WO2014038389A1 - アルミニウム膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、例えば、一般的なクロムめっきをした部材の疲労強度は、めっきをする前の部材の疲労強度に比べて低下することが知られている。これは、部材表面に形成されたクロムめっき層に生じる引張残留応力と微細なき裂が原因とされている。また、微細なき裂が下地部材にまで到達してしまうと耐食性の低下にもつながる。
すなわち、本発明は以下の構成を備える。
前記電解液が、
塩化アルミニウム及びアルキルイミダゾリウムクロリドからなる溶融塩に、
有機溶媒、数平均分子量が200以上、80,000以下の有機高分子化合物、及び炭素原子数が3個~14個の含窒素複素環化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物Aと、
アミノ基を有する化合物Bと、
を添加して得られた電解液であるアルミニウム膜の製造方法。
上記(1)に記載のアルミニウム膜の製造方法により、鏡面を有し、かつ、残留応力が低減されたアルミニウム膜を製造することができる。
(2)前記アルキルイミダゾリウムクロリドにおけるアルキル基の有する炭素原子数が1個~5個の範囲にある上記(1)に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記(2)に記載の発明によれば、より低温で液体状態の溶融塩を用いてアルミニウム膜を得ることができる。
(3)前記化合物Aが1,10-フェナントロリンである上記(1)又は(2)に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記(3)に記載の発明によれば、より良好な鏡面のアルミニウム膜を得ることができる。
(4)前記化合物Bが、アルキルアンモニウムクロリド及び下記式(1)で表される尿素化合物からなる群より選ばれる一種以上である上記(1)~(3)のいずれか一項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記(4)に記載の発明によれば、より残留応力の少ないアルミニウム膜を得ることができる。
(5)前記化合物Bが、ジメチル尿素又はジメチルアンモニウムクロリドである上記(1)~(4)のいずれか一項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記(5)に記載の発明によれば、より残留応力の少ないアルミニウム膜を安価に得ることができる。
(6)前記化合物Aが、1,10-フェナントロリンであって、前記電解液における該濃度が1g/L以上、2g/L以下であり、
かつ、前記化合物Bが、ジメチル尿素であって、前記電解液における該濃度が5g/L以上、15g/L以下である上記(5)に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記(6)に記載の発明によれば、より良好な鏡面を有し、かつ、より残留応力が低減されたアルミニウム膜を得ることができる。
なお、本発明において残留応力は、圧縮応力の場合と引っ張り応力の場合の両方を意味し、便宜上、圧縮残留応力を負の値、引張残留応力を正の値として記述するものとする。
前記溶融塩として、特に、塩化アルミニウム-1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(AlCl3-EMIC)系溶融塩が、安定性が高く分解し難いことから最も好ましく用いることができる。
前記有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、テトラリン等を好ましく用いることができる。前記数平均分子量が200以上、80,000以下の有機高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等を好ましく用いることができる。また、前記炭素原子数が3個~14個の含窒素複素環化合物としては、例えば、1,10-フェナントロリン、ベンゾトリアゾール、ピリジン、ピラジン、ビピリジン等を好ましく用いることができる。
これらのなかでも、特に1,10-フェナントロリンを好ましく用いることができる。
また、得られるアルミニウム膜の表面は充分に平滑で鏡面状のものである。すなわち、算術平均粗さRaが0.03μm以下の平滑なアルミニウム膜が得られる。
例えば、アルミニウムを使用した導線を接続する端子の表面に本発明の製造方法によりアルミニウム膜を形成すれば、異種金属間での接続を避けることができ、電気抵抗を小さくすることが可能である。また、鋼板などの上にアルミニウム膜を形成することで耐食性が向上する。
(電解液)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)と塩化アルミニウム(AlCl3の混合比がモル比で1:2となるように混合して溶融塩を準備した。この溶融塩に化合物Bとしてジメチル尿素を10g/Lの濃度となるように添加した。
続いて、1,10-フェナントロリンを、濃度が、0.10g/L、0.50g/L、1.00g/L、1.50g/L、2.00g/Lとなるように添加した電解液をそれぞれ用意した。
(アルミニウム膜の形成)
上記で用意したそれぞれの電解液を用いて基材の表面にアルミニウム膜を電着させた。
基材には銅板を用いた。そして、この基材を整流器の陰極側に接続し、対極のアルミニウム板(純度99.99%)を陽極側に接続した。電解液の温度が45℃となるようにし、また、電流密度が2.5A/dm2となるように制御した。
(電解液)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)と塩化アルミニウム(AlCl3の混合比がモル比で1:2となるように混合して溶融塩を準備した。この溶融塩に化合物Aとして1,10-フェナントロリンを2.00g/Lの濃度となるように添加した。
続いて、化合物Bとしてジメチル尿素を、濃度が、1.00g/L、5.00g/L、10.00g/L、20.00g/Lとなるように添加した電解液をそれぞれ用意した。
(アルミニウム膜の形成)
上記で用意したそれぞれの電解液を用いた以外は実施例1と同様にして基材(銅板)の表面にアルミニウム膜を電着させた。
ジメチル尿素を添加しなかった以外は実施例1と同様にして電解液を作製し、アルミニウム膜の形成を行った。
(電解液)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)と塩化アルミニウム(AlCl3の混合比がモル比で1:2となるように混合して溶融塩を準備した。この溶融塩に化合物Bとしてジメチル尿素を10g/Lの濃度となるように添加した。
続いて、この溶融塩に化合物Aとして数平均分子量40,000のポリスチレンを濃度が、1.00g/L、1.50g/L、2.00g/L、2.50g/L、5.00g/Lとなるように添加した電解液をそれぞれ用意した。
(アルミニウム膜の形成)
上記で用意したそれぞれの電解液を用いた以外は実施例1と同様にして基材(銅板)の表面にアルミニウム膜を電着させた。
ジメチル尿素を添加しなかった以外は実施例3と同様にして電解液を作製し、アルミニウム膜の形成を行った。
(電解液)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)と塩化アルミニウム(AlCl3の混合比がモル比で1:2となるように混合して溶融塩を準備した。この溶融塩に化合物Bとしてジメチルアンモニウムクロリドを10g/Lの濃度となるように添加した。
続いて、この溶融塩に化合物Aとして1,10-フェナントロリンを、濃度が、0.10g/L、0.50g/L、1.00g/L、1.50g/L、2.00g/Lとなるように添加した電解液をそれぞれ用意した。
なお、本実施例に対応する比較例は、比較例1である。
(アルミニウム膜の形成)
上記で用意したそれぞれの電解液を用いた以外は実施例1と同様にして基材(銅板)の表面にアルミニウム膜を電着させた。
(電解液)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)と塩化アルミニウム(AlCl3の混合比がモル比で1:2となるように混合して溶融塩を準備した。この溶融塩に化合物Bとしてジメチル尿素を10g/Lの濃度となるように添加した。
続いて、この溶融塩に化合物Aとしてピラジンを濃度が、0.10g/L、0.30g/L、0.50g/L、0.80g/L、1.20g/Lとなるように添加した電解液をそれぞれ用意した。
(アルミニウム膜の形成)
上記で用意したそれぞれの電解液を用いた以外は実施例1と同様にして基材(銅板)の表面にアルミニウム膜を電着させた。
ジメチル尿素を添加しなかった以外は実施例5と同様にして電解液を作製し、アルミニウム膜の形成を行った。
実施例1~5及び比較例1~3で得られたそれぞれのアルミニウム膜の残留応力をストリップ応力試験により測定した。実施例1~5の結果をそれぞれ表1、表2、表4、表6、及び表7に、比較例1~3の結果をそれぞれ表3、表5、及び表8に示す。また、実施例1及び比較例1の結果をグラフに表して比較したものを図1に示し、実施例2の結果をグラフに表したものを図2に示す。また、実施例3及び比較例2の結果をグラフに表して比較したものを図4、実施例4及び比較例1の結果をグラフに表して比較したものを図6、実施例5及び比較例3の結果をグラフに表して比較したものを図8に示す。
実施例1~5及び比較例1~3で得られたそれぞれのアルミニウム膜の算術平均粗さRaをレーザー顕微鏡により測定した。実施例1~5の結果をそれぞれ表1、表2、表4、表6及び表7に、比較例1~3の結果をそれぞれ表3、表5、及び表8に示す。また、実施例1及び比較例1の結果をグラフに表して比較したものを図3に、実施例3及び比較例2の結果をグラフに表して比較したものを図5に、実施例4及び比較例1の結果をグラフに表して比較したものを図7に、実施例5及び比較例3の結果をグラフに表して比較したものを図9に示す。
また、この場合のアルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaは0.030μm以下であり、充分に平滑で鏡面のアルミニウム膜が得られた。
Claims (6)
- 電解液中で基材表面にアルミニウムを電着させるアルミニウム膜の製造方法であって、前記電解液が、
塩化アルミニウム及びアルキルイミダゾリウムクロリドからなる溶融塩に、
有機溶媒、数平均分子量が200以上、80,000以下の有機高分子化合物、及び炭素原子数が3個~14個の含窒素複素環化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物Aと、
アミノ基を有する化合物Bと、
を添加して得られた電解液であるアルミニウム膜の製造方法。 - 前記アルキルイミダゾリウムクロリドにおけるアルキル基の有する炭素原子数が1個~5個の範囲にある請求項1に記載のアルミニウム膜の製造方法。
- 前記化合物Aが1,10-フェナントロリンである請求項1又は2に記載のアルミニウム膜の製造方法。
- 前記化合物Bが、ジメチル尿素又はジメチルアンモニウムクロリドである請求項1~4のいずれか一項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
- 前記化合物Aが、1,10-フェナントロリンであって、前記電解液における該濃度が1g/L以上、2g/L以下であり、
かつ、前記化合物Bが、ジメチル尿素であって、前記電解液における該濃度が5g/L以上、15g/L以下である請求項5に記載のアルミニウム膜の製造方法。
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