JP5440680B2 - ハイドロフォーム装置 - Google Patents

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本発明は、金属管を金型に装着して当該金型を型締めした後、金属管内部に内圧と管軸方向の押し力を負荷することにより所定形状に成形する、ハイドロフォーム装置に関するものであり、特に、管軸と交差する方向に枝管を有する管を製造する装置に関する。
ハイドロフォーム技術は、自動車分野をはじめとする機械要素の部品数を削減し、低コスト化および軽量化を実現する手段として着目されており、近年は、ハイドロフォーム適用部品の増加と市場規模の拡大が顕著である。
市場規模の拡大に伴い、ハイドロフォーム適用部品は、自動車分野に限らず、二輪車や建築機械、さらには、構造物の分野にも広がっており、適用範囲の拡大と共に、ハイドロフォーム成形が困難な形状への適用も増加の傾向にある。例えば、枝管部を有するT字型の管を製造するT成形では、枝管部の張出し高さが大きい形状、枝根元部の直管部から枝管部への曲率(以後、枝根元部曲率と称す)が大きい形状、枝管部の断面形状が複雑な形状等が求められている。
枝管部の張出し高さを大きく取るためには、直管部の座屈を防止しつつ軸押しを積極的に行うべく、可動金型とカウンタを用いる必要がある。これは、軸押しと共に、長手方向に分割した金型を軸方向に移動させて、直管部の座屈を防止すると共に、枝管頭頂部にはカウンタを設けて、軸押しと内圧を付加しながらカウンタを引き、枝管部の頭頂で著しい減肉が生じないように成形を進めるものである(例えば、特許文献1、参照)。
特開2004−017107号公報
しかしながら、枝根元部曲率を大きくすると、金型とカウンタとで間隙が生じ、素管材料が間隙に入り込み座屈し、成形不能となる。他方、間隙が生じないように、カウンタを一定量だけ引いておくと、枝管部の頭頂において減肉が顕著となり、枝管部の張出し高さを大きくすることが困難である。
例えば、特許文献1に開示されたハイドロフォーム成形方法において、枝管部は、軸押しと内圧の付加により、直管部より材料を流入させることで成形が完了する。このため、枝管部は、材料流入を阻害するような複雑形状をとることはできず、枝管部の成形と同時に、枝管部へ局部的な縮径や拡径を施すことは困難である。枝管部に、これらの成形を施すためには、ハイドロフォーム成形を多工程で実施する必要がある。
本発明は、カウンタを用いることなく枝張出し高さを大きくすることが可能で、枝根元部曲率が大きく、かつ、枝管部に複雑形状を持つハイドロフォーム成形を可能とする装置および加工方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の要旨とするところは、下記の通りである。
(1) 管軸方向に2分割され、かつ、管軸と直角方向に複数層積層された、駆動手段により駆動されてハイドロフォーム加工中に管軸方向に後退及び前進が可能な可動金型と、該可動金型を外側から保持する固定金型と、金属管内部に液体を供給して内圧を付与する内圧付与手段と、管軸方向に移動可能な軸押しパンチからなることを特徴とするハイドロフォーム装置。
(2) 前記固定金型が分割構造の金型であることを特徴とする前記(1)記載のハイドロフォーム装置。
(3) 前記(1)または(2)記載のハイドロフォーム装置を用いて、全ての可動金型を前進させた状態で可動金型内に金属管を装着し、該可動金型を固定金型により型締めし、軸押しパンチを用いて金属管に管軸方向の押し力を負荷しながら、上記可動金型の第1層から最外層までを順に後退させて、枝管部を有するように拡管することを特徴とするハイドロフォーム加工方法。
ただし、可動金型の第1層は、金属管に近い側をいい、可動金型の最外層は、金属管から最も遠い側をいい、該最外層が第2層である場合も含む。
(4) 前記(1)または(2)記載のハイドロフォーム装置を用いて、可動金型の第1層を後退させ、かつ、第2層から最外層までの可動金型を前進させた状態で、可動金型内に金属管を装着し、該可動金型を固定金型により型締めし、軸押しパンチを用いて金属管に管軸方向の押し力を負荷しながら、上記可動金型の第1層を固定したまま、または、前進させ、かつ、上記可動金型の第2層から最外層までを順次後退させて、枝管部を有するように拡管することを特徴とするハイドロフォーム加工方法。
ただし、可動金型の第1層は、金属管に近い側をいい、可動金型の最外層は、金属管から最も遠い側をいい、該最外層が第2層である場合も含む。
(5) 前記(1)または(2)記載のハイドロフォーム装置を用いて、可動金型の第1層を後退させ、かつ、第2層から最外層までの可動金型を前進させた状態で、可動金型内に金属管を装着し、該可動金型を固定金型により型締めし、軸押しパンチを用いて金属管に管軸方向の押し力を負荷しながら、上記可動金型の第1層を固定したまま、または、前進させ、かつ、上記可動金型の第2層から最外層までを所定の位置へ順次後退させ、その後、上記可動金型の第2層から最外層までの少なくとも1層以上を所定の位置から前進または後退させて、拡径部または縮径部を伴う枝管部を有するように拡管することを特徴とするハイドロフォーム加工方法。
ただし、可動金型の第1層は、金属管に近い側をいい、可動金型の最外層は、金属管から最も遠い側をいい、該最外層が第2層である場合も含む。
(6) 管軸方向の断面で、前記枝管部がくびれを有するように拡管することを特徴とする(3)〜(5)のいずれか1項に記載のハイドロフォーム加工方法。
本発明によれば、従来は成形が困難であった枝高さの大きなハイドロフォーム部品を、カウンタを用いずに成形することが可能になる。また、本発明によれば、枝根元部曲率が大きな成形をすることが可能になる。さらに、本発明によれば、枝管部の断面を縮径または拡径することが可能になる。
これらのことにより、ハイドロフォーム技術の適用部品が拡大され、自動車をはじめとする産業機械および構造用部材への適用とそれに伴う軽量化・低コスト化・低資源化が進むので、本発明は、省資源と省エネルギに貢献できる。
本発明の加工方法を説明する図である。 本発明の別の加工方法を説明する図である。 本発明の別の加工方法を説明する図である。(a)は、第2層から最外層の可動金型を所定の位置へ順次後退させる態様を示し、(b)は、少なくとも1層の可動金型を、所定の位置から前進させて成形する態様を示し、(c)は、少なくとも1層の可動金型を、所定の位置から後退させて成形する態様を示す。 本発明の実施例を説明する図である。(a)は、可動金型内に金属管を装着した態様を示し、(b)は、金属管を成形する態様を示す。 図4に続く成形態様を説明する図である。(c)は、成形を続行する態様を示し、(d)は、さらに、成形を続行する態様を示す。 図5に続く成形態様を説明する図である。(e)は、成形を続行する態様を示し、(f)は、さらに成形を続行する態様を示し、(g)は、枝管部に、さらに、成形を施す態様を示す。
図1を用いて、前記(1)および(2)の本発明に係る装置例を具体的に説明する。
本発明に係る装置例は、管軸方向に2分割され、かつ、管軸と直角方向に積層された可動金型1a(第1層)、1b(第2層)、1c(第3層)、・・・、1n(最外層)と、
該可動金型を外側から保持する固定金型2a、2bと、金属管4内部に液体を供給して内圧を付与する内圧付与手段(図示しない)と、管軸方向に移動可能な軸押しパンチ3a、3bからなることを特徴とする。
図1では、可動金型はn層(nは整数)となっているが、nは2以上の整数であれば、後述するように、可動金型を積層、かつ、軸方向に後退または前進自在とすることにより、枝管部の縮径、または拡径をすることが可能になる。可動金型の駆動手段は、油圧、機械式、その他でも、特に限定するものではない。
また、固定金型については、2分割された態様を示したが、固定金型は筒型等の一体に成形されたものでもよい(前記(1)の本発明)。また、2分割だけでなく、周方向に3以上に分割されたものでもよく、固定金型の変形、割れ防止の観点から好ましい(前記(2)の本発明)。
次に、図1を用いて、前記(3)の本発明のハイドロフォーム加工方法(前記(3)の加工方法)を具体的に説明する。
前記(3)の加工方法は、前記(1)または(2)の本発明に係るハイドロフォーム装置を用いて、全ての可動金型1a、1b、1c、・・・1nを前進させ、図1に示すように、第1層から第n層の可動金型を突き合わした状態で、可動金型内に金属管4を装着し、可動金型を固定金型2a、2bにより型締めし、軸押しパンチ3a、3bを用いて、金属管4に管軸方向の押し力を負荷しながら、可動金型の第1層(1a)から最外層(1n)までを順に後退させて、枝管部を有するように拡管することを特徴とする。
各層の可動金型の移動量(後退量)を調整することにより、枝管部の管径を同一に成形することも、枝管部の一部を拡径または縮径した形状に成形することも可能となる(前記(6)の本発明)。
次に、図2を用いて、前記(4)の本発明のハイドロフォーム加工方法(前記(4)の加工方法)を具体的に説明する。
前記(4)の加工方法は、前記(1)または(2)の本発明に係るハイドロフォーム装置を用いて、可動金型の第1層(1a)を後退させ、かつ、第2層(1b)から最外層(1n)までの可動金型(1b、・・・、1n)を前進させて、図2に示すように、第2層から第n層までの可動金型(1b、・・・、1n)が突き合わされた状態で、可動金型内に金属管4を装着し、可動金型を固定金型2a、2bにより型締めし、軸押しパンチ3a、3bを用いて、金属管4に管軸方向の押し力を負荷しながら、可動金型の第1層(1a)を固定したまま、または、前進させ、かつ、第2層から最外層までの可動金型を順次後退させて、枝管部を有するように拡管することを特徴とする。
第1層〜第n層の可動金型の移動量(前進量または後退量)を調整することにより、枝管部の管径を同一に成形することも、枝管部の一部を拡径または縮径した形状に成形することも可能となる(前記(6)の本発明)。
図2では、第1層の可動金型1aを前進させているが、枝管部の管径と等しくなるように可動金型1aを後退させて、可動金型内に金属管4を装着すれば、可動金型1aを固定したまま、第2層の可動金型1b以降を、順次、後退させてもよい。
次に、図3を用いて、前記(5)の本発明のハイドロフォーム加工方法(前記(5)の加工方法)を具体的に説明する。
前記(5)の加工方法は、前記(1)または(2)の本発明に係るハイドロフォーム装置を用いて、可動金型の第1層(1a)を後退させ、かつ、第2層(1b)から最外層(1n)までの可動金型を前進させた状態で、可動金型内に金属管を装着し、該可動金型を固定金型により型締めし、軸押しパンチを用いて金属管に管軸方向の押し力を負荷しながら、上記可動金型の第1層(1a)を固定したまま、または、前進させ、かつ、上記可動金型の第2層(1b)から最外層(1n)までを所定の位置へ順次後退させることを特徴とする(図3(a)、参照)。
次に、可動金型の第2層から最外層までの少なくとも1層以上を、所定の位置から前進させて、縮径部を伴う枝管部を有するように拡管する(図3(b)、参照)か、または、第2層(1b)から最外層(1n)までの少なくとも1層以上を、所定の位置から後退させて、拡径部を伴う枝管部を有するように拡管する(図3(c)、参照)。
図3(b)および(c)では、第1層の可動金型1aを前進させているが、枝管部の管径と等しくなるように、可動金型1aの初期位置を規定し、可動金型内に金属管4を装着すれば、可動金型1aを固定したまま、可動金型の第2層から第n層の少なくとも1層以上を前進または後退させてもよい。このような操作により、拡径部または縮径部を有する枝管部を成形することが可能になる(前記(6)の本発明)。
また、第1層と第2層以降の可動金型の曲率半径が一体となるように加工することにより、第1層と第2層以降の前進および/または後退量を調整すれば、枝根元部曲率を変化させることも可能になる。
(実施例1)
図4〜6に、本発明の実施例を示す。
ハイドロフォーム装置は、管軸方向に2分割され、かつ、管軸と直角方向に積層され、油圧により駆動されて、管軸方向に後退及び前進が可能な可動金型1a、1b、1c、1dと、これらの可動金型を外側から保持するための上下に2分割された固定金型2a、2bと、金属管4の内部に水を供給して内圧を付与する内圧付与手段(図示しない)と、管軸方向に移動可能な軸押しパンチ3a、3bからなる。
金属管4は、外径63.5mm、肉厚2.0mm、全長500mmの鋼管で、鋼種は、機械構造用炭素鋼鋼管のSTKM13Bである。枝管部の断面は、1辺の長さが63.5mmの正方形状で、角Rは3mm、高さが50mmである。可動金型1aの高さは5mm、可動金型1b〜1dの高さは、それぞれ15mmである。枝根元部曲率Rは15mmである。
まず、図4(a)に示すように、全ての可動金型1a、1b、1c、1dを前進させて、2分割の可動金型が突き合わされた状態で、可動金型内に金属管4を装着して型締めする。可動金型は、枝管部における角Rが干渉しない位置を前進限とする。
次に、図4(b)に示すように、軸押しパンチ3a,3bを介して金属管4の内部に水を送り込んで充填してから、軸押しパンチ3a、3bを前進させながら、可動金型1aを、両側の軸押しパンチ3a、3bの方向に後退させつつ、金属管4の管端をシールする。
続けて、可動金型1aを枝管部の幅寸法63.5mmの位置まで後退させつつ、軸押しパンチ3a、3bを10mm前進させて、金属管4に管軸方向の押し力を負荷しながら、内圧を12MPaから35MPaまで増加させる。金属管4は、可動金型1aの間隙に流入して成形され、枝管部の頭頂が、可動金型の第2層1bに接触し、可動金型1a、1b、下側固定金型2b、軸押しパンチ3a、3bから構成される形状に成形される。
さらに、図5(c)に示すように、固定金型2a、2bを型締めしたまま、可動金型1bを後退させつつ、軸押しパンチ3a,3bを30mm前進させて、金属管4に管軸方向の押し力を負荷しながら、内圧を20MPaから40MPaまで増加させ、可動金型1bを枝管部の幅寸法63.5mmの位置まで後退させる。
金属管4は、可動金型1bの後退に伴う間隙に流入して成形され、枝管部の頭頂が、可動金型の第3層1cに接触する。可動金型1aを後退させた段階での内圧は35MPaであるが、そのままの内圧で可動金型1bを後退させると、金属管4が、可動金型1bの後退に伴う間隙に一気に流入して、バーストの可能性がある。このため、可動金型1bを後退させる前に、軸押しパンチ3a,3bの前進に伴うしわが発生しない程度に、内圧を下げるとよい。
同様に、図5(d)に示すように、軸押しパンチ3a,3bを30mm前進させながら、内圧を23MPaから45MPaまで増加させ、可動金型1cを、枝管部の幅寸法63.5mmの位置まで後退させる。
その後、図6(e)に示すように、軸押しパンチ3a,3bを30mm前進させながら、内圧を26MPaから50MPaまで増加させ、可動金型1dを、枝管部の幅寸法63.5mmの位置まで後退させる。
最終的には、図6(f)に示すように、可動金型1a〜1dが、全て、枝管部の幅寸法63.5mmの位置まで後退した状態とし、軸押しパンチ3a,3bを固定したまま、内圧を50MPaから100MPaまで増加させ、金属管4における枝管部の頭頂が、上側固定金型2aに接触し、側面が、可動金型1a〜1dに接触し、直管部が、可動金型1aと下側固定金型2bに接触し、管端が、軸押しポンチ3a,3bに接触した状態で成形を完了する。
以上により、直管部の直径が63.5mm、全長が300mmで、枝張出し形状が1辺63.5mmの正方形、高さが50mmのハイドロフォーム成形品が得られた。肉厚は、最小1.7mm、最大3.2mmである。
なお、本発明を用いずに枝管部の空隙を最初から有する固定金型を用いてハイドロフォーム加工を施すと、枝管の頭頂部から割れが生じるか、枝管部の根元で座屈が生じて、良好なハイドロフォーム品を得ることができなかった。
(実施例2)
金属管4は、外径が63.5mm、肉厚が2.0mm、全長が500mmの鋼管で、鋼種は、機械構造用炭素鋼鋼管のSTKM13Bである。枝管部の断面は、1辺の長さが63.5mmの正方形状で、高さ50mmとし、可動金型1aの高さは5mm、可動金型1b〜1dの高さは、それぞれ、15mmの4層構造である。可動金型1a、1b、1c、1dは、それぞれ、管軸方向に2分割されている。枝根元部曲率Rは15mmである。
はじめに、可動金型1aを枝管部の幅寸法63.5mmの位置まで後退させて、その他の可動金型1b、1c、1dは、それぞれ突き合わされた状態で金属管を型締めした以外は、実施例1と同じ方法で、図6(f)に示す枝張出し高さ50mmのハイドロフォーム成形品を製作した。
次に、図6(g)に示すように、可動金型1cを、管軸方向に12mm前進させまたは8mm後退させ、軸押しパンチ3a、3bを40mm前進させながら液体の圧力を高めて、金属管4を、上側固定金型2a、下側固定金型2b、可動金型1a〜1dに密着するように拡管した。
ただし、図6(g)は、左半面が可動金型1cを管軸方向に12mm前進させたとき、右半面が管軸方向に8mm後退させたときを示し、それぞれ軸対称形状をなす。
以上により、図6(g)に示すように、枝張出し高さ50mmの枝管部に、幅15mmで、深さ12mmの縮管部を有するハイドロフォーム成形品(図6(g)左半面)、および、幅15mmで高さ8mmの拡管部を有するハイドロフォーム成形品(図6(g)右半面)を得ることができた。
1 可動金型
1a 可動金型の第1層
1b 可動金型の第2層
1c 可動金型の第3層
1n 可動金型の第n層かつ最外層
2a、2b 固定金型
3a、3b 軸押しパンチ
4 金属管

Claims (2)

  1. 管軸方向に2分割され、かつ、管軸と直角方向に複数層積層された、駆動手段により駆動されてハイドロフォーム加工中に管軸方向に後退及び前進が可能な可動金型と、該可動金型を外側から保持する固定金型と、金属管内部に液体を供給して内圧を付与する内圧付与手段と、管軸方向に移動可能な軸押しパンチからなることを特徴とするハイドロフォーム装置。
  2. 前記固定金型が分割構造の金型であることを特徴とする請求項1記載のハイドロフォーム装置。
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