JP6949530B2 - 圧電アクチュエータの製造方法 - Google Patents
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Description
該圧電層に含まれる該チタン酸ジルコン酸鉛が、(100)、(001)または(110)方位に優先配向し、該電極層に含まれる該Ptが(111)方位に優先配向し、X線回折において、該電極層に含まれる該Ptの(111)面におけるロッキングカーブの半値幅が、1.21°以上1.54°以下であることを特徴とする。
本発明に係る圧電アクチュエータは、下地基板層と、該下地基板層上のTiおよびTiO2の少なくとも一方を含む中間層と、該中間層上のPtを含む電極層と、該電極層上のチタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電層と、を有する。ここで、該圧電層に含まれる該チタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTとも示す)は、(100)、(001)または(110)方位に優先配向している。また、該電極層に含まれる該Ptは、(111)方位に優先配向している。さらに、X線回折において、該電極層に含まれる該Ptの(111)面におけるロッキングカーブの半値幅は、1°以上である。
下地基板層は、その表面が平滑であり、熱処理時の元素の拡散を防止でき、かつ機械的強度が十分であることが好ましい。下地基板層の材料としては、下地基板層上の各層の形成過程で実施され得る熱処理において、変形、溶融しない材料が好ましく、例えばSiO2、SiNなどが挙げられる。これらの材料は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、本発明に係る圧電アクチュエータを用いて液体吐出ヘッドを製造する場合には、下地基板層を有する下地基板が圧力室を振動させる振動板であってもよく、圧力室を形成するための基板を兼ねていてもよい。例えば、シリコン(Si)等からなる半導体基板、タングステン(W)、耐熱ステンレス(SUS)等からなる金属基板、ジルコニア、アルミナ、シリカ等からなるセラミック基板等の下地基板の表面にSiO2、SiN等からなる下地基板層を形成できる。具体的には、Si基板を酸化または窒化して、その表面をSiO2またはSiNからなる層に改質することができる。なお、前記下地基板の材料は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、前記下地基板は、前記材料を複数積層して多層構成としてもよい。
中間層は、下地基板層上に配置され、下地基板層と電極層(下部電極)との密着性を向上するために挿入される層である。該密着性が高い観点から、中間層はTiおよびTiO2の少なくとも一方を含む。中間層は単層からなってもよく、複数層からなってもよい。中間層が複数層からなる場合、中間層は例えばTiからなる層とTiO2からなる層が積層された層であることができる。中間層の厚みは、2nm以上50nm以下であることが好ましく、2nm以上30nm以下であることがより好ましく、3nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。中間層の厚みが2nm以上であることにより、十分な密着性を発現することができる。また、中間層の厚みが50nm以下であることにより、材料の使用量を低減でき、コストを削減できる。
電極層は中間層上に配置され、Ptを含み、Ptからなることが好ましい。電極層としては、例えばPt金属膜、Ptを含む酸化膜が挙げられる。電極層は、Pt以外にも、Ptを含む圧電素子に通常用いられる材料を含んでいてもよい。該材料としては、例えば、Ti、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni等の金属、およびこれらの酸化物が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。電極層は一層からなってもよく、二層以上を積層したものであってもよい。電極層の厚みは、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、50nm以上500nm以下であることがより好ましく、100nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。電極層の厚みが10nm以上であることにより、安定的な電導性を付与することができる。また、電極層の厚みが1000nm以下であることにより、材料の使用量を低減でき、コストを削減できる。なお、図1に示される圧電アクチュエータでは下部電極3が電極層に相当するが、上部電極5についても電極層と同様の材料を用いることができ、同様の層構成、厚みとすることができる。
圧電層は電極層上に配置され、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含み、PZTからなることが好ましい。PZTの組成は特に限定されないが、Pby(ZrxTi1−x)O3(x=0.4〜0.6、y=1.00〜1.20)で表されるペロブスカイト型結晶を有するPZTが好ましい。ZrとTiの組成を前記範囲内にすることで、高い圧電性を有するペロブスカイト結晶を得ることができる。また、PZTの結晶構造は、正方晶や菱面体晶などを取り得るが、圧電層の分極方向を容易に膜厚方向へそろえることが出来る観点から、正方晶が好ましい。
本発明に係る圧電アクチュエータは、前述した層以外にも、例えば配向制御層、バリア層等を有していてもよい。
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、下地基板層上にTiおよびTiO2の少なくとも一方を含む中間層を形成する工程と、該中間層上にPtを含む電極層を形成する工程と、該電極層上にチタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電層を形成する工程とを含む。ここで、該中間層を形成する工程の後、且つ該電極層を形成する工程の前において、該中間層の面抵抗は3kΩ/□以上である。
本工程では、下地基板層上にTiおよびTiO2の少なくとも一方を含む中間層を形成する。下地基板層は、前述したように、例えばSi基板を酸化または窒化して、その表面をSiO2またはSiNからなる層に改質することで形成することができる。中間層は、例えばTiをスパッタすることにより形成することができる。
本工程では、中間層上にPtを含む電極層を形成する。電極層は、例えばPt、および前述した必要に応じて含まれる元素の金属又は酸化物を、中間層上にゾルゲル法等により塗布し、焼成して形成してもよく、スパッタ、蒸着等を実施することで形成してもよい。これらの中でも、熱履歴が比較的少ない観点からスパッタが好ましい。なお、電極層をスパッタにより形成する場合、スパッタされた表面の数原子層はイオンによって乱され、照射イオンの残留や非結晶層の形成が起こる場合があるため、これらを除去、安定化するために、スパッタ後に熱処理を行うことができる。該熱処理はスパッタ装置内で行ってもよく、スパッタ装置から取り出して行ってもよい。また、電極層形成の際に、電極層を所望の形状にパターニングしてもよい。該電極層の形成工程は、下部電極の形成に限らず、上部電極の形成にも適用することができる。
本工程では、電極層上にチタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電層を形成する。圧電層は、スパッタリング法、有機金属気相成長法(MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法)、ゾルゲル法等により形成することができる。これらの中でも、安価で簡便に圧電層を形成できる観点から、ゾルゲル法が好ましい。ゾルゲル法では、例えば、まず原料となる各金属の加水分解性化合物、その部分加水分解性化合物、またはその部分重縮合性化合物を含有する塗工液を調製する。前述したドーピング元素を添加する場合には、該元素を含む化合物を該塗工液の調製時に添加すればよい。調製された塗工液を電極層上に塗工し、該塗工液を乾燥して乾燥塗工層を形成する。その後、空気中で該乾燥塗工層を加熱し、結晶化温度以上の温度で焼成して結晶化させることにより、圧電層を形成することができる。
本工程では、電極層上に有機溶媒と圧電層の材料(以下、前駆体とも示す)とを含む塗工液を塗工する。これにより、有機溶媒と前駆体とを含む塗工層が形成される。前駆体の原料としては、例えば、各金属の加水分解性化合物、その部分加水分解性化合物、その部分重縮合性化合物、熱分解性化合物等が挙げられる。具体的には、有機金属化合物が挙げられる。例えば、該金属のアルコキシド、有機酸塩、β−ジケトン錯体などの金属錯体が挙げられる。金属錯体としては、アミン錯体をはじめとして、各種錯体を利用できる。β−ジケトン錯体を形成するためのβ−ジケトンとしては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン(1−(ヘプタフルオロプロピル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン)、ジピバロイルメタン(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等が挙げられる。
本工程では、塗工層から有機溶媒を蒸発させて、前駆体を含む乾燥塗工層を得る。塗工層から有機溶媒を蒸発させる際の乾燥温度は、使用する有機溶媒に適した乾燥温度であり、後述する加熱工程における加熱温度未満であれば特に限定されないが、50℃以上であることが好ましく、100℃以上450℃以下であることがより好ましい。本工程は、乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源内に入れる、または乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源に直接接触させることにより行うことができる。これらの中でも、乾燥温度の均一性の観点から、ホットプレートを用い、塗工層を有する部材の裏面から加熱を行うことが好ましい。
本工程では、乾燥塗工層を加熱して圧電層を形成する。本工程は該乾燥塗工層の形成工程と同様の方法で実施することができる。加熱温度は500℃以上800℃以下であることが好ましい。本工程における加熱は一回で行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。本工程では、乾燥塗工層を加熱して仮焼成した後、結晶化温度以上でさらに焼成して結晶化させることにより、圧電層を形成することが好ましい。
該圧電層の形成工程では、塗工手段、乾燥手段および加熱手段を有する圧電層の製造装置を用いることができる。該装置は、電極層を有する部材を載置する載置部を有することができる。塗工手段は、電極層上に有機溶媒と前駆体とを含む塗工液を塗工して、塗工層を形成することができれば特に限定されない。乾燥手段は、塗工層から有機溶媒を蒸発させて、前駆体を含む乾燥塗工層を形成することができれば特に限定されない。加熱手段は、乾燥塗工層を加熱して圧電層を形成することができれば特に限定されない。
本発明に係る液体吐出ヘッドは、本発明に係る圧電アクチュエータを有し、該圧電アクチュエータが駆動されて液体を吐出する。液体吐出ヘッドの代表的な適用例としては、インクを吐出して記録を行うインクジェット装置に適用されるインクジェットヘッドがあげられる。しかしながらこの用途に限定されず、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷や半導体基板作製などの用途としても用いることができる。本発明に係る圧電アクチュエータは繰り返し駆動における変位量低下が少ないため、本発明に係る液体吐出ヘッドは繰り返し使用に対する耐久性の高い液体吐出性能を有する。以下、図面を示して本発明に係る液体吐出ヘッドの実施形態を示すが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
薄膜の結晶性は、X線回折測定におけるロッキングカーブのピークの半値幅に基づいて判断することができる。該半値幅が大きければ、そのピークが示す配向面における結晶性が乱れており、配列が整列していないことが判別できる。
中間層の面抵抗は、共和理研製のK−705RD−B(商品名)による直流4探針法にて測定した。なお、中間層の面抵抗は、Tiからなる中間層を形成したシリコン基板をホットプレートで5分間加熱した後の、中間層表面における抵抗値であり、面内ばらつきが大きいため、約5cm□の基板の4隅と中央部の計5点の平均値として算出した。
繰り返し駆動による変位量の低下率は以下の方法により測定した。圧電アクチュエータの一部の上に、スパッタ法にて厚さ20nmの白金薄膜を積層した。その後、下部電極部分の長辺を6mm、短辺を1.5mm、圧電アクチュエータをクランプする部位(下部電極が無い部位)の長辺を4mmとした圧電アクチュエータを切り出した。これにより、長辺が10mm(その内、変位部位が6mm、クランプ部位が4mm)、短辺が1.5mmのユニモルフカンチレバーを製作した。図2は圧電アクチュエータの変位量の評価方法の概略図である。この概略図のようにユニモルフカンチレバー25をクランプ部位32にてクランプし、レーザードップラー変位計31にて印加電圧した際の変位量を計測した。
圧電層に含まれるPZTおよび電極層に含まれるPtの配向は、X線構造解析により判断した。
PZTの結晶構造は、X線構造解析により判断した。
(PZT塗工液の製造)
圧電層を形成するための塗工液として、金属組成がPb/Zr/Ti=1.2/0.52/0.48(原子比)で表されるPZT塗工液を、以下の方法で調製した。酢酸鉛水和物1.2molを加熱して脱水し、これに安定化剤として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン1.2molおよび1−メトキシ−2−プロパノール9.0molを混合し、加熱撹拌することで反応させた。その後、テトラn−ブトキシジルコニウム0.52molおよびテトライソプロポキシチタン0.48molを加えて更に加熱して反応させ、金属化合物を互いに複合化させた。次に、水5.0mol、エタノール5.0mol、酢酸3.8molおよびアセチルアセトン0.6molを添加し、加水分解反応を行い、複合有機金属酸化物である前駆体を得た。その後、沸点100℃以下の溶媒をロータリーエバポレーターで完全に取り除いた。有機溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを添加して、前記組成式から換算した金属酸化物の濃度が23質量%になるように濃度を調節し、PZT塗工液を調製した。
直径6インチ(15cm)のシリコン基板を用意した。該シリコン基板の表面を熱酸化することにより、該シリコン基板上に、厚み500nmのシリカ(SiO2)からなる下地基板層を設けた。該下地基板層上に、スパッタリングにより、厚み5nmのTiからなる中間層を形成した。その後、該シリコン基板をホットプレート(アズワン株式会社製、商品名:「シャマルホットプレートHHP−411」)上に載置して、150℃で5分間加熱した。次に、該中間層上に、スパッタ法により、厚み150nmのPtからなる下部電極を形成した。その後、該シリコン基板を該ホットプレート上に載置して、400℃で5分間加熱した。なお、下部電極に含まれるPtは(111)方位に優先配向していた。
中間層を形成した後の加熱温度、および下部電極を形成した後の加熱温度を、表1に示される温度にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に圧電アクチュエータを製造し、評価した。結果を表1に示す。
2 中間層
3 下部電極
4 圧電層
5 上部電極
Claims (7)
- 下地基板層上にTiおよびTiO2の少なくとも一方を含む中間層を形成する工程と、
該中間層上にPtを含む電極層を形成する工程と、
該電極層上にチタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電層を形成する工程と、
を含む圧電アクチュエータの製造方法であって、
該中間層を形成する工程の後、且つ該電極層を形成する工程の前において、該中間層の面抵抗が3kΩ/□以上であり、
該圧電層に含まれる該チタン酸ジルコン酸鉛が、(100)、(001)または(110)方位に優先配向し、該電極層に含まれる該Ptが(111)方位に優先配向し、X線回折において、該電極層に含まれる該Ptの(111)面におけるロッキングカーブの半値幅が、1.21°以上1.54°以下であることを特徴とする圧電アクチュエータの製造方法。 - 該中間層を形成する工程の後、且つ該電極層を形成する工程の前に、さらに該中間層を加熱する工程を含む請求項1に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
- 該中間層を加熱する工程における加熱温度が150℃以上である請求項2に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
- 該中間層の厚みが2nm以上50nm以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
- 該電極層の厚みが10nm以上1000nm以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
- 該圧電層の厚みが10nm以上20μm以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
- 該圧電層に含まれる該チタン酸ジルコン酸鉛の結晶構造が正方晶である請求項1から6のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
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