JP5866593B2 - 強誘電体膜、成膜方法及び強誘電体膜の製造方法 - Google Patents

強誘電体膜、成膜方法及び強誘電体膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、強誘電体膜、成膜方法及び強誘電体膜の製造方法に関する。
従来のPb(Zr,Ti)O(以下、「PZT」という。)膜の製造方法について説明する。
4インチウエハ上に例えば(111)に配向したPt膜を形成し、このPt膜上にスピンコータによってPZTゾルゲル溶液を回転塗布する。次に、この塗布されたPZTゾルゲル溶液をホットプレート上で加熱保持して乾燥させ、水分を除去した後、さらに高温に保持したホットプレート上で加熱保持して仮焼成を行う。これを複数回繰り返しPZTアモルファスを生成する。
次いで、仮焼成を行った後のPZTアモルファスに加圧式ランプアニール装置(RTA:rapidly thermal anneal)を用いてアニール処理を行ってPZT結晶化を行う。この結晶化されたPZT膜はペロブスカイト構造からなる。(例えば特許文献1参照)
一方、PZTはTcが300℃以上に存在し、良好な強誘電性と圧電性を有するが、産業界全体が鉛フリーを目指す中において、鉛フリー化の達成が課題である。
WO2006/087777
上述したように産業界において非鉛の材料からなる強誘電体膜の作製が求められている。
本発明の一態様は、非鉛の材料からなる強誘電体膜を作製することを課題とする。
下記の(1)〜(22)は、本発明の複数の態様について説明するものである。
(1)K、Na、Nb及びOを有することを特徴とする強誘電体膜。
(2)上記(1)において、
前記強誘電体膜は、ペロブスカイト構造からなる(K1−XNa)NbO膜であり、Xが下記式を満たすことを特徴とする強誘電体膜。
0.3≦X≦0.7
(3)上記(1)又は(2)において、
前記強誘電体膜は、ゾルゲル法により形成されていることを特徴とする強誘電体膜。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか一項において、
前記強誘電体膜の上及び下の少なくとも一方に形成された結晶性酸化物を具備することを特徴とする強誘電体膜。
(5)上記(4)において、
前記結晶性酸化物は、ペロブスカイト構造を有することを特徴とする強誘電体膜。
(6)上記(4)又は(5)において、
前記結晶性酸化物は、前記強誘電体膜に比べて誘電率が高いことを特徴とする強誘電体膜。
ここでいう誘電率が高いこととは、結晶性酸化物全体の誘電率が強誘電体膜全体の誘電率より高いことを意味し、いわゆる実質誘電率を意味する。
(7)上記(4)乃至(6)のいずれか一項において、
前記結晶性酸化物は、島状又は膜状に形成されていることを特徴とする強誘電体膜。
(8)上記(4)乃至(7)のいずれか一項において、
前記結晶性酸化物の厚さは1〜30nmであることを特徴とする強誘電体膜。
ここでいう結晶性酸化物の厚さは、結晶性酸化物が強誘電体膜の上及び下の一方のみに形成されている場合はその厚さを意味し、結晶性酸化物が強誘電体膜の上及び下の両方に形成されている場合はその両方の合計厚さを意味する。
(9)上記(4)乃至(8)のいずれか一項において、
前記結晶性酸化物がPb(Zr,Ti)Oであり、
前記強誘電体膜及び前記結晶性酸化物の合計の質量に対する前記結晶性酸化物中のPbの合計質量が1000ppm以下であることを特徴とする強誘電体膜。
(10)K、Na及びNbを含有するゾルゲル溶液を基板上にスピンコート法により塗布することにより、前記基板上に塗布膜を形成し、
前記塗布膜を仮焼成することにより、前記基板上に強誘電体材料膜を形成することを特徴とする成膜方法。
(11)上記(10)において、
前記ゾルゲル溶液に含有する前記K、Na及びNbの合計濃度は、10〜50mol/リットルであることを特徴とする成膜方法。
(12)上記(10)又は(11)において、
前記基板上に強誘電体材料膜を形成する際、前記塗布膜の形成及び前記仮焼成を複数回繰り返すことにより、前記基板上に複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を形成することを特徴とする成膜方法。
(13)上記(10)乃至(12)のいずれか一項に記載の成膜方法を用いて強誘電体材料膜を基板上に成膜し、
前記強誘電体材料膜を酸素雰囲気で熱処理することにより、前記強誘電体材料膜を結晶化した強誘電体膜を前記基板上に形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(14)上記(13)において、
前記熱処理は、0.0993〜0.98307MPaの圧力範囲で行うことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(15)上記(13)又は(14)において、
前記強誘電体膜は、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の強誘電体膜であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(16)基板上にK、Na及びNbを含有するゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、前記基板上に塗布膜を形成し、
前記塗布膜を仮焼成することにより、前記基板上に強誘電体材料膜を形成し、
前記強誘電体材料膜上に、島状又は膜状の第1の結晶性酸化物もしくは第1の結晶性酸化物形成用材料膜を形成し、
前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を酸素雰囲気で熱処理することにより、前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した強誘電体膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(17)上記(16)において、
前記基板上に塗布膜を形成する前に、前記基板上に島状又は膜状の第2の結晶性酸化物もしくは第2の結晶性酸化物形成用材料膜を形成しておき、前記塗布膜は、前記第2の結晶性酸化物もしくは前記第2の結晶性酸化物形成用材料膜の上に形成されることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(18)基板上にK、島状又は膜状の第1の結晶性酸化物もしくは第1の結晶性酸化物形成用材料膜を形成し、
前記第1の結晶性酸化物もしくは前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜の上に、K、Na及びNbを含有するゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、前記第1の結晶性酸化物もしくは前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜の上に塗布膜を形成し、
前記塗布膜を仮焼成することにより、前記第1の結晶性酸化物もしくは前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜の上に強誘電体材料膜を形成し、
前記強誘電体材料膜上に遮蔽膜を形成し、
前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を酸素雰囲気で熱処理しながら前記遮蔽膜によってK及びNaが前記強誘電体材料膜中から離脱するのを抑制することにより、前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した強誘電体膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(19)上記(16)乃至(18)のいずれか一項において、
前記ゾルゲル溶液に含有する前記K、Na及びNbの合計濃度は、10〜50mol/リットルであることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(20)上記(16)乃至(19)のいずれか一項において、
前記強誘電体材料膜を形成する際、前記塗布膜の形成及び前記仮焼成を複数回繰り返すことにより、複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(21)上記(16)乃至(20)のいずれか一項において、
前記熱処理は、0.0993〜0.98307MPaの圧力範囲で行うことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(22)上記(16)乃至(21)のいずれか一項において、
前記強誘電体膜は、上記の(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の強誘電体膜であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
本発明の一態様によれば、非鉛の材料からなる強誘電体膜を作製することができる。
図1は、本発明の一態様に係る強誘電体膜を模式的に示す断面図である。
図2は、(K1−XNa)NbO膜のSEM写真である。
図3は、図2に示す(K1−XNa)NbOのヒステリシス評価を行った結果を示す図である。
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図1は、本発明の一態様に係る強誘電体膜を模式的に示す断面図である。
本実施形態による強誘電体膜は、K、Na、Nb及びOを有するものであって、詳細には、(K1−XNa)NbO膜12である。
また、上記の(K1−XNa)NbOはペロブスカイト構造からなる。
上記のXは下記式(1)を満たすことが好ましい。
(1)0.3≦X≦0.7
(K1−XNa)NbO膜12の上及び下の少なくとも一方には結晶性酸化物11,13が形成されている。
結晶性酸化物11,13は、好ましくはABOで表されるペロブスカイト構造強誘電体からなる強誘電体膜であって、前記ペロブスカイト構造強誘電体は、例えばAサイトイオンとしてPb2+を含み、かつBサイトイオンとしてZr4+及びTi4+を含むPb(Zr,Ti)Oの強誘電体であってもよい。この場合は、結晶性酸化物11,13にPbを含むため、(K1−XNa)NbO膜12及び結晶性酸化物11,13の合計の質量に対する結晶性酸化物11,13中のPbの合計質量が1000ppm以下であることが好ましい。これにより、鉛フリーといってもよい程度の鉛含有量となる。
次に、本実施形態による強誘電体膜の製造方法について図1を参照しつつ詳細に説明する。この強誘電体膜は、(K1−XNa)NbOで表わされるペロブスカイト構造強誘電体からなり、Xは上記式(1)を満たす。
(基板)
例えば6インチSiウエハのような基板上に所定の結晶面に配向した下地膜を形成する。この下地膜には、例えば(111)配向させたPt膜またはIr膜が用いられる。
次に、下地膜上に結晶性酸化物11を形成する。この結晶性酸化物11は、島状又は膜状の結晶性酸化物であってもよいし、結晶性酸化物を形成するための公知のゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより下地膜上に塗布膜を形成し、この塗布膜を仮焼成することにより、下地膜上に塗布膜からなる結晶性酸化物形成用材料膜を成膜したものでもよい。なお、上記の塗布膜の形成及び仮焼成を複数回繰り返すことにより、複数の塗布膜からなる結晶性酸化物形成用材料膜を成膜してもよい。
次に、(K1−XNa)NbO膜12を形成するためのゾルゲル溶液を用意する。このゾルゲル溶液は、K、Na及びNbを含むヘテロポリ酸を含む原料溶液と、極性溶媒類と不飽和脂肪酸類を含有する。ゾルゲル溶液に含有するK、Na及びNbの合計濃度は、10〜50mol/リットルであるとよい。
前記ゾルゲル溶液は、分子構造が非中心対称化され、非線形を発現しているケギン型構造を有するヘテロポリ酸イオンを構成要素とし、前記ヘテロポリ酸イオンのポリ原子が少なくとも1つ欠損しているか、または、ヘテロポリ酸イオンの一部のポリ原子が他の原子で置換されているヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式:[XMM′12−y40n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、M′はMとは異なるポリ原子、nは価数、y=1〜11である。)で表されるケギン型構造を有するものであり、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
また、前記ヘテロポリ酸イオンが、一般式:[XM1139n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、nは価数である。)で表されるケギン型構造を有するものであっても良く、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
また、前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式:[XMM′11−z39n−(式中、Xはヘテロ原子、Mはポリ原子、M′はMとは異なるポリ原子、nは価数、z=1〜10である。)で表されるケギン型構造を有するものであり、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
前記ヘテロポリ酸イオンの内、ヘテロ原子が、B、Si、P、S、Ge、As、Mn、Fe、Coからなる群より成り、ポリ原子が、Mo、V、W、Ti、Al、Nb、Taからなる群より成ることも可能であり、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものであっても良い。
極性溶媒類は、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン アセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ニトロメタン、トリクロロメタン、ジメチルホルムアミド、モノメチルホルムアミドの何れかまたは複数の組み合わせである。
不飽和脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸およびヘキサ不飽和脂肪酸のいずれかまたは複数の組み合わせである。
モノ不飽和脂肪酸としては、例えば、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
ジ不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
トリ不飽和脂肪酸としては、例えば、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
テトラ不飽和脂肪酸としては、例えば、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
ペンタ不飽和脂肪酸としては、例えば、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
ヘキサ不飽和脂肪酸としては、例えば、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
次に、結晶性酸化物11上に上記のゾルゲル溶液を塗布する。このゾルゲル溶液の基板との接触を測定した結果は20°以下であった。なお、基板との接触角は1〜40°(好ましくは1〜20°)であれば良い。
ゾルゲル溶液の塗布は、スピンコート法により行う。これにより、結晶性酸化物11上に塗布膜を形成し、この塗布膜を25〜450℃の温度(好ましくは450℃の温度)で仮焼成することにより、結晶性酸化物11上に塗布膜からなる(K1−XNa)NbO材料膜を成膜する。なお、この塗布膜の形成及び仮焼成を複数回繰り返すことにより、結晶性酸化物11上に複数の塗布膜からなる(K1−XNa)NbO材料膜を成膜してもよい。
次に、(K1−XNa)NbO材料膜上に結晶性酸化物13を成膜する。この結晶性酸化物13は、結晶性酸化物11と同様のものを用いることができる。
(結晶化方法)
結晶性酸化物11、(K1−XNa)NbO材料膜及び結晶性酸化物13を450〜900℃の温度(好ましくは900℃の温度)の酸素雰囲気で熱処理することにより、それらを結晶化することができる。この際の熱処理条件は、0.0993〜0.98307MPaの圧力範囲で行うとよい。また、この際の熱処理条件は、加圧酸素雰囲気2〜9.9atm、100〜150℃/secの昇温速度で、1〜5min焼成するとよい。また、(K1−XNa)NbO材料膜を一括で結晶化する際の(K1−XNa)NbO材料膜の膜厚は300nm以上であることが好ましい。
このようにして結晶化された(K1−XNa)NbO膜12は、Xが下記式(1)を満たすことが好ましい。
(1)0.3≦X≦0.7
この(K1−XNa)NbO膜12は、膜厚500nm以上の厚い膜であっても気泡をほとんど含まない。言い換えると、このようにして成膜することにより、良好な厚い膜を形成することができる。その理由は、殆ど膜厚方向に有機成分が消失するような構造からなっており、基板面内では殆ど収縮せず、酸化による膨張と相殺される程度である。したがって殆ど基板に反りはないのである。
なお、上記の(K1−XNa)NbO材料膜の成膜及び結晶化を繰り返すことにより、膜厚2μm以上の(K1−XNa)NbO膜12を形成することも可能である。
また上記のようにして結晶化された結晶性酸化物11,13の合計厚さは、1〜30nmであり、好ましくは15〜25nmであり、より好ましくは20nmである。
なお、図1では、強誘電体膜12の上及び下の両方に結晶性酸化物11,13を形成しているが、強誘電体膜12の上及び下の少なくとも一方に結晶性酸化物を形成してもよい。このように結晶性酸化物が強誘電体膜の上及び下の一方のみに形成されている場合は、その一方の結晶性酸化物の厚さが、1〜30nmであり、好ましくは15〜25nmであり、より好ましくは20nmである。
結晶性酸化物11,13における結晶が(K1−XNa)NbO材料膜を結晶化する際の核となるため、ペロブスカイト構造に結晶化されにくい(K1−XNa)NbO材料膜の結晶化を迅速に進めることが可能となる。このように結晶性酸化物11,13が結晶化の核として作用するため、(K1−XNa)NbO材料膜の少なくとも一方に結晶性酸化物が形成されていればよい。
(K1−XNa)NbO材料膜の下にのみ結晶性酸化物11を形成する場合は、(K1−XNa)NbO材料膜の上には遮蔽膜を形成しておくとよい。この遮蔽膜は、(K1−XNa)NbO材料膜を酸素雰囲気で熱処理して結晶化する際にK及びNaが(K1−XNa)NbO材料膜中から離脱するのを抑制するために機能するものであれば、種々のものを用いることができる。
また、結晶性酸化物11,13は、強誘電体膜である(K1−XNa)NbO膜12に比べて誘電率が高いことが好ましい。ここでいう誘電率が高いこととは、結晶性酸化物11,13全体の誘電率が強誘電体膜12全体の誘電率より高いことを意味し、いわゆる実質誘電率を意味する。これにより、結晶性酸化物11,13及び(K1−XNa)NbO膜12に直列に電圧を印加した際に、誘電率が低い(K1−XNa)NbO膜12に電界が加えられる。
本実施形態によれば、非鉛の材料からなる強誘電体膜である(K1−XNa)NbO膜12を作製することができる。
また、本実施形態によれば、(K1−XNa)NbO材料膜を、結晶性酸化物11と結晶性酸化物13によって挟んだ状態で結晶化の熱処理を行うため、(K1−XNa)NbO材料膜中のKとNaが抜けることを抑制でき、結晶化された(K1−XNa)NbO膜12の膜質を向上させることができる。
また、(K1−XNa)NbO材料膜に結晶化の熱処理を行う際に加圧酸素雰囲気とすることにより、(K1−XNa)NbO材料膜中のKとNaが抜けることを抑制でき、結晶化された(K1−XNa)NbO膜12の膜質を向上させることができる。
また、結晶性酸化物11,13は、(K1−XNa)NbO材料膜を結晶化した後に除去してもよい。この際の除去方法は、例えばエッチング法を用いる。
6インチSiウエハ上に酸化シリコン膜を介して10〜30nmのTi膜をスパッタ法により成膜する。詳細には、RFスパッタリング方法により、形成した。Ti膜は白金と酸化シリコンの密着層の役割をしている。Ti膜の成膜条件はアルゴンガス圧0.2Pa、0.12kWの電源出力で20分の成膜時間で形成した。基板温度は200℃で行った。
次に、RTA(Rapid Thermal Anneal)によりTi膜に650℃の温度で5分間の熱処理を施す。酸素雰囲気で9.9atm、100℃/secで行った。
次に、Ti膜上に100nmの第1のPt膜をスパッタ法により550〜650℃の温度で成膜する。アルゴンガス圧0.4Pa、DCパワー100Wの電源出力で25分の成膜時間で形成した。
次に、第1のPt膜上に100nmの第2のPt膜を蒸着法により常温で成膜する。3.3×10−3Torr、10kVの電源出力で4分の成膜時間で形成した。
次に、RTAによりSiウエハに650〜750℃の温度で1〜5分間の熱処理を施す。このようにして表面に(111)配向させたPt膜を形成した6インチSiウエハを用意する。
次に、このSiウエハ上に結晶性酸化物を形成するためのPZT強誘電体材料膜を成膜する。この際の成膜条件は下記のとおりである。
PZT強誘電体薄膜形成用ゾルゲル溶液としては、三菱マテリアル株式会社製、ブタノールを溶媒とする鉛が15%過剰に添加された、濃度10重量%濃度のEl溶液を用いた。この市販ゾルゲル溶液に、ジメチルアミノエタノールというアルカリ性アルコールを、体積比で、Elゾルゲル溶液:ジメチルアミノエタノール=7:3の割合で添加したところ、pH=12と強アルカリ性を示した。本溶液を用いて、PZT薄膜のスピンコート形成を行った。スピンコータはミカサ株式会社製MS−A200を用いて行った。先ず800rpmで5秒、1500rpmで10秒回転させた後、徐々に8000rpm(6000rpm以上であればよい)まで回転を上昇させて1分回転させた後、150℃のホットプレート(アズワン株式会社製セラミックホットプレートAHS−300)上に5min、大気中で放置した後、300℃のホットプレート(同AHS−300)上で5min、同じく大気中で放置した後、室温まで冷却した。このようにして、15%過剰鉛を含んだ厚さ10nmのPZT薄膜をSiウエハ上に形成した。
次に、上記のPZT薄膜との接触角が40°以下、好ましくは20°以下であるゾルゲル溶液を用意する。詳細には、ゾルゲル溶液は、K、Na及びNbを含むヘテロポリ酸を含む原料溶液と、極性溶媒類と不飽和脂肪酸類を含有する。
(K1−XNa)NbO膜形成用原料溶液は、ヘテロポリ酸との混合からなり、ヘテロ原子が金属酸素酸骨格に挿入された(Xx−型のポリ酸である。ポリ原子:M=Mo,V,W,Ti,Al,Nb,Taからなり、ヘテロ原子はHおよびC以外の元素を意味し、好ましくは、M=B,Si,P,S,Ge,As,Fe,Co,Biからなる酸化物膜形成用ゾルゲル溶液である。
極性溶媒類は、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン アセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ニトロメタン、トリクロロメタン、ジメチルホルムアミド、モノメチルホルムアミドの何れかまたは複数の組み合わせである。
不飽和脂肪酸類は、モノ不飽和脂肪酸として、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸が挙げられ、ジ不飽和脂肪酸として、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸が挙げられ、トリ不飽和脂肪酸として、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸が挙げられ、テトラ不飽和脂肪酸として、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸が挙げられ、ペンタ不飽和脂肪酸として、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸が挙げられ、ヘキサ不飽和脂肪酸として、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸が挙げられる。
次に、PZT薄膜上にゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、このPZT薄膜上に1層目の塗布膜が形成される。詳細には、500μLのゾルゲル溶液を塗布し、0〜500rpmまで3secで上昇させ、500rpmで3sec保持した後、2000rpmで60sec回転後、停止させた。
次に、ホットプレートにより1層目の塗布膜を200℃の温度で1分間加熱し、その後、450℃の温度で1分間仮焼成する。これにより、第1のPZTN材料膜上に膜厚125nmの1層目の強誘電体材料アモルファス膜が形成される。
次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、1層目の強誘電体材料膜上に2層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、2層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、1層目の強誘電体材料膜上に膜厚125nmの2層目の強誘電体材料膜が形成される。
次いで、2層目の塗布膜と同様の方法で、2層目の強誘電体材料膜上に3層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、3層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、2層目の強誘電体材料膜上に膜厚125nmの3層目の強誘電体材料膜が形成される。これを繰り返すことにより12層の強誘電体材料膜が形成される。このようにして12層からなる膜厚1.5μmの強誘電体材料膜を成膜することができる。
次に、この強誘電体材料膜上に結晶性酸化物を形成するためのPZT強誘電体材料膜を成膜する。この際の成膜条件は上記のPZT薄膜と同様である。
次に、加圧RTAにより強誘電体材料膜、PZT薄膜に熱処理を施すことにより、これらの膜を結晶化して強誘電体膜である(K1−XNa)NbO膜、PZT結晶化膜を形成する。この際の熱処理条件は、酸素分圧9.9atmで加圧された酸素雰囲気中で、昇温速度100℃/secで、温度が900℃まで瞬時に昇温し、1min保持することにより結晶化を行ったのである。
なお、本実施例では、1.5μmの強誘電体膜を形成しているが、さらに膜厚の厚い強誘電体膜を形成してもよいし、膜厚の薄い強誘電体膜を形成してもよい。
図2は、サンプル1の強誘電体膜(膜厚1.5μm)である(K,Na)NbO膜のSEM写真である。
図3は、サンプル1の強誘電体膜のヒステリシス評価を行った結果を示すP−Eヒステリシス特性の図である。
図3に示すように、サンプル1の強誘電体膜は、優れたヒステリシス特性を有することが確認された。なお、図3の横軸は印加電圧(Volts)を示し、図3の縦軸は残留分極(μC/cm)を示している。

Claims (10)

  1. 基板上に形成されたペロブスカイト構造からなる(K 1−X Na )NbO 膜と、
    前記(K 1−X Na )NbO 膜上に形成された結晶性酸化膜と、
    を具備し、
    前記(K 1−X Na )NbO 膜は、ゾルゲル法により形成されており、
    Xが下記式を満たすことを特徴とする強誘電体膜。
    0.3≦X≦0.7
  2. 請求項において、
    前記結晶性酸化は、ペロブスカイト構造を有することを特徴とする強誘電体膜。
  3. 請求項又はにおいて、
    前記結晶性酸化は、前記強誘電体膜に比べて誘電率が高いことを特徴とする強誘電体膜。
  4. 請求項乃至のいずれか一項において、
    前記結晶性酸化の厚さは1〜30nmであることを特徴とする強誘電体膜。
  5. 請求項乃至のいずれか一項において、
    前記結晶性酸化がPb(Zr,Ti)Oであり、
    前記強誘電体膜及び前記結晶性酸化の合計の質量に対する前記結晶性酸化中のPbの合計質量が1000ppm以下であることを特徴とする強誘電体膜。
  6. 基板上にK、Na及びNbを含有するゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、前記基板上に塗布膜を形成し、
    前記塗布膜を仮焼成することにより、前記基板上に強誘電体材料膜を形成し、
    前記強誘電体材料膜上に結晶性酸化形成用材料膜を形成し、
    前記強誘電体材料膜及び前記結晶性酸化形成用材料膜を酸素雰囲気で熱処理することにより、前記強誘電体材料膜を結晶化したペロブスカイト構造からなる(K 1−X Na )NbO 及び前記結晶性酸化形成用材料膜を結晶化した結晶性酸化膜を形成し、
    Xが下記式を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
    0.3≦X≦0.7
  7. 請求項において、
    前記ゾルゲル溶液に含有する前記K、Na及びNbの合計濃度は、10〜50mol/リットルであることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  8. 請求項6または7において、
    前記強誘電体材料膜を形成する際、前記塗布膜の形成及び前記仮焼成を複数回繰り返すことにより、複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  9. 請求項乃至のいずれか一項において、
    前記熱処理は、0.0993〜0.98307MPaの圧力範囲で行うことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  10. 請求項6乃至9のいずれか一項において、
    前記結晶性酸化膜がPb(Zr,Ti)O であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
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