WO2012008041A1 - 強誘電体膜、ゾルゲル溶液、成膜方法及び強誘電体膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、チタン酸バリウムにストロンチウムを加えたBa(Sr,Ti)O3は、強誘電体膜を作製できることで知られている。
また、強誘電体膜としてはペロブスカイト構造からなるPb(Zr,Ti)O3が知られている。
ところで、チタン酸バリウム、及び、チタン酸バリウムストロンチウムは強誘電体に属するが、強誘電相と常誘電相との間の相転移温度が130℃、及び、90℃以下と低く、室温では立方晶に近い結晶構造となってしまうため強誘電性は得られにくいことが知られている。そのため、強誘電性の発現には、歪により立方晶に近い結晶構造を正方晶にし、かつ分極軸方向に配向させる必要がある。また何よりも相転移温度Tcが低い為、使用温度が低い温度範囲に限定され、温度特性が悪いことが課題である(一般的に使用温度の上限はTc/2程度とされている)。
一方、PZTはTcが300℃以上に存在し、良好な強誘電性と圧電性を有するが、産業界全体が鉛フリーを目指す中において、鉛フリー化の達成が課題である。
本発明の一態様は、非鉛の材料からなる強誘電体膜を作製することを課題とする。
(1)(Baaα1−a)(Tibβ1−b)O3で(α:Mgマグネシウム、Ca2+カルシウム、Srストロンチウム、Liリチウム、Naナトリウム、Kカリウム、Rbルビジウム、Csセシウム、Mgマグネシウム、Ca2+カルシウム、Srストロンチウムの内一つ以上の金属元素、β:Tiチタン、Vバナジウム、Crクロム、Mnマンガン、Fe鉄、Coコバルト、Niニッケル、Cu銅、Zrジルコニウム、Nbニオブ、Moモリブデン、Ruルテニウム、Rhロジウム、Pdパラジウム、Ag銀、Scスカンジウム、Yイットリウム、Laランタン、Ceセリウム、Prプラセオジウム、Ndネオジウム、Smサマリウム、Euユウロピウム、Gdガドリニウム、Tbテルビウム、Dyジスプロシウム、Hoホルミウム、Erエルビウム、Tmツリウム、Ybイッテルビウム、Luルテチウム、Haハフニウム、Taタンタルの内一つ以上の金属元素)で表わされることを特徴とする強誘電体膜。
(2)上記(1)において、
前記αはアルカリ金属元素であることを特徴とする強誘電体膜。
(3)上記(2)において、
前記αはCaであることを特徴とする強誘電体膜。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかにおいて、
a,bが下記式(A),(B)を満たすことを特徴とする強誘電体膜。
(A)0.5≦a≦1
(B)0≦b≦0.5
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか一項において、
前記(Baaα1−a)(ZrbTi1−b)O3は、ペロブスカイト構造からなることを特徴とする強誘電体膜。
(6)強誘電体膜を基板上に形成するためのゾルゲル溶液において、
前記ゾルゲル溶液は、Ba,X,Zr,Tiを含むヘテロポリ酸を混合した原料溶液を含有することを特徴とするゾルゲル溶液。
(7)上記(6)において、
分子構造が非中心対称化され、非線形を発現しているケギン型構造を有するヘテロポリ酸イオンを構成要素とし、前記ヘテロポリ酸イオンのポリ原子が少なくとも1つ欠損しているか、または、ヘテロポリ酸イオンの一部のポリ原子が他の原子で置換されているヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。
(8)前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式:[XMyM′12−yO40]n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、M′はMとは異なるポリ原子、nは価数、y=1~11である。)で表されるケギン型構造を有する上記(7)に記載のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。
(9)前記ヘテロポリ酸イオンが、一般式:[XM11O39]n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、nは価数である。)で表されるケギン型構造を有する上記(7)に記載のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。
(10)前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式:[XMzM′11−zO39]n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、M′はMとは異なるポリ原子、nは価数、z=1~10である。)で表されるケギン型構造を有する上記(7)に記載のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。
(11)上記(8)乃至(10)のいずれかにおいて、
前記ヘテロポリ酸イオンの内、ヘテロ原子が、B、Si、P、S、Ge、As、Mn、Fe、Coからなる群より成り、ポリ原子が、Mo、V、W、Ti、Al、Nb、Taからなる群より成ることを特徴とする請求項7~10のいずれか一項記載のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。
(12)上記(6)乃至(11)のいずれかにおいて、
前記ゾルゲル溶液は、極性溶媒類を含有することを特徴とするゾルゲル溶液。
(13)上記(12)において、
前記極性溶媒類は、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン アセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ニトロメタン、トリクロロメタン、ジメチルホルムアミド、モノメチルホルムアミドの何れかまたは複数の組み合わせであることを特徴とするゾルゲル溶液。
(14)上記(6)乃至(13)のいずれか一項において、
前記ゾルゲル溶液は、不飽和脂肪酸を含有することを特徴とするゾルゲル溶液。
(15)上記(14)において、
前記不飽和脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸およびヘキサ不飽和脂肪酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記モノ不飽和脂肪酸は、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記ジ不飽和脂肪酸は、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記トリ不飽和脂肪酸は、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記テトラ不飽和脂肪酸は、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記ペンタ不飽和脂肪酸は、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記ヘキサ不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであることを特徴とするゾルゲル溶液。
(16)上記(6)乃至(15)のいずれかに記載のゾルゲル溶液を用いて上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の強誘電体膜を製造することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(17)上記(6)乃至(15)のいずれか一項に記載のゾルゲル溶液を基板上にスピンコート法により塗布することにより、前記基板上に塗布膜を形成し、
前記塗布膜を仮焼成し、
前記塗布膜の形成及び前記仮焼成を複数回繰り返すことにより、前記基板上に複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を成膜することを特徴とする成膜方法。
(18)上記(17)において、
前記強誘電体材料膜の膜厚が300nmを超えた厚さであり、
前記強誘電体材料膜を熱処理することにより、前記強誘電体材料膜を一括で結晶化することを特徴とする成膜方法。
(19)上記(17)または(18)に記載の成膜方法を用いて強誘電体材料膜を基板上に成膜し、
前記強誘電体材料膜を熱処理することにより、前記強誘電体材料膜を結晶化したペロブスカイト構造からなる強誘電体膜を前記基板上に形成し、
前記強誘電体膜は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の強誘電体膜であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(20)Ba,X,Zr,Tiを含むヘテロポリ酸を含む原料溶液と、極性溶媒類および不飽和脂肪酸類を含有するゾルゲル溶液を用意し、
前記ゾルゲル溶液を基板上にスピンコート法により塗布することにより、前記基板上に塗布膜を形成し、
前記塗布膜を25~450℃の温度で仮焼成することにより、前記基板上に強誘電体材料膜を形成し、
前記強誘電体材料膜を450~800℃の温度で熱処理することにより、前記強誘電体材料膜を結晶化したペロブスカイト構造からなる強誘電体膜を製造することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(21)上記(20)において、
前記基板上に強誘電体材料膜を形成する際、前記塗布膜の形成及び前記仮焼成を複数回繰り返すことにより、前記基板上に複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(22)上記(20)または(21)において、
前記強誘電体膜は、上記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の強誘電体膜であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(23)上記(17)乃至(22)のいずれか一項において、
前記基板の表面は、(111)配向したPtまたはIr膜を有することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(24)上記(17)乃至(22)のいずれか一項において、
前記基板の表面は、無配向IrOx膜、(111)Pt/IrOx無配向電極、無配向IrOx/Pt(111)電極、(111)Ir電極を有することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
塗布膜を酸素雰囲気で加圧することにより、基板の表面が無配向の膜を有していても強誘電体材料膜を結晶化することができる。
図2は、(Ba0.9,Ca0.1)(Ti0.87,Zr0.13)O3のヒステリシス評価を行った結果を示す図である。
本実施形態による強誘電体膜は、(Baaα1−a)(Tibβ1−b)O3で(α:Mgマグネシウム、Ca2+カルシウム、Srストロンチウム、Liリチウム、Naナトリウム、Kカリウム、Rbルビジウム、Csセシウム、Mgマグネシウム、Ca2+カルシウム、Srストロンチウムの内一つ以上の金属元素、β:Tiチタン、Vバナジウム、Crクロム、Mnマンガン、Fe鉄、Coコバルト、Niニッケル、Cu銅、Zrジルコニウム、Nbニオブ、Moモリブデン、Ruルテニウム、Rhロジウム、Pdパラジウム、Ag銀、Scスカンジウム、Yイットリウム、Laランタン、Ceセリウム、Prプラセオジウム、Ndネオジウム、Smサマリウム、Euユウロピウム、Gdガドリニウム、Tbテルビウム、Dyジスプロシウム、Hoホルミウム、Erエルビウム、Tmツリウム、Ybイッテルビウム、Luルテチウム、Haハフニウム、Taタンタルの内一つ以上の金属元素)で表わされるものである。
αは、アルカリ金属元素であることが好ましく、より好ましくはCaである。
また、上記の(Baaα1−a)(ZrbTi1−b)O3はペロブスカイト構造からなる。
上記のa,bが下記式(1),(2)を満たすことが好ましい。
(1)0.5≦a≦1
(2)0≦b≦0.5
次に、本実施形態による強誘電体膜の製造方法について詳細に説明する。この強誘電体膜は、(Baaα1−a)(ZrbTi1−b)O3で表わされるペロブスカイト構造強誘電体からなり、a,bは上記式(1),(2)を満たす。
(基板)
例えば6インチSiウエハのような基板上に所定の結晶面に配向した下地膜を形成する。この下地膜には、例えば(111)配向させたPt膜またはIr膜が用いられる。
基板との接触角が40°以下、好ましくは20°以下であるゾルゲル溶液を用意する。ゾルゲル溶液は、Ba,X,Zr,Tiを含むヘテロポリ酸を含む原料溶液と、極性溶媒類と不飽和脂肪酸類を含有する。
前記ゾルゲル溶液は、分子構造が非中心対称化され、非線形を発現しているケギン型構造を有するヘテロポリ酸イオンを構成要素とし、前記ヘテロポリ酸イオンのポリ原子が少なくとも1つ欠損しているか、または、ヘテロポリ酸イオンの一部のポリ原子が他の原子で置換されているヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式:[XMyM′12−yO40]n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、M′はMとは異なるポリ原子、nは価数、y=1~11である。)で表されるケギン型構造を有するものであり、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
また、前記ヘテロポリ酸イオンが、一般式:[XM11O39]n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、nは価数である。)で表されるケギン型構造を有するものであっても良く、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
また、前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式:[XMzM′11−zO39]n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、M′はMとは異なるポリ原子、nは価数、z=1~10である。)で表されるケギン型構造を有するものであり、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
前記ヘテロポリ酸イオンの内、ヘテロ原子が、B、Si、P、S、Ge、As、Mn、Fe、Coからなる群より成り、ポリ原子が、Mo、V、W、Ti、Al、Nb、Taからなる群より成ることも可能であり、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものであっても良い。
極性溶媒類は、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン アセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ニトロメタン、トリクロロメタン、ジメチルホルムアミド、モノメチルホルムアミドの何れかまたは複数の組み合わせである。
不飽和脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸およびヘキサ不飽和脂肪酸のいずれかまたは複数の組み合わせである。
モノ不飽和脂肪酸としては、例えば、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
ジ不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
トリ不飽和脂肪酸としては、例えば、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
テトラ不飽和脂肪酸としては、例えば、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
ペンタ不飽和脂肪酸としては、例えば、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
ヘキサ不飽和脂肪酸としては、例えば、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
6インチSiウエハの表面に(111)配向させたPt膜が形成された基板上にゾルゲル溶液を塗布し、このゾルゲル溶液の基板との接触を測定した結果は20°以下であった。なお、基板との接触角は1~40°(好ましくは1~20°)であれば良い。
ゾルゲル溶液を基板上にスピンコート法により塗布することにより、この基板上に塗布膜を形成し、この塗布膜を25~450℃の温度(好ましくは450℃の温度)で仮焼成し、この塗布膜の形成及び仮焼成を複数回繰り返すことにより、基板上に複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を成膜する。
(結晶化方法)
強誘電体材料膜を450~800℃の温度(好ましくは700℃の温度)で熱処理することにより、その強誘電体材料膜を結晶化することができる。この際の熱処理条件は、加圧酸素雰囲気2~9.9atm、100~150℃/secの昇温速度で、1~5min焼成することである。また、強誘電体材料膜を一括で結晶化する際の強誘電体材料膜の膜厚は300nm以上であることが好ましい。
このようにして作製された強誘電体膜は、膜厚500nm以上の厚い膜であっても気泡をほとんど含まない。言い換えると、このようにして成膜することにより、良好な厚い膜を形成することができる。その理由は、殆ど膜厚方向に有機成分が消失するような構造からなっており、基板面内では殆ど収縮せず、酸化による膨張と相殺される程度である。したがって殆ど基板に反りはないのである。
なお、上記の強誘電体材料膜の成膜及び結晶化を繰り返すことにより、膜厚2μm以上の強誘電体膜を形成することも可能である。
次に、RTA(Rapid Thermal Anneal)によりTi膜に650℃の温度で5分間の熱処理を施す。酸素雰囲気で9.9atm、100℃/secで行った。
次に、Ti膜上に100nmの第1のPt膜をスパッタ法により550~650℃の温度で成膜する。アルゴンガス圧0.4Pa、DCパワー100Wの電源出力で25分の成膜時間で形成した。
次に、第1のPt膜上に100nmの第2のPt膜を蒸着法により常温で成膜する。3.3×10−3Torr、10kVの電源出力で4分の成膜時間で形成した。
次に、RTAによりSiウエハに650~750℃の温度で1~5分間の熱処理を施す。このようにして表面に(111)配向させたPt膜を形成した6インチSiウエハを用意する。
次に、6インチSiウエハとの接触角が40°以下、好ましくは20°以下であるゾルゲル溶液を用意する。詳細には、ゾルゲル溶液は、Ba、Ca、Zr及びTiを含むヘテロポリ酸を含む原料溶液と、極性溶媒類と不飽和脂肪酸類を含有する。
強誘電体膜形成用原料溶液は、ヘテロポリ酸との混合からなり、ヘテロ原子が金属酸素酸骨格に挿入された(XlMmOn)x−型のポリ酸である。ポリ原子:M=Mo,V,W,Ti,Al,Nb,Taからなり、ヘテロ原子はHおよびC以外の元素を意味し、好ましくは、M=B,Si,P,S,Ge,As,Fe,Co,Biからなる酸化物膜形成用ゾルゲル溶液である。
極性溶媒類は、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン アセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ニトロメタン、トリクロロメタン、ジメチルホルムアミド、モノメチルホルムアミドの何れかまたは複数の組み合わせである。
不飽和脂肪酸類は、モノ不飽和脂肪酸として、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸が挙げられ、ジ不飽和脂肪酸として、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸が挙げられ、トリ不飽和脂肪酸として、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸が挙げられ、テトラ不飽和脂肪酸として、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸が挙げられ、ペンタ不飽和脂肪酸として、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸が挙げられ、ヘキサ不飽和脂肪酸として、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸が挙げられる。
次に、6インチPt電極を被覆されたSiウエハ上にゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、このSiウエハ上に1層目の塗布膜が形成される。詳細には、500μLのゾルゲル溶液を塗布し、0~500rpmまで3secで上昇させ、500rpmで3sec保持した後、2500rpmで60sec回転後、停止させた。
次に、ホットプレートにより1層目の塗布膜を175℃の温度で1分間加熱し、その後、450℃の温度で5分間仮焼成する。これにより、Siウエハ上に膜厚100nmの1層目の強誘電体材料アモルファス膜が形成される。
次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、1層目の強誘電体材料膜上に2層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、2層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、1層目の強誘電体材料膜上に膜厚100nmの2層目の強誘電体材料膜が形成される。
次いで、2層目の塗布膜と同様の方法で、2層目の強誘電体材料膜上に3層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、3層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、2層目の強誘電体材料膜上に膜厚100nmの3層目の強誘電体材料膜が形成される。このようにして3層からなる膜厚300nmの強誘電体材料膜を成膜することができる。なお、本実施形態では、3層からなる300nmの強誘電体材料膜を成膜しているが、4層目又は5層目の強誘電体材料膜を成膜することにより、4層からなる400nm又は5層からなる500nmの強誘電体材料膜を成膜しても良い。
次に、加圧RTAにより強誘電体材料膜に熱処理を施すことにより、強誘電体材料膜を結晶化して強誘電体膜を形成する。この際の熱処理条件は、酸素分圧9.9atmで加圧された酸素雰囲気中で、昇温速度120℃/secで、温度が700℃まで瞬時に昇温し、1min保持することにより結晶化を行ったのである。
なお、本実施例では、300nmの強誘電体膜を形成しているが、さらに膜厚の厚い強誘電体膜を形成することも可能である。
詳細には、上記の結晶化後に、この強誘電体材料膜の上に、上記と同様の方法で、塗布膜の形成、加熱、仮焼成を繰り返して3層乃至5層からなる膜厚300nm~500nmの強誘電体材料膜をさらに成膜し、この強誘電体材料膜を上記と同様の方法で結晶化して強誘電体膜を形成し、この強誘電体材料膜の成膜及び結晶化を上記と同様の方法でさらに2回繰り返す。これにより、膜厚1.2μm~2μmの厚い膜からなる強誘電体膜をSiウエハ上に形成したサンプルを得ることができる。
図1(A)は、サンプル1の強誘電体膜である(Ba0.9,Ca0.1)(Ti0.87,Zr0.13)O3の表面モフォロジーを示すSEM写真であり、図1(B)は、図1(A)に示すサンプル1の強誘電体膜のSEM断面写真である。
図2は、サンプル1の強誘電体膜のヒステリシス評価を行った結果を示す図である。
図2に示すように、サンプル1の強誘電体膜は、優れたヒステリシス特性を有することが確認された。
Claims (24)
- (Baaα1−a)(Tibβ1−b)O3で(α:Mgマグネシウム、Ca2+カルシウム、Srストロンチウム、Liリチウム、Naナトリウム、Kカリウム、Rbルビジウム、Csセシウム、Mgマグネシウム、Ca2+カルシウム、Srストロンチウムの内一つ以上の金属元素、β:Tiチタン、Vバナジウム、Crクロム、Mnマンガン、Fe鉄、Coコバルト、Niニッケル、Cu銅、Zrジルコニウム、Nbニオブ、Moモリブデン、Ruルテニウム、Rhロジウム、Pdパラジウム、Ag銀、Scスカンジウム、Yイットリウム、Laランタン、Ceセリウム、Prプラセオジウム、Ndネオジウム、Smサマリウム、Euユウロピウム、Gdガドリニウム、Tbテルビウム、Dyジスプロシウム、Hoホルミウム、Erエルビウム、Tmツリウム、Ybイッテルビウム、Luルテチウム、Haハフニウム、Taタンタルの内一つ以上の金属元素)で表わされることを特徴とする強誘電体膜。
- 請求項1において、
前記αはアルカリ金属元素であることを特徴とする強誘電体膜。 - 請求項2において、
前記αはCaであることを特徴とする強誘電体膜。 - 請求項1乃至3のいずれか一項において、
a,bが下記式(1),(2)を満たすことを特徴とする強誘電体膜。
(1)0.5≦a≦1
(2)0≦b≦0.5 - 請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記(Baaα1−a)(ZrbTi1−b)O3は、ペロブスカイト構造からなることを特徴とする強誘電体膜。 - 強誘電体膜を基板上に形成するためのゾルゲル溶液において、
前記ゾルゲル溶液は、Ba,X,Zr,Tiを含むヘテロポリ酸を混合した原料溶液を含有することを特徴とするゾルゲル溶液。 - 請求項6において、
分子構造が非中心対称化され、非線形を発現しているケギン型構造を有するヘテロポリ酸イオンを構成要素とし、前記ヘテロポリ酸イオンのポリ原子が少なくとも1つ欠損しているか、または、ヘテロポリ酸イオンの一部のポリ原子が他の原子で置換されているヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。 - 前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式:[XMyM′12−yO40]n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、M′はMとは異なるポリ原子、nは価数、y=1~11である。)で表されるケギン型構造を有する請求項7に記載のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。
- 前記ヘテロポリ酸イオンが、一般式:[XM11O39]n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、nは価数である。)で表されるケギン型構造を有する請求項7に記載のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。
- 前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式:[XMzM′11−zO39]n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、M′はMとは異なるポリ原子、nは価数、z=1~10である。)で表されるケギン型構造を有する請求項7に記載のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。
- 請求項8乃至10のいずれか一項において、
前記ヘテロポリ酸イオンの内、ヘテロ原子が、B、Si、P、S、Ge、As、Mn、Fe、Coからなる群より成り、ポリ原子が、Mo、V、W、Ti、Al、Nb、Taからなる群より成ることを特徴とする請求項7~10のいずれか一項記載のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むことを特徴とするゾルゲル溶液。 - 請求項6乃至11のいずれか一項において、
前記ゾルゲル溶液は、極性溶媒類を含有することを特徴とするゾルゲル溶液。 - 請求項12において、
前記極性溶媒類は、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン アセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ニトロメタン、トリクロロメタン、ジメチルホルムアミド、モノメチルホルムアミドの何れかまたは複数の組み合わせであることを特徴とするゾルゲル溶液。 - 請求項6乃至13のいずれか一項において、
前記ゾルゲル溶液は、不飽和脂肪酸を含有することを特徴とするゾルゲル溶液。 - 請求項14において、
前記不飽和脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸およびヘキサ不飽和脂肪酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記モノ不飽和脂肪酸は、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記ジ不飽和脂肪酸は、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記トリ不飽和脂肪酸は、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記テトラ不飽和脂肪酸は、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記ペンタ不飽和脂肪酸は、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであり、
前記ヘキサ不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸のいずれかまたは複数の組み合わせであることを特徴とするゾルゲル溶液。 - 請求項6乃至15のいずれか一項に記載のゾルゲル溶液を用いて請求項1乃至6のいずれか一項に記載の強誘電体膜を製造することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
- 請求項6乃至15のいずれか一項に記載のゾルゲル溶液を基板上にスピンコート法により塗布することにより、前記基板上に塗布膜を形成し、
前記塗布膜を仮焼成し、
前記塗布膜の形成及び前記仮焼成を複数回繰り返すことにより、前記基板上に複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を成膜することを特徴とする成膜方法。 - 請求項17において、
前記強誘電体材料膜の膜厚が300nmを超えた厚さであり、
前記強誘電体材料膜を熱処理することにより、前記強誘電体材料膜を一括で結晶化することを特徴とする成膜方法。 - 請求項17または18に記載の成膜方法を用いて強誘電体材料膜を基板上に成膜し、
前記強誘電体材料膜を熱処理することにより、前記強誘電体材料膜を結晶化したペロブスカイト構造からなる強誘電体膜を前記基板上に形成し、
前記強誘電体膜は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の強誘電体膜であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。 - Ba,X,Zr,Tiを含むヘテロポリ酸を含む原料溶液と、極性溶媒類および不飽和脂肪酸類を含有するゾルゲル溶液を用意し、
前記ゾルゲル溶液を基板上にスピンコート法により塗布することにより、前記基板上に塗布膜を形成し、
前記塗布膜を25~450℃の温度で仮焼成することにより、前記基板上に強誘電体材料膜を形成し、
前記強誘電体材料膜を450~800℃の温度で熱処理することにより、前記強誘電体材料膜を結晶化したペロブスカイト構造からなる強誘電体膜を製造することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。 - 請求項20において、
前記基板上に強誘電体材料膜を形成する際、前記塗布膜の形成及び前記仮焼成を複数回繰り返すことにより、前記基板上に複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。 - 請求項20または21において、
前記強誘電体膜は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の強誘電体膜であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。 - 請求項17乃至22のいずれか一項において、
前記基板の表面は、(111)配向したPtまたはIr膜を有することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。 - 請求項17乃至22のいずれか一項において、
前記基板の表面は、無配向IrOx膜、(111)Pt/IrOx無配向電極、無配向IrOx/Pt(111)電極、(111)Ir電極を有することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
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