金属複合材ぉよび金属複合材の鎵造方法 技術分野
本発明は、 鉄系金属と非鉄金属とからなる金属複合材に関するものであり、 さ らに詳しくは、 高い強度を有する金属複合材および金属複合材の鎵造方法に関す る。 技術背景
異種の構成素材を組み合わせてできた複合材は、 構成素材の種類や体積比率を 変化させることにより、 従来の材料では達成できないような様々な特性を有する 材料となるため、 工業材料の多くの分野で極めて有用である。
複合材は、 マトリックスの種類により、 高分子系、 セラミックス系、 金属系に 大別できる。 マトリックスが金属である金属系の複合材では、 アルミナ一シリカ 短繊維、 ガラス短繊維などの短繊維や、 炭化珪素、 窒化珪素、 ホウ酸アルミユウ ムなどのウイスカなどが分散材として用いられており、 具体的には、 特公昭 6 3 - 0 4 0 9 4 3号公報ゃ特開平 1 1— 2 9 3 3 6 4号公報に開示されている。 そして、 高い強度を有する金属複合材を得るためには、 たとえば、 分散材とし て炭化珪素のゥイス力等を用いることが考えられるが、 これらの分散材は非常に 高価であり加工性も低いという問題がある。 発明の開示
本発明者等は、 上記問題点に鑑み、 ウイスカ等の分散材の代わりに、 比較的入 手が容易で加工性に優れた部材を用い、 高い強度を有する金属複合材が得られる ことに想到した。 すなわち、 本発明は、 高い強度を有し新規の構成をもつ金属複 合材を提供することを目的とする。 また、 本発明の金属複合材に適した錶造方法 を提供することを目的とする。
本発明の金属複合材は、 マトリックスとなる非鉄金属と、 該非鉄金属中に埋設
された、 鉄を主成分とし表裏面を貫通する多数の通孔をもち開口率が 1 3〜3 0 %である板状の鉄系部材と、 からなることを特徴とする。
ここで、 鉄系部材が 「板状」 とは、 板状体を加工することによって得られるェ キスパンドメタルやパンチングメタルの他、 ある程度の剛性を有するものであれ ば、 複数本の線材からなる網状体も含む概念である。
本発明の金属複合材は、 非鉄金属中に上記鉄系部材が埋設されている構成であ るため、 鉄系部材により補強された強度の高い金属複合材である。 特に、 非鉄金 属が軽金属であれば、 軽量かつ高強度な金属複合材となる。 また、 上記鉄系部材 は、 表裏面を貫通する多数の通孔をもっため、 マトリックスである非鉄金属との 密着性を確保できる。
そして、 鉄系部材の開口率を 1 3〜3 0 %とすることにより、 密着性と強度が ともに良好な金属複合材となる。 開口率が大きすぎると高い強度を確保すること が困難となり、 開口率が低すぎるとマトリックスと鉄系部材との密着性が落ちる。 開口率を 1 3〜3 0 %とすることで強度と密着性のバランスのよい金属複合材が 得られる。 さらに好ましくは、 開口率が 1 8〜2 8 %である。
'また、 本発明の金属複合材の鍚造方法は、 錶造品の形状に対応する成形キヤビ ティ面を有する中空部と、 溶湯が注湯されるとともに該中空部に連通する注湯通 路と、 をもつ铸造型に、 鉄を主成分とし表裏面を貫通する多数の通孔をもち開口 率が 1 3〜 3 0 %である板状の鉄系部材を配設する鉄系部材配設工程と、 前記注 湯通路から非鉄金属の溶湯を前記中空部に充填する非鉄金属充填工程と、 を経て、 前記鉄系部材を前記非鉄金属で铸込むことを特徴とする。 この際、 前記鉄系部材 は、 該鉄系部材の周縁部に少なくとも 1つの切り欠きを有し、 前記鉄系部材配設 工程にて該周縁部が前記成形キヤビティ面に当接するとともに前記表裏面側に空 間をもって配設され、 前記非鉄金属充填工程において該切り欠きを通じて前記中 空部全体に溶湯が充填されるのが望ましい。
本発明の金属複合材の铸造方法によれば、 上記の本発明の金属複合材を錶造す ることができる。 また、 本発明の金属複合材の铸造方法では、 板状の鉄系部材の 開口率が 1 3〜3 0 %であるため、 鉄系部材の周縁部が成形キヤビティ面に当接 した状態で鎵造型に配設されると、 非鉄金属の溶湯を铸造型に注湯する際に、 溶
湯が鉄系部材の通孔を通過しにくいことがある。 そのため、 鉄系部材の表裏面側 の少なくともいずれかに位置する空間に、 非鉄金属の溶湯が十分に注湯されない ことがある。 そこで、 鉄系部材の周縁部に少なくとも 1つの切り欠きを設けると、 この切り欠きを通じて鉄系部材の表裏面側に溶湯が十分に行き届き、 中空部全体 に良好に非鉄金属を充填することができる。 図面の簡単な説明
以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより、 本発明をより深く 理解することができる。 以下に、 図面の簡単な説明をする。
図 1 Aは、 本発明の金属複合材の一例を模式的に示す平面図である。 また、 図 1 Bは、 図 1 Aの X— X ' における断面図である。
図 2 Aは、 本発明の金属複合材の一例を模式的に示す平面図である。 また、 図 2 Bは、 図 2 Aの Y— Y ' における断面図である。
図 3 Aは、 本発明の金属複合材の铸造方法の一例を模式的に示す断面図である。 また、 図 3 Bは、 図 3 Aの鉄系部材を模式的に示す平面図である。
図 4は、 実施例の金属複合材を構成するエキスパンドメタルの一部を示す図面 代用写真である。
図 5は、 実施例の金属複合材を構成するエキスパンドメタルの厚さ方向の各位 置でのビッカース硬さを測定した結果を示すグラフである。
図 6は、 実施例の金属複合材を作製する金型を模式的に示す断面図 (エキスパ ンドメタルの厚さ方向の断面図) である。
図 7は、 実施例の試料 A〜 Jおよび F ' の引張試験の結果を示すグラフである。 発明を実施のするための最良の形態
本発明をより詳細に説述するために、 以下に、 本発明の金属複合材を実施する ための最良の形態を、 図 1 A, B , 図 2 A, Bおよび図 3 A, Bを用いて説明す る。
本発明の金属複合材は、 マトリックスとなる非鉄金属と、 該非鉄金属中に埋設 された鉄系部材と、 からなる。
マトリックスとなる非鉄金属は、 金属複合材を形成する際に鉄系部材が溶融し たり劣化したりすることがなければ、 その種類に特に限定はない。 たとえば、 鉄 系部材を構成する鉄系金属よりも融点が低い金属であれば铸造により製造しやす い。 また、 非鉄金属は、 軽金属であるのが好ましい。 特に、 非鉄金属が軽金属で あれば、 軽量かつ高強度な金属複合材となる。 具体的には、 純アルミニウムや M g、 C u、 Z n、 S i、 M n等を含むアルミニウム合金などのアルミニウム系金 属ゃ、 純マグネシウムや Z n、 A l、 Z r、 M n、 T h、 希土類元素等を含むマ グネシゥム合金などのマグネシウム系金属のほか、 チタン系金属、 リチウム系金 属であってもよい。
鉄系部材は、 表裏面を貫通する多数の通孔をもつ。 通孔を有することにより、 鉄系部材が非鉄金属中に埋設された際に、 両者の密着性を確保することができ、 さらに、 鉄系部材の開口率が、 1 3〜 3 0 %であれば、 金属複合材の強度を良好 に向上させることができる。 この際、 1つの通孔の面積が 3 0 0 /z m2 以上であ るのが好ましい。 1つの通孔の面積がこの範囲であれば、 非鉄金属と鉄系部材と の密着性をさらに良好に確保することができる。 さらに好ましい 1つの通孔の面 積は、 3 0 0 m 2 〜: 1 0 mm2 である。
鉄系部材は、 鉄を主成分とする金属で、 板状であれば特に限定はないが、 加工 性に優れた各種圧延鋼板 (J I S記号で、 S P C C、 S P H C等) を用いるのが よい。 ここで、 「板状」 とは、 ある程度の剛性 (マトリックスとなる非鉄金属よ り高い弾性率) をもつ板状体であればよい。 すなわち、 金網などのように複数本 の線材からなる網状体であっても、 橈みを生じない程度の剛性を有するものであ ればよい。 '具体的には、 板状体に多数のスリットを入れて板状体の延びる方向に 引っ張ることによりスリツトを拡張し通孔を形成することによって得られるェキ スパンドメタルや、 板状体に主として厚さ方向に多数の通孔を穿ったパンチング メタルなどが好ましい。 これらの部材は、 簡単に作製でき、 入手が容易であり、 加工性にも優れる。 この際、 鉄系部材の厚さが 0 . 5〜2 mmであるのが好まし い。 鉄系部材の厚さが上記範囲であれば、 金属複合材の強度を良好に向上させる ことができ、 2 mm以下の厚さであっても十分な捕強効果が得られる。
また、 鉄系部材は、 その表面が粗面となっているのが好ましい。 鉄系部材の表
面を粗面とすることにより、 非鉄金属と鉄系部材との密着性が向上する。 したが つて、 粗面化は、 少なくとも非鉄金属と接触する鉄系部材の界面に施されていれ ばよい。 粗面の形成は、 ショットブラストゃショットビーニング等のブラスト加 ェによる物理的な方法や、 薬品による化学的な方法で粗面を形成すればよい。 また、 鉄系部材は、 浸炭処理が施されているのが望ましい。 浸炭処理は、 炭素 鋼の表面から炭素を浸入させることにより表面部の炭素量を増加させ、 表面部の みを硬化する処理法である。 鉄系部材として用いられるエキスパンドメタル等に 加工される鋼板は、 比較的軟らかく加工性に優れているため、 浸炭処理などを施 すことにより、 硬化させるのが望ましい。 そして、 上述したように、 本発明の金 属複合材において、 鉄系部材の板厚は、 好ましくは 0 . 5〜2 mmであるため、 このような鉄系部材に浸炭処理を施すと、 鉄系部材全体に十分に炭素が浸入し硬 化される。 浸炭処理は、 固体浸炭処理、 液体浸炭処理、 ガス浸炭処理、 真空浸炭 処理のうちどの浸炭法を用いてもよいが、 鉄系部材は、 浸炭窒化処理により厚さ 方向の全ての部分において炭素と窒素が浸入した鉄系硬化部材であるのが望まし レ、。
鉄系部材は、 非鉄金属中に埋設されている状態であれば、 その位置に特に限定 はない。 ここで、 図 1および図 2は、 本発明の金属複合材の一例を模式的に示す 平面図 (図 1 A, 2 A) および断面図 (図 I B , 2 B ) である。 図 1に示すよう に、 表裏面を貫通する多数の通孔 3をもつ鉄系部材 2 (たとえばエキスパンドメ タル) が金属複合材 1 0の表面側に位置するように配置してもよいし、 図 2に示 すように、 表裏面を貫通する多数の通孔 2 3をもつ鉄系部材 2 2 (たとえばパン チングメタル) が金属複合材 2 0の内部に位置するように配置してもよい。 なお、 鉄系部材が金属複合材の表面側に位置するように配置する場合 (図 1 B参照) は、 鉄系部材の一部が金属複合材の表面に露出した状態であっても構わない。
なお、 板状の鉄系部材を複数枚積層させた状態で非鉄金属中に埋設させてもよ レ、。 前述したように、 0 . 5〜 2 mm程度の薄い鉄系部材は浸炭ゃ窒化がされや すい。 したがって、 厚い鉄系部材を 1枚用いるよりも、 十分に浸炭ゃ窒化がされ た薄い鉄系部材を複数枚用いる方が、 効果的である。 さらに、 薄い鉄系部材の方 が、 所望の形状に加工し易いため、 有利である。 また、 図 1および図 2では平板
状の金属複合材を示しているが、 本発明の金属複合材の形状に特に限定はなく、 たとえば、 円柱形状などのように曲面を有する形状であってもよい。 その場合は、 あらかじめ、 鉄系部材が曲面に沿うように鉄系部材に曲げ加工などの成形を施す のがよい。
上記のような構成を有する本発明の金属複合材は、 高強度を有し、 かつ、 非鉄 金属の種類によっては軽量であるため、 エンジンブロック、 油圧ポンプ、 コンプ レッサーといつた耐圧部品等に好適に用いることができる。
本発明の金属複合材は、 錶造により製造されるのが望ましい。 具体的には、 鎳 造品の形状に対応する成形キヤビティ面を有する中空部と、 溶湯が注湯されると ともに中空部に連通する注湯通路と、 をもつ铸造型に、 既に説明した鉄系部材を 配設する鉄系部材配設工程と、 注湯通路から非鉄金属の溶湯を中空部に充填する 非鉄金属充填工程と、 を経て、 鉄系部材を非鉄金属で鏡込む、 いわゆるインサー ト成形方法であればよい。 铸造方法も、 重力铸造法、 低圧铸造法、 溶湯鍛造法、 ダイカスト法など、 従来の方法を用いればよい。
特に、 図 2 Bに示すように、 鉄系部材が金属複合材の内部に位置するように配 置される場合には、 周縁部に切り欠きを設けた鉄系部材を用いるとよい。 以下に、 切り欠きを有する鉄系部材を用いる金属複合材の鎵造方法を、 図 3 Aおよび図 3 Bを用いて説明する。 なお、 図 3 Aは、 本発明の金属複合材の鎳造方法の一例を 模式的に示す断面図である。 また、 図 3 Bは、 図 3 Aで用いられる鉄系部材を模 式的に示す平面図である。
本発明の金属複合材の铸造方法は、 主として、 鉄系部材配設工程と、 非鉄金属 充填工程と、 を経て、 鉄系部材 3 2を非鉄金属 3 1で铸込むことで、 金属複合材 3 0を得る。
鉄系部材配設工程では、 铸造型に鉄系部材を配設する。 用いられる铸造型は、 図 3 Aに示されるような、 铸造品の形状に対応する成形キヤビティ面 8 4を有す る中空部 (鉄系部材 3 2が配設された部分と空間 8 6、 8 7とからなる) と、 溶 湯 3 1 ' が注湯されるとともに中空部に連通する注湯通路 8 3と、 をもつ型であ れば特に限定はない。 したがって、 図 3 Aのような複数の型 8 1、 8 2で区画さ れた成形キヤビティ (中空部に相当) を有する铸造型 8 0であってもよく、 注湯
通路 8 3の位置や大きさにも特に限定はなく、 通常、 錶造に用いられる錶造型を 使用すればよい。 また、 成形キヤビティの形状も平板状であっても円筒形状であ つてもよい。
鎵造型には、 成形キヤビティの内面である成形キヤビティ面に、 鉄系部材を保 持する保持部が形成されているのが好ましい。 保持部は、 図 3 Aに示されるよう な溝部 8 8であるとよレ、。 溝部 8 8では、 型 8 1の成形キャビティ面 8 4側に形 成された断面 L字形状の凹部に鉄系部材 3 2を載置した状態で、 型 8 2の成形キ ャビティ面 8 4側に形成された凸部が凹部に嵌り込むことで、 鉄系部材 3 2の周 縁部が挟持される。 なお、 溝部 8 8は、 型 8 1と型 8 2との境界の全周に渡って 連続的に形成された連続溝であつてもよいし、 部分的に形成された溝状凹部であ つてもよい。
鉄系部材は、 既に詳説したように、 鉄を主成分とし表裏面を貫通する多数の通 孔をもち、 その開口率が 1 3〜3 0 %である、 板状の部材である。 鉄系部材は、 鉄系部材の周縁部が成形キヤビティの内面である成形キヤビティ面に当接すると ともに表裏面側に空間をもって配設されるとよい。 具体的に'は、 図 3 Aでは、 鉄 系部材 3 2の周縁部が成形キヤビティ面 8 4に形成された溝部 8 8に保持される とともに表裏面側に空間 8 6、 8 7をもって配設される。 その結果、 空間 8 6、 8 7は鉄系部材 3 2によって区画され、 両者は、 切り欠き 3 5で連通する。 した がって、 鉄系部材 3 2に切り欠き 3 5がないと、 次の非鉄金属充填工程において、 注湯通路 8 3から注湯される非鉄金属の溶湯 3 1 ' は、 鉄系部材 3 2の片面側に 位置する空間 8 6には良好に充填されるが、 鉄系部材 3 2は開口率が 1 3〜3 0 %であるため、 溶湯 3 1 ' が通孔を通って空間 8 7に完全に充填されなかったり、 充填されても時間を要する。 つまり、 鉄系部材が切り欠きを有することにより、 非鉄金属充填工程において注湯される非鉄金属の溶湯は、 容易に切り欠きを通過 し、 鉄系部材の表裏面側の空間に良好に回り込む。 その結果、 成形キヤビティ面 に沿った所望の形状の金属複合材が得られる。 また、 溶湯は切り欠きを通過しや すいので、 注湯される溶湯の流れから受ける抵抗力により生じる鉄系部材の配設 位置のズレが抑制される。
鉄系部材に形成される切り欠きの大きさは、 鉄系部材の大きさにもよるが、 1
つの切り欠きの面積が 1 0〜4 0 0 mm2 であるのが好ましい。 1 0 mm 2 以上 であれば、 溶湯が流入しやすく、 溶湯が铸造型の中空部に良好に充填される。 ま た、 4 0 0 mm2 を超えると、 切り欠きが形成された部分の金属複合材の強度が 低下するため望ましくない。 この際、 切り欠きの面積は、 鉄系部材の面積の 1 0 %程度であるのが望ましい。 なお、 鉄系部材の面積には、 通孔の面積も含む。 また、 鉄系部材の周縁部であれば、 切り欠きが形成される位置に特に限定はな レ、。 切り欠きを鉄系部材の中央部付近に形成すると、 鉄系部材の強度が低下する ため、 得られる金属複合材の強度が効果的に向上しないため望ましくない。
また、 鉄系部材は、 その周縁部が成形キヤビティ面に当接していれば、 鉄系部 材の表裏面の一部が成形キヤビティ面と接触して配設されていてもよい。 この際. 鉄系部材は、 その表裏面側に空間をもって配置されている部分や注湯通路の近傍 に切り欠きを有するとよい。
鉄系部材配設工程において、 鉄系部材を成形キヤビティ面に当接し、 かつ、 鉄 系部材の表裏面側に空間をもって配設する際には、 図 3 Aに示すように、 鉄系部 材が所定の位置に保持されるとよい。 成形キヤビティ面が有する保持部に鉄系部 材の周縁部が保持されれば、 注湯の際に生じる鉄系部材の配設位置のズレが抑制 される。 保持部としては、 溝部 8 8の他にも、 成形キヤビティ面から突出して鉄 系部材が載置されたり鉄系部材の移動を妨げる突条などでもよい。 なお、 保持部 は、 鉄系部材の周縁部全体を保持する必要はなく、 周縁部の少なくとも一部が保 持されればよい。
切り欠きは、 鉄系部材の保持状態や周縁部の当接部位によつては必ずしも形成 する必要はない。 たとえば、 鉄系部材の周縁部のうち、 一辺が成形キヤビティ面 に当接せずに間隙をもって配設される際には、 切り欠きを形成しなくてもよい。 非鉄金属充填工程では、 注湯通路から非鉄金属の溶湯を中空部に充填する。 非 鉄金属の溶湯は、 切り欠きを通じて中空部全体に、 容易に充填される。
なお、 鉄系部材に粗面を形成する工程や、 浸炭工程を、 鉄系部材配設工程より 前に行ってもよい。 また、 非鉄金属充填工程の後、 必要に応じて熱処理を行い、 マトリックスとなる非鉄金属の力学的性質を調整する調質処理を行ってもよく、 さらに高強度な金属複合材を得ることもできる。
以上、 本発明の金属複合材および金属複合材の鍚造方法の実施形態を説明した が、 本発明の金属複合材および金属複合材の铸造方法は、 上記実施形態に限定さ れるものではなく、 本発明の要旨を逸脱しない範囲において、 当業者が行い得る 変更、 改良等を施した種々の形態にて実施することができる。 以下に、 本発明の金属複合材の実施例を、 図 4〜図 7を用いて説明する。
板状で厚さ方向に貫通する複数の通孔を有するエキスパンドメタル (工業用冷 間圧延鋼板 (SPCC) 、 厚さ : 900 μιη、 開口率: 18%、 1つの通孔の面 積: 300 μπι2 、 厚さ方向より撮影した写真を図 4に示す。 ) を準備した。 ェ キスパンドメタルには、 浸炭窒化処理、 焼戻し、 または、 ショットプラストを施 すこ.とによりエキスパンドメタル Ml〜Μ 5を得た。 Ml〜Μ 5に施した処理を 表 1に示す。 また、 Μ4において、 開口率を 28%とした他は同様の処理を施し た M4' を準備した。
浸炭窒化処理は、 ΝΗ3 を含む浸炭性ガスにより、 エキスパンドメタルを 65 0〜900°Cに加熱し、 C並びに Nを同時に鋼材に反応させ拡散層を生ぜしめた 後、 油焼入れを行った。 焼戻しは、 150°Cまたは 550°Cで 1時間保持するこ とにより行った。 また、 ショットブラストは、 繊維状プリット照射をエキスパン ドメタルの両面にそれぞれ 1分間 (あわせて 2分間) 行った。 なお、 表 1におい て、 M1〜M 5の括弧内に記載されている数字は焼戻し温度、 記号はショットブ ラストの有無を示す。
得られたエキスパンドメタル Ml〜M 5について、 表面粗さ測定、 引張試験お よぴビッカース硬さ測定を行った。 表面粗さ測定には、 表面粗さ計サーフコム 14 00A (東京精密製) を用いた。 測定結果より求めた中心線平均粗さ、 +点平均粗 さ、 最大高さ (それぞれ Ra、 Rz、 Rma xとし、 複数回測定したものの平均 値) を表 1に示す。 引張試験は、 引張方向が図 4の矢印方向となるようにエキス パンドメタル Ml〜M5を J I S平板試験片の形状に加工し、 後述の引張試験条 件 (条件 I) により測定を行った。 エキスパンドメタル M1〜M5が破断した際 の応力を表 1に示す。 また、 ビッカース硬さ測定は、 エキスパンドメタル Ml〜 M5の厚さ方向の各位置 (100/zm間隔) で、 一方の面側から他方の面側まで
測定を行った。 この際、 測定荷重は、 300 k g f とした。 各位置 (一方の面か らの厚さ方向の距離とする) でのビッカース硬さ (Hv) を図 5に示す。 なお、 図 5において、 ぐは^11、 ♦はM2、 〇はM3、 會は1^4、 Xは Μ 5、 をそれぞ れ示す。
エキスパンドメタル 浸炭窒化 焼戻し ショッ卜ブラス卜 表面粗さ 処理 [°C X 60min] [min] Ra Rz R
MK150) 有 150 - 0.260 1.234 2.
M2C150S) 有 150 2 0.366 1.668 3.
M3(550) 有 550 一 0.291 1.349 3.
M4(550S) 有 550 2 0.708 3.216 6.
M5 無 - - 0.182 0.900 2.
次に、 エキスパンドメタル Ml〜M4、 M4, を用いて試料 A〜F、 F, 、 G (金属複合材) を作製した。 試料の作製には、 所定形状の凹部 9 1を有する下型 90と、 凹部 91の壁面と摺接して嵌り込む形状の上型 92と、 からなる金型装 置 9 (図 6参照) を用いた。 試料を作製する際には、 金型装置 9の金型温度を 2 00〜350°Cとし、 下型 90の凹部 91の底面部に Ml〜M4、 M4, のいず れかのエキスパンドメタル Mを載置し 100〜300°Cに予熱を行い、 その状態 で、 凹部 9 1にアルミニウム合金溶湯 (ADC 1 2、 溶湯温度 6 50〜800 °C) を注湯した。 その後、 上型 92を矢印方向に揷入し加圧 (70〜100MP a) して铸造を行った。 なお、 エキスパンドメタルを 2枚使用する場合には、 厚 さ方向に 2枚重ねて凹部 9 1に載置する他は、 上記と同様な方法で铸造を行った。 各試料の作成条件を表 2に示す。
また、 比較例として、 アルミニウム合金 (ADC 1 2) からなる試料 H〜 Jを 作製した。 試料 H〜Jは、 上記の鎵造方法において、 エキスパンドメタルを用い ない他は同様に錶造により作製した。 なお、 試料 H〜Jは、 後述の引張試験条件 が異なるが、 組成等は全て同じ試料である。
[評価]
試料 A〜Jおよび F' の強度を評価するために、 引張試験を行った。
作製した試 A〜 Jおよび F, を所定の形状に加工して、 J I S平板試験片
(厚さ lmm) を作製した。 この際、 引張試験の引張方向がエキスパンドメタル に対して図 4の矢印方向となるように加工した。 なお、 引張試験は、 5 tオート グラフ (島津製作所製、 AG- 5000A) により、 室温にて (条件 I) 、 180でで1 00時間保持後 180°Cにて (条件 II) 、 200°Cで 5'分間保持後 200°Cにて
(条件 III) 、 または、 200°Cで 15分間保持後 200°Cにて (条件 IV) 、 引 張速度 0. 5 mm/分で行った。 各試料に対して行った引張試験の試験条件を表 2に、 各試料が破断した際の応力を表 2および図 7に示す。
[表 2]
i** :
金属複合材である試料 A〜Gは、 いずれも破断応力が 40 OMP a以上であり、 エキスパンドメタルを用いていない試料 H〜 Jよりも高い強度を有した。 そして、 アルミニウム合金のみ (試料 H〜J) では強度が低下する引張試験条件 IIのよう な過酷な条件下でも、 優れた強度を示した。
また、 550°Cで焼戻しを行ったエキスパンドメタル M3、 M4を用いた試料 D〜Gは、 優れた強度 (破断応力 55 OMP a以上) を示した。 中でも、 ショ ッ トプラストを施した M4を用いた試料 Fでは、 エキスパンドメタルの表面が好適
に粗面化され、 その硬さが Hv (0. 3) = 200〜400程度であるため、 特 に優れた強度 (破断応力 584. 8 IMP a) を示した。
なお、 150°Cで焼戻しを行ったエキスパンドメタル Ml、 M2は、 表面硬度 が非常に高く (Hv (0. 3) =800程度) 脆いため、 試料 A〜Cの強度が破 断応力 400〜500 MP a程度にとどまつたと推測できる。
また、 エキスパンドメタルの開口率が異なる試料 F (18%) と試料 F' (2 8%) とでは、 開口率の小さい試料 Fの方が高い強度を有する。 しかしながら、 試料 F, は、 エキスパンドメタルを用いていない試料 H〜 Jよりも高い強度を示 した。