WO2010032802A1 - 太陽電池 - Google Patents

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Abstract

 金属基板上に、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体からなる光電変換層、及びアルカリ金属イオン供給層を有する太陽電池であって、前記金属基板は、その表面に陽極酸化により形成された絶縁性酸化膜を有し、前記アルカリ金属イオン供給層は、前記絶縁性酸化膜を形成してから前記光電変換層を形成し終わるまでの間に付与される太陽電池。

Description

太陽電池
 本発明は、耐電圧特性に優れ、高い変換効率を有するフレキシブルな太陽電池に関するものである。
 化合物太陽電池用基板としてはガラス基板が主に使用されている。しかしながら、ガラス基板は割れやすいために十分な厚みが必要であり、かつ、保護用の強化ガラスが必要であることから、重量過多となり、適用範囲が限定されている。最近では、住宅等の建造物用の電力供給源として太陽電池が注目を集めており、十分な供給電力を確保する上で太陽電池の大型化が不可欠であるため、太陽電池の大面積化を図る上で基板の軽量化が望まれている。
 しかしながら、軽量化を目的として、ガラス基板や強化ガラスを薄くすると割れやすくなることから、割れにくくフレキシブルであり、しかもガラス基板よりも軽量化を図ることのできる基板材料の開発が要望されている。
 また、ガラス基板の価格は、太陽電池の光電変換層材料の価格に比べると比較的に高く、太陽電池の普及を促すために安価な基板材料が望まれている。そのような基板材料として金属を使った場合には、その上に構成する太陽電池材料との間を絶縁するのが困難である。一方、化合物太陽電池では、ガラス基板として、ソーダライムガラスを用いるが、これは光吸収層を形成する際にナトリウムが光吸収層に拡散することが発電効率の向上に寄与するという知見に基づくものである。しかしながら、金属基板を太陽電池基板とした場合には、基板からナトリウムを供給することができないため、変換効率が上がらないという問題があった。
 金属基板使用時の絶縁性確保のために、特許文献1では金属基板上にガラス層を設けており、そのガラス層からのナトリウム拡散も行われているが、この技術では絶縁層中のピンホールが除去できず、絶縁層として完全ではない。また、特許文献2では金属上にゾルゲル法で第一の絶縁層を形成し、さらに別の絶縁材料で第二の絶縁層を形成することで、残ったピンホール部分も絶縁している。しかしながら、この技術でも十分な耐電圧が得られないという問題があった。また、特許文献3では陽極酸化膜の厚さ0.5μm以上で絶縁膜を形成しているが、絶縁層を片側にのみ付けると、熱膨張係数の違いから太陽電池製膜中に形状が曲がってしまうという問題があり、500℃を超える高温で製膜を行う化合物太陽電池基板として用いることができない。
 一方、銅-インジウム-ガリウム-セレン系(CIGS系)の太陽電池での、光吸収層へのナトリウム(Na)およびアルカリ金属イオンの供給技術としては、例えば、特許文献4及び5ではNa2Seを、特許文献6ではNa2Oを、特許文献7ではNa2Sを混合蒸着している。特許文献8ではモリブデン(Mo)上にリン酸ナトリウムを蒸着している。特許文献10ではNa2S、Na2Seを、特許文献11ではNa3AlF6をMoと基板および/または光吸収層との間に形成してナトリウムを供給している。特許文献12ではMo電極の上にNa2S又はNa2Seを析出させ、特許文献13及び14ではNaFをMo上にコートしてNaを供給する。しかしながら、これらの化合物は吸湿性や毒性・腐食性があり、安定に使用することは困難である。一方、特許文献9ではモリブデン酸ナトリウム含有水溶液をプリカーサとしてナトリウム供給源を設けている。この化合物自身は安定なものの、その高い結晶性のため、ガラス基板上に適用した場合には、モリブデン酸ナトリウムが剥離しやすいという問題があった。
 このように、金属基板を用いる場合、絶縁性を確保した上で、安定に使用できるアルカリ金属イオン供給源の確保を同時に満たす技術はなかった。
特開2006-80370号公報 特開2006-295035号公報 特開2000-349320号公報 特開平10-74966号公報 特開平10-74967号公報 特開平9-55378号公報 特開平10-125941号公報 特開2005-117012号公報 特開2006-210424号公報 特開2003-318424号公報 特開2005-86167号公報 特開平8-222750号公報 特開2004-158556号公報 特開2004-79858号公報
 本発明は上記事情に着目してなされたものであって、金属基板上に絶縁層が設けられた太陽電池用基板を用いて好適な発電特性を有するフレキシブル太陽電池を提供しようとするものである。
 本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、金属基板を陽極酸化することで金属基板表面に絶縁性の酸化膜が形成されることで絶縁性を確保し、さらに安定なアルカリ金属イオン、特にナトリウムイオンを供給する層を付与しておくことで、光電変換層の結晶を良質化し、良好な発電特性を得ることができることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
 本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
(1)金属基板上に、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体からなる光電変換層、及びアルカリ金属イオン供給層を有する太陽電池であって、前記金属基板は、その表面に陽極酸化により形成された絶縁性酸化膜を有し、前記アルカリ金属イオン供給層は、前記絶縁性酸化膜を形成してから前記光電変換層を形成し終わるまでの間に付与されることを特徴とする太陽電池。
(2)前記アルカリ金属イオン供給層がナトリウムを含有する、(1)項に記載の太陽電池。
(3)前記光電変換層が、銅(Cu)、銀(Ag)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)のうち少なくとも1つの元素を含有し、かつ、イオウ(S)、セレン(Se)及びテルル(Te)のうち少なくとも1つの元素を含有してなる半導体層である、(1)又は(2)項に記載の太陽電池。
(4)前記アルカリ金属イオン供給層が、モリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、チタン、アルミニウム、ケイ素およびリンからなる群から選ばれる元素を少なくとも1つ含有する、(1)~(3)のいずれか1項に記載の太陽電池。
(5)前記金属基板が、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、マグネシウム、銅、ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有する基板である、(1)~(4)のいずれか1項に記載の太陽電池。
(6)前記金属基板がアルミニウム基板である、(1)~(5)のいずれか1項に記載の太陽電池。
 本発明の太陽電池は、絶縁層が設けられたフレキシブルな金属基板が太陽電池用基板として使用されることにより、軽量かつフレキシブルである。また本発明の太陽電池は、廉価で製造することができる。さらに、アルカリ金属イオンの供給源を太陽電池セル層内に設けることで、本発明の太陽電池は良好な発電効率をもたらす。
 本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
図1(a)乃至(d)は、本発明の太陽電池を製造する方法を説明するための断面図である。 図2は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置の模式的な断面図である。 図3は、電気化学的粗面化処理に用いられる台形波の一例を示すグラフである。 図4は、本発明に好適に用いられるラジアル型電解装置の概略図である。
 以下、図面を参照して本発明について説明する。図1(a)乃至(d)は、本発明の太陽電池を製造する方法を説明するための断面図である。
 図1(a)に示すように、まず、陽極酸化により絶縁性酸化膜が形成された金属基板100を用いる。図1(a)に示すように、アルカリ金属イオン供給層250は絶縁性酸化皮膜100上に直接設ける。さらにプラス側の下部電極となるMo(モリブデン)電極層200を形成した後に、該電極層上にアルカリイオン供給層250を形成することが好ましい。
 次に、図1(b)に示すように、Mo電極層200上に形成されたアルカリイオン供給層250上に、光電変換層300が形成される。光電変換層300は、組成制御により、p-型を示す、CIGS系薄膜からなる層である。光電変換層300としては、Ib族元素、IIIb族元素、及びVIb族元素とからなる半導体(I-III-VI族半導体)の層が形成される。
 次に、図1(c)に示すように、上記の光電変換層300上に、CdSなどのバッファ層400を形成し、そのバッファ層400上に、不純物がドーピングされてn+型を示す、マイナス側の上部電極となるZnO(酸化亜鉛)からなる透光性電極層500を形成する。次に、図4(d)に示すように、メカニカルスクライブ装置によって、ZnOからなる透光性電極層500からMo電極層200までを、一括してスクライブ加工する。これによって、薄膜太陽電池の各セルが電気的に分離(すなわち、各セルが個別化)される。
 以下、本発明の太陽電池に用いられる基板から、順に説明する。
[太陽電池用基板]
 本発明の太陽電池に用いられる基板は、金属基板上に、陽極酸化により複数の細孔を有する絶縁性酸化膜が形成されたものであり、高い絶縁性が確保されている。
 金属基板としては、陽極酸化により金属基板表面上に生成する金属酸化膜が絶縁体である材料を利用することができる。具体的には、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)等、並びにそれらの合金が挙げられる。コストや太陽電池に要求される特性の観点から、アルミニウムが最も好ましい。以下、アルミニウム基板を例に挙げて説明する。
<アルミニウム基板>
 本発明の太陽電池の金属基板として用いられるアルミニウム基板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属からなる基板であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板である。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金がラミネートされまたは蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙を用いることもできる。これらの場合には、アルミニウムまたはアルミニウム合金側を陽極酸化して絶縁層を形成し、その後、当該絶縁層側にアルカリイオン供給層及び光電変換層を形成する。本発明に用いられるアルミニウム板の組成は、特に限定されないが、純アルミニウム板を用いるのが好適である。
 純度の高いアルミニウム材としては、99.9質量%以上の高純度であるとより好ましい。アルミニウム材の純度が高いほど陽極酸化後の細孔(ポア)の規則性が向上し、規則性を有する領域の大きさ(平均ポア周期)も広がる為、電磁気的デバイスへ応用する際には、できる限り高純度のアルミニウム材料を使用することが好ましく、99.99質量%以上のものが好ましい。純度が99.90質量%以上~99.99質量%以下の市販材は通常、圧延筋はあるものの、ふくれは無いものが多い。純度が99.99質量%を超える材料は、特注品扱いとなり、小幅実験機で作られたものが供給されることが多くふくれが多い場合がある。この場合は、ふくれのないものを選択して使用する。
 99.990質量%~99.999質量%の範囲のアルミニウムは一般に、高純度アルミニウムと呼ばれ、99.999質量%以上のアルミニウムは超高純度アルミニウムと呼ばれる。純度99.990質量%を超えるアルミニウム材は溶融炉で繰り返し溶融し精製されるが、溶融の際に空気や不活性ガス等の気体で攪拌する為、気泡が混入する。そこでその後、減圧して脱気処理を行う。高純度材の場合には、極微量の不純物を表層に浮上させる必要がある為、強い攪拌が必要となり、気泡の含有量が多くなり脱気が不十分となり易い。このような気泡を含んだアルミニウムを圧延すると、直径50μm~2mm程度、さらには直径0.1~1mm程度、深さ0.1~20μm程度、さらには深さ0.3~10μm程度の「ふくれ」と呼ばれる凸部が発生してしまう。発生密度は概ね、数個/dm2~数百個/dm2である。また前述のように圧延による圧延筋も発生する。したがって高純度材を使用する場合には、ふくれや圧延筋のないものを選択して使用する。
 完全に純粋なアルミニウムは精練技術上、製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものを用いてもよい。例えば、アルミニウムハンドブック第4版(軽金属協会(1990))に記載の従来の素材のもの、具体的には、JIS1050材、JIS1100材、JIS3003材、JIS3005材、国際登録合金3103A等に含まれるものがある。
 また、アルミニウム(Al)の含有率が99.4~95.0質量%であって、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、およびチタン(Ti)のうち少なくとも5種以上を後述する範囲内で含む、アルミニウム合金、スクラップアルミニウム材または二次地金を使用したアルミニウム板を使用することもできる。本発明における太陽電池用基板(支持体)には、アルミニウム合金が用いられるのが好ましい。アルミニウム合金においては、Alの他にFe、SiおよびCuを含有するのが好ましく、更にTiを含有するのがより好ましい。
 Feは、通常、原材料として使用されるアルミニウム合金(Al地金)に不可避不純物として0.04~0.20質量%程度含まれている。Feは、アルミニウム中に固溶する量は少なく、ほとんどが金属間化合物として存在する。Feは、アルミニウム合金の機械的強度を高める作用があり、支持体の強度に大きな影響を与える。Fe含有量が少なすぎると、機械的強度が低すぎて、基板を蒸着装置に取り付ける際に、板切れを起こしやすくなる。また、高速で大部数の蒸着を行う際にも、同様に板切れを起こしやすくなる。一方、Fe含有量が多すぎると、必要以上に高強度となり、基板を蒸着装置に取り付ける際に、フィットネス性に劣り、蒸着中に板切れを起こしやすくなる。また、Feの含有量が、例えば、1.0質量%より多くなると圧延途中に割れが生じやすくなる。
 Fe含有量の上限は、好ましくは0.29質量%である。これにより、優れた機械的強度が得られる。また、Feを含む金属間化合物量が少なくなり、金属間化合物の取り除かれた(脱落した)後に形成される局所的な凹部が少なくなる。このため光電変換層を構成する結晶の欠陥を減らすことができ、発電効率の面内分布をよくし、発電効率も優れたものになる。Fe含有量の下限は、地金中の含有量を考慮し、好ましくは0.05%以上とするのが妥当であるが、機械的強度を維持する上で、0.20質量%以上とすることがより好ましい。Feを含む金属間化合物としては、例えば、Al3Fe、Al6Fe、Al-Fe-Si系化合物、Al-Fe-Si-Mn系化合物が挙げられる。
 Siは、原材料であるAl地金に不可避不純物として通常0.03~0.1質量%前後含有されている。原材料差によるばらつきを防ぐため、意図的に微量添加されることが多い。また、Siは、スクラップアルミニウムにも多く含まれる元素である。Siは、アルミニウム中に固溶した状態で、または、金属間化合物もしくは単独の析出物として存在する。また、太陽電池用基板の製造過程で加熱されると、固溶していたSiが単体Siとして析出することがある。本発明者らの知見によれば、Siは、電解粗面化処理に影響を与える。更に、Siの含有量が多すぎると、粗面化処理後に陽極酸化処理を施したときに、陽極酸化皮膜の欠陥となる。
 本発明においては、Si含有量は、好ましくは0.03質量%以上であり、また、好ましくは0.15質量%以下である。電解粗面化処理の安定性に優れる点で、より好ましくは、0.04質量%以上であり、また、0.1質量%以下である。
 Cuは、電解粗面化処理を制御するうえで非常に重要な元素である。Cu含有量を好ましくは0.000質量%を越え、さらには0.020質量%とすることにより、硝酸液中での電解粗面化処理により生成するピットの径を大きくでき、基板と上層との密着性が向上する。一方、Cu含有量が多すぎると、硝酸液中での電解粗面化処理により生成するピットの径が大きくなりすぎるとともに径の均一性が低下するため、均一な表面が得られない場合がある。
 本発明においては、上記観点から、Cuの含有量は、好ましくは0.000質量%を越え、0.15質量%以下であり、より好ましくは0.05~0.1質量%である。
 Tiは、鋳造時の結晶組織を微細にするために、結晶微細化材として、通常、0.05質量%以下の含有量で含有することが好ましい。Ti含有量が多すぎると、電解粗面化処理、特に硝酸水溶液での電解粗面化処理において表面酸化皮膜の抵抗が過小となるため、均一なピットが形成されない場合がある。本発明においては、Tiの含有量は、0.05質量%以下であるのが好ましく、0.03質量%以下であるのがより好ましい。
 また、Tiはアルミニウム板に含有されていてもいなくてもよく、またその含有量は少なくてもよいが、結晶微細化効果を高めるためには、Tiの含有量は、0.001質量%以上であるのが好ましい。
 Tiは、主として、Alとの金属間化合物またはTiB2として添加されるが、結晶微細化効果を高めるためには、Al-Ti合金またはAl-B-Ti合金として添加されるのが好ましい。なお、Al-B-Ti合金として添加した場合、アルミニウム合金中にホウ素(B)が微量含有されることになるが、本発明の効果は損なわれない。
 上記異元素を上記の範囲で含有するアルミニウム板を用いると、後述する電解粗面化処理において均一かつ大きなピットが形成されるため、太陽電池としたときの基板の上層との密着性が優れたものになる。
 アルミニウム板には、上記の元素のほか、不可避不純物が含まれる。不可避不純物の大部分は、Al地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、Al純度99.7%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structure and properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が含有されていてもよい。
 アルミニウム合金に含有される不可避不純物としては、例えば、Mg、Mn、Zn、Cr等が挙げられ、これらはそれぞれ0.05質量%以下含まれていてもよい。これら以外の元素については、従来の不可避不純物としての含有量で含まれていてもよい。
 本発明に用いられるアルミニウム板は、上記原材料を用いて常法で鋳造したものに、適宜圧延処理や熱処理を施し、厚さを例えば、0.1~0.7mmとし、必要に応じて平面性矯正処理を施して製造される。この厚さは、適宜変更することができる。
 なお、上記アルミニウム板の製造方法としては、例えば、DC鋳造法、DC鋳造法から均熱処理および/または焼鈍処理を省略した方法、ならびに、連続鋳造法を用いることができる。
[太陽電池用基板の製造]
 本発明の太陽電池に用いられる金属基板(太陽電池用基板)は、好ましくは上記のアルミニウム板を陽極酸化し、更に特定の封孔処理をすることで得ることができるが、その製造工程には、必須の工程以外の各種の工程が含まれていてもよい。例えば、付着している圧延油を除く脱脂工程、アルミニウム板の表面のスマットを溶解するデスマット処理工程、アルミニウム板の表面を粗面化する粗面化処理工程、アルミニウム板の表面に陽極酸化皮膜を形成させる陽極酸化処理工程および陽極酸化皮膜のマイクロポアを封孔する封孔処理を経て太陽電池用基板とするのが好ましい。
 本発明に用いられる太陽電池用基板の製造では、酸性水溶液中で交流電流を用いてアルミニウム板を電気化学的に粗面化する粗面化処理(電気化学的粗面化処理)を含むのが好ましい。
 また、本発明に用いられる太陽電池用基板の製造では、上記電気化学的粗面化処理の他に、機械的粗面化処理、酸またはアルカリ水溶液中での化学的エッチング処理等を組み合わせたアルミニウム板の表面処理工程を含んでもよい。本発明に用いられる太陽電池用基板の製造にあたって、粗面化処理等の各処理工程は、連続法でも断続法でもよいが、工業的には連続法を用いるのが好ましい。
 更に、本発明においては、必要に応じて、親水性処理が行われる。
 本発明に用いられる太陽電池用基板を製造する方法としては、より具体的には、(a)機械的粗面化処理、(b)アルカリエッチング処理、(c)デスマット処理、(d)硝酸または塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(硝酸または塩酸電解)、(e)アルカリエッチング処理、(f)デスマット処理、(g)塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(塩酸電解)、(h)アルカリエッチング処理、(i)デスマット処理、(j)陽極酸化処理、(k)封孔処理、および(l)親水化処理をこの順に施す方法が好適に挙げられる。
 また、上記方法から(g)~(i)を省略した方法、上記方法から(a)を省略した方法、上記方法から(a)および(g)~(i)を省略した方法、上記方法から(a)~(d)を省略した方法も、本発明に用いられる太陽電池用基板を製造する方法として、好適に挙げることができる。
<水洗処理>
 上記各処理の間には、処理液を次工程に持ち込まないために通常水洗処理が行われる。
 水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。
 図2は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置の模式的な断面図である。図2に示すように、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置10は、水102を貯留する貯水タンク104と、貯水タンク104に水を供給する給水筒106と、貯水タンク104から自由落下カーテン状の液膜をアルミニウム板1に供給する整流部108とを有する。
 装置10においては、給水タンク104に給水筒106から水102が供給され、水102が給水タンク104からオーバーフローする際に、整流部108により整流され、自由落下カーテン状の液膜がアルミニウム板1に供給される。装置10を用いる場合、液量は10~100L/minであるのが好ましい。また、装置10とアルミニウム1との間の水102が自由落下カーテン状の液膜として存在する距離Lは、20~50mmであるのが好ましい。また、アルミニウム板の角度αは、水平方向に対して30~80°であるのが好ましい。
 図2に示されるような自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いると、アルミニウム板に均一に水洗処理を施すことができるので、水洗処理の前に行われた処理の均一性を向上させることができる。
 自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する具体的な装置としては、例えば、特開2003-96584号公報に記載されている装置が好適に挙げられる。
 また、水洗処理に用いられる整流部としては、例えば、扇状に噴射水が広がるスプレーチップをアルミニウム板の幅方向に複数個有するスプレー管を用いることができる。スプレーチップの間隔は20~100mmであるのが好ましく、また、スプレーチップ1本あたりの液量は0.5~20L/minであるのが好ましい。スプレー管は複数本用いるのが好ましい。
<粗面化処理(砂目立て処理)>
 粗面化処理について説明する。
 上記アルミニウム板は、より好ましい形状に砂目立て処理される。砂目立て処理方法は、特開昭56-28893号公報に記載されているような機械的砂目立て(機械的粗面化処理)、化学的エッチング、電解グレイン等がある。更に、塩酸電解液中または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て法(電気化学的粗面化処理、電解粗面化処理)や、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法等の機械的砂目立て法(機械的粗面化処理)を用いることができる。これらの砂目立て法は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。例えば、ナイロンブラシと研磨剤とによる機械的粗面化処理と、塩酸電解液または硝酸電解液による電解粗面化処理との組み合わせや、複数の電解粗面化処理の組み合わせが挙げられる。中でも、電気化学的粗面化処理が好ましい。また、機械的粗面化処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせて行うのも好ましく、特に、機械的粗面化処理の後に電気化学的粗面化処理を行うのが好ましい。
(機械的粗面化処理)
 機械的粗面化処理は、ブラシ等を使用してアルミニウム板表面を機械的に粗面化する処理であり、上述した電気化学的粗面化処理の前に行われるのが好ましい。
 好適な機械的粗面化処理としては、アルミニウム板表面に研磨剤のスラリー液を供給しながら毛径が0.07~0.57mmの回転するナイロンブラシロールを用いて処理する方法を挙げることができる。
 ナイロンブラシは吸水率が低いものが好ましく、例えば、東レ社製のナイロンブリッスル200T(商品名、6,10-ナイロン、軟化点:180℃、融点:212~214℃、比重:1.08~1.09、水分率:20℃・相対湿度65%において1.4~1.8、20℃・相対湿度100%において2.2~2.8、乾引っ張り強度:4.5~6g/d、乾引っ張り伸度:20~35%、沸騰水収縮率:1~4%、乾引っ張り抵抗度:39~45g/d、ヤング率(乾):380~440kg/mm2)が好ましい。
 研磨剤としては従来のものを用いることができるが、特開平6-135175号公報および特公昭50-40047号公報に記載されているケイ砂、石英、水酸化アルミニウム、またはこれらの混合物を用いるのが好ましい。
 スラリー液としては、比重が1.05~1.3の範囲内にあるものが好ましい。スラリー液をアルミニウム板表面に供給する方法としては、例えば、スラリー液を吹き付ける方法、ワイヤーブラシを用いる方法、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム板に転写する方法が挙げられる。また、特開昭55-74898号公報、同61-162351号公報、同63-104889号公報に記載されている方法を用いてもよい。
 更に、特表平9-509108号公報に記載されているように、アルミナおよび石英からなる粒子の混合物を95:5~5:95の範囲の質量比で含んでなる水性スラリー中で、アルミニウム板表面をブラシ研磨する方法を用いることもできる。このときの上記混合物の平均粒子径は、1~40μm、特に1~20μmの範囲内であるのが好ましい。
(電気化学的粗面化処理)
 電気化学的粗面化処理は、酸性水溶液中で、アルミニウム板を電極として交流電流を通じ、該アルミニウム板の表面を電気化学的に粗面化する工程であり、前述の機械的粗面化処理とは異なる。
 本発明においては、上記電気化学的粗面化処理において、アルミニウム板が陰極となるときにおける電気量、即ち、陰極時電気量QCと、陽極となるときにおける電気量、即ち、陽極時電気量QAとの比QC/QAを、例えば、0.5~2.0の範囲内とすることで、アルミニウム板の表面に均一なハニカムピットを生成することができる。QC/QAが0.50未満であると、不均一なハニカムピットとなりやすく、また、2.0を超えても、不均一なハニカムピットとなりやすい。QC/QAは、0.8~1.5の範囲内とするのが好ましい。
 電気化学的粗面化処理に用いられる交流電流の波形としては、正弦波(サイン波)、矩形波、三角波、台形波等が挙げられる。また、交流電流の周波数は、電源装置を製作するコストの観点から、30~200Hzであるのが好ましく、40~120Hzであるのがより好ましく、50~60Hzであるのが更に好ましい。
 本発明の太陽電池用基板の電気化学的粗面化処理として、好適に用いられる台形波の一例を図3に示す。図3において、縦軸は電流値、横軸は時間を示す。また、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流値がゼロからカソードサイクル側のピークに達するまでの時間、tp’は電流値がゼロからアノードサイクル側のピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流を示す。交流電流の波形として台形波を用いる場合、電流がゼロからピークに達するまでの時間tpおよびtp’はそれぞれ0.1~2msecであるのが好ましく、0.3~1.5msecであるのがより好ましい。tpおよびtp’が0.1msec未満であると、電源回路のインピーダンスが影響し、電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる場合がある。また、tpおよびtp’が2msecを超えると、酸性水溶液中の微量成分の影響が大きくなり、均一な粗面化処理が行われにくくなる。
 また、電気化学的粗面化処理に用いられる交流電流のdutyは、アルミニウム板表面を均一に粗面化する点から0.25~0.75の範囲内とするのが好ましく、0.4~0.6の範囲内とするのがより好ましい。本発明でいうdutyとは、交流電流の周期Tにおいて、アルミニウム板の陽極反応が持続している時間(アノード反応時間)をtaとしたときのta/Tをいう。特に、カソード反応時のアルミニウム板表面には、水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の生成に加え、酸化皮膜の溶解や破壊が発生し、次のアルミニウム板のアノード反応時におけるピッティング反応の開始点となるため、交流電流のdutyの選択は均一な粗面化に与える効果が大きい。
 交流電流の電流密度は、台形波または矩形波の場合、アノードサイクル側のピーク時の電流密度Iapおよびカソードサイクル側のピーク時の電流密度Icpがそれぞれ10~200A/dm2となるのが好ましい。また、Icp/Iapは、0.9~1.5の範囲内にあるのが好ましい。
 電気化学的粗面化処理において、電気化学的粗面化処理が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応に用いた電気量の総和は、50~1000C/dm2であるのが好ましい。電気化学的粗面化処理の時間は、1秒~30分であるのが好ましい。
 電気化学的粗面化処理に用いられる酸性水溶液としては、通常の直流電流または交流電流を用いた電機化学的粗面化処理に用いるものを用いることができ、その中でも硝酸を主体とする酸性水溶液または塩酸を主体とする酸性水溶液を用いることが好ましい。ここで、「主体とする」とは、水溶液中に主体となる成分が、成分全体に対して、30質量%以上、好ましくは50質量%以上含まれていることをいう。以下、他の成分においても同様である。
 硝酸を主体とする酸性水溶液としては、上述したように、通常の直流電流または交流電流を用いた電気化学的粗面化処理に用いるものを用いることができる。例えば、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸化合物のうち一つ以上を、0.01g/Lから飽和に達するまでの濃度で、硝酸濃度5~15g/Lの硝酸水溶液に添加して使用することができる。硝酸を主体とする酸性水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のアルミニウム合金中に含まれる金属等が溶解されていてもよい。
 硝酸を主体とする酸性水溶液としては、中でも、硝酸と、アルミニウム塩と、硝酸塩とを含有し、かつ、アルミニウムイオンが1~15g/L、好ましくは1~10g/L、アンモニウムイオンが10~300ppmとなるように、硝酸濃度5~15g/Lの硝酸水溶液中に硝酸アルミニウムおよび硝酸アンモニウムを添加して得られたものを用いることが好ましい。なお、上記アルミニウムイオンおよびアンモニウムイオンは、電気化学的粗面化処理を行っている間に自然発生的に増加していくものである。また、この際の液温は10~95℃であるのが好ましく、20~90℃であるのがより好ましく、30~70℃であるのが特に好ましい。
 電気化学的粗面化処理においては、縦型、フラット型、ラジアル型等の従来の電解装置を用いることができるが、特開平5-195300号公報に記載されているようなラジアル型電解装置が特に好ましい。
 本発明の太陽電池用基板の電気化学的粗面化処理に好適に用いられる、ラジアル型電解装置の概略図を図4に示す。
 図4に示すように、アルミニウム板11は主電解槽40中に配置されたラジアルドラムローラ12に巻装され、搬送過程で交流電源20に接続された主極13aおよび13bによって電解処理される。酸性水溶液14は、溶液供給口15からスリット16を通じてラジアルドラムローラ12と主極13aおよび13bとの間にある溶液通路17に供給される。
 ついで、主電解槽40で処理されたアルミニウム板11は、補助陽極槽50で電解処理される。この補助陽極槽50には補助陽極18がアルミニウム板11と対向配置されており、酸性水溶液14は、補助陽極18とアルミニウム板11との間を流れるように供給される。なお、補助電極に流す電流は、サイリスタ19aおよび19bにより制御される。補助陽極槽50は、主電解槽40の前、後または前後に配置されていてもよい。
 主極13aおよび13bは、カーボン、白金、チタン、ニオブ、ジルコニウム、ステンレス、燃料電池用陰極に用いる電極等から選定することができるが、カーボンが特に好ましい。カーボンとしては、一般に市販されている化学装置用不浸透性黒鉛や、樹脂含芯黒鉛等を用いることができる。
 補助陽極18は、フェライト、酸化イリジウム、白金、または、白金をチタン、ニオブ、ジルコニウム等のバルブ金属にクラッドもしくはメッキしたもの等公知の酸素発生用電極から選定することができる。
 主電解槽40および補助陽極槽50内を通過する酸性水溶液の供給方向はアルミニウム板11の進行とパラレルでもカウンターでもよい。アルミニウム板に対する酸性水溶液の相対流速は、10~5000cm/secであるのが好ましい。
 一つの電解装置には1個以上の交流電源を接続することができる。また、2個以上の電解装置を使用してもよく、各装置における電解条件は同一であってもよいし異なっていてもよい。
 また、電解処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないためにニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
 上記電解装置を用いる場合においては、電解装置中のアルミニウム板がアノード反応する酸性水溶液の通電量に比例して、例えば、(i)酸性水溶液の導電率と(ii)超音波の伝搬速度と(iii)温度とから求めた硝酸およびアルミニウムイオン濃度をもとに、硝酸と水の添加量を調節しながら添加し、硝酸と水の添加容積と同量の酸性水溶液を逐次電解装置からオーバーフローさせて排出することで、上記酸性水溶液の濃度を一定に保つのが好ましい。
<表面処理>
 つぎに、酸性水溶液中またはアルカリ水溶液中での化学的エッチング処理、デスマット処理等の表面処理について順を追って説明する。上記表面処理は、それぞれ上記電気化学的粗面化処理の前、または、上記電気化学的粗面化処理の後であって後述する陽極酸化処理の前において行われる。ただし、以下の各表面処理の説明は例示であり、本発明は、以下の各表面処理の内容に限定されるものではない。また、上記表面処理を初めとする以下の各処理は任意で施される。
(アルカリエッチング処理)
 アルカリエッチング処理は、アルカリ水溶液中でアルミニウム板表面を化学的にエッチングする処理であり、上記電気化学的粗面化処理の前と後のそれぞれにおいて行うのが好ましい。また、電気化学的粗面化処理の前に機械的粗面化処理を行う場合には、機械的粗面化処理の後に行うのが好ましい。アルカリエッチング処理は、短時間で微細構造を破壊することができるので、後述する酸性エッチング処理よりも有利である。
 アルカリエッチング処理に用いられるアルカリ水溶液としては、カセイソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の1種または2種以上を含有する水溶液が挙げられる。特に、水酸化ナトリウム(カセイソーダ)を主体とする水溶液が好ましい。アルカリ水溶液は、アルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に含有される合金成分を0.5~10質量%を含有していてもよい。
 アルカリ水溶液の濃度は、1~50質量%であるのが好ましく、1~30質量%であるのがより好ましい。
 アルカリエッチング処理は、アルカリ水溶液の液温を20~100℃、好ましくは40~80℃の間とし、1~120秒間、好ましくは2~60秒間処理することにより行うのが好ましい。アルミニウムの溶解量は、機械的粗面化処理の後に行う場合は5~20g/m2であるのが好ましく、電気化学的粗面化処理の後に行う場合は0.01~10g/m2であるのが好ましい。最初にアルカリ水溶液中で化学的なエッチング液をミキシングするときには、液体水酸化ナトリウム(カセイソーダ)とアルミン酸ナトリウム(アルミン酸ソーダ)とを用いて処理液を調製することが好ましい。
 また、アルカリエッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないために、ニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
 アルカリエッチング処理を電気化学的粗面化処理の後に行う場合、電気化学的粗面化処理により生じたスマットを除去することができる。このようなアルカリエッチング処理としては、例えば、特開昭53-12739号公報に記載されているような50~90℃の温度の15~65質量%の硫酸と接触させる方法および特公昭48-28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が好適に挙げられる。
(酸性エッチング処理)
 酸性エッチング処理は、酸性水溶液中でアルミニウム板を化学的にエッチングする処理であり、上記電気化学的粗面化処理の後に行うのが好ましい。また、上記電気化学的粗面化処理の前および/または後に上記アルカリエッチング処理を行う場合は、アルカリエッチング処理の後に酸性エッチング処理を行うのも好ましい。
 アルミニウム板に上記アルカリエッチング処理を施した後に、上記酸性エッチング処理を施すと、アルミニウム板表面のシリカを含む金属間化合物または単体Siを除去することができ、その後の陽極酸化処理において生成する陽極酸化皮膜の欠陥をなくすことができる。その結果、漏電流の増加を防止し、十分な絶縁性を維持することができる。
 酸性エッチング処理に用いられる酸性水溶液としては、リン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2種以上の混酸を含有する水溶液が挙げられる。中でも、硫酸水溶液が好ましい。酸性水溶液の濃度は、50~500g/Lであるのが好ましい。酸性水溶液は、アルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に含有される合金成分を含有していてもよい。
 酸性エッチング処理は、液温を60~90℃、好ましくは70~80℃とし、1~10秒間処理することにより行うのが好ましい。このときのアルミニウム板の溶解量は0.001~0.2g/m2であるのが好ましい。また、酸濃度、例えば、硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度は、常温で晶出しない範囲から選択することが好ましい。好ましいアルミニウムイオン濃度は0.1~50g/Lであり、特に好ましくは5~15g/Lである。
 また、酸性エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないために、ニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
(デスマット処理)
 上記電気化学的粗面化処理の前および/または後に上記アルカリエッチング処理を行う場合は、アルカリエッチング処理により、一般にアルミニウム板の表面にスマットが生成するので、リン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸、またはこれらの2種以上の混酸を含有する酸性溶液中で上記スマットを溶解する、いわゆるデスマット処理をアルカリエッチング処理の後に行うのが好ましい。なお、アルカリエッチング処理の後には、酸性エッチング処理およびデスマット処理のうち、いずれか一方を行えば十分である。
 酸性溶液の濃度は、1~500g/Lであるのが好ましい。酸性溶液中にはアルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に含有される合金成分が0.001~50g/L溶解していてもよい。
 酸性溶液の液温は、20℃~95℃であるのが好ましく、30~70℃であるのがより好ましい。また、処理時間は1~120秒であるのが好ましく、2~60秒であるのがより好ましい。
 また、デスマット処理液(酸性溶液)としては、上記電気化学的粗面化処理で用いた酸性水溶液の廃液を用いるのが、廃液量削減の上で好ましい。
 デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないためにニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
<研磨処理>
 特に、平面の粗さを小さくしたい場合、ふくれや圧延筋等の比較的大きな凹凸を除去する方法としては、金属の表面処理方法として各種知られている方法のうち、少なくとも機械研磨処理を行なうことが必要である。機械的研磨処理を行なった後、補助的手段として、化学的研磨処理、電気化学的研磨処理を行うことが好ましい。研磨方法としては特開2007-30146号公報の方法を用いることができる。
 下記工程で、陽極酸化層の表面粗さを小さくする場合、上記機械的処理によって、算術平均粗さRaが0.1μm以下で、かつ表面光沢度が60%以上のアルミニウム基板を得ることができる。
(算術平均粗さRa)
 一般には金属表面の算術平均粗さRaは、圧延方向に垂直な方向を横方向として、横方向に複数箇所でそれぞれ圧延方向に基準長さ測定して平均する。本発明における表面粗さは、対象表面に垂直な断面に現れる輪郭を求める断面曲線法であり、Raが1μm以上では触針式表面粗さ測定器を用い、Raが1μm未満では原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、原子間力を検出して、断面曲線を得る方法を用いることが好ましい。JIS-B601-1994では、粗さ曲線から複数個(例えば5)の基準長さLだけ連続して抜き取った評価長さについて粗さを評価する。基準長さはカットオフ値と同一長さとする。それぞれの基準長さの範囲内で、各種粗さパラメータを求め、それを基準長さ全数について平均し、測定値とする。本発明における平均表面粗さは、圧延方向と、圧延方向に垂直な方向での測定値の平均値である。
(表面光沢度)
 JIS Z 8741規格では、可視波長全域にわたって屈折率が1.567(入射角60度において鏡面反射率10%)のガラス表面を、光沢度100(%)と規定する。しかし屈折率1.567のガラス表面は湿気などによって侵されやすいため、屈折率1.500付近(光沢度90%)を実際の基準面とする(光沢度90%の標準板が90%となるように、絶対値を毎回補正する)。
 一般のモノの表面では、光沢度の大きなものは角度を小さく、光沢度の小さいものは角度を大きくとって測定するが、JISではこの角度を20度・45度・60度・75度・85度と規定している。しかし実際には、60度の光沢計が、測定範囲が広いために多く使用される。これは、光沢度が角度の大きさに比例的な値を示すためで、全部の角度を測定しなくても、一つの角度の測定で他の角度の光沢度を推定して測定することが可能である。JIS規格により、光沢度は、%もしくは数字のみでよいと規定されている。
 光沢度は正反射率とも呼ばれ圧延方向に平行な方向を縦方向、圧延方向に垂直な方向を横方向として、それぞれ別に複数個測定し、平均値を採る。本発明の太陽電池用基板に用いられるアルミニウム基板の光沢度は、縦方向も横方向も共に、 JIS Z 8741による60度の光沢度は、60%以上であることが好ましく、さらに好ましくは80%以上である。
 本発明における算術平均粗さ、光沢度は、縦方向、横方向の平均値を、好ましくは面積50mm2以上、より好ましくは400mm2以上、さらに好ましくは900mm2以上、で平均する。
 算術平均粗さRaを0.1μm以下で、かつ表面光沢度を60%以上としたアルミニウム基板表面は、ほぼ鏡面状態ということができ、目視可能な傷のない状態を示していると考えられる。
(機械的研磨)
 機械的研磨とは、水と研磨剤の混合物であるスラリーなどの研磨剤含有物を、布、紙、金属などのサポート材料に埋め込むか、または、被研磨体である基板と研磨体であるサポート材料の間に供給して、擦らせることで、研磨剤の鋭利な部分で、該基板を削る研磨手法である。広い面積の機械的処理が可能で、研削能力が高く、深い傷を除去することが可能である。一般に、基板が薄板の場合には、樹脂に包埋したり、金属ブロックに貼りつけて、研磨し易い形状に加工する必要がある。特に鏡面状態にする際にはバフ研磨と呼ばれ、研磨布と研磨剤に特徴がある。
(1)精研磨
 研磨体として、SiC、ダイヤモンド、アルミナ等の研磨材を耐水紙や布に塗布したものが好適に用いられる。粒子径は#80(粒子径:200μm)~#4000(粒子径:4μm)程度まで使用する。SiC粉末を耐水紙に埋め込んだ研磨紙、ダイヤモンド粉末を金属に埋め込んだ精密研磨盤、研磨剤を水や化学薬品と混ぜてスラリー状またはペースト状にしたものと組み合わせて使うための起毛した布(通常バフと呼ばれる)等がある。
 研磨剤、研磨布は番手の小さいもの(粒子径の粗いもの)から、階段的に番手の大きいもの(粒子径の細かいもの)を使用することが好ましい。精研磨をせずに、粗い研磨剤でバフ研磨を行うこともできるが、粗い研磨剤が残留すると傷の原因となるので、研磨剤を耐水紙や布に塗布したものを用いる精研磨を行うのが好ましい。耐水紙や布は研磨剤毎に交換するのが好ましい。
具体例:丸本ストルアス(株)製琢磨布 商品名:DP-Net 粒径:6μm~45μm各種
    丸本ストルアス(株)製琢磨布 商品名:DP-Nap 粒径:0.25μm~1μm各種
    丸本ストルアス(株)製耐水研磨紙 商品名:耐水研磨紙 #80~#1500各種
(2)バフ研磨
 バフ研磨とは綿布、サイザル麻布、ウール繊維などの材料を基材としたバフを用い、その外周面に研磨材を接着剤(ニカワなど)で固定するか、または回転バフ表面に研磨剤が一時的に保持される状態で、バフを高速回転させる。その回転面に品物の表面を押しつけ、機械的に素地の表面をけずりとって均一な表面に加工する方法である。
a)研磨機
 バフ研磨機は、その軸端にバフを装着し、バフ外周面に研磨剤を保持させ、それを高速で回転させて加工を行う研磨機械である。研磨盤は各種市販品を使用可能であるが、下記のようなものが知られている。
丸本ストルアス(株)製 商品名:ラボポール-5、ロトポール-35、MAPS
 手動研磨も可能であるが、冶具を適宜使用して自動研磨することも可能である。
b)バフ
 バフの種類は布バフでは、縫いバフ、とじバフ、ばらバフ、バイアスバフ、サイザルバフなどがある。その他のバフとしては、フラップホイール、不織布ホイール、ワイヤーホイールなどがある。これらのバフは、その用途に応じて使用される。綿繊維を起毛したものが好ましい。
具体例:丸本ストルアス(株)製 商品名:琢磨布 No101(羊毛)、No102(綿)、No103(合成繊維)、No773(綿/合成繊維 混毛)等
c)研磨材
 バフ研磨材とは、比較的微粉の研磨材を主成分とし、これと油脂やその他適当な成分からなる媒体とを均一に混合した研磨材料のことである。
具体例:丸本ストルアス(株)製 品名:耐水研磨紙 #80~#1500各種
c-1)油脂性研磨材
 油脂性研磨材とは微細な研磨粒を油脂で練り固めたもので、バフ研磨の行程は中磨きや仕上げ研磨に主として使われる。使用される油脂は一般的にステアリン酸、パラフィン、牛脂、松ヤニなどである。油脂性研磨材をバフに押しつけると摩擦熱によって油脂が溶けて、油脂と共に研磨粒がバフの表面に移動する。この時、品物をバフに押しつけると油脂は素地金属の表面で油膜となり、研磨粒が金属面にむやみに食い込むのを防ぎ、金属の表面を平滑にするのに役立つ。油脂性研磨材の種類はエメリーペースト、トリポリ、グロース、ライム、青棒、赤棒、白樺、グリース棒などがある。中でもトリポリ(主成分:SiO2、モース硬度:7)やマチレス(主成分:CaO、モース硬度:2)、青棒(主成分:Cr2O3、モース硬度:6)、白棒(主成分:Al2O3、モース硬度:9)が好ましい。
c-2)液体研磨材
 液体研唐材とは、自動バフ研磨機に使用される目的で作られたもので、研磨機に自動的に供給する為に液状にしたものである。研磨材をスプレーガンを使用して吹き付け、スプレーガンのノズルの開閉をタイマーと連動させることによって間欠的に噴出させる方法がある。SiC、ダイヤモンド、アルミナ粉末等が知られている。これら研磨剤の大きさは一般に、篩で分離できる程度の粗いものは粒度であらわされて、番手の大きいもの程、平均粒径が小さい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 通常は粗いものから順次細かい研磨剤を使って研磨することで、#1000程度から鏡面光沢が現れ#1500程度以上で研磨することで、目視上は鏡面状態となる。
 研磨材の種類としては平均粒子径0.1μm~100μm程度まで各種市販されている。具体例としては下記のようなものがある。
丸本ストルアス(株)製ダイヤモンド縣濁液(商品名:DP-Spray、粒径:0.25μm~45μm各種)
メラー社製アルミナ縣濁液(商品名:アルミナ縣濁液 No.100(粒径:1μm)~No.2000(粒径:0.06μm)各種)
c-3)研磨補助剤
 布バフにエメリーを接着させる物として、にかわ、セメントなどがある。にかわは、熱湯に溶けて粘度の高い液状になる。セメントは珪酸ナトリウムに合成樹脂を配合したもので、にかわと同様にエメリーをバフに接着させる。
 機械研摩によって大きく深い凹凸(数mm~数百μm)を除去する方法の具体例は下記の種類である。周速の好ましい範囲は1800~2400m/minである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 中でも研摩布紙およびバフが入手性、汎用性の点から好ましい。
 全てバフで行う場合、粗研摩(粒度#400以下)にはサイザル麻布,綾織綿布を用い、中研摩(粒度#400~1000)は平織り綿布,レーヨンを用い、仕上げ研摩(粒度#1000以上)ではキャラコ,ブロード,ネル,フェルト,牛皮等を用いることが好ましい。また、粒度を変える場合には、布を新品に交換し、研摩面を綺麗に清浄することが好ましい。
 詳細には、「実務のための新しい研摩技術」,オーム社発行,平成4年第1版,p55~93に記載されている。
 さらに、上記機械研摩に代わって、電解砥粒研摩を用いることができる。
(電解砥粒研磨)
 電解砥粒研磨とは、5~20kPa(50~200g/cm)程度の押付圧で砥粒研磨しながら、好ましくは電流密度0.05~1A/cm、より好ましくは0.1A/cmオーダーの直流電流を付加する加工法である。通常、この程度の電流密度の電解では、加工表面に厚い不導態皮膜が形成されて金属の溶出は殆ど起こらず、加工は進まないが、砥粒擦過によりその皮膜が除去されると、その部分では金属の溶出が盛んに起こり、電流効率は数十~100%レベルまで急上昇する。このようにして、ミクロ凸部を選択的に砥粒が擦過すると電解溶出量が急増大する一方、凹部の加工量がゼロに近いため、表面粗さは急速に改善される。
 使用する研摩剤は通常の研磨剤に加え、コロイダルシリカやコロイダルアルミナが好適に使用可能である。具体的には、扶桑化学工業株式会社製、商品名高純度コロイダルシリカPLシリーズが使用可能である。例えば、PL-1(一次粒子径15nm、二次粒子径40nm)PL-3(一次粒子径35nm、二次粒子径70nm)PL-7(一次粒子径70nm、二次粒子径120nm)PL-20(一次粒子径220nm、二次粒子径370nm)等が挙げられる(いずれも商品名)。その他(株)フジミインコーポレーテッド製PLANERLITEシリーズ(商品名)も好適に用いることができる。
(1)オスカー式研磨機
 鏡面度に加えて平面度の確保が必要の場合はオスカー式研磨機を用いることが好ましい。オスカー式研磨器とは光学部品などの研磨に以前から使用されているもので、工具定盤の回転に伴い工作物も連れ回りする構造になっている。そのため位置による加工量の差が生じにくく、形状精度が得られやすい。一方、電解砥粒研魔法は表面粗さを効率よく改善できる特徴があり、これらを組み合わせることにより、高精度・高品位な鏡面仕上げを実現できる。
 電解砥粒研摩の詳細は、特許第3044377号公報、特許第3082040号公報に記載の方法を用いることができる。
 詳細には、文献「実務のための新しい研摩技術」,オーム社発行,平成4年第1版,p55~93に記載の方法を用いることができる。
(化学的研磨、電気化学的研磨)
 本発明に用いられるアルミニウム基板の製造では、上記、機械的研磨処理を行なった後、補助的手段として、化学的研磨処理、電気化学的研磨処理を行うことが好ましい。本発明において、補助的手段とは、機械研磨時のRa変化率の50%以下の変化率で研磨することを言う。
(1)化学的研磨処理
 化学的研磨処理とは、アルカリ性水溶液または酸性水溶液中にアルミニウムを浸漬することで表面を溶解する方法である。アルカリ水溶液としては主に炭酸ソーダ、珪酸ソーダ、燐酸ソーダの単独または混合水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液として硫酸、硝酸、燐酸、酪酸の単独または混合水溶液が用いられる。
 機械的研磨処理を行った後、補助的手段として化学研摩法も好適に用いられる。具体例としては、例えば表3に示す方法で化学研磨をすることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 このように組成を適宜調整することで、アルミニウム素地を緩やかに溶解させ、平均表面粗さ(Ra)を低下させることが可能である。さらに酸水溶液として表4に示す下記具体例が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 その他、文献「アルミニウムの表面処理」,内田老鶴圃発行,昭和55年,通算8版p36,第3表に記載されている組成で、硫酸,硝酸,燐酸,酪酸を混合した水溶液も好ましい。さらに、濃燐酸と発煙硝酸の混合液に硝酸銅を添加した、文献:Met.Ind.,78(1951),89記載のAlupol法も好ましい例である。
 また、「アルミニウム技術便覧」(軽金属協会編,カロス出版,1996年)表5.2.15に記載されている各種方法を使用可能である。中でも燐酸-硝酸法が好ましい。
(2)電気化学的研磨処理
 電気化学的研磨処理とは、電解液中で主に直流の電気を流すことで、アルミニウム板の表面の凹凸を溶解除去する方法である。電解液の種類は過酸化水素水,氷酪酸,燐酸,硫酸,硝酸,クロム酸,重クロム酸ソーダ等の単独または混合酸性水溶液が好ましい。その他、添加剤としてエチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノブチルエステルやグリセリンを使用することができる。これら添加剤は電解液を安定化させ、濃度変化、経時変化、使用による劣化に対して適正電解範囲を広げる効果がある。
(3)電解研摩法
 さらに、機械的研磨処理を行った後、補助的手段として電解研摩法も好適に用いられる。好ましい電解条件の具体例は表5に示すとおりである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 その他、文献:「アルミニウムの表面処理」,内田老鶴圃発行,昭和55年,通算8版p47,第6表に記載されているような研摩条件も好ましい。「アルミニウム技術便覧」(軽金属協会編 カロス出版 1996年)表5.2.17に記載されている各種方法を使用可能である。
 使用液の入手性、安全性の観点からBattelle法(英国特許第526854号明細書(1940年)又は英国特許第552638号明細書(1943年)を参照。)または、燐酸浴法(特許第128891号公報(1935年出願、特公昭13-004757号公報)を参照。)が好ましい。
(仕上げ研磨)
 本発明に用いられるアルミニウム基板の製造では、機械的研摩を施した後、化学研摩および/または電解研摩を補助的に用いて研摩を行った後、さらにCMP(Chemical Mechanical Polishing)法またはバリア皮膜除去法を補助的に用いて研摩することが好まし
い。
(1)CMP法
 CMP法とは、主に半導体プロセスで使用されるもので、機械研摩と化学研摩を組み合わせた方法で、十分に研摩し、平坦な鏡面とした後は、アルミニウム基板に対しても使用可能である。アルミニウム等の金属に対しては、アルミナまたはシリカ系スラリーが一般に使用される。コロイダルアルミナやコロイダルシリカを用いることができる。具体例としては、扶桑化学工業株式会社製 高純度コロイダルシリカPLシリーズ,(株)フジミインコーポレーテッド製PLANERLITEシリーズが挙げられる(いずれも商品名)。さらに添加剤としてH、Fe(NO、KIOが適量添加される。これらの添加剤は金属表面を酸化させることで、引っかき傷や研磨剤の埋め込みを防止する為に表面を酸化しながら研摩する必要があるので、通常はpH2~4程度に調整した酸性スラリーが好ましい。また、研摩剤の好ましい範囲は、一時粒子径5nm~2μmであり、スラリー濃度は2~10vol%である。使用するCMP用パッドとしては、引っかき傷を防止する為、軟質のものが好ましい。例えばロデール・ニッタ社製 CMP用パッドXHGM-1158,XHGM-1167等が挙げられる(いずれも商品名)。
 CMP法としては、「はじめての半導体製造装置」(1999年3月),前田和夫著,工業調査会発行の171頁,図5.44記載のCMP法の基本原理・装置構成及び172頁,図5.45記載のCMP装置の構成に記載の方法を用いることができる。
 CMP法は高精度の研摩を行うことが可能であるが、設備が高額である上に、研磨剤や添加剤の選定、研摩条件の設定が複雑であることから、バリア皮膜除去法を仕上げ研摩に用いてもよい。
(2)バリア皮膜除去法
 化学的研磨処理や電解研磨処理を行なった後、バリア皮膜除去法でさらに平滑化することが好ましい。マイクロポアの無いバリア型陽極酸化皮膜を形成後、除去する。
 バリア皮膜を形成させるには、一般にpH4~8程度の中性近傍の電解液中で電解することで、マイクロポアの無い均質な酸化皮膜を形成可能である。具体的には下記のような電解条件が知られている。ホウ酸塩,アジピン酸塩,燐酸塩,クエン酸塩,酒石酸塩,蓚酸塩などの中性塩水溶液、又はそれらの混合物が好ましい。具体的には、ホウ酸-ホウ酸ナトリウム混合水溶液、酒石酸アンモニウム、クエン酸、マレイン酸、グリコール酸等が挙げられる。
 具体的には下記表6に記載されているような電解条件が好ましい。このような電解液で陽極酸化すると、マイクロポアのない酸化皮膜が生成することができる。好ましい電圧の範囲は10V~800Vであり、30V~500Vがより好ましい。好ましいpHの範囲はpH4~8であり、pH5~7がより好ましい。
 電解時間の好ましい範囲は定電流電解で電圧が飽和する前に中止するか、定電圧電解で電流がほとんど流れなくなる前に中止することが好ましい。電解時間の好ましい範囲は1分~30分であり、1分~12分がより好ましい。
 好ましい皮膜厚みは0.1μm~1μmであり、0.2μm~0.6μmがより好ましい。皮膜厚みは最後の電解電圧に比例して厚くなることが知られている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 バリア皮膜の除去には一般に燐酸,クロム酸,硝酸,硫酸などの酸性水溶液の混合液が使用される。化学研摩水溶液やクロムリン酸水溶液が好適に用いることができる。
 一般にバリア皮膜は凸部の皮膜厚みは厚くなり、凹部の皮膜厚みは薄くなる為、アルミニウムと陽極酸化皮膜界面は結果的に平滑化することが知られている。バリア皮膜を除去することで平滑面を得ることができる。詳細には、「新アルマイト理論」(カロス出版,1997年,p16)に記載の方法を用いることができる。
 これらの条件でバリア皮膜を形成後、クロム燐酸水溶液または化学研摩を行って、バリア皮膜を溶解除去することで鏡面性をさらに向上することが可能となる。
(クロム燐酸水溶液によるバリア皮膜の除去方法)
 リン酸とクロム酸からなる水溶液を用いることが好ましい。具体的には表8に示す範囲でリン酸、無水クロム酸、及び水を混合し、表8に示す温度で浸漬することが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 また、(社)表面技術協会発行「第108回講演大会講演要旨集」18-B2(p76~77)に記載の方法を用いることもできる。
 これら研摩後に得られる圧延方向に平行な方向と垂直な方向における表面平均粗さは、表9のとおりである(一般に中心線平均粗さRaとして表される)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
<陽極酸化処理>
 本発明の太陽電池に用いられる金属基板の製造では、好ましくは、上記いずれかに記載の鏡面仕上げを施したアルミニウム板に陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理により複数の細孔(マイクロポア)を有する絶縁性酸化膜がアルミニウム基板上に形成される。
(窪みの形成)
 アルミニウム基板の表面に陽極酸化処理を施す方法としては、マイクロポアを形成させる陽極酸化処理(以下「本陽極酸化処理」ともいう。)の前に、本陽極酸化処理のマイクロポアの生成の起点となる窪みを形成させておく方法が好ましい。このような窪みを形成させることにより、後述するマイクロポアの配列およびポア径のばらつきを所望の範囲に制御することが容易となる。
 窪みを形成させる方法は、特に限定されず、例えば、陽極酸化皮膜の自己規則性を利用した自己規則化法、物理的方法、粒子線法、ブロックコポリマー法、レジスト干渉露光法が挙げられる。
(1)自己規則化法
 自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させ、その後、脱膜処理を行う。
 この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
 自己規則化法の代表例としては、J.Electrochem.Soc.Vol.144,No.5,May 1997,p.L128(非特許文献A)、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35(1996)Pt.2,No.1B,L126(非特許文献B)、Appl.Phys.Lett,Vol.71,No.19,10 Nov 1997,p.2771(非特許文献C)が知られている。
 これらの公知文献に記載されている方法は、高純度の材料を用い、電解液に応じた特定の電圧で、比較的低温で長時間処理を施しているところに技術的特徴がある。具体的には、いずれもアルミニウム純度99.99質量%以上の材料を用いており、以下に示される条件で、自己規則化法を行っている。
 0.3mol/L硫酸、0℃、27V、450分(非特許文献A)
 0.3mol/L硫酸、10℃、25V、750分(非特許文献A)
 0.3mol/Lシュウ酸、17℃、40~60V、600分(非特許文献B)
 0.04mol/Lシュウ酸、3℃、80V、膜厚3μm(非特許文献C)
 0.3mol/Lリン酸、0℃、195V、960分(非特許文献C)
 また、これらの公知文献に記載されている方法では、陽極酸化皮膜を溶解させて除去する脱膜処理に、50℃程度のクロム酸とリン酸の混合水溶液を用いて、12時間以上をかけている。なお、沸騰した水溶液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いる。
 自己規則化陽極酸化皮膜は、アルミニウム部分に近くなるほど規則性が高くなってくるので、一度脱膜して、アルミニウム部分に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に出して、規則的な窪みを得る。したがって、脱膜処理においては、アルミニウムは溶解させず、酸化アルミニウムである陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
 その結果、これらの公知文献に記載されている方法では、マイクロポアのポア径は種々異なるが、ポア径のばらつき(変動係数)は3%以下となっている。
 本発明に用いられるアルミニウム基板の製造に適用されうる自己規則化陽極酸化処理は、例えば、酸濃度1~10質量%の溶液中で、アルミニウム部材を陽極として通電する方法を用いることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
 自己規則化陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1~10質量%、液温0~20℃、電流密度0.1~10A/dm2、電圧10~200V、電解時間2~20時間であるのが適当である。自己規則化陽極酸化皮膜の膜厚は、0.1~50μmであるのが好ましい。
 本発明においては、自己規則化陽極酸化処理は、1~16時間であるのが好ましく、2~12時間であるのがより好ましく、2~7時間であるのが更に好ましい。
 また、脱膜処理は、0.5~10時間であるのが好ましく、2~10時間であるのがより好ましく、4~10時間であるのが更に好ましい。
 このように、自己規則化陽極酸化処理および脱膜処理を、公知の方法と比べて短時間で行うと、マイクロポアの配列の規則性が多少低下するとともに、ポア径のばらつきが比較的大きくなり、変動係数が5~50%の範囲となる。
 このように、自己規則化法により、陽極酸化皮膜を形成させた後、これを溶解させて除去し、再度、同一の条件で後述する本陽極酸化処理を行うと、ほぼ真っ直ぐなマイクロポアが、膜面に対してほぼ垂直に形成される。
(2)物理的方法
 物理的方法としては、例えば、プレスパターニングを用いる方法が挙げられる。具体的には、複数の突起を表面に有する基板をアルミニウム表面に押し付けて窪みを形成させる方法が挙げられる。例えば、特開平10-121292号公報に記載されている方法を用いることができる。
 また、アルミニウム表面にポリスチレン球を稠密状態で配列させ、その上からSiO2を蒸着した後、ポリスチレン球を除去し、蒸着されたSiO2をマスクとして基板をエッチングして窪みを形成させる方法も挙げられる。
(3)粒子線法
 粒子線法は、アルミニウム表面に粒子線を照射して窪みを形成させる方法である。粒子線法は、窪みの位置を自由に制御することができるという利点を有する。
 粒子線としては、例えば、荷電粒子ビーム、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)、電子ビームが挙げられる。
 粒子線法を用いる場合、窪みの位置の決定に乱数を用いて、窪みの位置の規則性を乱すことができる。これにより、後の本陽極酸化処理により形成されるマイクロポアの配列の規則性が乱され、所望のポア径のばらつきを容易に実現することができる。
 窪みの位置は、下記式により所望の位置に設定することができる。
(所望の位置の座標)=(完全規則化位置の座標)±(完全規則化位置の座標)×(ばらつき係数)×(乱数)
 封孔処理を電着法により行う場合、ばらつき係数は、0.05~0.5が好ましく、0.07~0.3がより好ましく、0.1~0.2がさらに好ましい。
 封孔処理を金属コロイド粒子を用いる方法により行う場合、ばらつき係数は、用いられる金属コロイド粒子の粒径分布に応じて、決定される。
 粒子線法としては、例えば、特開2001-105400号公報に記載されている方法を用いることもできる。
(4)ブロックコポリマー法
 ブロックコポリマー法は、アルミニウム表面にブロックコポリマー層を形成させ、熱アニールによりブロックコポリマー層に海島構造を形成させた後、島部分を除去して窪みを形成させる方法である。
 ブロックコポリマー法としては、例えば、特開2003-129288号公報に記載されている方法を用いることができる。
(5)レジスト干渉露光法
 レジスト干渉露光法は、アルミニウム表面にレジストを設け、レジストに露光および現像を施して、レジストにアルミニウム表面まで貫通した窪みを形成させる方法である。
 レジスト干渉露光法としては、例えば、特開2000-315785号公報に記載されている方法を用いることができる。
 上述した種々の窪みを形成させる方法の中でも、10cm角程度以上の大面積にわたって均一に形成することができる点で、自己規則化法、集束イオンビーム法、レジスト干渉露光法が望ましい。
 更には、製造コストを考慮すると、自己規則化法が最も好ましい。また、マイクロポアの配列を自由に制御することができる点では、集束イオンビーム法も好ましい。
 形成される窪みは、深さが約10nm以上であるのが好ましい。また、幅は、所望とするポア径の幅以下であるのが好ましい。
(陽極酸化)
 陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には、電解質の濃度が1~80質量%溶液、液温は5~70℃、電流密度5~60A/dm2、電圧1~100V、電解時間10秒~5分の範囲にあれば適当である。中でも、硫酸を電解質とし、英国特許第1,412,768号明細書に記載されているような高電流密度で陽極酸化する方法および米国特許第4,211,619号明細書に記載されているような低濃度の硫酸水溶液中で陽極酸化する方法が好ましく、硫酸の濃度が5~20質量%、溶存アルミニウムイオンの濃度が3~15質量%、温度25~50℃の電解液中で5~20A/dm2の電流密度で直流で陽極酸化する方法がさらに好ましい。
 上記の方法で作成された陽極酸化膜は、いずれの面の陽極酸化皮膜の厚みが0.1μm~100μmであり、膜厚が厚すぎるとアルミニウムから陽極酸化膜の剥離が生じたり、電極や光吸収層に亀裂を生じたりするため、100μm以下が適当であり、50μm以下が好ましく、20μm以下であればより好ましい。アルミニウムの熱伸縮抑制および絶縁性の観点から0.1μm以上であることが好ましく、さらには1μm以上であることが好ましい。
 バリア層の厚みは5nm~100nmであり、太陽電池用基板として十分な耐電圧を持たせる観点から30nm以上が好ましく、さらには70nm以上であることがより好ましい。
 上記の方法で作成された陽極酸化膜は細孔を有している。一般的に金属基板にアルカリ金属イオン供給層を施すと、該金属イオン供給層は金属基板から剥離しやすくなる。本発明においては、金属基板上に陽極酸化膜を設けることにより形成された細孔構造が上層に対してアンカー効果を発現するため密着性に優れた構造になる。
 陽極酸化皮膜に発生する細孔の直径は10nm~400nmであり、平滑性(および絶縁性維持)の観点から細孔の直径は200nm以下であることが好ましく、さらには50nm以下であることがさらに好ましい。
 陽極酸化皮膜中に発生する細孔の密度は100~20000個/μm2であり、絶縁性維持の観点から細孔の密度は5000個/μm2以下であることが好ましく、さらには1000個/μm2以下であることがさらに好ましい。
 陽極酸化皮膜中に発生する細孔の深さは0.05μm~99.995μmであり、細孔と上層の密着面確保の観点から0.1μm以上であることが好ましく、さらには0.5μm以上であることがより好ましい。また、上層の平滑性の観点から50μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることがより好ましい。
 陽極酸化膜の表面粗さは0.5nm~300nmであることが好ましく、密着性と上層を製膜する観点から1nm以上100nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1nm以上50nm以下であることがより好ましい。
 アルミニウムの熱膨張係数は22×10-6/Kであるのに対し、アルミニウムの陽極酸化により得られるアルミナの熱膨張係数は7×10-6/Kで、アルミニウムの熱膨張係数はアルミナの熱膨張係数の約3倍である。そこで、陽極酸化膜とアルミニウムとの熱膨張の差による変形をおさえるため、陽極酸化膜をアルミニウム材の裏表両面に形成することがより好ましい。絶縁膜の厚さの差を小さくすることにより、両面の熱歪の大きさを等しくし、反りや丸まりや、膜剥がれが発生するのを防ぐことができる。基板の片面に光電変換層が形成されることを考慮すると、光電変換層が形成されない面の陽極酸化膜(アルミナ)は熱歪のバランスのために厚めにするのがより好ましい。光電変換層の厚さが3μm程度であることを考慮し、背面側の厚さを光電変換層の形成される側の絶縁膜より厚くするのが良くその範囲はおよそ0.001~5μmが好ましい。両面の陽極酸化方法としては例えば、片面に絶縁材料を塗布して、片面ずつ両面を陽極酸化する方法、両面を同時に陽極酸化する方法を用いることができる。
<封孔処理>
 本発明においては、上述したようにしてアルミニウム板に第一の絶縁性酸化膜(陽極酸化皮膜)を形成させた後、陽極酸化により生成したマイクロポアを封孔することも好ましい。この封孔処理により、耐電圧、絶縁抵抗が向上し、絶縁性が優れたものとなる。また、アルカリ金属イオンを含む水溶液を封孔液に用いることや、アルカリ金属イオンを含む化合物により封孔することにより、封孔する細孔内にアルカリ金属イオンを含有させることも好ましい。この処理により、絶縁層上に形成させた光電変換層のアニール時にアルカリ金属イオン(好ましくはナトリウムイオン)が光電変換層に拡散するため、太陽電池の変換効率が向上する。
 本発明においては、上記封孔処理による封孔の目安として封孔率を用いる。
 ここで、封孔率とは、陽極酸化皮膜の表面積の減少割合を表すものであり、下記の式で定義される。上記の方法で作製された陽極酸化膜は、陽極酸化皮膜に発生する細孔に対する封孔率が一般的には1%~90%であり、絶縁性向上の観点から封孔率は20%以上であることが好ましく、さらには40%以上であることがさらに好ましい。また、細孔のアンカー効果による上層との密着性の観点から、封孔率は80%以下であることが好ましく60%以下であることが好ましい。なお、この封効率、即ち、表面積の減少率は、処理条件により制御することができ、例えば、処理温度もしくは処理時間を長くすることで、封効率を上げることができる。
封孔率(%)=〔(封孔処理前の陽極酸化皮膜の表面積-封孔処理後の陽極酸化皮膜の表面積)/封孔処理前の陽極酸化皮膜の表面積〕×100
 上記封孔処理前後の陽極酸化皮膜の表面積は、簡易BET方式の表面積測定装置(例えば、QUANTASORB(カンタソーブ)、商品名、湯浅アイオニクス社製)を用いて測定することができる。
 このような封孔処理としては、従来の方法を用いることができるが、水和封孔処理、金属塩封孔処理、有機物封孔処理等の水和による封孔と、絶縁体やアルカリイオンを含む化合物を塗布することにより細孔内を埋める封孔が挙げられる。中でも、水和封孔処理、金属塩封孔処理が好ましい。以下に、それぞれ説明する。
(水和封孔処理)
 水和封孔処理としては、具体的には、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸せきさせる方法が挙げられる。
 熱水は、無機アルカリ金属塩(例えば、リン酸アルカリ金属塩)または有機アルカリ金属塩を含有していていることが好ましい。熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
 また、熱水に浸せきさせる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
 他の水和封孔処理としては、具体的には、例えば、加圧または常圧の水蒸気を連続的にまたは非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法(以下、単に「蒸気封孔処理」という。)が好適に挙げられる。
 蒸気封孔の処理温度は、90~110℃が好ましく、95~105℃がより好ましい。温度が低すぎると10~100nmピッチの凹凸の表面構造が十分に形成されにくく、温度が高すぎると蒸気の消費量が多くなり経済的でない。また、蒸気封孔の処理時間は、5~60秒が好ましく、10~30秒がより好ましい。
 このような蒸気封孔処理は、特開平6-1090号、特開平5-179482号、特開平5-202496号の各公報に記載の方法を用いることが特に好ましい。
(金属塩封孔処理)
 金属塩封孔処理は、金属塩を含有する水溶液での封孔処理である。
 金属塩封孔処理に用いられる封孔処理液、封孔処理方法、濃度管理方法および廃液処理について、以下の(1)~(4)に詳細に説明する。
(1)封孔処理液
 金属塩封孔処理に用いられる金属塩としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
 中でも細孔内へアルカリ金属を浸透させる観点から、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、細孔にアルカリイオンを浸透させる観点から、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化チタン酸カリウムが好ましく、さらにはフッ化ナトリウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウムが好ましい。
 金属塩を含有する水溶液中の該金属塩の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.5g/L以上~4.0g/L以下であるのが好ましく、0.8g/L以上~2.5g/L以下であるのがより好ましい。
 また、金属塩を含有する水溶液は、リン酸塩化合物を含有させてもよい。リン酸塩化合物を含有すると、より低温で封孔処理が可能になり、コスト削減が行える。
 このようなリン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
 中でも、細孔にアルカリイオンを含有させる観点から、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが好ましく、さらにはリン酸一ナトリウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが好ましい。
 金属塩を含有する水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、機上現像性および耐汚れ性の向上の点で、1.0g/L以上~10.0g/L未満であるのが好ましく、1.5g/L以上~4g/L以下であるのがより好ましい。
 本発明において、金属塩とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、金属塩を含有する水溶液が、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有しているのが好ましい。
 金属塩の濃度は、上述したように、0.5g/L以上~4.0g/L以下であるのが好ましく、0.8g/L以上、2.5g/L以下であるのがより好ましい。
 また、リン酸化合物の濃度は、上述したように、1.0g/L以上~10.0g/L未満であるのが好ましく、1.5g/L以上~4g/L以下であるのがより好ましい。
 また、金属塩を含有する水溶液の温度は、40℃以上であるのが好ましく、60℃以上であるのがより好ましい。40℃未満であると封孔性が悪くなり、95℃超であると液の蒸発が多くなり実用的でない。また、水溶液は、pH3以上であるのが好ましく、pH3.2以上であるのがより好ましく、また、pH5.0以下であるのが好ましく、pH4.5以下であるのがより好ましく、pH3.8以下であるのが特に好ましい。3.0未満または5.0超であると封孔性が悪くなる。封孔処理中は常に管理をおこない、リン酸または苛性ソーダ(NaOH)を添加して調整することが特に好ましい。
(2)封孔処理方法
 封孔処理方法としては、上述した封孔処理液を用いた建浴が好適に例示される。
 建浴は、井水または純水(イオン交換水)によっておこなうことが可能であるが、水中のカルシウムまたはマグネシウムとフッ素イオンやリン酸イオンが反応して建浴時に液が白濁するため、純水(イオン交換水)で建浴することが特に好ましい。添加に用いる金属塩、リン酸化合物を溶解する水も同様に純水(イオン交換水)を用いることが特に好ましい。
 金属塩(特に、金属フッ化物)とリン酸化合物を粉体として混ぜるときは、フッ素の乖離を良好にするために、金属フッ化物を先に添加することが好ましい。
 封孔処理は、浸漬、または、スプレー処理による方法が好ましく、これらは単独で1回または複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スプレー処理による方法が、アルミニウム板の裏面が処理されないため、その分液の疲労が少なくなるため薬液の使用量が少なくなり、特に好ましい。
 封孔処理中は、溶出したアルミニウムと液中のナトリウム、フッ素、リン酸が反応してフッ化アルミン酸ソーダ(Na3AlF6、氷晶石)やリン酸アルミニウムが生成して液が白濁するため、フィルター濾過または沈降槽による、フッ化アルミン酸ソーダ(Na3AlF6、氷晶石)やリン酸アルミニウムの除去を行いながら処理することが好ましく、フィルターを用い、常時液を濾過しながら処理することが特に好ましい。フィルターは詰まりやすいので、濾過器を2系統以上持ち、圧力の管理を行いながら、詰まった濾過器は逆洗浄により残渣を取り除きながら、濾過器を切り替えて処理することが特に好ましい。
 そのほかの封孔処理方法としては、油脂や合成樹脂などの有機物を塗布するか含浸させることによって封孔する、有機物封孔処理を挙げることができる。
 アルカリ金属イオン水溶液による封孔工程において、陽極酸化膜の細孔内に含有させる。また、細孔内への導入方法としてスパッタ法や蒸着法により細孔内に封孔処理で挙げた金属塩を充填した後、これまでに記述した方法を用いて封孔処理を行ってもよい。
(3)濃度管理方法
 封孔処理液の中には、アルミニウムが溶出するが、アルミニウムイオン濃度は10~250mg/Lに管理することが好ましく、100~200mg/Lに管理することが特に好ましい。
 アルミニウムイオン濃度を10~250mg/Lに管理するには、封孔処理液の更新量(新液の追加と処理後の液の廃水)で調整する。
 また、封孔処理液の中には、該封孔処理の前工程にある陽極酸化処理工程からの硫酸の混入や、陽極酸化皮膜中に含まれるSO4の溶解により、硫酸イオンが増加する。硫酸イオンの濃度は10~200mg/Lが好ましく、50~150mg/Lが特に好ましい。硫酸イオンの濃度が低すぎると液の更新量を多くしなければならず経済的でなく、硫酸イオンの濃度が高すぎると、正確な濃度測定ができなくなる。
<アルカリ金属イオン供給層>
 本発明においては、アルカリイオン供給層を有するので、当該層からアルカリを光電変換層に拡散することが可能であり、これにより、発電効率の向上を図ることができる。
 アルカリ金属イオン供給層は、絶縁性酸化膜を形成してから光電変換層を形成し終わるまでに付与されればよい。絶縁性酸化膜を付与した金属基板に対して、アルカリ金属イオン供給層は、絶縁性酸化皮膜上に直接形成することが好ましい。また酸化皮膜上に後述するモリブデン電極を付与し、該モリブデン電極上に付与することも好ましい。酸化皮膜上又は酸化皮膜上に形成されたモリブデン電極上にアルカリ金属イオン供給層を形成した後に、さらに、光電変換層(光吸収層)を形成中に、光吸収層内にアルカリ金属イオン供給層を形成することも好ましい。
 アルカリ金属イオン供給層としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化カルシウム、硫化マグネシウム、セレン化ナトリウム、セレン化カリウム、セレン化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、ポリ酸ナトリウム、ポリ酸カリウムが使用することができる。中でも化合物として安全・安定であり、容易にハンドリングできるものが好ましいが、加えて、加熱によって容易に分解して、アルカリ金属イオンを放出するものが好ましい。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが好ましく、中でもナトリウム、カリウムであることが好ましく、最も好ましくはナトリウムである。
 アルカリ金属イオンを供給する化合物として好ましいものを、ナトリウムを例に取り以下に挙げる。但し、これらの化合物はいずれの場合もナトリウム以外の塩を形成することが可能であり、ナトリウム塩に限定されるものではない。
 ナトリウムの供給層としては、ポリ酸(ヘテロポリ酸を含む)ナトリウムを形成することが好ましく、これを用いてナトリウム供給層を形成することで、化合物として安定で、かつ、剥離のないナトリウム供給層を形成する。さらにこのナトリウム供給層は安定であるが、加熱により分解し、ナトリウムを効率よく放出し、高い変換効率のフレキシブルCIGS太陽電池を得ることができる。
 ここでポリ酸とはポリオキソ酸であることが好ましい。ポリオキソ酸としては、タングストリン酸、タングストケイ酸、モリブドリン酸、モリブドケイ酸、バナジン酸、タングステン酸、低原子価ニオブ酸、低原子価タンタル酸、トンネル構造を有するチタン酸、モリブデン酸であることが好ましい。具体的には、α-12-タングストリン酸、α-12-タングストケイ酸、α-12-モリブドリン酸、α-12-モリブドケイ酸、18-タングスト-2-リン酸、18-モリブド-2-リン酸、α-11-タングストリン酸、α-11-タングストケイ酸、α-11-モリブドリン酸、α-11タングストリン酸、γ-10-タングストケイ酸、A-α-9-タングストリン酸、A-α-9-タングストケイ酸、A-α-9-モリブドリン酸、A-α-9-モリブドケイ酸、デカバナジン酸、オルトバナジン酸、デカタングステン酸、オクタペルオキソ-4-タングストリン酸、六チタン酸、八チタン酸、ラムスデライト型チタン酸、ホランダイト型チタン酸、十モリブデン酸、巨大モリブデンクラスターである。中でもタングステン、モリブデンを含むポリ酸であることが好ましく、さらに好ましくはモリブデン酸、タングステン酸であり、特に好ましくはモリブデン酸である。
 モリブデン酸としては、NaMo、NaMo24、NaMo1031
Na15[Mo15446214(HO)700.5[Mo15245714(HO)680.5、などが好ましい。
 これらの化合物は、Na[MoO]、MoO等を含む溶液を硝酸や水酸化ナトリウムを使って必要なpHに調整した後、スピンコート等によって基板や電極の上に溶液を塗布し、たとえば200℃などに加温し加熱・乾燥することで基板や電極上に薄層として得ることができる。
 また、これらの化合物をあらかじめ合成、単離し、それらを蒸着源等とすることで、蒸着等のPVDやCVDを利用してこれらの薄層を得ることもできる。ここで、PVDとは物理気相成長を指し、CVDとは化学気相成長を指す。PVDとしてはスパッタ法、蒸着法を使用することが好ましい。
 さらに、ゼオライトをナトリウム供給層とすることもできる。代表的なゼオライトとして、Na12[Al12Si1248]やNa[AlSi89192]を用いることも好ましい。
 一方、FeをはじめとするVIII族金属やMnを含むポリ酸も多くあるが、CIGS層にこれらの金属イオンが拡散すると、これらの金属イオンが再結合中心となり、非効率の原因となることがある。また、リン酸系のポリ酸は吸湿性が高いことが多い。これらの点を考慮して、ポリ酸の選択をすることが好ましい。
 一方、絶縁性酸化皮膜上にアルカリ金属イオン供給層を形成する場合は、アルカリ金属イオンを放出する機能を持たなければならないことは言うまでもないが、加熱によって化合物が容易に分解することは必須の条件ではなく、そのまま残留して、第二の絶縁層として機能することも好ましい。
 この場合は、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸漬させる方法で、アルカリ金属イオン供給能を持つ第二の絶縁層を付与することができる。
 ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液によるアルカリ金属イオン供給層の付与は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ルビジウム、ケイ酸セシウムが挙げられ、1号ケイ酸ソーダまたは3号ケイ酸ソーダを用いることが好ましく、1号ケイ酸ソーダを用いることがより好ましい。親水化処理に用いる水溶液に1号ケイ酸ソーダを用いる場合には、1号ケイ酸ソーダの濃度は1~10質量%であることが好ましく、液温は10~30℃であるのが好ましい。また、処理時間は1~15秒であるのが好ましい。ここでケイ酸ナトリウムとは、一般にいうメタケイ酸ナトリウムばかりではなく、NaSiO、NaSiO、NaSi、NaSi、NaSi等、ケイ酸ナトリウム化合物類を指す。
 また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を適当量含有してもよい。
 また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
 アルカリ金属ケイ酸塩処理によって第二の絶縁層を形成する時、絶縁層中に存在するSi量は蛍光X線分析装置(例えばPANalytical社製、商品名、Axios)により測定することができ、その量は約1.0~100mg/m2であるのが好ましく、3~50mg/m2であるのがより好ましい。
 一方、アルカリ金属イオン供給能を持つ第二の絶縁層はPVD・CVD処理によっても付与することができる。PVD・CVD処理で付与するアルカリ金属イオン供給層としては、アルカリ金属のフッ素化合物、硫化物、セレン化物、塩化物、ケイ酸塩が挙げられ、特に、これらのナトリウム化合物であることが好ましい。具体的には、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、ケイ酸ナトリウムを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもフッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムが好ましく、最も好ましくはケイ酸ナトリウムである。
 さらに、アルカリ金属イオン供給層は塗布によっても形成することができる。塗布方法としては、ディップ法、スピンコート法、スプレー法などで行うことができる。塗布する物質としては、Si、Ti、Zn、Alなどの金属アルコキシドを含むゾルゲル溶液、Si、Ti、Zn、Alなどの金属酸化物微粒子を含む溶液が上げられる。また、絶縁性向上の観点から、塗布後150℃~500℃の熱処理を施し、酸化物層を形成することが好ましく、ケイ酸ナトリウム層を形成することが最も好ましい。
 このようにして得た二層の絶縁層付き基板の耐電圧は、二層あわせて500V以上であることが好ましい。より好ましくは1000V以上である。二層の電気的な関係は直列抵抗と同様に考えることができ、第一層の耐電圧が低ければ、第二層の耐電圧で補うことも可能である。したがって、絶縁抵抗も同様に扱うことができ、1MΩ/cm2以上であることが好ましい。
 このような2つの異なる性質を有したアルカリ金属供給層は、太陽電池の性能において、可撓性を優先したい場合には加熱によって分解される機能を有したものを、耐電圧性を優先したい場合には絶縁性を有したものを選択する。
[太陽電池]
<光電変換層の形成>
 本発明の太陽電池は、上記の太陽電池用基板上に光電変換層を形成することで作製することができる。
 まず、上記の太陽電池用基板を作製した後、当該太陽電池用基板を乾燥させることが好ましい。乾燥することによって、光電変換層を成膜するときに水が混入するのを防ぎ、水の混入により光電変換層の寿命が短くなるのを防ぐことができる。
 乾燥した太陽電池用基板上に、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体(I-III-VI族半導体)の層である光電変換層を形成することで、太陽電池を得る。さらに、特開2007-123725号公報に記載のように、エチレンビニルアセテート等の接着剤を使って強化ガラスに貼り付け、太陽電池モジュールとする。光電変換層は、銅(Cu)、銀(Ag)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、イオウ(S)、セレン(Se)及びテルル(Te)からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含有してなる半導体層であることが好ましい。また、光電変換層としては、セレン化法、セレン化流化法、3段開法などを用いたCIGS系半導体が好ましいが、Si等のIVb族元素からなる半導体(IV族半導体)、GaAs等のIIIb族元素とVb族元素とからなる半導体(III-V族半導体)、CdTe等のIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体(II-VI族半導体)やそれらを組み合わせたものでもよい。なお、本明細書における元素の族の記載は、短周期型周期表に基づくものである。
 以下に、一例としてCIGS系の光電変換層を示す。
 Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる、カルコパイライト構造の半導体薄膜であるCuInSe2(CIS系薄膜)、あるいは、これにGaを固溶したCu(In,Ga)Se2(CIGS系薄膜)を光吸収層に用いた薄膜太陽電池は、高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による効率の劣化が少ないという利点を有している。本発明で光電変換層を形成するための材料を一例として、以下に示す
(1)常温で液相または加熱により液相となる元素、化合物または合金を含む物質
Cu,In,Ga,Se,S,Al,Ag,CuSe,InSe,CuS,In,AlSe,Al,AgSe,Ag
(2)カルコゲン化合物(S、Se、Teを含む化合物)
 II-VI化合物:ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTeなど
 I-III-VI2族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se、CuInS、CuGaSe、Cu(In,Ga)(S,Se)、CuAlSe、AgInSe、AgGaSe、AgAlSe、CuAlSなど
 I-III-VI族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Seなど
(3)カルコパイライト型構造の化合物および欠陥スタナイト型構造の化合物
 I-III-VI族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se、CuInS、CuGaSe、Cu(In,Ga)(S,Se)など
 I-III-VI族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Seなど
 ただし、上の記載において、(In,Ga)、(S,Se)は、それぞれ、(In1-xGa)、(S1-ySe)(ただし、x=0~1、y=0~1)を示す。
 以下に、代表的な光電変換層の形成方法を示すが、これに限定されるものではない。
1)多源同時蒸着法
 多源同時蒸着法の代表的な方法としては、米国のNREL(National Renewable Energy Laboratory)が開発した3段階法とECグループの同時蒸着法がある。3段階法は、例えば、J.R.Tuttle,J.S.Ward,A.Duda,T.A.Berens,M.A.Contreras,K.R.Ramanathan,A.L.Tennant,J.Keane,E.D.Cole,K.Emery and R.Noufi:Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.426(1996)p.143.に記載されている。また、同時蒸着法は、例えば、L.Stolt et al.:Proc.13th ECPVSEC(1995,Nice)1451.に記載されている。
 3段階法は、高真空中で最初にIn、Ga、Seを基板温度300℃で同時蒸着し、次に500~560℃に昇温してCu、Seを同時蒸着後、In、Ga、Seをさらに同時蒸着する方法で、禁制帯幅が傾斜したグレーデッドバンドギャップCIGS膜が得られる。ECグループの方法は、蒸着初期にCu過剰CIGS、後半でIn過剰CIGSを蒸着するBoeing社の開発したバイレーヤー法をインラインプロセスに適用できるように改良したものである。バイレーヤー法は、W.E.Devaney,W.S.Chen,J.M.Stewart,and R.A.Mickelsen:IEEE Trans.Electron.Devices 37(1990)428.に記載されている。
 3段階法およびECグループの同時蒸着法は共に、膜成長過程でCu過剰なCIGS膜組成とし、相分離した液相Cu2-xSe(x=0~1)による液相焼結を利用するため、大粒径化が起こり、結晶性に優れたCIGS膜が形成されるという利点がある。
 さらに、近年CIGS膜の結晶性を向上させるため、この方法に加えた種々の方法に関する検討が行われており、これらを用いても良い。
(a)イオン化したGaを使用する方法
 蒸発したGaをフィラメントによって発生した熱電子イオンが存在するグリッドを通過させ、Gaと熱電子が衝突することでGaをイオン化する方法である。イオン化したGaは引き出し電圧により加速され基板に供給される。詳細は、H.Miyazaki,T.Miyake,Y.Chiba,A.Yamada,M.Konagai,phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p.2603.に記載されている。
(b)クラッキングしたSeを使用する方法
 蒸発したSeは通常クラスターとなっているが、更に高温ヒーターにより熱的にSeクラスターを分解することでSeクラスターを低分子化する方法である(第68回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007秋 北海道工業大学)7P-L-6)。
(c)ラジカル化したSeを用いる方法
バルブトラッキング装置により発生したSeラジカルを用いる方法である(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007春 青山学院大学)29P-ZW-10)。
(d)光励起プロセスを利用した方法
 3段階蒸着中にKrFエキシマレーザー(波長248nm、100Hz)、またはYAGレーザー(例えば、波長266nm、10Hz)を基板表面に照射する方法である(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007春 青山学院大学)29P-ZW-14)。
2)セレン化法
 セレン化法は2段階法とも呼ばれ、最初にCu層/In層や(Cu-Ga)層/In層等の積層膜の金属プレカーサをスパッタ法、蒸着法、電着法などで製膜し、これをセレン蒸気またはセレン化水素中で450~550℃程度に加熱することにより、熱拡散反応によってCu(In1-xGax)Se2等のセレン化合物を作製する方法である。この方法を気相セレン化法と呼ぶが、このほか、金属プリカーサ膜の上に固相セレンを堆積し、この固相セレンをセレン源とした固相拡散反応によりセレン化させる固相セレン化法がある。現在、唯一、大面積量産化に成功しているのは、金属プリカーサ膜を大面積化に適したスパッタ法で製膜し、これをセレン化水素中でセレン化する方法である。
 しかしながら、この方法ではセレン化の際に膜が約2倍に体積膨張するため、内部歪みが生じ、また、生成膜内に数μm程度のボイドが発生し、これらが膜の基板に対する密着性や太陽電池特性に悪影響を及ぼし、光電変換効率の制限要因になっているという報告がされている(B.M.Basol,V.K.Kapur,C.R.Leidholm,R.Roe,A.Halani,and G.Norsworthy:NREL/SNL Photovoltaics Prog.Rev.Proc.14th Conf.-A Joint Meeting(1996)AIP Conf.Proc.394.)。
 このようなセレン化の際に生ずる急激な体積膨張を回避するために、金属プリカーサ膜に予めセレンをある割合で混合しておく方法(T.Nakada,R.Ohnishi,and A.kunioka:”CuInSe-Based Solar Cells by Se-Vapor Selenization from Se-Containing Precursors” Solar Energy Materials and Solar Cells 35(1994)204-214.)や、金属薄層間にセレンを挟み(例えばCu層/In層/Se層…Cu層/In層/Se層と積層する)多層化プリカーサ膜の使用が提案されている(T.Nakada,K.Yuda,and A.Kunioka:”Thin Films of CuInSe Produced by Thermal Annealing of Multilayers with Ultra-Thin stacked Elemental Layers” Proc.of 10th European Photovoltaic Solar Energy Conference(1991)887-890.)。これらにより、上述の堆積膨張の問題はある程度回避することができる。
 しかしながら、このような手法を含めて、すべてのセレン化法において、最初にある決まった組成の金属積層膜を用い、これをセレン化するため、膜組成制御の自由度が極めて低いという点が指摘されている。たとえば現在、高効率CIGS系太陽電池では、Ga濃度が膜厚方向で傾斜したグレーデッドバンドギャップCIGS薄膜を使用するが、このような薄膜をセレン化法で作製するには、最初にCu-Ga合金膜を堆積し、その上にIn膜を堆積し、これをセレン化する際に、自然熱拡散を利用してGa濃度を膜厚方向で傾斜させる方法を採用することができる(K.Kushiya,I.Sugiyama,M.Tachiyuki,T.Kase,Y.Nagoya,O.Okumura,M.Sato,O.Yamase and H.Takeshita:Tech.Digest 9th Photovoltaic Science and Engineering Conf.Miyazaki,1996(Intn.PVSEC-9,Tokyo,1996)p.149.)。
3)スパッタ法
 スパッタ法は大面積化に適するため、これまでCuInSe薄膜形成法として多くの手法が試みられてきた。たとえば、CuInSe多結晶をターゲットとした方法や、CuSeとInSeをターゲットとし、スパッタガスにHSeとAr混合ガスを用いる2源スパッタ法(J.H.Ermer,R.B.Love,A.K.Khanna,S.C.Lewis and F.Cohen:”CdS/CuInSe Junctions Fabricated by DC Magnetron Sputtering of CuSe and InSe” Proc.18th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.(1985)1655-1658.)が開示されている。また、Cuターゲット,Inターゲット,SeまたはCuSeターゲットをArガス中でスパッタする3源スパッタ法などが報告されている(T.Nakada,K.Migita,A.Kunioka:”Polycrystalline CuInSe Thin Films for Solar Cells by Three-Source Magnetron Sputtering” Jpn.J.Appl.Phys.32(1993)L1169-L1172.ならびに、T.Nakada,M.Nishioka,and A.Kunioka:”CuInSe Films for Solar Cells by Multi-Source Sputtering of Cu,In,and Se-Cu Binary Alloy” Proc.4th Photovoltaic Science and Engineering Conf.(1989)371-375.)。
4)ハイブリッドスパッタ法
 前述したスパッタ法の問題点が、Se負イオンまたは高エネルギーSe粒子による膜表面損傷であるとするなら、Seのみを熱蒸発に変えることで、これを回避できるはずである。中田らは、CuとIn金属は直流スパッタで、Seのみは蒸着とするハイブリッドスパッタ法で、欠陥の少ないCIS薄膜を形成し、変換効率10%を超すCIS太陽電池を作製した(T.Nakada,K.Migita,S.Niki,and A.Kunioka:”Microstructural Characterization for Sputter-Deposited CuInSe Films and Photovoltaic Devices” Jpn.Appl.Phys.34(1995)4715-4721.)。また、Rockettらは、これに先立ち、有毒のHSeガスの代わりにSe蒸気を用いることを目的としたハイブリッドスパッタ法を報告している(A.Rockett,T.C.Lommasson,L.C.Yang,H.Talieh,P.Campos and J.A.Thornton:Proc.20th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.(1988)1505.)。さらに古くは膜中のSe不足を補うためSe蒸気中でスパッタする方法も報告されている(S.Isomura,H.Kaneko,S.Tomioka,I.Nakatani,and K.Masumoto:Jpn.J.Appl.Phys.19(Suppl.19-3)(1980)23.)。
5)メカノケミカルプロセス法
 CIGSの各組成の原料を遊星ボールミルの容器に入れ、機械的なエネルギーによって原料を混合してCIGS粉末を得る。その後、スクリーン印刷によって基板上に塗布し、アニールを施しCIGSの膜を得る方法である(T.Wada,Y.Matsuo,S.Nomura,Y.Nakamura,A.Miyamura,Y.Chia,A.Yamada,M.Konagai,Phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p2593)。
6)その他の方法
 その他のCIGS製膜法としてはスクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、スプレー法などが挙げられる。
<光電変換層以外の構成>
 I-III-VI族化合物半導体層と接合を形成する絶縁体層、または、n形半導体層には、たとえば、CdSやZnO、ZnS、Zn(O,S,OH)などのII-VI族の化合物やInなどのIII族カルコゲン化合物を用いることができる。これらの化合物は、光電変換層とキャリアの再結合のない接合界面を形成することができ、好ましい。例えば、特開2002-343987号公報を参照。
 裏面電極としてはモリブデン、クロム、タングステンなどの金属を用いることができる。これらの金属材料は熱処理を行っても他の層と混じりにくいため、好ましい。I-III-VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、モリブデン層を用いることが好ましい。
 透明電極にはITO、ZnO:Ga、ZnO:Al、ZnO:B、SnO2などの公知の材料を用いることができる。これらの材料は、光透過性が高く、低抵抗であり、キャリアの移動度が高いため、電極材料として好ましい。例えば、特開平11-284211号公報を参照。
 層構造としては、スーパーストレート型、サブストレート型が挙げられる。I-III-VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、サブストレート型構造を用いるほうが、変換効率が高く好ましい。
 以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
 基材としてAl合金1050材を用いて、16℃の0.5Mシュウ酸水溶液中で、直流電源を用いて、電圧40Vの陽極酸化条件において種々の厚さの陽極酸化皮膜をアルミニウム基板の両面に形成した。更に水洗、乾燥を行った。
 この陽極酸化皮膜の表面に、ポリ酸ナトリウム層として、ここではモリブデン酸ナトリウム層を形成した。モリブデン酸ナトリウム層は、水酸化ナトリウム水溶液にMoOを溶解させた溶液、あるいは希硝酸にNaMoOを溶解させた溶液をエチレングリコールと体積比1:1で混合し、スピンコートにより陽極酸化皮膜上に塗布し、70℃のホットプレート上でゆっくりと乾燥させた後、200℃で1時間することで、NaMo、NaMo24、NaMo1031の層として得た。
 一方、ポリ酸ナトリウム層を付与したものとは別の例として、陽極酸化皮膜上にケイ酸ナトリウム層を形成し、絶縁層とナトリウム供給層を兼ねた層を付与した試料も作製した。ケイ酸ナトリウム層は、アルミニウム板を1号ケイ酸ソーダ4.0質量%水溶液(液温22℃)に8秒間浸漬させることで得た。その後、ニップローラで液切りし、水洗処理を行った後、再びニップローラで液切りした。その後、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥させてナトリウムを供給できる第二の絶縁層を形成した。蛍光X線分析装置(PANalytical社製、商品名、Axios)で測定したアルミニウム板表面のSi量は、5.3mg/mであった。
 このように処理した作製した陽極酸化アルミニウム基板(太陽電池用基板)の陽極酸化膜上に、Mo電極(厚さ0.8μm)を3cm×3cmのサイズでスパッタにより形成した。
 このMo電極上にCIGS太陽電池を成膜した。なお、本実施例では、高純度銅のディスク状ターゲットとインジウム(純度99.9999%)、高純度Ga(純度99.999%)、高純度Se(純度99.999%)のディスク状ターゲットを用いた。基板温度モニターとして、クロメル-アルメル熱電対を用いた。
 まず、主真空チャンバーを10-6Torrまで真空排気した後、高純度アルゴンガス(99.999%)をスパッタ室に導入し、バリアブルリークバルブで3×10-2Torrとなるように調整した。次に、CIGS薄膜を2μm厚さ程度成膜する。製膜条件としては、各蒸発源からの蒸着レートを制御して、最高基板温度550℃で行った。作製したCIGS膜の膜厚は約2μmであった。次にバッファ層として、CdS薄膜を90nm程度溶液成長法で堆積し、その上に、透明導電膜のZnO:Al膜をRFスパッタ法で厚さ0.6μmで形成した。最後に上部電極として、Alグリッド電極を蒸着法で作製した。
 このようにして作製した太陽電池に、AM1.5、100mW/cm2の疑似太陽光を照射して、太陽電池特性を測定した。結果を表10に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
 その結果、表10のように、ナトリウム供給層がない太陽電池(No.101)では変換効率が10%であったのに対して、ナトリウム供給層を付与した太陽電池(No.103~106)ではそれぞれ13~16%の変換効率が得られた。
 これらの結果から、本発明におけるナトリウム供給層を付与した基板では光電変換層へのナトリウム拡散により変換効率が高くできたものと考えられ、本発明のフレキシブルCIGS太陽電池は高い変換効率を有することがわかった。
実施例2
 実施例1と同じ方法で陽極酸化皮膜付きのアルミニウム基板を作製した後、実施例1と同様の方法でMo電極を作製した。このMo電極上に実施例1と同じ方法でモリブデン酸ナトリウム層を形成し、その上にCIGS層を形成、太陽電池を作製した。
 作製した太陽電池について、実施例1と同様にして太陽電池特性を測定した。結果を表11に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
 表11から明らかなように、ナトリウム供給層がない太陽電池(No.201)では変換効率が10%であったのに対して、ナトリウム供給層を付与した太陽電池(No.202~204)ではそれぞれ13~15%の変換効率が得られた。
 これらの結果から、本発明におけるナトリウム供給層を付与した基板では光電変換層へのナトリウム拡散により変換効率が高くできたものと考えられ、本発明のフレキシブルCIGS太陽電池は高い変換効率を有することがわかった。
実施例3
 実施例1及び2の太陽電池セルに対して剥離試験を行ったところ、同様の条件で作製したソーダライムガラス基板の太陽電池セルに比べて陽極酸化皮膜基板のほうが良好な結果を得た。
 この結果から、本発明におけるナトリウム供給層を付与した基板は密着性に優れていることがわかった。
実施例4
 ポリ酸ナトリウム層をポリタングステン酸ナトリウム層としたこと以外は、実施例1と同様にして、太陽電池を作製した。結果を表12に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
 ポリ酸ナトリウム層がない太陽電池(前記表10のNo.101)では変換効率が10%であったのに対して、ポリ酸ナトリウム層として、ポリタングステン酸ナトリウム層を設けた太陽電池(No.401~406)ではそれぞれ12~14%の変換効率が得られた。このことから、本発明のフレキシブルCIGS太陽電池は高い変換効率を有することがわかった。
 本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
 本願は、2008年9月18日に日本国で特許出願された特願2008-239644に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
1 アルミニウム板
10 自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置
102 水
104 貯水タンク
106 給水筒
108 整流部
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
100 陽極酸化により絶縁性酸化膜が形成された金属基板
200 Mo電極層
250 アルカリ金属イオン供給層
300 光電変換層
400 バッファ層(CdS)
500 透光性電極層

Claims (6)

  1.  金属基板上に、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体からなる光電変換層、及びアルカリ金属イオン供給層を有する太陽電池であって、前記金属基板は、その表面に陽極酸化により形成された絶縁性酸化膜を有し、前記アルカリ金属イオン供給層は、前記絶縁性酸化膜を形成してから前記光電変換層を形成し終わるまでの間に付与されることを特徴とする太陽電池。
  2.  前記アルカリ金属イオン供給層がナトリウムを含有する、請求項1に記載の太陽電池。
  3.  前記光電変換層が、銅(Cu)、銀(Ag)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)のうち少なくとも1つの元素を含有し、かつ、イオウ(S)、セレン(Se)及びテルル(Te)のうち少なくとも1つの元素を含有してなる半導体層である、請求項1又は2に記載の太陽電池。
  4.  前記アルカリ金属イオン供給層が、モリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、チタン、アルミニウム、ケイ素およびリンからなる群から選ばれる元素を少なくとも1つ含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池。
  5.  前記金属基板が、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、マグネシウム、銅、ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有する基板である、請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽電池。
  6.  前記金属基板がアルミニウム基板である、請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池。
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