WO2012133554A1 - プロスタグランジン含有脂肪乳剤 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、上記のプロスタグランジンE1脂肪乳剤は有効成分であるプロスタグランジンE1が分解しやすいため、5℃以下の遮光下に保存する必要があり、有効期間は通常の製剤よりも短い1年間と定められている。このような製剤は流通段階や臨床現場における薬剤管理コストの増大を招く事から、有効期間の長い製剤の開発が切望されている。
例えば、精製したリン脂質を使用する(特許文献1参照)、高級脂肪酸を実質的に含有しない(特許文献2参照)、等によりプロスタグランジンの安定性向上が認められている。しかしながら、上記公報に記載された方法では、プロスタグランジンの安定性向上効果が十分とは言えず、更には脂肪乳剤の乳化安定性が低下してしまうことがあるために、製剤の有効期間の延長が求められていた。
また、特許文献3には特定の乳化剤/油比において、プロスタグランジンの安定性が向上することが認められている。
特許文献3に記載された方法では、確かにプロスタグランジンの安定性向上効果が認められるが、過剰に存在するレシチンが加水分解されるため、長期間での保存期間向上効果は十分ではないことがわかった。一方、脂肪乳剤の安定化剤としてクエン酸と特定のアミノ酸が知られている(特許文献4)。しかしながら、該安定化剤には脂肪乳剤の変色抑制効果があることは知られているものの、内封した薬剤の安定化効果は認められていない。特にpHを6.5~7.5に調製しており、この様なpHにおいてはプロスタグランジンの分解を抑制することができない。更には、クエン酸は乳化破壊を伴いやすいため、乳化の安定性を得るにはpHが6.0を越える条件で乳化しなければならい。
しかしながら、pH6.0を越えるとプロスタグランジンの安定性が急激に低下することは知られており、特許文献4に記載の方法では保存安定性の高い脂肪乳剤を得ることは困難である。
本発明の第2の態様における第1の目的は、プロスタグランジンの安定性を向上させ、かつ乳化安定性に優れた保存期限の長い脂肪乳剤を提供することにある。第2の目的は、透明性が高い脂肪乳剤を提供することにある。更には高い薬効を示す脂肪乳剤を提供することである。第3の目的は、プロスタグランジン含有脂肪乳剤を含む注射用製剤を提供することにある。更に、容易に滅菌することが可能な注射用製剤の製造方法を提供することにある。
[1]
プロスタグランジン類、油成分、レシチン、pKaが4.0~6.0の解離基を有する水溶性の酸又はその塩、及び水を含んでなる脂肪乳剤であって、前記レシチンの含有量が前記油成分の0.15質量倍以上でありかつ、pHが4.5~6.0であるプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[2]
水溶性の酸又はその塩が、0.01mmol/L~5mmol/L含まれることを特徴とする[1]に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[3]
水溶性の酸がクエン酸であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[4]
脂肪乳剤におけるレシチンの含有量が、油成分の含有量に対して0.3質量倍以上であることを特徴とする[1]~[3]のいずれか一項に記載のプロスラグランジン含有脂肪乳剤。
[5]
脂肪乳剤における油成分の含有量が、脂肪乳剤中0.01~5質量%であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか一項に記載のプロスラグランジン含有脂肪乳剤。
[6]
脂肪乳剤が更に高級脂肪酸を含有し、脂肪乳剤における高級脂肪酸の含有量が、レシチンの含有量に対して0.06質量倍以下であることを特徴とする[1]~[5]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[7]
プロスタグランジン類がプロスタグランジンE1であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[8]
プロスタグランジン類、油成分、レシチン、及び水を含んでなる脂肪乳剤であって、
レシチンの含有量がプロスタグランジン類の含有量の500~5000質量倍であり、
レシチンの含有量が油成分の含有量の0.3~10質量倍であり、かつ、
高級脂肪酸の含有量がレシチンの含有量の0.06質量倍以下であることを特徴とする、プロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[9]
レシチンの含有量が脂肪乳剤全量に対して0.4~2質量%であることを特徴とする[8]に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[10]
脂肪乳剤におけるプロスタグランジン類中、水相中に遊離しているプロスタグランジン類の比率が10%以下であることを特徴とする[8]又は[9]に記載のプロスタグランジンン含有脂肪乳剤。
[11]
油成分の含有量が脂肪乳剤全量に対して0.2~5質量%であることを特徴とする[8]~[10]のいずれかに記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[12]
脂肪乳剤が更にpKaが4~6の解離基を有する水溶性の酸又はその塩を含むことを特徴とする[8]~[11]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[13]
脂肪乳剤における水溶性の酸又はその塩の含有量が、0.01mmol/L~5mmol/Lであることを特徴とする[12]に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[14]
脂肪乳剤のpHが4.5~6.0の範囲であることを特徴とする[8]~[13]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[15]
光散乱法により測定した脂肪乳剤の平均粒径が30~150nmであることを特徴とする[1]~[14]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[16]
レシチンが、ホスファチジルコリンを98質量%以上含有する卵黄レシチンであることを特徴とする[1]~[15]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[17]
油成分が、ダイズ油であることを特徴とする[1]~[16]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[18]
プロスタグランジン含有脂肪乳剤が、濾過滅菌されたプロスタグランジン含有脂肪乳剤であることを特徴とする[1]~[17]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[19]
[1]~[18]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤を含む注射用製剤。
[20]
[1]~[18]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤又は[19]の注射用製剤がシリンジに充填されていることを特徴とするプレフィルドシリンジ製剤。
[21]
[19]又は[20]におけるプロスタグランジン含有脂肪乳剤を濾過滅菌する工程を含むことを特徴とする[19]又は[20]における注射用製剤の製造方法。
従来、脂肪酸が存在すると脂肪乳剤中のプロスタグランジンの安定性が低下することは広く公知であった。しかし、特定の水溶性の酸を存在させることで、脂肪乳剤中のプロスタグランジンの安定性が顕著に向上するという予想外の効果を見出した。
本発明の第2の態様におけるプロスタグランジン含有脂肪乳剤は静脈内投与可能であり、プロスタグランジン類、油成分、レシチン、及び水の組成比が特定の範囲に限定されたものである。これらの成分の組成比が特定の範囲にあることで、プロスタグランジンの安定性、乳化安定性、脂肪乳剤の透明性、更には薬効を満足させることのできる製剤を提供することができる。
ここで、「質量倍」とは質量で何倍となるかを表すものとする。
本発明の第2の態様における脂肪乳剤はpKaが4.0~6.0の解離基を有する水溶性の酸又はその塩を含有する。
本発明の第2の態様における脂肪乳剤において水溶性の酸が含まれることが好ましい。
ここで、酸解離定数pKaは25℃の水中におけるものである。また、多官能の酸の場合、複数ある酸解離定数のいずれかが4.0~6.0の範囲内であればよい。
このような水溶性の酸としては、有機酸が好ましく、炭素数2~10のカルボン酸類がより好ましい。水溶性の酸の例としては、具体的には酢酸(pKa=4.76)、酪酸(pKa=4.63)、安息香酸(pKa=4.00)、クエン酸(pKa1=3.15、pKa2=4.77、pKa3=6.40)、コハク酸(pKa1=4.00、pKa2=5.24)、酒石酸(pKa1=3.2、pKa2=4.8)、フタル酸(pKa1=2.94、pKa2=5.41)、フマル酸(pKa1=2.85、pKa2=4.10)、マレイン酸(pKa1=1.75、pKa2=5.83)、リンゴ酸(pKa1=3.40、pKa2=5.13)等が挙げられる。これらの内、酢酸、クエン酸が好ましく、クエン酸が特に好ましい。ここで、酸解離定数pKaは25℃の水中におけるものである。また、多官能の酸の場合、複数ある酸解離定数のいずれかが上記範囲内であればよい。
水溶性の酸は、複数種類を併用しても良い。
水溶性の酸は、塩の形で含有されていてもよく、緩衝系となっていてもよい。塩の種類は特に限定されないが、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属との塩などが挙げられ、ナトリウム、カリウム、又はカルシウムとの塩が好ましい。
本発明の脂肪乳剤を構成する成分のうち、プロスタグランジン類としては、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンA2(PGA2)、プロスタグランジンD2(PGD2)、プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンF1α(PGF1α)、プロスタグランジンI2(PGI2)及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、本発明は脂肪乳剤としての需要が大きいプロスタグランジンE1(PGE1)が好ましく、PGE1において特に有効である。
プロスタグランジンは、複数種類を併用しても良い。
本発明のプロスタグランジン含有脂肪乳剤は、プロスタグランジン類を含有する。具体的には、本発明の脂肪乳剤におけるプロスタグランジン類の含有量は0.00001~0.01質量%であることが好ましく、0.0001~0.005質量%であることがより好ましく、0.0003~0.001質量%であることが更に好ましい。
本発明の脂肪乳剤はレシチンを含有する。
ここで、レシチンとはホスファチジルコリン自体、又は、少なくともホスファチジルコリンを含む混合物である。
ホスファチジルコリンを含む混合物は、一般的に、ホスファチジルコリンの他に、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、スフィンゴエタノールアミン等を含みうる混合物である。
レシチンは合成品でも天然物由来でもよいが、一般的には卵黄レシチン(卵黄由来のレシチン、以下同様)、大豆レシチン、綿実レシチン、なたねレシチン、トウモロコシレシチン等が挙げられる。本発明におけるレシチンとしては、卵黄レシチン及び大豆レシチンが好ましく、卵黄レシチンがより好ましい。卵黄レシチンを精製して得られる精製卵黄レシチンが好ましく、高度精製卵黄レシチンがより好ましい。本発明におけるレシチンは、ホスファチジルコリンを含有し、ホスファチジルコリンの含有量が96%以上の卵黄レシチンが好ましく、ホスファチジルコリンの含有量が98%質量以上の卵黄レシチンがより好ましく、静脈注射用脂肪乳剤に好適に使用することができる。
なお、ホスファチジルコリンの含有量が98質量%以上の卵黄レシチンとしては「高度精製卵黄レシチン」の名称で医薬品添加物事典2007(薬事日報社)に掲載されているものを使用することができ、具体的にはPC-98N(キューピー(株)製)が挙げられる。
本発明の脂肪乳剤は油成分を含有する。
本発明で用いられる油成分としては、脂肪酸グリセリド(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、及びこれらのうち複数の混合物)が好ましく使用することができる。
脂肪酸グリセリドとしては、中鎖脂肪酸グリセリド、長鎖脂肪酸グリセリドいずれも使用することができる。
ここで中鎖脂肪酸グリセリドとは、炭素数6~12の脂肪酸とグリセリンとの縮合物であり、例えば、TCG-M(高級アルコール工業)、クロダモルGTCC(クローダジャパン)、ココナードMK(花王)、ココナードRK(花王)、サンファットMCT-7(太陽化学)、デリオス(コグニスジャパン)、パナセート(日本油脂)、ミグリオール810(ミツバ貿易)、ミグリオール812(ミツバ貿易)、ミリトール318(コグニスジャパン)、パナセート810(油化産業)を挙げることができる。
長鎖脂肪酸グリセリドとは炭素数14以上の脂肪酸とグリセリンとの縮合物であり、例えば、ダイズ油、オリーブ油、ゴマ油、ナタネ油、ラッカセイ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、サフラワー油、綿実油等が挙げられる。これらのうち、ダイズ油、オリーブ油、ゴマ油が好ましく、ダイズ油が特に好ましい。
これらの脂肪酸グリセリドは、更に水蒸気蒸留等により精製して使用してもよい。
本発明の第1の態様の脂肪乳剤において、前記レシチンの含有量は、経時での粒径変化抑制及び乳化安定性の観点から前記油成分の含有量の0.15~50質量倍であることが好ましく、0.5~20質量倍であることがより好ましく、0.7~10質量倍であることが特に好ましく、0.7~6質量倍であることが最も好ましい。一方、静脈注射可能な範囲で発生する粗大粒子を更に低減するという観点においては、前記レシチンの含有量は、前記油成分の含有量の0.15~50質量倍であることが好ましく、0.2~10質量倍がより好ましく、0.3~1質量倍であることが特に好ましく、0.3~0.7質量倍であることが最も好ましい。
本発明の脂肪乳剤において、乳化安定性を向上させる目的で高級脂肪酸を配合してもよい。
ここで高級脂肪酸とは炭素数10以上の脂肪酸であり、飽和、不飽和いずれの脂肪酸でもよい。本発明において、高級脂肪酸は乳化補助剤としての働きをするもので、脂肪乳剤の乳化安定性を向上させる機能がある。本発明で用いられる高級脂肪酸としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸等が好ましく挙げられ、オレイン酸が特に好ましい。
レシチンに対する高級脂肪酸の質量比は、プロスタグランジンの分解を抑制する観点で0.0001~0.03であることがより好ましく、0.0001~0.01であることが特に好ましく、実質的に添加しないことが最も好ましい。
本発明の脂肪乳剤においては、乳化安定性を向上させる目的で、更に乳化剤若しくは分散剤を添加してもよい。
乳化剤としては、ポロキサマー(ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体)、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ポリオキシル60水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、12-ヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンエステル、d-アルファ-トコフェリルポリエチレングリコールスクシナート、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステルが挙げられる。
分散剤としては、ヒト血清アルブミン、精製ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ウルソデスオキシコール酸、ウルソデスオキシコール酸塩、デスオキシコール酸、デスオキシコール酸塩等が挙げられる。
これらの乳化剤及び分散剤の添加量は、脂肪乳剤の安定性に影響を与えない限り、特に限定されないが、添加する場合、一般的に前記油成分の0.1質量倍以上であり、20質量倍以下であることが好ましく、10質量倍以下であることがより好ましく、5質量倍以下であることが更に好ましい。
本発明に脂肪乳剤では必要に応じて、等張化剤(例えば、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸及びその塩、ジブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、α-トコフェロール、D-ソルビトール)、pH調製剤(水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸)を含有していてもよい。
動的光散乱法により測定した本発明の脂肪乳剤における(乳化直後の)平均粒径は30~150nmであることが好ましく、30~120nmであることがより好ましく、30~100nmであることが特に好ましい。前記範囲の粒子径とすることで、脂肪乳剤の透明性が向上するため、異物混入や微生物汚染の発見が容易となり、臨床現場において使用上の問題が生じた製剤を容易に発見することが可能となる。更には、濾過滅菌が可能となるため分解物の低減の観点でも好ましい。また、本発明の脂肪乳剤を濾過滅菌する場合、脂肪乳剤の粒径が上記の範囲内であれば濾過滅菌用のフィルターを目詰まり無く通過できる。
ここで、脂肪乳剤の粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における粒径測定では、粒径範囲及び測定の容易さから、光散乱法、より好ましくは動的光散乱法、又はレーザー回折法を適用することが好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB-550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
特に本発明における脂肪乳剤の粒子径は、FPAR-1000を用いて測定した値であり、具体的にはContin法より得られる散乱強度分布のメジアン径を粒子径とした。
本発明の脂肪乳剤のpHは4.5~6.0の範囲にあることが好ましく、pH4.8~5.8の範囲であることがより好ましく、pH5.0~5.5であることが特に好ましい。pHがこの範囲にあることで、プロスタグランジンの安定性を更に高くすることが可能である。pH4.5を下回ると、プロスタグランジンの安定性が低下するだけでなく、脂肪乳剤の乳化安定性も低下することがある。一方で、pH6.0を越えるとpHの上昇に従ってプロスタグランジンの安定性が低下する。
なお、水素イオン指数pHは25℃におけるものである。
本発明の脂肪乳剤は、例えば、プロスタグランジン類、油成分、レシチンの混合物に、必要に応じて水を加えて乳化させることで製造できる。本発明の脂肪乳剤の製造方法は、とくに制限されないが、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等の剪断作用を利用する通常の乳化装置を用いて乳化をした後、高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることが出来る。
チャンバー型高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
本発明はプロスタグランジン含有脂肪乳剤を含む注射用製剤にも関する。
本脂肪乳剤の製剤形態としては、注射用製剤として適したものであれば特に限定されない。具体的にはアンプル管、バイアル瓶、プレフィルドシリンジ、バッグ等の容器に充填した製剤が挙げられる。
容器の容量、材質及び形状は、プロスタグランジン含有脂肪乳剤の充填量と使い易さの観点で適宜選択できる。また、充填時に空隙の気体を少なくする、あるいは窒素置換すると更に安定性が改善されるため好ましい。
更にこれらの容器内部はシリコート処理等の表面処理がなされていることが好ましい。
本発明はプロスタグランジン含有脂肪乳剤又は注射用製剤がシリンジに充填されているプレフィルドシリンジ製剤にも関する。
プレフィルドシリンジ製剤は、調製時の希釈ミスや薬剤取り違えのミス、分割使用・保存による細菌汚染や活性の低下等を防ぐために、使用濃度・量であらかじめシリンジに充填されており、感染の危険の低減、医療従事者の労働生産性向上等の観点においても好ましい。
本発明の注射器は、シリンジ(注射筒)及びガスケット等から構成することができる。該シリンジは一端(基端開放部)側の開口にガスケットがはめ込まれ、他端(先端開放部)側にガスケットの押し込みによりプロスタグランジン含有脂肪乳剤を排出する排出口を有する筒状体であることが好ましい。排出口には、使用前には通常、キャップがはめ込まれ、上記ガスケットとともに薬液を保持することができる。また、該ガスケットには、プランジャーロッドが連結されていてもよい。シリンジの基端からキャップ先端までの長さ、及びシリンジの内径は充填する薬液(プロスタグランジン含有脂肪乳剤)の容量によって適宜決定することができる。
ガラス製又はプラスチック製のシリンジを必要に応じて、焼き付け又は塗布によりシリコン等で処理して、ガスケットの摺動抵抗を小さくし、シリンジ内でのガスケットの移動を容易にすることができる。排出口の形成される先端開放部は、接続する器具の形状に対応するルアーチップ形状になっていることが、注射針又は血管カテーテルとの接続の容易さの観点から好ましい。
本発明において使用されるキャップは特に限定されないが、好ましくはゴム製又は熱可塑性エラストマーなどの弾性体キャップである。該ガスケットには、好ましくはプランジャーロッドが結合する手段、例えば螺子部が設けられていてもよい。また、プランジャーロッドとガスケットとは一体に成形されていてもよい。
また、本製剤の投与においては、本発明の脂肪乳剤をそのまま注射用製剤として静脈注射してもよく、生理食塩水等の輸液にて適宜希釈したのち点滴投与しても良い。
濾過滅菌は通常、プロスタグランジン含有脂肪乳剤を調整後に行うことができる。
濾過滅菌に用いるフィルターとしては、孔径0.01~0.22μmのフィルターが好ましく、より好ましくは孔径0.1~0.22μmの濾過滅菌用のフィルターである。濾過滅菌用のフィルターは市販品を利用することもできる。濾過滅菌用のフィルターとして具体的には、ザルトポア2、ザルトブラン(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社)、デュラポア(日本ミリポア社)、フロロダインII、スーポア、フロロダインEX、ウルチポアN66、ポジダイン(日本ポール社)などが挙げられる。
また、濾過滅菌に際しては加圧濾過器にて差圧をかけることができ、差圧としては0.01MPa~1MPaが好ましく、0.05MPa~0.3MPaがより好ましい。ここで差圧とは、濾過の一次側(入口側)と二次側(出口側)の圧力の差のことをいう。二次側の圧力は通常大気圧である。
これらの条件は使用するプロスタグランジン類、油成分、及びレシチンの濃度や含み得る添加剤の種類及び濃度などによって適宜選択することができる。
なお、本明細書において、別記がない場合は%は質量%である。
プロスタグランジンE1(アルプロスタジル、第一ファインケミカル(株)製)をエタノールに10mg/mlの濃度で溶解した。このうち42μl(プロスタグランジンE1として420μg)と、ダイズ油(カネダ(株)製)0.252g、及び、高度精製卵黄レシチンPC-98N(キューピー(株)製)0.504gとを混合した。この混合物に対し、別途、日本薬局方濃グリセリン(花王(株)製)と精製水を混合して得た2.5質量%グリセリン水溶液を、合計60mlになるように加え、撹拌した。これをホモミキサー(15000rpm、12min)にて粗分散し、更にチャンバー型高圧ホモジナイザーにて乳化した。乳化液に終濃度0.5mMとなるクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液を添加し、pHを5.0に調整することで、分散液1-1を作製した。
実施例1-1と同様にして、表1-1の組成にて分散液1-2~1-15を作製した。なお、比較例1-1、1-2、1-4、参考例1-3の塩酸の量は上記のように表に記載のpHとなるように添加した量である。
実施例1-1と同様とするが、表1-1の組成にて分散液1-16を作製した。なお、オレイン酸は事前に所定量をダイズ油に溶解させて乳化を行い、その後水酸化ナトリウムにてpHを5.3に調整した。
<粒径測定>
表1-1に記載の実施例、比較例にて調製した分散液(脂肪乳剤)について、乳化直後に精製水を用いて10~100倍に希釈し、光散乱粒度分布測定装置(FPAR-1000、大塚電子製)にてContin法より得られる散乱強度分布のメジアン径を、粒径として記録した。
表1-1に記載の実施例、比較例にて調製した分散液について、原液のまま、コンパクトpHメーター(HORIBA製)にてpHを測定し、pHとして記録した。
分散液1-1~1-11、1-13~1-16について、2mlずつシリコートバイアル瓶(CS-10、不二硝子製)に分注し、ゴム栓、アルミシールをした。40℃にて14日間保存後の分散液について、上記記載の粒径測定を行った。調製直後の粒径に対する変化について、以下の基準にて評価を行い、結果を表1-1に記す。
A:粒径の増大が認められなかった
B:粒径の増大が10nm以下である
C:粒径の増大が10nmを超え20nm未満である
D:粒径の増大が20nm以上である
<PGE1残存率評価>
分散液1-1~1-7、1-10、1-11及び比較用の分散液1-13、1-14、及び1-16について、2mlずつシリコートバイアル瓶(CS-10、不二硝子製)に分注し、ゴム栓、アルミシールをした。40℃にて7日間及び14日間保存後の分散液について、高速液体クロマトグラフィーによりプロスタグランジンE1を定量した。なお、この時、1-ナフトールを内部標準として使用し、定量を行った。PGE1の残存率(%)を以下の式にて算出した。結果を表1-2に記す。
PGE1残存率(%)=(経時後のPGE1濃度/初期のPGE1濃度)×100
更に、表1-2の実施例が示す様に、クエン酸を添加した分散液1-1~1-7及び1-10、1-11は、プロスタグランジンそのものの安定性が向上するという予想外の効果を見出した。既存薬相当の分散液1-16との比較より、既存薬の約3倍以上の保存期限を有することが推定できる。一方、pKaの小さい塩酸を使用した分散液1-13、1-14においては保存経時の初期は既存薬相当の分散液1-16よりもプロスタグランジンの残存率が高いが、14日後においてはプロスタグランジンの残存率が顕著に低下することが分かった。
分散液1-1、1-7、1-10、1-11をそれぞれ5mlバイアル瓶(無色透明)中に適量採取し、精製水にて1~6倍に希釈した。1m以上離れた蛍光灯と肉眼との間にバイアル瓶を置き、バイアル瓶の側面から、上記の希釈液を目視観察した。このとき、液中に目視可能な粒子が見える程度について、以下の基準にて粗大粒子目視評価を行い、結果を表1-3に示す。
D 沈殿がはっきりと見える
C 微細な粒子が少し見える
B 微細な粒子がごく僅かに見える
A 目視可能な粒子はない
分散液1-10について、容器を表1-4に記載の容器とする以外は実施例1-19と同様にして、40℃7日間保存し、PGE1残存率を求めた。結果を表1-4に示す。
分散液1-10 10mLをシリコートバイアル瓶(CS-10、不二硝子製)に分注し、ゴム栓、アルミシールをした。これをオートクレーブ(オートクレーブSP200、ヤマト科学社)を用いて121℃での保持時間を1分として高圧蒸気滅菌した。この液の外観を観察したところ、油滴の分離が見られた。
分散液1-10 500mlを、滅菌フィルターとしてザルトポア2(直径47mm、孔径0.2μm、ザルトリウス・ステディム・ジャパン社)を用い、加圧濾過器にて0.2MPaの差圧をかけ、濾過滅菌を行った。分散液全量を閉塞なく濾過滅菌できた。外観、粒径、pH、PGE1量を上記と同様に測定したところ、濾過前後で有意な変化は見られなかった。
プロスタグランジンE1(アルプロスタジル、第一ファインケミカル(株)製)をエタノールに10mg/mlの濃度で溶解した。このうち42μl(プロスタグランジンE1として420μg)と、ダイズ油(カネダ(株)製)0.252g、及び、高度精製卵黄レシチンPC-98N(キューピー(株)製)0.504gとを混合した。この混合物に対し、別途、日本薬局方濃グリセリン(花王(株)製)と精製水を混合して得た2.5%グリセリン水溶液を、合計60mlになるように加え、撹拌した。これをホモミキサー(15000rpm、12min)にて粗分散し、更にチャンバー型高圧ホモジナイザーにて乳化した。乳化液に終濃度0.5mMとなるクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液を添加し、pHを5.0に調整することで分散液2-1を得た。
実施例2-1と同様にして、表1の組成にて分散液2-2~2-14を得た。なお、実施例2-8、比較例2-3,2-4の塩酸の量は、上記のように表に記載のpHとなるように添加した量である。
(比較例2-5)
実施例2-1と同様とするが、表2-1の通りにダイズ油、高度精製卵黄レシチンの量を変えて、かつオレイン酸を分散液に対して0.24%となる様に添加して乳化し、pHをクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液の代わりに水酸化ナトリウムにて5.3に調整することで分散液2-15を得た。なお、分散液2-15は既存薬相当の分散液となる。
<粒径測定>
表2-1に記載の実施例、比較例にて調製した分散液(脂肪乳剤)について、乳化直後に精製水を用いて10~100倍に希釈し、光散乱粒度分布測定装置(FPAR-1000、大塚電子製)にて測定し、Contin法より得られる散乱強度分布のメジアン径を、粒径として記録した。
表2-1に記載の実施例、比較例にて調製した分散液について、原液のまま、コンパクトpHメーター(HORIBA製)にてpHを測定し、pHとして記録した。
表2-1に記載の実施例、比較例にて調製した分散液について、2mlずつ、シリコートバイアル瓶(CS-10、不二硝子製)に分注し、ゴム栓、アルミシールをした。40℃にて7日間、及び14日間保存した。それぞれの分散液について、以下の試験を実施した。
それぞれの分散液の調製直後、40℃にて7日間又は14日間保存後の分散液について、高速液体クロマトグラフィーによりプロスタグランジンE1を定量した。なお、この時、1-ナフトールを内部標準として使用し、定量を行った。PGE1の残存率を以下の式にて算出した。
PGE1残存率%=経時後のPGE1濃度/初期のPGE1濃度×100
分散液1mlを20mLバイアル瓶に採取する。これに2-プロパノール/ヘプタン/0.5M硫酸=40/10/1(容量比)の混合液5mLを加え、攪拌混合する。10分後、更にヘプタン3mL及び精製水3mLを加え、転倒混合する。15分静置した後、上層液3mLを10mLバイアル瓶に採取する。これに0.02質量%ナイルブルー水溶液/エタノール=1/9(容量比)の混合液1mLを加え、攪拌混合する。この混合液に対して、0.02M水酸化ナトリウムにて滴定を行い、下式にて遊離脂肪酸を算出する。これをオレイン酸濃度に換算して脂肪乳剤全量に対する質量%を算出し、40℃14日間保存前後の分散液についての濃度(質量%)の差を表2-1に記載した。
なお、標準液として15mmol/Lのオレイン酸ヘプタン溶液を使用し、Vは滴定量を表す。
遊離脂肪酸量(meq/L)=V(試料)/V(標準液)×15
<遊離プロスタグランジン量の測定>
分散液2-1、2-6及び比較用の分散液2-11について、それぞれ40mlをバイアル瓶に採取し、これにpH5.0の0.1Mクエン酸緩衝液0.2mlを添加する。透析チューブSpectra/Por2(分画分子量12~14K)を精製水にて水和処理した後、2.5質量%グリセリン水を分散液20gに対して1mlの割合で透析チューブ内に封入する。このチューブを前記分散液に浸漬し、室温にて100rpmで24時間攪拌を行う。
透析前後の分散液に含まれるプロスタグランジンE1の濃度をHPLCにより定量し、透析前後の濃度変化から水相に遊離しているPGE1濃度を算出した。結果を表2に記す。
12週齢の高血圧自然発症ラットにイナクチンを投与し、麻酔を施す。麻酔後、ラットを保温プレート上に保定した上で、カニュレーションを大腿動脈に挿入し、糸で縫合する。大腿動脈カニュレーションは圧トランスデューサーに接続し、5秒間の平均血圧の連続モニタリングを開始する。
血圧安定後、大腿静脈カニュレーションより分散液2-1、2-6、及び比較用の分散液2-11を投与し、血圧の変化を測定する。投与前の血圧から、分散液投与後の最大血圧降下量測定した。結果を表2に記す。
表2の結果が示す様に、レシチン量が0.4質量%を下回る分散液2-11においては、相に遊離しているプロスタグランジンE1の量が多い。そして、分散液2-11においては血圧降下効果が小さく、薬効が低下している。プロスタグランジンE1含有脂肪乳剤においては、プロスタグランジンが分散質である油粒子に存在することで高い薬効を示すためと考えられる。
分散液2-1、2-7、2-9、2-10をそれぞれ5mlバイアル瓶(無色透明)中に適量採取し、精製水にて1~6倍に希釈した。1m以上離れた蛍光灯と肉眼との間にバイアル瓶を置き、バイアル瓶の側面から上記の希釈液を目視観察した。このとき、液中に目視可能な粒子が見える程度について、以下の基準にて評価を行い、結果を表2-3に示す。
D 沈殿がはっきりと見える
C 微細な粒子が少し見える
B 微細な粒子がごく僅かに見える
A 目視可能な粒子はない
実施例2-17~2-21
分散液2-9について、充填する容器を表2-4に記載の容器とする以外は実施例2-9と同様にして、40℃7日間保存し、PGE1残存率を求めた。結果を表2-4に示す。
分散液2-9 10mLをシリコートバイアル瓶(CS-10、不二硝子製)に分注し、ゴム栓、アルミシールをした。これをオートクレーブ(オートクレーブSP200、ヤマト科学社)を用いて121℃での保持時間を1分として高圧蒸気滅菌した。この液の外観を観察したところ、油滴の分離が見られた。
分散液2-9 500mlを、滅菌フィルターとしてザルトポア2(直径47mm、孔径0.2μm、ザルトリウス・ステディム・ジャパン社)を用い、加圧濾過器にて0.2MPaの差圧をかけ、濾過滅菌を行った。分散液全量を閉塞なく濾過滅菌できた。外観、粒径、pH、PGE1量を上記と同様に測定したところ、濾過前後で有意な変化は見られなかった。
本出願は、2011年3月31日出願の日本特許出願(特願2011-080876)、2011年3月31日出願の日本特許出願(特願2011-080877)、2011年9月6日出願の日本特許出願(特願2011-194203)及び2011年9月6日出願の日本特許出願(特願2011-194204)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
Claims (21)
- プロスタグランジン類、油成分、レシチン、pKaが4.0~6.0の解離基を有する水溶性の酸又はその塩、及び水を含んでなる脂肪乳剤であって、
前記レシチンの含有量が前記油成分の0.15質量倍以上であり
かつ、pHが4.5~6.0であるプロスタグランジン含有脂肪乳剤。 - 前記水溶性の酸又はその塩が、0.01mmol/L~5mmol/L含まれることを特徴とする請求項1に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記水溶性の酸がクエン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤におけるレシチンの含有量が、前記油成分の含有量に対して0.3質量倍以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のプロスラグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤における油成分の含有量が、脂肪乳剤中0.01~5質量%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のプロスラグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤が更に高級脂肪酸を含有し、脂肪乳剤における高級脂肪酸の含有量が、前記レシチンの含有量に対して0.06質量倍以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記プロスタグランジン類がプロスタグランジンE1であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- プロスタグランジン類、油成分、レシチン、及び水を含んでなる脂肪乳剤であって、
前記レシチンの含有量が前記プロスタグランジン類の含有量の500~5000質量倍であり、
前記レシチンの含有量が前記油成分の含有量の0.3~10質量倍であり、かつ、
高級脂肪酸の含有量が前記レシチンの含有量の0.06質量倍以下であることを特徴とする、プロスタグランジン含有脂肪乳剤。 - 前記レシチンの含有量が脂肪乳剤全量に対して0.4~2質量%であることを特徴とする請求項8に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤におけるプロスタグランジン類中、水相中に遊離しているプロスタグランジン類の比率が10%以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載のプロスタグランジンン含有脂肪乳剤。
- 前記油成分の含有量が脂肪乳剤全量に対して0.2~5質量%であることを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤が更にpKaが4~6の解離基を有する水溶性の酸又はその塩を含むことを特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤における前記水溶性の酸又はその塩の含有量が、0.01mmol/L~5mmol/Lであることを特徴とする請求項12に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤のpHが4.5~6.0の範囲であることを特徴とする請求項8~13のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 光散乱法により測定した前記脂肪乳剤の平均粒径が30~150nmであることを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記レシチンが、ホスファチジルコリンを98質量%以上含有する卵黄レシチンであることを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記油成分が、ダイズ油であることを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記プロスタグランジン含有脂肪乳剤が、濾過滅菌されたプロスタグランジン含有脂肪乳剤であることを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 請求項1~18のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤を含む注射用製剤。
- 請求項1~18のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤又は請求項19の注射用製剤がシリンジに充填されていることを特徴とするプレフィルドシリンジ製剤。
- 請求項19又は20におけるプロスタグランジン含有脂肪乳剤を濾過滅菌する工程を含むことを特徴とする請求項19又は20における注射用製剤の製造方法。
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