WO2014064753A1

WO2014064753A1 - スライドファスナー用スライダー

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Publication number: WO2014064753A1
Application number: PCT/JP2012/077261
Authority: WO
Inventors: 陽平宮崎; 嘉一濱田; 槻　慶一
Original assignee: Ykk株式会社
Priority date: 2012-10-22
Filing date: 2012-10-22
Publication date: 2014-05-01
Also published as: CN104754979B; CN104754979A; TW201416019A; TWI516219B

Abstract

　本発明に係るスライダー(1,2,3)の上翼板(11,51,61)は、起立状態の引手(20,70)を接触させて支持する引手接触領域(11m,61m)と、起立状態の引手(20,70)を接触させない非接触領域が、引手接触領域(11m,61m)より後口側に配されている。この非接触領域は、引手接触領域(11m,61m)よりもスライダー高さ方向の位置を低くして形成されている。これにより、停止爪体(30,80)の付勢力による引手(20,70)の倒伏を促し、停止機構を自動的に安定して作動させることができる。

Description

スライドファスナー用スライダー

　本発明は、スライドファスナー用スライダーに関し、特に、スライダーの摺動操作を行わないときに、引手をスライダー胴体の後口側に自動的に倒して、引手の倒伏状態を保持することが可能なスライドファスナー用スライダーに関する。

　従来、スライドファスナーは、衣類やカバン類などの物品の開口部に取り付けられ、当該スライドファスナーに取り付けられたスライダーをエレメント列に沿って摺動させることにより、左右のエレメント列を噛合又は分離させて開口部を開閉することができる。スライドファスナー用のスライダーは、一般に、スライダー胴体と、スライダー胴体に対して回動可能に保持された引手とを有しており、スライダー胴体の上下翼板間には、左右のエレメント列が案内される略Ｙ字状のエレメント案内路が形成されている。

　このようなスライドファスナー用スライダーの中には、スライドファスナーのエレメント列上の任意の位置にてスライダーを停止させたときに、スライダー胴体のエレメント案内路内に停止爪部を突出させ、その停止爪部をエレメント列のファスナーエレメントと係合させることにより、スライダーをエレメント列の停止位置で保持することが可能な停止機構を備えたものが知られている。

　また、停止機構を備えたスライダーの中には、エレメント列に対してスライダーを停止させたときに、引手をスライダー胴体に対して後口側又は肩口側に自動的に倒伏させ、その倒伏状態を保持することが可能なスライダーが知られている。このようなスライダーの例が、特開平３－２９５５０２号公報（特許文献１）や国際公開第２０１２／０４２６２０号パンフレット（特許文献２）などに開示されている。

　例えば、特許文献１に記載されているスライダーは、スライダー胴体と、スライダー胴体に軸部を介して回動自在に軸支される引手と、一端部に爪部を有する停止爪体と、停止爪体と一体に又は別体に設けられ、停止爪体を付勢する第１バネ部材と、引手を倒伏状態に付勢する第２バネ部材（ヒンジバネ）とを有している。

　特許文献１のスライダー胴体は、上下翼板と、上下翼板の前端部間を連結する案内柱とを有しており、上下翼板間には、略Ｙ字状のエレメント案内路が形成されている。上翼板には、引手を取り付けるための引手取付部が形成されている。引手は、引手の挿通孔に軸部を挿通させるとともに、その軸部を上翼板の引手取付部に取り付けることにより、スライダー胴体に取着されている。また、引手の一端部には、停止爪体に当接するカム部が配されている。

　停止爪体は、スライダー胴体に、爪部がエレメント案内路に進入した係止位置と、爪部がエレメント案内路から退出した非係止位置との間を揺動可能に配されている。この停止爪体は、第１バネ部材から、係止位置に向けて付勢する付勢力を受け、また、この停止爪体が受ける付勢力によって、引手もカム部を介して倒伏状態へ向けて付勢される。一方、引手が操作されたときには、停止爪体は、当該引手のカム部により第１バネ部材の付勢力に抗して非係止位置に押圧され、それによって、爪部をエレメント案内路から退出させることが可能となる。

　更に、特許文献１のスライダーでは、第１バネ部材とは別部材となる第２バネ部材が、引手を倒伏状態へ向けて付勢するように、スライダー胴体及び／又は引手に配されている。このような特許文献１のスライダーは、例えばエレメント列に対して停止したときに停止爪体の爪部がファスナーエレメントに干渉してエレメント案内路に十分に進入できない場合、停止爪体が第１バネ部材から受ける付勢力を引手に作用させることはできないものの、第２バネ部材によって引手を付勢して倒伏状態で保持することができる。これにより、引手の非操作時に引手が自由に振れ動くことを防止できるため、引手が他の物品に引っ掛かり難くすることが可能となり、また、引手のぶらつきで製品の見栄えが悪くなることも防げる。

　しかし、特許文献１のスライダーは、構造が複雑であり、また、第２バネ部材（ヒンジバネ）を設置可能とするためスライダーが大型化して重量が大きいため、小型化や軽量化を図ることが難しかった。また、スライダーの組立作業が複雑であるため、作業効率や製造コストの点からも改善する余地があった。

　一方、特許文献２に記載されているスライダーは、上述のような特許文献１のスライダーの課題を解消することを目的として、スライダー構造が簡素化するように改良されたものである。ここで、特許文献２のスライダーについて、図１８及び図１９を参照しながら具体的に説明する。

　特許文献２のスライダー１００は、スライダー胴体１１０と、スライダー胴体１１０に回動可能に配される引手１２０と、停止爪部１３１を備えたバネ部材１３０と、スライダー胴体１１０に固定されるカバー体１４０とを有する。

　スライダー胴体１１０は、上下翼板１１１，１１２と、上下翼板１１１，１１２の前端部間を連結する案内柱１１３とを有している。このスライダー胴体１１０の前端には、案内柱１１３を間に挟んで左右の肩口が配され、スライダー胴体１１０の後端には後口が配されている。上下翼板１１１，１１２間には、左右の肩口と後口とを連通する略Ｙ字状のエレメント案内路が形成されている。

　上翼板１１１の上面における前端部と後端部とには、カバー体１４０を取り付けるための前取付柱１１１ａと後取付柱１１１ｂとが立設されている。前取付柱１１１ａと後取付柱１１１ｂの間には、引手１２０の一端に配された取付軸部１２１が挿入される挿入部１１１ｃが設けられている。この挿入部１１１ｃに引手１２０の取付軸部１２１が挿入された状態でカバー体１４０が前取付柱１１１ａ及び後取付柱１１１ｂに固定されることにより、引手１２０の取付軸部１２１が上翼板１１１とカバー体１４０との間に保持される。

　また、上翼板１１１における前取付柱１１１ａと後取付柱１１１ｂの間には、一対の縦壁部１１１ｄと縦壁部１１１ｄ間を連結する連結壁部１１１ｅとが配されている。後取付柱１１１ｂ、一対の縦壁部１１１ｄ、及び連結壁部１１１ｅに囲まれた部分には、バネ部材１３０の停止爪部１３１を挿通可能な爪孔１１１ｆが形成されている。スライダー胴体１１０の前端部には、カバー体１４０の前壁部１４３の先端部分が挿入される挿入段部１１１ｇが形成されている（図１９を参照）。

　引手１２０は、平板状の摘み部１２２と、摘み部１２２から延設された左右一対の脚部１２３と、一対の脚部１２３の先端部間に横架された取付軸部１２１とを有し、摘み部１２２、一対の脚部１２３、及び取付軸部１２１に囲まれて略矩形状の引手開口部１２４が形成されている。

　取付軸部１２１におけるスライダー幅方向の略中央部には、引手開口部１２４に向けて突出する形態を有するカム部１２５が配されている。また、脚部１２３と取付軸部１２１との連結部分には、引手開口部１２４に向けて延出し、カバー体１４０に当接させる左右の当接部１２６が配されている。

　バネ部材１３０は、引手１２０のカム部１２５を跨ぐ本体部１３２と、本体部１３２の後端から垂設された停止爪部１３１と、本体部１３２の後方側の屈曲部から上方に分岐して延設された弾性片部１３３とを有している。

　カバー体１４０は、略長方形状の天井部１４１と、天井部１４１の側縁部から垂設された左右の側壁部１４２と、天井部１４１の前後端部から垂設された前壁部１４３及び後壁部１４４とを有している。天井部１４１の裏面（内面）には、バネ部材１３０の弾性片部１３３を収容する収容溝部１４５が形成されている。

　このカバー体１４０の左右の側壁部１４２には、下端縁から天井部１４１に向けて開口したカバー開口部１４６が形成されており、このカバー開口部１４６内に引手１２０の取付軸部１２１が収容される。この場合、左右の側壁部１４２におけるカバー開口部１４６に向いた周面のうちの前方側に配された前面部分が、引手１２０の当接部１２６を当接させて引手１２０の回動範囲を規制する規制部１４７として構成されている。

　上述のような部材を有する特許文献２のスライダー１００を組み立てる場合、スライダー胴体１１０の上翼板１１１の上面に、引手１２０の取付軸部１２１が前後取付柱１１１ａ，１１１ｂ間に挿入されるようにして引手１２０を載置する。更に、引手１２０を載置した上翼板１１１にバネ部材１３０を配置する。このとき、バネ部材１３０は、その本体部１３２が引手１２０のカム部１２５を跨ぐとともにカム部１２５に接するように配置される。

　次に、スライダー胴体１１０にカバー体１４０を装着する。このとき、カバー体１４０はバネ部材１３０を覆うようにして上翼板１１１の所定位置に被せた後、カバー体１４０の左右の側壁部１４２の一部を、スライダー幅方向の内側に向けて押圧して塑性変形させることにより、カバー体１４０がスライダー胴体１１０の前後取付柱１１１ａ，１１１ｂに固定される。

　また、このようにカバー体１４０がスライダー胴体１１０に固定されることにより、引手１２０は、スライダー胴体１１０に対して、取付軸部１２１を中心として、スライダー胴体１１０の後口側に倒伏した状態から、カバー体１４０の規制部１４７に当接して起立した状態までの範囲で回動自在に取り付けられる。

　このような特許文献２のスライダー１００であれば、例えば特許文献１のスライダーに比べてスライダー構造が簡略化するとともに、スライダー１００の組立作業を比較的容易に行うことができる。また、バネ部材１３０の付勢力を引手１２０のカム部１２５に作用させることができ、それによって、例えば引手１２０がスライダー胴体１１０の後口側に倒伏した状態ではバネ部材１３０の停止爪部１３１がエレメント案内路に進入してファスナーエレメントに係合し、スライダー１００をエレメント列に対して停止した状態を保持することが可能となる。

　また、引手１２０を操作して倒伏状態から起立させるときには、引手１２０のカム部１２５が、バネ部材１３０の弾性片部１３３の付勢力に抗してバネ部材１３０を上方に持ち上げるため、バネ部材１３０の停止爪部１３１がエレメント案内路から退出する。従って、スライダー１００をエレメント列に沿って円滑に摺動させることが可能となる。

　更に、特許文献２のスライダー１００では、引手１２０の回動範囲がカバー体１４０の規制部１４７によって所定の範囲に規制されていることにより、例えば図１９に示したように、引手１２０が、ある角度からスライダー胴体１１０の肩口側に倒伏することを防ぐことができる。またこの場合、引手１２０のカム部１２５にバネ部材１３０を当接させて付勢することができるため、引手１２０に対して後口側に倒伏するように付勢力を与えることができる。

　従って、例えばスライドファスナーの使用者が、スライダー１００の摺動操作後に引手１２０の摘み部１２２から指を放したときには、バネ部材１３０の付勢力によって引手１２０を自動的に後口側へ回動させて倒伏させることが可能となり、それによって、バネ部材１３０の停止爪部１３１がエレメント案内路に進入して停止機構を自動的に作動させることが可能となる。

特開平３－２９５５０２号公報国際公開第２０１２／０４２６２０号パンフレット

　前述のような特許文献２のスライダー１００を大量生産する場合、極めて小さい割合ではあるが、生産したスライダー１００のうちの幾つかに、スライダー１００の引手１２０から指を放しても引手１２０が後口側に倒伏せずに引手１２０の起立状態が保持されてしまい、バネ部材１３０の停止爪部１３１による停止機構が自動的に作動しないものがあった。

　このように引手１２０から指を放しても引手１２０が後口側に自動的に倒伏しない原因としては、スライダー１００を大量生産する場合、各スライダー１００の構成部品にそれぞれ加工精度による寸法誤差が生じることは避けられないため、例えば引手１２０やバネ部材１３０などの部品における形状や大きさに僅かなバラツキが生じることが考えられた。

　すなわち、特許文献２のスライダー１００では、図１９に示したように、バネ部材１３０と引手１２０のカム部１２５との接触点が、カム部１２５のカム面の範囲から外れることがないようにするため、カバー体１４０の規制部１４７で引手１２０の回動範囲を制限し、それによって、引手１２０のカム部１２５がバネ部材１３０による付勢力を受けられるようにしている。このため、使用者が引手１２０から指を放したときには、前述のように、バネ部材１３０の付勢力で引手１２０を後口側に倒伏させて、バネ部材１３０の停止爪部１３１による停止機構を自動的に作動させる。

　しかし、スライダー１００の大量生産によって引手１２０やバネ部材１３０などに寸法誤差が生じると、生産されたスライダー１００の中には、引手１２０をカバー体１４０の規制部１４７に当接させて起立させたときに、バネ部材１３０がカム部１２５と接触して付勢する接触点（力点）と、上翼板１１１が引手１２０と接触して支持する接触点（支点）との間に働く力の関係や、各部品間の摩擦の関係などから、指をスライダー１００の引手１２０から放しても引手１２０が後口側に倒伏せずに起立状態が保持されることがあった。その結果、バネ部材１３０の停止爪部１３１による停止機構の作動が妨げられてしまい、非操作時にスライダー１００の自由な摺動を許すことがあった。

　本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、引手から指を放したときに引手を安定させて倒伏させることができ、それによって、停止機構を自動的に作動させることが可能なスライドファスナー用スライダーを提供することにある。

　上記目的を達成するために、本発明により提供されるスライドファスナー用スライダーは、基本的な構成として、下翼板と爪孔を備えた上翼板とが案内柱にて連結され、前記上下翼板間に略Ｙ字状のエレメント案内路が配され、前記エレメント案内路の一端側に開口する後口と他端側に開口する左右の肩口とを備えたスライダー胴体と、取付軸部を一端部に備えた引手と、前記爪孔を介して前記エレメント案内路に進入可能な停止爪部を備えるとともに弾性を有する停止爪体と、前記上翼板に固定されるカバー体とを有し、前記停止爪体は、前記引手の前記取付軸部を跨いで前記スライダー胴体に取着され、前記カバー体又は前記スライダー胴体は、前記引手の一部を当接させて当該引手の回動範囲を規制する規制部を有し、前記引手は、前記スライダー胴体の前記後口側に倒れた倒伏状態と、前記規制部に当接して起立した起立状態との間で回動可能に配され、前記引手の前記取付軸部は、前記引手の操作により前記停止爪体を揺動させて前記停止爪部を前記エレメント案内路に対して進退させるカム部を有し、前記カム部は、前記停止爪体から前記引手を倒伏させる方向の付勢力を受ける停止装置付スライドファスナー用スライダーであって、前記上翼板の上面に、前記起立状態にある前記引手を接触させて支持する引手接触領域が配されるとともに、前記起立状態にある前記引手を接触させない非接触領域が、前記引手接触領域より前記後口側に配され、前記非接触領域は、前記引手接触領域よりもスライダー高さ方向の位置を低くして形成されてなることを最も主要な特徴とするものである。

　本発明に係るスライドファスナー用スライダーにおいて、前記引手接触領域及び前記非接触領域は、互いに隣接して配されていることが好ましい。

　また、スライダー摺動方向において、前記起立状態にある前記引手と前記引手接触領域とが接触する第１接触点が、前記引手の回動中心位置より前記肩口側に配置され、且つ、前記カム部と前記停止爪体とが接触する第２接触点が、前記引手の回動中心位置より前記後口側に配置されていることが好ましい。

　この場合、前記スライダーを側面側から見たときに、前記第１接触点と前記第２接触点とを結ぶ直線が、前記肩口側に向けて下り傾斜していることが特に好ましい。

　本発明に係るスライドファスナー用スライダーにおいて、前記上翼板は、当該上翼板の主上面に対して凹設された凹溝部をスライダー幅方向に沿って有し、前記引手接触領域は、前記上翼板の前記主上面の一部により構成され、前記非接触領域は、前記凹溝部により構成されていることが好ましい。

　また本発明において、前記上翼板は、当該上翼板の主上面に対して隆起した隆起部をスライダー幅方向に沿って有し、前記隆起部は、スライダー高さ方向の位置が最も高い頂部と、前記頂部から前記後口側に向けてスライダー高さ方向の位置を漸次低くする傾斜面部又は湾曲面部とを有し、前記引手接触領域は、前記隆起部の前記頂部、又は前記傾斜面部若しくは湾曲面部により構成されていても良い。

　更に本発明において、前記上翼板は、前記肩口側に配された第１主上面と、前記後口側に配され、前記第１主上面よりもスライダー高さ方向の位置を低くした第２主上面と、前記第１主上面から前記第２主上面に下降する段差面とを有し、前記引手接触領域は、前記第１主上面、又は前記段差面により構成されていても良い。

　また、本発明により提供されるスライドファスナー用スライダーは、基本的な構成として、下翼板と爪孔を備えた上翼板とが案内柱にて連結され、前記上下翼板間に略Ｙ字状のエレメント案内路が配され、前記エレメント案内路の一端側に開口する後口と他端側に開口する左右の肩口とを備えたスライダー胴体と、取付軸部を一端部に備えた引手と、前記爪孔を介して前記エレメント案内路に進入可能な停止爪部を備えるとともに弾性を有する停止爪体と、前記上翼板に固定されるカバー体とを有し、前記停止爪体は、前記引手の前記取付軸部を跨いで前記スライダー胴体に取着され、前記カバー体又は前記スライダー胴体は、前記引手の一部を当接させて当該引手の回動範囲を規制する規制部を有し、前記引手は、前記スライダー胴体の前記後口側に倒れた倒伏状態と、前記規制部に当接して起立した起立状態との間で回動可能に配され、前記引手の前記取付軸部は、前記引手の操作により前記停止爪体を揺動させて前記停止爪部を前記エレメント案内路に対して進退させるカム部を有し、前記カム部は、前記停止爪体から前記引手を倒伏させる方向の付勢力を受ける停止装置付スライドファスナー用スライダーであって、スライダー摺動方向において、前記起立状態にある前記引手と前記上翼板の上面とが接触する第１接触点が、前記引手の回動中心位置より前記肩口側に配置され、且つ、前記カム部と前記停止爪体とが接触する第２接触点が、前記引手の回動中心位置より前記後口側に配置されてなることを最も主要な特徴とするものである。

　この場合、前記スライダーを側面側から見たときに、前記第１接触点と前記第２接触点とを結ぶ直線が、前記肩口側に向けて下り傾斜し、前記上翼板と前記起立状態にある前記引手とは、前記第１接触点より前記後口側の領域において互いに離間し、前記引手を前記起立状態から倒伏させる間に、前記スライダー胴体における前記引手を支持する支持点の位置が前記後口側に移動してなることが好ましい。

　また、本発明に係るスライドファスナー用スライダーにおいて、前記上翼板に、前記引手の前記取付軸部を回動可能に保持する左右一対の引手保持部が立設され、各引手保持部は、一対の前後柱部と、前記前後柱部間に配され、前記引手の前記取付軸部を載置する載置部とを有し、前記引手の前記取付軸部は、前記倒伏状態のときに前記載置部に接し、前記起立状態のときに前記載置部から離間していることが好ましい。

　この場合、前記載置部は、スライダー高さ方向の位置が最も低い底部を有し、前記底部は、前記前後柱部間の中間位置よりも前記後口側に配され、前記載置部におけるスライダー高さ方向の位置が、前記底部から前記肩口側に向けて漸次高くされていることが特に好ましい。

　更に、本発明により提供されるスライドファスナー用スライダーは、基本的な構成として、下翼板と爪孔を備えた上翼板とが案内柱にて連結され、前記上下翼板間に略Ｙ字状のエレメント案内路が配され、前記エレメント案内路の一端側に開口する後口と他端側に開口する左右の肩口とを備えたスライダー胴体と、取付軸部を一端部に備えた引手と、前記爪孔を介して前記エレメント案内路に進入可能な停止爪部を備えるとともに弾性を有する停止爪体と、前記上翼板に固定されるカバー体とを有し、前記上翼板に、前記引手の前記取付軸部を回動可能に保持する左右一対の引手保持部が立設され、前記停止爪体は、前記引手の前記取付軸部を跨いで前記スライダー胴体に取着され、前記カバー体又は前記スライダー胴体は、前記引手の一部を当接させて当該引手の回動範囲を規制する規制部を有し、前記引手は、前記スライダー胴体の前記後口側に倒れた倒伏状態と、前記規制部に当接して起立した起立状態との間で回動可能に配され、前記引手の前記取付軸部は、前記引手の操作により前記停止爪体を揺動させて前記停止爪部を前記エレメント案内路に対して進退させるカム部を有し、前記カム部は、前記停止爪体から前記引手を倒伏させる方向の付勢力を受ける停止装置付スライドファスナー用スライダーであって、前記上翼板の上面は、前記左右一対の引手保持部よりスライダー幅方向の外側に、前記肩口側の前記上面におけるスライダー高さ方向の位置を前記後口側より高くする高低差を有してなることを最も主要な特徴とするものである。

　本発明のスライダーでは、前述のように、スライダー胴体の上翼板上面に、起立状態にある引手を接触させて支持する引手接触領域と、起立状態にある引手を接触させずに、停止爪体からの付勢力による引手の倒伏を促す非接触領域（倒伏促進部）とが配されており、非接触領域は、引手接触領域よりも後口側の範囲に、引手接触領域よりもスライダー高さ方向の位置を低くして形成されている。特に本発明では、引手接触領域と非接触領域とは、スライダー幅方向に沿って、互いに隣接して配されている。

　このようにスライダーが構成されていることにより、引手をカバー体又はスライダー胴体の規制部に当接させて起立させたときに、引手の一部を上翼板の上面に当接させて引手接触領域で支持すると同時に、引手接触領域の後口側にある非接触領域において、引手を上翼板の上面から離間させて浮かせることができる。

　このため、起立状態にある引手が自由になったときに（例えば使用者がスライダーの引手から指を放したときに）、当該引手のカム部が停止爪体から付勢力を受けることによって、上翼板上面の非接触領域に引手の一部が落ち込む（入り込む）ようにして引手を倒す方向に積極的に回動させることが可能となる。

　従って、本発明のスライダーによれば、スライダーの大量生産によって引手や停止爪体などの構成部品に多少の寸法誤差が生じても、スライダーの引手から指を放した際に引手の起立状態が保持される状況が生じることはなく、引手のカム部に作用する停止爪体の付勢力によって、起立状態にある引手を安定して倒伏させることができる。これにより、引手のカム部により持ち上げられて弾性変形していた停止爪体が、弾性復帰することにより停止爪部をスライダー胴体のエレメント案内路に進入させることができるため、スライダーの停止機構を自動的に安定して作動させることが可能となる。

　しかも、このような本発明のスライダーでは、スライダー摺動方向において、起立状態にある引手と上翼板の引手接触領域とが接触する第１接触点が、引手の回動中心位置より肩口側に配置されると同時に、起立状態にある引手のカム部と停止爪体とが接触する第２接触点が、引手の回動中心位置より後口側に配置されている。更にこの場合、第１及び第２接触点は、スライダーを側面側から見たときに、第１接触点と第２接触点とを結ぶ直線が肩口側に向けて下り傾斜する関係を有している。

　引手が起立状態のときに、当該引手における第１接触点と第２接触点とが上述のような所定の関係を有していることにより、起立状態にある引手が自由になったときに、当該引手のカム部が停止爪体から付勢力を受けて、引手をより積極的に後口側に倒伏させることが可能となる。

　このような本発明のスライダーにおいて、上翼板は、当該上翼板の主上面に対して凹設された凹溝部をスライダー幅方向に沿って有している。この場合、前記引手接触領域は、上翼板の主上面の一部により構成され、前記非接触領域は、凹溝部により構成されている。このように上翼板に凹溝部が配されていることによって、本発明の引手接触領域及び非接触領域が、上翼板の上面に簡単な構造で容易に形成されるとともに、当該非接触領域によって、起立状態にある引手の倒伏を積極的に促すことができる。

　また本発明のスライダーでは、上翼板が、当該上翼板の主上面に対して隆起した隆起部をスライダー幅方向に沿って有しており、その隆起部が、頂部と、その頂部から後口側に下降する傾斜面部又は湾曲面部とを有していても良い。この場合、前記引手接触領域は、前記隆起部の頂部、又は傾斜面部若しくは湾曲面部により構成されている。更にこの場合、前記非接触領域は、その引手接触領域よりも後口側に配された傾斜面部又は湾曲面部により構成されている。このように上翼板に隆起部が配されていることによっても、本発明の引手接触領域及び非接触領域が、上翼板の上面に簡単な構造で容易に形成されるとともに、当該非接触領域によって、起立状態にある引手の倒伏を積極的に促すことができる。

　更に本発明のスライダーでは、上翼板が、肩口側に配された第１主上面と、後口側に配され、第１主上面よりもスライダー高さ方向の位置を低くした第２主上面と、第１主上面から第２主上面に向けて下降する段差面とを有していても良い。この場合、前記引手接触領域は、上翼板の第１主上面又は段差面により構成されている。更にこの場合、前記非接触領域は、その引手接触領域よりも後口側に配された段差面により構成されている。これによっても、本発明の引手接触領域及び非接触領域が、上翼板の上面に簡単な構造で容易に形成されるとともに、当該非接触領域によって、起立状態にある引手の倒伏を積極的に促すことができる。

　一方、本発明のスライダーは、スライダー摺動方向において、起立状態にある引手と上翼板の引手接触領域とが接触する第１接触点が、引手の回動中心位置より肩口側に配置されると同時に、起立状態にある引手のカム部と停止爪体とが接触する第２接触点が、引手の回動中心位置より後口側に配置されていることを特徴としている。

　このような本発明のスライダーによれば、スライダー摺動方向における第１接触点の位置と第２接触点の位置とが引手の回動中心位置を挟んで配されているため、起立状態にある引手が自由になったときに（例えば使用者がスライダーの引手から指を放したときに）、当該引手のカム部が停止爪体から付勢力を受けて、当該引手を後口側に向けて倒すように積極的に回動させることが可能となる。

　従って、本発明のスライダーによれば、スライダーの大量生産によって引手や停止爪体などの構成部品に多少の寸法誤差が生じても、スライダーの起立状態にある引手から指を放したときに、その引手を安定して倒伏させることができ、それによって、スライダーの停止機構を自動的に安定して作動させることが可能となる。

　この場合、本発明のスライダーは、当該スライダーを側面側から見たときに、第１接触点と第２接触点とを結ぶ直線が肩口側に向けて下り傾斜しているとともに、上翼板と起立状態にある引手とは、第１接触点より後口側の領域において互いに離間している。更に、本発明のスライダーは、引手を起立状態から倒伏させる間に、スライダー胴体における引手を支持する支持点の位置が後口側に移動する構造を有している。

　このような構成を有することにより、起立状態にある引手が自由になったときに、当該引手のカム部が停止爪体から付勢力を受けて、第１接触点よりも倒伏方向側の領域に引手の一部が落ち込む（入り込む）ように引手をより積極的に回動させ、引手を後口側に安定して倒すことが可能となる。

　また、本発明のスライダーにおいて、引手の取付軸部を回動可能に保持する左右一対の引手保持部が上翼板に立設されており、各引手保持部は、一対の前後柱部と、前後柱部間に配され、引手の取付軸部を載置する載置部とを有している。また、この引手保持部に対して、引手の取付軸部は、倒伏状態のときには載置部に接し、起立状態のときには載置部から離間するように配されている。このようにスライダーが構成されていることにより、起立状態にある引手を停止爪体の付勢力によって倒す際に、当該引手をより倒し易くすることができる。

　この場合、引手保持部の載置部は、スライダー高さ方向の位置が最も低い底部を有している。また、その底部は、前後柱部間の中間位置よりも倒伏方向側にずれて配されており、且つ、載置部におけるスライダー高さ方向の位置が、底部から非倒伏方向の側に向けて漸次高くされている。

　これにより、引手を倒伏状態から起立状態まで回動させる際に、引手の取付軸部を引手保持部における載置部の内面に沿って移動させながら、引手の一部を上翼板の一部（引手接触領域）に当接させて支持することができる。このため、使用者が引手を起立させるように回動操作する際に、スライダー胴体で引手を支持する支持点の位置が肩口側に移動しても、引手の操作に違和感を与えることなく引手を円滑に起立させることができる。

　また、使用者が引手を起立状態まで回動操作する途中で指を引手から放したときでも、載置部におけるスライダー高さ方向の位置が底部から非倒伏方向の側に向けて漸次高くされているため、引手のカム部が停止爪体から付勢力を受けることによって、引手の取付軸部を載置部の底部に向けて円滑に移動させることができる。このため、引手の取付軸部が引手保持部の載置部に引っ掛かることなく、引手を安定して倒伏させることができる。

　本発明のスライダーは、上翼板の上面が、左右一対の引手保持部よりスライダー幅方向の外側に、肩口側の上面におけるスライダー高さ方向の位置を後口側より高くする高低差を有していることを特徴としている。

　このような本発明のスライダーによれば、起立状態にある引手が自由になったときに、当該引手のカム部が停止爪体から付勢力を受けるとともに、上翼板の上面に設けられた高低差を上手く利用することによって、引手を後口側に向けて倒すように積極的に回動させることが可能となる。

本発明の実施例１に係るスライダーを示す斜視図である。同スライダーが分解した状態を示す分解斜視図である。カバー体の一部を透視して示すスライダーの平面図である。（ａ），（ｂ），及び（ｃ）は、それぞれ図３に示したＩＶ（ａ）－ＩＶ（ａ）線，ＩＶ（ｂ）－ＩＶ（ｂ）線，及びＩＶ（ｃ）－ＩＶ（ｃ）線における断面図である。（ａ），（ｂ），及び（ｃ）は、引手を起立状態まで起立させる途中のスライダーの断面図である。（ａ），（ｂ），及び（ｃ）は、引手が起立状態にあるスライダーの断面図である。本発明の実施例２に係るスライダーのスライダー胴体を示す斜視図である。カバー体の一部を透視して示すスライダーの平面図である。（ａ）及び（ｂ）は、それぞれ図８に示したＩＸ（ａ）－ＩＸ（ａ）線及びＩＸ（ｂ）－ＩＸ（ｂ）線における断面図である。（ａ）及び（ｂ）は、引手が起立状態にあるスライダーの断面図である。本発明の実施例３に係るスライダーが分解した状態を示す分解斜視図である。同スライダーの平面図である。図１２に示したＸＩＩＩ－ＸＩＩＩ線における断面図である。引手が起立状態にあるスライダーの断面図である。本発明の実施例４に係るスライダーが分解した状態を示す分解斜視図である。引手が起立状態にあるスライダーの幅方向中心部における要部断面図である。引手が起立状態にあるスライダーの引手の脚部の位置における要部断面図である。従来のスライダーが分解した状態を示す分解斜視図である。同スライダーの断面図である。

　以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。

　例えば、以下の実施例において、引手の回動を規制する規制部はカバー体に設けられているが、本発明では、引手の回動を規制する規制部をスライダー胴体の上翼板に設けることも可能である。

　図１は、本実施例１に係るスライダーを示す斜視図であり、図２は、同スライダーが分解した状態を示す分解斜視図である。図３は、カバー体の一部を透視して示すスライダーの平面図である。

　なお、以下の説明において、スライダーの前後方向とは、スライダーの摺動方向に平行な方向（スライダーの長さ方向）を指し、左右のエレメント列を噛合させるように摺動させる方向を前方（肩口側方向）とし、左右のエレメント列を分離させるように摺動させる方向を後方（後口側方向）とする。

　また、スライダーの上下方向とは、スライダーの高さ方向を指し、スライダー胴体に対して引手が取り付けられる側の方向を上方とし、その反対側の方向を下方とする。スライダーの左右方向とは、スライダーの摺動方向に直交する方向で、スライダーの幅方向を指すものとする。

　更に、同スライダーにおいて、上翼板の上面に対する引手の傾斜角度は、引手を後口側（後方側）に倒伏させたときの場合を０°と規定し、引手を後述するカバー体の規制部に当接させて起立させたときの場合を９０°と規定する。なお、本発明において、引手をカバー体の規制部に当接させて起立させたときの傾斜角度は、９０°に限定されるものではなく、任意に変更することができる。

　本実施例１に係るスライダー１は、スライドファスナーの構成部品の一つであり、左右のファスナーストリンガーに形成されたエレメント列に対してスライダー１を停止させたときに、その停止状態を保持することが可能な停止機構を備えている。

　本実施例１のスライダー１は、スライダー胴体１０と、取付軸部２３を一端部に備えた引手２０と、停止爪部３２を備えた停止爪体３０と、スライダー胴体１０に固定されるカバー体４０とを有している。
　この場合、スライダー胴体１０、引手２０、及びカバー体４０は、アルミニウム合金、亜鉛合金、銅合金などの金属材料をダイキャスト成形若しくはプレス成形することによって所定の形状に形成されている。

　停止爪体３０は、ステンレス鋼などの連続する長尺な金属製板材から所定形状の金属片を打ち抜き、その得られた金属片に曲げ加工を施すことによって形成されている。なお、本発明において、スライダー胴体１０、引手２０、停止爪体３０、及びカバー体４０を構成する材質、及びそれらを形成する方法や手段については特に限定されるものではない。

　スライダー胴体１０は、上翼板１１と、上翼板１１と離間して平行に配された下翼板１２と、上下翼板１１，１２の前端部（肩口側端部）間を連結する案内柱１３と、上翼板１１の左右側縁部から下翼板１２に向けて垂設された上フランジ部１４と、下翼板１２の左右側縁部に沿って突設された突条部１５とを有している。

　このスライダー胴体１０の前端部には、案内柱１３を間に挟んで左右の肩口が形成されており、また、肩口側とは反対側の端部、すなわちスライダー胴体１０の後端部には後口が形成されている。更に、上下翼板１１，１２間には、左右の肩口と後口とを連通するＹ字形状のエレメント案内路が形成され、後口と左右の肩口とはエレメント案内路の一端側と他端側とに開口する通路口となる。上翼板１１の上面側には、平坦に形成された主上面が、後述する凹溝部１１ｎを挟んで配されている。

　上翼板１１の上面側には、カバー体４０が固定される前方固定柱１１ａ及び後方固定柱１１ｂと、上翼板１１おけるスライダー長さ方向の略中央部に配され、引手２０の後述する取付軸部２３を回動可能に保持する左右一対の引手保持部１１ｃと、左右の引手保持部１１ｃ間に配され、停止爪体３０を収容して保持する収容溝１１ｄと、上翼板１１の前端部において収容溝１１ｄの両側に配された爪体保持部１１ｅとが設けられている。

　前方固定柱１１ａは、上翼板１１の前端部に収容溝１１ｄを挟んで左右に１つずつ立設されている。各前方固定柱１１ａの前面部には、カバー体４０を被せて固定する際に、塑性変形によってカバー体４０の窪んだ部分（内壁面側の突出部）を嵌入するための図示しない嵌入孔部がそれぞれ形成されている。

　後方固定柱１１ｂは、スライダー幅方向の中央部分に立設されている。この後方固定柱１１ｂにおける後面部の左右側縁部には、カバー体４０を加締め固定する際に、塑性変形によってカバー体４０の窪んだ部分（内壁面側の突出部）を嵌入するための嵌入孔部１１ｆが形成されている。また、左右の前方固定柱１１ａ及び後方固定柱１１ｂの位置は、カバー体４０がスライダー胴体１０に被せられたときに、カバー体４０の内壁面に当接してカバー体４０の前後方向及び左右方向の位置合わせが可能なように設定されている。

　左右の各引手保持部１１ｃは、上翼板１１の前後方向の略中央部にて互いに所定の間隔を設けて立設された一対の前柱部１１ｇ及び後柱部１１ｈと、前後柱部１１ｇ，１１ｈ間を連結し、引手２０の取付軸部２３を載置する載置部１１ｉとをそれぞれ有している。この引手保持部１１ｃでは、前柱部１１ｇと後柱部１１ｈとの間に引手２０の取付軸部２３を挿入し、その後、前後柱部１１ｇ，１１ｈの上端部同士を互いに近づける方向に押圧して塑性変形させることにより、引手２０の取付軸部２３が回動自在に保持される。

　また、上述のように前後柱部１１ｇ，１１ｈ間に引手２０の取付軸部２３を保持した状態において、当該引手保持部１１ｃの載置部１１ｉは、スライダー高さ方向の位置（高さ位置）が最も低くなる底部１１ｊを有する（図４（ｂ）を参照）。載置部１１ｉの底部１１ｊは、前後柱部１１ｇ，１１ｈ間の中間位置において、前方側（肩口側）よりも後方側（後口側）にずれた位置に配されている。この底部１１ｊよりも前方側（肩口側）の載置部１１ｉは、高さ位置が前方に向けて漸次高くなるように構成されている。

　収容溝１１ｄは、停止爪体３０が安定して収容されるために、停止爪体３０の後述する爪体本体部３１の幅寸法（スライダー幅方向の寸法）と同等の溝幅、又はその幅寸法よりも少し大きな溝幅を有している。また、図４（ａ）に示すように、収容溝１１ｄの後端部には、上翼板１１の上面側からエレメント案内路に向けて上下方向に貫通する爪孔１１ｋが形成されており、この爪孔１１ｋに、停止爪体３０の後述する停止爪部３２が挿通される。更に、爪孔１１ｋよりも前方側の収容溝１１ｄの底面は、停止爪体３０の形状に対応して、前方に向けてスライダー高さ方向の位置が段階的に低くなるように形成されている。

　本実施例１の上翼板１１の主上面には、引手２０を後口側に倒伏した状態からカバー体４０に当接するまで回動させて起立させたときに、引手２０の後述する左右一対の脚部２２の先端を当接させて引手２０を支持する部位となる引手接触領域１１ｍが、スライダー幅方向に沿って配されている。また、この上翼板１１には、上翼板１１の主上面よりもスライダー高さ方向の位置を低くした凹溝部１１ｎが凹設されている。

　この凹溝部１１ｎは、引手接触領域１１ｍの後口側に隣接して、スライダー幅方向に沿って配されており、引手２０を起立させたときに、その引手２０の倒伏を促す倒伏促進部として引手２０の先端を離間させる形状に構成されている。この倒伏促進部とは、すなわち、起立状態にある引手２０とは接触しない非接触領域であり、本実施例1においては凹溝部１１ｎが非接触領域に相当する。本実施例１において、引手接触領域１１ｍ及び凹溝部１１ｎは、引手２０の左右の脚部２２の先端の位置に対応するように、上翼板１１における左右の引手保持部１１ｃよりも外側の領域に配されている。

　引手２０は、摘み部２１と、摘み部２１から延設された左右一対の脚部２２と、左右の脚部２２の先端部間に横架された取付軸部２３とを有しており、摘み部２１、左右の脚部２２、及び取付軸部２３に囲まれて、略矩形状の引手開口部２４が形成されている。また、左右の脚部２２の先端部寄りの部分には、引手２０を後口側に倒伏させたときに上面側となる面に、引手２０を起立させたときにカバー体４０に当接させる当接部２５が山状（側面視にて略三角形状）に盛り上がるように形成されている（図４（ｃ）を参照）。

　この引手２０の取付軸部２３は、円形を少し潰したような非円形断面を有する柱状の軸本体部２３ａと、取付軸部２３のスライダー幅方向の中央部に配され、停止爪体３０が当接するカム部２３ｂとを備えている。この場合、引手２０の取付軸部２３は、この軸本体部２３ａの部分で、上翼板１１に配された左右の引手保持部１１ｃに保持される。

　本実施例１のカム部２３ｂは、引手２０を後述するように倒伏状態（上翼板１１の上面に対する引手２０の傾斜角度が０°の場合）から起立状態（上翼板１１の上面に対する引手２０の傾斜角度が９０°の場合）までの回動範囲で回動させたときに停止爪体３０を上下方向に揺動可能な略扇形状の断面を有している（図４（ａ），図５（ａ）及び図６（ａ）を参照）。

　特に、カム部２３ｂは、軸本体部２３ａに対して切り欠かれたような形態を有する爪体載置面を有する。この爪体載置面に、引手２０が倒伏状態のときに停止爪体３０の後述する爪体本体部３１が載置されることにより（図４（ａ）を参照）、停止爪体３０の位置がスライダー幅方向にずれることが抑えられる。また、カム部２３ｂは、図６（ａ）に示したように、引手２０が起立状態のときには、カム部２３ｂの引手開口部２４側の先端部が停止爪体３０の爪体本体部３１に当接することによって、停止爪部３２をエレメント案内路から退出させる高さまで停止爪体３０を上方に持ち上げる。

　停止爪体３０は、引手２０のカム部２３ｂを跨ぐように配される爪体本体部３１と、爪体本体部３１の後端から垂設された停止爪部３２と、爪体本体部３１の前端部に配され、スライダー胴体１０の収容溝１１ｄに嵌入するフック部３３とを有しており、弾性変形可能に構成されている。この停止爪体３０は、当該停止爪体３０の爪体本体部３１を引手２０のカム部２３ｂに接触させて、スライダー胴体１０に装着される。

　これにより、引手２０を回動させてカム部２３ｂの向きを変えることにより、カム部２３ｂで停止爪体３０を上下に揺動させることができる。また、引手２０を倒伏状態から起立方向に回動させたときに（言い換えると、上翼板１１の上面に対する引手２０の傾斜角度が０°よりも大きくなったときに）、停止爪体３０は、その弾性により、カム部２３ｂを介して引手２０を倒伏させる方向に付勢する。

　カバー体４０は、上面視にてＴ字形状を有するように、前端部に配される広幅部４１と、同広幅部４１のスライダー幅方向の中央部から後方に延設された細幅部４２とを備えている。また、細幅部４２の左右側壁部には、引手２０の取付軸部２３を挿通させる挿通孔４３がそれぞれ形成されている。この場合、カバー体４０は、カバー体４０を上翼板１１に被せたときに、スライダー胴体１０の前方及び後方固定柱１１ａ，１１ｂと左右の引手保持部１１ｃとを内部に収容する大きさを有する。

　カバー体４０の広幅部４１は、スライダー１の上面視において、その広幅部４１に対応する上翼板１１の前端部分と同じ幅方向の寸法及び形状を有して構成されている。この場合、広幅部４１の後方に向いた後壁部は、引手２０の左右の脚部２２を当接させて引手２０が肩口側に倒れる方向に回動することを阻止する規制部（回動阻止部）４５として機能する。すなわち、本実施例１のスライダー１では、引手２０を、スライダー胴体１０の後口側に倒伏した倒伏状態から、引手２０の左右の脚部２２がカバー体４０に当接した起立状態までの範囲で回動させることが可能である。

　次に、上述のような構成部品を有する本実施例１のスライダー１を組み立てる手順について説明する。
　先ず、スライダー胴体１０の左右の引手保持部１１ｃに引手２０の取付軸部２３を取り付ける。具体的に説明すると、引手２０の取付軸部２３を、左右の各引手保持部１１ｃの前後柱部１１ｇ，１１ｈ間に挿入し、その後、前後柱部１１ｇ，１１ｈの上端部同士を互いに近づける方向に押圧して塑性変形させる。

　これにより、引手２０の取付軸部２３が左右の引手保持部１１ｃによって所定の位置に回動可能に保持される。なお、この場合、引手２０の取付軸部２３は、前後柱部１１ｇ，１１ｈ間にて若干の余裕（遊び）をもって、前後方向に僅かに移動可能なように左右の引手保持部１１ｃに保持される。

　続いて、取付軸部２３が引手保持部１１ｃに保持された引手２０を後口側に傾倒させた状態で、停止爪体３０を、スライダー胴体１０の上方側から収容溝１１ｄに収容する。このとき、停止爪体３０の爪体本体部３１が引手２０のカム部２３ｂを跨いで当該カム部２３ｂに接触させ、且つ、停止爪体３０の停止爪部３２がスライダー胴体１０の爪孔１１ｋを介してエレメント案内路内に進入するように、停止爪体３０を収容溝１１ｄ内に配置して収容する。その後、上翼板１１に設けた左右の爪体保持部１１ｅを、スライダー幅方向の内側に向けて屈曲させるように塑性変形させる。これにより、停止爪体３０が爪体保持部１１ｅにより上面側から押さえられてスライダー胴体１０に取り付けられる。

　次に、停止爪体３０を取り付けたスライダー胴体１０の上翼板１１に、カバー体４０を被せる。このとき、上翼板１１に配した左右の前方固定柱１１ａ及び後方固定柱１１ｂがカバー体４０内に収容されるとともに、引手２０の取付軸部２３がカバー体４０の挿通孔４３内に配されるようにしてカバー体４０を上翼板１１に被せ、左右の前方固定柱１１ａと後方固定柱１１ｂとをカバー体４０の内壁面に当接させる。これにより、カバー体４０の位置合わせをしながら同カバー体４０を上翼板１１に載置することができる。

　カバー体４０を上翼板１１に載置した後、前方固定柱１１ａ及び後方固定柱１１ｂに形成した嵌入孔部１１ｆに対応するカバー体４０の部分を外側から局部的に押圧して内部に窪ませる。これにより、カバー体４０の内壁面に突出部が形成され、各突出部が前方固定柱１１ａ及び後方固定柱１１ｂに形成された対応する嵌入孔部１１ｆにそれぞれ嵌着する。

　このようにカバー体４０の一部が前方固定柱１１ａ及び後方固定柱１１ｂの嵌入孔部１１ｆに嵌着することにより、カバー体４０が左右の前方固定柱１１ａ及び後方固定柱１１ｂに対してそれぞれ２箇所ずつ固定される。これによって、図１に示した本実施例１のスライダー１が組み立てられる。

　このようにして得られる本実施例１のスライダー１を用いて、当該スライダー１のエレメント案内路に左右のファスナーストリンガーのエレメント列を挿通させることによって、スライドファスナーが構成される。また、スライダー１をエレメント列に沿って摺動させることにより、スライドファスナーの開閉が行われる。

　このスライダー１は、例えば図３及び図４に示したように、引手２０をスライダー胴体１０の後口側に倒伏させた倒伏状態のときに、停止爪体３０の停止爪部３２をスライダー胴体１０のエレメント案内路に進出させるように構成されている。なお、図４～図６では、引手２０の取付軸部２３における回動中心の前後方向における位置を一点鎖線で示しており、また、カバー体４０の図示を省略している。

　また、引手２０の摘み部２１を指で把持して、引手２０の取付軸部２３を中心にして当該引手２０を立ち上がるように回動させることにより、引手２０のカム部２３ｂも回動してその向きを変えながら、当該カム部２３ｂによって、停止爪体３０の付勢力に抗してその停止爪体３０を徐々に持ち上げる。そして、本実施例１の場合では、図５に示したように、上翼板１１の上面に対する引手２０の傾斜角度が約６０°となったときに、停止爪体３０の停止爪部３２をエレメント案内路から退出させることができ、それによって、スライダー１をファスナーストリンガーのエレメント列に対して円滑に摺動させることが可能となる。

　このとき、本実施例１のスライダー１において、上翼板１１に配した左右の引手保持部１１ｃの載置部１１ｉは、前述のように、当該載置部１１ｉの底部１１ｊの位置が後口側にずれているとともに、底部１１ｊよりも前方側の高さ位置が肩口側に向けて漸次高くなるように構成されている。また、引手２０の軸本体部２３ａは非円形断面を有している。

　このため、引手２０を起立させる方向に回動させることにより、引手２０の取付軸部２３が引手保持部１１ｃの載置部１１ｉの底部１１ｉから前方へ上るように移動しながら回転するため、スライダー胴体１０で引手２０を支持する支持点（この場合、スライダー胴体１０の引手保持部１１ｃの載置部１１ｉと引手２０の取付軸部２３との接触点）の位置を、前方側（肩口側）に向けて移動させることができる。

　なお、本実施例１のスライダー１では、図５に示したように、上翼板１１の上面に対する引手２０の傾斜角度が約６０°となる状態で指を引手２０から離したときには、停止爪体３０が引手２０のカム部２３ｂを引手２０の倒れる方向に付勢しているため、引手２０を後口側へ回動させて倒伏させることができる。

　特にこの場合、引手保持部１１ｃの載置部１１ｉが前述のような形状を有することにより、引手２０の取付軸部２３が引手２０の倒れる方向に回動し易くなるため、引手２０の傾斜角度が約６０°となる状態で指を引手２０から離したときに、引手２０を、その取付軸部２３が載置部１１ｉに引っ掛かることなく後口側へ円滑に倒伏させて、停止爪部３２をスライダー胴体１０のエレメント案内路に進入させることができる。

　更に、図６に示したように（なお、図６（ｃ）ではカバー体４０を二点鎖線で示す）、引手２０を上翼板１１の上面に対する傾斜角度が約９０°となるように回動させたときに、引手２０の脚部２２に設けた当接部２５がカバー体４０の規制部４５（広幅部４１の後壁部）に当接するため、引手２０が肩口側へそれ以上回動することを阻止し、スライダー胴体１０に対して、引手２０を起立した状態で静止させることができる。

　このとき、本実施例１のスライダー１では、引手２０が停止爪体３０の付勢力に抗してカバー体４０の規制部４５に当接した状態で保持されており、また、引手２０の脚部２２の先端は、上翼板１１における主上面の一部の領域である引手接触領域１１ｍに支持されている。

　特に本実施例１では、引手２０が、前記傾斜角度が約６０°の傾倒状態から約９０°となる起立状態まで回動するときに、引手２０の脚部２２の先端が上翼板１１の主上面に当接するとともに、引手２０の取付軸部２３が引手保持部１１ｃの載置部１１ｉから離間するため、スライダー胴体１０で引手２０を支持する支持点が、引手保持部１１ｃの載置部１１ｉと引手２０の取付軸部２３との接触点から、上翼板１１の主上面と引手２０の脚部２２の先端との接触点へと前方側（肩口側）に移動する。更にその後、引手２０の脚部２２の先端が上翼板１１の引手接触領域１１ｍに乗り上げるため、スライダー胴体１０に対して引手２０全体が僅かに持ち上げられた状態となる。

　従って、引手２０がカバー体４０の規制部４５に接触した起立状態に保持されているときには、引手２０の脚部２２の先端が、上翼板１１の主上面の一部である引手接触領域１１ｍで支持されると同時に、引手２０の取付軸部２３が引手保持部１１ｃの載置部１１ｉから離間して上方に浮いた状態になる。また、引手接触領域１１ｍの後口側に配置された凹溝部１１ｎ（非接触領域）においては、上翼板１１の上面と引手２０の脚部２２の先端との間に空間が形成されて両者が互いに離間した状態となる。

　またこのとき、起立状態にある引手２０と上翼板１１の引手接触領域１１ｍとが接触する部分を第１接触点５ａとし（図６の（ｃ）を参照）、引手２０のカム部２３ｂと停止爪体３０とが接触する部分を第２接触点５ｂとした場合に（図６の（ａ）を参照）、スライダー摺動方向（前後方向）に関して、第１接触点５ａは、引手２０の回動中心位置よりも肩口側（引手２０が倒伏する方向とは反対の非倒伏方向の側）に配置されている。

　また、第２接触点５ｂは、引手２０の回動中心位置よりも後口側（引手２０の倒伏方向の側）に配置されている。その上、スライダー１を側面側から見たときに、前記第１接触点５ａと前記第２接触点５ｂとを結ぶ直線が、肩口側の方向に向けて下り傾斜した状態となる。

　その後、引手２０が指で把持されたままカバー体４０の規制部４５に当接して起立している状態から、指を引手２０から放して引手２０が自由になると、引手２０はカム部２３ｂにて停止爪体３０から付勢力を受けているため、スライダー胴体１０の後口側へ倒れるように回動する。

　このとき、本実施例１のスライダー１において、引手２０がカバー体４０の規制部４５に接触して起立した状態が保持されている場合にあっては、上述のように引手２０が上翼板１１の引手接触領域１１ｍで支持されているとともに凹溝部１１ｎで離間しており、且つ、第１接触点５ａ及び第２接触点５ｂが上述した所定の関係で配置されている。

　このため、上記起立した状態の引手２０から指を放したときには、引手２０の取付軸部２３にかかる力のバランスが悪くなり、例えば引手２０や停止爪体３０などに多少の寸法誤差が生じているとしても、引手２０が停止爪体３０から付勢力を受けることによって、上翼板１１上面の凹溝部１１ｎに引手２０の一部を落ち込ませるようにして引手２０の回動を積極的に促すことができ、引手２０を効果的に後口側に倒伏させることができる。

　特に本実施例１では、このように引手２０を後口側に倒伏させる際に、スライダー胴体１０で引手２０を支持する支持点を、上翼板１１の引手接触領域１１ｍ（主上面）と引手２０の脚部２２の先端との接触点から、引手保持部１１ｃの載置部１１ｉと引手２０の取付軸部２３との接触点へと後方側（後口側）に円滑に移動させて、引手２０を倒伏方向に安定して回動させることができる。

　そして、引手２０が後口側に倒伏することによって、引手２０のカム部２３ｂで持ち上げられていた停止爪体３０が弾性復帰して当該停止爪体３０の停止爪部３２をスライダー胴体１０のエレメント案内路に進入させることができるため、スライダー１の停止機構を自動的に安定して作動させることが可能となる。

　図７は、本実施例２に係るスライダーのスライダー胴体を示す斜視図であり、図８は、カバー体の一部を透視して示すスライダーの平面図である。また、図９の（ａ）及び（ｂ）は、それぞれ図８に示したＩＸ（ａ）－ＩＸ（ａ）線及びＩＸ（ｂ）－ＩＸ（ｂ）線における断面図であり、図１０の（ａ）及び（ｂ）は、引手が起立状態にあるスライダーの断面図である。なお、図９及び図１０では、引手の取付軸部における回動中心の前後方向における位置を一点鎖線で示しており、また、カバー体の図示を省略している。

　前述の実施例１に係るスライダー１では、上翼板１１の引手接触領域１１ｍが上翼板１１の主上面の一部で構成され、且つ、非接触領域（倒伏促進部）が凹溝部１１ｎにより構成されているのに対し、本実施例２に係るスライダー２では、上翼板５１の引手接触領域及び非接触領域（倒伏促進部）が、上翼板５１に形成された後述する隆起部５１ｎにより構成されている。

　また、本実施例２に係るスライダー２は、引手接触領域及び非接触領域（倒伏促進部）に関する構成以外については、前述の実施例１に係るスライダー１と実質的に同様に構成されている。従って、本実施例２では、前述の実施例１に係るスライダー１と異なる構成について主に説明することとし、前述の実施例１に係るスライダー１と実質的に同じ構成を有する部品及び部材については同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。

　本実施例２のスライダー２は、スライダー胴体５０と、取付軸部２３にカム部２３ｂが配された引手２０と、停止爪部３２を備えた停止爪体３０と、スライダー胴体５０に固定される略Ｔ字形状のカバー体４０とを有している。また、スライダー胴体５０は、上下翼板５１，５２と、上下翼板５１，５２の前端部間を連結する案内柱５３と、上翼板５１の左右側縁部から下翼板５２に向けて垂設された上フランジ部５４と、下翼板５２の左右側縁部に配された突条部５５とを有している。

　上翼板５１は、カバー体４０が加締め固定される前方固定柱５１ａ及び後方固定柱５１ｂと、引手２０の取付軸部２３を回動可能に保持する左右一対の引手保持部５１ｃと、左右の引手保持部５１ｃ間に配され、停止爪体３０を収容して保持する収容溝５１ｄと、上翼板５１の前端部において収容溝５１ｄの両側に配された爪体保持部５１ｅとを有している。

　本実施例２の上翼板５１には、上翼板５１の平坦な主上面から隆起した左右一対の隆起部５１ｎが、左右の引手保持部５１ｃの外側領域の一部に、スライダー幅方向に沿って配されている。この一対の隆起部５１ｎは、図９及び図１０に示したように、上翼板５１の主上面からのスライダー高さ方向の位置が最も高い頂部５１ｐと、頂部５１ｐから後口側に向けてスライダー高さ方向の位置を漸次低くする傾斜面部（又は湾曲面部）５１ｑとを有している。なお、頂部５１ｐの肩口側には、上翼板５１の主上面に対してスライダー高さ方向の位置を高くする段差が形成されている。

　この場合、隆起部５１ｎの傾斜面部５１ｑにおける一部の領域は、図１０に示したように、引手２０をカバー体４０に当接するまで回動させて起立させたときに、引手２０の取付軸部２３を当接させて引手２０を支持する引手接触領域を形成する。このとき、引手接触領域は、左右の引手保持部５１ｃの載置部５１ｉよりも、スライダー高さ方向の位置を高くして構成されている。

　また、この引手接触領域を形成する部分よりも後口側には、当該引手接触領域よりもスライダー高さ方向の位置を低くした非接触領域が設けられている。この非接触領域は、起立した引手２０が後口側に倒伏することを促すために、引手接触領域の形成部分に対して後口側に隣接して配され、且つ、引手２０を起立させたときにその引手２０の取付軸部２３と離間して接触しないように構成されている。この本実施例２の非接触領域は、引手２０を起立させたときに当該引手２０の先端と離間し、その引手２０の倒伏を促す倒伏促進部となる。

　このような引手接触領域及び非接触領域を有するスライダー胴体５０を備えた本実施例２のスライダー２は、例えば図９に示したように引手２０を後口側に倒伏させた状態のときに、停止爪体３０の一端部に配した停止爪部３２をスライダー胴体５０のエレメント案内路に進出させるように構成されている。

　また、引手２０の摘み部２１を指で把持して、引手２０の取付軸部２３を中心にして当該引手２０を立ち上がるように回動させることにより、引手２０のカム部２３ｂも回動してその向きを変えながら、当該カム部２３ｂによって、停止爪体３０の付勢力に抗してその停止爪体３０を徐々に持ち上げて停止爪部３２をエレメント案内路から退出させる。これによって、スライダー２をファスナーストリンガーのエレメント列に対して円滑に摺動させることが可能となる。

　更に、図１０に示したように、引手２０を上翼板５１の上面に対する傾斜角度が約９０°となるように回動させたときに、引手２０の脚部２２に設けた当接部２５がカバー体４０の規制部４５（広幅部４１の後壁部）に当接するため、引手２０が肩口側へそれ以上回動することを阻止し、スライダー胴体５０に対して、引手２０を起立した状態で静止させることができる。

　また本実施例２のスライダー２では、引手２０の取付軸部２３が非円形断面を有するとともに、隆起部５１ｎの引手接触領域の高さ位置が、引手保持部５１ｃの載置部５１ｉよりも高く設定されている。このため、引手２０を回動操作して起立させる際に、スライダー胴体５０で引手２０の取付軸部２３を支持する支持点（スライダー胴体５０の隆起部５１ｎと引手２０の取付軸部２３との接触点）が前方側（肩口側）に移動するとともに、引手２０の取付脚部２２が、隆起部５１ｎの傾斜面部５１ｑによって徐々に持ち上げられる。

　従って、引手２０をカバー体４０の規制部４５に当接させて起立させたときには、引手２０の取付軸部２３が隆起部５１ｎの引手接触領域で支持されると同時に、当該取付軸部２３が引手保持部５１ｃの載置部５１ｉから浮いた状態になる。また、引手接触領域の後口側に配置された傾斜面部５１ｑ（非接触領域）では、引手２０の取付軸部２３と隆起部５１ｎとが互いに離間した状態となる。なお、隆起部５１ｎの引手接触領域の高さ位置は、引手保持部５１ｃの載置部５１ｉよりも必ずしも高く設定されていなくとも良く、引手２０の脚部先端を下面側よりも上面側のほうを突出させることによって、本実施例２と同様の効果を期待できる。

　またこのとき、起立状態にある引手２０と、隆起部５１ｎの引手接触領域とが接触する部分を第１接触点５ａとし（図１０の（ｂ）を参照）、引手２０のカム部２３ｂと停止爪体３０とが接触する部分を第２接触点５ｂとした場合に（図１０の（ａ）を参照）、スライダー摺動方向（前後方向）に関して、第１接触点５ａが引手２０の回動中心位置よりも肩口側に配置されている。また、第２接触点５ｂが引手２０の回動中心位置よりも後口側に配置されている。その上、スライダー２を側面側から見たときに、前記第１接触点５ａと前記第２接触点５ｂとを結ぶ直線が、肩口側の方向に向けて下り傾斜した状態となる。

　その後、引手２０が指で把持されたままカバー体４０の規制部４５に当接して起立している状態から、指を引手２０から放して引手２０が自由になると、引手２０はカム部２３ｂにて停止爪体３０から付勢力を受けているため、後口側へ倒れるように回動する。

　このとき、本実施例２のスライダー２において、引手２０がカバー体４０の規制部４５に接触して起立した状態が保持されている場合にあっては、引手２０が隆起部５１ｎの引手接触領域で支持されているとともに引手接触領域の後口側に隣接した傾斜面部５１ｑ（非接触領域）で離間している。更に、第１接触点５ａ及び第２接触点５ｂが上述した所定の関係で配置されている。

　このため、起立した状態の引手２０から指を放すことによって、引手２０の取付軸部２３にかかる力のバランスが悪くなり、引手２０の回動を円滑に促して引手２０を効果的に後口側に倒伏させることができる。特に本実施例２では、引手２０を後口側に倒伏させる際に、スライダー胴体５０で引手２０の取付軸部２３を支持する支持点を後方側（後口側）に円滑に移動させながら、引手２０を倒伏方向に安定して回動させることができる。

　そして、引手２０が後口側に倒伏することによって、引手２０のカム部２３ｂで持ち上げられていた停止爪体３０が弾性復帰して当該停止爪体３０の停止爪部３２をスライダー胴体５０のエレメント案内路に進入させることができるため、スライダー２の停止機構を自動的に安定して作動させることが可能となる。

　図１１は、本実施例３に係るスライダーが分解した状態を示す分解斜視図であり、図１２は、同スライダーの平面図である。図１３は、図１２に示したＸＩＩＩ－ＸＩＩＩ線における断面図であり、図１４は、引手が起立状態にあるスライダーの断面図である。なお、図１３及び図１４では、引手の取付軸部における回動中心の前後方向における位置を一点鎖線で示している。

　本実施例３に係るスライダー３では、前述の実施例１や実施例２のスライダー１，２に配されている引手保持部１１ｃ，５１ｃが本実施例３の上翼板６１に設けられておらず、引手７０の取付軸部７３がスライダー胴体６０の上翼板６１とカバー体９０との間に保持されるタイプのスライダーである。以下、本実施例３のスライダー３について具体的に説明する。

　本実施例３のスライダー３は、スライダー胴体６０と、スライダー胴体６０に回動可能に配される引手７０と、停止爪部８２を備えた停止爪体８０と、スライダー胴体６０に固定されるカバー体９０とを有している。

　スライダー胴体６０は、上翼板６１と、上翼板６１と離間して平行に配された下翼板６２と、上下翼板６１，６２の前端部（肩口側端部）間を連結する案内柱６３と、上翼板６１の左右側縁部から下翼板６２に向けて垂設された上フランジ部６４と、下翼板６２の左右側縁部に配された突条部６５とを有している。このスライダー胴体６０の前端部には、案内柱６３を間に挟んで左右の肩口が形成され、スライダー胴体６０の後端部には後口が形成されている。また、上下翼板６１，６２間には、左右の肩口と後口とを連通するＹ字形状のエレメント案内路が形成されている。

　本実施例３の上翼板６１の上面側には、肩口側に配された平坦な第１主上面と、後口側に配され、第１主上面よりもスライダー高さ方向の位置を低くした平坦な第２主上面と、第１主上面から第２主上面に向けて下り傾斜する傾斜面（又は湾曲面）６１ｎとが配されている。

　上翼板６１の上面には、カバー体９０が組付け固定される前方固定柱６１ａ及び後方固定柱６１ｂが立設されており、前方固定柱６１ａ及び後方固定柱６１ｂ間に、引手７０の後述する取付軸部７３が挿入される。前方固定柱６１ａの前端部における左右側面と、後方固定柱６１ｂの後端部における左右側面とには、カバー体９０を加締め固定する際に、塑性変形によってカバー体９０の窪んだ部分（内壁面側の突出部）を嵌入するための嵌入孔部６１ｆがそれぞれ形成されている。前方固定柱６１ａの上面には、停止爪体８０を係止する係止突起６１ｃが突設されている。

　また、上翼板６１の上面には、後方固定柱６１ｂから前方へ延設された左右一対の縦壁部６１ｄが配されている。左右の縦壁部６１ｄは、上翼板６１の上面からの高さ寸法が後方固定柱６１ｂよりも低くなるように形成されている。左右の縦壁部６１ｄの前端部には、左右の縦壁部６１ｄ間を連結する連結壁部６１ｅが配されており、この連結壁部６１ｅの前方側に、左右の縦壁部６１ｄと連結壁部６１ｅとによって画成されるカム収容部６１ｇが配されている。

　更に、後方固定柱６１ｂ、左右の縦壁部６１ｄ、及び連結壁部６１ｅによって囲まれた部分には、上翼板６１の上面側からエレメント案内路に向けて上下方向に貫通する爪孔が形成されており、この爪孔に、停止爪体８０の後述する停止爪部８２が挿通される。また、スライダー胴体６０の前端部には、後述するカバー体９０の前壁部から垂設された舌片部が挿入される挿入段部が形成されている。

　本実施例３の上翼板６１において、第１主上面の一部は、引手７０を後述するようにカバー体９０に当接するまで回動させて起立させたときに、引手７０の後述する左右一対の脚部７２の先端を当接させて引手７０を支持する引手接触領域６１ｍを、スライダー幅方向に沿って形成する。

　また、この引手接触領域６１ｍの後口側に隣接して、第１主上面よりもスライダー高さ方向の位置を低くした前述の傾斜面６１ｎが、段差面としてスライダー幅方向の全体に亘って配されている。この段差面（傾斜面６１ｎ）は、引手７０を起立させたときに、その引手７０と接触しない非接触領域として、引手７０の脚部７２の先端と離間するように構成されている。この本実施例３の非接触領域は、引手７０を起立させたときに当該引手７０の脚部７２の先端と離間し、その引手２０の倒伏を促す倒伏促進部となる。

　引手７０は、摘み部７１と、摘み部７１から延設された左右一対の脚部７２と、左右の脚部７２の先端部間に横架された取付軸部７３とを有しており、摘み部７１、左右の脚部７２、及び取付軸部７３に囲まれて、略矩形状の引手開口部７４が形成されている。

　この引手７０の取付軸部７３は、軸本体部７３ａと、軸本体部７３ａのスライダー幅方向の中央部に配されたカム部７３ｂと、軸本体部７３ａの左右両端部において引手開口部７４に向けて延出した左右の当接部７３ｃとを備えている。

　この場合、取付軸部７３の軸本体部７３ａの部分が、上翼板６１とカバー体９０とによって保持される。左右の当接部７３ｃは、引手開口部７４における軸本体部７３ａ側の左右の内角側に配されており、引手７０を起立させたときにカバー体９０の後述する規制部９５に当接する。カム部７３ｂの先端部には、停止爪体８０に当接し、且つ、引手７０を起立状態まで回動させたときに停止爪部８２をエレメント案内路から退出させる高さまで停止爪体８０を上方に持ち上げることが可能な湾曲面状のカム面が形成されている。

　停止爪体８０は、引手７０のカム部７３ｂを跨ぐように配される爪体本体部８１と、爪体本体部８１の後端から垂設された停止爪部８２と、爪体本体部８１の前端部に配されたフック部８３と、爪体本体部８１の後方側の屈曲部から上方に分岐して延設された弾性片部８４とを有しており、弾性変形可能に構成されている。

　停止爪体８０における爪体本体部８１の前端部には、前方固定柱６１ａの上面に設けた係止突起６１ｃが挿入される爪体開口部８５が形成されている。この停止爪体８０は、当該停止爪体８０の爪体本体部８１を引手７０のカム部７３ｂに接触させるとともに、爪体開口部８５を前方固定柱６１ａの係止突起６１ｃに係止させた状態でスライダー胴体６０に装着される。

　カバー体９０は、略長方形状の天井部９１と、天井部９１の側縁部から垂設された左右の側壁部９２と、天井部９１の前後端部から垂設された前壁部及び後壁部９３とを有しており、前壁部の下端には、スライダー胴体６０の挿入段部に挿入される図示しない舌片部が垂設されている。天井部９１の裏面（内面）には、停止爪体８０の弾性片部８４を収容する図示しない収容溝部が形成されている。

　カバー体９０の左右の側壁部９２には、下端縁から天井部９１に向けて略Ｕ字状に開口したカバー開口部９４が形成されている。このカバー開口部９４内に引手７０の取付軸部７３（特に、取付軸部７３の軸本体部７３ａ及び当接部７３ｃ）が収容される。また、カバー開口部９４の上端部には、引手７０の軸本体部７３ａの位置を規制するための薄片状の規制片部９６が配されている。

　この場合、左右の側壁部９２におけるカバー開口部９４に向いた周面のうちの前方側に配された前面部分が、引手７０の当接部７３ｃを当接させて引手７０の回動範囲を規制する規制部９５として構成されている。すなわち、本実施例３のスライダー３では、引手７０を、スライダー胴体６０の後口側に倒伏した倒伏状態から、引手７０の当接部７３ｃがカバー体９０の規制部９５に当接した起立状態までの範囲で回動させることが可能である。

　次に、上述のような構成部品を有する本実施例３のスライダー３を組み立てる手順について説明する。
　先ず、スライダー胴体６０に対して、引手７０の取付軸部７３がスライダー胴体６０の前方固定柱６１ａと後方固定柱６１ｂとの間に挿入されるようにして引手７０を載置し、更に、その引手７０を載置したスライダー胴体６０に対して、停止爪体８０を所定の位置に配置する。このとき、停止爪体８０の爪体本体部８１が引手７０のカム部７３ｂを跨ぐとともに爪体開口部８５に前方固定柱６１ａの係止突起６１ｃを係止させ、且つ、停止爪体８０の停止爪部８２がスライダー胴体６０の爪孔を介してエレメント案内路内に進入するように、停止爪体８０が配置される。

　次に、停止爪体８０が配置されたスライダー胴体６０にカバー体９０を被せる。このとき、カバー体９０の前端部に設けた図示しない舌片部をスライダー胴体６０の挿入段部に挿入し、且つ、カバー体９０の内部に後方固定柱６１ｂが収容されるようにカバー体９０の位置合わせをして、カバー体９０がスライダー胴体６０に被せられる。これにより、停止爪体８０がカバー体９０に覆われるとともに、引手７０の取付軸部７３がカバー体９０のカバー開口部９４内に収容される。

　スライダー胴体６０にカバー体９０を被せた後、前方固定柱６１ａ及び後方固定柱６１ｂに形成した嵌入孔部６１ｆに対応するカバー体９０の側壁部９２の一部を外側からスライダー幅方向の内側に向けて局部的に押圧して塑性変形させる。これにより、カバー体９０の内側に突出した部分が前方固定柱６１ａ及び後方固定柱６１ｂの嵌入孔部６１ｆにそれぞれ嵌着するため、カバー体９０がスライダー胴体６０の前方固定柱６１ａ及び後方固定柱６１ｂに固定される。

　このようにカバー体９０がスライダー胴体６０に固定されることによって、引手７０が回動自在にスライダー胴体６０に取り付けられた本実施例３のスライダー３が組み立てられる。
　組み立てられた本実施例３のスライダー３は、図１２及び図１３に示したように引手７０を後口側に傾倒させた状態のときに、停止爪体８０の停止爪部８２をスライダー胴体６０のエレメント案内路に進出させるように構成されている。

　また、引手７０の摘み部７１を指で把持して、引手７０の取付軸部７３を中心にして当該引手７０を立ち上がるように回動させることにより、引手７０のカム部７３ｂで停止爪体８０を徐々に持ち上げて停止爪部８２をエレメント案内路から退出させる。これによって、スライダー３をファスナーストリンガーのエレメント列に対して円滑に摺動させることが可能となる。

　更に、図１４に示したように、引手７０を上翼板６１の上面に対する傾斜角度が約９０°となるように回動させたときに、引手７０に設けた当接部７３ｃがカバー体９０の規制部９５に当接するため、引手７０が肩口側へそれ以上回動することを阻止し、スライダー胴体６０に対して、引手７０を起立した状態で静止させることができる。

　このとき、引手７０の脚部７２の先端が、上翼板６１の第１主上面の一部である引手接触領域６１ｍで支持されるとともに、引手接触領域６１ｍの後口側に配された傾斜面６１ｎ（非接触領域）にて、上翼板６１と引手７０の脚部７２の先端とが互いに離間した状態となる。

　また、起立状態にある引手７０と第１主上面の引手接触領域６１ｍとが接触する部分を第１接触点とし、引手７０のカム部７３ｂと停止爪体８０とが接触する部分を第２接触点とした場合に、スライダー摺動方向（前後方向）に関して、第１接触点が引手７０の回動中心位置よりも肩口側に配置されている。また、第２接触点が引手７０の回動中心位置よりも後口側に配置されている。その上、スライダー３を側面側から見たときに、前記第１接触点と前記第２接触点とを結ぶ直線が、肩口側の方向に向けて下り傾斜した状態となる。

　その後、引手７０が指で把持されたままカバー体９０の規制部９５に当接して起立している状態から、指を引手７０から放して引手７０が自由になると、引手７０はカム部７３ｂにて停止爪体８０の弾性による付勢力を受けているため、後口側へ倒れるように回動する。

　このとき、本実施例３のスライダー３では、起立状態の引手７０が第１主上面の引手接触領域６１ｍで支持されるとともに傾斜面６１ｎ（非接触領域）で離間し、且つ、前記第１接触点及び第２接触点が所定の関係で配置されていたため、引手７０から指を放すことによって、引手７０の取付軸部７３にかかる力のバランスが悪くなる。その結果、引手７０の回動を円滑に促して引手７０を効果的に後口側に倒伏させることができる。

　そして、引手７０が後口側に倒伏することによって、引手７０のカム部７３ｂで持ち上げられていた停止爪体８０が弾性復帰して当該停止爪体８０の停止爪部８２をスライダー胴体６０のエレメント案内路に進入させることができるため、スライダー３の停止機構を自動的に安定して作動させることが可能となる。

　図１５は、本実施例４に係るスライダーが分解した状態を示す分解斜視図である。図１６及び図１７は、引手が起立状態にあるスライダーの幅方向中心部における要部断面図、及び引手の脚部の位置における要部断面図である。なお、図１６及び図１７では、引手の取付軸部における回動中心の前後方向における位置を一点鎖線で示している。また、図１６では、カバー体の図示を省略しており、図１７では、カバー体を二点鎖線で示している。

　本実施例４では、前述の実施例１に係るスライダー１と異なる構成について主に説明することとし、前述の実施例１に係るスライダー１と実質的に同じ構成を有する部品及び部材については同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。

　本実施例４のスライダー４は、スライダー胴体１５０と、取付軸部１６３を一端部に備えた引手１６０と、停止爪部３２を備えた停止爪体３０と、スライダー胴体１５０に固定されるカバー体４０とを有している。この場合、停止爪体３０及びカバー体４０は、前述の実施例１に係るスライダー１の停止爪体３０及びカバー体４０と同様に構成されている。

　本実施例４のスライダー胴体１５０は、上下翼板１５１，１２と、上下翼板１５１，１２の前端部間を連結する案内柱１３と、上翼板１５１の左右側縁部から下翼板１２に向けて垂設された上フランジ部１４と、下翼板１２の左右側縁部に配された突条部１５とを有している。

　このスライダー胴体１５０は、上翼板１５１の上面に、前述の実施例１のような凹溝部１１ｎが設けられていないことを除いて、前述の実施例１におけるスライダー胴体１０と同様に構成されている。すなわち、本実施例４のスライダー胴体１５０の上翼板１５１において、左右の引手保持部１１ｃより幅方向外側の領域の上面は平坦面に形成されている。

　本実施例４の引手１６０は、摘み部１６１と、摘み部１６１から延設された左右一対の脚部１６２と、左右の脚部１６２の先端部間に横架された取付軸部１６３と、左右の脚部１６２の先端から更に脚部１６２の延設方向へ突出した凸部１６６とを有している。

　また、この引手１６０には、摘み部１６１、左右の脚部１６２、及び取付軸部１６３に囲まれて、略矩形状の引手開口部１６４が形成されている。左右の脚部１６２の先端部寄りの部分には、引手１６０を後口側に倒伏させたときに上面側となる面に、引手１６０を起立させたときにカバー体４０に当接させる当接部１６５が山状に盛り上がるように配されている。

　引手１６０の取付軸部１６３は、非円形断面を有する柱状の軸本体部１６３ａと、取付軸部１６３のスライダー幅方向の中央部に配され、停止爪体３０が当接するカム部１６３ｂとを備えている。カム部１６３ｂは、引手１６０を倒伏状態から起立状態までの回動範囲で回動させたときに停止爪体３０を上下方向に揺動可能な略扇形状の断面を有するとともに、引手１６０が倒伏状態のときに停止爪体３０の爪体本体部３１を載置する爪体載置面を有する。

　引手１６０の凸部１６６は、左右の脚部１６２の先端面において引手１６０を後口側に倒伏させたときに上方となる側の端部（上端部）に突設されている。また、凸部１６６の先端面（頂面）は平坦に形成されており、後述するように、引手１６０を上翼板１５１に対して略９０°に起立させたときに、凸部１６６の先端面を上翼板１５１の主上面に安定して当接させることができる（図１７を参照）。

　このようなスライダー胴体１５０及び引手１６０を有する本実施例４のスライダー４は、引手１６０を後口側に傾倒させた状態のときに、停止爪体３０の停止爪部３２をスライダー胴体１５０のエレメント案内路に進出させるように構成されている。

　また、引手１６０の摘み部１６１を指で把持して、引手１６０の取付軸部１６３を中心にして当該引手１６０を立ち上がるように回動させることにより、引手１６０のカム部１６３ｂで停止爪体３０を徐々に持ち上げて停止爪部３２をエレメント案内路から退出させる。これによって、スライダー４をファスナーストリンガーのエレメント列に対して円滑に摺動させることが可能となる。

　更に、図１６及び図１７に示したように、引手１６０を上翼板１５１の上面に対する傾斜角度が約９０°となるように回動させたときに、引手１６０に設けた当接部１６５がカバー体４０の規制部４５に当接するため、引手１６０が肩口側へそれ以上回動することを阻止し、スライダー胴体１５０に対して、引手１６０を起立した状態で静止させることができる。

　このとき、引手１６０の脚部１６２の先端から突出した凸部１６６が、上翼板１５１の平坦な主上面に当接して、引手１６０が上翼板１５１の主上面の一部（引手接触領域）で支持されるとともに、引手１６０の凸部１６６と上翼板１５１の主上面とが接触している部分より後口側には、引手１６０の脚部１６２の先端と上翼板１５１の主上面とが互いに離間した非接触領域（倒伏促進部）が形成される。またこのとき、引手１６０は、凸部１６６が上翼板１５１に当接することによって、当該引手１６０の取付軸部１６３を、スライダー胴体１５０の左右の引手保持部１１ｃにおける載置部１１ｉから上方に離間させるように持ち上げられている。

　更にこのとき、起立状態にある引手１６０と上翼板１５１の主上面とが接触する部分を第１接触点５ａとし、引手１６０のカム部１６３ｂと停止爪体３０の爪体本体部３１とが接触する部分を第２接触点５ｂとした場合に、スライダー摺動方向（前後方向）に関して、第１接触点５ａが引手１６０の回動中心位置よりも肩口側に配置されている。また、第２接触点５ｂが引手１６０の回動中心位置よりも後口側に配置されている。その上、スライダー４を側面側から見たときに、第１接触点５ａと第２接触点５ｂとを結ぶ直線が、肩口側の方向に向けて下り傾斜した状態となる。

　その後、引手１６０が指で把持されたままカバー体４０の規制部４５に当接して起立している状態から、指を引手１６０から放して引手１６０が自由になると、引手１６０はカム部１６３ｂにて停止爪体３０の弾性による付勢力を受けているため、後口側へ倒れるように回動する。

　このとき、本実施例４のスライダー４において、引手１６０の起立状態が保持されている場合にあっては、引手１６０の凸部１６６の先端面が上翼板１５１の主上面に接触する引手接触領域で引手１６０が支持されるとともに、当該引手接触領域の後口側の非接触領域にて引手１６０と上翼板１５１の主上面とが互いに離間している。更に、引手１６０の第１接触点５ａ及び第２接触点５ｂが上述のような所定の関係で配置されている。

　従って、引手１６０から指を放したときには、引手１６０の取付軸部１６３にかかる力のバランスが悪くなるため、引手１６０が停止爪体３０から付勢力を受けることによって、引手１６０の回動を積極的に促して、引手１６０を効果的に後口側に倒伏させることができる。

　そして、引手１６０が後口側に倒伏することによって、引手１６０のカム部１６３ｂで持ち上げられていた停止爪体３０が弾性復帰して当該停止爪体３０の停止爪部３２をスライダー胴体１５０のエレメント案内路に進入させることができるため、スライダー４の停止機構を自動的に安定して作動させることが可能となる。

　　１，２，３，４　　スライダー
　　５ａ　　　　　　　第１接触点
　　５ｂ　　　　　　　第２接触点
　１０　　　　　　　　スライダー胴体
　１１　　　　　　　　上翼板
　１１ａ　　　　　　　前方固定柱
　１１ｂ　　　　　　　後方固定柱
　１１ｃ　　　　　　　引手保持部
　１１ｄ　　　　　　　収容溝
　１１ｅ　　　　　　　爪体保持部
　１１ｆ　　　　　　　嵌入孔部
　１１ｇ　　　　　　　前柱部
　１１ｈ　　　　　　　後柱部
　１１ｉ　　　　　　　載置部
　１１ｊ　　　　　　　底部
　１１ｋ　　　　　　　爪孔
　１１ｍ　　　　　　　引手接触領域
　１１ｎ　　　　　　　凹溝部（非接触領域）
　１２　　　　　　　　下翼板
　１３　　　　　　　　案内柱
　１４　　　　　　　　上フランジ部
　１５　　　　　　　　突条部
　２０　　　　　　　　引手
　２１　　　　　　　　摘み部
　２２　　　　　　　　脚部
　２３　　　　　　　　取付軸部
　２３ａ　　　　　　　軸本体部
　２３ｂ　　　　　　　カム部
　２４　　　　　　　　引手開口部
　２５　　　　　　　　当接部
　３０　　　　　　　　停止爪体
　３１　　　　　　　　爪体本体部
　３２　　　　　　　　停止爪部
　３３　　　　　　　　フック部
　４０　　　　　　　　カバー体
　４１　　　　　　　　広幅部
　４２　　　　　　　　細幅部
　４３　　　　　　　　挿通孔
　４５　　　　　　　　規制部（回動阻止部）
　５０　　　　　　　　スライダー胴体
　５１　　　　　　　　上翼板
　５１ａ　　　　　　　前方固定柱
　５１ｂ　　　　　　　後方固定柱
　５１ｃ　　　　　　　引手保持部
　５１ｄ　　　　　　　収容溝
　５１ｅ　　　　　　　爪体保持部
　５１ｉ　　　　　　　載置部
　５１ｎ　　　　　　　隆起部
　５１ｐ　　　　　　　頂部
　５１ｑ　　　　　　　傾斜面部（又は湾曲面部）
　５２　　　　　　　　下翼板
　５３　　　　　　　　案内柱
　５４　　　　　　　　上フランジ部
　５５　　　　　　　　突条部
　６０　　　　　　　　スライダー胴体
　６１　　　　　　　　上翼板
　６１ａ　　　　　　　前方固定柱
　６１ｂ　　　　　　　後方固定柱
　６１ｃ　　　　　　　係止突起
　６１ｄ　　　　　　　縦壁部
　６１ｅ　　　　　　　連結壁部
　６１ｆ　　　　　　　嵌入孔部
　６１ｇ　　　　　　　カム収容部
　６１ｍ　　　　　　　引手接触領域
　６１ｎ　　　　　　　傾斜面（又は湾曲面）
　６２　　　　　　　　下翼板
　６３　　　　　　　　案内柱
　６４　　　　　　　　上フランジ部
　６５　　　　　　　　突条部
　７０　　　　　　　　引手
　７１　　　　　　　　摘み部
　７２　　　　　　　　脚部
　７３　　　　　　　　取付軸部
　７３ａ　　　　　　　軸本体部
　７３ｂ　　　　　　　カム部
　７３ｃ　　　　　　　当接部
　７４　　　　　　　　引手開口部
　８０　　　　　　　　停止爪体
　８１　　　　　　　　爪体本体部
　８２　　　　　　　　停止爪部
　８３　　　　　　　　フック部
　８４　　　　　　　　弾性片部
　８５　　　　　　　　爪体開口部
　９０　　　　　　　　カバー体
　９１　　　　　　　　天井部
　９２　　　　　　　　側壁部
　９３　　　　　　　　後壁部
　９４　　　　　　　　カバー開口部
　９５　　　　　　　　規制部
　９６　　　　　　　　規制片部
１５０　　　　　　　　スライダー胴体
１５１　　　　　　　　上翼板
１６０　　　　　　　　引手
１６１　　　　　　　　摘み部
１６２　　　　　　　　脚部
１６３　　　　　　　　取付軸部
１６３ａ　　　　　　　軸本体部
１６３ｂ　　　　　　　カム部
１６４　　　　　　　　引手開口部
１６５　　　　　　　　当接部
１６６　　　　　　　　凸部

Claims

　下翼板(12,52,62)と爪孔(11k) を備えた上翼板(11,51,61)とが案内柱(13,53,63)にて連結され、前記上下翼板(11,12,51,52,61,62) 間に略Ｙ字状のエレメント案内路が配され、前記エレメント案内路の一端側に開口する後口と他端側に開口する左右の肩口とを備えたスライダー胴体(10,50,60)と、取付軸部(23,73) を一端部に備えた引手(20,70) と、前記爪孔(11k) を介して前記エレメント案内路に進入可能な停止爪部(32,82) を備えるとともに弾性を有する停止爪体(30,80) と、前記上翼板(11,51,61)に固定されるカバー体(40,90) とを有し、前記停止爪体(30,80) は、前記引手(20,70) の前記取付軸部(23,73) を跨いで前記スライダー胴体(10,50,60)に取着され、前記カバー体(40,90) 又は前記スライダー胴体(10,50,60)は、前記引手(20,70) の一部を当接させて当該引手(20,70) の回動範囲を規制する規制部(45,95) を有し、前記引手(20,70) は、前記スライダー胴体(10,50,60)の前記後口側に倒れた倒伏状態と、前記規制部(45,95) に当接して起立した起立状態との間で回動可能に配され、前記引手(20,70) の前記取付軸部(23,73) は、前記引手(20,70) の操作により前記停止爪体(30,80) を揺動させて前記停止爪部(32,82) を前記エレメント案内路に対して進退させるカム部(23b,73b) を有し、前記カム部(23b,73b) は、前記停止爪体(30,80) から前記引手(20,70) を倒伏させる方向の付勢力を受ける停止装置付スライドファスナー用スライダー(1,2,3) であって、
　前記上翼板(11,51,61)の上面に、前記起立状態にある前記引手(20,70) を接触させて支持する引手接触領域(11m,61m) が配されるとともに、前記起立状態にある前記引手(20,70) を接触させない非接触領域が、前記引手接触領域(11m,61m) より前記後口側に配され、
　前記非接触領域は、前記引手接触領域(11m,61m) よりもスライダー高さ方向の位置を低くして形成されてなる、
ことを特徴とするスライドファスナー用スライダー。
　前記引手接触領域(11m,61m) 及び前記非接触領域は、互いに隣接して配されてなる請求項１記載のスライドファスナー用スライダー。
　スライダー摺動方向において、前記起立状態にある前記引手(20,70) と前記引手接触領域(11m,61m) とが接触する第１接触点(5a)が、前記引手(20,70) の回動中心位置より前記肩口側に配置され、且つ、前記カム部(23b,73b) と前記停止爪体(30,80) とが接触する第２接触点(5b)が、前記引手(20,70) の回動中心位置より前記後口側に配置されてなる請求項１又は２記載のスライドファスナー用スライダー。
　前記スライダー(1,2,3) を側面側から見たときに、前記第１接触点(5a)と前記第２接触点(5b)とを結ぶ直線が、前記肩口側に向けて下り傾斜してなる請求項３記載のスライドファスナー用スライダー。
　前記上翼板(11)は、当該上翼板(11)の主上面に対して凹設された凹溝部(11n) をスライダー幅方向に沿って有し、
　前記引手接触領域(11m) は、前記上翼板(11)の前記主上面の一部により構成され、
　前記非接触領域は、前記凹溝部(11n) により構成されてなる、
請求項１～４のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
　前記上翼板(51)は、当該上翼板(51)の主上面に対して隆起した隆起部(51n) をスライダー幅方向に沿って有し、
　前記隆起部(51n) は、スライダー高さ方向の位置が最も高い頂部(51p) と、前記頂部(51p) から前記後口側に向けてスライダー高さ方向の位置を漸次低くする傾斜面部(51q) 又は湾曲面部とを有し、
　前記引手接触領域は、前記隆起部(51n) の前記頂部(51p) 、又は前記傾斜面部(51q) 若しくは湾曲面部により構成されてなる、
請求項１～４のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
　前記上翼板(61)は、前記肩口側に配された第１主上面と、前記後口側に配され、前記第１主上面よりもスライダー高さ方向の位置を低くした第２主上面と、前記第１主上面から前記第２主上面に下降する段差面(61n) とを有し、
　前記引手接触領域(61m) は、前記第１主上面、又は前記段差面(61n) により構成されてなる、
請求項１～４のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
　下翼板(12,52,62)と爪孔(11k) を備えた上翼板(11,51,61,151)とが案内柱(13,53,63)にて連結され、前記上下翼板(11,12,51,52,61,62,151) 間に略Ｙ字状のエレメント案内路が配され、前記エレメント案内路の一端側に開口する後口と他端側に開口する左右の肩口とを備えたスライダー胴体(10,50,60,150)と、取付軸部(23,73,163) を一端部に備えた引手(20,70,160) と、前記爪孔(11k) を介して前記エレメント案内路に進入可能な停止爪部(32,82) を備えるとともに弾性を有する停止爪体(30,80) と、前記上翼板(11,51,61,151)に固定されるカバー体(40,90) とを有し、前記停止爪体(30,80) は、前記引手(20,70,160) の前記取付軸部(23,73,163) を跨いで前記スライダー胴体(10,50,60,150)に取着され、前記カバー体(40,90) 又は前記スライダー胴体(10,50,60,150)は、前記引手(20,70,160) の一部を当接させて当該引手(20,70,160) の回動範囲を規制する規制部(45,95) を有し、前記引手(20,70,160) は、前記スライダー胴体(10,50,60,150)の前記後口側に倒れた倒伏状態と、前記規制部(45,95) に当接して起立した起立状態との間で回動可能に配され、前記引手(20,70,160) の前記取付軸部(23,73,163) は、前記引手(20,70,160) の操作により前記停止爪体(30,80) を揺動させて前記停止爪部(32,82) を前記エレメント案内路に対して進退させるカム部(23b,73b,163b)を有し、前記カム部(23b,73b,163b)は、前記停止爪体(30,80) から前記引手(20,70,160) を倒伏させる方向の付勢力を受ける停止装置付スライドファスナー用スライダー(1,2,3,4) であって、
　スライダー摺動方向において、前記起立状態にある前記引手(20,70,160) と前記上翼板(11,51,61,151)の上面とが接触する第１接触点(5a)が、前記引手(20,70,160) の回動中心位置より前記肩口側に配置され、且つ、前記カム部(23b,73b,163b)と前記停止爪体(30,80) とが接触する第２接触点(5b)が、前記引手(20,70,160) の回動中心位置より前記後口側に配置されてなる、
ことを特徴とするスライドファスナー用スライダー。
　前記スライダー(1,2,3,4) を側面側から見たときに、前記第１接触点(5a)と前記第２接触点(5b)とを結ぶ直線が、前記肩口側に向けて下り傾斜し、
　前記上翼板(11,51,61,151)と前記起立状態にある前記引手(20,70,160) とは、前記第１接触点(5a)より前記後口側の領域において互いに離間し、
　前記引手(20,70,160) を前記起立状態から倒伏させる間に、前記スライダー胴体(10,50,60,150)における前記引手(20,70,160) を支持する支持点の位置が前記後口側に移動してなる、
請求項８記載のスライドファスナー用スライダー。
　前記上翼板(11,51,151) に、前記引手(20,160)の前記取付軸部(23,163)を回動可能に保持する左右一対の引手保持部(11c,51c) が立設され、
　各引手保持部(11c,51c) は、一対の前後柱部(11g,11h) と、前記前後柱部(11g,11h) 間に配され、前記引手(20,70,160) の前記取付軸部(23,73,163) を載置する載置部(11i) とを有し、
　前記引手(20,160)の前記取付軸部(23,163)は、前記倒伏状態のときに前記載置部(11i) に接し、前記起立状態のときに前記載置部(11i) から離間してなる、
請求項１～９のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
　前記載置部(11i) は、スライダー高さ方向の位置が最も低い底部(11j) を有し、
　前記底部(11j) は、前記前後柱部(11g,11h) 間の中間位置よりも前記後口側に配され、
　前記載置部(11i) におけるスライダー高さ方向の位置が、前記底部(11j) から前記肩口側に向けて漸次高くされてなる、
請求項１０記載のスライドファスナー用スライダー。
　下翼板(12,52) と爪孔(11k) を備えた上翼板(11,51) とが案内柱(13,53) にて連結され、前記上下翼板(11,12,51,52) 間に略Ｙ字状のエレメント案内路が配され、前記エレメント案内路の一端側に開口する後口と他端側に開口する左右の肩口とを備えたスライダー胴体(10,50) と、取付軸部(23)を一端部に備えた引手(20)と、前記爪孔(11k) を介して前記エレメント案内路に進入可能な停止爪部(32)を備えるとともに弾性を有する停止爪体(30)と、前記上翼板(11,51) に固定されるカバー体(40)とを有し、前記上翼板(11,51) に、前記引手(20)の前記取付軸部(23)を回動可能に保持する左右一対の引手保持部(11c,51c) が立設され、前記停止爪体(30)は、前記引手(20)の前記取付軸部(23)を跨いで前記スライダー胴体(10,50) に取着され、前記カバー体(40)又は前記スライダー胴体(10,50) は、前記引手(20)の一部を当接させて当該引手(20)の回動範囲を規制する規制部(45)を有し、前記引手(20)は、前記スライダー胴体(10,50) の前記後口側に倒れた倒伏状態と、前記規制部(45)に当接して起立した起立状態との間で回動可能に配され、前記引手(20)の前記取付軸部(23)は、前記引手(20)の操作により前記停止爪体(30)を揺動させて前記停止爪部(32)を前記エレメント案内路に対して進退させるカム部(23b) を有し、前記カム部(23b) は、前記停止爪体(30)から前記引手(20)を倒伏させる方向の付勢力を受ける停止装置付スライドファスナー用スライダー(1,2) であって、
　前記上翼板(11,51) の上面は、前記左右一対の引手保持部(11c,51c) よりスライダー幅方向の外側に、前記肩口側の前記上面におけるスライダー高さ方向の位置を前記後口側より高くする高低差を有してなる、
ことを特徴とするスライドファスナー用スライダー。