JP2004235553A - 圧電体膜成膜用支持基板、圧電体素子、インクジェット記録ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電体素子の熱的安定性、経時安定性を向上させるための圧電体膜成膜用支持基板、この圧電体膜成膜用支持基板を用いて作製した圧電体素子、およびインクジェット式記録ヘッドを提供する
【解決手段】少なくとも基板と下部電極層とを備えた構成を有する圧電体膜成膜用支持基板において、前記下部電極層が、−200MPa以上500MPa以下の面内応力を有するプラチナ層により構成されており、かつ、該プラチナ層が、前記圧電体膜成膜用支持基板の最外層に配置されていることを特徴とする圧電体膜成膜用支持基板。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも基板と下部電極層とを備えた構成を有する圧電体膜成膜用支持基板において、前記下部電極層が、−200MPa以上500MPa以下の面内応力を有するプラチナ層により構成されており、かつ、該プラチナ層が、前記圧電体膜成膜用支持基板の最外層に配置されていることを特徴とする圧電体膜成膜用支持基板。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電体素子の熱的安定性、経時安定性を向上させることのできる、最外層に形成した下部電極層の面内応力を制御した圧電体膜成膜用支持基板、この圧電体膜成膜用支持基板を用いて作製した圧電体素子およびインクジェット式記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)膜に代表される圧電体膜は、インクジェット式記録ヘッドの圧電体素子用の圧電体膜として利用される。
この用途に用いられる圧電体膜が充分な電気機械変換機能(変位を促す圧力)を発現させるためには、どのような成膜法によって形成された圧電体膜においても最終的な熱処理により膜の結晶化を促す必要がある。また、圧電体素子として充分な変位を得るためには1μm〜25μm程度の厚膜化が必要とされる。
【0003】
通常PZT膜のような圧電体膜は、スクリーン印刷法、スパッタ法、ゾルゲル法、CVD法、水熱法等で形成することができ、圧電性を有するペロブスカイト構造等の結晶を得るために通常700℃以上の温度でアニールが行なわれる。膜厚を厚くするためには、成膜する堆積時間を長くしたり、成膜を複数回繰り返したりする。前記の成膜法の内、ゾルゲル法は組成制御性に優れており、塗布と焼成を繰り返すことで容易に結晶薄膜を得ることができる。また、ゾルゲル法により得られた膜は、非常に緻密であるため、変位を促す圧力が分散することなく良い圧電特性を示すことが期待される。
【0004】
ゾルゲル法は、原料となる各成分金属の加水分解性の化合物、その部分加水分解物またはその部分重縮合物を含有する溶液を基板に塗布し、その塗膜を乾燥させた後、空気中で加熱して金属酸化物の膜を形成し、さらにその金属酸化物の結晶化温度以上で焼成して膜を結晶化させることにより圧電体膜を成膜する方法である。圧電体膜を、加水分解性または熱分解性の有機金属化合物や水酸化物を含有する原料溶液(ゾルと表すことがある)を用いて、ゾルゲル法により成膜する方法は、当業者によく知られている (例えば特許文献1) 。原料の加水分解性の金属化合物としては、金属アルコキシド、その部分加水分解物または部分重縮合物といった有機化合物が一般に使用されている。ゾルゲル法は、安価に、しかも簡便に強誘電体薄膜を成膜することのできる方法の一つである。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−236404号公報
【0006】
ゾルゲル法に類似の方法として、有機金属分解法(MOD法と表すことがある)がある。MOD法は、熱分解性の有機金属化合物、たとえば、金属のβ−ジケトン錯体やカルボン酸塩を含有する溶液を基板に塗布し、たとえば空気中あるいは酸素中で加熱して塗膜中の溶媒の蒸発および金属化合物の熱分解を生じさせて金属酸化物の膜を形成し、さらに結晶化温度以上で焼成して膜を結晶化させる方法である。本特許では、ゾルゲル法、MOD法、およびこれらが混合された方法をあわせて「ゾルゲル法」と称する。
【0007】
またゾルゲル法により成膜された圧電体素子を用いたインクジェット式プリンタヘッドが開示されている。たとえば、ゾルゲル法を利用し、下部電極上に圧電体材料を含むゾルを複数回に分けて塗布し加熱処理を繰り返すことにより、インクジェット式プリンタヘッドに用いられる圧電体素子の圧電体薄膜を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2〜4)。また、強誘電性キャパシタに適した下部電極層の製造方法については、たとえば特許文献5に開示されている。
【0008】
【特許文献2】
特開平9−92897号公報
【特許文献3】
特開平10−139594号公報
【特許文献4】
特開平10−290035号公報
【特許文献5】
特開2001−313376号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
圧電体膜は、成膜の際、結晶化度を上げるための熱処理工程において高温度熱サイクルにさらされ、また、圧電体素子を駆動させる際には圧電体素子全体に機械的な応力が繰り返しかかる。
このため、圧電体素子の下部電極層が高い面内応力を有していると、下部電極層/圧電体層界面あるいは下部電極層/基板界面で剥離を起こす可能性がある。
強誘電性キャパシタに適した下部電極層の製造方法については、たとえば上記特許文献5に開示されているが、圧電体素子に適した電極については、面内応力に着目した先行技術はない。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するもので、その目的とするところは、圧電体素子の熱的安定性、経時安定性を向上させるための圧電体膜成膜用支持基板、この圧電体膜成膜用支持基板を用いて作製した圧電体素子およびインクジェット式記録ヘッドを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記の課題を解決するため、基板上に成膜した下部電極層の面内応力値とその後の圧電体層形成時の熱安定性、圧電体素子の疲労特性の関係について鋭意研究を行い、支持基板上に下部電極層のプラチナ薄膜層を形成して得られる圧電体膜成膜用支持基板の下部電極層のプラチナ薄膜層の面内応力を−200MPa以上500MPa以下の範囲内とすることにより、電極/圧電体膜界面あるいは電極/基板界面の密着安定性が増すことを見いだし本発明を完成するに至った。
【0012】
かくして上記本発明の目的は、少なくとも基板と下部電極層とを備えた構成を有する圧電体膜成膜用支持基板において、前記下部電極層が、−200MPa以上500MPa以下の面内応力を有するプラチナ層により構成されており、かつ、該プラチナ層が、前記圧電体膜成膜用支持基板の最外層に配置されていることを特徴とする圧電体膜成膜用支持基板に係る発明によって達成することができる。
【0013】
また上記本発明の目的は、少なくとも、下部電極層と上部電極に挟持された圧電体層を備えた圧電体素子において、前記下部電極層が、上記の圧電体膜成膜用支持基板の下部電極層により構成され、かつ、前記圧電体層が、該電極層の上にゾルゲル法で形成された圧電体層により構成されたものであることを特徴とする圧電体素子に係る発明によって達成することができる。
なお、上記圧電体素子は、前記圧電体層が、一般式:Pb1−x Lax (Zry Ti1−y)O3(0≦x<1、0≦y≦1)で示される組成を有する金属酸化物を含有することを特徴とすることができる。
【0014】
また上記本発明の目的は、少なくとも、インク吐出口と、該インク吐出口に連通する圧力室と、該圧力室の一部を構成する振動板と、該圧力室の外部に設けられた該振動板に振動を付与するための圧電体素子とを有し、該振動板に付与された振動により生じる該圧力室の体積変化によって該圧力室のインクを該インク吐出口から吐出するインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記圧電体素子が上記の圧電体素子であることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドに係る発明によって達成することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の圧電体膜成膜用支持基板について説明する。
本発明の圧電体膜成膜用支持基板に使用することのできる基板は、特に限定されず、所望の用途に応じて、金属、ガラス、セラミックス製の基板等から適宜選択して用いることができる。シリコンウェハー等の基板であってもよい。基板はあらかじめ適当な表面処理、例えば、シランカップリング剤や適当な下地剤等による表面処理が成されていても良い。
【0016】
表面がシリカ層で被覆されたシリコンウェハーを基板として用いる場合には、図1に示すように、シリカ層1とプラチナ層3との間に接着層2を設けることもできる。この場合、接着層2はシリカ層1とプラチナ層3の反応を防ぐバリア層としても機能する。例えば、接着層として10nm〜80nmの層厚を有するTiOx層(金属チタンを含む)をシリカ層1の上に形成するとバリア層として機能する。接着層は、例えば、チタンの反応性スパッタリング、チタン膜の熱酸化、その他の公知の方法で形成することができる。
【0017】
本発明の圧電体膜成膜用支持基板において、基板上に形成されたプラチナ層の面内応力は、−200MPa以上500MPa以下でなければならない。さらに、面内応力を、−130MPa以上480MPa以下とするのが好ましい。面内応力が−200MPa以上500MPa以下の範囲外であると、圧電体膜を熱処理して結晶化させる時や圧電体素子として繰り返し動作させた時に電極/圧電体膜界面あるいは電極/基板界面で剥離する可能性が高くなる。
【0018】
基板上にプラチナ層を形成する方法は、形成されたプラチナ層の面内応力が−200MPa以上500MPa以下となる方法であれば特に限定されるものではない。プラチナ層の接着強度を容易に向上させることができるところから、一般的には、スパッタリング法が好ましい。
【0019】
プラチナ層をスパッタリング法によって形成する場合、使用する原料ガス種、分圧、出力等は、形成されたプラチナ層の面内応力が−200MPa以上500MPa以下となる条件であれば特に限定されるものではなく、用いる原料ガス種、基板等に適した条件のなかから適宜選択すればよい。
【0020】
スパッタリング法により形成されたプラチナ層の面内応力に大きく寄与するのは基板の加熱温度である。本発明の圧電体膜成膜用支持基板の作製においては、その系に応じた適温で基板を加熱してスパッタリングを行うことによりプラチナ層の面内応力を制御することができる。
【0021】
例えば、表面がシリカ層で被覆されたシリコンウェハーを基板として用い、この上に接着層としてTiOx層を形成し、さらにこの接着層の上にプラチナ層を形成する場合においては、図2に示すように200℃〜800℃の温度で基板を加熱し、スパッタ電力0.5kW、0.8Paのアルゴン雰囲気下でスパッタリングを行うことにより−200MPa以上500MPa以下の面内応力を有するプラチナ層を有する圧電体膜成膜用支持基板を得ることができる。
【0022】
また、プラチナ層は、本発明の目的を達成することができる範囲内において、チタン、パラジウム、イリジウム等の他の金属種を含有するものであってもよい。
本発明の圧電体膜成膜用支持基板のプラチナ層の層厚は、通常、50nm〜500nm程度が好ましい。プラチナ層の層厚を50nm以上とすることにより、下部電極としての働きや耐久性を充分なものとすることができ好ましい。また、プラチナ層の層厚を500nm以下とすると不要なコストを削減することができる。
【0023】
次に本発明の圧電体素子について記述する。
図3に、本発明の圧電体素子の一実施形態の構成を示す。同図において、4は本発明の圧電体膜成膜用支持基板であり、シリカ層1、接着層2、プラチナ層3からなる。圧電体素子は、圧電体膜成膜用支持基板のプラチナ層3の上に、圧電体層5、上部電極層6をこの順に形成して作製することができ、圧電体層5が下部電極層3と上部電極層6に挟持された構造を有する。
【0024】
上部電極層6の構成材料は特に限定されず、圧電体素子に通常用いられているものであればよく、例えば、白金や金などを使用することができる。上部電極層の層厚は、特に限定されないが、通常、0.05μm〜2μm程度とされる。
【0025】
圧電体層5の構成材料としては、一般に、圧電性を有する金属酸化物が用いられる。本発明に用いることができる金属酸化物としては、チタン酸バリウム(BTOと表すことがある)、チタン酸鉛(PTと表すことがある)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZTと表すことがある)、ランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZTと表すことがある)、PZTにさらにマグネシウムニオブ酸鉛(PMNと表すことがある)が加わった固溶体等が挙げられる。また、これらの構成材料は、微量のドープ元素を含有することができる。ドープ元素の例としては、Ca、Sr、Ba、Hf、Sn、Th、Y、Sm、Dy、Ce、Bi、Sb、Nb、Ta、W、Mo、Cr、Co、Ni、Fe、Cu、Si、Ge、U、Scなどが挙げられる。その含有量は、通常、上記構成材料の金属原子の原子分率で0.05以下である。
【0026】
本発明の圧電体素子の圧電体層の構成材料としては、中でも、一般式:Pb1−x Lax (Zry Ti1−y)O3(0≦x<1、0≦y≦1)で示される組成を有する金属酸化物、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)およびランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)は、ペロブスカイト型結晶構造を有する圧電体であり、その高い誘電率と優れた強誘電特性や光学特性から、これらの化合物の薄膜は、既にキャパシタ膜、光センサ、光回路素子などに使われている他、不揮発性メモリといった新たな応用も期待される。
【0027】
このような圧電体の薄膜を、代表的には成分金属のアルコキシド等の加水分解性または熱分解性の有機金属化合物や成分金属の水酸化物を含有するゾルを用いて、ゾルゲル法により成膜する方法は、当業者にはよく知られている。
【0028】
PLZT層をゾルゲル法により形成する場合を例にとると、Pb、La、Zr、Tiのアルコキシドおよび/または水酸化物、所望の場合は、上記ドープ元素を含む化合物等の添加物を溶剤に溶解し、水を加え加水分解してゾルを調製し、塗工液とし、この塗工液を圧電体膜成膜用支持基板上に塗工し、乾燥し、更に、予備焼成、本焼成等の熱処理工程において分解し酸化物膜とし、結晶化させてPLZT圧電体膜を得ることができる。
【0029】
溶剤としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン系などのアミド系溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤が挙げられる。これらの中で好ましい溶剤はアルコール系溶剤である。
【0030】
本発明におけるゾルゲル法において用いる溶剤の量は、金属アルコキシドに対して通常10倍モルから200倍モルであり、好ましくは20倍モルから100倍モルである。溶剤の量を200倍モル以下とすると容易にゲル化させることができ、10倍モル以上とすると加水分解時の発熱のコントロールが容易となり好ましい。
【0031】
またPbのアルコキシド化合物としては鉛2−エトキシエトキシド、鉛メトキシド、鉛エトキシド、鉛n−プロポキシド、鉛イソプロポキシド、鉛n−ブトキシド、鉛イソブトキシド、鉛t−ブトキシド等を挙げることができる。その他、各種アルコキシドおよびそのアルキル置換体、水酸化鉛等が挙げられる。
【0032】
また鉛の無機塩化合物、具体的には塩化物、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩などまた有機塩化合物、具体的にはギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩などの各種カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、またアセチルアセトナート錯体などを溶剤と混合してアルコキシドをその場(in situ)合成して用いても良い。
【0033】
La、Zr、Tiも同様のアルコキシド化合物または無機塩化合物を用いることができる。これらのPb、La、Zr、Tiのアルコキシド溶液または無機塩を前記溶剤に溶解し、加水分解し、反応を行うことにより高分子化してゾルを調製し圧電体膜を作製するための塗工液を得ることができる。
【0034】
上記各金属化合物の仕込みモル比は、一般式、Pb1−x Lax (Zry Ti1−y)O3(式中、0≦x<1、0≦y≦1)に対応した仕込みモル比としてもよいが、成膜時の焼成過程においてPbの消失による欠損がおこるため、あらかじめ塗工液調製時にPbの量を増やしておくことが好ましい。具体的には、Pb1−x Lax (Zry Ti1−y)O3(0≦x<1、0≦y≦1)に対応した仕込みモル比よりもPb化合物の仕込みモル比を5%〜50%の範囲で増やしておくのが好ましい。鉛の欠損の程度は、鉛化合物の種類や成膜条件によって異なり、実験により求めることができる。
【0035】
また、金属アルコキシドおよび/または金属塩化合物を含む溶液の加水分解には、例えば金属アルコキシドおよび/または金属塩化合物の0.05倍モル〜2倍モルの水が用いられ、より好ましくは0.5倍モル〜1.5倍モルの水が用いられる。この加水分解には、酸触媒または塩基触媒を用いることができる。触媒としては、塩酸などの鉱酸や酢酸などの有機酸が好ましく用いられる。
【0036】
ゾルは少量の安定剤を含有していてもよい。安定剤の添加により、原料の加水分解速度、重縮合速度等が抑えられ、ゾルの保存安定性が改善される。
安定剤として有用な化合物を挙げると、β−ジケトン類 (例、アセチルアセトン、ジピバロイルメタン、ベンゾイルアセトン等) 、ケトン酸類 (例、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸等) 、これらのケトン酸のメチル、プロピル、ブチル等の低級アルキルエステル類、オキシ酸類 (例、乳酸、グリコール酸、α−オキシ酪酸、サリチル酸等) 、これらのオキシ酸の低級アルキルエステル類、オキシケトン類 (例、ジアセトンアルコール、アセトイン等) 、α−アミノ酸類 (例、グリシン、アラニン等) 、アルカノールアミン類 (例、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等) が例示される。
【0037】
ゾルの濃度は特に制限されず、利用する塗工法や部分加水分解物の有無によっても異なるが、一般に金属酸化物換算で 0.1〜20質量%の範囲が好ましい。
その他、ゾルには、必要によりさらに、重合促進剤、分散促進剤、酸化防止剤、UV吸収剤、染料、顔料などの公知の各種添加剤を適宜配合することができる。
【0038】
また、ゾルには、塗工時の膜厚を厚くする目的でバインダー効果を有する化合物(バインダー化合物と表すことがある)を配合しても良い。前記のバインダー化合物は、例えば、少なくとも重量平均分子量が10000以上200000以下であるものが好ましい。重量平均分子量10000以上200000以下とすることにより、高粘度となることなく塗布時に膜を厚くすることができる。上記バインダー化合物の重量平均分子量は、20000以上100000以下であるのがより好ましい。
【0039】
上記塗工液は、前記圧電体膜成膜用支持基板の最外層を構成する下部電極層であるプラチナ層の上に塗工し乾燥される。
【0040】
塗布方法は、特に限定されるものではなく、慣用のコーティング方法、例えば、スピンコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、印刷法等により行われる。これらの方法のうち、スピンコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法が好ましい。
【0041】
塗布後、乾燥して溶剤を除去することにより圧電体前駆体膜を形成することができる。このときの温度は用いる溶剤によって異なるが、概ね100℃〜300℃が好ましい。乾燥後の1層あたりの膜厚は特に問わないが、0.01μm〜5μmが好ましい。
【0042】
厚い圧電体層を必要とするときは塗工と乾燥を繰り返す。
必要なだけ塗工と乾燥を繰り返して得た圧電体前駆体層を加熱して焼成工程を行う。焼成は金属酸化物前駆体ゾルの種類や圧電体層の用途等により条件が変わる。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)といった強誘電体材料を構成材料とする圧電体層の場合、400〜1400℃程度、好ましくは550〜800℃程度の温度で数分間〜24時間をかけて行うことができる。また焼成は、不活性ガス雰囲気、水蒸気含有雰囲気、酸素含有雰囲気(空気など)等、任意の雰囲気下で行えばよく、常圧、加圧又は減圧下で行うことができる。
【0043】
上部電極は圧電体層を形成した後に、その上部に公知の方法で形成することができる。
【0044】
上述した圧電体素子の製造方法によると、容易なプロセスで、密着性、熱的安定性、経時安定性に優れた圧電体素子を作製することができる。
前記の圧電体素子の応用としてはインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。
【0045】
以下、本発明のインクジェット式記録ヘッドの好適な一実施形態について図4を参照しながら説明する。
本発明のインクジェット式記録ヘッドは、少なくとも、インク吐出口と、該インク吐出口に連通する圧力室と、該圧力室の一部を構成する振動板と、該圧力室の外部に設けられた該振動板に振動を付与するための圧電体素子とを有し、該振動板に付与された振動により生じる該圧力室の体積変化によって該圧力室のインクを該インク吐出口から吐出するインクジェット式記録ヘッドであり、圧電体素子として上記本発明の圧電体素子を用いたことを特徴とするものである。
【0046】
図4に、本発明の好適な実施形態によるインクジェット式記録ヘッドの縦断面の一部を拡大して模式的に示した。図4に示したインクジェット式記録ヘッドの一部の構成は従来と同様であり、ヘッド基台7と、振動板9と、圧電体素子10および電源14からなるアクチュエータとから構成されている。
【0047】
圧電体素子10は、本発明の圧電体膜成膜用支持基板の下部電極層であるプラチナ層から形成された下部電極層11、その表面に形成された圧電体層12、その表面に形成された上部電極層13を有し、圧電体層12が下部電極層11と上部電極層13に挟持された構造を有する。
【0048】
ヘッド基台7には、インクを吐出する多数のインク吐出口(インクノズルと表すことがある)(図示せず)、それぞれのインクノズルに個別に連通する多数のインク経路(図示せず)、およびそれぞれのインク経路に個別に連通する多数の圧力室8が形成されており、圧力室8の一部を覆うように振動板9が取り付けられ、この振動板9によってヘッド基台7の全ての圧力室8の上面開口が閉塞されている。振動板9上には、それぞれの圧力室8と個別に対応した位置に、振動板9に振動を付与するための圧電体素子10が形成されている。そして、電源14により、所望の選択された圧電体素子10に電圧を印加することにより、圧電体素子10を変形させて、その圧電体素子が形成されている部分の振動板9を振動させる。これにより、振動板9の振動に対応した部分の圧力室8の容積が変化して、インク経路を通ってインク吐出口(ノズル)からインクが押し出されて印刷が行われることになる。
【0049】
圧電体層12の層厚は、通常、1μm〜25μmとするのが好ましい。圧電体層12の層厚が薄すぎると駆動力不足となり、厚すぎると圧電体素子10を変位させるのに大きな電圧が必要となる。このため、圧電体層12の層厚は、2μm〜12μmとするのがより好ましい。圧電体層の層厚1μm〜25μmとすると、さほど大きくない電圧で圧電体素子10を充分変位させることが可能となり好ましい。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
圧電体膜用の塗工液としてPb/La/Zr/Ti=1.1/0.01/0.52/0.48である組成(モル比)を有するPLZT前駆体ゾル(A液)およびPb/Ti=1.1/1.0である組成(モル比)を有するPT前駆体ゾル(B液)を調製した。
【0051】
(A液:PLZT酸化物前駆体ゾルの調製)
モル比がPb/La/Zr/Ti=1.1/0.01/0.52/0.48に相当する組成の酢酸鉛、ランタンイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、チタンテトライソプロポキシドを2−メトキシエタノール中で加熱溶解した。これを希塩酸で加水分解し酸化物換算で10質量%濃度のランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)の前駆体ゾル(A液)を得た。
【0052】
(B液:PT酸化物前駆体ゾルの調製)
モル比がPb/Ti=1.1/1.0に相当する組成の酢酸鉛、チタンテトライソプロポキシドを2−メトキシエタノール中で加熱溶解した。これを希塩酸で加水分解し酸化物換算で3質量%濃度のチタン酸鉛(PT)の前駆体ゾル(B液)を調製した。
【0053】
(C液:市販PZT塗工液)
また、三菱マテリアル(株)製PZT薄膜形成剤(A6;商品名)をC液として用いた。
【0054】
(プラチナ層の面内応力の評価方法)
圧電体膜成膜用支持基板のプラチナ層の面内応力は、「薄膜応力/歪み測定解析ソフトウェアR STRAIN」((株)理学電機製)を用いて算出した。
一般的に、薄膜試料の面内に引張応力が作用した場合は、薄膜試料の結晶面の面間隔dは結晶面の法線方向が応力方向に近いほど大きくなり、結晶面の法線方向が応力方向と直交する結晶面の面間隔は小さくなる。すなわち、試料薄膜の試料面の法線方向とX線回折ピ−クが観測された結晶面の法線方向との間の角度をφとすると、X線回折ピ−クが観測された結晶面の面間隔dは角φに依存した変化を示す。
上記応力算出ソフトウェアは、この原理を利用したものであり、X線回折装置と連動して、X線回折ピークが測定された特定の回折面の面間隔の変化(歪み)から応力値を求めるものである。
【0055】
[実施例1〜3](圧電体膜成膜用支持基板の作製)
表面が熱酸化SiO2膜で被覆された市販のシリコンウェハー(n型、(100)方位)上に、RFマグネトロンスパッタリング法によりスパッタ電力0.5kW、アルゴン雰囲気1.4Pa、シリコンウェハーの加熱温度250℃の条件で金属チタン層を約50nm堆積した。続いて、その上部にRFマグネトロンスパッタリング法によりスパッタ電力0.5kW、アルゴン雰囲気0.8Pa、シリコンウェハーの加熱温度250℃の条件でプラチナ層を約200nm堆積し圧電体膜成膜用支持基板を作製した。
これを圧電体膜成膜用支持基板Dとする。
圧電体膜成膜用支持基板Dのプラチナ層の面内応力を測定、算出したところ−130MPaであった。
プラチナ層堆積時のシリコンウェハーの加熱温度を下記表に記載の温度とした以外は圧電体膜成膜用支持基板Dの作製方法と同様にして、圧電体膜成膜用支持基板EおよびFを作製し、プラチナ層の面内応力を測定、算出した。得られた結果を纏め表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
[比較例1〜2]
本発明との比較のため、シリコンウェハーの加熱温度を変えた以外は圧電体膜成膜用支持基板Dの作製方法と同様にして、圧電体膜成膜用支持基板GおよびHを作製し、プラチナ層の面内応力を測定、算出した。得られた結果を纏め表2に示した。
【0058】
【表2】
【0059】
圧電体膜成膜用支持基板G、Hのいずれもプラチナ層は接着層であるチタン層を介してシリコンウェハーと密着していたが、圧電体膜成膜用支持基板Hの表面のプラチナ層は平滑性に乏しく、やや変色していた。
【0060】
[実施例4〜8](圧電体素子の作製例)
A液、B液、C液を用いて、圧電体膜成膜用支持基板D、E、Fのプラチナ層の表面に、鉛系圧電体層としてPLZT層、PZT層、PT層を各々形成した。
スピンコーターを用いて上記の各々のゾルを3000rpmで上記の圧電体膜成膜用支持基板の各々に塗布した。100℃のホットプレートで5分間、300℃のホットプレートで10分間加熱して乾燥し、溶剤を除去して前駆体膜を形成した。この塗布、乾燥の操作を12回繰り返した。最後に基板全体を700℃で1時間熱処理して結晶化させることにより各々の圧電体層を圧電体膜成膜用支持基板のプラチナ層の表面に形成した。
使用したゾル、圧電体膜成膜用支持基板と得られた圧電体層の関係を纏め表3に示した。
【0061】
これらの圧電体層についてX線回折測定を行ったところ、いずれの圧電体層も強誘電相であるペロブスカイト型結晶の単一相からなることが示唆された。
【0062】
圧電体膜成膜用支持基板D上にC液を塗工して得られた圧電体層CDの上部に金層をスパッタ法により形成し圧電体素子を得た。この圧電体素子の金層と圧電体膜成膜用支持基板Dのプラチナ層を電極として、ソーラトロン社製インピーダンス/ゲインフェイズアナライザー(SI1260)を用いて、圧電体素子の圧電体層の誘電率を測定したところ10から10000Hzの周波数領域において1000以上の比誘電率が得られた。また、併せて、Radiant社製HVS−6000を用いてヒステリシス測定を行った。外部電場の大きさを正負に変化させることにより自発分極が反転するという強誘電体に特有の履歴曲線が観測された。この残留分極値+Prは20Vの電圧印加後で約27μC/cm2を示した。
【0063】
同様にして表3に示す各実施例の圧電体層の上部に金層をスパッタ法により形成した。この金層と圧電体膜成膜用支持基板上のプラチナ層を電極とし、誘電率を測定したところ10から10000Hzの周波数領域においていずれの圧電体素子の圧電体層も60以上の比誘電率を示した。また、併せてヒステリシス測定も行った。外部電場の大きさを正負に変化させることにより自発分極が反転するという強誘電体に特有の履歴曲線が観測された。
【0064】
このようなヒステリシス特性は記憶ユニットとして活用可能で、これらの圧電体素子を複数併設し個別に電圧を印加できるようにすればメモリを構成することも可能である。
【0065】
【表3】
【0066】
[比較例3〜4]
本発明との比較のため、圧電体膜成膜用支持基板G、H上に圧電体層を形成した。
スピンコーターを用いてC液を3000rpmで圧電体膜成膜用支持基板Gのプラチナ層の上に塗布し、100℃のホットプレートで5分間、300℃のホットプレートで10分間乾燥して溶剤を除去し前駆体膜を形成した。この塗布、乾燥の操作を12回繰り返した。最後に圧電体膜成膜用支持基板全体を700℃で1時間熱処理したところ、圧電体層の一部に膜剥がれが生じ、以後の評価に耐えうる圧電体層を形成することができず、圧電体素子を作製することもできなかった。
【0067】
同様にスピンコーターを用いてC液を3000rpmで圧電体膜成膜用支持基板Hに塗布し、100℃のホットプレートで5分間、300℃のホットプレートで10分間乾燥して溶剤を除去し前駆体膜を形成した。この塗布、乾燥の操作を12回繰り返した。最後に基板全体を700℃で1時間熱処理して結晶化させることによりPZT圧電体層CHを得た。
圧電体層CHの表面は平滑性に乏しく電流リークを起こす箇所が多かったため、満足な強誘電特性を有する圧電体素子を得ることができなかった。
【0068】
[実施例9](インクジェット式記録ヘッド用圧電体素子の作製例)
図7、8に示すような構成のインクジェット式記録ヘッドを作製するために、上記実施例6で作製した、圧電体膜CDを下部電極層の上に設けた圧電体膜成膜用支持基板のシリコン層を裏面よりエッチングした(図5および図6参照)。シリコン層のエッチングは、加熱攪拌したテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの22%水溶液中で行った。
【0069】
エッチングによってシリコン層がくり抜かれた箇所は、シリカ層、プラチナ層、圧電体層から構成されており、約3μmの層厚を有するシリカ層が振動板としての役割を担う。
上記エッチングを行った後に、圧電体層の上に上部電極層として金層をスパッタ法により形成して、本発明の圧電体素子を作製した。
【0070】
得られた圧電体素子について、10Vの電圧印加時における圧電体素子の振動幅をレーザ・ドップラー法で測定したところ、1〜10kHzの周波数域において約1.4μmの振幅を有する振動が振動板に付与されることが確認された。この変位はインクジェット式記録ヘッドとしてインク吐出を行うのに充分な変位量であった。印加電圧を小さくすると変位も小さくなり、吐出量の制御が可能であることが確認された。
【0071】
[実施例10](インクジェット式記録ヘッドの作製例)
実施例9で得られた圧電体素子に図7、8で示す構成を有するノズル15を取り付け、さらにインクを導入するための導入管16、ヘッド基台7を取り付けてインクジェット式記録ヘッドを作製した。このインクジェット式記録ヘッドを用いて吐出実験を行った。
【0072】
上記インクジェット式記録ヘッドに導入管16よりインクジェット用インクを導入し圧力室8を満たした。次に上部電極と下部電極間に1〜20kHz、10Vの交流電圧を印加してインクの吐出の様子を顕微鏡で観察した。これにより、インクジェット式記録ヘッドは各周波数に追随しインク滴を吐出することが確認された。また、同様にして、複数個のインク吐出口を設けたインクジェット式記録ヘッドを作製したところ、同様にインクが吐出されることを確認することができた。これにより、本発明の圧電体素子がインクジェット式記録ヘッドとして用いることができることを確認することができた。
【0073】
以上実施例を挙げて説明してきたが、本発明は圧電体層の構成材料である金属酸化物の組成比や原料の種類になんら限定されるものでは無い。また、スパッタリング法以外の方法で形成したプラチナ層も面内応力が所定の範囲にあるものであれば、本発明の圧電体素子の作製に使用することができることはいうまでもない。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、面内応力が−200MPa以上500MPa以下であるプラチナ層を有する圧電体膜成膜用支持基板が提供される。また、この圧電体膜成膜用支持基板を用いて熱的安定性、経時安定性に優れた圧電体素子、これを用いたインクジェット式記録ヘッドを製造し提供することも可能である。この圧電体素子は、例えば、インクジェット記録装置のピエゾヘッド等種々の用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電体膜成膜用支持基板の実施形態の1例を模式的に示した縦断面図である。
【図2】スパッタリング法で形成されたプラチナ薄膜層の面内応力と基板加熱温度との関係の1例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態の圧電体素子の一部を拡大して模式的に示した縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の圧電体素子を用いたインクジェット式記録ヘッドの一部を拡大して模式的に示した縦断面図である。
【図5】本発明の実施例9で作製した一部がくりぬかれ振動板の様子が観測できるよう設計されたシリコンウェハーの一例を、拡大して模式的に示した斜視図である。
【図6】本発明の実施例9で作製した一部がくりぬかれ振動板の様子が観測できるよう設計されたシリコンウェハーの一例を、拡大して模式的に示した縦断面図である。
【図7】本発明の実施例10で作製したインクジェット式記録ヘッドの1例の一部を、拡大して模式的に示した縦断面図である。
【図8】本発明の実施例10で作製したインクジェット式記録ヘッドの1例の一部を、拡大して模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
1 シリカ層
2 接着層
3 プラチナ層
4 圧電体膜成膜用支持基板
5 圧電体層
6 上部電極層
7 ヘッド基台
8 圧力室
9 振動板
10 圧電体素子
11 下部電極層
12 圧電体層
13 上部電極層
14 電源
15 インク吐出口(ノズル)
16 インク導入管
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電体素子の熱的安定性、経時安定性を向上させることのできる、最外層に形成した下部電極層の面内応力を制御した圧電体膜成膜用支持基板、この圧電体膜成膜用支持基板を用いて作製した圧電体素子およびインクジェット式記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)膜に代表される圧電体膜は、インクジェット式記録ヘッドの圧電体素子用の圧電体膜として利用される。
この用途に用いられる圧電体膜が充分な電気機械変換機能(変位を促す圧力)を発現させるためには、どのような成膜法によって形成された圧電体膜においても最終的な熱処理により膜の結晶化を促す必要がある。また、圧電体素子として充分な変位を得るためには1μm〜25μm程度の厚膜化が必要とされる。
【0003】
通常PZT膜のような圧電体膜は、スクリーン印刷法、スパッタ法、ゾルゲル法、CVD法、水熱法等で形成することができ、圧電性を有するペロブスカイト構造等の結晶を得るために通常700℃以上の温度でアニールが行なわれる。膜厚を厚くするためには、成膜する堆積時間を長くしたり、成膜を複数回繰り返したりする。前記の成膜法の内、ゾルゲル法は組成制御性に優れており、塗布と焼成を繰り返すことで容易に結晶薄膜を得ることができる。また、ゾルゲル法により得られた膜は、非常に緻密であるため、変位を促す圧力が分散することなく良い圧電特性を示すことが期待される。
【0004】
ゾルゲル法は、原料となる各成分金属の加水分解性の化合物、その部分加水分解物またはその部分重縮合物を含有する溶液を基板に塗布し、その塗膜を乾燥させた後、空気中で加熱して金属酸化物の膜を形成し、さらにその金属酸化物の結晶化温度以上で焼成して膜を結晶化させることにより圧電体膜を成膜する方法である。圧電体膜を、加水分解性または熱分解性の有機金属化合物や水酸化物を含有する原料溶液(ゾルと表すことがある)を用いて、ゾルゲル法により成膜する方法は、当業者によく知られている (例えば特許文献1) 。原料の加水分解性の金属化合物としては、金属アルコキシド、その部分加水分解物または部分重縮合物といった有機化合物が一般に使用されている。ゾルゲル法は、安価に、しかも簡便に強誘電体薄膜を成膜することのできる方法の一つである。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−236404号公報
【0006】
ゾルゲル法に類似の方法として、有機金属分解法(MOD法と表すことがある)がある。MOD法は、熱分解性の有機金属化合物、たとえば、金属のβ−ジケトン錯体やカルボン酸塩を含有する溶液を基板に塗布し、たとえば空気中あるいは酸素中で加熱して塗膜中の溶媒の蒸発および金属化合物の熱分解を生じさせて金属酸化物の膜を形成し、さらに結晶化温度以上で焼成して膜を結晶化させる方法である。本特許では、ゾルゲル法、MOD法、およびこれらが混合された方法をあわせて「ゾルゲル法」と称する。
【0007】
またゾルゲル法により成膜された圧電体素子を用いたインクジェット式プリンタヘッドが開示されている。たとえば、ゾルゲル法を利用し、下部電極上に圧電体材料を含むゾルを複数回に分けて塗布し加熱処理を繰り返すことにより、インクジェット式プリンタヘッドに用いられる圧電体素子の圧電体薄膜を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2〜4)。また、強誘電性キャパシタに適した下部電極層の製造方法については、たとえば特許文献5に開示されている。
【0008】
【特許文献2】
特開平9−92897号公報
【特許文献3】
特開平10−139594号公報
【特許文献4】
特開平10−290035号公報
【特許文献5】
特開2001−313376号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
圧電体膜は、成膜の際、結晶化度を上げるための熱処理工程において高温度熱サイクルにさらされ、また、圧電体素子を駆動させる際には圧電体素子全体に機械的な応力が繰り返しかかる。
このため、圧電体素子の下部電極層が高い面内応力を有していると、下部電極層/圧電体層界面あるいは下部電極層/基板界面で剥離を起こす可能性がある。
強誘電性キャパシタに適した下部電極層の製造方法については、たとえば上記特許文献5に開示されているが、圧電体素子に適した電極については、面内応力に着目した先行技術はない。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するもので、その目的とするところは、圧電体素子の熱的安定性、経時安定性を向上させるための圧電体膜成膜用支持基板、この圧電体膜成膜用支持基板を用いて作製した圧電体素子およびインクジェット式記録ヘッドを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記の課題を解決するため、基板上に成膜した下部電極層の面内応力値とその後の圧電体層形成時の熱安定性、圧電体素子の疲労特性の関係について鋭意研究を行い、支持基板上に下部電極層のプラチナ薄膜層を形成して得られる圧電体膜成膜用支持基板の下部電極層のプラチナ薄膜層の面内応力を−200MPa以上500MPa以下の範囲内とすることにより、電極/圧電体膜界面あるいは電極/基板界面の密着安定性が増すことを見いだし本発明を完成するに至った。
【0012】
かくして上記本発明の目的は、少なくとも基板と下部電極層とを備えた構成を有する圧電体膜成膜用支持基板において、前記下部電極層が、−200MPa以上500MPa以下の面内応力を有するプラチナ層により構成されており、かつ、該プラチナ層が、前記圧電体膜成膜用支持基板の最外層に配置されていることを特徴とする圧電体膜成膜用支持基板に係る発明によって達成することができる。
【0013】
また上記本発明の目的は、少なくとも、下部電極層と上部電極に挟持された圧電体層を備えた圧電体素子において、前記下部電極層が、上記の圧電体膜成膜用支持基板の下部電極層により構成され、かつ、前記圧電体層が、該電極層の上にゾルゲル法で形成された圧電体層により構成されたものであることを特徴とする圧電体素子に係る発明によって達成することができる。
なお、上記圧電体素子は、前記圧電体層が、一般式:Pb1−x Lax (Zry Ti1−y)O3(0≦x<1、0≦y≦1)で示される組成を有する金属酸化物を含有することを特徴とすることができる。
【0014】
また上記本発明の目的は、少なくとも、インク吐出口と、該インク吐出口に連通する圧力室と、該圧力室の一部を構成する振動板と、該圧力室の外部に設けられた該振動板に振動を付与するための圧電体素子とを有し、該振動板に付与された振動により生じる該圧力室の体積変化によって該圧力室のインクを該インク吐出口から吐出するインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記圧電体素子が上記の圧電体素子であることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドに係る発明によって達成することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の圧電体膜成膜用支持基板について説明する。
本発明の圧電体膜成膜用支持基板に使用することのできる基板は、特に限定されず、所望の用途に応じて、金属、ガラス、セラミックス製の基板等から適宜選択して用いることができる。シリコンウェハー等の基板であってもよい。基板はあらかじめ適当な表面処理、例えば、シランカップリング剤や適当な下地剤等による表面処理が成されていても良い。
【0016】
表面がシリカ層で被覆されたシリコンウェハーを基板として用いる場合には、図1に示すように、シリカ層1とプラチナ層3との間に接着層2を設けることもできる。この場合、接着層2はシリカ層1とプラチナ層3の反応を防ぐバリア層としても機能する。例えば、接着層として10nm〜80nmの層厚を有するTiOx層(金属チタンを含む)をシリカ層1の上に形成するとバリア層として機能する。接着層は、例えば、チタンの反応性スパッタリング、チタン膜の熱酸化、その他の公知の方法で形成することができる。
【0017】
本発明の圧電体膜成膜用支持基板において、基板上に形成されたプラチナ層の面内応力は、−200MPa以上500MPa以下でなければならない。さらに、面内応力を、−130MPa以上480MPa以下とするのが好ましい。面内応力が−200MPa以上500MPa以下の範囲外であると、圧電体膜を熱処理して結晶化させる時や圧電体素子として繰り返し動作させた時に電極/圧電体膜界面あるいは電極/基板界面で剥離する可能性が高くなる。
【0018】
基板上にプラチナ層を形成する方法は、形成されたプラチナ層の面内応力が−200MPa以上500MPa以下となる方法であれば特に限定されるものではない。プラチナ層の接着強度を容易に向上させることができるところから、一般的には、スパッタリング法が好ましい。
【0019】
プラチナ層をスパッタリング法によって形成する場合、使用する原料ガス種、分圧、出力等は、形成されたプラチナ層の面内応力が−200MPa以上500MPa以下となる条件であれば特に限定されるものではなく、用いる原料ガス種、基板等に適した条件のなかから適宜選択すればよい。
【0020】
スパッタリング法により形成されたプラチナ層の面内応力に大きく寄与するのは基板の加熱温度である。本発明の圧電体膜成膜用支持基板の作製においては、その系に応じた適温で基板を加熱してスパッタリングを行うことによりプラチナ層の面内応力を制御することができる。
【0021】
例えば、表面がシリカ層で被覆されたシリコンウェハーを基板として用い、この上に接着層としてTiOx層を形成し、さらにこの接着層の上にプラチナ層を形成する場合においては、図2に示すように200℃〜800℃の温度で基板を加熱し、スパッタ電力0.5kW、0.8Paのアルゴン雰囲気下でスパッタリングを行うことにより−200MPa以上500MPa以下の面内応力を有するプラチナ層を有する圧電体膜成膜用支持基板を得ることができる。
【0022】
また、プラチナ層は、本発明の目的を達成することができる範囲内において、チタン、パラジウム、イリジウム等の他の金属種を含有するものであってもよい。
本発明の圧電体膜成膜用支持基板のプラチナ層の層厚は、通常、50nm〜500nm程度が好ましい。プラチナ層の層厚を50nm以上とすることにより、下部電極としての働きや耐久性を充分なものとすることができ好ましい。また、プラチナ層の層厚を500nm以下とすると不要なコストを削減することができる。
【0023】
次に本発明の圧電体素子について記述する。
図3に、本発明の圧電体素子の一実施形態の構成を示す。同図において、4は本発明の圧電体膜成膜用支持基板であり、シリカ層1、接着層2、プラチナ層3からなる。圧電体素子は、圧電体膜成膜用支持基板のプラチナ層3の上に、圧電体層5、上部電極層6をこの順に形成して作製することができ、圧電体層5が下部電極層3と上部電極層6に挟持された構造を有する。
【0024】
上部電極層6の構成材料は特に限定されず、圧電体素子に通常用いられているものであればよく、例えば、白金や金などを使用することができる。上部電極層の層厚は、特に限定されないが、通常、0.05μm〜2μm程度とされる。
【0025】
圧電体層5の構成材料としては、一般に、圧電性を有する金属酸化物が用いられる。本発明に用いることができる金属酸化物としては、チタン酸バリウム(BTOと表すことがある)、チタン酸鉛(PTと表すことがある)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZTと表すことがある)、ランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZTと表すことがある)、PZTにさらにマグネシウムニオブ酸鉛(PMNと表すことがある)が加わった固溶体等が挙げられる。また、これらの構成材料は、微量のドープ元素を含有することができる。ドープ元素の例としては、Ca、Sr、Ba、Hf、Sn、Th、Y、Sm、Dy、Ce、Bi、Sb、Nb、Ta、W、Mo、Cr、Co、Ni、Fe、Cu、Si、Ge、U、Scなどが挙げられる。その含有量は、通常、上記構成材料の金属原子の原子分率で0.05以下である。
【0026】
本発明の圧電体素子の圧電体層の構成材料としては、中でも、一般式:Pb1−x Lax (Zry Ti1−y)O3(0≦x<1、0≦y≦1)で示される組成を有する金属酸化物、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)およびランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)は、ペロブスカイト型結晶構造を有する圧電体であり、その高い誘電率と優れた強誘電特性や光学特性から、これらの化合物の薄膜は、既にキャパシタ膜、光センサ、光回路素子などに使われている他、不揮発性メモリといった新たな応用も期待される。
【0027】
このような圧電体の薄膜を、代表的には成分金属のアルコキシド等の加水分解性または熱分解性の有機金属化合物や成分金属の水酸化物を含有するゾルを用いて、ゾルゲル法により成膜する方法は、当業者にはよく知られている。
【0028】
PLZT層をゾルゲル法により形成する場合を例にとると、Pb、La、Zr、Tiのアルコキシドおよび/または水酸化物、所望の場合は、上記ドープ元素を含む化合物等の添加物を溶剤に溶解し、水を加え加水分解してゾルを調製し、塗工液とし、この塗工液を圧電体膜成膜用支持基板上に塗工し、乾燥し、更に、予備焼成、本焼成等の熱処理工程において分解し酸化物膜とし、結晶化させてPLZT圧電体膜を得ることができる。
【0029】
溶剤としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン系などのアミド系溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤が挙げられる。これらの中で好ましい溶剤はアルコール系溶剤である。
【0030】
本発明におけるゾルゲル法において用いる溶剤の量は、金属アルコキシドに対して通常10倍モルから200倍モルであり、好ましくは20倍モルから100倍モルである。溶剤の量を200倍モル以下とすると容易にゲル化させることができ、10倍モル以上とすると加水分解時の発熱のコントロールが容易となり好ましい。
【0031】
またPbのアルコキシド化合物としては鉛2−エトキシエトキシド、鉛メトキシド、鉛エトキシド、鉛n−プロポキシド、鉛イソプロポキシド、鉛n−ブトキシド、鉛イソブトキシド、鉛t−ブトキシド等を挙げることができる。その他、各種アルコキシドおよびそのアルキル置換体、水酸化鉛等が挙げられる。
【0032】
また鉛の無機塩化合物、具体的には塩化物、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩などまた有機塩化合物、具体的にはギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩などの各種カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、またアセチルアセトナート錯体などを溶剤と混合してアルコキシドをその場(in situ)合成して用いても良い。
【0033】
La、Zr、Tiも同様のアルコキシド化合物または無機塩化合物を用いることができる。これらのPb、La、Zr、Tiのアルコキシド溶液または無機塩を前記溶剤に溶解し、加水分解し、反応を行うことにより高分子化してゾルを調製し圧電体膜を作製するための塗工液を得ることができる。
【0034】
上記各金属化合物の仕込みモル比は、一般式、Pb1−x Lax (Zry Ti1−y)O3(式中、0≦x<1、0≦y≦1)に対応した仕込みモル比としてもよいが、成膜時の焼成過程においてPbの消失による欠損がおこるため、あらかじめ塗工液調製時にPbの量を増やしておくことが好ましい。具体的には、Pb1−x Lax (Zry Ti1−y)O3(0≦x<1、0≦y≦1)に対応した仕込みモル比よりもPb化合物の仕込みモル比を5%〜50%の範囲で増やしておくのが好ましい。鉛の欠損の程度は、鉛化合物の種類や成膜条件によって異なり、実験により求めることができる。
【0035】
また、金属アルコキシドおよび/または金属塩化合物を含む溶液の加水分解には、例えば金属アルコキシドおよび/または金属塩化合物の0.05倍モル〜2倍モルの水が用いられ、より好ましくは0.5倍モル〜1.5倍モルの水が用いられる。この加水分解には、酸触媒または塩基触媒を用いることができる。触媒としては、塩酸などの鉱酸や酢酸などの有機酸が好ましく用いられる。
【0036】
ゾルは少量の安定剤を含有していてもよい。安定剤の添加により、原料の加水分解速度、重縮合速度等が抑えられ、ゾルの保存安定性が改善される。
安定剤として有用な化合物を挙げると、β−ジケトン類 (例、アセチルアセトン、ジピバロイルメタン、ベンゾイルアセトン等) 、ケトン酸類 (例、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸等) 、これらのケトン酸のメチル、プロピル、ブチル等の低級アルキルエステル類、オキシ酸類 (例、乳酸、グリコール酸、α−オキシ酪酸、サリチル酸等) 、これらのオキシ酸の低級アルキルエステル類、オキシケトン類 (例、ジアセトンアルコール、アセトイン等) 、α−アミノ酸類 (例、グリシン、アラニン等) 、アルカノールアミン類 (例、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等) が例示される。
【0037】
ゾルの濃度は特に制限されず、利用する塗工法や部分加水分解物の有無によっても異なるが、一般に金属酸化物換算で 0.1〜20質量%の範囲が好ましい。
その他、ゾルには、必要によりさらに、重合促進剤、分散促進剤、酸化防止剤、UV吸収剤、染料、顔料などの公知の各種添加剤を適宜配合することができる。
【0038】
また、ゾルには、塗工時の膜厚を厚くする目的でバインダー効果を有する化合物(バインダー化合物と表すことがある)を配合しても良い。前記のバインダー化合物は、例えば、少なくとも重量平均分子量が10000以上200000以下であるものが好ましい。重量平均分子量10000以上200000以下とすることにより、高粘度となることなく塗布時に膜を厚くすることができる。上記バインダー化合物の重量平均分子量は、20000以上100000以下であるのがより好ましい。
【0039】
上記塗工液は、前記圧電体膜成膜用支持基板の最外層を構成する下部電極層であるプラチナ層の上に塗工し乾燥される。
【0040】
塗布方法は、特に限定されるものではなく、慣用のコーティング方法、例えば、スピンコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、印刷法等により行われる。これらの方法のうち、スピンコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法が好ましい。
【0041】
塗布後、乾燥して溶剤を除去することにより圧電体前駆体膜を形成することができる。このときの温度は用いる溶剤によって異なるが、概ね100℃〜300℃が好ましい。乾燥後の1層あたりの膜厚は特に問わないが、0.01μm〜5μmが好ましい。
【0042】
厚い圧電体層を必要とするときは塗工と乾燥を繰り返す。
必要なだけ塗工と乾燥を繰り返して得た圧電体前駆体層を加熱して焼成工程を行う。焼成は金属酸化物前駆体ゾルの種類や圧電体層の用途等により条件が変わる。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)といった強誘電体材料を構成材料とする圧電体層の場合、400〜1400℃程度、好ましくは550〜800℃程度の温度で数分間〜24時間をかけて行うことができる。また焼成は、不活性ガス雰囲気、水蒸気含有雰囲気、酸素含有雰囲気(空気など)等、任意の雰囲気下で行えばよく、常圧、加圧又は減圧下で行うことができる。
【0043】
上部電極は圧電体層を形成した後に、その上部に公知の方法で形成することができる。
【0044】
上述した圧電体素子の製造方法によると、容易なプロセスで、密着性、熱的安定性、経時安定性に優れた圧電体素子を作製することができる。
前記の圧電体素子の応用としてはインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。
【0045】
以下、本発明のインクジェット式記録ヘッドの好適な一実施形態について図4を参照しながら説明する。
本発明のインクジェット式記録ヘッドは、少なくとも、インク吐出口と、該インク吐出口に連通する圧力室と、該圧力室の一部を構成する振動板と、該圧力室の外部に設けられた該振動板に振動を付与するための圧電体素子とを有し、該振動板に付与された振動により生じる該圧力室の体積変化によって該圧力室のインクを該インク吐出口から吐出するインクジェット式記録ヘッドであり、圧電体素子として上記本発明の圧電体素子を用いたことを特徴とするものである。
【0046】
図4に、本発明の好適な実施形態によるインクジェット式記録ヘッドの縦断面の一部を拡大して模式的に示した。図4に示したインクジェット式記録ヘッドの一部の構成は従来と同様であり、ヘッド基台7と、振動板9と、圧電体素子10および電源14からなるアクチュエータとから構成されている。
【0047】
圧電体素子10は、本発明の圧電体膜成膜用支持基板の下部電極層であるプラチナ層から形成された下部電極層11、その表面に形成された圧電体層12、その表面に形成された上部電極層13を有し、圧電体層12が下部電極層11と上部電極層13に挟持された構造を有する。
【0048】
ヘッド基台7には、インクを吐出する多数のインク吐出口(インクノズルと表すことがある)(図示せず)、それぞれのインクノズルに個別に連通する多数のインク経路(図示せず)、およびそれぞれのインク経路に個別に連通する多数の圧力室8が形成されており、圧力室8の一部を覆うように振動板9が取り付けられ、この振動板9によってヘッド基台7の全ての圧力室8の上面開口が閉塞されている。振動板9上には、それぞれの圧力室8と個別に対応した位置に、振動板9に振動を付与するための圧電体素子10が形成されている。そして、電源14により、所望の選択された圧電体素子10に電圧を印加することにより、圧電体素子10を変形させて、その圧電体素子が形成されている部分の振動板9を振動させる。これにより、振動板9の振動に対応した部分の圧力室8の容積が変化して、インク経路を通ってインク吐出口(ノズル)からインクが押し出されて印刷が行われることになる。
【0049】
圧電体層12の層厚は、通常、1μm〜25μmとするのが好ましい。圧電体層12の層厚が薄すぎると駆動力不足となり、厚すぎると圧電体素子10を変位させるのに大きな電圧が必要となる。このため、圧電体層12の層厚は、2μm〜12μmとするのがより好ましい。圧電体層の層厚1μm〜25μmとすると、さほど大きくない電圧で圧電体素子10を充分変位させることが可能となり好ましい。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
圧電体膜用の塗工液としてPb/La/Zr/Ti=1.1/0.01/0.52/0.48である組成(モル比)を有するPLZT前駆体ゾル(A液)およびPb/Ti=1.1/1.0である組成(モル比)を有するPT前駆体ゾル(B液)を調製した。
【0051】
(A液:PLZT酸化物前駆体ゾルの調製)
モル比がPb/La/Zr/Ti=1.1/0.01/0.52/0.48に相当する組成の酢酸鉛、ランタンイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、チタンテトライソプロポキシドを2−メトキシエタノール中で加熱溶解した。これを希塩酸で加水分解し酸化物換算で10質量%濃度のランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)の前駆体ゾル(A液)を得た。
【0052】
(B液:PT酸化物前駆体ゾルの調製)
モル比がPb/Ti=1.1/1.0に相当する組成の酢酸鉛、チタンテトライソプロポキシドを2−メトキシエタノール中で加熱溶解した。これを希塩酸で加水分解し酸化物換算で3質量%濃度のチタン酸鉛(PT)の前駆体ゾル(B液)を調製した。
【0053】
(C液:市販PZT塗工液)
また、三菱マテリアル(株)製PZT薄膜形成剤(A6;商品名)をC液として用いた。
【0054】
(プラチナ層の面内応力の評価方法)
圧電体膜成膜用支持基板のプラチナ層の面内応力は、「薄膜応力/歪み測定解析ソフトウェアR STRAIN」((株)理学電機製)を用いて算出した。
一般的に、薄膜試料の面内に引張応力が作用した場合は、薄膜試料の結晶面の面間隔dは結晶面の法線方向が応力方向に近いほど大きくなり、結晶面の法線方向が応力方向と直交する結晶面の面間隔は小さくなる。すなわち、試料薄膜の試料面の法線方向とX線回折ピ−クが観測された結晶面の法線方向との間の角度をφとすると、X線回折ピ−クが観測された結晶面の面間隔dは角φに依存した変化を示す。
上記応力算出ソフトウェアは、この原理を利用したものであり、X線回折装置と連動して、X線回折ピークが測定された特定の回折面の面間隔の変化(歪み)から応力値を求めるものである。
【0055】
[実施例1〜3](圧電体膜成膜用支持基板の作製)
表面が熱酸化SiO2膜で被覆された市販のシリコンウェハー(n型、(100)方位)上に、RFマグネトロンスパッタリング法によりスパッタ電力0.5kW、アルゴン雰囲気1.4Pa、シリコンウェハーの加熱温度250℃の条件で金属チタン層を約50nm堆積した。続いて、その上部にRFマグネトロンスパッタリング法によりスパッタ電力0.5kW、アルゴン雰囲気0.8Pa、シリコンウェハーの加熱温度250℃の条件でプラチナ層を約200nm堆積し圧電体膜成膜用支持基板を作製した。
これを圧電体膜成膜用支持基板Dとする。
圧電体膜成膜用支持基板Dのプラチナ層の面内応力を測定、算出したところ−130MPaであった。
プラチナ層堆積時のシリコンウェハーの加熱温度を下記表に記載の温度とした以外は圧電体膜成膜用支持基板Dの作製方法と同様にして、圧電体膜成膜用支持基板EおよびFを作製し、プラチナ層の面内応力を測定、算出した。得られた結果を纏め表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
[比較例1〜2]
本発明との比較のため、シリコンウェハーの加熱温度を変えた以外は圧電体膜成膜用支持基板Dの作製方法と同様にして、圧電体膜成膜用支持基板GおよびHを作製し、プラチナ層の面内応力を測定、算出した。得られた結果を纏め表2に示した。
【0058】
【表2】
【0059】
圧電体膜成膜用支持基板G、Hのいずれもプラチナ層は接着層であるチタン層を介してシリコンウェハーと密着していたが、圧電体膜成膜用支持基板Hの表面のプラチナ層は平滑性に乏しく、やや変色していた。
【0060】
[実施例4〜8](圧電体素子の作製例)
A液、B液、C液を用いて、圧電体膜成膜用支持基板D、E、Fのプラチナ層の表面に、鉛系圧電体層としてPLZT層、PZT層、PT層を各々形成した。
スピンコーターを用いて上記の各々のゾルを3000rpmで上記の圧電体膜成膜用支持基板の各々に塗布した。100℃のホットプレートで5分間、300℃のホットプレートで10分間加熱して乾燥し、溶剤を除去して前駆体膜を形成した。この塗布、乾燥の操作を12回繰り返した。最後に基板全体を700℃で1時間熱処理して結晶化させることにより各々の圧電体層を圧電体膜成膜用支持基板のプラチナ層の表面に形成した。
使用したゾル、圧電体膜成膜用支持基板と得られた圧電体層の関係を纏め表3に示した。
【0061】
これらの圧電体層についてX線回折測定を行ったところ、いずれの圧電体層も強誘電相であるペロブスカイト型結晶の単一相からなることが示唆された。
【0062】
圧電体膜成膜用支持基板D上にC液を塗工して得られた圧電体層CDの上部に金層をスパッタ法により形成し圧電体素子を得た。この圧電体素子の金層と圧電体膜成膜用支持基板Dのプラチナ層を電極として、ソーラトロン社製インピーダンス/ゲインフェイズアナライザー(SI1260)を用いて、圧電体素子の圧電体層の誘電率を測定したところ10から10000Hzの周波数領域において1000以上の比誘電率が得られた。また、併せて、Radiant社製HVS−6000を用いてヒステリシス測定を行った。外部電場の大きさを正負に変化させることにより自発分極が反転するという強誘電体に特有の履歴曲線が観測された。この残留分極値+Prは20Vの電圧印加後で約27μC/cm2を示した。
【0063】
同様にして表3に示す各実施例の圧電体層の上部に金層をスパッタ法により形成した。この金層と圧電体膜成膜用支持基板上のプラチナ層を電極とし、誘電率を測定したところ10から10000Hzの周波数領域においていずれの圧電体素子の圧電体層も60以上の比誘電率を示した。また、併せてヒステリシス測定も行った。外部電場の大きさを正負に変化させることにより自発分極が反転するという強誘電体に特有の履歴曲線が観測された。
【0064】
このようなヒステリシス特性は記憶ユニットとして活用可能で、これらの圧電体素子を複数併設し個別に電圧を印加できるようにすればメモリを構成することも可能である。
【0065】
【表3】
【0066】
[比較例3〜4]
本発明との比較のため、圧電体膜成膜用支持基板G、H上に圧電体層を形成した。
スピンコーターを用いてC液を3000rpmで圧電体膜成膜用支持基板Gのプラチナ層の上に塗布し、100℃のホットプレートで5分間、300℃のホットプレートで10分間乾燥して溶剤を除去し前駆体膜を形成した。この塗布、乾燥の操作を12回繰り返した。最後に圧電体膜成膜用支持基板全体を700℃で1時間熱処理したところ、圧電体層の一部に膜剥がれが生じ、以後の評価に耐えうる圧電体層を形成することができず、圧電体素子を作製することもできなかった。
【0067】
同様にスピンコーターを用いてC液を3000rpmで圧電体膜成膜用支持基板Hに塗布し、100℃のホットプレートで5分間、300℃のホットプレートで10分間乾燥して溶剤を除去し前駆体膜を形成した。この塗布、乾燥の操作を12回繰り返した。最後に基板全体を700℃で1時間熱処理して結晶化させることによりPZT圧電体層CHを得た。
圧電体層CHの表面は平滑性に乏しく電流リークを起こす箇所が多かったため、満足な強誘電特性を有する圧電体素子を得ることができなかった。
【0068】
[実施例9](インクジェット式記録ヘッド用圧電体素子の作製例)
図7、8に示すような構成のインクジェット式記録ヘッドを作製するために、上記実施例6で作製した、圧電体膜CDを下部電極層の上に設けた圧電体膜成膜用支持基板のシリコン層を裏面よりエッチングした(図5および図6参照)。シリコン層のエッチングは、加熱攪拌したテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの22%水溶液中で行った。
【0069】
エッチングによってシリコン層がくり抜かれた箇所は、シリカ層、プラチナ層、圧電体層から構成されており、約3μmの層厚を有するシリカ層が振動板としての役割を担う。
上記エッチングを行った後に、圧電体層の上に上部電極層として金層をスパッタ法により形成して、本発明の圧電体素子を作製した。
【0070】
得られた圧電体素子について、10Vの電圧印加時における圧電体素子の振動幅をレーザ・ドップラー法で測定したところ、1〜10kHzの周波数域において約1.4μmの振幅を有する振動が振動板に付与されることが確認された。この変位はインクジェット式記録ヘッドとしてインク吐出を行うのに充分な変位量であった。印加電圧を小さくすると変位も小さくなり、吐出量の制御が可能であることが確認された。
【0071】
[実施例10](インクジェット式記録ヘッドの作製例)
実施例9で得られた圧電体素子に図7、8で示す構成を有するノズル15を取り付け、さらにインクを導入するための導入管16、ヘッド基台7を取り付けてインクジェット式記録ヘッドを作製した。このインクジェット式記録ヘッドを用いて吐出実験を行った。
【0072】
上記インクジェット式記録ヘッドに導入管16よりインクジェット用インクを導入し圧力室8を満たした。次に上部電極と下部電極間に1〜20kHz、10Vの交流電圧を印加してインクの吐出の様子を顕微鏡で観察した。これにより、インクジェット式記録ヘッドは各周波数に追随しインク滴を吐出することが確認された。また、同様にして、複数個のインク吐出口を設けたインクジェット式記録ヘッドを作製したところ、同様にインクが吐出されることを確認することができた。これにより、本発明の圧電体素子がインクジェット式記録ヘッドとして用いることができることを確認することができた。
【0073】
以上実施例を挙げて説明してきたが、本発明は圧電体層の構成材料である金属酸化物の組成比や原料の種類になんら限定されるものでは無い。また、スパッタリング法以外の方法で形成したプラチナ層も面内応力が所定の範囲にあるものであれば、本発明の圧電体素子の作製に使用することができることはいうまでもない。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、面内応力が−200MPa以上500MPa以下であるプラチナ層を有する圧電体膜成膜用支持基板が提供される。また、この圧電体膜成膜用支持基板を用いて熱的安定性、経時安定性に優れた圧電体素子、これを用いたインクジェット式記録ヘッドを製造し提供することも可能である。この圧電体素子は、例えば、インクジェット記録装置のピエゾヘッド等種々の用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電体膜成膜用支持基板の実施形態の1例を模式的に示した縦断面図である。
【図2】スパッタリング法で形成されたプラチナ薄膜層の面内応力と基板加熱温度との関係の1例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態の圧電体素子の一部を拡大して模式的に示した縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の圧電体素子を用いたインクジェット式記録ヘッドの一部を拡大して模式的に示した縦断面図である。
【図5】本発明の実施例9で作製した一部がくりぬかれ振動板の様子が観測できるよう設計されたシリコンウェハーの一例を、拡大して模式的に示した斜視図である。
【図6】本発明の実施例9で作製した一部がくりぬかれ振動板の様子が観測できるよう設計されたシリコンウェハーの一例を、拡大して模式的に示した縦断面図である。
【図7】本発明の実施例10で作製したインクジェット式記録ヘッドの1例の一部を、拡大して模式的に示した縦断面図である。
【図8】本発明の実施例10で作製したインクジェット式記録ヘッドの1例の一部を、拡大して模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
1 シリカ層
2 接着層
3 プラチナ層
4 圧電体膜成膜用支持基板
5 圧電体層
6 上部電極層
7 ヘッド基台
8 圧力室
9 振動板
10 圧電体素子
11 下部電極層
12 圧電体層
13 上部電極層
14 電源
15 インク吐出口(ノズル)
16 インク導入管
Claims (1)
- 少なくとも基板と下部電極層とを備えた構成を有する圧電体膜成膜用支持基板において、前記下部電極層が、−200MPa以上500MPa以下の面内応力を有するプラチナ層により構成されており、かつ、該プラチナ層が、前記圧電体膜成膜用支持基板の最外層に配置されていることを特徴とする圧電体膜成膜用支持基板。
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