WO2023021580A1

WO2023021580A1 - 押釦スイッチ用部材

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Publication number: WO2023021580A1
Application number: PCT/JP2021/030061
Authority: WO
Inventors: 英樹花村; 光利平谷
Original assignee: 信越ポリマー株式会社
Priority date: 2021-08-17
Filing date: 2021-08-17
Publication date: 2023-02-23
Also published as: JPWO2023021580A1

Abstract

【課題】　良好な操作性を維持しつつ、耐久性の高い押釦スイッチ用部材を提供する。　【解決手段】　本発明は、天面から下方に向かって窪む凹部１２を有し、天面からの押圧に応じて押圧方向及び逆方向に可動な押圧可動部１１と、押圧可動部１１の平面視にて径方向外周に連接する座屈変形型の第１ドーム部１３と、押圧可動部１１の平面視にて径方向内周に連接し、第１ドーム１３と異なる非座屈変形型の第２ドーム部１４と、第２ドーム部１４から天面と反対方向に突出し、天面と反対方向にある基板５０に向けて移動可能な突出部１６と、第１ドーム部１３の平面視にて径方向外周に連接し、基板５０上に固定されるベース部１５と、を備え、第２ドーム部１４及び突出部１６は、凹部１２の天面と反対側の端部を被覆し、第２ドーム部１４は、押圧可動部１１と突出部１６との間にあって、凹部１２の開口側に突出した少なくとも１つの凸部４０を有する押釦スイッチ用部材１に関する。

Description

押釦スイッチ用部材

クロスリファレンス

　本願において引用した特許、特許出願及び文献に記載された内容は、本明細書に援用する。

　本発明は、押釦スイッチ用部材に関する。

　従来から、車載機器、通信機器、オーディオ機器、家庭用電気機器等の多種多様な機器のスイッチとして、押圧部、ドーム部およびベース部を備える押釦スイッチ用部材を用いたものが知られている（例えば、特許文献１，２を参照）。

　図１０は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための縦断面図を示す。

　図１０に示す押釦スイッチ用部材１００は、基板１１０上に配置され、基板１１０に向かう方向（図１０の下方向）およびその逆方向（図１０の上方向）に弾性的に往復可動する部材である。押釦スイッチ用部材１００は、天面から下方に向かって窪む凹部１０２を有し、天面からの押圧に応じて押圧方向およびその逆方向に可動な押圧可動部１０１と、押圧可動部１０１の平面視にて径方向外周に連接する座屈変形型の第１ドーム部１０３と、押圧可動部１０１の平面視にて径方向内周に連接する非座屈変形型の第２ドーム部１０４と、第２ドーム部１０４から天面と反対方向に突出する突出部１０６と、第１ドーム部１０３の平面視にて径方向外周に連接し、基板１１０上に固定されるベース部１０５と、を備える。第２ドーム部１０４は、突出部１０６側に突出した椀状の部位である。押圧可動部１０１、第１ドーム部１０３、第２ドーム部１０４、ベース部１０５および突出部１０６は、同一種類のゴム状弾性体からなる。

　操作者による天面からの押圧を受けると、押圧が所定の閾値を超えた際に第１ドーム部１０３が変形し、突出部１０６が基板１１０上の固定接点１０７，１０７に接触して、固定接点１０７，１０７を導通させる。さらなる押圧後、第２ドーム部１０４は弾性的に変形する。操作者による押圧が解除されると、第１ドーム部１０３および第２ドーム部１０４は自身の弾性力により元の形状に戻る。このため、押圧可動部１０２および突出部１０６は上昇し、初期状態に戻る。このような押釦スイッチ用部材１００によれば、第１ドーム部１０３の座屈変形と、固定接点１０７，１０７に接触後の第２ドーム部１０４の変形により、操作性の向上を図ることができる。

特開平１１－２３３９７３号公報特開２０００－７６９５９号公報

　しかしながら、図１０に示す押釦スイッチ用部材１００は、突出部１０６が固定接点１０７，１０７に接触した状態で操作者からの押圧をさらに受けた場合、第２ドーム部１０４がさらに変形し、第２ドーム部１０４が基板１１０上に接触する（図１０の下図を参照）。このため、押釦スイッチ用部材１００は、操作者による押圧を受ける度に、第２ドーム部１０４が基板１１０上に接触することにより第２ドーム部１０４が摩耗し、耐久性が低下する虞がある。

　本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、良好な操作性を維持しつつ、耐久性の高い押釦スイッチ用部材を提供することを目的とする。

（１）上記目的を達成するための一実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、天面から下方に向かって窪む凹部を有し、当該天面からの押圧に応じて押圧方向およびその逆方向に可動な押圧可動部と、前記押圧可動部の平面視にて径方向外周に連接し、前記押圧が閾値を超えたときに急激に座屈変形する座屈変形型の第１ドーム部と、前記押圧可動部の平面視にて径方向内周に連接し、前記第１ドームと異なる非座屈変形型の第２ドーム部と、前記第２ドーム部から前記天面と反対方向に突出し、前記押圧によって、前記天面と反対方向にある基板に向けて移動可能な突出部と、前記第１ドーム部の平面視にて径方向外周に連接し、前記基板上に固定されるベース部と、を備え、前記第２ドーム部および前記突出部は、前記凹部における前記天面と反対側の端部を被覆するよう配置され、前記第２ドーム部は、前記押圧可動部と前記突出部との間にあって、前記凹部の開口側に突出した少なくとも１つの凸部を有する部位である。
（２）別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記突出部の先端は、前記押圧可動部からの押圧により前記第１ドーム部が変形することにより、前記基板または前記基板に備えられるスイッチ部材に接触し、前記突出部の先端が前記基板または前記スイッチ部材に接触した状態において、前記第２ドーム部は前記基板と非接触状態を維持しても良い。
（３）別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記第２ドーム部は、前記押圧可動部と前記突出部とを連結する逆椀状の部材であっても良い。
（４）別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記第２ドーム部は、前記逆椀状の部材であって、前記凹部側および前記突出部側の両面とも曲面を成しても良い。
（５）別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記第２ドーム部は、前記逆椀状の部材であって、前記凹部側および前記突出部側の両面ともに平面を有しても良い。
（６）別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記第２ドーム部は、前記逆椀状の部材であって、前記凹部側の面が曲面を成し、前記突出部側の面が前記曲面よりも平面に近い面を有しても良い。
（７）別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記第２ドーム部は、前記逆椀状の部材であって、前記突出部側の面が曲面を成し、前記凹部側の面が前記曲面よりも平面に近い面を有しても良い。
（８）別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記押圧可動部、前記第１ドーム部、前記第２ドーム部、前記突出部および前記ベース部は、同一種類のゴム状弾性体からなるものであっても良い。
（９）別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記押圧可動部、前記第１ドーム部、前記第２ドーム部、前記突出部および前記ベース部は、一体の前記ゴム状弾性体であっても良い。
（１０）別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記ゴム状弾性体は、シリコーンゴムを含有しても良い。

　本発明によれば、良好な操作性を維持しつつ、耐久性の高い押釦スイッチ用部材を提供できる。

図１は、本発明の第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。図２は、図１の押釦スイッチ用部材のＡ－Ａ線断面図を示す。図３は、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための図を示す。図４は、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材の荷重－変位曲線を示す。図５は、第２実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。図６は、第３実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。図７は、第４実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。図８は、第５実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。図９は、第６実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。図１０は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための縦断面図を示す。

１，１ａ，１ｂ，１ｃ，１ｄ，１ｅ・・・押釦スイッチ用部材、１１・・・押圧可動部、１２・・・凹部、１３・・・第１ドーム部、１４，１４ａ，１４ｂ，１４ｃ・・・第２ドーム部、１５・・・ベース部、１６・・・突出部、１７・・・接点（スイッチ部材の一例）、１７ａ・・・メカニカルスイッチ（スイッチ部材の一例）、１７ｂ・・・接点（スイッチ部材の一例）、４０，４０ａ，４０ｂ，４０ｃ・・・凸部、５０，５０ａ・・・基板。

　次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。

（第１実施形態）
　図１は、本発明の第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。図２は、図１の押釦スイッチ用部材のＡ－Ａ線断面図を示す。

（１）概略構成
　第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１は、天面から下方に向かって窪む凹部１２を有し、当該天面からの押圧に応じて押圧方向（図２の下方向）およびその逆方向（図２の上方向）に可動な押圧可動部１１と、押圧可動部１１の平面視にて径方向外周に連接し、押圧が閾値を超えたときに急激に座屈変形する座屈変形型の第１ドーム部１３と、押圧可動部１１の平面視にて径方向内周に連接し、第１ドーム１３と異なる非座屈変形型の第２ドーム部１４と、第２ドーム部１４から天面と反対方向（図２の下方向）に突出し、押圧によって、天面と反対方向にある基板５０に向けて移動可能な突出部１６と、第１ドーム部１３の平面視にて径方向外周に連接し、基板５０上に固定されるベース部１５と、を備える。第２ドーム部１４および突出部１６は、凹部１２における天面と反対側（図２の下側）の端部を被覆するよう配置される。また、第２ドーム部１４は、押圧可動部１１と突出部１６との間にあって、凹部１２の開口側に突出した少なくとも１つの凸部を有する部位である。

　この実施形態において、押釦スイッチ用部材１は、回路基板（以後、単に「基板」とも称する）５０上に配置され、天面から基板５０に向かう方向への押圧と当該押圧の解除によって、押圧可動部１１が押圧方向（図２の下方向）およびその逆方向（図２の上方向）に往復可動する部材である。この実施形態において、突出部１６の先端は、好ましくは、押圧可動部１１からの押圧により第１ドーム部１３が変形することにより、基板５０上のスイッチ部材の一例である２つの接点１７，１７に電気的に接続可能としている。突出部１６は、その先端に導電性の板若しくはフィルムを備え、あるいは全体が導電性に富む材料で構成されている（不図示）。なお、接点１７は、基板５０上に３つ以上備えられていても良い。

　この実施形態において、押圧可動部１１、第１ドーム部１３、第２ドーム部１４、突出部１６およびベース部１５は、同一種類のゴム状弾性体から構成されている。また、この実施形態において、押圧可動部１１、第１ドーム部１３、第２ドーム部１４、突出部１６およびベース部１５は、一体成形等の手法により製造された一体のゴム状弾性体である。ただし、押圧可動部１１、第１ドーム部１３、第２ドーム部１４、突出部１６およびベース部１５は、別体にて製造後に接合されても良い。また、押圧可動部１１、第１ドーム部１３、第２ドーム部１４、突出部１６およびベース部１５は、２種類以上のゴム状弾性体から構成されていても良い。また、押釦スイッチ用部材１は、少なくとも押圧可動部１１、第１ドーム部１３および第２ドーム部１４がゴム状弾性体にて構成されていれば良く、例えば、ベース部１５および突出部１６はゴム状弾性体以外の材料から構成されていても良い。以後の各実施形態においても同様である。

　第１実施形態および後述する他の各実施形態において、ゴム状弾性体としては、好適には、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム（ＮＢＲ）若しくはスチレンブタジエンゴム（ＳＢＲ）等の熱硬化性エラストマー、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、又は、上記したものの複合物等を例示できる。これらの例示のゴム状弾性体の内、特に、シリコーンゴムが好ましい。また、ゴム状弾性体は、シリカ等のフィラーを含有していても良い。

（２）押圧可動部
　押圧可動部１１は、スイッチのオン、オフまたはその両方のときに、指やその他の押圧操作手段に接触して、天面から基板５０に向かう方向（図２では下方向）への押圧を受けて下方に移動可能な部材である。押圧可動部１１は、キートップ、押釦部、頭部等と称されることもある。また、押圧可動部１１は、その天面にキートップが設けられていても良い。この場合、押圧可動部１１は、キートップを介して当該押圧操作手段による天面から基板５０に向かう方向への押圧を受けて下方に移動可能となる。また、押圧可動部１１は、その天面に、防傷等を目的として、樹脂（熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂等）、ガラス、セラミックス、押圧部１０より高硬度のシリコーンゴムやその他エラストマー等からなる薄いコート層が形成されていても良い。押圧可動部１１は、ベース部１５を基準として一方の側に突出している。この実施形態では、一方の側とは、押釦スイッチ用部材１を回路基板等に設置したときの当該回路基板等と反対側の側に相当する。押釦スイッチ用部材１の設置箇所によっては、上側ではなく、左側、右側等の別の方向となることもある。

　押圧可動部１１は、第１ドーム部１３および第２ドーム部１４が連結される位置から鉛直上方に延在する部材である（図２を参照）。この実施形態において、押圧可動部１１は、天面から下方に向かって窪む一端開放型の凹部１２を有する円筒形状の部材である。また、この実施形態において、凹部１２は、その開口面の平面視形状を略円形とする円筒カップ形状の空間である。凹部１２は、第２ドーム部１４および突出部１６により天面と反対側の端部が被覆され、当該円筒カップ形状の底部が形成されている。なお、押圧可動部１１および凹部１２は、その形状を平面視にて矩形等の他の形状としても良い。また、凹部１２は、円錐形状、角錐形状、円錐台形状、角錐台形状、半球状等の筒状以外の形状を有するものであっても良い。

（３）第１ドーム部
　第１ドーム部１３は、押圧可動部１１の外周に連接する部材である。この実施形態において、第１ドーム部１３は、平面視にて円環状の部材である。第１ドーム部１３は、好ましくは、押圧可動部１１およびベース部１５よりも薄肉に形成されている。第１ドーム部１３は、押圧可動部１１とベース部１５とを連結する部材である。第１ドーム部１３は、天面から基板５０に向かう方向への押圧を受けて弾性変形し、当該押圧が閾値を超えたときに急激に座屈変形し、当該押圧が解除されたときに元の形状に戻る座屈変形型の弾性変形部材である。

（４）第２ドーム部
　第２ドーム部１４は、押圧可動部１１の内周に連接する部材である。第２ドーム部１４は、好ましくは、押圧可動部１１およびベース部１５よりも薄肉に形成されている。第２ドーム部１４は、押圧可動部１１と突出部１６との間に、凹部１２の開口側に突出した少なくとも１つの凸部４０を有する部位である。この実施形態において、第２ドーム部１４は、押圧可動部１１と突出部１６とを連結する逆椀状の部材であって、凹部１２側および突出部１６側の両面とも曲面を成す部材である（図２を参照）。第２ドーム部１４は、天面から基板５０に向かう方向への押圧を受けて弾性変形し、当該押圧が解除されたときに元の形状に戻る弾性変形部材である。また、第２ドーム部１４は、第１ドーム部１３と異なり、当該押圧により座屈変形しない非座屈変形型の弾性変形部材である。第２ドーム部１４は、好ましくは、当該押圧により第１ドーム部１３が座屈変形し、突出部１６の先端が基板５０上の接点１７，１７に電気的に接続された状態において、基板５０と非接触状態を維持する（図３を参照）。第２ドーム部１４の当該非接触状態については、図３を用いて詳細を後述する。

（５）ベース部
　ベース部１５は、第１ドーム部１３の外周に連接する。ベース部１５は、押釦スイッチ用部材１を押釦スイッチに組み込むときに、押釦スイッチ用部材１を基板５０に固定する部位である。この実施形態において、ベース部１５は、平面視にて円形状の部材である。ただし、ベース部１５は、平面視にて矩形状、多角形状、矩形状等の他の形状であっても良い。ベース部１５は、取り付けのための孔や突起等が形成されていても良い。なお、ベース部１５は、押圧可動部１１、第１ドーム部１３および第２ドーム部１４を構成する材料と異なる材料（ゴム状弾性体、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂のいずれでも良く、樹脂以外の材料、例えば金属でも良い）で構成されていても良い。

（６）突出部
　突出部１６は、第２ドーム部１４から天面と反対方向（すなわち、天面からの押圧方向）に向かって突出する部材である。突出部１６は、押釦スイッチ用部材１が押釦スイッチに組み込まれたときに、天面からの押圧によって、天面と反対方向にある基板５０上の突出部１６の直下に配置される接点１７，１７に接触してスイッチをオン・オフさせる部分となる。この実施形態において、突出部１６は、平面視にて円形状の部材である。ただし、突出部１６は、接点１７，１７に接触可能な形状であれば、平面視にて矩形状、多角形状、矩形状等の他の形状であっても良い。突出部１６は、押圧可動部１１、第１ドーム部１３および第２ドーム部１４と一体成形等の手法により製造された一体のゴム状弾性体であっても良いし、別体にて製造後に接合されても良い。押圧可動部１１、第１ドーム部１３および第２ドーム部１４と突出部１６とが別体である場合、突出部１６は、導電性を有する材料（例えば、金属や導電性のゴム状弾性体）から成るものであっても良いし、非導電性材料から成るものでも良い。また、突出部１６は、ゴム状弾性体でも良いし、非ゴム状弾性体でも良い。なお、押釦スイッチ用部材１は、例えば、突出部１６の直下にメタルドームを配置して、突出部１６の先端がメタルドームを押下し、メタルドームの直下に配置された接点１７，１７を導通させるようにしても良い。以後の各実施形態においても同様である。

　次に、押釦スイッチ用部材１の使用例について説明する。

　図３は、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための図を示す。図４は、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材の荷重－変位曲線を示す。なお、図４は、操作者による天面からの押圧を受けることにより突出部１６の先端が接点１７，１７に接触してから、さらに当該押圧を受けるまでの変位（ストローク）と荷重との関係を示す曲線である。

　天面からの押圧を受けていない無荷重状態においては、突出部１６の先端と接点１７，１７とは非接触状態を維持している（図３の上図および図４の点Ａを参照）。操作者による天面からの押圧を受けると、第１ドーム部１３の弾性変形によりストロークとともに荷重は増加していく（図４の矢印ａを参照）。押釦スイッチ用部材１は、荷重がピーク荷重に達するまで、第１ドーム部１３の弾性変形に伴ってストロークおよび荷重が増加していく。ピーク荷重とは、天面からの押圧により第１ドーム部１３が急激に座屈変形を生じる際の荷重の閾値（座屈荷重）である。図４に示す点Ｂは、ピーク荷重を示すピーク荷重点である。荷重がピーク荷重に達すると、第１ドーム部１３が座屈変形して荷重が低下する（図４の矢印ｂを参照）。このとき、第２ドーム部１４は、座屈変形することなく、基板５０と非接触状態を維持している。

　突出部１６の先端が基板５０に近づくと、突出部１６の先端と基板５０上の接点１７，１７とが接触する（図３の中央図および図４の点Ｃを参照）。図４に示す点Ｃは、突出部１６の先端が接点１７，１７に接触した点である。この接触により、一方の接点１７から突出部１６の先端を通じて他方の接点１７へ通電経路が形成されるため、スイッチがオン（若しくはオフ）となる。このとき、第１ドーム部１３は、天面からの押圧により座屈変形した状態を維持している。また、第２ドーム部１４は、第１ドーム部１３と異なり座屈変形していないが、天面からの押圧により弾性変形した状態で、基板５０と非接触状態を維持している（図３の中央図を参照）。

　突出部１６の先端と接点１７，１７との接触後も天面からの押圧を受けると、少なくとも第２ドーム部１４がさらに弾性変形することにより荷重が再び増加する（図３の下図および図４の矢印ｃを参照）。なお、第１ドーム部１３は、突出部１６の先端と接点１７，１７とが接触したとき（図３の中央図を参照）よりもさらに変形している（図３の下図を参照）。また、第２ドーム部１４は、第１ドーム部１３と異なり座屈変形していないが、突出部１６の先端と接点１７，１７との接触したとき（図３の中央図を参照）よりもさらに弾性変形し、基板５０と非接触状態を維持している（図３の下図を参照）。このように、第１ドーム部１３は、座屈変形により、操作者に良好なクリック感を付与する。また、第２ドーム部１４は、突出部１６が接点１７，１７に接触した後に変形することにより、操作者に押し込みの感覚を付与する。加えて、第２ドーム部１４は、基板５０に接触しないので、長期の使用によっても摩耗や破損しにくくなる。この結果、良好な操作性を維持しつつ、耐久性の高い押釦スイッチ用部材を実現できる。

　操作者による天面からの押圧が解除されると、弾性変形していた第１ドーム部１３および第２ドーム部１４は自身の復元力により元の形状に戻ろうとし、荷重が低下する。その後、弾性変形していた第２ドーム部１４が元の形状に戻り、第１ドーム部１３が座屈変形状態から復元し、初期状態である無荷重状態に戻る。

　この実施形態に係る押釦スイッチ用部材１によれば、第２ドーム部１４は、従来の押釦スイッチ用部材（図１０を参照）のような突出部側に突出した椀状の部位ではなく、凹部１２の開口側に突出した逆椀状の部位である。このため、突出部１６の先端が基板５０上の接点１７，１７に電気的に接続された状態において、第２ドーム部１４は、基板５０と非接触状態を維持することができる。特に、突出部１６の先端と接点１７，１７との接触後にさらに天面からの押圧を受けた場合であっても、第２ドーム部１４は、当該押圧により弾性変形するが、基板５０と非接触状態を維持することができる（図３の下図を参照）。したがって、天面からの押圧により第２ドーム部１４が基板５０上に接触する事態を抑制することができる。この結果、第２ドーム部１４の摩耗を抑制することができ、耐久性を高めることができる。

（第２実施形態）
　次に、第２実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。

　図５は、第２実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。

　第２実施形態に係る押釦スイッチ用部材１ａは、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と類似の構造を有するが、第２ドーム部１４に代えて第２ドーム部１４ａを備える点において、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と異なる。

　第２ドーム部１４ａは、押圧可動部１１の内周に連接する部材であって、凹部１２の開口側に突出した少なくとも１つの凸部４０ａを有する。この実施形態において、第２ドーム部１４ａは、押圧可動部１１と突出部１６とを連結する逆椀状の部材であって、凹部１２側および突出部１６側の両面ともに平面を有する部材である。より具体的には、第２ドーム部１４ａは、縦断面視にて略Ｌ字状の部材であって、その両端部がそれぞれ押圧可動部１１と突出部１６とに連接している（図５を参照）。凸部４０ａは、第２ドーム部１４ａにおける縦断面視にて略Ｌ字状の角部を構成している。第２ドーム部１４ａは、好ましくは、第２ドーム部１４と同様に、押圧可動部１１およびベース部１５よりも薄肉に形成されている。第２ドーム部１４ａは、天面から基板５０に向かう方向への押圧を受けて弾性変形し、当該押圧が解除されたときに元の形状に戻る弾性変形部材である。また、第２ドーム部１４ａは、第１ドーム部１３と異なり、当該押圧により座屈変形しない非座屈変形型の弾性変形部材である。第２ドーム部１４ａは、凹部１２の開口側に突出した縦断面視略Ｌ字状の部位であるため、第２ドーム部１４と同様に、当該押圧により第１ドーム部１３が座屈変形し、突出部１６の先端が基板５０上の接点１７，１７に電気的に接続された状態において、基板５０と非接触状態を維持することができる（図３を参照）。したがって、天面からの押圧により第２ドーム部１４ａが基板５０上に接触する事態を抑制することができるため、第２ドーム部１４ａの摩耗を抑制することができ、耐久性を高めることができる。なお、第２ドーム部１４ａは、押圧可動部１１と突出部１６とを連結する逆椀状の部材であって、凹部１２側および突出部１６側の両面ともに平面を有する部材であれば、縦断面視にて略Ｌ字状の部材に制約されず、例えば、凹部１２側および／または突出部１６側の面が平面および曲面を有する部材であっても良い。

（第３実施形態）
　次に、第３実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。

　図６は、第３実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。

　第３実施形態に係る押釦スイッチ用部材１ｂは、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と類似の構造を有するが、第２ドーム部１４に代えて第２ドーム部１４ｂを備える点において、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と異なる。

　第２ドーム部１４ｂは、押圧可動部１１の内周に連接する部材であって、凹部１２の開口側に突出した少なくとも１つの凸部４０ｂを有する。この実施形態において、第２ドーム部１４ｂは、押圧可動部１１と突出部１６とを連結する逆椀状の部材であって、凹部１２側の面が曲面を成し、突出部１６側の面が曲面よりも平面に近い面を有する部材である。より具体的には、第２ドーム部１４ｂは、凹部１２側の面が曲面を成し、突出部１６側の面が凸部４０ｂで屈曲した平面からなる部材である（図６を参照）。第２ドーム部１４ｂは、好ましくは、第２ドーム部１４と同様に、押圧可動部１１およびベース部１５よりも薄肉に形成されている。第２ドーム部１４ｂは、天面から基板５０に向かう方向への押圧を受けて弾性変形し、当該押圧が解除されたときに元の形状に戻る弾性変形部材である。また、第２ドーム部１４ｂは、第１ドーム部１３と異なり、当該押圧により座屈変形しない非座屈変形型の弾性変形部材である。第２ドーム部１４ｂは、凹部１２の開口側に突出した逆椀状の部位であるため、第２ドーム部１４と同様に、当該押圧により第１ドーム部１３が座屈変形し、突出部１６の先端が基板５０上の接点１７，１７に電気的に接続された状態において、基板５０と非接触状態を維持することができる（図３を参照）。したがって、天面からの押圧により第２ドーム部１４ｂが基板５０上に接触する事態を抑制することができるため、第２ドーム部１４ｂの摩耗を抑制することができ、耐久性を高めることができる。なお、第２ドーム部１４ｂは、押圧可動部１１と突出部１６とを連結する逆椀状の部材であって、凹部１２側の面が曲面を成し、突出部１６側の面が曲面よりも平面に近い面を有する部材であれば、特に制約されず、例えば、突出部１６側の面が平面と曲面とを有する部材であっても良い。

（第４実施形態）
　次に、第４実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。

　図７は、第４実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。

　第４実施形態に係る押釦スイッチ用部材１ｃは、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と類似の構造を有するが、第２ドーム部１４に代えて第２ドーム部１４ｃを備える点において、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と異なる。

　第２ドーム部１４ｃは、押圧可動部１１の内周に連接する部材であって、凹部１２の開口側に突出した少なくとも１つの凸部４０ｃを有する。この実施形態において、第２ドーム部１４ｃは、押圧可動部１１と突出部１６とを連結する逆椀状の部材であって、突出部１６側の面が曲面を成し、凹部１２側の面が曲面よりも平面に近い面を有する部材である。より具体的には、第２ドーム部１４ｃは、突出部１６側の面が曲面を成し、凹部１２側の面が凸部４０ｃで屈曲した平面からなる部材である（図７を参照）。第２ドーム部１４ｃは、好ましくは、第２ドーム部１４と同様に、押圧可動部１１およびベース部１５よりも薄肉に形成されている。第２ドーム部１４ｃは、天面から基板５０に向かう方向への押圧を受けて弾性変形し、当該押圧が解除されたときに元の形状に戻る弾性変形部材である。また、第２ドーム部１４ｃは、第１ドーム部１３と異なり、当該押圧により座屈変形しない非座屈変形型の弾性変形部材である。第２ドーム部１４ｃは、凹部１２の開口側に突出した逆椀状の部位であるため、第２ドーム部１４と同様に、当該押圧により第１ドーム部１３が座屈変形し、突出部１６の先端が基板５０上の接点１７，１７に電気的に接続された状態において、基板５０と非接触状態を維持することができる（図３を参照）。したがって、天面からの押圧により第２ドーム部１４ｃが基板５０上に接触する事態を抑制することができるため、第２ドーム部１４ｃの摩耗を抑制することができ、耐久性を高めることができる。なお、第２ドーム部１４ｃは、押圧可動部１１と突出部１６とを連結する逆椀状の部材であって、突出部１６側の面が曲面を成し、凹部１２側の面が曲面よりも平面に近い面を有する部材であれば、特に制約されず、例えば、凹部１２側の面が平面と曲面とを有する部材であっても良い。

（第５実施形態）
　次に、第５実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。

　図８は、第５実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。

　第５実施形態に係る押釦スイッチ用部材１ｄは、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と類似の構造を有するが、基板５０上の接点１７に代えて、スイッチ部材の一例であるメカニカルスイッチ１７ａを基板５０に備える場合に、突出部１６の先端若しくは全体を導電性に富む形態にしなくとも良い構成にした点において、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と異なる。

　このように、この実施形態では、突出部１６を絶縁性のゴム状弾性体にて構成し、その先端に導電性の部材を備えなくとも良い。突出部１６の先端は、押圧可動部１１からの押圧により第１ドーム部１３が変形することにより、基板５０に備えられるメカニカルスイッチ１７ａに接触し、突出部１６の先端がメカニカルスイッチ１７ａに接触した状態において、第２ドーム部１４は基板５０と非接触状態を維持する。

（第６実施形態）
　次に、第６実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。

　図９は、第６実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図２と同視の縦断面図を示す。

　第６実施形態に係る押釦スイッチ用部材１ｅは、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と類似の構造を有するが、基板５０上の接点１７に代えて、スイッチ部材の一例であるメンブレンスイッチ１７ｂを備える場合に、突出部１６の先端若しくは全体を導電性に富む形態にしなくとも良い構成にした点において、第１実施形態に係る押釦スイッチ用部材１と異なる。

　押釦スイッチ用部材１ｅを固定する基板５０ａは、上下２枚の薄厚の板状部材５１，５２の隙間にスペーサ５３を挟んで保持した構造を有する。板状部材５１，５２の内側であって突出部１６の押圧方向には、２枚の接点１７ｂ，１７ｂが離間して固定されている。接点１７ｂ，１７ｂは、スペーサ５３，５３の間の領域に備えられている。このため、突出部１６が板状部材５２を押し込むと、２枚の接点１７ｂ，１７ｂが接触してスイッチがオンとなる。突出部１６が板状部材５２から離れると、２枚の接点１７ｂ，１７ｂは再び離間してスイッチがオフとなる。このように、この実施形態では、突出部１６を絶縁性のゴム状弾性体にて構成し、その先端に導電性の部材を備えなくとも良い。突出部１６の先端は、押圧可動部１１からの押圧により第１ドーム部１３が変形することにより、基板５０ａ（より具体的には板状部材５２）に接触し、突出部１６の先端が基板５０ａに接触した状態において、第２ドーム部１４は基板５０ａと非接触状態を維持する。

（その他の実施形態）
　上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。

　上述の各実施形態では、第２ドーム部１４，１４ａ，１４ｂ，１４ｃは、凹部１２の開口側に突出した１つの凸部４０，４０ａ，４０ｂ，４０ｃを有するが、これに制約されず、例えば、２以上の凸部４０，４０ａ，４０ｂ，４０ｃを有していても良い。

　また、第１ドーム部１３は、押圧可動部１１とベース部１５とを連結する円錐台形状の部材であるが、これに制約されず、例えば、押圧可動部１１とベース部１５との間で屈曲した形状や逆椀形状等の他の形状の部材であっても良い。また、押釦スイッチ用部材１，１ａ，１ｂ，１ｃは、押圧可動部１１の天面側に、押圧可動部１１より硬質のキートップを備えても良い。

　本発明に係る押釦スイッチ用部材は、例えば、自動車、車載用電子機器、携帯通信機器、パーソナルコンピューター、カメラ、家庭用オーディオ機器、家庭用電化製品等の押圧式のキーを備える各種機器に用いるための押釦スイッチを構成するために利用可能である。

Claims

　天面から下方に向かって窪む凹部を有し、当該天面からの押圧に応じて押圧方向およびその逆方向に可動な押圧可動部と、
　前記押圧可動部の平面視にて径方向外周に連接し、前記押圧が閾値を超えたときに急激に座屈変形する座屈変形型の第１ドーム部と、
　前記押圧可動部の平面視にて径方向内周に連接し、前記第１ドームと異なる非座屈変形型の第２ドーム部と、
　前記第２ドーム部から前記天面と反対方向に突出し、前記押圧によって、前記天面と反対方向にある基板に向けて移動可能な突出部と、
　前記第１ドーム部の平面視にて径方向外周に連接し、前記基板上に固定されるベース部と、
を備え、
　前記第２ドーム部および前記突出部は、前記凹部における前記天面と反対側の端部を被覆するよう配置され、
　前記第２ドーム部は、前記押圧可動部と前記突出部との間にあって、前記凹部の開口側に突出した少なくとも１つの凸部を有する部位であることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
　前記突出部の先端は、前記押圧可動部からの押圧により前記第１ドーム部が変形することにより、前記基板または前記基板に備えられるスイッチ部材に接触し、
　前記突出部の先端が前記基板または前記スイッチ部材に接触した状態において、前記第２ドーム部は前記基板と非接触状態を維持することを特徴とする請求項１に記載の押釦スイッチ用部材。
　前記第２ドーム部は、前記押圧可動部と前記突出部とを連結する逆椀状の部材であることを特徴とする請求項１または２に記載の押釦スイッチ用部材。
　前記第２ドーム部は、前記逆椀状の部材であって、前記凹部側および前記突出部側の両面とも曲面を成すことを特徴とする請求項３に記載の押釦スイッチ用部材。
　前記第２ドーム部は、前記逆椀状の部材であって、前記凹部側および前記突出部側の両面ともに平面を有することを特徴とする請求項３に記載の押釦スイッチ用部材。
　前記第２ドーム部は、前記逆椀状の部材であって、前記凹部側の面が曲面を成し、前記突出部側の面が前記曲面よりも平面に近い面を有することを特徴とする請求項３に記載の押釦スイッチ用部材。
　前記第２ドーム部は、前記逆椀状の部材であって、前記突出部側の面が曲面を成し、前記凹部側の面が前記曲面よりも平面に近い面を有することを特徴とする請求項３に記載の押釦スイッチ用部材。
　前記押圧可動部、前記第１ドーム部、前記第２ドーム部、前記突出部および前記ベース部は、同一種類のゴム状弾性体からなることを特徴とする請求項１から７のいずれか１項に記載の押釦スイッチ用部材。
　前記押圧可動部、前記第１ドーム部、前記第２ドーム部、前記突出部および前記ベース部は、一体の前記ゴム状弾性体であることを特徴とする請求項８に記載の押釦スイッチ用部材。
　前記ゴム状弾性体は、シリコーンゴムを含有することを特徴とする請求項８または９に記載の押釦スイッチ用部材。