明 細 書
接着フィルムおよびその利用
技術分野
[0001] 本発明は、ポリイミドからなる層を有する接着フィルムとその代表的な利用に関する ものであり、特に、高耐熱性ポリイミドからなる層の少なくとも一方の表面に、熱可塑 性ポリイミドを含有する接着層を形成してなり、フレキシブル配線板の製造に好適に 用いることができる接着フィルムと、当該接着フィルムの製造方法、当該接着フィルム を用いた積層体やフレキシブル配線板等に関するものである。
背景技術
[0002] 近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化にともない、各種プリント基 板の需要が伸びている。これらのプリント基板の中でも、フレキシブル配線板の需要 が特に伸びて 、る。フレキシブル配線板はフレキシブルプリント配線板 (FPC)等とも 称する。フレキシブル配線板は、絶縁性フィルム上に金属層からなる回路が形成され た構造を有している。
[0003] 上記フレキシブル配線板は、一般に、各種絶縁材料により形成され、柔軟性を有す る絶縁性フィルムを基板とし、この基板の表面に、各種接着材料を介して金属箔を加 熱 ·圧着することにより貼り合わせる方法により製造される。上記絶縁性フィルムとして は、ポリイミドフィルム等が好ましく用いられており、上記接着材料としては、エポキシ 系、アクリル系等の熱硬化性接着剤が一般的に用いられている。このような熱硬化性 接着剤を用いたフレキシブル配線板は、基板 Z接着材料 Z金属箔の三層構造を有 しているので、以下、説明の便宜上、「三層 FPC」と称する。
[0004] 上記三層 FPCに用いられる熱硬化性接着剤は、比較的低温での接着が可能であ るという利点がある。ただし、今後、フレキシブル配線板に対して耐熱性、屈曲性、電 気的信頼性といった各種特性に対する要求が厳しくなることが想定されているが、熱 硬化性接着剤を用いた三層 FPCでは、このような要求に十分対応することが困難に なると考えられている。
[0005] これに対して、絶縁性フィルムに直接金属層を設けたフレキシブル配線板や、接着
層に熱可塑性ポリイミドを使用したフレキシブル配線板が提案されて 、る。これらフレ キシブル配線板は絶縁性の基板に直接金属層を形成して ヽる状態にあるため、以 下、説明の便宜上、「二層 FPC」と称する。この二層 FPCは、三層 FPCより優れた特 性を有し、上記各種特性に対する要求にも十分対応可能であるため、今後需要が伸 びていくことが期待される。
[0006] 上記二層 FPCは、基板に金属箔を積層した構造を有するフレキシブル金属張積層 板を用いて製造される。このフレキシブル金属張積層板の製造方法としては、キャス ト法、メタライジング法、ラミネート法等が挙げられる。キャスト法は、金属箔上にポリィ ミドの前駆体であるポリアミド酸を流延、塗布した後イミドィ匕する方法である。メタライジ ング法は、スパッタ、メツキによりポリイミドフィルム上に直接金属層を設ける方法であ る。ラミネート法は、高耐熱性ポリイミド層の少なくとも片表面に熱可塑性ポリイミド層 が設けられた接着フィルムと金属箔とを貼り合わせる方法である。
[0007] これらのうち、ラミネート法は、対応できる金属箔の厚み範囲がキャスト法よりも広ぐ 装置コストがメタライジング法よりも低 、と 、う点で優れて 、る。ラミネート法を行う装置 としては、ロール状の材料を繰り出しながら連続的にラミネートする熱ロールラミネート 装置またはダブルベルトプレス装置等が用いられている。これら装置のうち、生産性 が高いこと、初期設備投資が低いこと等から、熱ロールラミネート法を特に好ましく用 いることがでさる。
[0008] 従来の三層 FPCをラミネート法で製造するときには、接着層に熱硬化性榭脂を用 V、て 、たため、ラミネート温度を 200°C未満としてラミネート処理を行うことが可能であ つた (特許文献 1参照)。これに対して、二層 FPCは熱可塑性ポリイミドを接着層とし て用いるため、熱融着性を発現させるために 200°C以上、場合によっては 400°C近く の高温をカ卩える必要がある。
[0009] ここで、熱ロールラミネート法では、一対のロールで金属箔と接着フィルムを押し付 けながら搬送するため、接着フィルムには、長手方向(以下「MD方向」)には延伸、 幅方向(以下「TD方向」)には圧縮の応力が印加される。この応力は、残留歪を誘発 し、エッチングして配線を形成する際、並びに部品を実装するために半田リフローを 行うときに寸法変化となって現れる。具体的には、熱ロールによるラミネートの際に、
MD方向には引っ張られる力が働き、逆に TD方向には収縮する力が働く。その結果 、フレキシブル配線板力 金属箔をエッチングする時点と、半田リフローを通して加熱 する時点にこの歪みが解放され、 MD方向は収縮し、逆に TD方向は膨張してしまう
[0010] 近年、電子機器の小型化、軽量化を達成するために、基板に設けられる配線は微 細化が進んでおり、実装する部品も小型化、高密度化されたものが搭載される。その ため、微細な配線を形成した後の寸法変化が大きくなると、設計段階での部品搭載 位置力 ずれて、部品と基板とが良好に接続されなくなるという問題が生じる。
[0011] そこで、上記寸法変化を抑えるための技術として、(1)ラミネート処理の工程条件を 好ま 、条件に設定する技術と、 (2)ポリイミドフィルムの加熱収縮率を好ま 、範囲 に規定する技術とが提案されて ヽる。
[0012] 上記工程条件を設定する技術としては、例えば、特許文献 3に示すように、加圧カロ 熱成形する際の圧力を設定する技術や、特許文献 2に示すように、接着フィルムの張 力を設定する技術等が挙げられる。また、上記加熱収縮率を規定する技術としては、 特許文献 4に示すように、芳香族ポリイミドからなるテープ状フィルムにお 、て所定の 条件で加熱収縮率の上限を規定する技術、熱圧着性ポリイミドフィルムにお 、て 300 °Cでの加熱収縮率の上限を規定する技術、ヤング率の下限と 300°Cおよび 450°Cに おける加熱収縮率の上限を規定する技術等が挙げられる。
〔特許文献 1〕
特開平 9— 199830号公報(平成 9年(1997) 7月 31日公開)
〔特許文献 2〕
特開 2002— 326280号公報(平成 14年(2002) 11月 12日公開)
〔特許文献 3〕
特開 2002— 326308号公報(平成 14年(2002) 11月 12日公開)
〔特許文献 4〕
特開平 10— 77353号公報(平成 10年(1998) 3月 24日公開)
〔特許文献 5〕
特開 2001— 270034号公報(平成 13年(2001) 10月 2日公開)
〔特許文献 6〕
特開 2003— 335874号公報(平成 15年(2003) 11月 28日公開)
し力しながら、上記従来の技術では、何れも、熱ロールラミネート処理を経たフレキ シブル配線板において、エッチング時や加熱時に、 MD方向が収縮し TD方向が膨 張する点を考慮していないため、実用上、不十分な点が残っているという問題が生じ ている。
[0013] 具体的には、例えば、特許文献 2や特許文献 3に開示されている技術は、用途によ つては接着フィルムの寸法変化を十分に改善することが可能である。しかしながら、 上記 MD方向への収縮、 TD方向への膨張を考慮していないため、近年要求されて いる電子部品の急速な小型化や高密度化に十分対応できない場合がある。
[0014] 一方、特許文献 4に開示されて ヽる技術は、接着剤を介して芳香族ポリイミドフィル ムと銅箔とを接着することが前提となっており、特許文献 5に開示されている技術も、 高耐熱性の芳香族ポリイミド層の少なくとも片面、好ましくは両面に熱圧着性の芳香 族ポリイミド層を形成することが前提となっている。すなわち、これら技術は三層 FPC に好適な技術であって二層 FPCには適さない。また、特許文献 6に開示されている 技術は、二層 FPCまたは三層 FPCの何れに好ま 、技術であるか特に言及されて おらず、熱ロールラミネート時の問題にっ ヽても特に触れられて ヽな 、。
[0015] そのため、これら特許文献 4— 6に開示されている技術も、上記特許文献 1—2に開 示されている技術と同様、上記 MD方向への収縮、 TD方向への膨張を考慮しておら ず、それゆえ、近年要求されている電子部品の急速な小型化や高密度化に十分対 応できない場合がある。
発明の開示
[0016] 本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、フレキシブル配線板の製造 に好適に利用することが可能であり、熱ロールラミネート法で製造したフレキシブル金 属張積層板における各種加工時に寸法変化の発生を抑制することができる接着フィ ルムと、その利用の一例とを提供することにある。
[0017] 本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、接着フィルムの加熱収縮率 を制御することにより、熱ロールラミネート法で作製した際に寸法変化の発生が抑制
されたフレキシブル金属張積層板を提供可能な接着フィルムが得られることを独自に 見出し、本発明を完成させるに至った。特に、接着フィルムの MD方向への収縮、 T D方向への膨張を考慮して、加熱収縮率を TD方向および MD方向の双方で好まし い範囲に規定することにより、寸法変化の発生を良好に抑制することが可能であるこ とを見出し、本発明を完成させるに至った。
[0018] すなわち、本発明にかかる接着フィルムは、上記課題を解決するために、高耐熱性 ポリイミドを含有する耐熱層と、当該耐熱層の少なくとも一方の表面に熱可塑性ポリイ ミドを含有する接着層とを有しており、 TD方向の加熱収縮率が + 0. 01%以上となつ ており、かつ、 MD方向の加熱収縮率が 0. 02%以下となっていることを特徴として いる。
[0019] 上記接着フィルムにおいては、共押出一流延塗布法により、上記耐熱層の少なくと も一方の表面に上記接着層が形成されてなる接着フィルムであることが好ましい。ま た上記接着フィルムにおいては、ゲル塗布法により、上記耐熱層の少なくとも一方の 表面に上記接着層が形成されてなるものであってもよい。
[0020] 上記接着フィルムにおいては、 TD方向の加熱収縮率が + 0. 03%以上となってお り、かつ、 MD方向の加熱収縮率が 0. 05%以下となっていることがより好ましい。 また、上記接着層は、上記耐熱層の両面に形成されていることが好ましい。さらに、 上記耐熱層は、高耐熱性ポリイミドとして非熱可塑性ポリイミド榭脂を 90重量%以上 含有していることが好ましい。また TD方向および MD方向の引張弾性率が 5. 0〜11 GPaの範囲内であることが好まし!/、。
[0021] 本発明には、上記接着フィルムを用いて製造される積層体が含まれ、具体的には、 接着フィルムの表面に金属箔を積層してなる積層体、例えば、フレキシブル金属張 積層板を挙げることができる。また、本発明には、上記接着フィルム、あるいは、上記 積層体を用いて形成されるフレキシブル配線板も含まれる。
[0022] さらに、本発明には、上記接着フィルムの製造方法も含まれる。具体的には、例え ば、高耐熱性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含有する有機溶媒溶液と、熱可 塑性ポリイミドを含有する有機溶媒溶液または熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリ アミド酸を含有する有機溶媒溶液とを、二層以上の押出し成形用ダイスを有する押出
成形機へ同時に供給して、前記ダイスの吐出口から前記の両有機溶媒溶液を少なく とも二層の薄膜状体として押出す工程と、二層以上の押出し成型用ダイス力 押出さ れた前記の両有機溶媒溶液を、平滑な支持体上に連続的に押し出し、次いで、前記 支持体上の少なくとも二層の薄膜状体の有機溶媒の少なくとも一部を揮散せしめて、 自己支持性を有する積層フィルムを得る工程と、得られた積層フィルムの TD方向の 両端を固定し、延伸倍率が 1. 0倍を超えるように TD方向に延伸しながらイミドィ匕する 工程と、を含む製造方法を挙げることができる。
[0023] また上記接着フィルムの製造方法は、高耐熱性ポリイミドの前駆体であるポリアミド 酸を含有する有機溶媒溶液をフィルム状に形成してゲルフィルムとするゲルフィルム 形成工程と、得られたゲルフィルムの少なくとも一方の表面に、熱可塑性ポリイミドを 含有する有機溶媒溶液、または熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含有 する有機溶媒溶液を塗布して加熱する積層工程と、得られた積層フィルムの TD方 向の両端を固定し、延伸倍率が 1. 0倍を超えるように TD方向に延伸しながらイミド 化する延伸イミド化工程とを含む製造方法であってもよい。
[0024] また、本発明には、上記接着フィルム、あるいは、上記積層体を用いて形成される フレキシブル配線板の製造方法も含まれる。具体的には、熱ロールラミネート法によ り、金属箔を接着フィルムに積層する製造方法を挙げることができる。
発明を実施するための最良の形態
[0025] 本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである力 本発明はこれに限 定されるものではなぐ記述した範囲内で種々の変形をカ卩えた態様で実施できるもの である。
[0026] (I)接着フィルム
本発明に力かる接着フィルムは、各種処理工程に伴う加熱によっても寸法変化の 発生を良好に抑制することができるものであり、高耐熱性ポリイミドを含有する耐熱層 の表面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層が積層された構成を有している。接着 フィルム全体として見た場合、幅方向(TD方向)の加熱収縮率が + 0. 01%以上か つ長手方向(MD方向)の加熱収縮率が 0. 02%以下である。
[0027] (I 1)耐熱層およびこれに用いられる高耐熱性ポリイミド
<耐熱層>
本発明にかかる接着フィルムが備える耐熱層は、ポリイミドを含有しており、その接 着フィルムを用いて加工する際の工程、または最終製品の形態で通常さらされる温 度において、容易に熱変形しないものであればよぐ用いられるポリイミドの具体的な 種類は特に限定されるものではな 、が、高耐熱性ポリイミドを含有することが好ま ヽ 。なお、高耐熱性であるとは、当該ポリイミドをフィルム状に成形した状態で 450〜50 0°C程度の温度範隨こ加熱した際に熔融し、フィルムの形状を保持して 、るものを指 す。
[0028] 本発明に力かる接着フィルムは、二層 FPCの製造に好適に用いることができるが、 この場合、接着層には熱可塑性ポリイミドが含まれるので、熱融着性を発現させるた めに少なくとも 200°C以上の高温を加える必要がある。したがって、上記耐熱層は、 このような高温条件下でも熱変形を回避し十分な形状安定性を発揮できる高耐熱性 ポリイミドを含有して 、ることが好まし 、。
[0029] 上記高耐熱性ポリイミドとしては特に限定されるものではないが、非熱可塑性ポリイ ミド榭脂を挙げることができる。より具体的には各種芳香族ポリイミドを挙げることがで きる。なお、本発明で用いる高耐熱性ポリイミドの分子構造等は特に限定されるもの ではないが、好ましい例については、モノマー原料である酸二無水物成分およびジ ァミン成分とポリイミドの製造方法とを具体的に挙げることにより後に詳述する。
[0030] 上記耐熱層は、非熱可塑性ポリイミドを 90重量%以上含有していることが好ましぐ 95重量%以上含有していることがより好ましい。換言すれば、上記耐熱層には、高耐 熱性ポリイミド以外の成分が含まれて 、てもよ 、。
[0031] 上記他の成分としては、高耐熱性ポリイミドにブレンド可能であり、かつ、耐熱層の 物性を損なわな!/ヽ各種樹脂や、耐熱層の諸特性を改善するための各種添加剤等を 挙げることができる。中でも、本発明においては、フィラーを添加することが好ましい。 フィラーの添カ卩によって、得られる接着性フィルムの摺動性、熱伝導性、導電性、耐 コロナ性、ループスティフネス等の諸特性を改善することができる。
[0032] 本発明で用いられるフイラ一は特に限定されるものではないが、各種無機化合物か らなる無機フィラーを挙げることができる。より具体的には、シリカ、雲母、酸化チタン、
アルミナ等の酸化物;窒化珪素、窒化ホウ素等の無機窒化物;リン酸水素カルシウム 、リン酸カルシウム等のリン酸ィ匕合物等が挙げられる。
[0033] フィラーの粒子径は、改質すべきフィルム特性および添加するフイラ一の種類等に よって決定されるため特に限定されるものではないが、一般的には、平均粒径が 0. 0 5〜100 111の範囲内でぁればょぐ0. 1〜75 111の範囲内が好ましぐ0. 1〜50 μ mの範囲内がより好ましぐ 0. 1〜25 μ mの範囲内がさらに好ましい。粒子径がこ の範囲を下回ると改質効果が現れにくくなり、この範囲を上回ると表面性を大きく損な つたり、機械的特性が大きく低下したりする可能性がある。
[0034] フィラーの添加量も、改質すべきフィルム特性およびフィラーの粒子径等により決定 されるため特に限定されるものではないが、一般的には、ポリイミド 100重量部に対し て 0. 01〜100重量部の範囲内であればよぐ 0. 01〜90重量部の範囲内が好まし ぐ 0. 02〜80重量部の範囲内がより好ましい。フィラー添カ卩量がこの範囲を下回ると フイラ一による改質効果が現れにくぐこの範囲を上回るとフィルムの機械的特性が大 きく損なわれる可能性がある。
[0035] 上記耐熱層の厚みは特に限定されるものではないが、後述するように、得られる接 着フィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の引張弾性率が所定範 囲内となるように設定すればよい。
[0036] また、耐熱層の熱膨張係数は、特に限定されるものではないが、 50〜200°Cの範 囲内において 4〜30ppm/°Cの範囲内であることが好ましぐ 6〜25ppmZ°Cの範 囲内であることがより好ましぐ 8〜22ppmZ°Cの範囲内であることがさらに好ましい。
[0037] 耐熱層の熱膨張係数が上記範囲を上回る場合、接着層を設けて接着フィルムとし た際の熱膨張係数が金属箔よりも大きくなりすぎるため、ラミネート時の接着フィルム と金属箔の熱挙動の差が大きくなり、得られるフレキシブル金属張積層板の寸法変 化が大きくなる場合がある。一方、耐熱層の熱膨張係数が上記範囲を下回る場合、 逆に接着フィルムの熱膨張係数が金属箔よりも小さくなりすぎるため、やはりラミネー ト時の熱挙動の差が大きくなり、得られるフレキシブル金属張積層板の寸法変化が大 きくなる場合がある。
[0038] <高耐熱性ポリイミド >
耐熱層の高耐熱性ポリイミドとして用いられる非熱可塑性ポリイミドは、ポリアミド酸を 前駆体として製造し、これをイミドィ匕することにより製造することができる。
[0039] ポリアミド酸の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、特に限定 されるものではない。通常、酸二無水物成分とジァミン成分とをそれぞれ実質的等モ ル量となるように有機溶媒中に溶解させて、制御された温度条件下で、上記酸二無 水物とジァミンの重合が完了するまで撹拌することによって製造される。この製造方 法により得られるポリアミド酸は有機溶媒溶液 (以下、便宜上、「ポリアミド酸溶液」と称 する)となっており、ポリアミド酸の濃度は通常 5〜35重量%の範囲内、好ましくは 10 〜30重量%の範囲内となっている。この範囲内の濃度であれば本発明に好適な分 子量と溶液粘度となる。
[0040] ポリアミド酸の重合方法としては、公知のあらゆる方法およびそれらを組み合わせた 方法を用いることができる。ポリアミド酸の重合方法の特徴はモノマー成分の添加順 序にある。したがって、モノマー成分の添加順序を制御することにより得られるポリイミ ドの諸物性を制御することができる。それゆえ、本発明では、モノマー成分の添加順 序は最終的に得ようとする非熱可塑性ポリイミドに求める諸物性に応じて適宜決定す ればよ 、ので、ポリアミド酸の重合方法にぉ 、てどのような添加順序でモノマー成分 を添加してもよい。
[0041] このようにポリアミド酸の重合方法は特に限定されるものではないが、代表的な重合 方法としては、次の各方法を挙げることができる。なお、これら方法は単独で用いても よ!、し、部分的に組み合わせて用いることもできる。
1)ジァミン成分を有機極性溶媒に溶解させた後、ジァミン成分と実質的に等モルの 酸二無水物成分を添加して撹拌 ·反応させて重合する。
2)酸二無水物成分と、これに対し過小モル量となるジァミン成分とを有機極性溶媒 に溶解して撹拌 ·反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレボリマーを有機極性 溶媒の溶液として得る。続いて、全工程において酸二無水物成分とジァミン成分とが 実質的に等モルとなるように、プレボリマーの溶液にジァミン成分を添加して撹拌'重 合する。
3)酸二無水物成分と、これに対し過剰モル量となるジァミン成分とを有機極性溶媒
に溶解して撹拌 ·反応させ、両末端にアミノ基を有するプレボリマーを有機極性溶媒 の溶液として得る。続いて、全工程において酸二無水物成分とジァミン成分とが実質 的に等モルとなるように、プレボリマーの溶液に酸二無水物成分を添加して撹拌 '重 合する。
4)酸二無水物成分を有機極性溶媒に溶解させた後、酸二無水物成分と実質的に等 モルとなるようにジァミン成分を添加して撹拌 ·反応させる。
5)実質的に等モルの酸二無水物成分およびジァミン成分の混合物を、有機極性溶 媒に溶解して撹拌 ·反応させ重合する。
[0042] なお、上記重合方法にお!、て、各モノマー成分 (酸二無水物成分および Zまたは ジァミン成分)は、 1種類の化合物のみであってもよいし、 2種類以上の化合物からな つていてもよい。また、有機極性溶媒に添加しても、同溶媒に対する溶解度の問題か らこれら化合物が溶解しない場合もあるが、溶媒全体に均等に分散していれば実質 的に溶解している状態と同じと見なしてよい。したがって、上記 1)〜5)の方法の説明 で「溶解」と 、う用語は「分散」に差し替えることができる。
[0043] ポリアミド酸を重合するために用いられる有機極性溶媒としては、ポリアミド酸を溶解 する溶媒であれば特に限定されるものではなぐどのような溶媒でも用いることができ るが、中でも、アミド系溶媒すなわち N, N ジメチルフオルムアミド、 N, N ジメチル ァセトアミド、 N—メチル 2—ピロリドン等を好ましく用いることができ、 N, N ジメチ ルフオルムアミド、 N, N ジメチルァセトアミドを特に好ましく用いることができる。
[0044] 本発明で用いられるモノマー成分としては、公知の化合物を好適に用いることがで きるが、特に、高耐熱性ポリイミドを得るためには、酸二無水物成分もジァミン成分も 、何れも芳香族系化合物であることが好ましい。換言すれば、本発明において、高耐 熱性ポリイミドの前駆体としてのポリアミド酸溶液を製造する場合には、酸二無水物成 分として芳香族テトラカルボン酸二無水物を、ジァミン成分として芳香族ジァミンを用 いることが非常に好ましい。
[0045] 本発明にお 、て酸二無水物成分として用いることができる芳香族テトラカルボン酸 二無水物は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無 水物、 2, 3, 6, 7 ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、 3, 3,, 4, 4,一ビフエ-ル
テトラカルボン酸二無水物、 1, 2, 5, 6 ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、 2, 2 ' , 3, 3,ービフエ-ルテトラカルボン酸二無水物、 3, 3' , 4, 4,一べンゾフエノンテト ラカルボン酸二無水物、 4, 4' ォキシフタル酸ニ無水物、 2, 2 ビス(3, 4 ジカ ルボキシフエ-ル)プロパン二無水物、 3, 4, 9, 10 ペリレンテトラカルボン酸二無 水物、ビス(3, 4 ジカルボキシフエ-ル)プロパン二無水物、 1, 1 ビス(2, 3 ジ カルボキシフエ-ル)エタンニ無水物、 1, 1 ビス(3, 4 ジカルボキシフエ-ル)ェ タン二無水物、ビス(2, 3 ジカルボキシフエ-ル)メタン二無水物、ビス(3, 4 ジカ ルボキシフエ-ル)エタンニ無水物、ォキシジフタル酸二無水物、ビス(3, 4—ジカル ボキシフエ-ル)スルホン二無水物、 p—フエ-レンビス(トリメリット酸モノエステル酸 無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフエノール Aビス(ト リメリット酸モノエステル酸無水物)、並びにこれら各化合物の類似物を挙げることが できる。これら化合物は単独で用いてもよいし、任意の割合で組み合わせた混合物と して用いてもよい。
[0046] 上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の中でも、特に、ピロメリット酸二無水物、 3, 3' , 4, 4, 一べンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物、 4, 4, 一ォキシフタル酸ニ無 水物、 3, 3' , 4, 4'ービフヱ-ルテトラカルボン酸二無水物力 選択される少なくとも 一種の化合物を用いることが好ましい。なお、これら 4種の化合物群を、説明の便宜 上、「好適酸二無水物群」と称する。これら好適酸二無水物群を用いてポリアミド酸を 重合すれば、得られる接着フィルム (特に耐熱層)の諸物性を優れたものとすることが できる。
[0047] 上記好適酸二無水物群力 選択される少なくとも一種の化合物を用いる場合の好 ましい使用量は、全ての酸二無水物成分に対して、 50モル%以上となることが好まし く、 55モル%以上となることがより好ましぐ 60モル%以上となることがさらに好ましい 。これら好適酸二無水物群力 選択される化合物の使用量が上記の下限値を下回る と得られるポリイミドフィルム (ある 、は耐熱層)のガラス転移温度が低くなりすぎたり、 熱時の貯蔵弾性率が低くなりすぎて製膜そのものが困難になったりすることがある。
[0048] また、好適酸二無水物群の中でも、ピロメリット酸二無水物を用いる場合、その使用 量は 40〜100モル0 /0の範囲内であることが好ましぐ 45〜100モル0 /0の範囲内がよ
り好ましぐ 50〜: LOOモル%の範囲内がさらに好ましい。ピロメリット酸二無水物をこの 範囲で用いることにより、得られるポリイミドフィルムのガラス転移温度および熱時の貯 蔵弾性率を好適な範囲に保ちやすくすることができる。
[0049] 本発明にお 、てジァミン成分として用いることができる芳香族ジァミンは特に限定さ れるものではないが、具体的には、例えば、 4, 4'ージアミノジフエ-ルプロパン、 4, 4'ージァミノジフヱ二ノレメタン、ベンジジン、 3, 3'ージクロ口べンジジン、 3, 3'—ジメ チルベンジジン、 2, 2'—ジメチルベンジジン、 3, 3'—ジメトキシベンジジン、 2, 2' ージメトキシベンジジン、 4, 4'ージアミノジフエ-ルスルフイド、 3, 3'ージアミノジフエ ニルスルホン、 4, 4'ージアミノジフエニルスルホン、 4, 4' ォキシジァニリン、 3, 3' ォキシジァニリン、 3, 4' ォキシジァニリン、 1, 5 ジァミノナフタレン、 4, 4'ージ アミノジフ 二ルジェチルシラン、 4, 4'ージアミノジフ ニルシラン、 4, 4'ージァミノ ジフエニルェチルホスフィンォキシド、 4, 4'ージアミノジフエニル N—メチルァミン、 4 , 4'ージアミノジフエ-ル N—フエ-ルァミン、 1, 4ージァミノベンゼン(p—フエ-レン ジァミン)、 1, 3 ジァミノベンゼン、 1, 2 ジァミノベンゼン、ビス {4 (4ーァミノフエ ノキシ)フエ-ル}スルホン、ビス {4— (3—アミノフエノキシ)フエ-ル}スルホン、 4, 4, —ビス(4—アミノフエノキシ)ビフエ-ル、 4, 4,一ビス(3—アミノフエノキシ)ビフエ- ル、 1, 3 ビス(3 アミノフエノキシ)ベンゼン、 1, 3 ビス(4 アミノフエノキシ)ベン ゼン、 1, 3 ビス(4 アミノフエノキシ)ベンゼン、 1, 3 ビス(3 アミノフエノキシ)ベ ンゼン、 3, 3'ージァミノべンゾフエノン、 4, 4'ージァミノべンゾフエノン、並びにこれ ら各化合物の類似物を挙げることができる。これら化合物は単独で用いてもよいし、 任意の割合で組み合わせた混合物として用いてもよ!、。
[0050] 本発明では、ジァミン成分として、剛直構造を有するジァミン (説明の便宜上、「剛 直ジァミン」と称する)を用いることが好ましい場合がある。ここでいう剛直構造とは、具 体的には、次の一般式(1)
[0051] [化 1]
H2N—— R— NH2
(ただし、式中の R1は、次の一般式群(2)
[0052] [化 2]
で表される 2価の芳香族基力 なる群力 選択される基であり、式中の R
2は同一であ つてもよいし異なっていてもよいが、 Η— , CH - , -OH, -CF、 -SO 、 -COO
3 3 4
H, — CONH 、 CI—、 Br―、 F—、および CH O—力もなる群より選択される何れか
2 3
の 1つの基である)
で表されるものを挙げることができる。
[0053] 上記剛直ジァミンを用いてポリアミド酸を重合する場合には、前述したポリアミド酸 の重合方法のうち、プレボリマーを得る重合方法 (例えば、 2)または 3)の方法)を選 択することが好ましい。この重合方法を用いることにより、弾性率が高ぐ吸湿膨張係 数が小さ!/、ポリイミドフィルムが得やすくなる傾向にある。
[0054] プレボリマーを得る場合の剛直ジァミンと酸二無水物とのモル比は、特に限定され るものではないが、剛直ジァミン:酸二無水物成分として、 100 : 70〜: L00 : 99の範囲 内もしく ίま 70: 100〜99: 100の範囲内力 S好ましく、さらに 100: 75〜: L00: 90の範囲
内もしくは 75: 100〜90: 100の範囲内がより好まし!/、。剛直ジァミンと酸二無水物と モル比が上記範囲を下回ると弾性率および吸湿膨張係数の改善効果が得られにくく 、上記範囲を上回ると線膨張係数が小さくなりすぎたり、引張伸びが小さくなつたりす るなどの弊害が生じることがある。
[0055] また、ジァミン成分として、上記剛直ジァミンと柔構造を有するジァミン (説明の便宜 上、「柔ジァミン」と称する)を併用することもできる。剛直ジァミンと柔ジァミンとを併用 する場合、モル比で剛直ジァミン:柔ジァミンとして、 80: 20〜20: 80の範囲内が好 ましく、 70: 30〜30: 70の範囲内カょり好ましく、 60:40〜30: 70の範囲内カょり好 ま 、。剛直ジァミンの使用比率が上記範囲を上回ると得られるポリイミドフィルム (耐 熱層)の引張伸び力 、さくなる傾向にあり、またこの範囲を下回るとガラス転移温度が 低くなりすぎたり、熱時の貯蔵弾性率が低くなりすぎて製膜が困難になったりする場 合がある。
[0056] 上記柔ジァミンとは、エーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフイド基等の柔構造を 有するジァミンであり、より好ましくは、次の一般式(3)
[0057] [化 3]
(式中の R3は、式群 (4)
- ( 4 ) で表される 2価の有機基力 なる群力 選択される基であり、式中の R4は同一または 異なって、 H—, CH 一, -OH, -CF , SO , -COOH, CONH , C1一, B
3 3 4 2 r- , F- ,および CH O からなる群より選択される 1つの基である。 )
3
で表されるものを挙げることができる。
[0059] このように、本発明において耐熱層として用いられるポリイミドフィルムは、上記の範 囲の中で所望の特性を有するフィルムとなるように適宜、酸二無水物成分およびジァ ミン成分の種類、配合比を決定して用いることにより得ることができる。なお、ポリアミド 酸のイミド化にっ 、ては、(Π)接着フィルムの製造方法の項で説明する。
[0060] (1- 2)接着層およびこれに用いられる熱可塑性ポリイミド
本発明にかかる接着フィルムが備える接着層は、熱可塑性ポリイミドを含有しており 、所定の条件で接着性を発揮できる層であれば特に限定されるものではな 、。
[0061] 接着層に含有される熱可塑性ポリイミド (広義)は特に限定されるものではな 、が、 具体的には、例えば、熱可塑性ポリイミド (狭義)、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性 ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等を好適に用いることができる。中で も、低吸湿特性の点から、熱可塑性ポリエステルイミドを特に好適に用いることができ
る。なお、特許請求の範囲において言及している、接着層に含有される熱可塑性ポリ イミドは、上記各種ポリイミドを含み、熱可塑性を有する広義のものを指す。また、特 に断りのない限り、本明細書にて用いる「熱可塑性ポリイミド」の用語は、広義のもの を指す。
[0062] 本発明で用いられる熱可塑性ポリイミドの物性は特に限定されるものではないが、 諸物性のうち、ガラス転移温度 (Tg)を所定の範囲内に設定することがより好ましい。 具体的には、本発明で用いられる熱可塑性ポリイミドは、その Tgが 150〜300°Cの 範囲内であることが好ましぐ 180〜280°Cの範囲内であることがより好ましい。なお、 Tgは動的粘弾性測定装置 (DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により 求めることができる。
[0063] Tgが上記の範囲内にあれば、既存のラミネート装置を用いて、本発明にかかる接 着フィルムを金属箔とラミネートすることが可能になるとともに、得られるフレキシブル 金属張積層板の耐熱性が損なわれることを回避することができる。
[0064] 上記熱可塑性ポリイミドの製造方法は特に限定されるものではないが、(I 1)で説 明した高耐熱性ポリイミドと同様に、前駆体のポリアミド酸を重合してからイミドィ匕する ことにより、製造することができる。ポリアミド酸の重合方法は特に限定されるものでは なぐ公知のあらゆる方法を採用することができる。具体的には、(1—1)で説明した高 耐熱性ポリイミドと同様に、モノマー原料や製造条件等を選択してポリアミド酸を製造 すればよい。
[0065] なお、本発明にお ヽて用いられる熱可塑性ポリイミドは、高耐熱性ポリイミドと同様 に、用いるモノマー原料を種々組み合わせることにより、諸特性を調節することができ るが、一般に、剛直ジァミンの使用比率が大きくなると Tgが高くなる、および Zまたは 、熱時の貯蔵弾性率が大きくなるため、接着層の接着性や加工性が低下するため好 ましくない。それゆえ、本発明において用いられる熱可塑性ポリイミドを製造する場合 であって、前駆体のポリアミド酸を重合するために用いるジァミン成分に剛直ジァミン を併用する場合には、全ジァミン成分中の剛直ジァミンの使用比率 (含有率)は、 40 モル%以下であることが好ましぐ 30モル%以下であることがより好ましぐ 20モル% 以下であることがさらに好ましい。
[0066] また、上記接着層には、耐熱層と同様に、ポリイミド以外の榭脂ゃ各種添加物を含 んでいてもよい。例えば、耐熱層と同様に、必要に応じてフィラーが添加されていても よい。この場合のフィラーとしては、無機物あるいは有機物のフィラーを挙げることが できるが特に限定されるものではなぐその具体的な種類や使用量等は接着層に求 める物性に応じて適宜選択すればょ ヽ。
[0067] 上記接着層の厚みは特に限定されるものではないが、耐熱層と同様、後述するよう に、得られる接着フィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の引張弹 性率が所定範囲内となるように設定すればよい。
[0068] (I 3)接着フィルムの物性
本発明にかかる接着フィルムは、上記耐熱層と、当該耐熱層の少なくとも一方の表 面に上記接着層が形成された構成を有している。したがって、本発明にかかる接着 フィルムとしては、耐熱層 Z接着層の 2層構造、接着層 Z耐熱層 Z接着層の 3層構 造を挙げることができる。さら〖こは、 2層構造のものを複数積層した構成となっていて もよいし、必要に応じて耐熱層および接着層以外の層を含んでいてもよい。
[0069] <加熱収縮率 >
ここで、本発明に力かる接着フィルムの諸物性のうち、少なくとも加熱収縮率につい ては、 TD方向については MD方向よりも大きくなるように設定されている。なお、本発 明に係る加熱収縮率とは、以下の方法により得られる値である。
[0070] すなわち、測定サンプル (接着フィルムまたはその比較物)を 23°C、 55%RH (ただ し、「RH」«「Relative Humidity:相対湿度」を示す。以下同じ)に調整された部屋に 2日間放置した後に、フィルム寸法 (L1)を測定する。続いて、同じ測定サンプルを 2 50°C、 30分間の条件で加熱した後、再び 25°C、 60%RHに調整された部屋に 2日 間放置し、その後、フィルム寸法 (L2)を測定する。得られた L1および L2から、次の 式(1)により加熱収縮率を算出する。なお、 L1および L2は、 TD方向または MD方向 における測定サンプルの長さである。
[0071] 加熱収縮率 =一(L2— LD ZL1 X 100 · · · (!_)
上記加熱収縮率についてより具体的に説明すると、 TD方向の加熱収縮率は + 0. 01%以上であればよぐ +0. 03%以上が好ましぐ +0. 05%以上がより好ましい。
一方、 MD方向の加熱収縮率は 0. 02%以下であればよぐ 0. 05%以下が好 ましい。したがって、加熱収縮率を TD方向と MD方向との組み合わせで規定すれば 、TD方向が + 0. 01%以上かつ MD方向が 0. 02%以下であればよぐ TD方向 が + 0. 03%以上かつ MD方向が 0. 05%以下であることが好ましぐ TD方向が + 0. 05%以上かつ MD方向が 0. 05%以下であることがより好ましい。
[0072] 本発明に力かる接着フィルムは、熱ロールラミネート法によりフレキシブル配線板を 製造する場合に好適に用いることができる。ここで、熱ロールラミネート法は、一対の ロールで金属箔と接着フィルムとを押し付けながら搬送することで、金属箔 z接着フ イルムの積層体を効率的に製造する方法である力 一対のロールにより金属箔と接 着フィルムとを圧着する方法であるために、 MD方向には延伸、 TD方向には圧縮の 応力が印加される。
[0073] このようなかたちで応力が加えられると、接着フィルムに対しては MD方向に収縮、 TD方向に膨張の残留歪を付与させることになる。し力も、金属箔 Z接着フィルムの 積層体をエッチングして配線を形成する時点、並びに、部品を実装するために半田リ フローを行う時点では、上記残留歪が開放され、 MD方向に収縮、 TD方向に膨張の 寸法変化を誘起することになる。したがって、熱ロールラミネート法により積層体を製 造するときに、加熱収縮が MD方向と TD方向でほぼ同じ接着フィルムを使用すると、 エッチング工程および半田リフロー工程における寸法変化に、 MD方向と TD方向と でバラツキが発生することとなる。
[0074] 従来の技術では、このような TD方向および MD方向の残留歪の問題については、 全く考慮されていなかった。それゆえ、特許文献 4 6に示すように、所定の条件の 下で加熱収縮率を特定した技術は知られているものの、 TD方向と MD方向との双方 で加熱収縮率を変える技術思想は全く知られていな力つた。本発明では、この技術 思想に基づいて、 MD方向および TD方向の寸法変化のバラツキを抑制するために 、 TD方向の加熱収縮率を MD方向の加熱収縮率よりも高く設定することが有効であ ることを見出した。そこで、加熱収縮率の具体的な範囲について鋭意検討した結果、 TD方向の加熱収縮率について上記の下限値を特定し、 MD方向の加熱収縮率に ついて上記の上限値を特定すれば、特に、熱ロールラミネート法により金属箔 Z接着
フィルムの積層構造を含む積層体を製造する場合に、各方向の寸法変化のバラツキ を抑制することが有効であることが明ら力となった。
[0075] <引張弾性率 >
本発明に力かる接着フィルムの他の物性にっ 、ては特に限定されるものではな!/、 力 その引張弾性率も所定の範囲内に規定することが好ましい。具体的には、 MD方 向および TD方向の何れの方向であっても、その引張弾性率は 5. 0〜: L lGPaの範 囲内であることが好ましぐ 5. 5〜: LOGPaの範囲内であることがより好ましい。なお、 引張弾性率は、例えば、島津製作所社製オートグラフ S— 100— Cを用いて、 AST M D882に準じて測定することができる。
[0076] 上記引張弾性率が上記範囲を下回る場合、ラミネート時において張力の影響を受 けやすくなるため、 MD方向と TD方向との間で異なる熱応力が発生し、得られる積 層体 (フレキシブル金属張積層板等)の寸法変化が大きくなる場合がある。一方、引 張弾性率が上記範囲を上回る場合、得られるフレキシブル金属張積層板の屈曲性 に劣る場合がある。
[0077] ここで、一般的に、高耐熱性ポリイミドを含有する耐熱層よりも、熱可塑性ポリイミド を含有する接着層の引張弾性率の方が小さいため、接着層の厚み比率が増えるに 従って、接着フィルムの引張弾性率が低下する傾向にある。それゆえ、接着フィルム を構成する上記耐熱層および接着層のそれぞれの厚みについては、上記引張弾性 率を満たし、かつ、用途に応じた総厚みになるように適宜調整すればよい。後述する 実施例では、接着層 Z耐熱層 Z接着層の 3層構造で、その厚みが 2 /z mZlO /z m Z2 /z mの構成を例示している力 もちろんこれに限定されるものではない。
[0078] <熱膨張係数 >
本発明にかかる接着フィルムでは、熱膨張係数も所定の範囲内に規定することが 好ましい。後述するように、本発明にかかる接着フィルムは、金属箔を少なくとも一方 の表面に接着させた形態、すなわちフレキシブル金属張積層板に加工する用途に 好適に用いることができるが、フレキシブル金属張積層板に加工した際の寸法安定 性を考慮すれば、接着フィルムの熱膨張係数を積層する金属箔の熱膨張係数に合 わせることが好ましい。
[0079] 具体的には、接着フィルムの熱膨張係数は、 200〜300°Cにおける値力 金属箔 の熱膨張係数 ± 6ppmZ°Cの範囲となるように調整することが好ま 、。熱膨張係数 力 の範囲内力 外れると、接着フィルムの熱膨張係数と、貼り合わせる金属箔の熱 膨張係数との差が大きくなる。そのため、接着フィルムと金属箔との貼り合わせ時の 膨張 *収縮の挙動の差が大きくなり、得られるフレキシブル金属張積層板に歪みが残 留し、金属箔除去後の寸法変化率が大きくなる場合がある。
[0080] なお、接着フィルムの熱膨張係数は、耐熱層の厚みと接着層の厚みとの比率を変 更することにより、調整することが可能である。
[0081] (II)接着フィルムの製造方法
(II 1)ゲル塗布法を用いた接着フィルムの製造方法
本発明にカゝかる接着フィルムの製造方法は、上記耐熱層および接着層を備える接 着フィルムを製造することができる方法であれば特に限定されるものではな 、が、上 記接着層は、「ゲル塗布法」により耐熱層の片面または両面に形成される方法であつ てもよい。
[0082] 上記「ゲル塗布法」とは、まず、高耐熱性ポリイミドの前駆体であるポリアミド溶液を 支持体に流延塗布した後に乾燥'部分イミド化することで、自己支持性を有するフィ ルム状の中間生成体(以下、「ゲルフィルム」と称する)を形成し、このゲルフィルムの 少なくとも一方の表面に、熱可塑性ポリイミドを含有する溶液、または熱可塑性ポリイ ミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を塗布する方法を指す。
[0083] したがって、本発明にかかる接着フィルムの製造方法をより具体的に説明すれば、 上記ゲルフィルムを形成するゲルフィルム工程と、ゲルフィルムに熱可塑性ポリイミド またはその前駆体を積層する積層工程とを含んでいることになる。さら〖こ、本発明に かかる製造方法では、積層工程の後に得られる積層フィルムに対して、 TD方向に延 伸処理を施しながらイミド化する延伸イミドィ匕工程を含むことが非常に好ましい。
[0084] <ゲルフィルム形成工程 >
本発明の製造方法におけるゲルフィルム形成工程は、高耐熱性ポリイミドの前駆体 であるポリアミド酸を含有する有機溶媒溶液 (説明の便宜上、「高耐熱性ポリイミド前 駆体溶液」と称する)をフィルム状に形成してゲルフィルムとする工程であれば特に限
定されるものではない。換言すれば、上記ゲルフィルム形成工程は、耐熱層形成ェ 程と言うことちでさる。
[0085] 上記ゲルフィルムは、ダイスから平滑な支持体に対して、高耐熱性ポリイミド前駆体 溶液を連続的に平滑となるように押出し、次いで、加熱により溶媒の一部を揮散させ る(乾燥させる)と同時に、イミドィ匕を少なくとも部分的に進行させることで得ることがで きる。上記支持体としては特に限定されるものではないが、ゲルフィルムを剥離しや す 、表面を有するエンドレスベルトやドラムを挙げることができる。これらエンドレスべ ルトゃドラムの表面の材質は特に限定されるものではないが、金属やフッ素榭脂等を 挙げることができる。ダイスの材質や構造も特に限定されるものではなぐ形成しようと する耐熱層の厚みや幅、最終的に得ようとする接着フィルムのサイズや構成、あるい は高耐熱性ポリイミド前駆体溶液の種類や物性等に応じて最適なサイズや構成のダ イスを選択すればよい。
[0086] 上記イミドィ匕を行う方法としては、熱によってのみ行う熱キュア法 (熱イミドィ匕法)と、 化学脱水剤を使用する化学キュア法 (ィ匕学イミドィ匕法)の 2法が最も広く知られている 。何れの方法を採用してもよいが、より高い生産性を付与する点力も見れば、化学キ ユア法 (ィ匕学イミドィ匕法)を採用することが特に好まし 、。
[0087] 上記化学脱水剤とは、ポリアミド酸に対する脱水閉環剤であれば特に限定されるも のではないが、その主成分としては、具体的には、例えば、脂肪族酸無水物、芳香 族酸無水物、 N, N'—ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲ ン化低級脂肪族酸無水物、ァリールスルホン酸ジハロゲン化物、チォ-ルハロゲン 化物またはそれら 2種以上の混合物を好ましく用いることができる。これら化合物の中 でも、脂肪族酸無水物および芳香族酸無水物を特に好ましく用いることができる。
[0088] また、上記化学キュア法 (ィ匕学イミド化法)を行なう際に、上記化学脱水剤と触媒と を含む硬化剤を用いてもよい。上記触媒は、ポリアミド酸に対する化学脱水剤の脱水 閉環作用を促進する効果を有する成分であれば特に限定されるものではな 、が、具 体的には、例えば、脂肪族 3級ァミン、芳香族 3級ァミン、複素環式 3級ァミンを用い ることができる。これら化合物の中でも、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリ ン、キノリン、または )8—ピコリン等の含窒素複素環化合物を特に好ましく用いること
ができる。
[0089] 上記化学脱水剤および触媒の使用量は、所望の程度でイミド化ができる量であれ ば特に限定されるものではないが、化学脱水剤については、化学脱水剤および触媒 を添加するポリアミド酸溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット 1モルに対 して、 0. 5〜5モルの範囲内であることが好ましぐ 0. 7〜4モルの範囲内であること 力 り好ましい。また、触媒については、化学脱水剤および触媒を添加するポリアミド 酸溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット 1モルに対して、 0. 05〜3モル の範囲内であることが好ましぐ 0. 2〜2モルの範囲内であることがより好ましい。化学 脱水剤および触媒の使用量が上記範囲を下回ると化学的イミドィ匕が不十分となり、 焼成途中で破断したり、機械的強度が低下したりすることがある。また、化学脱水剤 および触媒の使用量が上記範囲を上回ると、イミドィ匕の進行が早くなりすぎ、フィルム 状にキャストすることが困難となることがある。
[0090] 上記高耐熱性ポリイミド前駆体溶液には、前記 (1—1)で説明したように、無機フイラ 一を含んで 、てもよ 、。このようなフィラーの添加方法は特に限定されるものではな ヽ 力 具体的には、例えば、(1)ポリアミド酸の重合前または途中に重合反応液に添カロ する、(2)ポリアミド酸の重合完了後、 3本ロールなどを用いてフィラーを混鍊する、 ( 3)フィラーを含む分散液を別途調製し、これをポリアミド酸溶液に混合する等の各方 法を挙げることができる。
[0091] これら方法の中でも、(3)フィラーを含む分散液をポリアミド酸溶液に混合する方法 が好ましい。この方法を採用すれば、特に、ゲルフィルムを形成する直前にフィラー を混合することができるため、接着フィルムの製造ラインにおけるフィラーの残存と、 それに伴うフィラーの混入の可能性を最も低減することができる。
[0092] 上記フィラーを含む分散液を調製する方法は特に限定されるものではなぐ使用す るフイラ一を適当な溶媒に添加して分散液として調製すればよいが、溶媒として、ポリ アミド酸溶媒と同じ有機極性溶媒を用いることが好ましい。また、フィラーを良好に分 散させ、また分散状態を安定化させるために、分散剤、増粘剤等の添加剤をフィルム 物性に影響を及ぼさな 、範囲内で用いることもできる。
[0093] く積層工程〉
本発明にかかる製造方法の積層工程は、上記ゲルフィルム形成工程で得られたゲ ルフィルムの少なくとも一方の表面に、熱可塑性ポリイミドを含有する有機溶媒溶液 ( 説明の便宜上、「熱可塑性ポリイミド溶液」と称する)、または熱可塑性ポリイミドの前 駆体であるポリアミド酸を含有する有機溶媒溶液 (説明の便宜上、「熱可塑性ポリイミ ド前駆体溶液」と称する)を塗布して加熱する工程であれば特に限定されるものでは ない。
[0094] ゲルフィルムの表面に熱可塑性ポリイミド溶液または熱可塑性ポリイミド前駆体溶液 を塗布する方法は特に限定されるものではなぐ流延塗布、スプレー塗布、浸漬塗布 等の従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。後述する実施例では、ダイ を用いた流延塗布法を採用している力 もちろん本発明はこれに限定されるものでは ない。
[0095] 熱可塑性ポリイミド溶液または熱可塑性ポリイミド前駆体溶液を塗布したゲルフィル ムは、加熱により溶媒を揮散させて乾燥させる。このときの乾燥方法は特に限定され るものではなぐ公知の様々な乾燥方法を採用することができる力 加熱および Zま たは送風による方法が最も簡易である。上記加熱の際の温度は、高すぎると溶媒が 急激に揮散するため、当該揮散の痕跡が最終的に得られる接着フィルム中に微小欠 陥を形成せしめる要因となるため、用いる溶媒の沸点 + 50°C未満であることが好まし い。
[0096] なお、ゲルフィルム形成工程における高耐熱性ポリイミド前駆体溶液を流延塗布し た後に乾燥させる場合も、その加熱方法は特に限定されるものではなぐ積層工程と 同様、公知の各種方法を採用することができ、上記加熱および Zまたは送風による 方法を好ましく用いることができる。
[0097] く延伸イミドィ匕工程〉
本発明にかかる製造方法の延伸イミドィ匕工程は、積層工程で得られた積層フィルム の TD方向の両端を固定し、延伸倍率が 1. 0倍を超えるように TD方向に延伸しなが らイミドィ匕する工程であれば特に限定されるものではない。
[0098] 本発明に力かる接着フィルムは、前述したように、 TD方向の加熱収縮率を MD方 向の加熱収縮率よりも高く設定するようになって!/、る。この加熱収縮率の設定方法は
特に限定されるものではないが、一つの好ましい方法として、積層工程で得られた積 層フィルムを TD方向に加熱しながら延伸する方法を挙げることができる。このときの 延伸の程度は 1. 0倍を超えるように延伸すればよいが、 1. 1倍以上であることが好ま しぐ 2. 0倍以下であることが好ましい。また、延伸時の加熱温度は特に限定されるも のではないが、 100°C以上であればよぐ 200°C以上であることがより好ましい。この 温度範囲であれば積層フィルムに物理的な損傷を与えることなく良好な延伸が可能 となる。
[0099] 延伸イミドィ匕工程におけるイミド化処理は、上記ゲルフィルム形成工程で説明したィ ミドィ匕方法を用いればよいが、接着フィルムの生産性を考慮すると、上記延伸処理は 、イミドィ匕処理と同時に行うことが特に好ましい。具体的には、積層フィルムを延伸し ながら、好ましくは 250〜600°Cの範囲内で処理することにより、十分に加熱処理す る。これによつて、延伸しながら溶媒を実質的に除去するとともにイミドィ匕を進行させる ことができる。
[0100] (II - 2)共押出一流延塗布法を用いた接着フィルムの製造方法
本発明に力かる接着フィルムの製造方法は、上記「 (Π— 1)ゲル塗布法を用いた接 着フィルムの製造方法」の他、共押出一流延塗布法を用いた方法であってもよい。上 記「共押出一流延塗布法」とは、高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液と、熱可塑性ポリイ ミドを含有する溶液若しくは熱可塑性ポリイミドの前駆体を含有する溶液とを、ニ層以 上の押出し成形用ダイスを有する押出成形機へ同時に供給して、前記ダイスの吐出 口から両溶液を少なくとも二層の薄膜状体として押出す工程を含むフィルムの製造 方法である。二層以上の押出し成型用ダイス力も押出された前記の両溶液を、平滑 な支持体上に連続的に押し出し、次いで、前記支持体上の多層の薄膜状体の溶媒 の少なくとも一部を揮散せしめることで、自己支持性を有する多層フィルムが得られる 。さらに、当該多層フィルムを前記支持体上力 剥離し、最後に、当該多層フィルム を高温(250— 600°C)で充分に加熱処理することによって、溶媒を実質的に除去す ると共にイミドィ匕を進行させることで、目的の接着フィルムが得られる。また、接着層の 熔融流動性を改善する目的で、意図的にイミドィ匕率を低くする、および Zまたは溶媒 を残留させてもよい。
[0101] 上記本発明にかかる接着フィルムは、共押出-流延塗布法により、高耐熱性ポリイ ミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド層が形成されてなる接着フィルムであつ て、 TD方向の加熱収縮率が + 0. 01%以上かつ MD方向の加熱収縮率が 0. 02 %以下、好ましくは TD方向の加熱収縮率が + 0. 03%以上かつ MD方向の加熱収 縮率が 0. 05%以下、特に好ましくは TD方向の加熱収縮率が + 0. 05%以上か つ MD方向の加熱収縮率が 0. 05%以下であることが望ましい。熱ロールラミネー ト法は、一対のロールで金属箔と接着フィルムを押し付けながら搬送することで、金属 箔積層フィルムを効率的に製造する方法であるが、一対のロールにより金属箔と接 着フィルムを圧着せしめる方法であるがため、 MD方向には延伸、 TD方向には圧縮 の応力が印加される。この応力は、 MD方向に収縮、 TD方向に膨張の残留歪を付 与せしめ、さらには、金属箔積層フィルムをエッチングして配線を形成する際、ならび に部品を実装するために半田リフローを行う際に当該残留歪が開放され、 MD方向 に収縮、 TD方向に膨張の寸法変化を誘起する。従って、熱ロールラミネート法で、 加熱収縮が MD方向と TD方向とでほぼ同じ接着フィルムを使用して金属張積層板 を製造すると、エッチング工程及び半田リフロー工程における寸法変化力 MD方向 と TD方向とで大きく異なることとなる。上記のバラツキを抑制するためには、 TD方向 の加熱収縮率が、 MD方向の加熱収縮率よりも高 、ことが効果的である。
[0102] TD方向の加熱収縮率を MD方向の加熱収縮率よりも高くする具体的方法に関し ては特に限定されな ヽが、「 (Π— 1)ゲル塗布法を用いた接着フィルムの製造方法く 延伸イミドィ匕工程〉」の項にて説示したとおり、 100°C以上、好ましくは 200°C以上に 加熱しながら TD方向に延伸処理を行うことで、好ましくが達成されうる。生産性を考 慮すると、当該延伸処理は、イミド化の処理と同時に行うことが特に好ましい。
[0103] 二層以上の押出し成型用ダイス力 押出された高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液と 、熱可塑性ポリイミドを含有する溶液若しくは熱可塑性ポリイミドの前駆体を含有する 溶液中の溶媒の揮散方法に関しては特に限定されな 、が、「 (Π— 1 )ゲル塗布法を 用いた接着フィルムの製造方法く積層工程 >」の項にて説示したとおり、加熱および Zまたは送風による方法が最も簡易な方法である。上記加熱の際の温度についても 既述のとおり、高すぎると溶媒が急激に揮散し、当該揮散の痕が最終的に得られる
接着フィルム中に微小欠陥を形成せしめる要因となるため、用いる溶媒の沸点 + 50 °C未満であることが好まし!/、。
[0104] 上記の「二層以上の押出し成形用ダイス」とは、複数層用フィルム作製用のダイスで あれば特に限定されず、従来既知のあらゆる構造のものを好適に使用可能であるが 、特に好適に使用可能なものとして、フィードブロックダイスやマルチマ-ホールドダ イスが例示される。
[0105] 「共押出一流延塗布法を用いた接着フィルムの製造方法」におけるイミドィ匕の方法 については、熱キュア法と化学キュア法のいずれの方法を採用してもよいが、より高 い生産性を付与する点力も見れば、化学キュア法を採用することが特に好ましい。化
、ては、「 (II— 1)ゲル塗布法を用いた接着フィルムの製造方法くゲル フィルム形成工程 >」の項にお ヽて説示した方法を用いればよ ヽ。
[0106] (III)本発明の利用
本発明にかかる接着フィルムは、ポリイミド層を含む積層体の製造に好適に用いる ことができる。すなわち、本発明には、上記接着フィルムを用いて製造される積層体 が含まれる。上記積層体の具体的な構成は特に限定されるものではないが、代表的 な構成として、接着フィルムの表面に金属層を積層してなる構造を有する積層体を挙 げることができる。
[0107] 上記積層体の製造方法は特に限定されるものではないが、本発明にかかる接着フ イルムに対して、ラミネート法、好ましくは熱ロールラミネート法により金属箔を少なくと も一方の表面に接着させる方法を挙げることができる。
[0108] 上記接着フィルムに積層される金属層としては、特に限定されるものではないが、 本発明にかかる積層体をフレキシブル金属張積層板として、電子機器'電気機器用 途に用いる場合には、例えば、銅または銅合金、ステンレス鋼またはその合金、 -ッ ケルまたはニッケル合金 (42合金も含む)、アルミニウムまたはアルミニウム合金等か らなる金属箔を挙げることができる。また、一般的なフレキシブル金属張積層板では、 圧延銅箔、電解銅箔といった銅箔が多用されるが、これら銅箔は本発明においても 好ましく用いることができる。なお、これらの金属箔の表面には、防鲭層ゃ耐熱層ある いは接着層が塗布されて 、てもよ 、。
[0109] また、本発明には、上記接着フィルム、あるいは、上記積層体を用いて形成される フレキシブル配線板も含まれる。具体的には、フレキシブルプリント配線板 (FPC)を 挙げることができる。上記フレキシブルプリント配線板の具体的な製造方法は特に限 定されるものではないが、具体的には、例えば、接着フィルムに金属箔を積層し、ノ ターンエッチング処理を行 、、金属箔に所望のパターン回路を形成する方法を挙げ ることができる。本発明では、このようなフレキシブル配線板の製造において、接着フ イルムに金属箔を積層する段階で、熱ロールラミネート法を採用すればよい。これに より、熱ロールラミネート法で製造したフレキシブル金属張積層板における各種カロェ 時に寸法変化の発生を抑制することができる。
[0110] 以下、実施例および比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発 明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなぐ種 々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例 における加熱収縮率および寸法変化率は次のようにして評価した。
[0111] 〔加熱収縮率〕
まず、得られた接着フィルムから、二辺は MD方向に残り二辺は TD方向に沿うよう な、一辺の長さが約 20cmの正方形を切り抜き、これを加熱収縮率測定用サンプルと した。
[0112] この加熱収縮率測定用サンプルを 23°C、 55%RHに調整された部屋に 2日間放置 した後のフィルム寸法 (L1)を測定した。続、て同加熱収縮率測定用サンプルを 250 °Cで 30分間加熱した後に、再び 25°C、 60%RHに調整された部屋に 2日間放置し た後、同加熱収縮率測定用サンプルのフィルム寸法 (L2)を測定し、次式(1)により 加熱収縮率を算出し、評価した。
[0113] 加熱収縮率=ー(1^2—1^1) 7 1 100 - - - (1)
〔寸法変化率〕
金属箔除去前後の寸法変化率は、 J1S C6481を参考にして、以下のように測定お よび算出を行った。すなわちフレキシブル金属張積層板から、一辺が約 20cmの正 方形のサンプルを切り出し、このサンプル表面の一辺が約 15cmの正方形の四隅に 相当する部分に、直径 lmmの穴を形成した。なお、一辺が約 20cmの正方形のサン
プルおよび一辺が約 15cmの正方形の二辺は MD方向に、残り二辺は TD方向に沿 うようにした。また、これら 2つの正方形の中心力 だいたい一致するようにした。次に 、このサンプル (4つの穴の開いたフレキシブル金属張積層板)にエッチングを実施し て金属箔を除去した後に、 23°C、 55%RHの恒温室に 24時間放置した。それからこ のサンプルを 250°Cで 30分間加熱した後、 23°C、 55%RHの恒温室に 24時間放置 した。エッチング前のフレキシブル金属張積層板の 4つの穴のうち、隣接する穴どうし の距離の測定値を D1、エッチングおよび加熱処理後のサンプルにおける隣接する 穴どうしの距離の測定値を D2として、次式 (2)により加熱前後の寸法変化率を算出 し、評価を行った。なお、上記寸法変化率は、 MD方向及び TD方向の双方につい て測定した。
[0114] 寸法変化率(%) = { (D2— D1) ZD1 } X 100 · · · (2)
〔ポリアミド酸の合成例 1:高耐熱性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸〕 10°Cに冷却した N, N—ジメチルホルムアミド(以下、適宜「DMF」という) 239kgに 4, 4, 一ォキシジァ-リン(以下、適宜「ODA」という) 6. 9kg、 p—フエ-レンジァミン (以下、適宜「p— PDA」という) 6. 2kg、 2, 2—ビス〔4一(4一アミノフエノキシ)フエ- ル〕プロパン(以下、適宜「BAPP」という) 9. 4kgを溶解した後、ピロメリット酸二無水 物(以下、適宜「PMDA」という) 10. 4kgを添加し 1時間撹拌して溶解させた。得られ た溶液に対して、さらに、ベンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物(以下、適宜「BT DA」という) 20. 3kgを添加し 1時間撹拌させて溶解させ、反応液を調製した。
[0115] 別途調製しておいた PMDAの DMF溶液(PMDA: DMF = 0. 9kg: 7. Okg)を上 記反応液に徐々に添カ卩し、粘度が 1 X 102 Pa -secに達したところで添カ卩を止めた。 その後、 1時間撹拌を行って固形分濃度 18重量%、 23°Cでの回転粘度が 3500ボイ ズのポリアミド酸 (al)の有機溶媒溶液 (便宜上、「ポリアミド酸溶液 (al)」と称する)を 得た。
[0116] 〔ポリアミド酸の合成例 2:高耐熱性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸〕
10oC【こ冷去 Pした DMF239kg【こ ODAを 12. 6kg、 p— PDAを 6. 8kg溶解した後、 PMDAを 15. 6kg添加し 1時間撹拌させて溶解させた。得られた溶液に対して、 BT DAを 12. 2kg添加し、さらに 1時間撹拌させて溶解させた。得られた溶液に対して、
さらに p—フエ-レンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下、適宜「TMHQ」 という) 5. 8kgを添加し、 2時間撹拌して溶解させ、反応液を調製した。
[0117] 別途調製しておいた PMDAの DMF溶液(PMDA: DMF = 0. 9kg: 7. Okg)を上 記反応液に徐々に添カ卩し、粘度が 1 X 102 Pa -secに達したところで添カ卩を止めた。 1時間撹拌を行つて固形分濃度 18重量%、 23°Cでの回転粘度が 3500ボイズのポリ アミド酸 (a2)の有機溶媒溶液 (便宜上、「ポリアミド酸溶液 (a2)」と称する)を得た。
[0118] 〔ポリアミド酸の合成例 3:熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸〕
容量 300リットノレの反応槽に DMFを 78kg、ビス〔4— (4 アミノフエノキシ)フエ- ル〕スルホン(以下、適宜「BAPS」という)を 11. 72kgカ卩え、窒素雰囲気下で撹拌し ながら、 3, 3' , 4, 4'ービフエ-ルテトラカルボン酸二無水物(以下、適宜「BPDA」と ヽう)を 7. 17kg徐々【こ添カロした。続! /、て、 3, 3' , 4, 4, 一エチレングリコーノレジベン ゾエートテトラカルボン酸二無水物(以下、適宜「TMEG」という)を 0. 56kg添加し、 氷浴下で 30分間撹拌した。 0. 55kgの TMEGを 2kgの DMFに溶解させた溶液を別 途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。 粘度が 1 X 102 Pa -secに達したところで添カ卩を止め、 DMFを 146. 3kg加えてさら に十分な時間撹拌することによりポリアミド酸 (bl)の有機溶媒溶液 (便宜上、「ポリア ミド酸溶液 (bl)」と称する)を得た。
[0119] 〔ポリアミド酸の合成例 4:熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸〕
容量 300リットノレの反応槽【こ DMFを 78kg、 2, 2 ヒ、、ス〔4一 (4 アミノフエノキシ) フエ-ル〕プロパン(BAPP)を 11. 56kg加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、 3, 3, , 4, 4,ービフエ-ルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を 7. 87kg徐々に添カ卩した 。続いて、 TMEGを 0. 38kg添加し、氷浴下で 30分間撹拌した。 0. 2kgの TMEG を 2kgの DMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注 意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が 1 X 102 Pa -secに達したところで添加 を止め、 DMFを 146. 3kgカ卩えてさらに十分に撹拌することによりポリアミド酸 (b2)の 有機溶媒溶液 (便宜上、「ポリアミド酸溶液 (b2)」と称する)を得た。
[0120] 〔ポリアミド酸の合成例 5:熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸〕
容量 2000mlのガラス製フラスコに DMFを 780g、 BAPSを 117. 2gカロえ、窒素雰
囲気下で攪拌しながら、 BPDAを 71. 7g徐々に添加した。続いて、 TMEGを 5. 6g 添加し、氷浴下で 30分間撹拌した。 5. 5gの TMEGを 20gの DMFに溶解させた溶 液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を 行った。粘度が 1 X 102Pa-secに達したところで添加、撹拌をやめ、熱可塑性ポリイミ ドの前駆体のポリアミド酸溶液 (便宜上、「ポリアミド酸溶液 (b3)」と称する)を得た。
[0121] 〔ポリアミド酸の合成例 6:熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸〕
容量 2000mlのガラス製フラスコに DMFを 780g、 BAPPを 115. 6gカロえ、窒素雰 囲気下で攪拌しながら、 BPDAを 78. 7g徐々に添加した。続いて、 TMEGを 3. 8g 添加し、氷浴下で 30分間撹拌した。 2. Ogの TMEGを 20gの DMFに溶解させた溶 液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を 行った。粘度が 1 X 102Pa-secに達したところで添加、撹拌をやめ、熱可塑性ポリイミ ドの前駆体のポリアミド酸溶液 (便宜上、「ポリアミド酸溶液 (b4)」と称する)を得た。
[0122] 〔実施例 1〕
合成例 1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液 (al)に対し て、化学脱水剤として無水酢酸を、触媒としてイソキノリンを添加した。添加量は、ポリ アミド酸(al)のアミド酸ユニット 1モルに対して、無水酢酸を 2モル、イソキノリンを 0. 5 モルとなるように添加した。
[0123] 次!、で、 3層マルチマ-ホールドダイス(以下、「Tダイス」とも!/、う)力 上記ポリアミ ド酸溶液 (al)を連続的に押出して、当該 Tダイスの下 20mmを走行して ヽるステンレ ス製のエンドレスベルト上に、乾燥後約 10 /z m厚となるよう流延した。このポリアミド酸 (al)の膜を 130°C X 100秒で加熱した後、エンドレスベルトから引き剥がして、 自己 支持性のゲルフィルム(al)とした。
[0124] 次いで、 2台の Tダイスを用いて、ゲルフィルム(al)の両面に熱可塑性ポリイミドの 前駆体であるポリアミド酸溶液 (bl)を、乾燥後約 2 m厚となるよう連続的に塗布し、 150°C X 30秒で加熱した。得られたフィルムをテンタークリップに固定し、テンターク リップ間を広げることで TD方向の延伸倍率を 1. 1倍となるように延伸しながら、 300 °C X 30秒、 400°C X 50秒、 450°C X 10秒で乾燥'イミド化させた。これにより、 10 μ mの高耐熱性ポリイミド層と、その両面に形成された 2 mの熱可塑性ポリイミド層とを
有する、本発明にかかる接着フィルムを得た。
[0125] 得られた接着フィルムの両側に 18 m圧延銅箔(商品名: BHY—22B—T,ジャ パンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料 (商品名:ァピカル 125NPI, 鐘淵化学工業株式会社製)を用いて、ポリイミドフィルムの張力 0. 4NZcm、ラミネー ト温度 380°C、ラミネート圧力 196NZcm(20kgfZcm)、ラミネート速度 1. 5mZ分 の条件で連続的に熱ラミネートを行 、、本発明に力かる積層体としてのフレキシブル 金属張積層板を製造した。
[0126] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 1に示す。
[0127] 〔実施例 2〕
高耐熱性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸として、ポリアミド酸溶液 (al)に代え て、ポリアミド酸溶液 (a2)を用いたこと以外は、実施例 1と同様の手順で、本発明に 力かる接着フィルムおよびフレキシブル金属張積層板を製造した。
[0128] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 1に示す。
[0129] 〔実施例 3〕
熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸として、ポリアミド酸溶液 (bl)に代え て、ポリアミド酸溶液 (b2)を用いたこと以外は、実施例 1と同様の手順で接着フィルム およびフレキシブル金属張積層板を製造した。
[0130] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 1に示す。
[0131] 〔実施例 4〕
熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸として、ポリアミド酸溶液 (bl)に代え て、ポリアミド酸溶液 (b2)を用いたこと以外は、実施例 2と同様の手順で接着フィルム およびフレキシブル金属張積層板を製造した。
[0132] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 1に示す。
[0133] 〔比較例 1〕
得られたフィルムをテンタークリップに固定して TD方向に延伸するときに、その延 伸倍率を 1. 0倍としたこと以外は、実施例 1と同様の手順で接着フィルムおよびフレ キシブル金属張積層板を製造した。
[0134] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 1に示す。
[0135] 〔比較例 2〕
得られたフィルムをテンタークリップに固定して TD方向に延伸するときに、その延 伸倍率を 1. 0倍としたこと以外は、実施例 2と同様の手順で接着フィルムおよびフレ キシブル金属張積層板を製造した。
[0136] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 1に示す。
[0137] [表 1]
表 1に示すように、加熱収縮率が所定の範囲外である接着フィルムを用いて製造し たフレキシブル金属張積層板は、寸法変化率が大きくなつているのに対して、加熱収 縮率が所定の範囲内である接着フィルムを用いて製造したフレキシブル金属張積層
板は寸法変化率が小さ!/、結果となった。
[0138] 〔実施例 5〕
合成例 1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液 (al)に、以下の 化学脱水剤及び触媒を含有せしめた。
[0139] 化学脱水剤として無水酢酸を、高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸 (al)のァ ミド酸ユニット 1モルに対して 2モルとなるように添加した。また触媒としてイソキノリンを 、高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸 (al)のアミド酸ユニット 1モルに対して 1 モルとなるように添加した。
[0140] 更に、合成例 5で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液 (b3)に、 以下の化学脱水剤及び触媒を含有せしめた。
[0141] 化学脱水剤として無水酢酸を、熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸 (b3)のァ ミド酸ユニット 1モルに対して 2モルとなるように添加した。また触媒としてイソキノリンを 熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸 (b3)のアミド酸ユニット 1モルに対して 0. 5 モルとなるように添加した。
[0142] 次 、で、 3層マルチマ-ホールドダイス (「Tダイス」とも 、う)から、外層が熱可塑性 ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液 (b3)、内層が高耐熱性ポリイミド溶液の前駆体 のポリアミド酸溶液 (al)となる順番で、各ポリアミド酸溶液を連続的に押出して、当該 Tダイスの下 20mmを走行して!/、るステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。こ の榭脂膜を 130°C X 100秒で加熱した後、エンドレスベルトから自己支持性のゲル 膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、テンタークリップ間を広げることで TD方 向の延伸倍率 1. 1倍で延伸しな力 sら、 300°C X 30秒、 400°C X 50秒、 450°C X 10 秒で乾燥'イミド化させた。これにより、各熱可塑性ポリイミド層 4 m、高耐熱性ポリイ ミド層 17 mの本発明に力かる接着フィルムを得た。
[0143] 得られた接着フィルムの両側に 18 m圧延銅箔(商品名: BHY— 22B— T,ジャ パンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料 (商品名:ァピカル 125NPI, 鐘淵化学工業株式会社製)を用いて、ポリイミドフィルムの張力 0. 4NZcm、ラミネー ト温度 380°C、ラミネート圧力 196NZcm(20kgfZcm)、ラミネート速度 1. 5mZ分 の条件で連続的に熱ラミネートを行 、、本発明に力かる積層体としてのフレキシブル
金属張積層板を製造した。
[0144] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 2に示す。
[0145] 〔実施例 6〕
高耐熱性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸として、ポリアミド酸溶液 (al)に代え て、ポリアミド酸溶液 (a2)を用いたこと以外は、実施例 5と同様の手順で、本発明に 力かる接着フィルムおよびフレキシブル金属張積層板を製造した。
[0146] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 2に示す。
[0147] 〔実施例 7〕
熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸として、ポリアミド酸溶液 (b3)に代え て、ポリアミド酸溶液 (b4)を用いたこと以外は、実施例 5と同様の手順で接着フィルム およびフレキシブル金属張積層板を製造した。
[0148] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 2に示す。
[0149] 〔実施例 8〕
合成例 1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液 (al)と、合成例 5で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液 (b3)を、 3層マルチマ- ホールドダイスから、熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液 (b3)、高耐熱性 ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液 (al)、熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド 酸溶液 (b3)の順で、溶液を連続的に吐出せしめた。吐出した溶液を、ステンレス製 のエンドレスベルト上に流延した。この榭脂膜を 130°C X 600秒で加熱した後、ェン ドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、テン タークリップ間を広げることで TD方向の延伸倍率 1. 1倍で延伸しながら、 200°C X 3 00秒、 300°C X 300秒、 400°C X 300秒、 450°C X 60秒で乾燥'イミドィ匕させた。こ
れにより、各熱可塑性ポリイミド層 4 m、高耐熱性ポリイミド層 17 mの接着フィルム を得た。
[0150] 得られた接着フィルムを実施例 5に記載の方法と同様にして、本発明にかかる積層 体としてのフレキシブル金属張積層板を製造した。
[0151] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 2に示す。
[0152] 〔実施例 9〕
得られたフィルムをテンタークリップに固定して TD方向に延伸するときに、その延 伸倍率を 1. 0倍としたこと以外は、実施例 5と同様の手順で接着フィルムおよびフレ キシブル金属張積層板を製造した。
[0153] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 2に示す。
[0154] 〔実施例 10〕
得られたフィルムをテンタークリップに固定して TD方向に延伸するときに、その延 伸倍率を 1. 0倍としたこと以外は、実施例 8と同様の手順で接着フィルムおよびフレ キシブル金属張積層板を製造した。
[0155] 得られた接着フィルムの加熱収縮率を上記式(1)により算出し評価した。また、得ら れたフレキシブル金属張積層板の寸法変化率を上記式 (2)により算出し評価した。 その結果を表 2に示す。
[0156] [表 2]
加熱収縮率 (*½) 寸法変化率 (%)
T D方向 M D方向 T D方向 M D方向 実施例 5 + 0 . 0 6 —0 . 1 0 4- 0 . 0 4 —0 . 0 3
実施例 6 + 0 . 0 4 - 0. 0 9 + 0 . 0 3 — 0. 0 3
実施例 7 + 0 . 0 5 — 0. 0 9 + 0 . 0 5 — 0. 0 4
実施例 8 + 0. 0 4 —0 . 0 8 + 0. 0 5 —0. 0 4
実施例 9 + 0 . 0 1 一 0. 0 6 + 0 . 1 2 —0. 1 1
実施例 10 + 0 . 0 1 —0. 0 5 + 0. 1 1 —0. 1 2
表 2に示されるように、加熱収縮率が所定の範囲内である接着フィルムを用いて作 製したフレキシブル金属張積層板は寸法変化率が小さい結果となった。
[0157] なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなぐ特許請求の範囲 に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開 示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例につ 、ても本 発明の技術的範囲に含まれる。
産業上の利用の可能性
[0158] 本発明に力かる接着フィルムは、以上のように、 TD方向につ!、て加熱収縮率の下 限値を規定するとともに MD方向にっ ヽて加熱収縮率の上限値を規定して!/ヽる。こ れによって、接着フィルムの加熱収縮率を全体的に良好に制御することが可能にな るため、ラミネート法 (特に、熱ロールラミネート法)で金属層と接着フィルムとを積層し た積層体を製造した場合に、当該積層体に加熱を伴う加工処理を施しても寸法変化 の発生を十分に抑制することが可能となる。
[0159] その結果、例えば、寸法変化の発生が抑制されたフレキシブル金属張積層板を製 造することが可能になり、微細な配線を形成することが可能で、電子機器の小型化、 軽量ィ匕に対応可能な FPC等のフレキシブル配線板を得ることができるという効果を 奏する。
[0160] そのため、本発明は、ポリイミドを含む接着フィルムや積層体に代表される各種榭 脂成形品を製造する分野に利用することができるだけでなぐさらには、このような接 着フィルムや積層体を用いた電子部品の製造に関わる分野に広くするにも応用する ことが可能である。