明 細 書
画像処理装置および画像処理方法
技術分野
[0001] 本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関し、詳しくは、記録媒体に記録 すべき画像を、複数回の記録ヘッドの走査で分割して形成するときに用いる画像デ ータの生成に関するものである。
背景技術
[0002] パーソナルコンピュータ等、情報処理機器の普及に伴い、画像形成端末としての記 録装置も広く普及している。特に、吐出ロカ インクを吐出させて紙などの記録媒体 に記録を行うインクジェット記録装置は、ノンインパクト型で低騒音の記録方式である こと、高密度かつ高速な記録動作が可能であること、カラー記録にも容易に対応でき ることなどの利点を有している。この点で、インクジェット記録装置は、パーソナルユー スの記録装置として主流となりつつある。
[0003] インクジェット記録技術は、このような広範な普及によって、記録画質のより一層の 向上が求められるようになってきている。特に、近年では、家庭で手軽に写真をプリン トできるようなプリントシステムといった環境から、銀塩写真に劣らない記録画像の品 位が求められて来ている。このような銀塩写真との比較において、記録画像における 粒状感は従来からの問題の一つである。そして、この粒状感を低減するための様々 な構成が提案されている。
[0004] 例えば、通常のシアン、マゼンタ、イェローおよびブラックのインクの他に、染料など 色材の濃度がより低いライトシアンやライトマゼンタのインクを用いるインクジェット記 録装置が知られている。このような装置では、記録濃度の低い領域でライトシアンや ライトマゼンタのインクを用いることにより粒状感を低減させている。また、濃度の高い 領域では通常濃度のシアンやマゼンタのインクを用いることによって、より広い色再 現範囲や滑らかな階調性を実現してレ、る。
[0005] また、記録媒体に形成するドットの大きさをより小さく設計して粒状感を低減する方 法も知られている。これを実現するために、記録ヘッドの吐出ロカ 吐出されるインク
滴を少量化する技術も進められて来ている。この場合、インク滴の少量化のみならず 、多くの吐出口を高密度で配列することにより、記録速度を損なわずに高解像度の画 像を同時に得ることも可能となる。
[0006] 以上のような用いるインクに着目した粒状感低減技術の他に、画像処理によって対 処するものとして、面積階調法に着目したものが知られている。インクジェット記録装 置は、画素に対するドットの形成の有無を決定しこれに従った記録を実行する。この 際、濃度情報を有する多値の画像データは、量子化処理が施されて、最終的に 2値 のデータ、つまりドット形成の有無を決定するデータに変換される。このように、記録 画像において巨視的に観察される広さのエリアは、記録するドットの数および配列に よって濃度なレ、し階調が表現される。このような濃度なレ、し階調表現を一般には面積 階調法と称している。面積階調法では、同じ濃度を表現するのにドット配列方法に様 々のものがある。例えば、 R. Floidと L. Steinbergの非特許文献 1に記載されるよう な誤差拡散法によるドット配置方法が知られている。また、誤差拡散法以外の方法と しては、特許文献 1や特許文献 2に開示されるような組織的ディザ法によるドット配置 方法が知られている。これらの手法によれば、形成されるドットの配置は分散性に優 れ、ドット配置の空間周波数における低周波成分が少ない、視覚的に好ましい画像 を得ること力 Sできる。このように、誤差拡散法やディザ法を用いてドットデータ(2値デ ータ)を求める際に、記録画像の画質を考慮した 2値化処理が行われて!/、る。
[0007] ところで、インクジェット記録装置におけるいわゆるシリアル型の装置では、マルチ パス記録方式が広く採用されている。なお、以下で用いる「パス」と「走査」は同じ意味 を示すものである。このマルチパス記録では、上述のようにして求めた一定の領域の ドットデータを、インク色およびパスごとのデータに分割する力 その分割はマスクを 用いて行なうのが一般的である。
[0008] 図 1は、このマルチパス記録を説明する図であり、 4回の走査で画像を完成する場 合の、記録ヘッドや記録されたドットパターンなどを模式的に示している。図において 、 P0001は記録ヘッドを示す。ここでは、図示および説明の簡略化のため、 16個の 吐出口(以下、ノズルともいう)を有するものとして表している。ノズル歹 IJは、図のように それぞれ 4つのノズルを含む第 1〜第 4の 4つのノズル群に分割されて用いられる。 P
0002はマスクパターンを示し、各ノズルに対応して記録を許容するマスクの画素(記 録許容画素)を黒塗りで示してレ、る。 4つのノズル群に対応したマスクパターンは互レヽ に補完の関係にあり、これら 4つのパターンを重ね合わせると 4 X 4の画素が総て記 録許容画素となる。すなわち、 4つのパターンを用いて 4 X 4の領域の記録を完成す るようになっている。
[0009] P0003〜P0006は、形成されるドットの配列パターンを示し、記録走査を重ねてい くことによって画像が完成されていく様子を示したものである。このパターンに示すよ うに、マルチパス記録では、それぞれの記録走査で、各ノズル群に対応したマスクパ ターンによって生成された 2値の画像データ(ドットデータ)に基づ!/、てドットを形成す る。そして、記録走査が終了するごとに、記録媒体を図中矢印の方向にノズル群の幅 分ずつ搬送する。このように、記録媒体の各ノズル群の幅に対応した領域は、 4回の 記録走査によってそれぞれの領域の画像が完成する。
[0010] 以上のようなマルチパス記録によれば、製造工程上生じ得る複数ノズル間のインク 吐出方向や量のばらつきや各記録走査の間に行われる紙送りの誤差に起因した濃 度むらなどを目立たなくすることができる。
[0011] なお、図 1では、同一の画像領域に対して 4回の走査を行う 4パス記録を示している 力 S、マルチパス記録は、これに限定されるものではない。 2回の記録走査で画像を完 成させる 2パス記録であっても、 3回の記録走査で画像を完成させる 3パス記録であ つても、あるいは 5回以上の記録走査で画像を完成させる構成であつても良い。
[0012] マルチパス記録では、マスクパターンにおける記録許容画素の配置を工夫すること によって、各記録走査で記録するドット数を調整したり、問題の発生しやすいノズノレ の記録頻度を低減したりすることができる。すなわち、上記濃度ムラやスジの解消以 外にも様々な目的に応じた形態を採ることができる。
[0013] 以上のように、近年のインクジェット記録システムでは、インクの多種類化、多様なマ ルチパス記録の実施に加え、好適な面積階調法(2値化手法)およびマスクパターン の採用によって、高画質で安定した画像を高速に出力することが可能となって!/、る。
[0014] しかしながら、ディザ法によって 2値化を行い、それによつて得られたドットデータを 、マスクパターンを用いてマルチパス記録の走査ごとのデータとする構成では、メモリ
容量や処理の点で問題を生じることがある。すなわち、 2値化に用いるディザパター ンと、走査ごとのデータに分割するために用いるマスクパターンとの 2種類のパターン データが必要となる。この場合、これらパターンデータを格納するためのメモリの容量 力 S増すことになる。また、ディザパターンを用いた 2値化とマスクパターンを用いたデ ータ分割の 2つの処理を行うことによって、それだけ処理負荷が増すことにもなる。 特許文献 1 :特許第 2, 622, 429号公報
特許文献 2:特開 2001— 298617号公報
特許文献 3:特開 2006— 050596号公報
非特許文献 1 :論文「Adaptive Algolithm for Spatial Grey ScaleJ , SDI I nt 'l. Sym. Digest of Tech. Papers, 36〜37項(1975年)
発明の開示
[0015] 本発明の目的は、パターンデータを格納するメモリ容量が少なぐまた、ドットデータ 生成における処理負荷が少なくて済む、上記分割画像のドットデータ生成を可能と する画像処理装置および画像処理方法を提供することである。
[0016] 上記目的を達成するための本発明は、記録媒体の単位領域に記録すべき画像を 記録ヘッドの複数回の記録動作によって完成させるために、前記複数回の記録動作 夫々で記録する分割画像に対応したドットデータを生成するための画像処理装置で あって、前記単位領域に記録すべき画像を示す多値の画像データに基づいて、ディ ザパターンを用いて、前記分割画像に対応したドットデータを生成する画像処理手 段を備え、前記画像処理手段は、前記分割画像の夫々が前記単位領域内の異なる 位置に記録されるように、前記分割画像に対応したドットデータを生成することを特徴 とする。
[0017] 前記画像処理手段は、前記複数回の記録動作夫々に対応した異なる分割率 (例 免ば'、図 13の 1/2と 2/2や、図 14の 1/4と 2/4と 3/4と 4/4や、図 21の 1/2と 2/2)に従って、前記単位領域に記録すべき画像に対応した多値の画像データを 分割する分割手段と、前記異なる分割率に従って分割された多値の画像データそれ ぞれを前記ディザパターンを用いて 2値化し、当該 2値化の結果に基づいて前記分 割画像に対応したドットデータ(例えば、図 13のドットデータ B、 Cや、図 14のドットデ
一タ八、 C、 E、 Gや、図 21のドットデータ Al、 A2)を生成する生成手段とを備えること が好ましい。
[0018] また、前記生成手段は、前記異なる分割率に従って分割された多値の画像データ それぞれを 2値化することで複数のドットデータ(例えば、図 13のドットデータ A、 Bや 図 14のドットデータ A, B, D, F)を生成し、当該複数のドットデータに基づいて前記 分割画像に対応したドットデータ(例えば、図 13のドットデータ B、 Cや図 14のドットデ ータ A, C, E, G)を生成することが好ましい。
[0019] また、前記生成手段は、前記異なる分割率のうちある分割率 (例えば、図 13の 2/ 2や図 14の 3/4)に従って分割された多値の画像データを 2値化することで得られる あるドットデータ(例えば、図 13のドットデータ Aや図 14のドットデータ D)から、前記 異なる分割率のうち別の分割率(例えば、図 13の 1/2や図 14の 2/4)に従って分 割された多値の画像データを 2値化することで得られる別のドットデータ(例えば、図 13のドットデータ Bや図 14のドットデータ B)を差し引くことにより、前記ある分割率に 対応した記録動作で記録する分割画像に対応したドットデータ(例えば、図 13のドッ トデータ Cや図 14のドットデータ C)を生成することが好ましい。
[0020] また、前記生成手段は、前記異なる分割率のうちある分割率 (例えば、図 21の 1/ 2)に従って分割された多値の画像データ(例えば、図 21の D1)を 2値化することによ つてある分割画像に対応したドットデータ(例えば、図 21のドットデータ A1)を生成し 、当該ある分割画像に対応したドットデータ(例えば、図 21のドットデータ A1)に基づ いて前記異なる分割率のうち別の分割率 (例えば、図 21の 2/2)に従って分割され た多値の画像データ(例えば、図 21の D2)を 2値化することによって別の分割画像に 対応したドットデータ(例えば、図 21のドットデータ A2)を生成することが好ましい。
[0021] また、前記画像処理手段は、前記単位領域に記録すべき画像に対応した多値の 画像データを前記複数回の記録動作夫々に対応した画像データに分割する処理と 、前記多値の画像データを 2値化する処理を前記ディザパターンによって同時に行う ことによって、前記分割画像に対応したドットデータを生成することを特徴とすることが 好ましい。
[0022] また、本発明は、画像を完成するための複数回の記録動作それぞれで記録する分
割画像のドットデータを生成する画像処理装置であって、前記複数の分割画像に分 割して記録するためのそれぞれの記録率のうち、記録順序が連続する複数の前記分 割画像それぞれに対応した複数の記録率を加算して得られる第 1分割率およびそれ より加算数力 つ少ない第 2分割率それぞれによって前記完成すべき画像のデータ を分割し、それぞれ第 1分割データおよび第 2分割データを得る分割手段と、 前記 第 1分割データおよび第 2分割データを、ディザパターンを用いて 2値化し、第 1ドット データおよび第 2ドットデータを得る 2値化手段と、前記第 1ドットデータから前記第 2 ドットデータを差し引いて、前記複数回の記録動作の 1つで記録する分割画像のドッ トデータを生成する生成手段と、を具えたことを特徴とする。
[0023] また、本発明は、記録媒体の単位領域に記録すべき画像を記録ヘッドの複数回の 記録動作によって完成させるために、前記複数回の記録動作夫々で記録する分割 画像に対応したドットデータを生成するための画像処理方法であって、前記単位領 域に記録すべき画像を示す多値の画像データに基づいて、 1つのディザパターンを 用いて、前記分割画像に対応したドットデータを生成する画像処理手段を備え、前 記画像処理手段は、前記分割画像の夫々が前記単位領域内の異なる位置に記録さ れるように、前記分割画像に対応したドットデータを生成することを特徴とする。
[0024] また、本発明の別の形態は、前述した画像処理方法をコンピュータに実行させるた めのコンピュータプログラムである。
[0025] 以上の構成によれば、パターンデータを格納するメモリ容量が少なくて済み、また、 ドットデータ生成における処理負荷が少なくて済む、上記分割画像のドットデータ生 成が可能となる。
図面の簡単な説明
[0026] [図 1]図 1はマルチパス記録を記録ヘッドや記録されたドットパターンなどによって模 式的に示す図である。
[図 2]図 2は 2パス記録を行う場合の、記録ヘッドと記録媒体との関係を示した図であ
[図 3]図 3 (a)および (b)は、本発明の一実施形態に係り、 C、 M、 Yのインクを用いて 2パスのマルチパス記録を行う場合を説明する図である。
園 4]図 4は本発明の第一の実施形態に係る画像処理装置としてのパーソナルコンビ ユータのハードウェアおよびソフトウェアの構成を主に示すブロック図である。
園 5]図 5は本発明の第一の実施形態に係る画像処理の手順を示すフローチャート である。
[図 6]図 6は図 5に示す処理との比較のために示す従来の画像処理を示すフローチヤ ートである。
園 7]図 7は図 5に示すパス分割および 2値化処理で本発明の第一の実施形態に係 る処理の詳細を説明する図である。
[図 8]図 8 (a)〜(d)は、記録データの量子化に用いるマスクパターンの干渉の問題を 説明する図である。
園 9]図 9は第 1実施形態に係り、 256値の画像データを 2値化するためのディザバタ ーンを示す図である。
園 10]図 10は入力画像データそのままを図 9に示すディザパターンによって 2値化し た結果であるドットデータを示す図である。
[図 11]図 11は上記入力画像データの各画素値に対して、 1/2を掛けて得られるデ ータを、図 9に示すディザパターンで 2値化した結果であるドットデータを示す図であ 園 12]図 12は本発明の第 2の実施形態に係る画像処理の手順を示すフローチャート である。
[図 13]図 13は図 12のパス分割 /2値化処理を模式的に示す図である。
園 14]図 14は本発明の第 3の実施形態に係るパス分割 /2値化処理を説明する図 である。
園 15]図 15は本発明の第 4の実施形態のパス分割 /2値化処理を説明する図であ 園 16]図 16 (a)および (b)は、本発明の第 5の実施形態に係る 2パス記録おけるパス ごとのグラデーション記録を説明する図である。
園 17]図 17は本発明の第 5の実施形態に係るパス分割 /2値化処理によって得られ る 1パス目のドットデータの一例を示す図である。
[図 18]図 18は第 5の実施形態に係り、そのままの画像データを図 9に示すディザバタ ーンで 2値化した結果を示す図である。
[図 19]図 19は図 18に示すドットデータから図 17に示すドットデータを引レ、た結果で ある 2パス目のドットデータを示す図である。
[図 20]図 20は本発明の第 6の実施形態に係り、ノズル配列に対応した記録率の一例 を示す図である。
[図 21]図 21は本発明の第 7の実施形態のパス分割 /2値化処理を説明するブロック 図である。
発明を実施するための最良の形態
[0027] 以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
[0028] (第 1実施形態)
本発明の第一の実施形態は、インクジェット記録装置で用いるシアン (C)、マゼンタ (M)、およびイェロー(Y)それぞれのインクについて、 2回の走査に分けてインク吐 出を行うことにより記録を行う形態に関する。この場合、 2回の走査に分割した記録動 作に対応して、 C、 M、 Yインクそれぞれの記録ヘッドを駆動するための 2値データ( 以下、「ドットデータ」あるいは「吐出データ」とも言う)が存在する。本明細書では、こ れらの色および走査で区別される画像データ(2値データまたは多値データ)の画素 ごとに配列した集合を、「プレーン」と呼ぶ。
[0029] 図 2は、プリンタで実行される 2パス記録における記録ヘッドと記録媒体の関係を模 式的に示す図である。以下で説明するように、 2パス記録の場合、記録ヘッドの 2回 の走査によって記録媒体の所定の単位領域に記録すべき画像を完成させる。
[0030] シアン、マゼンタ、イェローの各色ノズル群は第 1グループおよび第 2グループの 2 つのグループに分割され、各グループには 128個ずつのノズルが含まれている。従 つて、各色のノズル数は、それぞれ 256個ずつで構成されている。
[0031] 各色ノズル群はノズル配列方向と略直交する方向(図の矢印で示した「ヘッド走査 方向」)へ走査しながら記録媒体の、ノズルグループの配列幅に対応した各単位領 域にインクを吐出する。この例では、 C, Μ, Υの 2値の画像データに基づいて、各単 位領域に対して C, Μ, Υのインク吐出が行われる。また、走査が終了するたびに、記
録媒体は走査方向と直交する方向(図の矢印で示した「記録媒体搬送方向」)に 1つ のブループの幅分(ここでは、単位領域の幅と同じ 128画素分)ずつ搬送される。こ れにより、各単位領域は 2回の走査によって画像が完成する。
[0032] 具体的には、第 1走査で記録媒体上の領域 Aに対して、 Cノズル群の第 1グループ 、 Mノズル群の第 1グループ、 Yノズル群の第 1グループを用いて C、 M、 Yの順番で 記録が行われる。次に、第 2走査で、第 1走査での記録が終了した領域 Αに対して、 Cノズル群の第 2グループ、 Mノズル群の第 2グループ、 Yノズル群の第 2グループを Y、 M、 Cの順番で用いて残りの記録が行われる。これとともに、未記録状態の領域 B に対して、 Cノズル群の第 1グループ、 Mノズル群の第 1グループ、 Yノズル群の第 1 グループを用いて Y、 M、 Cの順番で記録が行われる。さらに、このような動作を続け ることで、 Cl、 Ml、 Yl、 Y2、 Μ2、 C2の J頓番、あるいは Yl、 Ml、 Cl、 C2、 M2、 Y 2の順番で各単位領域 (領域 A、領域 について記録が行われていく。
[0033] 図 3 (a)および(b)は、上記図 2のように C、 M、 Yのインクを用いて 2パスのマルチパ ス記録を行う場合の、単位領域に対する記録順を説明する図である。
[0034] 図 3 (a)は、往走査、復走査の順で記録される領域(図 2の領域 A)の画像が完成し ていく様子を示したものである。 1回目の走査である往走査(1パス目)では、最初に、 図 5にて後述されるデータ(パス)分割 /2値化処理よつて生成したシアンのドットデ ータに基づいてシアン画像を記録する。続いて同じ走査で、マゼンタおよびイェロー についても同様にデータ (パス)分割 /2値化処理によって生成したドットデータに基 づいて記録する。すなわち、マゼンタ画像をそれより前に記録したシアン画像に重ね て、さらに、イェロー画像をそれより前のシアン、マゼンタ画像に重ねて順次記録する 。記録媒体を所定量搬送した後の、 2回目の走査である復走査(2パス目)では、同 様に、順次、後述のデータ分割 /2値化によって生成したそれぞれイェロー、マゼン タおよびシアンのドットデータに基づき、それより前に記録した画像に重ねて順次記 録する。
[0035] 一方、図 3 (b)は、復走査、往走査の順で記録される領域(図 2の領域 B)の画像が 完成して!/、く様子を示したものである。 1回目の走査である復走査(1パス目 )では、 最初に、同じく後述のデータ (パス)分割 /2値化処理によって生成したイェローのド
ットデータに基づいてイェロー画像を記録する。続いて同じ走査で、マゼンタおよび シアンそれぞれについて同じく後述のデータ(パス)分割 /2値化処理によって生成 したドットデータに基づいて記録する。すなわち、マゼンタ画像をそれより前に記録し たイェロー画像に重ねて、さらに、シアン画像をそれより前に記録したイェロー、マゼ ンタ画像に重ねて順次記録する。記録媒体を所定量搬送した後の、 2回目の走査で ある往走査(2パス目)では、同様に、順次、同様に生成したそれぞれシアン、マゼン タおよびイェローのドットデータに基づき、それより前に記録した画像に重ねて順次 記録する。
[0036] 本実施形態は、 C、 M、 Yの 3色インクによって区別される 2値データはディザパター ンを用いて生成する力 走査ごとのデータ生成 (パス分割)もこのディザパターンを用 いた一連の処理の過程で行う。具体的には、 C、 M、 Y各 8ビット 256値のデータを、 5 ビット 17値のデータとする。そして、このデータの値に 2パス記録の走査回数 2に基づ く 1/2を乗じた値のデータに対してディザパターンを用いて 2値化し、このデータを 1 パス目のドットデータとする。また、同様に上記 17値データに 2/2を乗じた値のデー タ(元のままのデータ)に対してディザパターンを用いて 2値化して得られたドットデー タから、上記 1パス目のデータを除!/、たデータを 2パス目のドットデータとする。
[0037] これにより 6プレーンのドットデータ生成をマスクパターンを用いずに行うことから、そ のパターンデータを格納するメモリ領域を省くことができ、メモリ容量の増大を防ぐこと ができる。
[0038] 本実施形態のディザパターンは、本願人の出願に係る特許文献 3に記載されたパ ターンを用いる。このディザパターンは、色ごとに用いられるパターンにおける閾値の 配置がそれぞれのパターン内で分散しているとともに、色ごとのパターン相互でも閾 値の配置が分散したものである。これにより、本実施形態のパス分割 /2値化処理に よって得られる 6プレーンのドットデータを、相互に分散したものとすることができる。 その結果、いくつかのプレーンの重ね合わせである中間画像におけるドットの偏りを できるだけ抑制し、前述したグレインなレ、しビーディングを良好に低減することが可能 となる。
[0039] 例えば、図 3 (a)の順で記録される各走査(以下、パスとも言う)における記録ヘッド
の吐出順序である、 1パス目の C、 1パス目の M、 1パス目の Y、 2パス目の Υ、 2パス 目の Μ、 2パス目の Cの順でそれぞれ重ねたときに得られる、「1パス目の C+ 1パス 目の Μ」、「1パス目の C+ 1パス目の Μ+ 1パス目の Υ」、「1パス目の C+ 1パス目の Μ+ 1パス目の Υ+ 2パス目の Υ」、「1パス目の C+ 1パス目の Μ+ 1パス目の Υ+ 2 パス目の Υ+ 2パス目の Μ」、「1パス目の C+ 1パス目の Μ+ 1パス目の Υ+ 2パス目 の Υ+ 2パス目の Μ + 2パス目のじ」それぞれのプレーンの重なりにおけるドット分布 ヽできるだけ偏りがないように、上記の各プレーンの 2値データを生成することがで きる。特に、最終の重なりである「1パス目の C+ 1パス目の Μ+ 1パス目の Υ+ 2パス 目の Υ+ 2パス目の Μ + 2パス目の C」の分散性はもちろんのこと、それ以外の、プレ ーンの中間の重なり(以下、本明細書では「中間画像」とも言う。)におけるドットの分 布も、偏りが少なくするような 2値データ生成を行うことができる。
[0040] また、図 3 (b)の順で記録される領域でも同様である。 1パス目の Y、 1パス目の Μ、 1パス目の C、 2パス目の C、 2パス目の M、 2パス目の Yの順でそれぞれ重ねたときに 得られる同様の中間画像のドットの分布が偏りがないようにデータ生成を行うことがで きる。以下の説明では、図 3 (a)の領域について詳細に説明する力 S、図 3 (b)に示す 領域でも、インクの打ち込まれる順番が異なるだけで、その打ち込み順に沿って同様 の処理を行っていけばよい。また、本実施形態において処理対象とするプレーンの 画素数は、 128画素(ノズル配列方向) X記録幅に相当する画素数(主走査方向)と なっている。
[0041] なお、ブラック (Bk)を加えた 4色のインクを用いる場合、さらには濃度の低い淡イン クゃレッド、ブルー、グリーンなどの特色インクをさらに加えて用いる場合についても、 同様に本発明を適用できることは、以下の説明力、らも明らかである。
[0042] 図 4は、本発明の第一の実施形態に係る画像処理装置 (画像データ生成装置)とし てのパーソナルコンピュータ(以下、単に PCとも言う)のハードウェアおよびソフトゥェ ァの構成を主に示すブロック図である。
[0043] 図 4において、ホストコンピュータである PC100は、オペレーティングシステム(OS) 102によって、アプリケーションソフトウェア 101、プリンタドライバ 103、モニタドライバ 105の各ソフトウェアを動作させる。アプリケーションソフトウェア 101は、ワープロ、表
計算、インターネットブラウザなどに関する処理を行う。モニタドライバ 104は、モニタ 106に表示する画像データを作成するなどの処理を実行する。
[0044] プリンタドライバ 103は、アプリケーションソフトウェア 101から OS 102へ発行される 画像データ等を画像処理して、最終的にプリンタ 104で用いる 2値の吐出データを生 成する。詳しくは、図 5で後述される画像処理を実行することにより、 C、 M、 Yの多値 の画像データから、プリンタ 104で用いる C、 M、 Yの 2値の画像データを生成する。 こうして生成した 2値の画像データは、プリンタ 104へ転送される。
[0045] ホストコンピュータ 100は、以上のソフトウェアを動作させるための各種ハードウェア として、 CPU108、ハードディスクドライブ(HD) 107、 RAM109, ROM110などを 備える。すなわち、 CPU108は、ハードディスク 107や ROM110に格納されている 上記のソフトウェアプログラムに従ってその処理を実行し、 RAM109はその処理実 行の際にワークエリアとして用いられる。
[0046] 本実施形態のプリンタ 104は、図 2にて説明した通り、インクを吐出する記録ヘッド を記録媒体に対して走査し、その間にインクを吐出して記録を行ういわゆるシリアル 方式のプリンタである。 C、 M、 Yそれぞれのインクに対応した各吐出口群を有する記 録ヘッドがキャリッジに装着されることにより、記録用紙などの記録媒体に対して走査 すること力 Sできる。記録ヘッドの各吐出口に連通する流路には、電気熱変換素子や 圧電素子等の記録素子が設けられ、これら記録素子を駆動することにより吐出口から インクが吐出される。各吐出口の配列密度は 2400dpiであり、それぞれの吐出口か ら 3. 0ピコリットルのインクが吐出される。また、各色吐出口群の吐出口の数は 256個 である。
[0047] プリンタ 104は、不図示の CPU、メモリ等を備えている。ホストコンピュータ 100から 転送されてきた 2値の画像データは、プリンタ 104のメモリに格納される。そして、プリ ンタの CPUの制御の下、メモリに格納されている 2値の画像データが読み出され、記 録ヘッドの駆動回路へ送られる。駆動回路は、送られてきた 2値の画像データに基づ いて記録ヘッドの記録素子を駆動し、吐出口からインクを吐出させる。
[0048] 本実施形態の記録方式は、図 2にて上述したように、 2回の走査で所定の領域の記 録を順次完成して行ぐいわゆる 2パスのマルチパス方式である。この 2パス記録にお
いて、各走査でそれぞれの吐出ロカ、らインクを吐出するための 2値の画像データは、 図 5にて後述する画像処理によって生成されるものである。これによつて、図 3 (a)で 説明したように、 1パス目の C、 1パス目の M、 1パス目の Y、 2パス目の Υ、 2パス目の Μ、 2パス目の Cの順でそれぞれ重ねたときに得られるプレーンのそれぞれの重なり におけるドット分布の偏りが少ないものとすることができる。
[0049] 図 5は、本発明の第一の実施形態に係る画像処理の手順を示すフローチャートで ある。また、図 6は比較のために示す従来の、ディザパターンを用いた 2値化とマスク パターンを用いたパス分割を含む画像処理のフローチャートである。以下、画像処理 のうち、特にプレーンごとの画像データ生成処理について従来例の画像処理と比較 しながら、本実施形態に係る画像処理を説明する。
[0050] 先ず、ステップ S301、 S401で、アプリケーションなどによって得られた画像の R、 G 、 Bデータについて入力 γ補正などの色調整処理を行う。次に、ステップ S302、 S40 2で、 RGBの画像データについて、 R、 G、 Bによる色域からプリンタで用いるインクの 色成分 C、 M、 Yによる色域への変換、ならびに変換した色域における色を表現する 色成分データ C、 M、 Yの生成を行う。これらの処理は、通常ルックアップテーブルに 補間演算を併用して行う。この処理によって、 R、 G、 Bの各 8ビットの画像データは、 C、 M、 Yの各 8ビットデータ(多値の画像データ)に変換される。次に、ステップ S303 、 S403で出力 Ί補正を行い、プリンタ 104で用いられる記録ヘッドの入出力階調特 性を調整する。次に、ステップ S304、 S404で、それぞれ 17値化処理を行ない、 17 値の多値画像データを得る。この 17値化処理は、例えば、誤差拡散処理などの擬似 階調処理によって行なうことができる。
[0051] 次に、図 6に示す従来例では、ステップ S405で、 C、 M、 Yの 17値画像データそれ ぞれに対して、ディザパターンを用いて 2値化を行い 2値データを得る。次に、ステツ プ S406で、得られた 2値の画像データを、 2パスそれぞれの記録で用いる 2値データ を得るべくパス分割を行う。このパス分割は、図 1で前述したようにマスクパターンを用 いて行う。この場合、前述したように、マスクパターンと 2値の画像パターンのパターン 干渉を生じる場合がある。また、これらのマスクパターンは、それらによって生成され る C、 M、 Yそれぞれ 2パス分の合計 6プレーンのドットデータ力 S、相互のドット配置に
ついて特に良好な分散性を考慮していないものである。その結果として、図 8 (a)〜 図 8 (d)を参照して後述するように、グレインの問題を生じることがある。
[0052] これに対し、本実施形態では、ステップ S305において、 C、 M、 Yの 17値画像デー タそれぞれに対して、パス分割と 2値化を同時の処理として行う。また、この処理はデ ィザパターンを用いて行なうが、本実施形態では、特許文献 3に開示される方法によ つてインク色ごとに作成されたディザパターンを用いる。このディザパターンは、その 閾値の配置が閾値の大きさの順序に関して分散したものである。また、これらのディ ザパターンはインク色相互においても閾値の配置が閾値の大きさの順序に関して分 散したものである。この「分散している」とは、上記閾値の配置の周波数成分を考えた とき、低周波成分 (例えば、周波数成分が存在する範囲の半分以下)のパワースぺク トルが、高周波数成分より少なレ、ことを意味して!/、る。
[0053] このように閾値の配置が分散したディザパターンを用いて、 2値化だけでなくパス分 割も併せて行うことにより、以下に説明するように、パスごとに形成されるドットの配置 1S それぞれのパスにおいて分散しているとともに、パス間でも分散したものとなる。さ らに、異なるインク色のパス間でもドット配置が分散したものとなる。これにより、記録 の途中で形成されるドットの偏りをなくしてグレインないしビーディングを低減すること カできる。なお、この「分散」とは、上記と同様、ドット配置の低周波成分のパワースぺ タトルが、高周波数成分より少なレ、ことを意味して!/、る。
[0054] 図 7は、図 5のステップ S305のパス分割 /2値化処理を模式的に示す図である。な お、同図では、図 2に示す 2パス記録の単位領域幅の 128ノズル分に対応した 128 画素 X 128画素のサイズのディザパターンおよびそれによつて処理されるデータの プレーンを、説明および図示の簡略化のために、 4画素 X 4画素で表している。
[0055] 図 7において、ディザパターン Ρは特許文献 3に開示される方法によって生成された 、一つの色シアン(C)用のディザパターンである。同図に示すように、閾値;!〜 16は その大きさの順序に関して分散している。また、 17値の画像データは、一例として総 ての画素の値が「4」である、 V、わゆるベタ画像を表して!/、る。
[0056] 本実施形態の 2パス用のパス分割 /2値化処理では、先ず、画像データの各値を パス数 2で割る処理 (分割処理)を行う。すなわち、この 2を分母としたとき、先ず、分
子を 1とした比率 1/2を画像データの各値に掛ける演算を行なう。このように 1パス目 のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率と同じ「1/ 2」にしている。これにより、総ての画素の値が「2」である、分割された 17値データを 得る。
[0057] 次に、この分割されたデータに対してディザパターン Pを用いて 2値化を行う。これ により、 1パス目の 2値(ドット)データ B (1パス目で記録する分割画像に対応したドット データ)を得る。図 7に示すように、ドットデータ Bは、ディザパターンの閾値が「1」、「2 」に対応する画素に" (〇印)が配置されたデータとなる。
[0058] 次に、上記比率に 1/2を加えた比率(1/2+ 1/2)によって得られる分割率と画 像データの各値との積によるデータを求める。すなわち、画像データの各画素の値 に 2/2を掛ける演算を行なう。このように 2パス目のドットデータを得るために、ここで は、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「2/2」にしている。これは 、上記 1パス目のドットデータ生成において分割率 1/2を掛けた画像データによるド ット配置を累積して次の 2パス目のドット配置に反映させるためである。換言すれば、 ディザパターン Pにおける、上記閾値が「1」、「2」に対応する画素には 1パス目で既 にドットが配置されていることを反映させる。なお、本例のように 2パスの場合は、上記 分割率が 2/2となるので、この分割率を掛けて求めるデータは元の画像データとな る。このため、この分割率との積を求める演算は行わないアルゴリズムとしてもよい。 そして、この元の画像データに対してディザパターン Pを用いて 2値化を行う。これに より、 2値(ドット)データ Aを得る。最後に、このデータ Aからデータ Bを引いて 2パス目 のドットデータ C (2パス目で記録する分割画像に対応したドットデータ)を得る。具体 的には、データ Aとデータ Bの否定との論理積を対応する画素間で求める。以上のよ うなディザパターンを適用したパス分割および 2値化処理を、 128画素(ノズル配列 方向) X記録幅に相当する画素数(主走査方向)の 1プレーン分のドットデータを得る まで繰返す。
[0059] このように本実施形態によれば、各パス(各記録動作)に対応した異なる分割率に 従って多値の画像データを分割し、分割された多値データ夫々を同じディザパター ンにより 2値化し、 2値化の結果に基づいて各パスのドットデータを生成する。この際、
各パスにおいてドットが異なる位置に記録されるように各パスのドットデータを生成す
[0060] なお、以上の説明から明らかなように、上記「比率」は最終的に分割される各画像の 記録率に対応している。また、上記の説明では、 1パス目データと 2パス目データをこ の順序で順次に求めるように説明した力 これは説明の便宜上であって、処理の手 順はこれに限られない。画像データに分割率 1/2と分割率 2/2を掛ける処理はど ちらが先に行われてもよい。また、それらの分割率を掛けた結果に対するディザバタ ーンを用いた 2値化処理もどのような順序で行われてもよい。さらには、この 2値化の 結果であるドットデータについて、 2つのデータ間で差し引きして最終的にパスごとの ドットデータを得る処理もどのような順序で行われてもよい。結果的に、 1パス目のドッ トと 2パス目のドットが異なる位置に記録されるように、言い換えれば、 1パス目ドットデ ータと 2パス目ドットデータが重ならないように、各パスのドットデータが生成されれば よい。これは、以下で説明する実施形態でも同様である。
[0061] 以上説明したように、本実施形態によれば、ディザパターンを用いるだけで、パスご との分割データを得るとともに、 2値化を行うことができる。この結果、従来、 2値化の ためのディザパターンと、パス分割のためのマスクパターンの両方が必要であつたの に対し、ディザパターンのみを用いればよぐパターンデータを格納するメモリの容量 増大を防ぐことができる。また、最終的に 2値化の結果を得るまでの処理を、ディザパ ターンを用いた、 2値化とパス分割の同時処理とすることができ、 CPUの処理負荷を 軽減することが可能となる。
[0062] また、ディザパターンの閾値がその大きさの順序に関して分散していることにより、こ のパターンを用いた、各分割率を掛けて得られる分割された 17値データに対するデ ィザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散に従って分散したドットデータと なる。その結果、最終的に得られる 1パス目および 2パス目のドットデータ B、 Cは、そ れぞれのパスのプレーンで分散した配置であるとともに、これらドットデータ間でも分 散した配置となる。また、インク色ごとのディザパターン力 特許文献 3に記載されるよ うに、インク色間で分散した閾値配置となっているので、最終的に得られる各パスのド ット配置は、色間でも分散したものとなる。その結果、いわゆるグレインの問題の発生
を抑制すること力 Sできる。以下、このグレインについて、詳細に説明する。
[0063] ディザパターンを用いて 2値化を行い、その 2値データに対してマスクパターンを用 いてパス分割を行うシステムにおいて、ディザパターンとマスクパターンそれぞれの内 容について相互の関連を特に考慮しない場合、マスクパターンとドットデータとの干 渉あるいはそれに起因したビーディングの問題を生じる場合がある。インク色および 走査に対応したマスクパターン相互の関連を考慮しない場合も同様の問題を生じる こと力 sある。
[0064] 特に、近年のインクジェット記録システムでは、その高速化、高密度化、およびイン クの種類の多様化が目覚しく進むにつれて、ビーディングに関する新たな問題が発 生していることが確認されている。すなわち、高速化、高密度化、インクの種類の増大 は、単位時間当たりおよび記録媒体の単位面積あたりに付与されるインクの量を増 大させる。この場合、記録媒体によっては、付与されるインクの総てを最終的には吸 収可能であったとしても、その吸収速度がインクの付与速度に対応できない場合があ る。すなわち、付与されたインクの総て力 最終的には全て吸収され、定着性ゃスミア などの問題を発生させない場合であっても、画像を完成する前の何回かの走査の段 階で、記録媒体の表面でまだ吸収されて!/、な!/、インク滴同士が接触することがある。 そして、これが後々の画像においてビーディングの問題を引き起こす場合が確認さ れている。
[0065] 例えば、シアンインクとマゼンタインクで表現されるブルーの画像を、 2パスのマル チパス記録方式で記録する場合を考える。シリアル型のインクジェット記録装置の多 くは、シアン、マゼンタ、イェローおよびブラックの基本 4色インクの記録ヘッドがその 主走査方向に並列に配置されている。従って、同一の記録走査では記録媒体の同 一の領域に各色インクが付与される。すなわち上記の場合、シアンおよびマゼンタの ドットデータをマスクパターンでそれぞれ 1/2に間引いて得られるシアンおよびマゼ ンタのデータに基づくインクが、同一の記録走査における極めて短い時間差で記録 媒体に付与される。このとき、付与されるシアンインクとマゼンタインクが同じ画素ある いは隣接する画素に位置する場合など相互に近傍に位置するとき、互いの表面張力 によって引き合い、 2つ分あるいはそれ以上の大きなドット(以下、グレインと称す)が
形成されること力 Sある。一度このようなグレインが形成されると、次にその近傍位置に 付与されたインクはそのダレインに引き寄せられやすくなる。すなわち、最初に発生し たグレインが核となって徐々に成長し、やがて大きなグレインを形成する。このような グレインは、主にインクの付与量が多い高濃度領域において顕著に現れる。そして、 一様な画像領域においては、このようなグレインが不規則に散らばった状態で散在し たものとして認識され、ビーディングとレヽぅ画像弊害となる。
[0066] 上記ダレインの現象は、基本的に、比較的短い時間で複数のインクが近傍に付与 されることによって生じ、その際の引き合う程度はインク同士の表面張力による。しか し、グレインの形成は、インク同士の表面張力にのみに依存するものではない。例え ば、インクとそのインクに反応して凝集などを生じる液体が同じ走査で付与される場 合、接触した各液体はより強固な化学反応によって結合しこれがグレイン核を形成す る場合あある。
[0067] また、同一の走査で、同色のインクを 2列のノズル列を用いて記録するように、同じ 走査で同色のインクが付与される場合もこれらの間でダレインが発生することがある。 さらに、記録媒体のインクに対する吸収特性によっては、マルチパス記録における異 なる走査で付与されるインク同士が近接して付与されるときに上記グレインを生じるこ ともある。
[0068] また、以上のようなグレインの問題を生じさせる他の原因として、マスクパターンと 2 値化されたドットデータとの干渉問題がある。
[0069] 図 8 (a)〜(d)はこの干渉の問題の説明する図である。同図(a)はシアンの 2値画像 データのパターンを示し、同図(b)はシアンの 2パス用マスクパターンのうち 1パス目 のマスクパターン(50%が記録許容画素)を示す。同図(a)の 2値画像データのバタ ーンの大きさは 4 X 4であり、これに対し、同図(b)のマスクパターンは 4 X 4サイズの 記録許容画素を配置したマスクで 2値画像データのパターンに一対一に対応してい
[0070] この場合、 1パス目では、マスクパターンと 2値画像データパターンのアンドデータ である、同図(c)に示すドットパターンが記録されることになる。すなわち、図 8 (a)の 2 値画像データは形成すべきドットが 4個である力 S、 1パス目で実際に形成するドットは
0個になる。逆に、図 8 (d)に示す 2パス目では残りの 4個のドットの総てが形成される ことになる。このように、マスクパターンと 2値画像データ(ドットデータ)との干渉が生じ 、それによつて、マルチパス記録本来の効果が十分に発揮されないなど様々な弊害 をもたらすこと力 Sある。図 8に示す例以外にも、逆のケースつまり 1パス目で 4個のドッ トが形成され、 2パス目で 0個ということもあり得る。また、この干渉は、もちろんデータ のサイズにかかわらず様々な 2値画像データパターンとそれに対応したパスマスクパ ターンとの組合せにお!/、て生じる可能性がある。
[0071] 以上のような干渉は、 2値画像データ全体に対する走査ごとのマスク処理において 、所々で起こる可能性がある。そして、以上に示した干渉による、ある走査に対するド ットの偏りは、上述したマルチパス記録における複数回の走査で画像を完成する場 合の途中の段階の画像(以下、「中間画像」ともいう)を生成するときのグレインの発生 にもつながることがある。
[0072] 以上のように、ディザパターンとマスクパターンを用いて走査ごとの最終的なドットデ ータを求める場合に、走査ごとあるいはインク色ごとに生成されるドットデータ相互の 関連が考慮されていない場合には、上述したグレインなどの問題を生じることがある。 そして、このグレインは、本実施形態によれば、ディザパターンの閾値がその大きさの 順序に関して分散していることにより、このパターンを用いた、各分割率を掛けて得ら れる分割されたディザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散に従って分散 したドットデータとなる。その結果、最終的に得られる各パスのドットデータは、それぞ れのパスのプレーンで分散した配置であるとともに、これらドットデータ間でも分散し た配置となる。また、インク色ごとのディザパターン力 インク色間で分散した閾値配 置となっているので、最終的に得られる各パスのドット配置は、色間でも分散したもの となる。このように本発明の実施形態によれば、メモリの容量増大や処理負荷の抑制 とともに、上述したようにグレインの問題の発生を抑制することが可能となる。
[0073] (第 2実施形態)
上述した第 1の実施形態は、 256値の画像データを 17値化し、その画像データに 対してディザパターンを用い 2値化とパス分割を併せて行う例を示した。これに対し、 本発明の第 2の実施形態は、 256値の画像データに対して、ディザパターンを用い 2
値化とパス分割を併せて行う例に関するものである。
[0074] 図 9〜図 11は、本発明の第 2実施形態に係るパス分割および 2値化処理を同時の 処理として行う場合の、ディザパターン、および 2値化されたデータの二例を示す図 である。すなわち、以下に説明するように、画像データは、 8ビット 256値の画像デー タが直接 2値化される例を示して!/、る。
[0075] 本実施形態の記録方式は、図 2にて上述したように、第 1実施形態と同じく 2回の走 查で所定の領域の記録を順次完成して行ぐ 2パスのマルチパス方式である。この 2 パス記録において、各走査でそれぞれの吐出ロカ、らインクを吐出するための 2値の 画像データは、図 12にて後述する画像処理によって生成されるものである。これによ つて、図 3 (a)で説明したように、 1パス目の C、 1パス目の M、 1パス目の Y、 2パス目 の Υ、 2パス目の Μ、 2パス目の Cの順でそれぞれ重ねたときに得られるプレーンのそ れぞれの重なりにおけるドット分布の偏りが少ないものとすることができる。
[0076] 図 12は、本発明の第 2の実施形態に係る画像処理の手順を示すフローチャートで ある。図 12ίこ示すステップ S120;!〜 S 1203の処理 (ま、図 5のステップ S30;!〜 S303 の処理と同様である。
[0077] すなわち、先ず、ステップ S1201で、アプリケーションなどによって得られた画像の R、 G、 Bデータについて入力 γ補正などの色調整処理を行う。次に、ステップ S 120 2で、 RGBの画像データについて、 R、 G、 Bによる色域からプリンタで用いるインクの 色成分 C、 M、 Yによる色域への変換、ならびに変換した色域における色を表現する 色成分データ C、 M、 Yの生成を行う。この処理によって、 R、 G、 Bの各 8ビットの画像 データは、 C、 M、 Yの各 8ビットデータ(多値の画像データ)に変換される。
[0078] そして、このようにして得られる 8ビットの 256値の C、 M、 Yの画像データそれぞれ に対して、ステップ S1204で、パス分割と 2値化を同時の処理として行う。本実施形 態で用いるディザパターンは、第 1実施形態と同様、特許文献 3に開示される方法に よってインク色ごとに作成されたディザパターンである。すなわち、このディザパター ンは、その閾値の配置が閾値の大きさの順序に関して分散したものである。また、こ れらのディザパターンはインク色相互においても閾値の配置が閾値の大きさの順序 に関して分散したものである。
[0079] このように閾値の配置が分散したディザパターンを用いることにより、第 1実施形態 の場合と同様、 2値化だけでなくパス分割も併せて行うことにより、パスごとに形成され るドットの配置力 それぞれのパスにおいて分散しているとともに、パス間でも分散し たものとなる。さらに、異なるインク色のパス間でもドット配置が分散したものとなる。こ れにより、記録の途中で形成されるドットの偏りをなくしてグレインないしビーディング を低減すること力 Sできる。
[0080] 図 13は、図 12のステップ S 1204のパス分割 /2値化処理を模式的に示す図であ る。なお、図 13では、図 2に示す 2パス記録の単位領域幅の 128ノズル分に対応した 128画素 X 128画素のサイズのディザパターンおよびそれによつて処理されるデー タのプレーンを、説明および図示の簡略化のために、 4画素 X 4画素で表している。
[0081] 図 13において、ディザパターン Pは、特許文献 3に開示される方法によって生成さ れた、一つの色シアン(C)用のディザパターンである。同図に示すように、閾値 1〜2 56はその大きさの順序に関して分散している。また、画像データは、一例として総て の画素の値が「64」である、 V、わゆるベタ画像を表して!/、る。
[0082] 本実施形態の 2パス用のパス分割 /2値化処理では、先ず、画像データの各値を パス数 2で割る処理を行う。すなわち、この 2を分母としたとき、先ず、分子を 1とした比 率 1/2を画像データの各値に掛ける演算を行なう。このように 1パス目のドットデータ を得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率と同じ「1/2」にしている 。これにより、総ての画素の値が「32」である、分割されたデータを得る。
[0083] 次に、この分割されたデータに対してディザパターン Pを用いて 2値化を行う。これ により、 1パス目の 2値(ドット)データ Bを得る。図 13に示すように、ドットデータ Bは、 ディザパターンの閾値が「16」、「32」に対応する画素に" 1" (〇印)が配置されたデ ータとなる。
[0084] 次に、上記比率に 1/2を加えた比率(1/2 + 1/2)によって得られる分割率と画 像データの各値との積によるデータを求める。すなわち、画像データの各画素の値 に 2/2を掛ける演算を行なう。このように 2パス目のドットデータを得るために、ここで は、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「2/2」にしている。これは 、第 1実施形態でも説明したように、上記 1パス目のドットデータ生成において分割率
1/2を掛けた画像データによるドット配置を累積して次の 2パス目のドット配置に反 映させるためである。換言すれば、ディザパターン Pにおける、上記閾値が「16」、「3 2」に対応する画素には 1パス目で既にドットが配置されていることを反映させる。なお 、本例のように 2パスの場合は、上記分割率が 2/2となるので、この分割率を掛けて 求めるデータは元の画像データとなる。このため、この分割率との積を求める演算は 行わないアルゴリズムとしてもよい。そして、この元の画像データに対してディザパタ ーン Pを用いて 2値化を行う。これにより、 2値(ドット)データ Aを得る。最後に、このデ ータ Aからデータ Bを引いて 2パス目のドットデータ Cを得る。具体的には、データ Aと データ Bの否定との論理積を対応する画素間で求める。以上のようなディザパターン を適用したパス分割および 2値化処理を、 128画素(ノズル配列方向) X記録幅に相 当する画素数(主走査方向)の 1プレーン分のドットデータを得るまで繰返す。
[0085] このように本実施形態では、各パス(各記録動作)に対応した異なる分割率に従つ て多 の画像データを分割し、分割された多 データ夫々を同じディザパターンに より 2値化し、 2値化の結果に基づいて各パスのドットデータを生成する。この際、各 パスにおいてドットが異なる位置に記録されるように各パスのドットデータを生成する
[0086] なお、以上の説明から明らかなように、上記「比率」は最終的に分割される各画像の 記録率に対応している。また、上記の説明では、 1パス目データと 2パス目データをこ の順序で順次に求めるように説明した力 これは説明の便宜上であって、処理の手 順はこれに限られない。画像データに分割率 1/2と分割率 2/2を掛ける処理はど ちらが先に行われてもよい。また、それらの分割率を掛けた結果に対するディザバタ ーンを用いた 2値化処理もどのような順序で行われてもよい。さらには、この 2値化の 結果であるドットデータについて、 2つのデータ間で差し引きして最終的にパスごとの ドットデータを得る処理もどのような順序で行われてもよい。結果的に、 1パス目のドッ トと 2パス目のドットが異なる位置に記録されるように、言い換えれば、 1パス目ドットデ ータと 2パス目ドットデータが重ならないように、各パスのドットデータが生成されれば よい。また、図 13では、ディザパターンは、説明を簡易にするために単純な閾値配置 を示している力 S、図 9〜図 11に示す例では、特許文献 3に記載の方法によって定め
れるものの、 1〜256の閾値の配置はより複雑なものになっている。
[0087] 図 9は、 8ビット 256値の画像データを 2値化するための 128画素 X 128画素のサイ ズのディザパターンを示しており、特許文献 3に記載の方法によって生成されたもの である。すなわち、 1から 256の閾値がその大きさの順序に関して分散して配置され たものである。なお、図 9は、各画素における閾値をその大きさに応じた濃度のバタ ーン(8ビットマップデータのパターン)として表して!/、る。
[0088] 図 10は、各画素 25%濃度(画素値 64)の 8ビットベタ画像を画像データとしたとき に、そのままの画像データを図 9に示すディザパターンによって 2値化した結果である ドットデータを示す図である。これは図 13に示すドットデータ Aに相当する。
[0089] また、図 11は、上記 25%濃度の画像データの各画素値に対して、 1/2を掛けて 得られる(12· 5%濃度の)データを、図 9に示すディザパターンで 2値化した結果で あるドットデータを示す図である。これは、図 13に示す 1パス目のドットデータ Bに相 当する。そして、図 13に示す 2パス目のドットデータ Cに相当するデータは、図 10に 示すデータから図 11に示すデータを引くことによって得られる。すなわち、図 10のデ 一タと図 11のデータの否定との論理積によって、 2パス目のデータを得ることができる 。図 11、および図 11と図 10との関係から明らかなように、各パスのドット配置が良好 に分散していることがわかる。
[0090] なお、用いるディザパターンは、上記の例に限られないことはもちろんである。例え ば、特許文献 2に開示されるような、色間の分散は考慮していないが 1つのディザパ ターンにおいて上記と同様に閾値の配置が分散したものを用いることもできる。これ によれば、少なくとも各色についてパス間のドット配置を分散したものとすることができ
[0091] さらには、特許文献 3、特許文献 2に記載されるディザパターンに限らず、一般に用 いられるその他のディザパターンを用いることもできる。これによれば、最終的に得ら れるパスごとのドット配置が良好に分散していない場合でも、ディザパターンを用いる だけで、パスごとの分割データを得るとともに、 2値化を行うことができる。その結果、 ノ ターンデータを格納するメモリの容量増大を防ぐことができるという効果を得ること ができる。
[0092] 以上のとおり、本発明の第 2の実施形態によれば、ディザパターンを 2値化とパス分 割に併用することにより、メモリの容量増大や処理負荷の抑制とともに、グレインの問 題の発生を抑制することが可能となる。
[0093] (第 3実施形態)
本発明の第 3の実施形態は、 4パス記録のためのパス分割および 2値化処理に関 するものである。詳しくは、 8ビット、 256値の画像データを一旦 17値化し、 17値デー タに対して、 2値化と 4パスのパス分割を同時に行うものである。
[0094] 図 14は、本実施形態のパス分割 /2値化処理を説明する図である。図 14に示す ディザパターンおよび 17値の画像データの内容は、それぞれ図 7に示したものと同じ ものである。なお、上記第 1実施形態と同じノズル数の記録ヘッドを用いる場合は、適 用するディザパターンおよびそれによつてパス分割および 2値化の対象となる画像デ ータの、図 14における縦方向(ノズル配列方向に対応)のサイズは、実際は図に示す ものの半分である。しかし、説明の簡略化のため第 1実施形態の 2パスの場合と同じ もので説明する。
[0095] 先ず、画像データの各値をパス数 4で割る処理を行う。すなわち、この 4を分母とし たとき、先ず、分子を 1とした比率 (記録率) 1/4を画像データの各画素値に掛ける 演算を行なう。このように 1パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データ の分割率を、上記比率と同じ「1/4」にしている。これにより、総ての画素の値が「1」 である、分割された 17値データを得る。次に、この分割されたデータに対してディザ ノ ターン Pを用いて 2値化を行う。これにより、 1パス目の 2値(ドット)データ Aを得る。 図 14に示すように、ドットデータ Aは、ディザパターン Pの閾値「1」に対応する画素に "1" (〇印)が配置されるデータとなる。
[0096] 次に、上記比率に比率 1/4を加えて得られる分割率(1/4+ 1/4)と画像データ の各値との積によるデータを求める。すなわち、画像データの各画素の値に 2/4を 掛ける演算を行なう。このように 2パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像 データの分割率を、上記比率を加算して得られる「2/4」にしている。これは、図 7に て説明したのと同様に、 1パス目のドット配置を累積的に 2パス目のドット配置に反映 させるためである。上記演算により、総ての画素の値が「2」である、分割された 17値
データを得る。次に、この分割されたデータに対してディザパターン Pを用いて 2値化 を行い、 2値(ドット)データ Bを得る。このデータのドット配置は、ディザパターン Pの閾 値「1」、「2」に対応する画素にそれぞれ" 1" (〇印)が配置されたものとなる。そして、 この 2/4 (この場合、第 1の分割率)をかけて得られるデータ Bから 1/4 (この場合、 第 2の分割率)をかけて得られるデータ Aを引いたデータを 2パス目のドットデータじと する。すなわち、データ Bとデータ Aの否定との論理積を対応する画素間で求め、こ れをドットデータ Cとする。
[0097] 同様に、 3パス目のデータを求める場合は、先ず、画像データの各画素の値に 3/ 4 (1/4+ 1/4+ 1/4)を掛ける演算を行ない、総ての画素の値が「3」である、分割 された 17値データを得る。このように 3パス目のドットデータを得るために、ここでは、 画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「3/4」にしている。次に、この 分割されたデータに対してディザパターン Pを用いて 2値化を行い、 2値(ドット)デー タ Dを得る。このデータのドット配置は、ディザパターン Pの閾値が「1」、「2」、「3」に 対応する画素にそれぞれ "1" (〇印)が配置されたものとなる。そして、上記と同様、こ の 3/4 (この場合、第 1の分割率)をかけて得られるデータ Dから 2/4 (この場合、第 2の分割率)をかけて得られるデータ Bを引いたデータを 3パス目のドットデータ Eとす る。すなわち、データ Dとデータ Bの否定との論理積を対応する画素間で求め、これ をドットデータ Eとする。
[0098] 最後に、 4パス目のデータを求める場合は、先ず、画像データの各画素の値に 4/ 4 (1/4+ 1/4+ 1/4+ 1/4)を掛ける演算を行ない、総ての画素の値が「4」であ る、分割された 17値データを得る。このように 4パス目のドットデータを得るために、こ こでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「4/4」にしている。な お、このデータは元の画像データと同じものであるので、この 4/4を掛ける処理を行 わずに元のデータをそのまま用いるアルゴリズムとしてもよい。次に、このデータに対 してディザパターン Pを用いて 2値化を行い、 2値(ドット)データ Fを得る。このデータ のドット配置は、ディザパターン Pの閾値が「1」、「2」、「3」、「4」に対応する画素にそ れぞれ "1" (〇印)が配置されたものとなる。そして、同様に、このデータ Fからデータ Dを引いたデータを 4パス目のドットデータ Gとする。すなわち、データ Fとデータ Dの
否定との論理積を対応する画素間で求め、これをドットデータ Gとする。
[0099] 以上説明したように、本実施形態でも、ディザパターンを用いるだけで、パスごとの 分割データを得るとともに、 2値化を行うことができる。この結果、従来、 2値化のため のディザパターンと、パス分割のためのマスクパターンの両方が必要であつたのに対 し、ディザパターンのみを用いればよぐパターンデータを格納するメモリの容量増大 や負荷処理の増大を防ぐことができる。また、ディザパターン Pの閾値がその大きさの 順序に関して分散していることにより、このパターンを用いた、各比率を掛けて得られ る分割の 17値データに対するディザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散 に従って分散したドットデータとなる。その結果、最終的に得られる 1パス目から 4パス 目のドットデータ A、 C、 E、 Gは、それぞれのパスのプレーンで分散した配置であると ともに、これらドットデータ間でも分散した配置となる。また、インク色ごとのディザバタ ーン Pが、特許文献 3に記載されるように、インク色間で分散した閾値配置となってい るので、最終的に得られる各パスのドット配置は、色間でも分散したものとなる。
[0100] (第 4実施形態)
本発明の第 4の実施形態は、ディザパターンを利用して、 8ビット、 256値の画像デ ータを直接 2値化し、しかも同時に 4パスのパス分割を行うものに関する。
[0101] 図 15は、本実施形態のパス分割 /2値化処理を説明する図であり、図 12に示すス テツプ S 1204の処理と同じ処理を示している。ただし、 4パスに分割する点力 ステツ プ S1204の処理と異なる点である。また、図 15に示すディザパターンおよび画像デ ータの内容は、それぞれ図 13に示したものと同じものである。
[0102] 先ず、画像データの各値をパス数 4で割る処理を行う。すなわち、この 4を分母とし たとき、先ず、分子を 1とした比率 (記録率) 1/4を画像データの各画素値に掛ける 演算を行なう。このように 1パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データ の分割率を、上記比率と同じ「1/4」にしている。これにより、総ての画素の値が「16 」である、分割された 8ビット、 256値の画像データを得る。次に、この分割されたデー タに対してディザパターン Pを用いて 2値化を行う。これにより、 1パス目の 2値(ドット) データ Aを得る。図 15に示すように、ドットデータ Aは、ディザパターン Pの閾値「16」 に対応する画素に" 1" (〇印)が配置されるデータとなる。
[0103] 次に、上記比率に比率 1/4を加えて得られる分割率(1/4+ 1/4)と画像データ の各値との積によるデータを求める。すなわち、画像データの各画素の値に 2/4を 掛ける演算を行なう。このように 2パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像 データの分割率を、上記比率を加算して得られる「2/4」にしている。これは、図 14 にて説明したのと同様に、 1パス目のドット配置を累積的に 2パス目のドット配置に反 映させるものである。上記演算により、総ての画素の値が「32」である、分割された 8ビ ットデータを得る。次に、この分割されたデータに対してディザパターン Pを用いて 2 値化を行い、 2値(ドット)データ Bを得る。このデータのドット配置は、ディザパターン Pの閾値「16」、「32」に対応する画素にそれぞれ" 1" (〇印)が配置されたものとなる 。そして、この 2/4 (この場合、第 1の分割率)をかけて得られるデータ Bから 1/4 (こ の場合、第 2の分割率)をかけて得られるデータ Aを引いたデータを 2パス目のドット データ Cとする。すなわち、データ Bとデータ Aの否定との論理積を対応する画素間 で求め、これをドットデータ Cとする。
[0104] 同様に、 3パス目のデータを求める場合は、先ず、画像データの各画素の値に 3/ 4 (1/4+ 1/4+ 1/4)を掛ける演算を行ない、総ての画素の値が「48」である、分 割されたデータを得る。このように 3パス目のドットデータを得るために、ここでは、画 像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「3/4」にしている。次に、この分 割されたデータに対してディザパターン Pを用いて 2値化を行い、 2値(ドット)データ Dを得る。このデータのドット配置は、ディザパターン Pの閾値が「16」、「32」、「48」 に対応する画素にそれぞれ "1" (〇印)が配置されたものとなる。そして、上記と同様 、この 3/4 (この場合、第 1の分割率)をかけて得られるデータ Dから 2/4 (この場合 、第 2の分割率)をかけて得られるデータ Bを引いたデータを 3パス目のドットデータ E とする。すなわち、データ Dとデータ Bの否定との論理積を対応する画素間で求め、こ れをドットデータ Eとする。
[0105] 最後に、 4パス目のデータを求める場合は、先ず、画像データの各画素の値に 4/ 4 (1/4+ 1/4+ 1/4+ 1/4)を掛ける演算を行ない、総ての画素の値が「64」で ある、分割された 8ビットデータを得る。このように 4パス目のドットデータを得るために 、ここでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「4/4」にしている
。次に、このデータに対してディザパターン Pを用いて 2値化を行い、 2値(ドット)デー タ Fを得る。このデータのドット配置は、ディザパターン Pの閾値が「16」、「32」、「48」 、「64」に対応する画素にそれぞれ" 1" (〇印)が配置されたものとなる。そして、同様 に、このデータ Fからデータ Dを引いたデータを 4パス目のドットデータ Gとする。すな わち、データ Fとデータ Dの否定との論理積を対応する画素間で求め、これをドットデ ータ Gとする。なお、図 15では、ディザパターンは、特許文献 3に記載の方法によつ て定められるものである力 実際は、図 9のように、その閾値配置はより複雑なものに なっている。
[0106] 以上説明したように、本実施形態によっても、ディザパターンを用いるだけで、パス ごとの分割データを得るとともに、 2値化を行うことができる。この結果、従来、 2値化 のためのディザパターンと、パス分割のためのマスクパターンの両方が必要であった のに対し、ディザパターンのみを用いればよぐパターンデータを格納するメモリの容 量増大や負荷の増大を防ぐことができる。また、ディザパターン Pの閾値がその大きさ の順序に関して分散していることにより、このパターンを用いた、各比率を掛けて得ら れる分割のデータに対するディザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散に 従って分散したドットデータとなる。その結果、最終的に得られる 1パス目から 4パス目 のドットデータ A、 C、 E、 Gは、それぞれのパスのプレーンで分散した配置であるとと もに、これらドットデータ間でも分散した配置となる。また、インク色ごとのディザパター ン Pが、特許文献 3に記載されるように、インク色間で分散した閾値配置となっている ので、最終的に得られる各パスのドット配置は、色間でも分散したものとなる。
[0107] (第 5実施形態)
本実施形態は、パスごとになだらかな記録率(ドットの配列密度)の変化(グラデー シヨン)が設定されている場合の例に関する。このグラデーションとは、ノズル列端部 に対応するラスターの記録率が低ぐ中央部に対応するラスターの記録率が高く設 定されているような、ノズル位置に応じて記録率が異なる記録パターンを言う。このよ うな記録パターンによれば、マルチパス記録で各パスの記録領域の境界で弊害の原 因となりやすい端部ノズルの吐出頻度を相対的に少なくすることにより、画像品位を 向上させる効果が得られる。
[0108] ここで、「記録率」とは、上述したように、一定の領域に含まれる全画素数(ドットを記 録する画素とドットを記録しなレ、画素の和)に対する上記ドットを記録する画素数の割 合である。例えば、単一ノズルに対応する領域の記録率とは、その単一ノズルに対応 する領域(単一ラスター領域)に含まれる全画素数に対するドット記録画素の割合で ある。なお、上述した第 1から第 4実施形態で述べた「比率」がこの記録率に相当する ものとなる。
[0109] なお、このグラデーション記録は、従来、マスクパターン(いわゆるグラデーションマ スク)を用いて行なうのが一般的である。すなわち、マスクパターンにおける記録許容 画素と非記録許容画素の和に対する上記記録許容画素の割合を記録率とするとき、 上記のようにノズル位置に応じて記録率を変化させたマスクを用いてマスク処理を行 う。ここで、記録許容画素は、画像データにおける対応する画素のデータをそのまま 出力する画素を言う。また、非記録許容画素は、画像データにおける対応する画素 のデータをマスクする画素を言う。
[0110] 図 16 (a)および (b)は、本実施形態の 2パス記録おけるパスごとのグラデーション記 録を説明する図である。
[0111] 図 16 (b)は、従来使用されているグラデーションマスクを 1つのパスの記録パターン として示すものである。すなわち、グラデーションマスクにおける記録許容画素を記録 すべきドット(黒のドット)として表したものである。図 16 (b)において、 C1は、 100% 濃度のベタ画像を 2パスで記録する場合の 1パス目のドットデータを示し、 C2は、同じ くベタ画像の 2パス目のドットデータを示す。これらデータのドット配置は相互に補完 の関係にあり、 2回の走査で上記の 100%濃度のベタ画像が完成する。また、これら ドットデータは 256個のノズル配列と対応しており、図の縦方向においてそれぞれ 12 8画素からなる、データ C1の上側、およびデータ C2の下側がノズル配列の中央側に 対応する。また、データ C1の下側、およびデータ C2の上側がノズル配列のそれぞれ の端部側に対応している。
[0112] 図 16 (a)は、上記 256個のノズルからなるノズル配列ごとの記録率を示している。同 図に示す例では、ノズル配列において中央部の番号 127、 128のノズルに対応する 記録率が 0· 7で、ノズル配列のそれぞれの端の番号 0、 255のノズルに対応する記
録率が 0· 3である。そしてデータ CI力 Sノズル 128〜255に、データ C2がノズル 0〜1 27に対応する。
[0113] 本発明の第 5の実施形態は、このようなグラデーション記録用のドットデータの生成 を、ディザパターンを用いてパス分割と 2値化を同時に行うものである。
[0114] 2パス記録の場合について、図 7を参照して説明する。すなわち、グラデーション記 録の場合は、図 7にて説明した 1/2の代わりに、画像データのラスターごとに図 16 ( a)にて説明した記録率を掛ける演算を行う。
[0115] 128 X I 28のディザなど大きいサイズを模式化することは難しいため、 4 X 4の簡単 な図で説明する。図 7に示す 4画素 X 4画素のサイズの画像データは、上述したよう にノズル列の半分のノズル列(図 16 (a)の例では、ノズノレ 0〜; 127またはノズノレ 128 〜255)に対応している。この画像データの走査方向のそれぞれの行を、図 7に示す ようにラスター rl、 r2、 r3、 r4とするとき、このラスターごとに記録率を異ならせる。例 えば、中央ノズノレに対応したラスター rlに 0· 7、ラスター r2に 0· 56、ラスター r3に 0· 43、端部ノズルに対応したラスター r4に 0· 3を割り当てる。そして、それぞれの記録 率を対応するラスターの各画素値に掛けることにより、分割された画像データを得るこ と力できる。上記の記録率の場合、ラスター rlの画素値は 4 X 0· 7 = 2. 8、ラスター r 2の画素ィ直 (ま 4 X 0. 56 = 2. 24、ラスター r3の画素ィ直 (ま 4 X 0. 44 = 1. 76、ラスター r4の画素ィ直は 4 X 0. 3 = 1. 2となる。
[0116] この分割画像データに対して、ディザパターン Pを用いて 2値化することにより、 1パ ス目のドットデータを得る。図 7に示すディザパターンと画像データの場合、この 1パス 目のドットデータは、ディザパターン Pの閾値が「1」である画素に対応する画素にドッ トが配置されたものとなる。
[0117] 次に、第 1実施形態について図 7にて説明したのと同様に、上記 1パス目の記録率 が累積的に加えられた記録率を画像データに掛ける演算を行う。具体的には、 2パス 目のドットパターンは、図 16 (a)に示すように、グラデーションが逆になり、中央ノズル ίこ対応したラスター r4(こ 0· 7、ラスター r3(こ 0· 56、ラスター r2(こ 0· 44、端きノス、ノレ に対応したラスター rlに 0· 3を割り当てる。このとき、記録率は、 1パス目の記録率が 累積的にカロえられたものであり、 1ノ ス目の記録率(0· 7、 0. 56、 0. 44、 0. 3)を、ラ
スターごとに上記 2ノ ス目のノ ターンの記録串(0· 3、 0. 44、 0. 56、 0. 7)にカロえた ものとなる。すなわち、記録率は各ラスターとも 1 (0. 7 + 0. 3、 0. 56 + 0. 44、 0. 44 + 0. 56、 0. 3 + 0. 7)となる。
[0118] すなわち、第 1および第 2実施形態の場合と同様、最後のパスは、画像データをそ のまま用い、これに対してディザパターンを用いて 2値化を行う。具体的には、そのま まの画像データに対するディザパターン Ρによる 2値化の結果であるドットデータ Αか ら上記 1パス目のドットデータを引き、 2パス目のドットデータを得る。この 2パス目のド ットデータは、ディザパターン Pの閾値が「2」、「3」、「4」である画素にそれぞれ対応 する画素にドットが配置されたものとなる。
[0119] 以上の説明は、 8ビット、 256値の画像データを 17値化した後、その 17値データに 対して、 2値化と 2パスのパス分割を行う例に関するものである。次に、図 16で示した グラデーション形状を再現する例として、 256値の画像データを直接 2値化し、 2パス の各パスでグラデーションパターンの記録を行う例について説明する。以下でも、図 13にて説明した 1/2の代わりに、画像データのラスターごとに図 16 (a)にて説明し た記録率を掛ける演算を行う。
[0120] 図 13に示す 4画素 X 4画素のサイズの画像データは、上述したようにノズル列の半 分のノズル歹 IJ (図 16 (a)の例では、ノズル 0〜; 127またはノズル 128〜255)に対応し ている。この画像データの走査方向のそれぞれの行を、図 13に示すようにラスター rl 、 r2、 r3、 r4とするとき、このラスターごとに記録率を異ならせる。例えば、中央ノズル ίこ対応したラスター Γΐ ίこ 0· 7、ラスター r2(こ 0· 56、ラスター r3(こ 0· 43、端きノス、ノレ に対応したラスター r4に 0· 3を割り当てる。そして、それぞれの記録率を対応するラ スターの各画素値に掛けることにより、分割された画像データを得ることができる。上 記の記録率の場合、ラスター rlの画素値は 64 X 0. 7 = 44. 8、ラスター r2の画素値 (ま 64 X 0. 56 = 35. 84、ラスター r3の画素ィ直 (ま 64 X 0. 44 = 28. 16、ラスター r4の 画素ィ直は 64 X 0. 3 = 19. 2となる。説明の簡単のために 4 X 4のディザで説明し、 rl 、 r2、 r3、 r4のラスター 匕率を 0. 7、 0. 56、 0. 43、 0. 3とした力 実際には図 9に示 すディザパターンを用い、記録比率は図 16 (a)に示すものを用いる。
[0121] この分割画像データに対して、ディザパターン Pを用いて 2値化することにより、 1パ
ス目のドットデータを得る。図 13に示すディザパターンと画像データの場合、この 1パ ス目のドットデータは、ディザパターン Pの閾値が「16」である画素に対応する画素に ドットが配置されたものとなる。
[0122] 次に、第 2実施形態について図 13にて説明したのと同様に、上記 1パス目の記録 率が累積的に加えられた記録率を画像データに掛ける演算を行う。具体的には、 2 パス目のドットパターンは、図 16 (a)に示すように、グラデーションが逆になり、中央ノ ズノレ ίこ対応したラスター r4(こ 0· 7、ラスター r3(こ 0· 56、ラスター r2(こ 0· 44、端きノ ズノレに対応したラスター rlに 0· 3を割り当てる。このとき、記録率は、 1パス目の記録 率が累積的に加えられたものであり、 1パス目の記録率(0· 7、 0. 56、 0. 44、 0. 3) を、ラスターごとに上記 2ノ ス目のノ ターンの記録串(0· 3、 0· 44, 0. 56, 0. 7)に カロえたものとなる。すなわち、記録率は各ラスターとも 1 (0. 7 + 0. 3、 0. 56 + 0. 44 、 0. 44 + 0. 56、 0. 3 + 0. 7)となる。
[0123] すなわち、第 1および第 2実施形態の場合と同様、最後のパスは、画像データをそ のまま用い、これに対してディザパターンを用いて 2値化を行う。具体的には、そのま まの画像データに対するディザパターン Ρによる 2値化の結果であるドットデータ Αか ら上記 1パス目のドットデータを引き、 2パス目のドットデータを得る。この 2パス目のド ットデータは、ディザパターン Pの閾値が「32」、「48」、「64」である画素にそれぞれ 対応する画素にドットが配置されたものとなる。
[0124] 図 17は、上述した 1パス目のドットデータの一例を示す図である。この例は、各画素
50%濃度(画素値 128)の 8ビットベタ画像に対して、図 9に示すディザパターンを用 V、て、グラデーション記録のパス分割および 2値化をした結果を示すドットデータであ る。これは、図 7に示すドットデータ Bに相当するものである。
[0125] 図 18は、図 13に示すドットデータ Aに相当するものであり、各ラスターに記録比率 1 を掛けた画像データ、すなわち、そのままの画像データを図 9に示すディザパターン で 2値化した結果を示している。そして、図 19は、図 18のドットデータから図 17のドッ トデータを引いた結果である 2パス目のドットデータを示している。すなわち、図 19は 図 18の画像データと図 17のドットデータの否定との論理積を示す。これらの図から 明らかなように、分割された中間画像である 1、 2パス目のドットデータや最終画像で
あるドットデータは、本来のグラデーションの成分を除いて、非周期で低周波成分をも たな!/、ドット配置とすることができる。
[0126] (第 6実施形態)
本発明の第 6の実施形態は、 4パスのマルチパス記録におけるグラデーション記録 のドットデータ生成に関するものである。
[0127] 図 20は、ノズル配列に対応した記録率の一例を示す図である。同図に示す例では 、 256個のノズノレのうち、番号 192〜255のノズノレ力 パス目の記録に用いられる。以 下同様に、番号 128〜191のノズノレが 2パス目、番号 64〜127のノズノレが 3パス目、 番号 0〜63のノズルが 4パス目のそれぞれ記録に用いられる。そして、番号 192〜2 55のノス、ノレ ίこ対応するラスターの記録率 (ま 0. 1—0. 25、番号 128〜; 191のノス、ノレ に対応するラスターの記録率は 0· 25—0. 4である。さらに、番号 64〜; 127のノズル に対応するラスターの記録率は 0. 25—0. 4、番号 0〜63のノズルに対応するラスタ 一の記録率は 0. ;!〜 0. 25である。
[0128] このときの本実施形態のパス分割 /2値化を、図 14を参照して説明する。図 14に 示す比率 1/4の代わりに、ラスターに応じて記録率 0. ;!〜 0. 25を用いる。以下、第 5実施形態にて説明したのと同様に、 2/4の代わりに記録率(0. 1 + 0. 25-0. 25 + 0. 4)、 3/4の代わりに記録率(0. 1 + 0. 25 + 0. 4—0. 25 + 0. 4 + 0. 25)を用 レヽる。また、 4/4の代わり ίこ、記録串(0. 1 + 0. 25 + 0. 4 + 0. 25—0. 25 + 0. 4 + 0. 25 + 0. 1)を用いる。つまり、総てのラススターについて記録率 1を用いる。その 他は、図 14にて説明した処理と同様である。
[0129] また、他の例として、 8ビット、 256値を直接 2値化する場合、すなわち、図 9に示す ディザパターンを用いた場合は、パス分割 /2値化は、図 15を参照して説明すると、 次のようになる。この場合も同様に、図 15に示す比率 1/4の代わりに、ラスターに応 じて記録率 0. ;!〜 0. 25を用いる。以下、第 5実施形態にて説明したのと同様に、 2 /4の代わり ίこ記録串(0. 1 + 0. 25—0. 25 + 0. 4)、 3/4の代わり ίこ記録串(0. 1 + 0. 25 + 0. 4—0. 25 + 0. 4 + 0. 25)を用レヽる。また、 4/4の代わり ίこ、記録串( 0. 1 + 0. 25 + 0. 4 + 0. 25—0. 25 + 0. 4 + 0. 25 + 0. 1)を用いる。つまり、総て のラススターについて記録率 1を用いる。その他は、図 15にて説明した処理と同様で
ある。この場合も説明の簡単のために 4 X 4のディザで説明し、 rl、 r2、 r3、 r4のラス ター比率を 0· 7、 0. 56、 0. 43、 0. 3とした力 実際には図 9のディザパターンを用 い、記録比率は図 20示すものを用いる。
[0130] (第 7実施形態)
上述した各実施形態では、ドット配置が累積的に反映されたドットデータからその前 の処理に係るパスのドットデータを引いて、該当するパスのドットデータを得るものとし た。具体的には、反映されたドットデータとその前のドットデータの否定との論理積演 算を行い、該当するパスのドットデータを得ている。これに対し、本発明の第 7の実施 形態は、ディザパターンにおける閾値に処理を加えることによって、上記の論理積演 算を省略するものである。
[0131] 図 21は、本実施形態のパス分割 /2値化処理を説明するブロック図であり、一例と して、画像データ Dが 8ビットの 64の場合を示している。図において、 Pl、 Ρ2は、それ ぞれディザパターンを示す。実際には、図 9に示すパターンのように、「1」〜「256」ま での 256個の閾値が格納されている力 説明の簡略化のために 4 X 4の画素に 16個 の閾値が格納されてレ、るものとして!/、る。
[0132] 先ず、上述した各実施形態と同様、 2パスのパス分割に対応して、画像データ Dに 分割率 1/2を掛けて分割画像データ D1を得る。図示の例では総ての画素値が 32 となる。この画像データ D1の各画素値とディザパターン P1の対応する閾値との比較 により、 2値化を行い 1パス目のドットデータ A1を決定する。図 21に示すように、ドット データ A1は、ディザパターン P1の閾値が「16」、「32」に対応する画素に" 1" (〇印) が配置されたデータとなる。
[0133] 次に、ディザパターン P1とドットデータ A1との比較による演算を行う。詳しくは、ドッ トデータ A1で" 1" (〇印)が配置された画素に対応するディザパターン P1における閾 値を消去する。図に示す例では、閾値が「16」、「32」が消去される。そして、このディ ザパターン P1とドットデータ A1との比較演算の結果、ディザパターン P2が得られる。
[0134] 次に、上記各実施形態と同様、記録比率(1/2+ 1/2)を画像データ Dに掛ける ことにより、 2パス目用の画像データ D2を得る。図に示す例では、このデータの各画 素の値は 64となる。そして、画像データ D2と上記のようにして得られたディザパター
ン P2の閾値との比較によって 2値化を行い、 2パス目のドットデータ A2を得る。
[0135] ここで、閾値が「消去」されている状態とは、そのディザパターンによる 2値化におい て閾値が消されている箇所に対応した、画像データの画素については" 1" (〇印)が 配置されないことを意味する。換言すれば、閾値と画素値との相対的な関係におい て、上述の例では 2パス目用データ生成で閾値「16」、「32」が無限大の大きさ(具体 的には、 256がオフセットされた大きさ)に設定され、 8ビットデータのどのような画素 値に対しても、 2値化の結果力 S"0" (ドットが記録されない)となることである。ちなみに 、第 1〜第 6実施形態は、閾値と画素値との相対的な関係が逆の関係によってパス分 割 /2値化が行われていることになる。すなわち、画素値が分割率もしくは記録率の パスごとの加算に応じた値となって、閾値に対する相対的な大きさがパスごとに増す 。その結果として、パスごとのドットの配置が累積的に定まることになる。
[0136] 以上のとおり、本実施形態によれば、パス分割 /2値化処理において、各パスのド ットデータを求める際に、ドット配置が累積的に反映されたドットデータと、その前の処 理に係るパスのドットデータの否定との論理積演算を省略することができ、さらに演算 負荷を軽減することができる。
[0137] また、上述の各実施形態と同様、ディザパターンの閾値がその大きさの順序に関し て分散している場合、このパターンを用いた、各分割率を掛けて得られる分割された 画像データに対するディザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散に従って 分散したドットデータとなる。その結果、最終的に得られる各パスのドットデータは、そ れぞれのパスのプレーンで分散した配置であるとともに、これらドットデータ間でも分 散した配置とすることができる。
[0138] また、上述した第 7実施形態の変形例として、ディザパターンにおける各閾値が、分 割する各パスに予め対応付けられた形態がある。例えば、図 21に示す 2パスの例で は、ディザパターン Pにおいて、予め、閾値「16」が 1パス目、閾値「32」が 2パス目、 · . ·、閾値「240」力 パス目、閾値「256」が 2パス目にそれぞれ対応付けられている。 この変形例によれば、多値の画像データの分割処理と 2値化処理を 1つのディザバタ ーンによって同時に行うことができる。
[0139] 本変形例の処理は、先ず 1パス目用のドット生成では、ディザパターン Pにおいて、
2パス目に対応する閾値「32」、「64」、 · · ·、「256」を、上記と同様「消去」する。そし て、 2パス目に対応する閾値が消去されたディザパターンを直接各画素値が 64の画 像データ Dに対して適用して 2値化を行う。これにより、生成されるドットデータでは、 閾値が「16」、「48」に対応するそれぞれの画素に "1" (〇印)が配置される。次に、 2 パス目用のドット生成では、ディザパターン Pにおいて、 1パス目に対応する閾値「16 」、「48」、 · · ·、「240」を、上記と同様「消去」する。そして、この 1パス目に対応する閾 値が消去されたディザパターンを直接各画素値が 64の画像データ Dに対して適用し て 2値化を行う。これにより、生成されるドットデータでは、閾値が「32」、「64」に対応 するそれぞれの画素に" 1" (〇印)が配置される。
[0140] このように、本変形例によれば、パス分割 /2値化処理の負荷をさらに低減すること が可能となる。また、閾値の小さい順に 1パス、 2パス · · · ·と順次対応付けられること により、この閾値とパスとの対応付けの順序の分散特性に応じて、パス間のドット配置 の分散あるいは 1つのパスにおける分散を良好に定めることができる。例えば、ドット 記録を特定パス(例えば、 1パス目)に偏って分配しょうとする場合は、例えば、閾値「 16」〜「208」を 1パス目、閾値「224」〜「256」は 2パス目とすること力 Sできる。
[0141] (その他の実施形態)
上記の例は 2パスまたは 4パス記録の場合に 2分割または 4分割する例を示してい る力 この例に限られないことはもちろんである。一般にマルチパス記録が N回の走 查で画像を完成する Nパス記録の場合は、 N分割する。その際、分割する各パスの 比率もしくは上記記録率は、第 1、第 2実施形態に示した均等記録の場合はラスター にかかわらず同じ記録率が設定され、それらがパスごとに加算される。こうして記録率 を加算することで分割率が得られる。但し、 1パス目の分割率は記録率に等しい。ま た、第 3、第 4実施形態に示したグラデーション記録の場合は、ラスターごとにグラデ ーシヨンに応じた記録率が設定され、それらがパスごとに加算される。
[0142] また、上述の例では、上記分割率を画像データに掛ける例を示したがこれに限られ ない。逆に、パスごとに上記分割率の逆数ないしその加算をディザパターンの各閾値 に掛けるようにしてもよい。
[0143] さらに、上記の実施形態では、図 5の処理のうち特にステップ S305のパス分割およ
び 2値化をパーソナルコンピュータで動作するプリンタドライバが実行するものとした 1S これに限られないことはもちろんである。例えば、画像記録装置(図 4のプリンタ 1 04)における ASICなどのハードウェアによって、上記データ分割を実行するようにし てもよい。例えば、図 5の一連の画像処理工程を実行可能なプリンタ 104内であれば 、図 5の画像処理を行う専用の ASICを設け、プリンタの CPUの制御の下、 ASICを 使用してデータ生成を行ってもよい。この場合、プリンタが、本発明の特徴的な画像 処理 (パス分割とディザ処理)を実行する画像処理装置(画像データ生成装置)として 機能することになる。
[0144] さらに、上記の実施形態は、 C、 M、 Yインクを用いたマルチパス記録を例にとり説 明したが、 1色のインクを用いる場合のマルチパス記録における、走査回数に応じた 複数のプレーンのドットデータ生成についても本発明を適用できることは明らかであ
[0145] また、同じ記録ヘッドが単位領域を往復して、すなわち、対応するノズルを異ならせ ずに記録を行うようなマルチパス記録を実行して画像を完成する場合の、データ生 成についても本発明を適用できることは明らかである。
[0146] さらには、上述した各実施形態のようないわゆるシリアルタイプの記録装置による複 数回の記録動作、すなわち複数回の走査によって画像を完成する場合に限られな い。例えば、いわゆるフルラインタイプの記録装置によって、複数回の記録動作それ ぞれで分割画像を記録することによって画像を完成する場合にお!/、ても、上記分割 画像のドットデータ生成に本発明を適用することができる。この場合、 1回の記録動作 は 1つの記録ヘッドにより達成され、複数回の記録動作は複数の記録ヘッドによって 達成される。
[0147] 以上の各実施形態によれば、結果として中間画像の段階でインク浸透が必ずしも 十分に行われなくてもよいことを考慮すると、プリンタ 104において、各プレーン間の 記録時間差、つまり吐出時間差を短くすることが可能となる。例えば、キャリッジ速度 もしくは吐出周波数を大きくでき、あるいはマルチパス記録におけるパス数を、例え ばインクが十分に浸透することを考慮して 4パスとしているところ、より少ない 2パスに した記録を実 fiすること力 Sできる。
[0148] なお、インクと無色透明の液体またはインク同士が混合して、不溶化物を生成する 反応系のインク等を用いる記録システムについても、上記と同様の構成を適用するこ とができる。すなわち、反応系インクまたは液体の 2値データのプレーンについて、上 記と同様のパス分割 /2値化を行うことにより、複数のプレーンが重なったもののドット 分布を低周波成分の少ない分散性の良好なものとすることができる。これにより、中 間画像の段階で、例えば浸透が不十分な隣接するインク等同士が不必要に反応し て不溶化物の塊が形成される確率を小さくでき、また、そのような塊ができてもそれを 目立たなくすることができる。
[0149] さらに、本発明は、上述した実施形態の機能を実現する、図 5に示したフローチヤ ートのステップ S305を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体に よっても実現すること力 sできる。また、システムあるいは装置のコンピュータほたは CP Uや MPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによって も達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述し た実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体 並びにプログラム自体は本発明を構成することになる。
[0150] プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商 標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、 CD-ROM, CD-R,磁 気テープ、不揮発性のメモリカード、 ROMなどを用いることができる。
[0151] また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実 施形態の機能が実現されるだけでなぐそのプログラムコードの指示に基づき、コンビ ユータ上で稼動している OSが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよ い。
[0152] 更に、プログラムコード力 S、コンピュータに揷入された機能拡張ボードやコンビユー タに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコ ードの指示に基づき、 CPUなどが実際の処理の一部または全部を行うものであって あよい。
[0153] 本出願は、 2006年 12月 19日に出願された日本国特許出願第 2006— 341389 号に基づいて優先権を主張し、前記日本国特許出願は、これらの参照によって本明