例えば特許文献1には、直列4気筒内燃機関において、点火順序が連続しない♯2気筒と♯3気筒の排気ポートをシリンダヘッド内部で合流させる一方、♯1気筒と♯4気筒の排気ポートはそのままシリンダヘッド側面に開口させた構成の排気装置が開示されている。つまり、♯2,♯3気筒の排気ポートは一つの集合排気ポートとして構成され、♯1気筒の排気ポートと♯4気筒の排気ポートは、個々の気筒毎に独立した個別排気ポートとして構成されている。そして、♯2,♯3気筒用の集合排気ポートは、一つの集合排気管を介して触媒コンバータに接続されており、♯1気筒および♯4気筒の個別排気ポートは、各々独立した個別排気管を介して触媒コンバータに接続されている。
このように一部の気筒の排気ポートをシリンダヘッド内部で合流させた構成では、冷間始動時に、集合排気管を介して触媒コンバータに導入される排気の温度が高く得られるため、始動後の触媒の早期活性の上で有利となる。さらに特許文献1では、♯2,♯3気筒用の集合排気管の管長を♯1,♯4気筒用の個別排気管の管長よりも短くすることで、集合排気管からの放熱の抑制を図っている。
しかし、上記のように一部の気筒の排気ポートをシリンダヘッド内部で合流させた構成では、冷間始動後の触媒の早期活性の点で有利であるが、その反面、暖機後の高速高負荷運転時などに集合排気ポートおよび集合排気管を通して触媒コンバータへ流入する排気の温度が過度に高くなり易く、触媒の劣化などの懸念がある。
つまり、冷間始動時には、触媒の早期活性のために触媒コンバータへ排気をなるべく高い温度を保ったまま導入したい、という要求がある一方で、高速高負荷時には、触媒コンバータへ導入される排気の温度をできるだけ抑制したい、という要求がある。上記従来の構成では、このような相反する要求を両立させることが困難である。
この発明は、4つの気筒の中で点火時期が360°離れた少なくとも1対の気筒の排気ポートが、シリンダヘッド内部で合流した集合排気ポートとしてシリンダヘッド側面に開口し、
この集合排気ポートに接続された集合排気管が、他の気筒の排気管とともに単一の触媒コンバータに接続されてなる4気筒内燃機関の排気装置において、
上記集合排気ポートの出口部における等価直径が、合流前の2つの気筒の個々の排気ポートの等価直径よりも大きく、
上記出口部は、気筒列方向に長い楕円形ないし長円形をなし、その短径が、合流前の2つの気筒の個々の排気ポートの等価直径以下である、ように構成されている。
高温のガスが管路を流れるときの放熱量は、管路の表面積つまり放熱面積、管路の壁面に接するガスの流速、ガスの容積、などに影響されるが、内燃機関の冷間始動直後の状況においては、2つの気筒から交互に排出される比較例少量の排気が、低温の通路壁面からある程度離れて通路断面中央寄りを通して流れようとするので、集合排気ポートおよび集合排気管の等価直径が大きいほど、放熱が少なくなる。従って、冷間始動時に、排気の温度を高く保ったまま触媒コンバータへ導入することができる。
一方、暖機後の高速高負荷時のように壁面温度が高い管路の中を多量の高温排気が流れる状況下では、放熱面積の多少が支配的となる。特に、壁面温度が排気温度に近い状態であるので、集合排気管の外表面の面積の多少が放熱量を左右する。管路の表面積つまり放熱面積は、等価直径が大きいほど大となるが、さらに、短径を合流前の排気ポートの等価直径よりも拡大することなく楕円ないし長円形断面に偏平化することで、放熱面積が拡大し、放熱量を大きく得ることができる。そのため、集合排気管を介して触媒コンバータへ流入する排気の温度を抑制でき、例えば過度の高温による触媒の劣化を回避できる。なお、集合排気管の断面形状は、集合排気ポート出口部の形状と基本的に等しい。
このように、本発明では、集合排気ポートの等価直径を大きくしつつ、短径が合流前の排気ポートの等価直径以下となるように偏平化することで、冷間始動時に触媒コンバータへ排気をなるべく高い温度を保ったまま導入すると同時に、高速高負荷時には触媒コンバータへ導入される排気の温度をできるだけ抑制する、という相反する要求を満たすことができる。
図1~図3は、この発明を直列4気筒内燃機関に適用した一実施例を示している。シリンダヘッド1においては、図1に示すように、♯1~♯4気筒の排気ポート2a~2dが、シリンダヘッド1の一方の側面1aに向かって延びており、吸気ポート3a~3dが他方の側面1bに向かって延びている。ここで、♯1気筒および♯4気筒の排気ポート2a,2dは、個別排気ポートとして気筒毎に独立してシリンダヘッド1の側面1aに開口しており、♯2気筒および♯3気筒の排気ポート2b,2cは、シリンダヘッド1内部で互いに合流し、一つの集合排気ポート2bcとしてシリンダヘッド1の側面1aに開口している。なお、♯2気筒と♯3気筒は点火時期が360°CA離れており、排気干渉は生じない。上記シリンダヘッド1は、排気ポート2a~2dの周囲を囲むようにウォータジャケット4を備えており、冷却水の循環によって強制的に冷却されている。
図2は、シリンダヘッド1の側面1aを示しており、図示するように、♯1,♯4気筒の個別排気ポート2a,2dは、それぞれ、ほぼ真円の円形に開口している。これに対し、中央に位置する♯2,♯3気筒の集合排気ポート2bcの出口部は、気筒列方向に長い楕円形ないし長円形に開口している。図示例では、両端の半円部分と中間の直線部分とからなる長円形をなしている。この集合排気ポート2bcの出口部における等価直径は、合流前の♯2気筒および♯3気筒の排気ポート2b,2cの等価直径よりも大きい。換言すれば、♯2、♯3気筒の排気ポート2b,2cと、♯1、♯4気筒の排気ポート2a,2dは、基本的に等しい等価直径を有するので、集合排気ポート2bcの出口部における等価直径は、♯1気筒の個別排気ポート2aおよび♯4気筒の個別排気ポート2dの出口部における等価直径よりも大きく設定されている。
また、長円形をなす集合排気ポート2bcの出口部の上下方向に沿った短径は、合流前の♯2気筒および♯3気筒の排気ポート2b,2cの等価直径以下である。例えば、一実施例では、合流前の♯2気筒および♯3気筒の排気ポート2b,2cの等価直径よりも僅かに小さい。♯1、♯4気筒の個別排気ポート2a,2dは、♯2、♯3気筒の排気ポート2b,2cと基本的に等しい等価直径を有し、かつほぼ真円形に開口しているので、シリンダヘッド1の側面1aにおいては、集合排気ポート2bcの出口部は、個別排気ポート2a,2dの径よりも僅かに小さい短径を有し、かつ気筒列方向に長く延びた長円形をなしている。好ましい一実施例においては、短径に対する長径の比が、1.6である。
図3は、シリンダヘッド1の側面1aに取り付けられる排気マニホルド5を示している。この排気マニホルド5は、♯1気筒の個別排気ポート2aに接続される♯1個別排気管6と、♯4気筒の個別排気ポート2dに接続される♯4個別排気管7と、中央の集合排気ポート2bcに接続される集合排気管8と、を備えており、これら3本の排気管6,7,8の基端がヘッド取付フランジ9によって支持されている。♯1個別排気管6および♯4個別排気管7は、ほぼ円形の断面形状を有しており、シリンダヘッド1の側面1aにおける個別排気ポート2a,2dの出口部と基本的に等しい等価直径を有している。集合排気管8は、シリンダヘッド1の側面1aにおける出口部開口形状に対応して、気筒列方向に延びた細長い長円形の断面形状を有しており、上記出口部と基本的に等しい等価直径ならびに偏平率を有している。
♯1個別排気管6、♯4個別排気管7および集合排気管8の先端は、単一の触媒コンバータ11の上流側のディフューザ部11aにそれぞれ接続されている。触媒コンバータ11は、円柱状のモノリス触媒担体を円筒形金属製ケース内に収容したものであって、ディフューザ部11aは、触媒担体端面との間に径が徐々に拡大する空間を形成するように略円錐形に構成されている。
集合排気管8は、ヘッド取付フランジ9から気筒列方向と直交する方向に沿って直線的に延び、かつ先端部が下方を指向するように湾曲して、ディフューザ部11aの上流側端部に接続されている。触媒コンバータ11との接続部では、集合排気管8は、略半円形の断面形状を有している(図示せず)。
気筒列方向の前後に位置する♯1個別排気管6および♯4個別排気管7は、平面視でほぼ対称をなすように気筒列方向に湾曲して延び、かつ先端部が下方を指向するように湾曲して、ディフューザ部11aの上流側端部に接続されている。より詳しくは、♯1個別排気管6および♯4個別排気管7は、触媒コンバータ11の直近で略Y字形ないし略T字形に合流しており、合流後の1本となった接続管部12がディフューザ部11aに接続されている。触媒コンバータ11との接続部では、接続管部12は、集合排気管8端部と対称な略半円形の断面形状を有している(図示せず)。
図3に示すように、集合排気管8は、内側つまりシリンダヘッド1寄りに配置され、個別排気管6,7は、集合排気管8の上方ないし外側を通過するように配置されている。両者の通路長は、できるだけ等長となるように設定されている。
なお、図6に示すように、集合排気管8が個別排気管6,7の上方ないし外側を通過するように構成した排気マニホルド5を用いることも可能である。
上記実施例の構成においては、♯1気筒の排気および♯4気筒の排気が個々に個別排気ポート2a,2dおよび個別排気管6,7を介して触媒コンバータ11へ流れるのに対し、♯2気筒の排気および♯3気筒の排気は、共通の集合排気ポート2bcおよび集合排気管8を介して触媒コンバータ11へ流れる。従って、冷間始動時には、♯2,♯3気筒の排気が比較的高温を保ったまま触媒コンバータ11に供給され、触媒の早期活性に寄与する。 ここで、集合排気ポートを具備した構成では、前述したように、暖機完了後の高速高負荷運転時などに逆に排気温度が過渡に高くなりやすい不利益があるが、上記実施例では、集合排気ポート2bcの等価直径を大きくしつつ偏平化することで、冷間始動後の排気ガスの温度維持を損なわずに、暖機完了後の高速高負荷運転時における排気温度の抑制が図れる。
すなわち、図4は、冷間始動時における排気ポートの等価直径と放熱量との関係を示しており、横軸は、排気ポートの等価直径を、ある基準となる等価直径D0(例えば36mm)に対する増減の形で示しており、縦軸は、放熱量を、基準等価直径D0の放熱量に対する増減割合の形で示している。ここで、個々の特性線a~fは、短径を24mm~47mmの範囲で変化させた場合の特性を示しており、偏平率によらない全体的な傾向は、各特性線a~f上の真円のときの点を結んだ曲線gでもって示されている。この図4に示すように、冷間始動後(例えばアイドル放置)の状態、つまり排気ポート内壁面の温度が低く、その中を比較的少量の排気が流れるときには、排気ポートの等価直径が大きいと、低温の排気ポート内壁面にあまり接触せずに排気ポート中心付近を少量の排気が流れることとなるので、等価直径が大きいほど放熱量が少なくなる。上記実施例では、集合排気ポート2bcの等価直径が個々の排気ポート2b,2cの等価直径よりも大きく設定されており、その中を各気筒の排気が間欠流として交互に流れるので、冷間始動後の排気ガスの冷却が抑制され、触媒の早期活性が図れる。集合排気管8についても同様である。
一方、図5は、内燃機関の暖機完了後の高速高負荷運転時における排気管の等価直径と放熱量(通路表面積)との関係を示しており、横軸は、排気管の等価直径を、ある基準となる等価直径D0(例えば36mm)に対する増減の形で示しており、縦軸は、放熱量を、通路表面積に比例するものとして真円時の放熱量(通路表面積)に対する増減の形で示している。ここで、個々の特性線a~fは、短径を24mm~47mmの範囲で変化させた場合の特性を示しており、図示するように、偏平率によらず、等価直径が大きいほど通路表面積が大となるので、放熱量が大となる。これは、暖機完了後の高速高負荷運転では、通路内壁面温度と排気温度との差が小さく、かつ大量の排気ガスが通路内壁面に接した形で流れるので、放熱量は、放熱面となる排気管表面の表面積の大小に依存するためである。そして、各特性線a~fを比較すれば明らかなように、同じ等価直径であれば、偏平率が高いほど放熱量(通路表面積)が大となる。従って、上記実施例の集合排気ポート2bcないし集合排気管8のように等価直径を大きくしつつ偏平率を高くすることで、冷却水ならびに外気によって効果的な冷却が図れ、高速高負荷運転時における過度の排気温度上昇が抑制される。
このように、上記実施例では、触媒の劣化などが問題となる暖機完了後の高速高負荷運転時における排気温度の過度の上昇を抑制しつつ、冷間始動時には、排気温度の冷却を抑制して触媒の早期活性を実現することができる。
なお、偏平率として、短径に対する長径の比が1.6付近であると、冷間始動後の排気温度を最も高く維持することができる。そして、上記の比が1.6以上であると、暖機完了後の放熱量の上で有利である。従って、上記の比は、1.6以上であることが望ましい。
次に、この発明の第2の実施例を図7に基づいて説明する。前述の実施例では、♯2気筒および♯3気筒の排気ポート2b,2cを集合排気ポート2bcとして合流させる一方で、♯1気筒と♯4気筒とについては個別排気ポートとして独立させた構成となっているが、図7の第2の実施例は、♯1気筒の排気ポートと♯4気筒の排気ポートとについても、シリンダヘッド1の内部で第2の集合排気ポート2adとして合流させた構成となっている。つまり、♯2気筒の排気ポートと♯3気筒の排気とを合流させた第1の集合排気ポート2bcと、♯1気筒の排気ポートと♯4気筒の排気ポートと合流させた第2の集合排気ポート2adと、を具備しており、それぞれ、図7に示すように、シリンダヘッド1の側面1aに開口している。これらの集合排気ポート2bc,2adの開口部は、いずれも、気筒列方向に長く延びた楕円形ないし長円形(図示例では長円形)をなしており、その等価直径は、合流前の2つの気筒の個々の等価直径よりも大きく、かつその短径が、合流前の2つの気筒の個々の排気ポートの等価直径以下となっている。また、第1の集合排気ポート2bcと第2の集合排気ポート2adは、シリンダヘッド1の側面1aにおいて、上下に異なる位置に配置されており、かつ気筒列方向には、少なくとも一部が重なり合って配置されている。図示例では、第1の集合排気ポート2bcが相対的に上方に位置している。
なお、排気マニホルドについては図示しないが、図7の開口部の形状・配置に対応した2つの集合排気排気管を具備した構成となっている。
このような第2の実施例によれば、第1の集合排気ポート2bcと第2の集合排気ポート2adとが共通の隔壁を介して上下に隣接するので、冷間始動後の排気温度を高く確保する上でより有利となる。