明糸田書
摺動材料、 摺動部材及びウエザーストリップ
技術分野
【0 0 0 1】 本発明は、 摺動材料、 摺動部材及ぴウエザーストリップに関する。 背景技術
【0 0 0 2】 自動車用ドアのサッシュに取り付けられるウエザーストリップは、 窓ガラスの外周縁部をシールすることにより、 窓ガラスをしつかりと保持し、 雨、 風、 異物等の車内への侵入を防止すると共に、 窓ガラスの開閉を円滑に行わせる ために使用される自動車部品である。
【0 0 0 3】 このような機能を発揮させるために、 ウエザーストリップは一般 にエラストマ一を含有する摺動材料で構成される。 この場合に用いられる摺動材 料としては、 ウレタン系塗装材などの塗布硬化型や、 ォレフィン樹脂等に各種添 加物を添加した材料が代表的である (特許文献 1参照)。
【0 0 0 4】 一方、 摺動性の付与等を目的として、 架橋体の粒子を樹脂に添カロ し、 粒子の形状に基づいて成形体表面に凹凸形状を形成させる技術もある (特許 文献 2、 3参照)。
【特許文献 1】 特公平 7— 7 3 8 9 3号公報
【特許文献 2】 特許第 3 6 9 3 9 6 2号公報
【特許文献 3】 特開 2 0 0 2 - 2 0 5 5 8号公報
発明の開示
【0 0 0 5】 上述のようなエラストマ一系摺動材料に、 特性向上等を目的とし て、 シリコーンオイル等のシリコーン化合物を添加する場合があるが、 シリコー ン化合物の添カ卩により以下に述べるような問題点が生じてしまうため、 従来、 実 用に耐え得るシリコーン化合物含有熱可塑性摺動材料を得ることは困難であつた。
【0 0 0 6】 先ず、 シリコーン化合物を含有するエラストマ一をダイスから押 出してウエザーストリップ等の摺動材料を成形する場合において、 ダイス部分に
シリコーン化合物が付着して液滴や塊となって、 付着したシリコーン化合物が成 形体に垂れたり、 成形体表面に部分的に出現し、 鱗のようなまだら模様や大きな 筋を形成する等の成形不良を生じる問題がある。
【0 0 0 7】 また、 シリコーン化合物が経時的にウエザーストリップ表面にま だらにブリードして外観不良を生じたり、 繰り返し摺動するとシリコーン化合物 がすぐに除去され摺動耐久性が落ちる問題がある。
【0 0 0 8】 そこで、 本発明の目的は、 シリコーン化合物を含有する摺動材料 であって、 シリコーン化合物の含有量を大きくした場合であっても、 成形不良を 生じにくく、 シリコーン化合物のブリードも十分なレベルまで低減され、 耐久性 のある摺動材料を提供することにある。 本発明の目的はまた、 このような摺動材 料を用いた摺動部材、 及びこの摺動部材を用いたウエザーストリップを提供する ことにめる。
【0 0 0 9】 上記目的を達成するため、 本発明は、 ォレフィン系ポリマーとシ リコーン化合物とを必須成分とする原料の押し出しにより得られる摺動材料であ つて、 .ォレフイン系ポリマーの一部は摺動材料中で架橋体を形成しており、 架橋 体は、 シリコーン化合物の押し出し方向への偏在を妨げるように、 ドメインを形 成して摺動材料中で分散されており、 摺動材料全重量を基準とした、 摺動材料の 熱キシレン還流による残分比率が 3 3〜7 5重量%であり、 搢動材料全重量を基 準とした、 シリコーン化合物の含有量が 5〜2 0重量%である、 摺動材料を提供 する。
【0 0 1 0】 本発明者らが新たに得た知見によれば、 摺動材料の押し出し方向 にシリコーン材料が偏在することで、 シリコーン材料からなる層が形成され、 こ の層が表面近くに形成された場合ゃ摺動の結果この層の付近まで材料が磨耗した 場合に、 上述したような成形時または使用時の外観の問題が生じる。 またシリコ ーン化合物の層まで摩耗されない限り、 シリコーン化合物の供給がなされないた め、 表層に潤滑可能な量のシリコーン化合物を保持することは難しく、 摺動抵抗
が高くなつたり、 摩耗が大きく進行し、 上述した摺動耐久性の問題が生じる。
【0 0 1 1】 しかしながら、 本発明の摺動材料は、 才レフィン系ポリマーの架 橋体が形成されていることで、 シリコーン材料の押出し方向への偏在が妨げられ ており、 シリコーン化合物の含有量が 5〜2 0重量%と非常に高いにもかかわら ず、 成形時や使用時のシリコーン材料の外観の問題が十分なレベルまで低減され る。
【0 0 1 2】 また、 シリコーン化合物の押し出し方向への偏在が妨げられてい ることから、 摺動材料の耐久性が向上する。 これに加え、 シリコーン化合物を含 有する一般のエラストマ一系摺動材料に生じやすい、 使用時の異音も低減する。
【0 0 1 3】 このように異音が防止される理由は必ずしも明らかではないが、 本発明者らは以下の理由によるものと推測している。 すなわち、 一般のシリコー ン化合物含有エラストマ一系摺動材料では、 もともと表面のシリコーン化合物の 分布が不均一で滑りやすレ、部分とすべりづらレ、部分とが材料表面に混在し異音が 発生しやすい。 繰り返し摺動を行うと、 潤滑効果が乏しく摩耗や粘着によって高 抵抗化が進むことから、 シリコーン化合物のある部分とない部分の抵抗差は大き くなり、 ますます異音が発生する。 また付着物、 特に水 (水はスリップし易い) がついた場合、 材料表面のシリコーン化合物の分布が不均一であるために、 エラ ストマーと水という非常に大きい抵抗差の部分をガラスが摺接することになり、 非常に異音が発生しやすくなる。 更に、 表面のシリコーン化合物の分布が不均一 であるか又は不足すると、 水との親和性が高い部分と低い部分とが表面に混在す ることとなり、 異音発生の機会が高められる。 -これに対して、 本発明の摺動材料 では、 シリコーン化合物の分散が均一で、 エラストマ一低抵抗保護膜としての潤 滑性や水の排除能力が高いため、 上記のような現象が生じ難く異音が防止される ものと考えられる。
【0 0 1 4】 上記シリコーン化合物を、 プラストミルにより 1 8 0 °C、 1 0 r p mで混練したときのトルクが 0 . 0 1〜5 Nmであることが好ましい。
【0 0 1 5】 上記トルクを指標として、 シリコーン化合物の粘性の程度が規定 される。 本発明者らの知見によれば、 上記トルクが上記特定範囲内になるような 粘性を有するシリコーン化合物を用いることにより、 水と接触しながら摺動した とき等の摺動耐久性がより一層顕著に向上する。 係る効果が得られる理由は必ず しも明らかではないが、 本発明者らは、 シリコーン化合物の粘性を最適化するこ とにより、 摺動材料表面に存在するシリコーン化合物の量が維持され易くなるた めであると推測している。 摺動材料表面におけるシリコーン化合物の量が不足す ると、 表面に極薄の水が少量点在する状態となる。 この状態になると非常に異音 が発生し易い。
【0 0 1 6】 シリコーン化合物の粘性が上記のように制御されている場合、 摺 動によって初期に表面に存在していたシリコーン化合物が排除されたとしても、 摺動材料内部からシリコーン化合物が表面に供給されて、 表面におけるシリコー ン化合物の量の減少が抑制されると考えられる。 シリコーン化合物の粘性は、 摺 動材料内部から表面への移動のし易さに影響していると考えられる。 更には、 シ リコーン化合物の粘性は、 摺動材料内部から表面へのシリコーン化合物の移動経 路の長さや、 係る移動経路におけるシリコーン化合物の濃度にも影響していると 考えられる。
【0 0 1 7】 押し出し方向と平行な断面において、 ドメイン及ぴ未架橋のォレ フィン系ポリマーから構成される分散相のうち面積比で 8 0 %は、 0 . 1〜2 0 0 μ mの分散径を有することが好ましい。
【0 0 1 8】 押し出し方向と平行な断面における、 ォレフィン系ポリマー架橋 体のドメインの平均粒径は、 0 . 5〜1 5 0 mであることが好ましい。
【0 0 1 9】 ォレフィン系ポリマーとシリコーン系化合物は相容性が低いため. シリコーン化合物は押し出し方向に流路を作って偏在しやすいが、 ォレフィン系 ポリマー架橋体のドメインの平均粒径が上記範囲であると、 押し出し方向への流 路形成が阻害され、 シリコーン化合物が押し出し方向に沿って層状に偏在しにく
くなる。 このために成形時や使用時のシリコーン材料のブリードの問題が特に良 好に防止され、 耐久性が更に向上し、 異音の発生も効果的に低減される。
【0 0 2 0】 このような効果は、 シリコーン化合物が、 シリコーンオイルと、 シリコーンガムと、 シリコーンを 4 0重量0 /0以上含むシリコーン共重合体とから なる群より選ばれる粘度 1 O m P a · s以上のシリコーン化合物を少なくとも 1 種含有する場合に特に顕著となる。
【0 0 2 1】 シリコーン化合物を押し出し方向に偏在させないように架橋体を 形成し易くするためには、 摺動材料は、 ォレフィン系ポリマーとして、 不飽和結 合を有する未架橋ォレフィン系ポリマー、 及ぴ下記式 (i )、 ( i i )、 ( i i i ) 又は (i v ) で表される基を含む未架橋ォレフィン系ポリマーからなる群より選 ばれる少なくとも 1種のォレフィン系ポリマーを含有することが好ましい。 これ らのォレフイン系ポリマーの架橋により架橋体が形成される。 また、 架橋体は動 的架橋による押し出しにより得られるものであることが好ましい。
【0 0 2 2】
— CH3 ( i ) — CH2— ( ii )
\
CH— ( iii )
/
、C=0 ( iv)
/
【0 0 2 3】 流動性や成形性の向上、 及ぴリップ部などのエラストマーとの接 着性向上の観点から、 上記原料は未架橋のォレフィン系ポリマーを含有している ことが好ましい。 すなわち、 ォレフィン系ポリマーとシリコーン化合物とを必須 成分とする原料が、 未架橋ォレフィン系ポリマーと、 架橋されたォレフイン系ポ リマーを含有しており、 架橋されたォレフイン系ポリマー (架橋体) が動的架橋 による押し出しにより得られるものであることが好ましい。
【0 0 2 4】 本発明の摺動材料は、 摺動部材ゃウエザーストリップに適用でき る。 すなわち、 窓ガラスと搢接するウエザーストリップ用摺動部材であって、 当 該摺動部材は上記摺動材料からなる摺動部材、 窓ガラスと摺接する摺動部材を備 えるウエザーストリップであって、 当該摺動部材は上記摺動材料からなるゥヱザ ーストリップ、 が提供される。
【0 0 2 5】 シリコーン化合物を含有する摺動材料であって、 シリコーン化合 物の含有量を大きくした場合であっても、 成形不良を生じにくく、 シリコーン化 合物のブリードも十分なレベルまで低減され、 耐久性のある搢動材料が提供され る。 また、 このような摺動材料を用いた摺動部材、 及びこの摺動部材を用いたゥ ヱザーストリップが提供される。
図面の簡単な説明
【0 0 2 6】
図 1は、 実施形態に係る摺動材料の斜視図である。
図 2の ( a ) は図 1における I一 I線断面図であり、 図 2の ( b ) は図 1にお ける I I一 I I線断面図である。
図 3の (a ) は従来技術に係る摺動材料の押し出し方向と垂直な断面の断面図 であり、 図 3の (b ) は同摺動材料の押し出し方向と平行な断面の断面図である。 図 4は、 実施形態に係る摺動材料の押し出し方向と平行な断面の断面図である。 図 5は、 第 1実施形態に係るウエザーストリップの模式断面図である
図 6は、 第 2実施形態に係るウエザーストリップの模式断面図である。
図 7は、 実施例 2の X線像である。
図 8は、 比較例 1の X線像である。
図 9は、 比較例 2の X線像である。
図 1 0は、 実施例 3の X線像である。
図 1 1は、 実施例 4の X線像である。
図 1 2は、 実施例 5の X線像である。
図 1 3は、 実施例 6の X線像である。
図 1 4は、 実施例 7の X線像である。
図 1 5は、 比較例 3の X線像である。
図 1 6は、 二層成形品を固定する治具の模式断面図である。
図 1 7は、 摺動試験機の模式断面図である。
図 1 8は、 実施例 9の X線像である。
図 1 9は、 実施例 1 0の X線像である。
図 2 0は、 実施例 1 1の X線像である。
図 2 1は、 実施例 1 2の X線像である。
図 2 2は、 実施例 1 3の X線像である。
図 2 3は、 実施例 1 4の X線像である。
図 2 4は、 実施例 1 5の X線像である。
図 2 5は、 実施例 9の X線像である。
図 2 6は、 実施例 1 0の X線像である。
図 2 7は、 実施例 1 2の X線像である。
図 2 8は、 実施例 1 3の X線像である。
図 2 9は、 実施例 9の X線像である。
図 3 0は、 実施例 1 0の X線像である。
図 3 1は、 実施例 1 2の X線像である。
図 3 2は、 実施例 1 3の X線像である。
図 3 3は、 摺動抵抗係数と摺動回数との関係を示す図である。
図 3 4は、 実施例 1 6の X線像である。
図 3 5は、 実施例 1 7の X線像である。
図 3 6は、 実施例 1 8の X線像である。
図 3 7は、 熱キシレン還流による残分比率 (%) と摺動材料中のシリコーン化 合物含有量 (%) の関係を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
【0 0 2 8】 以下、 図面を参照しつつ、 本発明の好適な実施形態について詳細 に説明する。 なお、 図面の説明において同一要素には同一符号を付し、 重複する 説明を省略する。 また、 図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、 寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0 0 2 9】 図 1は実施形態に係る摺動材料 1の斜視図である。 図 1中 Aで示 す方向が、 摺動材料 1の押し出し方向である。 図 2 ( a ) は図 1における I— I 線断面図 (押し出し方向と垂直な断面の断面図、 矢視図) であり、 図 2 ( b ) は 図 1における I I一 I I線断面図 (押し出し方向と平行な断面の断面図、 矢視 図) である。
【0 0 3 0】 図 2 ( a ) 及び (b ) に示すように、 摺動材料 1においては、 押 し出し方向と垂直な断面及び押し出し方向と平行な断面の双方で、 未架橋のォレ フィン系ポリマーからなるマトリックス 1 0中に、 架橋したォレフィン系ポリマ 一からなるドメイン 1 2が分散されており、 摺動材料 1中にはシリコーン化合物 1 4が存在している。 なお、 摺動材料 1においては、 シリコーン化合物 1 4はマ トリックス 1 0及ぴドメイン 1 2の界面に多く存在している。
【0 0 3 1】 図 3 ( a ) は従来技術に係る摺動材科 2の押し出し方向と垂直な 断面の断面図であり、 図 3 ( b ) は摺動材料 2の押し出し方向と平行な断面の断 面図である。 図 3 ( a ) に示すように押し出し方向と垂直な断面の断面において は、 シリコーン系化合物 1 4はォレフイン系ポリマーのマトリックス 1 6中に分 散されているが、 図 3 ( b ) に示すように押し出し方向と平行な断面においては、 シリコーン系化合物 1 4は押し出し方向に偏在している。 言い換えると、 シリコ ーン化合物 1 4は、 摺動材料 1内部で押し出し方向に延びた層を形成している。
【0 0 3 2】 すなわち、 摺動材料 1においては従来技術に係る摺動材料 2と異 なって、 ォレフィン系ポリマーの架橋体が、 シリコーン化合物 1 4の押し出し方 向への偏在を妨げるように、 ドメイン 1 2を形成して摺動材料中で分散されてい
る。 なお、 押し出し方向にのみ延在する 5 0 μ ιη以上 (更には 8 0 m以上、 特 には 1 0 0 πι以上) の長さのシリコーン化合物 1 4の層が生じている場合、 シ リコーン化合物 1 4が押し出し方向に偏在しているとみなすことができる。
【0 0 3 3】 シリコーン化合物を用いた従来の摺動材料の場合、 プリードによ るシリコーン化合物の消失防止や成形中のシリコーン化合物の噴出しの防止を主 な目的として、 シリ コーン化合物の樹脂との分子レベルの相溶性や、 シリコーン 化合物を化学結合による固定に着目したものが多い。 例えば、 シリコーン化合物 の分子量を適正化して相溶性を制御する方法、 化学的にシリコーン化合物を変性 する方法、 シリコーン化合物を共重合する方法が検討されている。
【0 0 3 4】 これに対して、 本発明は、 相溶性や化学結合に着目する従来の方 法とは異なり、 樹脂 (ォレフイン系ポリマー) との相溶性の低いシリコーン化合 物が集まり易い領域を樹脂中に意図的に設けるという考え方に基づくものである。 シリコーン化合物が集まり易い領域は、 主として、 架橋体のドメインの周囲に形 成される。 架橋体はシリコーン化合物との相溶性が低く、 高粘度であるため、 押 し出し成形時の剪断によってもシリコーン化合物とは実質的に混合されない。 ま た、 架橋体と未架橋のォレフィン系ポリマーとの粘度差等に起因して、 両者の間 に間隙が形成され易く、 この間隙にシリコーン化合物が入り込み易い。 押し出し 成形の際にシリコーン化合物は架橋体のドメインを避けて流動し、 隣り合.う架橋 体のドメイン同士の間、 架橋体のドメインと非架橋のォレフィン系ポリマーの相 との界面若しくはその近傍の領域、 又は未架橋のォレフィン系ポリマー中に局在 化する。 したがって、 シリコーン化合物を、 押し出し方向に偏ることなく押し出 し方向に垂直な方向にも分布させることができる。 シリコーン化合物が局在する 領域の形態は、 架橋体のドメインの量と大きさにより主にコントロールされる。 そのため、 架橋体自体は比較的柔らかい状態であってもよく、 優れた摺動性能を 有する柔らカ 、摺動材料を形成しゃすい。
【0 0 3 5】 上記のような方法を新たに採用したことにより、 本発明によれば、
従来の方法であれば不具合が発生する程の多量のシリコーン化合物の使用が可能 になった。 シリコーン化合物が入り込み易い領域が存在することから、 相溶性の 低いォレフィン系ポリマー中にシリコーン化合物を大量に分散させても、 消失す るほどのプリードは発生しがたい。
【0 0 3 6】 また、 本発明の場合、 架橋体は、 表面に凹凸形状を形成させるた めではなく、 上記のように、 架橋体のドメインの周囲にシリコーン化合物が入り 込み易い領域を配置することを目的として形成される。 本発明は、 凹凸形状によ る方法と比較して、 異音発生を防止する効果が大きい。 また、 凹凸形状の場合、 その外観が問題となる場合があるが、 そのような外観上の問題が生じ難レヽ点でも 本発明は優れる。
【0 0 3 7】 架橋体のドメインの量と大きさ、 更にはシリコーン化合物の量及 びその粘性を適切に制御することによって、 シリコーン化合物が架橋体のドメイ ンの周囲に局在化して、 シリコーン化合物が網目構造の相を形成し易くなる。 網 目構造が形成されると、 シリコーン化合物が摺動材料内部から表面に供給されや すくなる。 図 4は、 シリコーン化合物の網目構造が形成されている実施形態に係 る摺動材料の押し出し方向と平行な断面を模式的に示す断面図である。 図 4の摺 動材料 1は架橋したォレフィン系ポリマーからなるドメイン 1 2を多く含んでお り、 ドメイン 1 2同士の隙間においてシリコーン化合物 1 4の相が連結して網目 構造を形成している。 シリコーン化合物 1 4の網目構造において搢動材料 1内部 から表面に連結した微小な経路が形成され、 ガラス等の摺接によってこの経路か らシリコーン化合物 1 4が表面に供給されると考えられる。 この網目構造は押し 出し方向と垂直な断面においても形成される。 このような網目構造を有する摺動 材料は、 摺動性及び成形性の点で特に優れる。
【0 0 3 8】 摺動材料 1の熱キシレン還流による残分比率は、 摺動材料 1全重 量を基準として 3 3〜7 5重量%となっている。 ここで、 「熱キシレン還流によ る残分比率」 とは、 以下の方法で得られた値をいう。
【0 0 3 9】 すなわち、 0 . 5 mm以下の厚みを有する摺動材料 1を 5 mm以 下のサイズとなるように切り出したサンプノレ約 3 gを秤量して正確な重量 (W 1 ) を得る。 そのサンプルを円筒形ろ紙に入れ、 ソックスレー抽出器にセッ トし、 キシレンで 6時間還流抽出を行う。 抽出後、 サンプルの入ったろ紙を取り出し、 1 2 0 °Cのホットプレート上に 5時間置いてキシレンを充分蒸発させ、 放冷した 後にサンプルの正確な重量 (W 2 ) を測定する。 蒸発のための加熱時間は、 キシ レンが蒸発しサンプル重量が十分安定するような時間が確保されるように適宜調 整される。 例えば、 加熱時間が 5時間である場合、 5時間加熱した時と、 更に 5 時間 (計 1 0時間) 加熱した時の 「熱キシレン還流による残分比率%」 の変化率 が + 5 〜一 8 %の範囲であれば、 5時間の加熱時間が適切であると判断される。 変化率が大きい場合は、 1回目に 5時間加熱した時と比較して変化率が + 5 %〜 _ 8 %の範囲になるように、 加熱時間を延長する。 熱キシレンに不溶なフイラ一 等の無機成分の重量を W 3とすると、 「熱キシレン還流による残分比率」 は 1 0 O x (W 2 - W 3 ) ZW lで求められる。 この熱キシレン還流による残分比率は、 主として、 摺動材料中の架橋体含有量や架橋度を反映している。
【0 0 4 0】 摺動材料 1の熱キシレン還流による残分比率が、 3 3重量%未満 である場合は、 表面にまだらにシリコーン化合物が析出したり、 成形用のダイス 部分にシリコーン化合物が付着して液滴や塊 (以下、 この液滴や塊を 「目やに」 という場合がある) が生じてしまう。 この 「目やに」 は、 ォレフィン系ポリマー ではなくシリコーン化合物から主として形成される。 また、 この残分比率が Ί 5 重量%を超す場合は、 流動性が悪化する。 成形性及びシリコーン化合物の保持性 能を更に高くできることから、 熱キシレン還流による残分比率は 3 3〜7 0重 量%であることが好ましく、 3 8〜6 5重量0 /0であることがより好ましい。 ある いは、 熱キシレン還流による残分比率が 3 3〜6 5重量0 /0、 3' 8〜6 0重量%又 は 3 3〜5 5重量0 /0であってもよレヽ。
【0 0 4 1】 摺動材料 1では、 シリコーン化合物 1 4の含有量が摺動材料 1の
全重量を基準として 5〜2 0重量。 /0である。 このように摺動材料 1は、 図 3
( a )、 ( b ) に示すような従来の摺動材料に比べてシリコーン化合物の含有量が 非常に高い。 このような高含有量にできるのは、 (1 ) ォレフィン系ポリマーの 一部が摺動材料 1中で架橋体を形成しており、 この架橋体がシリコーン化合物 1 4の押し出し方向への偏在を妨げるようにドメイン 1 2を形成して摺動材料中で 分散されていること、 (2 ) 摺動材料全重量を基準とした、 摺動材料の熱キシレ ン還流による残分比率が 3 3〜7 5重量%となっていることに起因するものと考 えられる。
【0 0 4 2】 シリコーン化合物 1 4の含有量が摺動材料 1の全重量を基準とし て 5重量%未満である場合は、 摺動耐久性が落ち、 水の除去性能が乏しく、 異音 が発生し易くなる。 また、 この含有量が 2 0重量%を超す場合は、 成形不良ゃブ リードが発生する。 成形性、 摺動耐久性、 異音発生防止の点から、 シリコーン化 合物 1 4の含有量は 7〜1 9重量%であることが好ましく、 9〜1 7重量%であ ることがより好ましい。 あるいは、 シリコーン化合物 1 4の含有量は 5〜 1 8重 量%又は 9〜1 5重量%であってもよい。
【0 0 4 3】 摺動材料 1においては、 図 2 ( b ) に示す押し出し方向と平行な 断面におけるドメイン 1 2の平均粒径は 0 . 5〜1 5 0 μ πιとなっている。 ドメ イン 1 2の平均粒径がこの範囲内にあるときは、 成形時や使用時のシリコーン材 料のブリードが良好に防止され、 耐久性が高く、 異音の発生も効果的に低減され る。 ドメイン 1 2の平均粒径が 0 . 5 m未満である場合は、 シリコーン化合物 の押し出し方向への偏在が生じやすく、 1 5 0 μ ΐηを超す場合は、 ドメインの周 囲にシリコーン化合物が回り込みやすくなり結局はシリコーン化合物が押し出し 方向へ偏在化しやすくなる。 シリコーン化合物の非偏在化の点から、 ドメイン 1 2の平均粒径は 1〜1 0 0 /i mであることが好ましく、 3〜7 0 /z mであること がより好ましい。 あるいは、 ドメイン 1 2の平均粒径は 1〜3 0 μ πιであっても よい。
【0 0 4 4】 なお、 押し出し方向と平行な断面におけるドメイン 1 2の平均粒 径は、 当該断面で電子顕微鏡写真を撮影し、 画像処理により各ドメイン 1 2に相 当する粒径を算出し全体の平均を計算すればよい。 なお、 測定されたドメイン 1 2の面積について、 真円換算で求めた直径を粒径とすることができる。 あるいは、 A F Mやナノインデンテーション等の手法により表面の弾性率に基づいて断面を マッピングして、 ドメイン 1 2を観測することも可能である。
【0 0 4 5】 ドメイン 1 2は、 架橋体を主成分とする領域であり、 未架橋のォ レフィン系ポリマーも含む場合があるが、 シリコーン化合物は実質的に含まない
(架橋体にシリコーン化合物を故意に添加しても少量の相溶性しか示さず両者は 分離される)。 例えば、 摺動材料断面の X線像を S i元素濃度又は O元素濃度
(ォレフイン系ポリマー自体は S i元素及ぴ O元素を実質的に含まない場合が多 い) に基づいてマッピングしたとき、 S i元素濃度又は O元素濃度が一定値未満 の領域は、 ドメイン 1 2と未架橋のォレフィン系ポリマーのマトリックス 1 0と が互いに混合して構成された分散相である。 あるいは、 C元素濃度が高い領域を ドメイン 1 2とマトリックス 1 0から構成される分散相とみなすことができる。 摺動材料 1中のドメイン 1 2及ぴマトリックス 1 0からなる分散相、 すなわちォ レフイン系ポリマーの分散相は、 ドメイン 1 2の粒子径を主として反映した分散 径を有し、 各相が互いに融着した形態で形成される。 ォレフィン系ポリマーの分 散相のうち面積比で 8 0 %は、 0 . 1〜2 0 0 μ πιの分散径 (最大長さ) を有す ることが好ましい。 これにより、 シリコーン化合物が適度に局在化し、 成形時や 使用時のシリコーン材料のプリードが良好に防止され、 耐久性が高く、 異音の発 生も効果的に低減される。 小さい分散径を有する分散相の割合が多くなると、 シ リコーン化合物が押し出し方向に沿って層状に偏在し易くなる傾向がある。 大き い分散径を有する分散相の割合が多くなると、 シリコーン化合物がドメイン周囲 に過度に局在化して表面に供給され難くなつたり、 良好な外観が得られ難くなつ たりする傾向がある。 摺動材料内部から外部へのシリコーン化合物の供給経路の
形成され易さや、 押し出し方向に垂直な方向への分布、 供給経路中のシリコーン 化合物濃度の観点から、 ドメイン 1 2及びマトリックス 1 0からなる分散相のう ち 8 0 %が、 0 . 5〜1 5 0 / mの分散径を有することがより好ましく、 :!〜 1 0 0 μ mの分散径を有することが更に好ましい。
【0 0 4 6】 摺動材料 1の原料として用いられるォレフィン系ポリマーとして は、 αォレフィン、 シクロォレフイン、 共役ジェン又は非共役ジェンを重合し てなる炭化水素系ポリマーの少なくとも 1種が挙げられる。 ォレフィン系ポリマ 一としてはまた、 aォレフィン、 シクロォレフイン、 共役ジェン及び非共役ジ ェンからなる群より選ばれるモノマーの共重合体、 当該群より選ばれるモノマー と当該群に属しない他のモノマー (以下 「非ォレフイン系モノマー」 と呼ぶ場合 がある。) との共重合体を用いてもよい。 ここで、 非ォレフイン系モノマーとし ては、 例えば、 (メタ) アクリル酸、 (メタ) アクリル酸エステル、 酢酸ビュル、 ビュルアルコール (例えば、 酢酸ビュルの鹼化物として導入されるもの)、 不飽 和カルボン酸 (α , _不飽和カルボン酸が含まれる)、 ビュルエステル、 スチ レンが挙げられる。 なお、 上述したォレフィン系ポリマーは 1種又は 2種以上を 組み合わせて用いることができる。 また、 ォレフィン系ポリマーを 2種以上用い るときの混合比は、 シリコーン化合物を 5〜2 0重量%含有した摺動材料が熱キ シレン還流による残分比率が 3 3〜7 5重量%となるように、 適宜決定できる。
【0 0 4 7】 αォレフィンを重合してなるォレフィン系ポリマー (このポリ マーは炭化水素系ポリマーに属する) としては、 プロピレン重合体、 プロピレン —エチレン重合体、 プロピレン一エチレン一 α ォレフィン共重合体 (α ォレフ インの炭素数は 3〜2 0 )、 ポリオレフインの重合段階でハードセグメント (結 晶性ポリマー部) とソフトセグメント (ゴム成分) を導入したポリ αォレフィ ン (以下、 このようなポリマーを 「リアクター Τ Ρ Ο」 と呼ぶ場合がある。)、 ェ チレン重合体、 エチレン一 α ォレフイン共重合体 (αォレフィンの炭素数は 3 〜2 0 )、 プロピレン一エチレンープテン共重合体、 Ε Β Μ (エチレンーブチレ
ン共重合体)、 ポリメチルペンテン、 ポリイソプチレン 〔ポリ (1, 1—ジメチ ノレエチレン)〕 が挙げられる。
【0048】 シクロォレフィンを重合してなるォレフィン系ポリマー (このポ リマーは炭化水素系ポリマーに属する) としては、 ジシクロペンタジェン系重合 体、 ノルボルネン系重合体、 石油樹脂、 水添石油樹脂等が挙げられる。
【0049】 共役ジェンを重合してなるォレフィン系ポリマーとしては、 BR
(ブタジエンゴム)、 S B R (スチレンブタジエンゴム)、 SB S (スチレンーブ タジェンブロック共重合体)、 I R (イソプレンゴム)、 天然ゴム、 S I R (スチ レンイソプレンゴム)、 S I S (スチレン一イソプレンブロック共重合体)、 NB R (アクリルブタジエンゴム)、 I I R (プチルゴム)、 1, 2—ポリブタジエン 及ぴこれらの水添化物等が挙げられる。 水添化された共重合体としては、 SBB S (スチレン—ブタジェン一ブチレンースチレン共重合体)、 S EB S (スチレ ンーエチレン ブチレン一スチレンブロック共重合体)、 HSBR (水添スチレ ンーブタジェンゴム)、 SEP S (スチレン一エチレン/プロピレン一スチレン ブロック共重合体)、 SEEP S (スチレン一 (エチレン一エチレン/プロピレ ン) 一スチレンブロック共重合体)、 SEBC (スチレン一エチレン一ブチレン 一エチレンブロック共重合体)、 CEB C (エチレン結晶一 (エチレンーブチレ ン) 一エチレン結晶共重合体) が挙げられる。
【0050】 非共役ジェンを重合してなるォレフィン系ポリマーとしては、 1 4—ペンタジェン重合体、 1, 5—へキサジェン重合体等が挙げられる。
【005 1】 αォレフィンと共役ジェンの共重合体であるォレフィン系ポリ マーとしては、 エチレン一 a ォレフィン一共役ジェン共重合体 (aォレフィン の炭素数は 3〜20) が挙げられる。 a ォレフィンと非共役ジェンの共重合体 であるォレフィン系ポリマーとしては、 エチレン一 aォレフィン一非共役ジェ ン共重合体 (aォレフインの炭素数は 3〜20) が挙げられる。 後者のォレフ ィン系ポリマーとしては EP DM及びエチレンーブテン一非共役ジェンが例示で
きる。
【0 0 5 2】 aォレフィンと非ォレフィン系モノマーの共重合体であるォレ フィン系ポリマーとしては、 エチレン一アクリル共重合体、 アイオノマー (ェチ レンーメタクリル酸共重合体をナトリゥムゃ亜鉛等の金属イオンでイオン架橋し たポリマー、 エチレン一ァクリル酸共重合体をナトリゥムゃ亜鉛等の金属イオン でイオン架橋したポリマー等)、 エチレン一ビエルアルコール共重合体、 ェチレ ン— α, β一不飽和カルボン酸共重合体、 エチレン—ビニルエステル共重合体、 エチレン一アクリル一不飽和力ルポン酸共重合体等が挙げられる。
【0 0 5 3】 ォレフィン系ポリマーは、 未架橋ォレフィン系ポリマーと、 架橋 されたォレフィン系ポリマーを含有していることが好ましく、 未架橋ォレフィン 系ポリマーとしては、 プロプレン又はエチレンを含む重合体 (ポリプロプレン、 ポリエチレン等) が好適に用いられる。
【0 0 5 4】 架橋されたォレフイン系ポリマーは、 前述したォレフィン系ポリ マーの架橋により形成されるポリマーである。 架橋されたォレフイン系ポリマー としては、 前述した不飽和結合を有する未架橋ォレフィン系ポリマー及ぴ場合に よっては上述の式 (i )、 ( i i ) 又は (i i i ) で表される基を含む未架橋ォレ フィン系ポリマー (有機化酸化物による水素引き抜きにより架橋するォレフイン 系ポリマーを示す) 又は式 (i v ) で表される基を含む未架橋ォレフィン系ポリ マー (オルガノハイ ドロジエンポリシロキサンの S i _ H基の付加により架橋す るポリマーを示す) を、 硫黄、 有機過酸化物、 フヱノール樹脂で架橋したものや、 オルガノハイ ドロジヱンポリシ口キサンによるヒ ドロシリル化架橋したもの等が 特に制限なく用いられる。 この場合において、 架橋反応を促進するための添加剤 や触媒を配合してもよい。 これらの架橋方法を使って、 せん断を与える混練と同 時に架橋を行い (動的架橋)、 架橋したドメインが熱可塑性のォレフィン系ポリ マー (例えばポリエチレン、 ポリプロピレン) 中に分散した構造を形成するポリ マーを得、 これをォレフイン系ポリマーとして用いてもよい。 また、 動的架橋に
よつて比較的均一に架橋させて全体を增粘させた架橋体に未架橋の熱可塑 1"生のォ レフインポリマー (例えばポリエチレン、 ポリプロピレン) を混合し、 増粘させ た架橋体を未架橋の熱可塑性ォレフィン系ポリマーのマトリックス中にドメイン として分散させてもよい。 ここで、 ォレフィン系ポリマーのドメインの大きさや 量は、 選択した架橋方法におけるォレフィン系ポリマーと架橋剤の反応性と添カロ 量で調整する。 また、 動的架橋の条件によっても調整することができる。 なお、 上述したアイオノマーのうち、 熱キシレン還流によって残分となるものは、 架橋 されたォレフィン系ポリマーに属する。 架橋されたォレフイン系ポリマーは必ず しも未架橋ォレフィン系ポリマーと共に用いる必要はなく、 それ単独で用いても よい。
【0055】 ォレフィン系ポリマーとしては、 不飽和結合を有する未架橋ォレ フィン系ポリマー、 及び上述の式 (i )、 (: i i) 又は (i i i) で表される基を 含む未架橋ォレフイン系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも 1種のォレ フィン系ポリマーを含有することも好適である。 ここで、 不飽和結合を有する未 架橋ォレフィン系ポリマーとしては、 共役ジェンを重合してなるォレフィン系ポ リマー (BR、 SBR、 SB S、 I R、 天然ゴム、 S I R、 S I S、 NBR、 I
I R、 1 , 2—ポリブタジェン等)、 共役ジェン重合体や共役ジェンの共重合体 の不飽和結合を一部残した水添化物 (SBB S等)、 ひォレフインと共役ジェン の共重合体、 CKォレフィンと非共役ジェンの共重合体 (E PDM等)、 αォレフ インと非共役ジェンの共重合体 (EPDM、 エチレンープテン一非共役ジェン 等)、 ジシクロペンタジェン系重合体等が挙げられる。 不飽和結合を有する未架 橋ォレフインポリマーの架橋剤としては、 有機過酸化物、 オルガノハイドロジェ ンポリシロキサンと白金系触媒、 有機過酸化物とオルガノハイドロジエンポリシ ロキサン、 フヱノール樹脂と塩化物触媒、 硫黄系架橋剤が好適である。
【0056】 式 (i ) の基を含む未架橋ォレフィン系ポリマーとしては、 プロ ピレン一ひォレフィン共重合体 (炭素数は 2〜 20) が代表的であり、 リアクタ
一 TPO、 プロピレン一ブテン共重合体、 プロピレン一オタテン共重合体等が挙 げられる。 またポリイソプチレンゃブチレン共重合体も挙げられる。
【0057】 式 (i i) の基を含む未架橋ォレフィン系ポリマーとしては、 ェ チレン重合体、 エチレン一ひォレフイン共重合体 (Q!ォレフィンの炭素数は 3〜
20) 及ぴリビングァニオン重合体を水添したエチレン系共重合体が代表的であ る。 具体的には各種ポリエチレン (LLDPE、 HDPE、 超高分子量 PE等)、 EP、 EPR、 EBM、 エチレン一オタテン共重合体、 SEB S、 HSBR、 S EP S, SEEP S, SEBC、 CEBC、 エチレン一 (メタ) アクリル酸エス テル共重合体、 エチレン一アクリル酸エステル共重合体ゴム等が挙げられる。 S EB S、 HSBR、 S EP S、 SEEP S、 SEBC、 CEBCの水素添加率が 低い場合は、 不飽和結合を有する未架橋ォレフィンポリマーに分類される。
【0058】 式 ( i i i) の基を含む未架橋ォレフィン系ポリマーとしては、 分岐状ォレフインを重合又は共重合したものが代表的であり、 ポリ αォレフィ ン共重合体 (αォレフィンの炭素数が 4〜 20であり分岐のあるもの)、 プロピ レン一エチレン一ひ ォレフィン共重合体 (CK ォレフィンの炭素数が 4〜20で あり分岐のあるもの)、 ポリメチルペンテン等が例示できる。
【0059】 これら式 (i)、 (i i) 及び (i i i) の基、 並びに不飽和結合 の 4種力ゝら、 複数組み合わせた構造を持つ未架橋ォレフィン系ポリマーも好適に 用いることができる。 係る構造を持つ未架橋ォレフィン系ポリマーは多く存在し、 市販されている。
【0060】 式 ( i )、 ( i i ) 及び ( i i i ) の基を含む未架橋ォレフインポ リマーの架橋剤としては、 有機過酸化物、 有機過酸化物とオルガノハイドロジェ ンポリシロキサンが好適である。 式 ( i)、 ( i i) 及ぴ ( i i i) の基の中では
( i i ) の基の反応性が高く、 特に好ましい。
【006 1】 式 ( i V) の基を含む未架橋ォレフィン系ポリマーとしては、 ェ チレン一 (メタ) アクリル酸エステル共重合体、 エチレン一酢酸ビュル共重合体、
エチレン—ァクリル酸エステル、 エチレンーァクリル酸アルキルエステル二元共 重合体ゴム、 エチレンーァクリル酸アルキルエステル—酢酸ビュル—三元共重合 体ゴム等が挙げられる。 式 ( i V ) の基を含む未架橋ォレフィンポリマーの架橋 剤としては、 オルガノハイ ドロジエンポリシロキサンと白金系触媒、 有機過酸ィ匕 物とオルガノハイドロジエンポリシロキサンが好適である。
【0 0 6 2】 摺動材料 1の原料として用いられる、 シリコーン化合物としては、 シリコーンオイル又はシリコーンガム (ゴム)、 及びシリコーン系共重合体が好 ましい。 シリコーンオイル又はシリコーンガム (ゴム) としては、 ジメチルシリ コーン、 ジフエ二ルシリコーン、 メチルフエ-ルシリコーン、 及び 5 m o 1 %以 下のビュル基を有するそれらのシリコーン、 ハイ ドロジェンポリシロキサン、 ァ ルキル変性、 高級脂肪酸エステル変性、 フッ素変性、 ポリエーテル変性、 ァミノ 変性、 アルコール変性、 エポキシ変性、 カルボキシ変性等の変性シリコーンオイ ルが挙げられる。 特には、 ビュル基含有量が 1 m o 1 %未満で、 数平均分子量が
1 0 2〜 1 0 8の鎖状ジメチルポリシロキサン (ジメチルシリコーンオイル、 ガ ム)、 鎖状メチルハイ ドロジェンポリシロキサン、 アルキレン基を有するメチル ハイ ドロジエンポリシロキサン、 メチルフエ-ルシリコーンオイルやガムが、 摺 動性能の持続性ゃ耐候性の点で優れているため好ましい。
【0 0 6 3】 ' 一方、 上記シリコーン系共重合体は、 シリコーンオイル又はシリ コーンガム (ゴム) の所で述べた各種シリコーン化合物と他の樹脂を共重合させ たものである。 このシリコーン系共重合体は、 市販の共重合体を用いてもよいし、 反応物を作製してもよく、 具体例としては、 シリコーン一アクリル共重合体 「シ ャリーヌ」 (日信化学社製、 商品名)、 シリコーン一アクリル共重合体 「X—2 2 一 8 1 7 1」 (信越化学工業社製、 商品名)、 ビュル基の含有量が 0〜1 m o 1 % 含有のジメチル · ビ二/レポリシロキサンと、 不飽和基の含有量が 0〜 5重量%の E P DM、 S B S、 S I Sとの部分架橋物が挙げられる。 また、 これらを樹脂で マスターパッチ化したペレツトである 「X— 2 2— 2 1 0 1」、 「X _ 2 2— 2 1
47」 (信越化学工業社製、 商品名)、 「: BY27— 001 S」 (東レ 'ダウコ一二 ング社製、 商品名)や、 樹脂と部分グラフト重合したペレットである 「; BY27 一 20 1J (東レ ·ダウコ一二ング社製、 商品名)なども挙げられる。
【0064】 摺動材料 1の原料として用いられる、 シリコーン化合物としては、 シリコーンオイルと、 シリコーンガムと、 シリコーンを 40重量0 以上含むシリ コーン共重合体とからなる群より選ばれる粘度 1 OmP a · s以上のものが好ま しい。 このようなシリコーン化合物を用いることにより、 摺動耐久性が向上する。 また成形時や使用時のシリコーン化合物のふき出しがなく外観が良くなる傾向に ある。 また、 上記シリコーンオイルの粘度は 10〜1 0 a · sであるこ とが好ましく、 102〜 1 07mP a · sであることがより好ましい。 シリコー ンガムや、 シリコーン共重合体又はそのシリコーン化合物との反応物 (EPDM などの部分架橋物を示す) は、 常温でガム状、 固形又は粉末である場合がある。 固形や粉末の場合はー且溶融又はゲル化する温度でシリコーン化合物を混練し、 ガム状の流体の状態としてからその粘度を測定する。 シリコーン化合物が樹脂中 に分散したペレツトである場合、 上記粘度はそのペレツトの中に分散しているシ リコーン化合物の粘度を示す。 これら粘度 1 OmP a · s以上のシリコーン化合 物には、 一般的に製造時に分子量分布が発生する。 厳密に言えば、 全成分が粘度 1 OmP a ' s以上の分子構成ではなく、 粘度 1 OmP a · s未満の分子 (比較 的低い分子量の領域) を含んで l OmP a · s以上の粘度に調整される。,これを そのまま使用してもよいし、 任意の低分子帯を除去して使用してもよい。 また、 1 OmP a · sを超える市販のシリコーン化合物と 1 0 mP a · s未満の市販 のシリコーン化合物を混合して、 粘度 1 OmP a · s以上シリコーン化合物とす ることも任意である。 l OmP a · s以上の粘度を有する、 シリコーンオイル、 シリコーンガム及びシリコーン共重合体としては、 分子量に換算して 1 00〜2 000000程度 (好ましくは 4000〜1 500000) のものが適用できる。
【006 5】 シリコーン化合物の粘性を適正化することにより、 摺動耐久性を
より一層顕著に向上させることが可能である。 適正な粘性の範囲内において、 シ リコーン化合物の粘性が低くなると、 架橋体のドメインのサイズが大きくなる傾 向にある。 すなわち、 シリコーン化合物の粘性自体がその分散形態に関与してい ると考えられる。 また、 シリコーン化合物の粘性が同程度であれば、 シリコーン 化合物の含有量が多いほうが、 架橋体のドメインの大きさが大きくなる傾向があ る。 なお、 架橋体のドメインの大きさは、 架橋度合い、 すなわち増粘度合い等に よっても調整できる。
[ 0 0 6 6 ] シリコーン化合物の粘性は、 シリコーン化合物をプラストミルで 混練したときのトルクを指標にして規定することができる。 具体的には、 シリコ ーン化合物を、 超高分子量ポリエチレン、 高密度ポリエチレン及ぴスチレンーブ タジェン一スチレンを含有するォレフイン系ポリマーであって該スチレンープタ ジェン一スチレンの一部及ぴポリエチレンの一部が動的架橋による押し出しによ り架橋体を形成しているォレフィン系ポリマーからなる架橋塊ととともにプラス トミルにより混練したときのトノレクによりシリコーン化合物の粘性を規定できる。 複数種のシリコーン化合物を併用する場合、 それらを合わせて架橋塊と混合する。 【0 0 6 7】 上記方法によりシリコーン化合物の粘性を評価する場合、 例えば、 後述の実施例において作製方法が示される、 「架橋塊 5」 が架橋塊として用いら れる。 シリコーン化合物 Z架橋塊 5 = 4 5ノ5の質量比で混合した混合物を、 プ ラストミル内で 1 8 0 °Cに加熱しながら混練する。 プラストミルとしては、 東洋 精機社製 4C150- 01型 LABOPLASTOMILL (ミキサータイプ: R 6 0 )が用いられ、 シ リコーン化合物と架橋塊の合計の投入量は 5 0 gである。 1 8 0 °Cに加熱しなが らローター回転速度 1 0 r p mで混合物を混練したときのトルクが測定される。 その他詳細な手順は後述の実施例において示される。 当該装置及ぴ 「架橋塊 5」 を用いることが再現性の点から好ましい (複数種のシリコーン化合物併用する場 合、 架橋塊を少量添加することにより混練分散性が向上して再現性が向上す る。) 力 実質的に同等又は換算可能な測定結果を与える他の同様の装置、 架橋
塊及びフイラ一等の粉末で代用することも可能である。
【0 0 6 8】 複数種のシリコーン化合物を組み合わせて、 粘性を評価するため の上記混練に供した場合、 それらと少量の架橋塊は接触し合い、 それぞれの粘度 や滑り性の影響を受けて、 多様な性状を有する形態で混練される。 例えば、 複数 種のシリコーン化合物が均一に混合してゲル状または液状になる場合もあるし、 やや湿った粉末状や低粘度シリコーンオイル中に粉が分散したゾル状、 粥状、 又 は硬化前のセメントに類似した性状となる場合もある。 後者は 4 0重量 °/0以上の シリコーンを含有するシリコーン共重合体又はそのシリコーン化合物との反応物 を使用したときに発生する場合が多い。 複数種のシリコーン化合物を組合わせた 混合物が粉末状ゃゾル状になる場合、 トルクは比較的低く観測され、 一緒に投入 された架橋塊も目視できる程度のサイズを有する粉状までの崩壌に留まる。 また、 低粘度のシリコーンを単独で用いたときも同様である。 一方、 単体又は複数種の 化合物からなるシリコーン化合物が混練時にゲル状になる場合、 トルクは比較的 高く観測される。 この場合、 混練物は灰色または黒となり、 架橋塊は目視できな くなるまで崩壌される。 本発明者らの知見によれば、 こういった形態の違いに関 わらず、 上記条件で測定されるトルクは、 0 . 0 l〜5 N mであることが好まし く、 0 . 0 1〜1 . 4 Nmであることがより好ましい。 このことは、 シリコーン 化合物の粘性が摺動材料における架橋体のドメインサイズに影響を与えているこ とを示唆しているものと考えられる。
【0 0 6 9】 本発明において、 上記条件で測定されるトノレクは、 好ましくは 0 . 0 1〜5 Nmであり、 より好ましくは 0 . 1〜1 . 4 Nmである。 該トルクが 0 . 0 1〜5 Nmの範囲内でない場合、 水や泥水との接触を伴う長期の,操返し摺動に よって異音が発生し易くなる傾向がある。 また、 トルクが 0 . O l Nmを下回る と良好な外観を維持し難くなる傾向がある。 係る範囲のトルクを示すシリコーン 化合物は、 例えば、 シリコーンオイルと、 シリコーンガムと、 シリコーンを 4 0 重量%以上含むシリコーン共重合体とからなる群より選ばれる粘度 1 O m P a ·
S以上のシリコーン化合物を単独で又は複数種組合わせることにより得ることが できる。
【0 0 7 0】 摺動材料 1には、 必須成分であるォレフィン系ポリマーとシリコ ーン化合物以外に、 各種添加成分を含有させることができる。 このような添加成 分としては、 顔料、 シリカ、 カーボンブラック等の補強剤、 酸化防止剤、 耐候性 向上剤、 熱可塑性樹脂、 エラストマ一、 防徽剤、 抗菌剤、 難燃剤、 パラフィン系 等の軟化剤、 滑剤、 フッ素系等の潤滑剤等が挙げられる。 これら各種添加成分の うち、 カーボンブラック、 クレー、 タルク、 シリカ等の無機充填剤をシリコーン 化合物と同時に混練する場合や、 ォレフィン系ポリマーに含浸し難い固形又は液 状の成分 (ワックス、 滑剤、 潤滑剤等) をシリコーン化合物と同時に混練する場 合、 これらの成分はシリコーン化合物と混合されることが多い。 この場合、 上記 条件で測定されるトルクは、 シリコーン化合物と、 これと同時に混練する成分と の混合物を用いて測定したときに、 0 . 0 l〜5 N mであることが好ましい。
【0 0 7 1】 摺動材料 1における、 ォレフィン系ポリマー、 シリコーン化合物 及び必要により添加できる上記添加成分の含有比率は、 熱キシレン還流による残 分比率が 3 3〜7 5重量%となるようにォレフィン系ポリマー架橋体を形成させ たときに、 シリコーン化合物が 5〜 2 0重量%含有可能なように適宜調整すれば よい。 例えば、 未架橋のォレフィン系ポリマー 9 5〜2 0重量0 /0程度 (摺動材料 1 0 0重量%に対して) に架橋剤適正量 (0〜2 0重量。 /0程度) を添加し、 押出 機で動的な架橋を行い、 ォレフィン系ポリマー中に架橋したドメインを形成分散 させた後、 シリコーン化合物 5〜2 0重量%を添加し、 混練して調整すれば製造 できる。
【0 0 7 2】 摺動材料 1は、 ォレフィン系ポリマーの一部が架橋体を形成し、 この架橋体が、 シリコーン化合物の押し出し方向への偏在を妨げるように、 ドメ インを形成して摺動材料中で分散されており、 摺動材料全重量を基準とした、 摺 動材料の熱キシレン還流による残分比率が 3 3〜 7 5重量%であり、 摺動材料全
重量を基準とした前記シリコーン化合物の含有量が 5〜2 0重量%である限りに おいて、 製造方法は制限されない。
【0 0 7 3】 好適な製造方法としては、 上述した未架橋ォレフィン系ポリマー を動的架橋してペレツト化し、 これをシリコーン化合物及び添加成分とともに押 出機 (2軸押出機や 1軸押出機) 又はニーダ一等の混練機で混練する方法が挙げ られる。 また、 未架橋ォレフィン系ポリマーと架橋したォレフィン系ポリマー
(動的架橋したォレフィン系ポリマー等) を押出機 (2軸押出機や 1軸押出機) 又は-一ダ一等の混練機で混練した後ペレツト化し、 これをシリコーン化合物及 ぴ添加成分とともに同様の押出機又は混練機で混練する方法や、 未架橋ォレフィ ン系ポリマー、.架橋したォレフィン系ポリマー (動的架橋したォレフィン系ポリ マー等)、 シリコーン化合物及び添加成分を押出機 (2軸押出機や 1軸押出機) 又は-一ダ一等の混練機で混練する方法が挙げられる。 動的架橋に供される未架 橋ォレフイン系ポリマーの形態は特に制限はない。 例えば、 ベール、 ペレット、 不定形粉末、 球状若しくは球状に近い形状の粉末、 ミクロンスケールの微粉末の ような形態の未架橋ォレフィン系ポリマーを用いて動的架橋が行われる。
【0 0 7 4】 シリコーン化合物を 5〜2 0重量%含有させた上で押し出し方向 への偏在を妨げるためには、 摺動材料が熱キシレン還流による残分比率が 3 3〜 7 5重量%となるように架橋体を形成すればよく、 このとき押し出し方向と垂直 な断面における、 架橋体 (ドメイン) の平均粒径を 0 . 5〜1 5 0 /x mとなるよ うにするとより確実である。 また、 用いるォレフィン系ポリマーや架橋剤の種類 や量を調整することによって、 残分比率や平均粒径を上記のように制御できる。
【0 0 7 5】 摺動材料におけるォレフィン系ポリマーの一部を摺動材料中で架 橋体とするためには、 ォレフィン系ポリマーの不飽和部、 炭化水素部、 カルボ- ル基、 水酸基、 アミノ基あるいはシラノール基を利用して、 有機過酸化物、 ヒド ロシリル化剤 (及ぴヒドロシリル化触媒)、 フエノール樹脂硬化剤、 ィォゥ、 含 ィォゥ化合物、 有機多価ァミン、 金属酸化物等の架橋剤を用いて、 電子線,紫外
2007/064050 線照射、 加熱等の処理を行う。 特に、 有機過酸化物を用いることが好ましい。 有 機過酸化物は、 不飽和結合だけでなく、 上述の式 ( i )、 ( i i ) 又は ( i i i ) の基からの水素引き抜きに基づくラジカル架橋も起すことができるため、 高粘度 の架橋体を製造することができる点で有用である。 有機化酸化物を用いて架橋体 を形成する際、 ヒドロシリル基 ( S i 一 H) を含むオルガノシロキサン (ヒ ドロ シリル化剤) を併用することが好ましい。 これによつて架橋効率が向上するとと もに、 熱処理を伴う動的架橋等の工程における耐老化性が向上する。 言い換える と、 いわゆる 「樹脂焼け」 が防止される。
【0 0 7 6】 有機過酸化物としては、 パーォキシケタール、 ジアルキルパーォ キサイ ド、 パーォキシエステル、 ジァシルパーォキサイド、 パーォキシジカーボ ネート等が好適である。
【0 0 7 7】 具体的には、 1 , 1—ジ (t一へキシルパーォキシ) シクロへキ サン、 1, 1—ジ (t一へキシノレパーォキシ) 3, 3 , 5— トリメチルシクロへ キサン、 1, 1ージ (t一プチルパーォキシ) シクロへキサン、 n—ブチルー 4 , 4ージ (t一プチルパーォキシ) バレレート、 ジクミルパーォキサイド、 2, 5 一ジメチルー 2, 5—ジ (t—ブチルパーォキシ) へキサン、 ジ (2— t一ブチル パーォキシイソプロピル) ベンゼン、 t一プチルクミルパーオキサイド、 ジ一 t— へキシルパーオキサイ ド、 ジ一 t—ブチルパーオキサイド、 2 , 5—ジメチルー 2 , 5—ジ (t—プチルパーォキシ) へキサン一 3、 2 , 5—ジメチルー 2, 5 ージ (ベンゾィルパーォキシ) へキサン、 t一へキシノレパーォキシベンゾエート、 t一ブチルパーォキシ一 3—メチノレべンゾエイ ト、 ジィソプロピ^/パーォキシジ カーボネート、 ジ (4一 t—プチルシクロへキシル) パーォキシジカーボネート、
1 , 6—ビス (t一ブチルパーォキシカルボ-ルォキシ) へキサンが挙げられる。
【0 0 7 8】 ヒ ドロシリル化剤としては、 例えば、 メチルハイ ドロジェンポリ シロキサン、 メチノレハイドロジェンアルキルメチノレポリシロキサン等の水素化ケ ィ素化合物が挙げられる。 また、 ヒドロシリルイ匕触媒としては、 例えば、 へキサ
クロ口白金酸、 塩化白金、 酸化白金、 白金錯体等の白金含有触媒が挙げられる。
【0 0 7 9】 フヱノール樹脂硬化剤としては、 アルキルフエノールホルムアル デヒド樹脂、 メチロール化アルキルフヱノール樹脂、 及ぴ臭化アルキルフエノー ル樹脂などのハロゲン化フエノール樹脂が挙げられる。 一般に、 非ハロゲン化フ ェノール樹脂の場合、 触媒として塩ィ匕第二スズなどのハロゲンドナー、 及び酸ィ匕 亜鉛などのハロゲン化水素除去剤とともに用いる。 ハロゲン化フエノール樹脂の 場合は、 必要であれば、 ハロゲン化水素除去剤とともに用いる。
【0 0 8 0】 以上説明した摺動材料 1を成形することで摺動部材が得られ、 こ の摺動部材を用いてウエザーストリップが得られる。
【0 0 8 1】 図 5は第 1実施形態に係るウエザーストリップの模式断面図であ る。 図 5に示す第 1実施形態に係るウエザーストリップ 5 0は、 ウエザーストリ ップ本体部 2 0と摺動部材 3◦ (上述した摺動材料 1からなる) とから構成され る。 ウエザーストリツプ本体部 2 0は、 基底部 2 0 aと両側の側壁部 2 0 bと、 両側壁部 2 0 bの先端から内部に延びるリップ部 2 0 cからなり、 摺動部材 3 0 は、 窓ガラス 1 8と摺接するリップ部 2 0 cの摺接部及び窓ガラス 1 0の外周縁 端面と摺接する基底部 2 0 aの表面を被覆するように、 これらの上に形成されて いる。
【0 0 8 2】 図 6は第 2実施形態に係るウエザーストリップの模式断面図であ る。 図 6に示す第 2実施形態に係るウエザーストリップ 6 0は、 ウエザーストリ ップ本体部 1 2 0と摺動部材 3 0 (上述した摺動材料 1からなる) とから構成さ れる。 ウエザーストリップ本体部 1 2 0は、 心材 1 1 0を有し、 車両に取り付け られる取付け部 1 2 0 dと窓ガラスと搢接するリップ部 1 2 0 cからなり、 摺動 部材 3 0は、 リップ部 1 2 0 cの摺接部を被覆するように、 リップ部 1 2 0 c上 に形成されている。
【0 0 8 3】 この第 1実施形態又は第 2実施形態に係るウエザーストリップは、 摺動部材として本発明の摺動材料を使用しているため、 成形不良がなくシリコー
ン化合物のプリ一ドが十分なレベルまで低減されており、 低摺動抵抗の長期持続 性、 ドライ状態からウエット状態 (その中間を含む)、 泥水状態などいろいろな 状況においても安定した低摺動抵抗を維持し、 異音の発生も抑制されている。 実施例
【0084】 以下、 実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明す るが、 本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
(検討 1)
(1) 架橋塊の調製
重量平均分子量 350万の超高分子量ポリエチレン (超高分子量 PE) と高密 度ポリエチレン (HDPE) の混練物とスチレン一ブタジエン一スチレンゴム
(SB S) を二軸押出機で混練しペレッ トを作製した。 ペレッ トに有機過酸化物 マスターバッチをまぶして、 二軸押出機に投入し、 動的架橋して塊を得た。 φ5 mm穴を通過するまでこの塊を粉碎し、 架橋塊 1、 2、 3及び 4を作製した。 そ れぞれの,袓成を表 1に示す。 なお、 上述の方法により 「熱キシレン還流による残 分比率」 を測定した。 この結果、 有機化酸化物が少ないほど架橋度が小さくなつ ていることがわかった。 有機過酸化物が少ないほど、'後記する 「混練 1一 A」 と 混練した時、 ドメインの粒子径が小さくなつていることがわかった。
【0086】
表 1
【0087】
(2) 摺動材料の調製
表 2及び 3中の 「混練 1 _A」 の配合をバンパリ一ミキサーで混練し、 ルーダ 一を通してペレッ トを作製した。 「混練 1一 A」 のペレッ トに 「混練 1— B」 の 硬化剤をまぶして、 二軸押出機に投入し、 動的な架橋を行い、 TPVペレッ トを 作製した。 TP Vペレッ トとシリコーンオイル以外の 「混練 2」 に示す材料を混 合し、 二軸押出機に投入し混練し、 二軸押出機の中間部から定量ポンプを使って シリコーンオイルを注入して混練し、 摺動材料ペレッ トを作製した。 なお、 表 2 及び 3中の略称等の化学名ノ製品名、 製造元は以下の通りである。
• EPDM-1:ノーデ Λ^ΙΡ4770 (デュポンダウエラストマ一社商品名)
• EPDM-2: ΡΧ-060 (三井化学商品名) '
• リアクター TP0: R110MP (プライムポリマー社商品名)
• ΡΡ: ノバテック ΜΑ3Η (日本ポリケム社商品名)
'パラフィンオイル: PW_90 (出光社商品名)
•架橋助剤: A - DCP (新中村ィヒ学社商品名)
• V-LLDPE: Engage8130 (デュポンダウエラストマ一社商品名)
■ シリコーンマスタ一ペレツ ト :主成分ジメチノレシリコーンガム
' アクリルシリコーン: シャリーヌ (日信化学社商品名)
•有機過酸化物マスターバッチ:主成分 2, 5-ジメチル- 2, 5-ジ (t-プチルパー ォキシ) へキサン
• シリコーンオイノレ : 100〜500 Omm2/s (96. 5〜4875 mP a · s) ジメチノレシリコーンオイノレ
■ S i H: KF-99 (信越化学工業社商品名)
■ Pt系触媒マスターバッチ:主成分塩化白金酸
【0088】 表 2
【0089】
表 3
【0090】
(3) 摺動部材 (二層成形品) の調製
次いで、 平板状の二層成形ダイスに 2台の押出機を接続し、 一方からベース用 材料となるォレフィン系 TP V材を、 もう一方から実施例、 比較例の摺動材料を
吐出させて、 成形品を得た。 摺動部材の厚みは約 1 00 μπιとし、 ォレフィン系 Τ Ρ V材の厚みは 1 mmとした。
【009 1】
(4) シリコーンの分散状態
実施例 2〜7、 比較例 1^3の摺動部材 (二層成形品) 中のシリコーンの分散 状態を、 E.PMAを使い S i (ケィ素) の X線像を作製することにより観測した。 先ず、 二層成形品の分析面を力ミソリで切り、 分析面の幅が約 5 mmになるよう に試料を切り出した。 専用試料台 (真鍮製 10mmの立方ブロック) に導電テー プを貼り、 導電テープの上に試料を接着した。 また、 分析面の周囲と側面にカー ボンドータイトを塗布した。
【0092】 QUICKAUTO COATER SC- 701AT (サンユー電子株式会社製) で、 分析面に Au (金) を約 10 OA真空蒸着した。 EPM—8 10 (株式会社島津 製作所製 EPMA) に、 上記専用試料台をセットし、 印加電圧 1 5 k V、 試料電 流 20 n Aで電子線を照射し、 S i Κα の X線像を得た。
【0093】 実施例 2、 3、 4、 5、 6、 7の X線像を、 図 7、 10、 1 1、 1 2、 1 3、 14に、 比較例 1、 2、 3の X線像を、 図 8、 9、 1 5にそれぞれ 示す。 図に示されるとおり、 比較例の摺動部材においては、 押し出し方向にシリ コーン (黒点で表される) が偏在し層を形成していたが、 実施例の摺動部材では、 ォレフィン系ポリマーの架橋体がドメインを形成しており、 シリコーンは押し出 し方向への偏在せずに摺動部材中に分散していた。
【0094】
(5) 外観
「(3) 摺動部材 (二層成形品) の調製」 において二層成形ダイスで押出した 際の、 成形品の摺動部材 (実施例 1〜8、 比較例 1〜4) の外観を観察し、 シリ コーンが表面に断続的に出現し、 シリコーンの波のような模様 (「: >>」 のよう な形状の模様、 押出方向) の有無を確認した。
【0 0 9 5】
( 6 ) 成形性
「(3 ) 摺動部材 (二層成形品) の調製」 において二層成形ダイスで押出した (実施例 1 ~ 8、 比較例 1〜4 ) 際の、 ダイス部分へのシリコーンの付着 (目や に) を観察した。
【0 0 9 6】
( 7 ) 硬度
実施例 1〜8、 比較例 1〜4の摺動材料について、 デユウ口メーター Dでの硬 度を測定した。
【0 0 9 7】
( 8 ) 摺動性
摺動部材層をコートした二層部分が可撓するように、 「(3 ) 摺動部材 (二層成 形品) の調製」 で得られた二層成形品 (試料) を治具で固定した。 図 1 6はこの 治具の模式断面図である。 同図に示す治具 3は、 支持板 4 0と、 二層成形品 3 2 を保持するための第 1の固定部材 4 2、 第 2の固定部材 4 4及び第 3の固定部 4 1 (支持板 4 0と一体となった凸部) と、 第 1の固定部材 4 2及び第 2の固定部 材 4 4を支持板 4 0上に固定するためのボルト 4 6と、 から構成されている。 こ の治具を摺動試験機に固定し、 試料に 1 7 Nの荷重を掛けて、 モータを駆動させ ガラス板 (長さ 5 O mm) を水平運動させて (平均 1 5 O mmZ秒)、 二層成形 品 3 2 (試料) を摺動し、 摺動性を評価した。 図 1 7は摺動性の評価に用いた摺 動試験機の模式断面図である。 図 1 7に示す摺動試験機 4は、 二層成形品 3 2を 保持する治具 3を長手方向に固定するための支持板 5 1と、 支持板 5 1上に備え られたモータ 5 2と、 モータ 5 2の回転運動を平行する 2本のロッド 5 6に沿つ た直線運動に変換するアーム 5 4と、 ベアリングを介して往復直線運動するガラ ス保持部材 5 8及びロードセル固定部材 6 0と、 二層成形品 3 2を摺動するガラ ス板 5 7と、 摺動による抵抗を検出するロードセル 5 9と、 を備えている。
【0 0 9 8】 この場合において、 以下の A、 B、 C及ぴ Dの順の一連のセット を 7セット繰り返した ( 7セット繰り返し搢動試験)。 その際、 ロードセルで水 平方向の荷重の測定と、 耳で異音発生の有無及び回数を測定した。 ロードセルで 測定した荷重の内、 7セット目の C時の最大の荷重を繰り返し摺動抵抗として表 中に記載した。 異音が発生したセット番号と鳴った回数を記録した。
A. 泥水を付けて 1 0 0回 (5 0サイクル) 摺動。
B . 試料上の泥水をガーゼで拭きとり、 水を付けて 1 0 0回摺動。
C . 試料上の水をガーゼで拭きとり 4 0 0回摺動。
D . 水を付けて 1 0 0回摺動。
【0 0 9 9】 7セットの摺動試験で異音が発生しないものの内、 6個の試料に ついては、 再現と耐久を確認するために、 再試験を行った。 再試験は原則として 2 0セット行うことにしたが、 途中で 3セット以上異音が発生した場合は途中で 試験を止めた。
【0 1 0 0】
( 9 ) 水の除去
「(8 ) 摺動性」 において 7セットを終了した試料を治具から取り外し、 表面 の水を拭いた。 2 3 °C、 湿度 5 0 %の部屋で、 3 0分放置し、 ガラスが摺接して いたラインに、 注射器で径約 3 mmの水滴を 7滴載せた。 2分間放置して、 試料 を振って水滴の状態を観察した。 評価は、 以下の表 4の記載内容にしたがって行 oた 0
4050
【0 101】
表 4
【0102】 (4) 〜 (9) の評価結果を以下の表 5及び 6に示す。
【0103】
表 6
【0105】
(検討 2)
更に、 シリコーン化合物の粘性等の影響に関して検討を行った。 検討内容を以 下に詳述する。
(1) 架橋塊の調製
超高分子量ポリエチレンパウダー (超高分子量 PE 2、 三井化学社製、 商品名 XM- 220, 重量平均分子量 200万) と高密度ポリエチレン (HDPE、 三 井化学社製、 商品名 J一 2200 J) の混練物と、 スチレン一ブタジエンースチ レンゴム (SBS、 J SR社製、 商品名 TR 2250) と、 黒顔料 (大日本イン
キ化学工業社製、 商品名 PEONY BLACK F - 30940 MM) と、 シ リコーンオイル (動粘度: 1 00 c S t) とを、 表 7に示す組成 (重量比) で含 む混合物を二軸押出機で混練しペレツトを作製した。 ペレツトに有機過酸化物マ スターバッチをまぶして、 二軸押出機に投入し、 動的架橋して塊を得た。 cp5m m穴を通過するまでこの塊を粉砕し、 架橋塊 5を作製した。 架橋塊 5の熱キシレ ン還流残分を 「検討 1」 と同様にして測定した。
【0106】
表 7
【0107】 有機化酸化物マスターバッチは、 2, 5 -ジメチル- 2, 5-ジ (t -プチ ルバーオキシ) へキサンをシリカ及び P Pで希釈したものであって、 2, 5-ジメチ ル- 2, 5-ジ (t-ブチルパーォキシ) へキサンを 7〜1 2重量%含有するものを用 いた。
【0 108】 架橋塊 5を下記条件でプラストミルにより混練したとき、 ロータ 一回転開始後 4分経過時のトルクは 7. 45±0. 1 5Nmであった。 後述する シリコーン化合物の粘性の測定には、 係るトルクを示す架橋塊が用いられる。 4 分経過時の架橋塊の温度は 1 84±3°Cであり、 粉末状に崩すことができる性状 であった。 また、 架橋塊は、 冷えると溶着して、 簡単には粉末状に崩すことがで きない状態となった。 架橋塊のトルクの測定方法
プラス トミル:東洋精機社製 4C150-01型 LAB0PLAST0MILL
サンプル (架橋塊) 量: 40 g
ミキサータイプ: R 60
温度: 1 80 °C
回転数: 100 r p m
【0109】
(2) 摺動材料の調製
実施例 9の場合、 表 8中の 「混練 1一 A」 の配合をバンバリ一ミキサーで混練 し、 ルーダーを通してペレットを作製した。 「混練 1一 A」 のペレットに 「混練 1一 B」 の硬化剤をまぶして、 二軸押出機に投入し、 動的な架橋を行い、 TPV ペレットを作製した。 TP Vペレットと、 「混練 2」 に示す材料のうちシリコー ンオイル以外のものとを混合し、 二軸押出機に投入し混練し、 二軸押出機の中間 部から定量ポンプを使ってシリコーンオイルを注入して混練し、 摺動材料ペレツ トを作製した。 実施例 10〜1 5の場合、 上記 TP Vペレットに代えて市販のフ ヱノール樹脂架橋型 TP Vを用い、 これを含む 「混練 2」 に示す材料を用いて摺 動材料ペレットを作製した。 なお、 表 8中の略称等の化学名 / /製品名、 製造元は 以下の通りである。 下記以外は表 2、 3と同様である。
' フユノール樹脂加硫型 T P V: Sarlink3145D (D S M社製)、 無機充填剤量 6. 1重量%
• シリコーンオイル A:動粘度 30〜3000mm2Zs (c S t) (28. 7 〜29 1 0mP a · s)、 ジメチノレシリコーン
' シリコーンオイル B :動粘度 5000〜30000mm2/s (c S t) (48 75〜29280mP a · s)、 ジメチルシリコーン
. シリ コーンマスターペレツト : ジメチノレシリコーンガムを P Pと混練しペレツ ト化したもの。 ジメチルシリコーンガムの含有量は、 シリコーンマスターペレツ ト全重量を基準として 50重量%である。 該ジメチルシリコーンガムの、 後述す るシリコーン化合物の粘性を定量する方法により測定されるトルクは、 3. 35
〜3. 75Nm(l 80±2°C)である。
•ァクリルシリコーン: ジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーン 50 〜70重量%と、 アクリル系モノマー 30〜50重量 °/0とからなる共重合体。 該 アクリルシリコーンの後述するシリコーン化合物の粘性を定量する方法により測 定されるトルクは 4. 00〜4. 4 ONm (180±2°C) である。
【01 10】
表 8
【01 11】
(3) 摺動部材 (二層成形品) の調製
次いで、 平板状の二層成形ダイスに 2台の押出機を接続し、 一方からベース用 材料となるォレフィン系 TP V材を、 もう一方から実施例 9〜1 6の摺動材料を 吐出させて、 成形品を得た。 摺動部材の厚みは 1 7 0 ± 7 0 ζ ιηとし、 ォレフィ ン系 TP V材の厚みは 2 mmとした。
【0 1 1 2】
(4) シリコーン化合物の分散状態
実施例 9〜1 6の摺動部材 (二層成形品) 中のシリコーン化合物の分散状態を、 E PMAを使い S i元素、 C元素又は O元素の X線像を作製することにより観測 した。 先ず、 二層成形品の分析面を力ミソリで切り、 分析面の幅が約 5 mmにな るように試料を切り出した。 専用試料台 (真鍮製 1 0mmの立方プロック) に導 電テープを貼り、 導電テープの上に試料を接着した。 また、 分析面の周囲と側面 にカーボンドータイトを塗布した。 作製後初期の摺動部材と、 後述の条件による 摺動試験後の摺動部材の観測を行った。 また、 摺動試験後の摺動部材表面 (摺動 面) についても同様にして X線像を観測した。
【0 1 1 3】 QUICKAUTO COATER SC-701AT (サンユー電子株式会社製) で、 分析面に Au (金) を約 1 0 O A真空蒸着した。 そして、 日本電子社製電子プロ ーブマイクロアナライザ J XA— 8 1 0 0を用いて、 以下の条件で面分析 (カラ 一マッピング) を行った。 電子銃:タングステン (初期) 又は L a B 6 (水試験 ガラス交換試験後)
加速電圧: 1 5 k V
照射電流: 1 x 1 0— 8A
ピクセノレ : 3 0 0x3 0 0
ピクセルサイズ: 1 x 1 μ Τΐί
測定時間: 4 0 m s e cZlピクセルカラ一マビング:各元素濃度が高い領域か ら順に色分けしてにマッピング (発色) させた。 S i元素の場合、 「5 0超」、
「50〜43」、 「43〜37」、 「37〜3 1」、 「3 1〜25」、 「25〜1 8」、 「1 8〜1 2」、 「1 2〜6」、 「6〜0」、 又は 「0未満」 の濃度レベルを有する 領域に分割し、 それぞれの領域毎に色分けして発色させた。 S i元素及び O元素 の濃度が高い領域が、 シリコーン化合物が多く分布している領域である。 または 逆に、 C元素濃度が薄い領域をシリコーン化合物が多く分布している領域とみな すこともできる。
【0 1 14】
(5) 外観、 成形性及び硬度
上述の 「検討 1」 と同様の方法により、 実施例 9〜 1 5の摺動部材の外観、 成 形性及び硬度を評価した。
【01 1 5】
(6) 摺動性
実施例 9〜1 5の摺動部材に対して、 上述の 「検討 1」 と同様の条件 (以下
「条件 1」 という) により 20セットの処理を繰り返す摺動性試験を行った。 そ の際、 ロードセルで水平方向の荷重 (摺動抵抗) の測定と、 耳で異音発生の有無 及び回数を測定した。 また、 試験前後の摺動部表面 (摺動痕)を I Rで測定し、 S i— CH3 (1 262 cm一1付近)と C— H (146 3 cm—1付近) との吸光度比
(以下 「S i— CH3吸光度比」 という) を求めた。 S i— CH3吸光度比が高 い場合、 表面にシリコーン化合物 (ジメチルポリシロキサン) が多く存在してい ると推定される。 S i— CH3吸光度比が低いものは異音が発生しやすい。
【01 1 6】 更に、 上記の摺動性試験よりも更に過酷な試験として、 下記 A〜 Fの処理を A、 B、 C、 B、 C、 B、 C、 D、 C、 E、 E、 F、 E、 Cの順で施 す一連のセットを各摺動部材に対して施す試験 (以下 「条件 2」 という。) によ り、 摺動性を評価した。 一連の処理 1セットの摺動回数は 60000回である。
【01 1 7】
荷重: 30 N
平均摺動速度: 200 mm/ s e c
A. 常態 (乾燥常態) で 20000回摺動。
B. 試料に約 0. 6 gの水を付け、 500回摺動。 これを 10回繰り返して、 小 計 5000回摺動。 この間ガーゼで拭き取る操作は行わない。
C. 約 1. 8 g/m i nの割合で試料に水を掛けながら、 連続して 2000回摺 動。 D. 常態で 3000回摺動。 Cの後、 試料に付着している水は拭き取らず、 そのまま摺動。
E. ガラス板を交換して常態にて 3000回摺動。
F. 曲面を有するガラス板に交換して常態にて 3000回摺動。
【0 1 1 8】
(7) シリコーン化合物の粘性評価
各実施例において使用したシリコーンマスターペレツト中のジメチルシリコー ンガム、 アクリルシリコーン、 シリコーンオイル A及ぴシリコーンオイル Bを各 実施例の比率で混合して、 全体重量が 45 gの混合物であるシリコーン化合物を 調製した。 ジメチルシリコーンガムの比率は、 シリコーンマスターペレットにお ける含有量に基づいて算出した。
【01 1 9】 プラストミルに、 得られたシリコーン化合物を 45 gと、 架橋塊 5を 5 g投入し、 温度 180°C、 ローター回転速度 10 r pmでローターを回転 させたときのトルクを測定した。 このトルクの値をシリコーン化合物の粘性の指 標とした。 以下にプラストミルの条件を示す。
【0 1 20】
プラストミル:東洋精機社製 4C150-01型 LABOPLASTOMILL
試料量: 50 g (シリコーン化合物 (45 g) +架橋塊 5 (5 g))
ミキサータイプ: R 60
試験温度: 1 80 ± 2 °C
試験手順:
1 80°Cに設定した LABOPLASTOMILLに 50 gの試料を投入する。
LABOPLASTOMILLのローターを下記 A、 B、 C、 Dの順で回転速度を変えながら 回転させる。
A. 1 50 r p m ( 1. 5分)
B. 1 00 r p m ( 1. 5分)
C. 50 r pm (1. 5分)
D. 1 0 r p m ( 1. 5分)
上記 Dにおいて、 1分 20秒経過時の 1回転における平均トルクを計測する。 こ れにより、 安定してトルクを定量することが可能になる。
【0 1 21】 図 18〜図 28は、 初期又は 「条件 2」 による摺動試験後の摺動 部材断面の X線像である。 図 29〜図 32は、 条件 2による摺動試験後の摺動部 材表面 (摺動面) の X線像である。 各図の実施例との対応関係を下記に示す。 図 1 8〜図 28においては、 横方向が押し出し方向となる向きで各 X線像が配置さ れている。 図 1 8〜24において、 (a)、 (b)、 (c) 及び (d) は同一の領域 の X線像であり、 (a) は元素濃度によるマッピングを施していない像であり、
(b) は S i元素濃度、 (c) は C元素、 (d) は O元素の濃度でそれぞれマツピ ングされた像である。 各図において、 各元素濃度が高いほど発色が薄くなるよう に描画されている。
図 1 8 :実施例 9、 初期断面
図 1 9 :実施例 10、 初期断面
図 20 :実施例 1 1、 初期斬面
図 2 1 :実施例 12、 初期断面
図 22 :実施例 13、 初期断面
図 23 :実施例 14、 初期断面
図 24 :実施例 15、 初期断面
図 25 :実施例 9、 摺動試験後断面
図 2 6 :実施例 1 0、 摺動試験後断面
図 2 7 :実施例 1 2 、 搢動試験後断 ¾
図 2 8 :実施例 1 3 、 摺動 験後 ®rtf
図 2 9 :実施例 9、 摺動試験後表面
図 3 0 :実施例 1 0 、 摺動 験後表 ώ
図 3 1 :実施例 1 2 、 摺動試験後 ¾
図 3 2 :実施例 1 3 、 摺動 験後表
【0 1 .2 2】 初期断面の S i元素濃度又は Ο元素濃度によるマッピング像に示 されるように、 いずれの実施例においても、 シリコーン化合物の押し出し方向に 沿った層状の偏在は認められなかった。 また、 S i元素濃度によるマッピング像 と C元素濃度によるマッピング像との比較から、 いずれの実施例においても、 C 元素濃度が高い島状の領域の周囲に S i元素が多く分布する傾向が認められた。 O元素濃度によるマッピング像においても同様に、 C元素濃度が高い島状の領域 の周囲に O元素が多く分布する傾向が認められた。 これは、 C元素濃度が高いォ レフイン系ポリマーを主成分とする相の間にシリコーン化合物を主成分とする相 が形成されていることを示していると考えられる。
【0 1 2 3】 実施例 9の場合、 S i元素濃度分布の局在化の程度は低く、 S i 元素が比較的均一に分布していた。 実施例 1 0、 1 3の場合、 実施例 9と比較し て、 S i元素濃度がレベル 3 2以上である高 S i濃度の領域の割合が明らかに大 きくなつた。 また、 実施例 1 4、 1 5は、 高 S i元素濃度の領域の割合が実施例 1 3よりも更に大きくなる傾向が認められ、 高 S i元素濃度の領域が網目構造を 形成している部分も多く見られた。 このような網目構造が形成されると、 摺動部 材内部から表面へのシリコーン化合物の供給経路が多く形成されると考えられる。 更に、 実施例 1 1、 1 2を実施例 1 0と比較すると、 シリコーン化合物の量が多 くなるに従って、 S i元素濃度が高い領域の割合が大きくなる傾向が認められ、 実施例 1 2では、 高 S i元素濃度の領域同士が連結して網目構造を形成している
部分も多く見られた。 また、 実施例 9の場合、 条件 2による摺動試験後、 摺動面 近傍の表層部が大きく減少したが、 実施例 10、 1 2、 1 3では初期の S i元素 分布状態がほぼ維持された。
【01 24】 実施例 9の場合、 条件 2による摺動試験後、 摺動面に残存する S i元素の量は低かった。 一方、 実施例 10、 1 2、 1 3の場合、 C元素濃度が高 い島状の領域の周囲に高 S i元素濃度の領域が多く維持されていた。
【01 25】 初期断面の O元素濃度によるマッピング像において、 O元素濃度 のレベルが 3以下の領域をォレフイン系ポリマーの分散相とみなし、 当該分散相 の長手方向の長さ (分散径) を測定した。 結果を表 9に示す。
【01 26】
【01 28】
表 10
【01 29】 図 33は、 「条件 2」 の摺動試験における、 摺動抵抗係数と摺動 回数との関係をプロットした図である。 いずれも、 過酷な条件にも関わらず、 摺 動抵抗係数の著しい上昇は認められなかった。 特に、 実施例 1 0〜15は摺動耐 久性が極めて優れていた。
【01 30】
(検討 3)
超高分子量 P Eや S B Sに代えて、 より汎用的な材料を用いた検討を行った。 (1) 架橋塊の調整
表 1 1に示す組成を有する原料を用い、 上述の架橋塊 1〜 5と同様の手順で架
橋塊 6を調製した。 但し、 動的架橋をする際、 有機化酸化物マスターバッチをぺ レツトにまぶすのに代えて、 有機過酸化物マスターバッチ以外の組成物と有機過 酸化物マスターバッチを、 重量フィーダを用いて定量比で押出機に投入した。 表 中、 「EBT 1」 はエチレンープテン一ェチリデンノ /レポ/レネンターポリマー
(高工チレン高ジェン型、 ジェン量 10. 4 (ヨウ素価 22)) であり、 「PP」 はノバテック MA3H (日本ポリケム社商品名) である。 他は架橋塊 1〜5の場合 と同様である。
【01 31】
表 1 1
【01 32】
(2) 摺動部材 (二層成形品) の調製
表 12に示す組成を有する摺動材料を 「検討 1」、 「検討 2」 と同様にして調製 した。 表中、 「フエノール架橋型 TP V 2」 は Sarlink4155 (DSM社製) であ り、 他は検討 1、 2と同様である。 得られた摺動材料を用いて、 「検討 1」 と同 様にして摺動部材を作製した。
【0 1 33】
表 1 2
【01 34】
(3) 評価
実施例 1 6について、 「検討 2」 と同様にして、 シリコーン化合物の粘性、 シ リコーン化合物の分散状態、 外観、 成形性、 硬度、 摺動性を評価した。 摺動性の 評価は 「条件 1」 による 7セッ ト繰返し摺動試験により行った。 表 1 3に、 シリ コーン化合物の粘性、 外観、 成形性、 硬度及び摺動性試験の結果を示す。
【01 35】 図 34は実施例 16の X線像である。 図 34の X線像において、 S i元素の場合、 「100超」、 「100〜87」、 「87〜75」、 「75〜62」、
「62〜50」、 「50〜37」、 「37〜25」、 「25〜1 2」、 「1 2〜0」、 又 は 「0未満」 の濃度レベルを有する領域に分割し、 それぞれの領域毎に色分けし て発色させている。 S i元素は押し出し方向に沿って偏在することなく、 島状の 高 c元素濃度の領域 (前述のォレフィン系ポリマーの分散相) の周囲に分布して いた。 高 C元素濃度のドメインの長手方向の長さは 2〜56 μ mであった。
【01 36】
表 1 3
【0 1 37】
(検討 4)
(1) 架橋塊の調製
表 14に示す組成を有する原料を用い、 上述の架橋塊 6と同様の手順で架橋塊 7及び架橋塊 8を調製した。 表中、 「超高分子ポリオレフインを含む HDPEJ は三井化学社製の LUBMER L 5000 (商品名) であり、 「SEBC」 は J S R社製の DYNARON4600 P (商品名) であり、 「S i—H基を含む ポリオルガノシロキサン」 は信越化学社製の K F— 99 (商品名) である。 他は 架橋塊 6の場合と同様である。
【0 1 38】
表 14
【01 3 9】
(2) 摺動部材 (二層成形品) の調製
表 1 5に示す組成を有する摺動材料を 「検討 1」、 「検討 2」 及び 「検討 3」 と 同様にして調製した。 表中、 「ブロック PP」 はノバテック PP BC 2 E (日 本ポリプロ社製商品名) であり、 他は検討 1、 2及び 3と同様である。 得られた 摺動材料を用いて、 「検討 2」 と同様にして摺動部材を作製した。
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【0140】
表 15
【0141】
(3) 評価
実施例 17 18について、 「検討 2」 と同様にして、 シリコーン化合物の粘性、 シリコーン化合物の分散状態、 外観、 成形性、 硬度、 摺動性を評価した。 摺動性 の評価は 「条件 1」 による 7セット繰返し摺動試験により行った。 表 16に、 シ リコーン化合物の粘性、 外観、 成形性、 硬度及び摺動性試験の結果を示す。 実施 例 17 18は目やにの発生が少なく、 この点で特に優れた成形性を有していた。
【0 142】
表 1 6
【0 143】 図 35は実施例 1 7の X線像であり、 図 36は実施例 18の X線 像である。 これら X線像は、 図 34と同様に色分けして描画されている。 実施例 1 7、 1 8の高 C元素濃度の領域 (前述のォレフィン系ポリマーの分散相) の最 大長さは、 それぞれ4〜70 // 111、 2〜1 25 μπιであり、 摺動材料中のシリコ ーン化合物の濃度が高いにも関わらず、 高 C元素濃度のドメイン同士がつながつ ている形態が観察された。
【0 144】 図 37に、 検討 1〜4の摺動部材に関して、 熱キシレン還流によ る残分比率 (%) と摺動材料中のシリコーン化合物含有量 (%) の関係をプロッ トした。 図 37中の丸印は実施例、 X印は比較例を意味する。