明 細 書
H5型又は H7型トリインフルエンザウイルスの検出方法
技術分野
[0001] 本発明は、 H5型又は H7型トリインフルエンザウイルスの検出法方法に関し、さらに 詳しくは、 H5型又は H7型トリインフルエンザウイルスを検出するためのオリゴヌタレ ォチドプライマ一、当該プライマーを用いた H5型又は H7型トリインフルエンザウィル スの検出方法、インフルエンザの診断方法及びインフルエンザを診断するためのキッ トに関するものである。
背景技術
[0002] インフルエンザは流行性のウィルス性呼吸器感染症であり、乳幼児から高齢者まで 幅広い年齢層が罹患し、しばしば致命的である。現在、トリに感染して問題となって いる H5型トリインフルエンザウイルスは、本来ならばヒトに感染しないものである。しか し、 1997年に香港でヒトへの感染が確認され、 18名の患者のうち 6名が死亡するま での流行となった。それ以降のヒトへの感染は幸い確認されていなかった力 2004 年に入ってから、タイやベトナムでヒトへの感染が確認されており、タイでは 8名、べト ナムでは 16名の死亡者が出て!/、る。
[0003] 高病原性のトリインフルエンザウイルスは、 H5型のほかに H7型が存在し、 H7型は、 その配列によって、ユーラシア型とアメリカ型に大きく 2分される。 2003年にオランダ で流行した際には死亡者が 1名報告されており、アメリカでも 2003年から 2004年に かけて H7型トリインフルエンザウイルスの流行が報告されている。
[0004] 現在、トリインフルエンザウイルスの検出には、ヒトの A型インフルエンザウイルス迅速 診断キットが用いられている。し力し、どの亜型のウィルスに感染したかの同定には、 分離されたウィルスの抗原解析や遺伝子検査などのさらに詳しい解析を必要として いた。
[0005] 確実な結果が得られるウィルス分離培養による診断は、数日を要するために迅速な 診断を行うことができな 、。ウィルス分離と比較して迅速な診断が可能な方法が 、く つかあるが、その中でも RT— PCR法は、他の方法と比較して検出感度が高いとされ
ている。しかし、現在公開されている RT— PCR法では、ウィルスの感染価と比較して 高い感度でウィルスを検出することができないとの報告があり、 RT— PCR法による検 查で陰性となってもトリインフルエンザウイルスへの感染が否定されるわけではない。
[0006] そこで、迅速かつ高感度に H5型及び H 7型トリインフルエンザウイルスを検出できる 検査法が望まれていた。
[0007] 特許文献 1:欧州特許出願公開第 1310565号明細書
特許文献 2:公表 2004 - 509648号公報
非特干文献 l:Lau LT., et al., Biocnem. Biophys. Res. Commun., vol. 31ό, ρ.3ό6~ό 42 (2004)
非特許文献 2:Shang S., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., vol. 302, p.377- 3 83 (2003)
非特許文献 3: Collins RA., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., vol. 300, p.507 -515 (2003)
非特許文献 4: Lee MS., et al., J. Virol. Methods, vol. 97, p.13- 22 (2001) 非特許文献 5:Munch M., et al., Arch. Virol, vol. 146, p.87-97 (2001)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、 H5型又は H7 型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列とハイブリダィズするオリゴヌクレオ チドプライマ一を作製し、 LAMP (loop- mediated isothermal amplification)法により H 5型又は H7型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列を増幅することで、 H5 型又は H7型トリインフルエンザウイルスを高感度に検出できることを見出し、本発明 を完成した。
課題を解決するための手段
[0009] すなわち、本発明は以下の(1)〜(8)を提供する。
(1) 配列番号 1で示される H5型トリインフルエンザウイルスのへマダルチュン塩基 配列の、 693番〜 959番の塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相 補的な塩基配列力 設計されたオリゴヌクレオチドプライマー。
(2) 以下の(a)〜(c)より選ばれたオリゴヌクレオチドを含む、(1)記載のオリゴヌタレ ォチドプライマ一。
(a)配列番号 2〜7で示される塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列から選ばれ た、少なくとも連続する 15塩基を含むオリゴヌクレオチド。
(b)前記 (a)に記載のオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし うるオリゴヌクレオチド。
(c)前記 (a)又は (b)に記載のオリゴヌクレオチドのうち、 1ないし数個の塩基が置換、 欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を含み、プライマー機能を有するオリゴヌタレ ォチド。
(3) H5型トリインフルエンザウイルスのへマダルチュンの標的核酸上の 3,末端側 力 F3c、 F2c、 Flcという塩基配列領域を、 5'末端側から B3、 B2、 Blという塩基配 列領域を選択し、それぞれの相補的塩基配列を F3、 F2、 Fl、そして B3c、 B2c、 Bl cとしたときに、以下の(a)〜(d)から選ばれた塩基配列から成ることを特徴とする(1) 〜(2)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)標的核酸の F2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Flc領域を有す る塩基配列。
(b)標的核酸の F3領域を有する塩基配列。
(c)標的核酸の B2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Blc領域を有す る塩基配列。
(d)標的核酸の B3領域を有する塩基配列。
(4) H5型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列を増幅でき、 5'末端から 3 '末端に向か 、以下の(a)〜 (b)力も選ばれた塩基配列力も成ることを特徴とする( 1)〜(3)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a) 5' - (配列番号 2の塩基配列に相補的な塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の 塩基配列) (配列番号 3の塩基配列) 3'。
(b) 5' (配列番号 5の塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の塩基配列) (配列番 号 6の塩基配列に相補的な塩基配列) 3'。
(5) (1)〜(4)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、 H5型トリインフルェン
ザウィルスの標的核酸領域の増幅反応を行うことを特徴とする H5型トリインフルェン ザウィルスの検出方法。
(6) H5型トリインフルエンザウイルスの標的核酸領域の増幅反応が LAMP法であ ることを特徴とする(5)記載の H5型トリインフルエンザウイルスの検出方法。
(7) (1)〜(4)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて H5型トリインフルエンザ ウィルスの標的核酸領域の増幅を検出することにより、 H5型トリインフルエンザウィル ス感染の有無を診断することを特徴とするインフルエンザの診断方法。
(8) インフルエンザを診断するための、(1)〜 (4)記載のオリゴヌクレオチドプライマ 一を含むことを特徴とするキット。
本発明は、また、以下の(9)〜(16)を提供する。
(9) 配列番号 1で示される H5型トリインフルエンザウイルスのへマダルチュン塩基 配列の、 19番〜 220番の塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相 補的な塩基配列力 設計されたオリゴヌクレオチドプライマー。
(10) 以下の(a)〜(c)より選ばれたオリゴヌクレオチドを含む、(9)記載のオリゴヌク レオチドプライマ一。
(a)配列番号 13〜18で示される塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列力 選ば れた、少なくとも連続する 15塩基を含むオリゴヌクレオチド。
(b)前記 (a)に記載のオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし うるオリゴヌクレオチド。
(c)前記 (a)又は (b)に記載のオリゴヌクレオチドのうち、 1ないし数個の塩基が置換、 欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を含み、プライマー機能を有するオリゴヌタレ ォチド。
(11) H5型トリインフルエンザウイルスのへマダルチュンの標的核酸上の 3,末端側 力 F3c、 F2c、 Flcという塩基配列領域を、 5'末端側から B3、 B2、 Blという塩基配 列領域を選択し、それぞれの相補的塩基配列を F3、 F2、 Fl、そして B3c、 B2c、 Bl cとしたときに、以下の(a)〜(d)力も選ばれた塩基配列力も成ることを特徴とする(9) 〜(10)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)標的核酸の F2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Flc領域を有す
る塩基配列。
(b)標的核酸の F3領域を有する塩基配列。
(c)標的核酸の B2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Blc領域を有す る塩基配列。
(d)標的核酸の B3領域を有する塩基配列。
(12) H5型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列を増幅でき、 5 '末端か ら 3 '末端に向か 、以下の(a)〜 (b)から選ばれた塩基配列から成ることを特徴とする (9)〜(11)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a) 5' - (配列番号 13の塩基配列に相補的な塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の 塩基配列) (配列番号 14の塩基配列) 3'。
(b) 5' (配列番号 16の塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の塩基配列) (配列 番号 17の塩基配列に相補的な塩基配列) 3 '。
(13) (9)〜(12)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、 H5型トリインフル ェンザウィルスの標的核酸領域の増幅反応を行うことを特徴とする H5型トリインフル ェンザウィルスの検出方法。
(14) H5型トリインフルエンザウイルスの標的核酸領域の増幅反応が LAMP法で あることを特徴とする(13)記載の H5型トリインフルエンザウイルスの検出方法。
(15) (9)〜( 12)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用 、て H5型トリインフルェ ンザウィルスの標的核酸領域の増幅を検出することにより、 H5型トリインフルエンザゥ ィルス感染の有無を診断することを特徴とするインフルエンザの診断方法。
(16) インフルエンザを診断するための、(9)〜(12)記載のオリゴヌクレオチドプライ マーを含むことを特徴とするキット。
本発明は、また、以下の(17)〜(24)を提供する。
(17) 配列番号 1で示される H5型トリインフルエンザウイルスのへマダルチュン塩基 配列の、 114番〜 333番の塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相 補的な塩基配列力 設計されたオリゴヌクレオチドプライマー。
(18) 以下の(a)〜(c)より選ばれたオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする(17) 記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)配列番号 24〜29で示される塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列力も選ば れた、少なくとも連続する 15塩基を含むオリゴヌクレオチド。
(b)前記 (a)に記載のオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし うるオリゴヌクレオチド。
(c)前記 (a)又は (b)に記載のオリゴヌクレオチドのうち、 1ないし数個の塩基が置換、 欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を含み、プライマー機能を有するオリゴヌタレ ォチド。
(19) H5型トリインフルエンザウイルスのへマダルチュンの標的核酸上の 3,末端側 力 F3c、 F2c、 Flcという塩基配列領域を、 5'末端側から B3、 B2、 Blという塩基配 列領域を選択し、それぞれの相補的塩基配列を F3、 F2、 Fl、そして B3c、 B2c、 Bl cとしたときに、以下の(a)〜(d)力も選ばれた塩基配列力も成ることを特徴とする(17 ;)〜(18)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)標的核酸の F2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Flc領域を有す る塩基配列。
(b)標的核酸の F3領域を有する塩基配列。
(c)標的核酸の B2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Blc領域を有す る塩基配列。
(d)標的核酸の B3領域を有する塩基配列。
(20) H5型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列を増幅でき、 5 '末端か ら 3 '末端に向か 、以下の(a)〜 (b)から選ばれた塩基配列から成ることを特徴とする ( 17)〜( 19)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a) 5' - (配列番号 24の塩基配列に相補的な塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の 塩基配列) (配列番号 25の塩基配列) 3'。
(b) 5' (配列番号 27の塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の塩基配列) (配列 番号 28の塩基配列に相補的な塩基配列) 3 '。
(21) (17)〜(20)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、 H5型トリインフル ェンザウィルスの標的核酸領域の増幅反応を行うことを特徴とする H5型トリインフル ェンザウィルスの検出方法。
(22) H5型トリインフルエンザウイルスの標的核酸領域の増幅反応が LAMP法で あることを特徴とする(21)記載の H5型トリインフルエンザウイルスの検出方法。
(23) (17)〜(20)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて H5型トリインフルェ ンザウィルスの標的核酸領域の増幅を検出することにより、 H5型トリインフルエンザゥ ィルス感染の有無を診断することを特徴とするインフルエンザの診断方法。
(24) インフルエンザを診断するための、(17)〜(20)記載のオリゴヌクレオチドブラ イマ一を含むことを特徴とするキット。
本発明は、また、以下の(25)〜(32)を提供する。
(25) 配列番号 1で示される H5型トリインフルエンザウイルスのへマグルチニン塩基 配列の、 874番〜 1065番の塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと 相補的な塩基配列力 設計されたオリゴヌクレオチドプライマー。
(26) 以下の(a)〜(c)より選ばれたオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする(25) 記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)配列番号 35〜40で示される塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列力も選ば れた、少なくとも連続する 15塩基を含むオリゴヌクレオチド。
(b)前記 (a)に記載のオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし うるオリゴヌクレオチド。
(c)前記 (a)又は (b)に記載のオリゴヌクレオチドのうち、 1ないし数個の塩基が置換、 欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を含み、プライマー機能を有するオリゴヌタレ ォチド。
(27) H5型トリインフルエンザウイルスのへマダルチュンの標的核酸上の 3,末端側 力 F3c、 F2c、 Flcという塩基配列領域を、 5'末端側から B3、 B2、 B1という塩基配 列領域を選択し、それぞれの相補的塩基配列を F3、 F2、 Fl、そして B3c、 B2c、 Bl cとしたときに、以下の(a)〜(d)力も選ばれた塩基配列力も成ることを特徴とする(25 )〜(26)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)標的核酸の F2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Flc領域を有す る塩基配列。
(b)標的核酸の F3領域を有する塩基配列。
(c)標的核酸の B2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Blc領域を有す る塩基配列。
(d)標的核酸の B3領域を有する塩基配列。
(28) H5型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列を増幅でき、 5 '末端か ら 3 '末端に向か 、以下の(a)〜 (b)から選ばれた塩基配列から成ることを特徴とする (25)〜(27)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a) 5' - (配列番号 35の塩基配列に相補的な塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の 塩基配列) (配列番号 36の塩基配列) 3'。
(b) 5' (配列番号 38の塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の塩基配列) (配列 番号 39の塩基配列に相補的な塩基配列) 3 '。
(29) (25)〜(28)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、 H5型トリインフル ェンザウィルスの標的核酸領域の増幅反応を行うことを特徴とする H5型トリインフル ェンザウィルスの検出方法。
(30) H5型トリインフルエンザウイルスの標的核酸領域の増幅反応が LAMP法で あることを特徴とする(29)記載の H5型トリインフルエンザウイルスの検出方法。
(31) (25)〜(28)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて H5型トリインフルェ ンザウィルスの標的核酸領域の増幅を検出することにより、 H5型トリインフルエンザゥ ィルス感染の有無を診断することを特徴とするインフルエンザの診断方法。
(32) インフルエンザを診断するための、(25)〜(28)記載のオリゴヌクレオチドブラ イマ一を含むことを特徴とするキット。
本発明は、さらに以下の(33)〜 (40)を提供する。
(33) 配列番号 48で示される H7型トリインフルエンザウイルスのへマグルチュン塩 基配列の、 1016番〜 1225番の塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれ らと相補的な塩基配列力 設計されたオリゴヌクレオチドプライマー。
(34) 以下の(a)〜(c)より選ばれたオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする(33) 記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)配列番号 49〜54で示される塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列力 選ば れた、少なくとも連続する 15塩基を含むオリゴヌクレオチド。
(b)前記 (a)に記載のオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし うるオリゴヌクレオチド。
(c)前記 (a)又は (b)に記載のオリゴヌクレオチドのうち、 1ないし数個の塩基が置換、 欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を含み、プライマー機能を有するオリゴヌタレ ォチド。
(35) H7型トリインフルエンザウイルスのへマダルチュンの標的核酸上の 3,末端側 力 F3c、 F2c、 Flcという塩基配列領域を、 5'末端側から B3、 B2、 Blという塩基配 列領域を選択し、それぞれの相補的塩基配列を F3、 F2、 Fl、そして B3c、 B2c、 Bl cとしたときに、以下の(a)〜(d)力も選ばれた塩基配列力も成ることを特徴とする(33 )〜(34)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)標的核酸の F2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Flc領域を有す る塩基配列。
(b)標的核酸の F3領域を有する塩基配列。
(c)標的核酸の B2領域を 3'末端側に有し、 5'末端側に標的核酸の Blc領域を有す る塩基配列。
(d)標的核酸の B3領域を有する塩基配列。
(36) H7型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列を増幅でき、 5 '末端か ら 3 '末端に向か 、以下の(a)〜 (b)から選ばれた塩基配列から成ることを特徴とする (33)〜(35)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a) 5' - (配列番号 49の塩基配列に相補的な塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の 塩基配列) (配列番号 50の塩基配列) 3'。
(b) 5' (配列番号 52の塩基配列) (塩基数 0〜50の任意の塩基配列) (配列 番号 53の塩基配列に相補的な塩基配列) 3 '。
(37) (33)〜(36)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、 H7型トリインフル ェンザウィルスの標的核酸領域の増幅反応を行うことを特徴とする H7型トリインフル ェンザウィルスの検出方法。
(38) H7型トリインフルエンザウイルスの標的核酸領域の増幅反応が LAMP法で あることを特徴とする(37)記載の H7型トリインフルエンザウイルスの検出方法。
(39) (33)〜(36)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて H7型トリインフルェ ンザウィルスの標的核酸領域の増幅を検出することにより、 H7型トリインフルエンザゥ ィルス感染の有無を診断することを特徴とするインフルエンザの診断方法。
(40) インフルエンザを診断するための、(33)〜(36)記載のオリゴヌクレオチドブラ イマ一を含むことを特徴とするキット。
発明の効果
[0014] 本発明によれば、 H5型又は H7型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列と 選択的にハイブリダィズするオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、 LAMP法により H5型又は H7型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列を増幅することで、 H5型又は H7型トリインフルエンザウイルスを高感度かつ迅速に検出することができ る。
図面の簡単な説明
[0015] [図 1]H5型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの特異性試験の結果を表す グラフである。(a) , (b) , (c)及び (d)は、それぞれ、プライマーセット A, B, C及び D を用いた場合の結果を表している。 NCはネガティブコントロールを、 HIは New Caled oniaを、 H3は Panamaを、 PCはポジティブコントロール(H5型プラスミド DNA)を表す
[図 2]H5型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの感度試験の結果を表すグ ラフである。(a) , (b) , (c)及び (d)は、それぞれ、プライマーセット A, B, C及び Dを 用いた場合の結果を表している。 103〜: L06は、 RNA抽出物の希釈率を表す
[図 3]H5型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットで増幅した産物の電気泳動 の結果を表す図である。レーン 1は lOObp ladder markerであり、レーン 2は LAMP産 物のサンプルであり、レーン 3は LAMP産物を Ddelで処理したサンプルである。
[図 4]H5型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの交差試験の結果を表すグ ラフである。 B— sdは B/Shangdong/07/97を、 B— shは B/Shanghai/361/2002を、 AIV— H 1等はトリインフルエンザウイルス HI等を、それぞれ表す。
[図 5]H7型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの反応性確認試験の結果を 表すグラフである。 250、 100、 50は tRNAの添カ卩量(コピー Zアツセィ)を表し、 NC
は陰性対照を表す。
[図 6]H7型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットで増幅した産物の電気泳動 の結果を表す図である。レーン Mは lOObp ladder markerであり、レーン 1は LAMP産 物のサンプルであり、レーン 2は LAMP産物を Pstlで処理したサンプルである。
[図 7]H7型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの交差性試験の結果を表す グラフである。 HI及び H3はヒトインフルエンザウイルス HI型及び H3型を表し、 B-sd は B/Shangdong/07/97を表し、 B-shは B/Shanghai/361/2002を表し、 AIV-H1等はトリ インフルエンザウイルス HI等を表し、 PCは陽性対照を表し、 NCは陰性対照を表す
[図 8]様々な株に対する H7型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの反応性 の結果を表すグラフである。(a)は A/Netherlands/219/2003を表し、(b)は A/Netherl ands/33/2003を表す。 105〜108は、 RNA抽出物の希釈率を表す。
[図 9]様々な株に対する H7型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの反応性 の結果を表すグラフである。(a)は A/mallard/Netherlands/ 12/00を表し、 (b)は A/wig eon/Osaka/1/2001を表す。 105〜108は、 RNA抽出物の希釈率を表す。
発明を実施するための最良の形態
[0016] 本発明において使用される試料としては、インフルエンザウイルス感染が疑われる人 間又は他の動物の生体由来の検体、例えば、喀痰、気管支肺胞洗浄液、鼻汁、鼻 腔吸引液、鼻腔洗浄液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、うがい液、唾液、血液、血清、血 漿、髄液、尿、糞便、組織などが挙げられる。また、感染実験などに用いられた細胞 やその培養液、あるいは生体由来の検体や培養細胞など力 分離したウィルスを含 む検体なども試料となりうる。これらの試料は分離、抽出、濃縮、精製などの前処理を 行っても良い。
[0017] このような核酸の増幅は、納富らが開発した、 PCR法で不可欠とされる温度制御が不 要な新 U、核酸増幅法: LAMP法と呼ばれるループ媒介等温増幅法 (国際公開第 0 0Z28082号パンフレット)で達成される。この方法は、铸型となるヌクレオチドに自身 の 3'末端をァニールさせて相補鎖合成の起点とするとともに、このとき形成されるル 一プにァニールするプライマーを組み合わせることにより、等温での相補鎖合成反応
を可能とした核酸増幅法である。また、 LAMP法は、最低 6つの領域を認識する 4つ のプライマーを使う特異性の高!、核酸増幅法である。
[0018] LAMP法で使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、铸型核酸の塩基配列の計 6 領域、すなわち 3'末端側力 F3c、 F2c、 Flcという領域と、 5'末端側から B3、 B2、 B1という領域の塩基配列を認識する少なくとも 4種類のプライマーであって、各々ィ ンナープライマー F及び Bとアウタープライマー F及び Bと呼ぶ。また、 Flc、 F2c、 F3 cの相補配列をそれぞれ Fl、 F2、 F3、また Bl、 B2、 B3の相補鎖を Blc、 B2c、 B3c と呼ぶ。インナープライマーとは、標的塩基配列上の「ある特定のヌクレオチド配列領 域」を認識し、かつ合成起点を与える塩基配列を 3'末端に有し、同時にこのプライマ 一を起点とする核酸合成反応生成物の任意の領域に対して相補的な塩基配列を 5' 末端に有するオリゴヌクレオチドである。ここで、「F2より選ばれた塩基配列」及び「F lcより選ばれた塩基配列」を含むプライマーをインナープライマー F (以下、 FIPと略 す)、そして「B2より選ばれた塩基配列」と「Blcより選ばれた塩基配列」を含むプライ マーをインナープライマー B (以下、 BIPと略す)と呼ぶ。一方、アウタープライマーと は、標的塩基配列上の「インナープライマーが認識する領域よりも 3'末端側に存在 するある特定のヌクレオチド配列領域」を認識かつ合成起点を与える塩基配列を有 するオリゴヌクレオチドである。ここで、「F3より選ばれた塩基配列」を含むプライマー をアウタープライマー F (以下、 F3と略す)、「B3より選ばれた塩基配列」を含むプライ マーをアウタープライマー B (以下、 B3と略す)と呼ぶ。ここで、各プライマーにおける Fとは、標的塩基配列のセンス鎖と相補的に結合し、合成起点を提供するプライマー 表示であり、一方 Bとは、標的塩基配列のアンチセンス鎖と相補的に結合し、合成起 点を提供するプライマー表示である。ここで、プライマーとして用いられるオリゴヌタレ ォチドの長さは、 10塩基以上、好ましくは 15塩基以上で、化学合成あるいは天然の どちらでも良ぐ各プライマーは単一のオリゴヌクレオチドであってもよぐ複数のオリ ゴヌクレオチドの混合物であってもよ!/、。
[0019] LAMP法においては、インナープライマーとアウタープライマーに加え、さらにこれと は別のプライマー、すなわちループプライマーを用いる事ができる。ループプライマ 一 (Loop Primer)は、 LAMP法による増幅生成物の同一鎖上に生じる相補的配列が
互いにァニールしてループを形成するとき、該ループ内の配列に相補的な塩基配列 をその 3 '末端に含むプライマー 2種(二本鎖を構成する各々につ 、て 1つずつ)を!ヽ う。このプライマーを用いると、核酸合成の起点が増加し、反応時間の短縮と検出感 度の上昇が可能となる(国際公開第 02Z24902号パンフレット)。
[0020] オリゴヌクレオチドは、公知の方法により製造することができ、例えばィ匕学的に合成す ることができる。あるいは、天然の核酸を制限酵素などによって切断し、所望の塩基 配列で構成されるように改変し、あるいは連結することも可能である。具体的には、ォ リゴヌクレオチド合成装置等を用いて合成することができる。また、 1ないし数個の塩 基が置換、欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの合 成法も、 自体公知の製法を使用することができる。例えば、部位特異的変異導入法、 遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法又は PCR法を単独又は適宜組合せて、か 力るオリゴヌクレオチドを合成することが可能である。
[0021] 本明細書における「ストリンジェントなノ、イブリダィゼーシヨン条件」としては、一般に知 られたものを選択することができる。ストリンジェントな条件として、例えば、 50%ホル ムアミド、 5 X SSC (150mM NaCl、 15mM クェン酸三ナトリウム)、 50mMリン酸 ナトリウム(PH7. 6)、 5 Xデンハーツ溶液、 10%デキストラン硫酸、及び 20 /z g/ml の DNAを含む溶液中、 42°Cでー晚ハイブリダィゼーシヨンした後、室温で 2 X SSC' 0. 10/0SDS中で一次洗净し、次!/ヽで、約 65°C【こお!/ヽて 0. 1 X SSC-0. 10/0SDSで 二次洗浄する、という条件があげられる。
[0022] インフルエンザウイルスは RNAウィルスである。 LAMP法は铸型が RNAの場合には 、铸型が DNAの場合の反応液に逆転写酵素を添加する事で、同様に核酸増幅反 応を進めることができる(RT—LAMP法)。
[0023] 本発明者らは H5型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列を迅速に増幅で きる LAMP法のプライマーの塩基配列とその組み合わせを鋭意研究した結果、 H5 型トリインフルエンザウイルスのへマダルチュンの塩基配列(配列番号 1で示される塩 基配列)から、プライマーセットとして次の A、 B、 C及び Dの 4組を選定した。なお、こ れらのプライマーの配列は、既に報告されている(例えば、特許文献 2)、 H5型トリイ ンフルェンザウィルスの検出のための NASBA (Nucleic Acid Sequence-Based Ampli
fication)用のプライマーの配列とは全く異なる。
(プライマーセット A)
FIP19c : 5
TGC-3' (配列番号 8)
BIP5: 5 -CAAACTCCAATGGGGGCATGGTGAGAGGGTGTAT-3 F3m6: 5 '-GGAGTTCTTCTGGACAA-3 ' (配列番号 4)
B3m: 5'- GTCGCAAGGACTAATCT- 3' (配列番号 10)
LF24: 5 '-GAGTCCCCTTTCTTGACAAT-3' (配列番号 11) LB1: 5 '-GATAAACTCTAGTATGCCA-3' (配列番号 12) (プライマーセット B) 列番号 19) 配列番号 20)
F3: 5 '-CAGATTTGCATTGGTTACCA-3 ' (配列番号 15)
B3: 5'- CGTCACACATTGGGTTTC- 3' (配列番号 21)
LF: 5 '-TTCCATTATTGTGTCAACC-3' (配列番号 22)
LB8: 5 '-CGATCTAGATGGAGTGAAGC-3' (配列番号 23) (プライマーセット C) 番号 30) 番号 31)
F3: 5 '-GGAAAAGACACACAATGGG-3 ' (配列番号 26)
B3: 5 '-GCTCAATAGGTGTTTCAGTT-3 ' (配列番号 32)
LF6: 5 '-CCAGCTACACTACAATCTCT-3' (配列番号 33) LB6: 5 '-TCCAGCCAATGACCTCTG-3 ' (配列番号 34)
(プライマーセット D)
番号 41) 配列番号 42)
F3: 5 -TCTAGTATGCCATTCCACAA-3' (配列番号 37)
B3: 5'- ACCATCTACCATTCCCTG- 3' (配列番号 43)
LF8: 5 '-TC AC ATATTTGGGGC ATTCC-3 ' (配列番号 44)
LB8: 5 '-AGAGAGGACTATTTGGAGCT-3 ' (配列番号 45)
[0024] さらに、本発明者らは H7型トリインフルエンザウイルスに特異的な塩基配列を迅速に 増幅できる LAMP法のプライマーの塩基配列とその組み合わせを鋭意研究した結 果、 H7型トリインフルエンザウイルスのへマグルチニン塩基配列(配列番号 1で示さ れる塩基配列)から、以下のプライマーセット Eを選定した。
(プライマーセット E) 配列番号 55)
3' (配列番号 56)
22F3m: 5 -TTCCCGAAATCCCAAA-3' (配列番号 51)
22B3: 5 '-GGTTAGTTTTTTCTATAAGCCG-3 ' (配列番号 57)
22 - 9LF: 5 -CCCATCCATTTTCAATGAAAC-3' (配列番号 58)
22- 9LB: 5 '-ACTGCTGCAGATTACAAAAG-3 ' (配列番号 59)
[0025] 核酸合成で使用する酵素は、鎖置換活性を有する铸型依存性核酸合成酵素であれ ば特に限定されない。このような酵素としては、 Bst DNAポリメラーゼ (ラージフラグメ ント)、 Bca(exo-)DNAポリメラーゼ、大腸菌 DNAポリメラーゼ Iのタレノウフラグメント等 が挙げられ、好ましくは Bst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)が挙げられる。
[0026] RT— LAMP法に用いる逆転写酵素としては、 RNAを铸型として cDNAを合成する 活性を有する酵素であれば特に限定されない。このような酵素としては、 AMV、 Clone d AMV、 MMLVの逆転写酵素、 Superscripts ReverTraAce、 Thermoscript等が挙げ
られ、好ましくは、 AMV又は Cloned AMV逆転写酵素が挙げられる。また Bca DNAポ リメラーゼのように、逆転写酵素活性と DNAポリメラーゼ活性の両活性を有する酵素 を用いると、 RT— LAMP反応を 1つの酵素で行うことができる。
[0027] 核酸合成で使用する酵素や逆転写酵素は、ウィルスや細菌など力 精製されたもの でも良ぐ遺伝子組み換え技術によって作製されたものでも良い。またこれらの酵素 はフラグメント化やアミノ酸の置換などの改変をされたものでも良い。
[0028] LAMP反応後の核酸増幅産物の検出には公知の技術が適用できる。例えば、増幅 された塩基配列を特異的に認識する標識オリゴヌクレオチドや蛍光性インターカレー ター法 (特開 2001— 242169号公報)を用いて検出することができ、また、反応終了 後の反応液をそのままァガロースゲル電気泳動にかけても容易に検出できる。ァガロ ースゲル電気泳動では、 LAMP増幅産物は、塩基長の異なる多数のバンドがラダー (はしご)状に検出される。また、 LAMP法では核酸の合成により基質が大量に消費 され、副産物であるピロリン酸イオン力 共存するマグネシウムイオンと反応してピロリ ン酸マグネシウムとなり、反応液が肉眼でも確認できる程に白濁する。したがって、こ の白濁を、反応終了後ある 、は反応中の濁度上昇を経時的に光学的に観察できる 測定機器、例えば 400nmの吸光度変化を通常の分光光度計を用いて確認すること で、核酸増幅反応を検出することも可能である(国際公開第 01Z83817号パンフレ ット)。
[0029] 本発明のプライマーを用いて核酸増幅の検出を行う際に必要な各種の試薬類は、あ らカじめパッケージングしてキットィ匕する事ができる。具体的には、本発明のプライマ 一あるいはループプライマーとして必要な各種のオリゴヌクレオチド、核酸合成の基 質となる 4種類の dNTPs、核酸合成を行う DNAポリメラーゼ、逆転写活性を持つ酵 素、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液や塩類、酵素や铸型を安定化する保護 剤、さらに必要に応じて反応生成物の検出に必要な試薬類がキットとして提供される 実施例
[0030] 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限 定されるものではない。
[0031] 実施例 1 : H5型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの反応性の確認 プライマーの反応性の確認を以下の方法で行った。 LAMP法により核酸の増幅を行 うための反応溶液の組成は以下の通りである。なお、プライマーの合成は QIAGEN 社に依頼し、 OPC (逆相カラムカートリッジ)精製したものを使用した。
20mM Tris -HCl pH8. 8
10mM KC1
8mM MgSO
4
1. 4mM dNTPs
lOmM (NH ) SO
4 2 4
0. 8M Betaine (SIGMA)
0. 1 % Tween20
1. 6 ^ Μ FIP
1. 6 ^ Μ BIP
0. 2 μ Μ F3
0. 2 μ Μ B3
0. 8 M LF
0. 8 ^ Μ LB
AMV Reverse Transcriptase 2U (Finnzyme)
Bst DNA polymerase 16U (NEB)
[0032] 上記反応溶液に、 H5型プラスミド DNA (HK/213/03;国立感染症研究所から供与) を 104コピー加えて、 62. 5°Cで 60分間 RT— LAMP反応を行った。リアルタイム濁 度測定装置 LA— 320C (栄研ィ匕学)を用いて、リアルタイムに反応を検出した。その 結果、 4つのプライマーセット(プライマーセット A、 B、 C及び D)について増幅が確認 された。
[0033] さらに、その 4セットについて、培養ウィルスである New Caledonia (H1N1)及び Pana ma (H3N2)カゝら抽出した RNAを铸型に使って特異性試験を行った。図 1は、特異性 試験の結果を表すグラフである。図 1に示したように、いずれのプライマーセットを用 いた場合も、 HI型及び H3型の増幅は確認されなかった。以上の結果から、いずれ
のプライマーセットも、 H5型に対する特異性が高いことが明ら力となった。
[0034] 次に、培養ウィルスである Vetnam/JP1203/04 (H5Nl)力ら抽出した RNAを使って、 感度試験を行った。抽出 RNAは铸型量が不明であるため、 RNase freeの滅菌水で 1 03〜: L06倍希釈したものを铸型サンプルとして用いた。図 2は、感度試験の結果を表 すグラフである。プライマーセット Aを用いた場合、 105倍希釈したサンプルでも増幅 が確認されており、最も高感度であることが明らかとなった。
[0035] 実施例 2 : H5型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットで増幅した産物の確認 プライマーセット Aで増幅した LAMP産物につ!、て、電気泳動及び制限酵素 Ddelで の確認を行った。図 3は、電気泳動の結果を表す図である。図 3のレーン 2から明らか なように、 LAMP産物特有のラダーパターンが確認された。また、 Ddelで処理したサ ンプル (レーン 3)では、消化が確認された。以上の結果から、標的配列が特異的に 増幅されていることが明ら力となった。
[0036] 実施例 3: H5型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの評価(交差性試験) ヒトインフルエンザウイルスの A/New Caledonia/20/99 (HlNl)、 A/Panama/2007/99 (H3N2)、 B/Shangdong/07/97及び B/Shanghai/361/2002並びにトリインフルエンザ ウィルス H1〜H15 (H5を除く)の合計 18種類をサンプルとした。それぞれ、培養ウイ ルスから QIAamp Viral RNA Kit (QIAGEN社)を用いて RNAの抽出を行い、 5 μ L· の抽出液を RT— LAMP反応(プライマーセット Aをプライマーとして用 、た)に用い た。
[0037] 図 4 (a)及び(b)から分かるように、 RT— LAMP法ではいずれのサンプルにおいても 増幅が認められな力つた。したがって、 RT— LAMP法は特異性が高いことが明らか となった。
[0038] 実施例 4: H5型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの評価 (感度試験)
2004年に山口県で感染が確認されたトリインフルエンザ H5型株(CH/Yamaguchi 7 /04)及び 2004年にベトナムで感染が確認された H5型株 (VN/JP1203/04)を铸型サ ンプルとして用いた。それぞれ、培養ウィルスから抽出した RN Aを RNase freeの滅菌 水で段階希釈(104〜108)を行い、 RT— PCR法には 10 L、 RT— LAMP法(プラ イマ一セット Aをプライマーとして用いた)には 5 μ Lの希釈液を使用した。
[0039] RT— PCR法は、国立感染症研究所の感染症情報センターのウェブサイトに掲載さ れている条件を修正して行った。すなわち、市販のキット(TaKaRa One Step RNA PC R Kit (AMV))を使用し、 50°C30分で逆転写反応を行い、 94°Cで 2分間処理した後 、 94°C1分、 45°C1分、 72°C1分のサイクルを 30回繰り返し、さらに 72°Cで 10分間 伸長反応を行い、 4°Cで保存した。
[0040] RT—PCR法に用いたプライマー及び反応溶液の組成は以下の通りである。
プライマー(PCR産物の長さ: 708bp)
H5 515f: 5-CATACCCAACAATAAAGAGG-3' (配列番号 46)
H5 1220r: 5 '-GTGTTC ATTTTGTTAATGAT-3 ' (配列番号 47)
反応溶液
RNA抽出液 10/zL
10 X One Step RNA PCR Buffer 5μL·
lOmM dNTPs 5μL·
25mM MgCl lO^L
2
RNase Inhibitor 1 μL·
AMV RTase lμL·
AMV— Optimized Taq lμL·
H5 515ί(10^Μ) 2μL·
H5 1220Γ(10^ Μ) 2μΙ^
RNase Free滅菌水 適宜添加して反応液を 50 Lに調整
[0041] RT—PCR法及び RT—LAMP法による増幅の結果を表 1にまとめた。表 1中、 RT—
LAMP法の欄には増幅が確認されたサンプルの割合を示した。また、 RT— PCRに おける増幅は電気泳動の結果を目視により確認した (表 1中、〇は増幅が検出できた ことを表し、 Xは増幅が検出できな力つたことを表す)。
[0042] [表 1]
希釈率
サンプル 測定法
104 105 107 108
RT-LAMP 2/2 2/2 2/2 2/2 0/2
CH/Yamaguchi 7/04
RT-PCR 〇 〇 X X X
RT-LAMP 2/2 2/2 2/2 2/2 1/2
VN/JP1203/04
RT-PCR 〇 〇 〇 X X
[0043] RT— LAMP法と RT— PCR法とを比較した場合、いずれの株でも、 RT— LAMP法 の方が 10〜: LOO倍感度が高かった。
[0044] 実施例 5: H7型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの反応性の確認
プライマーセット Eの反応性の確認を以下の方法で行った。 LAMP法により核酸の増 幅を行うための反応溶液の組成は以下の通りである。なお、プライマーの合成は QIA
GEN社に依頼し、 OPC (逆相カラムカートリッジ)精製したものを使用した。
20mM Tris-HCl pH8. 8
10mM KC1
8mM MgSO
4
1. 4mM dNTPs
lOmM (NH ) SO
4 2 4
O. 8M Betaine (SIGMA)
O. 1% Tween20
1. 6^Μ FIP
1. 6^Μ BIP
O. 2μΜ F3
O. 2μΜ B3
O. 8 M LF
O. 8^Μ LB
AMV Reverse Transcriptase 2U (Finnzyme)
Bst DNA polymerase 16U (NEB)
[0045] A/Netherlands/219/2003 (H7N7) (オランダで死亡例が出た際に分離された株)の 塩基配列(配列番号 1に示す塩基配列を含む断片)をクローニングベクターに組み込 み、転写反応により tRNAを調製した。調製した tRNAを 250、 100又は 50コピー/ アツセィとなるように上記反応溶液にカ卩え、 62. 5°Cで 35分間、リアルタイム濁度測定 装置 LA- 200 (テラメッタス)を用いて、増幅反応及び検出を行った。
[0046] tRNAの添カ卩量が 250、 100及び 50コピー Zアツセィの場合並びに陰性対照のリア ルタイム検出の結果を図 5に示した。この結果より 50コピー Zアツセィまで検出される ことが分力つた。
[0047] 実施例 6: H7型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットで増幅した産物の確認 プライマーセット Eで増幅した LAMP産物につ!、て、電気泳動及び制限酵素 Pstlで の確認を行った。図 6は、電気泳動の結果を表す図である。 Mは lOObpのラダーマ 一力一を表し、レーン 1は未処理の LAMP産物のサンプルであり、レーン 2は LAMP 産物を Pstlで消化したサンプルである。図 6のレーン 1から明らかなように、 LAMP産 物特有のラダーパターンが確認された。また、 Pstlで処理したサンプル(レーン 2)で は、消化が確認された。以上の結果から、標的配列が特異的に増幅されていることが 明らかとなった。
[0048] 実施例 7: H7型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの評価(交差性試験) ヒトインフルエンザウイルスの A/New Caledonia/20/99 (HlNl)、 A/Panama/2007/99 (H3N2)、 B/Shangdong/07/97及び B/Shanghai/361/2002並びにトリインフルエンザ ウィルス H1〜H15 (H7を除く)の合計 18種類をサンプルとし、プライマーの特異性 を調べた。それぞれ、培養ウィルスから QIAamp Viral RNA Kit (QIAGEN社)を用い て RNAの抽出を行い、 100倍希釈した抽出 RNAを RT— LAMP反応に用いた。な お、陽性対照 (PC)には実施例 5で調製した tRNAを用い、陰性対照には蒸留水を 用いた。
[0049] 図 7から分力るように、いずれのサンプルにおいても増幅が認められなかった。したが つて、本発明のプライマーセットは特異性が高いことが明ら力となった。
[0050] 実施例 8 :H7型トリインフルエンザウイルス用プライマーセットの評価 (様々な株に対
する反応性)
4種類の H7型トリインフルエンザウイルスゲノムを铸型サンプルとして用いて、各ウイ ルスに対する感度を調べた。それぞれ、培養ウィルスカゝら抽出した RNAを RNase free の滅菌水で段階希釈(105〜108)を行 5 μ Lの希釈液を使用した。
[0051] 各ウィルスゲノムを铸型サンプルとした場合のリアルタイム検出の結果を図 8及び 9に ついては、 107希釈まで検出でき(図 8を参照)、 A/mallard/Netherlands/12/2003 (H 7N3)及び A/wigeon/Osaka/1/2001 (H7N7)については、 106希釈まで検出できた (図 9を参照)。以上より本発明のプライマーセットは、上記 4種類の株に反応すること が分かった。
産業上の利用可能性
[0052] 本発明によれば、 H5型又は H7型トリインフルエンザウイルスを高感度かつ迅速に検 出することができる。