以下、本発明に係る実施例について図面を参照して説明する。
図1は、羽根駆動装置1の分解斜視図である。羽根駆動装置1は、図面上側を被写体側、下側を結像側としたとき、被写体側から順に、シャッタ基板10、磁性体90、減速部材(伝達部材、被挟持部材)20、薄板(被挟持部材)30、5枚の羽根40、薄板50、駆動リング60、電磁アクチュエータ70、シャッタ基板80を含む。本実施例に係る羽根駆動装置がカメラ(光学機器)に採用された場合には、結像側に被写体像を結像するための撮像素子(不図示)が配置されることになる。
磁性体90、減速部材20、薄板30、羽根40、薄板50、駆動リング60、電磁アクチュエータ70は、シャッタ基板10、80の両者間に収納される。シャッタ基板10、薄板30、50、シャッタ基板80には、それぞれ光路を画定するための開口11、31、51、81が中央部に形成されている。尚、開口の大きさは、開口11、81よりも、開口31、51の方が小さい。電磁アクチュエータ70の動力は、減速部材20、駆動リング60を介して、複数の羽根40に伝達される。詳しくは後述する。
羽根40に動力が伝達されると、複数の羽根40は所定位置を支点として揺動する。これにより、開口11、31、51、81の口径が調整される。口径が調整されることにより、開口11、31、51、81を通過する被写体側からの光量が調整される。即ち、本実施例に係る羽根駆動装置は、光量を調整するための絞り装置として機能する。薄板30、50は、羽根40を挟むように配置されており、羽根40のバタつきを抑える機能を有している。
図2、図3は、組立後の羽根駆動装置の内部構成を示した正面図である。尚、図2、図3においては、シャッタ基板10、薄板30、50、磁性体90について省略してある。但し、薄板50の開口51については破線で示している。尚、図2は、羽根40が開口51から退避した全開状態を示しており、図3は、羽根40が開口51に臨む小絞り状態を示している。
電磁アクチュエータ70は、図2、図3に示すように、ロータ72、ステータ74、コイル76などから構成される。
ロータ72は、円筒状に形成され周方向に極性の異なる磁極が着磁された円筒部722と、円筒部722と一対に形成された回転軸部723とを含む。円筒部722と回転軸部723とはインサート成形によって一体的に形成されている。円筒部722はマグネット樹脂により形成されている。回転軸部723は摺動性のよい合成樹脂によって形成されている。例えば、回転軸部723はポリアセタール樹脂によって形成されている。また、シャッタ基板80には支軸87が立設している。回転軸部723は、支軸87により摺動回転自在に支持されている。これによりロータ72は、回転自在に支持されている。
羽根40は、固定軸82により揺動自在に支持されている。固定軸82は、図2、図3に示すように、駆動リング60よりも内側に配置されている。また、図2に示すように、シャッタ基板80の外周には複数の切欠84が形成されている。切欠84は、全開状態での羽根40との干渉を回避している。
図2、図3に示すように、ステータ74は、正面から見てコ字状に形成され、その両腕部にそれぞれ、コイル76が巻回されている。コイル76は、不図示のフレキシブルプリント基板に通電可能に接続されている。コイル76への通電状態により、ステータ74が励磁される。励磁されたステータ74とロータ72との間に発生する磁気吸着力及び反発力によって、ロータ72が所定量回転する。
次に、磁性体90について簡単に説明する。図4は、磁性体90の拡大図である。図4に示すように、磁性体90は、円板状に形成され、中央に貫通孔93を有している。磁性体90の材質は金属である。詳細には、磁性体90の材質は、スチールやステンレスである。磁性体90は、ロータ72の軸方向に配置される。貫通孔93は、回転軸部723により貫通される。尚、貫通孔93の径は、歯部724の径よりも大きく形成されている。即ち、貫通孔93を貫通した状態で、歯部724は回転可能である。磁性体90とロータ72との間には、磁気的な吸引力が作用する。
図5は、磁性体90の状態を示した羽根駆動装置の正面図である。図6は羽根駆動装置の断面図である。図5、6に示すように、磁性体90とロータ72との間には、減速部材20と薄板30とが挟まれる。磁性体90は、減速部材20と直接当接している。減速部材20と薄板30とは、被挟持部材に相当する。電磁アクチュエータ70、磁性体90、減速部材20、薄板30は、駆動機構に相当する。尚、図6に示すように、薄板30は、ロータ72とは当接していない。
また、図2、3、4、6に示すように、回転軸部723には、ギアに相当する歯部724が一体に形成されている。ロータ72の回転と共に歯部724が回転する。尚、薄板30には、図1に示すように回転軸部723の回転を許容する逃げ孔37が形成されている。歯部724は、減速部材20の歯部24と噛合っている。減速部材20は、図1に示すように略中心に軸孔23を有している。図1乃至図3に示すように、シャッタ基板80の支軸83と軸孔23とが係合して、減速部材20は回転自在に支持されている。また、減速部材20はカム溝26を有している。減速部材20は、歯部724の歯幅より薄いシート状に形成されている。具体的には、減速部材20の厚さは、0.03~0.15mm程度に設定されている。好ましくは、0.05~0.10mmである。
ここで、シート状の材料とは、可撓性の有無を問わない。例えば可撓性を有しない、ポリアセタール樹脂やポリエチレンテレフタラート樹脂や金属であってもよい。本実施例において減速部材20は、可撓性を有するシート状の部材により形成されている。歯部24は、減速部材20の外周の略半周にわたって形成されている。カム溝26は、軸孔23とは中心が異なる円弧状に形成されている。
羽根40の駆動について説明する。歯部724が回転すると、歯部724と歯部24との噛合いにより減速部材20が回転する。減速部材20が回転すると、カム溝26と係合する従動ピン66が光軸周りに回転する。従動ピン66は、駆動リング60に立設されている。図2に示した全開状態から、減速部材20が時計方向に回転すると、図3に示すように、駆動リング60が反時計方向に回転する。
また、駆動リング60には、駆動ピン64が形成されている。駆動ピン64には、それぞれ羽根40に形成された係合溝44が係合している。また、羽根40は、図1に示すように軸孔42が形成されており、それぞれシャッタ基板80に形成された固定軸82と係合する。これにより羽根40は、固定軸82を支点として揺動可能に支持される。
尚、図1に示すように、シャッタ基板10、薄板30、50のそれぞれには、駆動ピン64の移動を許容する逃げ孔14、34、54が形成されている。シャッタ基板10、薄板30のそれぞれには、従動ピン66の移動を許容する逃げ孔16、36が形成されている。薄板30、50のそれぞれには、固定軸82が挿入される逃げ孔32、52が形成されている。尚、シャッタ基板10に設けられた係止爪19と、シャッタ基板80に設けられた係止部89とが係合することにより、羽根駆動装置1は組み立てられる。
駆動リング60が全開状態から反時計方向に回転すると、駆動ピン64が光軸周りに反時計方向に移動する。これにともない、羽根40は、固定軸82を支点として開口51の中心に近づくように揺動する。このようにして、開口51の口径が調整される。尚、電磁アクチュエータ70の回転位置を制御することにより、開口51の口径を連続的に調整できる。
尚、開口11、81の大きさよりも、開口31、51の方が小さい。また、開口31、51も略同径である。従って、全開状態での光量は、開口31、51によって画定されている。
次に、磁性体90について詳細に説明する。ロータ72と磁性体90との間に磁気的な吸引力が作用しているので、磁性体90は、ロータ72側に付勢される。これにより、減速部材20は、薄板30側に押圧されるように力が作用する。
また、減速部材20は、ロータ72に連動している。このため、薄板30に対する減速部材20の摺動抵抗が増し、減速部材20と薄板30とは摺接する。また、磁性体90と減速部材20とが摺接することによっても、磁性体90に対する減速部材20の摺動抵抗が増す。これにより、減速部材20に対しては負荷が与えられる。従って、ロータ72の回転に対しても負荷が与えられ、ロータ72のハッチングが防止されている。ハッチングが防止されることにより、光量の調整精度が向上し、再露光を防止できる。また、羽根駆動装置1の作動音が低減する。
このように作動音が低減されているので、例えば動画撮影機能を有したカメラに本実施例に係る羽根駆動装置を採用した場合、動画撮影時に羽根駆動装置の作動音が収録されてしまうような恐れを回避できる。
また、ハッチングを防止すためにコイル状のバネを用いた場合と比較し、羽根駆動装置1の軸方向での薄型化が達成される。また、磁気的な吸引力は半永久的に変化しない。このため、バネのように長期的な使用に伴って付勢力が低減する恐れは少ない。従って、羽根駆動装置1は長期的にハッチングを防止できる。
また、磁性体90の材質や大きさ、厚さを変更することにより、磁性体90とロータ72との間に作用する磁気的な吸引力を調整できる。これにより、ロータ72に対する負荷を容易に変更することができる。
また、磁性体90は、貫通孔93を介して回転軸部723に貫通されているので、羽根駆動装置1は、軸方向での薄型化が確保されている。
また、減速部材20は、ロータ72の回転よりも減速して回転する。磁性体90は、このように減速された減速部材20に対して負荷を与える。これにより、ロータ72のみに直接負荷を与える場合よりも、ロータ72のハッチングを効果的に防止できる。
また、減速部材20の一部分が磁性体90によりロータ72側に押さえつけられるので、例えば組立作業中に減速部材20がめくれることが防止される。これにより、組立作業性が向上する。また、磁性体90はバネのように伸縮しないため、組立が容易である。
尚、磁性体90の径は、小型化の観点からは、ロータ72の径の1.5倍以下、製造の容易化の観点からは、ロータ72の径の0.5倍以上が好ましい。また、磁性体90の厚さは、0.05mm~0.1mm程度が好ましい。
次に、磁性体の変形例について説明する。図7(A)(B)は、磁性体の変形例を示した図である。図7(A)に示すように、貫通孔93の付近には、貫通孔93の中心部に向けて突出した2つの突部94が形成されている。図7(B)は、回転軸部723に貫通された磁性体90aを示している。回転軸部723と磁性体90aとは、回転軸部723と突部94とが噛合うようにして、嵌合している。これにより、磁性体90aは、回転軸部723と共に回転する。即ち、磁性体90aは、ロータ72に連動して回転する。これにより、貫通孔93の内周面と歯部724とが摺接して、歯部724の先端が削れることを防止できる。尚、磁性体90aは、軸方向に移動可能に回転軸部723と嵌合している。
次に、羽根駆動装置の変形例について説明する。図8は、羽根駆動装置の変形例の断面図である。図8に示すように、羽根駆動装置1aは、薄板30を有していない。磁性体90とロータ72との間に、減速部材20のみが挟まれている。また、減速部材20は、ロータ72、及び、磁性体90の両方に摺接する。ロータ72と磁性体90によって、減速部材20を挟み込み、スラスト方向の圧力を加え、ロータ72と減速部材20の間の摩擦力を高めているので、ロータ72は、減速部材20によって回転方向の負荷が与えられ、ガタつきが防止される。これにより、ロータ72のハッチングが防止される。尚、磁性体90の代わりに、ロータ72と連動する磁性体90aを採用してもよい。
仮に、コイルバネなどにより、ロータ72が軸方向の一方側に直接付勢されガタつきを防止する従来の軸受け構造とした場合には、ロータ72と支軸87の接触抵抗が大きくなるので、ロータ72、または、支軸87の摩耗が促進されることがある。また、この場合には、摩耗を抑制するために、ロータ72と支軸87との間に潤滑剤を塗布することも考えられるが、ロータ72と支軸87との間に潤滑剤を塗布すると、潤滑剤が飛散する恐れがある。本実施例では、ロータ72と磁性体90によって、減速部材20を挟み込みことにより、減速部材20とロータ72に回転方向の負荷を相互に与えているので、ロータ72の軸方向の負荷を小さく出来、ロータ72と支軸87の接触抵抗を極めて小さく出来るので、ロータ72、または、支軸87の摩耗が抑制され、潤滑剤を塗布する必要などもない。
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
例えば、ロータ72に連動する磁性体90aとロータ72との間に、薄板30のみを配置し、ロータ72と薄板30とが摺接するように構成してもよい。また、薄板30と磁性体90aとが摺接するように構成してもよい。また、薄板30が、ロータ72及び磁性体90aの双方と摺接するように構成してもよい。
磁性体90とロータ72との間に、薄板30のみを配置し、ロータ72と薄板30とが摺接する用に構成してもよい。
磁性体90とロータ72との間に減速部材20と薄板30とが挟まれ、磁性体90側に薄板30が配置され、ロータ72側に減速部材20を配置し、ロータ72と減速部材20とが接触しないように配置してもよい。この場合、磁気的な吸引力により、薄板30が減速部材20に押し付けられて、薄板30と減速部材20とは摺接する。これにより、ロータ72の回転に抵抗を与えることができる。
また、ロータ72に連動する磁性体90aと、ロータ72との間に、減速部材20のみを配置し、減速部材20が磁性体90aと摺接し、かつ減速部材20がロータ72とも摺接するように構成してもよい。この場合、ロータ72の回転に強い負荷を与えることができる。
本実施例において、ロータ72は、円筒部722と回転軸部723とがインサート成形により一体に形成された例を挙げたが、ロータと回転軸を別部品で構成し、圧入等により一体に形成してもよい。また、本実施例においては、回転軸部723に一体に歯部724が形成されているが、このような構成に限定されず、例えば回転軸にピニオンギアを圧入するものであってもよい。
本実施例において、本発明の減速機構を用いた駆動装置として、羽根駆動装置やレンズ駆動装置の例を挙げたが、これに限定されず、例えばシャッタ羽根やNDフィルタを駆動して開口の光量を調整し、撮像素子へ入射する被写体光の光量を制御するシャッタ駆動装置に用いてもよい。