明 細 書
半導体超微粒子を含有する組成物及びその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、蛍光性や発光性を有する半導体超微粒子 (量子ドット、ナノドット、半導 体ナノクリスタル等と呼ばれることもある)を含有する液体組成物又は榭脂組成物と、 これらを製造する方法に関する。
背景技術
[0002] 今日、半導体は様々な用途に広く利用されている力 半導体を超微粒子と呼ばれ る粒径 l〜100nm程度の粒子とすると、バルタとは異なる特有の性質を持つことが知ら れている。例えば CdSe、 CdTeなどのカルコゲンィ匕合半導体超微粒子はバンド構造が 粒径依存性を有し、いわゆる量子閉じ込め効果を生じる。それにより、粒径によって 異なる波長 (色)の蛍光特性や発光特性を示すため、有機 EL、蛍光マーカー、太陽 電池、レーザ光源を始めとする様々な光学素子の材料としての応用が期待されて ヽ る。こうしたカルコゲンィ匕合半導体超微粒子に関する研究は盛んに行われており、例 えば特許文献 1には電子デバイス用材料として好適な発光特性を有する半導体超微 粒子が開示されている。また、非特許文献 1に記載されているように既に商品化され ているものもある。
[0003] 上記のような従来入手可能な半導体超微粒子は安定性の点で問題がある。即ち、 励起光を照射し続けたときの発光強度の低下が顕著であるため、長時間の使用には 適さない。また、低温条件下では発光特性が極端に低下するため、使用環境に制約 がある。また、非常に高価であるため、用途が実験用等、特殊な用途に限定される。
[0004] 価格が高!、ことの原因の一つはその製造方法にある。即ち、上記のように従来巿販 されている半導体超微粒子は、例えば特許文献 2に開示されているようなガス中蒸発 法で製造されている。ガス中蒸発法は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で対 象物質を加熱することで蒸発させ、その蒸気が雰囲気ガスと衝突して運動エネルギ 一を失 、且つ急冷される過程で超微粒子を生成するものである。こうした製造方法は 爆発の危険性がある上、粒子径の揃った超微粒子を多量に製造するのは困難であり
、そのためにコストが高くつく。
[0005] 一方、最近、上記方法に代わる半導体超微粒子の製造方法として、非特許文献 2 に記載のような水性合成法が提案されている。即ち、この方法は、カドミウム (Cd)ィォ ンと水溶性チオール (R- SH: Rはアルキル基)が溶解した溶液に NaHX (Xは硫黄 (S)、 セレン (Se)、テルル (Te)などのカルコゲン類)水溶液を混合し、加熱成長させること で、カルコゲン化合半導体超微粒子 (ここでは CdX)の表面を水酸化チオール分子が 被覆して成る水溶性半導体超微粒子が溶解した水溶液を生成するものである。
[0006] また、こうした水溶液中から水溶性半導体超微粒子を取り出す方法としては、カル コゲンィ匕合半導体超微粒子の表面を被覆している水溶性チオールを配位子交換に よって疎水性チオールに置換することで、或いは、カルコゲン化合半導体超微粒子 の表面を被覆している水溶性チオールに界面活性剤を結合させて複合ィ匕することで クロ口ホルム等の有機溶媒への可溶性を高め、有機溶媒に溶解させた状態でポリマ 一 (榭脂)として固体ィ匕する方法が知られている。
[0007] 上記のような水性合成法は製造工程が比較的単純であり、大量生産に向くためコ スト低減には有用である。しカゝしながら、水性合成法で製造される半導体超微粒子は 、ガス中蒸発法で製造される半導体超微粒子に比べて発光強度が劣るという問題が ある。また、発光強度の安定性は従来とほぼ同程度であり、殆ど改善はみられない。
[0008] また、ポリマーとして固体ィ匕することにより、半導体超微粒子の用途がさらに拡大す るため、このような半導体超微粒子を榭脂中へ固定することに関して、従来より種々 の方法が研究され、開示されてきた。半導体超微粒子を固体ポリマーに導入する方 法の一例として、非特許文献 3に記載された方法がある。これは、 CdSe半導体超微 粒子を ZnSで被覆して疎水性とし、これと表面安定剤及びモノマーとをあらカゝじめ混 合しておき、熱重合により榭脂化するという方法である。この方法によって得られる榭 脂の蛍光量子収率 (蛍光による吸収光子数と放出光子数の比率)は最高 40%程度と 比較的高いものの、榭脂化すると蛍光量子収率が 2割程度低下してしまうという問題 力 Sあった (非特許文献 3の表)。また、この方法で得られる榭脂はフルカラーに対応可 能であるという大きなメリットを有している力 処理が高温法であるために、コスト的に 改善の余地が残されて!/、た。
半導体超微粒子を榭脂中へ固定する方法の他の例として、非特許文献 4には、水 溶性 CdTe超微粒子を界面活性剤(ォクタデシル- p-ビュルべンジルジメチルアンモ ユウム塩ィ匕物: OVDAC)で被覆してスチレンモノマー中への分散を可能とし、その後 ラジカル重合させることにより透明固体ポリマーを得る方法が記載されている。しかし 、この方法によって得ることができる榭脂では、蛍光量子収率が 20%以下にとどまり、 発光強度が不十分である。
特許文献 1:特開 2004 - 315661号公報
特許文献 2 :特開平 5— 261267号公報 (段落 0004)
特許文献 3:特開 2004— 292632号公報
非特許文献 1 :「ノヽィ'クォリティー、プロダクション 'クォンティティーズ 'ォブ 'セミコンダ クタ^ ~ ·ナノクリスタルズ'フォ^ ~ ·ザ ·ナノテクノロジ^ ~ ·リサーチヤー (High Quality, Pro duction Quantities of semiconductor Nanocrystals for the Nanotechnology Research er)」、 [online],オーシャンフォト-タス株式会社、 [平成 16年 11月 11日検索]、インタ ~~ネット < URL : http://www.oceanphotonics.com/pdf/し oreEviDots.pdr
非特許文献 2 :ニコライ'ガポニック (Nikolai Gaponik)、他 8名、「チオール-キヤッビング •ォブ · CdTe ·ナノクリスタルズ: アン ·オルタナティブ ·トウ ·オルガノメタリック ·シンセ アイツグ,ノレ ~~ッ u'nio卜 Capping ofし dTe Nanocrystals: An Alternative to Organomet allic Synthetic Routes)] ,ザ'ジャーナル'ォブ'フィジカル'ケミストリー (The Journal of Physical Chemistry), B, 2002, 106, pp.7177- 7185
非特許文献 3 :ジンゥック 'リー (Jinwook Lee),他 4名、「フル'カラ^ ~ ·ェミッション'フロ ム ·Π-νΐ·セミコンダクタ^ ~ ·クワンタム'ドット-ポリマ^ ~ ·コンポジッッ (Full Color Emissi on from II— VI semiconductor Quantum Dot— Polymer Gomposites)」、 /'トノ ンスト ·マ テリアルズ (Advanced Materials), 2000, 12, No.15, August 2, pp.1102- 1105 非特許文献 4 :ハオ'ツァン (Hao Zhang),他 7名、「フロム'ウォータ一-ソリュブル ' CdT e ·ナノクリスタルズ 'トウ ·フルオレセント ·ナノクリスタル-ポリマ^ ~ ·トランスパレント 'コン ポジッッ.ユージング.ポリメリザブル.サーファクタンッ (From Water- Soluble CdTe Na nocrystals to Fluorescent Nanocrystal— Polymer Transparent Composites Using Poly merizable Surfactants)」、アドバンスト 'マテリアルズ (Advanced Materials), 2003, 15,
No.10, May 16, pp.777— 780
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 本発明は上記のような課題に鑑みて成されたものであり、その第 1の目的とするとこ ろは、製造工程が簡単な、半導体超微粒子を含有する液体組成物及び榭脂組成物 を安価に得ることが可能な製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的 とするところは、発光強度が高く且つ長時間の使用でも特性の劣化の少ない、また低 温条件下でも高 ヽ発光特性を維持できる安定性の高!ヽ半導体超微粒子を含有する 液体組成物、及びそうした液体組成物を製造する方法を提供することにある。さらに また、本発明の目的とするところは、上記のような特性を備えた半導体超微粒子を含 有する榭脂組成物及びそうした榭脂組成物を製造する方法を提供することにある。 課題を解決するための手段、及び発明の効果
[0011] 上記課題を解決するために成された第 1発明に係る半導体超微粒子を含有する液 体組成物は、陽イオン性分子で表面が被覆された半導体超微粒子がイオン性液体 中に分散されて成ることを特徴として 、る。
[0012] また上記課題を解決するために成された第 2発明は、上記第 1発明に係る半導体 超微粒子を含有する液体組成物を製造する方法であって、
陽イオン性分子で表面が被覆された半導体超微粒子が水中に分散した水溶液を 疎水性イオン性液体にカ卩え、その混合液を撹拌し、その後に相分離した上相の水を 除去することにより、半導体超微粒子が分散されて成るイオン性液体を得るようにした ことを特徴としている。
[0013] イオン性液体は不揮発性、不燃性、高イオン伝導性と!/ヽぅ特徴を有する一種の溶 媒である。このイオン性液体中に半導体超微粒子を分散させた複合体 (第 1発明に 係る液体組成物)にあっては、もともと安定なイオン性液体中で半導体超微粒子の表 面を被覆する陽イオン性分子がその表面力も離脱しに《なっているために、半導体 超微粒子同士がかたまったりくっついたりしにくぐその本来の特性を発揮し易い。そ れによって、蛍光強度が高ぐし力もその蛍光特性が時間的に安定であって長時間、 高い蛍光強度を維持し得る。また、 -180°C以下のごく低温から 120°C以上の高温まで
の幅広 ヽ温度範囲で高 、蛍光を発し得る。
[0014] 即ち、第 1発明に係る半導体超微粒子を含有する液体組成物によれば、従来の水 性合成法で製造される半導体超微粒子を含む水溶液に比べて、高!ヽ蛍光強度を得 ることができ、し力も、その蛍光強度は時間的な安定性が良好であり、さらに使用温 度条件も非常に広い。したがって、この半導体超微粒子を含有する液体組成物は、 使用環境や使用条件の制約が少なぐ幅広い用途に利用することができる。
なお、上記特許文献 3には微粒子を含有する分散液にイオン性液体を添加し、微 粒子をイオン性液体に取り込む技術が開示されている力 この方法は単に微粒子を イオン性液体中に濃縮させるのみであり、半導体超微粒子に対してこの技術を用い たとしても、その蛍光特性が向上したり、蛍光特性の劣化が防止されるものではなか つた。一方、本発明は半導体超微粒子として陽イオン性分子によって表面が被覆さ れた半導体超微粒子を用いるため、イオン性液体中で半導体超微粒子同士がきれ いに分散し、先に述べたような優れた蛍光特性が発揮される。
[0015] また、第 2発明に係る半導体超微粒子を含有する液体組成物の製造方法にお!、て 、陽イオン性分子で表面が被覆された半導体超微粒子が水中に分散した水溶液は 、従来知られている水性合成法などにより比較的容易に生成することができる。そし て、こうした半導体超微粒子水溶液と疎水性のイオン性液体とを接触させて撹拌する だけで、上記のような優れた特性を有する半導体超微粒子イオン性液体溶液 (半導 体超微粒子を含有する液体組成物)を得ることができる。しカゝも、水溶液中からイオン 性液体溶液中への半導体超微粒子の移動はきわめて効率良く行われ、水溶液中に は半導体超微粒子は殆ど残留しな ヽ。
[0016] したがって、第 2発明に係る製造方法は、簡便であって時間も掛力 ず大量生産に 向いているため製造コストが低い。これにより、上述したような優れた特性を有する半 導体超微粒子イオン性液体溶液を安価に提供することが可能となる。
[0017] また、第 2発明に係る半導体超微粒子を含有する液体組成物の製造方法では、好 ましくは、前記半導体超微粒子が分散されて成るイオン性液体に対し加熱処理をカロ えるとよい。加熱温度は 80〜150°Cとすることが、蛍光強度の向上のために特に有効 である。このような加熱処理によって、半導体超微粒子を含有する液体組成物の蛍
光強度はさらに向上する。
[0018] 第 1発明に係る半導体超微粒子を含有する液体組成物の一態様として、前記半導 体超微粒子はカルコゲンィ匕合半導体超微粒子であるものとすることができる。即ち、 硫黄、セレン、テルル等の化合半導体超微粒子である。
[0019] 一方、第 1発明におけるイオン性液体としては従来より知られた各種の疎水性ィォ ン性液体を使用することができるが、常温 (室温)又は常温に近い温度条件下におい て液体状であり、空気中でも分解や劣化を起こさないような安定なものが望ましい。 好適なイオン性液体の具体例としては、下記の一般式(1)〜 (4)の ヽずれかで表さ れるカチオンと、ァ-オン (A— )より成るものを挙げることができる。
[化 1]
R1 Z s/ 、Rゥ2 … )
[化 2]
[化 3]
[NRXH4-X]+ … ( 3 )
[化 4]
[PRXH4-X]+ … (4 ) 上記の式(1)〜(4)において、 Rは炭素数 12以下のアルキル基又はエーテル結合
を含み炭素と酸素の合計数が 12以下であるアルキル基を表し、式(1)において 、 R2は炭素数 1〜4のアルキル基又は水素原子を表す。式(1)において Rと、 R1又は R2 とは同一でないことが好ましい。また、式(3)、 (4)において、 Xは 1〜4の整数を表す 。他方、ァ-オン (A—)としては例えば、ビス(トリフロロメチルスルホ -ル)イミド酸、過 塩素酸、テトラフルォロホウ酸、へキサフルォロリン酸、トリス(トリフロロメチルスルホ- ル)炭素酸、トリフロロメタンスルホン酸、ジシアンアミド、トリフロロ酢酸、有機カルボ- ル酸、又はハロゲンイオンより選ばれた少なくとも 1種のものを使用することができる。
[0020] このようなイオン性液体中に迅速に半導体超微粒子を移動させるとともにそのィォ ン性液体中に安定的に半導体超微粒子を存在させるためには、上記イオン性液体 に対する親和性が高いことが望ましぐ半導体超微粒子の表面を被覆する陽イオン 性分子として例えば四級アンモ-ゥム基を有するイオン性有機分子を用いるとよい。
[0021] また、上記課題を解決するために成された第 3発明に係る半導体超微粒子を含有 する榭脂組成物は、陽イオン性分子で表面が被覆された半導体超微粒子が陽ィォ ン性高分子中に分散されて成ることを特徴としている。即ち、当該半導体超微粒子を 含有する榭脂組成物は、陽イオン性分子で表面が被覆された半導体超微粒子が、ィ オン性液体型モノマー中に分散されてなる半導体超微粒子モノマー溶液を重合する こと〖こより得られるちのである。
[0022] さらに、上記課題を解決するために成された第 4発明は、上記第 3発明に係る半導 体超微粒子を含有する榭脂組成物を製造する方法であって、
陽イオン性分子で表面が被覆された半導体超微粒子が水中に分散した水溶液を 疎水性イオン性液体型モノマーに加え、その混合液を撹拌し、その後に相分離した 上相の水を除去し、重合することにより、半導体超微粒子が分散されて成る陽イオン 性高分子を得るようにしたことを特徴として 、る。
[0023] 第 3発明に係る半導体超微粒子を含有する榭脂組成物の一態様として、半導体超 微粒子は、硫黄、セレン、テルル等の化合半導体超微粒子であるカルコゲンィ匕合半 導体超微粒子とすることができる。
[0024] イオン性液体型モノマーは、本発明に係るイオン性液体の一種であって、上述した ようなイオン性液体の特性を持ち合わせて!/、るが、所定条件の下で重合してポリマー
となるという特性をさらに有するものである。本発明において好適に使用することがで きるイオン性液体型モノマーの具体例としては、下記の一般式(5)〜(8)の 、ずれか で表されるカチオンと、ァ-オン (A— )より成るものを挙げることができる。
[化 5] … )
ヽ R4
[化 6]
1©] … (6 ) R
[化 7]
[NRXH4-X] + … (7 )
[化 8]
[PRXH4-X]+ … (8 ) 上記式(5)〜(8)において、 Rは炭素数 12以下のアルキル基又はエーテル結合を 含み炭素と酸素の合計数が 12以下であるアルキル基を表し、式(5)において R3、 R4 はそれぞれ炭素数 1〜4のアルキル基を含み、 R3、 R4のいずれか又は両方に一箇所 以上の二重結合を含む官能基を表す。式(5)において Rと、 R3又は R4とは同一でな いことが好ましい。また、式(7)、 (8)において、 Xは 1〜4の整数を表す。ァ-オン (A_ )としては、本発明に係イオン性液体と同様のもの、すなわち例えば、ビス(トリフロロメ チルスルホ -ル)イミド酸、過塩素酸、テトラフルォロホウ酸、へキサフルォロリン酸、ト リス(トリフロロメチルスルホ -ル)炭素酸、トリフロロメタンスルホン酸、ジシアンアミド、 トリフロロ酢酸、有機カルボニル酸、又はハロゲンイオンより選ばれた少なくとも 1種の
ものを使用することができる。
[0025] このイオン性液体型モノマーに陽イオン性分子で表面が被覆された半導体超微粒 子を所定の方法により分散させたモノマー溶液 (即ち、半導体超微粒子イオン性液 体型モノマー溶液)を、重合することにより、半導体超微粒子が榭脂中に固定された 榭脂組成物を得る際には、榭脂化を促進するために架橋剤を適量添加し、加熱処 理ゃ紫外線照射処理を行うだけでよぐ簡便且つ安価である。しかも、榭脂ィ匕したとし ても、発光強度の低下が殆ど起こることはなぐ本発明に係る半導体超微粒子を含有 する液体組成物の備える、上述したような種々の優れた特性が保持される。
[0026] また、第 4発明に係る半導体超微粒子を含有する榭脂組成物の製造方法では、好 ましくは、前記半導体超微粒子イオン性液体型モノマー溶液に対し、加熱処理を加 えるとよい。加熱処理は、重合前、重合時又は重合後のいずれかにおいて行うことが 好ましい。加熱温度は 80〜150°Cとすることが、蛍光強度の向上のために特に有効で ある。このような加熱処理によって、半導体超微粒子を含有する榭脂組成物の蛍光 強度はさらに向上する。
[0027] すなわち、本発明では、上記のような優れた特性を備えた半導体超微粒子を含有 する液体組成物、及び、同等の優れた特性を備えた半導体超微粒子を含有する榭 脂組成物を得ることが可能である。したがって、液体状又は固体状のどちらかの組成 物を用いるかを、利用形態や利用目的に応じて選択することができる。
図面の簡単な説明
[0028] [図 1]本発明の一実施例による半導体超微粒子を含有する液体組成物の製造方法 の製造工程を示すフローチャート。
[図 2]図 1に示した製造工程を模式的に示した図。
[図 3]図 2中の水溶液に含まれる陽イオン性半導体超微粒子の一例の模式図。
[図 4]図 2中のイオン性液体の一例を示す図。
[図 5]半導体超微粒子水溶液と半導体超微粒子イオン性液体溶液との吸収スぺタト ル特性の比較を示す図。
[図 6]半導体超微粒子水溶液と半導体超微粒子イオン性液体溶液との蛍光スぺタト ル特性の比較を示す図。
[図 7]本実施例による半導体超微粒子イオン性液体溶液の時間的安定性の実験結 果を示す図。
[図 8]撹拌処理前後の半導体超微粒子水溶液と半導体超微粒子イオン性液体溶液 との実際の蛍光の発生状況の比較を示す図。
[図 9]半導体超微粒子水溶液と半導体超微粒子イオン性液体溶液との低温条件下 での蛍光の発生状況の比較を示す図。
[図 10]本発明の一実施例による半導体超微粒子を含有する榭脂組成物の製造方法 の製造工程を示すフローチャート。
[図 11]図 10に示した製造工程を模式的に示した図。
[図 12]図 10中のイオン性液体型モノマーの一例を示す図。
[図 13]半導体超微粒子水溶液と半導体超微粒子イオン性液体型モノマー溶液との 吸収スペクトル特性の比較を示す図。
[図 14]半導体超微粒子水溶液と半導体超微粒子イオン性液体型モノマー溶液との 蛍光スペクトル特性の比較を示す図。
[図 15]本発明の一実施例によって得た半導体超微粒子の重合前及び重合後の発光 スペクトル特性を比較した図。
符号の説明
[0029] 10· "水
11…陽イオン性半導体超微粒子
12…イオン性液体
13· · 'イオン性液体型モノマー
発明を実施するための最良の形態
[0030] [本実施例の半導体超微粒子を含有する液体組成物の製造方法]
まず、本発明の一実施例による半導体超微粒子を含有する液体組成物の製造方 法について説明する。図 1はこの製造方法の製造工程を示すフローチャートである。
[0031] まず水溶液で陽イオン性分子で表面が被覆された半導体超微粒子 (以下、陽ィォ ン性半導体超微粒子と ヽぅ)の合成を行う (ステップ S 1)。これは従来知られて ヽる水 性合成法 (具体的には例えば上記非特許文献 2に記載の方法)を利用することがで
きる。このときに水溶液中に含まれる陽イオン性半導体超微粒子 11は、図 3に示すよ うに、例えばテルル化カドミウム (CdTe)等の半導体超微粒子の表面を四級アンモ- ゥム基を持つ陽イオン性分子が被覆している構造である。一方、これとは別に疎水性 イオン性液体 12を用意する。ここでは、図 4に示すような構造を有するイミダゾリゥム カチオンを構成要素とする疎水性イオン性液体を使用している。なお、本願発明者 は自らこうしたイオン性液体を合成した力 同様の分子としては例えばフル力 (Fluka) 社が巿販するプロダクト No.77896の 1-ブチル -3-メチルイミダゾリゥム 'ビス(トリフロロ メチノレサノレホ-ノレ)イミド酸 (1— buty卜 3— methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl) imide)など;^ある。
[0032] そして、図 2 (a)、(b)に示すように、陽イオン性半導体超微粒子 11が水 10に溶解( 分散)した水溶液(半導体超微粒子水溶液)をイオン性液体 12に混合する (ステップ S2)。イオン性液体 12は疎水性であり、その比重(上記例では 1.4程度)は水よりも大 きいため、図 2 (c)に示すように上相が半導体超微粒子水溶液、下相がイオン性液体 12と完全に上下二相に分離する (ステップ S3)。
[0033] 次に上記液体を所定時間、具体的には例えば数分程度、撹拌する (ステップ S4)。
なお、このステップにおいては、半導体超微粒子水溶液と疎水性のイオン性液体 12 とが十分に混合されればよぐより短時間で両者が混合されれば工程時間を短縮す ることが可能である。イオン性液体 12は高イオン伝導性を有しており、水溶液中に存 在する半導体超微粒子 11はイオン性液体 12に対して親和性が非常に高い陽イオン 性分子で表面が被覆されている。そのため、撹拌によって、水溶液中の半導体超微 粒子 11はより存在し易いイオン性液体 12中に次々に移動する。水とイオン性液体と は混じり合うことはないから、上記のように所定時間撹拌を行った後に、すぐに上下二 相に相分離する。但し、半導体超微粒子 11はその殆ど全て力 オン性液体 12中に 移動しており、図 2 (d)に示すように、上相は水 10、下相が半導体超微粒子 11を含 むイオン性液体 12となる (ステップ S5)。 本願発明者らの実験によれば、数分程度の 撹拌によって、上相の水中に残留する半導体超微粒子は検出不可能な程度にまで 減少し、 99.99%以上の半導体超微粒子力 Sイオン性液体中に移動したことが確認で
[0034] その後に、デカンテーシヨン及び乾燥によって上相の水 10を除去し (ステップ S6)、 図 2 (e)に示すように、下相に残った半導体超微粒子イオン性液体溶液を取り出す( ステップ S7)。この後に、特性を向上させるために、例えば 80〜150°Cの温度条件で 1 〜20分程度の加熱処理を施す (ステップ S8)。なお、イオン性液体自体は不揮発性 であるため、加熱処理によっても半導体超微粒子の含有濃度は一定に維持される。 このようにして、半導体超微粒子を含有する液体組成物として半導体超微粒子ィォ ン性液体溶液を得ることができる。
[0035] [本実施例の半導体超微粒子を含有する液体組成物の特性]
上記のようにして製造される半導体超微粒子を含有する液体組成物の特性を説明 する。図 5は図 2 (c)中のつまり撹拌処理前の上相の半導体超微粒子水溶液と図 2 (d )中のつまり撹拌処理後の下相の半導体超微粒子イオン性液体溶液との吸収スぺク トル特性を比較した図、図 6は所定の励起光を照射したときに放出される蛍光スぺク トル特性を比較した図である。また、図 8は図 2 (c)の状態の容器と図 2 (d)の状態の 容器とにそれぞれ励起光を照射したときの蛍光の放出状態を捉えた図である。
[0036] 図 5より、吸収スペクトルについてはその形状及び大きさが水溶液とイオン性液体溶 液とで殆ど変化しておらず、吸収特性が維持されていることが分かる。一方、図 6より 、蛍光強度はイオン性液体溶液のほうが水溶液よりも強くなつていることが分かる。定 量的に表すべく蛍光量子収率 φ fで言うと、水溶液の場合には φ fが 10〜20%である のに対し、イオン性液体溶液では φ fが 30%程度にまで改善される。このように、蛍光 の発光効率は高くなる。また、図 8で分かるように、撹拌後には上相の水は蛍光を放 出しておらず、半導体超微粒子が殆ど完全にイオン性液体中に移動して ヽることが 分かる。即ち、上記製造方法により、当初水溶液中で合成した半導体超微粒子を無 駄にすることなぐ非常に有効に利用できることが分かる。
[0037] また、上記ステップ S8の加熱処理によって、半導体超微粒子イオン性液体溶液の 蛍光量子効率はさらに改善される。本願発明者の実験によれば、加熱処理によって φ ίは 30%から 50〜70%にまで改善される。一般に、半導体超微粒子が水中に存在 している場合、半導体超微粒子の存在の安定性はあまり高くないため、半導体超微 粒子水溶液を加熱処理すると水溶液中で急激な粒子成長が起こり、粒径が大きくな
り過ぎて蛍光強度が激減したり粒子が黒色沈殿ィ匕を起こしたりする。それに対し、こ の半導体超微粒子イオン性液体溶液ではこうした不具合が発生するどころか、特性 が改善されると ヽぅ好ま 、結果をもたらす。
[0038] 図 7は、蛍光を発生させるために励起光を連続的に照射した場合の蛍光強度の時 間的変化を実測した結果を示す図である。図 7に示すように、水溶液の場合には光 の照射開始力 すぐに蛍光強度の低下が始まり、 90分経過後には 1/2程度にまで下 がってしまう。即ち、半減期は約 1.5時間である。これに対し、イオン性液体溶液では 励起光の照射開始から 120分経過後でも数%程度の強度低下に収まり、半減期は約 30時間である。このように、本実施例による半導体超微粒子を含有する液体組成物 では長時間の使用に対する蛍光特性の安定性が向上する。
[0039] 図 9は、液体窒素 (_196°C)で冷却したときの蛍光放出状態の相違を示す図である 。このときには水溶液、イオン性液体溶液のいずれもが凍結している。図 9に示すよう に、水溶液では蛍光強度が顕著に低下しているのに対し、イオン性液体溶液ではか なり高い蛍光強度を維持している。したがって、本実施例によるイオン性液体溶液は こうしたごく低温の環境下でも殆ど問題なく使用することができ、使用温度範囲が非 常に広がる。実際上、 -180°C以下のごく低い温度から 120°C以上の高温までの幅広 Vヽ温度範囲で、本実施例の半導体超微粒子を含有する液体組成物は高!ヽ蛍光強 度を保つことが確認できた。
[0040] [本実施例の半導体超微粒子を含有する榭脂組成物の製造方法]
本発明の一実施例による半導体超微粒子を含有する榭脂組成物の製造方法につ
V、て説明する。図 10はこの製造方法の製造工程を示すフローチャートである。
[0041] まず水溶液で陽イオン性半導体超微粒子の合成を行う(ステップ S 11)。本榭脂に 用いることができる陽イオン性半導体超微粒子は、上述の半導体超微粒子を含有す る液体組成物において用いるものと同一のものであるため、上記ステップ S1と同様の 方法で合成を行えばよい。
[0042] イオン性液体型モノマー 13を用意する。ここでは、図 12に示すような構造を有する モノマーを構成要素とするイオン性液体型モノマーを使用している。
[0043] そして、陽イオン性半導体超微粒子 11が水 10に溶解 (分散)した水溶液をイオン
性液体型モノマー 13に混合する (ステップ SI 2)。この場合も、イオン性液体型モノマ 一 13は疎水性であり、その比重が水よりも大きいため、図 11 (a)に示すように上相が 半導体超微粒子水溶液、下相がイオン性液体型モノマー 13と完全に上下二相に分 離する (ステップ S 13)。
[0044] 次に、上記液体を所定時間、具体的には例えば数分間程度、撹拌する (ステップ S 14)と、水溶液中の半導体超微粒子 11がより存在し易いイオン性液体型モノマー 13 中に次々と移動し、所定時間撹拌を行った後には、上下二相に相分離する。このス テツプにお ヽては、半導体超微粒子水溶液と疎水性のイオン性液体型モノマー 13と が十分に混合される程度に撹拌を行えばよい。図 11 (b)に示すように、上相が水 10 、下相が半導体超微粒子 11を含むイオン性液体型モノマー 13 (すなわち、半導体 超微粒子イオン性液体型モノマー溶液)となる (ステップ S 15)。
[0045] その後、デカンテーシヨン及び乾燥によって上相の水 10を除去し (ステップ S16)、 図 11 (c)に示すように、下相に残った半導体超微粒子イオン性液体型モノマー溶液 を取り出す (ステップ S 17)。この後に、上述の液体組成物の場合 (ステップ S8)と同 様に、蛍光量子効率をさらに向上させるために、例えば 80〜150°Cの温度条件で 1〜 20分程度の加熱処理を施す (ステップ S 18)。
[0046] 続ヽて、こうして得た半導体超微粒子イオン性液体型モノマー溶液を凍結脱気後、 架橋剤と開始剤を添加し、所定条件下、例えば温度条件 60°C、 3時間のような条件で 重合を行う。ここでは、架橋剤として例えば 10mol%のジエチレングリコールジメタタリ レート及び開始剤として lmol%の ΑΙΒΝ (2,2'-ァゾビスイソブチ口-トリル)を使用し、ラ ジカル重合反応を進行させる。なお、重合は、加熱以外の方法で、例えば紫外線照 射によって行っても構わない。このようにして、半導体超微粒子を含有する榭脂組成 物を得ることができる。
[0047] なお、上記例では重合前に加熱処理を行ったが、同様の温度条件並びに時間条 件において、重合後に加熱処理を行っても同様の効果を得ることができる。また、重 合時に 80〜150°Cの温度条件で加熱処理を行う、すなわち通常の重合よりも高い温 度条件で重合処理を行うことによつても、同様の効果を得ることが可能である。
[0048] [本実施例の半導体超微粒子を含有する榭脂組成物の特性]
上記のようにして製造される半導体超微粒子を含有する榭脂組成物の特性を説明 する。この榭脂組成物の特性は、本発明に係る液体組成物の有する優れた特性を 兼ね備えている。図 13は図 11 (a)中のすなわち撹拌処理前の上相の半導体超微粒 子水溶液と図 11 (b)中のすなわち撹拌処理後の下相の半導体超微粒子イオン性液 体型モノマー溶液との吸収スペクトル特性を比較した図である。なお、本例では、 2種 類の異なるサイズ(直径が約 2.0nm及び 3.4nm)の CdTe超微粒子を用いて!/、る。図 14 は所定の励起光を照射したときに放出される蛍光スペクトル特性を比較した図である 。図 15は、本実施例によって得ることができる半導体超微粒子イオン性液体型モノマ 一溶液 (重合前)及び半導体超微粒子を含有する榭脂組成物 (重合後)の発光スぺ タトル特性を比較した図である。
[0049] 図 13より、半導体超微粒子水溶液と半導体超微粒子イオン性液体型モノマー溶液 とでは、吸収スペクトルの形状及び大きさが殆ど変化しておらず、吸収特性が維持さ れていることが分かる。図 14より、蛍光強度は半導体超微粒子イオン性液体型モノマ 一溶液の方が半導体超微粒子水溶液よりも強くなり、蛍光の発光効率が高くなること が確認される。蛍光量子収率 φ ίは水溶液中の場合、 10〜20%であるのに対し、半 導体超微粒子イオン性液体型モノマー溶液中では、 35〜65%に向上する。また、粒 子の直径が大きくなると蛍光発光波長が高くなることから、粒子のサイズを調節するこ とにより色相を変化させることが可能であることが分かる。
図 15からは、重合を行っても発光強度の低下は殆ど発生することがなぐむしろ発 光強度の上昇も起こり得ることが分かった。重合後の蛍光量子収率として 50〜70%の 値が得られており、従来報告されている値が 40%以下であることと比較して、本発明 に係る半導体超微粒子を含有する榭脂組成物が、従来提案されてきたものよりも遙 かに優れた特性を有することが明らカゝとなった。
[0050] [本実施例の半導体超微粒子を含有する液体組成物及び榭脂組成物の応用分野] 以上説明したように本実施例による半導体超微粒子を含有する液体組成物及び半 導体超微粒子を含有する榭脂組成物は、半導体超微粒子水溶液と同様の吸収スぺ タトルを有しながら蛍光量子収率は高ぐ高い強度で以て蛍光を放出し得る。また、 励起光の連続照射に対する蛍光の放出の時間的安定性が高ぐごく低い温度環境
下でも使用が可能であると 、う大きな利点を有して 、る。これら半導体超微粒子を含 有する液体組成物及び半導体超微粒子を含有する榭脂組成物は、両者共に優れた 特性を有しているため、使用形態やその目的に応じて使い易いものを適宜選択する ことができ、その自由度や応用範囲はきわめて広い。
[0051] (1)電気化学発光 (ELC)素子への応用: 例えば二枚の電極間に本発明に係る液 体組成物又は榭脂組成物を保持する。この電極間に電圧を印加するとイオン性液体 溶液中又は榭脂中の半導体超微粒子の粒子径に応じた波長の発光光が放出される 。特に樹脂の場合、デバイス形状に応じた成形加工を容易に行うことができるというメ リットがある。
(2)レーザ媒質への応用: 本発明に係る液体組成物又は榭脂組成物をレーザ媒質 として励起レーザ光を照射すると、イオン性液体溶液中又は榭脂中の半導体超微粒 子の粒子径に応じた長波長のレーザ光が出射される。この場合、強励起しても溶媒( イオン性液体)の気化泡発生が生じないという利点がある。特に、榭脂とした場合、容 器が不要となるので容器壁による損失を防止し、大きな出力のレーザを得ることがで きる。
[0052] (3)蛍光センサへの応用: 検出対象物質を吸着するセンサ面に本発明に係る液体 組成物又は榭脂組成物を保持する。通常、半導体超微粒子からは蛍光光が放出さ れるが、臭気成分、 TNT火薬などの特定成分がセンサ面に吸着されると、半導体超 微粒子からの蛍光光の輝度が下がったり蛍光光が放出されなくなったり、或いは蛍 光光の発光波長 (色)が変化したりする。これにより、検知対象成分が存在することが 認識できる。また、ー且吸着した成分は加熱等の脱気処理により除去することができ る力 イオン性液体は気化しな 、ため加熱による変性や特性劣化もなく繰り返し再使 用することができる。取り扱い易さや携帯性を向上させるために榭脂組成物を使用す ることももちろんできる。なお、こうした蛍光センサは、例えば食品管理、環境管理、地 雷検知など、様々な用途に使用できる。
(4)太陽電池: 電流取り出し用の電極に接触して本発明に係る液体組成物又は榭 脂組成物を保持する。これらの組成物に太陽光が照射されると、半導体超微粒子が 電子を放出し、この電子が電極に流れることで電流が発生する。液体組成物を利用
するか、榭脂組成物を利用するかによって、湿式か乾式かを選択することができる。 榭脂の方が設置等の際に取り扱いが容易である上、液漏れの問題も存在しない。さ らに、榭脂の場合には液体封止機構が不要となるため、軽量化も達成される。したが つて、一般家屋の屋根の上に載置する場合等に有利である。
[0053] (5)インクへの応用: 各種インクに本発明に係る液体組成物又は榭脂組成物を分 散させることにより、偽造防止用インクとする。インクの種類や印刷用途に合わせて、 溶液か榭脂かを適宜選択すればよい。例えば、インクジェットプリンタなどに利用され る吹き付け用液状インクには、本発明に係る液体組成物を適量添加すればよい。レ 一ザプリンタや各種コピー機などに利用される粉末インクであるトナーには、微粉状 の榭脂組成物を適量添加すればよい。本発明に係る半導体超微粒子は、所定波長 の励起光が当たると、所定の波長 (色)の蛍光光が放出される。この所定波長をコピ 一機の読み取り光の波長に合わせることにより、このインクを用いて印刷された印刷 物をコピーすると、隠された文字や図形が出現して複写されたり、基となる原稿の色と 異なる色で複写されるようにすることができ、偽造防止が可能となる。また、このことを 利用すれば、印刷物の真贋判定を行うこともできる。本発明の半導体超微粒子を含 有する組成物は、液体状であっても、榭脂状であっても、蛍光量子収率が高ぐ添カロ 量が少なくても十分の発光強度を得ることができるため、コスト的に有利である。また 、粒径が数 nmであり、従来提案されてきた偽造防止インクに用いられてきた粒子の大 きさと比較すると遙かに微細であるため、印刷機や複写機のノズル詰まりが発生する こともな 、と 、う長所も兼ね備えて 、る。
[0054] (6) 2光子吸収材料への応用: 本発明に係る液体組成物又は榭脂組成物に波長 80 Onm付近の短パルスレーザ光を照射すると、 500nmから 600nmを中心波長とする発光 が観測される。これは、同時に 2つの励起光光子を吸収する 2光子吸収によって引き 起こされる蛍光発光現象である。 2光子吸収の確率は光強度の 2乗に比例することか ら、光強度が強い場合に特に顕著に観測される。 2光子吸収材料はレーザ光の強度 安定化や、強い放射光に対する光検出器の保護のために用いられるオプティカルリ ミッタ用の材料として応用することが提案されている。 2光子吸収に伴う光化学反応を 利用した三次元光記録用の材料も提案されている。後者の場合、 2光子吸収が収束
レーザ光の焦点近傍で優先的に進行することを利用し、記録媒体内に対する多層光 記録が実現する。半導体超微粒子は比較的効率良く 2光子吸収現象を示すことが知 られており、オプティカルリミッタへの応用が可能である。本発明に係る液体組成物又 は榭脂組成物は効率良く 2光子吸収を起こすことを確認しており、容易に薄膜ィ匕が可 能であり、安定性、光学的な透明性、コスト面などでもメリットが大きぐ上記ォプティ カルリミッタや光メモリの他、各種の 2光子吸収材料への応用が可能である。
なお、上記各実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正を 行っても、本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。