JP3719928B2 - バルジ加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属管に内圧と軸押し力とを作用させて1つ又は2つ以上の枝管をバルジ張出し成形するバルジ加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図11に示すように、片側側方に張出用空洞部1を有するバルジ加工用の金型2内に金属管をセットし、その両端を軸押し型3により軸押ししつつ内圧を作用させ、T字状の枝管をバルジ張出し成形する方法は従来知られている。しかしこの方法では金属管にしわや割れを発生させることなくT字状の枝管を張出し成形できる高さが低く、張り出し高さを金属管の直径以上とすることは困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、金属管にしわや割れを発生させることなく、枝管を高く張出し成形することができるバルジ加工方法を提供するためになされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明のバルジ加工方法は、片側側方に張出用空洞部を有するバルジ加工用の金型内に、屈曲または湾曲した曲げ加工部を有する金属管を、その曲げ加工部を張出用空洞部の方向に向け、その反対面を金型内面から浮かせた状態でセットし、金属管内に内圧を作用させてこの曲げ加工部を張出用空洞部内に膨出させるとともに前記反対面を引き延ばし、次に張出用空洞部を形成する金型を移動させて張出用空洞部の幅を縮小しつつ軸押し型により金属管に軸圧縮を加え、金属管を張出用空洞部内にバルジ張出し成形することを特徴とするものである。
【0005】
なお、張出用空洞部内に設けたカウンター型を金属管の膨出部の頂点に接触させ、所定圧で押さえながらバルジ張出し成形を行わせることが好ましく、張出用洞部を形成する金型を、軸押し型と連動させて移動させることもできる。屈曲または湾曲した曲げ加工部は、バルジ加工用の金型内において成形しても、予めバルジ加工用の金型外で成形しても、予めバルジ加工用の金型外で成形し、更にバルジ加工用の金型内において成形してもよい。また金型の張出用空洞部及び金属管の曲げ加工部の数を複数とし、金属管の両端を軸圧縮することにより複数の枝管を同時にバルジ張出し成形することもできる。枝管の個数が2の場合には、張出用洞部を形成する金型の移動速度をVとし、カウンター型の移動速度をV/2としてバルジ張出し成形することができる。
【0006】
本発明によれば、屈曲または湾曲した曲げ加工部を有する金属管を用い、この曲げ加工部を張出用空洞部内に膨出させたうえ張出用空洞部を形成する金型を移動させて張出用空洞部の幅を縮小しつつバルジ張出し成形を行うことにより、金属管の直径の数倍の高さにまで枝管を張出し成形することが可能となる。また、本発明の方法により加工された完成品は肉厚のばらつきが小さく、偏肉が少なくなる利点がある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しつつ本発明の実施形態を示す。
図1、図2において、10は内部に金属管Pを収納する直線状の空洞部11を有するバルジ加工用の金型(固定型)であり、その左右両側には従来と同様に液圧供給孔を備えた軸押し型12が配置されている。このバルジ加工用の金型10の片側側方(図面では上方)には、金型10と平行を保ちつつ相互に近接・離隔するように移動することができる一対の金型13、14が配置されている。これらの金型13、14によって、バルジ加工用の金型10の側方には枝管を成形するための張出用空洞部15が形成されている。そこでこれらの金型13、14を張出用空洞部15を形成する金型と呼ぶ。なお、16は張出用空洞部15内に設けたカウンター型である。このカウンター型16は図示を略したシリンダにより進退されるものである。
【0008】
本発明では、図1に示すようにくの字状に湾曲した曲げ加工部20を有する金属管Pを用いる。このような曲げ加工部20は外部において予め形成しておいてもよいが、直線状の金属管Pをバルジ加工用の金型10の内部に装入し、軸押し型12によって軽い内圧と強い軸押し力とを加えることにより湾曲した曲げ加工部20を形成してもよい。さらに、予めバルジ加工用の金型外で成形し更にバルジ加工用の金型内において成形してもよい。いずれの場合にも、金属管Pの曲げ加工部20は金型13、14の間に形成される張出用空洞部15の方向に向けられる。またその反対面の凹部側は、図1に示されるように金型内面から浮かせた状態で空洞部11内にセットされる。この段階では張出用空洞部15の幅は広く、またカウンター型16は金属管Pの曲げ加工部20と軽く接触するか、あるいはやや離れた位置にある。なお金属管Pの肉厚はこの段階ではほぼ均一である。
【0009】
次に、図3に示すように軸押し型12を停止させたまま、金属管Pの内圧を高めて金属管Pを膨らませる。その結果、金属管Pの曲げ加工部20は張出用空洞部15内に膨出するとともに、その反対面21(図面では下側の面)も金型10と密着するまで膨出される。なお張出用空洞部15内への膨出高さはカウンター型16により規制する。
【0010】
このとき、金属管Pの曲げ加工部20の反対面21は引き伸ばされるので肉厚が減少するが、膨出部22の肉厚はさほど変化しない。この図3の段階における張出用空洞部15内への膨出高さは、金属管Pの直径Dの0.2〜1.5倍、また、張出用空洞部15の幅は金属管Pの直径Dの2〜6倍程度が好ましい。この倍数は、金属管Pの材質や加工形状等に応じて上記の範囲で適宜設定することができる。
【0011】
次に、図4に示すように張出用空洞部を形成する金型13、14を内側に移動させて張出用空洞部15の幅を縮小する。またこれと同時に軸押し型12により金属管Pに軸圧縮と内圧とを加える。すると金属管Pの張出用空洞部15内への膨出部22は横方向から押されて幅が狭くなり、張出用空洞部15内に向かって押し上げられる。しかも金属管Pの両端には軸圧縮と内圧とが加えられて金属管Pの両端部の材料をも張出用空洞部15内に向かって移動させるため、従来のような高い内圧を必要とせず、金型内で加工中に金属管Pが不安定破壊することもない。従ってカウンター型16内で支持されていない張出部22が異様な変形を生じて金属管Pに亀裂や破壊を起こすこともなく、図5に示すように張出部22は張出用空洞部15内に高くバルジ張出し成形される。実施例に示すように、本発明方法により達成可能な張出高さは、金属管Pの直径の数倍に達することが確認された。
【0012】
この図4から図5に到る工程では、カウンター型16を常に金属管Pの膨出部22の頂点に接触させ、所定圧で押さえながらバルジ張出し成形を行わせることが好ましい。もしカウンター型16を無くした場合には、膨出部22の頂点が自由に膨張して肉厚が薄くなったり割れてしまう可能性があるが、カウンター型16で押さえながらバルジ張出し成形を行わせれば、摩擦によりこの部分では金属流動が防止され、肉厚が減少することがない。本発明者の実験によれば、軸押し型12から金属管Pの内部に導入される圧力をカウンター型16のシリンダ内に導入することができ、シリンダ面積を調整することにより、金属管Pに作用する内圧の9割程度の圧力でカウンター型16を膨出部22の頂点に押し当てながら徐々に後退させることが好ましい。
【0013】
このように、本発明では張出用空洞部15を形成する金型13、14の移動と軸押し型12による軸押しとを同時に行うことができる。そこでこれらの両金型を連動させ、同時に等距離を移動させるようにしてもよい。
【0014】
この図4から図5に至る工程においては、金属管Pの膨出部22が張出用空洞部15内に高くバルジ張出し成形されると同時に、金属管Pの全長が軸押しにより短縮される。前記したように、図3の段階では金属管Pの曲げ加工部20の反対面21は引き伸ばされて肉厚が減少していたのであるが、軸押しにより反対面21の肉厚は増加して元に戻る。このため、本発明の方法により加工された完成品は肉厚のばらつきが小さく、偏肉が少なくなる利点がある。
【0015】
次に図6に示す実施形態のように、金属管Pの曲げ加工部20を屈曲した形状としてもよい。この実施形態の金属管Pは90度に屈曲された曲げ加工部20を持ち、張出用空洞部15を縮小するように金型13は図面上の上方向に、金型14は左方向に移動させながらバルジ加工を行う。この場合にも前記したと同様に、従来のような高い内圧が必要ないので加工中に金属管Pが不安定破壊することがない。従ってカウンター型16内で支持されていない張出部22が異様な変形を生じて金属管Pに亀裂や破壊を起こすこともなく、張出部22は張出用空洞部15内に高くバルジ張出し成形される。また膨出時には、両側の金型13、14に沿って枝管が高くなるので、図示のごとき張出部22が形成される。
【0016】
上記したように、本発明のバルジ加工方法によれば、膨出部の初期成形時の内圧を低圧にすることができるので、金属管Pに割れやしわや偏肉を発生させることなく、枝管を高く張出し成形することができる。しかも本発明は上記したように枝管が1個の場合のみならず、2個以上の場合にも適用することができる。
【0017】
すなわち図7から図9に示すように、張出用空洞部15及びくの字状の曲げ加工部20の数を複数とした場合にも、前記と同様に金属管Pの両端を一対の軸押し軸型12で圧縮することにより、複数の枝管を同時にバルジ張出し成形することが可能である。この場合には、張出用空洞部15を形成する金型13、14の中央に固定型17が設けられ、両側の金型13、14を固定型17に向けて移動させることによって張出用空洞部15の幅を縮小させる。また各カウンター型16は常に各張出用空洞部15の中心にあるように移動させる必要があるが、その他の点は図1から図5に示した工程と同様である。
【0018】
なお、金型13、14の固定型17に対する移動速度をVとしたとき、カウンター型16の移動速度はV/2とすればよい。また金型13を固定型とし金型14を移動速度をVで移動させる場合には、金型13に近い側のカウンター型16の移動速度をV/4、金型14に近い側のカウンター型16の移動速度を3V/4とすればよい。この場合には、固定型17もV/2の移動速度で金型13に向かって移動させることとなる。枝管の個数が3以上の場合にも同様な考え方に基づいて設定することで成形が可能となる。
【0019】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
先ず実施形態に示した金型の内部に、外径(d)70mm、肉厚2mm、長さ500mmの金属管(材質はSTKM11A)をセットし、軸押し型を移動させて20000Nの軸押し力を加えて管端をシールした。次に張出用空洞部の幅を金属管の直径の4倍(4d)にセットし、カウンター型を1.5dの高さに固定した。そして軸押し型を通じて金属管の内部に20MPaの内圧を加えながら軸押し型を移動させ、金属管をくの字状に曲げ加工し、図1の状態とした。このとき反対面は金型内面から浮いた状態となる。次に内圧を35MPaまで上昇させ、図3のように金属管の曲げ加工部を張出用空洞部内に膨出させた。(一次成形)
【0020】
次にカウンター型を駆動するシリンダー内に成形圧力を導入して膨出部の中央を成形圧力に同調した力で押圧しつつ、軸押し型と張出用空洞部を形成する金型とを同速度で移動させた。なお成形圧力は35MPaの一定値に維持した。張出用空洞部の幅がdとなるまで片側1.5dずつ軸押し型と張出用空洞部を形成する金型とを移動させた結果、図10に示すように3dの高さまでT字状の枝をバルジ張出し成形(二次成形)することができた。
また、図10に示すA部(膨出部の反対側)及びB部(膨出部)及びC部(張出枝部)の肉厚は表1に示すとおりであり、本発明方法によれば偏肉の少ない成形品を得ることができることが確認された。
【0021】
【表1】
Figure 0003719928
【0022】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば割れやしわを発生させることなく、従来よりもはるかに高く枝管をバルジ張出し成形することができ、また2つ以上の枝管を同時にバルジ張出し成形することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による成形開始時の状態を示す断面図である。
【図2】金型の斜視図である。
【図3】曲げ加工部を張出用空洞部内に膨出させた状態を示す断面図である。
【図4】張出用空洞部の幅を縮小する状態を示す断面図である。
【図5】バルジ張出し成形完了時の状態を示す断面図である。
【図6】他の実施形態を示す工程説明図である。
【図7】2つのT字状の枝を同時にバルジ張出し成形する最初の工程を示す断面図である。
【図8】曲げ加工部を張出用空洞部内に膨出させた状態を示す断面図である。
【図9】2つの枝管を同時にバルジ張出し成形した状態を示す断面図である。
【図10】実施例による成形品の正面図である。
【図11】従来技術を示す斜視図である。
【符号の説明】
P 金属管
1 従来技術における張出用空洞部
2 従来技術におけるバルジ加工用の金型
3 従来技術における軸押し型
10 バルジ加工用の金型
11 空洞部
12 軸押し型
13 張出用空洞部を形成する金型
14 張出用空洞部を形成する金型
15 張出用空洞部
16 カウンター型
17 固定型
20 くの字状の曲げ加工部
21 曲げ加工部の反対面
22 膨出部

Claims (8)

  1. 片側側方に張出用空洞部を有するバルジ加工用の金型内に、屈曲または湾曲した曲げ加工部を有する金属管を、その曲げ加工部を張出用空洞部の方向に向け、その反対面を金型内面から浮かせた状態でセットし、金属管内に内圧を作用させてこの曲げ加工部を張出用空洞部内に膨出させるとともに前記反対面を引き延ばし、次に張出用空洞部を形成する金型を移動させて張出用空洞部の幅を縮小しつつ軸押し型により金属管に軸圧縮を加え、金属管を張出用空洞部内にバルジ張出し成形することを特徴とするバルジ加工方法。
  2. 張出用空洞部内に設けたカウンター型を金属管の膨出部の頂点に接触させ、所定圧で押さえながらバルジ張出し成形を行わせることを特徴とする請求項1記載のバルジ加工方法。
  3. 張出用洞部を形成する金型を、軸押し型と連動させて移動させる請求項1または2記載のバルジ加工方法。
  4. 屈曲または湾曲した曲げ加工部を、バルジ加工用の金型内において成形する請求項1〜3の何れかに記載のバルジ加工方法。
  5. 屈曲または湾曲した曲げ加工部を、予めバルジ加工用の金型外で成形する請求項1〜3の何れかに記載のバルジ加工方法。
  6. 屈曲または湾曲した曲げ加工部を、予めバルジ加工用の金型外で成形し、更にバルジ加工用の金型内において成形する請求項1または2に記載のバルジ加工方法。
  7. 金型の張出用空洞部及び金属管の曲げ加工部の数を複数とし、金属管の両端を軸圧縮することにより複数の枝管を同時にバルジ張出し成形する請求項2〜6の何れかに記載のバルジ加工方法。
  8. 張出用洞部を形成する金型の移動速度をVとし、カウンター型の移動速度をV/2として、2つの枝管を同時にバルジ張出し成形する請求項7に記載のバルジ加工方法。
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