪酸アマイド系滑剤(エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド等)などが挙げられる。これらの滑剤は一種のみを使用してもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも摺動性に優れるという理由により脂肪酸アマイド系滑剤が好ましい。
 また、太陽光による黄変防止のために、防水塗膜を構成するポリエステル樹脂組成物中に紫外線吸収剤を添加することも特に好ましい。紫外線吸収剤としては、限定的ではないが、インドール系、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系及びフェニルサリチレート系が挙げられ、これらは一種のみを使用してもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも高温多湿での安定性に優れ、添加による着色が少ないという理由によりベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
 また、紫外線吸収剤として、隠蔽力(光散乱性)のある顔料を添加することもできる。特に制限はないが、色調と隠蔽力(光散乱性)が特に優れていることから、酸化チタン等の無機白色顔料や、反射特性を有する無機顔料やカーボンブラック等の黒色顔料などを好ましく用いることができる。ファスナーのテープと同じ色の顔料を添加することで、外観に高級感のあるファスナーになるため好ましい。無機白色顔料に赤色や青色、黄色の顔料を配合して、ファスナーチェーンと同じような色の顔料を添加することが、特に好ましい。
 無機白色顔料としては、ZnO、TiO2、Al23・nH2O、[ZnS+BaSO4]、CaSO4・2H2O、BaSO4、CaCO3、2PbCO3・Pb(OH)2等が挙げられる。無機白色顔料の中でも色調と隠蔽力(光散乱性)が特に優れており、白色樹脂フィルムの色調と反射特性の向上に寄与することができることから、酸化チタン(TiO2)が好ましい。酸化チタンは、アナターゼ型とルチル型の2種類の結晶形のものが広く利用されている。本発明では、これら2種類の結晶形のものを用いることができるが、これらの中でも、芳香族ポリエステル樹脂への分散性に優れ、揮発性が極めて小さいことから、ルチル型の結晶形を有する酸化チタンが好ましい。
 酸化チタンとしては、顔料用グレードのものを好ましく用いることができる。透過型電子顕微鏡撮影画像の画像解析による酸化チタンの平均粒子径(平均一次粒子径)は、通常150~1000nm、好ましくは200~700nm、より好ましくは200~400nmの範囲内である。酸化チタンの平均粒子径が小さすぎると、隠蔽力が低下する。酸化チタンは、その平均粒子径が前記範囲内にあることによって、屈折率が大きく光散乱性が強いため、白色顔料としての隠蔽力が高くなる。酸化チタンは、一般に、一次粒子が凝集した二次粒子の形態で存在している。酸化チタンのBET法による比表面積は、通常1~15m2/g、多くの場合5~15m2/gの範囲内である。
 黒色顔料としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、特に限定されず、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどを使用することができ、カルボキシル基等によって表面が変性されたカーボンブラックも使用することもできる。透過型電子顕微鏡撮影画像の画像解析によるカーボンブラックの平均粒子径(平均一次粒子径)は、通常10~150nm、好ましくは13~100nm、より好ましくは15~40nmの範囲内である。カーボンブラックの平均粒子径が小さすぎると、凝集しやすく取扱いが困難となることがある。平均粒子径が大きすぎると、分散不良や外観不良を招くおそれがある。カーボンブラックのBET法による比表面積は、通常20~250m2/g、好ましくは50~200m2/g、より好ましくは80~200m2/gの範囲内である。
 紫外線吸収剤の添加量は、限定的ではないが、添加量が多すぎるとブリードアウトが発生しやすくなり、逆に添加量が少なすぎると所望の効果が得られにくいことから、ポリエステル樹脂100質量部に対してそれぞれ10質量部以下であるのが通常であり、例えば0.1~5質量部とすることができ、0.3~3質量部とすることもできる。
 本発明に係る防水塗膜はポリエステル樹脂組成物により構成されていることから染色も容易であり、例えばインクジェット染色によって種々の色に着色可能である。また、本発明に係る防水塗膜は透明性が高いので、着色による色合いの制御も容易である。
 防水塗膜に使用するポリエステル樹脂組成物は、金型から押し出してカーテン塗布可能であるように、200℃における溶融粘度が50~3000dPa・sの範囲であることが望ましい。200℃における溶融粘度を50dPa・s以上、好ましくは100dPa・s以上、より好ましくは200dPa・s以上とすることにより、溶融樹脂が流量過多となってファスナーテープの幅から逸脱するのを防止でき、また、膜厚制御性が向上する。また、200℃における溶融粘度を3000dPa・s以下、好ましくは2000dPa・s以下、より好ましくは1000dPa・s以下とすることにより、流量過小となって塗膜形成速度が遅くなることを防止でき、押出機や金型に対する負荷が増大するのを防止でき、更に、カーテン塗布時にファスナーテープに対する樹脂からの押圧を抑制できる。
 溶融粘度は分子量を調節することで制御可能である。また、ポリエステル樹脂を構成する酸成分及びジオール成分の構造によっても溶融粘度を制御することが可能である。構成成分に分岐構造が多くなると溶融粘度が下がり、長い直鎖構造が多いと溶融粘度を高める効果がある。
 本発明において、溶融粘度は以下の方法により測定する。試料を200℃で15分間予め加熱し、次いでJIS K7117-1(1999)に準拠してB型粘度計によって200℃の粘度の値を読み取ることにより測定する。
 再び図1~3を参照すると、防水塗膜19はファスナーテープ18の長手方向及び短手方向に延在して当該主表面の全部を被覆することができる。図示の実施形態において、防水塗膜19の外表面はその上をスライダー12が通過する予定の箇所は少なくとも平坦となっている。スライダー12の摺動を円滑にするためである。スライダー12が通過しない箇所の防水塗膜19の外表面は凹凸形状としてもよいが、製造容易性や美観の観点から防水塗膜19の外表面全体を平坦とするのが好ましい。
 防水機能を効果的に発揮すべく、防水塗膜19が形成された側を外側にし、ファスナーエレメント11の列を内側にして物品に取付けることが好ましい。スライダー12の引手15は開閉操作の容易性の観点からは外側に取り付けることが好ましい。
 図示の実施形態においては、ファスナーチェーンが閉じた状態において、各ファスナーテープ18の主表面上に形成されている防水塗膜19の端縁同士は、各ファスナーテープ18の前記一側縁から互いに接近する方向に延出して当接している。これにより、防水性を確保することができる。防水塗膜19の端縁同士はエレメント11の列の噛合中心線A付近で当接することでスライダー12の摺動が円滑化するという利点が得られる。
 防水塗膜19の厚みは耐摩耗性や引っ掻き強度を高める観点から50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、防水塗膜19の厚みはファスナーテープの柔軟性が低下するのを防止し、また、衝撃により外表面に凹みが発生するのを防止する観点から350μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく200μm以下であることが更により好ましい。
 本発明において、防水塗膜19の厚みは以下の方法により測定する。まず、長手方向に対して20mm以上、幅方向に対して5mm以上の間隔を置いて、ファスナーチェーンから5mm角のサンプルを16個切り出す。マイクロフォーカスX線透視/CT装置(例:株式会社島津製作所製「SMX225CT」)を用いて、切り出したサンプルを撮像する。以下にマイクロフォーカスX線透視/CT装置の測定条件を示す。
  SID:600mm(X線管からX線検出器までの距離)
  SOD:22.8mm(X線管から回転台の中心までの距離)
  VOXEL SIZE:0.012mm
  X線管の電圧:90kV
  X線管の電流:40μA
  ビュー数:1200
  アベレージ数:10
  スライス厚:0.013mm
  画像サイズ:512×512 pixel
 マイクロフォーカスX線透視/CT装置は、X線を放射するX線管球と、X線を検出するX線検出器と、測定対象物を載置して回転させる回転台と、を有する。撮像によって得られたCT画像から防水塗膜の厚みをファスナーチェーンの長手方向に対して1mm間隔で3箇所測定し、平均値を算出した。これを切り出した16個のサンプルについて行い、16個の平均値を防水塗膜の厚みの測定値とする。
(1-2.ファスナーテープ)
 各ファスナーテープ18の材質としては、ファスナーテープに一般的に使用される天然繊維又は合成繊維とすることができ、特に制限はないが、例えばポリアミド樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、アクリル樹脂繊維等が挙げられる。これらの合成繊維を織成又は編成することによりファスナーテープを作製可能である。リサイクル性を高める上ではポリエステル樹脂繊維を使用することが好ましい。
 ファスナーテープ用のポリエステル樹脂は、ファスナーテープ用に使用されるポリエステルとして公知の任意の材料が使用可能であるが、ファスナーテープ用のポリエステル樹脂としても芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。ファスナーテープ用のポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、又はそれらの組み合わせから選択されるポリエステル樹脂が挙げられる。これらの中でも機械的強度と染色性の両方に優れるという理由により、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂中には染料、顔料、耐熱安定剤、耐候剤、耐加水分解剤、酸化防止剤など常用の添加剤を適宜添加してもよい。
 芯紐、縫糸、エレメント及びファスナーテープの一種以上には、撥水加工を施してもよい。撥水加工の方法としては、撥水剤を対象部品表面に付着させる方法が挙げられる。ファスナーテープについては、上述した防水塗膜の上に撥水剤を付着させることができる。
 撥水剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、アクリル系撥水剤、シリコーン複合系撥水剤、パラフィン系化合物、エチレン尿素系化合物、ジルコニウム系化合物、脂肪酸アミド系化合物、メチロールアミド系化合物、アルキル尿素型、脂肪酸アミド型等の撥水剤を用いることができる。
 上記フッ素系化合物の撥水剤として、ポリペンタデカフルオロオクチルアクリレート、ポリトリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合物などや、パーフルオロラウリン酸、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロn-アルキルアクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ペンタデカンブチルエチルメタアクリレート、ヘキサフロオロプロピレン等を用いることができる。
 また、その他のフッ素系化合物の撥水剤として、フッ素原子を含有するオレフィンの2種以上からなる共重合体、フッ素原子を含有するオレフィンと炭化水素モノマーとの共重合体等を用いることができる。なお、撥水剤は、バインダー樹脂とともに、織編物に付与することが撥水性の耐久性を高める上で好ましい。
 シリコーン系化合物として、ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、第4級アンモニウム塩変性、高級アルキル変性、フッ素変性などの各種変性シリコーンや、メチルハイドロジェンポリシロキサンとトルエン、キシレン、n-ヘキサン、n-へプタン等の芳香族等の硬化促進触媒とからなるシリコーン系撥水処理剤を用いることができる。シリコーン系撥水剤は、(1)水に対する接触角が大きく撥水性が優れている、(2)表面張力が小さいため基材をぬらしやすく均一な皮膜を形成できる、(3)通気性がある、(4)耐久性がよく耐洗濯性・耐ドライクリーニング性に優れる等の長所を備えている。
 また、シリコーン系撥水剤として、特開昭58-118853号公報又は特開昭60-96650号公報に記載された、アニオン的に安定化されているヒドロキシル基含有ジオルガノポリシロキサン、コロイドシリカ、及び硬化触媒からなるシリコーンエマルジョン、又は、特開平7-150045号公報に記載された、イオン的あるいは非イオン的に安定化されたアルコキシ基含有ジオルガノポリシロキサン、及びチタン触媒からなるシリコーンエマルジョンなどの、水分の除去によって室温で硬化しエラストマー状の硬化物を与える室温硬化性水性シリコーンエマルジョン組成物等を用いることができる。
 また、撥水剤の耐久性向上のために、上記化合物に対して架橋剤を併用することができる。架橋剤として、メラミン系樹脂、ブロックイソシアネート系樹脂、イミン系樹脂等を用いることができる。
 また、撥水剤耐久性向上のために、上記化合物とともにバインダー樹脂を含ませることもできる。バインダー樹脂として、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン系樹脂等を用いることができる。
 架橋剤やバインダー樹脂は、両方混合して使用してもよく、その場合には、処理液としては、ポリフルオロアルキル基含有アクリル共重合体とアミノプラスト樹脂または多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂との混合液の形で用いることができる。
(2.ファスナーチェーンの製造方法)
 次に、本発明に係るファスナーチェーンの製造方法の一例について図4を参照しながら述べる。まず、一側縁同士が所与の間隔で隣接している一対のファスナーテープと、各ファスナーテープの前記一側縁の主表面上に取り付けられたエレメント列とを備えたファスナーチェーン21を用意する。ファスナーチェーン21を構成する部材の説明は先述した通りである。
 次いで、200℃における溶融粘度が先述した範囲にあるポリエステル樹脂組成物22を金型23の出口において150~250℃で押し出し、各ファスナーテープの主表面であってエレメント列が取り付けられた主表面とは反対側の主表面上及び前記間隔(s)上にポリエステル樹脂組成物22をカーテン塗布する。ポリエステル樹脂組成物の押し出しは、例えば押出機24と金型23を利用した慣用の押出成形法により実施可能である。ポリエステル樹脂組成物22の200℃における溶融粘度の設定理由は先述した通りである。金型23の出口におけるポリエステル樹脂組成物22の温度を150℃以上としたのは、当該樹脂組成物を塗布可能な粘度にするためである。金型出口におけるポリエステル樹脂組成物の温度は好ましくは170℃以上であり、より好ましくは190℃以上である。金型出口におけるポリエステル樹脂組成物の温度を250℃以下としたのは、当該樹脂組成物の熱劣化を防ぐためである。金型出口におけるポリエステル樹脂組成物の温度は好ましくは230℃以下であり、より好ましくは210℃以下である。
 ポリエステル樹脂組成物は、カーテン塗布によりファスナーテープの主表面上に塗布することが好ましい。金型出口から排出されたばかりのポリエステル樹脂組成物は高温であり流動性が比較的高いため、高い圧力でファスナーテープに押し込まれると、一対のファスナーテープ間に設けられた間隔(s)によって生じる隙間へポリエステル樹脂組成物が入り込みやすい。ポリエステル樹脂組成物が当該隙間に入り込みすぎるとスライダーと接触し、スライダーとの摺動によって防水塗膜が破損するという不具合が発生するおそれがある。
 この点、カーテン塗布の場合、金型出口から排出された溶融ポリエステル樹脂組成物は、排出時の圧力が空気中に解放された後にファスナーテープの主表面上に到達するため、ポリエステル樹脂組成物からのファスナーテープの主表面に対する押圧を小さくすることができる。これにより、一対のファスナーテープ間に設けられた間隔(s)によって生じる隙間に不都合な程度にポリエステル樹脂組成物が入り込むことを防止できるのである。
 また、所定の溶融粘度をもつポリエステル樹脂組成物をカーテン塗布することで、所望の形状及び寸法のポリエステル樹脂組成物がファスナーテープ上に積層可能となる。このため、金型出口の形状及び寸法に応じて所望の厚みや幅で塗布することができ、帯状に均一な厚みで塗布することも可能となる。カーテン塗布は、ファスナーチェーンをその長手方向に搬送しながら実施するのが工業生産上有利である。
 金型出口は一対のファスナーテープの幅方向全体にわたって延在していることが好ましい。これにより一対のファスナーテープの主表面上にテープの幅方向に途切れのない防水塗膜を形成することができる。また、ファスナーテープ上に塗布されるポリエステル樹脂組成物の厚みは金型出口のスリット幅(w)を調節することで制御可能である。当該スリット幅(w)は樹脂層の強度保持の理由から0.01mm以上とすることが好ましく、0.05mm以上とすることがより好ましく、0.1mm以上とすることが更により好ましい。また、当該スリット幅(w)は樹脂層の厚膜化による重量増加及び柔軟性低下を防止するために0.8mm以下とすることが好ましく、0.4mm以下とすることがより好ましく、0.25mm以下とすることが更により好ましい。
 カーテン塗布によれば、金型出口から排出されたポリエステル樹脂組成物によるファスナーテープ主表面への圧力を1MPa以下とすることができ、この範囲の圧力であれば一対のファスナーテープ間の隙間にポリエステル樹脂組成物が深く入り込むのを効果的に抑制できる。当該圧力は好ましくは0.8MPa以下であり、より好ましくは0.5MPa以下である。ただし、金型出口から排出されたポリエステル樹脂組成物によるファスナーテープ主表面への圧力が小さすぎるとファスナーテープの繊維同士の間に樹脂が入り込まず密着度が低下することから、当該圧力は0.1MPa以上とするのが好ましく、0.2MPa以上とするのがより好ましい。
 本発明において、当該圧力は、ファスナーテープの下に圧力計を設置し、ポリエステル樹脂組成物を連続的に流すことで、ファスナーテープに掛かる圧力を測定する。
 金型出口から排出されたポリエステル樹脂組成物によるファスナーテープ主表面への圧力は、図4に示すように、金型出口からポリエステル樹脂がカーテン塗布されるファスナーテープ主表面までの距離(g)を調節することで制御可能であり、当該距離(g)は例えば0.1~2.0mmとすることができる。当該距離(g)は金型と表面に凹凸があるファスナーテープを接触させない観点から0.1mm以上とするのが好ましく、0.3mm以上とするのがより好ましく、0.5mm以上とするのが更により好ましい。当該距離(g)は金型出口から出た形状を保持する観点から2.0mm以下とするのが好ましく、1.5mm以下とするのがより好ましく、1.0mm以下とするのが更により好ましい。
 図4に示すように、ファスナーテープの主表面上にポリエステル樹脂組成物22をカーテン塗布した後は、ポリエステル樹脂組成物塗布面側からの100~250℃に加熱された金属製のロール25とポリエステル樹脂非塗布面(ファスナーテープ)側からの硬度5~50°のロール26の間にファスナーチェーン21を0.1~10.0MPaで加圧しながら通す。当該工程により、ファスナーテープの主表面上の微細な凹凸にポリエステル樹脂が適度に入り込み、アンカー効果による接着強度の向上が図られる。当該工程は、カーテン塗布の後、ファスナーチェーンをその長手方向に搬送しながら連続的に実施するのが工業生産上有利である。
 ポリエステル樹脂組成物塗布面側に金属製のロール25を使用するのは、機械的強度、耐熱性及び平滑性に優れていると共に、ファスナーテープ上に塗布されたポリエステル樹脂組成物がロールに張り付きにくいという理由による。ロール25を、100~250℃に加熱することで、ポリエステル樹脂組成物が軟化し、ファスナーテープの微細な凹凸に更に進入してより強固なアンカー効果が得られる。ロール25の加熱温度はポリエステル樹脂組成物の軟化を促進するという理由により、120℃以上が好ましく、150℃以上が好ましい。また、ロール25の加熱温度はポリエステル樹脂組成物の熱劣化を防ぐ観点から220℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。
 ポリエステル樹脂組成物非塗布面(ファスナーテープ)側に硬度5~50°の柔らかなロール26を使用することで、ファスナーチェーンがロールを通過する際に、ロールの表面がファスナーテープ主表面の微細な凹凸に追従して変形するため、ポリエステル樹脂とファスナーテープの接着が更に促進され、接着不良部を少なくすることが可能となる。ロールの硬度を5°以上としたのはロールの柔らかすぎることによる塑性変形を防止するという理由からであり、好ましくは7°以上であり、より好ましくは10°以上である。また、ロールの硬度を50°以下としたのはロールが硬すぎることによる微細な凹凸の追従の阻害を防止するという理由からであり、好ましくは40°以下であり、より好ましくは30°以下である。このような範囲の硬度をもつ材料としては、限定的ではないが、シリコーン樹脂、テフロン樹脂、ゴムロール等が挙げられ、長時間における柔軟性の持続の理由によりシリコーン樹脂が好ましい。
 本発明においては、ロールの硬度は以下の方法により測定する。JIS K6253(2006)に準拠して、デュロメーターをロール表面に押し付け硬度を測定する。
 ポリエステル樹脂組成物非塗布面(ファスナーテープ)側のロール26を加熱する必要はない。ファスナーテープ側のロールを加熱すると、樹脂がコートされないことによりテープが直接加熱されるので、ファスナーテープ自体の熱変形の可能性が考えられるからである。
 ポリエステル樹脂組成物が塗布されたファスナーチェーンをこれらのロールの間を通過させるときの圧力はロールと樹脂組成物塗布面を確実に密着させる観点から0.5MPa以上とするのが好ましく、1.0MPa以上とするのがより好ましく、1.5MPa以上とするのが更により好ましい。当該圧力は圧力が強すぎる事による樹脂層の漏れを防止する観点から10MPa以下とするのが好ましく、5MPa以下とするのがより好ましく、2MPa以下とするのが更により好ましい。
 本発明において、ロール通過時の当該圧力は、ロール間にファスナーテープをはさみ、樹脂組成物非塗布面側ロールが樹脂組成物塗布面側ロールを押す圧力を、JIS B7505(1999)に準拠しているブルドン管圧力計により圧力を測定する。
 次いで、ファスナーチェーン上の前記ポリエステル樹脂を冷却硬化することで防水塗膜がしっかりとファスナーテープの主表面上に固定されるようになる。冷却条件としてはテープ表面にエアーを吹き掛け冷却することができる。急激に樹脂を冷却した場合、収縮による過度な変形が起きるため、これを防止する理由により、このときの風速は、30m/s以下が好ましく、より好ましくは20m/s以下であり、さらにより好ましくは10m/s以下である。当該冷却工程も、ロール加圧の後、ファスナーチェーンをその長手方向に搬送しながら連続的に実施するのが工業生産上有利である。
 本発明において、当該風速は、JIS T8202(1997)に準拠している風速計により測定する。
 その後、ファスナーチェーンの前記間隔(s)上に形成された防水塗膜を当該間隔の間で切断する。好ましくは当該間隔の中心線Aに沿って切断する。切断は例えばスリッター機(図示せず)を使用すればよい。当該切断工程も、ファスナーチェーンをその長手方向に搬送しながら連続的に実施するのが工業生産上有利である。
 本発明に係るスライドファスナーは衣料品、鞄類、靴類及び雑貨品といった日用品の開閉具の他、宇宙服、化学防護服、ダイビングスーツ、救命ボート、サバイバルスーツ等の防護服類、輸送コンテナ用のカバー類やテント等に好適に使用可能である。
 本発明及びその利点をより良く理解するため、以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<試験例1>
(1.ポリエステル樹脂の作製)
 攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した2リットルの3つ口フラスコに、表1に記載の各試験番号に応じた配合割合で、ジカルボン酸としてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、ダイマー酸(DA)、アジピン酸(AA)、セバシン酸(SA)、水添ダイマー酸(H-DA)、1,6-ナフタレンジカルボン酸(NDCA)及び1,12-ドデカン二酸(DDA)を、グリコールとしてエチレングリコール(EG)、1,2-プロピレングリコール(PG)、1,4-ブチレングリコール(1,4-BG)、ジエチレングリコール(DEG)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、1,12-ドデカンジオール(DMG)、4-ヒドロキシメチルシクロヘキサンプロパノール(HCHP)、4-ヒドロキシメチルシクロヘキサンイソプロパノール(HCHIP)、ダイマージオール(DG)及び水添ダイマージオール(H-DG)を、触媒として少量のテトライソプロピルチタネートをそれぞれ仕込み、攪拌しながら180℃まで昇温した後、180℃から240℃までは攪拌しながら徐々に昇温し、常圧下、240℃で5時間エステル化反応を行った。その後、フラスコ内の圧力を133Pa(1torr)まで徐々に下げていき、133Paに到達後5時間反応を行うことで表1に記載の種々の樹脂組成をもつ高粘性の水飴状ポリエステル樹脂(P-1~P-27)を得た。
 なお、ここで使用したダイマー酸(DA)、水添ダイマー酸(H-DA)、ダイマージオール(DG)及び水添ダイマージオール(H-DG)は以下である。
ダイマー酸(DA):HARIDIMER200(主成分の炭素数が36、ハリマ化成社製)
水添ダイマー酸(H-DA):PRIPOL1009(主成分の炭素数が36、クローダ社製)
ダイマージオール(DG):ハリダイマー200のカルボキシル基の還元品
水添ダイマージオール(H-DG):PRIPOL1009のカルボキシル基の還元品
(2.ポリエステル樹脂組成物のコンパウンドの作製)
 合成したポリエステル樹脂はゴム弾性があり、常温では粉砕機で粉砕できないため、合成したポリエステル樹脂とドライアイスを混合して、粉砕機に投入して凍結粉砕した後、乾燥することにより、ポリエステル樹脂粉体を作製した。次いで、表2に記載のポリエステル樹脂100質量部に対して、ポリカルボジイミド:0.5質量部、紫外線吸収剤:0.5質量部、滑剤:1.0重量部の割合で、ブレンダーでドライブレンドして、ポリエステル樹脂組成物のコンパウンドを作製した。使用した添加剤は以下である。
ポリカルボジイミド:Rhein Chemie社製、商品名「スタバックゾール P-100」(以下、「P-100」と呼ぶ。)
滑剤:花王株式会社製、商品名「脂肪酸アマイドS」(以下、「アマイドS」と呼ぶ。)
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系):ケミプロ化成株式会社、商品名「KEMISORB73」(以下、「ケミソーブ73」と呼ぶ。)
(3.ファスナーチェーンの作製)
 各試験例について、テープ幅16.5mm、テープ厚み0.6mmの長尺のポリエステル樹脂製ファスナーテープを2本用意し、各ファスナーテープの側縁にポリエステル樹脂製のコイル状のエレメント列を縫製して向かい合うエレメント列を噛合させてファスナーチェーンを組み立てた。
(4.ファスナーチェーンの作製:カーテン塗布による防水塗膜の形成)
 図4に示す構造をもつカーテン塗布装置に上記で作製したポリエステル樹脂組成物のコンパウンドを投入し、長手方向に搬送される白色及び黒色のファスナーチェーン上にポリエステル樹脂組成物(防水塗膜)の塗布を連続的に行った。この際、ファスナーチェーンの搬送速度は10m/min、金型出口の温度は200℃(何れの樹脂組成物も200℃における溶融粘度は500~800dPa・s程度)、金型出口のスリット幅(w)は33mmとした。また、金型出口からファスナーテープ主表面までの距離(g)は1.0mmとし、ポリエステル樹脂組成物の吐出量は250g/minとし、カーテン塗布時のファスナーテープ主表面に対する樹脂組成物の圧力を0.4MPaとした。塗布後、ファスナーテープ表面に空気を10m/sの風速で吹き掛けることによりポリエステル樹脂組成物を冷却硬化させた。最後に、ファスナーテープの防水塗膜が塗布された面とは反対側の面に、コイル状エレメント列の表面も含めて、ロールコーターでフッ素系の水溶性撥水剤を塗布、乾燥して、防水塗膜の厚みが120~140μm程度の白色及び黒色のファスナーチェーン(F-1~F-28)を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
(5.ファスナーチェーンの特性評価)
 上記のようにして得られた各ファスナーチェーンに対して、各種特性評価を行った。
(1)柔軟性試験
 図8は、柔軟性試験装置50の作動前の状態を示す。図9は、柔軟性試験装置50を作動させてファスナーチェーンを加圧した状態を示す。120mm以上のスライドファスナーチェーンの試験サンプル60をエレメントが噛み合った状態で、コイルエレメントが内側になるように、中央付近でループ状に折り曲げ、ループ部60aを形成し、両端で重なり部60bを形成する。ループ部60aの長さは80mm、重なり部60bの長さは20mm以上とする。重なり部60bは、テープ等で止めると好ましい。
 図8に示すように、柔軟性試験に用いる柔軟性試験装置50は、上下に移動する移動部材51と、移動部材51に取り付けられ、荷重を電気信号に変換するロードセル52と、ロードセル52に取り付けられ、試験サンプル60のループ部60aを加圧する加圧子53と、試験サンプル60の重なり部60bを固定するクランプ54と、を有する。
 クランプ54は、ループ部60aを上方に突出させ、重なり部60bを挟んだ状態で、試験サンプル60を支持する。この状態で、移動部材51は、下方へ移動する。移動部材51が下方へ移動すると、ロードセル52及び加圧子53も下方へ移動する。そして、図9に示すように、加圧子53は、ループ部60aを押圧する。試験者は、移動部材51が所定の位置まで下方へ移動した後、ロードセル52によって移動範囲内での最大荷重を調べる。一つの試験サンプルに対して5回ずつの試験を行い、それぞれの平均値を求めた。
(2)往復開閉試験
 JIS S 3015(2007)に準じて、MH級で500回の開閉を伴う往復開閉耐久試験を行った。試験後のサンプルに対して、下記に示す基準で防水塗膜表面のうちスライダーの通過箇所(観察面積750mm2)の外観評価を行った。評価基準は以下の通りである。
◎:スリ傷や摺動跡が全く見られない。
○:微かなスリ傷や摺動跡が見える。
△:スリ傷や摺動跡が見える。
×:膜剥がれが見える。
備考:△以上が製品として許容されるレベル。
(3)透明性
 黒色のファスナーチェーンについて、作製直後と常温で一週間放置後の透明性評価を目視で行った。評価基準は以下の通りである。防水塗膜塗布前の黒色ファスナーチェーンの色範囲は、L***(D65)で、L*=19.0~21.0、a*=-1.0~1.0、b*=-1.0~1.0である。
 ◎:透明で白化が全く確認できない。
 ○:部分的に軽微な白化が確認された。
 △:全体的に軽微な白化が確認されたが、実用上問題ない。
 ×:明らかな白化が確認され、実用上問題となる。
(4)着色性
 白色のファスナーチェーンについて、防水塗膜塗布前の白色ファスナーチェーンのb*を基準として、色差Δb*を測定した。ポリエステル樹脂塗布前の白色ファスナーチェーンの色範囲は、L***(D65)で、L*=88.0~90.0、a*=-1.0~1.0、b*=-2.0~0.0である。測色にはコニカミノルタ社製の分光測色計CM-3700Aを用い、測定径5×7mm、SCIの反射測定を行った。ファスナーチェーンのテープ部分を切り出し、1cm間隔で、15点測定を行い、その平均値を色差Δb*を着色性とし、以下のランクに分けた。
 ◎:2.0未満
 ○:2.0以上、3.0未満
 △:3.0以上、4.0未満
 ×:4.0以上
 4.0未満であれば、実用上問題のないレベル。
(5)防水性試験
 雨試験B法(JIS L1092(2009)の付属書JA参照)に準拠して、防水性試験を行った。作製したファスナーチェーンのサンプルの固定ジグについて、図5を用いて説明する。図5は、雨試験B法に用いる試験サンプルの固定ジグの平面図と側面の断面図(A-A矢視図)を示す図である。
 図5に示すように、固定ジグ30は、上方から降り注ぐ水を試験サンプル36に当てるための開口窓を備えた開口部材34と、開口部材34の下側に配置して、試験サンプル36を透過した水分を貯留するための貯留部を備えた貯水部材32とを備えている。試験サンプル36は、開口部材34と貯水部材32との間に挟んで使用する。また、試験サンプル36が水没しないようにしつつ所定の傾斜を維持するために、雨試験B法では角度固定具38を用いて、固定ジグ30を45度の角度に固定して雨試験を実施する。なお、開口部材34の開口窓の寸法は、図5に示すように、窓長さ200mm、窓幅15mmである。また、試験サンプル36の長さは、250mmである。
 図6は、雨試験B法を実施する際の人工降雨装置の外観を示す図である。なお、固定ジグ30及び角度固定具38については、断面を取って表している。図6に示すように、試験サンプル36を取り付けた固定ジグ30を角度固定具38に乗せて、45度の角度に設定する。固定ジグ30の上方2000mmの位置に、散水用のスプレーノズル40を配置する。スプレーノズル40には、給水用の配管42を接続して内部に水を圧送する。配管42の途中には、散水する水の水量を調節する水量調節弁44を配置する。
 雨試験B法を実施する際には、試験サンプル36を250mmの長さに切断して、その試験前の質量(M0)を予め計量しておく。そして、その試験サンプル36を、開口部材34と貯水部材32との間の所定の位置に挟む。また、同時に、試験終了後に貯水部材32の内部に溜まった水を吸い取って試験サンプル36を透過した水の質量を計測するための吸取紙を準備するとともに、この吸取紙の当初質量(M1)を予め計量しておく。
 次に、試験サンプル36を挟んだ固定ジグ30を、角度固定具38に乗せて45度の角度に設定し、スプレーノズル40の下方2000mmの位置に配置する。次に、雨量計を観測しながら、水量調節弁44を調節して降雨量を100mm/hに設定する。そして、固定ジグ30に対する水の散水を開始し、15分経過した後に散水を停止する。
 散水が終了したら、先ず試験サンプル36を固定ジグ30から取り外して、試験後の試験サンプル36の質量(M2)を計量する。また、貯水部材32の内部に溜まった水溜46(図7参照。)に吸取紙を浸し、貯水部材32の内部に溜まった水を全て吸い取る。そして、吸水後の質量(M3)を計量する。
 次に、浸透量(g)=(M2-M0)+(M3-M1)を計算して、雨試験B法による水の浸透量を算出する。
 図7に、散水により試験サンプル36を透過した水が、貯水部材32の内部に溜まって、水溜46が存在している状態を示す。なお、説明の都合上、固定ジグ30及び角度固定具38については断面を取って表している。
(6)耐熱性
 JIS-L-0850(1994)の「ホットプレッシングに対する染色堅ろう度試験方法の乾熱試験機法(A-2法)」に準じて乾燥試験を行った。ファスナーチェーンのテープ部分を切り出して試験片とし、防水塗膜が試験台の綿布側になるように、試験片を載せ、150℃に設定した加熱部を4kPaで15秒間重ねる。試験片が30℃以下になるまで、常温で放置した。試験片と綿布を剥離し、綿布に付着した樹脂の面積を測定した。5回試験を行い、その平均値を求めた。
 耐熱性(%)=付着面積÷加圧接触面積×100
 ※値が小さいほど、耐熱性に優れている。
<試験例2>
 試験例1のファスナーチェーンF-13における添加剤の量及び種類を表3に記載の通りに変えた以外はファスナーチェーンF-13と同様の手順で、ファスナーチェーンF-31~47を作製した。但し、F-44は黒色ファスナーチェーンで、それ以外は白色ファスナーチェーンとした。試験例2で新たに使用した添加剤は以下である。
<添加剤>
ポリカルボジイミド:日清紡ケミカル株式会社製、商品名「LA-1」(数平均分子量約2000)(以下、「LA-1」と呼ぶ。)
ポリカルボジイミド:Rhein Chemie社製、商品名「P-400」(数平均分子量約20000)(以下、「P-400」と呼ぶ。)
紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系):ケミプロ化成株式会社製、商品名「KEMISORB10」(以下、「ケミソーブ10」と呼ぶ。)
紫外線吸収剤(顔料系 酸化チタン):デュポン社製、商品名「TI-PURE(登録商標)R101」(以下、「R101」と呼ぶ。)
紫外線吸収剤顔料(顔料系 カーボンブラック):三菱化学株式会社製、商品名「カーボンブラック#45」(以下、「#45」と呼ぶ。)
滑剤(フッ素系樹脂滑剤):株式会社喜多村製、商品名「KTL-450A」(以下、「KTL-450A」と呼ぶ。)
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 得られたファスナーチェーンに対しては、試験例1と同様の方法で「着色性」及び「耐熱性」を評価した。更に、下記に示す方法により、「ブリードアウト性」、「耐加水分解性」、「耐光性」、「高温多湿後の耐光性」及び「摺動抵抗」に関する評価を行った。結果を表4に示す。
(ブリードアウト性)
 ファスナーチェーンを70℃相対湿度90%の恒温恒湿槽内に入れ、1000時間の暴露試験を行った後、ファスナーチェーンの表面を観察することによりブリードアウトの有無を評価した。
◎:表面にブリードアウトがまったくない、
○:表面に部分的なブリードアウトがかすかにわかる、
△:表面に全面的なブリードアウトがかすかにわかる、
×:表面に全面的なブリードアウトがはっきりわかる。
(耐加水分解性)
 ファスナーチェーンを70℃相対湿度90%の恒温恒湿槽内に入れ、1000時間の暴露試験を行った。試験後のファスナーチェーンをJIS S 3015(2007)に準じて、MH級で10回の開閉を伴う往復開閉耐久試験を行い、外観評価を行った。
 ◎=全く変化なし。
 ○=部分的な白化が見られる。
 △=部分的な樹脂層の浮きが見られる。
 ×=樹脂層が劣化し、剥がれが見られる。
(耐光性)
 白色のファスナーチェーンに対しては、JIS-L-0842(2004)(第3露光法)に準じて、カーボンアーク灯光による耐光性試験を行った。耐光性試験前のファスナーチェーンのb*を基準として、色差Δb*を測定した。防水塗膜塗布前の白色ファスナーチェーンの色範囲は、L***(D65)で、L*=88.0~90.0、a*=-1.0~1.0、b*=-2.0~0.0である。測色にはコニカミノルタ社製の分光測色計CM-3700Aを用い、測定径5×7mm、SCIの反射測定を行った。ファスナーチェーンのテープ部分を切り出し、1cm間隔で、15点測定を行い、色差Δb*の平均値を耐光性とし、以下のランクに分けた。
 黒色のファスナーチェーンF-44に対しても、白色と同様の耐光性試験を行った。防水塗膜塗布前の黒色ファスナーチェーンの色範囲は、L***(D65)で、L*=19.0~21.0、a*=-1.0~1.0、b*=-1.0~1.0である。
 ◎:2.0未満
 ○:2.0以上、3.0未満
 △:3.0以上、4.0未満
 ×:4.0以上
 4.0未満であれば、実用上問題のないレベル。
(高温多湿処理後の耐光性)
 ファスナーチェーンを70℃相対湿度90%の恒温恒湿槽内に入れ、1000時間の暴露試験を行い、続けて前記と同様の耐光性試験を行った。
(摺動抵抗)
 JIS S 3015(2007)に準じて、摺動抵抗を評価した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
10  スライドファスナー
11  エレメント
12  スライダー
13  芯紐
14  縫糸
15  引手
16  上止め
18  ファスナーテープ
19  防水塗膜
21  ファスナーチェーン
22  ポリエステル樹脂組成物
23  金型
24  押出機
25  樹脂組成物塗布面側のロール
26  樹脂組成物非塗布面側のロール
30  固定ジグ
32  貯水部材
34  開口部材
36  試験サンプル
38  角度固定具
40  スプレーノズル
42  配管
44  水量調節弁
46  水溜
48  オーバーフロー
50  柔軟性試験装置
51  移動部材
52  ロードセル
53  加圧子
54  クランプ
60  試験サンプル
60a ループ部
60b 重なり部

Claims (15)

  1.  少なくとも一方の主表面上に防水塗膜が形成された一対のファスナーテープのそれぞれの側縁部に沿って取着されたファスナーエレメントの列が互いに噛み合った構成を有するファスナーチェーンであって、前記防水塗膜は炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基、炭素数10以上の脂肪族ジオール残基、及び炭素数10以上の脂環族ジオール残基よりなる群から選択される1種又は2種以上の残基を有する芳香族ポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂組成物により形成されているファスナーチェーン。
  2.  前記芳香族ポリエステル樹脂中の全酸成分残基及び全ジオール成分残基の合計中の、前記炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基、前記炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基、前記炭素数10以上の脂肪族ジオール残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジオール残基の合計含有割合が0.5~8モル%である請求項1に記載のファスナーチェーン。
  3.  前記芳香族ポリエステル樹脂が前記炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジカルボン酸残基の少なくとも一種をダイマー酸残基として有する請求項1又は2に記載のファスナーチェーン。
  4.  前記芳香族ポリエステル樹脂が前記炭素数10以上の脂肪族ジオール残基及び前記炭素数10以上の脂環族ジオール残基の少なくとも一種をダイマージオール残基として有する請求項1~3の何れか一項に記載のファスナーチェーン。
  5.  前記ダイマー酸残基が水添ダイマー酸残基である請求項3に記載のファスナーチェーン。
  6.  前記ダイマージオール残基が水添ダイマージオール残基である請求項4に記載のファスナーチェーン。
  7.  前記ポリエステル樹脂組成物がポリカルボジイミドを含有する請求項1~6の何れか一項に記載のファスナーチェーン。
  8.  前記ポリエステル樹脂組成物が滑剤を含有する請求項1~7の何れか一項に記載のファスナーチェーン。
  9.  前記ポリエステル樹脂組成物が紫外線吸収剤及び顔料のうち少なくとも一方を含有する請求項1~8の何れか一項に記載のファスナーチェーン。
  10.  前記ポリエステル樹脂組成物中の前記芳香族ポリエステル樹脂の含有割合が60質量%以上である請求項1~9の何れか一項に記載のファスナーチェーン。
  11.  ファスナーテープがポリエステル樹脂製である請求項1~10の何れか一項に記載のファスナーチェーン。
  12.  前記防水塗膜はファスナーテープとの界面においてファスナーテープの主表面の凹凸に入り込んでいる請求項1~11の何れか一項に記載のファスナーチェーン。
  13.  前記防水塗膜が染色されている請求項1~12の何れか一項に記載のファスナーチェーン。
  14.  請求項1~13の何れか一項に記載のファスナーチェーンを備えたスライドファスナー。
  15.  請求項14に記載のスライドファスナーを備えた物品。
PCT/JP2015/075265 2015-09-04 2015-09-04 スライドファスナーチェーン及びスライドファスナー WO2017037954A1 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
CN201580082817.0A CN108024602B (zh) 2015-09-04 2015-09-04 拉链链条及拉链
PCT/JP2015/075265 WO2017037954A1 (ja) 2015-09-04 2015-09-04 スライドファスナーチェーン及びスライドファスナー
TW105128128A TWI616521B (zh) 2015-09-04 2016-08-31 Zipper chain and zipper

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2015/075265 WO2017037954A1 (ja) 2015-09-04 2015-09-04 スライドファスナーチェーン及びスライドファスナー

Publications (1)

Publication Number Publication Date
WO2017037954A1 true WO2017037954A1 (ja) 2017-03-09

Family

ID=58188594

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
PCT/JP2015/075265 WO2017037954A1 (ja) 2015-09-04 2015-09-04 スライドファスナーチェーン及びスライドファスナー

Country Status (3)

Country Link
CN (1) CN108024602B (ja)
TW (1) TWI616521B (ja)
WO (1) WO2017037954A1 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019119731A (ja) * 2017-12-28 2019-07-22 日鉄ケミカル&マテリアル株式会社 ダイマージアミン組成物、その製造方法及び樹脂フィルム
WO2023007583A1 (ja) * 2021-07-27 2023-02-02 Ykk株式会社 ファスナーチェーン、スライドファスナー

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109280200B (zh) 2017-07-19 2022-04-08 Ykk株式会社 一种树脂材料表面形成橡胶层的方法以及使用该方法的拉链,带扣,按扣
JP2022531907A (ja) * 2019-05-15 2022-07-12 イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド フロントガラスワイパーブレードインサート用低吸収撥水性コーティング組成物
CN113071083A (zh) * 2021-03-24 2021-07-06 无锡诚品拉链科技有限公司 一种高可靠性长寿命注塑拉链制备方法

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS615119U (ja) * 1984-06-13 1986-01-13 ワイケイケイ株式会社 気密、防水性を有するスライドフアスナ−
JPH01151709U (ja) * 1988-04-04 1989-10-19
JPH03231930A (ja) * 1989-12-08 1991-10-15 Toray Ind Inc 柔軟性ポリエステルフイルム
JP2003009913A (ja) * 2001-06-27 2003-01-14 Ykk Corp 耐加水分解性合成樹脂製ファスナー製品
JP2008081576A (ja) * 2006-09-27 2008-04-10 Toyobo Co Ltd ポリエステル樹脂の製造方法及びそれにより得られたポリエステル樹脂
JP2011235194A (ja) * 1998-09-25 2011-11-24 Hoder Harold 耐水性スライドファスナーおよびその作成方法
JP2012024573A (ja) * 2010-07-27 2012-02-09 Ykk Corp 防水性スライドファスナー及びテープに流体密封コーティングを施す方法
WO2012035653A1 (ja) * 2010-09-17 2012-03-22 Ykk株式会社 スライドファスナー及びスライドファスナーの製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20150001527A (ko) * 2013-06-27 2015-01-06 삼성정밀화학 주식회사 생분해성 폴리에스테르 수지 및 이를 포함하는 물품
KR20150047339A (ko) * 2013-10-24 2015-05-04 삼성정밀화학 주식회사 생분해성 폴리에스테르 수지 및 이를 포함하는 물품

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS615119U (ja) * 1984-06-13 1986-01-13 ワイケイケイ株式会社 気密、防水性を有するスライドフアスナ−
JPH01151709U (ja) * 1988-04-04 1989-10-19
JPH03231930A (ja) * 1989-12-08 1991-10-15 Toray Ind Inc 柔軟性ポリエステルフイルム
JP2011235194A (ja) * 1998-09-25 2011-11-24 Hoder Harold 耐水性スライドファスナーおよびその作成方法
JP2003009913A (ja) * 2001-06-27 2003-01-14 Ykk Corp 耐加水分解性合成樹脂製ファスナー製品
JP2008081576A (ja) * 2006-09-27 2008-04-10 Toyobo Co Ltd ポリエステル樹脂の製造方法及びそれにより得られたポリエステル樹脂
JP2012024573A (ja) * 2010-07-27 2012-02-09 Ykk Corp 防水性スライドファスナー及びテープに流体密封コーティングを施す方法
WO2012035653A1 (ja) * 2010-09-17 2012-03-22 Ykk株式会社 スライドファスナー及びスライドファスナーの製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019119731A (ja) * 2017-12-28 2019-07-22 日鉄ケミカル&マテリアル株式会社 ダイマージアミン組成物、その製造方法及び樹脂フィルム
WO2023007583A1 (ja) * 2021-07-27 2023-02-02 Ykk株式会社 ファスナーチェーン、スライドファスナー
TWI815230B (zh) * 2021-07-27 2023-09-11 日商Ykk股份有限公司 拉鏈鏈條及拉鏈

Also Published As

Publication number Publication date
TWI616521B (zh) 2018-03-01
CN108024602A (zh) 2018-05-11
CN108024602B (zh) 2020-07-28
TW201712102A (en) 2017-04-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2017037954A1 (ja) スライドファスナーチェーン及びスライドファスナー
US10433620B2 (en) Method for manufacturing slide fastener chain
EP3710494A1 (en) Pvc compositions, films, laminates and related methods
TWI603690B (zh) A fastener chain cloth, the manufacturing method provided with this fastener stringer and the fastener stringer
JP4647342B2 (ja) 太陽光反射性能を有するシート
EP3241869B1 (en) Thermoplastic elastomer resin composition for moisture-permeable waterproof film, film and fabric using same
JP5376994B2 (ja) フィルム基材および接着シート
WO2018181214A1 (ja) 積層体、印刷物およびその製造方法
TW558522B (en) Laminated body for printing with temporary display layer and printing method using the same
JP6097155B2 (ja) 耐汚染性塩化ビニル樹脂成形体及び外装部材、並びに、耐汚染性塩化ビニル樹脂成形体の製造方法
JP2010089281A (ja) 近赤外線領域光反射性能を有する暗色シート状物
JP6481408B2 (ja) 応力発光シート
JP4639301B2 (ja) 寸法安定性防水膜材
JP3759004B2 (ja) 防汚性メッシュシート
CN110093118B (zh) 一种潜水服用线缝涂胶及其制造方法
JP5675007B1 (ja) 耐塩素性樹脂組成物、耐塩素性熱可塑性成形品、およびベルト
BR112020003517B1 (pt) Produto gráfico à base de PVC pigmentado
CA3150292C (en) Nanocrystalline materials dispersed in vinyl-containing polymers and processes therefor
US20170335509A1 (en) Retroreflective yarns and the preparation method thereof
WO2015064140A1 (ja) 耐塩素性樹脂組成物、耐塩素性熱可塑性成形品、およびベルト
JP7026937B2 (ja) 防塵性フィルム及び、これらを用いた帆布、メッシュシート、及びターポリン
JP7025005B2 (ja) 防塵性皮膜、及び防塵性フィルム、並びに、これらを用いた帆布、メッシュシート、及びターポリン
JP2020157540A (ja) 応力発光積層体

Legal Events

Date Code Title Description
121 Ep: the epo has been informed by wipo that ep was designated in this application

Ref document number: 15903073

Country of ref document: EP

Kind code of ref document: A1

NENP Non-entry into the national phase

Ref country code: DE

122 Ep: pct application non-entry in european phase

Ref document number: 15903073

Country of ref document: EP

Kind code of ref document: A1

NENP Non-entry into the national phase

Ref country code: JP