JP4901509B2 - ポリイミド前駆体溶液の多層膜、多層ポリイミドフィルム、片面金属張積層板、および多層ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

ポリイミド前駆体溶液の多層膜、多層ポリイミドフィルム、片面金属張積層板、および多層ポリイミドフィルムの製造方法 Download PDF

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本発明は、ポリイミド前駆体溶液の多層膜、多層ポリイミドフィルム、特にはチップオンフィルム等に好適に用いられる片面金属張積層板用多層ポリイミドフィルム、片面金属張積層板、および多層ポリイミドフィルムの製造方法に関する。
近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化にともない、各種プリント基板の需要が伸びている。これらのプリント基板の中でも、薄さ軽さに加え、フレキシブル性とある程度のスティフネスを併有する、チップオンフィルム(COF)の需要が特に伸びている。COFは、絶縁性フィルムと金属箔で形成されるフレキシブルプリント配線板に、ICチップを直接搭載した構造を有している。
上記COFは一般に、30〜40μm程度の厚みの高耐熱性ポリイミドフィルムの片面に、直接、若しくは接着剤層を介して金属層を設けた構造を有している。しかし、高耐熱性ポリイミドフィルムに直接金属層を設ける方法は、生産性が特に低い点や、高耐熱性ポリイミドフィルムの表面性を著しく限定することから、高耐熱性ポリイミドフィルムの片面に接着剤層を介して金属層を設ける方法が多く採用されている。
片面金属張積層板のうち、接着剤層として熱可塑性ポリイミドを使用した二層材料が提案されている。この二層材料は、耐熱性、屈曲性、電気的信頼性といった各種特性が、従来の熱硬化型接着剤を用いた基板/接着材料/金属箔の三層構造を有する三層材料よりも高く、近年、需要が特に伸びてきている。
しかしながら一般に高耐熱性ポリイミドフィルムは熱可塑性ポリイミド等のイミド系接着剤との接着性が低く、高い接着性を得るためにはプラズマ処理やコロナ処理などの表面粗化処理やカップリング剤や特定の金属成分を含有させるなどの処理が必要であり、コストが高くなったり、フィルムの特性が低下したりするという問題を有している。(特許文献1 0004段落参照)
そこで、ビフェニルテトラカルボン酸類とフェニレンジアミン類とから得られる芳香族ポリアミック酸溶液と別の芳香族ポリアミック酸溶液とを、二層異以上の押出成型用ダイスから押出することによって多層ポリイミドフィルムを得る、所謂共押出法が知られており、これにより異種のポリイミド層の層間接着性を向上することが開示されている。(特許文献2 請求項、8頁右欄参照)
一方、片面金属張積層板をラミネート法で製造可能なボンディングシートが知られており、耐熱性フィルムの一方の面に熱可塑性樹脂を含有する接着層を配し、他方の面に非接着層を配することにより、片面金属張積層板において顕著に発生する反りを解消できることが開示されている。
また、熱可塑性ポリイミド由来のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミド樹脂を含むことを特徴とする新規な非熱可塑性ポリイミドフィルムが開示されている。ポリイミドフィルムの分子設計を行うことにより、ポリイミド系接着材などを介して金属層を積層した場合の接着性を向上させることが可能となっている。(特許文献3 請求項参照)
特開平5−222219号公報 特開平3−180343号公報 国際公開WO2004/062909号パンフレット
本発明者らが検討したところ、片面金属張積層板用の基材となる多層ポリイミドフィルムを、共押出法により製造したところ、各ポリイミド層間の接着性は向上するが、COFなどを製造する際に要求される十分な半田耐熱性が得られないことが明かとなった。特に、COFに用いられる高耐熱性ポリイミドフィルムは、比較的厚物が多いため、半田耐熱性、特に吸湿半田耐熱性に劣るという問題点を有している。
そこで、半田耐熱性と優れた接着性とを兼ね備えた多層ポリイミドフィルムを与えるポリアミド酸前駆体溶液の多層膜、多層膜をイミド化して得られる多層ポリイミドフィルム、多層ポリイミドフィルムに金属箔を積層してなる片面金属張積層板、多層ポリイミドフィルムの製造方法を提供することを本発明の課題とする。
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、半田耐熱性と優れた接着性とを兼ね備えた多層ポリイミドフィルムを与えるポリアミド酸前駆体溶液の多層膜、多層膜をイミド化して得られる多層ポリイミドフィルム、多層ポリイミドフィルムに金属箔を積層してなる片面金属張積層板、多層ポリイミドフィルムの製造方法をを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、以下の新規な手段によって、上記課題を解決しうる。
1)少なくとも、
熱可塑性ポリイミドおよび/または熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液層(a)、
非熱可塑性ポリイミド前駆体を含む溶液層(b)、
耐熱性高分子を含む溶液層(c)
がこの順に積層されており、かつ溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体が、分子中に熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミドの前駆体であることを特徴とするポリイミド前駆体溶液の多層膜。
2)前記多層膜は、共押出によって支持体上に流延することによって形成されることを特徴とする1)記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
3)前記溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体中の熱可塑性のブロック成分は、非熱可塑性ポリイミド前駆体全体の20〜60モル%であることを特徴とする2)または3)記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
4)前記溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体中の熱可塑性のブロック成分を構成するジアミン成分は、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンを含むことを特徴とする1)乃至3)に記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
5(前記溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体中の熱可塑性のブロック成分を構成する酸二無水物成分は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸類及び/又はビフェニルテトラカルボン酸類を含むことを特徴とする1)乃至4)に記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
6)前記溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体中の熱可塑性のブロック成分の繰り返し単位nが3〜99であることを特徴とする1)乃至5)に記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
7)前記溶液層(c)に含まれる耐熱性高分子が非熱可塑性ポリイミドの前駆体であることを特徴とする1)乃至6)に記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
8)1)乃至7)記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜を加熱あるいはイミド化することによって得られる
熱可塑性ポリイミドを含む接着層(A)
熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミドを含む高耐熱性ポリイミド層(B)
耐熱性高分子を含む樹脂層(C)
がこの順に積層された多層ポリイミドフィルム。
9)前記接着層(A)に金属箔が積層された片面金属張積層板に用いることを特徴とする8)記載の多層ポリイミドフィルム。
10)8)記載の多層ポリイミドフィルムの接着層(A)に金属箔を積層してなる片面金属張積層板。
11)熱可塑性ポリイミドを含む接着層(A)
熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミドを含む高耐熱性ポリイミド層(B)
耐熱性高分子を含む樹脂層(C)
がこの順に積層された多層ポリイミドフィルムの製造方法であって、熱可塑性ポリイミドおよび/または熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液、分子中に熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミド前駆体を含む溶液、非熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液層を共押出によって支持体上に流延・塗布する工程を含む多層ポリイミドフィルムの製造方法。
本発明によれば、半田耐熱性と優れた接着性とを兼ね備えた多層ポリイミドフィルムを与えるポリアミド酸前駆体溶液の多層膜、多層膜をイミド化して得られる多層ポリイミドフィルム、多層ポリイミドフィルムに金属箔を積層してなる片面金属張積層板、多層ポリイミドフィルムの製造方法を提供しうる。
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
本発明の多層ポリイミドフィルムを得るには、少なくとも、
熱可塑性ポリイミドおよび/または熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液層(a)、
非熱可塑性ポリイミド前駆体を含む溶液層(b)、
耐熱性高分子を含む溶液層(c)
がこの順に積層されており、かつ溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体が、分子中に熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミドの前駆体であることを特徴とするポリイミド前駆体溶液の多層膜を用いる。
この多層膜は、加熱することによって多層膜に含まれる熱可塑性ポリイミドの前駆体、あるいは非熱可塑性ポリイミドの前駆体がイミド化されて多層ポリイミドフィルムを与える。このようにして得られた、
熱可塑性ポリイミドを含む接着層(A)
熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミドを含む高耐熱性ポリイミド層(B)
耐熱性高分子を含む樹脂層(C)
がこの順に積層された多層ポリイミドフィルムは、各層間の接着性に優れており、接着層(A)面に金属箔を積層して得られる片面金属張積層板の半田耐熱性にも優れる。また、層(C)を有しているので、金属箔をラミネート法で張り合わせて得られる片面金属張積層板の反りの発生を抑制することが可能となる。
一般的な多層フィルムの製造方法として、高耐熱性ポリイミド層(B)を形成して後、その片面に熱可塑性ポリイミドおよび/または熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液を塗布・加熱し、他方の面に耐熱性高分子を含む溶液を塗布・加熱する方法や、高耐熱性ポリイミド層(B)を形成して後、フィルム状の熱可塑性ポリイミドを含む接着層(A)ないし耐熱性高分子を含む樹脂層(B)を積層する方法がある。しかしながら、高耐熱性ポリイミド層(高耐熱性ポリイミドフィルムともいう)は、接着層等のイミド材料との接着性が悪く、その結果、層間での剥離強度が小さいことが課題であった。
これらの方法に比較して、上記溶液層(a)〜(c)が積層されたポリイミド前駆体の多層膜をイミド化して多層ポリイミドフィルムを得ることによって、最終的に得られる多層フィルムの各層間の密着性を良好なものにすることができる。
しかしながらその一方で、このようにして得られる多層ポリイミドフィルムは、各層の密着性が向上したことにより、吸湿半田耐熱性が悪化するという問題が発生しうることを本発明者らは見出した。吸湿半田耐熱性試験での不良、即ち白化や発泡は、ポリイミド層に吸収された水分が、加熱された半田浴に浸漬されることにより、金属箔とポリイミド層の界面で急激に膨張することにより発生する現象である。ポリイミド前駆体の多層膜を一旦形成し、該多層膜をイミド化して多層ポリイミドフィルムを得ることによって、各層間の密着性が向上する一方で、吸湿半田耐熱性が悪化する原因としては、層間に強固な密着界面が形成され、該密着界面で水分の透過・拡散が阻害され、吸湿半田耐熱性が悪化するものと推察している。
そこで、本発明者らは、多層ポリイミドフィルムの高耐熱性ポリイミド層(B)を適切に選択すれば、ポリイミド前駆体の多層膜を一旦形成し、該多層膜をイミド化して多層ポリイミドフィルムを得たポリイミドフィルムの優れた接着性を維持したまま吸湿半田耐熱性にも優れる多層ポリイミドフィルムが得られることを独自に見出した。すなわち、高耐熱性ポリイミド層(B)を構成するポリイミドとして、ポリイミド全体としては非熱可塑性でありながら、分子中に熱可塑性のブロック成分を有するポリイミドを用いることによって、水蒸気透過速度を著しく向上させ、多層ポリイミドフィルムに金属層を積層した片面金属張積層板用基材においても、吸湿半田耐熱性を向上させることが可能となるのである。
<ポリイミド前駆体の多層膜>
本発明のポリイミド前駆体の多層膜は、
熱可塑性ポリイミドおよび/または熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液層(a)、
非熱可塑性ポリイミド前駆体を含む溶液層(b)、
耐熱性高分子を含む溶液層(c)
がこの順に積層されている。
この多層膜は、(a)層および(b)層にポリイミドの前駆体が含まれているので、本明細書では、ポリイミド前駆体の多層膜と呼ぶ。以下に、溶液(a)、溶液(b)、溶液(c)の順で説明する。
(溶液(a))
溶液層(a)は、熱可塑性ポリイミドおよび/または熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液層である。溶液層(a)に含まれる熱可塑性ポリイミドは、金属層との有為な接着力や好適な線膨張係数など、所望の特性が発現されれば、熱可塑性ポリイミド樹脂の含有量、分子構造、厚みは特に限定されない。
接着性ポリイミド層に含有される熱可塑性ポリイミドとしては、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等を好適に用いることができる。
溶液層(a)には、熱可塑性ポリイミドが含まれていてもよいが、その前駆体(ポリアミド酸)が含まれていてもよい。熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸は、特に限定されるわけではなく、公知のあらゆるポリアミド酸を用いることができる。ポリアミド酸溶液の製造は、後述する溶液層(b)で説明する非熱可塑性ポリイミドの前駆体と同様の原料および製造条件等を適用することができる。
なお、熱可塑性ポリイミドは、使用する原料を種々組み合わせることにより、諸特性を調節することができるが、一般に剛直構造のジアミン使用比率が大きくなるとガラス転移温度高くなる及び/又は熱時の貯蔵弾性率が大きくなり接着性・加工性が低くなるため好ましくない。剛直構造のジアミン比率は好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下、特に好ましくは20mol%以下である。
上記剛直構造を有するジアミンとは、
Figure 0004901509
式中のR2は
Figure 0004901509
一般式群(1)
で表される2価の芳香族基からなる群から選択される基であり、式中のRは同一または異なって,CH−、−OH、−CF、−SO、−COOH、−CO-NH、Cl−、Br−、F−、及びCHO−からなる群より選択される何れかの1つの基である)
で表されるものをいう。
また、柔構造を有するジアミンとは、エーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基などの柔構造を有するジアミンであり、好ましくは、下記一般式(2)で表されるものである。
Figure 0004901509
(式中のRは、
Figure 0004901509
好ましい熱可塑性ポリイミド樹脂の具体例としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類を含む酸二無水物とアミノフェノキシ基を有するジアミンを重合反応せしめたものが挙げられる。
また、金属層との有為な接着力を発現し、かつかつ得られる金属張積層板の耐熱性を損なわないという点から考えると、本発明における熱可塑性ポリイミドは、150〜300℃の範囲にガラス転移温度(Tg)を有していることが好ましい。なお、Tgは動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により求めることができる。
さらに、本発明に係る片面用金属張積層板用基材の特性を制御する目的で、必要に応じて無機あるいは有機物のフィラー、さらにはその他樹脂を添加しても良い。
(溶液(b))
溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミドの前駆体(ポリアミド酸)の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンを、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
重合方法としてはあらゆる公知の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ポリアミド酸の重合における重合方法の特徴はそのモノマーの添加順序にあり、このモノマー添加順序を制御することにより得られるポリイミドの諸物性を制御することができる。従い、本発明においてポリアミド酸の重合にはいかなるモノマーの添加方法を用いても良い。代表的な重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。これら方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
ここで、溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミドの前駆体は、分子中に熱可塑性のブロック成分を有している。このような非熱可塑性ポリイミドの前駆体を得るための好ましい重合方法としては、理想的にブロック成分を形成する目的で熱可塑性のブロック成分を形成した後、残りのジアミン及び/又は酸二無水物を用いて非熱可塑性ポリイミドの前駆体を形成する方法を用いるのが好ましい。この際、前記1)〜5)の方法を部分的に組み合わせて用いることが好ましい。
一例を挙げると、例えば、上記2)あるいは3)の方法において、プレポリマーを製造する際に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物を等モル反応させた場合に熱可塑性ポリイミドとなるように組成を選択してプレポリマーを製造し(このプレポリマーが熱可塑性ブロック成分となる)、かつ最終的に得られるポリイミドが非熱可塑性となるように全工程において用いる芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物を選択すればよい。
たとえば、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)に2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンを溶解させ、ここにピロメリット酸二無水物、3,3‘,4,4,’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を、合計で、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンに対して過小量となるように加えて熱可塑性のブロック成分を合成した後、この溶液にさらに、パラフェニレンジアミンを溶解させ、さらに全工程において用いられる酸二無水物とジアミン量がほぼ等モルとなるようにピロメリット酸二無水物を加えてポリアミド酸溶液を得ることができる。
ここで、熱可塑性のブロック成分とは、ブロック成分を構成する芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物を等モル反応させて得られるポリイミド樹脂のフィルムが、金属製の固定枠に固定して450℃で1分加熱した際に軟化し、元のフィルムの形状を保持しないようなものを指す。
ここで、熱可塑性ブロック成分の評価について、2つの目的別に記載する。一つ目の評価は、ポリイミドブロック成分が熱可塑性であるか否かを判定するものであり、2つ目はポリイミドブロック成分の熱可塑性の程度を判定するものである。その詳細について記載する。
ポリイミドブロック成分が熱可塑性であるか否かを判定する目的で、ブロック成分を構成する酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させて評価用のポリイミドフィルムを作製する。このとき、全酸二無水物成分と全ジアミン成分が当モルとなるのに十分な更なる酸二無水物成分あるいはジアミン成分を補って、これらの酸二無水物成分とジアミン成分を反応させる。(このようにして作製したフィルムを便宜上「熱可塑性ポリイミドブロック成分からなるポリイミドフィルム」という。)
この評価用のブロック成分からなるポリイミドフィルムのサンプルは、2つの異なる方法で作製しうる。一つ目のサンプルの調整において、補うべき更なる酸二無水物成分あるいはジアミン成分は、想定する熱可塑性ブロック成分を構成している酸二無水物あるいはジアミン成分から選択する。この方法でサンプルを調整することにより、ブロック成分を設計する上で、優れた特性を有するブロック成分のモデルを与えることが可能となる。ここで、想定される熱可塑性ブロック成分を構成する酸二無水物成分やジアミン成分が各々2種以上ある場合には、評価用フィルムを作成するために補うべき酸二無水物成分あるいはジアミン成分としては、その中から高いTgに最も貢献する成分を選択する。2つ目のサンプル調整において、補うべき酸二無水物成分あるいはジアミン成分としては、ピロメリット酸二無水物(ブロック成分としてジアミン成分を過剰に用いてアミンを末端に有するブロック成分を用いる場合)、パラフェニレンジアミン(ブロック成分として酸二無水物成分を過剰に用いて酸無水物を末端に有するブロック成分を用いる場合)を選択する。この方法でサンプルを調整することにより、異なる熱可塑性ポリイミドブロック成分がいくつか想定される場合にそれらを容易に比較する標準的なテスト方法としての利点を与える。この2つめのサンプル調整方法は、すべての想定されるブロック成分が、熱可塑性であるか否かを判定する、あるいはブロック成分の熱可塑性の程度を判定するために用いうる。
熱可塑性の程度を判定する目的で熱可塑性ブロック成分からなるポリイミドフィルムを調整する場合、公知の方法によりフィルムを焼成する温度は比較的低温で(例えば最高温度300℃)調整される。もし、最高焼成温度をそのように低温に設定してもフィルムが得られない場合は、ブロック成分の熱可塑性の程度は300℃よりも低いとみなす。もし、フィルムが得られた場合は、そのフィルムを加熱していき、フィルムが軟化して形状を保持しなくなる温度を決定する。熱可塑性ブロック成分は、このように決定された温度が、250〜450℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは300〜400℃の範囲である。
この温度が低すぎると、最終的に得られるポリイミド樹脂を非熱可塑性にすることが困難となり、この温度が高すぎると本発明の効果である優れた接着性を得にくくなる傾向にある
またさらに熱可塑性のブロック成分は、ポリアミド酸全体の20〜60mol%含まれるのが好ましく、さらには25〜55mol%、特に30〜50mol%含有されることが好ましい。
熱可塑性のブロック成分がこの範囲を下回ると接着性を発現することが困難となる場合があり、この範囲を上回ると最終的に得られるポリイミド樹脂を非熱可塑性にすることが困難となる場合がある。
例えば、上記2)の重合方法を用いた場合、熱可塑性のブロック成分の含有量は、下記式(1)に従って計算される。
(熱可塑性ブロック成分含有量) = a/Q×100 (1)
a:熱可塑性ブロック成分を製造する際に用いた酸二無水物成分の量(mol)
Q:全酸二無水物成分量(mol)
また上記3)の重合方法を用いた場合、熱可塑性ブロック成分の含有量は、下記式(2)に従って計算される。
(熱可塑性ブロック成分含有量) = b/P×100 (2)
b:熱可塑性ブロック成分を製造する際に用いたジアミン成分の量(mol)
P:全ジアミン量(mol)
またさらに熱可塑性ブロック成分の繰り返し単位nは3〜99が好ましく、4〜90がより好ましい。繰り返し単位nがこの範囲を下回ると優れた接着性を発現しにくく、且つ吸湿膨張係数が大きくなりやすい。また、繰り返し単位nがこの範囲を上回るとポリイミド前駆体溶液の貯蔵安定性が悪くなる傾向にあり、かつ重合の再現性が低下する傾向にあり好ましくない。
本発明における熱可塑性ブロック成分は、上述のように熱可塑性ブロック成分からなるポリイミドフィルムを製造した場合に、150〜300℃の範囲にガラス転移温度(Tg)を有していることが好ましい。なお、Tgは動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値等により求めることができる。
本発明の熱可塑性ブロック成分を形成するモノマーについて説明する。
ジアミン主成分として好ましく用い得る例としては4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン等が挙げられ、これらを単独または複数併用することができる。これらの例は主成分として好適に用いられる例であり、副成分としていかなるジアミンを用いることもできる。これらの中で特に好ましく用い得るジアミンの例として、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが挙げられる。
また、熱可塑性ブロック成分を構成する酸成分として好適に用い得る例としてはピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物などが挙げられ、これらを単独または複数併用することができる。本発明においては、少なくとも3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物から1種以上の酸二無水物を用いることが好ましい。これら酸二無水物を用いることで他の層との高い密着性が得られやすくなる。
本発明において、熱可塑性ブロック成分を与えるプレポリマーと反応させて非熱可塑性ポリイミドの前駆体を製造する際に用いられるジアミンと酸二無水物の好適な例を挙げる。ジアミンと酸二無水物の組み合わせにより種々特性が変化するため一概に規定することはできないが、ジアミンとしては剛直な成分、例えばパラフェニレンジアミンおよびその誘導体、ベンジジン及びその誘導体を主成分として用いるのが好ましい。これら剛直構造を有するジアミンを用いることにより非熱可塑性とし、且つ最終的に得られるフィルムは高い弾性率を達成しやすくなる。また酸成分としてはピロメリット酸二無水物を主成分として用いることが好ましい。ピロメリット酸二無水物はよく知られているようにその構造の剛直性から非熱可塑性ポリイミドを与えやすい傾向にある。
なお、得られるポリイミドが非熱可塑性であるか否かの判定は、次のようにして行う。ポリイミドフィルムとした場合に、金属製の固定枠に固定して450℃1分加熱した際に、元のフィルム形状を保持(タルミ、溶融などが無い)しているものを非熱可塑性とする。
本発明においては、重合制御のしやすさや装置の利便性から、まず熱可塑性ブロック成分を与えるプレポリマーを合成した後、さらに適宜設計されたモル分率でジアミン及び酸二無水物を加えて非熱可塑性ポリイミド前駆体とする重合方法を用いることが好ましい。
ポリイミド前駆体(以下ポリアミド酸という)を合成するための好ましい溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用い得る。
また、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いても良いが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
フィラーの粒子径は改質すべきフィルム特性と添加するフィラーの種類によって決定されるため、特に限定されるものではないが、一般的には平均粒径が0.05〜100μm、好ましくは0.1〜75μm、更に好ましくは0.1〜50μm、特に好ましくは0.1〜25μmである。粒子径がこの範囲を下回ると改質効果が現れにくくなり、この範囲を上回ると表面性を大きく損なったり、機械的特性が大きく低下したりする可能性がある。また、フィラーの添加部数についても改質すべきフィルム特性やフィラー粒子径などにより決定されるため特に限定されるものではない。一般的にフィラーの添加量はポリイミド100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.01〜90重量部、更に好ましくは0.02〜80重量部である。フィラー添加量がこの範囲を下回るとフィラーによる改質効果が現れにくく、この範囲を上回るとフィルムの機械的特性が大きく損なわれる可能性がある。フィラーの添加は、
1.重合前または途中に重合反応液に添加する方法
2.重合完了後、3本ロールなどを用いてフィラーを混錬する方法
3.フィラーを含む分散液を用意し、これをポリアミド酸有機溶媒溶液に混合する方法
などいかなる方法を用いてもよいが、フィラーを含む分散液をポリアミド酸溶液に混合する方法、特に製膜直前に混合する方法が製造ラインのフィラーによる汚染が最も少なくすむため、好ましい。フィラーを含む分散液を用意する場合、ポリアミド酸の重合溶媒と同じ溶媒を用いるのが好ましい。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために分散剤、増粘剤等をフィルム物性に影響を及ぼさない範囲内で用いることもできる。
(溶液(c))
溶液層(c)に含まれる耐熱性高分子は特に限定されないが、耐熱性に優れるという点からポリイミドおよび/またはその前駆体(ポリアミド酸)であることが好ましい。耐熱性に優れるポリイミドは、有機溶剤に溶解しにくい場合が多いので、前駆体であるポリアミド酸の溶液であることが好ましい。耐熱性を考慮すると、当該層に含まれるポリイミド樹脂は、60wt%以上、好ましくは80wt%以上であることが望ましい。特に、本発明の多層ポリイミドフィルムが片面金属張積層板に用いられる場合には、耐熱性高分子を含む樹脂層(C)がカール、反りの発生を抑制する樹脂層として機能するため、溶液層(c)に含まれるポリイミドは、非熱可塑性ポリイミド樹脂であることが好ましいが、所望の特性を付与するために熱可塑性樹脂を混合してもよい。
ポリアミド酸の製造方法としては、高耐熱性ポリイミド層の前駆体と同様、公知のあらゆる方法を用いることができる。
さらに、本発明に係る片面銅張積層板用基材の特性を制御する目的で、必要に応じて無機あるいは有機物のフィラー、さらにはその他樹脂を添加しても良い。
<ポリイミド前駆体の多層膜および多層ポリイミドフィルムの製造>
本発明においては、熱可塑性ポリイミドおよび/または熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液層(a)、
非熱可塑性ポリイミド前駆体を含む溶液層(b)、
耐熱性高分子を含む溶液層(c)
が積層された多層膜を得ることが重要である。溶液層が積層された状態を形成しうる方法であれば、どのような方法を採用してもかまわないが、溶液(a)〜(c)を用いて、カーテンコーティング法、共押出−流延塗布法などの方法で、ポリイミド前駆体の多層膜を得ればよい。
共押出により支持体上に流延する工程を含む共押出−流延塗布法について説明する。共押出とは、片面金属張積層板用基材を構成する各層の溶液若しくはその前駆体溶液を三層以上の多層ダイへ同時に供給し、前記ダイの吐出口から少なくとも三層の薄膜状体として支持体上に押出す工程を含むフィルムの製造方法である。
一般的に用いられる方法について説明すると、三層以上の多層ダイから押出された前記の溶液を、平滑な支持体上に連続的に押し出し、次いで、前記支持体上の多層の薄膜状体の溶媒の少なくとも一部を揮散せしめることで、自己支持性を有する多層膜を得る。
さらに、当該多層膜を前記支持体上から剥離し、最後に、当該多層膜を高温(250−600℃)で充分に加熱処理することによって、溶媒を実質的に除去すると共にイミド化を進行させることで、目的の片面金属張積層板用基材が得られる。支持体から引き剥がした多層膜は、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を

有し、式(1)
(A−B)×100/B・・・・(1)
式(1)中
A,Bは以下のものを表す。
A:多層膜の重量
B:多層膜を450℃で20分間加熱した後の重量から算出される揮発分含量は5〜200重量%の範囲、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは30〜80重量%の範囲にある。この範囲のフィルムを用いることが好適であり、焼成過程でフィルム破断、乾燥ムラによるフィルムの色調ムラ、特性ばらつき等の不具合が起こることがある。また、接着層の熔融流動性を改善する目的で、意図的にイミド化率を低くする及び/又は溶媒を残留させてもよい。
本発明に係る支持体とは、多層ダイから押出された多層液膜を流延するもので、当該支持体上で多層液膜を加熱乾燥せしめ、自己支持性を付与するものである。該支持体の形状は特に問わないが、接着フィルムの生産性を考慮すると、ドラム状若しくはベルト状であることが好ましい。また、該支持体の材質も特に問わず、金属、プラスチック、ガラス、磁器などが挙げられ、好ましくは金属であり、更に好ましくは耐腐食性に優れるSUS材である。また、Cr、Ni、Snなどの金属メッキをしても良い。
一般的にポリイミドは、ポリイミドの前駆体、即ちポリアミド酸からの脱水転化反応により得られ、当該転化反応を行う方法としては、熱によってのみ行う熱キュア法と、化学脱水剤を使用する化学キュア法の2法が最も広く知られている。しかしながら、生産性に優れていることから、化学キュア法の採用がより好ましい。
ここで、化学硬化剤とは、脱水剤及び触媒を含むものである。ここでいう脱水剤とは、ポリアミック酸に対する脱水閉環剤であり、その主成分として、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N′−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物を好ましく用いることができる。その中でも特に、脂肪族酸無水物及び芳香族酸無水物が良好に作用する。また、触媒とは硬化剤のポリアミック酸に対する脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であるが、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンを用いることができる。そのうち、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、キノリン、またはβ−ピコリンなどの含窒素複素環化合物であることが好ましい。さらに、脱水剤及び触媒からなる溶液中に、有機極性溶媒を導入することも適宜選択されうる。
化学キュア法を採用する場合、溶液(a)〜(c)の少なくとも一つの溶液に脱水剤及び触媒を含有させることが好ましい。この中でも溶液(b)と(c)に脱水剤及び触媒を含有させることが好ましい。溶液(a)に脱水剤及び触媒を含有させると、場合によっては熱可塑性ポリイミドを含む接着層の特性が十分生かしきれないこともあるが、溶液(a)に用いることを排除するものではない。また、溶液(b)にのみ脱水剤及び触媒を含有させることがさらに好ましい。一つの溶液層にのみ脱水剤及び触媒を含有させる方法は、生産設備の簡略化につながり好ましいが、溶液(b)に脱水剤及び触媒を含有させることにより、得られる多層ポリイミドフィルムに十分な特性を与えることが本発明者らの検討によって見出された。従って、溶液(b)にのみ脱水剤及び触媒を含有させることが最も好ましい。
化学キュア法を採用する場合、化学脱水剤及び触媒の含有量は、多すぎると三層以上の多層ダイから押出された多層膜を乾燥せしめた際に、脱水剤及び触媒を添加した層から溶剤が滲出し、高耐熱性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層の間に当該溶剤が蓄積し、各層間の接着強度の低下や、片面金属張積層板用基材製造時に層間の剥離等の困難さを引き起こすことがある。また、少なすぎると、多層ダイから押出された多層膜を平滑な支持体上で乾燥した後、当該支持体から多層膜を引き剥がすことが困難になることがある。
上記要請を解決するため、化学脱水剤の含有量は、化学脱水剤及び触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.5〜4.0モルが好ましく、1.0〜3.0モル、さらには1.2〜2.5モルが特に好ましい。
同様の理由で、触媒の含有量は、化学脱水剤及び触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜2.0モルが好ましく、0.05〜1.0モル、さらには0.3〜0.8モルが特に好ましい。
多層ダイから押出された少なくとも三層の薄膜状体中の溶媒の揮散方法に関しては特に限定されないが、加熱かつ/または送風による方法が最も簡易な方法である。上記加熱の際の温度は、高すぎると溶媒が急激に揮散し、当該揮散の痕が最終的に得られる接着フィルム中に微小欠陥を形成せしめる要因となるため、用いる溶媒の沸点+50℃未満であることが好ましい。
イミド化時間に関しては、実質的にイミド化および乾燥が完結するに十分な時間を取ればよく、一義的に限定されるものではないが、一般的には、化学キュア法を採用する場合、1〜600秒程度、熱キュア法を採用する場合、60〜1800秒の範囲で適宜設定される。
イミド化する際にかける張力としては、1kg/m〜15kg/mの範囲内とすることが好ましく、5kg/m〜10kg/mの範囲内とすることが特に好ましい。張力が上記範囲より小さい場合、フィルム搬送時にたるみや蛇行が生じ、巻取り時にシワが入ったり、均一に巻き取れない等の問題が生じる可能性がある。逆に上記範囲よりも大きい場合、強い張力がかかった状態で高温加熱されるため、片面金属張積層板用基材を用いて作製される片面金属張積層板の寸法特性が悪化することがある。
上記の多層ダイとしては各種構造のものが使用できるが、例えば複数層用フィルム作成用のTダイス等が使用できる。また、従来既知のあらゆる構造のものを好適に使用可能であるが、特に好適に使用可能なものとして、フィードブロックTダイやマルチマニホールドTダイが例示される。
<多層ポリイミドフィルムおよび片面金属張積層板>
このようにして得られた本発明の多層ポリイミドフィルムは、
熱可塑性ポリイミドを含む接着層(A)
熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミドを含む高耐熱性ポリイミド層(B)
耐熱性高分子を含む樹脂層(C)
がこの順に積層された多層ポリイミドフィルムである。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、接着層(A)を有しているので、金属箔と接着する機能を有する。また、好適な線膨張係数を有している。したがって層(A)には、熱可塑性ポリイミド樹脂を80wt%以上含有されていることが好ましい。
また、高耐熱性ポリイミド層(B)として、分子中に熱可塑性ドのブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミド樹脂を含んでいる。これにより、各層間の接着性が非常に高いものであるにもかかわらず、得られる片面金属張積層板の半田耐熱性にも優れる。分子中に熱可塑性ドのブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミド樹脂を含む非熱可塑性ポリイミドフィルムは、これに各種接着剤を介して金属箔を積層した場合の接着性に優れることが特許文献3に開示されているが、このフィルムが吸湿半田耐熱性に優れることは開示されていない。本発明者らは、ポリイミド前駆体の多層膜から得られる多層ポリイミドフィルムは接着性が向上するものの、吸湿半田耐熱性に劣るという課題を設定し、これを解決するため、高耐熱性ポリイミド層(B)として特定の非熱可塑性ポリイミドを用いることにより、特許文献3に開示されている接着性よりもさらに高い接着性を発現させ、かつ、優れた吸湿半田耐熱性を発現させることに成功した。
さらに、本発明の多層ポリイミドフィルムは、耐熱性高分子を含む樹脂層(C)有しているので、金属箔をラミネート法で張り合わせて得られる片面金属張積層板の反りの発生を抑制することが可能となる。耐熱性高分子を含む樹脂層(C)は、ラミネートの際に、ロールやベルト、若しくは保護フィルム等に対して有為な接着力を示さないことが好ましい。非接着性ポリイミド層に要求される特性としては、片面金属張積層板のカール、反りを防ため、接着性ポリイミド層と略同等の熱線膨張係数を有することが望ましい。一般に、接着性ポリイミド層の主成分である熱可塑性ポリイミド樹脂は、熱線膨張係数が40〜100ppm/℃程度であるため、非接着性ポリイミド層の熱線膨張係数は、40〜100ppm/℃、好ましくは50〜90ppm/℃であることが好ましい。ここで、熱線膨張係数とは、例えばセイコー電子(株)社製TMA120Cを用いて測定でき、サンプルサイズ 幅3mm、長さ10mm、荷重3gで10℃/minで10℃〜400℃まで一旦昇温させた後、10℃まで冷却し、さらに10℃/minで昇温させて、2回目の昇温時の100℃から200℃における熱膨張率から平均値として計算される値である。
一方で、ラミネートの際に有為な接着力を示さないためには、ラミネート温度で極度に軟化しないことが重要である。一般に、ラミネートは350℃前後の温度で行われることが多いため、350℃での弾性率が極めて重要であり、当該弾性率が1×10Pa以上、好ましくは5×10Pa以上であることが望ましい。350℃での弾性率は、例えばセイコー電子(株)社製DMS200を用いて測定でき、サンプルサイズ 巾9mm、長さ40mm、周波数1、5、10Hzで昇温速度3℃/minで20〜400℃の温度範囲で測定した際の、350℃における値である。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、接着層(A)に金属箔を配して、ラミネート法などによって片面金属張積層板を得るために好適に用いられる。このようにして得られた片面金属張積層板は、各層間の接着性に優れており、吸湿半田耐熱性にも優れる。また、片面金属張積層板の反りの発生を抑制することが可能となる。
次に、本発明に係る接着フィルムの製造方法を実施例により詳しく説明する。
なお、合成例、実施例及び比較例における諸特性の評価法は次の通りである。
(吸湿半田耐熱性)
片面金属張積層板を85℃、85%RHの加湿条件下で96時間吸湿させた後、280℃の半田浴に10秒間浸漬し、膨れ、白化を目視により判定した。
(金属箔の引き剥がし強度:接着強度)
JIS C6471の「6.5 引きはがし強さ」に従って、サンプルを作製し、5mm幅の金属箔部分を、180度の剥離角度、50mm/分の条件で剥離し、その荷重を測定した。
(熱時弾性率測定)
セイコー電子(株)社製DMS200を用いて(サンプルサイズ 巾9mm、長さ40mm)、周波数5Hzで昇温速度3℃/minで20〜400℃の温度範囲で測定し、350℃での値を読んだ。
(熱線膨張係数)
熱線膨張係数の測定は、セイコー電子(株)社製TMA120Cを用いて(サンプルサイズ 幅3mm、長さ10mm)、荷重3gで10℃/minで10℃〜400℃まで一旦昇温させた後、10℃まで冷却し、さらに10℃/minで昇温させて、2回目の昇温時の100℃から200℃における熱膨張率から平均値として計算した。

(合成例1:熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の合成)
容量350Lの反応槽に、ジメチルホルムアミド(DMF)を248kg、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を17.5kg加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)を24.0kg徐々に添加した。0.5kgのBPDAを10kgのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が400poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
このポリアミド酸溶液を25μmPETフィルム(セラピールHP,東洋メタライジング社製)上に最終厚みが20μmとなるように流延し、120℃で5分間乾燥を行った。乾燥後の自己支持性フィルムをPETから剥離した後、金属製のピン枠に固定し、150℃で5分間、200℃で5分間、250℃で5分間、350℃で5分間乾燥を行い、単層シートを得た。この熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は240℃であった。また、このフィルムを金属枠に固定し450℃に加熱したところ形態を保持せず、熱可塑性であることがわかった。
また、350℃における熱時弾性率、及び熱線膨張係数を測定したところ、熱時弾性率は330℃において破断して測定不可、線膨張係数は65ppm/℃であった。
(合成例2:耐熱性高分子を含む樹脂層用ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の合成)
容量350Lの反応槽に、DMFを234.5kg、4,4’―オキシジアニリン(ODA)を26.6kg加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を28.4kg徐々に添加した。0.6kgのPMDAを10kgのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が3000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
上述の手段で調整したポリアミド酸溶液と合成例1で得たポリアミド酸溶液を、85:15の重量比で混合し、窒素雰囲気下で30分間均一攪拌することで、非接着層用ポリイミドの前駆体を得た。
このポリアミド酸溶液を25μmPETフィルム(セラピールHP,東洋メタライジング社製)上に最終厚みが20μmとなるように流延し、120℃で5分間乾燥を行った。乾燥後の自己支持性フィルムをPETから剥離した後、金属製のピン枠に固定し、150℃で5分間、200℃で5分間、250℃で5分間、350℃で5分間乾燥を行い、単層シートを得た。
この単層シートを250mm×250mmに切断し、360℃、ロール間圧力0.6tに設定した熱ロールに、1.5m/minの線速度で通過させた。熱ロールから容易に剥離でき、熱ロール表面にコンタミを残さなかったことから、ラミネート時に接着性を示さないことが判った。
また、350℃における熱時弾性率、及び熱線膨張係数を測定したところ、4×10Pa、59ppm/℃であった。
(実施例1)
容量350Lの反応槽に、DMF234kg、BAPP19.9kg加え、攪拌した。ここに3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)3.9kg添加して溶解させた後、PMDAを6.9kg添加して30分攪拌し、熱可塑性ポリイミド前駆体ブロック成分を形成した。
この溶液にp−フェニレンジアミン(p−PDA)7.9kgを溶解した後、PMDA16.1kgを添加し1時間撹拌して溶解させた。さらにこの溶液に別途調製してあったPMDAのDMF溶液(PMDA0.8kg/DMF10.5kg)を注意深く添加し、粘度が3000ポイズ程度に達したところで添加を止め、高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液を得た。
なお、BAPP/BTDA/PMDA=46.43g/9.12g/18.53gの比で得たポリアミド酸溶液を同様にフィルム化しようとしたが、450℃の加熱段階で熔融し、形態を保持せず、熱可塑性であることが確認できた。
前記で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液に、以下の化学脱水剤及び触媒を含有せしめた。
化学脱水剤:無水酢酸を高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して2.0モル
触媒:イソキノリンを高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して0.5モル
次いで、リップ幅650mmのマルチマニホールド式の3層共押出多層ダイから、当該ダイの下15mmを走行しているSUS製のエンドレスベルト上に、合成例2で得られた耐熱性高分子を含む樹脂層用ポリイミドの前駆体溶液、前記の高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液、合成例1で得られた接着層用ポリイミドの前駆体溶液の順で、押出し流延した。次いで、この多層膜を130℃×100秒で加熱することで、自己支持性のゲル膜へと転化せしめた。さらに、エンドレスベルトから引き剥がされた自己支持性のゲル膜をテンタークリップに固定し、300℃×16秒、400℃×29秒、450℃×17秒で乾燥・イミド化させ、高耐熱性ポリイミド層、接着性ポリイミド層、非接着性ポリイミド層の厚みがそれぞれ6μm、25μm、6μmの片面金属張積層板用基材を得た。
得られた片面金属張積層板用基材の接着層側に18μm圧延銅箔(ジャパンエナジー社製:BHY−22B−T)を、熱ロールの表面に保護材料(カネカ製:アピカル125NPI)を用いて、ラミネート温度380℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で熱ロールラミネートを行い、片面金属張積層板を作製した。
得られた片面金属張積層板の吸湿半田耐熱性及び接着強度を表1に示す。
(実施例2、3、比較例1、2、3)
モノマーの比を変えて実施例1と同様にして高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液を得、それを用いて片面金属張積層板を作製した。
得られた片面金属張積層板の吸湿半田耐熱性及び接着強度を表1に示す。なお、実施例2、3について、熱可塑性のブロック成分の確認を実施例1と同様に行ったところ、熱可塑性ブロック成分となっていることが確認できた。
(実施例4)
実施例1と同様に、高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液を得た。
次いで、リップ幅650mmのマルチマニホールド式の3層共押出多層ダイから、当該ダイの下15mmを走行しているSUS製のエンドレスベルト上に、合成例2で得られた耐熱性高分子を含む樹脂層用ポリイミドの前駆体溶液、前記の高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液、合成例1で得られた接着層用ポリイミドの前駆体溶液の順で、押出し流延した。次いで、この多層膜を90℃×60秒、100℃×60秒、130℃×180秒で加熱することで、自己支持性のゲル膜へと転化せしめた。さらに、エンドレスベルトから引き剥がされた自己支持性のゲル膜をテンタークリップに固定し、300℃×300秒、400℃×480秒、450℃×300秒で乾燥・イミド化させ、片面金属張積層板用基材を得た。
得られた片面金属張積層板用基材の接着層側に18μm圧延銅箔(ジャパンエナジー社製:BHY−22B−T)を、熱ロールの表面に保護材料(カネカ製:アピカル125NPI)を用いて、ラミネート温度380℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で熱ロールラミネートを行い、片面金属張積層板を作製した。
得られた片面金属張積層板の吸湿半田耐熱性及び接着強度を表1に示す。
(比較例4)
実施例1と同様に、高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液を得た。
このポリアミック酸溶液100gに、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比18.90/7.17/18.93)からなる硬化剤を50g添加して0℃以下の温度で攪拌・脱泡し、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延塗布した。この樹脂膜を130℃×100秒で加熱した後アルミ箔から自己支持性のゲル膜を引き剥がして(揮発分含量45重量%)金属枠に固定し、300℃×20秒、450℃×20秒、500℃×20秒で乾燥・イミド化させて厚み35μmの高耐熱性ポリイミドフィルムを得た。
合成例1で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を、固形分濃度10wt%になるまでDMFで希釈した後、該高耐熱性ポリイミドフィルムの片面に、熱可塑性ポリイミド層(接着層)の最終片面厚みが6μmとなるようにポリアミド酸を塗布した後、140℃で1分間加熱を行った。続いて、合成例2で得られた耐熱性高分子を含む樹脂層用ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を、固形分濃度10wt%になるまでDMFで希釈した後、該溶液とイミド化促進剤である3,4―ルチジンを95:5の重量比で混合した。得られた溶液を、該高耐熱性ポリイミドフィルムの接着層が設けられていない面に、耐熱性高分子を含む樹脂層の最終片面厚みが6μmとなるように塗布し、140℃で1分間加熱を行った。次いで、雰囲気温度390℃の遠赤外線ヒーター炉の中を20秒間通して加熱イミド化を行い、片面金属張積層板用基材を得た。
得られた片面金属張積層板用基材の接着層側に18μm圧延銅箔(ジャパンエナジー社製:BHY−22B−T)を、熱ロールの表面に保護材料(カネカ製:アピカル125NPI)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で熱ロールラミネートを行い、片面金属張積層板を作製した。
得られた片面金属張積層板の吸湿半田耐熱性及び接着強度を表1に示す。
実施例及び比較例で示される通り、実施例の片面金属張積層板は、吸湿半田耐熱性試験で全て合格であり、かつ、接着強度も十分有していた。一方、比較例の片面金属張積層板用は、吸湿半田耐熱性試験で不合格若しくは接着強度で実施例と比較して大きく劣ることが分かった。
Figure 0004901509

Claims (11)

  1. 少なくとも、
    熱可塑性ポリイミドおよび/または熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液層(a)、
    非熱可塑性ポリイミド前駆体を含む溶液層(b)、
    耐熱性高分子を含む溶液層(c)
    がこの順に積層されており、かつ溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体が、分子中に熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミドの前駆体であることを特徴とするポリイミド前駆体溶液の多層膜。
  2. 前記多層膜は、共押出によって支持体上に流延することによって形成されることを特徴とする請求項1記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
  3. 前記溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体中の熱可塑性のブロック成分は、非熱可塑性ポリイミド前駆体全体の20〜60モル%であることを特徴とする請求項1または2記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
  4. 前記溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体中の熱可塑性のブロック成分を構成するジアミン成分は、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンを含むことを特徴とする請求項1乃至3に記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
  5. 前記溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体中の熱可塑性のブロック成分を構成する酸二無水物成分は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸類及び/又はビフェニルテトラカルボン酸類を含むことを特徴とする請求項1乃至4に記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
  6. 前記溶液層(b)に含まれる非熱可塑性ポリイミド前駆体中の熱可塑性のブロック成分の繰り返し単位nが3〜99であることを特徴とする請求項1乃至5に記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
  7. 前記溶液層(c)に含まれる耐熱性高分子が非熱可塑性ポリイミドの前駆体であることを特徴とする請求項1乃至6に記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜。
  8. 請求項1乃至7記載のポリイミド前駆体溶液の多層膜を加熱あるいはイミド化することによって得られる
    熱可塑性ポリイミドを含む接着層(A)
    熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミドを含む高耐熱性ポリイミド層(B)
    耐熱性高分子を含む樹脂層(C)
    がこの順に積層された多層ポリイミドフィルム。
  9. 前記接着層(A)に金属箔が積層された片面金属張積層板に用いることを特徴とする請求項8記載の多層ポリイミドフィルム。
  10. 請求項8記載の多層ポリイミドフィルムの接着層(A)に金属箔を積層してなる片面金属張積層板。
  11. 熱可塑性ポリイミドを含む接着層(A)
    熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミドを含む高耐熱性ポリイミド層(B)
    耐熱性高分子を含む樹脂層(C)
    がこの順に積層された多層ポリイミドフィルムの製造方法であって、熱可塑性ポリイミドおよび/または熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液、分子中に熱可塑性のブロック成分を有する非熱可塑性ポリイミド前駆体を含む溶液、非熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液層を共押出によって支持体上に流延・塗布する工程を含む多層ポリイミドフィルムの製造方法。
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