WO2007132799A1

WO2007132799A1 - 鋼管の拡管成形方法および鋼管の拡管成形装置

Info

Publication number: WO2007132799A1
Application number: PCT/JP2007/059834
Authority: WO
Inventors: Takahiro Noguchi; Tatsushi Ito; Fumiaki Kawahara
Original assignee: Komatsu Ltd.
Priority date: 2006-05-15
Filing date: 2007-05-14
Publication date: 2007-11-22
Also published as: CN101448588B; JPWO2007132799A1; EP2823906A3; KR20080096589A; EP2018915A4; KR101030262B1; EP2018915A1; US8365571B2; JP4906849B2; CN101448588A; US20090090159A1; EP2823906A2

Abstract

　拡管成形装置（１０）では、異形鋼管（Ｐ）の一方の開口端部の内部へ拡管成形用のパンチ（１２）を挿入するとともに、異形鋼管（Ｐ）における上記一方の開口端部をサイド金型（２１）によって押圧する。

Description

明細書

鋼管の拡管成形方法および鋼管の拡管成形装置

技術分野

[0001] 本発明は、例えば、異形鋼管等の端部に拡管部を形成するための鋼管の拡管成形方法および拡管成形装置に関する。

背景技術

[0002] 従来より、鋼管の一方の開放端力パンチを押し込んで拡管部分を成形する方法が用いられている。

例えば、特許文献 1には、テーパ角度を 15〜30度の範囲に設定したポンチと、ポンチのテーパ角度と同じ大きさのテーパ角度のテーパ部を有する金属管つかみ型と、を使用して、金属管の端部からポンチを押し込んで拡管する金属管管端の拡管方法が開示されている。

[0003] この拡管方法によれば、耐力が高ぐ加工硬化指数の大きいステンレス鋼や高張力鋼力なる金属管の管端を座屈や扁平等の変形を発生させることなぐ効率よく拡管することができる。

特許文献 1 :特開 2002— 346664号公報（平成 14年 12月 3日公開）

発明の開示

[0004] し力しながら、上記従来の鋼管の拡管成形方法では、以下に示すような問題点を有している。

すなわち、丸鋼管の拡管成形では、均等に肉厚が薄くなりながら拡管されていくために成形限界が大きぐ成形難易度は高くないため、上記公報に開示された成形方法であっても問題は生じない。しかし、断面が略四角形の互いに平行な面を有する異形鋼管の拡管成形においては、肉厚が均等に薄くすることは困難であり、成形限界が小さく成形難易度が高いために、上記公報に開示された成形方法では対応できないおそれがある。

本発明の課題は、異形鋼管の拡管成形においても、成形難易度を低くすることが可能な鋼管の拡管成形方法および鋼管の拡管成形装置を提供することにある。 (課題を解決するための手段）

[0005] 第 1の発明に係る鋼管の拡管成形方法は、鋼管の開口端部から拡管成形用のパンチを挿入する第 1のステップと、パンチが鋼管の開口端部から挿入される際に、開口端部をパンチの挿入方向に向力つて押圧する第 2のステップと、を備えている。

[0006] ここでは、鋼管を拡管成形する場合において、拡管成形用のパンチを鋼管の内側に挿入して鋼管の内径を広げていく際には、上記パンチが挿入された鋼管の開口端部をパンチの挿入方向に向かって押し込んで!/、く。

これにより、拡管成形が進むにつれて鋼管が薄肉化していくときに、パンチの挿入方向に向力つてパンチを挿入した開口端部を押し込むことで、拡管された鋼管が局所的に薄肉化して成形不良となってしまうことを抑制することができる。この結果、鋼管の拡管成形における成形限界を広げて、例えば、断面が略四角形の互いに平行な面を有する異形鋼管の拡管成形にも対応可能な成形方法を提供することができる

[0007] 第 2の発明に係る鋼管の拡管成形方法は、第 1の発明に係る鋼管の拡管成形方法であって、第 2のステップでは、鋼管の平行面を維持したまま一方の側の拡管成形を行う。

ここでは、例えば、断面が略四角形等の互いに平行な面を有する異形鋼管の拡管成形を行う。

通常、このような互いに平行な面を維持したまま異形鋼管の拡管成形を行う場合には、丸鋼管の拡管成形を行う場合と比較して、局所的な薄肉化が生じ易くなり、破断等の成形不良が発生し易、と、う問題がある。

[0008] 本発明の鋼管の拡管成形では、上述のように、拡管成形する鋼管の開口端部をパンチの挿入方向と同じ方向に押圧しながら成形を行うため、一般的に拡管成形が難しいとされている異形鋼管であっても、破断等を生じさせることなぐ拡管成形を行うことがでさる。

[0009] 第 3の発明に係る鋼管の拡管成形方法は、第 1または第 2の発明に係る鋼管の拡管成形方法であって、第 2のステップでは、鋼管の開口端部における拡管成形を行う側の部分を押圧する。ここでは、鋼管の内側に拡管成形用のパンチを挿入していきながら押圧される開口端部のうち、拡管成形される側の部分を押圧する。

これにより、拡管成形によって肉厚が薄くなる側の開口端部の部分をパンチの挿入方向と同じ方向に押し込むことで、拡管成形に伴って薄肉化が進んで鋼管の成形不良となることを、より効果的に抑制することができる。

[0010] 第 4の発明に係る鋼管の拡管成形方法は、第 3の発明に係る鋼管の拡管成形方法であって、第 2のステップでは、鋼管の開口端部における拡管成形を行う側の部分を、略コの字型の金型を用いて押圧する。

ここでは、鋼管の内側に拡管成形用のパンチを挿入していきながら押圧される開口端部のうち、拡管成形される側の部分を押圧する際には、略コの字型の金型を用いて押圧する。

これにより、拡管成形によって薄肉化していく部分の薄肉化が進んで破断する等の成形不良の発生を、効果的に抑制することができる。

[0011] 第 5の発明に係る鋼管の拡管成形方法は、第 1から第 4の発明のいずれか 1つに係る鋼管の拡管成形方法であって、第 2のステップでは、鋼管の肉厚の減少が始まると、鋼管の開口端部を押す押圧力を上昇させる。

ここでは、鋼管の内部にパンチを挿入する際における鋼管の開口端部を押す押圧力を、鋼管の肉厚の減少開始のタイミングに合わせて上昇させるように制御する。ここで、鋼管の肉厚の減少のタイミングは、パンチを挿入していくストロークの管理や、パンチの挿入圧力の管理、パンチを挿入していく時間や速度の管理等に基づいて、設定される。

[0012] これにより、肉厚の減少の開始とともに鋼管の開口端部がより強い力で押圧されるため、鋼管の薄肉化が局所的に進んで成形不良が発生することを抑制しつつ、効率よく所望の拡管成形を行うことができる。

[0013] 第 6の発明に係る鋼管の拡管成形方法は、第 5の発明に係る鋼管の拡管成形方法であって、第 2のステップでは、開口端部への押圧力を所定の第 1圧まで上昇させて、鋼管の肉厚の減少が始まるまで待機し、肉厚の減少が始まると開口端部への押圧力を所定の第 2圧に向力つて上昇させる。ここでは、鋼管の開口端部への押圧を第 1圧と第 2圧とを設定して段階的に行う。具体的には、鋼管内にダイを挿入していき鋼管の肉厚の減少が開始するまでは、所定の第 1圧の状態で押圧力を一定のまま保持する。そして、鋼管の肉厚の減少が開始すると、開口端部への押圧力を第 2圧まで上昇させるように制御する。

[0014] これにより、肉厚の減少が開始するまでの間に、過剰な圧力が開口端部に対して付与されることを回避することができる。この結果、開口端部の変形等を防止しつつ、拡管成形を精度良く実施することができる。

[0015] 第 7の発明に係る鋼管の拡管成形方法は、第 1から第 6の発明のいずれか 1つに係る鋼管の拡管成形方法であって、鋼管は、異形断面を有している。

ここでは、例えば、断面が略四角形の互いに平行な面を有する異形断面を有する鋼管の拡管成形を行う。なお、上記異形断面とは、断面形状が円形以外の断面になつているものを意味するものとする。これは、本発明が、拡管成形時に、均一に肉厚が減少して成形性が確保し易い円形断面のパイプではなぐ異形断面の拡管成形に特に有効であることを示して、る。

これにより、上述した拡管成形方法によって成形を行うことで、一般的に拡管成形が難しいといわれる異形鋼管であっても、成形不良の発生を抑制しつつ、所望の拡管成形を行うことができる。

[0016] 第 8の発明に係る鋼管の拡管成形装置は、拡管成形用のパンチと、挿入機構と、押圧部と、を備えている。挿入機構は、パンチを鋼管の開口端部力挿入する。押圧部は、パンチが鋼管の開口端部から挿入される際に、開口端部をパンチの挿入方向に向力つて押圧する。

ここでは、鋼管を拡管成形する場合において、拡管成形用のパンチを鋼管の内側に挿入して鋼管の内径を広げていく際には、上記パンチが挿入された鋼管の開口端部をパンチの挿入方向に向かって押し込んで!/、く。

[0017] これにより、拡管成形が進むにつれて鋼管が薄肉化していくときに、パンチの挿入方向に向力つてパンチを挿入した開口端部を押し込むことで、拡管された鋼管が局所的に薄肉化して成形不良となってしまうことを抑制することができる。この結果、鋼管の拡管成形における成形限界を広げて、例えば、異形鋼管の拡管成形にも対応可能な拡管成形装置を提供することができる。

[0018] 第 9の発明に係る鋼管の拡管成形装置は、第 8の発明に係る鋼管の拡管成形装置であって、挿入機構を制御する制御部をさらに備えており、制御部は、鋼管の開口端部にパンチが挿入されていき、鋼管の肉厚の減少が始まると開口端部を押圧する力を上昇させるように押圧部を制御する。

ここでは、鋼管の内部にパンチを挿入する際における押圧部の押圧力を、鋼管の肉厚の減少開始のタイミングに合わせて上昇させるように制御する。

[0019] ここで、鋼管の肉厚の減少のタイミングは、パンチを挿入して!/、くストロークの管理や、パンチの挿入圧力の管理、パンチを挿入していく時間、速度管理等に基づいて、設定される。

これにより、肉厚の減少の開始とともに鋼管の開口端部がより強い力で押圧されるため、鋼管の薄肉化が局所的に進んで成形不良が発生することを抑制しつつ、効率よく所望の拡管成形を行うことができる。

[0020] 第 10の発明に係る鋼管の拡管成形装置は、第 8または第 9の発明に係る鋼管の拡管成形装置であって、押圧部は、略コの字型の金型である。

これにより、拡管成形によって薄肉化していく部分の薄肉化が進んで破断する等の成形不良の発生を抑制することができる。

[0021] 第 11の発明に係る鋼管の拡管成形装置は、第 8から第 10の発明のいずれか 1つに係る鋼管の拡管成形装置であって、パンチは、鋼管の開口端部からの挿入方向に平行な面を含む第 1部と、第 1部に平行な面を含む第 2部とを有している。そして、第 2部には、第 1部に含まれる面と平行であって第 1部に含まれる面との距離が異なる複数の面が含まれており、複数の面はテーパ部を介してつながっている。

[0022] ここでは、互いに平行な面を含む第 1部と第 2部とを有するパンチを用いて異形鋼管の拡管成形を行う。そして、第 2部には、第 1部の面と互いに平行で、かつテーパ部を介してつながった複数の面が含まれて、る。通常、このような形状のパンチを用いて互いに平行な面を維持したまま異形鋼管の拡管成形を行う場合には、丸鋼管の拡管成形を行う場合と比較して、局所的な薄肉化が生じ易くなり、破断等の成形不良が発生し易いという問題がある。

[0023] 本発明の鋼管の拡管成形装置では、上述のように、押圧部によって拡管成形する鋼管の開口端部をパンチの挿入方向と同じ方向に押圧しながら成形を行うため、一般的に拡管成形が難しいとされている異形鋼管であっても、破断等を生じさせることなぐ拡管成形を行うことができる。

図面の簡単な説明

[0024] [図 1]本発明の一実施形態に係る鋼管の拡管成形方法を実施する拡管成形装置の構成を示す側面図。

[図 2] (a) , (b)は、異形鋼管内にパンチを挿入する際の過程を示す側面図。

[図 3] (a)は、異形鋼管内にパンチを挿入する際のサイド金型、パンチ、異形鋼管およびダイの位置関係を示す正面図。（b)は、（a)を側方力も見た断面図。

[図 4]図 1の拡管成形装置による拡管成形法の流れを示すフローチャート。

[図 5] (a) , (b)は、パンチが挿入された結果、拡管成形された異形鋼管を示す正面図および断面図。

[図 6]図 1の拡管成形装置による拡管成形時におけるパンチの挿入ストロークとサイド金型の押圧力との関係を示すグラフ。

[図 7] (a) , (b)は、従来の拡管成形法と本発明の拡管成形法とによる拡管率とテーパ角度とを変化させた場合の試験結果を示す図。

[図 8]図 1の拡管成形装置によって拡管成形された異形鋼管をストレッチベンド工程にお、て折り曲げる状態を示す図。

[図 9] (a)〜 (e)は、図 1の拡管成形装置による異形鋼管に対する拡管成形カもストレツチベンド工程までの形状の変化を示す図。

[図 10] (a)〜 (c)は、本発明の他の実施形態に係る拡管成形方法によって拡管成形された異形鋼管の断面形状を示す断面図。

符号の説明

[0025] 10 拡管成形装置 11 メインシリンダ (挿入機構）

11a シリンダ本体

l ib シリンダロッド

11c 油圧発生装置

12 ノンチ

12a 第 1の面 (第 1部）

12b 第 2の面 (第 2部）

12c 第 3の面

12d テーパ部

13 ダイ

15 サイド加圧装置 (押圧部）

20 制御部

21 サイド金型（略コの字型の金型)

22 金型保持部

23 シャフト

31 内金型

32a, 32b 保持部材

33a, 33b ロール金型

M モータ (押圧部）

P 異形鋼管

発明を実施するための最良の形態

本発明の一実施形態に係る鋼管の拡管成形方法および拡管成形装置について、図 1〜図 9を用いて説明すれば以下の通りである。

[鋼管の拡管成形装置 10の構成]

本実施形態に係る鋼管の拡管成形装置 10は、異形鋼管 Pの内部に所定の形状を有する拡管成形用のパンチ 12を揷入して拡管成形を行う装置であって、図 1に示すように、メインシリンダ (挿入機構） 11と、拡管成形用のパンチ 12と、ダイ 13と、サイド金型 21を含むサイド加圧装置 (押圧部） 15と、制御部 20と、を備えている。 [0027] 異形鋼管 Pは、油圧ショベル等の建設機械に搭載されるキヤブを構成するフレーム支柱用に形成される部材であって、円形断面の丸鋼管をロールフォーミングによって異形断面に成形される（図 9参照)。

メインシリンダ 11は、シリンダ本体 11aと、シリンダロッド l ibと、油圧発生装置 11cと、を有しており、固定配置された異形鋼管 Pに対して、油圧発生装置 11cから付与された押圧力を、シリンダロッド 1 lbを介してパンチ 12に対して付与する。

[0028] パンチ 12は、図 2 (a)および図 2 (b)に示すように、異形鋼管 Pの内部に挿入されて異形鋼管 Pに拡管部 P1を形成するための部材であって、第 1の面 (第 1部） 12aと、第 1の面 12aに対して平行な第 2の面 (第 2部） 12bおよび第 3の面 12cと、テーパ部 12 dと、を有している。第 2の面 12bと第 3の面 12cとは、第 1の面 12aからの距離がそれぞれ 11, 12 (11≠ 12)と異なるように配置されており、テーパ部 12dを介してつながっている。このパンチ 12を用いて拡管成形を行うことで、第 1の面 12aと第 2の面 12bとの平行部を保ったまま一方の面の一部を拡管成形することができる。なお、このパンチ 12は、後端部に形成されたフランジ部においてシリンダロッド l ibの先端部に形成されたフランジ部と接合されているものとする。

[0029] ダイ 13は、図 3 (a) ,図 3 (b)に示すように、拡管成形を行う対象となる異形鋼管 Pの外周を、後述するサイド金型 21とともに覆うように配置されている。そして、パンチ 12 が挿入される異形鋼管 Pに沿ってダイ 13を設置することで、拡管成形の成形性を向上させることができる。

サイド加圧装置 15は、拡管成形の対象となる異形鋼管 Pの一方の開口端部に対して、パンチ 12の挿入方向と同じ方向に向力つて押圧力を付与する機構であって、図 1に示すように、サイド金型 21、金型保持部 22、シャフト 23およびモータ Mを有している。サイド金型 21は、シャフト 23の先端部分に装着された金型保持部 22に対して取り付けられており、モータ M力も伝達される回転駆動力によって金型保持部 22がシャフト 23ごと F方向へ前進することで、異形鋼管 Pの開口端部に対して押圧力を付与する。なお、モータ Mは、 ACサーボモータであって、メインシリンダ 11におけるパンチ 12を前進させる際のストロークおよび速度に基づいて、異形鋼管 Pの開口端部に向力つて適度な押圧力を付与するように、制御部 20によってフィードフォワード制御される。

[0030] 制御部 20は、上述のように、メインシリンダ 11におけるパンチ 12を前進させるスト口ークゃ速度を受信して、サイド加圧装置 15によるサイド金型 21を最適な押圧力によつて前進させるようにモータ Mの回転制御を行う。また、制御部 20は、図 1に示すように、メインシリンダ 11に対しても接続されており、メインシリンダ 11に内蔵された図示しない荷重センサ力も押圧力の大きさを受信して、後述するサイド金型 21の押圧力の上昇タイミングを決定する。

[0031] <本拡管成形装置 10による拡管成形の流れ >

本実施形態では、上述した構成を備えた拡管成形装置 10において、図 4に示すフローチャートに従って、以下に示すような手順で異形鋼管 pの拡管成形を行う。

すなわち、本実施形態の拡管成形装置 10では、ステップ S1において、図 3 (a)に示すように、ダイ 13にセットされた異形鋼管 Pに対して、パンチ 12を挿入していくように、メインシリンダ 11 (図 1参照）の伸展を行う。

[0032] 次に、ステップ S 2では、異形鋼管 P内へのパンチ 12の挿入のタイミング、パンチ 12 の挿入ストロークに基づいて、モータ Mによってサイド金型 21を異形鋼管 Pのパンチ 12挿入側の開口端部に対して押し当てながら前進させて押圧する。

このとき、パンチ 12は、図 3 (b)に示すように、異形鋼管 Pの内部へと挿入される。そして、サイド金型 21は、異形鋼管 Pの断面における拡管成形側の部分を押圧する。

[0033] 次に、ステップ S3では、異形鋼管 P内にパンチ 12が挿入されていく過程において、異形鋼管 Pが拡管されて薄肉化が開始するまで、パンチ 12の挿入およびサイド金型 21の押圧を継続する。このとき、異形鋼管 Pは、図 5 (a)および図 5 (b)に示すように、高さ h、幅 blの断面を、テーパ角度 Θのテーパ部分を有するパンチ 12を挿入することによって、幅 (bl +b2)に拡管するように成形される。そして、サイド金型 21は、この拡管される部分に対して集中的に押圧力を付与する。

[0034] なお、この異形鋼管 Pの拡管率は、以下の関係式（1)に基づいて算出される。

拡管率 =b2Zbl (1)

そして、異形鋼管 Pの薄肉化が始まると、ステップ S4へ進み、図 6に示すように、制御部 20は、一旦所定の値で一定の押圧力を付与されていたサイド金型 21の押圧力を、さらに上昇させるように制御を行う。

[0035] ここで、異形鋼管 Pの薄肉化が始まったことは、異形鋼管 Pの内部に挿入されるパンチ 12の押圧力の上昇が止まったタイミング Aを検出することによって判断される。つまり、異形鋼管 P内にパンチ 12を挿入していく過程において、異形鋼管 Pの内径よりも大きい外径を有するパンチ 12を所定の挿入速度を維持したままで挿入するためには、パンチ 12の押圧力を上昇させながら挿入していく必要がある。その後、異形鋼管 Pの薄肉化が始まると、パンチ 12の押圧力の上昇は停止して所定値付近で横ばいになる。このため、異形鋼管 P内に挿入されるパンチ 12の押圧力の上昇が停止したタイミング Aを検出することで、サイド金型 21を押圧する力を上昇させるタイミング C として設定することができる。これにより、薄肉化が始まるのとほぼ同時に、異形鋼管 Pの開口端部を押し込むための押圧力を増大させることで、薄肉化が局所的に進んで成形不良となることを防止することができる。

[0036] なお、サイド金型 21は、図 6に示すように、上述した押圧力を上昇させて所定の最大値 Dに到達すると、一定になるように制御される。

次に、ステップ S 5では、パンチ 12の押圧、サイド金型 21の押圧を継続し、メインシリンダ 11がパンチ 12を所定の位置まで進行させると、成形完了として判定し、ステツプ S6へと進む。

[0037] 次に、ステップ S6では、異形鋼管 Pの内部に挿入されたパンチ 12を取り出すとともに、ステップ S7において、サイド金型 21の押圧も解除して異形鋼管 Pの側方力も退避させる。

本実施形態の異形鋼管 Pの拡管成形装置 10では、以上のように、拡管成形用のパンチ 12を異形鋼管 P内に挿入していくと同時に、サイド金型 21を用いて異形鋼管 P の開口端部の一部を押圧する。

[0038] これにより、拡管成形用のパンチ 12の挿入によって薄肉化することで拡管成形される異形鋼管 Pが、局所的に薄肉化して成形不良となってしまうことを回避して、拡管成形における成形性を向上させることができる。

ここで、本実施形態における拡管成形方法によって成形した結果（図 7 (b)参照）と、従来の拡管成形方法によって成形した結果（図 7 (a)参照）とを比較した表を、図 7 ( a)および図 7 (b)に示す。

[0039] 従来の拡管成形方法では、図 7 (a)に示されているように、テーパ角度 Θ 15度で、拡管率が 10%の試験片のみが適正に成形でき、テーパ角度 30度の試験片ゃ、テーパ角度 15度で拡管率 20%の試験片では、成形不良が発生したことがわかる。一方、本実施形態の拡管成形方法によって成形された試験片では、テーパ角度 30度で拡管率 20%の試験片では成形不良が発生したものの、テーパ角度 15度で拡管率 20%の試験片と、テーパ角度 30度で拡管率 10%の試験片とが、成形不良が発生することなく拡管成形を行うことができた。

[0040] このように、本実施形態では、拡管成形用のパンチ 12を異形鋼管 P内へ挿入しつつ、サイド金型 21によって異形鋼管 Pの開口端部を押圧することで、拡管成形における成形限界を拡張し、成形不良の発生を抑制することができる。

<ストレッチベンド工程の流れ >

本実施形態では、異形鋼管 Pの両端部にそれぞれ上述した拡管成形を行った後、異形鋼管 Pにおける拡管成形部分を掴んで所定の形状になるまで折り曲げるストレツチベンド工程に移行する。

[0041] 具体的には、図 8に示すように、拡管成形された異形鋼管 Pの両端部を保持部材 3 2a, 32bによって把持して内金型 31に沿って折り曲げた状態（ドローベンディング）とし、ロール金型 33a, 33bを用いて大きな R形状に成形する。

以上のことから、図 9 (a)〜図 9 (e)に示すように、断面が略円形の丸鋼管（図 9 (a) 参照）をロールフォーミングを用いて異形断面に成形した後（図 9 (b)参照）、上述した異形断面の両端部分を拡管成形する（図 9 (c)参照)。そして、この拡管部分を把持して異形鋼管 Pを折り曲げた後（図 9 (d)参照）、上述したストレッチベンド工程にお V、て大きな R形状に成形する（図 9 (e)参照)。

[0042] これにより、従来のキヤブのフレーム支柱の成形工程と比較して、高精度な柱部材を成形することが可能になる。また、拡管成形された部材については、ストレッチベント成形後、拡管成形された部分の端部を若干カットするだけで使用することができるため、両端部をつぶして把持する従来の方法と比較して、成形後にカットされる部分の量を少なくしてフレーム支柱の製造歩留りを向上させることができる。 [0043] [本拡管成形装置 10の特徴]

(1)

本実施形態の鋼管の拡管成形装置 10では、図 3 (a)および図 3 (b)に示すように、異形鋼管 Pの一方の開口端部の内部へ拡管成形用のパンチ 12を挿入するとともに、異形鋼管 Pにおける上記一方の開口端部をサイド金型 21によってパンチ 12の押圧方向と同じ方向に押圧する。

[0044] これにより、拡管成形時において異形鋼管 Pの薄肉化が進行する際には、開口端部を押圧することで局所的な薄肉化の進行を抑制することができる。この結果、異形鋼管 Pの拡管成形の成形限界を拡張して、複雑な異形断面を有する鋼管の拡管成形にも対応可能な拡管成形方法を提供することができる。

(2)

本実施形態の鋼管の拡管成形装置 10では、図 2 (a)等に示すように、互いに平行な第 1の面 12aと、第 2·第 3の面 12b, 12cとを含むパンチ 12を用いて拡管成形を行

[0045] これにより、上述したサイド金型 21を用いて異形鋼管 Pの開口端部を押圧することで、一般的に、局所的な薄肉化が進みやすく成形不良が発生し易いといわれる異形鋼管 Pにおいて平行部を維持したままでの一方の側（第 2·第 3の面 12b, 12c)のみの拡管成形を行うことができる。

(3)

本実施形態の鋼管の拡管成形装置 10では、サイド金型 21によって、異形鋼管 Pの開口端部における拡管成形を行う側の部分を部分的に押圧している。

[0046] これにより、拡管成形時における局所的な薄肉化によって成形不良を生じさせることを抑制することができるとともに、拡管成形を行う側以外の部分に対して余計な応力を発生させることなぐ拡管成形時における成形性を向上させることができる。

(4)

本実施形態の鋼管の拡管成形装置 10では、図 3 (b)に示すように、異形鋼管 Pの開口端部を押圧する部材として断面が略コの字型のサイド金型 21を用いている。

[0047] これにより、異形鋼管 Pの開口端部における拡管成形される側の部分を効果的に押圧することができる。よって、異形鋼管 Pの開口端部における余計な部分を押圧して、異形鋼管 P内に不要な応力が生じることを防止することができる。

(5)

本実施形態の鋼管の拡管成形装置 10では、異形鋼管 P内にパンチ 12を挿入していく過程において、図 6に示すように、制御部 20が、サイド金型 21による押圧力を、異形鋼管 Pの薄肉化が始まると同時に上昇させるように制御を行う。

[0048] これにより、薄肉化の開始とほぼ同時に、局所的な薄肉化が進行することを抑制するためのサイド金型 21による開口端部の押圧力を上昇させるため、局所的な薄肉化が進行することをより効果的に防止することができる。

(6)

本実施形態の鋼管の拡管成形装置 10では、図 5 (a)および図 5 (b)に示すように、拡管成形を行う材料として、異形鋼管 Pを用いている。

[0049] このように、一般的に、均等に薄肉化が進行しないために拡管成形が難しいと言われる異形断面を有する鋼管の拡管成形を行う場合でも、上述のように、サイド金型 21 を用いて開口端部を押圧することで、成形限界を広げて良好な拡管成形を行うことができる。

[他の実施形態]

以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなぐ発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

[0050] (A)

上記実施形態では、サイド金型 21の押圧力を上昇させるための異形鋼管 Pの肉厚の減少のタイミングを、異形鋼管 P内にパンチ 12を挿入する際の押圧力の変化に基づいて設定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。

例えば、パンチの挿入ストロークや挿入速度の管理や、パンチの挿入速度と挿入開始からの経過時間の管理、鋼管の肉厚の直接管理等によって、肉厚の減少のタイミングを設定するようにしてもょ、。

[0051] (B) 上記実施形態では、図 3 (b)等に示すように、断面形状が略四角形の異形鋼管 Pの拡管成形を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。

例えば、断面が円形の丸鋼管の一部分を拡管成形する場合や、同じく丸鋼管を同心以外の位置を中心に全体を拡管するような場合にも、本発明の成形方法の適用により、上記と同様の効果を得ることができる。

[0052] 具体的には、図 10 (a)に示すように、略台形の断面を有するパイプ Paや、図 10 (b )に示すように、円形の一部を切欠いた異形断面を有するパイプ Pb、図 10 (c)に示すように、 2つの楕円を組み合わせたような異形断面を有するパイプ Pc等のように、各種の異形断面を有するパイプ Pa〜Pcの拡管成形を行ってもよい。

(C)

上記実施形態では、図 6に示すように、制御部 20が、サイド金型 21の加圧カを途中まで一定の割合で上昇させた後、所定時間一定の値で保持し、鋼管の肉厚の減少のタイミングに合わせて再度加圧力を上昇させるように制御する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。

[0053] 例えば、サイド金型の加圧力については、一定の割合で上昇させるのではなぐ階段状に上昇させるようにしてもよ、。

この場合でも、異形鋼管等の拡管成形における成形限界を広げることができるという、上記と同様の効果を得ることができる。

(D)

上記実施形態では、図 3 (a)等に示すように、異形鋼管 Pの拡管成形にダイ 13を使用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。

[0054] 例えば、ダイを使用せずに拡管成形を行うことも可能である。

ただし、高精度な成形を行うという観点力は、上記実施形態のように、ダイを使用して鋼管の拡管成形を行うことがより好ま、。

(E)

上記実施形態では、拡管成形後の異形鋼管 Pをストレッチベンド工程にぉ、て折り曲げカ卩ェして、油圧ショベル等に搭載されるキヤブを構成するフレーム支柱として使用する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。

[0055] 例えば、キヤブのフレーム支柱に限らず、他の用途に使用される鋼管の拡管成形においても、本発明を適用することは当然に可能である。

産業上の利用可能性

[0056] 本発明の鋼管の拡管成形方法は、鋼管の拡管成形における成形限界を広げて、例えば、異形鋼管の拡管成形にも対応可能な成形方法を提供することができると!、う効果を奏することから、各種素材の拡管成形に対して広く適用可能である。

Claims

請求の範囲

[1] 鋼管の開口端部力拡管成形用のパンチを挿入する第 1のステップと、

前記パンチが前記鋼管の開口端部から挿入される際に、前記開口端部を前記パンチの挿入方向に向力つて押圧する第 2のステップと、

を備えて!/、る鋼管の拡管成形方法。

[2] 前記第 2のステップでは、前記鋼管の平行面を維持したまま一方の側の拡管成形を行う、

請求項 1に記載の鋼管の拡管成形方法。

[3] 前記第 2のステップでは、前記鋼管の開口端部における前記拡管成形を行う側の部分を押圧する、

請求項 1または 2に記載の鋼管の拡管成形方法。

[4] 前記第 2のステップでは、前記鋼管の開口端部における前記拡管成形を行う側の部分を、略コの字型の金型を用いて押圧する、

請求項 3に記載の鋼管の拡管成形方法。

[5] 前記第 2のステップでは、前記鋼管の肉厚の減少が始まると、前記鋼管の開口端部を押す押圧力を上昇させる、

請求項 1または 2に記載の鋼管の拡管成形方法。

[6] 前記第 2のステップでは、前記開口端部への押圧力を所定の第 1圧まで上昇させて、前記鋼管の肉厚の減少が始まるまで待機し、前記肉厚の減少が始まると前記開口端部への押圧力を所定の第 2圧に向力つて上昇させる、

請求項 5に記載の鋼管の拡管成形方法。

[7] 前記鋼管は、異形断面を有している、

請求項 1または 2に記載の鋼管の拡管成形方法。

[8] 前記第 2のステップでは、前記鋼管の肉厚の減少が始まると、前記鋼管の開口端部を押す押圧力を上昇させる、

請求項 3に記載の鋼管の拡管成形方法。

[9] 前記第 2のステップでは、前記開口端部への押圧力を所定の第 1圧力まで上昇させて、前記鋼管の肉厚の減少が始まるまで待機し、前記肉厚の減少が始まると前記開口端部への押圧力を所定の第 2圧力に向力つて上昇させる、

請求項 8に記載の鋼管の拡管成形方法。

[10] 前記鋼管は、異形断面を有している、

請求項 3に記載の鋼管の拡管成形方法。

[11] 前記鋼管は、異形断面を有している、

請求項 5に記載の鋼管の拡管成形方法。

[12] 拡管成形用のパンチと、

前記パンチを鋼管の開口端部力挿入するための挿入機構と、

前記パンチが前記鋼管の開口端部から挿入される際に、前記開口端部を前記パンチの挿入方向に向力つて押圧する押圧部と、

を備えて!/、る鋼管の拡管成形装置。

[13] 前記挿入機構を制御する制御部をさらに備えており、

前記制御部は、前記鋼管の開口端部に前記パンチが挿入されていき、前記鋼管の肉厚の減少が始まると前記開口端部を押圧する力を上昇させるように前記押圧部を制御する、

請求項 12に記載の鋼管の拡管成形装置。

[14] 前記押圧部は、略コの字型の金型である、

請求項 12または 13に記載の鋼管の拡管成形装置。

[15] 前記パンチは、前記鋼管の開口端部力の挿入方向に平行な面を含む第 1部と、前記第 1部に平行な面を含む第 2部とを有しており、

前記第 2部には、前記第 1部に含まれる面と平行であって前記第 1部に含まれる面との距離が異なる複数の面が含まれており、前記複数の面はテーパ部を介してつながっている、

請求項 12または 13に記載の鋼管の拡管成形装置。

[16] 前記パンチは、前記鋼管の開口端部力の挿入方向に平行な面を含む第 1部と、前記第 1部に平行な面を含む第 2部とを有しており、

請求項 14に記載の鋼管の拡管成形装置。

[17] 前記鋼管は、異形断面を有している、

請求項 12または 13に記載の鋼管の拡管成形装置。

[18] 前記鋼管は、異形断面を有している、

請求項 14に記載の鋼管の拡管成形装置。

[19] 前記鋼管は、異形断面を有している、

請求項 15に記載の鋼管の拡管成形装置。

[20] 前記鋼管は、断面形状において、互いに平行な一対の辺を有している、請求項 12または 13に記載の鋼管の拡管成形装置。

[21] 前記鋼管は、断面形状において、互いに平行な一対の辺を有している、請求項 14に記載の鋼管の拡管成形装置。

[22] 前記鋼管は、断面形状において、互いに平行な一対の辺を有している、請求項 15に記載の鋼管の拡管成形装置。

[23] 前記鋼管は、断面形状において、互いに平行な一対の辺を有している、請求項 16に記載の鋼管の拡管成形装置。