JP5009364B2 - ハイドロフォーム加工品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属管を素材とし、ハイドロフォーム加工で成形して得られる、自動車用のサスペンション系部品や、ボディ系部品等に適用する加工品の製造方法に関する。
近年、自動車分野では、軽量化の手段の一つとして、金属管を使用する場合が増加している。中空の金属管は、中実材に比べ、同一の剛性で、断面積を減らすことができる。
また、金属管の一体型構造は、ハット型の二枚の金属板を溶接で結合した構造に比べ、溶接フランジ部が不要である分、軽量化が可能になる。
しかし、自動車用部品は、車内の狭い空間に配置されるので、金属管は、直管のままで使われることが少なく、殆ど、二次加工が施されて取り付けられる。
二次加工としては、曲げ加工が最も多く用いられるが、近年、自動車部品形状の複雑化に伴い、ハイドロフォーム加工(金属管を金型内に装着した状態で、内圧と軸方向の圧縮を用いて、金型形状に仕上げる加工)も増加し、さらに、それらの加工を重畳した加工も増加している。
ハイドロフォーム加工自体も、図1に示すように(非特許文献1、参照)、単純なT成形に比べると、近年、部品形状が複雑化し、拡管率(素管の周長に対する製品管の周長の比)も増加している。
特許文献1には、拡管率が大きい、直線形状のハイドロフォーム加工品を得る方法が開示されている。しかし、この方法は、金属管を一方向に拡管した後、この方向と直角の方向に拡管する方法であり、曲げを含む加工に適用することはできない。
特許文献2及び特許文献3には、曲げを含む形状で、大きな拡管率の加工品を得る方法が開示されている。
特許文献2に記載の方法は、可動金型を用いて、高い枝管高さを有するハイドロフォーム加工品を得る方法であるが、枝管張出しのように、ある一方向にのみ拡管する場合に適用できるものであり、その直角方向に拡管することはできない。
特許文献3に記載の方法は、ハイドロフォーム加工を行なった後に、回転引き曲げ加工を行なう方法であるが、該方法も、ある一方向にのみ拡管する場合に適用できるものであり、その直角方向に拡管することはできない。
特許文献4に記載の方法は、曲げ部が、ある方向とその垂直方向に拡管したハイドロフォーム成形品を成形する方法である。
この方法においては、第1工程で、同心円状に拡管するので、最終形状でも、曲げの外側と内側の両方に拡管された形状にならざるを得ない。
しかし、前述のように、自動車部品は車内の狭い空間に配置する必要があるので、必ずしも、曲げの外側と内側に拡管する必要があるとは限らない。
逆に、他の部品との干渉を避けるため、曲げの内側は拡管したくない場合、又は、曲げの外側は拡管したくない場合がある。このような場合、特許文献4に記載の方法を適用することはできない。
即ち、従来のハイドロフォーム加工法において、曲げ部の拡管率を大きくしようとする場合は、一方向にだけ拡管するか、又は、曲げ外側及び内側を含む全周に渡って拡管するか、のいずれかであった。
このため、本来、軽量化に資するハイドロフォーム成形品を、限定された空間に配置する自動車のサスペンション系部品等の構造部材に適用することができないという問題があった。
また、ハイドロフォーム以外の塑性加工、例えば、曲げ加工等で、上述のような形状の構造部材を加工することはできない。鋳造を用いれば、上述のような形状の構造部材を得ることができるが、鋳造品は、塑性加工品と比べ、靭性や溶接性等が劣るので、冒頭に挙げたサスペンション系部品や、ボディ系部品等の自動車用部品に適用することはできない。
その他、曲げ加工やハイドロフォーム加工の間に、熱処理工程を設け、前工程で生じた加工歪の除去を繰り返し、最終的に、大きく変形した加工品を得ることはできる。
しかし、熱処理工程を設けると、(a)生産コストが上がる、(b)生産効率が低下する、(c)加工後の複雑形状部品を熱処理する専用設備が必要になる、(d)熱処理で、部品表面にスケールが生成する、(e)加工硬化の効果が低減するなど、多くの不利益がある。
特開2002−100318号公報 特開2002−153917号公報 特開2006−006693号公報 特開平8−192238号公報 「塑性と加工」Vol.45、No.524(2004)、715頁、
前述のように、従来、金属管を素材とし、冷間で塑性加工した加工品において、曲げ部における拡管量が多く、しかも、曲げ部の内側及び外側のいずれか一方には拡管部を有さない加工品は、存在しなかった。
そこで、本発明は、金属管を素材とし、冷間で塑性加工した加工品であって、(x)曲げ部を一箇所以上有し、かつ、(y)曲げ部における少なくとも1箇所において、金属管の断面が、1方向、及び、その方向に垂直な方向に、元の金属管に比べ大きく拡大されていて、しかも、(z)曲げ部の内側及び外側のいずれか一方において拡管されていないハイドロフォーム加工品を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)金属管を素材とし、冷間の塑性加工で一体的に加工するハイドロフォーム加工品の製造方法であって、第1ハイドロフォーム工程、曲げ加工工程、及び、第2ハイドロフォーム工程の3工程からなり、
第1ハイドロフォーム工程では、前記金属管の両端から軸押しして管軸方向に押し込み、同時に、内圧を高めて、管軸を含む断面上で、前記金属管の一部を、管軸を基準に1方向にだけ拡管して拡管部を形成し、前記管軸を含む断面上で、前記拡管部が最終製品の形状の周長の90〜100%の範囲の周長を有し、かつ、前記管軸を含む断面上で、前記拡管部の高さが、最終製品の形状の高さよりも大きい中間製品を成形し、
曲げ加工工程では、前記中間製品を前記中間製品の前記拡管部を含む位置で、前記菅軸を基準に前記拡管部の高さが最も大きい方向を外側にして曲げ部を形成し、
第2ハイドロフォーム工程では、前記曲げ加工工程後の中間製品を、下金型に装着し、前記曲げ部外側のハイドロフォーム金型の前記曲げ部の曲率半径を、(曲率半径の最大値−曲率半径の最小値)/曲率半径の最小値≦50%の範囲とした上金型で、前記拡管部の高さ方向に潰しながら型締めを行い、次いで、前記中間製品に、内圧を負荷するか、前記中間製品の管端部の管軸方向に押し込むかの少なくともいずれかを行い、
最終製品が、曲げ部を1箇所以上有し、前記曲げ部の少なくとも1箇所に、前記管軸に垂直な断面における曲げ外側に向かう方向、及び、その方向に垂直な方向の寸法が、前記金属管の端部の円相当径の1.35倍以上の拡管部を有し、かつ、前記曲げ部の内側前記曲げ加工工程での曲げ方向の曲率半径をほぼ一定とすることを特徴とするハイドロフォーム加工品の製造方法。
(2)金属管を素材とし、冷間の塑性加工で一体的に加工するハイドロフォーム加工品の製造方法であって、第1ハイドロフォーム工程、曲げ加工工程、及び、第2ハイドロフォーム工程の3工程からなり、
第1ハイドロフォーム工程では、前記金属管の両端から軸押しして管軸方向に押し込み、同時に、内圧を高めて、管軸を含む断面上で、前記金属管の一部を、管軸を基準に1方向にだけ拡管して拡管部を形成し、前記管軸を含む断面上で、前記拡管部が最終製品の形状の周長の90〜100%の範囲の周長を有し、かつ、前記管軸を含む断面上で、前記拡管部の高さが、最終製品の形状の高さよりも大きい中間製品を成形し、
曲げ加工工程では、前記中間製品を前記中間製品の前記拡管部を含む位置で、前記菅軸を基準に前記拡管部の高さが最も大きい方向を内側にして曲げ部を形成し、
第2ハイドロフォーム工程では、前記曲げ加工工程後の中間製品を、下金型に装着し、前記曲げ部外側のハイドロフォーム金型の前記曲げ部の曲率半径を、(曲率半径の最大値−曲率半径の最小値)/曲率半径の最小値≦50%の範囲とした上金型で、前記拡管部の高さ方向に潰しながら型締めを行い、次いで、前記中間製品に、内圧を負荷するか、前記中間製品の管端部の管軸方向に押し込むかの少なくともいずれかを行い、
最終製品が、曲げ部を1箇所以上有し、前記曲げ部の少なくとも1箇所に、前記管軸に垂直な断面における曲げ内側に向かう方向、及び、その方向に垂直な方向の寸法が、前記金属管の端部の円相当径の1.35倍以上の拡管部を有し、かつ、前記曲げ部の外側前記曲げ加工工程での曲げ方向の曲率半径をほぼ一定とすることを特徴とするハイドロフォーム加工品の製造方法。
本発明によれば、従来よりも、ハイドロフォームを適用し得る部品の範囲を拡大することができる。これにより、自動車の軽量化がさらに進み、燃費が向上し、地球温暖化の抑制にも貢献することができる。
図面に基づいて、本発明について説明する。
図2に、本発明のハイドロフォーム加工品(以下「本発明加工品」ということがある。)の一形状を示す。図2(a)に、拡管部21が、曲げ部20の管軸に対して外側に突出した本発明加工品の側面形状を示す。
なお、本発明において、曲げ部とは、管軸22の方向(X軸)が直線でない部分であり、図2(a)に示すように、断面が円形の断面A−Aと断面G−G(図(b)、参照)の間の部分を言う。
図2(b)に、曲げ部20の平面内における管軸方向をX軸とし、X軸に垂直な断面A−A、断面B−B、断面C−C、断面D−D、断面E−E、断面F−F、及び、断面G−G(図2(a)、参照)における断面形状を示す。
図2(b)に示すように、図2(a)に示す本発明加工品は、曲げ部20において、Y方向(図2(a)において、紙面内の方向)、及び、Z方向(図2(a)において、紙面に垂直な方向)に、大きく拡管されている。
ただし、Y方向においては、+の方向、即ち、曲げ部20の外側(以下「曲げ外側」ということがある。)に向かう方向にのみ拡管されている。
ここで、図3に、金属管の端部の円相当径(図2に示す形状の場合は、端部が素管(円形)のままであるので、直径)に対する、Y方向及びZ方向における断面寸法の比を示す。図から、Y方向及びZ方向の、少なくとも1箇所の断面において、素管の端部の円相当径の1.35倍以上に拡管されている(図2(a)中“21”、参照)ことが解る(前記(1)の発明、参照)。
拡管した金属管の端部は、通常、素管のままであるので、円形であるが、端部を、偏平に変形させて使用する場合もあるので、本発明においては、拡管した金属管の端部の円相当径を基準とする。
そして、本発明においては、「曲げ部の少なくとも1箇所に、管軸に垂直な断面における曲げ外側又は内側に向かう方向、及び、その方向に垂直な方向の寸法が、金属管の端部の円相当径の1.35倍以上の拡管部を有する」(要件(y1)及び(y2))と規定する。
曲げ部を有する金属管を、限定された空間内に配置するためには、所要の寸法比以上で拡管して、曲げ部を形成する必要がある。
本発明者らは、上記寸法比が1.35未満であると、金属管の曲がりが小さく、限定された空間内への配置が難しくなることを、実験的に確認し、拡管部の断面寸法を、“金属管の端部の円相当径の1.35倍以上”と規定した。
図2(a)及び(b)に示す本発明加工品は、拡管部21が、曲げ部20の管軸22に対して、外側(曲げ外側)に突出しているが、曲げ部20の内側(曲げ内側)は、曲率半径がほぼ同一の円弧状の形状を維持している。
本発明加工品においては、この点も特徴である(前記(1)の発明、参照)。
曲げ部の内側の形状は、曲率半径がほぼ同一の円弧状の形状の他、楕円形状、多次関数の曲線形状、複数の曲率半径の組合せ形状でもよい。
曲げ部の内側の形状において、(曲率半径の最大値−曲率半径の最小値)/曲率半径の最小値が50%以下であれば、自動車の下部構造等の限定された空間内に、本発明成形品を配置することが可能になる。
次に、図4に、拡管部が、曲げ部の管軸に対して内側に突出し、曲げ部の外側が、ほぼ同一の曲率半径の形状を維持している本発明加工品の一例を示す。
図4(a)に、拡管部21が、曲げ部20の管軸に対して内側に突出して曲がった本発明加工品の側面形状を示す。
図4(b)に、曲げ部20の平面内における管軸方向をX軸とし、X軸に垂直な断面A−A、断面B−B、断面C−C、断面D−D、断面E−E、断面F−F、及び、断面G−G(図4(a)、参照)における断面形状を示す。
図4(b)に示すように、図4(a)に示す本発明加工品は、曲げ部20において、Y方向(図4(a)において、紙面内の方向)、及び、Z方向(図4(a)において、紙面に垂直な方向)に、大きく拡管されている。
ただし、Y方向においては、−の方向、即ち、曲げ部20の内側(以下「曲げ内側」ということがある。)に向かう方向にのみ拡管されている。
ここで、図5に、金属素管の端部の円相当径(図4に示す形状の場合は、端部が素管(円形)のままであるので、直径)に対する、各方向における断面寸法の比を示す。
図から、Y方向及びZ方向とも、少なくとも1箇所の断面において、素管の端部の円相当径の1.35倍以上に拡管されている拡管部(図4(a)中“21”、参照)を有することが解る(前記(2)の発明、参照)。
なお、上記断面寸法比を、“素管の端部の円相当径の1.35倍以上”と規定する技術的理由は、前述したとおりである。
図4(a)に示す本発明加工品は、図2(a)に示す本発明加工品と対照的に、拡管部21が、曲げ部20の管軸22に対して、内側(曲げ内側)に突出しているが、曲げ部20の外側の形状は、曲率半径がほぼ同一の円弧状の形状を維持している。
本発明加工品においては、この点も特徴である(前記()の発明、参照)。
曲げ部の外側の形状は、曲率半径がほぼ同一の円弧状の形状の他、楕円形状、多次関数の曲線形状、複数の曲率半径の組合せ形状でもよい。
曲げ部の外側の形状において、(曲率半径の最大値−曲率半径の最小値)/曲率半径の最小値が50%以下であれば、自動車の下部構造等の限定された空間内に、本発明成形品を配置することが可能になる。
次に、図2又は図4に示す形状の本発明加工品を得る加工方法について、説明する。
加工方法は、基本的には、第1ハイドロフォーム工程、曲げ加工工程、及び、第2ハイドロフォーム工程の3工程からなる。
図6〜図9に基づいて、第1ハイドロフォーム工程を経た後の中間製品の形状の設計手順を説明する。
図6(a)に、最終製品の形状の側断面(X−Y面)形状を示し、図6(b)に、管軸Xに垂直な断面(断面A−A、断面B−B、断面C−C、断面D−D、断面E−E、断面F−F、及び、断面G−G)での断面(Y−Z面)形状を示す。
図7に、最終製品の形状の周長と、中間製品の形状の周長を示す。この点については、後述する。
図8に、第1ハイドロフォーム工程で、1方向にだけ拡管した中間製品の、断面A−A、断面B−B、断面C−C、断面D−D、断面E−E、断面F−F、及び、断面G−Gでの断面(Y−Z面)形状を示す。
図9(a)に、上記中間製品の、断面A−A、断面B−B、断面C−C、断面D−D、断面E−E、断面F−F、及び、断面G−Gでの側面(X−Y面)形状を示し、図9(b)に、上記中間品の上記断面での上面(X−Z面)形状を示す。
第1ハイドロフォーム工程では、1方向にだけ拡管する。図8及び図9に示す中間製品においては、Y方向にだけ拡管されている。
1方向にだけ拡管すると、変形が、純粋せん断変形に近い変形となり、大変形が可能になるので、本発明においては、1方向にだけ拡管する。
特許文献1に記載の従来法においても、大変形が可能となる理論を採用しているが、該従来法の第2ハイドロフォーム工程で、実際に、純粋せん断変形をさせることは難しい。
即ち、従来法においては、カウンタ等の対策を講じないと、加工初期に、張出し変形が起きて、割れが生じ易い。
それに対し、本発明においては、第2ハイドロフォーム工程での成形難度を下げるため、第1ハイドロフォーム工程で、最終の製品形状の周長とほぼ同程度、例えば、該周長の90%以上まで拡管する。この点が、従来法と異なる点である。
ただし、第1ハイドロフォーム工程で、最終製品の形状の周長の100%を超えて成形すると、部分的に材料余りが生じて、皺になる場合もあるので、第1ハイドロフォーム工程では、図7に示すように、最終製品の形状の周長の90〜100%の範囲で、中間製品の形状の周長を設定する。
この考えに基づいて、図8及び図9に示す中間製品の形状を設計することができる。
即ち、図8及び図9に示す中間製品の形状においては、断面のZ方向には拡管せず、Y方向の+側にのみ拡管し、その周長は、全ての断面において、最終製品の周長の90〜100%の範囲に設定してある。
最終製品の形状は、Y方向及びZ方向に拡管された形状であるので、中間製品の形状のY方向における高さは、最終製品の形状のY方向における高さよりも高い。
また、最終製品の上部と下部の形状は、平坦な形状、即ち、長方形でも構わないが、その場合は、コーナー部近傍で減肉し易くなるので、拡管率の大きな場合は、不利となる。
したがって、図8に示すように、最終製品の上部と下部の形状は、素管とほぼ同じ曲率半径(製品の曲率半径rと同じ曲率半径)の形状に設定することが好ましい。
具体的には、図10に示すハイドロフォーム加工(第1ハイドロフォーム工程での加工)で、図8及び図9に示す形状の中間製品7を製造する。
即ち、図10(a)に示すように、金属管1を、上金型2と下金型3の間に挟持し、図10(b)に示すように、両管端から軸押しパンチ4で矢印方向(管軸方向)に押し込んでいく。
このとき、同時に、軸押しパンチ4に設けた水装入口5から、水6を、金属管1の内部に送給して、内圧を高める。その結果、上金型2と下金型3の空洞部の形状に合致するように金属管1が加工され、中間製品7が得られる。
第1ハイドロフォーム工程での拡管率が大きい場合には、図11に示すように、上金型2にカウンターパンチ8を設け(図11(a)、参照)、カウンターパンチ8の後退で、金属管1のバーストや座屈を抑制しながら(図11(b)、参照)、ハイドロフォーム加工を行ってもよい。
直管部分の摺動抵抗が大きくて、拡管部に押し込みが伝わり難い場合は、図12に示すように、可動金型9を用いて(図12(a)、参照)、管端と可動金型を、軸押しパンチ10で同時に押し込み(図12(b)、参照)、ハイドロフォーム加工を行ってもよい。
ハイドロフォーム加工においては、Z方向に、拡管してはいけないという訳ではないので、図13(a)及び(b)、及び、図14(a)及び(b)に示すように、若干、Z方向に拡管しながら、Y方向に拡管してもよい。
図14(a)及び(b)には、Z方向に、素管径2rの1.05倍程度まで拡管する場合を示す。
中間製品7を、Z方向にも、若干、拡管して成形することにより、最終製品で、より拡管率の大きい本発明加工品を得ることができる。
第1ハイドロフォーム工程で加工した中間製品7に、例えば、図15(a)及び(b)に示すように、プレス(比較的簡易な、3点曲げ工法)で、曲げ加工を施す。
即ち、第1ハイドロフォーム工程で加工した中間製品7を、支点15の上に載置し(図15(a)、参照)、上方から、パンチ14を押し込んでいき(図15(b)、矢印、参照)、中間製品16を得る。
なお、曲げ加工の工法は、3点曲げ工法の他、回転引き曲げ工法や、プレス曲げ工法等、何れの方法でもよく、管材のサイズや、材質、曲げ半径等によって使い分ければよい。
パンチ14の曲率半径は、特に限定されないが、後出の図16で説明するハイドロフォーム金型(下側)の曲率半径と同様に、(曲率半径の最大値−曲率半径の最小値)/曲率半径の最小値≦50%の範囲とすれば、拡管部が、曲げ部の管軸に対して、外側に突出し、曲げ部の内側が、ほぼ同一の曲率半径からなる本発明加工品を得ることができる。
最後に、曲げ加工した中間製品16を、図16(a)〜(c)に示すように、第2ハイドロフォーム工程で加工する。即ち、中間製品16を、下金型12に装着し(図16(a)、参照)、上金型11で、Y方向に潰しながら型締めを行う(図16(b)、矢印、参照)。
この型締で、中間製品16は、Y方向に潰れる分、Z方向に断面が広がる。このとき、中間製品16の内部に内圧を負荷しながら型締めを行うと、皺発生を抑制することができる。
型締めを行った後は、通常のハイドロフォーム加工で、内圧を負荷し、及び/又は、軸方向に押し込み、金型形状に合致した最終製品13を得ることができる(図16(c)、参照)。
ハイドロフォーム金型(下側)の曲率半径を、(曲率半径の最大値−曲率半径の最小値)/曲率半径の最小値≦50%の範囲とすれば、前記(1)の発明における拡管部が、曲げ部の管軸に対して、外側に突出し、曲げ部の内側は、ほぼ同一の曲率半径からなる加工品を得ることができる。
このようにして、拡管部が、曲げ部の管軸方向の外側に突出した本発明加工品を得ることができる。
本発明加工品において、拡管部の突出は、曲げ外側でなく、曲げ内側でもよい。曲げ内側に、拡管部を突出させる場合、図17に示すように、支点15で中間製品7を支え、凹部23を設けたパンチ14で押圧して、曲げ加工を施す。
このとき、パンチ14や支点15で、拡管部を押し潰さないようにする。ただし、その後の第2ハイドロフォーム工程で支障のない範囲であれば、若干、拡管部が変形していても構わない。
図17に示す曲げ加工に続く第二ハイドロフォーム工程(図16に対応する工程、図示しなし)において、曲げ外側のハイドロフォーム金型の曲率半径を、(曲率半径の最大値−曲率半径の最小値)/曲率半径の最小値≦50%の範囲とすれば、前記(3)の本発明における拡管部が、曲げ部の管軸に対して、内側に突出し、曲げ部の外側が、ほぼ同一の曲率半径からなる本発明成形品を得ることができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。
本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
金属管として、外径63.5mm、肉厚2.3mm、全長400mmの鋼管を用いた。鋼種は、機械構造用炭素鋼鋼管のSTKM11Aである。
最終製品の形状を、図18に示す。図18(a)に、最終製品の側断面(X−Y面)形状を示し、図18(b)に、管軸X方向の断面(Y−Z面)形状を示す。
上記形状は、拡管率Mは、最大で2.00で、しかも、金属管の端部の円相当径(外径)63.5mmに対して断面のY方向寸法は、最大で1.67倍、Z方向寸法は、最大で2.17倍と、曲げ部が、大きく拡管される形状である。
周長Lの分布を、図19に示す。中間形状の周長(図中の太線)を、最終製品の周長と、その90%の周長(図中の破線)との間の範囲となるように設定した。そして、中間製品の断面形状を、設定した周長と合致するように設計した。
その際、図20に示すように、断面のZ方向の寸法は、素管の外径と同じ63.5mmとした。
そして、図21(a)に、金属管の側断面(X−Y面)形状を示し、図21(b)に、金属管の上面(X−Z面)形状を示すように、Y方向の寸法のみを、軸方向(X方向)において変化させた。
最終製品の形状は、Yの−側には拡管されない形状であるので、中間製品の形状も、Yの−側には拡管しないで、+側にのみ拡管する形状にした。
また、中間製品の断面上下(Y方向の+側及び−側)の形状は、素管と同じ曲率半径である31.75mmの半円形の形状にした。
上記設計の中間製品を得るため、全長400mmの金属管(鋼管)に、図22に示す可動金型装置で、ハイドロフォーム加工を施した。拡管率が、比較的大きいので、加工時の減肉を、極力抑制するため、可動金型を用いた。
図22(a)に示すように、可動金型9を備える第1ハイドロフォーム上金型2と第1ハイドロフォーム下金型との間に、金属管(鋼管)1を挟持し、図22(b)に示すように、軸押しパンチ10で、金属管1と可動金型9を、同時に、図中矢印方向に、両端で40mm押し込んだ。
このとき、軸押しパンチ10の水装入口5から水を送給し、金属管1の内圧を32MPaに維持した。
ハイドロフォーム加工の完了時に、金属管1は、全長が320mmとなり、設計通りの形状を有する中間製品(図18〜21、参照)を得ることができた。
次に、中間製品に、図23に示すように、3点曲げプレス加工方法で曲げ加工を施した。
図23(a)に示すように、間隔240mmの支点15の上に、第1ハイドロフォーム工程で得た中間製品7を載置し、図23(b)に示すよう、上方から、半径111mm、角度90°のパンチ14を押し込んで、中間製品7に曲げ加工を施した。
なお、支点15の頂部は、中間製品7を載置する中央部が、半径10mmの円形状に成形され、両側部が半径41.75mmの円形状に成形されている(図23(a)の左図、参照)。
また、パンチ14、及び、支点15の頂部には、曲げ加工時に、中間製品7が、極力潰れないように、中間製品7の直管部と同一の、半径31.75mmの半円形の溝が設けられている(図23(b)の左図、参照)。
上記曲げ加工で、曲げ部の外側に拡管部を有し、曲げ部の内側が、曲率半径111mmの曲面形状を有する中間製品16を得た。
次に、中間製品16に、図24に示すハイドロフォーム装置で、第2ハイドロフォーム加工を施した。図24(a)に示すように、中間製品16を、下金型12の上に載置し、図24(b)に示すように、上方から、上金型11を降下させて、型締めを行なった。下金型12の曲率半径は、111mmとした。
最後に、図24(c)に示すように、軸押しパンチ4を、両端から、20mm押し込むとともに、最大圧力180MPaの内圧を負荷した。
以上の一連の加工により、(i)曲げ部の拡管率が2.00で、しかも、(ii)金属管の端部の円相当径(外径)63.5mmに対し、断面のY方向寸法が、最大で1.67倍、Z方向寸法が、最大で2.17倍と、曲げ部の途中で大きく拡管された形状の拡管部を、曲げ部の管軸に対して外側に有し、(iii)曲げ部の内側が、同一の曲率半径からなる本発明加工品を製造することができた。
(実施例2)
曲げ部の管軸に対し、内側に拡管部を有する本発明加工品を製造した。実施例1で使用した金属管と同じ金属管を用い、実施例1で用いた金型と同一の金型を用いて、実施例1と同一の形状に加工(第1ハイドロフォーム工程での加工した)。
次ぎの曲げ加工工程では、拡管部を、曲げ内側に位置させて、曲げ加工を行った。その際、拡管部が潰れないように、曲げ加工用のパンチに、拡管部が入る凹部を設けて(図示しなし)、曲げ加工を行った。
最後に、拡管部を潰しながら、第2ハイドロフォーム金型で型締めを行って、ハイドロフォーム加工を行った。最終製品の曲げ部の外側となるハイドロフォーム金型の曲率半径は、中央部で111mm、中央部から左右45度の位置で165mmとし、その範囲外では、直線状に連続的に変化するようにした。
その結果、曲げ部の管軸に対して、内側に拡管され、曲げ部の外側は、ほぼ同一の曲率半径からなる本発明加工品を得ることができた。なお、拡管部の大きさは、実施例1の場合と同様で、金属管の端部の円相当径(外径)63.5mmに対して、断面のY方向寸法は、最大で1.67倍、Z方向寸法は、最大で2.17倍である。
前述したように、本発明によれば、従来よりも、ハイドロフォームを適用し得る部品の範囲を拡大することができる。これにより、自動車の軽量化がさらに進み、燃費が向上し、地球温暖化の抑制にも貢献することができる。よって、本発明は、自動車産業において利用可能性が高いものである。
ハイドロフォーム技術の進展を示す図である。 本発明のハイドロフォーム加工品(本発明加工品)の一形状を示す図である。図2(a)は、側面形状を示し、図2(b)は、断面形状を示す。 金属管の端部の円相当径に対する、Y方向及びZ方向における断面寸法の比を示す図である。 本発明加工品の別の形状を示す図である。図4(a)は、側面形状を示し、図4(b)は、断面形状を示す。 金属管の端部の円相当径に対する、Y方向及びZ方向における断面寸法の比を示す図である。 中間製品の形状の設計を説明する図である。図6(a)は、最終製品の形状の側断面(X−Y面)形状を示し、図6(b)は、最終製品の、管軸Xに垂直な断面での断面(Y−Z面)形状を示す。 は、中間製品の形状の設計において、最終製品の形状の周長と、中間製品の形状の周長を示す図である。 中間製品の形状の設計において、1方向にだけ拡管した中間製品の断面(Y−Z面)形状を示す図である。 中間製品の形状の設計において、1方向にだけ拡管した中間製品の形状を示す図である。図9(a)は、側面(X−Y面)形状を示し、図9(b)は、上面(X−Z面)形状を示す。 ハイドロフォーム加工(第1ハイドロフォーム工程での加工)の態様を示す図である。図10(a)は、金属管を、上金型と下金型の間に挟持した態様を示し、図10(b)は、両管端から、軸押しパンチを矢印方向に押し込んでいく態様を示す。 別のハイドロフォーム加工(第1ハイドロフォーム工程での加工)の態様を示す図である。図11(a)は、金属管を、上金型及び上金型に設けたカウンターパンチと下金型の間に挟持した態様を示し、図11(b)は、両管端から軸押しパンチを矢印方向に押し込んでいき、カウンターパンチが後退する態様を示す。 別のハイドロフォーム加工(第1ハイドロフォーム工程での加工)の態様を示す図である。図12(a)は、金属管を、可動金型と下金型の間に挟持した態様を示し、図12(b)は、管端と可動金型を、軸押しパンチで矢印方向に押し込んでいく態様を示す。 別のハイドロフォーム加工(第1ハイドロフォーム工程での加工)の態様を示す図である。図13(a)は、金属管を、上金型と下金型の間に挟持した態様を示し、図13(b)は、両管端から、軸押しパンチを矢印方向に押し込んでいく態様を示す。 別のハイドロフォーム加工(第1ハイドロフォーム工程での加工)の態様を示す図である。図14(a)は、金属管を、上金型と下金型の間に挟持した態様を示し、図14(b)は、両管端から、軸押しパンチを矢印方向に押し込んでいく態様を示す。 第1ハイドロフォーム工程で加工して得た中間製品に3点曲げ加工を施す態様を示す図である。図15(a)は、中間製品を支点で支えている態様を示し、図15(b)は、中間製品にパンチを押し込んで、曲げ加工を施す態様を示す。 曲げ部を有する中間製品にハイドロフォーム加工(第2ハイドロフォーム工程での加工)を施す態様を示す図である。図16(a)は、中間製品を下金型に装着した態様を示し、図16(b)は、Y方向に潰しながら型締を行う態様を示し、図16(c)は、内圧を負荷し、及び/又は、軸方向に押し込み最終製品を得る態様を示す。 拡管部が曲げ部の管軸に対して内側に突出している場合の曲げ加工の態様を示す図である。図17(a)は、中間製品を支点で支えている態様を示し、図17(b)は、中間製品に、凹部を設けたパンチを押圧して、曲げ加工を施す態様を示す。 中間製品の形状の設計に用いる最終製品の形状を示す図である。図18(a)は、最終製品の側断面(X−Y面)形状を示し、図18(b)は、管軸X方向の断面(Y−Z面)形状を示す。 中間製品の形状の設計において、最終製品の形状の周長と、中間製品の形状の周長を示す図である。 中間製品の形状の設計において、1方向にだけ拡管した中間製品の断面(Y−Z面)形状を示す図である。 中間製品の形状の設計において、1方向にだけ拡管した中間製品の形状を示す図である。図21(a)は、側面(X−Y面)形状を示し、図21(b)は、上面(X−Z面)形状を示す。 可動金型装置を用いて、ハイドロフォーム加工(第1ハイドロフォーム工程での加工)を行なう態様を示す図である。図22(a)は、ハイドロフォーム上金型と下金型との間に、金属管(鋼管)を挟持した態様を示し、図22(b)は、軸押しパンチを押し込んで、ハイドロフォーム加工を行なう態様を示す図である。 中間製品に、3点曲げプレス加工を施す態様を示す図である。図23(a)は、支点の上に中間製品を載置した態様を示し、図23(b)は、上方からパンチを押し込んで、曲げ加工を行なう態様を示す。 中間製品に、第2ハイドロフォーム加工を施す態様を示す図である。図24(a)は、中間製品を下金型の上に載置した態様を示し、図24(b)は、上方から上金型を降下させて、型締めを行なう態様を示し、図24(c)は、軸押しパンチを両端から押し込むとともに、内圧を負荷する態様を示す。

Claims (2)

  1. 金属管を素材とし、冷間の塑性加工で一体的に加工するハイドロフォーム加工品の製造方法であって、第1ハイドロフォーム工程、曲げ加工工程、及び、第2ハイドロフォーム工程の3工程からなり、
    第1ハイドロフォーム工程では、前記金属管の両端から軸押しして管軸方向に押し込み、同時に、内圧を高めて、管軸を含む断面上で、前記金属管の一部を、管軸を基準に1方向にだけ拡管して拡管部を形成し、前記管軸を含む断面上で、前記拡管部が最終製品の形状の周長の90〜100%の範囲の周長を有し、かつ、前記管軸を含む断面上で、前記拡管部の高さが、最終製品の形状の高さよりも大きい中間製品を成形し、
    曲げ加工工程では、前記中間製品を前記中間製品の前記拡管部を含む位置で、前記菅軸を基準に前記拡管部の高さが最も大きい方向を外側にして曲げ部を形成し、
    第2ハイドロフォーム工程では、前記曲げ加工工程後の中間製品を、下金型に装着し、前記曲げ部外側のハイドロフォーム金型の前記曲げ部の曲率半径を、(曲率半径の最大値−曲率半径の最小値)/曲率半径の最小値≦50%の範囲とした上金型で、前記拡管部の高さ方向に潰しながら型締めを行い、次いで、前記中間製品に、内圧を負荷するか、前記中間製品の管端部の管軸方向に押し込むかの少なくともいずれかを行い、
    最終製品が、曲げ部を1箇所以上有し、前記曲げ部の少なくとも1箇所に、前記管軸に垂直な断面における曲げ外側に向かう方向、及び、その方向に垂直な方向の寸法が、前記金属管の端部の円相当径の1.35倍以上の拡管部を有し、かつ、前記曲げ部の内側前記曲げ加工工程での曲げ方向の曲率半径をほぼ一定とすることを特徴とするハイドロフォーム加工品の製造方法。
  2. 金属管を素材とし、冷間の塑性加工で一体的に加工するハイドロフォーム加工品の製造方法であって、第1ハイドロフォーム工程、曲げ加工工程、及び、第2ハイドロフォーム工程の3工程からなり、
    第1ハイドロフォーム工程では、前記金属管の両端から軸押しして管軸方向に押し込み、同時に、内圧を高めて、管軸を含む断面上で、前記金属管の一部を、管軸を基準に1方向にだけ拡管して拡管部を形成し、前記管軸を含む断面上で、前記拡管部が最終製品の形状の周長の90〜100%の範囲の周長を有し、かつ、前記管軸を含む断面上で、前記拡管部の高さが、最終製品の形状の高さよりも大きい中間製品を成形し、
    曲げ加工工程では、前記中間製品を前記中間製品の前記拡管部を含む位置で、前記菅軸を基準に前記拡管部の高さが最も大きい方向を内側にして曲げ部を形成し、
    第2ハイドロフォーム工程では、前記曲げ加工工程後の中間製品を、下金型に装着し、前記曲げ部外側のハイドロフォーム金型の前記曲げ部の曲率半径を、(曲率半径の最大値−曲率半径の最小値)/曲率半径の最小値≦50%の範囲とした上金型で、前記拡管部の高さ方向に潰しながら型締めを行い、次いで、前記中間製品に、内圧を負荷するか、前記中間製品の管端部の管軸方向に押し込むかの少なくともいずれかを行い、
    最終製品が、曲げ部を1箇所以上有し、前記曲げ部の少なくとも1箇所に、前記管軸に垂直な断面における曲げ内側に向かう方向、及び、その方向に垂直な方向の寸法が、前記金属管の端部の円相当径の1.35倍以上の拡管部を有し、かつ、前記曲げ部の外側前記曲げ加工工程での曲げ方向の曲率半径をほぼ一定とすることを特徴とするハイドロフォーム加工品の製造方法。
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