以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、光学機器に採用される羽根駆動装置の断面図である。羽根駆動装置は、光学機器に搭載された撮像素子(不図示)への光量を調整する絞り装置として機能する。羽根駆動装置は、シャッタユニット1とアクチュエータ100とを備える。シャッタユニット1は、基板10、20、基板10、20によって画定された羽根室Sに配置された駆動リング30、後述する羽根40a~40c、ギヤ55、57を含む。アクチュエータ100は、羽根40a~40cの動力源であり、基板10に固定されている。アクチュエータ100からの動力が羽根40a~40cへと伝達されることにより、羽根40a~40cは、基板10、20のそれぞれに形成された開口11、21の開口量を調整する。開口11、21の開口量が調整されることにより、撮像素子へと入射する被写体光も調整される。
アクチュエータ100について説明する。アクチュエータ100は、所謂ステッピングモータであり、所定の回転角度で停止することができる。アクチュエータ100は、ケース板110、120、回転可能に支持され周方向に複数の磁極に着磁されたロータ130、ロータ130との間で磁力が作用するステータ141、ステータ141に巻回されステータ141を励磁するためのコイル143を含む。
ロータ130は、マグネット樹脂により成形されている。また、ロータ130は回転軸131と共にインサート成形により一体に形成される。従って、回転軸131は、ロータ130と一体に回転する。ロータ130、ステータ141、コイル143は、ケース板110、120間に配置されている。ケース板120には、回転軸131の一端131aが貫通した軸孔123が形成されている。また、ケース板110には、回転軸131の他端131bが回転自在に挿入した軸孔113が形成されている。ケース板110は、支持部材に相当する。
ケース板110の外側には、コイル143と電気的に接続されたプリント基板150が貼付されている。プリント基板150は、光学機器に搭載された、不図示のCPUなどによって、コイル143への通電状態が制御される。これにより、ロータ130の回転が制御される。
ケース板120には、外側に突出した凸部122を有しており、凸部122は、基板10に形成された穴部12と係合している。これにより、シャッタユニット1にアクチュエータ100が組みつけられている。また、基板10には、回転軸131が貫通した挿入口13が形成されている。また、回転軸131の一端131aには、ロータ130の回転動力を外部へと伝達するためのピニオンギヤ70が圧入嵌合している。一端131a、ピニオンギヤ70は、羽根室S内に配置されている。尚、ピニオンギヤ70は、樹脂により形成されている。
また、ピニオンギヤ70と基板20との間には、コイルばね60が配置されている。コイルばね60は、ピニオンギヤ70と当接してピニオンギヤ70をスラスト方向に付勢している。ピニオンギヤ70は、回転軸131の一端131aに圧入されているので、ピニオンギヤ70がスラスト方向に付勢されることにより、ロータ130、回転軸131がスラスト方向に付勢されることになる。換言すれば、回転軸131は、ケース板110に向けて付勢されている。コイルばね60、ピニオンギヤ70の詳細については後述する。
次に、アクチュエータ100の動力の伝達経路について説明する。図2は、羽根駆動装置の正面図であり、開口11から退避した全開状態での羽根駆動装置の正面図である。尚、図2において基板20については省略してある。ピニオンギヤ70は、外周部に歯部73aが形成されている。歯部73aは、ギヤ55の大径歯部55aと噛合っている。ギヤ55は、基板10に形成されたピン15に回転自在に嵌合している。また、ギヤ55は、大径歯部55aよりも径の小さい小径歯部55bを有している。小径歯部55bは、ギヤ57の大径歯部57aと噛合っている。ギヤ57も同様に、基板10に形成されたピン17に回転自在に嵌合している。また、ギヤ57は、大径歯部57aよりも径の小さい小径歯部57bを有している。ピニオンギヤ70の回転動力は、ギヤ55、57を介して減速される。尚、ピン15、17は、それぞれ基板20に形成された係合凹部25、27と係合している。これにより、基板10と基板20とが組み付けられている。
羽根室S内には、回転自在に支持された駆動リング30が配置されている。駆動リング30は、開口11、21と略同心円状に配置されている。駆動リング30の外周部には、図2に示すように、所定の範囲に亘って歯部35が形成されている。歯部35は、ギヤ57の小径歯部57bと噛合っている。このように、ロータ130の回転動力は、ピニオンギヤ70、ギヤ55、57を介して減速されて駆動リング30へと伝達される。
駆動リング30には、3箇所にわたって均等な間隔を有して駆動ピン34a~34cが形成されている。また、羽根室S内には、3枚の羽根40a~40cが配置されている。ここで、駆動リング30と羽根40a~40c間には羽根受板50が設けられており、駆動リング30と羽根40a~40cを仕切り、それぞれの動きの干渉を防止する機能を有する。また、羽根40a~40cは、同一形状に形成されている。羽根40a~40cのそれぞれには、円弧状に形成されたカム溝44a~44cが形成されている。駆動ピン34a~34cは、それぞれカム溝44a~44c内を摺動自在に係合している。また、羽根40a~40cは、基板10に形成された支軸14a~14cにより揺動自在に支持されている。支軸14a~14cは、駆動リング30よりも径方向外側に設けられている。
また羽根40a~40cは、それぞれ溝49a~49cが形成されている。溝49a~49cは、それぞれカム溝44a~44cよりも羽根40a~40cの中央部に近い位置に形成されている。また、基板10には、図2に示すように単一の規制ピン19が形成されている。この規制ピン19は、溝49aと係合している。規制ピン19は、溝49aの内周端部と当接することにより、羽根40aの揺動範囲を規制している。
例えば、図2に示した状態から、駆動リング30が反時計方向に回転すると、駆動ピン34a~34cの位置も反時計方向に移動する。駆動ピン34a~34cは、それぞれカム溝44a~44c内を摺接して移動し、羽根40a~40cは、それぞれ支軸14a~14cを支点として、開口11に臨む位置へと揺動する。羽根40a~40cが開口11に臨む位置に位置付けられることにより、開口11の開口量が調整される。また、アクチュエータ100は、ステッピングモータであるので、ロータ130の停止角度を調整できる。これにより、羽根40a~40cの位置を調整することができる。従って、開口11の開口量を微調整することができる。
次に、コイルばね60、ピニオンギヤ70について詳細に説明する。コイルばね60は、基板20の内面側に形成された凸部23に嵌合している。凸部23は、ピニオンギヤ70と対向する位置に形成されている。凸部23は、コイルばね60の径よりも若干小さく形成されている。これにより、コイルばね60の位置ズレが防止されている。
ピニオンギヤ70について詳細に説明する。図1に示すように、ピニオンギヤ70は、外周部に歯部73aを有しており、歯部73aよりも軸端側には歯部73aが形成された箇所よりも小さい径を有した小径部73bを有している。コイルばね60は、小径部73bを囲うように配置されている。小径部73bの径はコイルばね60よりも小さく形成されており、円筒状に形成されている。
このようにコイルばね60は、一端が凸部23と嵌合し、他端が小径部73bと所定の遊びを有して嵌合している。これにより、コイルばね60の位置ズレなどが防止されている。
ピニオンギヤ70とコイルばね60との間にはリング状に形成された摺動部材80が配置されている。摺動部材80は、歯部73aと小径部73bとによって画定される段部に配置されており、小径部73bに所定の遊びを有して嵌合している。摺動部材80は、潤滑処理を施したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの摺動性の高い材料により形成されている。これにより、コイルばね60とピニオンギヤ70との間の摩擦抵抗を低減できる。
以上のように、コイルばね60は、ピニオンギヤ70を介してロータ130をスラスト方向に付勢する。また、コイルばね60は、羽根室S内に配置されている。この構成により、羽根駆動装置の回転軸131方向の厚みは、コイルばね60がない場合と比べても変化がない。羽根室S内に配置されたコイルばね60は、羽根駆動装置の回転軸131方向の厚みに影響を及ぼさないのでスラスト方向での羽根駆動装置の大型化が抑制され薄型化が可能となる。また、ロータ130がスラスト方向へ付勢されるので、ロータ130のガタつきを抑制できる。これにより、アクチュエータ100のハンチングを抑制でき、アクチュエータ100の作動音を削減することができる。
また、バネ定数の異なるコイルばねを弾性部材として採用することによって、ロータ130への付勢力を容易に調整できる。また、従来の技術のように回転軸を磁性樹脂などの材料により成形し、軸端を所定の磁極によって着磁することなく、ロータ130のガタつきを抑制できる。これにより、着磁工程の煩雑化に伴う製造コストの増大も抑制できる。
また、羽根40a~40cの駆動に支障をきたさないようにスラスト方向へ力を作用させ、ロータ130の回転方向に摩擦力を発生させることにより、アクチュエータ100への通電を切った非通電時において、全パルスでロータ130を停止することができる。ここで、各パルスにおいて、所望の絞り口径で羽根40a~40cが停止するように羽根40a~40cのそれぞれのカム溝44a~44cを形成することにより、高速で高精度な絞り口径の制御ができる。なぜなら、絞り口径の種類が同じであれば、従来の1パルスおきに所望の絞り口径を形成する羽根駆動装置に対して本発明の羽根駆動装置では、最大絞り口径から最小絞り口径までのロータ130および駆動リング30の回転が半分になり、またこれに伴ってカム溝44a~44cが短くなり羽根40a~40cが小さくなる。すなわち、最大絞り口径から最小絞り口径までの時間が短くなるので高速な絞り羽根制御が可能で、また羽根40a~40cが小さくなるので羽根駆動装置の大型化が抑制される。さらに、従来の1パルスおきに所望の絞り口径を形成する羽根駆動装置のロータ130の回転角であれば、本発明の羽根駆動装置では、最大絞り口径から最小絞り口径までで制御可能な絞り口径の種類が2倍になり、これにより、高精度な絞り口径の制御が可能である。
次に、羽根駆動装置の組立工程について簡単に説明する。まず、予め組み立てられたアクチュエータ100を、基板10へと組み付ける。この際に、ピニオンギヤ70が挿入口13へ挿入されるようにして、凸部122が穴部12と係合するように組み付ける。挿入口13は、ピニオンギヤ70が挿入可能な大きさに形成されている。次に、ピニオンギヤ70の歯部73aとギヤ55の大径歯部55aとが、またギヤ55の小径歯部55bとギヤ57の大径歯部57aとが噛合うようにギヤ55とギヤ57をそれぞれピン15、17に挿入する。また、歯部35と小径歯部57bとが噛合うように、駆動リング30を基板10に配置する。次に、羽根受板50を取り付けた後に、羽根40a~40cのそれぞれに形成された軸孔に、支軸14a~14cを挿入し、かつ、カム溝44a~44cに、それぞれ駆動ピン34a~34cが挿入されるようにして、羽根40a~40cを組み付ける。
次に、歯部73aと小径部73bとによって画定される段部に摺動部材80を配置する。次に、基板20の凸部23にコイルばね60を嵌合させ、コイルばね60に小径部73bが挿入され、かつ、ピン15、17、と係合凹部25、27とが係合するようにして、基板10に基板20を組み付ける。以上のようにして、羽根駆動装置は組み立てられる。
次に、ケース板110に形成された軸孔113について説明する。図3は、軸孔113周辺の拡大図である。軸孔113は、図3に示すように底を有しており、回転軸131が軸孔113に向けて付勢されている状態で、軸孔113の底と他端131bの端面との間には空間が画定される。この空間内には軸孔113と回転軸131との摩擦力させるためのグリースGが塗布されている。これにより、コイルばね60の付勢力が強すぎることに伴う、摩擦力の増大を抑制できる。
尚、付勢力の弱いコイルばねを採用することにより、軸孔113と回転軸131との摩擦を抑制することも考えられる。しかしながら、付勢力の弱いコイルばねを採用すると、アクチュエータ100への衝撃などによって、ロータ130を安定した状態で付勢することができない恐れがある。上述したように軸孔113内にグリースを塗布することにより、軸孔113と回転軸131との摩擦を抑制しつつ、付勢力の強いコイルばねを採用することができる。これにより、ロータ130を安定した状態で付勢することができる。
尚、グリースGは、シャッタユニット1から離れた側に位置するケース板110に形成された軸孔113に塗布される。このように、シャッタユニット1から離れた側の軸孔113にグリースGを塗布することにより、グリースが外部へ漏れて、シャッタユニット1内に浸入することを防止できる。また、上述したように回転軸131は、軸孔113に向けて付勢されている。従って、グリースGは軸孔113内からアクチュエータ100内に漏れることも抑制される。
尚、グリースGの塗布は、アクチュエータ100の組立工程において、軸孔113へ回転軸131を挿入する前に予め塗布しておく必要がある。
また、軸孔113は、回転軸131の一端131aから他端131bに向かって径の小さくなるテーパー面113aを有している。これにより、回転軸131がスラスト方向に付勢された際の、ラジアル方向でのガタつきについても抑制される。
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
本実施例において、ロータ130と回転軸131がインサート成形により一体に形成された例を挙げたが、ロータと回転軸を別部品で構成し、圧入等により一体に形成してもよい。