JP2023019615A - 発色構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄膜の膜厚の増大に依らずとも、少ない積層数で明瞭な発色を得ることができる発色構造体を提供する。【解決手段】発色構造体10は、金属層22と誘電体層23とを備える光学機能層24であって、干渉によって強められた反射光を射出する光学機能層24を備える。金属層22の可視領域における屈折率は、誘電体層23の可視領域における屈折率と異なる。金属層22は、5%以上の透過率を有する波長域を可視領域に有する。金属層22の膜厚は、5nm以上40nm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、構造色を呈する発色構造体に関する。
多層膜干渉による構造色を呈する発色構造体が知られている。構造色は、光の回折や干渉や散乱といった、物体の微細な構造に起因した光学現象の作用によって視認される色である。多層膜干渉による構造色は、多層膜層における相互に隣り合う薄膜の界面で光が反射し、その反射した光が干渉することによって生じる。
多層膜層にて干渉により強められた反射光の射出角度は、入射光の角度に依存して決まるため、平面に多層膜層を積層した発色構造体では、視認される色が観察角度によって大きく変化する(例えば、特許文献1参照)。一方、微細な凹凸構造上に多層膜層を積層した発色構造体では、干渉によって強められた反射光が凹凸によって多方向に広がって射出されるため、観察角度による色の変化が緩やかになる(例えば、特許文献2参照)。こうした観察角度による色の変化の程度は、発色構造体の用途に応じて選択される。
特開2011-189519号公報 特開2005-153192号公報
ところで、多層膜層の製造工程では、互いに異なる材料からなる薄膜が相互に隣り合うように、複数の薄膜を精密な膜厚で順に積層することが必要である。各薄膜の膜厚の誤差が積み重なると、所望の発色が得られ難くなるため、歩留まりの低下が懸念される。それゆえ、多層膜層を備える発色構造体の製造に要する負荷は大きい。
これに対し、光の干渉を利用しつつも少ない積層数で構造色を生じさせる構造として、単層での薄膜干渉を利用した構造が挙げられる。従来から知られている薄膜干渉を利用した発色構造体は、金属等からなる反射膜と、反射膜上に積層された単層の誘電体膜とを備えている。誘電体膜の表裏で反射した光が干渉し、かつ、反射膜によって反射光の強度が高められることによって、構造色が視認される。
しかしながら、こうした発色構造体においては、干渉を起こす反射光を射出する界面が、誘電体膜の表裏の2面に限られることに加え、干渉によって強められる波長域以外の光も反射膜によって強く反射されるため、反射光の波長選択性が低い。すなわち、視認される光の単色性が低くなり、特定の色の明瞭な発色が得られ難い。
誘電体膜の膜厚を数μm程度に大きくすることで、反射膜に接する面とは反対側の面での反射光の強度を高め、干渉を強めることも可能ではあるが、誘電体膜の膜厚が大きいと、干渉によって強められる波長域の制御が困難となり、所望の発色が得られ難くなる。また、誘電体膜の膜厚が大きいと、応力による発色構造体の反りや誘電体膜の剥がれが生じやすくなる。さらに、凹凸構造上に反射膜と誘電体膜とが積層される場合には、誘電体膜が凹凸構造に沿い難くなるため、反射光の散乱効果が得られ難くもなる。
したがって、薄膜の膜厚の増大に依らずとも、少ない積層数で明瞭な発色の得られる構造が望まれている。
上記課題を解決するための発色構造体は、金属層と誘電体層とを備える光学機能層であって、干渉によって強められた反射光を射出する前記光学機能層を備え、前記金属層の可視領域における屈折率は、前記誘電体層の可視領域における屈折率と異なり、前記金属層は、5%以上の透過率を有する波長域を可視領域に有する。
上記構成によれば、誘電体層を透過した光の一部が金属層を透過する。その結果、金属層における誘電体層と反対側の界面からも反射光が射出されて干渉を起こすことから、金属層が透過性を有さない場合と比較して、光学機能層における光の干渉が強められる。
さらに、金属層は反射性を有するため、金属層に代えて反射性の低い誘電体からなる層が配置されている場合と比較して、光学機能層からの反射光の強度が高められる。一方で、金属層が透過性を有さず可視領域の全体で高い反射性を有する場合と比較して、干渉により強められた特定の波長域以外の光の反射が強くなることが抑えられる。
したがって、光学機能層における薄膜の積層数が少なくとも、発色構造体の反射光における波長選択性が高められるため、上記特定の波長域に対応する色が明瞭に視認可能となる。
上記構成において、前記金属層の膜厚は、5nm以上40nm以下であってもよい。
上記構成によれば、金属層における透過性が好適に得られる。
上記構成において、前記金属層は、30%以上の反射率を有する波長域を可視領域に有してもよい。
上記構成によれば、金属層における反射性が好適に得られる。
上記構成において、可視領域に、前記金属層の屈折率と前記誘電体層の屈折率との差が0.3以上である波長域が含まれてもよい。
上記構成によれば、誘電体層と金属層との界面での反射が好適に生じるため、干渉が強められ、強度の高い反射光が得られやすい。
上記構成において、前記誘電体層の膜厚は、10nm以上300nm以下であってもよい。
上記構成によれば、誘電体層の膜厚が小さく抑えられているため、干渉によって強められる波長域の制御が困難となることや、応力による発色構造体の反りや誘電体膜の剥がれが生じることいった、誘電体層の膜厚の増大に起因する問題の発生が抑えられる。
上記構成において、可視領域における前記誘電体層の屈折率は、1.5より大きく3.0以下であってもよい。
上記構成によれば、誘電体層と、誘電体層に隣接する層との間の屈折率の差を大きく確保しやすいため、強度の高い反射光が得られやすい。
上記構成において、凸部または凹部である複数の凹凸要素から構成される凹凸構造を表面に有し、前記光学機能層を支持する凹凸構造層をさらに備え、前記光学機能層は、前記凹凸構造に沿った表面形状を有し、前記凹凸構造層の厚さ方向に沿った方向から前記凹凸構造を見た平面視において、前記凹凸要素の短辺方向の幅および長辺方向の幅の各々は、10μm以上100μm以下であり、前記厚さ方向に沿った前記凹凸要素の寸法は、前記平面視での前記凹凸要素の端部から中央部に向かって大きくなり、前記短辺方向の幅に対する、前記凹凸要素内における前記厚さ方向に沿った寸法の最大値の比は、0.1以上1.0以下であってもよい。
上記構成によれば、凹凸構造によって反射光が散乱される。そのため、干渉によって強められた特定の波長域の光が、様々な方向に射出され、当該特定の波長域に対応する色が広い観察角度で視認可能となる。また、反射光の散乱が等方的に生じるように凹凸構造を設計することが可能である。また、凸部の大きさがマイクロサイズであるため、凸部の大きさがナノサイズである場合と比較して、凹凸構造の形成が容易である。
上記構成において、凹凸構造を表面に有し、前記光学機能層を支持する凹凸構造層をさらに備え、前記光学機能層は、前記凹凸構造に沿った表面形状を有し、前記凹凸構造を構成する凸部は、前記凸部の基部が位置する平面から1段以上の段差形状を有し、前記凹凸構造層の表面と対向する視点から見て、複数の前記凸部が構成するパターンは、第1方向に沿った長さがサブ波長以下であって、前記第1方向と直交する第2方向に沿った長さが前記第1方向に沿った長さ以上である複数の図形要素の集合からなるパターンを含み、前記複数の図形要素において、前記第2方向に沿った長さの標準偏差は、前記第1方向に沿った長さの標準偏差よりも大きくてもよい。
上記構成によれば、凹凸構造によって反射光が散乱される。そのため、干渉によって強められた特定の波長域の光が、様々な方向に射出され、当該特定の波長域に対応する色が広い観察角度で視認可能となる。また、反射光の散乱に異方性が得られる。
上記構成において、前記凹凸構造層の表面と対向する視点から前記凹凸構造を見たとき、前記複数の凸部が構成するパターンは、前記図形要素の集合からなる第1パターンと、前記第2方向に沿って延び、前記第1方向に沿って並ぶ複数の帯状領域からなる第2パターンとが重ね合わされたパターンであり、前記第2パターンにおいて、前記第1方向に沿った前記帯状領域の配列間隔は、前記複数の帯状領域において一定ではなく、前記複数の帯状領域における前記配列間隔の平均値は、前記光学機能層への入射光に含まれる波長域における最小波長の1/2以上であり、前記凸部は、前記凹凸構造層の厚さ方向への投影像が前記第1パターンを構成する要素であって所定の高さを有する凸部要素と、前記厚さ方向への投影像が前記第2パターンを構成する要素であって所定の高さを有する凸部要素とが高さ方向に重ねられた多段形状を有してもよい。
上記構成によれば、凹凸構造によって反射光の拡散効果と回折効果とが得られる。その結果、干渉によって強められた反射光が広い観察角度で観察可能であるとともに、この反射光の強度が高められる。
上記構成において、凹凸構造を表面に有し、前記光学機能層を支持する凹凸構造層をさらに備え、前記光学機能層は、前記凹凸構造に沿った表面形状を有し、前記凹凸構造層の表面と対向する視点から見て、前記凹凸構造を構成する複数の凸部が構成するパターンは、サブ波長以下の長さを有する第1方向に沿った辺と、前記第1方向と直交する第2方向に沿った辺とを有する仮想的な矩形に各々が内接する複数の図形要素の集合からなるパターンであり、前記凹凸構造層が含む複数の単位領域の各々において、前記矩形は前記第1方向に対してθの角度をなす方向に沿って並び、少なくとも1つの前記単位領域において、前記角度θは、0°より大きく90°未満、または、90°より大きく180°未満であってもよい。
上記構成によれば、凹凸構造によって反射光が散乱される。そのため、干渉によって強められた特定の波長域の光が、様々な方向に射出され、当該特定の波長域に対応する色が広い観察角度で視認可能となる。また、角度θを制御することにより、反射光の散乱の異方性を容易に制御することができる。
上記構成において、前記凹凸構造層に対して前記光学機能層と反対側に、可視領域の光の少なくとも一部を吸収する吸収層を備えてもよい。
上記構成において、前記光学機能層に対して前記凹凸構造等と反対側に、可視領域の光の少なくとも一部を吸収する吸収層を備えてもよい。
上記各構成によれば、光学機能層を透過した光の少なくとも一部が、吸収層に吸収される。したがって、光学機能層で干渉により強められる波長域とは異なる波長域の光が、発色構造体内部の各層の界面や、発色構造体とその外部との界面で反射して観察者に向けて射出されることが抑えられる。そのため、発色構造体に視認される色の鮮明さが高められる。
本発明によれば、薄膜の膜厚の増大に依らずとも、少ない積層数で明瞭な発色を得ることができる。
第1実施形態の発色構造体の断面構造を示す図。 膜厚の異なる金属層の反射率および透過率の波長分布を示す図。 膜厚の異なる金属層を備える光学機能層の透過率の波長分布を示す図。 材料の異なる金属層を備える光学機能層の透過率の波長分布を示す図。 屈折率差の大きい金属層と誘電体層とを備える光学機能層の透過率の波長分布を示す図。 屈折率差の大きい金属層と誘電体層とを備える光学機能層の透過率の波長分布を示す図。 屈折率差の小さい金属層と誘電体層とを備える光学機能層の透過率の波長分布を示す図。 金属層と誘電体層との屈折率が等しいと仮定した場合における光学機能層の透過率の波長分布を示す図。 第1実施形態の発色構造体が備える凹凸構造層の斜視構造を示す図。 第1実施形態の発色構造体が備える凹凸構造層の平面構造および断面構造を示す図。 第2実施形態の発色構造体の断面構造を示す図。 第2実施形態の発色構造体について、(a)は、凹凸構造の平面構造を示す図、(b)は、凹凸構造の断面構造を示す図。 第3実施形態の発色構造体の断面構造を示す図。 第3実施形態の発色構造体について、(a)は、第2凸部要素のみからなる凹凸構造の平面構造を示す図、(b)は、第2凸部要素のみからなる凹凸構造の断面構造を示す図。 第3実施形態の発色構造体について、(a)は、凹凸構造の平面構造を示す図、(b)は、凹凸構造の断面構造を示す図。 第4実施形態の発色構造体の断面構造を示す図。 第4実施形態の発色構造体について、(a)は、凹凸構造の平面構造を示す図、(b)は、凹凸構造の断面構造を示す図。 第4実施形態の発色構造体について、凹凸構造の平面構造の一部を拡大して示す図。 第4実施形態の発色構造体の変形例の平面構造を示す図。 第4実施形態の発色構造体の他の変形例の平面構造を示す図。 第4実施形態の発色構造体の他の変形例の平面構造を示す図。 変形例の発色構造体の断面構造を示す図。 他の変形例の発色構造体の断面構造を示す図。 他の変形例の発色構造体の断面構造を示す図。
(第1実施形態)
図1~図10を参照して、発色構造体の第1実施形態を説明する。発色構造体が対象とする入射光および反射光は、可視領域の光である。以下の説明において、可視領域の光とは、360nm以上830nm以下の波長域の光を指す。
[発色構造体の全体構成]
図1が示すように、発色構造体10は、基材20と、凹凸構造層21と、金属層22および誘電体層23からなる光学機能層24と、を備えている。
基材20は、平坦な層であり、凹凸構造層21を支持している。基材20は、可視領域全体の光を透過する、すなわち、可視領域の光に対して透明である。基材20は、例えば、合成石英基板や、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂からなるフィルムである。発色構造体10の可撓性が高められる観点では、基材20は樹脂フィルムであることが好ましい。基材20の膜厚は、例えば、10μm以上100μm以下である。
凹凸構造層21は、基材20上に位置する。凹凸構造層21は、基材20に向けられた面とは反対側の面である表面に、凹凸構造を有する。凹凸構造は、複数の凸部21aから構成される。凸部21aは、凹凸要素の一例であり、光学機能層24に向けて突出する。
凹凸構造層21は、可視領域全体の光を透過する、すなわち、可視領域の光に対して透明である。凹凸構造層21の材料は、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂である。
光学機能層24は、凹凸構造層21の表面を覆い、凹凸構造層21の凹凸構造に追従した表面形状を有している。光学機能層24における金属層22と誘電体層23との積層順は限定されない。光学機能層24のなかで、観察者に近い方の層、言い換えれば、発色構造体10に対する入射光の射出空間に近い方の層が、誘電体層23であることが好ましい。
例えば、凹凸構造層21に対して光学機能層24が位置する側から発色構造体10が観察される場合には、凹凸構造層21に金属層22が接し、金属層22に対して凹凸構造層21と反対側で、金属層22に誘電体層23が接することが好ましい。反対に、光学機能層24に対して凹凸構造層21が位置する側から発色構造体10が観察される場合には、凹凸構造層21に誘電体層23が接し、誘電体層23に対して凹凸構造層21と反対側で、誘電体層23に金属層22が接することが好ましい。図1は、凹凸構造層21に近い位置から金属層22、誘電体層23の順でこれらの層が積層されている形態を示す。
金属層22は、金属から形成された単層の薄膜からなる層である。金属層22は、可視領域の光の透過性と反射性とを有している。金属層22は、その透過性に基づき、入射光の一部を透過して金属層22の表裏の界面から干渉に作用する反射光を射出することで、光学機能層24における光の干渉を強める機能を有する。また、金属層22は、その反射性に基づき、光学機能層24の反射光の強度を高めることで、当該反射光の視認性を高める機能を有する。
誘電体層23は、誘電体から形成された単層の薄膜からなる層である。誘電体層23は、可視領域全体の光を透過する、すなわち、可視領域の光に対して透明である。誘電体層23は、誘電体層23の表裏の界面から干渉に作用する反射光を射出する。
光学機能層24に光が入射すると、金属層22および誘電体層23が可視領域に透過性を有することから、光学機能層24が有する各界面から反射光が射出される。
例えば、凹凸構造層21、金属層22、誘電体層23がこの順で並び、誘電体層23の位置する側から光が入射するとき、入射光の一部は、誘電体層23と空気層との界面で反射する。さらに、誘電体層23を透過した入射光の一部は、誘電体層23と金属層22との界面で反射する。さらに、誘電体層23および金属層22を透過した入射光の一部は、金属層22と凹凸構造層21との界面で反射する。
同様に、凹凸構造層21、誘電体層23、金属層22がこの順で並び、凹凸構造層21の位置する側から光が入射するとき、凹凸構造層21と誘電体層23との界面、誘電体層23と金属層22との界面、金属層22と空気層との界面の各々で、入射光の一部が反射する。
光学機能層24の各界面で反射した光が干渉を起こすことにより、強められた特定の波長域の光が、発色構造体10から射出される。本実施形態によれば、金属層22が光の透過性を有さない場合と比較して、金属層22における誘電体層23と反対側の界面からも反射光が射出されて干渉を起こすことから、光学機能層24における光の干渉が強められる。
さらに、金属層22が反射性を有していることにより、金属層22に代えて反射性の低い誘電体からなる層が配置されている場合と比較して、光学機能層24からの反射光の強度が高められる。一方で、金属層22が光の透過性を有さず可視領域の全体で高い反射性を有する場合と比較して、干渉により強められた特定の波長域以外の光の反射が強くなることが抑えられる。
以上により、干渉が強まることで特定の波長域の光の強度が高められるとともに、当該特定の波長域以外の光の強度が抑えられるため、発色構造体10からの反射光における波長選択性が高められる。これにより、上記特定の波長域に対応する色が明瞭に視認可能となる。
そして、凹凸構造層21の凹凸構造に起因して、入射光に対する光学機能層24の各界面の角度が発色構造体10内で変化するため、様々な方向に反射光が射出される。すなわち、反射光が散乱される。結果として、干渉によって強められた特定の波長域の光が、様々な方向に射出され、上記特定の波長域に対応する色が広い観察角度で視認可能となる。
[光学機能層の詳細構成]
金属層22および誘電体層23の詳細な構成について説明する。
金属層22は、5%以上の透過率を有する波長域である透過波長域を可視領域に有する。また、金属層22は、30%以上の反射率を有する波長域である反射波長域を可視領域に有する。透過波長域と反射波長域とは重なりを有していることが好ましい。
光学機能層24において干渉により強められる波長域を対象波長域とするとき、対象波長域を透過波長域内に設定することで、金属層22を透過して金属層22と他の層との界面で反射し、干渉に作用する光の強度が高められる。したがって、発色構造体10における反射光の波長選択性が高められる。こうした効果を高めるためには、対象波長域は、透過波長域のなかで、金属層22の透過率が最も高くなるピーク波長の付近に設定されることが好ましい。また、反射光の波長選択性をより高めるためには、金属層22は、透過波長域に、20%以上の透過率を有する波長域を有し、この透過率が20%以上である波長域のなかに、対象波長域が設定されることが好ましい。
また、対象波長域を反射波長域内に設定することで、金属層22と誘電体層23との界面で反射して干渉に作用する光の強度が高められる。これによっても、発色構造体10における反射光の波長選択性が高められる。こうした効果を高めるためには、金属層22は、反射波長域に、50%以上の反射率を有する波長域を有し、この反射率が50%以上である波長域のなかに、対象波長域が設定されることが好ましい。
透過波長域かつ反射波長域である波長域に対象波長域を設定すると、反射光の波長選択性がより高められる。
透過波長域および当該波長域での透過率の大きさ、反射波長域および当該波長域での反射率の大きさは、金属層22の材料および膜厚によって制御可能である。また、対象波長域は、金属層22および誘電体層23の材料および膜厚によって制御可能である。例えば、誘電体層23の膜厚が10nm異なると、対象波長域の違いが異なる色として認識可能である。
なお、金属層22の反射率は、特定の波長域で突出して高くなるあるいは低くなるピークを有していてもよいし、有していなくてもよい。金属層22の反射率が突出したピークを有さない場合、反射波長域の反射率が高いことは、可視領域の全体にわたって反射率が高い傾向にあることを示す。すなわち、発色構造体10における反射光全体の強度が高くなりやすい。発色構造体10における発色の単色性がより重視される場合には、反射波長域の反射率が抑えられるように金属層22が設計されればよく、発色の明るさが重視される場合には、反射光の波長選択性が十分に得られる範囲内において、反射波長域の反射率が高くなるように金属層22が設計されればよい。
対象波長域以外の光の反射を抑えるためには、対象波長域以外の波長域において、金属層22の反射率は、80%以下であることが好ましい。金属層22の反射率が突出したピークを有さない場合、対象波長域を含めた可視領域の全体において、金属層22の反射率は80%以下であればよい。また、上述のように発色の単色性がより重視される場合には、対象波長域を含めた可視領域の全体において、金属層22の反射率は60%以下であることが好ましい。
また、金属層22は、可視領域の波長の一部に吸収性を有していてもよい。この場合、対象波長域は、吸収性を有する波長域とは異なる波長域に設定されることが好ましい。金属層22が光の吸収性を有していると、金属層22にて吸収される波長域の光が、光学機能層24の反射光に含まれることが抑えられる。これによっても、発色構造体10における反射光の波長選択性が高められる。
金属層22の材料は、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、金、銀、クロム、チタン、タンタル、シリコン等である。金属層22の膜厚は、5nm以上40nm以下である。金属層22の膜厚が40nm以下であれば、光学機能層24の入射光の一部が金属層22を透過して、金属層22と他の層との界面で反射し、干渉に作用する。
誘電体層23の材料は、例えば、TiO、ZnS、Nb、Ta、ZrO等の無機材料である。誘電体層23の膜厚は、10nm以上300nm以下であることが好ましい。本実施形態によれば、金属層22が上述した光の透過性と反射性とを有することにより、誘電体層23の膜厚を300nm以下に抑えた場合でも、発色構造体10の反射光における波長選択性が十分に得られる。したがって、干渉によって強められる波長域の制御が困難となることや、応力による発色構造体の反りや誘電体膜の剥がれが生じること、誘電体膜が凹凸構造に沿い難くなって反射光の散乱効果が得られ難くなることといった、誘電体層23の膜厚の増大に起因する問題の発生が抑えられる。
図2~図6を参照して、金属層22の具体的な材料および膜厚と反射率および透過率の関係について、一例を説明する。
図2は、基材20に真空蒸着により形成された金属層22における反射率および透過率の波長分布を示す。金属層22の材料はアルミニウムである。曲線A1は、金属層22の膜厚が10nmであるときの反射率を示し、曲線A2は、金属層22の膜厚が10nmであるときの透過率を示す。曲線B1は、金属層22の膜厚が20nmであるときの反射率を示し、曲線B2は、金属層22の膜厚が20nmであるときの透過率を示す。
図2から、金属層22の膜厚が小さいほど、透過率は全体的に大きくなり、反射率は全体に小さくなる傾向が示唆される。
詳細には、曲線A1,A2が示すように、金属層22の膜厚が10nmである場合、350nm~600nm付近の波長において、20%以上の透過率が得られている。このとき、350nm~600nm付近の波長において、反射率は40%~60%程度である。例えば、500nmの波長における透過率は約25%であり、反射率は約55%である。
一方、曲線B1,B2が示すように、金属層22の膜厚が20nmである場合、350nm~600nm付近の波長において、5%以上の透過率が得られている。このとき、350nm~600nm付近の波長において、反射率は70%~80%程度である。例えば、500nmの波長における透過率は約5%であり、反射率は約80%である。
図3は、誘電体層23の材料をTiO、誘電体層23の膜厚を50nm、金属層22の材料をアルミニウムとし、金属層22の膜厚を変更した場合における光学機能層24の反射光の波長分布を示す。曲線C1は、金属層22の膜厚が10nmである場合を示し、曲線C2は、金属層22の膜厚が20nmである場合を示し、曲線C3は、金属層22の膜厚が50nmである場合を示し、曲線C4は、金属層22の膜厚が100nmである場合を示す。
曲線C1,C2が示すように、金属層22の膜厚が20nm以下である場合、約350nm付近に反射率のピークが確認される。こうした光学機能層24を有する発色構造体10には、青色が視認される。
一方、曲線C3,C4が示すように、金属層22の膜厚が50nm以上であると、反射光の強度が全体に高くなり、反射率のピークが低くなる。すなわち、金属層22の膜厚が20nm以下である場合と比較して、反射光の波長選択性が低くなる。こうした光学機能層24を有する発色構造体10は、アルミニウム薄膜そのものの色に近い銀色が視認される。
先の図2にて説明したように、金属層22の膜厚が大きいほど、金属層22の透過率が全体に小さくなり、金属層22の反射率が全体に大きくなることから、光学機能層24での干渉が弱くなり、また、干渉で強められる波長域以外の反射が大きくなる。結果として、図3に示したように、金属層22の膜厚が大きいと、光学機能層24の反射光の波長選択性が十分に得られなくなる。
図4は、誘電体層23の材料をTiO、誘電体層23の膜厚を50nm、金属層22の膜厚を20nmとし、金属層22の材料を変更した場合における光学機能層24の反射光の波長分布を示す。曲線D1は、金属層22の材料がアルミニウムである場合を示し、曲線D2は、金属層22の材料が銅である場合を示し、曲線D3は、金属層22の材料がニッケルである場合を示す。
金属層22の材料がアルミニウムや銀である場合、金属層22の反射率は突出したピークを有さず可視領域の全体で高い傾向がある。これに対し、金属層22の材料が銅や金である場合、金属層22の反射率は長波長領域で高くなり、また、金属層22は、短波長領域から中波長領域の一部に吸収性を有する。また、金属層22の材料がニッケルや鉄のような磁性体である場合、可視領域における吸収が大きいため、金属層22の反射率は、可視領域の全体で低い傾向がある。
以上のことから、図4に示すように、金属層22の材料によって、光学機能層24の反射光の強度が大きくなる波長域や、全体的な反射光の大きさに違いが生じる。金属層22の材料は、発色構造体10に発色させたい色味や明るさに応じて選択されればよい。例えば、黄色から赤色を含む色を発色させたい場合には、銅や金を用いると、鮮やかな色が得られやすい。また、アルミニウムや銀を用いると、明るい発色が得られやすく、ニッケルや鉄を用いると、暗い発色が得られやすい。
次に、金属層22と誘電体層23との屈折率の差について説明する。
可視領域における金属層22と誘電体層23との屈折率は、互いに異なる。これにより、金属層22と誘電体層23との界面で反射が生じ、光学機能層24の各界面での反射光による干渉が起こる。
金属層22の屈折率と誘電体層23の屈折率とは、いずれが大きくてもよいが、干渉を十分に強めるには、可視領域において、金属層22と誘電体層23との屈折率の差が0.3以上である波長域が存在することが好ましい。なお、金属層22および誘電体層23の各々の可視領域における屈折率は特に限定されないが、例えば、誘電体層23の屈折率は、1.5より大きく3.0以下であると、隣接する空気層もしくは金属層22との間の屈折率の差を大きく確保しやすいため好ましい。
図5~図8は、金属層22と誘電体層23との屈折率の差を変えた場合における光学機能層24の反射光の波長分布を示す。誘電体層23の材料はTiO、誘電体層23の膜厚は50nm、金属層22の膜厚は20nmである。
図5は、金属層22の屈折率が、誘電体層23の屈折率よりも0.3以上小さい場合を示す。曲線E1は、金属層22の材料がアルミニウムである場合を示し、曲線E2は、金属層22の材料が銀である場合を示し、曲線E3は、金属層22の材料が金である場合を示し、曲線E4は、金属層22の材料が銅である場合を示す。
図6は、金属層22の屈折率が、誘電体層23の屈折率よりも0.3以上大きい場合を示す。曲線F1は、金属層22の材料がシリコンである場合を示し、曲線F2は、金属層22の材料がクロムである場合を示す。
図7は、可視領域の全体において、金属層22と誘電体層23との屈折率の差が0.3未満である場合を示す。曲線G1は、金属層22の材料がニッケルである場合を示し、曲線G2は、金属層22の材料がチタンである場合を示し、曲線G3は、金属層22の材料がタンタルである場合を示す。
図8は、金属層22と誘電体層23との屈折率が一致すると仮定した場合における反射光の波長分布のシミュレーション結果を示す。この場合、金属層22と誘電体層23との界面での反射が生じないため、曲線H1が示すように、反射光において干渉による波長選択性が生じない。
図5~図8から、金属層22と誘電体層23との屈折率に差があれば、反射光において干渉による波長選択性が生じ、金属層22と誘電体層23との屈折率の差が0.3以上であると、干渉によって強められた反射光の強度が高く得られやすいことが示唆される。
[凹凸構造の構成]
図9および図10を参照して、凹凸構造層21が有する凹凸構造について詳細に説明する。図9は、凹凸構造層21の斜視構造を示し、図10は、凹凸構造層21の平面構造および断面構造を示す。
図9が示すように、凹凸構造は、複数の凸部21aが隙間なく並ぶ構造を有している。例えば、凸部21aはマイクロレンズを構成しており、凹凸構造層21はマイクロレンズアレイを構成している。
図10が示すように、凹凸構造層21の厚さ方向に沿った方向から凹凸構造を見た平面視、すなわち、凹凸構造層21の表面と対向する視点から見た平面視において、凸部21aは四角形形状を有することが好ましく、特に、正方形形状を有することが好ましい。複数の凸部21aは互いに同一の正方形形状を有し、複数の凸部21aは、上記正方形の辺が延びる方向に沿って、正方格子状に並んでいることが好ましい。複数の凸部21aが、二次元格子状に並んでいること、すなわち、交差する2つの方向の各々に沿って並んでいることで、反射光の散乱が等方的になりやすい。
凸部21aの幅d1は、正方形の一辺の長さであり、複数の凸部21aにおいて、幅d1は一定である。幅d1は、10μm以上100μm以下である。幅d1が10μm以上であると、凸部21aの規則的な配列に起因して光の回折が生じることが抑えられる。それゆえ、回折光として虹色が視認されることが抑えられるため、光学機能層24で干渉により強められた反射光に対応する色の視認性が高められる。また、幅d1が10μm以上であると、凸部21aが微細になりすぎないため、凹凸構造の形成が容易であり、発色構造体10の生産効率が高められる。一方、幅d1が100μm以下であると、凸部21aが1つの構造体として人間の目に認識されることが抑えられる。これらの各効果が均衡して得られる観点では、幅d1は、40μm以上50μm以下であることが好ましい。
凸部21aの最大高さh1は、凹凸構造層21の厚さ方向に沿った凸部21aの寸法の最大値である。言い換えれば、最大高さh1は、上記厚さ方向における、凸部21aの周面の基端と先端との間の長さである。複数の凸部21aにおいて、最大高さh1は一定である。最大高さh1は、例えば、10μm以下であることが好ましい。
凸部21aのアスペクト比、すなわち、幅d1に対する最大高さh1の比は、0.1以上1.0以下である。アスペクト比が0.1以上であれば、平面と比較して十分な起伏を有する凹凸構造が形成されるため、凹凸構造による散乱効果が高く得られる。
一方、アスペクト比が1.0以下であれば、凸部21a内での光の反射が抑えられる。凸部21a内での反射が大きいと、入射光のうち、光学機能層24で強められる波長域とは異なる波長域の光が、凸部21a内で反射されて発色構造体10から射出されることが起こり得る。これに対し、上述のように、アスペクト比が1.0以下であれば、凸部21a内での光の反射が抑えられるため、視認される反射光の色の鮮明さが低下することが抑えられる。なお、凸部21aは、光学機能層24で強められる波長域とは異なる波長域の光を反射し難い形状に設計されていることが好ましい。
凸部21aの高さは、凹凸構造層21の広がる方向、すなわち、上記厚さ方向と直交する方向における凸部21aの端部から中央部に向けて、連続的に変化し、徐々に大きくなる。そして、凸部21aの高さは、凹凸構造層21の広がる方向における凸部21aの中央部で最大となる。言い換えれば、凸部21aの高さは、上記平面視での凸部21aの端部に対応する部分から、上記平面視での凸部21aの中央部に対応する部分に向けて、連続的に大きくなる。そして、上記平面視にて正方形の重心である凸部21aの中心Cが位置する部分で、凸部21aの高さは最大となる。
中心Cを通り上記厚さ方向に沿った断面において、凸部21aの周面である表面は、光学機能層24に向けて突出するように湾曲する曲線を構成する。この曲線の曲率は一定であってもよいし、一定でなくてもよい。例えば、凸部21aの端部と中央部とで上記表面が構成する曲線の曲率は異なっていてもよい。
上記曲線の曲率が一定であると、凸部21aの中央部で曲率が大きくなる形態と比較して、凸部21a内での光の反射を抑えやすい。一方、上記曲線の曲率が一定でないと、入射光に対する凸部21aの周面の角度が、周面内においてより不均一になるように凸部21aを構成することができるため、光学機能層24の反射光の散乱効果を高めるように凸部21aの形状を設計することもできる。
凸部21aの配列の周期Pは、凸部21aの配列方向、すなわち、正方形を構成する辺に沿った2つの方向のいずれについても、幅d1と一致する。こうした構成においては、凹凸構造層21の表面は、平坦な部分を有さない。
なお、複数の凸部21aは、隣り合う凸部21aの間に隙間を空けて並んでいてもよい。言い換えれば、凹凸構造層21の表面は、隣り合う凸部21aの間に平坦部を有していてもよい。ただし、上記平面視にて、凹凸構造層21の表面における単位面積あたりの平坦部の割合は、10%以下であることが好ましい。平坦部に光学機能層24が積層されている領域では反射光の散乱が小さいが、平坦部の割合が10%以下であれば、光学機能層24からの反射光において散乱成分の割合が十分に確保されるため、観察角度の変化による色変化が的確に抑えられる。また、平坦部の割合が10%以下であれば、光学機能層24からの反射光における正反射成分の割合が小さく抑えられるため、観察者の目にかかる負担が小さくなる。なお、こうした効果を高めるためには、平坦部の割合は小さいほど好ましい。
凹凸構造の変形例について説明する。上記平面視における凸部21aの形状は、正方形に限らず、三角形、長方形、六角形等の多角形や、円形であってもよい。また、上記平面視における凸部21aの形状は、複数の凸部21aにおいて一定でなくてもよい。また、複数の凸部21aにおいて、最大高さh1は一定でなくてもよい。
ここで、反射光の散乱効果を高めてより多方向に反射光を射出させるためには、入射光に対する凸部21aの周面の角度が、周面内において不均一であるほど好ましい。例えば、上記平面視における凸部21aの形状が四角形である場合、四角形の頂点から四角形の中心に向けた周面の傾きの変化と、四角形の辺の中点から四角形の中心にむけた周面の傾きの変化とは異なる。したがって、凸部21aの周面内において部位による傾きのばらつきが大きい。それゆえ、凸部21aの形状が四角形であれば、凸部21aの形状が単純であって凸部21aの形成が容易でありながら、反射光の散乱効果が高められる。
なお、上記平面視において、凸部21aの短辺方向の幅と長辺方向の幅とが異なるとき、短辺方向の幅と長辺方向の幅との双方が、10μm以上100μm以下とされる。上記短辺方向の幅は、上記平面視において凸部21aが内接する最小の矩形を仮想的に配置した場合における当該矩形の短辺の長さである。また、上記長辺方向の幅は、上記最小の矩形における長辺の長さである。また、凸部21aの最大高さh1は、短辺方向の幅を基準に設定されればよく、すなわち、短辺方向の幅に対する最大高さh1の比が、0.1以上1.0以下であればよい。上記平面視において凸部21aが正方形形状を有する形態は、上記短辺方向の幅と上記長辺方向の幅とが一致する形態である。
また、複数の凸部21aは、正方格子状に限らず、六方格子等の他の二次元格子状に並んでいてもよいし、不規則に並んでいてもよい。また、複数の凸部21aの配列の周期は一定でなくてもよい。
複数の凸部21aにおける形状の不規則性や配列の不規則性が高いほど、反射光の散乱効果が高められる。例えば、上記平面視において、凸部21aが四角形形状を有し、隣り合う凸部21aにおいて、短辺方向の幅および長辺方向の幅の少なくとも一方が互いに異なる形態であれば、複数の凸部21aの形状が一定である形態と比較して、反射光の散乱効果が高められる。
また、凸部21aの高さが、上記平面視での凸部21aの端部から重心である中心に向けて徐々に大きくなっていれば、上記厚さ方向に沿った断面において、凸部21aの周面は当該周面の基端と先端とを結ぶ直線を構成していてもよい。ただし、上記断面において凸部21aの周面が曲線を構成していれば、入射光に対する凸部21aの周面の角度が、周面内において不均一になるため、反射光の散乱効果が高められる。
なお、発色構造体10は、基材20を備えていなくてもよい。発色構造体10が基材20を備えない場合、凹凸構造層21は、合成石英のように樹脂とは異なる材料から形成されていてもよい。
[発色構造体の製造方法]
発色構造体10の製造方法を説明する。凹凸構造層21が有する凹凸構造の形成方法としては、熱や光を利用した転写成形、射出成形、切削等の機械加工、エッチング等が用いられる。転写成形や射出成形に用いられる凹版は、機械加工やエッチングによって形成される。
例えば、形成対象の凹凸が反転された凹凸を有する凹版に、凹凸構造層21の材料である光硬化性樹脂からなる塗布液が塗布され、塗布液からなる層の表面に、基材20が重ねられる。基材20と凹版とが互いに押し付けられた状態で、紫外線等の光が照射された後、硬化した樹脂からなる層および基材20が凹版から離型される。これによって、凹版の有する凹凸が樹脂に転写されて、表面に凹凸構造を有する凹凸構造層21が形成され、基材20と凹凸構造層21とからなる積層体が形成される。
続いて、凹凸構造層21の凹凸を有する表面に、光学機能層24が形成される。金属層22および誘電体層23は、材料に応じて、スパッタリングや真空蒸着等の公知の薄膜形成技術によって形成される。これにより、発色構造体10が形成される。
本実施形態の発色構造体10は、干渉を生じさせる層として、金属層22と誘電体層23との二層からなる光学機能層24を備えるため、干渉を生じさせる層として多層膜層を備える構造と比較して、その構成が簡易であり、必要な薄膜の形成数が少ない。また、多層膜層を備える構造と比較して、薄膜の膜厚の製造誤差が積み重なって発色構造体10の発色に影響を与えることが起こりにくい。そのため、発色構造体10の製造に要する負荷の軽減が可能であり、所望の発色も得られやすい。また、薄膜の積層時に基材20や凹凸構造層21にかかる熱負荷が低減されるため、基材20および凹凸構造層21の材料の選択の自由度も高められる。
なお、上記実施形態において、凹凸構造層21の凹凸構造は、光学機能層24に対して窪む複数の凹部から構成されていてもよい。すなわち、凹凸構造は、凸部または凹部である複数の凹凸要素から構成されていればよい。凹凸要素が凹部である場合、平面視における凹部の形状には、凸部21aの形状と同様の構成が適用される。すなわち、平面視における凹部の短辺方向の幅および長辺方向の幅の各々は、10μm以上100μm以下であればよい。また、凹部の深さに関する構成には、凸部21aの高さと同様の構成が適用される。すなわち、凹凸構造層21の厚さ方向に沿った凹部の寸法である深さは、平面視での凹部の端部から中央部に向かって連続的に大きくなり、上記短辺方向の幅に対する、凹部内における深さの最大値の比は、0.1以上1.0以下であればよい。
以上、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)金属層22が可視領域の光の透過性を有することから、光学機能層24の各界面から反射光が射出されて干渉が起こる。したがって、光学機能層24における光の干渉が強められる。さらに、金属層22は反射性を有するため、反射光の強度が高められる。一方で、金属層22が透過性を有さず可視領域の全体で高い反射性を有する場合と比較して、干渉により強められた特定の波長域以外の光の反射が強くなることが抑えられる。
これらのことから、光学機能層24における薄膜の積層数が少なくとも、発色構造体10の反射光における波長選択性が高められるため、上記特定の波長域に対応する色が明瞭に視認可能となる。
(2)光の干渉を生じさせる層として多層膜層を備える場合と比較して、薄膜の積層数が少ないため、発色構造体10の製造に要する負荷の軽減が可能であり、所望の発色も得られやすい。また、薄膜の積層時に基材20や凹凸構造層21にかかる熱負荷が低減されるため、基材20および凹凸構造層21の材料の選択の自由度も高められる。
(3)金属層22が5%以上の透過率を有する波長域を可視領域に有するため、金属層22における光の透過性が好適に得られる。
(4)金属層の膜厚が、5nm以上40nm以下であるため、金属層22における光の透過性が好適に得られる。
(5)金属層22が、30%以上の反射率を有する波長域を可視領域に有するため、金属層22における反射性が好適に得られる。
(6)可視領域に、金属層22の屈折率と誘電体層23の屈折率との差が0.3以上である波長域が含まれる。これにより、誘電体層23と金属層22との界面での反射が好適に生じるため、干渉が強められ、強度の高い反射光が得られやすい。
(7)誘電体層23の膜厚が、10nm以上300nm以下であることにより、誘電体層23の膜厚が小さく抑えられているため、誘電体層23の膜厚の増大に起因する問題の発生が抑えられる。
(8)可視領域における誘電体層23の屈折率が、1.5より大きく3.0以下であることにより、誘電体層23と誘電体層23に隣接する層との間の屈折率の差を大きく確保しやすい。そのため、強度の高い反射光が得られやすい。
(9)凹凸構造によって反射光が散乱されるため、干渉によって強められた特定の波長域に対応する色が広い観察角度で視認可能となる。
(10)凸部25aを二次元格子状に配列することができるため、反射光の散乱が等方的に生じるように凸部25aの配列を設計することが容易である。したがって、観察方位による明るさの変化が小さいことが望まれる用途に適した発色構造体10が得られる。また、凸部25aの大きさがマイクロサイズであるため、凸部25aの大きさがナノサイズである場合と比較して、凹凸構造の形成が容易である。
(第2実施形態)
図11および図12を参照して、発色構造体の第2実施形態を説明する。第2実施形態では、凹凸構造が第1実施形態と異なる。以下では、第2実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
図11が示すように、第2実施形態の発色構造体11は、第1実施形態の凹凸構造層21に代えて、凹凸構造層25を備えている。基材20、および、金属層22と誘電体層23とからなる光学機能層24の構成は、第1実施形態と同様である。
凹凸構造層25は、基材20に向けられた面とは反対側の面である表面に、凹凸構造を有する。凹凸構造は、不規則に配置された複数の凸部25aと、複数の凸部25aの間に位置する凹部25bとを含む。凹凸構造層25の材料は、第1実施形態の凹凸構造層21と同様である。
第2実施形態においても、金属層22が透過性と反射性とを有しているため、発色構造体11の反射光における波長選択性が高められる。そして、光学機能層24にて干渉によって強められた反射光が、凹凸構造層25の凹凸構造に起因して散乱されるため、干渉によって強められた特定の波長域に対応する色が、広い観察角度で明瞭に視認可能となる。
図12を参照して、凹凸構造層25の凹凸構造の詳細を説明する。図12(a)は、凹凸構造層25をその表面と対向する視点から見た平面図であり、図12(b)は、図12(a)のII-II線に沿った凹凸構造層25の断面図である。図12(a)においては、凹凸構造を構成する凸部25aにドットを付して示している。
図12(a)が示すように、第1方向Dxと第2方向Dyとは、凹凸構造層25の広がる方向に沿った平面に含まれる方向であり、第1方向Dxと第2方向Dyとは直交する。上記平面は、凹凸構造層25の厚さ方向と直交する面である。
凹凸構造層25をその表面と対向する視点から見たとき、凸部25aが構成するパターンは、破線によって示す複数の矩形R1の集合からなるパターンである。矩形R1は、図形要素の一例である。矩形R1は、第2方向Dyに延びる形状を有し、矩形R1において、第2方向Dyの長さd3は、第1方向Dxの長さd2以上の大きさを有する。複数の矩形R1は、第1方向Dxおよび第2方向Dyのいずれにおいても重ならないように配列されている。
複数の矩形R1において、第1方向Dxの長さd2は一定である。第1方向Dxにおける複数の矩形R1の配列間隔はd2であり、すなわち、複数の矩形R1は、第1方向Dxにd2の周期で配置されている。
一方、複数の矩形R1において、第2方向Dyの長さd3は不規則であって、各矩形R1における長さd3は、所定の標準偏差を有する母集団から選択された値である。この母集団は、正規分布に従うことが好ましい。複数の矩形R1からなるパターンは、例えば、所定の標準偏差で分布する長さd3を有する複数の矩形R1を所定の領域内に仮に敷き詰め、各矩形R1の実際の配置の有無を一定の確率に従って決定することにより、矩形R1の配置される領域と矩形R1の配置されない領域とを設定することによって形成される。反射光を効率よく散乱させるためには、長さd3は、平均値が4.15μm以下、かつ、標準偏差が1μm以下の分布を有することが好ましい。
矩形R1の配置されている領域が、凸部25aの配置される領域であり、互いに隣接する矩形R1が接する場合には、各矩形R1の配置されている領域が結合された1つの領域に1つの凸部25aが配置される。こうした構成においては、凸部25aの第1方向Dxの長さは、矩形R1の長さd2の整数倍である。
凹凸に起因して虹色の分光が生じることを抑えるために、矩形R1における第1方向Dxの長さd2は可視領域の光の波長以下とされる。換言すれば、長さd2は、サブ波長以下、すなわち、入射光の波長域以下の長さを有する。すなわち、長さd2は830nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましい。さらに、長さd2は、光学機能層24で強められる反射光の波長域よりも小さいことが好ましい。例えば、発色構造体11にて青色を発色させる場合は、長さd2は300nm程度であることが好ましく、発色構造体11にて緑色を発色させる場合は、長さd2は400nm程度であることが好ましく、発色構造体11にて赤色を発色させる場合は、長さd2は460nm程度であることが好ましい。
反射光の散乱効果を高めるためには、凹凸構造の起伏が多いことが好ましく、凹凸構造層25の表面と対向する視点から見て、単位面積あたりにおいて凸部25aが占める面積の比率は40%以上60%以下であることが好ましい。例えば、凹凸構造層25の表面と対向する視点から見て、単位面積あたりにおける凸部25aの面積と凹部25bとの面積の比率は、1:1であることが好ましい。
図12(b)が示すように、凸部25aの高さh2は、凸部25a内において一定であり、複数の凸部25aにおいても一定である。凸部25aは、凸部25aの基部が位置する平面から1段の段差形状を有する。凸部25aの高さh2は、発色構造体11にて発色させる所望の色に応じて設定されればよい。凸部25a上や凹部25b上における光学機能層24の表面粗さよりも、凸部25aの高さh2が大きければ、反射光の散乱効果は得られる。
ただし、凹凸での反射に起因した光の干渉を抑えるために、高さh2は可視領域の光の波長の1/2以下であることが好ましく、すなわち、415nm以下であることが好ましい。さらに、上記光の干渉を抑えるために、高さh2は、光学機能層24にて強められる反射光の波長域の1/2以下であることがより好ましい。
また、高さh2が過剰に大きいと、凹凸による反射光の散乱効果が高くなりすぎて、反射光の強度が低くなりやすいため、高さh2は10nm以上200nm以下であることが好ましい。例えば、青色を呈する発色構造体11では、効果的な光の広がりを得るためには、高さh2は40nm以上150nm以下の程度であることが好ましく、散乱効果が高くなりすぎることを抑えるためには、高さh2は100nm以下であることが好ましい。
なお、矩形R1は、第1方向Dxに沿って並ぶ2つの矩形R1の一部が重なるように配列されることにより、凸部25aのパターンを構成していてもよい。すなわち、複数の矩形R1は、第1方向Dxに、長さd2よりも小さい配列間隔で配置されていてもよいし、矩形R1の配列間隔は一定でなくてもよい。矩形R1が重なり合う部分では、各矩形R1の配置されている領域が結合された1つの領域に1つの凸部25aが位置する。この場合、凸部25aの第1方向Dxの長さは、矩形R1の長さd2の整数倍とは異なる長さとなる。また、矩形R1の長さd2は、一定でなくてもよく、各矩形R1において、長さd3が長さd2以上であって、複数の矩形R1における長さd3の標準偏差が長さd2の標準偏差よりも大きければよい。こうした構成によっても、反射光の散乱効果は得られる。
第2実施形態の凹凸構造によれば、複数の凸部25aが第2方向Dyに沿って延びるため、凹凸構造による光の散乱効果は、主として、発色構造体11の平面視での、第1方向Dxに沿った方向への反射光に作用する。すなわち、反射光の散乱に異方性が生じる。
第2実施形態の発色構造体11は、第1実施形態の発色構造体10と同様の製造方法によって製造される。ただし、凹凸構造層25の凹凸構造の形成方法には、光ナノインプリント法等のナノインプリント法が用いられることが好ましい。ナノインプリント法に用いられる凹版は、例えば、合成石英やシリコンから構成され、光または荷電粒子線を照射するリソグラフィやドライエッチング等の公知の微細加工技術を利用して形成される。
なお、発色構造体11は、基材20を備えていなくてもよい。発色構造体が基材20を備えない場合、凹凸構造層25は、合成石英のように樹脂とは異なる材料から形成されてもよく、この場合、凹凸構造の形成には、例えば、ドライエッチングが用いられればよい。
また、凸部25aのパターンを構成する図形は、矩形に限られない。当該パターンを構成する図形は、長円等であってもよく、要は、第2方向Dyに沿った長さが第1方向Dxに沿った長さ以上である形状を有する図形要素であればよい。そして、図形要素における第1方向Dxの長さd2と第2方向Dyの長さd3とが、上述した各種の条件を満たしていればよい。
第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(9)の効果に加えて、下記の効果が得られる。
(10)反射光の散乱に異方性が得られるため、観察方位によって視認される色の明るさが変化することが望まれる用途に適した発色構造体11が得られる。
(第3実施形態)
図13~図15を参照して、発色構造体の第3実施形態を説明する。第3実施形態では、凹凸構造が第1実施形態と異なる。以下では、第3実施形態と第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態および第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
図13が示すように、第3実施形態の発色構造体12は、第1実施形態の凹凸構造層21に代えて、凹凸構造層26を備えている。基材20、および、金属層22と誘電体層23とからなる光学機能層24の構成は、第1実施形態と同様である。
凹凸構造層26は、基材20に向けられた面とは反対側の面である表面に、凹凸構造を有する。凹凸構造は、不規則に配置された複数の凸部26aと、複数の凸部26aの間に位置する凹部26bとを含む。凹凸構造層26の材料は、第1実施形態の凹凸構造層21と同様である。
第3実施形態においても、金属層22が透過性と反射性とを有しているため、発色構造体12の反射光における波長選択性が高められる。そして、光学機能層24にて干渉によって強められた反射光が、凹凸構造層26の凹凸構造に起因して散乱されるため、干渉によって強められた特定の波長域に対応する色が、広い観察角度で明瞭に視認可能となる。
第3実施形態の凹凸構造を構成する凸部26aは、第2実施形態の凸部25aと同様の構成を有する第1凸部要素と、帯状に延びる第2凸部要素とが、凹凸構造層26の厚さ方向に重畳された構造を有する。
第2凸部要素は、入射光が様々な方向に強く回折されるように配列されており、第3実施形態では、第1凸部要素に基づく光の散乱効果と第2凸部要素に基づく光の回折効果とによって、第2実施形態よりもより鮮やかな色が観察可能となる。
図14および図15を参照して、凹凸構造層26の凹凸構造の詳細を説明する。図14(a)は、第2凸部要素のみからなる凹凸構造の平面図であり、図14(b)は、図14(a)のIV-IV線に沿った断面図である。図14(a)においては、第2凸部要素にドットを付して示している。第1方向Dxおよび第2方向Dyは、第2実施形態と同様に定義される。
図14(a)が示すように、平面視において、第2凸部要素26Ebは、第2方向Dyに沿って一定の幅で延びる帯状を有し、複数の第2凸部要素26Ebは、第1方向Dxに沿って、間隔をあけて並んでいる。換言すれば、第2凸部要素26Ebが構成するパターンは、第2方向Dyに沿って延び、第1方向Dxに沿って並ぶ複数の帯状領域からなるパターンである。第2凸部要素26Ebにおける第1方向Dxの長さd4は、第1凸部要素のパターンを決定する矩形R1の長さd2と一致していてもよいし、異なっていてもよい。
第1方向Dxにおける第2凸部要素26Ebの配列間隔de、すなわち、第1方向Dxにおける帯状領域の配列間隔は、第2凸部要素26Ebが構成する凹凸構造の表面での反射光の少なくとも一部が、一次回折光として観測されるように設定される。一次回折光は、換言すれば、回折次数mが1または-1である回折光である。すなわち、入射光の入射角度をθ、反射光の反射角度をφ、回折する光の波長をλとした場合、配列間隔deは、de≧λ/(sinθ+sinφ)を満たす。例えば、λ=360nmである可視光線を対象とするとき、第2凸部要素26Ebの配列間隔deは180nm以上であればよく、すなわち、配列間隔deは、入射光に含まれる波長域における最小波長の1/2以上であればよい。なお、配列間隔deは、互いに隣り合う2つの第2凸部要素26Ebの端部間の第1方向Dxに沿った距離であって、第1方向Dxにおいて第2凸部要素26Ebに対して同一の側に位置する端部間の距離である。
第2凸部要素26Ebが構成するパターンの周期性は、凹凸構造層26が有する凹凸構造の周期性に反映される。複数の第2凸部要素26Ebの配列間隔deが一定の場合、光学機能層24の最外面での回折現象によって、光学機能層24からは、特定の波長の反射光が特定の角度に出射される。この回折による光の反射強度は、第1凸部要素に基づく光の散乱効果によって生じる反射光の反射強度と比較して非常に強いため、金属光沢のような輝きを有する光が視認されるが、一方で、回折による分光が生じ、観察角度の変化に応じて視認される色が変化する。
したがって、例えば、青色を呈する発色構造体12が得られるように光学機能層24および第1凸部要素の構造を設計したとしても、第2凸部要素26Ebの配列間隔deを400nm~5μmの程度の一定値とすると、観察角度によっては、回折に起因した強い緑色から赤色の光が観察される。これに対し、例えば、第2凸部要素26Ebの配列間隔deを50μm程度に大きくすると、可視領域の光が回折される角度の範囲が狭くなるため、回折に起因した色の変化が視認されにくくなるが、金属光沢のような輝きを有する光は特定の観察角度でのみしか観察されない。
そこで、配列間隔deを一定の値とせず、第2凸部要素26Ebのパターンを、周期が異なる複数の周期構造が重ね合わされたパターンとすれば、回折による反射光に複数の波長の光が混じり合うため、分光された単色性の高い光は視認されにくくなる。したがって、光沢感のある鮮やかな色が広い観察角度で観察される。この場合、配列間隔deは、例えば、360nm以上5μm以下の範囲から選択され、複数の第2凸部要素26Ebの配列間隔deの平均値が、入射光に含まれる波長域における最小波長の1/2以上であればよい。
ただし、配列間隔deの標準偏差が大きくなるにつれ、第2凸部要素26Ebの配列が不規則となって散乱効果が支配的になり、回折による強い反射が得られにくくなる。そのため、第2凸部要素26Ebの配列間隔deは、第1凸部要素に基づく光の散乱効果によって光が広がる角度に応じて、この光が広がる範囲と同程度の範囲に回折による反射光が出射されるように決定することが好ましい。例えば、青色の反射光が、入射角度に対して±40°の範囲に広がって出射される場合、第2凸部要素26Ebのパターンにおいて、配列間隔deを、その平均値が1μm以上5μm以下の程度であり、標準偏差が1μm程度であるように設定する。これにより、第1凸部要素に基づく光の散乱効果によって光が広がる角度と同程度の角度に回折による反射光が生じる。
すなわち、複数の第2凸部要素26Ebに基づく凹凸構造は、特定の波長域の光を回折させて取り出すための構造とは異なり、配列間隔deの分散により、回折を利用して所定の角度範囲に様々な波長域の光を射出させるための構造である。
さらに、より長周期の回折現象を生じさせるために、一辺が10μm以上100μm以下の正方形領域を単位領域とし、単位領域ごとの第2凸部要素26Ebのパターンにおいて、配列間隔deを、平均値が1μm以上5μm以下の程度、かつ、標準偏差が1μm程度としてもよい。なお、複数の単位領域のなかには、配列間隔deが1μm以上5μm以下の範囲に含まれる一定の値である領域が含まれてもよい。配列間隔deが一定である単位領域が存在したとしても、この単位領域と隣接する単位領域のいずれかにおいて、配列間隔deが標準偏差1μm程度のばらつきを有していれば、人の目の解像度においてはすべての単位領域で配列間隔deがばらつきを有している構成と同等の効果が期待できる。
なお、図14(a)に示した第2凸部要素26Ebは、第1方向Dxのみに、配列間隔deに起因した周期性を有している。第1凸部要素に基づく光の散乱効果は、主として、発色構造体12の平面視での、第1方向Dxに沿った方向への反射光に作用するが、第2方向Dyに沿った方向への反射光にも一部影響し得る。したがって、第2凸部要素26Ebは、第2方向Dyにも周期性を有してもよい。すなわち、第2凸部要素26Ebのパターンは、第2方向Dyに延びる複数の帯状領域が、第1方向Dxと第2方向Dyとの各々に沿って並ぶパターンであってもよい。
こうした第2凸部要素26Ebのパターンにおいて、例えば、帯状領域の第1方向Dxに沿った配列間隔と第2方向Dyに沿った配列間隔との各々は、各々の平均値が1μm以上100μm以下であるようにばらつきを有していればよい。また、第1凸部要素に基づく光の散乱効果の第1方向Dxへの影響と第2方向Dyへの影響との違いに応じて、第1方向Dxに沿った配列間隔の平均値と、第2方向Dyに沿った配列間隔の平均値とは互いに異なっていてもよく、第1方向Dxに沿った配列間隔の標準偏差と、第2方向Dyに沿った配列間隔の標準偏差とは互いに異なっていてもよい。
図14(b)が示すように、第2凸部要素26Ebの高さh3は、凸部26a上や凹部26b上における光学機能層24の表面粗さよりも大きければよい。ただし、高さh3が大きくなるほど、凹凸構造が反射光に与える効果において第2凸部要素26Ebに基づく回折効果が支配的となって、第1凸部要素に基づく光の散乱効果が得られにくくなるため、高さh3は第1凸部要素の高さh2と同程度であることが好ましく、高さh3は高さh2と一致していてもよい。例えば、第1凸部要素の高さh2と第2凸部要素26Ebの高さh3とは、10nm以上200nm以下の範囲に含まれていることが好ましく、青色を呈する発色構造体12では、第1凸部要素の高さh2と第2凸部要素26Ebの高さh3とは、10nm以上150nm以下の範囲に含まれていることが好ましい。
図15(a)は、凹凸構造層26をその表面と対向する視点から見た平面図であり、図15(b)は、図15(a)のV-V線に沿った凹凸構造層26の断面図である。図15(a)においては、第1凸部要素が構成するパターンと、第2凸部要素が構成するパターンとに異なる密度のドットを付して示している。
図15(a)が示すように、凹凸構造層26をその表面と対向する視点から見た場合、凸部26aが構成するパターンは、第1凸部要素26Eaが構成するパターンである第1パターンと、第2凸部要素26Ebが構成するパターンである第2パターンとが重ね合わされたパターンである。すなわち、凸部26aが位置する領域には、第1凸部要素26Eaのみから構成される領域S1と、第1凸部要素26Eaと第2凸部要素26Ebとが重なっている領域S2と、第2凸部要素26Ebのみから構成される領域S3とが含まれる。なお、図15(a)においては、第1凸部要素26Eaと第2凸部要素26Ebとが、第1方向Dxにおいてその端部が揃うように重ねられているが、こうした構成に限らず、第1凸部要素26Eaの端部と第2凸部要素26Ebの端部とはずれていてもよい。
図15(b)が示すように、領域S1では、凸部26aの高さは、第1凸部要素26Eaの高さh2である。また、領域S2では、凸部26aの高さは、第1凸部要素26Eaの高さh2と第2凸部要素26Ebの高さh3との和である。また、領域S3では、凸部26aの高さは、第2凸部要素26Ebの高さh3である。このように、凸部26aは、凹凸構造層26の厚さ方向への投影像が第1パターンを構成し、所定の高さh2を有する第1凸部要素26Eaと、上記厚さ方向への投影像が第2パターンを構成し、所定の高さh3を有する第2凸部要素26Ebとが、高さ方向に重ねられた多段形状を有する。ちなみに、凸部26aは、凸部26aの基部から、第1凸部要素26Eaに第2凸部要素26Ebが積層されていると捉えることもできるし、第2凸部要素26Ebに第1凸部要素26Eaが積層されていると捉えることもできる。
なお、第1凸部要素26Eaが構成するパターンと、第2凸部要素26Ebが構成するパターンとは、第1凸部要素26Eaと第2凸部要素26Ebとが重ならないように配置されてもよい。こうした構造によっても、第1凸部要素26Eaに基づく光の散乱効果と第2凸部要素26Ebに基づく光の回折効果とは得られる。ただし、第1凸部要素26Eaと第2凸部要素26Ebとを互いに重ならないように配置しようとすれば、第2実施形態と比較して、単位面積あたりにおける第1凸部要素26Eaの配置可能な面積が小さくなり、光の散乱効果が低下する。したがって、凸部要素26Ea,26Ebに基づく光の散乱効果と回折効果とを高めるためには、図15(a)に示したように、第1凸部要素26Eaと第2凸部要素26Ebとを重ねて凸部26aを多段形状とすることが好ましい。
第3実施形態の発色構造体12は、第2実施形態の発色構造体11と同様の製造方法によって製造可能である。また、発色構造体12は、基材20を備えていなくてもよい。
また、第1凸部要素26Eaが構成するパターンを構成する図形は、矩形に限られない。当該パターンを構成する図形は、長円等であってもよく、要は、第2方向Dyに沿った長さが第1方向Dxに沿った長さ以上である形状を有する図形要素であればよい。そして、図形要素における第1方向Dxの長さd2と第2方向Dyの長さd3とが、第2実施形態で説明した各種の条件を満たしていればよい。
第3実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(9)の効果、第2実施形態の(10)の効果に加えて、下記の効果が得られる。
(11)凹凸構造によって反射光の拡散効果と回折効果とが得られる。その結果、干渉によって強められた反射光が広い観察角度で観察可能であるとともに、この反射光の強度が高められる。
(第4実施形態)
図16~図21を参照して、発色構造体の第4実施形態を説明する。第4実施形態では、凹凸構造が第1実施形態と異なる。以下では、第4実施形態と第1~第3実施形態との相違点を中心に説明し、第1~第3実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
図16が示すように、第4実施形態の発色構造体13は、第1実施形態の凹凸構造層21に代えて、凹凸構造層27を備えている。基材20、および、金属層22と誘電体層23とからなる光学機能層24の構成は、第1実施形態と同様である。
凹凸構造層27は、基材20に向けられた面とは反対側の面である表面に、凹凸構造を有する。凹凸構造は、不規則に配置された複数の凸部27aと、複数の凸部27aの間に位置する凹部27bとを含む。凹凸構造層27の材料は、第1実施形態の凹凸構造層21と同様である。
第4実施形態においても、金属層22が透過性と反射性とを有しているため、発色構造体13の反射光における波長選択性が高められる。そして、光学機能層24にて干渉によって強められた反射光が、凹凸構造層27の凹凸構造に起因して散乱されるため、干渉によって強められた特定の波長域に対応する色が、広い観察角度で明瞭に視認可能となる。
図17および図18を参照して、凹凸構造層27の凹凸構造の詳細を説明する。図17(a)は、凹凸構造層27をその表面と対向する視点から見た平面図であり、図17(b)は、図17(a)のVII-VII線に沿った凹凸構造層27の断面図である。図17(a)においては、凹凸構造を構成する凸部27aにドットを付して示している。
第1方向Dxと第2方向Dyとは、凹凸構造層27の広がる方向に沿った平面に含まれる方向であり、第1方向Dxと第2方向Dyとは直交する。上記平面は、凹凸構造層27の厚さ方向と直交する面である。
凹凸構造層27をその表面と対向する視点から見たとき、複数の凸部27aが構成するパターンは、複数の矩形R2からなるパターンであって、連続して並ぶ複数の矩形R2から構成される矩形群RGを複数含む。矩形R2の辺は、第1方向Dxと第2方向Dyとの各々に沿って延びる。1つの矩形群RGが位置する領域に1つの凸部27aが位置する。
各矩形群RGは、連なって並ぶ2以上の矩形R2を含む。各矩形群RGにおいて、複数の矩形R2は、所定の方向に沿って並び、互いに隣り合う矩形R2は接している。なお、1つの矩形群RGに含まれる矩形R2の数は限定されず、複数の矩形群RGにおいて矩形R2の数は一定でなくてもよい。
図18は、矩形群RGを拡大して示す。複数の矩形R2は、矩形R2の左上の頂点を通る仮想的な直線V1に沿って並んでいる。複数の矩形R2の並ぶ方向、すなわち直線V1の延びる方向と、第1方向Dxとのなす角の大きさが、角度θである。
凹凸構造層27は、平面視にて所定の面積を有する複数の単位領域を含み、単位領域ごとに、角度θは一定である。複数の単位領域には、角度θが互いに異なる単位領域が含まれてもよい。
複数の矩形R2において、第1方向Dxの長さd5は一定である。凹凸に起因して虹色の分光が生じることを抑えるために、矩形R2における第1方向Dxの長さd5は、可視領域の光の波長以下とされる。すなわち、長さd5は830nm以下であることが好ましく、例えば、発色構造体13にて青色を発色させる場合は、長さd5は300nm程度であることが好ましい。
一方、複数の矩形R2において、第2方向Dyの長さd6は、角度θが0°より大きく90°未満、または、90°より大きく180°未満の場合、tanθ=d6/Lを満たすように設定される。長さLは、矩形群RG内で互いに隣接する2つの矩形R2における左上の頂点間の長さをαとしたとき、αcosθ=Lを満たす長さである。長さLは、製造工程において必要な精度で上記式を満たせばよく、例えば、上記式において小数点以下は切り捨ててもよい。すなわち、長さd5と長さLとは一致していなくてもよい。
反射光を効率よく散乱させるためには、各矩形群RGにおける複数の矩形R2の第2方向Dyの長さd6の和の1/2が、平均値が4.15μm以下、かつ、標準偏差が1μm以下の分布を有することが好ましい。
また、反射光の散乱効果を高めるためには、凹凸構造の起伏が多いことが好ましく、凹凸構造層27の表面と対向する視点から見て、単位面積あたりにおいて凸部27aが占める面積の比率は40%以上60%以下であることが好ましい。
図17(b)が示すように、凸部27aの高さh4は、凸部27a内において一定であり、複数の凸部27aにおいても一定である。凸部27aは、凸部27aの基部が位置する平面から1段の段差形状を有する。凸部27aの高さh4は、発色構造体13にて発色させる所望の色に応じて設定されればよい。凸部27a上や凹部27b上における光学機能層24の表面粗さよりも、凸部27aの高さh4が大きければ、反射光の散乱効果は得られる。
ただし、凹凸での反射に起因した光の干渉を抑えるために、高さh4は可視領域の光の波長の1/2以下であることが好ましく、すなわち、415nm以下であることが好ましい。さらに、上記光の干渉を抑えるために、高さh4は、光学機能層24にて強められる反射光の波長域の1/2以下であることがより好ましい。
また、高さh4が過剰に大きいと、凹凸による反射光の散乱効果が高くなりすぎて、反射光の強度が低くなりやすいため、高さh4は10nm以上200nm以下であることが好ましい。例えば、青色を呈する発色構造体13では、効果的な光の広がりを得るためには、高さh4は40nm以上150nm以下の程度であることが好ましく、散乱効果が高くなりすぎることを抑えるためには、高さh4は100nm以下であることが好ましい。
なお、凸部27aの高さh4は、単位領域ごとに異なっていてもよい。複数の単位領域において凸部27aの高さh4に差がある場合、その差は5nm以上200nm以下であることが好ましい。
図19は、θ=0°またはθ=180°の場合の凸部27aの配列を示す。この場合、長さLは長さαと等しくなる。また、図20は、θ=90°の場合の凸部27aの配列を示す。この場合、長さLは0となり、長さαは長さd6と一致する。
第4実施形態においては、凸部27aによる光の散乱効果は、主として、発色構造体13の平面視での、矩形R2の並ぶ方向と直交する方向に沿った方向への反射光に作用する。したがって、角度θの制御によって、反射光の散乱される方向の制御が可能であり、すなわち、反射光の散乱における異方性の制御が可能である。また、複数の単位領域における角度θの制御によって、観察方位に応じて明るい色が視認される領域が変わるように、発色構造体13を構成することもできる。こうした構成によれば、例えば凸部が帯状であって、単位領域ごとに凸部の延びる方向を変える場合と比較して、発色構造体13の製造が容易である。
なお、矩形R2の長さd5は、一定でなくてもよい。各矩形群RGにおける複数の矩形R2の第2方向Dyの長さd6の和の1/2の標準偏差は、矩形R2の第1方向Dxの長さd5の標準偏差より大きいことが好ましい。長さd5のばらつきが大きいと、反射光の散乱効果が高められる。
また、平面視における凸部27aの形状は、矩形R2に内接する形状であれば、円形や、五角形等の多角形であってもよい。図21は、凸部27aが矩形R2に内接する円形である例を示す。
言い換えれば、平面視における凸部27aの形状は、第1方向Dxと第2方向Dyとの各々に沿った辺を有する仮想的な矩形に内接する図形であればよく、複数の凸部27aが構成するパターンは、こうした図形である複数の図形要素の集合からなるパターンであればよい。上記仮想的な矩形の構成は、上述した矩形R2の構成と同様であればよい。
第4実施形態の発色構造体13は、第2実施形態の発色構造体11と同様の製造方法によって製造可能である。平面視における凸部27aの形状が、上記仮想的な矩形に内接する矩形R2、すなわち、仮想的な矩形に一致する形状である場合、凸部27aの形成あるいは凸部27aの形成のための凹版の作製に際して、可変成形方式の電子線リソグラフィを用いることによりパターンを高速に描画することができる。また、発色構造体13は、基材20を備えていなくてもよい。
第4実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(9)の効果に加えて、下記の効果が得られる。
(12)反射光の散乱に異方性が得られるため、観察方位によって視認される色の明るさが変化することが望まれる用途に適した発色構造体13が得られる。そして、角度θを制御することにより、反射光の散乱の異方性を容易に制御することができる。
[変形例]
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・図22が示すように、発色構造体は、凹凸構造層に対して光学機能層24と反対側に、可視領域の光を吸収する吸収層28を備えていてもよい。この場合、凹凸構造層、金属層22、誘電体層23はこの順に並び、凹凸構造層に対して光学機能層24の位置する側から、発色構造体が観察される。吸収層28は、例えば、基材20における凹凸構造層とは反対側の面に接する。
吸収層28は、可視領域の光のうち、少なくとも、光学機能層24を透過した光の一部を吸収する。吸収層28は、黒色顔料等を含む黒色の層であって、可視領域全体の光を吸収してもよい。吸収層28が設けられていることにより、光学機能層24で干渉により強められる波長域とは異なる波長域の光が、発色構造体内部の各層の界面や、発色構造体とその外部との界面で反射して観察者に向けて射出されることが抑えられる。したがって、発色構造体に視認される色の鮮明さが高められる。
また、吸収層28を設けることに代えて、基材20が、可視領域の光の吸収性を有し、吸収層として機能してもよい。
なお、図22においては、発色構造体が第1実施形態の凹凸構造層21を備える形態を図示したが、発色構造体は、第2~第4実施形態の凹凸構造層を備えていてもよい。
・図23が示すように、発色構造体は、光学機能層24に対して凹凸構造層と反対側に、可視領域の光を吸収する吸収層28を備えていてもよい。この場合、凹凸構造層、誘電体層23、金属層22はこの順に並び、光学機能層24に対して凹凸構造層の位置する側から、発色構造体が観察される。吸収層28は、金属層22に接する。
吸収層28は、可視領域の光のうち、少なくとも、光学機能層24を透過した光の一部を吸収する。吸収層28は、黒色顔料等を含む黒色の層であって、可視領域全体の光を吸収してもよい。吸収層28が設けられていることにより、光学機能層24で干渉により強められる波長域とは異なる波長域の光が、発色構造体内部の各層の界面や、発色構造体とその外部との界面で反射して観察者に向けて射出されることが抑えられる。したがって、発色構造体に視認される色の鮮明さが高められる。
なお、図23においては、発色構造体が第1実施形態の凹凸構造層21を備える形態を図示したが、発色構造体は、第2~第4実施形態の凹凸構造層を備えていてもよい。
・図24が示すように、発色構造体14は、凹凸構造層を備えず、平坦な層である支持層29の上に、光学機能層24を備えていてもよい。こうした構成によれば、特定の観察角度において、光学機能層24での干渉で強められた特定の波長域に対応する色が明瞭に視認可能となる。
・誘電体層23が、可視領域の光の一部の波長域に吸収性を有していてもよい。こうした構成によれば、この吸収性を有する波長域の光が、発色構造体からの反射光に含まれることが抑えられる。したがって、発色構造体に視認される色の鮮明さが高められる。こうした誘電体層23は、例えば、金属酸化物、金属窒化物、および、金属酸窒化物のいずれかの金属化合物からなり、当該金属化合物は、化学量論組成よりも金属元素が過剰な組成を有する。
[実施例]
上述した発色構造体およびその製造方法を、具体的な実施例を用いて説明する。
(実施例1)
実施例1として、第1実施形態に対応する発色構造体を形成した。
まず、光を利用した転写成形によって凹凸構造を形成するためのモールドを形成した。照射する光として、365nmの波長の光を用いるため、この波長の光を透過する合成石英をモールドの材料として用いた。凹凸層への形成対象の凹凸の反転された凹凸を、電子線描画およびドライエッチング法を用いて合成石英基板に形成することにより、モールドを形成した。具体的には、平面視にて一辺が45μmの正方形領域を、端部から中央部にかけて弧を描くように連続的に深さを変えながら窪ませた凹部を、モールドの表面に隙間無く形成した。上記正方形領域の中央部の深さは7μmである。モールドの表面には、離型剤としてオプツールHD-1100(ダイキン工業製)を塗布した。
次に、片面に易接着処理が施されたPETフィルム上に光硬化性樹脂を塗布し、この樹脂にモールドの凹凸が形成されている面を押し当て、365nmの波長の光を照射して樹脂を硬化させた。その後、硬化した樹脂およびPETフィルムをモールドから剥離した。これにより、凹凸構造を有する凹凸構造層と基材であるPETフィルムとの積層体が得られた。
続いて、得られた凹凸構造層と基材との積層体の凹凸を有する面に、真空蒸着法によって、金属層として、膜厚が10nmである1層のアルミニウム膜を形成した。さらに、金属層の上面に、真空蒸着法によって、誘電体層として、膜厚が50nmである1層の酸化チタン膜を形成した。
これにより、実施例1の発色構造体が得られた。
(実施例2)
実施例2として、第2実施形態に対応する発色構造体を形成した。
まず、光インプリント法を用いて凹凸構造を形成するためのモールドを形成した。光ナノインプリント法において照射する光として、365nmの波長の光を用いるため、この波長の光を透過する合成石英をモールドの材料として用いた。凹凸構造層への形成対象の凹凸の反転された凹凸を、電子線描画およびドライエッチング法を用いて合成石英基板に形成することにより、モールドを形成した。形成対象の凹凸構造は、第2実施形態の凹凸構造である。モールドの表面には、離型剤としてオプツールHD-1100(ダイキン工業製)を塗布した。
次に、片面に易接着処理が施されたPETフィルム上に光硬化性樹脂を塗布し、この樹脂にモールドの凹凸が形成されている面を押し当て、365nmの波長の光を照射して樹脂を硬化させた。その後、硬化した樹脂およびPETフィルムをモールドから剥離した。これにより、凹凸構造を有する凹凸構造層と基材であるPETフィルムとの積層体が得られた。
続いて、得られた凹凸構造層と基材との積層体の凹凸を有する面に、真空蒸着法によって、金属層として、膜厚が10nmである1層のアルミニウム膜を形成した。さらに、金属層の上面に、真空蒸着法によって、誘電体層として、膜厚が50nmである1層の酸化チタン膜を形成した。
これにより、実施例2の発色構造体が得られた。
(観察結果)
実施例1,2の発色構造体を凹凸構造層に対して光学機能層の位置する側から観察した。基材の表面に直交する方向に対して30°傾斜した方向から観察した結果、実施例1,2のいずれにおいても、光沢感のある青色が視認性良く確認された。
さらに、発色構造体の反射光の角度依存性を測定した。発色構造体に対して白色光を30°の入射角で入射させた結果、実施例1,2のいずれにおいても、正反射光に対して±30°の範囲で散乱光が確認された。
Dx…第1方向
Dy…第2方向
10,11,12,13,14…発色構造体
20…基材
21,25,26,27…凹凸構造層
22…金属層
23…誘電体層
24…光学機能層
21a,25a,26a,27a…凸部
25b,26b,27b…凹部
28…吸収層。

Claims (12)

  1. 金属層と誘電体層とを備える光学機能層であって、干渉によって強められた反射光を射出する前記光学機能層を備え、
    前記金属層の可視領域における屈折率は、前記誘電体層の可視領域における屈折率と異なり、
    前記金属層は、5%以上の透過率を有する波長域を可視領域に有する
    発色構造体。
  2. 前記金属層の膜厚は、5nm以上40nm以下である
    請求項1に記載の発色構造体。
  3. 前記金属層は、30%以上の反射率を有する波長域を可視領域に有する
    請求項1または2に記載の発色構造体。
  4. 可視領域に、前記金属層の屈折率と前記誘電体層の屈折率との差が0.3以上である波長域が含まれる
    請求項1~3のいずれか一項に記載の発色構造体。
  5. 前記誘電体層の膜厚は、10nm以上300nm以下である
    請求項1~4のいずれか一項に記載の発色構造体。
  6. 可視領域における前記誘電体層の屈折率は、1.5より大きく3.0以下である
    請求項1~5のいずれか一項に記載の発色構造体。
  7. 凸部または凹部である複数の凹凸要素から構成される凹凸構造を表面に有し、前記光学機能層を支持する凹凸構造層をさらに備え、
    前記光学機能層は、前記凹凸構造に沿った表面形状を有し、
    前記凹凸構造層の厚さ方向に沿った方向から前記凹凸構造を見た平面視において、前記凹凸要素の短辺方向の幅および長辺方向の幅の各々は、10μm以上100μm以下であり、前記厚さ方向に沿った前記凹凸要素の寸法は、前記平面視での前記凹凸要素の端部から中央部に向かって大きくなり、前記短辺方向の幅に対する、前記凹凸要素内における前記厚さ方向に沿った寸法の最大値の比は、0.1以上1.0以下である
    請求項1~6のいずれか一項に記載の発色構造体。
  8. 凹凸構造を表面に有し、前記光学機能層を支持する凹凸構造層をさらに備え、
    前記光学機能層は、前記凹凸構造に沿った表面形状を有し、
    前記凹凸構造を構成する凸部は、前記凸部の基部が位置する平面から1段以上の段差形状を有し、前記凹凸構造層の表面と対向する視点から見て、複数の前記凸部が構成するパターンは、第1方向に沿った長さがサブ波長以下であって、前記第1方向と直交する第2方向に沿った長さが前記第1方向に沿った長さ以上である複数の図形要素の集合からなるパターンを含み、前記複数の図形要素において、前記第2方向に沿った長さの標準偏差は、前記第1方向に沿った長さの標準偏差よりも大きい
    請求項1~6のいずれか一項に記載の発色構造体。
  9. 前記凹凸構造層の表面と対向する視点から前記凹凸構造を見たとき、前記複数の凸部が構成するパターンは、前記図形要素の集合からなる第1パターンと、前記第2方向に沿って延び、前記第1方向に沿って並ぶ複数の帯状領域からなる第2パターンとが重ね合わされたパターンであり、
    前記第2パターンにおいて、前記第1方向に沿った前記帯状領域の配列間隔は、前記複数の帯状領域において一定ではなく、前記複数の帯状領域における前記配列間隔の平均値は、前記光学機能層への入射光に含まれる波長域における最小波長の1/2以上であり、
    前記凸部は、前記凹凸構造層の厚さ方向への投影像が前記第1パターンを構成する要素であって所定の高さを有する凸部要素と、前記厚さ方向への投影像が前記第2パターンを構成する要素であって所定の高さを有する凸部要素とが高さ方向に重ねられた多段形状を有する
    請求項8に記載の発色構造体。
  10. 凹凸構造を表面に有し、前記光学機能層を支持する凹凸構造層をさらに備え、
    前記光学機能層は、前記凹凸構造に沿った表面形状を有し、
    前記凹凸構造層の表面と対向する視点から見て、
    前記凹凸構造を構成する複数の凸部が構成するパターンは、サブ波長以下の長さを有する第1方向に沿った辺と、前記第1方向と直交する第2方向に沿った辺とを有する仮想的な矩形に各々が内接する複数の図形要素の集合からなるパターンであり、
    前記凹凸構造層が含む複数の単位領域の各々において、前記矩形は前記第1方向に対してθの角度をなす方向に沿って並び、少なくとも1つの前記単位領域において、前記角度θは、0°より大きく90°未満、または、90°より大きく180°未満である
    請求項1~6のいずれか一項に記載の発色構造体。
  11. 前記凹凸構造層に対して前記光学機能層と反対側に、可視領域の光の少なくとも一部を吸収する吸収層を備える
    請求項7~10のいずれか一項に記載の発色構造体。
  12. 前記光学機能層に対して前記凹凸構造層と反対側に、可視領域の光の少なくとも一部を吸収する吸収層を備える
    請求項7~10のいずれか一項に記載の発色構造体。
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