以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、インクジェット記録装置を例にしているが、本発明は、インクヘット記録装置に限られるものではない。ドットを形成するための記録ヘッドと記録媒体との相対移動中に、記録ヘッドによって記録媒体に画像を記録する方式の装置であれば、インクジェット記録装置以外の装置でも適用可能である。
ここで、本明細書における用語について定義をする。本明細書において、「マルチパス数(N)」とは、記録媒体の所定領域と記録ヘッド(記録素子群)との相対移動の回数を指す。Nは2以上の整数であり、例えば、N=2であれば2パス記録を示し、N=4であれば4パス記録を示す。N(Nは2以上の整数)パス記録の場合、多値の画像データに基づいて、マルチパスの回数Nに対応するN個のプレーンの多値の画像データが生成される。そして、これらN個のプレーンの多値の画像データの夫々が、Nパスの夫々において記録されることになる。
また、記録媒体の「所定領域」とは、所定数(ここで、所定数は1以上の整数)の画素で構成される領域を指す。なお、画素とは、多値データによって階調表現可能な最小単位に相当する領域を指す。
また、「プレーン」とは、記録ヘッドと記録媒体との1回の相対移動に対応した画像データの集合を指す。従って、異なる相対移動毎に異なるプレーンが対応する。また、同色インクに対応する記録ヘッド(記録素子群)が複数存在する場合、異なるヘッド(記録素子群)毎に異なるプレーンが対応することになる。
また、記録ヘッドと記録媒体との「相対移動」とは、記録媒体に対して記録ヘッドが相対的に移動(走査)する動作、あるいは、記録ヘッドに対して記録媒体が相対的に移動(搬送)する動作を指す。シリアル型の記録装置の場合、前者の相対移動が上記所定領域に対して複数回が実行されることで、上記のマルチパス記録が行われる。一方、フルライン型の記録装置の場合、後者の相対移動が上記所定領域に対して複数回が実行されることで、上記のマルチパス記録が行われる。
また、「第1の処理モード」とは、上記記定領域に対する複数回の相対移動に対応する複数の多値の画像データ(例えば、N(Nは2以上の整数)個のプレーンの多値の画像データ)をそれぞれディザ処理により量子化するモードを指す。また、別の例として、上記所定領域に対応する入力画像データに基づき生成された複数の記録ヘッドに対応する複数の多値の画像データ(例えば、N(Nは2以上の整数)個のプレーンの多値の画像データ)をディザ処理により量子化するモードを指す場合もある。ここで、N(Nは2以上の整数)個のプレーンの多値の画像データに対してディザ処理を行うにあたり、少なくとも2つのプレーンの多値の画像データに対して異なるディザ処理を行うことが好ましい。なお、異なるディザ処理は、異なるディザマトリクスを用いて行われる。
また、「第2の処理モード」とは、上記記定領域に対する複数回の相対移動に対応する複数の多値の画像データ(例えば、N(Nは2以上の整数)を誤差拡散処理により量子化するモードを指す。また、別の例として、上記所定領域に対応する入力画像データに基づき生成された複数の記録ヘッドに対応する複数の多値の画像データ(例えば、N(Nは2以上の整数)を誤差拡散処理により量子化するモードを指す場合もある。ここで、N(Nは2以上の整数)個のプレーンの多値の画像データに対して誤差拡散処理を行うにあたり、少なくとも2つのプレーンの多値の画像データに対して異なる誤差拡散処理を行うことが好ましい。なお、異なるディザ処理は、異なる誤差拡散マトリクスを用いて行われるか異なる閾値を用いて行われる。
(実施形態1)
図5は、本実施形態で使用するシリアル型のインクジェット記録装置の内部構成を説明するための概略図である。記録ヘッド105は、主走査方向に移動するキャリッジ104に搭載され、キャリッジ104の移動中にインクを吐出する。1回の記録主走査が終了すると、第1の搬送ローラ対(703、704)と第2の搬送ローラ対(705、706)によって記録媒体Pは矢印で示す副走査方向(搬送方向)に搬送される。このような記録主走査と搬送動作とを繰り返すことにより、記録媒体Pに段階的に画像が記録される。
記録ヘッド105は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の記録ヘッドを含んでおり、これら4色の記録ヘッドは図のように主走査方向に並列配置されている。各色の記録ヘッドは、インクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)が所定の密度で副走査方向に配列されてなる記録素子群を有する。なお、本例では、各色の記録素子群は、1280個の記録素子からなる。
次に、本発明において適用可能なマルチパス記録の一例について説明する。ここでは、マルチパス記録の一例として2パス記録を例に挙げて説明するが、本発明は2パス記録に限定されるものではなく、3パス、4パス、8パス、16パス等のN(Nが2以上の整数)パス記録であればよい。
図6は、2パス記録の様子を模式的に示した図であり、4つの所定領域に相当する第1記録領域から第4記録領域に対して記録する場合の記録ヘッド105と記録領域との相対的な位置関係を示している。この図6では、図5に示される4色の記録ヘッド105のうちの1色の記録ヘッドだけを示している。そして、以下では、記録ヘッド105の複数の記録素子(ノズル)のうち、搬送方向上流側に位置するノズル群を上流側ノズル群105Aと称し、搬送方向下流側に位置するノズル群を下流側ノズル群105Bと称する。また、各記録領域の副走査方向(搬送方向)における幅は、記録ヘッドの複数の記録素子の配列範囲の幅(1280ノズル幅)の約半分に相当する幅(640ノズル幅)に等しい。
第1走査では、上流側ノズル群105Aを用いて第1記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録する。この上流側ノズル群105Aによって記録される画像データは、個々の画素について、オリジナル画像データ(第1記録領域に最終的に記録すべき画像に対応した多値の画像データ)の階調値が約1/2に低減されたものとなっている。このような第1走査での記録終了後、Y方向に沿って640ノズル分の距離だけ記録媒体を搬送する。次いで、第2走査では、上流側ノズル群105Aを用いて第2記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録すると共に、下流側ノズル群105Bを用いて第1記録領域に記録されるべき画像を完成させる。この下流側ノズル群105Bによって記録される画像データついても、オリジナル画像データ(第1記録領域に最終的に記録すべき画像に対応した多値の画像データ)の階調値が約1/2に低減されたものとなっている。これにより、第1記録領域には、階調値が約1/2に低減された画像データが2回記録されることになるので、オリジナル画像データの階調値が保存される。このような第2走査での記録終了後、記録媒体をY方向に640ノズル分の距離だけ搬送する。次いで、第3走査では、上流側ノズル群105Aを用いて第3記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録すると共に、下流側ノズル群105Bを用いて第2記録領域に記録されるべき画像を完成させる。この後、記録媒体をY方向に640ノズル分の距離だけ搬送する。最後に、第4走査では、上流側ノズル群105Aを用いて第4記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録すると共に、下流側ノズル群105Bを用いて第3記録領域に記録されるべき画像を完成させる。この後、記録媒体をY方向に640ノズル分の距離だけ搬送する。他の記録領域に対しても同様な記録動作を行っていく。以上のような記録主走査と搬送動作とを繰り返すことにより、各記録領域に対して2パス記録が行われる。
図7は、本実施形態の記録装置が実行する画像データ処理について説明するためのブロック図である。記録装置におけるメモリバッファ101、色変換部102、選択部103、第1の画像処理部104、第2の画像処理部106、プリントバッファ107、ヘッド駆動部108は不図示のCPUに接続されており、これら各部はCPUにより制御される。また、記録装置は、プリンタドライバがインストールされたホストコンピュータ等の外部機器と接続されており、これら外部機器から供給される画像データに基づいて記録可能に構成されている。
ホストコンピュータなどの外部機器から供給された記録コマンドと共に画像データ(入力画像データ)が記録装置に入力されると、これら記録コマンドや画像データは記録装置内のメモリバッファ101に格納される。記録コマンドには、マルチパス数(N)を決定する材料となる記録モードや記録媒体の種類を指定するコマンドなどが含まれている。また、入力画像データは、1画素につき例えば8bit256階調で表現される多値の輝度データ(R,G,B)となっている。メモリバッファ101に格納された輝度データは、色変換部102において、画素毎に、その輝度データを表現するためのインク色に対応した多値の画像データ(8bit256階調のCMYK濃度データ)に変換される。
選択部103は、第1の画像処理部104で実行される第1の処理モードと、第2の画像処理部106で実行される第2の処理モードとを選択可能に構成されている。本実施形態では、記録装置あるいはホストコンピュータの操作部(不図示)においてユーザが第1および第2の処理モードを選択できるように構成されており、このユーザによる選択情報に従って上記選択部103におけるモード選択が行われる。
選択部103において第1の処理モードが選択された場合には、色変換部102により変換された多値の画像データは第1の画像処理部104へ入力される。一方、選択部103において第2の処理モードが選択された場合には、色変換部102により変換された多値の画像データは第2の画像処理部106へ入力される。なお、後述する通り、第1の画像処理部では、記録媒体の記定領域と記録ヘッドとの複数回の相対移動に対応する複数の多値の画像データを異なるディザ処理により量子化するための第1の処理モードが実行される。一方、第2の画像処理部では、記録媒体の記定領域と記録ヘッドとの複数回の相対移動に対応する複数の多値の画像データを異なる誤差拡散処理により量子化するための第2の処理モードが実行される。
図7の第1の画像処理部104に入力された多値の画像データは、第1のデータ生成部1041(第1のデータ分割部)において、画素毎に、マルチパス数(N)と同じ数であるN個に分割される。例えば、2パス記録の場合、多値の画像データは2分割される。これにより、2個のプレーンの多値の画像データが生成される。第1のデータ生成部1041は、多値の画像データを2分割する際、均等に2分割することも出来るが、例えば特許文献1に開示されているように、多値の画像データを異なる分割率に従って2分割することも出来る。その後、第1のデータ生成部1041によって生成された2個のプレーンの多値の画像データは、それぞれ、第1の量子化部1042においてディザ処理によって2値化される。ここでは、後述する図8に示されるように、2個のプレーンを重ねた場合にドット同士が重なる箇所とドット同士が重ならない箇所とを並存させるために、異なるプレーンの画像データに対して異なるディザ処理を行う。詳しくは、後述する図9(A)および(B)に示されるように、一方のプレーンの画像データと他方のプレーンの画像データのそれぞれに対して、閾値の配置が異なるディザマトリクスを用いた異なるディザ処理を行う。これにより、第1の量子化部1042へ入力される各パスの画像データの値が等しくても、両者の2値化処理の結果が同じにならない確率が高まり、プレーン間でのドット配置が異なる確率が高まる。
図8は、第1の処理モードで行われるデータ処理の概念図であり、ここでは、2パスのマルチパス記録を例に挙げて説明する。第1のデータ生成部(第1のデータ分割部)1041では、5画素×3画素で構成される所定領域に記録すべき多値の画像データ(14001)を画素毎に2分割する。これにより、多値の画像データ(14001)は、1パス目用の多値の画像データ(14002)と2パス目用の多値の画像データ(14003)とに分割される。次いで、第1の量子化処理部1042では、第1のデータ生成部(第1のデータ分割部)1041によって分割された多値の画像データ(14002、14003)それぞれに対して、ディザ処理法による2値化処理を行う。これにより、1パス目用の2値の画像データ(14004)と2パス目用の2値の画像データ(14005)とが生成される。詳しくは、1パス目用の多値の画像データ(14002)に対して、図9(A)で示されるディザマトリックスAを用いてディザ処理を行うことにより、1パス目用の2値の画像データ(14004)が生成される。また、2パス目用の多値の画像データ(14003)に対して、図9(B)で示されるディザマトリックスBを用いてディザ処理を行うことにより、2パス目用の2値の画像データ(14005)が生成される。なお、図8では、説明を簡単にするために、所定領域の大きさを5画素×3画素として説明したが、所定領域の大きさがこれに限定されないことは勿論であって、上述した通り、所定領域は所定数の画素で構成される領域であればよい。
以上の処理によれば、2個のプレーン(14004,14005)を重ねた場合に、ドット同士が重なる箇所(両方のプレーンに“1”が存在する画素)とドット同士が重ならない箇所(一方のプレーンだけに“1”が存在する画素)とを並存させることができる。従って、記録媒体の搬送量の変動等に伴って記録位置ズレが生じたとしても、画像の濃度変動を抑制することができる。また、ディザ処理を行う第1の処理モードは、後述する誤差拡散処理を行う第2の処理モードに比べて、データ処理の負荷が小さいので、データに要する時間が短い。よって、第1の処理モードを選択することで、ロバスト性に優れ且つ高速記録に適した方法で画像記録を行うことができる。
一方、図7の第2の画像処理部106に入力された多値の画像データは、第2のデータ生成部1043(第2のデータ分割部)において、画素毎に、マルチパス数(N)と同じ数であるN個に分割される。例えば、2パス記録の場合、多値の画像データは2分割される。これにより、2個のプレーンの多値の画像データが生成される。第2のデータ生成部1043は、多値の画像データを2分割する際、均等に2分割することも出来るが、例えば特許文献1に開示されているように、多値の画像データを異なる分割率に従って2分割することも出来る。その後、第2のデータ生成部1043によって生成された2個のプレーンの多値の画像データは、それぞれ、第2の量子化部1044において誤差拡散処理によって2値化される。ここでは、後述する図10に示されるように、2個のプレーンを重ねた場合にドット同士が重なる箇所とドット同士が重ならない箇所とを並存させるために、異なるプレーンの画像データに対して異なる誤差拡散処理を行う。詳しくは、後述する図11(A)および(B)に示されるように、一方のプレーンの画像データと他方のプレーンの画像データのそれぞれに対して、誤差分配係数の値が異なる誤差分配マトリクスを用いた異なる誤差拡散処理を行う。これにより、第2の量子化部1044へ入力される各パスの画像データの値が等しくても、両者の2値化処理の結果が同じにならない確率が高まり、プレーン間でのドット配置が異なる確率が高まる。
図10は、第2の処理モードで行われるデータ処理の概念図であり、ここでは、2パスのマルチパス記録を例に挙げて説明する。第2のデータ生成部(第2のデータ分割部)1043では、5画素×3画素で構成される所定領域に記録すべき多値の画像データ(15001)を画素毎に2分割する。これにより、多値の画像データ(15001)は、1パス目用の多値の画像データ(15002)と2パス目用の多値の画像データ(15003)とに分割される。次いで、第2の量子化処理部1044では、第2のデータ生成部(第2のデータ分割部)1043によって分割された多値の画像データ(15002、15003)のそれぞれに対して、誤差拡散処理法による2値化処理を行う。これにより、1パス目用の2値の画像データ(15004)と2パス目用の2値の画像データ(15005)とが生成される。詳しくは、1パス目用の多値の画像データ(15002)に対して、図11(A)で示される誤差分配マトリックスAを用いて誤差拡散処理を行うことにより、1パス目用の2値の画像データ(15004)が生成される。また、2パス目用の多値の画像データ(15003)に対して、図11(B)で示される誤差分配マトリックスBを用いて誤差拡散処理を行うことにより、2パス目用の2値の画像データ(15005)が生成される。なお、図11(A)および(B)は、誤差拡散処理を行う際の周囲画素に対する誤差分配係数を示す誤差分配マトリクスを表す図であり、図中の*は注目画素を表す。
以上の処理によれば、2個のプレーン(15004,15005)を重ねた場合に、ドット同士が重なる箇所(両方のプレーンに“1”が存在する画素)とドット同士が重ならない箇所(一方のプレーンだけに“1”が存在する画素)とを並存させることができる。従って、記録媒体の搬送量の変動等に伴って記録位置ズレが生じたとしても、画像の濃度変動を抑制することができる。また、誤差拡散処理を行う第2の処理モードは、ディザ処理を行う第1の処理モードに比べて、データ処理に要する時間は長いが、濃度の保存性に優れている。よって、第2の処理モードを選択することで、ロバスト性に優れ且つ高画質記録に適した方法で画像記録を行うことができる。
再び図7に戻るに、第1の画像処理部104あるいは第2の画像処理部106によって2値化された2個のプレーンの画像データは、それぞれのプレーンに対応したプリントバッファ107に一端格納される。その後、それぞれのプリントバッファから記録走査中に画像データを読み出し、読み出した画像データに従って記録主走査中に記録ヘッドをヘッド駆動部108により駆動し、記録ヘッドからインクを吐出させる。これにより、記録媒体の各所定領域には、2回の記録走査(相対移動)によって画像が形成される。
以上説明したように本実施形態によれば、第1の処理モードを選択することで、ロバスト性に優れ且つ高速記録に適した方法で画像記録を行うことができる。一方、第2の処理モードを選択することで、ロバスト性に優れ且つ高画質記録に適した方法で画像記録を行うことができる。従って、1台の装置で、ロバスト性に優れた高速記録とロバスト性に優れた高画質記録を実現することができる。
なお、本実施形態で適用可能な異なるディザマトリクスは図9(A)および(B)に示されるものに限られるものではない。例えば、一方のディザマトリクスは図9(A)に示されるものとし、他方のディザマトリクスは図9(A)のディザマトリクスを回転させたものとしてもよい。また、一方のディザマトリクスをドット集中型マトリクスとし、他方のディザマトリクスをドット分散型マトリクスとしてもよい。更に、ディザマトリクスの大きさや形は5画素×3画素のものに限られるものではない。L(Lは2以上の整数)画素×K(Kは2以上の整数)画素の矩形のものが好適であるが、矩形でなくともよい。いずれにせよ、本実施形態では、第1の量子化部1042へ入力される画像データの2値化処理の結果が異なるように、閾値の配置あるいは閾値の大きさを異ならせたディザマトリクスであれば適用可能である。
また、本実施形態で適用可能な異なる誤差分配マトリクスは図11(A)および(B)に示されるものに限られるものではない。例えば、両者の誤差分配マトリクスのサイズを同じくして、誤差分配係数の値を異ならせてもよい。要は、第2の量子化部1044へ入力される画像データの2値化処理の結果が異なるように、誤差分配係数の配置あるいは誤差分配の値を異ならせた誤差分配マトリクスであれば適用可能である。
また、第2の量子化部1044では、異なる誤差拡散処理を実行するために、誤差分配マトリクスを異ならせているが、2値化で用いる閾値の大きさを異ならせてもよい。この場合、誤差分配マトリクスとしては同じものを使用してもよく、例えば、1パス目データの2値化で用いる閾値を2パス目データの2値化で用いる閾値よりも小さくすることで、1パス目と2パス目の2値化処理の結果が異なるようにしてもよい。
本実施形態では、マルチパス数(N)が2の場合を例に挙げて説明したが、本実施形態で適用可能なNは2に限られるものではなく、Nは2以上の整数であればよい。また、本実施形態の第1の処理モードでは、N個のプレーンの多値の画像データに対してディザ処理を行うにあたり、N個のプレーンの全てで異なるディザマトリクスを用いているが、これに限定されるものではない。N個のプレーンのうち、少なくとも2つのプレーンで異なるディザマトリクスを用いれば、上述した本実施形態の効果を奏することができる。また、本実施形態の第1の処理モードでは、N個のプレーンの多値の画像データに対して誤差拡散処理を行うにあたり、N個のプレーンの全てで異なる誤差拡散マトリクスを用いているが、これに限定されるものではない。N個のプレーンのうち、少なくとも2つのプレーンで異なる誤差分配マトリクスを用いれば、上述した本実施形態の効果を奏することができる。
(実施形態2)
実施形態1では、図7の選択部103におけるモード選択をユーザによる選択情報に従って行ったが、この実施形態2では、図7の選択部103におけるモード選択をマルチパス数に応じて行うことを特徴とする。より詳しくは、選択部103は、図12のフローチャートに従って、マルチパス数(N)が閾値(M)未満の場合には第1の処理モードを選択し、マルチパス数(N)が閾値(M)以上の場合には第2の処理モードを選択する。選択部103によるモード選択以外の構成については基本的に実施形態1と同じであるため、実施形態1と共通する構成(例えば図1に示される装置構成等)についてはその説明を省略する。
以下、図7、図12、図13を用いて本実施形態の画像データ処理工程について説明する。図7のメモリバッファ101および色変換部102における構成や動作については、上述した実施形態1と同じである。
図7の選択部103には、記録コマンドに基づき決定されるマルチパス数(N)に関する情報が入力される。そして、選択部103は、図12のフロ−チャートに従って、マルチパス数(N)が閾値(M)以上であるか否かを判定する(ステップS1)。閾値未満(N<M)であると判断された場合、ステップS2へ進み、第1の処理モードを選択する。一方、閾値以上(N≧M)であると判断された場合、ステップS3へ進み、第2の処理モードを選択する。本実施形態では、閾値(M)が2に定められているため、2パスのマルチパス記録の場合には第1の処理モードが選択され、3パス以上のマルチパス記録の場合には第2の処理モードが選択される。
ここで、マルチパスの回数(N)が閾値(M)未満の場合に第1の処理モードを選択し、マルチパスの回数(N)が閾値(M)以上の場合に第2の処理モードを選択する理由について説明する。ディザ処理は、誤差拡散処理に比して、その処理負荷が小さくデータ処理に要する時間が短いため、高速記録が求められる少パスモードに適している。従って、マルチパ数(N)が閾値(M)未満の少パスモードでは、ディザ処理による第1の処理モードを実行するようにしている。一方、誤差拡散処理は、ディザ処理に比して、良好な濃度保存性を得ることができるため、高画質記録が求められる多パスモードに適している。従って、マルチパス数(N)が閾値(M)以上の多パスモードでは、誤差拡散処理による第2の処理モードを実行するようにしている。
このようにして、選択部103において第1の処理モードが選択された場合には、色変換部102により変換された多値の画像データは第1の画像処理部104に入力される。そして、実施形態1で説明した図8と同様、第1の画像処理部104に入力された多値の画像データ(14001)は、第1のデータ生成部1041において画素毎に2つのプレーンに分割される。これにより、1パス目用の多値の画像データ(14002)と2パス目用の多値の画像データ(14003)とが生成される。次いで、第1の量子化部1042において、1パス目用の多値の画像データ(14002)は図9(A)のディザマトリックスAを用いたディザ処理により2値化され、1パス目用の2値の画像データ(14004)が得られる。同様に、2パス目用の多値の画像データ(14003)は図9(B)のディザマトリックスBを用いたディザ処理により2値化され、2パス目用の2値の画像データ(14005)が得られる。これにより、2パスという少パスモードでは、ロバスト性が高く且つデータ処理負荷が小さいデータ処理方法を用いた画像記録を行うことができる。
一方、選択部103において第2の処理モードが選択された場合には、色変換部102により変換された多値の画像データは第2の画像処理部106に入力される。そして、第2の画像処理部106に入力された多値の画像データは、第2のデータ生成部1043において画素毎にN(例えば、N=3)個のプレーンに分割され、N個のプレーンの多値の画像データはそれぞれ誤差拡散処理により2値化される。
図13は、実施形態2における第2の処理モードで行われるデータ処理の概念図であり、ここでは、3パスのマルチパス記録を例に挙げて説明する。第2のデータ生成部1043では、5画素×3画素で構成される所定領域に記録すべき多値の画像データ(12001)を3分割する。これにより、1パス目用の多値の画像データ(12002)と2パス目用の多値の画像データ(12003)と3パス目用の多値の画像データ(12004)が生成される。
次いで、第2の量子化部1044では、第2のデータ生成部1043によって生成された3つのプレ−ンの多値の画像データ(12002、12003、12004)それぞれに対して、誤差拡散方法による2値化処理を行う。これにより、1パス目用の2値の画像データ(12005)と2パス目用の2値の画像データ(12006)と3パス目用の2値の画像データ(12007)が生成される。詳しくは、1パス目用多値データ(12002)に対して、図18(A)で示される誤差分配マトリックスAを用いて誤差拡散処理を行うことにより、1パス目用の2値の画像データ(12005)が生成される。また、2パス目用多値データ(12003)に対して、図18(B)で示される誤差分配マトリックスBを用いて誤差拡散処理を行うことにより、2パス目用の2値の画像データ(12004)が生成される。更に、3パス目用多値データ(12004)に対して、図18(A)で示される誤差分配マトリックスAを用いて誤差拡散処理を行うことにより、3パス目用の2値の画像データ(12005)が生成される。これにより、3パス以上という多パスモードでは、ロバスト性が高く且つ濃度保存性も高いデータ処理方法を用いた画像記録を行うことができる。
以上説明したように本実施形態によれば、マルチパスの回数に適した画像処理モードを実行することができる。なお、本実施形態で適用可能な閾値(M)は2に限られるものではなく、閾値は2以上の整数であればよい。例えば、閾値(M)が3であれば、2パスおよび3パスのマルチパス記録の場合に第1のデータ処理モードが選択され、4パス以上のマルチパス記録の場合に第2のデータ処理モードが選択されることになる。
(実施形態3)
上述した実施形態1〜2では、図7の選択部103におけるモード選択をユーザによる選択情報あるいはマルチパスの回数情報に従って行ったが、この実施形態3では、画像記録に用いる記録媒体の種類に応じてモード選択を行うことを特徴とする。より詳しくは、選択部103は、記録媒体の種類が所定の種類の記録媒体の場合には第1の処理モードを選択し、記録媒体の種類が所定の種類とは異なる種類の記録媒体の場合には第2の処理モードを選択する。選択部103によるモード選択以外の構成については基本的に実施形態1、2と同じであるため、実施形態1、2と共通する構成(例えば図1に示される装置構成等)についてはその説明を省略する。
以下、図7、図14を用いて本実施形態の画像データ処理工程について説明する。図7のメモリバッファ101および色変換部102における構成や動作については、上述した実施形態1、2と同じである。
図7の選択部103には、記録コマンドに含まれる記録媒体の種類に関する情報が入力される。そして、選択部103は、図14のフロ−チャートに従って、記録媒体の種類が所定の種類の記録媒体であるか否かを判定する(ステップS1)。記録媒体の種類が所定の種類の記録媒体であると判定された場合には、ステップS2へ進み、第1の処理モードを選択する。一方、記録媒体の種類が所定の種類とは異なる記録媒体であると判定された場合には、ステップS3へ進み、第2の処理モードを選択する。本実施形態では、所定の種類の記録媒体として普通紙が定められているため、普通紙に対するマルチパス記録の場合には第1の処理モードが選択され、普通紙以外の光沢紙等に対するマルチパス記録の場合には第2の処理モードが選択される。
ここで、記録媒体の種類に応じて異なる処理モードを選択する理由について説明する。記録媒体の使用目的は様々であり、画質よりも速度優先の記録の際に使用されることが多い記録媒体もあれば、速度よりも画質優先の記録の際に使用されることが多い記録媒体もある。例えば、普通紙は高速記録の際に使用されるが多いし、光沢紙は高画質記録の際に使用されることが多い。そこで、高速記録の際に使用されることが多い記録媒体(例えば、普通紙)を用いる場合には、高速記録に適した第1の処理モードを実行するようにしている。一方、高画質記録の際に使用されることが多い記録媒体(例えば、普通紙)を用いる場合には、高画質記録に適した第2の処理モードを実行するようにしている。
このようにして選択部103において第1の処理モードが選択された場合には、色変換部102により変換された多値の画像データは第1の画像処理部104に入力される。そして、実施形態1で説明した図8と同様、第1の画像処理部104に入力された多値の画像データ(14001)は、1パス目用の多値の画像データ(14002)と2パス目用の多値の画像データ(14003)とに分割される。次いで、これら多値の画像データ(14002、14003)は異なるディザ処理により2値化され、1パス目用の2値の画像データ(14004)と2パス目用の2値の画像データ(14005)が得られる。これにより、所定の種類の記録媒体(例えば、普通紙)を使用する場合には、ロバスト性が高く且つデータ処理負荷が小さいデータ処理方法を用いた画像記録を行うことができる。
一方、選択部103において第2の処理モードが選択された場合には、色変換部102により変換された多値の画像データは第2の画像処理部106に入力される。そして、実施形態1で説明した図10と同様、第2の画像処理部106に入力された多値の画像データ(15001)は、1パス目用の多値の画像データ(15002)と2パス目用の多値の画像データ(15003)とに分割される。次いで、これら多値の画像データ(15002、15003)は異なる誤差拡散処理により2値化され、1パス目用の2値の画像データ(15004)と2パス目用の2値の画像データ(15005)が得られる。これにより、所定の種類とは異なる種類の記録媒体(例えば、光沢紙)を使用する場合には、ロバスト性が高く且つ濃度保存性も高いデータ処理方法を用いた画像記録を行うことができる。
以上説明したように本実施形態によれば、記録媒体の種類に適した画像処理モードを実行することができる。なお、第1の処理モードが適用される記録媒体(所定の種類の記録媒体)は普通紙に限られるものではなく、例えば、ハガキであってもよい。また、第2の処理モードが適用される記録媒体(所定の種類とは異なる記録媒体)は光沢紙に限られるものではなく、マット紙やフィルム等であってもよい。また、本実施形態では、普通紙と光沢紙とでマルチパスの回数が同じである場合について例示したが、マルチパスの回数は異ならせてもよい。例えば、普通紙にはK(Kは2以上の整数)パスで記録し、光沢紙にはL(LはKより大きい整数)パスで記録するようにしてもよい。この場合、普通紙用のデータ処理に相当する第1のデータ処理モードでは、入力画像データに基づいてK個のプレーンの多値画像データを生成し、このK個のプレーンの多値の画像データを異なるディザ処理により2値化することになる。一方、光沢紙用のデータ処理に相当する第2のデータ処理モードでは、入力画像データに基づいてL個のプレーンの多値画像データを生成し、このL個のプレーンの多値画像データを異なる誤差拡散処理により2値化することになる。
(実施形態4)
本実実施形態は、実施形態2と実施形態3を組合わせた点を特徴としている。すなわち、マルチパスの回数(N)に関する情報および記録媒体の種類に関する情報に基づいて第1の処理モードか第2の処理モードを選択する。選択部103によるモード選択以外の構成については基本的に上述した実施形態と同じであるため、上述した実施形態と共通する構成(例えば図1に示される装置構成等)についてはその説明を省略する。
選択部103には、下記表1に示されるようなテーブルが格納されている。また、選択部103には、記録コマンドに含まれる、マルチパスの回数(N)に関する情報および記録媒体の種類に関する情報が入力される。そして、選択部103は、テーブルを参照しながら、マルチパスの回数(N)に関する情報および記録媒体の種類に関する情報に基づいてデータ処理モードを選択する。
具体的には、マルチパスの回数(N)に関する情報が「2」を示し且つ記録媒体の種類に関する情報が「普通紙」を示す場合には、第1の処理モードが選択される。この第1の処理モードでは、2回の相対移動に対応する2つのプレーンの多値画像データに対して、上述の異なるディザ処理が行われる。また、マルチパスの回数(N)に関する情報が「2」を示し且つ記録媒体の種類に関する情報が「光沢紙」を示す場合には、第2の処理モードが選択される。この第2の処理モードでは、2回の相対移動に対応する2つのプレーンの多値画像データに対して、上述の異なる誤差拡散処理が行われる。また、マルチパスの回数(N)に関する情報が「4」を示し且つ記録媒体の種類に関する情報が「光沢紙」あるいは「普通紙」を示す場合には、第2の処理モードが選択される。この第2の処理モードでは、4回の相対移動に対応する4つのプレーンの多値画像データに対して異なる誤差拡散処理が行われる。以上説明したように本実施形態によれば、記録媒体の種類とマルチパスの回数を考慮した画像処理モードを実行することができる。
(実施形態5)
上述した実施形態では、ユーザ選択情報、マルチパスの回数情報、記録媒体の種類情報、あるいはこれらの組合わせに従って、モード選択を行っているが、この実施形態5では、画像データのインク色毎にモード選択を行うことを特徴とする。選択部103によるモード選択以外の構成については基本的に上述した実施形態と同じであるため、上述した実施形態と共通する構成(例えば図1に示される装置構成等)についてはその説明を省略する。
図7の色変換部102で得られた多値の画像データ(CMYKの濃度データ)は選択部103に入力される。そして、選択部103は、多値の画像データ(CMYKの濃度データ)のうち、所定色(Y)のインクに対応する多値の画像データを第1の画像処理部104へ出力する。一方、所定色以外の色(CMY)のインクに対応する多値の画像データを第2の画像処理部106へ出力する。これにより、多値の画像データに対応するインクの色に関する情報に応じて、色毎に、第1の処理モードあるいは第2の処理モードが選択されることになる。
ここで、多値の画像データに対応するインクの色に応じてモード選択を行う理由について説明する。インクには、視覚的に目立ちにくい色のインクと視覚的に目立ちやすい色のインクとが存在する。例えば、前者のインクとしてはイエローインクがあり、後者のインクとしてはマゼンタ、シアン、ブラックインクがある。視覚的に目立ちやすい色の場合には、ドットの粒状感を低く抑えることが必要であるため、量子化処理として誤差拡散処理を用いるのが好適である。一方、視覚的に目立ちにくい色の場合には、ドットの粒状感を低く抑えることはそれ程重要ではないため、粒状感低減よりもデータ処理の負荷軽減を重視して、ディザ処理を用いる。従って、視覚的に目立ちにくい色(Y)については、図8に示されるようなディザ処理による第1の処理モードを実行するようにしている。一方、視覚的に目立ちやすい色(CMK)については、図10に示されるような誤差拡散処理による第2の処理モードを実行するようにしている。これにより、所定色のインクのデータに対しては、ロバスト性が高く且つデータ処理負荷が小さいデータ処理方法を適用し、所定色とは異なる色のインクのデータに対しては、ロバスト性が高く且つ濃度保存性も高いデータ処理方法を適用することができる。
以上説明したように本実施形態によれば、画像データが示すインク色に適した画像処理モードを実行することができる。なお、第1の処理モードが適用される所定色のインクはイエローインクに限られるものではなく、例えば、シアン、マゼンタおよびブラックのインク夫々よりも色材濃度が低い淡シアン、淡マゼンタおよび淡ブラックのインク等であってもよい。
また、本実施形態では、第1の処理モードが適用される「所定色」として、視覚的に目立ちにくい色を採用し、第2の処理モードが適用される「所定色とは異なる色」として、視覚的に目立ちやすい色を採用しているが、採用基準はこれに限られるものではない。例えば、「所定色」として文字記録に使用される割合が多いブラックを採用し、「所定色とは異なる色」として写真等のカラー記録に使用される割合が多いイエロー・シアン・マゼンタを採用してもよい。
(実施形態6)
本実実施形態は、実施形態2と実施形態3と実施形態5を組合わせた点を特徴としている。すなわち、マルチパスの回数(N)に関する情報、記録媒体の種類に関する情報および画像データの色情報に基づいて第1の処理モードか第2の処理モードを選択する。選択部103によるモード選択以外の構成については基本的に上述した実施形態と同じであるため、上述した実施形態と共通する構成(例えば図1に示される装置構成等)についてはその説明を省略する。
選択部103には、下記表2に示されるようなテーブルが格納されている。また、選択部103には、記録コマンドに含まれるマルチパスの回数(N)に関する情報および記録媒体の種類に関する情報と、色変換部102により得られる複数色(CMYK)の多値の画像データが入力される。そして、選択部103は、テーブルを参照しながら、マルチパスの回数(N)に関する情報、記録媒体の種類に関する情報および画像データの色情報に基づいてデータ処理モードを選択する。これにより、記録媒体の種類、マルチパスの回数およびインク色を考慮した画像処理モードを実行することができる。
(実施形態7)
この実施形態7は、上述した実施形態1〜6の図7に示される第1の画像処理部104の構成を、下記図15〜図17を用いて説明するような第1の画像処理部2004の構成に置き換えたものである。それ以外の構成については基本的に実施形態1〜6の構成と同じであり、ディザ処理による第1の処理モードと誤差拡散処理による第2の処理モードが選択可能となっている。
図15は、実施形態7の第1の画像処理部2004で実行される画像処理の工程を説明するためのブロック図である。本実施形態では、異なるパスで記録されるドット同士が重なり過ぎないようにするために、あるパスのプレーンのディザ処理結果(2値化処理)に基づいて、別のパスのプレーンの多値画像データについてディザ処理(2値化処理)を実行することを特徴とする。具体的には、複数のパスに対応する複数のプレーンの多値データに対して順次ディザ処理を行うにあたり、先行して行われたディザ処理の結果に基づいて後続のディザ処理を行う。詳しくは、先行して行われたディザ処理の結果に基づいて後続のディザ処理の対象となる多値の画像データを補正するための補正データ(制約情報)を求め、この補正データ(制約情報)により補正された多値の画像データに対して後続のディザ処理を行っている。こうすることで、先行して行われたディザ処理によってドットが形成されることが決定された画素に関して、後続のディザ処理によってドットが形成されることが決定される確率が下がるようにしている。以下、第1の画像処理部2004で実行される第1の処理モードのデータ処理処理について詳しく説明する。
図15の第1の画像処理部2004には、図7の色変換部102により得られた多値の画像データ(CMKY濃度データ)が入力される。第1の画像処理部2004に入力された多値の画像データは、第1のデータ生成部(第1のデータ分割部)2041によって、マルチパス数(N)と同じN個のプレーンに分割される。この際の分割方法は、上述した実施形態1〜6と同様でよい。なお、以下では、記録媒体の所定領域に対する最初のパスに対応するプレーンを第1のプレーン、記録媒体の所定領域に対するK(1<K≦N)回目のパスに対応するプレーンを第Kのプレーンと定義する。
以下の処理は、第1のプレーンから順に行う。第1のデータ生成部において生成された第1のプレーンの多値の画像データは、メモリバッファ2047にそのまま格納され、その後、第1の量子化部(ここでは、2値化部)2042に送られる。第1の量子化部2042は、上述した実施形態と同様、ディザマトリクス法を用いて、メモリバッファ2047に格納された多値の画像データに対して2値化処理を行う。ここで、第1のプレ−ンの多値の画像データを2値化する際には、図9(A)で示したディザマトリクスAを用いる。こうして得られた2値の画像データは、図7のプリントバッファ107に転送されると共に制約情報演算部2048にも転送される。上述した実施形態1〜6と同様、プリントバッファ107に格納された2値の画像データは所定のタイミングで読み出され、読み出された2値の画像データに基づいてヘッドが駆動されて記録が行われる。
制約情報演算部2048は、第1の量子化部2042から出力される2値の画像データが1(記録)を示す場合には、この“1”を、第1の量子化部2042に入力されるビット数と同じビット数で規定される第1の値(例えば、256)に変換する。また、第1の量子化部2042から出力される2値の画像データが0(非記録)を示す場合には、この“0”を、第1の量子化部2042に入力されるビット数と同じビット数で規定される第2の値(例えば、0)に変換する。その後、制約情報演算部2048は、こうして変換された変換値に対して図16(a)に示されるフィルタ係数を乗算することにより、フィルタ処理を行う。図16(a)はフィルタ処理を行う際に使用する係数であり、図16(b)は図16(a)のフィルタを用いて行った演算結果を示す図である。斜線で示した注目画素の変換値が“255”の場合に、図16(a)のフィルタ係数を用いてフィルタ演算すると、注目画素とその周辺画素の配分値は図16(b)のようになる。すなわち、第1の量子化部2042からの出力が1(記録)であれば、注目画素および周辺画素の配分値は図16(b)のようになる。
図17は、第1の量子化部2042からの出力結果(フィルタ前の2値データ)と、この出力結果に対して上記フィルタ処理を行った結果(フィルタ後のデータ)を示す模式図図である。制約情報演算部2048は、上記のようにして得られた配分値(図16(b)の値)をマイナス値に変換し、このマイナス値を第1プレーンの2値化前の多値画像データに加算して補正データ(制約情報)を得る。この補正データは、第2プレーンの多値画像データを補正するための多値の補正データである。このようにして得られた多値の補正データ(制約情報)をメモリバッファ2047の第2のプレーンの画素位置に格納する。
続く第2のブレーン用の処理では、第1のデータ生成部に2041により生成された多値の画像データが、メモリバッファ1047に予め格納されている制約情報(多値の補正データ)に加算されて保存される。その後、第1のプレーンと同様に、第1の量子化部2041において図9(A)のディザマトリクスAを用いて2値化処理を行い、2値化された画像データはプリントバッファ107に転送される。第2のプレーンの2値化結果も、第1のプレーン用の出力結果と同様に、制約情報演算部2048に転送される。
以上の処理において、第2のプレーン用の2値化処理では、第1のプレーンで記録(1)と定められた画素のデータ値は元々の値よりも低くなり、当該画素やその周辺の画素が2値化処理によって記録(1)となる確率が低くなる。つまり、第1のプレーンのディザ処理(先のディザ処理)によってドットが形成されることが決定された画素に関して、第2のプレ−ンのディザ処理(後続のディザ処理)によってドットが形成されることが決定される確率が下がる。結果、第1のプレーンのドットと第2のプレーンのドットが重なる画素の割合を低減することができ、ドットの重なり過ぎによる粒状感の悪化を抑制することができる。
続く第3のプレーン〜第Nのプレーンのディザ処理も、このようにして順次に行われる。つまり、各プレーンの多値データを順次ディザ処理していくにあたり、先行して処理されたプレーンのディザ処理の結果に基づいて、後続のプレーンのディザ処理を行うのである。その際、制約情報演算部1048は、第1のプレーンから第(N−1)のプレーンに対するフィルタ処理後の結果を、順次メモリバッファ1047の所定の画素位置に累積していく。これにより、例えば第Kのプレーンの多値画像データに対するディザ処理を行う場合、第1〜第(K−1)プレーンのいずれかでドット記録(1)が決定された画素には、K回目の記録走査でドットが記録されにくくなる。以上のような処理によれば、異なる記録走査で記録されるドットが重なる確率を下げることができる。
既に説明したように、プレーン間のずれに伴う濃度変動を抑えるためには、複数の記録走査でのドットが互いに補完の関係にないこと、すなわち複数の記録走査でドットが重ねて記録される画素が存在することが効果的である。しかし、そのような画素が多すぎると、被服率の減少による濃度低下を招いたり、ドットの重なり過ぎによる粒状感の悪化を招く可能性がある。本実施形態のように、複数の記録走査でドットが重ねて記録される画素を存在させつつも、そのような画素の割合を低く抑えることにより、ドットが重ねて記録される画素を必要以上に多く設けることなく、濃度変動も適度に抑えることが出来る。このように本実施形態の第1の処理モードによれば、粒状性が低く、且つ濃度変動に強いドット配置を得ることができる。
なお、本実施形態では、異なるプレーンに対するディザ処理に用いるディザマトリクスとして、同じディザマトリクスを使用しているが、異なるディザマトリクスを使用してもよい。例えば、第1のプレーンのディザ処理の際には図9(A)のディザマトリクスAを用い、第2のプレーンのディザ処理の際には図9(B)のディザマトリクスBを用いるようにしてもよい。
また、本実施形態では、制約情報演算部1048で用いるフィルタとして、図16(a)で示したように、3画素×3画素の領域を有し、係数がほぼ同心円上に並ぶ等方的加重平均フィルタを用いたが、これに限定されるものではない。5画素×5画素や7画素×7画素など更に広い正方形でもよいが、5画素×7画素や5画素×9画素のような長方形で、フィルタ係数が楕円である非等方フィルタであってもよい。また、ローパス性を有する形態のほか、バンドパス特性やバイパス特性のフィルタであってもよい。
以上説明したように本実施形態の第1の処理モードによれば、複数の相対移動(パス)に対応する複数の多値の画像データに対して順次ディザ処理を行うにあたり、先のディザ処理の結果に基づいて後続のディザ処理を行う。これにより、上述した実施形態1〜6に比べて、異なるパスによって記録されるドットの重なり割合を減らすことができるので、ロバスト性に優れ且つ粒状性にも優れた記録方法を提供することができる。
(実施形態8)
この実施形態8は、上述した実施形態1〜6の図7に示される第2の画像処理部106の構成を、下記図18を用いて説明するような第2の画像処理部2006の構成に置き換えたものである。それ以外の構成については基本的に実施形態1〜6の構成と同じであり、ディザ処理による第1の処理モードと誤差拡散処理による第2の処理モードが選択可能となっている。
図18は、実施形態8の第2の画像処理部2006で実行される画像処理の工程を説明するためのブロック図である。本実施形態では、異なるパスで記録されるドット同士が重なり過ぎないようにするために、あるパスのプレーンの誤差拡散処理結果(2値化処理)に基づいて、別のパスのプレーンの多値画像データについて誤差拡散処理(2値化処理)を実行することを特徴とする。具体的には、複数のパスに対応する複数のプレーンの多値データに対して順次誤差拡散処理を行うにあたり、先行して行われた誤差拡散処理の結果に基づいて後続の誤差拡散処理を行う。詳しくは、先行して行われた誤差拡散処理の結果に基づいて後続の誤差拡散処理の対象となる多値の画像データを補正するための補正データ(制約情報)を求め、この補正データ(制約情報)により補正された多値の画像データに対して後続の誤差拡散処理を行っている。こうすることで、先行して行われた誤差拡散処理によってドットが形成されることが決定された画素に関して、後続の誤差拡散処理によってドットが形成されることが決定される確率が下がるようにしている。以下、第2の画像処理部2006で実行される第2の処理モードのデータ処理について詳しく説明する。
図18の第2の画像処理部2006には、図7の色変換部102により得られた多値の画像データ(CMKY濃度データ)が入力される。第2の画像処理部2006に入力された多値の画像データは、第2のデータ生成部(第2のデータ分割部)2043によって、マルチパス数(N)と同じN個のプレーンに分割される。この際の分割方法は、上述した実施形態1〜6と同様でよい。なお、以下では、記録媒体の所定領域に対する最初のパスに対応するプレーンを第1のプレーン、記録媒体の所定領域に対するK(1<K≦N)回目のパスに対応するプレーンを第Kのプレーンと定義する。
以下の処理は、第1のプレーンから順に行う。第2のデータ生成部において生成された第1のプレーンの多値の画像データは、メモリバッファ2047にそのまま格納され、その後、第2の量子化部(ここでは、2値化部)2044に送られる。第2の量子化部2044は、上述した実施形態と同様、誤差拡散法を用いて、メモリバッファ2047に格納された多値の画像データに対して2値化処理を行う。ここで、第1のプレ−ンの多値の画像データを2値化する際には、図11(A)で示した誤差分配マトリクスAを用いる。こうして得られた2値の画像データは、図7のプリントバッファ107に転送されると共に制約情報演算部2048にも転送される。上述した実施形態1〜6と同様、プリントバッファ107に格納された2値の画像データは所定のタイミングで読み出され、読み出された2値の画像データに基づいてヘッドが駆動されて記録が行われる。
制約情報演算部2048は、実施形態7と同様、図16(a)に示されるフィルタを用いてフィルタ処理を行うものである。すなわち、第1のプレ−ンの2値化処理の結果と図16(a)のフィルタ係数に基づいて、上述した図16(b)に示されるような配分値を得る。そして、この配分値をマイナス値に変換し、このマイナス値を第1プレーンの2値化前の多値画像データに加算して補正データ(制約情報)を得る。そして、この補正データ(制約情報)をメモリバッファ2047の第2のプレーンの画素位置に格納する。
続く第2のブレーン用の処理では、第2のデータ生成部に2043により生成された多値の画像データが、メモリバッファ1047に予め格納されている制約情報(多値の補正データ)に加算されて保存される。その後、第1のプレーンと同様に、第2の量子化部2043において図9(A)の誤差分配マトリクスAを用いて2値化処理を行い、2値化された画像データはプリントバッファ107に転送される。第2のプレーンの2値化結果も、第1のプレーン用の出力結果と同様に、制約情報演算部2048に転送される。
以上の処理において、第2のプレーン用の2値化処理では、第1のプレーンで記録(1)と定められた画素のデータ値は元々の値よりも低くなり、当該画素やその周辺の画素が2値化処理によって記録(1)となる確率が低くなる。つまり、第1のプレーンの誤差拡散処理(先の誤差拡散処理)によってドットが形成されることが決定された画素に関して、第2のプレ−ンの誤差拡散処理(後続の誤差拡散処理)によってドットが形成されることが決定される確率が下がる。結果、第1のプレーンのドットと第2のプレーンのドットが重なる画素の割合を低減することができ、ドットの重なり過ぎによる粒状感の悪化を抑制することができる。
続く第3のプレーン〜第Nのプレーンの誤差拡散処理も、このようにして順次に行われる。つまり、各プレーンの多値データを順次誤差拡散処理していくにあたり、先行して処理されたプレーンの誤差拡散処理の結果に基づいて、後続のプレーンの誤差拡散処理を行うのである。その際、制約情報演算部1048は、第1のプレーンから第(N−1)のプレーンに対するフィルタ処理後の結果を、順次メモリバッファ1047の所定の画素位置に累積していく。これにより、例えば第Kのプレーンの多値画像データに対する誤差拡散処理を行う場合、第1〜第(K−1)プレーンのいずれかでドット記録(1)が決定された画素には、K回目の記録走査でドットが記録されにくくなる。以上のような処理によれば、異なる記録走査で記録されるドットが重なる確率を下げることができる。従って、本実施形態の第2の処理モードによれば、粒状性が低く、且つ濃度変動に強いドット配置を得ることができる。
なお、本実施形態では、異なるプレーンに対する誤差拡散処理に用いる誤差分配マトリクスとして、同じ誤差分配マトリクスを使用しているが、異なる誤差分配マトリクスを使用してもよい。例えば、第1のプレーンの誤差拡散処理の際には図11(A)の誤差分配マトリクスAを用い、第2のプレーンの誤差拡散処理の際には図11(B)の誤差分配マトリクスBを用いるようにしてもよい。
また、本実施形態では、制約情報演算部1048で用いるフィルタとして、図16(a)で示したように、3画素×3画素の領域を有し、係数がほぼ同心円上に並ぶ等方的加重平均フィルタを用いたが、これに限定されるものではない。実施形態7と同様、5画素×5画素や7画素×7画素など更に広い正方形でもよいが、5画素×7画素や5画素×9画素のような長方形で、フィルタ係数が楕円である非等方フィルタであってもよい。また、ローパス性を有する形態のほか、バンドパス特性やバイパス特性のフィルタであってもよい。
また、本実施形態では、誤差拡散処理を採用しているので、実施形態7に比べて、同じ記録走査で記録されるドットが適度に分散し、そのドット配置による画像の低周波成分が抑えられる。そのため、プレーン内(同じ記録走査内)でのドット配置に起因する粒状性は良好なものとなる。また、一般に、プレーン間(記録走査間)でのずれが生じると、個々のプレーン内のドット配置模様(テクスチャ)が確認されるようになり、これが画像弊害として認知される場合もある。しかし、本実施形態の第2の処理モードのように、それぞれのプレーンにおけるドット配置が粒状性に優れた配置であれば、プレーン間でのずれが生じても、画像弊害とはなり難い。すなわち、本実施形態の2の処理モードによれば、濃度変動を抑える効果のみでなく、テクスチャに対する耐性も強化され、より粒状感が低減された出力画像を得ることが可能となる。
以上説明したように本実施形態の第2の処理モードによれば、複数の相対移動(パス)に対応する複数の多値の画像データに対して順次誤差拡散処理を行うにあたり、先の誤差拡散処理の結果に基づいて後続の誤差拡散処理を行う。これにより、上述した実施形態1〜6に比べて、異なるパスによって記録されるドットの重なり割合を減らすことができるので、ロバスト性に優れ且つ粒状性にも優れた記録方法を提供することができる。
(実施形態9)
この実施形態9は、実施形態7と実施形態8とを組合わせた点を特徴とする。すなわち、この実施形態9では、図7の第1の画像処理部104を図15の第1の画像処理部2004に置換え、図7の第2の画像処理部106を図18の第2の画像処理部2006に置換える。これにより、ロバスト性に優れ、粒状性が低く且つデータ処理負荷の小さなディザ処理を用いた第1の処理モードと、ロバスト性に優れ、粒状性が低く且つ濃度保存性に優れた誤差拡散処理を用いた第2の処理モードとが実行可能となる。
(実施形態10)
上述した実施形態1〜9では、シリアル型の記録装置を用いる場合について説明したが、本発明は、シリアル型の記録装置に限定されるものではなく、例えば、図19に示されるようなフルライン型の記録装置にも採用することができる。なお、フルライン型の記録装置に適用する場合、記録ヘッドに対する記録媒体の複数回の搬送動作が複数回の相対走査(相対移動)に相当し、この複数回の相対走査によってマルチパス記録が実行されることになる。
図19は、本発明において適用可能なフルライン型の記録装置の一例を示す図である。給紙カセット210から給紙された記録媒体211は搬送ベルト212上に載せられ、記録媒体211は搬送ベルト212に静電吸着された状態で搬送される。記録ヘッド201〜206を含むヘッドユニット200に対向する位置を通過する記録媒体211に対して、記録ヘッド201〜206からインクが吐出されて記録媒体211上に画像が形成される。このようなフルライン型の記録装置においてマルチパス記録を行うためには、記録ヘッドに対向する位置に同じ記録媒体を複数回搬送する必要がある。そこで、マルチパス記録を行う場合には、記録すべき画像の一部が記録された記録媒体を、再給紙搬送機構213を利用して、再度記録ヘッドに対向する位置へ搬送する。より詳しくは、マルチパス数Nを判定し、N回だけ記録ヘッドに対向する位置へ記録媒体を搬送し、これにより、マルチパス記録を実行する。
(実施形態11)
実施形態1〜10では、複数回の相対移動に対応する複数のプレーンの多値画像データを生成し、これら複数のプレーンの多値画像データに対してディザ処理あるいは誤差拡散処理を行うものである。一方、この実施形態11では、同色インクを吐出するための記録ヘッド(記録素子群)が複数存在することを前提としている。そして、これら複数の同色ヘッド(記録素子群)に対応する複数のプレーンの多値画像データを生成し、これら複数のプレーンの多値画像データに対してディザ処理あるいは誤差拡散処理を行うことを特徴としている。この点以外は上述した実施形態と同様なので、その説明を省略する。
図20は、実施形態11で使用するフルライン型のインクジェット記録装置の内部構成を説明するための概略図である。記録媒体Pは、第1の搬送ローラ対(703、704)と第2の搬送ローラ対(705、706)に挟持されながら矢印で示す方向(搬送方向)へ搬送される。このような記録媒体の搬送動作中に記録ヘッド105の記録素子群からインクが吐出され、記録媒体に画像が記録される。この記録媒体の搬送動作が、記録媒体と記録ヘッドの相対走査(相対移動)に該当する。
ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各インクを吐出するためのフルラインタイプの各色記録ヘッド(各色記録素子群)が、図のように各色2列ずつ搬送方向に沿って並列に配置されている。また、各色記録ヘッド(各色記録素子群)には、搬送方向と直交する方向に沿って複数の記録素子が配列されている。Bk、C、MおよびYのそれぞれの画像データは、それぞれ、2つの記録ヘッドに対応する2つのプレーンに分割される。そして、記録ヘッドと記録媒体との1回の相対移動中に、搬送方向に連なる1画素幅の領域に対して、各色2つの記録ヘッドにより、各プレーンの画像データに基づくドット記録が行われる。
以下、図7、図8、図10を用いて本実施形態の画像処理工程について説明する。なお、ここでは、代表して、Cヘッドのデータ処理を例に挙げて説明する。また、Cヘッドとしては、第1のシアンヘッドC1と第2のシアンヘッドC2が設けれているものとする。
図7の選択部103において第1の処理モードが選択された場合には、色変換部102に得られた、シアンインクに対応する多値の画像データ(以下、多値Cデータ)が第1の画像処理部104に入力される。第1の画像処理部104に入力された多値Cデータ(14001)は、第1のデータ生成部1041において画素毎に2つのプレーンに分割される。これにより、第1のシアンヘッドC1に対応する多値Cデータ(14002)と第2のシアンヘッドC2に対応する多値Cデータ(14003)とが生成される。
次いで、第1の量子化部1042において、第1のシアンヘッドC1用の多値Cデータ(14002)は図9(A)のディザマトリックスAを用いたディザ処理により2値化され、第1のシアンヘッドC1用の2値Cデータ(14004)が得られる。同様に、第2のシアンヘッドC2用の多値Cデータ(14003)は図9(B)のディザマトリックスBを用いたディザ処理により2値化され、第2のシアンヘッドC2用の2値Cデータ(14005)が得られる。その後、記録ヘッドと記録媒体との相対移動中に、2値Cデータ(14004)に基づいて第1のシアンヘッドC1が駆動され、2値Cデータ(14005)に基づいて第2のシアンヘッドC2が駆動される。これにより、2つの同色ヘッドを用いた高速記録を行うことができる。
一方、図7の選択部103において第2の処理モードが選択された場合には、色変換部102に得られた、シアンインクに対応する多値の画像データ(以下、多値Cデータ)が第2の画像処理部106に入力される。第2の画像処理部106に入力された多値Cデータ(15001)は、第2のデータ生成部1043において画素毎に2つのプレーンに分割される。これにより、第1のシアンヘッドC1に対応する多値Cデータ(15002)と第2のシアンヘッドC2に対応する多値Cデータ(15003)とが生成される。
次いで、第2の量子化部1044において、第1のシアンヘッドC1用の多値Cデータ(15002)は図11(A)の誤差分配マトリックスAを用いた誤差拡散処理により2値化され、第1のシアンヘッドC1用の2値Cデータ(15004)が得られる。同様に、第2のシアンヘッドC2用の多値Cデータ(15003)は図11(B)の誤差分配マトリックスBを用いた誤差分配処理により2値化され、第2のシアンヘッドC2用の2値Cデータ(15005)が得られる。その後、記録ヘッドと記録媒体との相対移動中に、2値Cデータ(15004)に基づいて第1のシアンヘッドC1が駆動され、2値Cデータ(15005)に基づいて第2のシアンヘッドC2が駆動される。これにより、2つの同色ヘッドを用いた高速画質記録を行うことができる。
なお、本実施形態における第1の処理モードとして、実施形態7で説明した第1の処理モードを適用することができる。また、本実施形態における第2の処理モードとして、実施形態8で説明した第2の処理モードを適用することができる。また、本実施形態で適用可能な記録装置はフルライン型の記録装置に限定されるものではなく、複数の同色ヘッドを備えたシリアル型の記録装置であっても適用可能である。
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、インクジェット方式の記録装置を使用したが、本発明はこのような記録装置に限定されるものではない。ドットを形成するための記録ヘッドと記録媒体との相対移動中に、記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録する方式の記録装置であれば、本発明を好適に採用することができる。
上述した実施形態では、第1および第2の画像処理部(104、2004、106、2006)において実行される量子化処理として2値化処理を採用しているが、本発明で適用可能な量子化処理は2値化処理に限られるものではない。3値化処理、4値化処理等のN(Nは2以上の整数)値化処理であれば適用可能である。例えば、3値化処理を採用する場合、第1および第2の量子化部(1042、2042、1044、2044)が3値化処理部に置き換わり、3値データに基づいてインク吐出が行われることになる。また、第1の処理モードと第2の処理モードとでN値化処理のNの値を異ならせてもよい。例えば、第1の処理モードでは3値化処理を採用し、第2の処理モードでは2値化処理を採用する形態であってもよい。
また、上述した実施形態1〜11は適宜組合せることができ、このような組合わせの形態も本発明の範疇である。例えば、実施形態7の第1の画像処理部2004を実施形態1〜6に追加してもよい。この場合、実施形態1〜6の第1および第2の画像処理部(104、106)において実行可能な第1および第2の処理モードに加え、実施形態7の第1の画像処理部(2004)で実行可能な第1の処理モードも選択可能に構成してもよい。この場合、第1の処理モードが2つ存在することになるので、これらモードを選択するためのルールを別途設ければよい。同様に、第1および第2の画像処理部(104、106)において実行可能な第1および第2の処理モードに加え、実施形態8の第2の画像処理部(2006)で実行可能な第2の処理モードも選択可能に構成してもよい。いずれにせよ、上述した第1の処理モードと第2の処理モードとが選択可能に構成されていればよい。
また、上述した実施形態では、マルチパス記録の具体例として2パスと3パスを例示したが、上述した通り、本発明ではN(Nが2以上の整数)パス記録であれば適用可能である。更に、上述した実施形態では、記録ヘッドの吐出口の配列範囲よりも小なる量の記録媒体の搬送を介した記録ヘッドの複数回の移動によってマルチパス記録を行う場合について例示したが、本発明で適用可能なマルチパス記録方式はこれに限られるものではない。往方向へのヘッド移動と復方向へのヘッド移動の間には記録媒体の搬送を行わずに、復方向へのヘッド移動後に記録ヘッドの吐出口の配列範囲と同じ量だけ記録媒体を搬送させることにより、マルチパス記録を行うようにしてもよい。
また、図7、図15、図18に示される画像処理機能を有する記録装置を例に、本発明の特徴的な画像処理を実行する画像データ処理装置を説明してきたが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、記録装置と接続される外部機器(例えば、ホスト装置)において、本発明の特徴的な画像処理が実行され、当該画像処理により得られた2値の画像データが記録装置に入力されるような形態であっても構わない。また、デジタルカメラなどによって撮影された画像が、ホスト装置などを介することなく直接記録装置に入力され、上記特徴的な画像処理の全てが記録装置で実行される構成であっても構わない。前者の場合にはホスト装置が、後者の場合には記録装置が、本発明における画像データ処理装置となる。なお、本発明の特徴的な画像データ処理とは、上述した実施形態から明らかなように、複数回の相対移動あるいは複数の記録ヘッド(記録素子群)に対応した複数の画像データを量子化する方法を選択する処理を指す。
本発明は、上述した画像処理の機能を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体によっても実現される。この場合、ホスト装置や記録装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が上記プログラムコードを読出し実行することによって上述した画像処理が実現されることになる。このように、上述した画像処理をコンピュータに実行させるための、コンピュータにより読み取り可能なプログラム、あるいは、そのプログラムを記憶した記憶媒体も本発明に含まれる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
更に、プログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、CPUなどが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。