WO2012067135A1 - 麦汁オフフレーバーが低減された麦芽飲料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

 アルコールゼロのビール様麦芽飲料を製造する方法が開示される。該方法は、テルペンを添加することにより麦汁由来のオフフレーバーを低減することを含んでなる。この方法により、不快な麦汁オフフレーバーが低減されたアルコールゼロのビール様麦芽飲料が提供される。

Description

麦汁オフフレーバーが低減された麦芽飲料およびその製造方法 関連出願の参照
 本特許出願は、先に出願された日本国における特許出願である特願2010-257132号(出願日:2010年11月17日)および特願2010-257146号(出願日:2010年11月17日)に基づく優先権の主張を伴うものである。これらの先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
 本発明は、テルペンの添加により麦汁オフフレーバーが低減されたアルコールゼロのビール様麦芽飲料およびその製造方法に関する。
 近年の健康志向の高まりの中でアルコール摂取量を自己管理する消費者が増加している。また、飲酒運転に対する罰則の強化など道路交通法の改正により、自動車等の運転に従事する者のアルコール摂取に対する関心が高まっている。このような中で低アルコールあるいは無アルコールのビール風味麦芽飲料への需要が一段と高まっている。
 従来の低アルコールビール風味麦芽飲料は、通常のビール飲料同様、酵母による発酵を行うことでビールの風味を飲料に付与し、併せてアルコールの低減を図っている。これは、ビールと同様の味や香りを需要者が期待するため、アルコール発酵を完全に排除して低アルコール麦芽飲料を製造することは困難であると考えられてきたことによる。従って、従来の低アルコールビール風味麦芽飲料の製造は酵母による発酵が行われることを前提とし、酵母による代謝プロセスの改良や発酵生成物からアルコールを効果的に除去する方法が検討されてきた。
 例えば、特開2005-13142号公報(特許文献1)には、発酵の際に通気処理あるいはガス通気処理を行うことにより低アルコール飲料を製造することが開示されている。また、WO2004/018612号公報(特許文献2)には、希釈したビールや低アルコールの麦芽飲料にビール風味を付与するために特定の物質を添加する方法が開示されている。
 しかしながら、未発酵の麦汁には特有のフレーバー(麦汁フレーバー)が存在し、この麦汁フレーバーは飲用した際も、戻り香となって味わいにまで悪影響を及ぼす。麦汁フレーバーは、麦汁の仕込工程、特に煮沸での熱分解により発生するアルデヒド類に由来しており、飴様臭・穀物様臭などの原因物質として知られている。これらアルデヒド類は、通常のビール類であれば発酵工程において酵母によって代謝され、激減する。よって、酵母による発酵が行われず、または発酵を抑制して製造された麦芽飲料には、麦汁に由来するオフフレーバーが存在し、一般的には飲用に適さない。
 特開2003-250503号公報(特許文献3)には麦芽エキスと糖類を添加してなるビール風味の炭酸飲料が開示されているが、この公報では、減圧蒸留法等によりビールから脱アルコールビール濃縮液を調製し、そこに極めて少量の麦芽エキスが風味付けのために添加されているだけであり、未発酵の麦汁におけるオフフレーバーを低減する手段は開示されていない。
 一方で、WO2010/079643号公報(特許文献4)には、未発酵の麦汁を主体としたビール風味麦芽飲料の製造方法が開示されている。この公報では、不快な麦汁フレーバーを低減するために、活性炭などの吸着剤で麦汁を処理することが開示されている。
特開2005-13142号公報 WO2004/018612号公報 特開2003-250503号公報 WO2010/079643号公報
 本発明は、不快な麦汁オフフレーバーが低減されたアルコールゼロのビール様麦芽飲料とその製造方法を提供することを目的とする。
 本発明者らは、アルコールゼロのビール様麦芽飲料の製造において、麦汁にテルペンを添加することにより、麦汁由来のオフフレーバーが低減され、良好な香味が得られることを見出した。
 より具体的には、本発明者らは、アルコールゼロのビール様麦芽飲料の製造において、冷却麦汁にテルペンを添加することにより、麦汁由来のオフフレーバーが低減され、良好な香味が得られることを見出した。
 また、本発明者らは、アルコールゼロのビール様麦芽飲料の製造において、煮沸処理後、冷却前の麦汁にテルペンを添加することにより、麦汁由来のオフフレーバーが低減され、良好な香味が得られることを見出した。さらに、本発明者らは、テルペンの加熱によってテルペンの構成比が変化し、完成した麦芽飲料中に複数種のテルペンがそれぞれ所定の濃度で存在することを見出した。
 すなわち、本発明によれば、アルコールゼロのビール様麦芽飲料を製造する方法が提供され、該方法は、テルペンを添加することにより麦汁由来のオフフレーバーを低減することを含んでなる。さらに、本発明によれば、該方法によって製造された、アルコールゼロのビール様麦芽飲料が提供される。
 特に、テルペンの加熱を行わない本発明の第一の態様によれば、以下の発明が提供される。
(1)アルコールゼロのビール様麦芽飲料を製造する方法であって、テルペンを添加することにより麦汁由来のオフフレーバーを低減することを含んでなり、前記テルペンが加熱処理されない、方法。
(2)テルペンが、麦汁煮沸工程後の麦汁の冷却が完了した後に添加される、(1)に記載の方法。
(3)テルペンがテルピノレンである、(1)に記載の方法。
(4)テルピノレンが、内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対して121m/zのイオン強度が185%以上かつ22555%未満となるように添加される、(3)に記載の方法。
(5)前記(1)~(4)のいずれか一つに記載の方法によって製造された、アルコールゼロのビール様麦芽飲料。
(6)テルピノレンを含んでなるアルコールゼロのビール様麦芽飲料であって、該麦芽飲料中のテルピノレン濃度が、内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対して121m/zのイオン強度が185%以上かつ22555%未満となるように調整されている、アルコールゼロのビール様麦芽飲料。
 さらに、テルペンの加熱を行う本発明の第二の態様によれば、以下の発明が提供される。
(1)アルコールゼロのビール様麦芽飲料を製造する方法であって、テルペンを添加することにより麦汁由来のオフフレーバーを低減することを含んでなり、前記テルペンが加熱処理される、方法。
(2)前記方法が麦汁煮沸工程とその後の冷却工程を含む場合において、テルペンが、該冷却工程の完了前に添加される、(1)に記載の方法。
(3)テルペンが、麦汁に添加される前に予め加熱処理されたものである、(1)に記載の方法。
(4)テルペンがテルピノレンである、(1)に記載の方法。
(5)内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、テルピノレンの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する121m/zのイオン強度が40%以上かつ185%未満となり、D-フェンキルアルコールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する81m/zのイオン強度が13%以上かつ60%未満となり、p-シメン-8-オールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する91m/zのイオン強度が1%以上かつ5%未満となるように、テルピノレンが添加される、(4)に記載の方法。
(6)アルコールゼロのビール様麦芽飲料を製造する方法であって、テルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールを添加することにより麦汁由来のオフフレーバーを低減することを含んでなる、方法。
(7)内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、テルピノレンの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する121m/zのイオン強度が40%以上かつ185%未満となり、D-フェンキルアルコールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する81m/zのイオン強度が13%以上かつ60%未満となり、p-シメン-8-オールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する91m/zのイオン強度が1%以上かつ5%未満となるように、テルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールが添加される、(6)に記載の方法。
(8)上記(1)~(7)のいずれか一つに記載の方法によって製造された、アルコールゼロのビール様麦芽飲料。
(9)テルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールを含んでなるアルコールゼロのビール様麦芽飲料であって、内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる前記麦芽飲料のGC/MS分析において、テルピノレンの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する121m/zのイオン強度が40%以上かつ185%未満であり、D-フェンキルアルコールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する81m/zのイオン強度が13%以上かつ60%未満であり、p-シメン-8-オールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する91m/zのイオン強度が1%以上かつ5%未満である、アルコールゼロのビール様麦芽飲料。
 本発明によるアルコールゼロのビール様麦芽飲料は、未発酵または低発酵の麦汁を使用した麦芽飲料でありながら、不快な麦汁フレーバーが低減されている点で有利である。特に、本発明によれば、アルコールゼロと豊かなビール風味という需要者のニーズに同時に応えることができる点で有利であるといえる。
図1は、加熱処理前のテルピノレン香料のGC/MSクロマトグラムを示す。 図2は、80℃の熱水にテルピノレンを添加して1時間保温した溶液のGC/MSクロマトグラムを示す。 図3は、50℃の熱水にテルピノレンを添加して1時間保温した溶液のGC/MSクロマトグラムを示す。 図4は、60℃の熱水にテルピノレンを添加して1時間保温した溶液のGC/MSクロマトグラムを示す。
発明の具体的説明
定義
 本発明において「麦芽飲料」とは、麦汁を主体とする飲料を意味し、炭酸ガス等により清涼感が付与された麦芽清涼飲料も含まれるものとする。
 本発明において「ビール様」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを、その麦芽飲料が呈することを意味する。
 本発明において「アルコールゼロ」とは、酵母発酵に由来するアルコールが含まれないこと、すなわち、酵母発酵に由来するアルコールの含量が0.00重量%であることを意味する。
 本発明において「麦汁フレーバー」とは、未発酵の麦汁に特有のフレーバー(香り)を意味する。このような未発酵麦汁に特有のフレーバーとしては、麦汁の煮沸で熱分解により発生する飴様臭や穀物様臭のような不快なフレーバー(本明細書において「オフフレーバー」ということがある)が挙げられ、これらの臭気はアルデヒド類に由来していると考えられる。さらに、本発明においてオフフレーバーを「低減する」とは、人間の嗅覚がオフフレーバーを感知しないようにすることを意味する。
麦芽飲料の製造方法
 本発明によれば、アルコールゼロのビール様麦芽飲料の製造過程においてテルペンが添加され、これにより麦汁由来のオフフレーバーが低減され、良好な香味を得ることが可能となる。すなわち、本発明によれば、アルコールゼロのビール様麦芽飲料を製造する方法であって、テルペンを添加することにより麦汁由来のオフフレーバーを低減することを含んでなる方法が提供される。また、本発明の他の態様によれば、アルコールゼロのビール様麦芽飲料の製造過程においてテルペンを添加することを含んでなる、麦汁由来のオフフレーバーを低減する方法が提供される。
 本発明の第一の態様による方法では、上記の方法において用いられるテルペンは加熱処理を経ることはない。つまり、添加するテルペンとしては加熱処理を経ていないものを用い、テルペンを麦汁に添加した後は、その麦汁を加熱処理しないよう管理される。ここでいう「加熱処理」とは、用いるテルペンが変質(例えば化学構造の変化)する温度での処理、例えば、50℃以上の温度での処理を意味する。
 一方で、本発明の第二の態様による方法では、上記の方法において用いられるテルペンは、いずれかの段階で加熱処理される。例えば、テルペンは、麦汁に添加される前に予め加熱処理されたものとすることができる。あるいは、麦芽飲料の製造過程が麦汁煮沸工程などの加熱処理工程を含む場合には、その工程の前または途中でテルペンを麦汁に添加することにより、テルペンの加熱処理を行ってもよい。さらには、麦汁煮沸工程などの加熱処理工程が終了した後であっても、必要な温度が維持されている限りにおいてテルペンの加熱処理が可能であり、よって、麦汁の冷却が完了する前にテルペンを麦汁に添加することにより、テルペンの加熱処理を行ってもよい。ここでいう「加熱処理」とは、用いるテルペンが変質(例えば化学構造の変化)する温度での処理、例えば、50℃以上の温度での処理を意味する。その処理時間は、テルペンの変質を確認しながら適宜決定することができるため、特に制限されないが、好ましくは5~90分間、より好ましくは40~80分間、最も好ましくは約60分間とされる。
 本発明において麦汁に添加されるテルペンは、テルペン系化合物として知られる物質であればよく、特に制限されないが、好ましくはテルペノイド、より好ましくはモノテルペンとされる。さらに、モノテルペンとしては、ミルセン、オシメン、コスメン、メンタン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、メントール、シメン、フェンキルアルコール等が挙げられる。
 本発明の好ましい実施態様によれば、麦汁に添加されるテルペンはテルピノレンとされる。本発明の第一の態様による方法では、完成したアルコールゼロのビール様麦芽飲料におけるテルピノレンの濃度は、内部標準物質として25ppbのボルネオール(Borneol)を用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、ボルネオールに由来する110m/zのイオン強度に対して、テルピノレンに由来する121m/zのイオン強度が185%以上かつ22555%未満であることが好ましく、さらに好ましくは370%~9000%である。よって、麦汁に添加されるテルピノレンの量は、完成したアルコールゼロのビール様麦芽飲料がこのような濃度でテルピノレンを含有するように決定される。他のテルペンを麦汁に添加する場合にも、その添加量は、上記のテルピノレンの好ましい濃度範囲を参考にして決定することができる。
 また、本発明の第二の態様による方法にテルピノレンを用いた場合、完成したアルコールゼロのビール様麦芽飲料におけるテルピノレンの濃度は、内部標準物質として25ppbのボルネオール(Borneol)を用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、ボルネオールに由来する110m/zのイオン強度に対して、テルピノレンに由来する121m/zのイオン強度が40%以上かつ185%未満であることが好ましい。さらに、テルピノレンの加熱処理によって他の物質が生成され、このような他の物質のうち、特に重要と考えられるのはD-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールである。そして、完成したアルコールゼロのビール様麦芽飲料におけるD-フェンキルアルコールの濃度は、内部標準物質として25ppbのボルネオール(Borneol)を用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、ボルネオールに由来する110m/zのイオン強度に対して、D-フェンキルアルコールに由来する81m/zのイオン強度が13%以上かつ60%未満であることが好ましく、より好ましくは40%以上かつ60%未満である。完成したアルコールゼロのビール様麦芽飲料におけるp-シメン-8-オールの濃度は、内部標準物質として25ppbのボルネオール(Borneol)を用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、ボルネオールに由来する110m/zのイオン強度に対して、p-シメン-8-オールに由来する91m/zのイオン強度が1%以上かつ5%未満であることが好ましく、より好ましくは2%以上かつ5%未満である。よって、麦汁に添加されるテルピノレンの量は、完成した麦芽飲料がこのような濃度でテルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールを含有するように決定される。テルピノレン以外のテルペンを麦汁に添加する場合にも、その添加量は、上記のテルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールの好ましい濃度範囲を参考にして決定することができる。
 上記のように、本発明の第二の態様による方法においてテルピノレンを用いた場合には、テルピノレンの加熱処理によってD-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールが生成しており、これら3成分が有効成分として働くことによって麦汁由来のオフフレーバーが低減されるものと考えられる。この知見によれば、テルピノレンの加熱処理の有無にかかわらず、これら3成分を麦汁に添加することによってもオフフレーバーの低減が達成されるはずである。従って、本発明の他の態様によれば、アルコールゼロのビール様麦芽飲料を製造する方法であって、テルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールを添加することにより麦汁由来のオフフレーバーを低減することを含んでなる方法が提供される。この態様における3成分の好ましい濃度は、上述の通りである。また、この態様では、添加された3成分は加熱処理を経ないことが好ましく、そのためには、例えば、添加する3成分としては加熱処理を経ていないものを用い、これらを麦汁に添加した後は、その麦汁を加熱処理しないよう管理される。
 テルペンの多くは水溶性が低いため、テルペンを麦汁に添加する際には、グリセリン脂肪酸エステルを用いてテルペンを乳化させる等、一般的に使用される溶解促進手段を用いることが好ましい。ただし、テルペンを高温の水性溶媒に添加する場合や、水性溶媒に添加された後に加熱処理が行われる場合には、このような溶解促進手段は必ずしも必要ない。
 アルコールゼロのビール様麦芽飲料の一般的な製造方法は、当技術分野においてよく知られており、特に制限されないが、典型的には麦汁の調製工程および麦芽飲料の濾過工程を含む。例えば、これらの工程は、以下のように実行することができる。
 麦汁の調製工程は、常法に従って行うことができ、例えば、(a)麦芽粉砕物と水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得る工程、(b)得られた麦汁にホップを添加した後、煮沸する工程、(c)煮沸した麦汁を冷却する工程を行うことにより得ることができる。
 工程(a)において、麦芽粉砕物は、大麦、例えば二条大麦を、常法により発芽させ、これを乾燥後、所定の粒度に粉砕したものであれば良い。
 麦芽粉砕物と水の混合物には副原料を添加してもよい。副原料としては、例えば、米、コーンスターチ、コーングリッツ、糖類(例えば、果糖ブドウ糖液糖などの液糖)、食物繊維などが挙げられる。副原料が糖類の場合には麦汁を糖化ないし濾過した後に添加してもよい。また、水はその全量を麦芽粉砕物と混合しても、あるいはその一部を麦芽粉砕物と混合し、残りを全部または分割して糖化後の麦汁に添加してもよい。
 麦汁を構成する麦芽粉砕物、副原料および水の割合は適宜決定することができるが、工程(c)の後に得られる麦汁の糖度が3~20%、好ましくは7~14%となるように麦芽粉砕物、副原料および水の割合を決定してもよい。麦芽粉砕物、副原料および水の割合は、例えば、麦芽粉砕物100重量部に対して、副原料0~100重量部、水400~2000重量部、好ましくは、副原料0~30重量部、水600~1300重量部とすることができる。副原料が果糖ブドウ糖液糖および食物繊維の場合には、麦芽粉砕物、副原料および水の割合は、例えば、麦芽粉砕物100重量部に対して、副原料10~40重量部、水800~1500重量部、好ましくは、副原料20~30重量部、水1000~1200重量部とすることができる。この場合、果糖ブドウ糖液糖と食物繊維の重量比(固形分)は1:0.1~10とすることができる。
 上記混合物の糖化および濾過は常法に従って実施することができる。
 工程(b)では、(a)で得られた麦汁にホップを添加した後、煮沸することによりホップの風味・香気を煮出することができる。煮沸後、沈殿により生じたタンパク質などの粕を除去してもよい。
 工程(c)では、煮沸した麦汁を冷却する。この冷却は、麦汁が凍らない程度の極力低い温度、通常、1~5℃まで冷却するのが望ましい。
 麦汁には、香料、色素、起泡・泡持ち向上剤などの添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、麦汁の糖化前に添加しても、麦汁を糖化ないし濾過した後に添加してもよい。
 上記のようにして得られた麦汁を濾過して不要なタンパク質や吸着剤を除去することができる。濾過は常法に従って行うことができるが、好ましくは、珪藻土濾過機を用いて行うことができる。濾過に当たっては、麦汁飲料に脱気水を加えて希釈後に濾過し、最終製品の糖度を3~8%に調整してもよい。
 濾過の後、通常のビールまたは発泡酒の製造において行われる工程、例えば、脱気水などによる最終濃度の調節、炭酸ガスの封入、容器(例えば樽、壜、缶)への充填(パッケージング)、容器のラベリングなど、を適宜行うことができる。
 本発明の他の態様によれば、テルペン、好ましくはテルピノレンを含んでなる、アルコールゼロのビール様麦芽飲料における麦汁由来のオフフレーバーを低減するための添加剤が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、加熱処理されたテルペン、好ましくは加熱処理されたテルピノレンを含んでなる、アルコールゼロのビール様麦芽飲料における麦汁由来のオフフレーバーを低減するための添加剤が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、テルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールを含んでなる、アルコールゼロのビール様麦芽飲料における麦汁由来のオフフレーバーを低減するための添加剤が提供される。これらの添加剤は、水に溶解しやすい形態、例えばグリセリン脂肪酸エステルを用いて調製された乳液の形態で提供されてもよい。
 以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:テルペン類の添加による麦汁の風味への影響(テルペンの加熱なし)
(1)麦汁サンプルの調製
 麦汁サンプルは1.5Lスケールの装置を用いて調製した。まず、麦汁糖度4.2度に調整した冷却麦汁(仕込時の麦芽使用比率24.0%,副原料(大麦・液糖・コーングリッツ)使用比率76.0%)を調製し、この冷却麦汁に、テルピノレン(国内香料会社製造品)を各種の濃度で添加した。その際、テルピノレンは水溶性が低いため、一般的に使用されるグリセリン脂肪酸エステルを用いて乳化させた後に、冷却麦汁に添加した。こうして、試験区1~12までの各麦汁サンプルを得た。
(2)官能評価
 官能評価の評価項目として、麦汁臭の強度、テルピノレン由来の異臭の強度と、それらを総合した全体の香味バランスの3つの項目を設定した。以下に、それぞれの評価項目の具体的な定義を示す。
a.麦汁臭:麦汁の特徴的な臭いであって、麦様、麦芽様、または穀物様の、もったりとした甘い風味。無し、弱い、中、強い、の4段階で評価。
b.テルピノレン由来の異臭:サイダー様、柑橘様、機械油様、または樹木様と称される香り。無し、弱い、中、強い、の4段階で評価。
c.全体のバランス:麦汁臭の低減効果とテルピノレン異臭のバランスの度合い。良好な香味であるかどうか。バランスの程度は、×:好ましくない(麦汁臭、またはテルピノレン由来の異臭が許容範囲外)、○:許容できる範囲で好ましい(麦汁臭の低減効果が弱い、もしくはテルピノレン由来の異臭を少し感じるが、許容の範囲内)、◎:好ましい(麦汁臭が強く抑えられ、かつテルピノレン由来の異臭もほとんど感じないまたは全く感じない)の3段階で評価。
(3)質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)によるテルピノレン濃度の分析による指標成分濃度の算出
 テルピノレン香料は純度が100%ではないため、GC/MS分析によってテルピノレンの定量を行なった。香気成分の抽出方法は、C18固相カラムで抽出し、抽出物をGC/MSに供した。この定量法では、内部標準として添加した物質のイオン110m/zのレスポンスに対する、対象物質の特定イオンの相対的強度を百分率(%)で表し、これを定量値と定義した。内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、麦汁サンプル中25ppbになるように添加した。GC/MSにおけるホップ香気成分の分析条件は表1のとおりである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
(4)結果
 上記の官能評価の結果およびGC/MS分析による定量の結果を、麦汁サンプルにおけるテルピノレン香料の添加濃度とともに表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 官能評価の結果、試験区1、試験区2、試験区3、試験区4は強い麦汁由来のオフフレーバーを感じたため、麦汁臭「強」となり、全体のバランスは「×」と評価した。試験区5、試験区6、試験区7、試験区8、試験区9、試験区10、試験区11では、添加濃度が上昇するにつれて、麦汁由来のオフフレーバーが低減し、その他のオフフレーバーの発生も無かったため、麦汁臭「中」または「弱」または「無」、テルピノレン由来の異臭は「無」とし、全体のバランスも「○」もしくは「◎」とした。しかし、予備試験で示唆されたとおり、比較的高濃度で添加した試験区8、試験区9、試験区10では、ごくわずかながらテルピノレン由来の異臭が感じられたため、テルピノレン由来の異臭「弱」とした。しかし、全体の香味に対しては殆ど影響がなく、むしろ麦汁臭の低減効果のほうが望ましかったため全体のバランスは「○」とした。試験区11では、麦汁臭の低減効果に比べてテルピノレン由来のオフフレーバーが相対的に高い(許容できる範囲で好ましいものの)結果となり、麦汁臭は「無」であるものの、テルピノレン由来異臭が「中」となり、バランスも「○」となった。本試験における最大添加濃度である試験区12では、テルピノレン由来のオフフレーバーによって、大幅に香味バランスを崩す結果となり、香味バランスの評価は「×」となった。
 従って、麦汁臭を低減し、かつテルピノレン由来香気が全体の香味バランスを崩すことのなく調和した試験区は、試験区5、試験区6、試験区7、試験区8、試験区9、試験区10および試験区11であり、より好ましくは試験区6、試験区7、試験区8、試験区9および試験区10であった。
 次に、官能評価の結果とGC/MS分析によるテルピノレンの定量結果とを照合したところ、有効に麦汁臭を低減し、香味を改善するテルピノレンの定量値の範囲は次のようになった。まず、麦汁臭低減効果を得る上で好ましいテルピノレンの濃度は、麦汁サンプル中25ppbになるよう添加した内部標準物質ボルネオールのイオン110m/zに対する定量イオン121m/zのレスポンス比として182.1%以上であった。一方、テルピノレン由来のオフフレーバーを抑制する上で好ましいテルピノレンの濃度は、麦汁サンプル中25ppbになるよう添加した内部標準物質ボルネオールのイオン110m/zに対する定量イオン121m/zのレスポンス比として22555.3%未満であった。
(5)市販品の分析結果
 表3に、国内で販売されている各社アルコールゼロ飲料の、製品中のテルピノレン濃度を示した。その濃度は、上記の好ましい濃度範囲と比較して顕著に低いことがわかった。
実施例2:テルペン類の添加による麦汁の風味への影響(テルペンの加熱有り)
(1)麦汁サンプルの調製
 麦汁サンプルは1.5Lスケールの装置を用いて調製した。具体的には、麦汁糖度4.2度に調整した冷却麦汁(仕込時の麦芽使用比率24.0%,副原料(大麦・液糖・コーングリッツ)使用比率76.0%)を調製した。この冷却麦汁の製造過程において、煮沸後の熱麦汁に各種濃度のテルピノレン(国内香料会社製造品)を添加し、80℃で1時間保温した後、氷冷した。その際、テルピノレンは、乳化剤等の担体を使用せず、直接熱麦汁に添加した。こうして、試験区1~10の各麦汁サンプルを得た。
(2)官能評価
 官能評価の評価項目として、麦汁臭の強度、香料由来の異臭の強度と、それらを総合した全体の香味バランスの3つの項目を設定した。以下に、それぞれの評価項目の具体的な定義を示す。
a.麦汁臭:麦汁の特徴的な臭いであって、麦様、麦芽様、または穀物様の、もったりとした甘い風味。無し、弱い、中、強い、の4段階で評価。
b. 香料由来の異臭:樹脂様、カビ様、土様、または金属様と称される香り。無し、弱い、中、強い、の4段階で評価。
c.全体のバランス:麦汁臭の低減効果と香料由来異臭のバランスの度合い。良好な香味であるかどうか。バランスの程度は、×:明らかに好ましくない(麦汁臭、または香料由来の異臭が許容範囲外)、△:許容できるか否かの判断が難しい(麦汁臭の低減効果が弱い、または香料由来の異臭がやや強く、好ましいか好ましくないかの判断が難しい)、○:許容できる範囲で好ましい(麦汁臭の低減効果が弱い、もしくは香料由来の異臭を少し感じるが、許容の範囲内)、◎:好ましい(麦汁臭が強く抑えられ、かつ香料由来の異臭もほとんど感じないまたは全く感じない)の4段階で評価。
(3)官能評価の結果
 上記の官能評価の結果を、麦汁サンプルにおけるテルピノレン香料の添加濃度とともに表4に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 官能評価の結果、試験区1(テルピノレンを添加していないサンプル)、試験区2、試験区3は強い麦汁由来のオフフレーバーを感じたため、麦汁臭「強」となり、全体のバランスは「×」と評価した。試験区4は、少ないものの麦汁臭低減効果を感じることができたので、麦汁臭「中」、全体のバランス「○」とした。試験区5、試験区6、試験区7は、麦汁由来のオフフレーバーが強く抑えられ、かつその他のオフフレーバーの発生も無かったため、麦汁臭「弱」、香料由来異臭は「無」とし、全体のバランスも「◎」とした。しかし、テルピノレンを比較的高濃度で添加した試験区8は、麦汁臭の低減効果に比べて香料由来のオフフレーバーが相対的に高い(許容できる範囲で好ましいものの)結果となり、麦汁臭は「無」であるものの、香料由来異臭が「中」となり、バランスの評価は「△」となった。試験区9および試験区10においては、香料由来のオフフレーバーがその他の香気に比べて顕著に目立つ結果となり、香味への悪影響が大きく、香味バランスの評価は「×」となった。
 従って、麦汁臭を低減し、かつテルピノレン(香料)由来香気が全体の香味バランスを崩すことなく調和した試験区は、試験区4、試験区5、試験区6および試験区7であり、より好ましくは試験区5、試験区6および試験区7であった。
(4)質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)によるテルピノレン濃度の分析による指標成分濃度の算出
 麦汁臭低減効果と香料由来異臭の程度について、化学分析値からの解析を行った。テルピノレンを熱麦汁に添加しているため、蒸発などにより、添加濃度と残存濃度が一致しない可能性を考え、添加後のテルピノレン濃度についてGC/MS分析を行いて定量した。香気成分の抽出方法は、C18固相カラムで抽出し、抽出物をGC/MSに供した。この定量法では、内部標準として添加した物質のイオン110m/zのレスポンスに対する、対象物質の特定イオンの相対的強度を百分率(%)で表し、これを定量値と定義した。内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、麦汁サンプル中25ppbになるように添加した。GC/MSにおけるホップ香気成分の分析条件は表5のとおりである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 GC/MS分析の結果から、テルピノレン以外の多数の物質の存在を確認した。モデルとして、図1に加熱処理前のテルピノレン香料を分析したGC/MSクロマトグラムを示し、図2に80℃の熱水にテルピノレンを添加して1時間保温した溶液のGC/MSクロマトグラムを示す。また、このような物質の変化については、80℃での処理に限るわけではなく、50℃および60℃という比較的高温での処理によっても同様の現象が起こることが確認された(図3および図4)。
 次に、これらの成分について確認を行ったところ、未知物質を含む20種類以上の物質郡であることがわかった。この物質群には、例えば、γ-テルピネン(gamma-terpinene)、p-シメン(p-cymene)、テルピノレン(Terpinolene)、α-テルピネン(alpha-terpinene)、フェンコン(fenchone)、1-メチル-4-(メチルエテニル)-ベンゼン(benzene,1-methyl-4-(methylethenyl))、テルピネン-1-オール(Terpinene-1-ol)、D-フェンキルアルコール(D-Fenchyl alcohol)、β-テルピネオール(beta-terpineol)、p-シメン-8-オール(p-cymen-8-ol)、p-メチルアセトフェノン(p-methyl acetophenone)などの物質が含まれていた。特定の理論に拘束されるわけではないが、この物質群は、テルピノレンと同じC10のテルペン炭化水素やテルペノイド類を含むことから、テルピノレンを熱麦汁に直接添加したことによって何らかの化学反応が起こり、テルピノレンの一部がテルピノレン以外の水和物に変化して形成されたものと推測される。
 上記の物質群に含まれる物質のうち、官能評価の結果と整合性が取れ、かつ、より関連の強い成分を特定するために鋭意検討を重ねた結果、テルピノレンに加え、D-フェンキルアルコール(D-Fenchyl alcohol)とp-シメン-8-オール(p-cymen-8-ol)に着目してGC/MS分析を行った。
(5)官能評価の結果とGC/MS分析による定量結果との対比
 上記の官能評価の結果およびGC/MS分析による定量の結果を、麦汁サンプルにおけるテルピノレン香料の添加濃度とともに表6に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 表6に示される結果から、有効に麦汁臭を低減し、香味を改善する各成分の定量値の範囲は次のようになった。まず、麦汁臭低減効果を得る上で好ましい各成分の濃度は、麦汁サンプル中25ppbになるよう添加した内部標準物質ボルネオールのイオン110m/zに対する定量イオンのレスポンス比として、テルピノレン(定量イオン:121m/z)が37.7%以上、D-フェンキルアルコール(定量イオン:81m/z)が12.5%以上、p-シメン-8-オール(定量イオン:91m/z)が1.1%以上であった。一方、香料由来のオフフレーバーを抑制する上で好ましい各成分の濃度は、麦汁サンプル中25ppbになるよう添加した内部標準物質ボルネオールのイオン110m/zに対する定量イオンのレスポンス比として、テルピノレン(定量イオン:121m/z)が184.8%未満、D-フェンキルアルコール(定量イオン:81m/z)が59.9%未満、p-シメン-8-オール(定量イオン:91m/z)が4.9%未満であった。
(6)市販品の分析結果
 表7に、国内で販売されている各社アルコールゼロ飲料の、製品中における上記成分の濃度を示した。その濃度は、上記の好ましい濃度範囲にないことがわかった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007

Claims (15)

  1.  アルコールゼロのビール様麦芽飲料を製造する方法であって、テルペンを添加することにより麦汁由来のオフフレーバーを低減することを含んでなる、方法。
  2.  前記テルペンが加熱処理されない、請求項1に記載の方法。
  3.  テルペンが、麦汁煮沸工程後の麦汁の冷却が完了した後に添加される、請求項2に記載の方法。
  4.  テルペンがテルピノレンである、請求項2に記載の方法。
  5.  テルピノレンが、内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対して121m/zのイオン強度が185%以上かつ22555%未満となるように添加される、請求項4に記載の方法。
  6.  前記テルペンが加熱処理される、請求項1に記載の方法。
  7.  前記方法が麦汁煮沸工程とその後の冷却工程を含む場合において、テルペンが、該冷却工程の完了前に添加される、請求項6に記載の方法。
  8.  テルペンが、麦汁に添加される前に予め加熱処理されたものである、請求項6に記載の方法。
  9.  テルペンがテルピノレンである、請求項6に記載の方法。
  10.  内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、テルピノレンの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する121m/zのイオン強度が40%以上かつ185%未満となり、D-フェンキルアルコールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する81m/zのイオン強度が13%以上かつ60%未満となり、p-シメン-8-オールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する91m/zのイオン強度が1%以上かつ5%未満となるように、テルピノレンが添加される、請求項9に記載の方法。
  11.  アルコールゼロのビール様麦芽飲料を製造する方法であって、テルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールを添加することにより麦汁由来のオフフレーバーを低減することを含んでなる、方法。
  12.  内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、テルピノレンの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する121m/zのイオン強度が40%以上かつ185%未満となり、D-フェンキルアルコールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する81m/zのイオン強度が13%以上かつ60%未満となり、p-シメン-8-オールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する91m/zのイオン強度が1%以上かつ5%未満となるように、テルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールが添加される、請求項11に記載の方法。
  13.  請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって製造された、アルコールゼロのビール様麦芽飲料。
  14.  テルピノレンを含んでなるアルコールゼロのビール様麦芽飲料であって、該麦芽飲料中のテルピノレン濃度が、内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる麦芽飲料のGC/MS分析において、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対して121m/zのイオン強度が185%以上かつ22555%未満となるように調整されている、アルコールゼロのビール様麦芽飲料。
  15.  テルピノレン、D-フェンキルアルコールおよびp-シメン-8-オールを含んでなるアルコールゼロのビール様麦芽飲料であって、内部標準物質として25ppbのボルネオールを用いる前記麦芽飲料のGC/MS分析において、テルピノレンの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する121m/zのイオン強度が40%以上かつ185%未満であり、D-フェンキルアルコールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する81m/zのイオン強度が13%以上かつ60%未満であり、p-シメン-8-オールの濃度を示す指標として、ボルネオールの110m/zのイオン強度に対する91m/zのイオン強度が1%以上かつ5%未満である、アルコールゼロのビール様麦芽飲料。
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