WO2010084827A1 - 食い込み式管接続構造、弁、食い込み式管継手及び冷凍装置 - Google Patents

Abstract

　本発明は、配管の挿入不足の状態で配管接続作業が行われた場合であっても、配管に作用する偏荷重により配管接続部に気密性が劣化することを抑制することのできる食い込み式管接続構造、このような食い込み式管接続構造を用いた弁、食い込み式管継手及び冷凍装置を提供する。フェルール３０は、結合部材を手回しで継手本体に対し締結する際に同フェルール３０の先端部３６が接続すべき配管を拘束するように同先端部３６を変形させるための低強度部分３４ａと、低強度部分３４ａに対応する前側のテーパ面３２と後側のテーパ面３２ｃとを接続する段差部３２ｂと、低強度部分３４ａに隣接する後方部３０Ａとを備えている。段差部３２ｂは後方部３０Ａの肉厚が接続すべき配管を気密に保持できる値になるように形成されている。

Description

食い込み式管接続構造、弁、食い込み式管継手及び冷凍装置

　本発明は、食い込み式管接続構造、食い込み式管接続構造を用いた弁、食い込み式管継手及び冷凍装置に関する。

　冷凍装置の冷媒配管、温水装置の給湯配管や給水配管などの配管システムにおいて、管継手により配管同士を接続することができる。この場合、接続すべき配管を管継手の予め設定された位置まで挿入する必要がある。そこで、接続すべき配管が挿入される管継手の配管差込口に段部が設けられる構造を採用することができる。こうした構造を採用した場合、配管の先端が配管差込口に挿入されてその段部に当接すると、作業者がこの当接を音や手の感覚により確認することができる。

　このような構造を有する従来の食い込み式管継手としては、例えば特許文献１に記載のものが挙げられる。図１０は、この食い込み式管継手を示している。図１０に示すように、継手本体１１０は、雄ねじ筒部１１２を有し、該雄ねじ筒部１１２の外周には、結合部材１２０に螺合可能な雄ねじ部１１１が形成されている。この雄ねじ筒部１１２の中心部には、配管差込口１１３とこれに連続する連絡孔１１４とが設けられている。配管差込口１１３と連絡孔１１４との境界部には、段部１１５が形成されており、この段部１１５は、接続すべき配管１００の先端位置を規制する規制部として機能する。配管差込口１１３の入口部には、カム面１１６が形成されている。

　結合部材１２０は、雌ねじ筒部１２２を有し、該雌ねじ筒部１２２の内周面には、雄ねじ部１１１に螺合可能な雌ねじ部１２１が形成されている。雌ねじ筒部１２２の側壁１２３の中心部には、配管貫通孔１２４が形成されている。雌ねじ筒部１２２の内側面には、押圧面１２５が形成されている。雌ねじ筒部１２２の内部には、フェルール１３０が設けられており、このフェルール３０は、径方向に延びる薄肉部１２６により雌ねじ筒部１２２の側壁１２３と一体的に連結している。

　フェルール１３０は、中心部に配管挿通孔１３１を有し、前部に切込部１３２が形成されている。この切込部１３２は、配管挿通孔１３１の内周面から径方向外側に向けて切り込まれるように形成されている。この切込部１３２の後側（図中では右側）の角部が、接続すべき配管に食い込まれるエッジ部１３３を形成している。切込部１３２の前側（図中では左側）にある先端部１３４は、結合部材１２０の締結の初期段階において接続すべき配管１００と配管差込口１１３との間に楔状に差し込まれて配管１００を仮保持可能に形成されている。

　通常、このように構成された食い込み式管継手により配管同士を接続する場合、図１０（ａ）に示すように配管１００の先端が段部１１５に当接するまで継手本体１１０に挿入される。その後に、図１０（ｂ）に示されるように、結合部材１２０が継手本体１１０に締結されると、フェルール１３０の後端部が雌ねじ筒部１２２における押圧面１２５によって押圧され、フェルール１３０のエッジ部１３３が接続すべき配管に食い込まれる。

特開２００７－２３２２１０号公報

　しかし、この場合には、配管１００の先端が段部１１５に当接したかどうかの感触を容易に得ることができないことがある。このため、図１１（ａ）に示すように配管１００の先端が段部１１５に当接しない、所謂配管の挿入不足の状態で配管が接続されることが起こり得る。この場合には、図１１（ｂ）に示すように、結合部材１２０が継手本体１１０に締め付けられるときに配管１００が段部１１５に逃げ、フェルール１３０のエッジ部１３３の食い込み量が不足するおそれがある。

　また、このように配管の接続が行われると、配管の接続が完了した時に、配管１００の先端と段部１１５との間に隙間が存在する。この場合、配管１００の先端が段部１１５で支持されず、配管１００を側方に押す偏荷重が生じることがある。その結果、配管１００に作用する曲げ応力により、エッジ部１３３の食い込みによる気密性が劣化する恐れがある。

　本発明は、従来技術に存在するこのような問題点に着目してなされたものであって、配管の挿入不足の状態で配管接続作業が行われた場合であっても、配管に作用する偏荷重により配管接続部に気密性が劣化することを抑制することのできる食い込み式管接続構造、このような食い込み式管接続構造を用いた弁、食い込み式管継手及び冷凍装置を提供することを目的とする。

　本発明に係る食い込み式管接続構造は、上記課題を解決するものであって、カム面を有する継手本体と、外周面が前記カム面の反対側に向けて広がるテーパ面に形成され、中心部に接続すべき配管が挿通される配管挿通孔を有する環状のフェルールと、前記継手本体に締結されて前記フェルールを前記継手本体の前記カム面に押圧する結合部材とを備え、前記フェルールは、前記結合部材を手回しで前記継手本体に対し締結する際に同フェルールの先端部が接続すべき配管を拘束するように同先端部を変形させるための低強度部分と、前記テーパ面のうち前記低強度部分に対応する第１のテーパ面と前記第１のテーパ面よりも前記カム面から離れている第２のテーパ面とを接続する段差部と、前記カム面の反対側から前記低強度部分に隣接し、前記結合部材が前記継手本体に締結される際に前記接続すべき配管を気密に保持するための隣接部とを有し、前記段差部と前記第２のテーパ面との境界部分における前記テーパ面の外径は、前記段差部と前記第１のテーパ面との境界部分における前記テーパ面の外径よりも大きく、前記段差部は、前記隣接部の肉厚が前記接続すべき配管を気密に保持できる値になるように形成されている。

　このような構成上の特徴を有する本発明に係る食い込み式管接続構造によれば、先端部を変形させるための低強度部分を有するので、配管接続初期の段階で結合部材を手回しすることにより継手本体に対し締結する際に、フェルールの先端部を変形させて配管を拘束することができる。また、低強度部分に対応する第１のテーパ面と第１のテーパ面よりもカム面から離れている第２のテーパ面とを連結する段差部が設けられていることにより、低強度部分に隣接する隣接部の肉厚を接続すべき配管を気密に保持できる値に設定することができる。したがって、低強度部分の隣接部の肉厚を厚くすることにより、配管を気密に保持するように後方部を変形させるために必要な力を大きくすることができる。また、このようにすれば、前記後方部の配管保持力及び気密保持性能が向上するので、この食い込み式管接続構造の偏荷重に対する耐力を大きくすることができ、偏荷重による気密性の劣化を抑制することができる。

　前記低強度部分は、前記配管挿通孔から径方向外側に向けて切り込まれた切込部が形成されている部分であるようにしてもよい。このようにすると、低強度部分を容易に形成することができる。

　前記切込部の前記フェルールの軸方向に沿った断面形状は、三角形状であり、前記切込部の前記隣接部側の内壁と前記配管挿通孔の内壁との交差部が前記接続すべき配管を気密に保持する部分として機能するようにすることが好ましい。このように構成すると、交差部をエッジ状に形成することができるので、この交差部を接続すべき配管に食い込ませるエッジ部として食い込み機能を発揮させることができ、前記後方部の配管保持力及び気密保持性能を向上させることができる。

　前記切込部の前記フェルールの軸方向に沿った断面形状は、略直角三角形であり、前記切込部の前記交差部が略直角であることが好ましい。このように構成すると、この交差部に形成されるエッジ部の食い込み機能を向上させることができ、その結果として前記後方部の配管保持力及び気密保持性能をより一層向上させることができる。

　前記段差部の外周面は、傾斜面に形成されていることが好ましい。このような構成とせずに段差部を階段状に形成してエッジ部より後方の肉厚を大きくしても、配管を気密に保持するために必要な押付力を大きくすることにより偏荷重に対する抗力を大きくすることができる。しかしながら、この場合には、カム面に階段状の段差部の角部が押し付けられることになり、カム面を傷つける。このため、フェルールとカム面との気密性を劣化させるという別の問題を生じる恐れがある。この点、この発明のように段差部を傾斜面で構成するとカム面の傷つきの問題を無くすることができる。

　前記傾斜面と前記フェルールの軸線との成す角度は、前記第１のテーパ面と前記フェルールの軸線との成す角度よりも大きいことが好ましい。このように構成することにより、段差部を適正な形状及び大きさに形成することができる。

　前記傾斜面と前記フェルールの軸線との成す角度が、前記第２のテーパ面と前記フェルールの軸線との成す角度よりも大きいことが好ましい。このように構成することにより、段差部を適正な形状及び大きさに形成することができる。

　前記段差部の外周面と前記第２のテーパ面への境界部は、滑らかな曲面に形成されていることが好ましい。このように構成すれば、前述のようにカム面に傷を付ける角部を無くすことができる。

　前記段差部の外周面は、前記第１のテーパ面から前記第２のテーパ面にかけて全体的に滑らかな曲面に形成されているようにしてもよい。このように構成すれば、上記の場合と同様にカム面に傷を付ける角部を無くすことができる。また、段差部の形状、大きさを適正に形成することができる。

　前記フェルールにおいて前記カム面に近接する先端部の前縁の肉厚ｔ１と接続すべき配管の外径ｄとが式（１）の関係、すなわち、０．００５≦ｔ１／ｄ≦０．０５の関係を有することが好ましい。ｔ１／ｄがこの範囲より小さい値の場合には、前記先端部の加工が困難になる。また、ｔ１／ｄがこの範囲より大きい場合には、手回しにより配管を拘束する配管仮保持作業が困難になる。

　前記フェルールの前記交差部の位置における肉厚ｔ２と接続すべき配管の外径ｄとが式（２）の関係、すなわち、０．０１≦ｔ２／ｄ≦０．１の関係を有することが好ましい。ｔ２／ｄがこの範囲より小さい値の場合には、偏荷重に対する抗力が小さくなり偏荷重による気密性劣化対策の効果を発揮することができない。また、ｔ２／ｄがこの範囲より大きい値の場合には、手回しによる配管仮保持作業が困難になる。

　前記フェルールの先端部の前縁から前記交差部までの距離ｓ１と接続すべき配管の外径ｄとが式（３）の関係、すなわち、０．０２≦ｓ１／ｄ≦０．１の関係を有することが好ましい。ｓ１／ｄがこの範囲より小さい値の場合には、先端部が変形しても接続すべき配管を拘束することができない。また、ｓ１／ｄがこの範囲より大きい値の場合には、手回しによる配管仮保持作業が困難になる。

　前記フェルールの軸方向における前記段差部の長さｓ３と接続すべき配管の外径ｄとが式（４）の関係、すなわち、０≦ｓ３／ｄ≦０．４の関係を有することが好ましい。また、併せて、前記フェルールの軸方向における前記段差部の両端の肉厚差ｔ３と接続すべき配管の外径ｄとが式（５）の関係、すなわち、０．０３≦ｔ３／ｄ≦０．１の関係を有することが好ましい。ｓ３／ｄが上記範囲より大きい値の場合には、偏荷重に対する抗力が小さくなり、気密性劣化が顕著になることが実験的に確認されている。また、ｔ３／ｄが上記範囲より小さい値の場合には偏荷重に対する抗力が小さくなり、気密性劣化が顕著になり、ｔ３／ｄが上記範囲より大きい値の場合には結合部材の締付トルクが大きくなり過ぎ、作業性が低下するという問題のあることが実験的に確認されている。

　本発明に係る弁及び管継手は、上記何れかの食い込み式管接続構造を管継手部に用いたことを特徴とする。したがって、このような弁、管継手は、配管に作用する偏荷重による気密性の劣化を抑制することができる。

　本発明に係る冷凍装置は、これら弁或は管継手を冷媒回路に用いたことを特徴とする。したがって、本発明に係る冷凍装置は、配管に作用する偏荷重による気密性の劣化を抑制することができる。

　本発明に係る食い込み式管接続構造によれば、配管接続初期の段階で結合部材を手回しすることにより、フェルールの先端部を変形させて配管を拘束するようにすることができる。また、また、低強度部分に対応する第１のテーパ面と第１のテーパ面よりもカム面から離れている第２のテーパ面とを連結する段差部が設けられていることにより、低強度部分に隣接する隣接部の肉厚を接続すべき配管を気密に保持できる値に設定することができる。したがって、低強度部分の隣接部の肉厚を厚くすることにより、配管を気密に保持するように後方部を変形させるために必要な力を大きくすることができる。また、このようにすれば、前記後方部の配管保持力及び気密保持性能が向上するので、この食い込み式管接続構造の偏荷重に対する耐力を大きくすることができ、偏荷重による気密性の劣化を抑制することができる。

本発明の一実施形態に係る食い込み式管接続構造の部分断面図であって、配管仮保持工程開始の状態を示す図である。 同食い込み式管接続構造におけるフェルールの部分拡大図である。 配管仮保持工程における食い込み式管接続構造の態様を示す図であり、図３（ａ）は締結開始の状態を示す図であり、図３（ｂ）は配管仮保持作業後の状態を示す図であり、（ｃ）は参考例の配管仮保持作業後の状態を示す図である。 配管接続完了時における食い込み式管接続構造の状態を示す部分断面図である。 同食い込み式管接続構造に用いられる専用工具の斜視図である。 同食い込み式管接続構造における段差部の軸方向長さと接続すべき配管の外径との比と、気密性との関係を示すグラフである。 同食い込み式管接続構造における段差部における前後端の肉厚差と接続すべき配管の外径との比と、結合部材の締結トルク及び気密性との関係を示すグラフである。 フェルールの変形例の部分拡大図である。 フェルールの別の変形例の部分拡大図である。 従来例に係る食い込み式管継手の部分断面図であって、図１０（ａ）は一般的な結合部材の締結開始状態を示す図であり、図１０（ｂ）は一般的な結合部材の締結完了状態を示す図である。 同食い込み式管継手の部分断面図であって、図１１（ａ）は配管差込口への配管の挿入寸法が不足している場合の、結合部材の締結開始状態を示す図面であり、図１１（ｂ）は配管差込口への配管の挿入寸法が不足している場合の、結合部材の締結完了状態を示す図面である。

　以下、本発明の一実施形態に係る食い込み式管接続構造について、図面に基づき説明する。
　本実施形態に係る食い込み式管接続構造は、空気調和機などの冷凍装置の冷媒回路における食い込み式管継手の管継手部、又は分離型空気調和機の室外機と室内機との間に配置される連絡配管をその室外機に接続するための閉鎖弁における管継手部などに適用される。

　図１は、本実施形態に係る食い込み式管接続構造を用いた食い込み式管継手の部分断面図である。図１に示されるように、食い込み式管継手１は、継手本体１０と、結合部材２０と、継手本体１０と結合部材２０との間に挟着される環状のフェルール３０とを備えている。継手本体１０は、配管Ｐａと接続する被接続装置に取り付けられており、結合部材２０は、継手本体１０に螺合されて組み付けされている。本明細書の説明において、継手本体１０側、即ち図１における左側を前側とし、結合部材２０側、即ち図１における右側を後側とする。

　継手本体１０は、黄銅製であって、継手本体１０の基部１１の前側には、ソケット部１２が形成されるとともに、基部１１の後側には、雌ねじ筒部１３が形成されている。その基部１１の軸心部の後側に、雌ねじ筒部１３内の空間部に突出する軸部１４が形成されている。雌ねじ筒部１３の内面には、雌ねじ部１３ａが形成されており、この雌ねじ部１３ａは、結合部材２０と螺合可能な螺合部として機能する。軸部１４の外周面には、配管接続時に軸部１４の強度を調節するための環状空間部１５が形成されている。この環状空間部１５の基端部には内部凍結防止用の通気孔１５ａが形成されている。

　基部１１及び雌ねじ筒部１３は、六角ナット状に一体的に形成されている。継手本体１０の軸心部において軸部１４に対応する部分には、配管Ｐの先端部を挿入する配管差込口１６が形成されている。継手本体１０の軸心部においてソケット部１２に対応する部分には、被接続側装置から延伸する配管Ｐａの先端部を挿入する配管差込口１７が形成されている。配管差込口１６と配管差込口１７との間には、配管Ｐ及び配管Ｐａの位置を規制する段部１８が形成されている。配管差込口１６、１７に差し込まれた配管Ｐ，Ｐａの先端部が段部１８の端面に当接することにより、配管Ｐ，Ｐａの先端位置が一定に保持される。段部１８の前側の端面は、刃具によって加工されてテーパ状に形成されている。

　軸部１４の先端部、すなわち、配管差込口１６の入口部にはカム面１９が形成されている。カム面１９は、前側において配管差込口１６に連なり、後側（結合部材２０側）に向けて広がるテーパ状に形成されている。

　結合部材２０は、黄銅製であって、その軸心部には、配管Ｐを貫通させる配管貫通孔２１が形成されている。結合部材２０には、環状のスリット２２が形成されている。このスリット２２は、結合部材２０の径方向に延びる切れ目であり、結合部材２０を二分するように形成されている。結合部材２０におけるスリット２２よりも前側の部分には、管接続部２３が形成されており、この管接続部２３は、継手本体１０に螺合可能であり、配管接続機構を構成している。結合部材２０におけるスリット２２よりも後側の部分には、把持部２４が形成されており、この把持部２４は、一般の締結工具で把持可能である。スリット２２の軸方向の位置は、継手本体１０に対し結合部材２０が締結されて配管接続作業が完了した状態において、スリット２２の前側の内側面と雌ねじ筒部１３の後側の端面とが略一致するように配置されている（図４参照）。

　管接続部２３の外周には、雄ねじ部２３ａが形成されており、この雄ねじ部２３ａは、継手本体１０と螺合する螺合部として機能する。把持部２４の外形は、締結工具で把持可能な六角ナット状に形成されている。結合部材２０において円盤状スリット２２と対応する部分には、管状連通部２５が形成されている。この管状連通部２５は、薄肉の管状部であり、管接続部２３と把持部２４とを連結している。管状連結部２５の強度は、把持部２４を締め付ける回転トルクが配管接続完了時の値まで大きくなると、同管状連通部２５が切断される値に設計されている。

　管接続部２３の継手本体側の端部には、凹部２６ａが形成され、この凹部２６ａの内周面には、上述のフェルール３０を押圧するための押圧面２６が形成されている。押圧面２６は、前側に向けて広がる傾斜面に形成されている。押圧面２６の前側には、径方向に沿って内側に突出する突部２７が形成されている。この突部２７の内端面は、前側に向けて広がる傾斜面に形成されている。突部２７と押圧面２６との間に環状の拡径部２８が形成されている。

　管接続部２３の後側の面には、断面が円形である４個の係合穴部２９が形成されており、これら係合穴部２９は、配管接続後に管接続部２３の継手本体１０に対する螺合を緩めるための専用工具と係合する係合部として機能する。把持部２４において係合穴部２９と対応する部分には、加工用孔２９ａがそれぞれ形成されており、これら加工用孔２９ａにより係合穴部２９を把持部２４の後側から加工することが可能である。

　フェルール３０は、黄銅製であって、継手本体１０及び結合部材２０とは別体に形成されている。フェルール３０には、配管Ｐを挿通させる配管挿通孔３１が形成されている。図１に示されるように、フェルール３０の前部の外周面は後側に、換言すればカム面１９の反対側に向けて広がるテーパ面３２に形成され、その後部の外周面が軸心に略平行な曲面に形成されている。

　フェルール３０の後端部には、径方向外向きの環状の突部３３が形成されている。この突部３３の外周端面は、後方に径が小さくなる傾斜面に形成されている。この突部３３の最大外径は、前述の結合部材２０の突部２７の最小内径より僅かに大きく形成されている。上述したように、突部２７の内端面は、前側に向けて広がる傾斜面に形成されている。こうした構造により、突部２３は結合部材２０の拡径部２８に圧入され易くなっている。即ち、食い込み式管継手１の組付け時に、突部３３が突部２７の内端面に沿って変形しながら拡径部２８に押し込められる。突部３３の軸方向寸法は、前述の拡径部２８の軸方向寸法より僅かに小さく設定されている。これにより、フェルール３０の後端部が結合部材２０の凹部２６ａに対し、着脱自在である。フェルール３０は、結合部材２０に仮止めされて一体化されたまま搬送されることが可能である。また、フェルール３０は、継手本体１０に対し組み付け可能である。これら突部３３、突部２７、拡径部２８、上述の管接続部２３に形成された押圧面とは、フェルール３０の後端部を仮止めするための仮止め機構を構成している。

　フェルール３０の後端面と配管挿通孔３１とが接続する角部がフェルール３０の後方のエッジ部を形成している。
　フェルール３０には、配管挿通孔３１の内周面から外側に切り込まれた２つの切込部３４、３５が形成されている。フェルール３０の軸方向の前方に形成された切込部３４は、フェルール３０において切込部３４よりも前側にある先端部３６の変形を容易にするためのものである。すなわち、この切込部３４が形成されることにより、先端部３６において薄肉の低強度部分３４ａが形成されている。部分３４ａの厚さを調整することにより、結合部材２０を手回しで継手本体１０に対し締結した場合に、接続すべき配管Ｐを拘束するように先端部３６を変形させることができる。

　図２に示されるように、切込部３４は、フェルール３０の軸方向に切断した断面形状が直角三角形であって、切込部３４の後側の内壁と配管挿通孔３１の内壁とが接続する位置には交差部３４ｂが形成されている。この交差部３４ｂにより、接続すべき配管Ｐを把持し又は配管Ｐに食い込んで配管Ｐを気密に保持している。より具体的には、この実施の形態において、交差部３４ｂは、切込部３４の後面と配管挿通孔３１の内周面とが略直角に交差した角部であって、配管Ｐに食い込む前方のエッジ部を形成している。

　フェルール３０の軸方向の後側に形成された切込部３５は、その軸方向に切断した断面形状が略三角形状となるように形成されている。切込部３５の外側の部分において、その軸線と平行な曲面が形成されており、この曲面の外側には薄肉部３７が形成されている。薄肉部３７がヒンジとして機能することができるため、フェルール３０の前後部が内側に曲がり易くなっている。この結果、フェルール３０の前部の外周面を成すテーパ面３２がカム面１９に密着し易くなるとともに、フェルール３０の後端に形成される後方のエッジ部が配管Ｐに食い込み易くなっている。

　図２に示されるように、フェルール３０におけるテーパ面３２には、段差部３２ｂが設けられている。この段差部３２ｂは、上述した低強度部分３４ａに対応する前側（第１）のテーパ面３２ａ、換言すると前方のエッジ部よりも前側に位置するテーパ面３２ａと、換言すれば前側のテーパ面３２ａよりもカム面１９から離れて後側に位置し、外径が大きくなる後側（第２）のテーパ面３２ｃとを連結している。段差部３２ｂと後側のテーパ面３２ｃとの境界部分におけるテーパ面３２の外径は、段差部３２ｂと前側のテーパ面３２ａとの境界部分におけるテーパ面３２の外径よりも大きい。この段差部３２ｂは、後方（カム面１９の反対側）から低強度部分３４ａに隣接する後方部（隣接部）３０Ａの厚さが接続すべき配管Ｐを気密に保持できる値になるように形成されている。

　段差部３２ｂの外周面は、この実施の形態においては傾斜面に形成されている。この段差部３２ｂの外周面とフェルール３０の軸線との成す角度θ２が、前側のテーパ面３２ａとフェルール３０の軸線との成す角度θ１、及び後側のテーパ面３２ｃとフェルール３０の軸線との成す角度θ３よりも大きく形成されている。なお、この実施の形態においては角度θ１と角度θ３とは略同一に形成されている。

　フェルール３０における先端部３６の前縁の肉厚ｔ１と接続すべき配管Ｐの外径ｄ（図１参照）とが次の式（１）の関係を有するように設定されている。
　０．００５≦ｔ１／ｄ≦０．０５…式（１）
ｔ１／ｄが０．００５未満の場合は、先端部の加工が困難となる。

　フェルール３０において交差部３４ｂと対応する部分の肉厚（すなわち、前方のエッジ部に対応する部分の肉厚）ｔ２と接続すべき配管Ｐの外径ｄとが次の式（２）の関係を有するように設定されている。

　０．０１≦ｔ２／ｄ≦０．１…式（２）
　また、フェルール３０における先端部の前縁から交差部３４ｂまでの距離（すなわち、先端部から前方のエッジ部までの距離）ｓ１と接続すべき配管の外径ｄとが次の式（３）の関係を有するように設定されている。

　０．０２≦ｓ１／ｄ≦０．１…式（３）
　また、フェルール３０の段差部３２ｂの軸方向における長さｓ３と接続すべき配管Ｐの外径ｄとが次の式（４）の関係を有し、段差部３２ｂにおける前端と後端との肉厚の差ｔ３と接続すべき配管Ｐの外径ｄとが次の式（５）の関係を有するように設定されている。

　０≦ｓ３／ｄ≦０．４…式（４）
　０．０３≦ｔ３／ｄ≦０．１…式（５）
　なお、段差部３２ｂの軸方向長さｓ３は、先端部３６の前縁から段差部３２ｂの前端までの距離ｓ１と先端部３６の前縁から段差部３２ｂの後端までの距離ｓ２との差である。肉厚差ｔ３は、段差部３２ｂの前端の位置における肉厚、すなわち、交差部３４ｂの位置における肉厚ｔ２と、段差部３２ｂの後端の位置における肉厚ｔ４との差である。

　以上のように形成されるフェルール３０は、部品としての搬送及び管理段階において、その後端部が結合部材２０に仮止めされて一体化される。具体的には、フェルール３０の中心軸と結合部材２０の中心軸とを芯合せした状態として、フェルール３０の後端部が結合部材２０の凹部に押し付けられることにより、フェルール３０の突部３３が内向き突部２７と係合して拡径部２８内に圧入される。これにより、フェルール３０と結合部材２０との仮止めが行われる。なお、この内向きの突部２７と外向きの突部３３の引っ掛かりは僅かであるため、取り外すことも可能である。

　次に、以上のように構成された本結合部材による配管接続方法について説明する。
　継手本体１０及び結合部材２０により配管Ｐを接続するに際しては、まず継手本体１０が所定の取付けの対象に取り付けられる。この取付けの対象としては、例えば配管、閉鎖弁等の各種機器の配管接続ポートである。一方、フェルール３０が結合部材２０に仮止めされた状態において、配管Ｐが結合部材２０の配管貫通孔２１及びフェルール３０の配管挿通孔３１に貫挿させられ、結合部材２０が配管Ｐの外周に装着される。フェルール３０が仮止めされた状態の結合部材２０が継手本体１０から分離した状態で、結合部材２０が配管Ｐに装着されてもよいし、フェルール３０が仮止めされた状態の結合部材２０が継手本体１０に緩く螺合された状態で、結合部材２０の後方から配管Ｐが挿入されてもよい。そして、配管Ｐの先端部がフェルール３０の配管挿通孔３１を通して配管差込口１６に挿入され、その先端が段部１８の段差状の端面に当接させた状態として結合部材２０が継手本体１０に締結される。この場合、図１に示すようにフェルール３０の後端部が押圧面２６に当接した状態となる。

　この状態から引き続き結合部材２０が手回しで締め付けられる。前述のように、先端部３６の前縁の肉厚ｔ１、交差部３４ｂの位置における肉厚ｔ２及び段差部３２ｂの軸方向長さｓ３と、接続すべき配管Ｐの外径ｄとが０．００５≦ｔ１／ｄ≦０．０５（式（１））、０．０１≦ｔ２／ｄ≦０．１（式（２））、及び、０．０２≦ｓ１／ｄ≦０．１（式（３））の関係にある。交差部３４ｂの位置における肉厚ｔ２は、前方のエッジ部の位置における肉厚でもあり、段差部３２ｂの前端の位置における肉厚でもある。このため、手回しにより結合部材２０が回転させられると、先端部３６が変形し配管Ｐを拘束する。これにより、配管Ｐの仮保持が行われる。なお、ｔ１／ｄ＞０．０５の場合、ｔ２／ｄ＞０．１の場合、或いは、ｓ１／ｄ＞０．１の場合は、結合部材２０を締結する回転トルクが大きくなり、手回しによる配管保持作業が困難になる。また、ｓ１／ｄ＜０．０２の場合は、先端部３６の変形による配管拘束力が小さくなり、配管Ｐを仮保持することができなくなる。

　図３は、この配管仮保持作業における先端部３６の変化を示している。手回し前には図３（ａ）のように、先端部３６の前縁がカム面に当接した状態にある。この状態から結合部材２０が手回しで締め付けられると、図３（ｂ）のように、切込部３４により形成されている低強度部分３４ａが変形することにより先端部３６が変形する。このとき、フェルール３０の先端部３６は、配管差込口１６と接続すべき配管Ｐとの間に差し込まれるか、接続すべき配管Ｐに僅かに食い込むか、あるいは、配管差込口１６と接続すべき配管Ｐとの間に差し込まれながら配管Ｐに食い込むかにより、接続すべき配管Ｐが拘束される。段差部３２ｂが傾斜面に形成されているので、段差部３２ｂの後端と後方のテーパ面３２ｃとの境界部は大きな角度で連結されている。このため、その境界部によりカム面１９において発生する圧力が弱く、カム面１９が傷つけられ難い。仮に、段差部３２ｂがこのような傾斜面でなく、図３(ｃ)の例のように階段状の段差に形成されている場合においても、後方部３０Ａにより配管Ｐを気密に保持することができる。しかしながら、この場合には、段差部３２ｂと後方のテーパ面３２ｃとの境界部との角度が小さいため、カム面１９が傷つけられ易く、フェルール３０とカム面１９との気密性が劣化する恐れがある。なお、図３（ｂ）及び図３（ｃ）においては、配管Ｐが食い込まれるように誇張して画かれている。

　以上のようにして、配管Ｐの仮保持工程が終了した後、一般の締結工具により結合部材２０がさらに締め付けられる。これにより、フェルール３０における前方の交差部３４ｂ、すなわち、前方のエッジ部が薄肉部３７を中心として配管Ｐに食い込むように傾斜するとともに、後方のエッジ部が配管Ｐに食い込むように傾斜して、結合部材２０の締結工程が進行する。上述の後方部３０Ａにおける径方向寸法は、この締結工程において配管Ｐを気密に保持するように後方部３０Ａを変形させるために必要な力（すなわち、締結トルク）が適度に大きくなるように設定されている。具体的には、交差部３４ｂの位置における肉厚ｔ２（すなわち、段差部３２ｂの前端の位置における肉厚）、段差部３２ｂの前端の位置における肉厚ｔ２と同後端の位置における肉厚ｔ４との肉厚差ｔ３、段差部３２ｂの軸方向長さｓ３、後側のテーパ面３２ｃにおけるフェルール３０の中心線との成す角度θ３などが予め調整して設定されている。これにより、配管Ｐを気密に保持するように後方部３０Ａを変形させるために必要な力（すなわち、締結トルク）を適度に大きくすることができる。この結果、後方部３０Ａによる配管保持力及び気密保持性能が向上し、後方部３０Ａの偏荷重に対する耐力が大きくなるので、偏荷重による気密性の劣化が抑制される。段差部３２ｂの軸方向長さｓ３と接続すべき配管Ｐの外径ｄとが０．０３≦ｔ３／ｄ≦０．１の関係にあるので、結合部材２０の締付トルクが大きくなり過ぎを回避し、作業性の低下を回避している。

　そして、フェルール３０における交差部３４ｂ、すなわち、前方のエッジ部、及び後方のエッジ部の食い込みが所定量に達すると、図４に示すように、継手本体１０の雌ねじ筒部１３の後側の端面と円盤状スリット２２の前側の内側面とが略一致する。このような状態まで結合部材２０が締め付けられると、結合部材２０を締め付ける締結トルクが所定値に到達し、管状連結部２５が切断される。その結果、継手本体１０の雌ねじ筒部１３から突出した状態にある把持部２４が管接続部２３から分離する。これにより結合部材２０の配管接続作業が完了する。

　上記のような状態で締結された配管接続部は、把持部２４を分離させるため誰もが簡単に管接続部２３の螺合を緩めることができない。しかし、前述の係合穴部２９に係合可能な専用工具５０（図５を参照）を用いることにより、この管接続部２３を緩めることができる。

　この専用工具５０は、図５に示すように、半円環状の基体部５１に柄部５２が取り付けられている。基体部５１の中心部には、半円状穴５３が形成されており、この半円状穴５３の内径は配管Ｐよりやや大きく設定されている。基体部５１の側面には、管接続部２３の４個の係合穴部２９の内、任意の隣り合う３個に係合可能な３個の円柱状の係合突部５４が形成されている。

　配管の接続が解除される際には、専用工具５０の係合突部５４が管接続部２３の任意の隣り合う３個の係合穴部２９に係合し、柄部５２に力が入れられて基体部５１が回転させられる。これにより、管接続部２３を回転させて継手本体１０との螺合を緩めることができ、配管Ｐを継手本体１０から取り外すことができる。この配管接続の解除方法によれば、配管Ｐを切断することなく、配管Ｐを取り外すことができるので、配管の接続を解除する作業が簡単になる。また、継手本体１０を残した状態で配管Ｐを取り外すとともに、結合部材２０に仮止めされていたフェルール３０を引き抜き、この継手本体１０に対し新たなフェルール３０を装着して配管Ｐを再度接続することができる。

　次に以上のように構成された本実施の形態に係る食い込み式管接続構造によれば、次のような効果を奏することができる。
　（１）先端部３６において薄肉の低強度部分３４ａが形成されていることにより、結合部材２０を手回しで継手本体１０に対し締結する際に、接続すべき配管Ｐを拘束するように先端部３６を変形させることができる。即ち、配管の接続初期の段階で、結合部材２０を手回しすることにより、この先端部３６を変形させて配管Ｐを拘束することができる。

　（２）低強度部分３４ａに対応する前側のテーパ面３２ａとその後側のテーパ面３２ｃとが段差部３２ｂにより連結されている。これにより、低強度部分３４ａの後方部３０Ａを、接続すべき配管Ｐを気密に保持する機能を発揮する部分として所要の肉厚に設定することが可能である。したがって、前記低強度部分３４ａの後方部３０Ａの肉厚を厚くすることにより、配管Ｐを気密に保持するように後方部３０Ａを変形させるために必要な力（締結トルク）を大きくすることができる。これにより、この食い込み式管接続構造の偏荷重に対する耐力を大きくすることができ、偏荷重による気密性の劣化が抑制される。

　（３）前記低強度部分３４ａには、配管挿通孔３１から径方向外側に向けて切り込まれた切込部３４が形成されている。そのため、低強度部分３４ａを容易に形成することができる。

　（４）切込部３４は、軸心方向の断面形状が三角形状であり、この切込部３４の後側の内壁と配管挿通孔３１の内壁との交差部３４ｂが接続すべき配管Ｐを気密に保持するエッジ部として機能する。したがって、この交差部３４ｂを接続すべき配管Ｐに食い込ませることができ、後方部３０Ａの配管保持力及び気密保持性能を向上させることができる。

　（５）切込部３４を形成する三角形状は、略直角三角形であり、この切込部３４の後面と配管挿通孔３１の内周面との交差部３４ｂが略直角となるように形成されている。そのため、この交差部３４ｂに形成されるエッジ部の食い込み機能を向上させることができ、その結果として後方部３０Ａの配管保持力及び気密保持性能をより一層向上させることができる。

　（６）段差部３２ｂの表面は、傾斜面であり、段差部３２ｂと後方のテーパ面３２ｃとの境界部が大きな角度で連結されている。これになり、カム面１９が傷つけられ難くなる。

　（７）段差部３２ｂを構成する傾斜面は、フェルール中心線との成す角度θ２が、前側のテーパ面３２ａのフェルール中心線との成す角度θ１よりも大きく形成されているので、段差部３２ｂを適正な形状及び大きさに形成することができる。

　（８）段差部３２ｂを構成する傾斜面は、フェルール中心線との成す角度θ２が、前側のテーパ面３２ａのフェルール中心線との成す角度θ１及び後側のテーパ面３２ｃのフェルール中心線との成す角度θ３よりも大きく形成されているので、段差部３２ｂを適正な形状及び大きさに形成することができる。

　（９）フェルール３０における先端部３６の前縁の肉厚ｔ１と接続すべき配管Ｐの外径ｄとが式（１）の関係、すなわち、０．００５≦ｔ１／ｄ≦０．０５の関係を有するので、先端部３６の加工することが容易になるとともに、配管の仮保持作業に支障をきたすことがなくなる。ｔ１／ｄがこの範囲より小さい値の場合には、先端部３６の加工が困難になる。ｔ１／ｄがこの範囲より大きい場合には、手回しにより配管を拘束する配管の仮保持作業が困難になる。

　（１０）フェルール３０の交差部３４ｂの位置における肉厚（すなわち、前方のエッジ部の位置における肉厚）ｔ２と接続すべき配管Ｐの外径ｄとが式（２）の関係、すなわち、０．０１≦ｔ２／ｄ≦０．１の関係を有するので、偏荷重による気密性の劣化を抑制することができるとともに、配管仮保持作業に支障をきたさない。ｔ２／ｄがこの範囲より小さい値の場合には、偏荷重に対する抗力が小さくなり、偏荷重による気密性の劣化が発生し易くなる。ｔ２／ｄがこの範囲より大きい値の場合には、手回しによる配管仮保持作業が困難になる。

　（１１）フェルール３０における先端部３６の前縁から前記交差部３４ｂ（すなわち、前方のエッジ部）までの距離ｓ１と接続すべき配管Ｐの外径ｄとが式（３）の関係、すなわち、０．０２≦ｓ１／ｄ≦０．１の関係を有するので、配管Ｐの拘束及び手回しによる配管仮保持作業に支障をきたすことがない。ｓ１／ｄがこの範囲より小さい値の場合には、先端部３６が変形しても接続すべき配管Ｐを拘束することができない。ｓ１／ｄがこの範囲より大きい値の場合には、手回しによる配管仮保持作業が困難になる。

　（１２）フェルール３０における段差部３２ｂの軸方向長さｓ３と接続すべき配管Ｐの外径ｄとが式（４）の関係、すなわち、０≦ｓ３／ｄ≦０．４の関係を有するので、気密性劣化を回避することができる。段差部３２ｂの前端と後端の位置における肉厚差ｔ３と接続すべき配管の外径ｄとが式（５）の関係、すなわち、０．０３≦ｔ３／ｄ≦０．１の関係を有するので、偏荷重による気密性の劣化を回避するとともに、結合部材２０の締付トルクを限界以内に抑制することができる。ｓ３／ｄが上記範囲より大きい値の場合には、偏荷重に対する抗力が小さくなり、気密性の劣化が顕著になる。図６におけるデータは、これを示している。ｔ３／ｄが上記範囲より小さい値の場合には偏荷重に対する抗力が小さくなり、気密性の劣化が顕著になり、ｔ３／ｄが上記範囲より大きい値の場合には結合部材の締付トルクが大きくなり過ぎ、作業性が低下するという問題が生ずる。図７におけるデータは、これを示している。

　（１３）本実施の形態に係る食い込み式管接続構造を用いた、弁、食い込み式管継手１は、配管接続作業において初期段階において配管Ｐを仮保持することができるので、配管の接続作業を容易化することができる。

　（１４）本実施の形態に係るこのような弁或は食い込み式管継手１を冷媒回路に用いた冷凍装置は、配管接続作業において初期段階において配管Ｐを仮保持することができるので、配管の接続作業を容易化することができる。

　（変形例）
　・前記実施の形態における段差部３２ｂを、図８に示すように、傾斜面でなく、全体的に滑らかな曲面で形成することもできる。この場合も前記実施の形態の場合と同様に、カム面１９を傷つける恐れがなく、段差部３２ｂの形状、大きさを適正に形成することができる。

　・実施の形態１における段差部３２ｂを、図９に示すように、傾斜面でなく、フェルール中心線と垂直な方向で径方向の外側に延びる面と、この面と後側のテーパ面３２ｃとを曲面で結んだものとすることもできる。この場合も前記実施の形態の場合と同様に、カム面１９を傷つける恐れがなく、段差部３２ｂの形状、大きさを適正に形成することができる。

　・前記実施の形態においては、前側のテーパ面３２ａのフェルール中心線との成す角度θ１と後側のテーパ面３２ｃのフェルール中心線との成す角度θ３とが略同一であったが、これを異なるように形成してもよい。例えば、θ３＞θ１としてもよい。

　・フェルール３０は、継手本体１０及び結合部材２０とは別体に形成されるとともに、部品の段階で結合部材２０に仮止めされるように形成されているが、仮止めされない独立型としてもよい。この独立型のフェルールとしては、一体物ではなく複数部材により形成されるものであってもよい。フェルール３０は、結合部材２０と一体に形成され、配管接続開始時にフェルール３０が分離されてその後に独立のフェルールとして機能するものでもよい。

　・フェルール３０を結合部材２０に仮止めする機構は、結合部材２０に対し回動可能及び所定範囲内で軸方向に移動可能に仮止めされるとともに、結合部材２０に仮止めされて一体化されたたまま搬送可能、かつ、継手本体１０に対し組み付け可能に構成される構造であれば他の構造に変更してもよい。

　・継手本体１０は、ソケット部１２には被接続側装置の配管Ｐａがロー付けされる構造となっているが、ソケット部１２の外周に雄ねじを形成し、被接続装置内の閉鎖弁等の機器類に直接継手本体１０を取り付ける構造としてもよい。

　・結合部材２０は、締結過程において管接続部２３と把持部２４とに分割しない構造としてもよい。

　本発明は、冷凍装置、空気調和装置、給湯器等の温水装置、給水装置、一般の製造設備などにおける冷媒回路、水回路、ガス回路などに使用される食い込み式管接続構造に対し適用することができる。また、本発明を適用した食い込み式管接続構造は、配管同士の接続、閉鎖弁等の弁における管継手部、その他各種装置における管継手部に適用することができる。また、本発明を適用した食い込み式管接続構造が対象とする配管は、銅管、ステンレス管などの金属管を初め樹脂配管をも包含する。

　Ｐ…（接続すべき）配管、ｄ…（接続すべき）配管の外径、ｓ１…距離、ｓ３…長さ、ｔ１、ｔ２…肉厚、ｔ３…肉厚差、θ１、θ２，θ３…角度、１…食い込み式管継手、１０…継手本体、１９…カム面、２０…結合部材、３０…フェルール、３０Ａ…後方部、３１…配管挿通孔、３２…テーパ面、３２ａ…（前側の）テーパ面、３２ｂ…段差部、３２ｃ…（後側の）テーパ面、３４…切込部、３４ａ…低強度部分、３４ｂ…交差部、３６…先端部。

Claims (17)

1. 　　カム面を有する継手本体と、外周面が前記カム面の反対側に向けて広がるテーパ面に形成され、中心部に接続すべき配管が挿通される配管挿通孔を有する環状のフェルールと、前記継手本体に締結されて前記フェルールを前記継手本体の前記カム面に押圧する結合部材とを備え、
   　前記フェルールは、前記結合部材を手回しで前記継手本体に対し締結する際に同フェルールの先端部が接続すべき配管を拘束するように同先端部を変形させるための低強度部分と、前記テーパ面のうち前記低強度部分に対応する第１のテーパ面と前記第１のテーパ面よりも前記カム面から離れている第２のテーパ面とを接続する段差部と、前記カム面の反対側から前記低強度部分に隣接し、前記結合部材が前記継手本体に締結される際に前記接続すべき配管を気密に保持するための隣接部とを有し、
   　前記段差部と前記第２のテーパ面との境界部分における前記テーパ面の外径は、前記段差部と前記第１のテーパ面との境界部分における前記テーパ面の外径よりも大きく、前記段差部は、前記隣接部の肉厚が前記接続すべき配管を気密に保持できる値になるように形成されている
   　ことを特徴とする食い込み式管接続構造。
2. 　前記低強度部分は、前記配管挿通孔から径方向外側に向けて切り込まれた切込部が形成されている部分であることを特徴とする請求項１記載の食い込み式管接続構造。
3. 　前記切込部の前記フェルールの軸方向に沿った断面形状は、三角形状であり、前記切込部の前記隣接部側の内壁と前記配管挿通孔の内壁との交差部が前記接続すべき配管を気密に保持する部分として機能することを特徴とする請求項２記載の食い込み式管接続構造。
4. 　前記切込部の前記フェルールの軸方向に沿った断面形状は、略直角三角形であり、前記切込部の前記交差部が略直角であることを特徴とする請求項３記載の食い込み式管接続構造。
5. 　前記段差部の外周面は、傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項１～４の何れか１項に記載の食い込み式管接続構造。
6. 　前記傾斜面と前記フェルールの軸線との成す角度は、前記第１のテーパ面と前記フェルールの軸線との成す角度よりも大きいことを特徴とする請求項５記載の食い込み式管接続構造。
7. 　前記傾斜面と前記フェルールの軸線との成す角度が、前記第２のテーパ面と前記フェルールの軸線との成す角度よりも大きいことを特徴とする請求項６記載の食い込み式管接続構造。
8. 　前記段差部の外周面と前記第２のテーパ面との境界部は、滑らかな曲面に形成されていることを特徴とする請求項１～４の何れか１項に記載の食い込み式管接続構造。
9. 　前記段差部の外周面は、前記第１のテーパ面から前記第２のテーパ面にかけて全体的に滑らかな曲面に形成されていることを特徴とする請求項１～４の何れか１項に記載の食い込み式管接続構造。
10. 　前記フェルールにおいて前記カム面に近接する先端部の前縁の肉厚ｔ１と前記接続すべき配管の外径ｄとが以下の式（１）の関係を有することを特徴とする請求項１～９の何れか１項記載の食い込み式管接続構造。
    　０．００５≦ｔ１／ｄ≦０．０５…式（１）
11. 　前記フェルールの前記交差部の位置における肉厚ｔ２と前記接続すべき配管の外径ｄとが以下の式（２）の関係を有することを特徴とする請求項１０記載の食い込み式管接続構造。
    　０．０１≦ｔ２／ｄ≦０．１…式（２）
12. 　前記フェルールの前記先端部の前縁から前記交差部までの距離ｓ１と前記接続すべき配管の外径ｄとが以下の式（３）の関係を有することを特徴とする請求項１１記載の食い込み式管接続構造。
    　０．０２≦ｓ１／ｄ≦０．１…式（３）
13. 　前記フェルールの軸方向における前記段差部の長さｓ３と前記接続すべき配管の外径ｄとが以下の式（４）の関係を有し、前記フェルールの軸方向における前記段差部の両端の肉厚差ｔ３と前記接続すべき配管の外径ｄとが以下の式（５）の関係を有することを特徴とする請求項１２記載の食い込み式管接続構造。
    　０≦ｓ３／ｄ≦０．４…式（４）
    　０．０３≦ｔ３／ｄ≦０．１…式（５）
14. 　管継手部を有する弁であって、
    　前記管継手部は、請求項１～１３の何れか１項に記載の管接続構造を備えることを特徴とする弁。
15. 　管継手部を有する食い込み式管継手であって、
    　前記管継手部は、請求項１～１３の何れか１項に記載の管接続構造を備えることを特徴とする食い込み式管継手。
16. 　冷媒回路を有する冷凍装置であって、
    　前記冷媒回路は、請求項１４記載の弁を備えることを特徴とする冷凍装置。
17. 　冷媒回路を有する冷凍装置であって、
    　前記冷媒回路は、請求項１５記載の食い込み式管継手を備えることを特徴とする冷凍装置。

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