明 細 書
ガラス板及びテレビ台
技術分野
[0001] 本発明はガラス板に関する。特に、ガラス材料自身の色が目立ちに《されたガラス 板に関する。更に、本発明はこのようなガラス板を用いたテレビ台に関する。
背景技術
[0002] 従来、棚板などに使用されるガラス板が、例えば実開平 6— 21430号公報に記載 されている。図 11はその分解斜視図、図 12はその断面図である。図 11のように、ガ ラス板 1200は、板状のガラス基板 1201と、この片面に付着された着色シート 1210 とを備える。着色シート 1210は、耐衝撃性、耐熱性、特殊な色柄及び色縞等の装飾 性を向上させる目的のために、図 12のように、ガラス基板 1201側から、透明混合塗 料層 1211、高い放熱性を有する不飽和ポリエステル榭脂材層 1212、低い放熱性を 有する不飽和ポリエステル榭脂材層 1213、高レ、放熱性を有する不飽和ポリエステル 樹脂材層 1214、補強材層 1215をこの順に備える。
[0003] 通常、ガラスの主成分は Si〇(珪酸、珪砂、シリカ)、 Na〇(酸化ナトリウム、ソーダ)
、 Ca〇(酸化カルシウム、石灰、力ルシア)を含む。 Si〇はガラスの 69%〜74%を占 め、 Na〇は溶解の際、融点を下げる働きをするもので SiOに次いで多く 12〜: 16% を占め、 CaOは高温でガラスの粘性を良くし、且つ電気的絶縁性を増大させるもので 、約数%を占める重要な成分である。
[0004] 一般に、ガラスは緑色に見えることが多レ、。これは、原料に不純物として混入した鉄 成分に起因する。即ち、ガラスを緑色に着色させる原因となる鉄は、ガラス中に Fe2+、 Fe3+などの遷移金属イオンとして存在し、それらの量によってガラスは青色から緑に 着色する。これらの色は、電子が遷移金属イオンの d軌道におけるエネルギーギヤッ プ間を遷移 (d— d遷移)する際に可視光域における光を吸収することによる。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] し力 ながら、ガラス独特の緑色を安価に見えるとか、見た目を好まないなどと感じ
る使用者や地域がある。緑色を抑えるためにガラスに黒等の濃色を直接着色すること も考えられる力 これではガラスの透明感がなくなってしまい、明るい印象が得られな レ、。
[0006] また、ガラス基板の緑色は、特にガラス基板を、これとほぼ平行な方向から見たとき に、その端面にぉレ、て目立ちやすレ、。
[0007] 緑色に見えることを抑えたガラスとしては、一般に入手可能な透明板状ガラスがある が、これは通常の板状ガラスの 2倍以上に高価である。装飾用テーブルやテレビ台な どに用いられるガラス以外の素材としてはアクリル樹脂がある力 これは強度の点で ガラスには及ばない。
[0008] 従って、低コストでありながら、ガラス自身の緑色が感じられず、安価に見えず、且 つ明るい配色の棚板材、好ましくはテレビ台用棚板材が望まれるが、従来はこの課 題を解決するための試みはほとんどなされていない。
[0009] 本発明は、上記の従来の課題を解決し、ガラスの色の原因となる成分 (例えば鉄成 分)を除去したり、ガラス自体に新たな成分を添加したりすることなぐ即ち既存の板 状ガラスを使用しながら、どの方向から見てもガラス自身の色がほとんど感じられない ガラス板を提供することを目的とする。
[0010] また、本発明は、板状ガラスを使用しながら、ガラス自身の色が感じられず、安価で 見映えのするテレビ台を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明のガラス板は、板状のガラス基板と、前記ガラス基板の片面に積層された着 色層とを備える。そして、前記着色層は、前記ガラス基板の反射スペクトルの補色で ある補色成分を含むことを特徴とする。
[0012] 本発明のテレビ台は、上記の本発明のガラス板を備える。
発明の効果
[0013] 本発明は、ある色と、この色の補色とを混ぜ合わせると無彩色になることを応用して いる。
[0014] 即ち、本発明のガラス板では、既存の汎用されているガラス基板の片面に、このガ ラス基板の反射スペクトルの補色である補色成分を含む着色層が積層されているの
で、着色層が積層された側とは反対側からガラス板を見たとき、ガラス基板自身の色 が視認されにくぐガラス基板が擬似的に無色透明に見える。
[0015] また、本発明のテレビ台は、上記の本発明のガラス板を備えるので、ガラス基板自 身の色が目立ちにくぐガラス板に所望する色彩を付与することが可能で、安価にテ レビ台の意匠的価値を向上させることができる。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1]図 1は、本発明の実施の形態 1に係るガラス板の概略構成を示した分解斜視図 である。
[図 2]図 2は、本発明の実施の形態 1に係るガラス板の要部の拡大断面図である。
[図 3]図 3は、本発明の実施の形態 1に係るガラス板において、ガラス基板の厚み及 び着色シートの着色成分含有層中の全着色成分に対する赤色成分の含有率と、ガ ラス基板の色合いとの関係を示した図である。
[図 4]図 4は、本発明においてガラス板の色を定量的に測定する際に使用した測定器 の概略構成を示した図である。
[図 5A]図 5Aは、本発明の実施の形態 1における試料 1の分光反射率を示した図で ある。
[図 5B]図 5Bは、本発明の実施の形態 1における試料 1の波長 450〜650nmの範囲 での分光反射率を示した図である。
[図 6A]図 6Aは、本発明の実施の形態 1における試料 2の分光反射率を示した図で ある。
[図 6B]図 6Bは、本発明の実施の形態 1における試料 2の波長 450〜650nmの範囲 での分光反射率を示した図である。
[図 7A]図 7Aは、本発明の実施の形態 1における試料 3の分光反射率を示した図で ある。
[図 7B]図 7Bは、本発明の実施の形態 1における試料 3の波長 450〜650nmの範囲 での分光反射率を示した図である。
[図 8A]図 8Aは、本発明の実施の形態 2に係るガラス板の要部の拡大断面図である。
[図 8B]図 8Bは、本発明の実施の形態 2に係る別のガラス板の要部の拡大断面図で
ある。
[図 9]図 9は、本発明の実施の形態 3に係るテレビ台の斜視図である。
[図 10]図 10は、本発明の実施の形態 3に係るテレビ台にテレビを設置した状態を示 した斜視図である。
[図 11]図 11は、従来のガラス板の概略構成を示した分解斜視図である。
[図 12]図 12は、従来のガラス板の要部の断面図である。
発明を実施するための最良の形態
[0017] 本発明の上記のガラス板において、前記ガラス基板は、酸化鉄を 0. 07-0. 18% 含むソーダガラスからなることが好ましい。これにより、カラス基板として、既存の汎用 されている低コストの板状ガラスを使用することができる。
[0018] 前記ガラス基板の厚みを X (mm)、前記着色層に含まれる全着色成分に対する前 記ネ甫色成分の含有率を y (%)としたとさ、 0. 23x+ l . 2≤y≤0. 23x + 2. 0を満足 することが好ましい。これにより、ガラス基板自身の色を一層視認されに《することが できる。
[0019] 前記着色層は複数の層を有していても良ぐその場合、前記複数の層のうちの 1層 は前記着色層に含まれる全着色成分を含有する着色成分含有層であっても良い。こ れにより、全着色成分が共通する 1層に含まれているので、着色成分の配合量の調 整が容易である。
[0020] 前記着色層が積層された側とは反対側から見た前記ガラス板の色がシルバーであ つても良く、その場合、前記着色層は、シルバー色成分としてアルミニウムと、白色成 分として酸化チタンとを含むことが好ましい。これにより、明るぐ好印象のシルバー色 を有するガラス板を実現できる。
[0021] 前記着色層は複数の層を有していても良ぐその場合、前記複数の層のうちの 1層 は、前記着色層に含まれる全着色成分と、前記着色層を前記ガラス基板に付着させ るための粘着剤とを含有する粘着層であっても良い。これにより、着色層の層数を少 なくすることができるので、その製造工程を簡略化することができる。
[0022] 前記着色層は複数の層を有していても良ぐその場合、前記複数の層のうちの 1層 は、前記補色成分と、前記着色層を前記ガラス基板に付着させるための粘着剤とを
含有する粘着層であり、他の 1層は、前記補色成分以外の着色成分を含有する着色 成分含有層であっても良い。これにより、着色成分含有層として図柄等を描くことがで きる。
[0023] 前記着色層は複数の層を有していても良ぐその場合、前記複数の層のうちの 1層 は前記補色成分を含み、且つ前記ガラス基板上に塗布法により形成された塗布層で あっても良い。これにより、この塗布層上に、所望する色を有していたり、所望する図 柄が描かれたシートを貼付することができ、ガラス板の装飾の自由度が向上する。
[0024] 前記塗布法がスプレー法であっても良ぐあるいは印刷法であっても良い。これによ り、低コストで補色成分を含む塗布層を形成することができる。
[0025] 前記ガラス基板の端面に、曲面加工、面取り加工、又はつや消し加工が施されて レ、ることが好ましい。これにより、ガラス板を、これとほぼ平行な方向から見たときにお いても、ガラス基板自身の色を視認されにくくすることができる。
[0026] 以下、本発明の実施の形態について、具体的な一実施例を示しながら説明する。
[0027] (実施の形態 1)
図 1は、本発明の実施の形態 1に係るガラス板の概略構成を示した分解斜視図で ある。図 2は、本発明の実施の形態 1に係るガラス板の要部の拡大断面図である。
[0028] 図 1に示すように、本実施の形態 1のガラス板 100は、厚さ 6mmの板状のガラス基 板 101と、ガラス基板 101の下面に付着された着色成分としての顔料を含む着色シ ート(着色層) 110とからなる。着色シート 110は、ガラス基板に付着される前の状態 において自己支持性を有するシートであって、図 2に示すように、ガラス基板 101側 から、アクリル系粘着剤からなる厚さ 20 μ ΐηの粘着層 111と、ウレタン系樹脂中に着 色成分が分散された厚さ 13 μ mの着色成分含有層 112と、ポリエステルフィルムから なる厚さ 50 μ mのフイノレム層 113と、アクリル系樹脂力、らなる厚さ 2 μ mのハードコー ト層 114とをこの順に備える。
[0029] ガラス基板 101は、フロート方式で製造されたソーダライムガラスで、製造された国 やメーカによってその組成成分の配合率は多少異なる力 一般に表 1に示す組成を 有している。
[0030] [表 1]
含有率 (%)
S i 0 2 (シリカ) 6 9 ~ 7 4
A 1 2 0 3 (アルミナ) 0〜3
C a O (酸化カルシウム) 5 ~ 1 2
M g O (酸化マグネシウム) 0 ~ 6
N a 2 0 + K 2 0 1 2 ~ 1 6
(酸化ナトリウム +酸化カリウム)
F e 2 0 3 (酸化鉄) 0 . 0 7 ~ 0 . 1 8
[0031] 即ち、 Si〇(シリカ)が 69〜74%、 AI O (アルミナ)が 0〜3%、 CaO (酸化カルシゥ
2 2 3
ム)が 5〜12%、 Mg〇(酸化マグネシウム)が 0〜6%、 Na〇 + K〇(酸化ナトリウム
2 2
+酸化カリゥム)が12〜16%、?6〇(酸化鉄)が 0. 07〜0. 18%含有されている。
2 3
これらの成分の中で Fe O (酸化鉄)がガラス基板 101を緑色に見えるようにしている
2 3
。ガラス基板 101は、 Fe O (酸化鉄)の含有率が 0. 07%付近であれば薄い緑色に
2 3
見え、 0. 18%付近であれば濃い緑色に見える。
[0032] 着色シート 110の着色成分含有層 112の組成は、シルバー色成分であるアルミ二 ゥムが 14%、白色成分である酸化チタン (Ti〇)が 1 1. 5%、赤色成分である不溶性
2
ァゾ顔料が 0. 85%、硬化剤である変性ポリイソシァネートが 4%、光沢を得るための 顔料が 5. 5%、潤滑油としての添加剤が 4. 15%、ウレタン樹脂が 60%である。この 中で、全着色成分に対する各着色成分の配合率は、シルバー色成分 (アルミニウム) 力 ¾3. 2%、白色成分 (酸化チタン)が 43. 6%、赤色成分(不溶性ァゾ顔料)が 3. 2 %である。シノレバー色成分は、着色シート 110が付着された側とは反対側からガラス 板 100を見たときのガラス板 100の色を決定する。 白色成分は、アルミニウムが有す る黒色の濁りを抑え、着色シート 110が付着された側とは反対側からガラス板 100を 見たときにガラス板 100の色に明るさを付与する。赤色成分の赤色は、ガラス基板 10 1自身の色である緑色の補色であり、着色シート 110が付着された側とは反対側から ガラス板 100を見たときに、ガラス基板 101自身が有する緑色を感じに《して、ガラ
ス基板 101を無色透明に見えるようにする。
[0033] ガラス基板 101の緑色の反射スペクトルの強度は、ガラス基板 101の厚みやガラス 基板 101中の鉄成分の含有率により変化する。従って、着色シート 110の着色成分 含有層 112中の全着色成分に対する補色成分としての赤色成分の含有率は、ガラ ス基板 101の色に応じて、即ち、ガラス基板 101の厚みやガラス基板 101中の鉄成 分の含有率に応じて変更することができる。
[0034] 図 3は、本発明の実施の形態 1に係るガラス板 100において、ガラス基板 101の厚 み及び着色成分含有層 112中の全着色成分に対する赤色成分の含有率と、ガラス 基板 101の色合いとの関係を示した図である。図 3において、縦軸は着色シート 110 の着色成分含有層 112に含まれる全着色成分に対する赤色成分の含有率、横軸は ガラス基板 101の厚みである。赤色成分の含有率及びガラス基板 101の厚みを種々 に変化させて、着色シート 110が付着された側とは反対側から見たガラス基板 101の 色合いを「赤色」、「透明」、「緑色」のいずれかに判別した。
[0035] 図 3に示すように、ガラス基板 101の緑色のスペクトル強度と、着色成分含有層 112 の赤色のスペクトル強度とがバランスすると、着色シート 110が付着された側とは反対 側から見たガラス基板 101は無色透明に見える。
[0036] ガラス基板 101が厚くなると、ガラス基板 101の緑色のスペクトル強度が強くなるの で、着色シート 110が付着された側とは反対側から見たガラス基板 101は緑色に見 える。ガラス基板 101が薄くなると、ガラス基板 101の緑色のスペクトル強度が弱くな るので、着色シート 110が付着された側とは反対側から見たガラス基板 101は赤色に 見える。
[0037] 着色成分含有層 112中の全着色成分に対する赤色成分の含有率が多くなると、着 色成分含有層 112の赤色のスペクトル強度が強くなるので、着色シート 110が付着さ れた側とは反対側から見たガラス基板 101は赤色に見える。着色成分含有層 112中 の全着色成分に対する赤色成分の含有率が少なくなると、着色成分含有層 112の 赤色のスペクトル強度が弱くなるので、着色シート 110が付着された側とは反対側か ら見たガラス基板 101は緑色に見える。
[0038] 以上より、ガラス基板 101の厚みを X (mm)、着色シート 110の着色成分含有層 11
2に含まれる全着色成分に対する赤色成分の含有率を y (% )としたとき、厚み X及び 含有率 yが図 3に斜線を付した領域内にあるとき、即ち、以下の式(1)関係を満足す るとき、着色シート 110が付着された側とは反対側から見たガラス基板 101は擬似的 に無色透明に見える。
[0039] 0. 23x+ l . 2≤y≤0. 23x + 2. 0 · · · (1)
例えば、厚み Xが 3mmのガラス基板 101に赤色成分の含有率 yが 2. 29 ± 0. 4% の範囲内にある着色シート 110を付着した場合、厚み Xが 5mmのガラス基板 101に 赤色成分の含有率 yが 2. 75 ± 0. 4%の範囲内にある着色シート 110を付着した場 合、厚み Xが 6mmのガラス基板 101に赤色成分の含有率 yが 2. 98 ± 0. 4%の範囲 内にある着色シート 110を付着した場合、厚み Xが 8mmのガラス基板 101に赤色成 分の含有率 yが 3. 44± 0. 4%の範囲内ある着色シート 110を付着した場合、いず れも着色シート 110が付着された側とは反対側から見たガラス基板 101は無色透明 に見える。
[0040] ガラス基板 101が緑色に見えることを抑えるという本発明の特徴を定量的に測定し た。使用した測定器の概略構成を図 4に示す。この測定器は島津製作所製の分光光 度計(UV3150)で、光源としてのハロゲンランプ 501、回折格子 502、試料または校 正用鏡 503、フォトマルチプライヤ 504を備えている。校正のために試料の代わりに 校正用鏡 503を使用した場合の反射率を 100%とした。
[0041] 図 5A及び図 5Bは、本発明の実施の形態 1における試料 1の分光反射率を示す図 である。各図において、縦軸は反射率であり、横軸は波長である。点線は、ガラス基 板 101の片面に着色シート 110を付着したガラス板 100の着色シート 110側の面に ついての分光反射率であり、一点鎖線は、ガラス基板 101単体についての分光反射 率であり、実線は、ガラス基板 101の片面に着色シート 110を付着したガラス板 100 のガラス基板 101側の面についての分光反射率である。図 5Aは、測定した波長範 囲である波長 350nmから 800nmまでの範囲の分光反射率を示している。図 5Bは、 緑色の反射スペクトルがわ力、りやすいように、図 5Aの可視光域である波長 450nmか ら 650nmまでの範囲の分光反射率を拡大して示している。測定で使用したガラス板 100は、厚さ 6mmのガラス基板 101の片面に、全着色成分に対して赤色成分を 3. 2
%含有する着色成分含有層 112を備えた着色シート 110が付着されていた。
[0042] 着色シート 110が付着されていないガラス基板 101単体については、波長 500nm 力 600nmまでの緑色の波長帯域で反射率が高ぐ反射率曲線はこの範囲内にピ ークを有する山状である。これは、ガラス基板 101が緑色に見えることを定量的に表 している。
[0043] これに対して、ガラス基板 101に着色シート 110を付着したガラス板 100のガラス基 板 101側の面の反射率曲線は、波長 500nmから 600nmまでの緑色の波長帯域内 にピークを有する山状にはなっていなレ、。これは、着色シート 110が付着されることに よって、ガラス基板 101が緑色に見えることが抑えられていることを定量的に示してい る。つまり、ガラス基板 101で反射した緑色のスペクトルと、着色シート 110で反射し た赤色のスペクトルとが合成されて、擬似的にガラス基板 101が無色透明に見えるの である。
[0044] 試料 1のガラス基板と産地が異なり、緑色の度合いが異なるガラス基板 101を用い た試料 2, 3について、試料 1と同様に分光反射率を測定した。図 6Aは、測定した波 長範囲である波長 350nmから 800nmまでの範囲の試料 2についての分光反射率を 示した図である。図 6Bは、緑色の反射スペクトルがわ力りやすいように、図 6Aの可視 光域である波長 450nmから 650nmまでの範囲の分光反射率を拡大して示している 。図 7Aは、測定した波長範囲である波長 350nmから 800nmまでの範囲の試料 3に ついての分光反射率を示した図である。図 7Bは、緑色の反射スペクトルがわかりや すいように、図 7Aの可視光域である波長 450nmから 650nmまでの範囲の分光反 射率を拡大して示している。各図において、縦軸は反射率であり、横軸は波長である 。点線は、ガラス基板 101の片面に着色シート 110を付着したガラス板 100の着色シ ート 110側の面についての分光反射率であり、一点鎖線は、ガラス基板 101単体に ついての分光反射率であり、実線は、ガラス基板 101の片面に着色シート 110を付 着したガラス板 100のガラス基板 101側の面についての分光反射率である。
[0045] 着色シート 110が付着されていないガラス基板 101単体についての反射率のピー クは、試料 1では波長が約 550nmのときに 6. 8%であり、試料 2では波長が約 525η mのときに 7. 5%であり、試料 3では波長が約 500nmのときに 8. 0%である。このよう
に反射率のピーク値及びそのときの波長は試料 1, 2, 3で互いに異なる。ところが、 ガラス基板 101に着色シート 110を付着したガラス板 100のガラス基板 101側の面の 分光反射率は緑の波長帯域でピーク値をとらず、擬似的にガラス基板 101が無色透 明に見える点については試料 1, 2, 3で共通している。
[0046] 以上のように、本実施の形態のガラス板 100は、既存の汎用されているソーダガラ スからなるガラス基板 101の片面に、ガラス基板 101自身の色である緑色の補色であ る赤色成分を含有した着色シート 110が付着されているので、ガラス基板 101の緑色 の反射スペクトルを着色シート 110の赤色の反射スペクトルで打ち消すことができる。 この結果、ガラス基板 101を擬似的に無色透明に見せることができる。
[0047] 本発明のガラス板 100は、上記に限定されず、その用途や製造などを考慮して適 宜変更することができる。
[0048] 例えば、上記の例ではガラス基板 101自身の色が緑色であり、着色シート 110が赤 色成分を含む場合を示したが、ガラス基板 101の色は緑色に限定されず、これ以外 の色であっても良い。ガラス基板 101自身の色にかかわらず、ガラス基板 101の反射 スペクトルの補色である補色成分を含む着色シートをガラス基板 101の片面に積層 することにより、ガラス基板 101を擬似的に無色透明に見せることができる。
[0049] 上記の例では、着色シート 110が付着された側と反対側から見たときガラス板 100 がシルバー色に見えるようにするために、着色シート 110の着色成分含有層 112が、 補色成分としての赤色成分に加えて、シノレバー色成分としてのアルミニウムと、白色 成分としての酸化チタンとを含む例を示したが、補色成分以外の着色成分 (以下、「 非補色成分」という)は、ガラス板 100の所望する色に応じて自由に選択することがで きる。ガラス基板 101の片面に付着された着色シート 110が補色成分を含むので、着 色シート 110が非補色成分を含む場合には、着色シート 110が付着された側とは反 対側からガラス板 100を見たとき、非補色成分の色にかかわらず、ガラス板 100を、 ガラス基板 101自身の色が混ざっていない非補色成分の純粋な色に見せることがで きる。また、着色シート 110が非補色成分を含まなくても良レ、。この場合には、ガラス 板 100を、ガラス基板 101自身の色が認識されない無色透明に見せることができる。
[0050] 上記の例では、着色シート 110中の全着色成分が着色成分含有層 112中に含有
されてレ、たが、全着色成分を粘着剤を含む粘着層 111に含有させて着色成分含有 層 112を省略してもよい。これにより、着色シート 110の製造工程において、着色成 分含有層 112を形成する工程を削減することができる。
[0051] 上記の例では、着色シート 110中の全着色成分が着色成分含有層 112中に含有 されていたが、補色成分を粘着層 111に含有させ、非補色成分を着色成分含有層 1 12に含有させても良い。これにより、粘着層 111中の補色成分がガラス基板 101自 身の色を打ち消してガラス基板 101を擬似的に無色透明に見せ、その下層の着色 成分含有層 112の非補色成分の色をガラス基板 101を通じて見せることができる。従 つて、例えば、着色成分含有層 112として複数の着色成分を用レ、て描いた図柄等を フィルム層 113上に印刷などで形成することができる。
[0052] 上記の例では、自己支持性を有し、補色成分及び非補色成分を含む着色シート 1 10を粘着層 111を介してガラス基板 101に付着したが、本発明はこれに限定されな レ、。例えば、ガラス基板 101の片面に、補色成分を塗布し、次いでこの上に非補色成 分を含む着色シート 110を粘着層 111を介して付着しても良い。これによれば、補色 成分を塗布する工程において、ガラス基板 101の透明度や色を確認しながら塗布量 (あるいは塗布厚さ)を調整することができるので、ガラス基板 101の厚さや色が種々 に異なる多品種少量生産に容易に対応することができる。補色成分の塗布方法とし ては、スプレー法、印刷法など周知の方法を用いることができる。
[0053] (実施の形態 2)
図 8A及び図 8Bは、図 1の VIII— VIII線に相当する断面に沿った、本発明の実施の 形態 2に係るガラス板 100の要部の拡大断面図である。図 8Aでは、ガラス基板 101 の端面 101a (図 1参照)に、略円筒面となるように曲面加工 121が施されている。図 8 Bでは、ガラス基板 101の端面の端縁に面取り加工 122が施されている。ここで、「端 面」とは、着色シート 110が付着された面及びこれと反対側の面を除くガラス基板 10 1の面をいう。
[0054] ガラス基板 101自身の色(例えば緑色)は、ガラス基板 101を、これとほぼ平行な方 向力、ら見たとき、端面 101aにおいて目立ちやすレ、。ガラス基板 101の端面 101aに 図 8Aの曲面加工 121又は図 8Bの面取り加工 122を施すと、ガラス基板 101内から
端面 101aに入射する光は、端面 101aで乱反射されるので、ガラス基板 101外に出 射しに《なる。従って、ガラス基板 101の端面 101aにおいてもガラス基板 101自身 の色を見えにくくすることができる。
[0055] 以上のように、本実施の形態では、ガラス基板 101の端面 101aに曲面加工 121又 は面取り加工 122が施されているので、ガラス基板 101内から端面 101aに入射する 緑色スペクトルは乱反射され、緑色スペクトルが端面 101aからガラス基板 101外に 出射するのを防止できる。従って、ガラス板 100を、これとほぼ平行な方向から見たと きにおいても、ガラス基板 101自身の色を視認されに《することができる。
[0056] 図 8A及び図 8Bにおいて、ガラス基板 101の端面 101aに、つや消し加工(粗面化 加工)を更に施しても良レ、。この場合には、ガラス基板 101内から端面 101aに入射 する光は端面で一層乱反射されやすくなるので、ガラス基板 101自身の色を一層視 認されに《することができる。
[0057] ガラス基板 101の端面 101aに、上記の曲面加工 121及び面取り加工 122を施すこ となくつや消し加工 (粗面化加工)を施しても良い。この場合も、ガラス基板 101内か ら端面 101 aに入射する光は端面 101aで乱反射されるので、ガラス基板 101自身の 色を視認されにくくすることができる。
[0058] (実施の形態 3)
図 9は、本発明のガラス板 100を用いたテレビ台 900の斜視図である。図 9におい て、テレビ台 900は、中間板 901、底板 902、側板 903、天板 904を備える。図 10は 、テレビ台 900にテレビ 905を設置した状態を示した斜視図である。図 10ように、テレ ビ台 900の天板 904の上にテレビ 905が設置されている。中間板 901、底板 902、天 板 904の大きさは同じでも異なっていても良い。
[0059] テレビ台 900を構成する板状部材の少なくとも 1つは、上記の本発明のガラス板 10 0からなる。好ましくは、棚板の少なくとも 1つが上記の本発明のガラス板 100からなる 。ここで、「棚板」とは、図 9及び図 10から明らかなように、その上に物を置くための板 状の部材をいい、図 9のテレビ台 900では、中間板 901、底板 902、天板 904が該当 する。
[0060] テレビ台 900が本発明のガラス板 100を含むことにより、ガラス基板 101を用いなが
ら、それ自身の色が目立たなくなるので、低コストで、明るく高級感のあるテレビ台 90 0を実現できる。更に、非補色成分を含有させることにより、テレビ台 900の意匠的価 値を向上させることができる。
[0061] なお、図 9及び図 10では、テレビ台 900の一部に本発明のガラス板 100を用いた 例を示したが、テレビ台以外の各種家具 (例えば、テーブル、棚、台など)の一部材と して (好ましくは棚板として)本発明のガラス板 100を用いても良い。
[0062] 以上に説明した実施の形態は、いずれもあくまでも本発明の技術的内容を明らか にする意図のものであって、本発明はこのような具体例にのみ限定して解釈されるも のではなぐその発明の精神と請求の範囲に記載する範囲内でいろいろと変更して 実施することができ、本発明を広義に解釈すべきである。
産業上の利用可能性
[0063] 本発明のガラス板では、ガラス基板自身の色が見えにくぐガラス基板が擬似的に 無色透明に見える。従って、例えばテレビ台や装飾用のテーブルなどの各種家具に 利用することができる。