以下、図面を参照して、微粒子付着の制御方法を適用したプラズマ処理装置の種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1に示すプラズマ処理装置10は、処理容器12、ステージ14、マイクロ波発生器16、アンテナ18、及び誘電体窓20を備えている。プラズマ処理装置10は、アンテナ18からのマイクロ波によりプラズマを発生させるマイクロ波プラズマ処理装置である。なお、プラズマ処理装置はマイクロ波プラズマ処理装置とは別の任意のプラズマ処理装置であってもよい。例えば、任意のプラズマ処理装置として、平行平板電極型のプラズマ処理装置、プラズマを用いたエッチング装置、或いは、プラズマを用いたCVD装置等を用いることができる。
処理容器12は、被処理基体Wにプラズマ処理を行うための処理空間Sを画成している。処理容器12は、側壁12a、及び、底部12bを含み得る。側壁12aは、軸線X方向(即ち、軸線Xの延在方向)に延在する略筒形状を有している。底部12bは、側壁12aの下端側に設けられている。底部12bには、排気用の排気孔12hが設けられている。側壁12aの上端部は開口している。
側壁12aの上端部開口は、誘電体窓20によって閉じられている。この誘電体窓20と側壁12aの上端部との間にはOリング21が介在していてもよい。このOリング21により、処理容器12の密閉がより確実なものとなる。側壁12aには、被処理基体Wの搬入及び搬出用のゲート12gが設けられている。
マイクロ波発生器16は、例えば、2.45GHzのマイクロ波を発生する。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、チューナ22、導波管24、モード変換器26、及び同軸導波管28を更に備えている。なお、マイクロ波発生器16、チューナ22、導波管24、モード変換器26、同軸導波管28、アンテナ18、及び誘電体窓20は、プラズマを発生させるためのエネルギーを処理空間Sに導入する導入部を構成している。
マイクロ波発生器16は、チューナ22を介して導波管24に接続されている。導波管24は、例えば、矩形導波管である。導波管24は、モード変換器26に接続されており、当該モード変換器26は、同軸導波管28の上端に接続されている。
同軸導波管28は、軸線Xに沿って延びている。この同軸導波管28は、外側導体28a及び内側導体28bを含んでいる。外側導体28aは、軸線X方向に延びる略円筒形状を有している。内側導体28bは、外側導体28aの内部に設けられている。この内側導体28bは、軸線Xに沿って延びる略円筒形状を有している。
マイクロ波発生器16によって発生されたマイクロ波は、チューナ22及び導波管24を介してモード変換器26に導波される。モード変換器26は、マイクロ波のモードを変換して、モード変換後のマイクロ波を同軸導波管28に供給する。同軸導波管28からのマイクロ波は、アンテナ18に供給される。
アンテナ18は、マイクロ波発生器16によって発生されるマイクロ波に基づいて、プラズマ励起用のマイクロ波を放射する。アンテナ18は、スロット板30、誘電体板32、及び冷却ジャケット34を含み得る。
スロット板30には、軸線Xを中心にして周方向に複数のスロットが配列されている。図2は、一実施形態に係るスロット板を軸線X方向から見た平面図である。一実施形態においては、図2に示すように、スロット板30は、ラジアルラインスロットアンテナを構成するスロット板であり得る。スロット板30は、導電性を有する金属製の円板から構成される。スロット板30には、複数のスロット対30aが形成されている。各スロット対30aは、互いに交差又は直交する方向に延びるスロット30b及びスロット30cを含んでいる。複数のスロット対30aは、径方向に所定の間隔で配置されており、また、周方向に所定の間隔で配置されている。
誘電体板32は、スロット板30と冷却ジャケット34の下側表面の間に設けられている。誘電体板32は、例えば石英製であり、略円板形状を有している。冷却ジャケット34の表面は、導電性を有し得る。冷却ジャケット34は、誘電体板32及びスロット板30を冷却する。そのために、冷却ジャケット34内には、冷媒用の流路が形成されている。この冷却ジャケット34の上部表面には、外側導体28aの下端が電気的に接続されている。また、内側導体28bの下端は、冷却ジャケット34及び誘電体板32の中央部分に形成された孔を通って、スロット板30に電気的に接続されている。
同軸導波管28からのマイクロ波は、誘電体板32に伝播され、スロット板30のスロットから誘電体窓20を介して、処理空間S内に導入される。誘電体窓20は、略円板形状を有しており、例えば石英によって構成される。この誘電体窓20は、処理空間Sとアンテナ18との間に設けられており、一実施形態においては、軸線X方向においてアンテナ18の直下に設けられている。
一実施形態においては、同軸導波管28の内側導体28bの内孔には、導管36が通っている。導管36は、軸線Xに沿って延在しており、フロースプリッタ38に接続され得る。
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、インジェクタ41を更に備え得る。インジェクタ41は、誘電体窓20に形成された貫通孔20hに導管36からのガスを供給する。誘電体窓20の貫通孔20hに供給されたガスは、処理空間Sに供給される。
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、ガス供給部42を更に備え得る。ガス供給部42は、ステージ14と誘電体窓20との間において、軸線Xの周囲からガスを処理空間Sに供給する。ガス供給部42は、導管42aを含み得る。導管42aは、誘電体窓20とステージ14との間において軸線Xを中心に環状に延在している。導管42aには、複数のガス供給孔42bが形成されている。複数のガス供給孔42bは、環状に配列されると共に軸線Xに向けて開口しており、導管42aに供給されたガスを軸線Xに向けて供給する。このガス供給部42は、導管46を介して、フロースプリッタ38に接続されている。
フロースプリッタ38は、導管36及びガス供給部42に接続されている。また、フロースプリッタ38は、更に、Arガスのガス源38a、HBrガスのガス源38b、O2ガスのガス源38c、Cl2ガスのガス源38d、SF6ガスのガス源38e、及び、N2ガスのガス源38fが接続されている。これらのガス源38a~38fは、ガスの供給及び供給の停止、並びに、ガスの流量を制御可能なガス源である。フロースプリッタ38は、各ガス源38a~38fから、導管36及びガス供給部42へ分岐するガスの流量比を制御する。
なお、SF6ガス及びO2ガスは、処理空間S内の反応副生成物を除去するクリーニング工程で用いられる。Arガス、HBrガス、O2ガス、及び、Cl2ガスは、被処理基体Wのプラズマ処理(例えば、ポリシリコンのエッチング)に用いられる。N2ガスは、処理容器12内のガスを置換するパージ用のガスとして用いられる。ここで挙げたガス種は一例であり、他の種類のガスを用い得る。また、プラズマ処理の種類によっては、上述したガス源とは異なる一以上のガス源を設けて、これらのガスを組み合わせることで、被処理基体Wに対する処理を行ってもよい。なお、ガス源38c及び38eは、処理容器12内にクリーニングガスを供給するガス供給部を構成している。
ステージ14は、軸線X方向において誘電体窓20と対面するように設けられている。このステージ14は、誘電体窓20と当該ステージ14との間に処理空間Sを挟むように設けられている。ステージ14上には、被処理基体Wが載置される。一実施形態においては、ステージ14は、台14a、静電チャック15、及び、フォーカスリング17を含み得る。
台14aは、筒状支持部48によって支持されている。筒状支持部48は、絶縁性の材料で構成されており、底部12bから垂直上方に延びている。また、筒状支持部48の外周には、導電性の筒状支持部50が設けられている。筒状支持部50は、筒状支持部48の外周に沿って処理容器12の底部12bから垂直上方に延びている。この筒状支持部50と側壁12aとの間には、環状の排気路51が形成されている。
排気路51の上部には、複数の貫通孔が設けられた環状のバッフル板52が取り付けられている。排気孔12hには、排気管54が接続されている。また、排気管54には、圧力調整器56aを介して排気装置56bが接続されている。排気装置56bは、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有している。圧力調整器56aは、排気装置56bの排気量を調整して、処理容器12内の圧力を調整する。排気装置56bにより、処理容器12内の処理空間Sを所望の真空度まで減圧することができる。
台14aは、高周波電極を兼ねている。台14aには、マッチングユニット60及び給電棒62を介して、RFバイアス用の高周波電源58が電気的に接続されている。高周波電源58は、被処理基体Wに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定の周波数、例えば、13.65MHzの高周波電力を所定のパワーで出力する。マッチングユニット60は、高周波電源58側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、処理容器12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容している。この整合器の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
台14aの上面には、被処理基体Wを保持するための保持部材である静電チャック15が設けられている。静電チャック15は、被処理基体Wを静電吸着力で保持する。静電チャック15の径方向外側には、被処理基体Wの周囲及び静電チャック15の周囲を環状に囲むフォーカスリング17が設けられている。フォーカスリング17は、静電チャック15の側端面を囲むように台14a上に搭載されている。フォーカスリング17は、例えば酸化シリコン(SiO2)製であり、環状板である。
静電チャック15は、略円板形状を有している。この静電チャック15は、電極15dと、酸化アルミニウム(Al2O3)で形成された絶縁膜15e及び15fとを含んでいる。電極15dは、導電膜によって構成されており、絶縁膜15eと絶縁膜15fとの間に設けられている。電極15dには、被覆線68を介して高圧の直流電源64が電気的に接続されている。静電チャック15は、直流電源64から印加される直流電圧により発生するクーロン力によって、被処理基体Wを保持することができる。
台14aの内部には、周方向に延びる環状の冷媒室14gが設けられている。この冷媒室14gには、チラーユニット(図示せず)より配管70及び72を介して所定の温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック15の伝熱ガス、例えば、Heガスがガス供給管74を介して静電チャック15の上面と被処理基体Wの裏面との間に供給される。
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、各部の制御を行う制御部100を備え得る。具体的には、制御部100は、ガス源38a~38fによるガスの供給及び供給の停止、並びに、ガスの流量の制御、マイクロ波発生器16によるマイクロ波の発生の制御、RFバイアス用の高周波電源の58の制御、静電チャック15に電圧を印加する直流電源64の制御、圧力調整器56a及び排気装置56bによる処理容器12内の減圧制御、被処理基体Wの搬入及び搬出の制御等を行う。
このように構成されたプラズマ処理装置10では、導管36及びインジェクタ41の貫通孔41hを介して、誘電体窓20の貫通孔20hから処理空間S内に軸線Xに沿ってガスが供給される。また、貫通孔20hよりも下方において、ガス供給部42から軸線Xに向けてガスが供給される。さらに、アンテナ18から誘電体窓20を介して処理空間S及び/又は貫通孔20h内にマイクロ波が導入される。これにより、処理空間S及び/又は貫通孔20hにおいてプラズマが発生する。このように、プラズマ処理装置10によれば、磁場を加えずに、プラズマを発生させることができる。このプラズマ処理装置10では、ステージ14上に載置された被処理基体Wを、処理ガスのプラズマによって処理することができる。
以下、図3及び図4を参照して、制御部100が行う制御の詳細について説明する。図3は、制御部100が行う制御の工程を示す図である。図4は、処理容器12内への被処理基体Wの搬入の前から搬入直後における各部の状態を示す図である。なお、図4において、クリーニング工程が行われている状態を「ON」で示し、クリーニング工程が行われていない状態を「OFF」で示している。また、図4において、被処理基体Wが処理容器12内に搬入されていない状態を「OFF」で示し、処理容器12内に搬入されている状態を「ON」で示している。
図3及び図4に示すように、制御部100は、ガス源38fを制御し、前回の被処理基体Wの処理の終了後から処理容器12内に供給されていたN2ガスの供給を停止する(時刻t1)。そして、制御部100は、処理容器12内に被処理基体Wを搬入する前に、処理容器12内の反応副生成物を除去するクリーニング工程(ステップS101)を実行する(時刻t1~t2)。このクリーニング工程では、反応副生成物の除去の一例として、WLDC(wafer less dry cleaning)が実施される。このWLDCでは、処理ガスとして、例えば、SF6及びO2の混合ガスが用いられる。SF6及びO2は、制御部100がガス源38e及び38cを制御することで処理容器12内に供給される。WLDCでは、処理容器12内において処理ガスのプラズマを発生させることにより、反応副生成物の除去や除電が行われる。なお、WLDCによる除電では、処理容器12内の各部を完全には除電することができず、各部が帯電した状態となる。このため、WLDC後においても、フォーカスリング17と静電チャック15との間で電位差が生じ得る。WLDC後に処理容器12内の各部が帯電する仕組みについて、詳しくは後述する。クリーニング工程の後、制御部100は、ガス源38fを制御して、N2ガスの処理容器12内への供給を開始する(時刻t2)。
次に、制御部100は、被処理基体Wが搬入される前に、直流電源64を制御して静電チャック15に電圧を印加する電圧印加工程(ステップS102)を実行する(時刻t3)。この電圧印加工程では、後の工程において処理容器12内に搬入される被処理基体Wとフォーカスリング17との電位差が低減されるように、静電チャック15に電圧が印加される。また、電圧印加工程は、被処理基体Wが処理容器12内に搬入される前に毎回行われる。なお、電圧印加工程を実行する際に、圧力センサにより測定される処理空間Sの圧力に基づいて、圧力調整器56aが、処理空間Sの圧力を例えば、200mTorr(26.7Pa)に制御してもよい。
ここで、被処理基体Wの搬入前において、フォーカスリング17はプラスに帯電していると考えらえる。これは、例えば、前回のクリーニング(WLDC処理)工程において発生させたプラズマが消滅した際に残るプラスイオンが、処理容器12内の部材に付着することによって生じ得る。また、クリーニング工程を行わない場合には、前回のエッチングといった処理において発生させたプラズマが消滅した際に残るプラスイオンが、処理容器12内の部材に付着することによって生じ得る。また、処理容器12内に搬入される被処理基体Wについても、搬送途中で帯電する場合もあり得る。そこで、制御部100は、帯電するフォーカスリング17と被処理基体Wとの電位差が低減されるように、静電チャック15に対して印加する電圧の電圧値、及び電圧の印加時間を制御する。
以下に、帯電したフォーカスリング17と被処理基体Wとの電位差を低減するために、静電チャック15に対して印加する電圧の電圧値、及び電圧の印加時間の具体例を示す。例えば、フォーカスリング17の帯電電圧がプラス数百ボルトであり、被処理基体Wの帯電電圧がプラス数ボルトである場合、制御部100は、マイナス数百ボルトの電圧を1秒間、静電チャック15に印加されるように直流電源64を制御する。この電圧印加工程を行うことにより、フォーカスリング17と被処理基体Wとの電位差を低減することができる。また、静電チャック15に印加される電圧として、静電吸着を行うときに静電チャック15に与えられる電圧の絶対値よりも小さい絶対値を有する負の電圧を設定し得る。ここでは、一例として、電圧印加工程においてマイナスの電圧を静電チャック15に印加するものとしたが、フォーカスリング17がマイナスに帯電している場合には、静電チャック15にプラスの電圧を印加して、フォーカスリング17と被処理基体Wとの電位差を低減することもできる。
静電チャック15への電圧の印加が終了すると、制御部100は、ガス源38fを制御してN2ガスの処理容器12内への供給を停止し、処理容器12内の排気を行う。
次に、制御部100は、処理容器12内の排気を停止し、処理容器12内に被処理基体Wを搬入する搬入工程(ステップS103)を実行する(時刻t4)。具体的には、制御部100は、被処理基体Wの搬入を行うアーム等を制御し、ゲート12gを介して、処理容器12内の静電チャック15上に被処理基体Wを搬入する。
処理容器12内に被処理基体Wが搬入された後、制御部100は、ガス源38a~38dを制御し、処理容器12内へのArガス、HBrガス、O2ガス、及び、Cl2ガスの供給を開始する。そして、制御部100は、マイクロ波発生器16を作動(時刻t5)させて処理容器12内にプラズマを発生させるプラズマ発生工程(ステップS104)を実行する。
次に、制御部100は、高周波電源58を作動(時刻t6)させてイオンを被処理基体Wへ引き込むと共に、直流電源64を制御して、静電チャック15によって被処理基体Wを吸着保持する吸着保持工程(ステップS105)を実行する(時刻t7)。ここで、制御部100は、プラスの直流電圧が静電チャック15に印加されるように直流電源64を制御する。なお、マイクロ波発生器16を作動させてプラズマを発生させるのと同時に、静電チャック15によって被処理基体Wを吸着保持してもよい。以上の工程により、被処理基体Wに対してプラズマを用いたプラズマ処理(例えば、エッチング等)が行われる(ステップS106)。
被処理基体Wに対するプラズマ処理が終了すると、制御部100は、ガス源38a~38dを制御してArガス、HBrガス、O2ガス、及び、Cl2ガスの処理容器12内への供給を停止させ、ガス源38fを制御して処理容器12内へのN2ガスの供給を開始させる。また、制御部100は、マイクロ波発生器16によるマイクロ波の発生を停止させ、高周波電源58による高周波電圧の出力を停止させる。また、制御部100は、直流電源64を制御することによって静電チャック15に対する電圧の印加を停止し、静電チャック15による被処理基体Wの吸着保持を解除(ステップS107)する。
ここで、プラズマ発生工程から吸着解除工程までのマイクロ波発生器16の制御、及び直流電源64の制御の詳細について説明する。図5に、マイクロ波発生器16及び直流電源64の作動タイミングを表すシーケンス図を示す。図5において、横軸は時間、縦軸は点線についてはマイクロ波発生器16から出力されるマイクロ波の出力電力(W)、実線については直流電源64による静電チャック15への印加直流電圧値(V)を表している。なお、図5に示す印加直流電圧の値は一例であり、これに限定されるものではない。
図5に点線で示すように、まず、制御部100はマイクロ波発生器16を制御してマイクロ波を出力させ、プラズマを発生させる。その後、同図に実線で示すように、制御部100は直流電源64を制御して、静電チャック15の電極15dへの直流電圧の印加を行う。なお、静電チャック15の電極15dへの直流電圧の印加開始前は、被処理基体Wが静電チャック15に吸着されていないため、その温度制御が充分に行われていない。このため、マイクロ波の出力電力は、処理を行う時に比べて低いパワーの電力とし、プラズマの作用によって、被処理基体Wの温度が上昇しないようにすることが好ましい。
そして、マイクロ波の出力電力がプラズマ処理用の出力電力値となる時刻ta~tbの間に、プラズマ処理が行われる。プラズマ処理が終了した後、被処理基体Wを静電チャック15から取り外す際も、図5に示すように、まず、制御部100はマイクロ波発生器16を制御し、マイクロ波の出力電力を、処理を行う時に比べて低いパワーの電力値(0Wではない)に下げる。そして、制御部100は直流電源64を制御し、静電チャック15の電極15dへの直流電圧の印加を停止する。その後、制御部100は、マイクロ波発生器16からのマイクロ波の出力を停止させてプラズマを消滅させる。なお、制御部100は、静電チャック15の電極15dへの直流電圧の印加を停止する際に、一旦、被処理基体Wの吸着時とは逆極性の電圧(例えば-2000V程度)を静電チャック15の電極15dへ印加して静電チャック15の電荷を除去し、被処理基体Wを外し易くする。この逆極性の電圧の印加は、必要に応じて行われる。
なお、図5に示したシーケンス図は、平行平板電極型のプラズマ処理装置におけるプラズマ励起用のRF電力の制御にも適用可能である。
図3に戻り、静電チャック15による被処理基体Wの吸着保持の解除後、制御部100は、処理容器12内から被処理基体Wを搬出する搬出工程(ステップS108)を実行する。具体的には、制御部100は、被処理基体Wの搬出を行うアーム等を制御し、ゲート12gを介して、処理容器12内から被処理基体Wを搬出する。
搬出工程の後、クリーニング工程(ステップS101)に戻り、上述の処理を繰り返す。
以上のように、被処理基体Wの搬入前に、フォーカスリング17と搬入される被処理基体Wとの電位差が低減されるように、制御部100がフォーカスリング17に電圧を印加する。これにより、被処理基体Wが搬入されたときに、フォーカスリング17と被処理基体Wとの電位差によって、フォーカスリング17に付着していた微粒子が被処理基体Wの上面(加工面)に移動して被処理基体Wに付着することが抑制される。
ここで、本願発明者らは、上述した電圧印加工程(ステップS102)を行わずに被処理基体Wに対してプラズマ処理を行い(即ち、従来のプラズマ処理)、処理後の被処理基体Wを観察すると、被処理基体Wに付着する微粒子が多い時は主として被処理基体Wのエッジ部近傍に微粒子が多く集まる傾向を見出した。これは、被処理基体Wが静電チャック15に載置される際に、被処理基体Wのエッジ部を囲むように配置されたフォーカスリング17に付着する微粒子が、フォーカスリング17から被処理基体Wのエッジ部近傍の領域に移動して付着したものであると考え得る。即ち、フォーカスリング17から被処理基体Wへ移動して被処理基体Wに付着する微粒子を減らすことで、被処理基体Wに付着する微粒子を効果的に低減することができると言える。
そこで、本一実施形態においては、上述したように電圧印加工程を行い被処理基体Wとフォーカスリング17との電位差を低減することで、フォーカスリング17から被処理基体Wへ移動して付着する微粒子を減らすことができ、被処理基体Wに付着する微粒子を効果的に低減することができる。
以下、上述のプラズマ処理装置10を用いて被処理基体Wに対してプラズマ処理を行った後、被処理基体Wに付着する微粒子を計数した一実施例について説明する。なお、フォーカスリング17の材料としてSiO2、静電チャック15の材料としてAl2O3を用いた。また、側壁12aとして、側壁12aを形成する基材の表面に、イットリア(Y2O3)のコーティングが施されているものを用いた。また、クリーニング工程では、SF6及びO2の混合ガスを用いたWLDCを行った。
また、順次プラズマ処理がされる複数枚の被処理基体Wのうち、所定の枚数毎(ここでは一例として、25枚毎)に一枚の被処理基体Wを抜き出し、抜き出した被処理基体Wを微粒子の計数対象とした。なお、この微粒子の計数対象の被処理基体Wは、微粒子係数用のモニター基体とすることもできる。
計数対象の被処理基体Wに付着した微粒子を、YFO、AlOF、SiOF、及び、その他の物質の4種類に分類し、それぞれ計数した。図6に、一実施例における微粒子の計数結果を示す。図6において、ロットナンバーは、計数対象の被処理基体Wに割り振られた番号とする。また、比較例として、電圧印加工程を行わずに、計数対象の被処理基体Wに付着した微粒子を計数した。図7に、比較例における微粒子の計数結果を示す。なお、比較例において、電圧印加工程を行わない以外は一実施例と同じ工程を行った。
図6及び図7に示すように、電圧印加工程を行った一実施例(図6)では、電圧印加工程を行わない比較例(図7)に対して、計数対象の被処理基体Wに付着する微粒子の数が低減された。
ここで、計数される微粒子のうち、YFO、ALOF、及び、SiOFは、WLDCで用いた処理ガスによって側壁12a、静電チャック15、及び、フォーカスリング17等がダメージを受けることで生じ得る。また、比較例では、一実施例に対して、ALOFが多く検出されている。これは、静電チャック15がWLDCによってダメージを受けることで生じた微粒子状のALOFがフォーカスリング17に堆積し、このALOFが被処理基体Wとフォーカスリング17との電位差等によって被処理基体Wに付着したものと考えられる。これに対し、一実施例では、電圧印加工程を行うことで、被処理基体Wとフォーカスリング17との電位差が低減され、フォーカスリング17から被処理基体Wへ移動して被処理基体Wに付着する微粒子状のALOFが低減されたものと考えられる。
また、図7に示すように、比較例では、ロットナンバー3及び8の被処理基体Wにおいて、多くの微粒子状のALOFが検出されている。これは、フォーカスリング17の段差部分等に溜まったALOFが、被処理基体Wが処理容器12内に搬入された時に、被処理基体Wとフォーカスリング17との電位差により、被処理基体W側にまとまって移動したものであると考えられる。このように、大量の微粒子が被処理基体Wに付着することは好ましくない。これに対し、図6に示す一実施例では、電圧印加工程を行うことで被処理基体Wとフォーカスリング17との電位差が低減されるため、フォーカスリング17から被処理基体Wへまとまって移動する微粒子状のALOFが抑制されている。
次に、被処理基体Wとフォーカスリング17との電位差を低減するために静電チャック15に印加する電圧について説明する。図8に、静電チャック15に印加する電圧を変化させた場合に被処理基体Wに付着する微粒子の数、及び被処理基体における微粒子の分布の偏りを示す。ここでは、被処理基体Wとして、Bare Siから成る基体を用いた。また、被処理基体における微粒子の分布の偏りを表すものとして、被処理基体Wのエッジの近傍部分にどの程度の微粒子が集中して付着しているかを表す指標を用いた。この指標は、P検定を用いた既知の統計的手法で求めることができる。図8において、棒グラフが被処理基体Wに付着する微粒子の数を示し、折れ線グラフが被処理基体における微粒子の分布の偏りを表す指標を示している。静電チャック15に印加する電圧値は、-2500V、-1000V、-500V、電圧印加なし、500Vの5種類とし、それぞれの電圧を1秒間、静電チャック15に印加した。
図8に示すように、静電チャック15に電圧を印加しない場合と比較して、静電チャック15に-500及び-1000Vを印加した場合に、被処理基体Wに付着する微粒子数、及び、被処理基体Wのエッジの近傍部分に付着する微粒子の数は少なくなった。即ち、0V未満から、-1000V程度の電圧を静電チャック15に印加することにより、フォーカスリング17と被処理基体Wとの電位差が低減され、被処理基体Wに付着する微粒子の数が減ったものと考えられる。また、特に、-500Vの電圧を静電チャック15に印加することで、被処理基体Wに付着する微粒子の数が最も少なくなった。即ち、フォーカスリング17と被処理基体Wとの電位差が最も低減されたと考えられる。
以上のように本実施形態では、静電チャック15に電圧を印加することにより、フォーカスリング17と被処理基体Wとの電位差を低減している。これにより、静電チャック15に電圧を与える工程の後、処理容器12内に被処理基体Wを搬入したときに、フォーカスリング17と被処理基体Wとの電位差によってフォーカスリング17に付着していた微粒子が被処理基体W側に移動して被処理基体Wに付着することを低減している。
また、静電チャック15に電圧を印加する工程の前に、処理容器12内に被処理基体Wを収容していない状態で、処理容器12の内部をクリーニングする工程を含み得る。これにより、クリーニングの後に残る微粒子が被処理基体Wに付着することを低減することができる。
処理容器12内に新たに被処理基体Wを搬入する、その前に静電チャック15に電圧を与える工程を行うことで、被処理基体Wに対する微粒子の付着をより確実に低減することができる。
また、処理容器12内の微粒子は、正に帯電していることが多い。そこで、静電チャック15に対して、負の電圧を与え、更に当該電圧の絶対値を、静電吸着を行うときに静電チャック15に与えられる電圧の絶対値よりも小さい値に設定することで、被処理基体Wに対する微粒子の付着を更に低減することができる。
以上、種々の実施形態について説明したが、上述した実施形態に限定されることなく、種々の変形態様を構成可能である。例えば、フォーカスリングは酸化シリコンの他、処理ガスの種類によってはシリコン(Si)製であってもよい。