[第1実施形態]
図1から図10を参照して光学素子を具体化した第1実施形態を説明する。以下では、光学素子の構成、光学素子の作用、および、光学素子の製造方法を順番に説明する。
[光学素子の構成]
図1から図4を参照して光学素子の構成を説明する。図1および図4では、光学素子の構成を説明する便宜上、光学素子の有する反射部の上に形成された上側透明樹脂層の図示が省略されている。また、図1および図4では、下側透明樹脂層に対する反射部の位置を分かりやすくするために、反射部の各々にはドットが付されている。そして、図1では、図示の便宜上、下側透明樹脂層の表面に形成された凹凸構造の図示が省略されている。
図1が示すように、光学素子10は、上側透明樹脂層と、下側透明樹脂層11と、下側透明樹脂層11の1つの面である表面11sと、上側透明樹脂層と下側透明樹脂層11との間に形成された複数の反射部12を備えている。光学素子10は、複数の透過部13を備え、各透過部13は、上側透明樹脂層のうち、2つの反射部12によって挟まれた第1部分と、下側透明樹脂層11のうち、2つの反射部12によって挟まれた第2部分であって、第1部分と対向する第2部分とによって構成される。光学素子10は、複数の反射部12と複数の透過部13とから構成される透過回折部20を備えている。
反射部12は、可視光を反射する部分であり、少なくとも400nmから700nmの波長の一部を反射する。反射部12の透過率は、30%未満であることが好ましい。一方で、透過部13は、少なくとも400nmから700nmの波長の一部を透過し、透過部13の透過率は、70%以上であることが好ましい。
反射部12の形成材料には、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、および、Agなどの金属の単体、または、これら金属の群に含まれる各金属の化合物、例えば、酸化物などが用いられる。これらの形成材料のうち、溶解、腐食、あるいは、変質などにより反射率や透明性が変わる形成材料を用いることが好ましい。また、上述した金属の群、および、金属化合物の群に含まれる2つ以上の形成材料が用いられてもよい。
反射部12の形成材料を溶解することで反射率または透過率を変える方法には、例えば、上述した金属の群、および、金属酸化物の群に含まれる形成材料に対してエッチング処理を行う方法を用いることができる。エッチング処理には、酸、アルカリ、有機溶剤、酸化剤、および、還元剤などの処理剤を用いることができる。
反射部12の形成材料を変質させて反射率または透過率を変える方法には、例えば、銅を酸化剤により酸化させて酸化第一銅に変える方法、あるいは、アルミニウムを酸化剤によって酸化させてベーマイトに変える方法などを用いることができる。
反射部12の形成材料には、上述した金属の群、および、金属化合物の群に含まれる材料の選択が可能であり、また、これらの形成材料には、上述した各種の処理が行われてもよい。こうした形成材料や処理の選択は、光学素子10に必要とされる光学特性や、耐候性および層間密着性などの実用的な耐久性に基づいて行われればよい。
なお、反射部12を形成するための薄膜は、均一な表面密度で形成されることが好ましいため、反射部12を形成するための薄膜の形成には、ドライコーティング法が用いられることが好ましい。ドライコーティング法には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの方法を採用することができる。
反射部12の形成材料は、上述した金属光沢や所定の色を有する形成材料に限らず、透明な形成材料であってもよい。以下に透明な形成材料を列記する。反射部12の形成材料は、例えば、Sb2O3、Fe2O3、TiO2、CdS、CeO2、ZnS、PbCl2、CdO、Sb2O3、WO3、SiO、Si2O3、In2O3、PbO、Ta2O3、ZnO、ZrO2、MgO、SiO2、Si2O2、MgF2、CeF3、CaF2、AlF3、Al2O3、および、GaOなどである。
なお、反射部12の形成材料のうち、透明な形成材料は、有機ポリマーであってもよい。反射部12の形成材料としての有機ポリマーは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、および、ポリスチレンなどである。
また、反射部12の形成材料は、高屈折樹脂や高屈折フィラーを分散した反射インクであってもよい。反射部12の形成材料は、上述した形成材料のうち、光学素子10に求められる反射特性や耐性に応じて選択されればよい。
透過部13、すなわち、透過部13を構成する上側透明樹脂層、および、下側透明樹脂層11の形成材料には、上述した透過率を満たす各種の樹脂が用いられればよく、例えば、熱硬化性樹脂、および、紫外線硬化性樹脂などを用いることができる。上側透明樹脂層、および、下側透明樹脂層11は、上述した透過率を満たす範囲であれば、マット処理されていてもよいし、白色を有していてもよい。
下側透明樹脂層11は、例えば、1つの方向の一例であるX方向と、X方向と直交するY方向とに沿って2次元的に拡がる矩形板形状を有している。複数の反射部12の各々は、1つの方向であるY方向に沿って延びる帯形状を有し、複数の反射部12は、X方向に沿って等しい間隔を空けて並んでいる。複数の透過部13の各々は、反射部12と同じくY方向に沿って延びる帯形状を有し、複数の透過部13は、X方向において等しい間隔を空けて並んでいる。
図2が示すように、光学素子10は、さらに、下側透明樹脂層11における表面11sと各反射部12との間に1つずつ位置する複数の保護部14を備えている。複数の保護部14の各々は、反射部12と同様、Y方向に沿って延びる帯形状を有し、複数の保護部14は、X方向において等しい間隔を空けて並んでいる。各保護部14の全体は、Z方向から見て、1つの反射部12の全体に重なっている。保護部14は、光学素子10が製造されるとき、反射部12を摩耗や薬品による腐食から保護する。
そのため、保護部14における摩耗に対する耐性や薬品に対する耐性は、反射部12における摩擦に対する耐性や薬品に対する耐性以上であることが好ましい。なお、保護部14における摩擦に対する耐性や薬品に対する耐性が、反射部12における摩擦に対する耐性や薬品に対する耐性よりも低いとしても、反射部12の1つの面を覆う以上は、反射部12を保護する機能を果たす。
保護部14は、反射部12がエッチングによって形成されるときのエッチングマスクとして機能してもよい。保護部14がエッチングマスクとしての機能を有する場合には、保護部14は、反射部12を溶解する少なくとも一つの液状体に対して溶解しない特性、または、液状体に対する溶解速度が、反射部12の溶解速度よりも低い特性を有していることが好ましい。
保護部14を形成するための薄膜は、反射部12と同様、均一な表面密度で形成されることが好ましい。保護部14を形成するための薄膜の形成方法としては、真空蒸着法、CVD法、および、スパッタリング法などのドライコーティング法を用いることができる。こうした形成方法によれば、保護部14を形成するための薄膜の膜厚、成膜速度、積層数、および、光学膜厚などを制御することができる。なお、上述したドライコーティング法のうち、真空蒸着法において蒸着源から基板に向かう材料は直進性を有する。そのため、ドライコーティング法として真空蒸着法が採用されることが好ましい。
保護部14の形成材料は、ドライコーティング法によって成膜の可能な材料であればよく、保護部14の形成材料には、例えば、上述した反射部12の形成材料である金属の群、および、金属化合物の群に含まれる少なくとも1つの形成材料を用いることができる。
また、保護部14の形成材料は、反射部12の形成材料と同様、透明な形成材料であってもよい。保護部14の透明な形成材料は、例えば、Sb2O3、Fe2O3、Fe3O4、TiO2、Ti2O3、CdS、CeO2、ZnS、PbCl2、CdO、Sb2O3、WO3、SiO、Si2O3、In2O3、PbO、Ta2O3、ZnO、ZrO2、MgO、SiO2、Si2O2、MgF2、CeF3、CaF2、AlF3、Al2O3、および、GaOなどである。
なお、保護部14の形成材料のうち、透明な形成材料は、有機ポリマーであってもよい。保護部14の形成材料としての有機ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、および、ポリスチレンなどである。
保護部14がエッチングマスクとしての機能を有するとき、保護部14は、フォトリソグラフィーによって所定の形状を有するパターンに加工されてもよい。この場合には、ネガレジスト、または、ポジレジストが保護部14を形成するための薄膜に塗布された後、レジストに対してパターン露光が行われる。そして、レジストをエッチングマスクとする保護部14を形成するための薄膜のエッチングが行われることによって、反射部12を形成するための薄膜の一部に、エッチングマスクとしての機能を有する保護部14が形成される。そして、保護部14をエッチングマスクとするエッチング処理が反射部12を形成するための薄膜に行われることにより、反射部12が形成される。
光学素子10は、上述のように、複数の反射部12を覆う上側透明樹脂層15を備えている。上側透明樹脂層15は、透過回折部20を摩擦や水分などから保護する。
上側透明樹脂層15の1つの面であって、下側透明樹脂層11と対向する面である裏面15rは、Y方向に沿って交互に並ぶ凸部15aと凹部15bとを有している。ここでは、Z方向において下側透明樹脂層11に向けて突き出た部分が凸部15aであり、上側透明樹脂層15の表面に向けて突き出た部分が凹部15bである。Y方向において相互に隣り合う凹部15bと凸部15aとは、1つの反射単位部16を構成し、複数の反射単位部16におけるY方向に沿う長さには、相互に異なる複数の長さが含まれている。すなわち、上側透明樹脂層15の裏面15rは、凹部15bと凸部15aとによって構成された非周期性の凹凸構造を備えている。
複数の凹部15bには、Z方向における凹部15bの底部の位置が相互に異なる凹部15bが含まれ、また、複数の凸部15aには、Z方向における凸部15aの頂部の位置が相互に異なる凸部15aが含まれている。複数の凹部15bの各々、および、複数の凸部15aの各々は、裏面15rにおいて、X方向に沿って延びている。
複数の保護部14の各々は、上側透明樹脂層15の裏面15rのうち、各保護部14の位置する部分が有する凹凸構造にならう凹凸構造を備え、また、複数の反射部12の各々は、上側透明樹脂層15の裏面15rのうち、各反射部12の位置する部分が有する凹凸構造にならう凹凸構造を備えている。
そのため、複数の保護部14の各々は、上述したような裏面15rと同等の非周期性の凹凸構造を備え、かつ、複数の反射部12の各々は、上述したような裏面15rと同等の非周期性の凹凸構造を備えている。それゆえに、反射部12に対して上側透明樹脂層15側から入射した光は、複数の反射部12の各々によって散乱される。複数の反射部12は、反射光としての散乱光を生じさせ、散乱光によって反射像を形成する。すなわち、反射部12は、反射する光の反射角を反射部12に入射する光の角度とは異ならせて反射像を形成する。
なお、反射部12の各々は、反射部12におけるY方向のほぼ全体に凹凸構造を備えているが、Y方向における少なくとも一部に凹凸構造を備えていればよい。
図3は、Z-X平面に沿う光学素子10の断面形状を示している。上述したように、裏面15rに形成された複数の凹部15bには、Z方向における凹部15bの底部の位置が相互に異なる凹部15bが含まれ、かつ、複数の凸部15aには、Z方向における凸部15aの頂部の位置が相互に異なる凸部15aが含まれる。そのため、1つの保護部14と1つの反射部12との積層された構造を1つの積層構造とするとき、複数の積層構造には、Z方向における位置が相互に異なる積層構造が含まれ、また、Z方向における位置が相互に等しい積層構造が含まれてもよい。
図4が示すように、複数の反射部12は、X方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、複数の透過部13は、X方向において等しい間隔を空けて並んでいる。X方向において相互に隣り合う1つの反射部12と1つの透過部13とが1つの透過周期部17を構成し、透過周期部17において、X方向に沿う幅が格子周期dである。
格子周期dが、0.20μmよりも大きく20μm以下であるとき、透過回折部20は、透過部13の各々を透過する光を所定の方向に回折させた回折光によって、相互に異なる色を有する複数の回折像を形成することができる。格子周期dは、透過回折部20によって鮮やかな回折像を得る上では、0.35μm以上であることが好ましい。また、回折像の視野角、すなわち、回折像の分散角を観察者によって視認される上で好ましい大きさとする上では、格子周期dは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、格子周期dが20μmを超えると、回折像の視野角が小さくなり、観察者の視認できる角度の範囲が狭くなる。
また、格子周期dが、可視光領域に含まれる光の波長よりも小さい透過型の回折格子は、サブ波長格子とよばれている。サブ波長格子は、特定の領域に含まれる波長を吸収する効果、および、特定の領域に含まれる波長を反射する効果を有し、さらに、入射光から偏光を分離する効果を有している。なお、サブ波長格子が、可視光領域に含まれる光、例えば、400nm以上700nm以下の光に対して偏光を分離する効果を有するためには、サブ波長格子の格子周期dは、以下の長さであることが好ましい。すなわち、格子周期dは、可視光波長の1/2未満の長さである0.15μm以上0.35μm未満の範囲に含まれることが好ましく、0.15μm以上0.30μm以下の範囲に含まれることがより好ましい。
そのため、格子周期dが0.20μmよりも大きく0.35μm未満の範囲に含まれるとき、透過回折部20は、反射部12に対して垂直な成分である偏光のみを透過しつつ、可視光を回折させることができる。
[光学素子の作用]
図5および図6を参照して光学素子の作用を説明する。
図5が示すように、光学素子10において、反射部12に対して上側透明樹脂層15側から光が入射するとき、非周期性の凹凸構造を有する各反射部12は、様々な方向に入射光Liを反射する。すなわち、各反射部12によって生じる反射光Lrは散乱光である。そのため、入射光Liが白色の可視光であるとき、光学素子10は、白色を有した散乱光を反射する。
一方で、図6が示すように、光学素子10において、反射部12に対して上側透明樹脂層15側から光が入射するとき、入射光Liは、複数の透過部13の各々から透過して、下側透明樹脂層11において、表面11sと対向する裏面から透過光Ltとして射出される。このとき、透過回折部20は、入射光Liに含まれる複数の波長の光の各々を各光に依存した透過角度で回折させて、相互に異なる色を有する複数の回折像を形成する。
これにより、例えば、光学素子10の観察者は、光学素子10の上側透明樹脂層15と対向する平面視である反射観察では、反射部12によって散乱された白色の散乱光を観察することができる。一方で、観察者は、光学素子10の下側透明樹脂層11と対向する平面視であって、かつ、光学素子10を光源に対して透かして観察する透過観察では、透過回折部20の回折した虹色を有する回折光を観察することができる。
[光学素子の製造方法]
図7から図10を参照して光学素子の製造方法を説明する。
光学素子10を製造するときには、まず、非周期性の凹凸構造を有した上側透明樹脂層15の原版を作成する。原版は、電子線描画機を利用したフォトリソグラフィー法を用いて作成される。原版において、上側透明樹脂層15のうち、反射部12の位置する部位に対応する部分には、比表面積の相対的に小さい、すなわち、凹凸構造におけるアスペクト比の相対的に小さい非周期的な凹凸構造を形成する。一方で、原版において、上側透明樹脂層15のうち、反射部12の位置しない部位に対応する部分には、光を散乱させるための非周期的な凹凸構造よりも比表面積の相対的に大きい、すなわち、アスペクト比の相対的に大きい凹凸構造を形成する。
図7が示すように、上述した原版における表面の凹凸構造を複製することによって、非周期性の凹凸構造を有した上側透明樹脂層15を形成する。上側透明樹脂層15は、例えば、フォトポリマー法を用いて形成される。すなわち、上側透明樹脂層15が形成されるときには、まず、原版に対して紫外線硬化性樹脂が塗布され、そして、原版に塗布された紫外線硬化性樹脂に対して紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化される。次いで、硬化した紫外線硬化性樹脂が剥がされることで、非周期性の凹凸構造を有した上側透明樹脂層15が形成される。
なお、上側透明樹脂層15を形成する方法には、上述したフォトポリマー法に限らず、熱エンボス法、ホットコールドプレス法、フォトポリマー法、および、ナノインプリント法などの方法を用いることができる。
図8が示すように、上側透明樹脂層15のうち、上述した凹凸構造を有する面の全体に対して、金属膜、例えば、アルミニウム膜12Mが真空蒸着される。このとき、上側透明樹脂層15の凹凸構造を有する面のうち、上述したアスペクト比の相対的に小さい部分には、所定の厚さを有したアルミニウム膜12Mが成膜される一方で、アスペクト比の相対的に大きい部分には、アルミニウム膜12Mがわずかにしか付着しない。しかも、上側透明樹脂層15のうち、アスペクト比の相対的に大きい部分では、アルミニウム膜12Mは、上側透明樹脂層15の表面において、1つの方向に沿って延びる線状、あるいは、島状に形成される。
なお、アルミニウム膜12Mを成膜するためのドライコーティング法には、真空蒸着法に限らず、上述したドライコーティング法のいずれかを用いることができる。
図9が示すように、アルミニウム膜12Mの全体に対して、アルミニウム膜12Mを保護するフッ化マグネシウムが真空蒸着される。これにより、アルミニウム膜12Mと同様、上側透明樹脂層15のうち、アスペクト比の相対的に小さい部分には、保護部14となるフッ化マグネシウム膜14Mが成膜される一方で、アスペクト比の相対的に大きい部分には、フッ化マグネシウム膜14Mがほとんど成膜されない。しかも、上側透明樹脂層15のうち、アスペクト比の相対的に大きい部分では、フッ化マグネシウム膜14Mは、上側透明樹脂層15の表面において、1つの方向に沿って延びる線状、あるいは、島状に形成される。
なお、フッ化マグネシウム膜14Mを成膜するためのドライコーティング法には、真空蒸着法に限らず、上述したドライコーティング法のいずれかを用いることができる。
アルミニウム膜12Mはアルカリ溶液に溶解する、すなわち、アルカリ溶液によるエッチングが可能である一方で、フッ化マグネシウム膜14Mはアルカリ溶液に溶解しない。そのため、アルミニウム膜12Mをアルカリ溶液によってウェットエッチングするときのマスクとしてフッ化マグネシウム膜14Mを用いることができる。
図10が示すように、アルミニウム膜12Mと、フッ化マグネシウム膜14Mとが形成された上側透明樹脂層15がアルカリ溶液に漬けられる。これにより、線状、あるいは、島状に形成されたアルミニウム膜12Mとフッ化マグネシウム膜14Mとの積層構造では、アルミニウム膜12Mがアルカリ溶液に接触することで、アルミニウム膜12Mがアルカリエッチングされる。一方で、上側透明樹脂層15のうち、上述したアスペクト比の相対的に小さい部分では、アルミニウム膜12Mがフッ化マグネシウム膜14Mによって保護されるため、アルカリ溶液によるエッチングが行われても、アルミニウム膜12Mがエッチングされない。
こうした製造方法によれば、アルミニウム膜12Mを保護するためのフッ化マグネシウム膜14Mのパターニングを特に行わずとも、反射部12に対応するアルミニウム膜12Mのみがフッ化マグネシウム膜14Mによって保護される。そのため、こうした製造方法によれば、上側透明樹脂層15を形成するための原版において、原版の表面に位置する凹凸構造のアスペクト比を調節することによって、高解像度な反射部12を任意の位置に形成することが可能である。
上述した製造方法では、保護部14を形成するフッ化マグネシウム膜14Mの厚さ、すなわち、Z方向に沿う厚さは、反射部12を形成するアルミニウム膜12Mの厚さの半分以下であることが好ましい。例えば、アルミニウム膜12Mの厚さが、5nm以上500nm以下であるとき、フッ化マグネシウム膜14Mの厚さは、0.3nm以上200nm以下であって、かつ、フッ化マグネシウム膜14Mの厚さが、アルミニウム膜12Mの厚さの半分以下であることが好ましい。
このとき、上側透明樹脂層15の表面のうち、アルミニウム膜12Mを除去したい部分であって、光学素子10の透過部13を含む部分には、ごく薄いアルミニウム膜12Mに対し、ごく薄いフッ化マグネシウム膜14Mが形成される。一方で、上側透明樹脂層15のうち、アルミニウム膜12Mを残したい部分であって、光学素子10の反射部12に対応する部分では、反射部12に対応するアルミニウム膜12Mの溶解や変質から、アルミニウム膜12Mを保護する機能を発現することの可能な程度のフッ化マグネシウム膜14Mが形成される。
このように、反射部12を形成するための薄膜の形成材料と膜厚、および、保護部14を形成するための薄膜の形成材料と膜厚とが設定されることにより、以下の効果を得ることができる。すなわち、上側透明樹脂層15における反射部12に対応する部分と、透過部13を含む反射部12以外の部分に対応する部分とにおいて、反射部12を形成するための金属膜におけるエッチング速度の差をより大きくすることができる。それゆえに、エッチングされるべき部分についてはエッチングされやすくなることで光学素子10の生産性が高められ、かつ、エッチングされるべきでない部分については、所定の形状に保たれやすくなったり、変質が抑えられたりすることで、光学素子10の品質が安定する。
すなわち、上述したアルミニウム膜12Mの厚さ、および、フッ化マグネシウム膜14Mの厚さは、比表面積の相対的に大きい領域に形成されたアルミニウム膜12Mをエッチングする上で好ましい厚さである。
反射部12および保護部14が形成された後、例えば、紫外線硬化性樹脂が、上側透明樹脂層15の裏面15rに塗布され、かつ、塗布された紫外線硬化性樹脂が硬化されることで、反射部12および保護部14を覆う下側透明樹脂層11が形成される。なお、下側透明樹脂層11を形成する工程は、省略されてもよい。
以上説明したように、第1実施形態の光学素子によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)1つの光学素子10において、反射光Lrによって得られる反射像に加えて、透過光Ltによっても相互に異なる色を有する複数の回折像が得られることで、1つの光学素子10に対して、光学的な効果が付加される。
(2)光学素子10において反射された光は、凹凸構造の散乱した散乱光である一方で、光学素子10において透過された光は、透過回折部20による回折光である。そのため、光学素子10の反射した光と、光学素子10の透過した光との差異が顕著になる。
(3)透過周期部17における格子周期dが0.20μmよりも大きく0.35μm未満であるとき、透過回折部20に入射する可視光のうち、反射部12に対して垂直な成分である偏光のみを透過しつつ、可視光を回折させることができる。
(4)透過周期部17における格子周期dが0.35μm以上20μm以下であるとき、透過回折部20に入射した可視光が、より確実に回折される。
[第1実施形態の変形例]
なお、上述した第1実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。また、以下に説明される図13から図17では、反射部12を説明する便宜上、上側透明樹脂層15の図示が省略されている。
・複数の反射部12の各々は、Y方向に沿って延びる帯形状ではなく、X方向に沿って延びる帯形状を有してもよい。こうした構成では、複数の反射部12は、Y方向において等しい間隔を空けて並んでいればよく、Y方向が1つの方向の一例である。あるいは、各反射部12は、Y方向に対して垂直以外の所定の角度で交差する延在方向に沿って延びる帯形状を有してもよい。こうした構成では、複数の反射部12は、延在方向と直交する方向において等しい間隔を空けて並んでいればよく、延在方向と直交する方向が1つの方向の一例である。
・上側透明樹脂層15の裏面15rに位置する複数の凹部の各々、および、複数の凸部の各々は、X方向に沿って延びておらず、例えば、以下に記載する形状を有していてもよい。すなわち、複数の凹部の各々、および、複数の凸部の各々は、Y方向に対して垂直以外の所定の角度で交差する方向に沿って延びていてもよい。
例えば、図11が示すように、Y方向に対して45°の角度を形成する方向に沿って、複数の凹部15bが延びていてもよい。こうした構成では、X方向において相互に隣り合う2つの凹部15bによって挟まれる凸部15aも、Y方向に対して45°の角度を形成する方向に沿って延びている。なお、図11では、上側透明樹脂層15の裏面15rの有する凹凸構造を説明する便宜上、上側透明樹脂層15を図2の構成からZ方向にて反転させた構成が示されている。
こうした上側透明樹脂層15に形成された反射部12を有する構成は、凸部15aの長手方向、すなわち、Y方向に対して45°の角度を形成する方向に指向性を有する散乱光を反射光Lrとして生じさせる。このように、所定の方向に沿って延びる複数の凹部15b、および、複数の凸部15aから構成される裏面15rを有した上側透明樹脂層15を備える光学素子10において、反射部12は、所定の方向に指向性を有する散乱光を反射光として生じさせることが可能である。
・図12が示すように、上側透明樹脂層15の裏面15rに位置する複数の凹部15bにおいて、凹部15bの延びる方向が相互に異なってもよく、複数の凸部15aにおいても、凸部15aの延びる方向が相互に異なってもよい。こうした上側透明樹脂層15を有する光学素子10は、図11が示す上側透明樹脂層15を有する光学素子10とは異なり、入射光Liから、所定の指向性を有しない等方的な散乱光を反射光Lrとして生じさせる。なお、図12では、上側透明樹脂層15の裏面15rの有する凹凸構造を説明する便宜上、上側透明樹脂層15を図2の構成からZ方向にて反転させた構成が示されている。
光学素子10では、上側透明樹脂層15が、指向性を有する散乱光を散乱させる凹凸構造を有する部分と、入射光を等方的に散乱する凹凸構造を有する部分とを有することによって、光学素子10によって得られる光学的な効果がより複雑になる。
・各反射部12における複数の凹部と複数の凸部とは、Y方向においてのみ交互に連続する構成ではなく、Y方向において交互に連続し、かつ、X方向において交互に連続してもよい。
・図13が示すように、複数の反射部12において、Y方向に沿う長さが相互に異なってもよい。複数の反射部12において、例えば、X方向における1つの端に位置する反射部12から、他の端に位置する反射部12に向けて、Y方向に沿う長さが次第に小さくなってもよい。あるいは、複数の反射部12には、Y方向に沿う長さが相互に異なる反射部12が含まれ、複数の反射部12は、X方向において、Y方向に沿う長さに所定の規則性を有していない状態で並んでいてもよい。
・図14が示すように、下側透明樹脂層11の上方の全体、すなわち、上側透明樹脂層15の裏面15rの全体に1つの金属膜が形成され、金属膜に対して、複数の透過部13が形成された構成でもよい。
こうした構成では、複数の透過部13は、例えば、X方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、複数の透過部13の各々は、Y方向に沿って延びていればよい。あるいは、複数の透過部13は、Y方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、複数の透過部13の各々は、X方向に沿って延びていてもよい。またあるいは、複数の透過部13の各々は、Y方向に対して所定の角度を形成する延在方向に沿って延び、かつ、複数の透過部13は、延在方向と直交する方向において等しい間隔を空けて並んでいてもよい。
こうした構成では、透過部13によって挟まれた部分が反射部12aとして機能し、かつ、複数の透過部13を囲む部分も反射部12bとして機能する。
・図15が示すように、図14が示す光学素子10では、複数の透過部13において、Y方向に沿う長さが相互に異なってもよい。複数の透過部13において、例えば、X方向における1つの端に位置する透過部13から、他の端に位置する透過部13に向けて、Y方向に沿う長さが次第に小さくなってもよい。あるいは、複数の透過部13には、Y方向に沿う長さが相互に異なる透過部13が含まれ、複数の透過部13は、X方向において、Y方向に沿う長さに所定の規則性を有していない状態で並んでいてもよい。
・図16が示すように、矩形形状を有した複数の反射部12を有し、複数の反射部12が、X方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、Y方向において等しい間隔を空けて並ぶ構成であってもよい。また、こうした構成は、X方向において相互に隣り合う2つの反射部12の間に位置して、かつ、Y方向に沿って延びる透過部13と、Y方向において相互に隣り合う2つの反射部12の間に位置して、かつ、X方向に沿って延びる透過部13とを有している。Y方向に沿って延びる複数の透過部13の各々は、X方向に沿って延びる複数の透過部13と直交している。
X方向において相互に隣り合う1つの反射部12と1つの透過部13とが第1回折周期部21を構成し、第1回折周期部21においてX方向に沿う幅が、第1格子周期d1である。Y方向において相互に隣り合う1つの反射部12と1つの透過部13とが第2回折周期部22を構成し、第2回折周期部22においてY方向に沿う幅が、第2格子周期d2である。第1格子周期d1と第2格子周期d2とは、例えば、相互に等しい。なお、第1格子周期d1と第2格子周期d2とは相互に異なってもよい。
つまり、図16が示す光学素子10は、いわゆるクロスグレーティング構造を有する。こうした光学素子10では、蛍光灯などの棒状光源を用いた透過観察が行われるとき、棒状光源の延びる方向とX方向が平行であるときと、棒状光源が延びる方向とY方向とが平行であるときとの両方にて、光学素子10を透過した光が、虹色を有した回折光として射出される。
なお、複数の反射部12は、Y方向に沿って並び、かつ、X方向と所定の角度で交差する方向に沿って並んでいてもよいし、あるいは、X方向に沿って並び、かつ、Y方向と所定の角度で交差する方向に沿って並んでもよい。またあるいは、反射部12と透過部13とが連続する方向が周期方向であるとき、光学素子10は、3つ以上の相互に異なる周期方向の各々に沿って並ぶ反射部12と透過部13とを備える構成であってもよい。
・図17が示すように、光学素子10において、下側透明樹脂層11の上方の全体、すなわち、上側透明樹脂層15の裏面15rの全体に1つの金属膜が形成され、金属膜に対して、複数の透過部13が形成された構成でもよい。
こうした構成では、例えば、複数の透過部13は、X方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、Y方向において等しい間隔を空けて並んでいる。そして、X方向において相互に隣り合う2つの透過部13の間に位置して、かつ、Y方向に沿って延びる反射部12aと、Y方向において相互に隣り合う2つの透過部13の間に位置して、かつ、X方向に沿って延びる反射部12aとを有している。Y方向に沿って延びる複数の反射部12aの各々は、X方向に沿って延びる複数の反射部12aと直交している。また、複数の透過部13の周囲を囲む金属膜も反射部12bとして機能する。
X方向において相互に隣り合う1つの反射部12aと1つの透過部13とが第1回折周期部21を構成し、第1回折周期部21においてX方向に沿う幅が、第1格子周期d1である。Y方向において相互に隣り合う1つの反射部12aと1つの透過部13とが第2回折周期部22を構成し、第2回折周期部22においてY方向に沿う幅が、第2格子周期d2である。第1格子周期d1と第2格子周期d2とは、例えば相互に等しい。なお、第1格子周期d1と第2格子周期d2とは相互に異なってもよい。
つまり、図17が示す光学素子10も、図16が示す光学素子10と同様、いわゆるクロスグレーティング構造を有する。図17が示す光学素子10において、図16の示す光学素子10の透過部13の位置に反射部12aが位置し、かつ、図16の示す光学素子10の反射部12の位置に透過部13が位置していれば、図17が示す光学素子10は、図16が示す光学素子10と同じ光学的な効果を有する。
なお、複数の透過部13は、Y方向に沿って並び、かつ、X方向と所定の角度で交差する方向に沿って並んでもよいし、あるいは、X方向に沿って並び、かつ、Y方向と所定の角度で交差する方向に沿って並んでもよい。またあるいは、反射部12と透過部13とが連続する方向が周期方向であるとき、光学素子10は、3つ以上の相互に異なる周期方向の各々に沿って並ぶ反射部と透過部13とを備える構成であってもよい。
上述したように、図17が示す光学素子10は、図16が示す光学素子10と光学的な効果が等しい構造とすることも可能である。そのため、図17が示す光学素子10と図16が示す光学素子10とは、反射部の形成のしやすさに応じて選択されればよい。
・光学素子10は、保護部14を有していなくてもよい。保護部14を有していない光学素子10は、例えば、以下の製造方法によって製造される。
光学素子10を製造するときには、まず、上述した製造方法と同様、非周期性の凹凸構造を有した上側透明樹脂層15の原版を作成する。原版の作成時には、例えば、SUS板に対してサンドブラスト処理を行うことで、非周期性の凹凸構造をSUS板の表面に形成する。これにより、非周期性の凹凸構造を表面に有した原版を作成することができる。あるいは、原版の作成時には、レーザーや電子線などの描画機、すなわち、露光機を用いたフォトリソグラフィーによって、非周期性の凹凸構造を表面に有したレジスト膜を作成してもよい。これにより、非周期性の凹凸構造を表面に有した原版を作成することができる。そして、得られた原版に対して導通膜をドライコーティングした後に、電鋳によって実用版を形成してもよい。
図18が示すように、上述した原版における表面の凹凸構造を複製することによって、非周期性の凹凸構造を有した上側透明樹脂層15を形成する。上側透明樹脂層15は、例えば、フォトポリマー法を用いて形成される。
なお、上側透明樹脂層15を形成する方法には、上述したフォトポリマー法に限らず、熱エンボス法、ホットコールドプレス法、フォトポリマー法、および、ナノインプリント法などの方法を用いることができる。
図19が示すように、上側透明樹脂層15のうち、非周期性の凹凸構造を有する面の全体に、反射部12を形成するための金属膜、例えば、アルミニウム膜12Mがドライコーティングされる。アルミニウム膜12Mのドライコーティングには、上述した方法のいずれかを用いることができる。
図20が示すように、アルミニウム膜12Mの全体にフォトレジストPRが塗布される。
図21が示すように、レーザーを用いたパターン露光によって、アルミニウム膜12Mのうち、反射部12に対応した部分のフォトレジストPRを硬化させて、アルミニウム膜12Mをエッチングするときのマスクが形成される。そして、フォトレジストPRのうち、硬化していない部分と、アルミニウム膜12Mのうち、マスクの位置していない部分とがアルカリエッチングされることによって、反射部12が形成される。
なお、こうした製造方法によれば、保護部14を有する光学素子10を製造することも可能である。保護部14を有する光学素子10を製造するときには、フォトレジストPRを塗布する工程の前に、保護部14を形成するための薄膜、例えば、フッ化マグネシウム膜が形成される。そして、フォトレジストPRの現像が行われた後であって、アルミニウム膜12Mのアルカリエッチングの前に、フッ化マグネシウム膜のエッチングが行われる。
光学素子10は、上述した方法以外の方法によって製造されてもよく、例えば、水洗シーライト加工や、物理的に金属膜を除去する方法などによって製造されてもよい。このうち、水洗シーライト加工では、上側透明樹脂層15のうち、透過部13に対応する部分に水溶性樹脂を塗布した後に、反射部12を形成するための金属膜をドライコーティングによって成膜する。そして、水溶性樹脂と金属膜とが形成された上側透明樹脂層15を水洗することによって、水溶性樹脂と、水溶性樹脂の上に形成された金属膜とを除去する。
これに対して、物理的に金属膜を除去する方法では、レーザーをパターン照射することなどによって、金属層のうち、透過部13に対応する部分が物理的に除去される。
反射部12が形成された後、例えば、紫外線硬化性樹脂が、上側透明樹脂層15の裏面15rに塗布され、かつ、塗布された紫外線硬化性樹脂が硬化されることで、反射部12および保護部14を覆う下側透明樹脂層11が形成される。なお、下側透明樹脂層11は省略されてもよい。
なお、上述したように、保護部14を有しない光学素子10を製造する方法であれば、反射部12は、上側透明樹脂層15ではなく、下側透明樹脂層11に形成されてもよい。この場合には、上側透明樹脂層15が省略されてもよい。
[第2実施形態]
図22から図27を参照して光学素子を具体化した第2実施形態を説明する。第2実施形態の光学素子は、第1実施形態の光学素子と比べて、反射部が入射光を散乱する点は共通しているものの、反射部において入射光を散乱させるための構造が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第1実施形態の光学素子と共通する構成には第1実施形態の光学素子と同じ符号を付すことによって、第1実施形態の光学素子と共通する構成の説明を省略する。そして、以下では、光学素子の構成、および、光学素子の作用を順番に説明する。
[光学素子の構成]
図22から図25を参照して光学素子の構成を説明する。図22および図25では、光学素子の構成を説明する便宜上、上側透明樹脂層の図示が省略されている。また、図22および図25では、下側透明樹脂層に対する反射部の位置を分かりやすくするために、反射部の各々にはドットが付されている。そして、図22では、図示の便宜上、下側透明樹脂層の表面に形成された凹凸構造の図示が省略されている。
図22が示すように、光学素子10は、下側透明樹脂層11の表面11sにおける上方に形成された複数の反射部31を備え、複数の反射部31の各々は、Y方向に沿って延びる帯形状を有し、複数の反射部31は、第1方向の一例であるX方向において等しい間隔を空けて並んでいる。反射部31は、表面11sから離れる方向に突き出た半円筒面を備えている。なお、各反射部31は、反射部31におけるY方向の全体に半円筒面を備えているが、Y方向における少なくとも一部に半円筒面を備えてもよい。Y方向が、第2方向の一例である。また、各反射部31は、反射部31におけるX方向の全体にわたる半円筒面を備えているが、X方向における少なくとも一部に半円筒面を備えていてもよい。
図23が示すように、反射部31の各々は半円筒面を備えているため、Z-Y平面に沿った1つの断面において、反射部31は、Y方向の全体にわたってZ方向での位置が変わらない。また、保護部32も同じく半円筒面を備えているため、Z-Y平面に沿った1つの断面において、保護部32は、Y方向の全体にわたってZ方向での位置が変わらない。
図24が示すように、上側透明樹脂層15のうち、下側透明樹脂層11と接触する面が裏面15rである。上側透明樹脂層15の裏面15rは、X方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の凹部15bを有し、複数の凹部15bの各々は、Y方向に沿って延びる円筒面によって構成されている。
各反射部31は、1つの凹部15bにならって形成されているため、各反射部31は、凹部15bの形状にならう半円筒面を備えている。また、各保護部32は、反射部31と同様、1つの凹部15bにならって形成されているため、各保護部32は、凹部15bの形状にならう半円筒面を備えている。
図25が示すように、X方向において相互に隣り合う1つの反射部31と1つの透過部13とが1つの透過周期部33を構成し、透過周期部33における格子周期dは、第1実施形態の格子周期dと同様、0.20μmよりも大きく20μm以下であることが好ましい。
[光学素子の作用]
図26および図27を参照して光学素子の作用を説明する。
図26が示すように、光学素子10において、反射部31に対して上側透明樹脂層15側から光が入射するとき、上側透明樹脂層15に向けて突き出た凸形状を有する各反射部31は、入射光Liが入射した反射部31の部位に応じた方向に入射光Liを反射する。すなわち、各反射部12は、反射光Lrとして散乱光を生じさせる。そのため、入射光Liが白色の可視光であるとき、光学素子10は、白色を有した散乱光を反射する。
一方で、図27が示すように、光学素子10において、反射部31に対して上側透明樹脂層15側から光が入射するとき、入射光Liは、複数の透過部13の各々から透過して、下側透明樹脂層11において、表面11sと対向する裏面から透過光Ltとして射出される。このとき、透過回折部20は、入射光Liに含まれる複数の波長の光の各々を各光に依存した角度で回折させて、相互に異なる色を有する複数の回折像を形成する。
これにより、例えば、光学素子10の観察者は、反射観察では、反射部12によって散乱された白色の散乱光を観察することができる。一方で、観察者は、透過観察では、透過回折部20の回折した虹色を有する回折光を観察することができる。
以上説明したように、第2実施形態の光学素子によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(5)光学素子10において反射された光は、半円筒面の散乱した散乱光である一方で、光学素子10において透過された光は、透過回折部20による回折光である。そのため、光学素子10の反射した光と、光学素子の透過した光との差異が顕著になる。
[第2実施形態の変形例]
なお、上述した第2実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・複数の反射部31の各々は、Y方向に沿って延びる帯形状ではなく、X方向に沿って延びる帯形状を有してもよい。こうした構成では、複数の反射部31は、Y方向において等しい間隔を空けて並んでいればよい。あるいは、各反射部31は、Y方向に対して垂直以外の所定の角度で交差する延在方向に沿って延びる帯形状を有してもよく、こうした構成では、複数の反射部31は、延在方向と直交する方向において等しい間隔を空けて並んでいればよい。
・複数の反射部31において、Y方向に沿う長さが相互に異なってもよい。複数の反射部31において、例えば、X方向における1つの端に位置する反射部31から、他の端に位置する反射部31に向けて、Y方向に沿う長さが次第に小さくなってもよい。あるいは、複数の反射部31には、Y方向に沿う長さが相互に異なる反射部31が含まれ、複数の反射部31は、X方向において、Y方向に沿う長さに所定の規則性を有していない状態で並んでいてもよい。すなわち、図13が示す第1実施形態の変形例の構成と、第2実施形態の反射部31とを組み合わせた構成であってもよい。
・光学素子10において、下側透明樹脂層11の上方の全体、すなわち、上側透明樹脂層15の裏面15rの全体に1つの金属膜が形成され、金属膜に対して、複数の透過部13が形成された構成でもよい。すなわち、図14が示す第1実施形態の変形例の構成と、第2実施形態の反射部31とを組み合わせた構成であってもよい。
・光学素子10において、下側透明樹脂層11の上方の全体、すなわち、上側透明樹脂層15の裏面15rの全体に1つの金属膜が形成され、金属膜に対して、複数の透過部13が形成され、かつ、複数の透過部13には、Y方向に沿う長さが相互に異なる透過部13が含まれる構成でもよい。すなわち、図15が示す第1実施形態の変形例の構成と、第2実施形態の反射部31とを組み合わせた構成であってもよい。
・光学素子10は、クロスグレーティング構造を有する構成であってもよい。すなわち、図16が示す第1実施形態の変形例の構成と、第2実施形態における反射部31とを組み合わせた構成、あるいは、図17が示す第1実施形態の変形例の構成と、第2実施形態における反射部31とを組み合わせた構成であってもよい。
[第3実施形態]
図28から図33を参照して光学素子を具体化した第3実施形態を説明する。第3実施形態の光学素子は、第1実施形態の光学素子と比べて、反射部の構成、および、反射部によって得られる光学的な効果が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第1実施形態の光学素子と共通する構成には第1実施形態の光学素子と同じ符号を付すことによって、第1実施形態の光学素子と共通する構成の説明を省略する。そして、以下では、光学素子の構成、および、光学素子の作用を順番に説明する。
[光学素子の構成]
図28から図31を参照して光学素子の構成を説明する。図28および図31では、光学素子の構成を説明する便宜上、上側透明樹脂層の図示が省略されている。また、図28および図31では、下側透明樹脂層に対する反射部の位置を分かりやすくするために、反射部の各々にはドットが付されている。そして、図28では、図示の便宜上、下側透明樹脂層の表面に形成された凹凸構造の図示が省略されている。
図28が示すように、光学素子10は、下側透明樹脂層11の表面11sにおける上方に形成された複数の反射部41を備え、複数の反射部41の各々は、Y方向に沿って延びる帯形状を有し、複数の反射部41は、X方向において等しい間隔を空けて並んでいる。
図29が示すように、上側透明樹脂層15の裏面15rは、Y方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の凸部15aを有し、複数の凸部15aの各々は、X方向に沿って延び、かつ、Z-Y方向に沿う断面形状が矩形の突条である。複数の凸部15aにおいて、Z方向において下側透明樹脂層11の裏面11rに向けて突き出た量が相互に等しい。
各反射部41は、上側透明樹脂層15の裏面15rにおいて、Y方向に沿って延びる帯形状を有するため、各反射部41は、上側透明樹脂層15の裏面15rのうち、各反射部41の位置する部分にならう構造を備えている。すなわち、各反射部41は、反射部41において下側透明樹脂層11の裏面11rに向けて突き出た部位である複数の凹部41aと、Z方向において凹部41aよりも下側透明樹脂層11の裏面11rからの距離が大きい複数の凸部41bとを備えている。
反射部41において、凹部41aと凸部41bとがY方向に沿って交互に連続して並び、凹部41aと凸部41bとが交互に連続する方向が、周期方向である。すなわち、反射部41は、Y方向に沿った周期性を有した凹凸構造を備えている。反射部41において、Y方向において相互に隣り合う1つの凹部41aと1つの凸部41bとが1つの反射周期部43を構成し、反射周期部43におけるY方向に沿う幅が、格子周期drである。なお、凹部41aと凸部41bとは、反射部41におけるY方向の全体において交互に連続しているが、Y方向における一部において交互に連続していてもよい。
格子周期drが、0.15μm以上20μm以下であるとき、反射部41は、反射周期部43によって回折された回折光によって、相互に異なる色を有する複数の回折像を形成することができる。すなわち、反射部41は、反射部41が反射する光の反射角を反射部41に入射する光の角度とは異ならせて反射像を形成することができる。
格子周期drは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、格子周期drが、0.5μm以上10μm以下であるとき、格子周期drが他の大きさであるときと比べて、回折像の視野角がより大きくなる。
また、格子周期drが、可視光領域に含まれる光の波長よりも小さいとき、各反射部41はサブ波長格子であり、反射部41は、入射光から偏光を分離することができる。なお、サブ波長格子が、可視光領域に含まれる光、例えば、400nm以上700nm以下の光に対して偏光を分離する効果を有するためには、格子周期drは、以下の長さであることが好ましい。すなわち、格子周期drは、可視光波長の1/2未満の長さである0.15μm以上0.35μm未満の範囲に含まれることが好ましく、0.15μm以上0.30μm以下の範囲に含まれることがより好ましい。
そのため、格子周期drが0.20μmよりも大きく0.35μm未満の範囲に含まれるとき、反射部41は、反射部41に対して垂直な成分である偏光のみを反射しつつ、可視光を回折させることができる。
各保護部42は、反射部41と同様、上側透明樹脂層15の裏面15rのうち、各保護部42が位置する部分にならう構造を備えている。
図30は、Z-X平面に沿う光学素子10の断面形状を示している。上述したように、上側透明樹脂層15の裏面15rに形成された凸部15aは、X方向に沿って延び、かつ、Z方向において下側透明樹脂層11の裏面11rに向けて突き出た量が相互に等しい。そのため、複数の反射部41は、Z方向における位置が相互に等しく、かつ、複数の保護部42は、Z方向における位置が相互に等しい。
図31が示すように、X方向において相互に隣り合う1つの反射部41と1つの透過部13とが1つの透過周期部44を構成し、透過周期部44における格子周期dtは、第1実施形態の格子周期dと同様、0.20μmよりも大きく20μm以下であることが好ましい。
[光学素子の作用]
図32および図33を参照して光学素子の作用を説明する。
図32が示すように、光学素子10において、反射部41に対して上側透明樹脂層15側から光が入射するとき、反射型の回折格子として機能する各反射部41が入射光Liを反射する。すなわち、各反射部41は、回折光を反射光Lrとして生じさせる。そのため、入射光Liが白色の可視光であるとき、各反射部41は、虹色を有した回折光を反射光Lrとして生じさせる。
一方で、図33が示すように、光学素子10において、反射部41に対して上側透明樹脂層15側から光が入射するとき、入射光Liは、複数の透過部13の各々から透過して、下側透明樹脂層11において、表面11sと対向する裏面11rから透過光Ltとして射出される。このとき、透過回折部20は、入射光Liに含まれる複数の波長の光の各々を各光に依存した角度で回折させて、相互に異なる色を有する複数の回折像を形成する。
これにより、光学素子10の観察者は、反射観察では、反射部41によって反射された虹色を有する回折光を観察することができる。一方で、観察者は、透過観察では、透過回折部20の回折した虹色を有する回折光を観察することができる。
なお、各反射部41と、透過回折部20とは、相互に同じ回折光を回折する構成でもよいし、相互に異なる回折光を回折する構成であってもよい。
以上説明したように、第3実施形態の光学素子によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(6)光学素子10において反射された光と、光学素子10において透過された光との両方が回折光になる。そのため、光学素子10と同じ光学的な効果を得るためには、透過による回折光における回折の状態を光学素子と同じにすること、さらには、反射による回折光における回折の状態を光学素子と同じにすることが必要であることから、光学素子10の模倣が難しくなる。
(7)反射周期部43の格子周期drが0.20μmよりも大きく0.35μm未満であるとき、反射部41に入射する可視光のうち、反射部41に対して垂直な成分である偏光のみを反射しつつ、可視光を回折させることができる。
(8)反射周期部43の格子周期drが0.35μm以上20μm以下であるとき、反射部41に入射した可視光が、より確実に回折される。
[第3実施形態の変形例]
なお、上述した第3実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・複数の反射部41の各々は、Y方向に沿って延びる帯形状ではなく、X方向に沿って延びる帯形状を有してもよい。こうした構成では、複数の反射部41は、Y方向において等しい間隔を空けて並んでいればよい。あるいは、各反射部41は、Y方向に対して垂直以外の所定の角度で交差する延在方向に沿って延びる帯形状を有してもよく、こうした構成では、複数の反射部41は、延在方向と直交する方向において等しい間隔を空けて並んでいればよい。
・複数の反射部41において、Y方向に沿う長さが相互に異なってもよい。複数の反射部41において、例えば、X方向における1つの端に位置する反射部41から、他の端に位置する反射部41に向けて、Y方向に沿う長さが次第に小さくなってもよい。あるいは、複数の反射部41には、Y方向に沿う長さが相互に異なる反射部41が含まれ、複数の反射部41は、X方向において、Y方向に沿う長さに所定の規則性を有していない状態で並んでいてもよい。すなわち、図13が示す第1実施形態の変形例の構成と、第3実施形態の反射部41とを組み合わせた構成であってもよい。
・光学素子10において、下側透明樹脂層11の上方の全体、すなわち、上側透明樹脂層15の裏面15rの全体に1つの金属膜が形成され、金属膜に対して、複数の透過部13が形成された構成でもよい。すなわち、図14が示す第1実施形態の変形例の構成と、第3実施形態の反射部41とを組み合わせた構成であってもよい。
・光学素子10において、下側透明樹脂層11の上方の全体、すなわち、上側透明樹脂層15の裏面15rの全体に1つの金属膜が形成され、金属膜に対して、複数の透過部13が形成され、かつ、複数の透過部13には、Y方向に沿う長さが相互に異なる透過部13が含まれる構成でもよい。すなわち、図15が示す第1実施形態の変形例の構成と、第3実施形態の反射部41とを組み合わせた構成であってもよい。
・光学素子10は、クロスグレーティング構造を有する構成であってもよい。すなわち、図16が示す第1実施形態の変形例の構成と、第3実施形態における反射部41とを組み合わせた構成、あるいは、図17が示す第1実施形態の変形例の構成と、第3実施形態における反射部41とを組み合わせた構成であってもよい。
・反射周期部43を構成する凹部41aと凸部41bとは、Y方向において交互に連続して並んでいる。これに限らず、反射周期部43を構成する凹部41aと凸部41bとは、X方向において交互に連続して並び、かつ、Y方向において交互に連続して並んでもよい。あるいは、反射周期部43を構成する凹部41aと凸部41bとは、Y方向に対して垂直以外の所定の角度で交差する周期方向に沿って交互に連続して並び、かつ、周期方向と直交する方向に沿って交互に連続して並んでもよい。
・光学素子10において、反射周期部43が第1周期部分であるとき、第1周期部分とは周期性の相互に異なる凹凸構造を有した第2周期部分を有してもよい。なお、第2周期部分は、第1周期部分と比べて、格子周期、および、周期方向の少なくとも一方が異なればよく、第1周期部分と、第2周期部分とは、反射部に入射した可視光を相互に異なる方向に回折させればよい。すなわち、複数の反射部41において、1つの反射部41に第1周期部分と第2周期部分とが含まれてもよい。あるいは、複数の反射部41には、第1周期部分のみを含む反射部41と、第2周期部分のみを含む反射部41とが含まれてもよい。
こうした構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(9)光学素子10において反射された光は、相互に状態の異なる2つの回折光の合成された光である分、光学的な効果の模倣が難しくなる。
[第4実施形態]
図34を参照して光学素子を具体化した第4実施形態を説明する。第4実施形態の光学素子は、第1実施形態の光学素子と比べて、1つの光学素子が光学的な効果の相互に異なる2つの素子部を有する点が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第1実施形態の光学素子と共通する構成には第1実施形態の光学素子と同じ符号を付すことによって、第1実施形態の光学素子と共通する構成の説明を省略する。そして、以下では、光学素子の構成、および、光学素子の作用を順番に説明する。
[光学素子の構成]
図34を参照して光学素子の構成を説明する。図34では、光学素子の備える反射部と透過部とを説明する便宜上、上側透明樹脂層の図示が省略され、反射部にはドットが付されている。
図34が示すように、光学素子50は、1つの下側透明樹脂層11において区画された第1素子部51と、第2素子部52とを備えている。第1素子部51は、第1実施形態の光学素子10と同様、X方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の反射部12を備え、複数の反射部12の各々は、Y方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部12は、非周期性の凹凸構造を有し、第1素子部51において、全ての反射部12の面積の和と、透過部13を含む光を透過する部分の面積の和との比が、第1面積比S1である。
反射部12と透過部13とは、X方向において交互に連続して並び、複数の反射部12と複数の透過部13とが透過回折部20を構成し、透過回折部20は、所定の格子周期daを有している。反射部12と透過部13とが交互に連続する方向が周期方向であり、第1素子部51における周期方向は、X方向に平行な方向である。
一方で、第2素子部52は、Y方向に沿って等しい間隔を空けて並ぶ複数の反射部61を備え、複数の反射部61の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部61は、散乱部の一例である。Y方向において相互に隣り合う2つの反射部61に挟まれることで、反射部61の間を埋める部分が透過部62であり、複数の透過部62は、反射部61と同様、Y方向に沿って等しい間隔を空けて並び、かつ、各透過部62は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。透過部62は、第2透過部の一例である。
反射部61は、第1素子部51の反射部12と同様、非周期性の凹凸構造を有している。第2素子部52において、全ての反射部61の面積の和と、透過部62を含む光を透過する部分の面積の和との比が、第2面積比S2であり、第2面積比S2は、例えば、第1面積比S1と等しい。なお、第1面積比S1と第2面積比S2とは、相互に異なる値であってもよい。
反射部61と透過部62とは、Y方向において交互に連続して並び、複数の反射部61と複数の透過部62とが透過回折部60を構成し、透過回折部60は、所定の格子周期dbを有している。第2素子部52の透過回折部60における格子周期dbは、第1素子部51の透過回折部20における格子周期daと相互に等しい。反射部61と透過部62とが交互に連続する方向が周期方向であり、第2素子部52における周期方向は、Y方向に平行な方向である。すなわち、第2素子部52における周期方向は、第1素子部51における周期方向と直交する方向である。
[光学素子の作用]
光学素子50では、第1素子部51における反射光と、第2素子部52における反射光との両方が散乱光であるため、入射光が白色の可視光であるとき、反射観察では、第1素子部51および第2素子部52の双方において、白色光が観察される。
反射部12に対して上側透明樹脂層15側から、点光源の射出する光をZ方向に沿って光学素子50に入射させると、透過観察では、第1素子部51、および、第2素子部52の双方において、各素子部の視野角にて虹色を有した回折光が観察される。
一方で、反射部に対して上側透明樹脂層15側から、Y方向に沿って延びる棒状光源、例えば蛍光灯の射出する光をZ方向に沿って光学素子50に入射させると、透過観察では、第1素子部51において虹色を有した回折光が観察される一方で、第2素子部52では回折光が観察されない。
ここで、点光源の射出する光はほぼ平行光であるため、透過回折部の周期方向にかかわらず、各波長に応じた分散角で回折光が散乱することによって、虹色を有した回折光が観察される。一方で、棒状光源は、1つの方向に沿って延びる光源であって、入射角が大きいため、棒状光源の延びる方向と交差する方向に沿って延びる反射部と透過部とを有した透過回折部では、各波長の回折光が混合し、虹色を有した回折光が観察されない。
それゆえに、棒状光源の延びる方向と平行な方向に延びる透過部13を有した第1素子部51では、虹色を有した回折光が観察されるものの、棒状光源の延びる方向に対して垂直な方向に延びる透過部62を有した第2素子部52では、虹色を有した回折光が観察されない。
ただし、光学素子50がZ方向を中心として90°回転すると、第2素子部52の透過部62が、棒状光源の延びる方向と平行な方向に沿って延びる一方で、第1素子部51の透過部13が、棒状光源の延びる方向と垂直な方向に沿って延びる。これにより、上側透明樹脂層15側から、光がZ方向に沿って入射するとき、透過観察では、第2素子部52において虹色を有した回折光が観察される一方で、第1素子部51において虹色を有した回折光が観察されない。
なお、図34に示される光学素子50において、反射部に対して上側透明樹脂層15側から、X方向に沿って延びる棒状光源の射出する光をZ方向に沿って入射した場合にも、透過観察では、第2素子部52において虹色を有した回折光が観察される一方で、第1素子部51において虹色を有した回折光が観察されない。
以上説明したように、第4実施形態の光学素子によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(10)第1面積比S1と第2面積比S2とが相互に等しいため、第1素子部51の散乱光の状態と、第2素子部52の散乱光の状態とは、相互に等しくなりやすい。それゆえに、光学素子10に対して光の反射する側では、第1素子部51と第2素子部52との境界は認識されにくい。一方で、第1素子部51を透過した透過光と、第2素子部を透過した透過光とは相互に異なる。そのため、光学素子10には、光学素子10に対して光の反射する側と、光学素子10に対して光の透過する側とで、光学素子10から射出される光に含まれると認識される光の数が相互に異なるという光学的な効果がさらに付加される。
(11)第1素子部51における透過回折部20の周期方向と、第2素子部52における透過回折部60の周期方向とが直交する。そのため、棒状光源を用いた光学素子10の観察では、第1素子部51において透過による回折光が観察される条件と、第2素子部52において透過による回折光が観察される条件とが相互に異なる。
[第4実施形態の変形例]
なお、上述した第4実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。以下に説明される図35および図36では、光学素子の備える反射部と透過部とを説明する便宜上、上側透明樹脂層の図示が省略され、かつ、反射部にドットが付されている。
・第1素子部51の反射部12、および、第2素子部52の反射部61の少なくとも一方が、円筒面によって構成されてもよい。すなわち、第1素子部51の構成と、第2実施形態の反射部31とを組み合わせてもよいし、第2素子部52の構成と、第2実施形態の反射部31とを組み合わせてもよい。あるいは、第1素子部51の反射部12が、上述した非周期性の凹凸構造を有する反射部と、円筒面から構成される反射部との両方を含んでもよいし、第2素子部52の反射部61が、非周期性の凹凸構造を有する反射部と、円筒面から構成される反射部との両方を含んでもよい。
・第1素子部51の反射部12が周期性の凹凸構造を有し、かつ、第2素子部52の反射部61が周期性の凹凸構造を有する構成でもよい。すなわち、第1素子部51の構成と、第3実施形態の反射部41とを組み合わせ、かつ、第2素子部52の構成と、第3実施形態の反射部41とを組み合わせた光学素子であってもよい。
こうした構成では、反射観察において、反射部の有する周期的な凹凸構造に応じた回折光と、透過回折部の格子周期に応じた回折光とが観察される一方で、透過観察において、透過回折部を透過した回折光のみが観察される。そのため、光学素子50において、反射部における格子周期と、透過回折部における格子周期とに基づき、反射観察では、2つの回折光の波長が混合することで、虹色を有した回折光が観察されない構成とすることも可能である。また、2つの回折光の各々における透過角度や波長などを極端に異ならせるように、反射部における格子周期と、透過回折部における格子周期とが設定されることで、2つの回折光の鮮やかな色調が観察される構成とすることも可能である。
・第1素子部51の反射部12、および、第2素子部52の反射部61が、周期的な凹凸構造を有して回折光を反射する構成であるとき、第1素子部51の反射部12における格子周期と、第2素子部52の反射部61における格子周期とが相互に同じであってもよいし、相互に異なってもよい。また、第1素子部51の反射部12における周期方向と、第2素子部52の反射部61における周期方向とが、相互に同じであってもよいし、相互に異なってもよい。
・第1素子部51の反射部12における格子周期と、第2素子部52の反射部61における格子周期とが相互に異なる構成、および、第1素子部51の反射部12における周期方向と、第2素子部52の反射部61における周期方向が相互に異なる構成では、以下のような光学素子50とすることもできる。すなわち、第1素子部51が反射光として生じさせる回折光と、第2素子部52が反射光として生じさせる回折光との混合によって、光学素子50から白色を有した反射光が射出される構成としてもよい。
・第1素子部51の反射部12、および、第2素子部52の反射部61が、周期的な凹凸構造を有して回折光を反射する構成であるとき、以下のような構成であってもよい。すなわち、第1素子部51および第2素子部52の少なくとも一方において、複数の反射部には、凹凸構造における格子周期、および、周期方向の少なくとも一方が相互に異なる複数種類の反射部が含まれてもよい。
・第1素子部51の反射部12、および、第2素子部52の反射部61の一方が、非周期性の凹凸構造あるいは円筒面を有して散乱光を反射し、かつ、他方が、周期性の凹凸構造を有して回折光を反射する構成でもよい。
・図35が示すように、図34における反射部の位置と透過部の位置とが反転した構成であってもよい。すなわち、光学素子50は、下側透明樹脂層11の上方、すなわち、上側透明樹脂層15の裏面15rに形成された1つの金属膜を有し、1つの金属膜は、第1素子部51と第2素子部52との両方に跨っている。
第1素子部51は、X方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の透過部13を備え、複数の透過部13の各々は、Y方向に沿って延びる帯形状を有している。X方向において相互に隣り合う2つの透過部13の間に反射部12aが位置している。
反射部12aと透過部13とは、X方向において交互に連続して並んで透過回折部20を構成し、透過回折部20は、所定の格子周期daを有している。第1素子部51では、金属膜のうち、複数の透過部13の周囲を囲む部分も反射部12bとして機能する。
これに対して、第2素子部52は、Y方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の透過部62を備え、複数の透過部62の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。Y方向において相互に隣り合う2つの透過部62の間に反射部61aが位置している。
反射部61aと透過部62とは、Y方向において交互に連続して並んで透過回折部60を構成し、透過回折部60は、所定の格子周期dbを有している。第2素子部52の格子周期dbは、第1素子部51の格子周期daと等しい。第2素子部52では、金属膜のうち、複数の透過部62の周囲を囲む部分の反射部61bとして機能する。
光学素子50の有する金属膜は、金属膜の面内において、相互に同じ特性を有した非周期性の凹凸構造を有している。すなわち、第1素子部51の反射部と、第2素子部52の反射部とは、相互に同じ特性を有した非周期性の凹凸構造を有している。そのため、第1素子部51の反射部12が反射光として生じさせる散乱光と、第2素子部52の反射部61が反射光として生じさせる散乱光とは、相互に等しくなる。
こうした光学素子50によれば、第4実施形態の光学素子50に準じた効果を得ることができる。
・図35が示す光学素子50では、金属膜のうち、第1素子部51に位置する部分と、第2素子部52に位置する部分とが、相互に異なる特性を有した非周期性の凹凸構造を有してもよい。すなわち、第1素子部51の反射部を含む透過回折部20と、第2素子部52の反射部を含む透過回折部60とは、相互に異なる非周期性の凹凸構造を有してもよい。
こうした構成によれば、2つの透過回折部の間において、透過回折部の備える非周期性の凹凸構造が相互に異なるため、透過回折部ごとに相互に異なる反射光を得ることができる。
・図35が示す光学素子50では、金属膜は、周期性の凹凸構造を有して、光学素子50に入射した光から反射光として回折光を生じさせる構成でもよい。すなわち、第1素子部51の反射部と、第2素子部52の反射部との各々は、周期性の凹凸構造を有してもよい。この場合には、金属膜は、第1素子部51に位置する部分と第2素子部52に位置する部分とで、相互に同じ特性を有した周期性の凹凸構造を有してもよいし、相互に異なる特性を有した周期性の凹凸構造を有してもよい。すなわち、第1素子部51の反射部と、第2素子部52の反射部とは、相互に同じ特性を有した周期性の凹凸構造を有してもよいし、相互に異なる特性を有した周期性の凹凸構造を有してもよい。
・図36が示す光学素子50は、図35が示す光学素子50と比べて、以下の点が異なる。すなわち、第2素子部52の備える複数の透過部62において、X方向に沿う長さが相互に異なる。複数の透過部62において、例えば、Y方向における1つの端に位置する透過部62から、他の端に位置する透過部62に向けて、X方向に沿う長さが次第に小さくなっている。そして、第1素子部51は、第1素子部51と第2素子部52との境界を通るZ-X平面を対称面とする第2素子部52と面対称な構成を有している。
なお、第2素子部52の有する複数の透過部62には、X方向に沿う長さが相互に異なる透過部62が含まれ、複数の透過部62は、Y方向において、X方向に沿う長さに所定の規則性を有していない状態で並んでいてもよい。
こうした構成では、第1素子部51の備える反射部と、第2素子部52の備える反射部とが、相互に同じ特性を有する非周期性の凹凸構造を有して、入射光を散乱する構成であってもよいし、相互に異なる特性を有する非周期性の凹凸構造を有して、入射光を散乱する構成であってもよい。あるいは、第1素子部51の備える反射部と、第2素子部52の備える反射部とが、相互に同じ特性を有する周期性の凹凸構造を有して、入射光を回折する構成でもよいし、相互に異なる特性を有する周期性の凹凸構造を有して、入射光を回折する構成でもよい。
・光学素子50では、第1素子部51の備える複数の反射部12においてY方向に沿う長さが相互に異なり、かつ、第2素子部52の備える複数の反射部61において、Y方向に沿う長さが相互に異なってもよい。すなわち、光学素子50の構成と、第1実施形態の変形例であって、図13が示す光学素子10の構成とを組み合わせてもよい。
・光学素子50において、図34が示す光学素子50における第1素子部51の構成と、図35が示す光学素子50における第2素子部52の構成とを組み合わせてもよい。あるいは、図34が示す光学素子50における第2素子部52の構成と、図35が示す光学素子50における第1素子部51の構成とを組み合わせてもよい。
・光学素子50において、第1素子部51の備える透過回折部と、第2素子部52の備える透過回折部とが相互に等しく、かつ、第1素子部51の反射部における非周期的な凹凸構造と、第2素子部52の反射部における非周期的な凹凸構造とが相互に異なる構成でもよい。こうした構成であっても、第1素子部51によって得られる光学的な効果と、第2素子部52によって得られる光学的な効果とを相互に異ならせることはできる。
・光学素子は、第1素子部51の備える透過回折部と、第2素子部52の備える透過回折部とが相互に等しく、かつ、第1素子部51の反射部における周期的な凹凸構造と、第2素子部52の反射部における周期的な凹凸構造とにおいて、反射周期部における格子周期が相互に異なる構成でもよい。こうした構成であっても、第1素子部51によって得られる光学的な効果と、第2素子部52によって得られる光学的な効果とを相互に異ならせることはできる。
また、第1素子部51の反射部における格子周期と、第2素子部52の反射部における格子周期とが相互に異なる構成によれば、透過回折部ごとに相互に異なる回折光を得ることができる。
[第5実施形態]
図37を参照して光学素子を具体化した第5実施形態を説明する。第5実施形態の光学素子は、第4実施形態の光学素子と比べて、第1素子部の透過回折部における格子周期と、第2素子部の透過回折部における格子周期とが相互に異なる点が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第4実施形態の光学素子と共通する構成には第4実施形態の光学素子と同じ符号を付すことによって、第4実施形態の光学素子と共通する構成の説明を省略する。そして、以下では、光学素子の構成、および、光学素子の作用を順番に説明する。
[光学素子の構成]
図37を参照して光学素子の構成を説明する。図37では、光学素子の備える反射部と透過部とを説明する便宜上、上側透明樹脂層の図示が省略され、反射部にはドットが付されている。
図37が示すように、光学素子50は、第1素子部51と第2素子部52とを備えている。第1素子部51は、1つの方向の一例であるY方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の反射部71を備え、複数の反射部71の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。Y方向において相互に隣り合う2つの反射部71の間に透過部72が位置し、複数の透過部72は、Y方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、各透過部72は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部71は、非周期性の凹凸構造を有し、第1素子部51において、全ての反射部71の面積の和と、透過部72を含む光を透過する部分の面積の和との比が、第1面積比S1である。
反射部71と透過部72とは、Y方向において交互に連続して並び、透過回折部70を構成している。透過回折部70において、相互に隣り合う反射部71と透過部72とが透過周期部73を構成し、透過周期部73は所定の格子周期daを有している。
一方で、第2素子部52は、Y方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の反射部81を備え、複数の反射部81の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。Y方向において相互に隣り合う2つの反射部81の間に透過部82が位置し、複数の透過部82は、Y方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、各透過部82は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部81は、第1素子部51の反射部71と同じ特性を有した非周期性の凹凸構造を有し、第2素子部52において、全ての反射部81の面積の和と、透過部82を含む光を透過する部分の面積の和との比が、第2面積比S2である。
反射部81と透過部82とは、Y方向において交互に連続して並び、透過回折部80を構成している。透過回折部80において、相互に隣り合う反射部81と透過部82とが透過周期部83を構成し、透過周期部83は、所定の格子周期dbを有している。第2素子部52の透過回折部80における格子周期dbは、第1素子部51の透過回折部70における格子周期daよりも小さい。なお、第2素子部52の透過回折部80における格子周期dbは、第1素子部51の透過回折部70における格子周期daよりも大きくてもよい。
[光学素子の作用]
光学素子50において、第1面積比S1と第2面積比S2とが相互に等しい構成では、第1素子部51によって反射された散乱光の強度と、第2素子部52によって反射された散乱光の強度とが相互に等しい。しかも、第1素子部51の反射部71と、第2素子部52の反射部81とは、特性の相互に等しい非周期性の凹凸構造を有するため、反射観察において、第1素子部51と第2素子部52との境界が認識されにくい。
一方で、第1素子部51の透過回折部70における格子周期daと、第2素子部52の透過回折部80における格子周期dbとが相互に異なる。そのため、第1素子部51の透過回折部70が入射光した光から透過光として生じさせる回折光と、第2素子部52の透過回折部80が入射した光から透過光として生じさせる回折光とが、相互に異なる。それゆえに、透過観察では、第1素子部51と、第2素子部52とにおいて、透過角度や分散角度が相互に異なる回折光が観察され、第1素子部51と第2素子部52との境界が認識されやすい。
以上説明したように、第5実施形態の光学素子によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(12)第1素子部51の透過回折部70と、第2素子部52の透過回折部80とにおいて、格子周期が相互に異なるため、透過回折部ごとに相互に異なる回折光が得られる。
[第5実施形態の変形例]
なお、上述した第5実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。以下に説明される図38から図40では、光学素子の備える反射部と透過部とを説明する便宜上、上側透明樹脂層の図示が省略され、かつ、反射部にドットが付されている。
・第1素子部51における第1面積比S1と、第2素子部52における第2面積比S2とが相互に異なってもよい。
・第1素子部51の反射部71と、第2素子部52の反射部81とは、非周期性の凹凸構造を有する構成ではなく、周期性の凹凸構造を有して、反射光として回折光を生じさせる構成でもよい。こうした構成であっても、第1素子部51の反射部71と、第2素子部52の反射部81とが、相互に同じ特性を有する周期性の凹凸構造を有していれば、第1素子部51において反射光として生じる回折光と、第2素子部52において反射光として生じる回折光とが相互に等しくなる。そのため、第1素子部51と第2素子部52との境界が認識されにくくはなる。
・図38が示すように、光学素子50は、図37における反射部の位置と透過部の位置とが反転した構成であってもよい。すなわち、光学素子50は、下側透明樹脂層11の上方、つまり、上側透明樹脂層15の裏面15rに形成された1つの金属膜を有し、1つの金属膜は、第1素子部51と、第2素子部52との両方に跨っている。
第1素子部51は、Y方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の透過部72を備え、複数の透過部72の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部71aは、Y方向において相互に隣り合う2つの透過部72の間に位置している。
反射部71aと透過部72とは、Y方向において交互に連続して並んで透過回折部70を構成している。透過回折部70のうち、相互に隣り合う反射部71aと透過部72とが透過周期部73を構成し、透過周期部73は、所定の格子周期daを有している。第1素子部51では、金属膜のうち、複数の透過部72の周囲を囲む部分も反射部71bとして機能する。
これに対して、第2素子部52は、Y方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の透過部82を備え、複数の透過部82の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部81aは、Y方向において相互に隣り合う2つの透過部82の間に位置している。
反射部81aと透過部82とは、Y方向において交互に連続して並んで透過回折部80を構成している。透過回折部80のうち、相互に隣り合う反射部81aと透過部82とが透過周期部83を構成し、透過周期部83は、所定の格子周期dbを有している。第2素子部52の格子周期dbは、第1素子部51の格子周期daよりも小さい。第2素子部52では、金属膜のうち、複数の透過部82の周囲を囲む部分も反射部81bとして機能する。
こうした構成によっても、第5実施形態の光学素子50に準じた効果を得ることができる。
・図39が示すように、光学素子50は、クロスグレーティング構造を有してもよい。すなわち、光学素子50は、第1素子部51と、第2素子部52とを備えている。第1素子部51において、矩形形状を有した複数の反射部91が、X方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、Y方向において等しい間隔を空けて並んでいる。そして、透過部92は、X方向において相互に隣り合う2つの反射部91の間に位置して、Y方向に沿って延び、また、Y方向において相互に隣り合う2つの反射部91の間に位置して、X方向に沿って延びている。
反射部91と透過部92とは、X方向において交互に連続して並び、かつ、Y方向において交互に連続して並んでいる。これにより、複数の反射部91と複数の透過部92とが、透過回折部90を構成している。また、X方向において相互に隣り合う反射部91と透過部92とが透過周期部93を構成し、Y方向において相互に隣り合う反射部91と透過部92とが透過周期部93を構成している。透過回折部90において、X方向と平行な周期方向での格子周期と、Y方向と平行な周期方向での格子周期とが相互に等しく、各格子周期は、所定の格子周期daである。
一方で、第2素子部52において、矩形形状を有した複数の反射部101が、X方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、Y方向において等しい間隔を空けて並んでいる。そして、透過部102は、X方向において相互に隣り合う2つの反射部101の間に位置して、Y方向に沿って延び、また、Y方向において相互に隣り合う2つの反射部101の間に位置してX方向に沿って延びている。
反射部101と透過部102とは、X方向において交互に連続して並び、かつ、Y方向において交互に連続して並んでいる。これにより、複数の反射部101と複数の透過部102とが、透過回折部100を構成している。また、X方向において相互に隣り合う反射部101と透過部102とが透過周期部103を構成し、Y方向において相互に隣り合う反射部101と透過部102とが透過周期部103を構成している。透過回折部100において、X方向と平行な周期方向での格子周期と、Y方向と平行な周期方向での格子周期とが相互に等しく、各格子周期は、所定の格子周期dbである。第2素子部52の透過回折部100における格子周期dbは、第1素子部51の透過回折部90における格子周期daよりも小さい。
こうした光学素子50によれば、反射観察では、第1素子部51と第2素子部52との境界が認識されにくい一方で、透過観察では、第1素子部51の透過による回折光と、第2素子部52の透過による回折光とが相互に異なるため、第1素子部51と第2素子部52との境界が認識されやすい。
・図40が示すように、光学素子50は、図39における反射部の位置と透過部の位置とが反転した構成であってもよい。すなわち、光学素子50は、下側透明樹脂層11の上方、つまり、上側透明樹脂層15の裏面15rに形成された1つの金属膜を有し、1つの金属膜は、第1素子部51と、第2素子部52との両方に跨っている。
第1素子部51において、矩形形状を有した複数の透過部92が、X方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、Y方向において等しい間隔を空けて並んでいる。反射部91aは、X方向において相互に隣り合う2つの透過部92の間に位置して、Y方向に沿って延び、また、Y方向において相互に隣り合う2つの透過部92の間に位置して、X方向に沿って延びている。金属膜のうち、複数の透過部92の周囲を囲む部分も反射部91bとして機能する。
反射部91aと透過部92とは、X方向において交互に連続して並び、かつ、Y方向において交互に連続して並んでいる。これにより、複数の反射部91aと複数の透過部92とが、透過回折部90を構成している。また、X方向において相互に隣り合う反射部91aと透過部92とが透過周期部93を構成し、Y方向において相互に隣り合う反射部91aと透過部92とが透過周期部93を構成している。透過回折部90において、X方向と平行な周期方向での格子周期と、Y方向と平行な方向での格子周期とが相互に等しく、各格子周期は、所定の格子周期daである。
一方で、第2素子部52において、矩形形状を有した複数の透過部102が、X方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、Y方向において等しい間隔を空けて並んでいる。反射部101aは、X方向において相互に隣り合う2つの透過部102の間に位置して、Y方向に沿って延び、また、Y方向において相互に隣り合う2つの透過部102の間に位置して、X方向に沿って延びている。金属膜のうち、複数の透過部92の周囲を囲む部分も反射部101bとして機能する。
反射部101aと透過部102とは、X方向において交互に連続して並び、かつ、Y方向において交互に連続して並んでいる。これにより、複数の反射部101と複数の透過部102とが、透過回折部100を構成している。また、X方向において相互に隣り合う反射部101aと透過部102とが透過周期部103を構成し、Y方向において相互に隣り合う反射部101aと透過部102とが透過周期部103を構成している。透過回折部100において、X方向と平行な周期方向での格子周期と、Y方向と平行な方向での格子周期とが相互に等しく、各格子周期は、所定の格子周期dbである。第2素子部52の透過回折部100における格子周期dbは、第1素子部51の透過回折部90における格子周期daよりも小さい。
そのため、こうした構成によっても、図39に示される光学素子50に準じた効果を得ることができる。
・光学素子50は、第4実施形態の構成と組み合わせてもよい。すなわち、第1素子部51の透過回折部70における周期方向と、第2素子部52の透過回折部80における周期方向とが相互に異なってもよい。
[第6実施形態]
図41を参照して光学素子を具体化した第6実施形態を説明する。第6実施形態の光学素子は、第4実施形態の光学素子と比べて、1つの光学素子を構成する素子部の数が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第4実施形態の光学素子と共通する構成には第4実施形態の光学素子と同じ符号を付すことによって、第4実施形態の光学素子と共通する構成の説明を省略する。そして、以下では、光学素子の構成、および、光学素子の作用を順番に説明する。
[光学素子の構成]
図41を参照して光学素子の構成を説明する。図41では、光学素子の備える反射部と透過部とを説明する便宜上、上側透明樹脂層の図示が省略され、反射部にはドットが付されている。
図41が示すように、光学素子110は、下側透明樹脂層11に区画された第1素子部111、第2素子部112、および、第3素子部113を備えている。第1素子部111は、Y方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の反射部121を備え、複数の反射部121の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。Y方向において相互に隣り合う2つの反射部121の間に、透過部122が位置し、透過部122は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部121と透過部122とは、Y方向において交互に連続して並んで、透過回折部120を構成している。透過回折部120は、所定の格子周期dcを有している。反射部121は、周期的な凹凸構造を有して、例えば、赤色を有した回折光を反射光として生じさせる。
第2素子部112は、第1素子部111と同様、Y方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の反射部131を備え、複数の反射部131の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。Y方向において相互に隣り合う2つの反射部131の間に、透過部132が位置し、透過部132は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部131と透過部132とは、Y方向において交互に連続して並んで、透過回折部130を構成している。透過回折部130は、所定の格子周期ddを有している。
反射部131は、周期的な凹凸構造であって、かつ、第1素子部111の反射部121が備える周期的な凹凸構造とは異なる特性を有した凹凸構造を有している。反射部131は、例えば、緑色を有した回折光を反射光として生じさせる。
第3素子部113は、第1素子部111と同様、Y方向において等しい間隔を空けて並ぶ複数の反射部141を備え、複数の反射部141の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。Y方向において相互に隣り合う2つの反射部141の間に、透過部142が位置し、透過部142は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部141と透過部142とは、Y方向において交互に連続して並んで、透過回折部140を構成している。透過回折部140は、所定の格子周期deを有している。第3素子部113における格子周期de、第1素子部111における格子周期dc、および、第2素子部112における格子周期ddは、相互に等しい。なお、3つの素子部において、格子周期は相互に等しくなくてもよい。
反射部141は、周期的な凹凸構造であって、第1素子部111の反射部121における凹凸構造、および、第2素子部112の反射部131における凹凸構造の双方と異なる特性を有した凹凸構造を有している。反射部141は、例えば、青色を有した回折光を反射光として生じさせる。
[光学素子の作用]
光学素子110において、各透過回折部に対する上側透明樹脂層15側から光が入射したとき、第1素子部111は赤色の回折光を反射光として生じさせ、第2素子部112は緑色の回折光を反射光として生じさせ、かつ、第3素子部113は青色の回折光を反射光として生じさせる。そのため、光学素子50から射出される反射光は、3つの回折光が混合した光であるため、白色を有した光になる。
このように、非周期性の凹凸構造を有して散乱光を反射する反射部を備える構成や、円筒面を有して散乱光を反射する反射部を備える構成でなくとも、光学素子50が白色を有した反射光を射出することができる。
以上説明したように、第6実施形態の光学素子によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(13)光学素子110の3つの素子部が、相互に異なる周期的な凹凸構造によって相互に異なる回折光を反射光として生じさせることで、光学素子110が、白色を有した反射光を射出する。
[第6実施形態の変形例]
なお、上述した第6実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。以下に説明される図42では、光学素子の備える反射部と透過部との構成を説明する便宜上、上側透明樹脂層の図示が省略されている。
・光学素子110は、回折光の混合によって白色を有する反射光を射出する構成でなくともよい。光学素子50は、反射による光学的な効果、および、透過による光学的な効果の少なくとも一方が相互に異なる3つの素子部を有していればよい。
・光学素子110は、3つ以上の素子部を有していればよく、例えば、4つの素子部を有してもよい。図42が示すように、光学素子110は、下側透明樹脂層11の上に区画された第1素子部111、第2素子部112、第3素子部113、および、第4素子部114を備えている。第1素子部111において、複数の反射部121がX方向において等しい間隔を空けて並び、複数の反射部121の各々が、Y方向に沿って延びる帯形状を有している。第1素子部111では、X方向において相互に隣り合う2つの反射部121の間に、透過部122が位置し、透過部122は、Y方向に沿って延びる帯形状を有している。
反射部121と透過部122とは、X方向において交互に連続して並んで、透過回折部120を構成している。透過回折部120において、相互に隣り合う反射部121と透過部122とが透過周期部123を構成し、透過周期部123は、所定の格子周期dcを有している。
第2素子部112において、複数の反射部131がY方向において等しい間隔を空けて並び、複数の反射部131の各々が、X方向に沿って延びる帯形状を有している。第2素子部112では、Y方向において相互に隣り合う2つの反射部131の間に、透過部132が位置し、透過部132は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。
反射部131と透過部132とは、Y方向において交互に連続して並んで、透過回折部130を構成している。透過回折部130において、相互に隣り合う反射部131と透過部132とが透過周期部133を構成し、透過周期部133は、所定の格子周期ddを有し、格子周期ddは、第1素子部111の透過回折部120における格子周期dcと等しい。第2素子部112の透過回折部130における周期方向は、第1素子部111の透過回折部120における周期方向と直交している。
第3素子部113において、複数の反射部141がX方向において等しい間隔を空けて並び、複数の反射部141の各々が、Y方向に沿って延びる帯形状を有している。第3素子部113では、X方向において相互に隣り合う2つの反射部141の間に、透過部142が位置し、透過部142は、Y方向に沿って延びる帯形状を有している。
反射部141と透過部142とは、X方向において交互に連続して並んで、透過回折部140を構成している。透過回折部140において、相互に隣り合う反射部141と透過部142とが透過周期部143を構成し、透過周期部143は、所定の格子周期deを有している。透過回折部140の格子周期deは、第1素子部111の透過回折部120における格子周期dc、および、第2素子部112の透過回折部130における格子周期ddの双方よりも大きい。
第4素子部114において、複数の反射部151がY方向において等しい間隔を空けて並び、複数の反射部151の各々が、X方向に沿って延びる帯形状を有している。第4素子部114では、Y方向において相互に隣り合う2つの反射部151の間に、透過部152が位置し、透過部152は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。
反射部151と透過部152とは、Y方向において交互に連続して並んで、透過回折部150を構成している。透過回折部150において、相互に隣り合う反射部151と透過部152とが透過周期部153を構成し、透過周期部153は、所定の格子周期dfを有している。格子周期dfは、第3素子部113の透過回折部140における格子周期deと等しい。第4素子部114の透過回折部150における周期方向は、第3素子部113の透過回折部140における周期方向と直交している。
なお、各素子部の備える反射部は、非周期性の凹凸構造を有して散乱光を反射光として生じさせる反射部、円筒面を備えて散乱光を反射光として生じさせる反射部、および、周期性の凹凸構造を有して回折光を反射光として生じさせる反射部のいずれかであればよい。
このように、光学素子50の備える4つの素子部には、透過回折部における周期方向、および、格子周期の少なくとも一方が相互に異なる素子部が含まれる。そのため、1つの光学素子50に対して、素子部の数の分だけ、相互に異なる複数の光学的な効果を付加することができる。それゆえに、反射観察されたときの光学的な効果、あるいは、透過観察されたときの光学的な効果を素子部ごとに異ならせることにより、複数の反射画像や、複数の透過画像を、散乱光や回折光によって光学素子50に表示させることができる。
・光学素子110の備える3つ以上の素子部のうち、少なくとも1つがクロスグレーティング構造を有してもよい。
・第6実施形態の光学素子110、および、第6実施形態の変形例の光学素子110の各々は、反射部の位置と透過部の位置とが反転した構造であってもよい。すなわち、第6実施形態の光学素子110、および、第6実施形態の変形例の光学素子110の各々の構成と、第1実施形態の変形例の構成であって、図14が示す光学素子10の構成とを組み合わせてもよい。
[第7実施形態]
図43を参照して光学素子を具体化した第7実施形態を説明する。第7実施形態の光学素子は、第4実施形態の光学素子と比べて、光学素子を構成する2つの素子部のうち、一方の素子部が回折光を透過光として生じさせない点が相互に異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第4実施形態の光学素子と共通する構成には第4実施形態の光学素子と同じ符号を付すことによって、第4実施形態の光学素子と共通する構成の説明を省略する。そして、以下では、光学素子の構成、および、光学素子の作用を順番に説明する。
[光学素子の構成]
図43を参照して光学素子の構成を説明する。図43では、光学素子の備える反射部と透過部とを説明する便宜上、上側透明樹脂層の図示が省略され、反射部にはドットが付されている。
図43が示すように、光学素子160は、第1素子部161と、第2素子部162とを備えている。第1素子部161では、複数の反射部171が、Y方向において等しい間隔を空けて並び、複数の反射部171の各々が、X方向に沿って延びる帯形状を有している。第1素子部161では、Y方向において相互に隣り合う2つの反射部171の間に、透過部172が位置し、透過部172は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部171と透過部172とは、Y方向において交互に連続して並んで、透過回折部170を構成している。透過回折部170は、所定の格子周期dgを有している。
反射部171は、非周期性の凹凸構造を有して、散乱光を反射光として生じさせる。なお、反射部171は、円筒面を備えて、散乱光を反射光として生じさせる構成でもよい。第1素子部161において、全ての反射部171の面積の和と、透過部172を含む光を透過する部分の面積との比が、第1面積比S1である。
一方で、第2素子部162では、複数の反射部181が、Y方向において不規則に並び、複数の反射部181の各々が、X方向に沿って延びる帯形状を有している。複数の反射部181には、Y方向に沿う幅が相互に異なる反射部181が含まれている。第2素子部162では、Y方向において相互に隣り合う2つの反射部181の間に、透過部182が位置し、複数の透過部182には、Y方向に沿う幅が相互に異なる複数の透過部182が含まれている。複数の透過部182の各々は、X方向に沿って延びる帯形状を有している。反射部181と透過部182とは、Y方向において交互に連続して並んでいる。反射部181は散乱部の一例であり、透過部182は第2透過部の一例である。
反射部181は、非周期性の凹凸構造であって、第1素子部161の反射部171における非周期性の凹凸構造と同じ特性を有した凹凸構造を有して、散乱光を反射光として生じさせる。なお、反射部181は、円筒面を備えて、散乱光を反射光として生じさせる構成でもよい。第2素子部162において、全ての反射部181の面積の和と、透過部182を含む光を透過する部分の面積との比が、第2面積比S2である。第1面積比S1と第2面積比S2とは、相互に等しい。
[光学素子の効果]
第1素子部161における反射部171と、第2素子部162における反射部181とが、相互に同じ特性を有した非周期性を有する凹凸構造を備えている。しかも、第1素子部161の第1面積比S1と、第2面積比S2とが相互に等しい。そのため、反射部に対して上側透明樹脂層15側から光が入射したとき、反射観察では、第1素子部161における散乱光と、第2素子部162における散乱光とが相互に等しく、第1素子部161と第2素子部162との境界が認識されにくい。一方で、第1素子部161の透過回折部170が、回折光を透過光として生じさせる一方、第2素子部162は、透過光として回折光を生じさせない。そのため、透過観察では、第1素子部161においてのみ、虹色を有した回折光が観察される。
以上説明したように、第7実施形態の光学素子によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(14)第1素子部161を透過した透過光は、相互に異なる色を有する複数の回折像を形成する回折光である一方で、第2素子部162を透過した光は白色光である。そのため、光学素子160を透過した2種類の透過光における違いが顕著になる。
[第7実施形態の変形例]
なお、上述した第7実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・第1素子部161の反射部171と、第2素子部162の反射部181とは、周期性を有した凹凸構造を有して、回折光を反射光として生じさせる構成でもよい。こうした構成であっても、第1素子部161の反射部171と、第2素子部162の反射部181とが、相互に同じ特性を有していれば、反射観察では、第1素子部161と第2素子部162との境界が認識されにくい。
・光学素子160は、第1素子部161における反射部171の位置と、第1素子部161における透過部172の位置とが反転され、かつ、第2素子部162における反射部181の位置と、第2素子部162における透過部182の位置とが反転された構成であってもよい。こうした構成であっても、第7実施形態の光学素子160と同等の効果を得ることができる。
・光学素子160は、クロスグレーティング構造を有する構成でもよい。すなわち、図44が示すように、光学素子160は、第1素子部161と、第2素子部162とを備えている。第1素子部161において、矩形形状を有する複数の反射部171が、X方向において等しい間隔を空けて並び、かつ、Y方向において等しい間隔を空けて並んでいる。第1素子部161では、透過部172が、X方向において相互に隣り合う2つの反射部171の間に位置して、Y方向に沿って延び、また、Y方向において相互に隣り合う2つの反射部171の間に位置して、X方向に沿って延びている。
反射部171と透過部172とは、X方向において交互に連続して並び、かつ、反射部171と透過部172とは、Y方向において交互に連続して並んで、透過回折部170を構成している。透過回折部170は、X方向と平行な周期方向と、Y方向と平行な周期方向との双方において、所定の格子周期dgを有している。
一方で、第2素子部162では、Z方向から見て、矩形形状を有する複数の反射部181が、X方向とY方向との双方において不規則に位置している。第2素子部162において、透過部182は、X方向において相互に隣り合う2つの反射部181の間、および、Y方向において相互に隣り合う2つの反射部181の間に位置している。
こうした構成によっても、上述した第7実施形態の光学素子160と同等の効果を得ることができる。
・図44が示す光学素子160において、第1素子部161における反射部171の位置と、透過部172における位置とが反転され、かつ、第2素子部162における反射部181の位置と、第2素子部162における透過部182の位置とが反転された構成でもよい。
[実施例]
[実施例1]
まず、紫外線硬化性樹脂として、50.0質量部のウレタン(メタ)アクリレートと、30.0質量部のメチルエチルケトンと、20.0質量部の酢酸エチルと、1.5質量部の光開始剤とから構成される組成物を準備した。ウレタン(メタ)アクリレートとして、多官能性であり、かつ、分子量が6000であるウレタン(メタ)アクリレートを準備した。光開始剤として、イルガキュア184(BASF社製)を準備した。
次に、23μmの厚さを有した透明PETフィルムの上に、乾燥後の膜厚が1μmとなるように、上述の組成物をグラビア印刷法によって塗布した。
そして、組成物を形成材料とする塗膜に、原版を用いて凹凸構造を形成した。
なお、原版は、複数の第1領域と複数の第2領域とを有し、各第1領域、および、各第2領域は、1つの方向である幅方向に沿う幅が5μmであり、幅方向と直交する長さ方向に沿う幅が20mmの矩形形状を有している。第1領域と第2領域とは、幅方向において交互に連続して位置している。
第1領域は、長さ方向に沿って延びる複数の凹部と、長さ方向に沿って延びる複数の凸部とから構成される非周期性の凹凸構造を有し、非周期性の凹凸構造において、凹部と凸部とが、幅方向において交互に、かつ、非周期的に連続して並んでいる。非周期性の凹凸構造において、平均周波数は100本/mmであり、凹部の平均深さは100nmである。
第2領域は、2つの周期性の凹凸構造が相互に交差したクロスグレーティング構造を有する。2つの周期性の凹凸構造のうち、一方の凹凸構造は、長さ方向に沿って延びる複数の凹部と、長さ方向に沿って延びる複数の凸部とを有し、凹部と凸部とが幅方向において交互に、かつ、周期的に並んでいる。他方の凹凸構造は、幅方向に沿って延びる複数の凹部と、幅方向に沿って延びる複数の凸部とを有し、凹部と凸部とが長さ方向において交互に、かつ、周期的に並んでいる。各凹凸構造において、空間周波数は2000本/mmであり、凹部の深さは200nmである。第2領域の有する凹凸構造のアスペクト比は、第1領域の有する凹凸構造よりもアスペクト比よりも大きい。
グラビア印刷機が備える版胴の円筒面に原版を支持させ、原版を上述の組成物を用いて形成した塗膜に押し当てながら、透明PETフィルムにおける塗膜とは反対側から、塗膜に対して紫外線を照射した。これにより、組成物の含む紫外線硬化性樹脂を硬化させて、上側透明樹脂層を形成した。このとき、プレス圧力を2kgf/cm2に設定し、プレス温度を80℃に設定し、プレススピードを10m/分に設定した。また、紫外線の照射は、高温水銀灯を用いて、300mJ/cm2の強度で行った。
次いで、上側透明樹脂層のうち、上述した凹凸構造を有する面の上に、反射部を形成するための金属膜としてAl膜を真空蒸着によって形成した。Al膜の設定膜厚は50nmとした。その後、Al膜における上側透明樹脂層に接触する面と対向する面の上に、Al膜をエッチングするときのマスク層として機能するMgF2膜を真空蒸着によって形成した。MgF2膜の設定膜厚は20nmとした。
そして、水酸化ナトリウム水溶液を用いてAl膜のエッチング処理を行った。これにより、Al膜のうち、上側透明樹脂層において原版の第1領域が転写された部分に形成されたAl膜は、上側透明樹脂層の上に残った。一方で、上側透明樹脂層において原版の第2領域が転写された部分に形成されたAl膜は、上側透明樹脂層の上から選択的に除去された。これにより、上側透明樹脂層の上に、反射部と透過部とを有し、かつ、格子周期が10μmである透過回折部が形成された。また、厚さ方向において透過部と重なる保護部も形成された。
こうして形成された光学素子において、反射観察では、各反射部の有する非周期性の凹凸構造によって散乱された白色光が確認された。これに対して、透過観察では、交互に、かつ、周期的に位置する反射部と透過部とから構成されるワイヤーグリッド構造の回折による鮮やかな虹色を有する透過光が観察された。
[実施例2]
実施例2では、原版の有する第1領域が、実施例1の原版の有する第1領域と異なっている。すなわち、実施例2の原版の有する第1領域は、幅方向に沿って延びる複数の凹部と、幅方向に沿って延びる複数の凸部とを有し、長さ方向において凹部と凸部とが交互に並んでいる。すなわち、第1領域は、回折構造を有し、回折構造における空間周波数が1000本/mmであり、凹部の深さが100nmである。
こうした原版を用いて形成された光学素子において、反射観察では、各反射部の有する周期性の凹凸構造によって回折された虹色を有する回折光が確認された。これに対して、透過観察では、交互に、かつ、周期的に位置する反射部と透過部とから構成されるワイヤーグリッド構造の回折による鮮やかな虹色を有する透過光が観察された。反射によって観察される回折光と、透過によって観察される回折光とは、回折格子の周期が異なるために波長分散が異なり、結果として、反射部に対する上側透明樹脂層側と、反射部に対する保護部側とで、相互に異なる虹色を有した光が観察された。
[実施例3]
実施例3では、原版が、第1素子部に対応する第1部分と、第2素子部に対応する第2部分とを有する点が実施例1と異なる。
実施例3における原版は、第1部分と、第2部分とを有している。第1部分において、矩形形状を有した第1領域が、幅方向に沿って周期的に並び、かつ、長さ方向に沿って周期的に並んでいる。幅方向に沿う格子周期と、長さ方向に沿う格子周期とは、10μmである。第2部分において、矩形形状を有した複数の第1領域が、第2部分において不規則に位置している。第2部分において、第1領域が位置する部位以外の部位には、第2領域が位置している。第1部分と第2部分とにおいて、第1領域の面積の和が相互に等しい。
こうした原版を用いて形成された光学素子において、反射観察では、2つの素子部の双方において散乱光が観察されるため、2つの素子部の境界が確認できないことが認められた。これに対して、透過観察では、一方の素子部において、交互に、かつ、周期的に配置された反射部と透過部によるクロスグレーティング構造の回折による鮮やかな虹色を有する光が観察された。一方で、他方の素子部では、非周期的に並んだ透過部を透過した白色の光が観察された。