明 細 書
押釦スィッチ用弾性部材
技術分野
[0001] 本発明は、電子機器等の入力操作を行う押釦スィッチ用の弾性部材に関する。
背景技術
[0002] 従来、電子機器等の入力操作を行う押釦スィッチは、キートップの下方に配置され る弾性部材を備える。この弾性部材は、押釦を押圧する際に操作者に対して弾性抵 抗カを与え、さらに押釦が一定ストローク量だけ変位した際にクリック感を発生させて いる。このような従来の弾性部材は、図 9に示すように、ベース部 3と、該ベース部 3か ら上方に傾斜して延びる連結部 2と、該連結部 2によってベース部の上方に支持され る略円板形状の押圧部 1とを備えている。押圧部 1の下面には、その下方に配置され るスィッチ回路基板のスィッチ要素(図示せず)に接触することによって、スィッチ回 路の開閉を行う突出部、 V、わゆる押し子 4が設けられて 、る。
[0003] このような弾性部材の弾性変形を利用した押釦スィッチにおいて、操作者が押釦ス イッチを押下した際に感じる触感は、釦押下時に操作者が押釦スィッチに加える荷 重(=操作者が押釦スィッチ力 受ける荷重)と、釦が押し下げられる距離、すなわち ストローク量との関係によって特徴付けられる。図 1に従来の弾性部材を利用した押 釦スィッチの荷重—ストローク量の特性を示す。横軸が前記ストローク量を示し、縦軸 が荷重を示している。釦の押圧が開始されると、実線 Aで示されるように、ストローク量 が増大するにつれ、弾性部材が橈み、弾性部材に加わる荷重も増大する。ストローク 量 Sで荷重は最大値に達する。その時点で弾性部材の連結部 2が座屈し始めるた め、その後は、実線 Bで示されるように、荷重は減少し始め、ストローク量 Sで荷重は
2 最小となる。通常は、この実線 Bで示される状態の間において、操作者は押下したこ とを感知できる感触、所謂「クリック感」を得ることができる。また、荷重が最小になった 時点において、弾性部材に設けられた押し子 4が、該弹性部材の下方に配置される スィッチ回路基板に設けられたスィッチ要素(図示せず)と接触することによって、スィ ツチ回路の開閉が行なわれる。その後、操作者はより確実な釦操作を行うために、若
干の間、さらに釦を押し下げようとするため、実線 Cで示すように、荷重は増大する。
[0004] このような押釦スィッチにおいては、用途に応じて、操作時の様々な触感が求めら れている。そのような所望の触感を得るためには、例えば、図 1に示した荷重 スト口 ーク量特性において、(1)クリック感が発生する前において最大荷重に達するまでの ストローク(ピークストローク)量 Sを短くすること、(2)弾性部材の突出部がスィッチ要 素と接触した後、さらに押圧を加えた場合において、反発荷重の上昇が緩やかであ ること、すなわち、実線 Cの傾きが緩やかであることなどが要求される。
[0005] 要求(1)を実現する方法として、筐体等によって弾性部材を予め圧縮した状態 (以 後、予備圧縮と呼ぶ)で押釦スィッチに組み込むことが挙げられる。また要求(2)を実 現する方法として、例えば、特許文献 1は、図 10に示すような弾性部材を開示してい る。この弾性部材は、回路基板に支持されるベース部 3と、該ベース部 3に連続する 略ドーム状の連結部 2と、該連結部 2の頂部に連続する環状凸部 13と、環状凸部 13 の内側に連続する略円板状の薄肉押圧部 1とを備える。押圧部 1の下面の中央には 下方に突出して回路を開閉する押し子 4が形成されている。これらの構成要素はゴム 弾性体で一体的に形成されている。係る弾性部材によれば、接点接続後、さらなる 押圧を受けると薄肉な押圧部 1が弾性変形するため、反発荷重の過剰な上昇を抑え ることがでさる。
[0006] し力しながら、特許文献 1に記載のように、押圧を受ける頂部に環状凸部を有する 弾性部材において、さらに要求(1)を満たそうとする場合、そのような弾性部材を予 備圧縮した状態で押釦スィッチに組み込むと、初期状態で既に環状凸部が潰れてし まい押圧部の形状が崩れることがある。そのため、弾性部材において意図したスト口 ーク量 Sが得られず、ピークストロークの調整が困難になり得る。さらには接点接続 後に弾性変形することを期待した環状凸部が既に潰れているため、所望の反発荷重 の上昇が得られな 、ことがある。
[0007] 従って、押釦スィッチにおいて、操作時の触感に対する様々な要求に応えるために は、図 1に示す押釦スィッチの荷重 ストローク量の特性において、ピークストローク 量に影響を与えることなぐ図 1の実線 Cで表される荷重上昇率を調整することが可 能であると有利である。
特許文献 1:特開平 11― 306908号公報
発明の開示
[0008] よって本発明は、弾性部材の突出部がスィッチ要素と接触した後、さらに押圧を続 けた場合において、反発荷重の上昇が緩やかである押釦スィッチ用弾性部材を提供 することを目的とする。また、本発明は、押釦スィッチ用弾性部材において、ピークス トロークの調整を容易にすることも目的とする。
[0009] 上記問題点を解決するために、本発明の押釦スィッチ用弾性部材は、ベース部と、 該ベース部から延びる連結部と、該連結部によってベース部の上方に支持される押 圧部と、前記押圧部から下方へ突出する突出部とを備える。この押釦スィッチ用弾性 部材において、前記突出部は中空である。
[0010] 本発明の一実施形態において、押釦スィッチ用弾性部材の前記押圧部は、前記突 出部の中空部分力 連続する開口を有し、それらの中空部分と開口とは一定の横断 面形状を有する。
[0011] 一実施形態において、前記突出部が略円筒形状を有する場合、その突出部の中 空部分の内径は、同突出部の外径の好ましくは 40〜90%、より好ましくは 40〜80 %である。
[0012] 一実施形態にお!、て、前記ベース部は環状で、かつ平板状をなし、前記連結部は ベース部の内周縁から上方に傾斜して延びる円錐台状をなし、前記押圧部は略円 板形状を有する。
[0013] 一実施形態において、前記ベース部は離間して配置された一対の角柱状のベース 部からなり、前記連結部は、前記一対のベース部の対向する上縁からそれぞれ上方 に傾斜して延びる薄肉平板形状を有し、前記押圧部は矩形の平板形状を有する。さ らに、前記突出部の中空部分は、同突出部の側面において開口していてもよい。
[0014] 一実施形態において、押釦スィッチ用弾性部材は、前記突出部の下面に導電部を 備えてもよい。
押釦スィッチ用の弾性部材はゴム状弾性体カゝら形成され得る。
[0015] 一実施形態にお!、て、前記ゴム状弾性体はシリコーンゴムであってもよ!/、。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1]従来の押釦スィッチ用弾性部材を利用した押釦スィッチの荷重 ストローク量 の特性を示すグラフ。
[図 2]本発明の第一実施形態の弾性部材を示す斜視図。
[図 3]本発明の第一実施形態の弾性部材を示す縦断面図。
[図 4]本発明の第一実施形態の弾性部材を組み込んだ押釦スィッチ構造の縦断面 図。
[図 5]本発明の第一実施形態の弾性部材を組み込んだ押釦スィッチ構造の縦断面 図。
[図 6]本発明の第一実施形態の弾性部材を組み込んだ押釦スィッチ構造の縦断面 図。
[図 7]本発明の第二実施形態の弾性部材を示す斜視図。
[図 8]本発明の第三実施形態の弾性部材を示す斜視図。
[図 9]従来の弾性部材を示す縦断面図。
[図 10]別の従来の弾性部材を示す縦断面図。
[図 11] (a)実施例 1の弾性部材を用いた押釦スィッチ構造における荷重—ストローク 量の特性を示すグラフ、(b)比較例 1の弾性部材を用いた押釦スィッチ構造における 荷重—ストローク量の特性を示すグラフ、 (c)比較例 2の弾性部材を用いた押釦スィ ツチ構造における荷重—ストローク量の特性を示すグラフ、 (d)比較例 3の弾性部材 を用いた押釦スィッチ構造における荷重 ストローク量の特性を示すグラフ。
[図 12] (a)実施例 2の弾性部材を用いた押釦スィッチ構造における荷重—ストローク 量の特性を示すグラフ、 (b)実施例 3の弾性部材を用いた押釦スィッチ構造における 荷重—ストローク量の特性を示すグラフ、 (c)実施例 4の弾性部材を用いた押釦スィ ツチ構造における荷重 ストローク量の特性を示すグラフ。
発明を実施するための最良の形態
[0017] (第一実施形態)
図 2および図 3に本発明の第一実施形態である弾性部材 100の斜視図および縦断 面図をそれぞれ示す。
[0018] 弾性部材 100は、環状かつ平板状のベース部 3と、該ベース部 3の内周縁から上
方に傾斜して延びる薄肉の連結部 2と、該連結部 2によってベース部 3の上方に支持 される略円板形状の押圧部 1とを備える。本実施形態においては、連結部 2は、図 2 に示すように、上方に向力つて収束する逆漏斗形状(円錐台状)を有している。押圧 部 1には、該押圧部 1の下面から下方へ突出する突出部、すなわち押し子 4が設けら れている。押し子 4の下面 4aはベース部 3の下面 3aより上方に位置する。押し子 4の 内部には中空部 5が形成されており、押圧部 1には押し子 4の中空部 5から連続する 開口 6が形成されている。押し子 4の中空部 5と押圧部 1の開口 6とは、図 3に示すよう に、同一かつ均一な内径を有するとともに、押圧部 1の上面 laにおいて開口する有 底の孔を形成している。
[0019] 図 4に、第一実施形態の弾性部材 100を用いた押釦スィッチ構造の例を示す。該 押釦スィッチ構造は、キートップ 8、筐体 9、弾性部材 100、及び、回路基板 10を備え る。筐体 9は、該押釦スィッチ構造が設けられる電子装置の筐体の一部である。キー トップ 8は、略円柱形状を有する本体部 8aと、操作時に操作者よつて押圧される押圧 面 8bとを備える。本体部 8aには、その外周面の中央よりやや下方の位置力 径方向 外方に突出するフランジ 8cが形成されている。筐体 9には、キートップ 8の形状に対 応する形状を有する開口 12が設けられている。開口 12の内径はキートップ 8の本体 部 8aの外径より大きぐフランジ 8cの外径より小さい。
[0020] キートップ 8は、筐体 9の開口 12を介して押圧面 8bが筐体 9の上面より突出するよう に配置される。
キートップ 8の下方には、弾性部材 100が配置されている。本実施形態の弾性部材 100においては、さらに押し子 4の下面 4aに導電部 7が形成されている。この導電部 7は、例えば、押し子 4の先端に導電インクを塗布することによって形成することがで きる。弾性部材 100の下方には回路基板 10が配置されている。回路基板 10上には 、該回路基板 10上に設けられた電気回路を開閉するためのスィッチ要素として、一 対の電気接点 11a, l ibが設けられている。弾性部材 100の導電部 7と回路基板 10 の電気接点 11a, l ibとは、互いに対向するように配置されている。
[0021] この押釦スィッチ構造において、キートップ 8が押下されると、弾性部材 100の押圧 部 1が押圧され、連結部 2が弾性変形し、やがて、連結部 2は図 5に示すように座屈
する。それに伴って、押し子 4が下方に変位し、同図に示すように、押し子 4の下面 4a に形成された導電部 7が電気接点 11a, l ibと接触する。これにより、電気接点 11a, l ibが導通し、回路基板 10上の電気回路の開閉が行われる。電気接点 11a, l ibの 導通後、キートップ 8がさらに押し下げられると、図 6に示すように、押し子 4の内部が 中空であるため、押し子 4の外周壁 4bは大きく屈曲する。このように本実施形態の弹 性部材 100では、押し子 4の外周壁 4bが屈曲することにより、押し子内に中空部を有 さな 、従来の弾性部材に比べて、弾性部材 100が操作者に与える反発荷重の上昇 力 、さくなる。つまり、弾性部材 100では、図 1において、接点接続後の荷重—スト口 ーク量の特性を示す実線 Cの傾きが緩ゃカゝとなる。これにより、操作者により柔軟な 触感を与えることが可能となる。また、弾性部材 100においては、そのような押し子 4 が電気接点 1 la, 1 lbと接触した後における荷重の上昇率(図 1における実線 Cの傾 き)を、押し子 4の外周壁 4bの厚さ、すなわち、押し子 4の外径 D2に対する中空部 5 の内径 D1の比率、を変化させることによって調整することが可能である。
[0022] 本発明の弾性部材 100はゴム弾性を有する材料 (ゴム状弾性体)から形成される。
そのような材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴ ムなどの合成ゴムのほ力 スチレン系、ォレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系等の 熱可塑性エラストマ一を用いることができる。上記の材料の中でも、圧縮永久ひずみ 力 S小さく耐久性に優れることから、シリコーンゴムが好ましい。ゴム弾性を得るために、 弹'性咅材 100を形成する材料の硬度 ίま、 30〜70 (JIS— K6253 (IS07619— 1に 対応)、タイプ Aデュロメータによる測定値)であることが好ましい。さらに弾性部材 10 0の下方に光源を設けて押釦スィッチを照光する場合には、弾性部材 100は透光性 を有することが好ましい。
[0023] 上記実施形態の弾性部材 100において、図 3に示す押し子 4の中空部 5の内径 D1 は、押し子 4の外径 D2の 40〜90%であることが好ましい。より好ましくは、押し子 4の 中空部 5の内径 D1は、押し子 4の外径 D2の 40〜80%である。押し子 4の中空部 5 の内径 D1が、押し子 4の外径 D2の 40%未満であると押し子 4が上記のように屈曲し 難くなる。一方、 90%を越えると押し子 4が軟ら力べなり過ぎる。したがって、いずれの 場合においても所望の荷重特性を得ることができなくなる。また、押し子 4の中空部 5
の内径 Dlが、押し子 4の外径 D2の 90%を越えると、押し子 4の耐久性を損ねるので 好ましくない。
[0024] 第 1実施形態の弾性部材 100では、押し子 4が中空部 5を有するため、中実である 場合に比べて、押圧により押し子 4が屈曲し易くなる。そのため、押し子 4が電気接点 11a, l ibに接触した後における反発荷重の上昇が小さくなる。これにより、より柔軟 な触感を操作者に与えることができる。
[0025] 弾性部材 100において、押し子 4の外径 D2に対する中空部 5の内径 D1の比率を 変化させることによって、押し子 4が電気接点 11a, l ibに接触した後の荷重の上昇 率(図 1の実線 Cの傾き)を変化させることができる。これにより、操作者に与える触感 を要求に応じて調整することが可能となる。
[0026] 弾性部材 100において、押し子 4の中空部 5の内径 D1が、押し子 4の外径 D2の 40 〜90%の範囲にある場合、上記のような押し子 4が電気接点 11a, l ibに接触した 後における所望の荷重特性が得られるとともに、押し子 4の耐久性を確保することが できる。
[0027] 弾性部材 100は、柔軟な触感を実現するために、従来の弾性部材のように押圧部 1の上面に環状凸部を有さない。このため、弾性部材 100を予備圧縮した状態で押 釦スィッチ構造を構成する場合、予備圧縮による環状凸部の変形を考慮する必要が ないため、ピークストロークの調整が容易になる。カロえて、弾性部材 100では、ピーク ストローク量 Sにほとんど影響を与えることなぐ上記のように、押し子 4が電気接点 1 la, l ibに接触した後の荷重の上昇率を、押し子 4の外径 D2に対する中空部 5の内 径 D1の比率を変化させることによって調整することができる。
[0028] 弾性部材 100において、押圧部 1に押し子 4の中空部 5から連続する開口 6が形成 されている場合、押圧により押し子 4が圧縮された際に中空部 5内の空気を外部に容 易に逃がすことができる。また、製造の際、押し子 4の中空構造を成形し易くなる。
[0029] (第二実施形態)
図 7に本発明の第二実施形態である弾性部材 200の斜視図を示す。
弾性部材 200は、離間して配置された一対の角柱状のベース部 3と、これらの 2つ のベース部 3の対向する上縁からそれぞれ上方に傾斜して延びる薄肉平板状の連
結部 2と、該連結部 2によってベース部 3の上方に支持される矩形平板状の押圧部 1 とを備える。押圧部 1には、該押圧部 1の下面力 下方へ突出する略角柱形の押し子 4が設けられて!/、る。押し子 4の下面 4aはベース部 3の下面 3aより上方に位置する。 押し子 4には、該押し子 4の両側面において開口する中空部 5が形成されている。
[0030] (第三実施形態)
図 8に本発明の第三実施形態である弾性部材 300の斜視図を示す。
弾性部材 300は、押圧部 1に押し子 4の中空部 5から連続して、押圧部 1の上面 la で開口する開口 6が形成されている以外は、弾性部材 200と同様の構造を有する。 押し子 4の中空部 5と押圧部 1の開口 6とは、一定の横断面形状を有する。これら押圧 部 1の開口 6と押し子 4の中空部 5とによって、図 8に示すように、押圧部 1および押し 子 4は全体として U字型を為すように形成されて!ヽる。
[0031] 弾性部材 200, 300が押釦スィッチ構造に組み込まれて用いられる場合、図 6の弹 性部材 100と同様に、弾性部材 200, 300の押圧部 1が押圧されると、連結部 2が弹 性変形して座屈し、押し子 4の下面 4aが、弾性部材 200, 300の下方に設けられた 回路基板のスィッチ要素(図示せず)に接触することにより、回路基板の電気回路の 開閉が行われる。その後、押圧部 1がさらに押圧されると、押し子 4の外側壁 4bが屈 曲する。これにより、操作者により柔軟な触感を与えることができる。
[0032] 第二および第三実施形態の弾性部材 200, 300においては、図 7および図 8に示 す押し子 4の幅 W2に対する中空部 5の幅 W1の比率を変化させることによって、図 1 における実線 Cの傾き、すなわち荷重の上昇率を変化させることができる。
[0033] 押し子 4の中空部 5の幅 W1は、押し子 4の幅 W2の 40〜90%であることが好ましい 。押し子 4の中空部 5の幅 W1が、押し子 4の幅 W2の 40%未満であると押し子 4が潰 れ難くなり、一方、 90%を越えると押し子 4が軟らかくなりすぎ、いずれも所望の荷重 特性を得ることができなくなる。また、押し子 4の中空部 5の幅 Wl、押し子 4の幅 W2 の 90%を越えると、押し子 4の耐久性を損ねるので好ましくない。
[0034] 第二および第三実施形態の弾性部材 200, 300は、第一実施形態の弾性部材 10 0に用いられるのと同様の材料カゝら形成され得る。また、弾性部材 200, 300を形成 する材料の硬度は、第一実施形態の場合と同様に、 30〜70 (JIS— K6253 (IS076
19-1に対応)、タイプ Aデュロメータによる測定値)であることが好ましい。さらに弾性 部材 200, 300の下方に光源を設けて押釦スィッチを照光する場合には、弾性部材 200, 300は透光性を有することが好ましい。
[0035] 第二および第三実施形態の弾性部材 200, 300は、第一実施形態の弾性部材 10 0と同様に押釦スィッチ構造に組み込まれるとともに、同様の効果を奏することができ る。
さらに、第二および第三実施形態の弾性部材 200, 300は、連結部 2およびベース 部 3が、押圧部 1の側方のみに形成されているため、該部材の設置面積を縮小できる とともに、他の部品により近接して配置することが可能である。
[0036] 上述した実施形態は以下のように変更することも可能である。
第一実施形態において、押圧部 1に押し子 4の中空部 5から連続する開口 6が形成 されていなくてもよい。その場合、押圧により押し子 4が圧縮される際に中空部 5内の 空気を逃がすための排気口を、押圧部 1または押し子 4の少なくともいずれかに設け ることが好ましい。
[0037] 第一実施形態において、ベース部 3の形状は特に限定されるものではなぐ任意の 形状を有することができる。
第二実施形態において、押し子 4の中空部 5は、押し子 4の側面において開口を有 さなくてもよい。
[0038] 第二および第三実施形態において、押し子 4の下面 4aに導電部を設けてもよい。
第一乃至第三実施形態の弾性部材 100, 200, 300を押釦スィッチ構造に組み込 む場合、弾性部材 100, 200, 300を、筐体 9、キートップ 8及び回路基板 10により、 キートップ 8の押下方向に沿って予め圧縮された状態で挟持するように構成してもよ い。このような構成とすることにより、ピークストロークの大きさを所望に調整することが できる。
[0039] 第一乃至第三実施形態の弾性部材 100, 200, 300を組み込む押釦スィッチ構造 において、回路基板 10上に配置されるスィッチ要素として、感圧型のスィッチ素子を 用いることもできる。この場合には、弾性部材 100, 200, 300の押し子 4の下面 4aに 導電部 7を形成する必要がなくなる。
実施例
[0040] (実施例 1)
シリコーンゴム(「SH861U」東レダウコーユングシリコーン社製)を用いて、図 2およ び図 3に示した弾性部材 100を作成した。実施例 1の弾性部材 100において、押し 子 4の中空部 5の内径 Dl、押し子の外径 D2、および押圧部 1の外径 D3の比は、 0. 60 : 1 : 1. 6となるように設定した。従って、押し子の外径 D2および押圧部 1の外径 D 3に対する押し子 4の中空部 5の内径 D1の比率は表 1に示す通りである。
[0041] (実施例 2〜4)
実施例 1と同一の材料を用いて、実施例 1の弾性部材 100の形状に対して、押し子 4の外径 D2および押圧部 1の外径 D3は変更せずに、押し子 4の中空部 5の内径 D1 のみをそれぞれ変更することにより、実施例 2〜4の弾性部材を作成した。実施例 2〜 4の弾性部材において、押し子 4の外径 D2および押圧部 1の外径 D3に対する押し 子 4の中空部 5の内径 D1の比率は、それぞれ表 1に記載の通りに設定した。
[0042] (比較例 1)
シリコーンゴム(「SH861U」東レダウコーユングシリコーン社製)を用いて、図 9に示 す従来の弾性部材を作成した。この弾性部材は、実施例 1〜4の弾性部材 100とほ ぼ同じ形状を有するが、押し子 4および押圧部 1が中実に形成されている。比較例 1 においては、押し子の外径 D2、および押圧部 1の外径 D3の比は、 1 : 1. 6となるよう に ¾ £した。
[0043] (比較例 2)
シリコーンゴム(「SH861U」東レダウコーユングシリコーン社製)を用いて、図 10に 示す従来の弾性部材を作成した。この弾性部材は、押圧部 1の上面 laの周縁に環 状の環状凸部 13が設けられている以外は比較例 1と同様の構造を有する。比較例 2 においては、環状凸部 13の内径 D4、押し子 4の外径 D2、および押圧部 1の外径 D3 の比は、 1. 2 : 1 : 1. 6となるように設定した。従って、押圧部 1の外径 D3に対する環 状凸部 13の内径 D4の比率は表 1に示す通りである。
[0044] (比較例 3)
シリコーンゴム(「SH861U」東レダウコーユングシリコーン社製)を用いて、図 10に
示す従来の弾性部材を作成した。この弾性部材は、押圧部 1の上面 laの周縁に環 状の環状凸部 13が設けられている以外は比較例 1と同様の構造を有する。比較例 3 においては、環状凸部 13の内径 D4、押し子 4の外径 D2、および押圧部 1の外径 D3 の比は、 1. 28 : 1 : 1. 6となるように設定した。従って、押圧部 1の外径 D3に対する環 状凸部 13の内径 D4の比率は表 1に示す通りである。
[0045] (比較例 4および 5)
実施例 1と同一の材料を用いて、実施例 1の弾性部材 100の形状に対して、押し子 4の外径 D2および押圧部 1の外径 D3は変更せずに、押し子 4の中空部 5の内径 D1 のみをそれぞれ変更することにより、比較例 4および 5の弾性部材を作成した。比較 例 4および 5の弾性部材において、押し子 4の外径 D2および押圧部 1の外径 D3に 対する押し子 4の中空部 5の内径 D1の比率は、それぞれ表 1に記載の通りに設定し た。
[0046] 実施例 1〜4、並びに比較例 1〜5の各弾性部材を用いて、図 4に示したのと同様な 押釦スィッチ構造を作成し、各押釦スィッチ構造を押下した際の荷重 ストローク量 の特性を測定した。このとき、各弾性体の押し子の下面が、スィッチ回路基板上の接 点に接触するまでのストローク量 (ONストローク)が約 lmmとなるように、各弾性部材 を予備圧縮することにより調整した。例として、図 l l (a)〜(d)に実施例 1および比較 例 1〜3の押釦スィッチ構造の荷重 ストローク量の特性を示すヒステリシス曲線を示 し、図 12 (a)〜(c)に実施例 2〜4の押釦スィッチ構造の前記特性を示すヒステリシス 曲線を示す。尚、各ヒステリシス曲線において、上側の曲線 C1は釦を押下する際の 特性を示し、下側の曲線 C2は押下操作を止めた後、釦が元の位置に戻る際の特性 を示している。また、ピークストローク量 Sおよび押し子の下面がスィッチ回路基板の 接点に接触した時点から、さらに 0. 5mm押し込まれたところまでの荷重上昇率を表 1に示す。この荷重上昇率は、図 11〜図 12に例示した荷重—ストローク量の各曲線 C1から下記式によって求めた。
[0047] 荷重上昇率 = (ストローク量 1. 5mm時の荷重 ストローク量 1. Omm時の荷重) Z 0. 5mm
[0048] [表 1]
押圧部外径
押し子外径 D2に D3
に対する中空部 ヒ° -クスト口-ク量
対する中空部 荷重上昇率 内径 D1または璟
内径 D1の比率 s, (N/mm) 状凹部内径 (mm)
D4の比率
実施例 1 60% 37. 5% 5. 84 実施例 2 68%
実施例 3 40% 30% 0. 46 8. 48 実施例 4 80% 50%
比較例 1 ― 1 1 . 08 比較例 2 ― 75% 0. 49
比較例 3 ― 80% 0. 54 2. 88 比較例 4 32% 20% 1 0. 06 比較例 5 92% 57. 5% 1 . 22
[0049] 実施例 1〜4の弾性部材では、押し子 4が中空構造となっているため、押し子 4の下 面が回路基板の接点に接触した後の荷重上昇率が小さくなり、柔らかな触感を得る ことができた。また、実施例 1の弾性部材では、予備圧縮 〇 o〇 〇 〇〇を行っても、ピークストローク
寸寸寸寸
量 Sは、比較例 1における中実の押圧部を有する弾性部材寸寸とOO L L比較してほとんど変化 しな力 た。これは、表 1に示したように、実施例 1〜4の弾性部材では、押し子 4の中 空部 5の内径 D1が押圧部 1の外径 D3に対して充分小さくなるように設定O Lされている ため、予備圧縮を行っても押圧部 1の上面はほとんど潰れないためと考えら 〇 oo寸れる。そ の結果、実施例 1〜4では、押し子 4の外径 D2に対する中空部 5の内径 D1の比率を 所定の範囲(40%から 80%)内で変更することにより、ピークストローク量 Sをほとん ど変化させることなぐ荷重上昇率を 2. 82〜8. 48NZmmの範囲で調整することが できた。
[0050] これに対し、比較例 1の弾性部材は押し子 4の下面が回路基板の接点に接触した 後の荷重上昇率が大きいため、所望の触感を得ることができな力つた。また、比較例 2および 3の弾性部材は接点接続後の荷重上昇を小さくすることは可能であった。し 力 ながら、比較例 2および 3の弾性部材において押圧部 1の外径 D3に対する環状 凸部 13の内径 D4の比率は、表 1に示したように、実施例 1における押圧部 1の外径 D3に対する押し子 4の中空部 5の内径 D1の比率に比べてかなり大きくなつている。 そのため、比較例 2および 3の弾性部材では、予備圧縮によって環状凸部 13が潰れ
てしまうため、ピークストロークが大きく変化した。従って、環状凸部 13を設けた比較 例 2および 3の弾性部材においては、荷重曲線の調整が困難である。比較例 4の弹 性部材において、押し子 4の下面が回路基板の接点に接触した後の荷重上昇率が 大きくなり、所望の触感を得ることができな力つた。これは、比較例 4の弾性部材では 、押し子 4の中空部 5の内径 D1が押し子の外径 D2に対して小さぐその比率が 32% であるため、押し子の外周壁 4bが厚くなり、押圧された際に押し子 4の外周壁 4bが屈 曲し難いためと考えられる。比較例 5の弾性部材では、押し子 4の中空部 5の内径 D1 が押し子 4の外径 D2に対して大きすぎ、その比率が 92%であるため、押し子 4の外 周壁 4bが薄くなり、押し子 4が過度に柔ら力べなった。そのため、比較例 5の弾性部材 では、押し子 4の下面が回路基板の接点に接触した後の荷重上昇率が極端に小さく なり、所望の触感が得られな力つた。また、比較例 5の弾性部材では、押し子 4の外 周壁 4bが過度に薄いため耐久性に問題が生じることも考えられる。