WO2015083802A1

WO2015083802A1 - ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット

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Publication number: WO2015083802A1
Application number: PCT/JP2014/082151
Authority: WO
Inventors: 春生都竹; 理夫鈴木; 拡保石川
Original assignee: 曙ブレーキ工業株式会社
Priority date: 2013-12-06
Filing date: 2014-12-04
Publication date: 2015-06-11
Also published as: JP2015110967A

Abstract

　ケーブル（６ａ）の先端部に取り付けられる接続具（８ａ）とケースから露出した部分を覆う防塵ブーツ（７ａ）との間に露出する部分が、水分の通過を防止できると共に可撓性を有する防水部材（３２）により覆われる。防水部材（３２）の一部が、接続具（８ａ）に形成された有底孔（３１）の内側に挿入された状態で、接続具（８ａ）における有底孔（３１）の周囲に存在する部分が径方向内方に塑性変形されて、接続具（８ａ）がケーブル（６ａ）の先端部にかしめ固定される。

Description

ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット

　この発明は、ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットの改良に関する。

　ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットは、電動モータにより１対のブレーキシュー同士の間隔を拡げて制動力を発生させるドラム式電動駐車ブレーキ装置に組み込んで使用される。
　尚、ドラム式電動駐車ブレーキ装置には、ドラムブレーキが、車両を走行状態から減速乃至停止させる為のサービスブレーキ、及び停止状態を保つ為の駐車ブレーキの両方に使用される構造のドラムブレーキは勿論、サービスブレーキはディスクブレーキにより行い、駐車ブレーキのみをドラムブレーキにより行う構造のドラムインディスクブレーキもある。
　ブレーキペダルを踏み込まずに車両を停止状態に維持する駐車ブレーキ装置をドラムブレーキに組み込む事が、従来から実施されている。又、駐車ブレーキが、電動モータを駆動源として、トグル機構の如きリンク機構等の増力機構を介して機械式に（非油圧式に）行われる事も、特許文献１に記載される等により従来から知られており、一部の車両で実施されている。この特許文献１には、サービスブレーキが、油圧式のディスクブレーキにより行われ、駐車ブレーキが、電動モータを駆動源とする機械式のドラムブレーキにより行われる構造が記載されている。又、前記特許文献１には、バッキングプレートの外側面に、このバッキングプレートの径方向の変位を可能に支持した１対のブレーキシュー同士の間隔が、電動式のアクチュエータユニットを用いて拡張される様に構成されたドラム式電動駐車ブレーキ装置の構造が記載されている。

　図８は、前記特許文献１に記載された構造とは異なるが、本願発明者等が先に考えた、アクチュエータユニット１を示している。
　このアクチュエータユニット１は、密封構造のケース２と、電動モータ３と、歯車式減速機４と、送りねじ機構５と、ケーブル（撚りケーブル）６と、防塵ブーツ７と、接続具８とを備える。このうちの電動モータ３、歯車式減速機４、及び送りねじ機構５は、前記ケース２内に設置されている。この電動モータ３の出力軸９の回転は、前記歯車式減速機４を介して、前記送りねじ機構５を構成するねじ筒１０に伝達される。このねじ筒１０は、前記ケース２内に回転のみ可能に支持されており、内周面に雌ねじが形成されている。この様なねじ筒１０の内側には、このねじ筒１０と共に前記送りねじ機構５を構成するロッド１１が回転を不能とされた状態で設けられており、このロッド１１の外周面に形成された雄ねじが、前記ねじ筒１０の内周面に形成された雌ねじに螺合されている。これにより、このねじ筒１０が回転した際に、前記ロッド１１は、自身の軸方向にのみ移動する。

　又、前記ロッド１１の先端部には、前記ケーブル６の基端部が結合固定されている。このケーブル６は、図９に示した様に、複数本の金属製の線材１２、１２から成る撚り線である。又、前記防塵ブーツ７は、その基端部が前記ケース２に固定されており、前記ケーブル６における前記ケース２から突出した部分を覆っている。更に、このケーブル６の先端部における前記防塵ブーツ７の先端部から突出した部分には、二股状の前記接続具８が結合固定されている。そして、この様な構成を有する前記アクチュエータユニット１が、駐車ブレーキ装置に組み込まれた状態で、前記ケース２が、バッキングプレート或いはナックル等の固定部分に支持固定される。そして、前記接続具８が、１対のブレーキシューの周方向一端部同士の間隔を拡張する為のリンク機構等の拡張機構の構成部材の一部に枢支される。

　制動時には、前記電動モータ３に通電されると、前記ねじ筒１０の雌ねじと前記ロッド１１の雄ねじとの螺合に基づいて、このロッド１１が拡張機構から遠ざかる方向（図８の下方）に直線的に移動する。そして、このロッド１１により前記ケーブル６が引っ張られ、前記拡張機構が伸長して、１対のブレーキシュー同士の間隔が拡げられると、これら両ブレーキシューのライニングがドラムの内周面に押し付けられて、制動力が生じる。

　ところが、上述の様な構成を有するアクチュエータユニット１の場合、前記ケース２内に水分が浸入する可能性があり、前記電動モータ３が故障したり、前記歯車式減速機４や前記送りねじ機構５が錆びにより固着したりする等の不具合が生じる可能性がある。
　即ち、前記アクチュエータユニット１は、使用状態で外気に曝らされる為、前記ケース２内の温度が高温状態から急激に低下し、このケース２内の気圧が負圧に変化する可能性がある。そして、この様に、このケース２内が負圧になると、前記ケーブル６を構成する線材１２、１２同士の間に存在する隙間１３、１３を通じて、外気が前記ケース２内に吸引される。ここで、前記ケーブル６における前記防塵ブーツ７と前記接続具８との間に存在する部分は、外部に直接露出している為、当該部分から水分を吸収し、前記ケース２内まで水分が浸入する可能性がある。この結果、前記電動モータ３が故障したり、前記歯車式減速機４や前記送りねじ機構５を構成する各部材に錆びが発生したりする可能性がある。

　上述した様な問題を解消する為に、例えば特許文献２、３には、次の様な構造が開示されている。
　このうちの特許文献２には、アクチュエータユニットを構成するケースの一部に開口部が設けられ、この開口部が薄膜状のダイヤフラムにより塞がれる構造が開示されている。この様な構造によれば、ケース内の温度が急激に低下した際に、ダイヤフラムがケースの内側に向けて変形する事で、このケース内の気圧が負圧に変化する事を防止できる。この為、撚り線から成るケーブルを通じて、このケース内に水分が浸入する事を抑制できる。

　これに対し、特許文献３には、アクチュエータユニットを構成するケースに連通させる状態で緊急解除機構が車両室内に設けられ、この緊急解除機構の開口部がフィルタ（空気は通すが、水は通さないフィルタ）により塞がれる構造が開示されている。この様な構造によれば、ケース内の温度が急激に低下した際に、フィルタを通じてケース内に空気が吸引される事で、このケース内の気圧が負圧に変化する事を防止できる。この為、撚り線から成るケーブルを通じて、このケース内に水分が浸入する事を抑制できる。

　以上の様に、前記特許文献２、３の何れの構造の場合にも、ケース内に水分が浸入する事を抑制できて、ケース内に配置される電動モータ等が故障する事を防止できる。しかしながら、前記特許文献２、３の何れの構造の場合にも、ケース内の気圧が負圧に変化する事を完全に防止する事は困難であり、このケース内に少なからず水分が浸入する可能性がある。又、水分の浸入を抑制する為の構造が複雑になり、コストが嵩む事が避けられない。

日本国特表２００１－５０４４１７号公報日本国特許第５１３０２９４号公報日本国特許第４６９７４５４号公報

　本発明の目的は、上述の様な事情に鑑みて、アクチュエータユニットを構成するケース内に、ケーブルを通じて水分が浸入するのを安価に防止できる構造を実現するドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットを提供することである。

　本発明の上記目的は、下記（１）～（６）の構成のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットにより達成される。
（１）　ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットは、ケースと、電動モータと、変換機構と、ケーブルと、防塵ブーツと、接続具とを備える。
　そして、前記接続具が１対のブレーキシューの端部同士の間に設けた拡張機構の構成部品に接続され、前記電動モータの駆動に基づき前記ケーブルが引っ張られる事で、前記拡張機構が伸長して、これら両ブレーキシューの周方向端部同士の間隔が拡張され、これら両ブレーキシューのライニングが車輪と共に回転するドラムの内周面に押し付けられる事により、制動力が発生する。
　前記電動モータは、ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットの動力源であり、前記ケース内に設置されている。
　又、前記変換機構は、例えば送りねじ機構であり、前記電動モータの出力軸の回転運動を直線運動に変換する。
　又、前記ケーブルは、複数本の線材から成る撚り線であり、前記変換機構を構成する直動部材の一部に基端部が接続されると共に、前記ケースから中間部乃至先端部が突出している。
　又、前記防塵ブーツは、前記ケースに基端部が固定され、前記ケーブルにおける前記ケースから突出した部分を覆う。
　又、前記接続具は、前記ケーブルの先端部における前記防塵ブーツの先端部から突出した部分に固定される。

　特に本構成のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットは、前記ケーブルにおける少なくとも前記接続具と前記防塵ブーツとの間に露出している部分が、防水部材（例えばナイロン樹脂等のコーティング膜や、ゴム、プラスチック等の合成樹脂、若しくは熱収縮材製の筒状体）により覆われている。
　又、前記接続具に形成された有底孔の内側に、前記ケーブルの先端部が前記防水部材により覆われた部分を含む状態で挿入され、前記接続具における前記有底孔の周囲に存在する部分が径方向内方に塑性変形される事により、前記接続具が前記ケーブルの先端部にかしめ固定されている。

（２）　上記（１）の構成のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットであって、前記ケーブルの先端部における前記有底孔の奥部に挿入される部分が、前記防水部材により覆われずに露出している。
（３）　上記（２）の構成のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットであって、前記有底孔が、開口側の大径部と、奥部側の小径部とを備えた段付き孔とされる。そして、このうちの大径部には、前記ケーブルの先端部における前記防水部材により覆われた部分が配置され、前記小径部には、前記ケーブルの先端部における前記防水部材により覆われていない部分が配置されている。

（４）　上記（１）～（３）の何れか１つの構成のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットであって、前記ケーブルにおける前記防塵ブーツの先端部が固定された部分が、前記防水部材により覆われている。

（５）　上記（１）～（４）の何れか１つの構成のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットであって、前記防塵ブーツの先端部の周囲には、止め輪がかしめ固定されている。

（６）　上記（１）～（５）の何れか１つの構成のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットであって、前記防水部材が、ポリオレフィン等の熱収縮材製である。

　上記（１）の様な構成を有するドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットによれば、アクチュエータユニットを構成するケース内に、ケーブルを通じて水分が浸入するのを防止できる構造が、安価に実現される。
　即ち、上記（１）の構成の場合には、前記ケーブルにおける少なくとも接続具と防塵ブーツとの間に露出する部分が防水部材により覆われると共に、この接続具が前記ケーブルの先端部に、この防水部材により覆われた部分を含む状態でかしめ固定されている。この為、前記ケーブルが、先端側から順に、接続具と、防水部材と、防塵ブーツとにより、それぞれ覆われるので、外部に直接露出した部分がなくなると共に、前記接続具と前記ケーブルとの接続部分の密封性が確保される。
　従って、前記ケース内の温度が急激に低下した様な場合にも、前記ケーブルを構成する線材同士の隙間から水分が吸収される事を防止できると共に、前記接続部分から水分が吸収される事も有効に防止できる。
　しかも、前記防水部材により前記ケーブルが覆われる構造は、このケーブルに、例えばナイロン樹脂等のコーティング膜が形成されたり、ゴム若しくはプラスチック等の合成樹脂製の筒状体等が外嵌されたりする事により構成できる為、安価に実現できる。
　この結果、上記（１）の構成によれば、アクチュエータユニットを構成するケース内に、ケーブルを通じて水分が浸入するのを防止できる構造を、安価に実現することができる。

　上記（２）、（３）に記載した構成によれば、ケーブルに対する接続具の結合強度が、十分に確保される。
　上記（４）、（５）に記載した構成によれば、ケーブルと防塵ブーツとの接続部分の密封性を高める事ができる為、ケース内への水分の浸入をより有効に防止できる。
　上記（６）に記載した構成によれば、前記ケーブルの周囲に前記防水部材を密着させる事ができる為、高い防水性能を発揮できると共に、前記ケーブルに対する位置決めを図る事もできる。

　本発明のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットによれば、アクチュエータユニットを構成するケース内に、ケーブルを通じて水分が浸入するのを安価に防止できる構造を実現することができる。

図１は本発明の実施の形態の１例を、ドラムを除き、アウタ側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。図２は本発明の実施の形態の１例を、ドラムを除き、径方向に関して図１と反対側から見た状態で示す斜視図。図３は本発明の実施の形態の１例を、ドラムを除き、アウタ側から見た状態で示す正投影図。図４は本発明の実施の形態の１例を、アクチュエータユニットを取り出して示す正面図。図５は図４の（ａ）－（ａ）断面図。図６は図５の（ｂ）部拡大図。図７は本発明の実施の形態の１例において、ケーブルの先端部に防水部材を外嵌或いは皮膜形成した状態を示す模式図。図８は先に考えた構造を示す、アクチュエータユニットの縦断面図。図９は先に考えた構造を示す、ケーブルの先端部を示す模式図。

　図１～７は、本発明の実施の形態の１例に係るドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットを示している。本例の構造は、本実施の形態の１例をドラムインディスクブレーキに適用した場合に就いて示している。本実施の形態のドラム式電動駐車ブレーキ装置は、バッキングプレート１４と、一対のブレーキシュー１５、１５と、ドラム（図示せず）と、アンカ１６と、電動式のアクチュエータユニット１ａとを備える。このうちのバッキングプレート１４は、懸架装置を構成するナックルの外側面にねじ止め固定される。

　前記バッキングプレート１４は、鋼板等、十分な強度及び剛性を有する金属板にプレス加工を施す事により、外径寄り部分の一部が欠けた略円輪状に形成され、外周縁部に折り曲げ部を形成すると共に要部に段差部を形成する事で曲げ剛性が向上されている。尚、外径寄り部分の一部に形成された切り欠き部１７は、サービスブレーキであるディスクブレーキを構成するサポート又はキャリパを配置する為に形成されている。この様な構成を有する前記バッキングプレート１４は、前記ナックルのフレーム部１８に対し、複数本（例えば４本程度）のボルトにより、結合固定される。

　又、前記両ブレーキシュー１５、１５は、それぞれが略三日月形のウェブ１９と、このウェブ１９の外周縁に沿って固定された裏板２０と、この裏板２０の外周面に添着固定されたライニング２１とから成る。それぞれがこの様な構成を有する前記両ブレーキシュー１５、１５は、前記バッキングプレート１４の外側面に、このバッキングプレート１４の径方向の変位が可能に支持されている。本実施の形態の構造は、駐車ブレーキ装置を構成するドラムブレーキとして、デュオサーボ型のものが使用されている。この為に、前記両ブレーキシュー１５、１５におけるウェブ１９、１９の周方向一端縁（図１～３の上側周端面）が、前記バッキングプレート１４の外側面に固定された前記アンカ１６の周方向両端面に、当接若しくは近接対向（非制動時及び制動時に於けるアンカ側が当接され、制動時に於ける反アンカ側が近接対向）されている。又、前記両ブレーキシュー１５、１５におけるウェブ１９、１９の周方向他端縁（図１～３の下側周端面）が、フローティングアンカ２２の軸方向両端面に突き当てられている。更に、前記両ブレーキシュー１５、１５におけるウェブ１９、１９同士の間にリターンスプリング２３ａ、２３ｂが掛け渡されて、これら両ブレーキシュー１５、１５に、径方向内方に向いた（制動解除方向の）弾力が付与されている。

　前記ドラムは、前記ナックルに支持されたハブユニットの回転側フランジに結合固定された状態で、前記両ブレーキシュー１５、１５を囲むように設けられ、車輪と共に回転する。本実施の形態の構造はドラムインディスクブレーキであるから、前記ドラムの外径側にディスクが、このドラムと一体に設けられたものを使用する。そして、前記バッキングプレート１４の切り欠き部１７に配置したサポート又はキャリパに支持した１対のパッドが、前記ディスクを軸方向両側から挟む状態で配置されている。サービスブレーキの作動時には、前記両パッドにより前記ディスクが両側から強く挟持される。又、前記アンカ１６は、前記バッキングプレート１４の外側面の一部であり、且つ前記両ブレーキシュー１５、１５の周方向一端部同士の間部分に、複数組のボルトとナットとにより支持固定されている。

　又、図５に示すように、前記アクチュエータユニット１ａは、密封構造のケース２ａと、電動モータ３ａと、減速機構である歯車式減速機４ａと、請求の範囲に記載された変換機構である送りねじ機構５ａと、ケーブル（撚りケーブル）６ａと、防塵ブーツ７ａと、接続具８ａとを備える。
　このうちのケース２ａは、ケース本体３７と、蓋体３８とから構成されており、このうちのケース本体３７の開口部が、この蓋体３８により密閉される事で、前記ケーブル６ａを外部に突出させる為にこの蓋体３８に設けられた開口部を除いて、内部空間の密封性が確保されている。又、これらケース本体３７及び蓋体３８は、合成樹脂製或いはアルミニウム合金等の金属製である。前記電動モータ３ａ、前記歯車式減速機４ａ、及び前記送りねじ機構５ａは、この様なケース２ａ内に設置されており、前記電動モータ３ａの出力軸９ａの回転が、前記歯車式減速機４ａを介して、前記送りねじ機構５ａを構成するねじ筒１０ａに伝達される様に構成されている。このねじ筒１０ａは、前記ケース２ａ内に回転のみ可能に支持されており、内周面に雌ねじが形成されている。この様なねじ筒１０ａの内側には、このねじ筒１０ａと共に前記送りねじ機構５ａを構成する請求の範囲に記載された直動部材であるロッド１１ａが回転を不能とされた状態で設けられている。このロッド１１ａの外周面に形成された雄ねじは、前記ねじ筒１０ａの内周面に形成された雌ねじに螺合されている。これにより、このねじ筒１０が回転された際に、前記ロッド１１ａは、自身の軸方向にのみ移動される。

　前記ロッド１１ａの先端部には、前記ケーブル６ａの基端部が結合固定されている。このケーブル６ａは、図７に示した様に、複数本の金属製の線材１２ａ、１２ａから成る撚り線である。前記防塵ブーツ７ａは、弾性材製｛例えばアクリロニトリルブタジエンゴム（ＮＢＲ）等の合成ゴム製｝で、中空蛇腹状の本体部２４と、この本体部２４の両端部に設けられた円筒状の連結部２５ａ、２５ｂとを備える。そして、前記防塵ブーツ７ａの基端部に設けられた連結部２５ｂは、前記ケース２ａを構成する蓋体３８のうち、前記開口部の周囲に設けられた断面鉤形状の導出筒部２６に、軸方向に関する抜け止めが図られた状態で外嵌固定されると共に、前端部に設けられた連結部２５ａが、前記ケーブル６ａの先端寄り部分に外嵌固定されている。又、本実施の形態の場合には、この連結部２５ａの周囲に、金属製で円筒状の止め輪２７が外嵌固定されている。前記防塵ブーツ７ａは、前記ケース２ａに固定された状態で、前記ケーブル６ａのうち、このケース２ａから突出した部分を覆っている。

　更に、前記ケーブル６ａの先端部における前記防塵ブーツ７ａの先端部（連結部２５ａ）から突出した部分には、二股状の前記接続具８ａが結合固定されている。この接続具８ａは、金属材料に鍛造加工若しくはダイキャスト加工を施す事により、又は高機能樹脂を射出成型する事により、一体に造られたものであり、先半部が二股状とされ、基半部が円筒状の接続部２８とされている。即ち、前記接続具８ａの先半部は、互いに間隔を空けてほぼ平行に配置された１対の接続板部２９、２９を備え、これら両接続板部２９、２９の互いに整合する部分に、それぞれ取付孔３０、３０が形成されている。又、前記接続具８ａの基半部を構成する前記接続部２８の中心部には、基端面にのみ開口した有底孔３１が形成されている。この有底孔３１は、開口側の大径部３９と、奥部側の小径部４０とを備えた段付き孔であり、このうちの小径部４０の内径寸法は、前記ケーブル６ａの外径寸法よりも少しだけ大きく、前記大径部３９の内径寸法は、前記防水部材３２の外径寸法よりも少しだけ大きい。従って、これらケーブル６ａ及び防水部材３２の先端部は、前記有底孔３１の内側に緩く挿入可能である。

　特に本実施の形態の場合には、前記ケーブル６ａにおける少なくとも前記接続具８ａと前記防塵ブーツ７ａとの間に露出する部分が、水分の通過を防止（遮断）できると共に可撓性を有する材料製の防水部材３２により覆われている。この防水部材３２は、例えばナイロン樹脂や塩化ビニル樹脂等のコーティング膜、又はゴム（合成ゴムを含む）、プラスチック等の合成樹脂、若しくはポリオレフィン等の熱収縮材製の筒状体から構成されている。つまり、前記ケーブル６ａの外周面を覆う様に被膜形成されたコーティング膜が防水部材３２とされても良いし、予め筒状（円筒形又は矩形筒形等）に形成した防水部材３２が前記ケーブル６ａに外嵌固定されても良い｛熱収縮材製の防水部材３２が使用された場合には、この防水部材３２が外嵌された後、加熱されて収縮（縮径）される｝。何れにしても、本実施の形態の場合には、この様な構成を有する防水部材３２の軸方向長さが、前記接続具８ａと前記防塵ブーツ７ａとの間に露出する部分よりも長く確保される事により、その先端部が前記接続具８ａを構成する有底孔３１（大径部３９）の内側に配置されると共に、その基半部が前記防塵ブーツ７ａを構成する連結部２５ａの内径側に配置される様にしている。但し、前記ケーブル６ａの先端部には、前記防水部材３２により覆われない露出部である裸部３３が残される様に、この防水部材３２の軸方向長さが規制されている。

　本実施の形態の場合には、上述の様な前記ケーブル６ａの先端部に、前記接続具８ａが次の様に固定されている。即ち、この接続具８ａに形成された有底孔３１の内側に、前記ケーブル６ａの先端部における前記裸部３３及び前記防水部材３２により覆われた部分が挿入された状態で、前記接続具８ａにおける有底孔３１の周囲に存在する部分（接続部２８）が径方向内方に塑性変形される。より具体的には、前記有底孔３１における開口側の大径部３９には、前記ケーブル６ａの先端部における前記防水部材３２により覆われた部分が配置され、前記有底孔３１における奥部側の小径部４０には、前記ケーブル６ａの先端部における裸部３３が配置された状態で、前記接続部２８が径方向内方に塑性変形される。これにより、前記接続具８ａが前記ケーブル６ａの先端部にかしめ固定されている。又、前記ケーブル６ａの先端寄り部分には、前記防塵ブーツ７ａの先端部（連結部２５ａ）を固定する為に、この連結部２５ａの内径側に、前記ケーブル６ａにおける前記防水部材３２により覆われた部分が配置される。そして、この状態で、前記連結部２５ａの周囲に前記止め輪２７が配置され、この止め輪２７が径方向内方に塑性変形される（かしめ付けられる）。これにより、前記連結部２５ａが、前記ケーブル６ａにおける前記防水部材３２により覆われた部分に外嵌固定されている。

　前記アクチュエータユニット１ａにより駆動されて前記両ブレーキシュー１５、１５同士の間隔を拡げる為に、トグル式の拡張機構であるリンク機構３４が、前記アンカ１６に隣接する状態で設けられている。このリンク機構３４は、ドラムブレーキの駐車ブレーキ装置の技術分野で従来から一般的に実施されている構造であり、１対のリンク腕３５ａ、３５ｂが枢軸３６により揺動変位自在に結合されて成る。又、これら両リンク腕３５ａ、３５ｂの基端縁（互いに反対側の端縁）の中央部にそれぞれ形成した係止凹部には、前記両ブレーキシュー１５、１５を構成する前記各ウェブ１９、１９の周方向一端が突き当てられている。更に、前記両係止凹部に隣接する部分が、前記バッキングプレート１４の固定部分に設けられた、十分な強度及び剛性を有する部分に突き当てられて、前記両リンク腕３５ａ、３５ｂが、これら両突き当て部分を支点として揺動変位可能とされている。尚、これら両リンク腕３５ａ、３５ｂにおける一方のリンク腕３５ａは、他方のリンク腕３５ｂにより挟まれる状態で設けられている。この為にこの他方のリンク腕３５ｂは、素材となる金属板の中間部が１８０度折り返される事で構成されている。又、前記ケーブル６ａの先端部は、一方のリンク腕３５ａの先端部（図２～３の右端部）に、前記接続具８ａに形成した１対の取付孔３０、３０に掛け渡される状態で設けられる図示しない連結ピンを利用して結合されている。

　上述の様な構成を有する本実施の形態のドラム式電動駐車ブレーキ装置の場合、制動時には、前記電動モータ３ａに通電されると、前記ねじ筒１０ａの雌ねじと前記ロッド１１ａの雄ねじとの螺合に基づいて、このロッド１１ａが前記リンク機構３４から遠ざかる方向（図４～６の下方）に直線的に移動する。そして、このロッド１１ａにより前記ケーブル６ａが引っ張られ、前記リンク機構３４が伸長して、前記両ブレーキシュー１５、１５同士の間隔が拡げられると、これら両ブレーキシュー１５、１５のライニング２１、２１がドラムの内周面に押し付けられて、制動力が生じる。

　特に本例の構造の場合には、前記アクチュエータユニット１ａを構成するケース２ａ内に、前記ケーブル６ａを通じて水分が浸入するのを防止できる構造を、安価に実現できる。
　即ち、本実施の形態の場合には、前記ケーブル６ａにおける前記接続具８ａと前記防塵ブーツ７ａとの間に露出する部分が前記防水部材３２により覆われると共に、この接続具８ａが前記ケーブル６ａの先端部に、この防水部材３２により覆われた部分を含む状態でかしめ固定されている。この為、前記ケーブル６ａが、先端側から順に、前記接続具８ａと、前記防水部材３２と、前記防塵ブーツ７ａとにより、それぞれ覆われるので、外部に直接露出した部分がなくなる。又、前記接続具８ａと前記ケーブル６ａとの接続部分の密封性が確保される。従って、前記ケース２ａ内の温度が急激に低下した様な場合にも、前記ケーブル６ａを構成する線材１２ａ、１２ａ同士の隙間１３ａ、１３ａから水分が吸収される事を防止できると共に、前記接続部分から水分が吸収される事も有効に防止できる。しかも、前記防水部材３２により前記ケーブル６ａが覆われる構造は、このケーブル６ａに、例えばナイロン樹脂等のコーティング膜が形成されたり、ゴム若しくはプラスチック等の合成樹脂製の筒状体等が外嵌されたりする（熱収縮材製とした場合には外嵌後加熱する）事により構成できる為、安価に実現できる。この結果、本実施の形態の構造によれば、前記アクチュエータユニット１ａを構成するケース２ａ内に、前記ケーブル６ａを通じて水分が浸入するのを防止できる構造を、安価に実現することができる。更に、前記防水部材３２が、熱収縮材製とされた場合には、前記ケーブル６ａの周囲にこの防水部材３２を密着させる事ができる為、高い防水性能を発揮できると共に、前記ケーブル６ａに対する位置決めを図る事もできる。

　又、本実施の形態の場合には、前記接続具８ａ（接続部２８）が、前記ケーブル６ａにおける前記防水部材３２により覆われた部分だけでなく、この防水部材３２により覆われない裸部３３に対して直接かしめ付けられる。この為、前記ケーブル６ａに対する前記接続具８ａの結合強度が、十分に確保される。

　更に、本実施の形態の場合には、前記防塵ブーツ７ａの連結部２５ａの内径側に、前記ケーブル６ａにおける前記防水部材３２により覆われた部分が配置された（径方向に重畳された）状態で、前記連結部２５ａが前記ケーブル６ａに対して外嵌固定されている。この為、このケーブル６ａと前記防塵ブーツ７ａとの接続部分の密封性を高める事ができる。従って、前記ケース２ａ内への水分の浸入をより有効に防止できる。

　ここで、上述した本発明に係るドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットの実施の形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
　［１］　ケース（２ａ）と、
　前記ケース（２ａ）内に設置された動力源である電動モータ（３ａ）と、
　前記電動モータ（３ａ）の出力軸（９ａ）の回転運動を直線運動に変換する変換機構（送りねじ機構５ａ）と、
　前記変換機構（送りねじ機構５ａ）を構成する直動部材（ロッド１１ａ）の一部に基端部が接続されると共に、前記ケース（２ａ）から中間部乃至先端部が突出した複数本の線材（１２ａ）から成る撚り線であるケーブル（６ａ）と、
　前記ケース（２ａ）に基端部が固定され、前記ケーブル（６ａ）における前記ケース（２ａ）から突出した部分を覆う防塵ブーツ（７ａ）と、
　前記ケーブル（６ａ）の先端部における前記防塵ブーツ（７ａ）の先端部から突出した部分に固定される接続具（８ａ）とを備えた
　ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット（アクチュエータユニット１ａ）であって、
　前記ケーブル（６ａ）における少なくとも前記接続具（８ａ）と前記防塵ブーツ（７ａ）との間に露出する部分が、防水部材（３２）により覆われており、
　前記接続具（８ａ）に形成された有底孔（３１）の内側に、前記ケーブル（６ａ）の先端部が前記防水部材（３２）により覆われた部分を含む状態で挿入され、前記接続具（８ａ）における前記有底孔（３１）の周囲に存在する部分が径方向内方に塑性変形される事により、前記接続具（８ａ）が前記ケーブル（６ａ）の先端部にかしめ固定されている、ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット（アクチュエータユニット１ａ）。
　［２］　前記ケーブル（６ａ）の先端部における前記有底孔（３１）の奥部に挿入される部分は、前記防水部材（３２）により覆われていない、上記［１］に記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット（アクチュエータユニット１ａ）。
　［３］　前記有底孔（３１）が、開口側の大径部（３９）と、奥部側の小径部（４０）とを備えた段付き孔であり、このうちの大径部（３９）には、前記ケーブル（６ａ）の先端部における前記防水部材（３２）により覆われた部分が配置され、前記小径部（４０）には、前記ケーブル（６ａ）の先端部における前記防水部材（３２）により覆われていない部分が配置されている、上記［２］に記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット（アクチュエータユニット１ａ）。
　［４］　前記ケーブル（６ａ）における前記防塵ブーツ（７ａ）の先端部が固定された部分が、前記防水部材（３２）により覆われている、上記［１］～［３］のうちの何れか１つに記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット（アクチュエータユニット１ａ）。
　［５］　前記防塵ブーツ（７ａ）の先端部の周囲には、止め輪（２７）がかしめ固定されている、上記［１］～［４］のうちの何れか１つに記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット（アクチュエータユニット１ａ）。
　［６］　前記防水部材（３２）が、熱収縮材製である、上記［１］～［５］のうちの何れか１つに記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット（アクチュエータユニット１ａ）。

　なお、本発明のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットは、上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施の形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
　また、本出願は、２０１３年１２月６日出願の日本特許出願（特願２０１３－２５３０２１）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

　本発明のドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットは、上述の様なドラムインディスクブレーキに限らず、サービスブレーキ及び駐車ブレーキの両方がドラムブレーキで行われる構造でも実施できる。又、ドラムブレーキの構造に関しても、上述の様なデュオサーボ型に限らず、リーディングトレーリング型等、他の構造を採用する事もできる。

　　１、１ａ　アクチュエータユニット
　　２、２ａ　ケース
　　３、３ａ　電動モータ
　　４、４ａ　歯車式減速機
　　５、５ａ　送りねじ機構（変換機構）
　　６、６ａ　ケーブル（撚り線）
　　７、７ａ　防塵ブーツ
　　８、８ａ　接続具
　　９、９ａ　出力軸
　１０、１０ａ　ねじ筒
　１１、１１ａ　ロッド（直動部材）
　１２、１２ａ　線材
　１３、１３ａ　隙間
　１４　バッキングプレート
　１５　　ブレーキシュー
　１６　　アンカ
　１７　　切り欠き部
　１８　　フレーム部
　１９　　ウェブ
　２０　　裏板
　２１　　ライニング
　２２　　フローティングアンカ
　２３ａ、２３ｂ　リターンスプリング
　２４　　本体部
　２５ａ、２５ｂ　　連結部
　２６　　導出筒部
　２７　　止め輪
　２８　　接続部
　２９　　接続板部
　３０　　取付孔
　３１　　有底孔
　３２　　防水部材
　３３　　裸部
　３４　　リンク機構
　３５ａ、３５ｂ　リンク腕
　３６　　枢軸
　３７　　ケース本体
　３８　　蓋体
　３９　　大径部
　４０　　小径部

Claims

　ケースと、
　前記ケース内に設置された動力源である電動モータと、
　前記電動モータの出力軸の回転運動を直線運動に変換する変換機構と、
　前記変換機構を構成する直動部材の一部に基端部が接続されると共に、前記ケースから中間部乃至先端部が突出した複数本の線材から成る撚り線であるケーブルと、
　前記ケースに基端部が固定され、前記ケーブルにおける前記ケースから突出した部分を覆う防塵ブーツと、
　前記ケーブルの先端部における前記防塵ブーツの先端部から突出した部分に固定される接続具とを備えた
　ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニットであって、
　前記ケーブルにおける少なくとも前記接続具と前記防塵ブーツとの間に露出する部分が、防水部材により覆われており、
　前記接続具に形成された有底孔の内側に、前記ケーブルの先端部が前記防水部材により覆われた部分を含む状態で挿入され、前記接続具における前記有底孔の周囲に存在する部分が径方向内方に塑性変形される事により、前記接続具が前記ケーブルの先端部にかしめ固定されている、ドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット。
　前記ケーブルの先端部における前記有底孔の奥部に挿入される部分は、前記防水部材により覆われていない、請求項１に記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット。
　前記有底孔が、開口側の大径部と、奥部側の小径部とを備えた段付き孔であり、このうちの大径部には、前記ケーブルの先端部における前記防水部材により覆われた部分が配置され、前記小径部には、前記ケーブルの先端部における前記防水部材により覆われていない部分が配置されている、請求項２に記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット。
　前記ケーブルにおける前記防塵ブーツの先端部が固定された部分が、前記防水部材により覆われている、請求項１～３のうちの何れか１項に記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット。
　前記防塵ブーツの先端部の周囲には、止め輪がかしめ固定されている、請求項１～４のうちの何れか１項に記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット。
　前記防水部材が、熱収縮材製である、請求項１～５のうちの何れか１項に記載したドラム式電動駐車ブレーキ装置用アクチュエータユニット。