JP2017228760A - 圧電体基板及びその製造方法、ならびに液体吐出ヘッド - Google Patents
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Abstract
Description
その中の一つとして、圧電体薄膜を用いた素子を組み込んだ、インクジェット記録ヘッドが開示されている(特許文献1)。この用途に用いられる圧電体薄膜が充分な電気機械変換機能(変位を促す圧力)を発現するためには、1μm〜25μm程度の膜厚が必要である。また、変位を精度良く制御するためには、圧電体薄膜は均一であることが望まれる。
このように、PZT薄膜を(110)面に優先配向させることは更なる圧電素子の性能向上のために有効な方法の一つとして挙げられるが、その作製は他の面に優先配向させたものに比べて困難であった。これまで(110)面に配向させる方法とされてきたものは、特許文献2に代表されるような、Siや酸化マグネシウムの(110)面単結晶基板から順次層をエピタキシャル成長させて、(110)面に配向した圧電膜を得る方法である。しかしこの方法では、高価な(110)面単結晶基板を使用すること、層間で格子不整合にならないように成膜する材料を選ばなければならないことがネックとなる。
(1)中間層としてTiもしくはTi酸化物を成膜した基板に対して、Ptからなる下部電極を、基板加熱を行わず室温に近い温度でスパッタリング法にて基板上に形成すること。
(2)チタン酸鉛前駆体を含む第一の塗工液を下部電極上に塗布し、乾燥してチタン酸鉛前駆体を含む第一の前駆体層を形成する。その際、その乾燥温度を調整すること、加えて該第一の前駆体層を結晶化させずに、チタン酸ジルコン酸鉛前駆体を含む第二の塗工液を該第一の前駆体層上に塗布し、乾燥して第二の前駆体層を形成する際の乾燥温度を調整する。
本発明の第二の観点は、第一の観点に基づく観点であって、第一の前駆体層を形成する工程において、焼成を行わず結晶化させないことを特徴とする。
本発明の第三の観点は、第一の観点に基づく発明であって、第一の前駆体層を形成した後、該第一の前駆体層上に第二の塗工液を塗布し、乾燥させて第二の前駆体層を形成する工程において、乾燥を行う際の温度を310℃〜360℃の範囲内にすることを特徴とする。
本発明の第四の観点では、第一及び第三の観点に基づく発明であって、基板と下部電極の間に中間層として導入する、Ti若しくはTi酸化物の膜厚を、2nm以上30nm以下であることを特徴とする。
本発明の第五の観点では、第一及び第三の観点に基づく発明であって、下部電極として成膜したPt上に第一の塗工液を塗布し、乾燥させて第一の前駆体層を形成する工程において、乾燥を行う際の温度を150℃〜360℃の範囲内にすることを特徴とする。
本発明の第四の観点より、中間層の厚みをこの範囲とすることで、下部電極と基板の密着性を保ちつつ、下部電極並びに圧電体薄膜の結晶性を大きく向上させることが出来る。
本発明の第五の観点より、中間層の拡散による配向変化や結晶性の悪化を抑えて、安定して(110)面に優先配向した圧電体薄膜を形成することが出来る。
図1は、一実施形態の圧電体基板の縦断面模式図である。図1中の1は圧電体薄膜を支持する下地基板、2は中間層、3は電極(下部電極)を示している。また、4は配向制御層、5は配向制御層上に設けられた圧電体層を示している。配向制御層4と圧電体層5を併せて圧電体薄膜ということがある。
なお、圧電体層の材料中に、Pb、Zr、Ti以外の微量の元素をドーピングしても良い。ドーピングを行う場合にドーパントとして用いることのできる元素の具体的な例としてはLa、Ca、Sr、Ba、Sn、Th、Y、Sm、Ce、Bi、Sb、Nb、Ta、W、Mo、Cr、Co、Ni、Fe、Cu、Si、Ge、Sc、Mg、Mn等の元素を挙げることができる。これらの元素を含む化合物を塗工液の調製時に添加すればよい。添加量は、Pb(1.00〜1.20)(ZrxTi1−x)O3(xが0.4〜0.6)の0.1質量%から2質量%が好ましい。
ゾルゲル法ではまず、原料となる各成分金属の加水分解性化合物、その部分加水分解性化合物、またはその部分重縮合性化合物(これらを総称して前駆体という)を含有する塗工液を基板上に塗工し、その塗工液を乾燥させる。この後、空気中で、この塗工液を加熱し、さらにその結晶化温度以上で焼成して結晶化させることにより圧電体薄膜を成膜する。上記のゾルゲル法はもっとも安価、簡便に圧電体薄膜を成膜できる。
本明細書では、上記のゾルゲル法、MOD法、およびこれらを組み合わせた方法をあわせて「ゾルゲル法」と称する。
図2〜図4は、上記のようにして得られる圧電体基板を備えた、一実施形態による液体吐出ヘッドを示すものである。この液体吐出ヘッドは、液体吐出ヘッド用基板21と、複数のインク等の液体を吐出する液体吐出口22と、複数の圧力室23と、各圧力室23にそれぞれ対応するように配設されたアクチュエーター25とから構成されている。各圧力室23はそれぞれ、各液体吐出口22に対応して設けられ、液体吐出口22に連通している。アクチュエーター25はその振動により、圧力室23内の液体の容積変化を生じさせて、液体吐出口22から液体を吐出させる。液体吐出口22は、ノズルプレート24に所定の間隔をもって形成され、圧力室23は液体吐出ヘッド用基板21に、液体吐出口22にそれぞれ対応するように並列して形成されている。なお、本実施形態では、液体吐出口22がアクチュエーター25の下面側に設けられているが、アクチュエーター25の側面側に設けることもできる。液体吐出ヘッド用基板21の上面には各圧力室23にそれぞれ対応した開口部21Aが形成され、その開口部をふさぐように各アクチュエーター25が配置されている。各アクチュエーター25は、圧力室側から順に、振動板26と圧電素子30で構成され、圧電素子30は圧電体薄膜27と一対の電極(下部電極28および上部電極29)とから構成されている。
振動板26の材料は特に限定されないが、Siなどの半導体、金属、金属酸化物、ガラスなどが好ましい。圧電素子30と振動板26は接合や接着により形成されても良いし、振動板26を基板として圧電素子30を基板上に直接、形成しても良い。さらに、液体吐出ヘッド用基板21上に振動板26を直接、形成しても良い。
次に本発明における圧電体基板の製造方法について説明する。
まず、SiO2層を最表層に有する基板を準備する。たとえば、基板としてSi基板を用いる場合は、Si基板表面を熱酸化してSiO2層を形成することができる。
次に、SiO2層上に、中間層としてTiもしくはTiO2を成膜する。中間層の成膜方法は特に限定されないが、比較的低温で成膜できるスパッタ法が好ましい。
中間層上に、続いて、下部電極としてのPtを成膜する。Ptの成膜は基板温度が10℃〜50℃の範囲内で行う。この場合も比較的低温で成膜できるスパッタ法が好ましい。このように、低温で成膜したPt膜は、(111)配向を有しているが、X線回折法にて測定されたそのピーク位置は結晶化されたPt(111)よりも0.1°以上低角側にシフトしたものが得られる。つまり、結晶化されたPt(111)よりも格子間隔が広い状態で成膜される。
本薄膜の製造工程は、以下の(1)〜(6)の工程に分類される。
(1)配向制御層形成用塗工液(第一の塗工液という)及び圧電体層形成用塗工液(第二の塗工液という)の製造(調製)工程。
(2)第一の塗工液を基板に塗工する塗工工程。
(3)基板上に塗工した第一の塗工液中の溶剤を揮発させ、配向制御層の前駆体層(第一の前駆体層という)を形成する乾燥工程。
(4)第二の塗工液を第一の前駆体層上に塗工する塗工工程。
(5)第一の駆体層上に塗工した第二の塗工液中の溶剤を揮発させ、圧電体薄膜前駆体層を形成する乾燥工程。
(6)基板上の第一及び第二の前駆体層を合わせて結晶化させる焼成工程。
塗工液の製造工程では、基板上に塗工する有機溶剤とPTO前駆体、PZT前駆体を含む塗工液をそれぞれ製造する。PTO及びPZTの前駆体の例としては、各成分金属の加水分解性化合物、その部分加水分解性化合物、その部分重縮合性化合物、熱分解性化合物、またはこれらの化合物の原料を挙げることができる。これらの化合物を生成する原料としては、有機金属化合物を挙げることができる。例えば、上記金属の金属アルコキシド、有機酸塩、β−ジケトン錯体などの金属錯体が代表例である。金属錯体についてはアミン錯体をはじめとして、各種の他の錯体を利用できる。β−ジケトン錯体を形成するためのβ−ジケトンとしては、アセチルアセトン(=2,4−ペンタンジオン)、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等を挙げることができる。
第一の塗工液の塗工工程では、基板上に有機溶剤と配向制御層前駆体を含む第一の塗工液を塗工する。このようにして、基板上に有機溶剤と配向制御層前駆体とを含む層が形成された状態とする。第一の塗工液の塗工方法としては、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコートなど公知の塗工方法を用いることができる。また、基板上に塗工液を塗工する際、基板の塗工液を塗工する面は水平方向(鉛直方向に直交する方向)に配置されていることが好ましい。これにより、均一な膜厚および配向制御層前駆体の分布を有する層を得ることができる。第一の塗工液は1回だけ塗工しても、複数回、塗工しても良い。
1回の第一の塗工液の塗工により得られる第一の前駆体層の膜厚は特に限定されないが、最終的に焼成されて得られる配向制御層の膜厚が5nm以上100nm以下となる膜厚が好ましい。
第一の塗工液の乾燥工程では、塗工した第一の塗工液から有機溶剤を無風環境下で蒸発させて、第一の前駆体層を得る。この工程は、150℃以上360℃以下の温度で行う。第一の塗工液を乾燥する温度をこの範囲とすることで、(110)面に優先配向した圧電体薄膜を作ることが出来る。乾燥温度をこの範囲未満にすると、有機溶剤の蒸発が充分に進まず、第一の前駆体層中に有機溶剤の成分が残ってしまうことにより、圧電体層への悪影響が懸念される。また、乾燥温度をこの範囲より高くしてしまうと、中間層として採用しているTiが下部電極のPt表面に析出し、第一の前駆体層に影響を与えて圧電体薄膜を(111)面に成長させてしまう。乾燥処理を行う時間は特に限定されないが、5分以上かつ60分未満であることが望ましい。
この工程は、乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源内に基板を入れる、または基板を乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源と直接、接触させることにより行うことができる。これらの中でも、加熱温度の均一性の点から、基板の裏面から加熱するホットプレートが好ましい。このときホットプレートの設定温度と実際の温度は設置環境によっては±10℃ほど変動することもある。
乾燥工程は、基板の塗工液を塗工した面(塗工面)が無風環境下となるように行う。具体的には、塗工面に温風、熱風の給気を行う給気口、あるいは排気を行うための排気口を設けない。また、給気口および排気口を設ける場合には、基板上で有機溶剤や熱風の流れが生じないようにする。これにより、基板上の塗工液を塗工した面上、20cmの位置において気体の流速が0.05m/s以下となるようにする。
第二の塗工液の塗工工程では、前工程で形成された第一の前駆体層上に有機溶剤とPZT前駆体を含む第二の塗工液を塗工する。このようにして、第一の前駆体層上に有機溶剤とPZT前駆体とを含む第二の前駆体層が形成された状態とする。塗工液の塗工方法としては、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコートなど公知の塗工方法を用いることができる。また、基板上に第二の塗工液を塗工する際、基板の塗工液を塗工する面は水平方向(鉛直方向に直交する方向)に配置されていることが好ましい。これにより、均一な膜厚および圧電体薄膜前駆体の分布を有する層を得ることができる。第二の塗工液は1回だけ塗工しても、複数回、塗工しても良い。
塗工膜厚は、第二の塗工液中のPZT前駆体の濃度と、塗工液の塗工条件を変化させることで、制御することが可能であり、この条件は実験より求めることができる。例えば、2000rpmのスピンコート法で、固形分濃度が20質量%以上25質量%以下の第二の塗工液を塗工し、第二の塗工液の乾燥を行う。これにより、一回の塗工で200nm以上330nm以下の膜厚の圧電体層に相当する第二の前駆体層を形成できる。
第二の塗工液の乾燥工程では、塗工した第二の塗工液から有機溶剤を無風環境下で蒸発させて、第二の前駆体層を得る。この工程は、310℃以上360℃以下の温度で行う。第二の塗工液を乾燥する温度をこの範囲とすることで、(110)面に優先配向した圧電体薄膜を作ることが出来る。乾燥温度を310℃未満にすると、詳しいメカニズムは不明であるが、焼成処理後の圧電体層の(110)面が成長せず、(111)面や(100)面に優先配向したり、若しくは各面が混合した状態となってしまう。また、乾燥温度を360℃より高くしてしまうと、第一の前駆体層のときと同様に、中間層として採用しているTiが下部電極のPt表面に析出し、第一の前駆体層に影響を与えて圧電体層を(111)面が成長してしまう。乾燥処理を行う時間は特に限定されないが、5分以上、60分以下であることが好ましい。
この工程は、乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源内に基板を入れる、または基板を乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源と直接、接触させることにより行うことができる。これらの中でも、加熱温度の均一性の点から、基板の裏面から加熱するホットプレートでの加熱が好ましい。
乾燥工程は、基板の塗工液を塗工した面(塗工面)が無風環境下となるように行う。具体的には、塗工面に温風、熱風の給気を行う給気口、あるいは排気を行うための排気口を設けない。また、給気口および排気口を設ける場合には、基板上で有機溶剤や熱風の流れが生じないようにする。これにより、基板上の塗工液を塗工した面上、20cmの位置において気体の流速が0.05m/s以下となるようにする。
第二の前駆体層の形成後、焼成処理により、第一並びに第二の前駆体層を合わせて加熱して、圧電体薄膜を形成する。圧電体薄膜は、PTOからなる配向制御層4とPZTからなる圧電体層5を含む。また、配向制御層4と圧電体層5の界面は両者の混在したものであってもよく、チタン酸鉛からチタン酸ジルコン酸鉛へ組成が徐々に変化するものであってもよい。このとき、第二の前駆体層を形成する前に、第一の前駆体層に単独で焼成を行うと、第二の塗工液を塗工、焼成して得られた圧電体薄膜は(110)面には成長せず、(110)面以外の面が優先して成長した圧電体薄膜となる。
この工程は、乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源内に基板を入れる、またはこれらの熱源を基板に接触させることにより行うことができる。この際、加熱は、500℃以上800℃以下で行うことが好ましい。また、加熱雰囲気は、酸化性雰囲気であればよく、大気雰囲気下、20%超の酸素を含む雰囲気下などで行うことができる。加熱の時間は特に限定されないが、2分以上60分未満であることが望ましい。両前駆体層の加熱工程は複数回に分けて行っても良いし、1回だけでも良い。
圧電体薄膜の製造装置は、塗工手段、乾燥手段、加熱手段を有する。塗工手段は、基板上に、有機溶剤とPTO前駆体、若しくはPZT前駆体とを含む第一若しくは第二の塗工液を塗工することが可能となっている。基板は、載置部に載置されるようになっている。乾燥手段は、無風環境下で塗工した各塗工液からから有機溶剤を蒸発させて、第一の前駆体層、若しくは第二の前駆体層を得ることが可能となっている。加熱手段は、両前駆体層を加熱して、両前駆体から圧電体薄膜を形成することが可能となっている。
圧電体薄膜の優先配向面は、得られた薄膜をX線回折装置(XRD;株式会社リガク製:RINT−2100)により測定し、得られた回折結果のうち、最も強度の高い配向面とした。また、得られた薄膜の(110)面における配向度は、先述の回折結果から、(110)面の強度/((100)面の強度+(110)面の強度+(111)面の強度)を計算することにより算出した。以下に測定条件を示す。
(測定条件)
X線源:Cu Kα
X線出力:40kV/10mA
X線スリット幅 入射:0.47mm
反射:0.3mm
測定条件 θ−2θ
測定範囲 2θ:20°〜45°
測定ステップ幅 0.03°
測定時間 1.0s/ステップ
各圧電体薄膜の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM:HITACHIハイテク社製 FE−SEM S−4800)を用いて倍率5万倍及び10万倍で撮影した圧電体薄膜表面の電子顕微鏡写真を使用し、写真中に写る任意の結晶粒子30個の最長径と最短径を定規にて肉眼で測定し、その平均値を圧電体薄膜の平均粒子径とした。
圧電体薄膜の第一の塗工液として、金属組成がPb/Ti=1.15/1.00で表されるチタン酸鉛(PTO)前駆体を含む塗工液を以下の通りに調製した。
酢酸鉛水和物1.2molを加熱で脱水し、これに安定化剤として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン1.2molおよび1−メトキシ−2−プロパノール(9mol)を混合し加熱撹拌することで反応させる。その後、テトライソプロポキシチタン1molを加えて更に加熱し反応させ、金属化合物を互いに複合化させた。次に、水(5mol)、エタノール(5.0mol)を添加し、加水分解反応を行い、PTO前駆体を得た。その際、酢酸(3.8mol)とアセチルアセトン(0.6mol)を加えた。その後、沸点100℃以下の溶媒をロータリーエバポレーターで完全に取り除き、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(有機溶剤)を添加して、上記金属組成比のPTOに換算した濃度が1.1質量%になるように濃度を調節し、第一の塗工液を調製した。
酢酸鉛水和物1.2molを加熱で脱水し、これに安定化剤として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン1.2molおよび1−メトキシ−2−プロパノール(9mol)を混合し加熱撹拌することで反応させる。その後、テトラn−ブトキシジルコニウム0.52mol、テトライソプロポキシチタン0.48molを加えて更に加熱し反応させ、原料金属化合物を互いに複合化させた。次に、水(5mol)、エタノール(5.0mol)を添加し、加水分解反応を行った。その際、酢酸(3.8mol)とアセチルアセトン(0.6mol)を加えた。その後、沸点100℃以下の溶媒をロータリーエバポレーターで完全に取り除き、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを添加して、上記金属組成比のPZTに換算した濃度が24質量%になるように濃度を調節し、第二の塗工液を調製した。
実施例1で、第一の塗工液を塗工後、乾燥させて第一の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの温度を340℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを実施例2の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第一の塗工液を塗工後、乾燥させて第一の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの温度を360℃とした。また、第二の塗工液を塗工後、乾燥させて第二の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの乾燥温度を340℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを実施例3の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第一の塗工液を塗工後、乾燥させて第一の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの温度を280℃とした。また、第二の塗工液を塗工後、乾燥させて第二の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの乾燥温度を360℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを実施例4の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第一の塗工液を塗工後、乾燥させて第一の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの温度を200℃とした。また、第二の塗工液を塗工後、乾燥させて第二の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの乾燥温度を340℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを実施例5の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第一の塗工液を塗工後、乾燥させて第一の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの温度を280℃とした。また、第二の塗工液を塗工後、乾燥させて第二の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの乾燥温度を340℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを実施例6の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第一の塗工液を塗工後、乾燥させて第一の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの温度を150℃とした。また、第二の塗工液を塗工後、乾燥させて第二の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの乾燥温度を330℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを実施例7の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第一の塗工液を塗工後、乾燥させて第一の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの温度を150℃とした。乾燥時間を30分とした。また、第二の塗工液を塗工後、乾燥させて第二の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの乾燥温度を330℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを実施例8の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第一の塗工液を塗工後、乾燥させて第一の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの温度を150℃とした。また、第二の塗工液を塗工後、乾燥させて第二の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの乾燥温度を330℃とし、乾燥時間を30分とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを実施例9の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第一の前駆体層を形成せずに、第二の塗工液を実施例1と同様にして基板のPt上に直接塗工し、乾燥、焼成した以外は同様の工程でPZTからなる圧電体薄膜を得た。これを比較例1の圧電体薄膜とした。
実施例1で、基板上に第一の前駆体層を形成した後、電気炉で昇温速度70℃/秒で酸素雰囲気下650℃、10分間の焼成(RTA)を行った。また、チタン酸鉛からなる配向制御層を結晶化させてから、第二の塗工液を塗工する以外、同様の工程でPZTからなる圧電体薄膜を得た。これを比較例2の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第二の塗工液を塗工後、乾燥させて第二の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの乾燥温度を280℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを比較例3の圧電体薄膜とした。
実施例2で、第二の塗工液を塗工後、乾燥させて第二の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの乾燥温度を380℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを比較例4の圧電体薄膜とした。
実施例1で、下部電極としてPtを成膜した後、ホットプレートで400℃5分加熱し、Ptを結晶化させてから、圧電体薄膜を成膜した以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを比較例5の圧電体薄膜とした。
実施例1で、第一の塗工液を塗工後、乾燥させて第一の前駆体層を形成する際の、ホットプレートの温度を380℃とした以外は同様の工程で圧電体薄膜を得た。これを比較例6の圧電体薄膜とした。
実施例1〜9、及び比較例1〜6で得られた圧電体薄膜について、先述の評価方法を用いて優先配向面、配向度、平均粒子径を求めた。その結果を表1に示す。また、実施例1〜3のX線回折結果を図5に、比較例1〜4のX線回折結果を図6に示す。また、実施例1で使用したPt電極成膜後の基板及び比較例5で使用したPt電極成膜後の基板のX線回折結果を図7に、実施例1と比較例5のX線回折結果を図8に示す。さらに、実施例1の表面電子顕微鏡写真を図9に、実施例5〜6及び比較例6のX線回折結果を図10に、実施例7〜9のX線回折結果を図11に示す。
2 中間層
3 下部電極
4 配向制御層
5 圧電体層
21 液体吐出ヘッド用基板
21A 開口部
22 インク吐出口
23 圧力室
24 ノズルプレート
25 アクチュエーター
26 振動板
27 圧電体薄膜
28 下部電極
29 上部電極
30 圧電素子
Claims (9)
- SiO2を最表層に有する基板と、該基板のSiO2層の上に設けられたTiもしくはTiO2からなる中間層と、該中間層上に設けられたPtからなる下部電極と、該下部電極上に設けられたチタン酸鉛を含む配向制御層と、該配向制御層上に設けられた圧電体層を有し、
前記圧電体層は、Pbx(Zr(y)Ti(1−y))O3(x=1.0〜1.2、0.4<y<0.6)で表される組成を有するチタン酸ジルコン酸鉛を含み、
前記圧電体層は、X線回折法にて測定された(100)、(110)、(111)面の反射強度の総和に対する(110)面の反射強度の割合が70%以上であり、かつ表面の結晶粒子の平均粒径が1.0μm以下である、圧電体基板。 - 前記中間層の厚みは、2nm以上30nm以下であることを特徴とする、請求項1記載の圧電体基板。
- SiO2層を最表層に有する基板の、該SiO2層上に中間層としてTiもしくはTiO2を成膜する工程、
該中間層の上に下部電極として、基板温度が10℃〜50℃の範囲内でPtを成膜する工程、
該下部電極の上にチタン酸鉛前駆体を含む第一の塗工液を塗工、乾燥し、第一の前駆体層を形成する工程、
前記第一の前駆体層上に、Pbx(Zr(y)Ti(1−y))O3(x=1.0〜1.2、0.4<y<0.6)で表される組成を有するチタン酸ジルコン酸鉛の前駆体を含む第二の塗工液を塗工、310℃〜360℃の範囲で乾燥して第二の前駆体層を形成する工程、及び
前記第一及び第二の前駆体層を合わせて結晶化させる工程
とを含む圧電体基板の製造方法。 - 前記成膜されたPtは、(111)配向を有し、X線回折法にて測定されたそのピーク位置は結晶化されたPt(111)よりも0.1°以上低角側にシフトしていることを特徴とする請求項3に記載の圧電体基板の製造方法。
- 前記Ptはスパッタ法で成膜される請求項3又は4に記載の圧電体基板の製造方法。
- 前記第一の前駆体層を形成する工程における乾燥温度は、150℃〜360℃の範囲であることを特徴とする、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の圧電体基板の製造方法。
- 前記中間層の厚みを、2nm以上30nm以下とすることを特徴とする、請求項3乃至6のいずれ1項に記載の圧電体基板の製造方法。
- 液体吐出口と、前記液体吐出口に連通する圧力室と、前記圧力室に前記液体吐出口から液体を吐出するための容積変化を生じさせるアクチュエーターと、を有し、前記アクチュエーターは、前記圧力室側から順に、振動板と、請求項1又は2に記載の圧電体基板と、上部電極と、を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
- 前記圧電体基板の前記基板が、前記振動板を兼ねる請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
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