WO2010021391A1 - イオン性化合物及びその製造方法、並びに、これを用いたイオン伝導性材料 - Google Patents

イオン性化合物及びその製造方法、並びに、これを用いたイオン伝導性材料 Download PDF

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Abstract

 従来法に比べて穏やかな条件で、または、収率よく、または、より安価にテトラシアノボレートを含むイオン性化合物を製造する方法、および、不純物の含有量が低減されたテトラシアノボレートを含むイオン性化合物を提供する。本発明のイオン性化合物は、下記一般式(I)で表されるイオン性化合物100mol%に対して、フッ素原子を含有する不純物の含有量が3mol%以下であり、本発明の製造方法とは、シアン化物と、ホウ素化合物とを含む出発原料を反応させることにより、下記一般式(I)で表されるイオン性化合物を製造する方法である。 (式中、Ktm+は、有機又は無機カチオンを表し、mは1~3の整数を表す)

Description

イオン性化合物及びその製造方法、並びに、これを用いたイオン伝導性材料
 本発明はイオン性化合物に関し、詳しくは、テトラシアノボレートアニオンを有するイオン性化合物およびその製造方法、並びに、これを用いたイオン導電性材料、およびこれを含む電解液、並びに該材料を備えた電気化学素子に関する。
 イオン性化合物は、イオン伝導による各種電池などのイオン伝導体に使用されており、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池などの充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、太陽電池、エレクトロクロミック表示素子などの電気化学デバイスに用いられている。これらの電気化学デバイスは、一般に、一対の電極とその間に形成されたイオン伝導体から構成されている。
 イオン伝導体としては、電解液や固体電解質が挙げられ、有機溶媒や高分子化合物またはこれらの混合物に電解質を溶解したものが使用されている。イオン伝導体では、電解質が溶解し、カチオンとアニオンとに解離してイオン伝導性を発揮する。このようなイオン伝導体を用いた電池は、ラップトップ型やパームトップ型コンピューター、移動電話、ビデオカメラなどの携帯電子用品に用いられており、これらの普及に伴って、軽く強力な電池の必要性が増加している。また、環境問題に係わる観点からは、より長い寿命を有する二次電池の開発が重要性を増している。
 上記二次電池などに用いられるイオン性化合物として、電解質塩であるリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)やリチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)や、アルカリ金属や有機カチオンを有するシアノボレートが提案されている。上記シアノボレートをアニオン成分とするイオン性化合物は、イオン性液体としての性質、すなわち、室温でも液体であり、熱的、物理的、電気化学的にも安定といった性質を示すことから、様々な用途への応用が検討されている。
 上記シアノボレートの中でも、テトラシアノボレート(TCB:[B(CN)4)を含む化合物の合成には、ホウ素を含有する化合物とアルカリ金属シアン化物とを反応させる方法(Z.Anorg.Allg.Chem.2000,vol.626,p.560-568)や、上記反応をLiCl等のリチウムハロゲン化物の存在下で行う方法(特表2006-517546号公報)、KBF4やLiBF4やBF3・OEt2等のホウ素化合物とトリメチルシリルシアニドを反応させる方法(Z.Anorg.Allg.Chem.2003,vol.629,p677-685、H.Willnerら(他2名)、Z.Anorg,Allg.Chem. ,2003,629,p1229-1234、J.Alloys Compd.2007.427.p61-66、R.A.Andersenら(他4名)、JACS.2000.122.p7735-7741)などが提案されてきた。
 しかしながら、アルカリ金属シアン化物は、ホウ素化合物との反応性が低いため、300℃近い高温条件下で反応させたり、アルカリ金属シアン化物を過剰に使用する必要があり、当該反応条件に対応可能な高耐久の設備を導入する設備コストがかかる、不純物が生成し易いなどの問題があった。一方、トリメチルシリルシアニドは高価である、また、生成物の収率が低い、テトラシアノボレートとトリメチルシランとの塩は不安定で、加熱により分解し易い、といった問題があった。
 なお、Z.Anorg.Allg.Chem.2000,vol.626,p.560-568では、[NBu4]X,BX3(X=Br,Cl)およびKCNを用いて、テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレート(Bu4NB(CN)4)を合成する方法が報告されているが、当該文献に記載の条件で追試しても上記化合物を合成することは難しく、より安定にテトラシアノボレートを含む化合物を得る方法が求められていた。
 また、イオン性化合物を上述のような電気化学デバイスに用いる場合、良好なイオン伝導性を確保し、周辺部材の腐食等を防ぐ観点から、イオン性化合物に含まれる不純なイオン成分を低減することが求められる。例えば、上記文献に記載されるシアノボレートアニオンを含む化合物を上記電気化学デバイスの電解液の電解質として用いる場合には、特に、シアン化物イオン(CN)、ハロゲン化物イオン及び金属イオンの低減が必須となる。
 しかしながら、従来採用されている方法では、フッ素を含むホウ素化合物を原料とする場合がほとんどであり、特に、シアノボレートをアニオンとする化合物の合成では、出発原料が残留したり、遊離のCNや水分が化合物中に残存することがあり、かかる場合、イオン性化合物の耐熱性が低くなる場合がある。また、電解質中に残留するこれらの不純物は、イオン伝導性能の低下や電極など周辺材料の腐食を起こし、電気化学性能を劣化させる原因となる。
 本発明は上述のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、穏やかな条件で、また、従来法に比べて収率よく、さらには、より安価にテトラシアノボレートを含むイオン性化合物を製造する方法および不純な成分の含有量が低減されたテトラシアノボレートを含むイオン性化合物を提供することである。
 上記課題を解決した本発明のイオン性化合物とは、下記一般式(I)で表されるイオン性化合物100mol%に対して、フッ素原子を含有する不純物の含有量が3mol%以下であるところに特徴を有する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
(式中、Ktm+は、有機カチオン[Ktbm+又は無機カチオン[Ktam+を表し、mは1~3の整数を表す。)
 本発明のイオン性化合物は、フッ素原子(F原子)を含有する不純物の含有量が極低レベルにまで低減されているので、原料に由来するF原子やF原子を有する不純物に起因するイオン性化合物の諸特性の低下が生じ難い。
 また、上記イオン性化合物は、当該イオン性化合物中のケイ素(Si)含有量が2500ppm以下であるのが好ましい。さらに、CN含有量が3000ppm以下であるのが好ましく、また、ハロゲン化物イオン含有量が500ppm以下であり、加えて、水の含有量が3000ppm以下あるのが望ましい。
 上記イオン性化合物を含んでなるイオン導電性材料は、本発明の好ましい実施態様である。
 本発明の製造方法とは、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物の製造方法であって、シアン化物と、ホウ素化合物とを含む出発原料を反応させることを特徴とする。
 本発明の製造方法には、上記出発原料が、シアン化物としてトリメチルシリルシアニドを含み、さらに、アミン及び/又はアンモニウム塩を含む製造方法、上記シアン化物として、Ma(CN)n(Maは、Zn2+,Ga3+,Pd+,Sn2+,Hg2+,Rh2+,Cu2+およびPb+のいずれかを示し、nは1~3の整数である)を用いる製造方法、上記シアン化物として、R4NCN(Rは、Hまたは有機基)で表されるシアン化アンモニウム系化合物を用いる製造方法、および、上記シアン化物としてシアン化水素を含み、さらに、アミンを含む製造方法が含まれる。
 これらの方法によれば、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物を穏やかな反応条件で製造することができ、または、上記イオン性化合物を収率よく得ることができる。
 本発明の製造方法は、さらに、上記出発原料を反応させて得られた粗生成物を、酸化剤と接触させる工程を含むのが好ましく、また、上記酸化剤は過酸化水素であるのが望ましい。
 本発明の製造方法によれば、従来技術と比較して、より穏やかな条件下で、収率よく、または、安価に、テトラシアノボレートイオン([B(CN)4)を有するイオン性化合物を製造することができる。したがって、本発明のイオン性化合物の工業的な製造も可能となる。
 本発明のイオン性化合物は、電位窓が広く、不純物の含有量が極低レベルにまで低減されているため、これを電解液や電気化学素子などの各種用途に使用した場合にも、周辺部材の腐食といった問題を生じることなく、安定した特性(熱的、物理的、電気化学的特性など)を発揮することができる。
実験例6-1のLSV測定結果を示す図である。 実験例6-2のLSV測定結果を示す図である。
 ≪イオン性化合物≫
 本発明のイオン性化合物は、下記一般式(I)で表されるイオン性化合物であって、当該イオン性化合物100mol%に対して、フッ素原子を含有する不純物の含有量が3mol%以下であるところに特徴を有する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
(式(I)中[Kt]m+は、無機カチオン[Ktam+又は有機カチオン[Ktbm+を表し、mは1~3の整数を表す。)
 本発明者らは、イオン性化合物の耐熱性、電気化学特性といった特性について検討を重ねていたところ、F原子に由来する不純物の量が、イオン性化合物の特性低下に大きく関与していることを突き止め、かかる特性低下を生じ難いイオン性化合物についてさらに検討を重ねた結果、イオン性化合物100mol%に対して、F原子を含有する不純物の含有量が3mol%以下であれば、テトラシアノボレートイオンをアニオンとして有するイオン性化合物の優れた特性を十分に享受できることを見出し、本発明を完成した。
 本発明においては、F原子を含む不純物には、上記イオン性化合物の出発原料に由来する遊離のF原子や、上記イオン性化合物の合成時に副生するBFx(CN)4-x(xは1~3の整数を表す。)、また、BF3およびBF4アニオンを含む化合物等、F原子を含むものは全て包含される。これらの不純物は、目的化合物であるイオン性化合物中に含まれていないのが好ましいが、中でも、遊離のF原子およびB-F結合を有する化合物群が含まれていないのがより好ましい。特に、B-F結合を有する化合物は、本発明のイオン性化合物に含まれていないことが望ましい。B-F結合を有する化合物は、空気中の水分と反応して分解してしまうため、かかる化合物が本発明のイオン性化合物に含まれている場合には、耐熱性の低下や、さらには、B-F結合の分解時に発生したフッ化水素により周辺部材の腐食を招くといった問題が生じる虞がある。
 イオン性化合物中に、F原子や、上記F原子を含有する不純物が3mol%を超えて含まれる場合は、フッ化水素ガスが生じて各種電気化学デバイスの周辺部材に腐食が生じたり、これらの不純物に起因してイオン性化合物自体の特性(耐熱性、電気的特性)が低下することがある。したがって、本発明のイオン性化合物に含まれるF原子を含む不純物の含有量は少ないほど好ましく、イオン性化合物100mol%に対して1mol%以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1mol%以下である。本発明のイオン性化合物中には、F原子を含む不純物が含まれない(0mol%)のが最も好ましいが、F原子を含む不純物量が0.0001mol%以上であれば、イオン性化合物の特性に対する影響は少なく、また、0.001mol%以上であっても顕著な特性の低下は見られ難い。
 本発明のイオン性化合物に含まれる不純物の含有量は、例えば、NMRのスペクトルから算出することができる。具体的には、まず、本発明のイオン性化合物の11B-NMRスペクトルを測定する。次いで、目的物であるB(CN)4のピークの積分値を100mol%とし、これをB-F結合を含む不純物ピークの積分値と比較すれば、不純物含有量を算出できる。また、同様の手法で19F-NMRスペクトルを測定すれば、遊離のF原子及びF含有化合物量を測定することもできる。尚、不純物含有量の算出方法は上記方法に限定されるものではなく、他の方法も採用可能である。例えば、イオンクロマトグラフィーによれば、F原子を含むイオン種及び遊離のF原子の定量も可能であるので、イオン性化合物の全質量からB(CN)4化合物のモル数を決定し、イオンクロマトグラフィーによりFアニオンの含有質量を求め、これをモル数に換算して算出する方法などが挙げられる。
 また、上記一般式(I)で表される本発明のイオン性化合物は、上記一般式(I)で表される化合物であって、トリメチルシリルシアニド(TMSCN)とホウ素化合物との反応により得られ、当該イオン性化合物中のケイ素(Si)含有量が2500ppm以下である高純度イオン性化合物であるのが好ましい。
 イオン性化合物中に含まれるSiは、イオン性化合物を合成する際の出発原料に由来する(後述する本発明の製造方法参照)。このような不純な成分が含まれている場合には、これを電解液などに用いた場合に、イオン伝導性を低下させる場合がある。したがって、不純な成分は可能な限り低減し、除去しておくことが望ましい。したがって、イオン性化合物中のSi含有量は1000ppm以下であるのがより好ましく、さらに好ましくは500ppm以下である。
 さらに、本発明の高純度イオン性化合物は、上記Siに加えて、シアン化物イオン(CN)含有量が低いものであるのが好ましい。好ましいシアン化物イオン含有量は3000ppm以下である。シアン化物イオンは、電極と反応し、イオン伝導性を低下させる虞がある。より好ましくは1000ppm以下であり、更に好ましくは500ppm以下である。
 また、ケイ素、シアン化物イオンに加えて、本発明の高純度イオン性化合物はハロゲン化物イオンの含有量が少ないものであるのが好ましい。なお、ここで「ハロゲン化物イオンの含有量」とは、F,Cl,BrおよびIの各ハロゲン化物イオンの濃度の総量を指す。上述のように、ハロゲン化物イオンは、電極材料と反応して、電極材料を腐食させ、また、系中に水素イオンが存在する場合には、電解液のpHを低下させて電極材料を溶解させる虞があり、いずれの場合も、電気化学デバイスの性能低下を引き起こす。
 したがって、イオン性化合物中におけるハロゲン化物イオン量は少ない程好ましく、好ましくは、イオン性化合物中のハロゲン化物イオン含有量は500ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは30ppm以下である。F,Cl,Br,Iのハロゲン化物イオンの中でも、F,Clの含有量を上述の範囲とすることが望ましく、特にClの含有量を上述の範囲とすることが好ましい。
 上記イオン成分に加えて、本発明のイオン性化合物中に含まれる水の量(水濃度)は3000ppm以下であるのが好ましい。イオン性化合物中に残留する水分は電気分解され、生成した水素イオンが上記ハロゲン化物イオンと結合し、ハロゲン化水素を形成する。なお、電解液中では、水素イオンとハロゲン化物イオンとは解離して存在するため、電解液のpHが低下する(酸性)。その結果、電解液中に生成した酸性成分により、電極材料が溶解し、電気化学デバイスの性能が低下する。したがって、イオン性化合物中に含まれる水の量は少ないほどよく、より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以下である。
 上記一般式(I)で表される本発明のイオン性化合物は、出発原料に起因する不純なイオンや、合成工程で不可避的に混入する不純物の含有量が少ない。したがって、本発明のイオン性化合物を各種電気化学デバイスのイオン伝導体として用いれば、イオン伝導性の低下や周辺部材の腐食が生じ難い信頼度の高い電気化学デバイスが得られる。
 なお、Si、ハロゲン化物イオン及び水分などの上記不純物含有量の測定には、従来公知の測定方法はいずれも使用可能であるが、例えば、原子吸光分析法や、ICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)、イオンクロマトグラフィーなど実施例に記載の方法が挙げられる。
 本発明のイオン性化合物は、上記一般式(I)に表されるように、有機又は無機カチオン[Kt]m+と、テトラシアノボレートアニオン[B(CN)4からなる化合物である。カチオン[Kt]m+としては、オニウムカチオン等の有機カチオン[Ktbm+、Li+,Na+,Mg2+,K+,Ca2+,Zn2+,Ga3+,Pd2+,Sn2+,Hg2+,Rh2+,Cu2+およびPb+等の無機カチオン[Ktam+が挙げられる。これらの中でも、[Kt]m+がオニウムカチオン、若しくはLiカチオンであるものは、有機溶媒へ容易に溶解し、非水電解液として利用できるため好ましい。
 上記オニウムカチオンとしては、下記一般式(II)で表されるものが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
 式中、Lは、C,Si,N,P,S又はOを表し、Rは、同一又は異なる有機基を示し、これらは互いに結合していてもよく、sはLに結合するRの数を表し、s=(Lの価数)+1-(Lに直接結合する二重結合の数)であり、2~4の整数である。なお、Lの価数とは、LがS,Oの場合は2であり、LがN,Pの場合は3であり、LがC,Siの場合は4となる。
 上記Rで示す「有機基」とは、水素原子、フッ素原子、又は、炭素原子を少なくとも1個有する基を意味する。上記「炭素原子を少なくとも1個有する基」は、炭素原子を少なくとも1個有してさえいればよく、また、ハロゲン原子やヘテロ原子などの他の原子や、置換基などを有していてもよい。置換基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル結合を有する基、チオエーテル結合を有する基、エステル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、ジスルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基などが挙げられる。
 上記一般式(II)で表されるオニウムカチオンとしては、下記一般式;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
(式中、Rは、同一又は異なる有機基を示し、これらは2以上が互いに結合していてもよい。)で表されるものが挙げられ、好ましくはLがN,P,SまたはOであり、さらに好ましいのはLがNのオニウムカチオンである。上記オニウムカチオンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、下記一般式(III)~(VI)で表されるオニウムカチオンが好ましいものとして挙げられる。
 (III)一般式;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
で表される14種類の複素環オニウムカチオンの内の少なくとも一種。
 上記有機基R1~R8は、一般式(II)に関して例示したものと同様のものが挙げられる。より詳しくは、R1~R8は、水素原子、フッ素原子、又は、有機基であり、有機基としては、直鎖、分岐鎖又は環状(但し、R1~R8が互いに結合して環を形成しているものを除く)の炭素数1~18の炭化水素基、あるいは炭化フッ素基であるのが好ましく、より好ましいものは炭素数1~8の炭化水素基、炭化フッ素基であり、さらに好ましいものは炭素数1~9の炭化水素基、炭化フッ素基である。また、有機基は、上記一般式(II)に関して例示した置換基や、窒素、酸素、硫黄原子などのヘテロ原子及びハロゲン原子を含んでいてもよい。
 (IV)一般式;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
で表される9種類の飽和環オニウムカチオンの内の少なくとも一種。
 上記一般式中、R1~R12は、同一若しくは異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。
 (V)一般式;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
で表されるR1~R4が、同一又は異なる有機基である鎖状オニウムカチオン。
 例えば、上記鎖状オニウムカチオン(V)としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、メトキシエチルジエチルメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、2-メトキシエトキシメチルトリメチルアンモニウムおよびテトラキス(ペンタフルオロエチル)アンモニウム等の第4級アンモニウム類、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム等の第3級アンモニウム類、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム等の第2級アンモニウム類、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム第1級アンモニウム類、N-メトキシトリメチルアンモニウム、N-エトキシトリメチルアンモニウム、N-プロポキシトリメチルアンモニウムおよびNH4で表されるアンモニウム化合物等が挙げられる。
 上記(III)~(V)のオニウムカチオンの中でも、窒素原子を含むオニウムカチオンがより好ましく、さらに好ましいものとしては、4級アンモニウム、イミダゾリウムであり、特に好ましいものとしては、下記一般式;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
(式中、R1~R12は、上記と同様である。)で表される5種類のオニウムカチオンの少なくとも1種が挙げられる。
 上記例示のアンモニウムの中でも、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム及びトリエチルメチルアンモニウム等の鎖状第4級アンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム及びジメチルエチルアンモニウム等の鎖状第3級アンモニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム及び1,2,3-トリメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム、N,N-ジメチルピロリジニウム及びN-エチル-N-メチルピロリジニウム等のピロリジニウムは入手容易であるため特に好ましい。
 本発明のイオン性化合物は、耐熱性、電気伝導度、耐電圧性等優れた物性を有する。尚、これらの物性値は、イオン性化合物を構成するカチオンKtm+の種類によって多少の差はあるが、本発明のイオン性化合物は、後述する電位窓の測定によって、+2.0V以上の耐電圧を示す。
≪イオン性化合物の製造方法≫
 次に、本発明のイオン性化合物の製造方法について説明する。
 本発明のイオン性化合物の製造方法とは、シアン化物と、ホウ素化合物とを含む出発原料を反応させて、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物を製造するところに特徴を有する。
 すなわち、本発明のイオン性化合物の製造方法には、特定のシアン化物Ma(CN)nとホウ素化合物とを反応させて、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物を得る第1の製造方法、シアン化アンモニウム系化合物とホウ素化合物とを反応させる第2の製造方法、トリメチルシリルシアニド(TMSCN)と、アミン及び/又はアンモニウム塩と、ホウ素化合物とを反応させる第3の製造方法、および、シアン化水素(HCN)と、アミンと、ホウ素化合物とを反応させる第4の製造方法が含まれる。これら本発明の製造方法によれば、従来法に比べて、より穏やかな条件で、または、より効率よく、あるいは、より安価に、テトラシアノボレートを有するイオン性化合物を得ることができる。以下、これらの製造方法について順に説明する。
 [第1の製造方法]
 本発明のイオン性化合物の製造方法は、下記一般式(I)で表されるテトラシアノボレートイオンを有するイオン性化合物の製造方法であって、Ma(CN)n(Maは、Zn2+,Ga3+,Pd2+,Sn2+,Hg2+,Rh2+,Cu2+およびPb+のいずれかを示し、nは1~3の整数である)と、ホウ素化合物、を含む出発原料を反応させるところに特徴を有する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
(式中、[Kt]m+は、有機カチオン[Ktbm+又は無機カチオン[Ktam+を表し、mは1~3の整数を表す。)
 本発明者らは、テトラシアノボレートイオン有するイオン性化合物を得るにあたって、従来、出発原料として使用されてきたシアン化カリウム(KCN)などのアルカリ金属シアン化物に替えて、特定の金属イオン(Zn2+,Ga3+,Pd2+,Sn2+,Hg2+,Rh2+,Cu2+およびPb+のいずれか)を含むシアン化物Ma(CN)nを使用することで、穏やかな反応条件で、且つ、安定に上記一般式(I)の化合物が得られることを見出した。
 本発明に係るシアン化物Ma(CN)nとしては、HOMO-2ndHOMO間のエネルギー準位が小さい、すなわち、HSAB則に基づけば軟らかい金属カチオンに分類される金属カチオンのシアン化物を用いればよい。上記特定の金属カチオンのシアン化物を使用することで、アルカリ金属シアン化物を用いる場合に比べて反応が速やかに進行するからである。上記金属カチオンが好ましい理由は明らかではないが、本発明者らは次のように考えている。
 一般に、HSAB則に基づけば、アルカリ金属イオンは、硬いカチオンに分類され、上記本発明に係るシアン化物に含まれる特定の金属は軟らかいカチオンに分類される。一方、生成物であるテトラシアノボレートアニオン(TCB)は、軟らかいアニオンに分類される。そして、軟らかい酸と塩基との組み合わせは、安定なイオン性化合物を形成し易いため、硬いカチオンであるLi+,Na+およびK+など従来用いられていたアルカリ金属シアン化物よりも、上記本発明に係るシアン化物の反応が進行し易かったものと考えられる。また、これらの金属シアン化物を出発原料として使用することで、不純物の含有量が少ないB(CN)4化合物を収率良く得ることができる。
 <シアン化物>
 上記シアン化物Ma(CN)nの中でも好ましいものは、Zn(CN)2,Ga(CN)3,Pd(CN)2,Sn(CN)2,Hg(CN)2およびCu(CN)2よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
 <ホウ素化合物>
 上記ホウ素化合物としては、ホウ素を含むものであれば特に限定はされない。例えば、McBXc 4(Mcは、水素原子又はアルカリ金属原子、Xcは、水素原子、水酸基若しくはハロゲン原子を表す。以下、同様。)、BXc 3、BXc 3-錯体、B(OR133(R13は、水素原子、若しくはアルキル基を示す。以下、同様。)、B(OR133-錯体、Na247、ZnO・B23およびNaBO3よりなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
 McBXc 4としては、HBF4、KBF4、KBBr4、NaB(OH)4、KB(OH)4、LiB(OH)4、LiBF4、NaBH4等が挙げられ、BXc 3としては、BH3、B(OH)3、BF3、BCl3、BBr3、BI3等が挙げられ、BXc 3-錯体としては、ジエチルエーテル、トリプロピルエーテル、トリブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリフェニルアミン、グアニジン、アニリン、モルホリン、ピロリジン、メチルピロリジン等のアミン類と、前記BXc 3との錯体、B(OR133としては、ホウ酸、炭素数1~10のアルコキシ基を有するホウ素化合物等が挙げられる。これらの中でも、反応性が比較的高いNaBH4、BH3、BF3、BCl3、BBr3、B(OMe)3、B(OEt)3、Na247、B(OH)3が好ましく、BF3、BCl3、BBr3等、Xcがハロゲン原子であるBXc 3や、B(OMe)3、B(OEt)3等、炭素数1~4のアルコキシ基を有するB(OR133がより好ましく、最も好ましいものとしては、BCl3、B(OMe)3およびB(OEt)3が挙げられる。上記ホウ素化合物は、単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、Fに由来する不純物量を低減する観点からは、上記ホウ素化合物の内、F原子を含有しないものを採用することが推奨される。
 第1の製造方法では、上記シアン化物Ma(CN)nとホウ素化合物とを反応させる際、さらに、一般式:KtXb([Kt]m+は、m価のカチオン、[Xbm-は、m価のアニオンを示し、mは1~3の整数である。以下、同様。)で表されるイオン性物質を出発原料として用いるのが好ましい。
 上記イオン性物質KtXbを構成するカチオン[Kt]m+としては、オニウムカチオン等の有機カチオン[Ktbm+、Li+,Na+,Ca2+,K+,Zn2+,Ga3+,Pd2+,Sn2+,Hg2+,Rh2+,Cu2+およびPb+等の無機カチオン[Ktm+が挙げられる。中でも、上述した一般式(III)~(V)のオニウムカチオンは、本発明に係るイオン性物質を構成する[Ktbm+として特に好ましい。[Kt]m+がオニウムカチオンであるイオン性物質Ktbbを出発原料として用いる場合には、1段階の反応で目的生成物である[B(CN)4のオニウムカチオン塩が得られるといった利点や、Ma(CN)nとイオン性物質Ktbb間の相互作用により、シアノ化反応が生じ易くなるといった利点がある。
 上記出発原料の配合割合は、1:1~100:1(シアン化物Ma(CN)n:ホウ素化合物、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:1~50:1であり、さらに好ましくは1:1~20:1であり、さらに一層好ましくは1:1~10:1である。シアン化物Ma(CN)nの配合量が少なすぎると、目的のイオン性化合物の生成量が少なくなったり、副生物(例えば、トリシアノボレート、ジシアノボレート等)が生成する場合があり、一方多すぎると、CN由来の不純物量が増加し、目的生成物の精製が困難になる傾向がある。
 上記出発原料にイオン性物質KtXbが含まれる場合、当該イオン性物質の配合割合は、ホウ素化合物に対して、100:1~1:100(イオン性物質:ホウ素化合物、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは50:1~1:50であり、さらに好ましくは20:1~1:20である。イオン性物質の配合量が少なすぎる場合は、所望のイオン性化合物の生成量が少なくなり、一方多すぎる場合は、イオン性物質に由来する不純物量が増え、目的生成物の精製が困難になることがある。
 本発明のイオン性化合物の製造方法では、反応を均一に進行させるため、反応溶媒を用いるのが好ましい。反応溶媒としては、上記出発原料が溶解するものであれば特に限定されず、水又は有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、へキサン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素系溶媒、ジエチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。上記反応溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
 上記出発原料を反応させる際の条件は特に限定されず、反応の進行状態に応じて適宜調節すればよいが、例えば、反応温度は、0℃~200℃とするのが好ましい。より好ましくは20℃~150℃であり、さらに好ましくは50℃~130℃である。反応時間は0.2時間~200時間とするのが好ましく、より好ましくは0.5時間~150時間であり、さらに好ましくは1時間~100時間である。
 第1の製造方法において、上記金属シアン化物とホウ素化合物とを出発原料として用いた場合には、一般式:Kta[B(CN)4m([Ktam+は、上記シアン化物の金属カチオン[Man+)で表されるイオン性化合物が生成する。また、上述のように、出発原料がイオン性物質KtXb([Kt]m+は、オニウムカチオン[Ktbm+、または、上記無機カチオン[Ktam+を表す)を含む場合、あるいは、生成したイオン性化合物Kta[B(CN)4m([Ktam+は、シアン化物の金属カチオン[Man+)を、イオン性物質KtXbと反応させてカチオン交換した場合には、所望のオニウムカチオン、または、無機カチオンを有するイオン性化合物Kt[B(CN)4mが得られる。上記イオン性物質とのカチオン交換反応については、後述する。
 したがって、本発明第1の製造方法には、上記シアン化物Ma(CN)nとホウ素化合物とを反応させて、本発明に係るイオン性化合物Kta[B(CN)4m([Ktam+は、上記シアン化物の金属カチオン[Man+)を製造する態様;上記金属シアン化物Ma(CN)nとホウ素化合物との反応によりKta[B(CN)4mを得た後、これをイオン性物質KtXbと反応させてカチオン交換反応を行い本発明に係るイオン性化合物Kt[B(CN)4m([Kt]m+は、オニウムカチオン[Ktbm+、または、無機カチオン[Ktam+)を製造する態様;上記金属シアン化物Ma(CN)n、ホウ素化合物およびイオン性物質KtXbを反応させて、1段階で本発明に係るイオン性化合物Kt[B(CN)4m([Kt]m+は、オニウムカチオン[Ktbm+、または、上記無機カチオン[Ktam+)を製造する態様:の3態様が含まれる。よって、第1の製造方法により得られる本発明のイオン性化合物Ktm+[{B(CN)4mには、[Kt]m+がオニウムカチオン[Ktbm+の場合と、無機カチオン[Ktam+の場合の双方が含まれる。
 上記シアン化物Ma(CN)nをCN試薬として用いる第1の本発明の製造方法によれば、アルカリ金属シアン化物(KCN)では安定して目的物が得られなかった反応条件でも、テトラシアノボレートイオン([B(CN)4)を有するイオン性化合物を得ることができる。
 [第2の製造方法]
 次に、第2の製造方法について説明する。本発明の第2のイオン性化合物の製造方法とは、下記一般式(VI)で表されるシアン化アンモニウム系化合物と、ホウ素化合物とを反応させて下記一般式(I)で表されるイオン性化合物を得るところに特徴を有するものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
(式中、N-R間の結合は、飽和結合および/または不飽和結合であって、tはNに結合するRの個数を表し、t=4-(Nに結合する二重結合の数)で表され、3~4の整数であり、Rは、互いに独立して、水素原子、若しくは有機基を表し、また、これらの2以上が結合していてもよい)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
(式中、[Kt]m+は、有機カチオン[Ktbm+又は無機カチオン[Ktam+を表し、mは1~3の整数を表す)
 本発明者らは、テトラシアノボレートイオンを有するイオン性化合物を合成するにあたって、シアン(CN)源として、従来用いられていたシアン化カリウムなどのアルカリ金属シアン化物に替えて、シアン化アンモニウム系化合物を用いることで、より低い反応温度で、収率よく、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物が得られることを見出した。
 シアン源としてシアン化アンモニウム系化合物を使用することで、従来法に比べて穏やかな条件で反応が進行し、収率よく生成物が得られる理由について、本発明者らは次のように考えている。アルカリ金属シアン化物においては、アルカリ金属イオンとシアノ基(CN)との間の結合が強い。一方、アンモニウム系シアン化物は、正電荷を帯びたN原子に立体障害があるため、シアン化物イオンがN原子に近寄り難く、CNとN原子間の結合が比較的弱い。なお、テトラシアノボレートを生成する反応においては、反応系内で遊離のシアン化物イオンを発生するとホウ素化合物との結合が形成され易く、その結果、目的のTCBが効率よく生成するものと推定される。したがって、N-CN間の結合が弱いアンモニウム系シアン化物を用いる本発明法においては、穏やかな反応条件下であっても速やかにシアン化物イオンが放出されて、反応が進行し、TCBが生成するものと考えられる。
 したがって、本発明、第2の製造方法により得られるイオン性化合物Kt[B(CN)4mを構成する有機カチオン[Kt]m+には、シアン化アンモニウム系化合物を構成するカチオンに由来するものである場合;ホウ素化合物に含まれるカチオンに由来するものである場合;さらに、後述するカチオン交換反応で用いるイオン性物質を構成するカチオンに由来するものである場合;が含まれる。
 <シアン化アンモニウム系化合物>
 まず、上記一般式(VI)で表されるシアン化アンモニウム系化合物について説明する。
 第2の製造方法では、シアン化アンモニウム系化合物[N-(R)t]CNを出発原料として用いる。シアン化アンモニウム系化合物をTCB合成反応のCN源として用いることで、アルカリ金属シアン化物を出発原料とする場合には目的物を得られなかった反応条件下でも、テトラシアノボレート[B(CN)4を有するイオン性化合物を得ることができる。
 上記一般式(VI)のシアン化アンモニウム系化合物を構成するアンモニウム[N+-(R)t]において、N-R間の結合は、飽和結合および/または不飽和結合であり、tはNに結合するRの個数を表し、t=4-(Nに直接結合する二重結合の数)で表され、3~4の整数を示し、Rは、互いに独立して水素原子若しくは有機基を示し、さらに、2以上のRは結合していてもよい。
 尚、上記「有機基」とは、上記一般式(II)に関して例示したものと同様のものが挙げられる。
 また、上記Rは、有機基Rの主骨格を構成する炭素原子を介してアンモニウムの中心元素であるNと結合していてもよく、また、炭素以外の他の原子や上述の置換基を介してNと結合していても良い。さらに、2以上の有機基Rが結合している場合、当該結合は、有機基Rの主骨格を構成する炭素原子やその他の原子間における結合であってもよく、また、当該炭素原子と有機基Rが有する置換基、あるいは2以上のRのそれぞれが有する置換基間における結合であってもよい。
 上記有機基Rを有するアンモニウム[N+-(R)t]としては、下記一般式(VII)~(IX)で表される構造を有するものが好ましいものとして挙げられる。
 (VII)t=3であり、3つのRのうちいずれか2つのRが結合して環を形成している、下記一般式で表される9種類のアンモニウム系化合物誘導体;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
 (VIII)t=4であり、4つのRのうちいずれか2つのRが結合して環を形成している、下記一般式で表される4種類のアンモニウム系化合物誘導体;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 上記(VII)~(VIII)に示す一般式で表される誘導体において、R1~R12は、互いに独立して、水素原子または有機基を示し、2以上のRが結合していてもよい。
 (IX)t=4であり、4つのRが互いに結合していない、下記一般式で表されるアルキルアンモニウム誘導体。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
 上記アルキルアンモニウム誘導体を構成するR1~R4は、互いに独立して、水素原子若しくは有機基である。
 例えば、上記(IV)のアルキルアンモニウム誘導体としては、上記鎖状オニウムカチオン(V)として例示したアンモニウム類およびアンモニウム化合物が挙げられる。
 上記(VII)~(IX)のアンモニウムの中でも、入手のし易さからより好ましいアンモニウムとして、下記6種類の一般式で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
(式中、R1~R12は、上記と同様である)
 上記R1~R12は、水素原子、フッ素原子、又は、有機基であり、有機基としては、上記一般式(III)に関して例示したものと同様のものが挙げられる。
 上記例示のアンモニウムを有するシアン化アンモニウム系化合物の中でも、テトラブチルアンモニウムシアニド、テトラエチルアンモニウムシアニド及びトリエチルメチルアンモニウムシアニド等の鎖状第4級アンモニウムとシアン化物イオンとの塩、トリエチルアンモニウムシアニド、ジブチルメチルアンモニウムシアニド及びジメチルエチルアンモニウムシアニド等の鎖状第3級アンモニウムとシアン化物イオンとの塩、1-エチル-3-エチルイミダゾリウムシアニド及び1,2,3-トリメチルイミダゾリウムシアニド等のイミダゾリウムとシアン化物イオンとの塩、N,N-ジメチルピロリジニウムシアニド及びN-エチル-N-メチルピロリジニウムシアニド等のピロリジニウムとシアン化物イオンとの塩等は入手容易であるため特に好ましい。
 シアン化アンモニウム系化合物は、単独のアンモニウムを含むものであってもよく、また、2種以上の異なるアンモニウムを有するシアン化アンモニウム系化合物を混合して用いてもよい。
 上記シアン化アンモニウム系化合物は、下記一般式(X)で表される化合物と、金属シアン化物Lp+[(CN)n(Lp+は金属カチオンを表し、pは1~4、好ましくは1または2である)との反応により合成することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
(式中、[N-(R)]は、一般式(VI)と同様であり、Yは、ハロゲン化物イオン、BF4 、PF6 、SO4 2-、HSO4 、ClO4 、NO3 またはR13(R13は水素原子又は有機基)を表し、lは、1または2を表す。なお、有機基R13はR1~R12と同様である。)
 上記一般式(X)において、[N-(R)]は、上記シアン化アンモニウム系化合物のアンモニウムカチオンに相当するものであり、具体的には、例えば、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、N,N-ジメチルピロリジニウム、N,N-メチルブチルピロリジニウム、アンモニウム(NH4 +)、モルホリウム等が挙げられる。具体的な化合物(X)としては、テトラブチルアンモニウムスルホキシド、テトラエチルアンモニウムクロリド、トリエチルアンモニウムクロリドおよび1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド等が好ましいものとして挙げられる。
 上記金属シアン化物Lp+[(CN)nにおいて、Lp+は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、Zn2+、Cu+、Cu2+、Pd2+、Au+、Ag+、Al3+、Ti4+、Fe3+およびGa3+等を表し、より好ましくはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、Zn2+、Cu+、Cu2+およびAg+である。具体的な金属シアン化物としては、例えば、KCN,LiCN,NaCN,Mg(CN)2,Ca(CN)2,Zn(CN)2,CuCN,Cu(CN)2等が挙げられる。
 上記化合物(X)と金属シアン化物の配合割合は、40:1~1:40(化合物(X):金属シアン化物、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは20:1~1:20であり、さらに好ましくは10:1~1:10である。
 上記反応時の条件は特に限定されず、例えば反応温度は0℃~150℃とするのが好ましく、より好ましくは20℃~100℃であり、反応時間は0.01時間~20時間とするのが好ましく、より好ましくは0.05時間~5時間である。また、反応溶媒は使用してもしなくても良いが、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメトキシエタン及び水が好ましい反応溶媒として例示できる。これらの反応溶媒は、単独で用いても、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、2種以上の反応溶媒を使用することは上記反応の好ましい条件の一つである。
 <ホウ素化合物>
 本発明の第2の製造方法では、上記シアン化アンモニウム系化合物とホウ素化合物とを含む出発原料を反応させることで、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物を合成する。上記ホウ素化合物としては、ホウ素を含む化合物であれば特に限定はされず、上記第1の製造方法と同様のものが使用できる。
 上記出発原料の配合割合は、50:1~4:1(シアン化アンモニウム系化合物:ホウ素化合物、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは20:1~4:1であり、さらに好ましくは10:1~4:1である。シアン化アンモニウム系化合物の配合量が少なすぎると、目的のイオン性化合物の生成量が少なくなったり、副生物(例えば、トリシアノボレート、ジシアノボレート等)が生成する場合があり、一方多すぎると、CN由来の不純物量が増加し、目的生成物の精製が困難になる傾向がある。
 本発明のイオン性化合物の製造方法では、反応を均一に進行させるため、反応溶媒を用いるのが好ましい。反応溶媒としては、上記出発原料が溶解するものであれば特に限定されず、水又は有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、上記第1の製造方法と同じものが使用できる。中でも、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒およびエステル系溶媒が好ましい。上記反応溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
 上記出発原料を反応させる際の条件は特に限定されず、反応の進行状態に応じて適宜調節すればよいが、例えば、反応温度は、30℃~200℃とするのが好ましい。より好ましくは50℃~170℃であり、さらに好ましくは80℃~150℃である。反応時間は0.2時間~200時間とするのが好ましく、より好ましくは0.5時間~150時間であり、さらに好ましくは1時間~100時間である。
 上記シアン化アンモニウム系化合物をCN試薬として用いる本発明第2の製造方法によれば、アルカリ金属シアン化物では目的物が得られなかった200℃以下の反応条件でも、テトラシアノボレートイオン([B(CN)4)を有するイオン性化合物を得ることができる。
 [第3の製造方法]
 本発明のイオン性化合物の第3の製造方法とは、トリメチルシリルシアニド(TMSCN)と、アミン及び/又はアンモニウム塩と、ホウ素化合物とを反応させて下記一般式(I)で表されるイオン性化合物を得るところに特徴を有するものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
(式中、[Kt]m+は、有機カチオン[Ktbm+又は無機カチオン[Ktam+を表し、mは1~3の整数を表す。)
 本発明者らは、テトラシアノボレートイオンを有するイオン性化合物を合成するにあたって、シアン(CN)源として、従来用いられていたシアン化カリウムなどのアルカリ金属シアン化物に代えて、トリメチルシリルシアニドを用い、さらに、アミン及び/又はアンモニウム塩の存在下でホウ素化合物と反応させることで、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物が収率よく得られることを見出した。
 このように、アミン及び/又はアンモニウム塩の存在下で、トリメチルシリルシアニドとホウ素化合物とを反応させることで、従来法に比べて高収率で生成物が得られる理由について、本発明者らは次のように考えている。
 テトラシアノボレートを生成する反応においては、反応系内で遊離のシアン化物イオンを発生する方がホウ素化合物との結合を形成し易く、目的のTCBを生成し易いと推定される。そこで、アルカリ金属イオン又はトリメチルシランと、シアン化物イオンとの結合状態について検討すると、アルカリ金属シアン化物においては、アルカリ金属イオンとシアノ基(CN)との間に、これらの結合を邪魔するような嵩高い置換基は存在しておらず、強い結合が形成されていると考えられる。一方、トリメチルシリルシアニドでは、正電荷を帯びたSi原子にメチル基が結合しており、立体障害があるため、シアン化物イオンがSi原子に近寄り難く、CNとSi原子間の結合が比較的弱いと考えられる。したがって、Si-CN間の結合が弱いトリメチルシリルシアニドを用いる本発明法においては、速やかにシアン化物イオンが放出されて反応が進行し、TCBが生成したものと考えられる。
 なお、トリメチルシリルカチオンとTCBからなるイオン性化合物は、非常に不安定で分解し易い。しかしながら、本発明では、トリメチルシリルカチオンが速やかにアンモニウムカチオンと交換されるため、TCBを含むイオン性化合物が安定に得られるものと考えられる。また、詳細な理由は不明だが、アミンを用いた場合、アミンが、出発原料や中間生成物から生じたプロトンを捕捉し、系内にアンモニウム化合物を生成していると考えられる。その結果、アンモニウム塩を用いた場合と同様、安定なTCBを含むイオン性化合物が得られると推測している。このような理由から、アミン及び/又はアンモニウム塩の存在下で、上記反応を行うことで、TCBの生成反応が速やかに進行し、イオン性化合物が生成するものと考えている。加えて、本発明法では、アミン及び/又はアンモニウム塩の存在下で上記反応を行うため、一段階で、アンモニウムをカチオンとするイオン性化合物を得ることができるといった効果も有する。
 <トリメチルシリルシアニド>
 まず、出発原料であるトリメチルシリルシアニドから説明する。
 第3の製造方法では、出発原料としてトリメチルシリルシアニドを用いる。トリメチルシリルシアニドをTCB合成反応のCN源として用いることで、アルカリ金属シアン化物を出発原料とする場合には目的物が得られ難かった反応条件下でも、テトラシアノボレート[B(CN)4を有するイオン性化合物を得ることができる。
 トリメチルシリルシアニドは、市販のものを用いてもよく、また、公知の方法で合成したものを用いてもよい。TMSCNを合成する方法は特に限定されないが、例えば、トリメチルシリル基(TMS基)を有する化合物とシアン化水素(HCN)とを含む出発原料とする方法は、より安価にTMSCNを合成できるため好ましい。
 上記TMS基を有する化合物としては、TMSX1(X1は、OR、ハロゲン原子または水酸基)やヘキサメチルジシラザン(TMS-NH-TMS)などが挙げられる。具体的には、トリエチルアミン等のアミンの存在下で、TMSX1(X1はハロゲン原子)とシアン化水素とを反応させる方法(下記(XI-1)式参照、Stec, W. J.等、Synthesis. 1978:154.参照)や、ヘキサメチルジシラザンとシアン化水素とを反応させる方法等が採用できる(下記(XI-2)式参照)。
TMSX1+HCN+Et3N→TMSCN+Et3NHX1   (XI-1)
TMS-NH-TMS+2HCN→2TMSCN+NH3   (XI-2)
 また、上記ヘキサメチルジシラザンはアミンとしても働き得るため、ヘキサメチルジシラザンとトリメチルシリル基を有する化合物とを同時に用いてもよい(下記(XI-3)式参照)。これにより、副生するアンモニアが系内で捕捉され、臭気の問題が抑制されるので好ましい。
TMSX1+[TMS-NH-TMS]+3HCN→3TMSCN+NH41  (XI-3)
 原料の配合割合は、トリメチルシリル基とシアン化水素(HCN)とが、20:1~1:20(モル比)となるようにするのが好ましく、より好ましくは10:1~1:10であり、さらに好ましくは5:1~1:5である。すなわち、ヘキサメチルジシラザンを用いる場合、あるいは、ヘキサメチルジシラザンとトリメチルシリル基を有する化合物とを併用する場合は、原料に含まれるトリメチルシリル基の合計量と、シアン化水素の配合量とが、上記範囲となるようにすればよい。反応温度は-20℃~100℃であるのが好ましく、より好ましくは0℃~50℃であり、反応時間は0.5時間~100時間、より好ましくは1時間~50時間である。
 なお、第3の製造方法においては、副生成物としてトリメチルシリル基を有する化合物が生成する(例えば、TMSX1、TMS-O-TMS等。下記式(XI-4)参照)。
4TMSCN+BX2 3+R4NX3→R4N[TCB]+3TMSX2+TMSX3 (XI-4)
(X2、X3は、OR、ハロゲン原子または水酸基を表す)
 そこで、第3の製造方法では、この副生するトリメチルシリル基を有する化合物TMSX1をHCNと反応させて再生したTMSCNを出発原料として利用してもよい。TMSCNは高価であるため、反応副生物であるTMSX1をリサイクル利用することで、イオン性化合物の製造コストが抑えられるからである。
 <ホウ素化合物>
 本発明の第3の製造方法では、上記TMSCNと、アミン及び/又はアンモニウム塩と、ホウ素化合物とを含む出発原料を反応させることにより、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物を合成する。上記ホウ素化合物としては、ホウ素を含む化合物であれば特に限定はされず、上記第1の製造方法と同様のものが使用できる。
 上記出発原料の配合割合は、3:1~80:1(TMSCN:ホウ素化合物、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは4:1~40:1であり、さらに好ましくは4:1~20:1である。TMSCNの配合量が少なすぎると、目的のイオン性化合物の生成量が少なくなったり、副生物(例えば、トリシアノボレート、ジシアノボレート等)が生成する場合があり、一方多すぎると、CN由来の不純物量が増加し、目的生成物の精製が困難になる傾向がある。
 <アミン及び/又はアンモニウム塩>
 本発明において上記TMSCNとホウ素化合物との反応は、アミン及び/又はアンモニウム塩の存在下で行う。アミンは反応系内でアンモニウム塩となり、生成したアンモニウム塩が、反応系内で別途生成しているトリメチルシリルをカチオンとするTCB化合物のトリメチルシリルカチオンと交換することで、TCBを含む安定なイオン性化合物を収率よく得ることができる。また、アミン及び/又はアンモニウム塩を用いるため、カチオン交換反応を行うことなく、一段階でアンモニウムをカチオン成分とするイオン性化合物を得ることができる。
 本発明で使用可能なアミンとしては、下記一般式(XII)で表されるアミンが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
 上記一般式(XII)において、N-R間の結合は、飽和結合および/または不飽和結合であって、uはNに結合するRの個数を表し、u=3-(Nに結合する二重結合の数)で表され、2または3であり、Rは、互いに独立して、水素原子、フッ素原子、若しくは有機基を表し、Rは2以上が結合して環を形成していてもよい。なお、上記「有機基」とは、上記一般式(II)に関して例示したものと同様のものが挙げられる。
 上記一般式(XII)で表されるアミンとしては、2以上のRが結合した飽和又は不飽和環状構造を有するアミン化合物(XIII)、(XIV)と、Rが鎖状のアミン化合物(XV)が挙げられる。
 (XIII)上記一般式(XII)において、uが3であり、2以上のRが結合した飽和又は不飽和環状構造を有するアミン化合物;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
 上記一般式(XIII-1)~(XIII-3)中、R1~R3は、水素原子、フッ素原子、または、有機基であり、有機基としては、上記一般式(III)に関して例示したものと同様のものが挙げられる。
 上記一般式(XIII-1)~(XIII-3)で表される具体的な化合物としては、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン等の一般式(XIII-1)で表される化合物、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の一般式(XIII-2)で表される化合物、ヘキサメチレンテトラミン等の一般式(XIII-3)で表される化合物、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
 (XIV)上記一般式(XII)において、uが2であり、2つのRが結合した不飽和環状構造を有するアミン化合物;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
 (上記一般式(XIV)中、R1~R2は、化合物(XIII)と同様。)
 上記一般式(XIV)で表される具体的な化合物としては、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、トリアゾール、ピロリン、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等のアミジン骨格を有する化合物とその誘導体、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。
 (XV)上記一般式(XII)において、uが2または3であり、R同士が結合していない、下記一般式で表されるアミン化合物;
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
 (上記一般式(XV)中、R1~R3は、化合物(VIII)と同様)
 uが3である上記一般式(XV-1)で表されるアミン化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジブチルメチルアミン、ジヘキシルメチルアミン、ジプロピルアミン等のトリアルキルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン等のジアルキルアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン等のモノアルキルアミンが挙げられる。nが2であり、上記一般式(XV-2)で表される化合物としては、グアニジン等が挙げられる。
 上記一般式(VIII)~(XV)で表されるアミンの中でも好ましいものとして、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ブチルジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミンおよびグアニジン等の鎖状アミン、ピペリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、イミダゾリン、ジアザビシクロノネン(DBN)およびジアザビシクロウンデセン(DBU)等の環状アミン、ピリジン、イミダゾール、メチルイミダゾールおよびピラジン等の芳香族アミンが挙げられる。これらの中でも、トリエチルアミン、ジブチルアミン等の鎖状アミンは、塩基性が高く、安価であるため好ましい。
 一方、アンモニウム塩としては、上記一般式(VII)~(IX)で表されるアンモニウムカチオンを有するアンモニウム塩を利用できるが、中でも、4級アンモニウムをカチオンとするものが好ましく、具体的には、カチオンとして下記一般式(XVII-1)~(XVII-5)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種以上を有するものが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
 式中Rは、互いに独立して、水素原子、フッ素原子、又は、有機基を示す。なお、上記一般式中Rで示される有機基とは、前記一般式(II)に関して例示したものと同様のものが挙げられる。
 具体的なアンモニウムカチオンとしては、アンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ジアザビシクロオクタンのプロトン付加体、イミダゾリウム、メチルイミダゾリウム、エチルメチルイミダゾリウム、ピリジニウム、メチルピリジニウム等が挙げられ、これらの中でもトリエチルメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ジアザビシクロオクタンのプロトン付加体、エチルメチルイミダゾリウムが好ましく、トリエチルメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、エチルメチルイミダゾリウムがより好ましい。
 上記アンモニウムカチオンと塩を構成するアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、シアン化物イオン(CN)、水酸化物イオン(OH)、シアン酸イオン(OCN)、チオシアン酸イオン(SCN)、アルコキシイオン(RO)、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、アルキル硫酸イオン、アルキル炭酸イオン等が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン化物イオンが好適であり、ハロゲン化物イオンの中でも、ClまたはBrが特に好ましい。
 好ましいアンモニウム塩としては、上記アンモニウムカチオンと上述のアニオンとの組み合わせからなるものが挙げられるが、特に好ましいものとしては、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、エチルメチルイミダゾリウムクロリド、アンモニウムメトキシド、ピリジニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムシアナートが挙げられる。
 上記アミン及び/又はアンモニウム塩の使用量は、ホウ素化合物に対して、0.1:1~10:1(ホウ素化合物:アミン及び/又はアンモニウム塩、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは0.2:1~5:1であり、さらに好ましくは0.5:1~2:1である。アミン及び/又はアンモニウム塩の配合量が少なすぎると、副生成物の除去が不十分となったり、カチオン量が不足して効率よく目的物を生成できない場合があり、一方、多すぎると、アミンまたはアンモニウム塩が不純物として残存する傾向がある。
 本発明のイオン性化合物の製造方法では、反応を均一に進行させるため、反応溶媒を用いるのが好ましい。反応溶媒としては、上記出発原料が溶解するものであれば特に限定されず、水又は有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、上記第1の製造方法と同じものが使用できる。もちろん、これらの反応溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
 上記出発原料を反応させる際の条件は特に限定されず、反応の進行状態に応じて適宜調節すればよいが、例えば、反応温度は0℃~200℃とするのが好ましい。より好ましくは30℃~170℃であり、さらに好ましくは50℃~150℃である。反応時間は0.2時間~200時間とするのが好ましく、より好ましくは0.5時間~150時間であり、さらに好ましくは1時間~100時間である。
 上記TMSCN、アミン及び/又はアンモニウム塩及びホウ素化合物を出発原料とする本発明第3の製造方法によれば、CN源としてアルカリ金属シアン化物を用いる場合や、TMSCNとアルカリ金属を含むホウ素化合物とを出発原料とする場合に比べて、一層高い収率でテトラシアノボレートイオン([B(CN)4)を有するイオン性化合物を得ることができる。
 本発明第3の製造方法により得られるイオン性化合物は、上記一般式(I)の構造を有するものであって、カチオン[Kt]m+として有機カチオン又は無機カチオン、アニオンとして[B(CN)4を有する。上記カチオン[Kt]m+は、ホウ素化合物に由来するものであっても(例えば、アルカリ金属イオン等)、アンモニウム塩に由来するものであってもよく(例えば、上記一般式(VII)~(IX)のいずれかのアンモニウムカチオン)、また、これらとは異なる有機カチオンあるいは無機カチオンを有するものであってもよい。
 [第4の製造方法]
 次に、第4の製造方法について説明する。本発明のイオン性化合物の第4の製造方法とは、シアン化水素と、アミンと、ホウ素化合物とを反応させて下記一般式(I)で表されるイオン性化合物を得るところに特徴を有するものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
(式中、[Kt]m+は、有機カチオン[Ktbm+又は無機カチオン[Ktam+を表し、mは1~3の整数を表す)
 本発明者らは、テトラシアノボレートイオンを有するイオン性化合物を合成するにあたって、シアン(CN)源として、従来用いられていたシアン化カリウムなどのアルカリ金属シアン化物やトリメチルシリルシアニドに代えて、シアン化水素(HCN)を用いることで、安価に、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物が得られることを見出した。
 なお、シアン化水素、アミンおよびホウ素化合物を使用することで、速やかにテトラシアノボレートを含むイオン性化合物が得られる理由について、明確に把握しているわけではないが、本発明者らは次のように考えている。反応系内において、まず、出発原料であるシアン化水素の水素原子がアミンの窒素の非共有電子対に配位してアンモニウム錯体が形成される。次いで、このアンモニウム錯体とホウ素化合物とが反応し、その結果、TCBを含むイオン性化合物が生成するものと考えている。すなわち、シアン化水素とアミンとから形成される錯体では、従来シアン源として用いられていたアルカリ金属シアン化物に比べて、N-CN間の結合が弱い。したがって、シアン化水素とアミンとを出発原料として用いれば、反応系内に遊離のシアン化物イオンが生成し易く、その結果、速やかにTCBを含むイオン性化合物が生成するものと考えられる。
 なお、本発明法により得られるイオン性化合物Kt[B(CN)4mを構成する有機カチオン[Kt]m+には、ホウ素化合物に含まれるカチオンに由来するものである場合、シアン化水素とアミンから生成するアンモニウムに由来するものである場合、さらに、後述するカチオン交換反応で用いるイオン性物質を構成するカチオンに由来するものである場合が含まれる。
 <シアン化水素>
 上述のように、本発明第4の製造方法では、シアン源としてシアン化水素を使用する。シアン化水素は、気体であっても、また、液体であってもよく、さらに、シアン化水素を水または有機溶媒に溶解した溶液として用いることもできる。なお、取り扱い性のよさからは液体又は溶液状のシアン化水素を用いるのが好ましい。
 <アミン>
 次に、アミンについて説明する。第4の製造方法では、アミンを出発原料として用いる。本発明で使用可能なアミンとしては、上記一般式(XII)で表されるアミンが好ましく、具体的なアミンとしては、上記第3の製造方法で用いるものと同様のものが挙げられる。
 <ホウ素化合物>
 第4の製造方法では、上記シアン化水素と、アミンと、ホウ素化合物とを含む出発原料を反応させることで、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物を合成する。上記ホウ素化合物としては、ホウ素を含む化合物であれば特に限定はされず、上記第1の製造方法と同様のものが使用できる。
 第4の製造方法においては、上記シアン化水素と、アミンと、ホウ素化合物とを反応させることにより、上記一般式(I)のイオン性化合物を製造する。上記出発原料の混合態様は特に限定されず、シアン化水素と、アミンと、ホウ素化合物とを反応容器に仕込む態様;予め、シアン化水素とアミンとを反応容器に仕込んだ後、ホウ素化合物を反応系内に添加する態様のいずれも採用可能である。
 上記出発原料の内、シアン化水素に対するアミンの配合割合は、0.02:1~50:1(シアン化水素:アミン、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは0.05:1~20:1であり、さらに好ましくは0.1:1~10:1である。シアン化水素の配合量が少なすぎると、目的のイオン性化合物の生成量が少なくなったり、副生物(例えば、トリシアノボレート、ジシアノボレート等)が生成する場合があり、一方、多すぎると、CN由来の不純物量が増加し、目的生成物の精製が困難になる傾向がある。
 上記ホウ素化合物の使用量は、シアン化水素に対して1:4~1:100(ホウ素化合物:シアン化水素、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:4~1:50であり、さらに好ましくは1:4~1:20である。ホウ素化合物の配合量が少なすぎると、目的のイオン性化合物の生成量が少なくなる場合があり、一方、多すぎると、ホウ素化合物由来の不純物量が増加し、目的生成物の精製が困難になる傾向がある。
 本発明のイオン性化合物の第4の製造方法では、反応を均一に進行させるため、反応溶媒を用いるのが好ましい。反応溶媒としては、上記出発原料が溶解するものであれば特に限定されず、水又は有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、上記第1の製造方法と同じものが使用できる。もちろん、反応溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
 上記出発原料を反応させる際の条件は特に限定されず、反応の進行状態に応じて適宜調節すればよいが、例えば、反応温度は、30℃~250℃とするのが好ましい。より好ましくは50℃~170℃であり、さらに好ましくは80℃~150℃である。反応時間は0.2時間~200時間とするのが好ましく、より好ましくは0.5時間~150時間であり、さらに好ましくは1時間~100時間である。
 シアン化水素をCN試薬として用いる本発明第4の製造方法によれば、アルカリ金属シアン化物やトリメチルシリルシアニドを用いる従来の方法に比べて、安価に、テトラシアノボレートイオン([B(CN)4)を有するイオン性化合物を得ることができる。
 <カチオン交換反応>
 本発明法により得られたイオン性化合物は、さらに、カチオン交換反応を行ってもよい。後述するように、本発明に係るイオン性化合物の特性はカチオン種に依存するので、カチオン交換を行うことで、特性の異なるイオン性化合物を容易に得ることができる。
 なお、上記第1の製造方法において記載したように、イオン性物質KtXb([Kt]m+は有機カチオン又は無機カチオンを表し、[Xbm-はアニオンを示し、mは1~3の整数を表す)を出発原料として用いれば、別途、カチオン交換反応を行わなくても、所望のカチオンを有するイオン性化合物を得ることができる。これらの態様も、推奨される本発明の実施態様の一つである。
 したがって、上記一般式(I)で表される本発明に係るイオン性化合物において、カチオン[Kt]m+は、カチオン交換反応を行わない場合は、ホウ素化合物に由来するカチオン、あるいは、シアン化物Ma(CN)nに由来するカチオン(第1の製法)、上記シアン化アンモニウム化合物に由来するカチオン、すなわち、上記一般式(VII)~(IX)で表される構造を有する各種誘導体のカチオン(第2の製法)、アンモニウム塩に由来するカチオンである場合(第3の製法)、シアン化水素とアミンとから生成したアンモニウムカチオン(第4の製法)等となる。
 一方、上記各反応をイオン性物質の存在下で行う場合、及び、上述の反応後、得られたイオン性化合物のカチオン交換反応を行う場合には、イオン性物質KtXbを構成するカチオン[Kt]m+、すなわち、公知の有機カチオン、若しくは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンなどの公知の無機カチオンが[Kt]m+となる。
 イオン性物質を構成する[Kt]m+としては、前述した一般式[N+-(R)t]で表されるアンモニウムが有機カチオンとして好ましく、又、Li+,Na+,K+等のアルカリ金属イオン及びMg2+,Ca2+等のアルカリ土類金属イオンが無機金属カチオンとして好適である。より好ましいのは、上記一般式(III)~(V)で表されるオニウムカチオン、あるいは、上記一般式(VII)~(IX)で表されるアンモニウム系化合物誘導体である。
 一方、好ましいアニオン[Xbm-としては、ハロゲン化物イオン、シアン化物イオン(CN)、水酸化物イオン(OH)、シアン酸イオン(OCN)、チオシアン酸イオン(SCN)、アルコキシイオン(RO)、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、アルキル硫酸イオン、アルキル炭酸イオン等が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン化物イオンが好適であり、ハロゲン化物イオンの中でも、ClまたはBrが特に好ましい。
 すなわち、イオン性物質KtXbとしては、上記[Kt]m+および[Xbm-の組合わせからなるものが好ましく用いられるが、特に好ましいものとしては、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、トリエチルメチルアンモニウムフルオリド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド及びトリエチルメチルアンモニウムブロミド等の鎖状第4級アンモニウムとハロゲン化物イオンとの塩、トリエチルアンモニウムフルオリド、トリエチルアンモニウムクロリド、トリエチルアンモニウムブロミド、ジブチルメチルアンモニウムフルオリド、ジブチルメチルアンモニウムクロリド、ジブチルメチルアンモニウムブロミド、ジメチルエチルアンモニウムフルオリド、ジメチルエチルアンモニウムクロリド及びジメチルエチルアンモニウムブロミド等の鎖状第3級アンモニウムとハロゲン化物イオンとの塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムフルオリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-エチルイミダゾリウムブロミド、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムフルオリド、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムクロリド及び1,2,3-トリメチルイミダゾリウムブロミド等のイミダゾリウムとハロゲン化物イオンとの塩、N,N-ジメチルピロリジニウムフルオリド、N,N-ジメチルピロリジニウムクロリド、N,N-ジメチルピロリジニウムブロミド、N-エチル-N-メチルピロリジニウムフルオリド、N-エチル-N-メチルピロリジニウムクロリド、N-エチル-N-メチルピロリジニウムブロミド等のピロリジニウムとハロゲン化物イオンとの塩が挙げられる。また、イオン性物質として、Li+、Na+、K+等のアルカリ金属イオンとハロゲン化物イオンとの塩Ktabを用いてもよい。なお、Fに由来する不純物量を低減する観点からは、上記イオン性物質の内、F原子を含有しないものを採用することが推奨される。
 上記イオン性物質KtXbは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 カチオン交換反応は、上記本発明第1~第4の製造方法により得られたイオン性化合物と所望のカチオンを有するイオン性物質KtXbと反応させればよい。
 この場合、カチオン交換反応を行う際の上記イオン性化合物Kt[B(CN)4mとイオン性物質KtXbとの配合割合は、50:1~1:50(イオン性化合物Kt[B(CN)4m:イオン性物質KtXb、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは20:1~1:20であり、さらに好ましくは10:1~1:10である。イオン性物質が少なすぎる場合には、有機カチオンの交換反応が速やかに進行し難い場合があり、一方、過剰に用いると、未反応のイオン性物質が生成物に混入し、精製が困難になる傾向がある。
 有機カチオンの交換反応は、溶媒の存在下、イオン性化合物Kt[B(CN)4mとイオン性物質KtXbとを混合すればよく、この際の温度としては、0℃~200℃(より好ましくは10℃~100℃)であり、0.1時間~48時間(より好ましくは0.1時間~24時間)反応させればよい。溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、2-ブタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、などのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどの塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族系溶媒、へキサンなどの脂肪族炭化水素系等の有機溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒は、単独で用いても、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、2種以上の反応溶媒を使用することは上記反応の好ましい条件の一つである。
 ≪イオン性化合物の製造方法-酸化剤処理≫
 本発明の製造方法は、さらに、上記第1から第4の製造方法により得られた生成物(イオン性化合物)と、酸化剤とを接触させる工程を含むものであるのが好ましい。上記第1から第4の製造方法に続けてカチオン交換反応を行う場合、生成物であるイオン性化合物と酸化剤との接触は、カチオン交換反応前後のいずれで行ってもよく、また、カチオン交換反応前後の両方で行ってもよい。
 上述のように、イオン性化合物中に含まれる不純なイオン成分は、イオン性化合物が用いられる電気化学デバイスやその周辺部材を劣化させ、ひいては、電気化学デバイスの性能を低下させる虞がある。また、本発明の製造方法では、シアン化物Ma(CN)n(第1の製造方法)、シアン化アンモニウム(第2の製造方法)、TMSCN(第3の製造方法)やシアン化水素(第4の製造方法)を出発原料としている。したがって、生成物中に遊離のシアン化物イオン(CN)などの出発原料に由来する成分が残留したり、製造過程で不可避的に混入する不純物が存在することがある。本発明に係るイオン性化合物は、電気化学デバイスの構成材料に用いられる場合があり、イオン性化合物中に存在するCNなどの不純物は、イオン伝導性能の低下や電極の腐食を起こし、電気化学性能を劣化させる原因となる。
 そこで、イオン性化合物中におけるこれら不純なイオン成分の含有量を低減することについて検討を重ねた。一般に有機化合物は酸化剤の存在下において酸化分解し易く、テトラシアノボレート(TCB:[B(CN)4)をアニオンとするイオン性化合物も、同様に酸化分解するものと考えられていた。したがって、イオン性化合物中の不純なイオン成分は、NaOH水溶液などを使用した抽出処理によりアルカリ金属塩(NaCN、NaCl)として、水層に移して除去していたが、シアン化物イオン(CN)は弱酸であり、アルカリ金属との塩の水への溶解度はそれほど高くないため抽出効率が低かった。また、不純物量を充分に低減するためには、抽出操作を複数回繰返す必要があり、イオン性化合物の収率を低減させるという問題があった。
 ところが、TCBをアニオンとするイオン性化合物は、意外にも一般的な有機化合物に比べて酸化剤に対する安定性が高く、したがって、合成後のイオン性化合物を酸化剤と接触させることで、生成物中に含まれる過剰なシアン化物イオン(CN)を分解でき、さらには、出発原料や合成工程で不可避的に混入する不純物の含有量も低減できることを本発明者らは見出した。
 特に、トリメチルシリルシアニドとホウ素化合物とを反応させて得られた生成物と、酸化剤とを接触させる場合には、ケイ素、ハロゲン化物イオンなどの不純物や水分量が低減された高純度イオン性化合物が得られる。
 <酸化剤処理>
 上記酸化剤処理に用いる酸化剤としては、過酸化水素、過塩素酸ナトリウム、過酢酸、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)などの過酸化物、過マンガン酸カリウム、酸化マンガンなどのマンガン化合物、二クロム酸カリウムなどのクロム化合物、塩素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素などの含ハロゲン化合物、硝酸、クロラミンなどの無機窒素化合物、酢酸、四酸化オスミウムなどが挙げられる。これらの中でも過酸化物が好ましく、過酸化水素、過塩素酸ナトリウムがより好ましい。特に、酸化剤に過酸化水素を用いた場合には、塩化物イオン(Cl)、シアン酸イオン(NCO)などの不純物が過酸化水素水層に効率よく分配され、イオン性化合物の抽出効率が向上するので特に好ましい。また、過酸化水素を用いた場合には、不純物のうち吸湿性のものや、水和しやすい成分が過酸化水素水層に効率よく分配されるため、イオン性化合物の純度が上がると同時に、イオン性化合物中の水分量も容易に低減できる。
 上記酸化剤は、固体状であっても液体状であってもよく、固体状の場合は溶媒に溶解させて用いてもよい。また、液体状の酸化剤、固体状の酸化剤を溶媒に溶解させた酸化剤溶液は、さらにこれを希釈して用いてもよい。
 酸化剤の使用量は、粗イオン性化合物中に含まれる不純物量(特にCNなど)にもよるが、粗イオン性化合物100質量部当たり、1質量部~1000質量部であるのが好ましく、より好ましくは10質量部~500質量部であり、さらに好ましくは20質量部~300質量部であり、特に50質量部~100質量部であるのが好ましい。尚、酸化剤量が多すぎる場合にはイオン性化合物が分解してしまう虞があり、一方、少なすぎる場合には、過剰なイオン成分や不純物を充分に低減させ難い場合がある。なお、上記「粗イオン性化合物」とは、合成後の反応溶液から溶媒を留去して得られる成分を意味する。但し、酸化剤処理は、合成後、あるいは、後述する他の精製処理後、反応溶媒などを留去することなく、そのまま行ってもよい。
 酸化剤処理は、粗イオン性化合物と酸化剤とが接触する限り特に限定されず、合成後の粗イオン性化合物をそのまま酸化剤と接触させてもよいし、また、粗イオン性化合物溶液を調製し、この粗イオン性化合物溶液と酸化剤とを混合して接触させてもよい。すなわち、接触の態様としては、粗イオン性化合物溶液に固体状の酸化剤を添加して、両者を接触させる態様;粗イオン性化合物溶液と酸化剤溶液とを混合して、両者を接触させる態様;固体状の粗イオン性化合物を酸化剤溶液に添加して、両者を接触させる態様;が挙げられる。なお、粗イオン性化合物を溶解させる溶媒としては、後述する活性炭処理に用いられる溶媒が好適である。
 上述のように、本発明のイオン性化合物は、一般的な有機物に比べて酸化剤に対する耐性は高いが、酸化剤との過剰な接触はイオン性化合物の分解の原因となる。したがって、イオン性化合物の分解を抑制する観点からは、酸化剤処理は、低温且つ短時間で行うことが推奨される。例えば、酸化剤処理は、イオン性化合物を合成する際の反応温度以下とするのが好適であり、さらに、溶剤の沸点以下とするのが好ましい。具体的には、0℃~150℃であるのが好ましく、より好ましくは0℃~130℃であり、さらに好ましくは10℃~100℃であり、特に10℃~80℃であるのが望ましい。
 <その他の精製方法>
 本発明の製造方法では、イオン性化合物中の不純物量を一層低減させるため、上記酸化剤処理以外の従来公知の精製方法を採用してもよい。従来公知の精製方法としては、例えば、水、有機溶媒、およびこれらの混合溶媒での洗浄;吸着精製法;再沈殿法;分液抽出法;再結晶法;晶析法;クロマトグラフィーによる精製法などが挙げられる。これらの精製法は組み合わせて行ってもよい。
 他の精製方法を併用する場合、その実施時期は特に限定されず、粗イオン性化合物と酸化剤との接触前;粗イオン性化合物と酸化剤との接触後;粗イオン性化合物と酸化剤との接触前と後の両方;のいずれの態様も採用できる。
 例えば、吸着精製法を採用する場合、吸着剤としては、活性炭、シリカゲル、アルミナ、ゼオライトなどが挙げられる。これらの中でも活性炭を吸着剤とする吸着処理(活性炭処理)は、イオン性化合物への不純物の混入が少ないため好ましい。
 吸着処理に使用可能な活性炭は特に限定されない。活性炭の形状としては、表面積の広いものであれば特に限定されず、粉末状、粉砕状、顆粒状、造粒状および球状等が挙げられるが、これらの中でも表面積の広さから粉末状の活性炭を用いるのが好ましい。また、活性炭は、表面積が100m2/g以上のものが好ましく、より好ましくは400m2/g以上のものであり、特に800m2/g以上のものが好ましい。なお、活性炭中に含まれる不純物がイオン性化合物中に混入するのを避けるためには、不純物含有量の少ない活性炭を用いるのが好ましく、かかる活性炭の一例としては、日本エンバイロケミカルズ株式会社製のカルボラフィン(登録商標)-6が挙げられる。
 活性炭の使用量は、粗イオン性化合物100質量部に対して1質量部以上、500質量部以下とするのが好ましく、より好ましくは10質量部以上、300質量部以下、さらに好ましくは20質量部以上、200質量部以下である。
 なお、活性炭処理は、合成直後、酸化剤処理前の粗イオン性化合物に対して行うのが好ましい。また、活性炭処理による効果を効果的に得る観点からは、粗イオン性化合物は、溶媒に溶解あるいは分散させて活性炭処理に供することが推奨される。
 活性炭処理時に使用可能な溶媒としては、特に限定されないが、粗イオン性化合物を溶解させられる溶剤であるのが好ましい。例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、tert-アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-メチル-3-ヘキサノール、2,4-ジメチル-3-ペンタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、2-エチル-ノナノール、2,4,4-トリメチル-1-ペンタノール、1-ノナノール、2-ノナノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-デカノール、4-デカノール、および、3,7-ジメチル-1-オクタノールなどの脂肪族モノアルコール類、シクロペンタノール、シクロへキサノールなどの脂環式モノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,2-ジヒドロキシ-3-ブテンおよびグリセリンなどの多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびメチルイソプロピルケトンなどのケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、テトラヒドロフランおよびテトラヒドロピランなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどのエステル類;n-ペンタン、n-へキサン、メチルペンタン、n-ヘプタン、メチルへキサン、ジメチルペンタン、n-オクタン、メチルヘプタン、ジメチルへキサン、トリメチルペンタン、ジメチルヘプタン、n-デカンなどの直鎖状、あるいは、分岐状の脂肪族飽和炭化水素類;1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテンなどの直鎖状、あるいは、分岐状の脂肪族不飽和炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサンなどの脂環式化合物類;クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、および、テトラクロロエチレンなどの含ハロゲン溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサンニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。これらの中でも、水、ケトン類、エーテル類、エステル類、脂肪族飽和炭化水素および含ハロゲン溶媒が挙げられる。これらの中でも、水、メチルエチルケトン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、酢酸ブチル、およびヘキサンが好ましい。上記溶媒は単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いるのが好ましい。尚、活性炭処理に用いる水は、フィルターやイオン交換膜、逆浸透膜など、各種ろ材を備えた超純水装置で処理した、超純水(イオン抵抗1.0Ω・cm以上)であるのが好ましい。
 活性炭処理に用いる溶媒の使用量は、粗イオン性化合物100質量部に対して、10質量部以上、2000質量部以下とするのが好ましく、より好ましくは100質量部以上、1000質量部以下であり、さらに好ましくは200質量部以上、1000質量部以下である。溶剤量が多すぎる場合は、反応装置が大きくなり、コストが嵩む上に、収率が下がる傾向にあり、経済的な利点が低い。一方、使用量が少なすぎる場合には、イオン性化合物の純度が低下する場合がある。なお、活性炭処理後のイオン性化合物溶液は、そのまま酸化剤処理に供することができる。
 上述のように、合成後の粗イオン性化合物を活性炭処理に供した後、酸化剤処理を行うのは本発明の推奨される実施態様の一つである。また、酸化剤処理の後に、さらに上述の他の精製法を採用してもよく、好ましくは水、有機溶媒、およびこれらの混合溶媒での洗浄、分液抽出を行うことが望ましい。
 このとき使用する溶媒としては、上記活性炭処理において例示した溶媒と2層状態を形成し得る溶媒であるのが好ましい。例えば、上記活性炭処理において有機溶媒を用いる場合には、洗浄、分液抽出において水を用いるのが好ましい。水を用いることにより、アルカリ金属イオンおよびハロゲン化物イオンを効率的に水層に抽出でき、イオン性化合物からこれらのイオン成分を除去することができる。なお、好ましい抽出溶媒の組み合わせとしては、水と層分離すること、および、イオン性化合物の回収率の観点から、水/ヘキサン、水/メチルエチルケトン、水/メチルイソブチルケトン、水/ジメチルエーテル、水/ジエチルエーテル、水/酢酸エチル、水/酢酸ブチル、および、水/ジクロロメタンの組み合わせが挙げられ、これらの中でも、水/酢酸エチル、水/酢酸ブチル、水/メチルイソブチルケトン、水/ジエチルエーテルの組み合わせが好ましく、より好ましいのは、水/酢酸エチル、水/酢酸ブチル、水/ジエチルエーテルの組み合わせである。
 上記酸化剤処理を採用する本発明によれば、不純なイオン成分含有量が低く純度の高いイオン性化合物を得ることができる。
 ≪用途≫
 本発明に係るイオン性化合物Kt[B(CN)4mは、カチオン[Kt]m+を選択することで、100℃以下で液体の状態をとるイオン性液体となる点が特徴の一つとして挙げられる。したがって、上記製造方法により得られる本発明に係るイオン性化合物は、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池などの充放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池、エレクトロクロミック表示素子、電気化学式ガスセンサなどの電気化学デバイスを構成する材料として好適に用いられる。
 また、一般にイオン性液体は、イオン性の結合を持つ液体であるという特徴から、電気化学的、熱的安定性が高く、さらに、二酸化炭素などの特定のガスを選択的に吸収する性質を有することも知られており、上記本発明の製造方法により得られるイオン性化合物も、これらと同様の特徴を有する。
 したがって、本発明に係るイオン性化合物の用途としては、先に挙げた電気化学材料用途の他にも、熱的安定性が高いことを利用した、繰り返し利用可能な有機合成の反応溶媒や、機械可動部のシール剤や潤滑剤としての使用;電気化学特性と熱的安定性とを併せ持つことを利用したポリマーへの導電性付与剤としての使用;ガス吸収能を有することから二酸化炭素などのガス吸収剤としての使用:など様々な用途に好適に用いられる。
 次に、本発明のイオン性化合物を上記電気化学デバイスのイオン伝導性材料として用いる場合について説明する。
  〔イオン伝導性材料〕
 上述のように、本発明のイオン性化合物は、[B-(CN)4で表されるテトラシアノボレートをアニオンとして含むものであるが、上記アニオン以外に、下記一般式(XVI)で表されるアニオンを有するイオン性化合物を含むイオン伝導性材料も本発明に含まれる。
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(式(XVI)中、Xは、Al,Si,P,GaおよびGeから選ばれる少なくとも1種の元素を指す。vは、4から6の整数である)。
 本発明のイオン伝導性材料は、アニオン成分として、テトラシアノボレート、あるいは、テトラシアノボレートと上記一般式(XVI)で表されるアニオンとを有するイオン性化合物を含むものであり、且つ、上記アニオン成分が、分子軌道計算法を用いた最高被占位軌道エネルギー準位が-5.5eV以下であるのが好ましい。
 計算化学的手法を用いたイオン伝導性材料の検討はJournal of The Electrochemical Society,149(12)A1572-A1577(2002)でもなされており、ここでは、高耐電圧の化合物を得るための指標として分子軌道計算法を用いて各種アニオンの最高被占位軌道エネルギー準位を計算している。この文献では、最高被占位軌道エネルギー準位が低く、電位窓が広いアニオンとしてPF6 、AsF6 などが報告されている。しかしながら、これらのアニオンを含む化合物は、その構造中に含まれるフッ素原子が経時的に脱離して電極を腐食させたり、系中に含まれる微量な水分と反応して有害なフッ化水素ガスを発生したり、As自体が毒物であるといった問題がある。一方、本発明のイオン性化合物は、上述のようにフッ素原子などの不純物の含有量が低減されており、その構造にも、合成工程にもAsは含まれないため、電極腐食などの問題は生じ難い。また、本発明に係るアニオン成分は、PF6 、AsF6 と同等の最高被占位軌道エネルギー準位を有し、電位窓が広いため、イオン伝導体として好適に用いられる。
 上記式(XVI)中、vは、4から6の整数であり、元素Xの価数によって決まる。例えば、XがAlもしくはGa元素の場合、v=4であり、XがSiもしくはGe元素の場合はv=5である。また、XがP元素の場合、v=6となる。すなわち本発明のイオン伝導性材料の好ましい形態は、テトラシアノボレートおよび/又は上記一般式(XVI)で表されるアニオン成分を有するイオン性化合物を必須とするものである。アニオン成分としては、テトラシアノボレート、XがAlであり、v=4である一般式(XVI)のアニオンが好ましく、テトラシアノボレートがアニオン成分として最も好ましい。
 本発明のイオン伝導性材料に含まれるアニオン成分(テトラシアノボレート及び上記一般式(XVI)のアニオン成分)の分子軌道計算法を用いた最高被占位軌道エネルギー準位は、-5.5eV以下であるのが好ましく、より好ましくは-5.6eV以下であり、特に好ましくは-5.7eV以下である。
 また、上記イオン伝導性材料は、腐食性や有害性の観点から、組成中にF原子およびAs元素を含まないものが好ましい。さらに、同様の理由でSb元素も含まないものが好ましい。尚、上記イオン伝導性材料に含まれるアニオン成分は1種のみでもよいし、2種以上のアニオン成分が含まれていてもよい。
 本発明のイオン伝導性材料に含まれるカチオンとしては、テトラシアノボレートおよび一般式(XVI)で表されるアニオンと塩を形成できるものであれば、有機カチオン、無機カチオンのいずれであってもよく特に限定されないが、オニウムカチオンが好適である。オニウムカチオンとしては、上記(III)~(V)で表されるオニウムカチオンが挙げられる。この場合、イオン伝導性材料の好ましい用途として、電気二重層キャパシタや電解コンデンサなどが挙げられる。
 上記イオン伝導性材料を電気二重層キャパシタや電解コンデンサなどの電解液用材料として用いる場合、電解液用材料100質量%中のイオン伝導性材料の量は1質量%以上であるのが好ましく、99.5質量%以下であるのが好ましい。より好ましくは5質量%以上であり、95質量%以下である。更に好ましくは10質量%以上であり、90質量%以下である。
 上述のように、本発明のイオン性化合物およびイオン伝導性材料は、各種電気化学デバイスに備えられるイオン伝導体において、電解液を構成する電解質や固体電解質として機能することができる。なお、これらの電解液や固体電解質は、本発明のイオン伝導性材料に加えて、他の電解質塩を含んでいてもよい。
 他の電解質塩としては、キャリアーとしたいイオンを含んだ電解質を用いればよく、1種又は2種以上を用いることができるが、電解液中や高分子固体電解質中での解離定数が大きいことが好ましく、例えば、LiCF3SO3、NaCF3SO3、KCF3SO3等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiC(CF3SO23、LiN(CF3CF2SO22、LiN(FSO22等のパーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiPF6、NaPF6、KPF6等のヘキサフロロリン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiClO4、NaClO4等の過塩素酸アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiBF4、NaBF4等のテトラフロロ硼酸塩;LiAsF6、LiI、NaI、NaAsF6、KI等のアルカリ金属塩;過塩素酸テトラエチルアンモニウム等の過塩素酸の四級アンモニウム塩;(C254NBF4等のテトラフロロ硼酸の四級アンモニウム塩、(C254NPF6等の四級アンモニウム塩;(CH34P・BF4、(C254P・BF4等の四級ホスホニウム塩などが好適である。これらの中でも、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が好適である。また、有機溶媒中での溶解性、イオン伝導度からは、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、パーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、四級アンモニウム塩が好ましい。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましくは、リチウム塩である。
 上記他の電解質塩の存在量としては、本発明のイオン伝導性材料と他の電解質塩との合計100質量%に対して、下限値が0.1質量%、上限値が50質量%であることが好適である。0.1質量%未満であると、イオンの絶対量が充分なものとはならず、イオン伝導度が小さくなるおそれがあり、50質量%を超えると、イオンの移動が大きく阻害されるおそれがある。より好ましい上限値は30質量%である。
 本発明のイオン伝導性材料の用途としては、例えば、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、太陽電池、エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイス等が挙げられる。これらは、一般的に、基本構成要素として、イオン伝導体、負極、正極、集電体、セパレータ及び容器を有するものである。
 上記イオン伝導体としては、電解質と有機溶媒との混合物が好適である。有機溶媒を用いれば、一般にこのイオン伝導体は電解液と呼ばれるものになる。
 有機溶媒としては、上記イオン伝導性材料などを溶解できる非プロトン性の溶媒であれば良い。上記非プロトン性の溶媒としては、本発明のイオン伝導性材料との相溶性が良好であって、誘電率が大きく、他の電解質塩の溶解性が高いうえに、沸点が60℃以上であり、電気化学的安定範囲が広い化合物が好適である。より好ましくは、含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)である。このような有機溶媒としては、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ-テル、ジオキサン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル類;炭酸エチレン、炭酸プロピレン、2,3-ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、2-ビニル炭酸エチレン等の環状炭酸エステル類;蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等の脂肪族カルボン酸エステル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のカルボン酸エステル類;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサンニトリル、ベンゾニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2-メチルグルタロニトリル等のニトリル類;N-メチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4ジメチルスルホラン等の硫黄化合物類:エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,6-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ニトロメタン、1,3-ジメチル-2イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、3-メチル-2-オキサゾリジノン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好適である。これらの中でも、炭酸エステル類、脂肪族エステル類、エーテル類がより好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類やγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどが更に好ましい。
 上記イオン伝導体中における電解質濃度としては、0.01mol/dm3以上が好ましく、また、飽和濃度以下が好ましい。0.01mol/dm3未満であると、イオン伝導度が低いため好ましくない。より好ましくは、0.1mol/dm3以上、また、2.5mol/dm3以下である。
 本発明のイオン伝導性材料をリチウムイオン電池の電解質として用いる場合には、2種類以上の非プロトン溶媒に溶解することが好ましい。この場合は、これらの有機溶媒のうち誘電率が20以上の非プロトン性溶媒と誘電率が10以下の非プロトン性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより電解液を調製することが好ましい。
 本発明のイオン伝導性材料を上記非プロトン性溶媒、例えばプロピレンカーボネートに溶解させ、電解液とした際には、1mol/Lの濃度において25℃でイオン伝導度が0.5mS/cm以上であることが好ましい。25℃におけるイオン伝導度が0.5mS/cm未満の場合には、本発明のイオン伝導性材料を用いてなるイオン伝導体が、長期に亘って、優れたイオン伝導度を保ち、且つ、安定に機能できなくなる虞がある。より好ましくは、1.0mS/cm以上である。
 本発明のイオン伝導性材料は、Ag/Ag+を基準とした耐電圧が4V~500Vであることが好ましい。より好ましくは5V-500Vである。上述したように、分子軌道計算の計算により最高被占位軌道エネルギー準位が-5.5eV以下であるアニオンを含むことにより、高い耐電圧を示すことが可能である。
 以下に本発明に係るイオン伝導体を用いてなる電気化学素子の内、(1)リチウム二次電池、(2)電解コンデンサ、(3)電気二重層キャパシタ、及び、(4)リチウムイオンキャパシタについてより詳しく説明する。
 (1)リチウム二次電池
 リチウム二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータ及び本発明のイオン伝導性材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されるものである。この場合、本発明に係る電解液用材料には電解質としてリチウム塩が含有されていることになる。このようなリチウム二次電池としては、水電解質以外のリチウム二次電池である非水電解質リチウム二次電池であることが好ましい。このリチウム二次電池は、後述する負極活物質としてコークスを用い、正極活物質としてCoを含有する化合物を用いたものであるが、このようなリチウム二次電池おいて、充電時には、負極においてC6Li→6C+Li+eの反応が起こり、負極表面で発生した電子(e)は、電解液中をイオン伝導して正極表面に移動し、正極表面では、CoO2+Li+e→LiCoO2の反応が起こり、負極から正極へ電流が流れることになる。放電時には、充電時の逆反応が起こり、正極から負極へ電流が流れることになる。このように、イオンによる化学反応により電気を蓄えたり、供給したりすることとなる。
 上記負極としては、従来公知の負極に用いられる材料を用いることができ、特には限定されないが、例えば、天然黒鉛及び人工黒鉛等の黒鉛、コークス、有機物焼成体等の炭素材料や、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、リチウム-タリウム合金、リチウム-鉛合金、リチウム-ビスマス合金等のリチウム合金や、チタン、錫、鉄、モリブデン、ニオブ、バナジウム及び亜鉛等の1種若しくは2種以上を含む金属酸化物並びに金属硫化物が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる金属リチウムや炭素材料がより好ましい。
 上記正極としては、従来公知の正極に用いられる材料を用いることができ、特には限定されないが、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiFeO2、LiFePO4等のリチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。正極活物質粒子の平均粒径としては、0.1~30μmであることが好ましい。
 (2)電解コンデンサ
 電解コンデンサは、陽極箔、陰極箔、陽極箔と陰極箔との間に挟まれたセパレータである電解紙、リード線及び本発明のイオン伝導性材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されているものである。このような電解コンデンサとしては、アルミ電解コンデンサが好適である。このようなアルミ電解コンデンサとしては、電解エッチングで細かな凹凸を作って粗面化したアルミ箔の表面に電解陽極酸化によって形成した薄い酸化被膜(酸化アルミニウム)を誘電体とするものが好適である。
 (3)電気二重層キャパシタ
 電気二重層キャパシタは、負極、正極及び本発明のイオン伝導性材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されているものであり、好ましい形態としては、対向配置した正極及び負極からなる電極素子に、イオン伝導体である電解液を含ませたものである。
 上記負極としては、活性炭、多孔質金属酸化物、多孔質金属、導電性重合体が好適である。また上記正極としては活性炭、多孔質金属酸化物、多孔質金属、導電性重合体が好適である。
 (4)リチウムイオンキャパシタ
 リチウムイオンキャパシタとは、一般的な電気二重層キャパシタの原理を使いながら負極材料としてリチウムイオン吸蔵可能な炭素系材料を使い、そこにリチウムイオンを添加することでエネルギー密度を向上させたキャパシタであり、正極と負極とで充放電の原理が異なり、リチウムイオン二次電池の負極と電気二重層の正極を組み合わせた構造を持っている。
 上記負極としてはリチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料等が好適である。上記リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料としては、熱分解炭素;ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス;グラファイト;ガラス状炭素;フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したものである有機高分子化合物焼成体;炭素繊維;活性炭素等の炭素材料;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアセン等のポリマー;Li4/3Ti5/3O4、TiS2等のリチウム含有遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物;アルカリ金属と合金化するAl、Pb、Sn、Bi、Si等の金属;アルカリ金属を格子間に挿入することのできる、AlSb、Mg2Si、NiSi2等の立方晶系の金属間化合物や、Li3-ffN(G:遷移金属、f:0超0.8未満の実数)等のリチウム窒素化合物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、炭素材料がより好ましい。
 また上記正極としては活性炭、多孔質金属酸化物、多孔質金属、導電性重合体が好適である。本発明のイオン伝導性材料を用いたイオン伝導体は、上記負極及び正極の間に備えられる電解液を構成する。
 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
 [NMR測定]
 Varian社製「Unity Plus」(400MHz)を用いて、1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルを測定し、プロトンおよびカーボンのピーク強度に基づいて試料の構造を分析した。11B-NMRスペクトルの測定には、Bruker社製「Advance 400M」(400MHz)を使用した。
 F原子を含有する不純物の含有量は、以下の方法により求めた。溶媒としてd6-DMSOを用いて、11B-NMR測定を行った。得られた11B-NMRスペクトルにおいて、-38ppmにあるB(CN)4に由来するピークの面積を100mol%とし、このピーク面積と、それ以外のピーク(不純物由来)面積とを相対的に比較して、不純物のモル数(モル百分率(mol%)を算出した。
 [イオン伝導度の測定]
 下記実施例で得られたイオン性化合物をγ-ブチロラクトン(GBL)に溶解させ、濃度35質量%のイオン性化合物溶液を調製した。
 インピーダンスアナライザー(ソーラトロン社製「SI1260」)を用い、SUS電極を使用して、25℃の温度条件下、複素インピーダンス法により、イオン性化合物溶液のイオン電導度の測定を行った。
 [電位窓の測定]
 イオン伝導度の測定と同様にして35質量%のイオン性化合物溶液を調製した。
 25℃雰囲気下、3極セルを電極としてサイクリックボルタンメトリツール(北斗電工社製「HSV-100」)により、電位窓を測定した。なお、3極セルにおける作用極には、グラッシーカーボン電極、対象極にはPt電極を使用し、参照極にはAg電極を使用した。
 [熱分解開始温度の測定1]
 下記合成例で得られたイオン性化合物10mgをアルミパンに入れ、5℃/minで昇温し、初期質量から2%減少したときの温度を示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ社製「EXSTAR6000 TG/DTA」)を用いて測定した。
 実施例1
 実施例1では、出発原料にシアン化物Ma(CN)nを用いて、テトラシアノボレートを含むイオン性化合物を合成した。
 合成例1-1 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレート(Bu4NTCB)の合成
 攪拌装置、滴下漏斗、および、還流管を備えた容量50mlのフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下室温で、ここに、テトラブチルアンモニウムブロミド5.1mg(15.8mmol)、シアン化亜鉛(II)9.26g(78.9mmol)、トルエン10ml、三臭化ホウ素2.8g(11.2mmol)を加えた後、130℃のオイルバスで内容物を加熱しながら2日間攪拌した。2日後、フラスコ内のトルエンを減圧留去し、黒色固体を得た。得られた固体を乳鉢で粉砕した後、攪拌装置を備えたビーカーに入れ、ここにクロロホルム200mlを2回加えて、生成物をクロロホルム層に抽出した。次いで、得られたクロロホルム溶液を分液ロートに移し、200mlの水で洗浄した後、有機層を分離し、エバポレーターで濃縮し、油状の粗生成物を得た。これを、中性アルミナを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、ジエチルエーテルとクロロホルムの混合溶液)で精製し、生成物の含まれる留分を分取し、溶媒を留去し、乾固させて、生成物であるテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:1.4g(3.9mmol)収率:35%、融点:90℃)。
 1H-NMR(d6-DMSO):δ 3.16(m,8H),1.56(m,8H),1.30(ddq,J=11Hz,J=11Hz,J=7.2Hz,8H),0.92(t,J=7.2Hz、12H)
 13C-NMR(d6-DMSO):δ 121.9(m),57.7(s),39.1(s),19.4(s),13.7(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例1-2 1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EtMeImTCB)の合成
 テトラブチルアンモニウムブロミドの代わりに1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド3.0g(15.8mmol)を用いたこと以外は合成例1-1と同様の操作を行い、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートを得た(黄色油状物、収量:1.0g(4.4mmol)、収率:38%、融点:15℃)。
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 8.41(s,1H),7.34(d,J=21.6Hz,2H),3.81(s,3H),1.45(t,J=7.2Hz,3H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 136.5(s),132.2(m),122.9(s),45.8(s),36.8(s),15.4(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例1-3 トリエチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et3HNTCB)の合成
 テトラブチルアンモニウムブロミドの代わりにトリエチルアンモニウムブロミド2.9g(15.8mmol)を用いたこと以外は合成例1-1と同様の操作を行い、トリエチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:1.0g(4.5mmol)、収率:40%、融点:150℃)。
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 8.83(s,1H),3.10(q,J=7.2Hz,6H),1.17(t,J=7.2Hz,9H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 121.9(m),46.0(s),8.8(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例1-4 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et3MeNTCB)の合成
 テトラブチルアンモニウムブロミドの代わりにトリエチルメチルアンモニウムブロミド3.1g(15.8mmol)を用いたこと以外は合成例1-1と同様の操作を行い、トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:1.2g(5.0mmol)、収率:45%、融点:115℃)。
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 3.23(q,J=6.8Hz,6H),2.86(s,3H),1.18(t,J=6.8Hz,9H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 122.5(m),55.2(s),46.2(s),7.7(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例1-5 テトラエチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et4NTCB)の合成
 テトラブチルアンモニウムブロミドの代わりにテトラエチルアンモニウムブロミド3.3g(15.8mmol)を用いたこと以外は合成例1-1と同様の操作を行い、テトラエチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:1.1g(4.5mmol)、収率:40%)。
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 3.21(q,J=7.4Hz,8H),1.50(tt,J=7.4Hz,12H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 121.9(m),51.5(s),7.4(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例1-6 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレート(Bu4NTCB)の合成2
 テトラブチルアンモニウムブロミドの代わりにテトラブチルアンモニウムクロリド4.4g(15.8mmol)を用いたこと以外は合成例1-1と同様の操作を行い、テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:1.6g(4.5mmol)、収率:40%、融点:90℃)。
 生成物は、合成例1-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例1-7 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレート(Bu4NTCB)の合成3
 攪拌装置、滴下漏斗、および、還流管を備えた容量50mlのフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下室温で、ここに、テトラブチルアンモニウムブロミド5.1g(15.8mmol)、シアン化亜鉛(II)9.26g(78.9mmol)、1.0Mの三塩化ホウ素p-キシレン溶液11.2ml(11.2mmol)を加えた後、150℃のオイルバスで2日間内容物を加熱しながら攪拌した。2日後、フラスコ内の有機溶媒を減圧留去し、黒色固体を得た。得られた固体を乳鉢で粉砕した後、攪拌装置を備えたビーカーに入れ、ここにクロロホルム200mlを2回加えて、生成物をクロロホルム層に抽出した。次いで、得られたクロロホルム溶液を分液ロートに移し、200mlの水で洗浄した後、有機層を分離し、エバポレーターで濃縮し、油状の粗生成物を得た。これを、中性アルミナを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、ジエチルエーテルとクロロホルムの混合溶液)で精製し、生成物の含まれる留分を分取し、溶媒を留去し、乾固させて、生成物であるテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:2.4g(6.8mmol)収率:61%、融点:90℃)。
 生成物は、合成例1-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例1-8
 攪拌装置、滴下漏斗、および、還流管を備えた容量100mlの三口フラスコに、室温で、シアン化カリウム10.4g(160mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド10.2g(32mmol)、三臭化ホウ素5.7g(22.7mmol)およびトルエン18.9g(205mmol)を加えた後、130℃のオイルバスで内容物を加熱し還流させながら7日間攪拌した。7日後、フラスコ内のトルエンを減圧留去し、ここに100mlのクロロホルムを加え、室温で30分間攪拌した。次いで、溶液をろ過して沈殿物を除去した後、ろ液を濃縮し、油状の粗生成物を得た。これを、中性アルミナを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、ジエチルエーテル:クロロホルム=1:1(体積比))で精製したが、テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートは全く生成しておらず、出発原料であるテトラブチルアンモニウムブロミドが残存していることが確認された。
 また、上記沈殿物および精製物について、11B-NMRによる分析を行ったが、テトラシアノボレートに由来するピークは確認できなかった。
 尚、反応容器を密閉型の耐圧容器(容量:100ml、テフロン(登録商標)内筒、ステンレス鋼製)に変更して同様の反応を試みたが、やはり、生成物は得られなかった。
 各合成例で得られたイオン性化合物について、上記測定方法によって測定した各種物性を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000026
 以上の結果より、本発明の第1の製造方法によれば、アルカリ金属シアン化物を出発原料とする場合(反応温度:250℃)に比べて低い温度(130℃~150℃)で反応を進行させることができる。また、高価なトリメチルシリルシアニドを使用することなく、テトラシアノボレートを有するイオン性化合物を安定して得ることができる。
 実験例1~2、比較実験例1~4
 合成例1-2で合成した1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートと、不純物として1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EtMeImBF4)(有機合成用、和光純薬工業株式会社より入手)とを下記表2に示す組成で混合した混合物について、熱分解開始温度を測定した。なお、測定は、下記熱分解開始温度の測定2に従って行った。結果を表2に示す。
 [熱分解開始温度の測定2]
 下記表2に示す組成を有するイオン性化合物5mgをアルミパンに入れ、230℃までは10℃/min、230℃から350℃までは0.5℃/minで昇温し、初期質量から2%減少したときの温度を示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ社製「EXSTAR6000 TG/DTA」)を用いて測定した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000027
 表2より、フッ素原子を含む不純物の含有量が増加するにつれて、熱分解開始温度が低下しており、イオン性化合物にF原子を含む不純物に含まれる場合には、イオン性化合物に備わる特性(耐熱性)が損なわれることが分かる。
 さらに、比較実験例1の熱分解開始温度は、実験例1の熱分解開始温度と比べると20℃以上も低く、F原子を含む不純物の含有量が5mol%以上になると、高温条件下での材料耐久性が大きく損なわれることが分かる。これは、イオン性化合物に含まれていたB-F結合を持つ不純物が、空気中に存在する水分や酸素などのO原子と反応し分解したためと推測される。
 なお、フッ素原子を含む不純物の含有量が3mol%以下である実験例1,2においては、熱分解開始温度の低下が少ない。また、表1の結果から、電解液材料として好適に用いられることが分かる。
 実験例3
 末端水素基を有するエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体90部に、合成例1-2で合成した1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートを導電性付与剤として10部加え、温度70℃で加熱混練し、樹脂組成物を得た。
 次いで、熱可塑性樹脂であるメタクリル酸メチル重合体(分子量:約20万)100部に、先に得られた樹脂組成物20部を添加し、これをテストロール機(日新科学社製、「HR-2型」)中、温度100℃で加熱混練して、厚さ2mmの均一なシートを得た。
 表面抵抗測定器(三菱化学社製、「HT-210」)を用いて得られたシートの表面抵抗を測定したところ、9×107Ωであった。また、イオン性化合物のブリードも観測されなかった。
 実験例3の結果より、本発明のイオン性化合物は、導電性付与剤としても好適に使用できることが分かる。
 実験例4
 合成例1-2で合成した1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートの流動点、動粘度および摩擦係数を評価した。
 流動点の評価はJIS K2269-1987に準拠して行った。観測されたEtMeImTCBの流動点は、-20℃であった。動粘度の測定はJIS K2283-2000に準拠して行った。40℃におけるEtMeImTCBの動粘度は30cSt(3.0×10-52/s)であった。摩擦係数の測定は、振り子形摩擦試験機(神鋼造機社製、「曽田式振子形油性摩擦試験機」)を使用して行った。EtMeImTCBの摩擦係数は0.16であった。
 実験例4の結果より、本発明のイオン性化合物は、低温環境下でも流動性を保っており、また摩擦係数も低く潤滑剤としても好適であることが分かる。
 本発明のイオン性化合物は、F原子およびF原子を含有する不純物を含有量が極低レベルにまで低減されているため、これを各種用途に使用した場合にも周辺部材の腐食といった問題を生じることなく、安定した特性(熱的、物理的、電気化学的特性など)を発揮することができる。
 実施例2
 合成例2では、出発原料にシアン化アンモニウム化合物を用いて、テトラシアノボレートをアニオンとするイオン性化合物を合成した。
 原料合成:シアン化アンモニウムの合成1
 攪拌装置、及び、滴下漏斗を備えた容量2lのフラスコに、塩化メチレン200ml、テトラブチルアンモニウムスルホキシド67.6g(200mmol)を入れて攪拌した後、この溶液に4M NaOH水溶液50mlを加え、攪拌した。この塩化メチレン溶液に、予め、水20mlに溶解させたシアン化ナトリウム10g(204mmol)を滴下ロートより滴下して加えた後、室温(25℃)で、30分攪拌した。得られた懸濁液をろ過し、ろ液を濃縮し、油状の粗テトラブチルアンモニウムシアニド58.7gを得た。
 合成例2-1 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレート(Bu4NTCB)の合成1
 攪拌装置、滴下漏斗、及び、還流管を備えた容量50mlのフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下室温でテトラブチルアンモニウムブロミド0.64g(2.0mmol)、テトラブチルアンモニウムシアニド2.65g(9.9mmol)、三臭化ホウ素0.35g(1.4mmol)、トルエン1.4mlを加えた後、130℃のオイルバスで内容物を加熱しながら2日間攪拌した。2日後、フラスコ内のトルエンを減圧留去し、黒色固体を得た。
 この黒色固体を、攪拌装置を備えたビーカーに入れ、ここにクロロホルム100ml、水100mlを加え、分液ロートでクロロホルム層を抽出し、さらにクロロホルム層を100mlの水で2回分液洗浄した後、クロロホルム層を減圧下で濃縮し、油状の粗生成物を得た。これを中性アルミナを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジエチルエーテルとクロロホルムの混合溶媒)で精製し、生成物の含まれる留分を分取し、溶媒を留去し、乾固させて、生成物であるテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:0.39g(1.4mmol)、収率:77%、融点:90℃)。
 得られたイオン性化合物であるテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートについて、上記測定方法によって各種物性を測定した。結果を以下に示す。尚、生成物は、合成例1-1と同様のNMRスペクトルを示していた。
 イオン伝導度(25℃):0.009S/cm
 熱分解開始温度:210℃
 電位窓:-3.2V~2.0V
 1H-NMR(d6-DMSO):δ3.16(m,8H),1.56(m,8H),1.30(ddq,J=11Hz,J=11Hz,J=7.2Hz,8H),0.92(t,J=7.2Hz、12H)
 13C-NMR(d6-DMSO):δ121.9(m),57.7(s),39.1(s),19.4(s),13.7(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ-39.6(s)
 合成例2-2 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成2
 三臭化ホウ素の代わりに三塩化ホウ素1.4ml(1.4mmol、1M p-キシレン溶液、アルドリッチ社製)を用い、トルエンを用いなかったこと以外は、合成例2-1と同様の操作を行い、生成物であるテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:0.21g(0.6mmol)、収率:42%、融点:90℃)。
 生成物は、合成例2-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例2-3 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成3
 テトラブチルアンモニウムブロミドを用いなかったこと以外は合成例2-2と同様の操作を行い、生成物であるテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:0.18g(0.5mmol)、収率:35%、融点:90℃)。
 生成物は、合成例2-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例2-4 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成4
 攪拌装置、滴下漏斗、及び、還流管を備えた容量50mlのフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下室温でテトラブチルアンモニウムブロミド0.64g(2.0mmol)、テトラブチルアンモニウムシアニド1.65g(6.2mmol)、ホウ酸トリエチル0.20g(1.4mmol)、ジメチルスルホキシド1.4mlを加えた後、170℃のオイルバスで内容物を加熱しながら2日間攪拌した。2日後、フラスコ内の有機溶媒を減圧留去し、黒色固体を得た。
 この黒色固体を、攪拌装置を備えたビーカーに入れ、ここにクロロホルム100ml、水100mlを加え、分液ロートでクロロホルム層を抽出し、さらにクロロホルム層を100mlの水で2回分液洗浄した後、クロロホルム層を減圧下で濃縮し、油状の粗生成物を得た。これを、中性アルミナを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジエチルエーテルとクロロホルムの混合溶媒)で精製し、生成物の含まれる留分を分取し、溶媒を留去し、乾固させて、生成物であるテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(黄色固体、収量:0.1g(0.3mmol)、収率:20%、融点:90℃)。
 生成物は、合成例2-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例2-5 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成5
 攪拌装置、滴下漏斗、及び、還流管を備えた容量2lのフラスコに、原料合成で得られた未精製のテトラブチルアンモニウムシアニド58.7g、テトラブチルアンモニウムブロミド11.6g(36.3mmol)を加え、フラスコ内を窒素置換した後、滴下漏斗より1M三塩化ホウ素 p-キシレン溶液26ml(26mmol)を室温で系内に滴下した。反応液を150℃に加熱しながら2日間攪拌した後、溶媒を留去し、得られた残渣を、中性アルミナを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロエタンとジエチルエーテルを1:1(体積比)で混合した混合溶媒)により精製し、テトラブチルアンモニウムシアノボレートを得た(収量:3.2g(9mmol)、収率:35%)。
 生成物は、合成例2-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例2-6 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成6
 攪拌装置、滴下漏斗、及び、還流管を備えた容量50mlのフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下、室温で、テトラブチルアンモニウムブロミド0.65g(2.0mmol)、テトラブチルアンモニウムシアニド2.98g(11.0mmol)および1M三塩化ホウ素 p-キシレン溶液2.0ml(2.0mmol)を加えた後、150℃のオイルバスで内容物を加熱しながら2日間攪拌した。その後、溶媒を留去して黒色の個体を得た。
 得られた粗生成物を、10質量%の酢酸エチル溶液とし、ここに、活性炭2.1g(カルボラフィン(登録商標)-6、日本エンバイロケミカルズ株式会社製)を加え、室温で30分間攪拌した。その後、得られた活性炭懸濁液を、メンブレンフィルター(0.2μm、PTFE製、親水性)でろ過し、フィルター上の活性炭を6.5gの酢酸エチルに分散させ、50℃で10分間攪拌し、再びろ過する操作を5回繰り返した。得られたろ液と、洗浄液とを合わせて、ここから溶媒を留去し、乾燥し、褐色個体を得た。
 次いで、得られた褐色固体に、過酸化水素水(30質量%水溶液)を0.7g加え50℃で60分間攪拌した。得られた溶液に酢酸ブチル3gを加え、室温で30分間攪拌し、分散状態とした後、遠心分離用の容器に移した後、容器を90秒間振とうし、これを遠心分離した(1700ppm、10分間)。その後、上層(酢酸ブチル層)を濃縮し、得られた淡黄色固体を減圧下、80℃で30分間粗乾燥させた後、この粗生成物を乳鉢で粉砕し粉末とした。この粉末をバット上に広げ、更に減圧下、80℃で3日間乾燥させて、目的物であるテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量0.36g(1.0mmol)、収率50%)。
 生成物は、合成例2-1と同様のNMRスペクトルおよび各種物性を示していた。
 合成例2-7 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 テトラブチルアンモニウムブロミドを用いなかったこと、テトラブチルアンモニウムシアニドの代わりにトリエチルメチルアンモニウムシアニド1.56g(11mmol)を用いたこと以外は合成例14と同様の操作を行い、生成物としてトリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et3MeNTCB)を得た(淡黄色固体、収量:0.23g(1mmol)、収率:50%、融点:115℃)。生成物は、合成例1-4と同様のNMRデータを示していた。
 本発明第2の製造方法によれば、200℃以下の反応温度条件下においてもテトラシアノボレートを有するイオン性化合物を製造することができる。また、高価なシアン化トリメチルシランを使用しなくても、テトラシアノボレートを有するイオン性化合物を得ることができる。
 実施例3
 実施例3では、出発原料としてトリメチルシリルシアニドを用い、テトラシアノボレートを含むイオン性化合物を合成した。
 合成例3-1 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et3MeNTCB)の合成1
 攪拌装置、還流管および抜き出し装置、滴下ロートを備えた容量1Lのなすフラスコに、予め加熱乾燥しておいたトリエチルメチルアンモニウムクロリド(Et3MeNCl)30.3g(200mmol)を加えた。容器内を窒素置換した後、トリメチルシリルシアニド(TMSCN)109.0g(1100mmol)を室温で加え、攪拌し、混合した。次いで、滴下ロートから三塩化ホウ素の1mol/L p-キシレン溶液200mL(200mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を150℃まで加熱し、副生するトリメチルシリルクロリド(TMSCl、沸点:約57℃)を還流抜き出し部から抜き出しながら反応を行った。
 30時間加熱攪拌した後、ダイアフラムポンプで反応容器内を減圧し、還流抜き出し部からTMSCNのp-キシレン溶液を留去した。その後、攪拌装置を備えた500mLのビーカーに、粗生成物45gと酢酸エチル225gを入れ、5分間攪拌して溶解させた後、ここに、活性炭135g(日本エンバイロケミカル社製のカルボラフィン(登録商標))を加え、10分間攪拌した。得られた活性炭懸濁液をメンブレンフィルター(0.2μm、PTFE製)でろ過し、溶媒を留去し、乾燥して、目的物であるトリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレート(淡黄色固体)を得た(収量:37.9g(164mmol)、収率:82%、融点:115℃)。
 上記測定方法によって、得られたトリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートの各種物性を測定した。結果は以下の通りである。
 イオン伝導度(25℃):0.018S/cm
 熱分解開始温度:280℃
 電位窓:-3.2V~2.0V
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 3.23(q,J=6.8Hz,6H),2.86(s,3H),1.18(t,J=6.8Hz,9H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 112.5(m),55.2(s),46.2(s),7.7(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例3-2 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成2
 活性炭濾過の代わりにカラムクロマトグラフィーによる精製を行ったこと以外は、合成例3-1と同様にして、トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレート(淡黄色固体)を得た(収量:37.9g(164mmol)、収率:82%、融点:115℃)。
 なお、精製方法は次の通りである。500mLのビーカーに、粗生成物45gと、塩化メチレンとアセトニトリルの混合溶液20mL(4:1(体積比))を入れ、5分間攪拌して溶解させた。次いで、酸化アルミニウム(450cc)を固定相とし、塩化メチレンとアセトニトリルの混合溶媒(4:1(体積比)、2.5L)を移動相とするカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、目的物であるトリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た。生成物は、合成例3-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例3-3 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレート(Bu4NTCB)の合成
 合成例3-1において用いたEt3MeNClの代わりにテトラブチルアンモニウムブロミド64.5g(200mmol)を用いたこと以外は、合成例3-1と同様の操作を行い、生成物として白色固体のテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:60.0g(196mmol)、収率:98%、融点:90℃)。生成物は、合成例1-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 イオン伝導度(25℃):0.009S/cm
 熱分解開始温度:210℃
 電位窓:-3.2V~2.0V
 合成例3-4 1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EtMeImTCB)の合成
 Et3MeNClの代わりに1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド38.2g(200mmol)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、生成物として淡黄色液体の1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートを得た(収量:24.9g(110mmol)、収率:55%、融点:15℃)。生成物は、合成例1-2と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 イオン伝導度(25℃):0.021S/cm
 熱分解開始温度:330℃
 電位窓:-2.4V~2.0V
 合成例3-5 トリエチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et3NHTCB)の合成1
 Et3MeNClの代わりにトリエチルアミン20.2g(200mmol)を用いたこと以外は合成例3-1と同様の操作を行い、生成物として淡黄色固体のトリエチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:23.8g(110mmol)、収率:60%、融点:150℃)。生成物は、合成例1-3と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 イオン伝導度(25℃):0.018S/cm
 熱分解開始温度:285℃
 電位窓:-1.7V~2.0V
 合成例3-6 トリエチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成2
 Et3MeNClの代わりにトリエチルアンモニウムクロリド27.5g(200mmol)を用いたこと以外は合成例3-1と同様の操作を行い、生成物として淡黄色固体のトリエチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:23.8g(110mmol)、収率:60%、融点:150℃)。生成物は、合成例3-5と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例3-7 テトラエチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et4NTCB)の合成1
 Et3MeNClの代わりにテトラエチルアンモニウムクロリド33.1g(200mmol)を用いたこと以外は合成例3-1と同様の操作を行い、生成物として白色固体のテトラエチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:46.6g(190mmol)、収率:95%、融点:150℃)。生成物は、合成例1-5と同様のNMRスペクトルを示していた。
 イオン伝導度(25℃):0.015S/cm
 熱分解開始温度:220℃
 電位窓:-3.0V~2.0V
 合成例3-8 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成3
 なすフラスコの代わりに1Lの耐圧容器(ステンレス鋼製、5kPaの加圧条件下で使用可能)を用い、反応中に副生するTMSClを抜き出さなかったこと以外は、合成例3-1と同様の操作を行い、生成物として淡黄固体のテトラエチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:33.3g(144mmol)、収率:72%、融点:115℃)。なお、得られた生成物は、合成例3-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例3-9 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成2
 三塩化ホウ素の代わりに、ホウ酸トリメチル20.8g(200mmol)を用い、反応容器を170℃まで加熱したこと以外は合成例3-3と同様の操作を行い、生成物として白色固体のテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:50.0g(140mmol)、収率:70%、融点:90℃)。なお、得られた生成物は、合成例3-3と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例3-10 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成3
 三塩化ホウ素の代わりに、ホウ酸トリエチル29.2g(200mmol)を用い、反応容器を170℃まで加熱したこと以外は合成例3-3と同様の操作を行い、生成物として白色固体のテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:50.0g(140mmol)、収率:70%、融点:90℃)。なお、得られた生成物は、合成例3-3と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例3-11 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成4
 三塩化ホウ素の代わりに、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体28.4g(200mmol)を用い、反応容器を170℃まで加熱したこと以外は合成例3-3と同様の操作を行い、生成物として白色固体のテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:53.6g(150mmol)、収率:75%、融点:90℃)。なお、得られた生成物は、合成例3-3と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例3-12 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成4
 p-キシレンの代わりに、酢酸ブチルを用いた以外は合成例3-1と同様の操作を行い、生成物として淡黄色固体のトリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:27.7g(120mmol)、収率:55%、融点:115℃)。なお、得られた生成物は、合成例3-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例3-13 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成5
 合成例3-1と同様の反応を行い、還流抜き出し部から抜き出したTMSCl69.5g(640mmol)を、攪拌装置を備えたフラスコ(容量500mL)に加え、次いで、室温(25℃)で、トリエチルアミン64.7g(640mmol)およびシアン化水素17.3g(640mmol)を加え、一晩攪拌した。得られた生成物を蒸留しTMSCNを得た(無色液体、収量:57.1g(576mmol)、収率:90%)。
 反応副生物であるTMSClを原料として得られたTMSCN52.1g(525mmol)と、BCl312.3g(105mmol)およびTEMACl15.9g(105mmol)を用いたこと以外は合成例3-1と同様にして、トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:19.8g(86mmol)、収率:82%、融点:115℃)。なお、得られた生成物は、合成例3-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例3-14 テトラメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 Et3MeNAClの代わりにテトラメチルアンモニウムクロリド21.9g(200mmol)を用いたこと以外は合成例3-1と同様の操作を行い、生成物として白色固体のテトラメチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:26.5g(140mmol)、収率:70%)。
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 3.08(s,12H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 121.9(m),55.3(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例3-15 アンモニウムテトラシアノボレートの合成
 Et3MeNClの代わりにアンモニウムクロリド10.7g(200mmol)を用いたこと以外は合成例3-1と同様の操作を行い、生成物として白色固体のアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:8.0g(60mmol)、収率:30%)。
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 6~7(broad,4H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 121.9(m)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例3-16 トリブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 Et3MeNClの代わりにトリブチルアンモニウムクロリド44.4g(200mmol)を用いたこと以外は合成例3-1と同様の操作を行い、生成物として黄色固体のトリブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:48.2g(160mmol)、収率:80%)。
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 2.98(m,6H),1.4~1.8(m,6H),1.2~1.3(m,6H),0.94(m,9H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 121.9(m),52.7(s),26.2(s),20.3(s),14.4(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例3-17 リチウムテトラシアノボレートの合成
 攪拌装置を備えた容量500mlのビーカーに、合成例3-16で得られたトリブチルアンモニウムテトラシアノボレート48.2g(160mmol)、酢酸ブチル200g、水酸化リチウム1水和物4.6g(192mmol)および超純水200gを加え、1時間攪拌した。その後、混合液を分液ロートに移し、静置すると、混合液は2層に分離した。この内、下層(水層)を分離、濃縮して得られた淡黄色固体をアセトニトリル200gと混合し、攪拌した。その後、得られた溶液をメンブレンフィルター(0.2μm、PTFE製)でろ過し、溶媒を留去することで、目的物であるリチウムテトラシアノボレート(白色固体)を得た(収量:13.6g(112mmol)、収率:70%)。
 7Li-NMR(d6-DMSO)δ 0.02(s)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 121.9(m)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例3-18 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成6
 合成例3-1と同様に反応を行い、還流抜き出し部から抜き出したTMSCl69.5g(640mmol)を、攪拌装置を備えたフラスコ(容量500mL)に加え、次いで、室温(25℃)で、ヘキサメチルジシラザン103.2g(640mmol)およびシアン化水素51.9g(1919mmol)を加え、一晩攪拌した。得られた生成物を蒸留しTMSCNを得た(無色液体、収量:171.4g(1727mmol)、収率:90%)。
 反応副生物であるTMSClを原料として得られたTMSCN52.1g(525mmol)と、三塩化ホウ素12.3g(105mmol)およびEt3MeNCl15.9g(105mmol)を用いたこと以外は合成例3-1と同様にして、トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(淡黄色固体、収量:19.8g(86mmol)、収率:82%、融点:115℃)。なお、得られた生成物は、合成例3-1と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 合成例3-19 トリメチルシリルテトラシアノボレート(Me3STCB)の合成1
 Et3MeNClを用いなかったこと以外は、合成例3-1と同様の操作を行い、生成物としてトリメチルシリルテトラシアノボレートを得た。収量:1.9g(10mmol)、収率:5%であった。
 合成例3-20 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成7
 トリメチルシリルシアニドの代わりに、シアン化カリウム71.6g(1100mmol)を用いた以外は合成例3-1と同様の操作を行ったが、目的物であるトリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートは全く得られなかった。
 本発明第3の製造方法では、反応副生成物による反応の活性低下が生じ難いので、従来法に比べて高収率でテトラシアノボレートイオンを有するイオン化合物を製造することができる。また、アンモニウム塩を用いた場合には、1段階で有機カチオンを有するイオン性化合物を製造することができる。
 合成例3-21 トリブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成2
 トリブチルアンモニウムクロリドの代わりにトリブチルアンモニウムシアニド42.5g(200mmol)、トリメチルシリルシアニド84.8g(855mmol)を用いたこと以外は合成例3-16と同様の操作を行い、生成物として黄色固体のトリブチルアンモニウムテトラシアノボレートを得た(収量:42.5g(141mmol)、収率:75%)。なお、得られた生成物は、合成例3-16と同様のNMRスペクトル、各種物性を示していた。
 実施例4
 実施例4では、出発原料にシアン化水素(HCN)を用い、テトラシアノボレートをアニオンとするイオン性化合物を合成した。
 合成例4-1 トリブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 昇温装置、攪拌装置および還流管を備えた200mlの3つ口フラスコを窒素置換し、トリブチルアミン10.2g(55mmol)、シアン化水素1.49g(55mmol)を室温で加え、1時間攪拌した。ついで、ここに三塩化ホウ素1.17g(10mmol)、p-キシレン100mlを加え、150℃で2日間、加熱還流した。得られた黒色溶液に、室温で、酢酸ブチル30gを加え攪拌した後、ここに活性炭9g(カルボラフィン(登録商標)-6、日本エンバイロケミカルズ株式会社製)を加え、室温で20分間攪拌した。得られた活性炭懸濁液をメンブレンフィルター(0.5μm、PTFE製)でろ過し、フィルター上の活性炭を30gの酢酸ブチルで洗浄する操作を5回繰返した。得られたろ液と、洗浄液を合わせて、溶媒を留去し、乾燥し黒色固体を得た。
 次いで、得られた黒色固体に過酸化水素水を8gを加え、50℃で1時間攪拌した後、ここに40gの酢酸ブチルを加え、室温で20分間さらに攪拌し、溶液を10分間静置した後、酢酸ブチル層を分離し、溶媒を留去し、乾燥することで、褐色油状のトリブチルアンモニウムテトラシアノボレート(Bu3NHTCB)を得た(収量1.21g(4mmol)、収率40%)。
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 8.8 (br,1H),2.99 (dd,J=8.0Hz,J=16.4Hz,6H),1.52 (m,6H),1.28 (m,6H),0.88 (m,9H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 121.9 (m),46.0 (s),8.8 (s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6 (s)
 合成例4-2 トリエチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 トリブチルアミンの代わりに、トリエチルアミン5.58g(55mmol)を用いたこと以外は、合成例4-1と同様にして、トリエチルアンモニウムテトラシアノボレート(褐色固体、Et3NHTCB)を得た(収量0.65g(3mmol)、収率30%)。以下に、得られたトリエチルアンモニウムテトラシアノボレートのNMRデータを示す。上記測定方法によって測定した各種物性は以下の通りである。
 イオン伝導度(25℃):0.018S/cm
 熱分解開始温度:285℃
 電位窓:-1.7V~2.0V
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 8.83 (s,1H),3.10 (q,J=7.2Hz,6H),1.17 (t,J=7.2Hz,9H) 
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 121.9 (m),46.0 (s),8.8 (s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6 (s)
 本発明によれば、安価なシアン化水素を出発原料としてテトラシアノボレートを有するイオン性化合物を得ることができる。
 本発明第4の製造方法によれば、シアン源としてシアン化水素を用いるため、従来に比べて安価にテトラシアノボレートを有するイオン性化合物を得ることができる。
 実施例5
 実施例5では、下記合成例5~11で得られたイオン性化合物中に含まれる不純物量を測定した。各種不純物の測定方法は次の通りである。
 [金属成分含有量の測定]
 (1)ICPによる測定(Na,Siの測定)
 下記合成例5~11で得られたイオン性化合物2gを超純水(18.2Ω・cm超)で10倍~100倍に希釈して測定溶液とし、ICP発光分析装置 ICPE-9000(島津製作所製)を用いて、イオン性化合物中に含まれるNa,Si量を測定した。
 (2)イオンクロマトグラフィーによる測定(ハロゲン化物イオン類の測定)
 下記合成例で得られたイオン性化合物0.3gを超純水(18.2Ω・cm超)で100倍~1000倍に希釈して測定溶液とし、イオンクロマトグラフィーシステム ICS-3000(日本ダイオネクス株式会社製)を用いて、イオン性化合物中に含まれるハロゲン化物イオンの量を測定した。
 分離モード:イオン交換
 検出器:電気伝導度検出器 CD-20
 カラム:アニオン分析用カラム AS17-C(日本ダイオネクス株式会社製)
 (3)イオンクロマトグラフィーによる測定(CNの測定)
 下記合成例で得られたイオン性化合物0.1gを超純水(18.2Ω・cm超)で10000倍に希釈して測定溶液とし、イオンクロマトグラフィーシステム ICS-1500(日本ダイオネクス株式社製)を用いて、イオン性化合物中に含まれるシアン化物イオン(CN)の量を測定した。
 分離モード:イオン交換
 溶離液:10mmol H2SO4水溶液
 再生液:0.5mmol NaOH水溶液
 検出器:電気化学検出器 ED-50A
 カラム:アニオン分析用カラム ICE-AS1
 [水分測定]
 平沼産業(株)製水分測定装置「AQ-2000」を用いて、試料中の水分量を測定した。なお、試料注入量は0.1mlとし、発生液には「ハイドラナール アクアライトRS-A」(平沼産業株式会社販売)を使用し、対極液には「アクアライトCN」(関東化学株式会社製)を使用した。試料は、外気に触れないよう注射器を用いて試料注入口より注入した。
 以下、合成例5では、トリメチルシリルシアニドを含む出発原料を用いてイオン性化合物の合成を行った。
 合成例5
 合成例5-1 トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 <粗生成物の合成>
 攪拌装置、還流管および抜き出し装置、滴下ロートを備えた容量1Lのなすフラスコに、予め加熱乾燥しておいたトリエチルメチルアンモニウムクロリド(Et3MeCl)30.3g(200mmol)を加えた。容器内を窒素置換した後、トリメチルシリルシアニド(TMSCN)109.0g(1100mmol)を室温で加え、攪拌し、混合した。次いで、滴下ロートから三塩化ホウ素(BCl3)の1mol/L p-キシレン溶液200mL(200mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を150℃まで加熱し、副生するトリメチルシリルクロリド(TMSCl、沸点:約57℃)を還流抜き出し部から抜き出しながら反応を行った。
 30時間加熱攪拌した後、ダイアフラムポンプで反応容器内を減圧し、還流抜き出し部からTMSCNのp-キシレン溶液を留去した。容器内には、粗トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et3MeNTCB)が生成していた。
 <活性炭処理>
 ついで、攪拌装置を備えた500mLのビーカー内で、得られた粗生成物46.0gを酢酸エチルに溶解させて、10質量%の酢酸エチル溶液とし、ここに活性炭65g(日本エンバイロケミカルズ株式会社製のカルボラフィン(登録商標))を加え、内温が50℃になるまでウォーターバスで加熱した。その後、50℃で10分間攪拌した後、活性炭懸濁液をメンブレンフィルター(0.2μm、PTFE製)でろ過した。フィルター上の活性炭については、粗生成物の3倍質量の酢酸エチルに懸濁させ、50℃で10分間攪拌して洗浄する操作を5回繰返した。得られたろ液と洗浄液とを混合し、酢酸エチルを減圧下で留去させた後、真空下50℃で加熱乾燥し、淡黄色固体のEt3MeNTCBを得た(収量:37g(160mmol)、収率:80%、融点:115℃)。
 <酸化剤処理>
 攪拌装置、還流管を備えたビーカーに、得られたEt3MeNTCBと、Et3MeNTCBに対して2.25倍の質量の過酸化水素水(30質量%H22水溶液)とを加え、50℃で、60分間攪拌した。
 <抽出処理>
 次いで、Et3MeNTCBのH22溶液に、活性炭処理後のEt3MeNTCBに対して9倍の質量の酢酸ブチルを加え、この混合溶液を攪拌した。その後、混合溶液を遠心分離用の容器(容量:1000mL)に移し、この容器を90秒間振とうした後、遠心分離し(1700rpm、10分間)、得られた酢酸ブチル層(上澄み、有機層)を濃縮した。
 <乾燥>
 抽出処理で得られたEt3MeNTCBを含む酢酸ブチル層を、さらに、減圧下で30分間加熱し(80℃)、粗乾燥させて得られたEt3MeNTCBを乳鉢で粉砕して粉末とした。得られた粉末を、テフロン(登録商標)シートをひいたバット上に広げ、これを減圧乾燥機内に設置し、減圧下、80℃で3日間乾燥させた。
 得られたEt3MeNTCBのNMR分析結果を以下に示す。また、上記方法にしたがって測定したEt3MeNTCB中のイオン成分量を表1に示す。生成物は、合成例1-4と同様のNMRスペクトルを示していた。
 合成例5-2
 酸化剤処理において、過酸化水素水の代わりに過塩素酸ナトリウムの30質量%水溶液83mLを用いたこと以外は、合成例5-1と同様にして、Et3MeNTCBを合成した。
 合成例5-3
 粗生成物の合成後、活性炭処理を行わなかったこと以外は、合成例5-1と同様にしてEt3MeNTCBを合成した。
 合成例5-4
 合成例5-1で合成した活性炭処理後のEt3MeNTCBをそのまま測定サンプルとして用いた。
 合成例5-5
 合成例5-1で製造した活性炭処理前のEt3MeNTCB46gを0.01mol/LNaOH水溶液104mlを加え、50℃で60分間攪拌した。ついで、Et3MeNTCBのNaOH溶液に、Et3MeNTCBに対して9倍の質量の酢酸ブチルを加え、合成例5-1と同様にして抽出処理を行い、Et3MeNTCBを合成した(活性炭処理、酸化剤処理なし)。
 合成例6
 合成例6-1 テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 合成例5で用いたEt3MeNClの代わりにテトラブチルアンモニウムブロミド64.5g(200mmol)を用いたこと以外は、合成例5-1と同様にして粗生成物の合成、活性炭処理を行い、生成物として白色固体のテトラブチルアンモニウムテトラシアノボレート(Bu4NTCB)を得た(収量:60.0g(164mmol)、収率:82%、融点:90℃)。生成物は、合成例1-1と同様のNMRスペクトルを示していた。
 合成例6-2
 合成例6-1で得られたBu4NTCBを、Bu4NTCBに対して2.25倍の質量の過酸化水素水(30質量%H22水溶液)と混合し、50℃で60分間攪拌した。その後、実験例1-1と同様にして、抽出、乾燥処理を行い、白色固体のBu4NTCBを得た(収量:45g(120mmol)、収率:62%)。
 合成例7
 合成例7-1 1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートの合成
 Et3MeNClの代わりに1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド38.2g(200mmol)を用いたこと以外は合成例5-1と同様にして粗生成物の合成、活性炭処理を行い、生成物として淡黄色油状の1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EtMeImTCB)を得た(収量:24.9g(110mmol)、収率:55%、融点:15℃)。生成物は、合成例1-2と同様のNMRスペクトルを示していた。
 合成例7-2
 合成例7-1で得られたEtMeImTCBを、EtMeImTCBに対して2.25倍の質量の過酸化水素水(30質量%H22水溶液)と混合し、50℃で60分間攪拌した。その後、実験例1-1と同様にして、抽出、乾燥処理を行い、淡黄色油状のEtMeImTCBを得た(収量:18g(80mmol)、収率:40%)。
 合成例8
 合成例8-1 トリエチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 Et3MeNClの代わりにトリエチルアミン20.2g(200mmol)を用いたこと以外は合成例5-1と同様にして粗生成物の合成、活性炭処理を行い、生成物として淡黄色固体のトリエチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et3NHTCB)を得た(収量:23.8g(110mmol)、収率:60%、融点:150℃)。生成物は、合成例1-3と同様のNMRスペクトルを示していた。
 合成例8-2
 合成例8-1で得られたEt3NHTCBを、Et3NHTCBに対して2.25倍の質量の過酸化水素水(30質量%H22水溶液)と混合し、50℃で60分間攪拌した。その後、合成例5-1と同様にして、抽出、乾燥処理を行い、淡黄色固体のEt3NHTCBを得た(収量:17g(80mmol)、収率:40%)。
 合成例9
 合成例9-1 テトラエチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 Et3MeNClの代わりにテトラエチルアンモニウムクロリド33.1g(200mmol)を用いたこと以外は合成例5-1と同様にして粗生成物の合成、活性炭処理を行い、生成物として白色固体のテトラエチルアンモニウムテトラシアノボレート(Et4NTCB)を得た(収量:46.6g(190mmol)、収率:95%、融点:150℃)。生成物は、合成例1-5と同様のNMRスペクトルを示していた。
 合成例9-2
 合成例9-1で得られたEt4NTCBを、Et4NTCBに対して2.25倍の質量の過酸化水素水(30質量%H22水溶液)と混合し、50℃で60分間攪拌した。その後、合成例5-1と同様にして、抽出、乾燥処理を行い、淡黄色固体のEt4NTCBを得た(収量:35g(144mmol)、収率:72%)。
 合成例10
 合成例10-1 テトラメチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 Et3MeNClの代わりにテトラメチルアンモニウムクロリド21.9g(200mmol)を用いたこと以外は合成例5-1と同様にして粗生成物の合成、活性炭処理を行い、生成物として白色固体のテトラメチルアンモニウムテトラシアノボレート(Me4NTCB)を得た(収量:26.5g(140mmol)、収率:70%)。
 1H-NMR(d6-DMSO)δ 3.08(s,12H)
 13C-NMR(d6-DMSO)δ 121.9(m),55.3(s)
 11B-NMR(d6-DMSO)δ -39.6(s)
 合成例10-2
 合成例10-1で得られたMe4NTCBを、Me4NTCBに対して2.25倍の質量の過酸化水素水(30質量%H22水溶液)と混合し、50℃で60分間攪拌した。その後、合成例5-1と同様にして、抽出、乾燥処理を行い、淡黄色固体のMe4NTCBを得た(収量:11g(100mmol)、収率:50%)。
 合成例11
 合成例11-1 トリブチルアンモニウムテトラシアノボレートの合成
 Et3MeNClの代わりにトリブチルアンモニウムクロリド44.4g(200mmol)を用いたこと以外は合成例5-1と同様にして粗生成物の合成、活性炭処理を行い、生成物として黄色固体のトリブチルアンモニウムテトラシアノボレート(Bu3NHTCB)を得た(収量:48.2g(160mmol)、収率:80%)。生成物は、合成例3-16と同様のNMRスペクトルを示していた。
 合成例11-2
 合成例11-1で得られたBu3NHTCBを、Bu3NHTCBに対して2.25倍の質量の過酸化水素水(30質量%H22水溶液)と混合し、50℃で60分間攪拌した。その後、合成例5-1と同様にして、抽出、乾燥処理を行い、黄色固体のBu3NHTCBを得た(収量:39g(0.13mmol)、収率:65%)。
 上記方法にしたがって、合成例5~11で製造したイオン性化合物に含まれる各種イオン成分を測定した。結果を表3に示す。尚、表3中「N.D.」は、測定サンプル中に含まれる不純なイオン成分量が測定限界(1ppm)以下であったことを示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000028
 合成例5~11の結果より、酸化剤と接触させ酸化剤処理を行うことで、イオン性化合物中に残留するSi,シアン化物イオン(CN),ハロゲン化物イオン(ClまたはBr)を低減できることが分かる。
 また、合成例5の結果より、酸化剤処理による効果は、活性炭処理と抽出処理とを組み合わせることで一層効果的なものとなり(合成例5-1と合成例5-3の比較)、さらに、合成例5-1と合成例5-2の比較から、過酸化水素を酸化剤として用いる場合には、イオン性化合物中の水分量も一層低減できることが分かる。
 すなわち本発明によれば、出発原料や製造中に不可避的に混入する不純物イオン含有量が低減された高純度イオン性化合物を得ることができる。
 実施例6
 実施例6では、一般式[(NC)v-Xd-]で表される構造を有する各種アニオンの最高被占位軌道エネルギー準位の計算(実験例5)、および、実際に合成したアニオンの耐電圧範囲LSVの測定(実験例6)を行った。
 実験例5 最高被占位軌道エネルギー準位の計算
 下記表4に示す各種アニオンの最高被占位軌道エネルギー準位の計算は、GAUSSIAN03(GAUSSIAN,Inc.製)を使用し、基底関数にB3LYP/6-311+G(2d,p)を用いて行った。最高被占位軌道エネルギー準位計算結果を表4に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000029
 実験例6 リニアースィープボルタンメトリー(LSV測定)
 実験例6では、実際に合成したアニオンの耐電圧範囲LSVを測定した。LSV測定は、以下のようにして測定した。
 [耐電圧範囲LSV測定]
 耐電圧範囲の測定は、グローブボックス中30℃雰囲気下、3極セルを用いてスタンダードボルタンメトリツールHSV-100(商品名、北斗電工社製)を使用してLSV測定を行った。なお、測定条件は下記の通りである。
 (測定条件)
 作用極:グラッシーカーボン電極、参照極:Ag電極、対極:白金電極
 溶液濃度:1mol/L
 溶媒:プロピレンカーボネート
 掃引速度:100mV/s
 掃引範囲:自然電位~±5V
 実験例6-1
 合成例1-3で得られたEt3MeNTCBを脱水プロピレンカーボネート(キシダ化学製)に溶解し、1mol/Lに調整したもののLSV測定を行った。結果を図1に示す。
 実験例6-2
 市販のトリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEMABF4)(キシダ化学製)2.0mol/LPC溶液を希釈し、1.0mol/LとしたもののLSV測定を行った。結果を図2に示す。
 表4中、No.6~11に示されるアニオンは、最高被占位軌道エネルギー準位が-5.5eVよりも低く、広電位窓であることが示唆される。実際に実験例6-2(図1)に示すように、HOMO順位が-5.809eVであったEt3MeNTCBは、2V付近にわずかな電流値が観測されるものの、それ以上の電圧範囲では電流はほとんど観察されず、実験例6-2(図2)に示されるEt3MeNBF4よりも耐電圧範囲の広い化合物であることがわかる。
 本発明のイオン伝導性材料は電位窓が広くFやAsのような有害元素を含まないためリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタや電解コンデンサ等の用途に好適に用いることができる。
 本発明の製造方法により得られるテトラシアノボレートを有するイオン性化合物は、リチウム二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオンキャパシタなどのイオン伝導体(電解液材料等)といった各種電気化学デバイスの構成材料、有機合成の反応溶媒、ポリマーへの導電性付与剤、潤滑剤、ガス吸収剤など様々な用途に好適に用いられる。
 特に、本発明のイオン性化合物を用いれば、信頼性の高い電解液材料、および、導電性付与剤などの添加剤や潤滑剤を提供することができる。

Claims (13)

  1.  下記一般式(I)で表されるイオン性化合物100mol%に対して、フッ素原子を含有する不純物の含有量が3mol%以下であることを特徴とするイオン性化合物。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (式中、Ktm+は、有機カチオン[Ktbm+又は無機カチオン[Ktam+を表し、nは1~3の整数を表す)
  2.  上記一般式(I)で表されるイオン性化合物であって、当該イオン性化合物中のケイ素含有量が2500ppm以下である請求項1に記載のイオン性化合物。
  3.  CN含有量が3000ppm以下である請求項1または2に記載のイオン性化合物。
  4.  ハロゲン化物イオン含有量が500ppm以下である請求項1~3のいずれかに記載のイオン性化合物。
  5.  さらに、水の含有量が3000ppm以下である請求項1~4のいずれかに記載のイオン性化合物。
  6.  請求項1~5のいずれかに記載のイオン性化合物を含んでなるイオン導電性材料。
  7.  上記一般式(I)で表されるイオン性化合物の製造方法であって、シアン化物と、ホウ素化合物とを含む出発原料を反応させることを特徴とするイオン性化合物の製造方法。
  8.  上記出発原料が、シアン化物としてトリメチルシリルシアニドを含み、さらに、アミン及び/又はアンモニウム塩を含むものである請求項7に記載のイオン性化合物の製造方法。
  9.  上記シアン化物が、Ma(CN)n(Maは、Zn2+,Ga3+,Pd2+,Sn2+,Hg2+,Rh2+,Cu2+およびPb+のいずれかを示し、nは1~3の整数である)である請求項7に記載のイオン性化合物の製造方法。
  10.  上記シアン化物が、R4NCN(Rは、Hまたは有機基)で表されるシアン化アンモニウム系化合物である請求項7に記載のイオン性化合物の製造方法。
  11.  上記出発原料が、上記シアン化物としてシアン化水素を含み、さらに、アミンを含むものである請求項7に記載のイオン性化合物の製造方法。
  12.  上記出発原料を反応させて得られた粗生成物を、酸化剤と接触させる工程を含む請求項7~11のいずれかに記載のイオン性化合物の製造方法。
  13.  上記酸化剤が過酸化水素である請求項12に記載のイオン性化合物の製造方法。
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