明 細 書
磁気共鳴イメージング装置
技術分野
[0001] 本発明は、磁気共鳴イメージング装置に係り、特に、傾斜磁場コイルの駆動により 発生する騒音を抑制する磁気共鳴イメージング装置に関する。
背景技術
[0002] 磁気共鳴イメージング装置(以下、 MRI装置と 、う)は、均一な静磁場内に置かれ た被検体に電磁波を照射したときに被検体を構成する原子の原子核に生じる核磁気 共鳴現象を利用し、被検体からの核磁気共鳴信号 (以下、 MR信号という)を検出し、 この NMR信号を使って画像再構成することにより、被検体の物理的性質をあらわす 磁気共鳴画像 (以下、 MRI画像という)を得るものである。このイメージングの位置情 報を与えるために、静磁場に重畳して傾斜磁場が印加される。
[0003] 静磁場方向が被検体の体軸方向と直交する垂直磁場方式では、上下対向して配 置される一対の静磁場発生源の内側 (均一な静磁場側)に、傾斜磁場コイルが上下 対向して一対が配置される。また、この傾斜磁場は互いに直交する 3軸方向につい て発生させるため、各傾斜磁場コイルも、各々、 3組の磁場発生コイルを有する。
[0004] 傾斜磁場コイルには傾斜磁場電源が接続され、 MRI装置では撮影 ·検査の際の条 件に応じて、適切なタイミング及び電圧でパルス状電流が印加される。しかしながら、 傾斜磁場コイルにパルス状の電流が印加されると、ローレンツ力が作用し、傾斜磁場 コイルが振動して騒音となって ヽた。
[0005] これを解決する先行技術として、傾斜磁場コイルをポールピースの凹部に収容し、 遮音する構造を持つ MRI装置がある (特許文献 1参照)。
[0006] この特許文献 1記載の技術では、傾斜磁場コイルをゴム等の柔らかい材質から成る Dピースを介在させてポールピースに取りつけることにより、傾斜磁場コイルの振動が ポールピースへ伝わらな 、ようにして 、る。
[0007] し力しながら、上記特許文献 1にお 、て、 Dピースが柔らかすぎると、傾斜磁場コィ ルの振動による位置変動が大きくなり、その大きくなつた位置変動による傾斜磁場の
乱れが画像アーチファ外を引き起こす間題がある。
[0008] そこで、傾斜磁場コイルに力かる荷重を多数個の弾性体に分散することにより、一 個当たりの弾性体の変位量を十分小さくして傾斜磁場分布の乱れを抑制する技術が 特許文献 2に記載されて ヽる。
[0009] また、特許文献 3にも、傾斜磁場コイルの振動による騒音を防止するための技術が 記載されている。
[0010] 特許文献 3においては、傾斜磁場コイルに印加される電流波形のスペクトル特性に おいて、保持部材も含めた傾斜磁場コイルの固有振動数と一致する周波数 fの成分 の強度を略 0とし、騒音を低減させている。
[0011] また、特許文献 3においては、ある特定の電流波形のスペクトル成分において、強 度が略 0となる周波数と傾斜磁場コイルの固有振動数とがー致するように、保持部材 の軸方向の長さや固定場所などの固有振動数に関与するパラメータを変更する方法 が記載されている。
[0012] 一方、 MRI装置において、静磁場の均一度を向上させるために静磁場発生源と傾 斜磁場コイルとの間に強磁性体シムを配置して、画質を向上させる技術が特許文献
4に記載されている。
[0013] 特許文献 1 :特開平 11 137535号公報
特許文献 2:特許 3156088号公報
特許文献 3:特開平 10— 201735号公報
特許文献 4:特開 2002— 360537号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0014] し力しながら、特許文献 2記載の技術では、弾性体の一個当たりの変位量を小とす るために、多数個の弾性体を広範囲に配置する必要がある。このため、傾斜磁場コィ ルの振動による騒音を抑制することはできても、例えば、特許文献 4に記載されたよう な、画質向上化手段を配置する領域が制限されるため、画質の向上化が困難となつ てしまう。
[0015] また、特許文献 3記載の技術にあっては、次のような問題点がある。
[0016] すなわち、 MRI装置では、通常シーケンスから高速シーケンスまで多様な周波数成 分を有する傾斜磁場を印加して撮像する必要がある。このため、振動を抑制するた めに調整された特定電流波形のみを用いて撮像することは、多様なシーケンスに対 応できない。
[0017] また、保持部材のパラメータを変更させる技術でも、多様なシーケンス毎に保持部 材の軸方向の長さや固定場所などのパラメータを変更することは、実際上できず、騒 音防止及び画質向上は困難である。
[0018] 本発明の目的は、傾斜磁場コイルの振動による騒音を抑制するとともに画質の向 上化が可能な磁気共鳴イメージング装置を実現することである。
課題を解決するための手段
[0019] (1)本発明の磁気共鳴イメージング装置は、撮影空間に静磁場を発生する静磁場 発生手段と、撮影空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、高周波磁場を 発生する高周波磁場発生手段と、核磁気共鳴信号を検出する信号受信手段と、検 出した核磁気共鳴信号を用いて画像を再構成する信号処理手段とを有する。
[0020] そして、上記磁気共鳴イメージング装置にお!ヽて、静磁場発生手段と傾斜磁場発 生手段との間に配置され、複数の静磁場不均一性補正部材を有すると共に、複数の 孔が形成された静磁場不均一補正手段と、この静磁場不均一補正手段に形成され た複数の孔内に配置され、傾斜磁場発生手段に発生した振動の静磁場発生手段へ の伝達を抑制する複数の防振部材とを備える。
[0021] (2)また、本発明の磁気共鳴イメージング装置は、撮影空間に静磁場を発生する静 磁場発生手段と、撮影空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、高周波磁 場を発生する高周波磁場発生手段と、核磁気共鳴信号を検出する信号受信手段と 、検出した核磁気共鳴信号を用いて画像を再構成するとともに、複数のパルスシー ケンスに従って傾斜磁場及び高周波磁場を発生させる制御手段とを有する。
[0022] そして、上記磁気共鳴イメージング装置において、傾斜磁場発生手段の振動により 発生する振動の周波数特性又は振動伝達特性を変更する振動抑制手段を備える。 発明の効果
[0023] (1)静磁場不均一性の補正手段及び振動抑制手段の 2つの手段の配置領域を確
保でき、傾斜磁場発生手段の振動による騒音を低減し、かつ、画質劣化を低減する ことができる。
[0024] (2)多様なシーケンスに応じて、傾斜磁場コイルの振動による騒音の発生を抑制す ることができるとともに、画質の向上を図ることができる。
図面の簡単な説明
[0025] [図 1]本発明が適用される MRI装置の概略構成図である。
[図 2]本発明が適用される MRI装置の概略斜視図である。
[図 3]本発明の第 1の実施形態である MRI装置の概略断面図である。
[図 4]本発明の第 2の実施形態に係る MRI装置におけるシムトレイと防振ダンパーの みを静磁場の方向力 見た平面図である。
[図 5]所定の均一度で静磁場を調整しょうとした場合の、シム間の距離とシムトレイ中 心からの距離との関係を示す図である。
[図 6]本発明の第 3の実施形態に係る MRI装置におけるシムトレイと防振ダンパーの みを静磁場の方向力 見た図である。
[図 7]本発明の第 4の実施形態を示し、防振ダンパーの支持手段についての形態を 示す図である。
[図 8]本発明の第 5の実施形態に係る MRI装置におけるシムトレイと防振ダンパーの みを静磁場の方向力 見た図である。
[図 9]図 8の B— B線に沿った断面図である。
[図 10]本発明の第 6の実施形態におけるガントリの断面図である。
[図 11]傾斜磁場コイルの振動の伝達経路の説明図である。
[図 12]傾斜磁場コイルの振動及びその伝達の周波数特性に関する概念的な説明図 である。
[図 13]傾斜磁場コイルの固定状態の詳細説明図である。
[図 14]本発明の第 6の実施形態における制御系のブロック図である。
[図 15]本発明の第 6の実施形態に係る MRI装置を用いて撮影を行なう際の動作フロ 一チャートである。
[図 16]本発明の第 7の実施形態におけるガントリの断面図である。
[図 17]ァクチユエータとして油圧素子を使用した場合の駆動システムの概略構成図 である。
[図 18]ァクチユエータとして圧電素子を用いる場合の説明図である。
[図 19]ァクチユエータとして圧電素子を用いる場合の説明図である。
符号の説明
[0026] 1···中央処理装置、 2· · 'シーケンサ、 3·· '送信系、 4·· '静磁場発生用磁石、 5· • '受信系、 7· · '被検体、 8· ··高周波発振器、 9·· '変調器、 10· ··高周波増幅器、 11· · ·照射コイル、 12· · ·傾斜磁場電源、 13·· ·傾斜磁場コイル、 14· · ·受信コイル , 15·· '増幅器、 16· ··直交位ネ目検波器、 17· · 'ADC、 18·· 'ディスプレイ、 19· · · 光ディスク、 20· · '磁気ディスク、 22·· 'シムトレイ、 23· ··防振ダンパー、 24· · 'ネジ 穴、 31···ガントリ、 32· "テーブル、 33···処理装置、 34· "モニタ、 40'.'RFコィ ル固定具、 41·· '傾斜磁場コイル固定具、 42· · 'ァクチユエータ
発明を実施するための最良の形態
[0027] 以下、一般的な MRI装置のシステム構成を図 1により詳細に説明する。
[0028] 図 1において、 MRI装置は大別して、中央処理装置(以下、 CPUと略称する) 1と、 シーケンサ 2と、送信系 3と、静磁場発生用磁石 4と、受信系 5と、傾斜磁場発生系 21 と、信号処理系 6とから構成されている。
[0029] CPU1は、予め定められたプログラムに従って、シーケンサ 2、送信系 3、受信系 5、 信号処理系 6を制御する。シーケンサ 2は、 CPU1からの制御指令に基づいて動作し
、被検体 7の断層面の画像データ収集に必要な種々の命令を送信系 3、傾斜磁場発 生系 21、受信系 5に送る。
[0030] また、送信系 3は、高周波発振器 8と、変調器 9と、照射コイル 11とを備え、シーケン サ 2の指令により高周波発振器 8からの基準高周波パルスを変調器 9で振幅変調し、 この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器 10を介して増幅して照射コイル 1
1に供給することにより、所定のパルス状の電磁波を被検体に照射する。
[0031] 静磁場発生用磁石 4は、被検体 7の周りの所定の方向に均一な静磁場を発生させ るためのものである。この静磁場発生用磁石 4には、照射コイル 11と、傾斜磁場コィ ル 13と、受信コイル 14とが配置されている。
[0032] 傾斜磁場コイル 13は、傾斜磁場発生系 21に含まれ、傾斜磁場電源 12より電流の 供給を受け、シーケンサ 2の制御により傾斜磁場を発生する。
[0033] また、受信系 5は、被検体 7の生体組織の原子核の核磁気共鳴により放出される高 周波信号 (NMR信号)を検出するもので、受信コイル 14と、増幅器 15と、直交位相検 波器 16と、 AZD変翻17とを有している。そして、上記照射コイル 14から照射され た電磁波による被検体 7からの応答高周波信号 (NMR信号)は被検体 7に近接して 配置された受信コイル 14で検出され、増幅器 15及び直交位相検波器 16を介して A ZD変翻 17に入力される。そして、 AZD変翻 17において、ディジタル量に変 換され、その信号が CPU1に送られる。
[0034] また、信号処理系 6は、磁気ディスク 20、光ディスク 19などの外部記憶装置と、 CR T等力 なるディスプレイ 18とを備える。そして、受信系 5からのデータが CPU1に入 力されると、 CPU 1が信号処理、画像再構成などの処理を実行し、被検体 7の所望の 断層面の画像をディスプレイ 18で表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク 20 などに記憶させる。
[0035] 図 2は、本発明が適用されるオープン MRI装置の概略斜視図である。ここで、ォー プン型 MRI装置とは、撮像空間を挟んで上下、又は(図 2では図示せず)左右等に 対向して配置された静磁場発生用磁石の前記対向面に垂直に静磁場を配置させて 、前記撮像空間に配置された被検体の MRI画像を得る MRI装置のことである。
[0036] 図 2にお ヽて、 MRI装置は、静磁場を発生する静磁場発生用磁石や NMR信号を 受信するための受信コイル等を有し、被検体をその中に収容するガントリ 31と、被検 体を載せるためのテーブル 32と、ガントリ 31内の受信コイルにより得られた NMR信 号に基づいて、画像再構成演算を行って、 MRI画像を生成する処理装置 33と、処 理装置 33の上に載せられ、この処理装置 33によって生成された MRI画像を表示す るモニタ 34等を備えている。
[0037] ただし、図 2において、ガントリ 31と処理装置 33とを結び、受信コイルにより得られ た NMR信号を処理装置 33へ送るケーブルは省略されている。
[0038] 次に、図 3を参照して、ガントリ 31について説明する。
[0039] 図 3は、図 2に示した様に、上下に対向配置した静磁場発生源により中央部に静磁
場を発生する開放型超電導磁石 4を用いた場合の例であり、 35は均一磁場空間、 3 6a及び 36bは超電導コイルを収容する上部クライオスタツト及び下部クライオスタツト 、 13は均一磁場空間 35に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル、 39は上部クライ ォスタツト 36aと下部クライオスタツト 36bを接続する連結管、 40は RFコイル 11を上部 クライオスタツト 36a及び下部クライオスタツト 36bへ固定するための RFコイル固定具 、 43はカバーである。
[0040] そして、 22は多数の強磁性体シム (鉄シム)を、多数の穴 (ネジ穴)内に配置するた めのシムトレイであり静磁場発生磁石 4と傾斜磁場コイル 13との間に配置される。 23 はシムトレイ 22に形成された孔の内部に配置され、傾斜磁場コイル 13の振動が静磁 場発生用磁石へ固体伝播して静磁場発生用磁石等が揺れて発生する騒音を低減 するためのゴムや榭脂等力も成る防振ダンパーである。
[0041] ここで、防振ダンパー 23の性能を表す振動伝達率は、防振ダンパー 23のバネ定 数と支持体荷重によって決まる系の固有振動数の値によって、一般に次式(1)に従 い定まる。
[0042] [数 1]
[0043] ただし、式(1)において、 Trは振動伝達率、 fnは系の固有振動周波数、 fは振動周 波数、 Kはパネ定数、 mは支持体荷重である。
[0044] 上記(1)式によれば、例えば、防振ダンパー 23のパネ定数を最適化し、系の固有 振動数を 120Hz程度にすれば、 400Hz以上の振動周波数成分を 1Z10以下の振 動伝達率で防振できることがわ力る。
[0045] これは、逆に、防振したい振動の最低周波数を設定すれば、パネ定数の上限値が 決まると 、うことと等価である。
[0046] ここで、騒音という観点から見ると、等ラウドネス曲線力 得られる人間の耳の感度 は 3kHz〜5kHzの音に対して最も感度が高ぐそれ以上やそれ以下では徐々〖こ感 度が悪くなつていく。
[0047] したがって、防振したい振動の最低周波数の設定を 3kHzとして、周波数が 3kHz の時に振動伝達率が十分小さくなるような (例えば、 1Z10以下となるような)バネ定 数 Kを求めて、その値をパネ定数の上限値とすれば、十分耳の感度が高い 3kHz〜 5kHz程度の音の騒音を低減することが可能となる。
[0048] このような方法によって、パネ定数の上限値を求めることができる。ただし、基本的 には、防振周波数は低く設定し、パネ定数はできるだけ小さいほうが防振性能は高 い。
[0049] 一方、パネ定数を小さく設定しすぎると、傾斜磁場コイル 13自体の振動の振幅が大 きくなつてしまい、傾斜磁場コイル 13が被検体に位置情報を与えるための傾斜磁場 が歪んでしまう。
[0050] この傾斜磁場の歪みは MRI装置の撮影画像の画質を劣化させるため、傾斜磁場 コイル 13自体の振動は小さく抑えなくてはならない。特に、傾斜磁場コイル 13に働く 電磁力の周波数特性は、撮影シーケンスによって多様に変化するため、防振ダンバ 一 23が持つ共振点 (振動伝達率が最大となる周波数(固有振動周波数) )での振動 振幅が、どの程度になる力も考慮しておかなければならない。
[0051] ここで、共振点での振動の振幅は一般に次式(2)に従 、定まる。
[0052] [数 2]
F : QKX (2)
[0053] ただし、上記式(2)にお 、て、 Fは傾斜磁場コイルに負荷される電磁力、 Qは共振 点における振動振幅の、負荷電磁力が静的である場合の変位に対する比である共 振倍率、 Kはパネ定数、 Xは振動振幅である。
[0054] 上記式(2)によれば、傾斜磁場コイル 13に許容できる振動の振幅を設定することに よってパネ定数の下限値を定めることができることがわかる。
[0055] ここで、傾斜磁場コイル 13の許容振動振幅は、どの方向に対しても同程度であり、 例えば、 ±0. 1mm程度であるので、この値を式(2)に代入してパネ定数の下限値を 求めることができる。
[0056] 本発明の第 1の実施形態における防振ダンパー 23ではパネ定数を、上記バネ定 数の上限値と下限値によって計算される値の間とする。これにより、防振ができ、騒音 が低減できるとともに、傾斜磁場コイル 13が振動することによって撮影画像の画質劣 化を低減可能な MRI装置を実現することができる。
[0057] つまり、本発明の第 1の実施形態においては、静磁場の均一性を向上するための シムトレイ 22に、多数の孔を形成し、これら多数の孔に適切なパネ定数の防振ダンバ 一 23を配置し、傾斜磁場コイル 13と静磁場発生用磁石の上部及び下部クライオスタ ット 36a、 36bとの間に配置したので、静磁場不均一性の補正手段及び振動抑制手 段の 2つの手段の配置領域を確保でき、傾斜磁場コイル 13の振動による騒音を低減 し、かつ、画質劣化を低減することができる。
[0058] 図 4は、本発明の第 2の実施形態に係る MRI装置におけるシムトレイ 22と防振ダン パー 23のみを静磁場の方向から見た平面図である。ただし、この第 2の実施形態も、 第 1の実施形態と同様に、静磁場の方向が被検体の体軸の方向と垂直な垂直磁場 方式 MRI装置の例であるため、 MRI装置の全体構成等は、第 1の実施形態と共通 するため、その図示は省略する。
[0059] 図 4において、 23a及び 23bは、それぞれシムトレイ 22の中央に対して内側及び外 側に形成された孔に挿入された防振ダンパー、 24はシムトレイ 22に形成された複数 のネジ穴に取り付けられた強磁性体シム (鉄シム)を配置するための穴である。これら シム穴 24は、シムトレイ 22の中心から半径方向にはある特定の間隔で並び、かつ、 角度方向にも一定の間隔で並んでいる。したがって、磁場調整時、強磁性体を取り 付ける位置計算が比較的簡易に行える。
[0060] ここで、図 5は、所定の均一度で静磁場を調整しょうとした場合、強磁性体シム (鉄 シム)をどの程度の密度でシム間隔を設定しなければならな 、かを示した図である。
図 5の横軸はシムトレイ 22上での中心からの距離、縦軸は強磁性体シム(鉄シム)の 配置間隔(単位面積当たりのシム配置可能量の逆数)を示したものである。
[0061] シムトレイ 22上で中央の方が磁場分布に与える影響は大きいため、強磁性体シム( 鉄シム)を細力べ配置しなければならない。すなわち、強磁性体シム (鉄シム)穴 24同 士の間隔を中央の方が小さくとらなければならない。
[0062] そのため、図 4に示したシム穴 24の配置では、シムトレイ 22の外周より中央の方が シム穴 24とシム穴 24との間隔を小さくとっている。シムトレイ 22の外周の方は中央よ りシム穴 24間の間隔を広くとっている。
[0063] そして、シムトレイ 22に形成された孔に揷入される防振ダンパー 23は、上記シム穴 24の間隔が内側と外側で違うのに合わせて、内側 4個のダンパー 23a (第 1の防振 部材)と外側 4個のダンパー 23b (第 2の防振部材)との 2種類とから成る。内側のダン パー 23aは円周方向の長さが、半径方向の長さに対して小さぐ強磁性体シム (鉄シ ム)を配置するためのスペースをなるベく多くとれるようになつている。外側 4個のダン パー 23bは、シム穴 24同士の間隔を内側より広くすることができるため、比較的、 自 由な配置が可能である。図 4の場合には、円周方向の幅が、半径方向の長さより大き くなつている。
[0064] また、図 4に示す防振ダンパー 23aの配置はシムトレイ 22の中心点を中心に回転 対称として、ある所定の角度 (ここでは 90度)ずつ配置された複数個(ここでは 4個)の パネ定数を互いに同じとしている。また、ある所定の角度 (ここでは 90度)ずつ配置さ れた複数個(ここでは 4個)の外側の防振ダンパー 23bのパネ定数を互いに同じとす る。望ましくは内側と外側のすべての防振ダンパー 23a、 23bのパネ定数を同じとす る。
[0065] これにより、傾斜磁場コイル 13の自重を各位置で均等に受けることができるため、 全ての防振ダンパー 23の防振性能を等しくすることができる。
[0066] 以上のように、本発明の第 2の実施形態によれば、第 1の実施形態と同様な効果を 得ることができる。さらに、この第 2の実施形態によれば、所定の均一度で静磁場を調 整するに必要なシムの配置密度に応じて、シムを配置すると共に、シムとシムとの間 隔に応じて、防振ダンパーを配置するように構成したので、静磁場均一化手段と防
振ィ匕手段との協調を図ることができる。
[0067] 図 6は、本発明の第 3の実施形態に係る MRI装置のシムトレイ 22と防振ダンパー 2 3のみを静磁場の方向から見た図である。この第 3の実施形態では、第 2の実施形態 と比較して、内側の防振ダンパー 23aをシムトレイ 22の中心点に向力 に従って、円 周方向の長さが小さくなる形状としている。
[0068] これにより、第 3の実施形態では、第 2の実施形態と同様な効果を得ることができる 他、シムトレイ 22の中央付近において、強磁性体シム (鉄シム)を配置するためのス ペースを更に多くとることができる。
[0069] 図 7は、本発明の第 4の実施形態を示す図であり、防振ダンパー 23a、 23bの支持 手段についての形態を示し、図 4に示した防振ダンパー 23aの A— A線に沿った断 面図に対応する図である。なお、防振ダンパー 23aのみならず、防振ダンパー 23bに 関しても同等な構造を有するものとする。
[0070] 図 7において、防振ダンパー 23aは、 2枚の金具 25a、 25bによってダンパー材 26 を挟み込んだ形状をしている。金具 25a、 25bとダンパー材 26は接着により固定され ている。そして、金具 25a、 25bを、それぞれ、クライオスタツト 36a、 36b、傾斜磁場コ ィル 13にボルト 27にて締結することで傾斜磁場コイル 13の防振支持ができる。
[0071] この防振ダンパー支持構造によれば、防振ダンパー 23aの高さは、シムトレイ 22の 高さよりも若干高くすることによって、高さ方向寸法を減少することができ、被検体を 配置するスペースを拡張することができる。
[0072] ところで、互いに同形状の防振ダンパー 23aのパネ定数は、圧縮方向のパネ定数 に対し、せん断方向のパネ定数は小さくなり、その比は例えば 10 : 1である。ここで、 傾斜磁場コイル 13に、作用する電磁力が垂直方向と水平方向とで同程度であった 場合、圧縮方向のパネ定数を最適化すると、せん断方向のパネ定数は小さすぎるこ とになり、傾斜磁場コイル 13の水平方向変位が大きくなつてしまう。
[0073] そこで、本発明の第 5の実施形態では、図 8に示すように、円周方向の長さを大きく 取れるシムトレイ 22の外周部に、傾斜磁場発生用コイル 13の水平方向の変位を抑 える目的の防振ダンパー 23cを別途取り付ける。
[0074] 図 8の B— B線に沿った断面図を図 9に示す。図 9において、金具 25aは、傾斜磁場
コイル 13の面方向と略平行であり、傾斜磁場コイル 13に取り付けられる面と、傾斜磁 場コイル 13の面方向と略垂直であり、ダンパー材 26を支持する面とを有する。また、 金具 25bは、下部クライオスタツト 36bの面方向に略平行であり、下部クライオスタツト 36b取り付けられる面と、下部クライオスタツト 36bの面方向と略垂直であり、ダンパー 材 26を支持する面とを有する。
[0075] 傾斜磁場コイル 13の面方向に平行な方向の力に対してはダンパー材 26が圧縮さ れる方向で受けるため、この防振ダンパー 23cを配置することにより、傾斜磁場コイル 13の水平方向変位を抑えることが可能である。
[0076] 図 10は、本発明の第 6の実施形態におけるガントリ 31の断面図を示す。ただし、図 3に示した例と同一の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
[0077] 図 10に示した例と図 3に示した例との相違点は、傾斜磁場コイル 13と上下部クライ ォスタツト 36a、 36bとの間に、シムトレイ、防振ダンパーは配置されておらず、これら に代えて、傾斜磁場コイル固定具 41と、ァクチユエータ 42が配置されている点である
[0078] ァクチユエータ 42は、傾斜磁場コイル 13への電流パルスの印加方法のモードに応 じて、固定部材の固有振動数を変更したり、その振動が、上部及び下部のクライオス タツト 36a及び 36b等へ伝わって共鳴して騒音となる際の伝達関数を変更する。
[0079] 図 10に示すような構造のガントリ 31において、傾斜磁場コイル 13の重量は、採用 する構造によって重 、場合から軽 、場合まで考えられる力 一般には 30〜400kg程 度と比較的重ぐその剛性も高くなるように設計されている。
[0080] また、 RFコイル 11は非磁性 '非導電性のベース材に電気素子を取付けて構成され る力 一般に 10〜50kg程度の重量である。更に、カバー 43は、数 mmの厚さの FR P (繊維強化プラスチック)等の非金属材料で形成されており、一般的に、 10〜50kg 程度と比較的軽量であり、かつ剛性も低くなつている。このように、各構成要素で、そ れぞれ、重量等が異なるため、振動特性も大きく異なっている。
[0081] 傾斜磁場コイル 13に電流パルスが印加されて振動が発生してから、ガントリ 31の均 一磁場空間 35に配置されている被検体やガントリ 31の近くに立っている術者にまで 、その振動が伝わり騒音として聞こえるまでには、複数の伝達経路がある。
[0082] それらの主な伝達経路を、図 11を参照して説明する。まず、パルス状の電流を傾 斜磁場コイル 13に印加することにより、ローレンツ力で傾斜磁場コイル 13が振動する (ブロック 51)。この振動の一部は、空気を媒介として、被検者ゃ術者へ騒音として伝 わる(ブロック 51→ブロック 52→ブロック 53)。また、傾斜磁場コイル 13における振動 の一部は、 RFコイル 11や磁石 (クライオスタット)、カバー等の固体を介して伝播する 伝達経路がある。例えば、 RFコイル 11への振動を介して空気に伝わり、空気振動を 通して被検者ゃ術者へ騒音として伝播する伝達経路がある(ブロック 51→ブロック 54 →ブロック 52→ブロック 53) o
[0083] また、 RFコイル 11への振動を介してカバー 43へ振動が伝わり、空気振動を通して 被検者ゃ術者へ騒音として伝播する伝達経路がある(ブロック 51→ブロック 54→ブ口 ック 55→ブロック 52→ブロック 53)。さら〖こ、傾斜磁場コイル 13から直接、磁石(クライ ォスタツト)へ振動が伝わり、磁石 (クライオスタツト)力もカバー 43へ振動が伝わり、更 に空気振動を通して被検者ゃ術者へ騒音として伝播する伝達経路がある(ブロック 5 1→ブロック 56→ブロック 55→ブロック 52→ブロック 53)。
[0084] また、傾斜磁場コイル 13から直接、磁石 (クライオスタツト)へ振動が伝わり、磁石 (ク ライォスタツト)から空気振動を通して被検者ゃ術者へ騒音として伝播する伝達経路 がある(ブロック 51→ブロック 56→ブロック 52→ブロック 53)。
[0085] 一方、傾斜磁場コイル 13に印加される電流の波形は、使用する撮影シーケンスや 撮影パラメータによって、いろいろなものが印加される。従って、撮影方法に応じて、 傾斜磁場コイル 13に発生する振動それ自体は、多種多様な周波数成分を持つこと になる。
[0086] 次に、傾斜磁場コイル 13の振動及びその伝達の周波数特性に関する概念的な説 明を行う。
[0087] まず、図 12 (a)は、ある撮影シーケンスを用いた場合に、傾斜磁場コイル 13に印加 する電流パターンの周波数特性 (あるいは、傾斜磁場コイル 13に印加する電流バタ ーンに起因して発生する傾斜磁場コイル 13の振動それ自体の周波数特性)を示した ものである。
[0088] 次に、図 12 (b)の(I)は、傾斜磁場コイル 13に発生する振動が、上記図 11で示し
た経路を介して被検者ゃ術者へ伝播して騒音として聞こえるまでの伝達割合を、伝 達関数として表したものである。
[0089] そして、図 12 (c)の (I)は、被検者ゃ術者に実際に聞こえる騒音の周波数特性を示 したものである。図 12 (c)の(I)の周波数特性は、図 12 (a)に図 12 (b)の (I)を掛け合 わせた結果となる。この例の場合、図 12 (b)の(I)の周波数特性のうちピークとなる部 分の周波数は、図 12 (a)の周波数特性のピークとなる部分の周波数と合致、もしくは 非常に接近している。
[0090] この結果として、掛け合わされた図 12 (c)の(I)の周波数特性におけるピークが大き くなり、被検者ゃ術者に実際に聞こえる騒音が大きくなつている。
[0091] し力しながら、この第 6の実施形態では、後述する方法と手段により、図 12 (b)の (I) における伝達関数を、図 12 (b)の(II)に示すように変更して、図 12 (a)のピークと図 1 2 (b)の(II)のピークとが互いに一致しないようにする。その結果、被検者ゃ術者に実 際に聞こえる騒音の周波数特性は図 12 (c)の(II)に示すようになり、ピークの大きさ を小さくできる。
[0092] すなわち、被検者ゃ術者に実際に聞こえる騒音を小さく抑えることが可能となる。な お、図 12に示した例では周波数のピークが 1つしかない場合が示されている力 周 波数のピークが二つ以上存在する場合が一般的であり、その場合には騒音に最も影 響を与えるピークが優先的に低減されるように適宜、伝達関数を最適化すれば良い
[0093] 次に、第 6の実施形態において、どのようにして、傾斜磁場コイル 13に発生した振 動が、被検者ゃ術者へ伝播して騒音として聞こえるまでの振動の伝達割合 (伝達関 数)を変更するかを説明する。このため、傾斜磁場コイル 13の固定状況の詳細な説 明を、図 13を参照して説明する。
[0094] 図 13において、 42aはァクチユエータ 42を下部クライオスタツト 36bへ固定するため のベースである。図 13においては、傾斜磁場コイル固定具 41は 2個しか示していな いが、実際には傾斜磁場コイル 13を十分に支持できるだけの個数が必要であり、図 13では省略されている。
[0095] 図 13において、ベース 42aの上側にはァクチユエータ 42が配置されている力 そ
の傾斜磁場コイル 13側の先端は、通常状態では傾斜磁場コイル 13と接触していな い。この場合、傾斜磁場コイル 13に発生する固有振動モード、あるいは図 12 (b)に 示した伝達関数は、傾斜磁場コイル固定具 41の配置によって決定されている。
[0096] 一方、ァクチユエータ 42を作動させて、傾斜磁場コイル 13とァクチユエータ 42の傾 斜磁場コイル 13側を密に接触させると、傾斜磁場コイル 13の固定条件が変化する。 その結果、固有振動モードが変化することにより、伝達関数も変化する。
[0097] 予め、接触態様と伝達関数の相関を算出しておくことにより、伝達関数のピークとな る周波数 (ピーク周波数)と傾斜磁場コイル 13に印加する電流パターンの周波数特 性 (予め求めておく)におけるピークの周波数とがずれるように設定することが可能で ある。
[0098] その結果、発生する騒音を減らすことができ、被検者ゃ術者が感じる不快感を取り 除くことができる。一般的に、傾斜磁場コイル 13とァクチユエータ 42とが接触する箇 所の個数が増えると、ピーク周波数が高周波数側にシフトする。例えば、ァクチユエ ータ 42を傾斜磁場コイル 13に接触させることにより伝達関数は、図 12 (b)の(II)のよ うになり、被検者ゃ術者に実際に聞こえる騒音の周波数特性は図 12 (c)の (II)に示 すようになる。
[0099] この結果、発生する騒音を減らすことができ、被検者ゃ術者が感じる不快感を取り 除くことができる。
[0100] 次に、図 14を参照してァクチユエータ 42の動作制御について説明する。図 14は、 本発明の第 6の実施形態における制御系のブロック図である。
[0101] 図 14において、システム全体を制御する CPU1から、傾斜磁場コイル 13に印加す る電流を制御するシーケンサ 2に撮影のシーケンスやパラメータなどの指令が出され る。一方、この指令に示された条件に基づいて、どのァクチユエータを傾斜磁場コィ ル 13に接触させたら良いかを決定し、ァクチユエータ 42を駆動する駆動源 63に制 御信号を供給し、適切なァクチユエータ 42を傾斜磁場コイル 13に接触させる。
[0102] 本発明の第 6の実施形態は、特開平 8— 154518号公報に記載されている技術の ように、振動を直接キャンセルするものではないので、撮影中に高速度にァクチユエ ータ 42を制御するのではなぐ静的に制御する。したがって、駆動回路系などにも高
速なものが要求されないので、簡素なものとすることができる。
[0103] 次に、図 15に示したフローチャートを参照して、第 6の実施形態に係る MRI装置を 用いて撮影を行なう際の手順を説明する。
[0104] 先ず、ステップ 71において、操作者がディスプレイ 18等を介して、これから撮影を 行なうシーケンスやパラメータなどの情報を入力する。次に、ステップ 72において、ス テツプ 71で入力されたシーケンスやパラメータにお ヽて撮影を行なった際に、傾斜 磁場コイル 13へ印加される電流パターンの周波数特性を計算する。
[0105] 次に、ステップ 73において、ステップ 72で計算した周波数特性で印加される電流 ノターンによって発生する振動が、大きな騒音として被検者ゃ術者に聞こえな 、よう にするために、どのァクチユエータを駆動して伝達関数を調飾するかを決める。
[0106] 次に、ステップ 73で決めたようにァクチユエータ 42を駆動させながら、撮影を行う。
[0107] 以上のように、本発明の第 6の実施形態によれば、傾斜磁場コイル 13と上下部クラ ィォスタツト 36a、 36bとの間の伝達関数を、撮影シーケンスに応じて、傾斜磁場コィ ルの振動を抑制するに最も適切な値となるように、ァクチユエータ 42を駆動するように 構成したので、多様なシーケンスに応じて、傾斜磁場コイルの振動による騒音の発生 を抑制することができるともに、画質の向上を図ることができる。
[0108] 図 16は、本発明の第 7の実施形態におけるガントリ 31の断面図を示す。ただし、図 10に示した例と同一の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
[0109] 図 16に示した例においては、図 10に示した例のように、傾斜磁場コイル 13と上下 部クライオスタツト 36a、 36bとの間のみならず、上下部クライオスタツト 36a、 36bと力 バー 43との間にも、複数のァクチユエータ 42を配置している。
[0110] この図 16に示した例は、上下部クライオスタツト 36a、 36bとカノく一 43との間の伝達 関数を、撮影シーケンスに応じて変化させ、傾斜磁場コイル力 上下部クライオスタツ ト 36a、 36bを介してカバー 43に伝達される振動を抑制し、さらに、騒音を低下する 例である。
[0111] 本発明の第 8の実施形態としては、本発明の第 1〜第 5の実施形態における防振ダ ンノ 一 23 (23a、 23b)をァクチユエータ 42とし、ァクチユエータ 42の弾性率を変化さ せることにより、多様なシーケンスに応じて最も振動抑制可能な弾性率となるように、
制御させる例がある。
[0112] なお、本発明の第 6、 7の実施形態においては、傾斜磁場コイル 13をクライオスタッ ト 36a、 36bに固定する部分やカバー 43にァクチユータを設けて伝達関数を変更す る場合について例を示した。しかし、これ以外のガントリ 31の構成要素、例えば、図 1 1に示した振動の伝達経路である RFコイル 11等もそれぞれ各固有の周波数特性で 振動している。
[0113] したがって、それらの構成要素に接触可能なようにァクチユエータ 42を配置し、制 御することで、それぞれの振動の周波数特性や伝達関数を変更して、被検者ゃ術者 へ伝わる騒音を低減するようにしても良 、。
[0114] 傾斜磁場コイル 13に比べて、 RFコイル 11やカバー 43は剛性や重量が小さいので
、傾斜磁場コイル 13に比べて、それぞれの振動の周波数特性を変更することは容易 である。
[0115] 実際の制御においては、印加電流の周波数特性と、システムを構成する各部品の 固有振動モードとから予想される騒音レベル力 、さくなるように、各部品の振動モー ドを制御すればよい。例えば、傾斜磁場コイル 13の振動によって直接、生じる騒音は 、 RFコイル 11やカバー 43等で、ある程度まで遮音される。
[0116] 一般には、高周波数側ほど、遮音の効果は大きくなるので、傾斜磁場コイル 13の 振動強度が同一の場合、より低周波数側の振動ピークを抑制しておく方が騒音ピー クを小さくすることができる。
[0117] また、騒音に対する人間の感受性は周波数に依存する。したがって、その感受性も 含め上記伝達関数の変更を行なえば良い。また、発生する騒音は場所によっても異 なるので、騒音抑制の対象となる位置についても、考慮を入れて設計することができ る。例えば、被検体の撮影部位に応じて被検体の耳の位置する場所も異なるので、 撮影部位に応じて、どのァクチチュエータを各構成要素へ接触させるかを選択するよ うにすれば良い。その際、術者の静音化レベルも考慮に入れることも可能である。
[0118] また、本発明の第 6、 7、 8の実施形態に用いるァクチユエータは、撮影のために使 用するシーケンスに応じて切り替るものであり、特開平 8— 154918号公報に記載さ れている場合のように騒音を直接キャンセルするものではない。したがって、高速に
伸び縮みを切り替えることができない素子でも使用することができる。例えば、形状記 憶合金や油圧素子、空圧素子等が利用できる。
[0119] また、ゴムダンパー等を傾斜磁場コイル 13に接触するように配置しておき、この温 度を変化させることで、そのゴムダンパーの硬度を変化させて傾斜磁場コイル 13の 振動する周波数特性を変更することでも本発明の効果は得られる。温度変化させる 方法としては、ヒータを利用する方法や、ゴムに巻きつけたパイプ内部の流体温度を 変化させる方法、ペルチエ素子等を用いる方法が考えられる。
[0120] ゴムダンパーを用いれば、振動の緩衡効果も得られるので、傾斜磁場コイル 13から 磁石 (クライオスタツト)への振動伝達を抑制する効果も得られる。また、ァクチユエ一 タとしては、圧電素子の利用も可能である。
[0121] 図 17は、ァクチユエータ 42として、油圧素子を使用した場合のァクチユエータ 42の 駆動システムの概略構成図である。図 17において、 CPU1は、実行されるシーケン スに応じた寸法となるように、電源 80に指令を出力し、この電源 80から供給される電 力に応じて、ポンプ 81がァクチユエータ 42である油圧素子のシリンダーを駆動する。 ただし、これら油圧素子 42、ポンプ 81は、磁場均一度への影響を考慮して非磁性材 料で構成される。
[0122] 図 18は、ァクチユエータ 42として、圧電素子を用いる場合の説明図である。圧電素 子は、圧電体を 2枚の電極で挟んだ素子を基本として各種の構造を有し、モノモルフ 型や積層型等がある。
[0123] 本発明に適用する場合は、比較的大きな変位を得るために、積層型を用いることが 望ましい。この積層型の圧電素子は、図 18に示すように、外部電極 83と内部電極 84 とを備え、圧電体の薄板を数 10〜: LOO枚積層したものである。圧電体の一枚一枚は 、厚み方向の分極が逆になるように、交互に積層されている。電極に電圧を印加する ことで積層方向に変位する。
[0124] なお、圧電素子は一般に、印加電圧に対して、図 19に示すように、変位量がヒステ リシス特性を有するので、これを考慮した制御が必要である。
[0125] 更に、以上の説明では、振動モード或いは伝達関数を変更するために、ァクチユエ ータを各部品に押し当てる手段を説明した。しかし、これ以外にも、部材を引っ張る、
挟み込むなどの機構を利用することも可能である。
[0126] また、第 6〜8の実施形態では、傾斜磁場コイル 13をクライオスタツト 36a、 36bに設 置する MRI装置につ!ヽて示した。
[0127] しかし、クライオスタツトではなぐ床に固定されたサポート台に傾斜磁場コイル 13を 設置した MRI装置にも本発明は適用可能である。そのような場合には、ァクチユエ一 タゃベースはサポート台と傾斜磁場コイルとの間に設けてもよい。そのようなサポート 台を用いた MRI装置は、傾斜磁場コイル 13からクライオスタツト 36a、 36bへの振動 伝達を低減できるので、騒音抑制効果がある。
[0128] さらに、本発明は、公知の静音化技術 (例えば、シーケンスによる静音化、真空遮 蔽技術等)と併用することができ、より一層の静音化が可能となる。
[0129] また、被検者ゃ術者に聞こえる騒音を低減するためにァクチユエータを駆動する場 合について例を示した力 使用するシーケンスによっては、どのァクチユエ一タも駆 動せず、どのァクチユエータも傾斜磁場コイル等に密着させない方が騒音が小さくな る場合ちある。
産業上の利用可能性
[0130] 本発明は上記実施例に限定されるものではなぐ本発明の要旨を逸脱しない範囲 で種々に変形して実施できる。例えば、本発明は、水平磁場方式のトンネル型 MRI 装置、即ち、概ね円筒形状のガントリ内に前記円筒の中心軸に沿って静磁場を発生 させて、ガントリ内の撮像空間に配置された被検体の MRI画像を得る MRI装置へも 適用可能である。