JP4360662B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に係り、特に大きな開口を備え、アクティブシールド方式の傾斜磁場コイルを有するMRI装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
MRI装置は、均一な静磁場内に置かれた被検体に電磁波を照射したときに被検体を構成する原子の原子核に生じる核磁気共鳴現象を利用し、被検体からの核磁気共鳴信号(以下、MR信号という)を検出し、このMR信号を使って画像再構成することにより、被検体の物理的性質をあらわす磁気共鳴画像(以下、MR画像という)を得るものであり、イメージングの位置情報を付与するために、静磁場に重畳して傾斜磁場が印加される。
【0003】
この傾斜磁場を互いに直交する3軸方向(x、y、z軸方向)についてそれぞれ発生させるために3つの傾斜磁場コイルが設けられる。これらの傾斜磁場コイルは通常FRP(繊維補強樹脂)などで作られた絶縁性の保持部材に一体化されて、静磁場発生装置の発生する静磁場内に配置される。また、これらの傾斜磁場コイルは、静磁場の方向によって形状が異なり、静磁場方向が被検体の体軸方向と平行な場合には円筒形の傾斜磁場コイルが、静磁場方向が被検体の体軸方向と直交する場合には平板状の傾斜磁場コイルが、一般的に採用されている。
【0004】
また、3つの傾斜磁場コイルはそれぞれ電源装置に接続され、MRI装置の検査条件に応じて、適当なタイミングでパルス状電流が印加される。静磁場内で傾斜磁場コイルにパルス電流を流すことによって、フレミングの左手の法則に従い、ローレンツ力(電磁力)が作用する。そして、この電磁力が傾斜磁場コイルを変形させようとして、振動、騒音が発生する。
【0005】
代表的なMRI装置の第1の従来例を図8、図9に示す。この例は水平磁場方式の超電導磁石を使用した装置で、図8はその超電導磁石の断面図、図9はこの装置に使用されている傾斜磁場コイルの外観図である。本例では、円筒形の超電導磁石1の内側に円筒形の傾斜磁場コイル4が配置されていて、傾斜磁場コイル4に近接した超電導磁石1の冷却容器2などの導電体に発生する渦電流を抑制するために、傾斜磁場コイル4は主コイル5とシールドコイル6を同軸に配置して構成するアクティブシールド方式となっている。
【0006】
主コイル5は主に均一磁場領域(測定空間となる)3に所定の傾斜磁場を発生させ、シールドコイル6は主コイル5と逆方向の磁場を発生することにより、傾斜磁場コイル4の外側に生じる磁場強度を低減させ、冷却容器2などの導電体に発生する渦電流を抑制する作用をする。このように、渦電流発生を抑制することによって、均一磁場領域3の磁場均一度を高めることができるため、高画質のMR画像を得ることができる。
【0007】
しかし、図8、図9に示した構成の場合、図8からわかるように撮影のために被検体の入る測定空間3が狭く、周囲がほぼ完全に囲まれているために、被検体は閉塞感を感じる。また、装置の外部から、術者が被検体にアクセスすることも困難であった。
【0008】
代表的なMRI装置の第2の従来例を図10、図11に示す。この例は永久磁石を対向して配置した垂直磁場方式のMRI装置で、図10は磁石全体の外観図、図11は装置の下側半分の傾斜磁場コイルの周辺部の外観図と断面図を示したものである。このMRI装置では、図10に示すように、測定空間3の四方が開放されているために、被検体にとって開放感が得られ、第1の従来例の問題点は解消されている。
【0009】
本例では、2組の静磁場発生源(永久磁石8を含む)7が上下方向に対向して配置されて、その間に均一磁場領域3が形成され、その均一磁場領域3を挟んで対向して傾斜磁場コイル4が配置される構成となっている。傾斜磁場コイル4は、ほぼ平坦で、磁気回路10を構成するポールピース(磁極)9の内側に収容されているのが一般的である。ここで、ポールピース9の素材として電気抵抗率の高い材料を採用することにより、傾斜磁場コイル4を駆動した時にも、傾斜磁場コイル4の周辺(ポールピース9)に渦電流を発生させない技術が確立されている。
【0010】
また、本例の傾斜磁場コイル4は非シールドタイプのものであるために、傾斜磁場コイル4の発生効率が良く、また電流密度が低いために、振動を励起する電磁力は小さく、傾斜磁場コイル4の振動に起因する画質低下、騒音増加は特に問題になっていない。
【0011】
しかし、永久磁石8を用いた静磁場発生源7の場合には、測定空間3において高い静磁場強度を得ることが難しく、0.3テラス程度が上限となる。MRI装置での画質は静磁場強度に依存するところが大きく、画質を向上するためにはできるだけ高い静磁場強度を得ることが望ましい。
【0012】
MRI装置の第3の従来例として特開平9-262223号公報に開示されている例を図12に示す。図12は磁石と傾斜磁場コイルとの組合せを示す断面図である。この例は、高い静磁場強度を得るために、静磁場発生源として超電導磁石1を使用した垂直磁場方式のMRI装置で、傾斜磁場コイル4に近接した導電体に発生する渦電流を抑制するためにアクティブシールド方式の傾斜磁場コイル4を採用している。
【0013】
本例では冷却容器2内に収納された静磁場発生源(超電導磁石1など)2組が上下方向に対向して配置され、両静磁場発生源の間に高い磁場強度の均一磁場領域3が形成される。均一磁場領域3を挟んで対向して配置されたほぼ平坦な傾斜磁場コイル4は主として均一磁場領域3に傾斜磁場を発生させるための主コイル5と、主コイル5が傾斜磁場コイル4の外側に発生する磁場をシールドするような磁場を発生させるシールドコイル6とから構成される。この装置では、四方が開放されていること、高磁場強度の均一磁場領域3が得られること、アクティブシールド方式の傾斜磁場コイル4を使用していることにより、高い開放感が得られるとともに高画質のMR画像を撮影することができる。
【0014】
しかし、上記傾斜磁場コイル4において、主コイル5及びシールドコイル6には稼動時に傾斜磁場を発生させるための電流が流れる。静磁場中で電流が流れるとローレンツ力(電磁力)が発生して、傾斜磁場コイル4が励振される。第2、第3の従来例の場合には、第1の従来例である水平磁場方式の場合の円筒形傾斜磁場コイルに比べて、コイル形状が平板状であるため、傾斜磁場コイルの面外方向の曲げ剛性が低く、面外方向への振動が発生しやすい。また、傾斜磁場コイルの振動により、MR信号の正確な位置情報を得ることができず、高画質のMR画像を得ることができなくなる。
【0015】
また、傾斜磁場コイルにパルス状の電流を連続して流すため、パルス的な電磁力が傾斜磁場コイルに作用し、この電磁力により傾斜磁場コイルが振動し、特に傾斜磁場コイルの面外方向の振動によって、連続的な打音が発生する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題点を考慮し、本発明では、平板状の傾斜磁場コイルについて構造的な改良を行うことにより、振動、騒音の小さい傾斜磁場コイルを具備するMRI装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のMRI装置は、対向配置され間に均一磁場領域を形成する静磁場発生源と、前記静磁場発生源の対向面側に均一磁場領域を挟んで対向配置されたほぼ平坦な傾斜磁場コイルを備え、前記傾斜磁場コイルは主として均一磁場領域に傾斜磁場を発生させるための主コイルと、前記主コイルの均一磁場領域と反対側に発生する磁場をシールドするための磁場を発生させ、前記主コイルと静磁場発生源との間に位置するシールドコイルとから構成される磁気共鳴イメージング装置において、前記傾斜磁場コイルは、主コイルとシールドコイルの間に配置された中間部材と、前記主コイルまたは前記シールドコイルから生じる振動を抑制するための振動減衰材を備えたものである。
【0018】
この構成では、傾斜磁場コイルの主コイルとシールドコイルの間に中間部材を備えたことにより、中間部材を加えた傾斜磁場コイル全体の剛性が主コイル、シールドコイル単体の剛性に比べて格段に向上したことにより、傾斜磁場コイルの振動が低減されるとともに、中間部材を振動減衰材を介して静磁場発生源に固定されたことにより、傾斜磁場コイルの振動がこの振動減衰材によって吸収、減衰されるため、振動は更に低減される。
【0019】
本発明のMRI装置では更に、前記振動減衰材が保持部材の中間部材の外周部に複数個取り付けられ、この振動減衰材を介して固定具にて静磁場発生源等の外周部に固定される。この構成では、振動減衰材をスペース的に余裕のある中間部材の外周部に取り付けているため、大きな振動減衰材の取り付けが可能であり、また取付け個数も多くすることができる。この結果、振動減衰材による傾斜磁場コイルの振動低減効果を大きくすることができ、傾斜磁場コイルの振動、騒音を大幅に低減することができる。
【0020】
本発明のMRI装置では更に、振動減衰材が静磁場発生源に直接に設置され、この振動減衰材に取付けられた複数個の固定具により、中間部材の外周部が固定、支持されるものである。この構成では、振動減衰材が静磁場発生源に設置されているので、大きな振動減衰材(また、場合によっては複数個に分割した振動減衰材)を設置することができ、さらにその振動減衰材にボルトなどの固定具が取り付けられているので、傾斜磁場コイルの静磁場発生源への取り付け、固定が非常に容易になる。また、静磁場発生源には大きな振動減衰材を設置することができるので、傾斜磁場コイルの振動、騒音の低減効果も大きなものとなる。
【0021】
本発明のMRI装置では更に、振動減衰材が静磁場発生源に直接取り付けられた複数個の座の表面に設置され、この振動減衰材に取り付けられた複数個の固定具と、中間部材に設けた座ぐり部とを位置合わせして、傾斜磁場コイルが固定具にて静磁場発生源に固定されるものである。この構成では、中間部材に座ぐりを設けることにより、傾斜磁場コイルを静磁場発生源に取り付ける高さを低くし、また、静磁場発生源に座を設けることにより、静磁場発生源の表面の剛性が低いときでも、この座によって剛性の補強を行うことができる。この構成の場合も、振動減衰材を大きくすることができるので、上記の場合と同様に傾斜磁場コイルの振動、騒音を低減することができる。
【0022】
本発明のMRI装置では更に、中間部材の外周部に加えて、中央部においても、振動減衰材を介して、固定具にて静磁場発生源に固定されている。この構成では、傾斜磁場コイルが外周部のみでなく、中央部においても、振動減衰材を介して静磁場発生源に固定されるので、傾斜磁場コイルの各部における振動特性に応じて、静磁場発生源への固定箇所及びその固定箇所に使用される振動減衰材の特性を選定して固定することができ、傾斜磁場コイルの振動、騒音を効率よく低減することができる。
【0023】
本発明のMRI装置は、2組の静磁場発生源が対向して配置されて、両静磁場発生源の間に均一磁場領域を形成し、2組のほぼ平坦な傾斜磁場コイルが両静磁場発生源の内側で、かつ均一磁場領域を挟んで対向して配置され、該傾斜磁場コイルは主として均一磁場領域に傾斜磁場を発生させるための主コイルと、該主コイルが傾斜磁場コイルの外側に発生する磁場をシールドするような磁場を発生させるシールドコイルとから構成されるMRI装置において、前記主コイルと、前記シールドコイルと、主コイルとシールドコイルの間に配置された中間部材とから構成されるコイル組立体を備え、該コイル組立体が全体としてほぼ平坦であり、主コイルと中間部材の間及び/又はシールドコイルと中間部材の間に振動減衰材が挿入、配置され、コイル組立体がその外周部において固定具にて静磁場発生源に固定されている。この構成では、主コイルと中間部材の間、シールドコイルと中間部材の間に、シート形状の振動減衰材を挟み込むことにより、剛性を高めるのが容易な中間部材によって高い曲げ剛性を得、振動減衰材によって主コイルとシールドコイルに加わる力による振動エネルギーを消費、吸収することで、コイル組立体の振動を低減するものである。
【0024】
本発明のMRI装置では更に、主コイル又はシールドコイルと中間部材の間に挿入される振動減衰材が、径方向に、複数個の振動減衰特性の異なる区画に分割されている。この構成では、主コイル又はシールドコイルと中間部材の間に挿入されたシート形状の振動減衰材が、径方向に2個以上の振動減衰特性の異なる区画に分割されているので、コイル組立体の振動減衰特性を径方向の場所によって変化させることができる。例えば、径の大きい区画の振動減衰材の剛性を低くすることで、径の大きい区画の傾斜磁場コイルに作用するローレンツ力が中間部材に伝播する割合を低減することができ、この結果、コイル組立体が全体で振動する量を低減できるので、傾斜磁場コイルの騒音を抑制することができる。
【0025】
本発明のMRI装置では更に、主コイルと中間部材の間及び/又はシールドコイルと中間部材の間に振動減衰材が挿入、配置されたコイル組立体を、振動減衰材を介して静磁場発生源に固定するものである。この構成では、コイル組立体の主コイル及び/又はシールドコイルと中間部材との間にシート形状の振動減衰材を挿入すると共に、コイル組立体自体を振動減衰材を介して静磁場発生源に固定しているので、傾斜磁場コイルの振動エネルギーは、コイル組立体の部分及びコイル組立体の固定部分の両部分において消費、吸収されるので、振動、騒音を抑制することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に沿って具体的に説明する。
図6に本発明のMRI装置の傾斜磁場コイルの構造及び配置例を示す。図6において、2組の静磁場発生源1が上下に対向して配置され、その間に均一磁場領域(測定空間)3が形成される。この均一磁場領域3を挟んで、静磁場発生源1の内側に、傾斜磁場を均一磁場領域3に発生させるほぼ平坦な傾斜磁場コイル4が対向して配置される。傾斜磁場コイル4は、主として傾斜磁場を発生させるための主コイル5と、主コイル5が傾斜磁場コイル4の外側に発生する磁場をシールドするような磁場を発生させるシールドコイル6とから構成されている。
【0027】
ここで、主コイル5及びシールドコイル6は、均一磁場領域3に傾斜磁場を発生するように構成された平板状体で、それぞれコイル導体とそれを保持する保持部材とから成る。コイル導体は銅線又は銅板などの良導体を渦巻状に巻いたものであり、全体としてほぼ平板状に形成されている。保持部材としては例えばFRPやガラエポなどの絶縁材料から成る板状体で、その一方の面又は両方の面にコイル導体を収納するための溝、すなわちコイル導体の渦巻形状に合わせた溝を設け、その溝にコイル導体を収納して保持する構成が可能である。あるいはコイル導体の間の隙間にエポキシ系の接着剤を流し込み固化させることにより構成することもできる。
【0028】
主コイル5、シールドコイル6及び静磁場発生源1は、装置中央の均一磁場領域3の中心面11に対してほぼ上下対称に配置されていて、中心面11に近い側から順に主コイル5、シールドコイル6、静磁場発生源1となっている。主コイル5が傾斜磁場コイル4の外側に発生する磁場をシールドコイル6で発生する磁場でシールドするために、主コイル5及びシールドコイル6は適切な間隔で配置される。また、傾斜磁場コイル4に近接する導電体に発生する渦電流を抑制するために、シールドコイル6は導電体(本実施例では、冷却容器2)と適切な間隔をとって配置される。静磁場発生源1に関しては、超電導磁石に限定されず、常伝導磁石、永久磁石を静磁場発生源として用いたMRI装置にも適用可能である。従って、上記導電体としては、超電導磁石の場合には超電導コイルを収納する冷却容器、常伝導磁石の場合には常伝導コイルを収納する容器、永久磁石の場合にはポールピース(磁極)などが該当する。
【0029】
図6において、傾斜磁場コイル4については、主コイル5とシールドコイル6の間に、ほぼ平板状の中間部材13が配置され、主コイル5と中間部材13とシールドコイル6とで傾斜磁場コイル組立体(以下、コイル組立体という)14が形成されている。コイル組立体14は中間部材13を芯にして、その両面に主コイル5とシールドコイル6が接合された構造をしている。本実施例のように、傾斜磁場コイル4をコイル組立体14とすることにより、主コイル5、シールドコイル6の各々が単独である場合に比べて、面外方向の曲げ剛性が大幅に向上する。これは、平板の曲げ剛性が板厚の約3乗に比例して高くなるためである。このようにコイル組立体14として実質的な板厚を増加させることにより、曲げ剛性を増加させることができる。この結果、コイル組立体14の面外方向の振動を抑制することができるので、傾斜磁場コイル4による騒音を低減することができる。
【0030】
また、コイル組立体14とすることにより、主コイル5、シールドコイル6の振動による音響放射面を大幅に減少することができるため、騒音を低減することができる。更に、主コイル5とシールドコイル6の間に中間部材13が挿入されたことにより、両コイルの間で気柱共鳴が起こることによる騒音の増大も回避される。
【0031】
図7に、コイル組立体14の他の実施例を示す。図7はMRI装置の下側半分を示したもので、図7(a)は断面図、図7(b)は上面図である。本実施例では、コイル組立体14を構成する中間部材13は複数個(ここでは9個)の梁状体20から成る。すなわち、図6の如き1個の板状体でなく、9個の長さの異なる梁状体20a〜20iがほぼ平坦に配列されて全体として平板状の組合せ剛体を形成するものである。図7(b)において、9個の梁状体20a〜20iは、断面が長方形の角材で、横方向に平行に配列され、両端部を固定具21にて、冷却容器2の外周部に固定されている。各々の梁状体20a〜20iの長さを異なるものとし、固定具21を冷却容器2の外周部に配置することにより、梁状体20a〜20iが全体として平板状の板状体としての中間部材13を形成している。
【0032】
梁状体20a〜20i(中間部材13)と主コイル5、シールドコイル6との間は、梁状体20a〜20iを芯にして両面に主コイル5とシールドコイル6が接着又はボルト固定などにより接合されてコイル組立体14が形成されている。コイル組立体14として組み立てられた状態で、コイル組立体14は各梁状体20a〜20iの両端部にて冷却容器2に固定具21にて固定されている。従って、中間部材13を構成する個々の梁状体20a〜20iはばらばらのものであるが、コイル組立体14に組み込まれた梁状体20a〜20iは、両コイル5、6の芯となり、傾斜磁場コイル4の曲げ剛性の向上に大きく寄与している。その結果、図7の実施例においても傾斜磁場コイル4の振動及び騒音の低減に効果を発揮することができる。
【0033】
また、コイル組立体14は中間部材13に対して主コイル5とシールドコイル6を固定する構造であるため、主コイル5とシールドコイル6を高い寸法精度をもって一定間隔で配置することができる。両コイル間の間隔がずれると、傾斜磁場コイルの外側での磁場の打ち消しが不十分となり、冷却容器2などの導電体での渦電流が増加するので、この部分の寸法精度が確保されることは重要である。
【0034】
主コイル5及びシールドコイル6の中間部材13への接合は、接着剤による接着、ボルトによる固定などの方法で行われている。本実施例では、主コイル5、シールドコイル6及び中間部材13は別個に形成された後に、コイル組立体14を構成するように組み立てられている。しかし、本発明の趣旨に沿えば、主コイル5とシールドコイル6との間に中間部材13を配置して、三者を実質的に堅固に接合する構成であれば、三者の剛性を向上することができ、振動、騒音の抑制という目的を達成することができる。このことから、例えば三者を一体モールドした構成なども、三者の接合例として上げることができる。
【0035】
図1には、本発明のMRI装置の第1の実施例を示す。図1は、本実施例の要部拡大断面図を示したもので、傾斜磁場コイルの取付け構造の詳細を示している。図1において、コイル組立体14は主コイル5と中間部材13とシールドコイル6とから成り、コイル組立体14は、中間部材13の外周部を介して冷却容器2に固定具21にて固定されている。この固定具21による中間部材13の固定においては、中間部材13を直接固定するのではなく、間に振動減衰材30を介して固定している。
【0036】
図1において、冷却容器2には固定具21を取付けるためのボルト穴26が設けてあり、このボルト穴26によって固定具21のボルト25がナット28、ワッシャー27などを用いて冷却容器2に取付けられる。コイル組立体14の中間部材13の外周部には振動減衰材30が取付けられており、その振動減衰材30に固定用の穴31が設けられている。この穴31に固定具21のボルト25を嵌合して中間部材13を冷却容器2に固定する。ここで、中間部材13の外周部への振動減衰材30の取り付けは、中間部材13の外周部に複数個の大き目の穴29を穿ち、その穴29に複数個の振動減衰材30を埋め込み、その振動減衰材30に小さ目の固定用の穴31を設けたものである。この中間部材13に取り付けた振動減衰材30に設けた固定用の穴31を介して、コイル組立体14を固定具21にて冷却容器2に固定する。中間部材13の固定具21のボルト25への固定は、ナット28とワッシャ−27を用いて行われる。
【0037】
振動減衰材30の材料としては、適度な弾性を持つゴムや高分子材料などが用いられる。この振動減衰材30に伝播した傾斜磁場コイルの振動エネルギーは、振動減衰材30の内部で熱エネルギーに変換されるため、傾斜磁場コイル4の振動を抑制する作用が得られる。また、コイル組立体14は振動減衰材30を介して冷却容器2に固定されているため、傾斜磁場コイル4の振動が冷却系に伝播することを抑制することができる。冷却系が振動すると、冷却容器2内部の静磁場発生源にまで振動が伝わり、均一磁場領域3内の静磁場が時間的に変動するおそれがある。また、冷却容器2内の液体ヘリウム槽が揺すられることにより、液体ヘリウムの蒸発量が増加するという問題が発生する可能性もある。
【0038】
図2には、本発明のMRI装置の第2の実施例を示す。本実施例では、振動減衰材は冷却容器2側に設置されている。図2において、振動減衰材36は冷却容器2に適当な深さで掘った溝34に埋め込まれている。振動減衰材36の冷却容器2への埋め込みについては一体埋め込みではなく、冷却容器2に溝34の代りに複数個の穴をあけて、その穴に複数個に分割した振動減衰材36を埋め込んでもよい。また、この振動減衰材36は冷却容器2の表面に接着して取付けてもよい。この振動減衰材36の中に固定具21のボルト25が融着又は接着などにより取付け固定される。このボルト25をコイル組立体14の中間部材13の外周部に設けられた取付用の穴32に嵌合させて、コイル組立体14は冷却容器2に固定される。
【0039】
本実施例の場合には、振動減衰材の取付け構造が簡略化されるという利点がある。すなわち、冷却容器2の外周部はスペースが広く、その外周部にボルト25を融着した振動減衰材36を埋め込んだり、接着することは極めて容易である。また、図7の実施例の如く、中間部材13を梁状体20で構成する場合には、梁状体20の端部に余り大きな振動減衰材30を取付けることは困難であり、このような場合には本実施例の如く、振動減衰材を冷却容器2側に取付けることにより、大型の振動減衰材36の使用が可能となる。大型の振動減衰材36を使用した場合には、ボルト25と振動減衰材36との接触部分を大きくすることができるので、振動減衰効果も大きくすることができる。
【0040】
以上述べた何れの実施例においても、導電体である冷却容器2に発生する渦電流を抑制するために、シールドコイル6と冷却容器2との間に適切な間隔を設ける必要があるが、本発明の第1、第2の実施例においては、コイル組立体14を冷却容器2に固定する際の取付け位置がボルト25に対するナット28の固定位置で調整できるため、上記のシールドコイル6と冷却容器2との間隔は自由に選択することができる。また、シールドコイル6と冷却容器2との間の空間には、均一磁場領域3の静磁場を調整するためのシム機構(例えば、鉄片、磁石片、常伝導コイルなど)を敷設することができる。ボルトでの固定部を除いて、配置上の制約がないため、シム機構を自由に敷設することができる。
【0041】
図3には、本発明のMRI装置の第3の実施例を示す。本実施例は第2の実施例の変形例で、冷却容器2の表面に剛性の高い座42を設け、この座42に振動減衰材44を固定して、この振動減衰材44を介してコイル組立体14を固定するものである。図3において、冷却容器2の外周部に剛体から成る座42が溶接又は接着などにより取付けられ、その座42に振動減衰材44が接着などにより固定される。この振動減衰材44の中に固定具21のボルト40が融着又は接着などにより取付け固定される。コイル組立体14の中間部材13の外周部には固定用の座ぐり38及び固定用の穴32が設けてあり、この穴32に固定具21のボルト40を嵌合させて、ナット28をボルト40に締結することにより、コイル組立体14は冷却容器2の座面42に直接固定される。
【0042】
本実施例では、コイル組立体14の中間部材13に座ぐり38を設け、上側からナット28を締付けるのみで、中間部材13を冷却容器2の座面42に直接固定する構造にしたことにより、ボルト40の実質長が短くなると共に、固定具21が中間部材13より上に飛出すことがなくなる。この結果、冷却容器2及び傾斜磁場コイル4の端部のスペースがガントリカバー等で取り付けるためのスペースとして利用することができ、ガントリカバーを含めた外形寸法の小型化を可能にし、装置の開放性の向上に寄与する。
【0043】
上記の第1〜第3の実施例においては、コイル組立体14の中で中間部材13の外径を主コイル5及びシールドコイル6より大きいものとして、中間部材13の外周部又は端部を冷却容器2に固定している。このような構成では、節直径振動モード(円板状の傾斜磁場コイルが直径を節として振動する場合)において、振幅の大きい円周部(すなわちコイル組立体14の外周部)を固定することで、効果的に振動を抑制することができる。
【0044】
一方、径方向の外周部でなく内部の点で、面外方向への振動の振幅が大きい箇所(振動の腹)を、質量の大きい静磁場発生源(上記例では冷却容器2)に直接固定することによっても、傾斜磁場コイル4の振動を効果的に抑制することができる。この場合は、中間部材13の外周部ではなく、コイル組立体14の中間部材13と主コイル5とシールドコイル6の三層が接合されている中央部を固定具21にて冷却容器2に固定することになる。またコイル組立体14の外周部と中央部を固定具21にて冷却容器2に固定しても、傾斜磁場コイル4の振動を抑制することができる。また、冷却容器2の壁厚が薄くて、傾斜磁場コイル4の振動の影響を受けやすいような場合には、上記とは逆に振動の振幅が小さい箇所(振動の節)で、コイル組立体14を冷却容器2に固定することで振動の抑制効果が得られる。
【0045】
また、図7に例示したように、中間部材13が軸対称でない配置の場合には、動作させる傾斜磁場コイルの種類(x軸、y軸、z軸のいずれかの方向の傾斜磁場コイル)により、発生する振動モードが異なる可能性がある。このような場合には、各固定箇所ごとに振動減衰材の弾性率を適切に選択することで、傾斜磁場コイルの種類に応じた振動の抑制を実現することができる。図7の例は、中間部材13を複数個の梁状体で構成したものであるが、本実施例はこれに限定されず、中間部材13が中実の平板の場合であっても、あるいは内部に冷却媒体を流すための流路を有する中空の平板状体の場合であっても適用できる。また、中間部材13については、必要があれば電気絶縁性を有する部材を用いることができる。このようにすることにより、主コイル5とシールドコイル6を電気的に絶縁することができる。
【0046】
また、第1〜第3の実施例において、主コイル5及びシールドコイル6のコイル形状は円板形状として説明したが、本発明の実施に際しては、これに限定されず、楕円形状のものや長方形状などのものも必要に応じて選択することができる。また、主コイル5、シールドコイル6、中間部材13の大きさ(面積、厚さなど)の関係も同様に、上記の実施例に限定されず他の関係にあってもよい。
【0047】
なお、上記の実施例では、静磁場発生源としては、冷却容器2を例示したが、これに限定されず、コイル組立体14を固定できる質量の大きな静磁場発生源であればよい。例えば、永久磁石方式の場合のポールピース(磁極)、常伝導磁石の場合のコイル容器、整磁板、磁気シールド、MRI装置の設置床面などが静磁場発生源として上げられる。
【0048】
図4には、本発明のMRI装置の第4の実施例を示す。本実施例は、コイル組立体14の主コイル5と中間部材13の間、及び中間部材13とシールドコイル6の間に振動減衰材を挟み込んだものである。図4において、中間部材13の上面及び下面に平板状の振動減衰材46、47が接着剤などにより強固に固着され更にその上面及び下面に主コイル5とシールドコイル6が接着剤などにより強固に固着されている。コイル組立体14全体は中間部材13の外周部を固定具21にて冷却容器2に固定されている。本実施例の場合には、第1〜第3の実施例の如く、コイル組立体14としての曲げ剛性を高めるのではなく、剛性を高めることの容易な中間部材13の部分で高い剛性を得て、主コイル5とシールドコイル6に加わるローレンツ力(電磁力)を振動減衰材46、47の部分で消費、吸収することにより、コイル組立体14の振動を低減するようにしている。
【0049】
本実施例では、振動減衰材46、47としては、薄いシート状で、非導電性のものが望ましい。ただし、小片に分割して貼り付けることが出来れば傾斜磁場コイル4からの磁場によって生じる渦電流の影響も小さくなるので、若干の導電性は許容される。また、均一磁場領域3の磁場均一度への影響を避けるために、振動減衰材46、47は非磁性であることが要求される。また、両振動減衰材46、47の特性は通常同一特性のものが用いられるが、場合によっては両者の特性を変化させてもよい。例えば、主コイル5とシールドコイル6の振動エネルギーが大幅に異なる場合などに有効である。
【0050】
図5には、本発明のMRI装置の第5の実施例を示す。本実施例は、第4の実施例において振動減衰材の特性が径方向で一様であったのに対し、径方向で特性値を変更したものである。図5において、主コイル5と中間部材13の間の振動減衰材は外周部に配置された第1振動減衰材48と中央部に配置された第2振動減衰材49から成り、シールドコイル6と中間部材13の間の振動減衰材は外周部に配置された第3振動減衰材50と中央部に配置された第4振動減衰材51とから成り、第1、第3振動減衰材48、50と第2、第4振動減衰材49、51の特性が異なるものである。例えば、外周部の剛性を低くし、中央部の剛性を高くするものである。本実施例においては、各振動減衰材の特性値を変化させたり、外周部と中央部の境界位置を変えることにより、コイル組立体14の振動の低減を図ることができる。
【0051】
本発明を適用する開放型の超電導磁石を具備するMRI装置では、直径の大きな傾斜磁場コイル4を用いるのが一般的である。このために、傾斜磁場コイル4が配置される高さの辺りでは、静磁場の成分に関し、径方向の中心部では上下方向の成分が主であるが、径方向の外周部では径方向の成分が急激に増加する。このような径方向の静磁場成分があると、傾斜磁場コイル4に加わるローレンツ力は上下方向の力となるため、傾斜磁場コイル4は振動を起こしやすい状況となる。
【0052】
従って、径方向の外周部の振動減衰材の剛性を低くすることにより、この外周部の傾斜磁場コイル4に作用する力のうちの中間部材13に伝播する割合を低減することができる。この結果、コイル組立体14全体としての振動量を低減することができるので、騒音も抑制することができる。また、主コイル5とシールドコイル6とでは、各々の位置での静磁場の分布が若干異なっていたり、コイル自体の電流パターンも同一ではないので、振動低減の最適値を得るためには各々コイルでの振動減衰材の特性を変化させることが良い。さらに、傾斜磁場コイルの振動を細やかに抑制、制御するためには、振動減衰材の特性を、径方向で、3種類以上に変化させることも可能である。
【0053】
なお、第1〜第3の実施例と第4、第5の実施例については、単独で実施することで説明して来たが、第1〜第3の実施例と第4、第5の実施例とを併用することも可能である。この併用により、傾斜磁場コイルの振動、騒音の低減効果も加算される。
【0054】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によれば、開放型の高磁場発生可能な静磁場発生源と平板状の傾斜磁場コイルの組合せにおいて、傾斜磁場コイルの振動、騒音を低減することができるので、開放感が高く、良好なMR画像を撮影することができ、かつ、MR画像撮影時の騒音の小さいMRI装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMRI装置の第1の実施例。
【図2】本発明のMRI装置の第2の実施例。
【図3】本発明のMRI装置の第3の実施例。
【図4】本発明のMRI装置の第4の実施例。
【図5】本発明のMRI装置の第5の実施例。
【図6】本発明のMRI装置の傾斜磁場コイルの構造及び配置例。
【図7】コイル組立体の他の実施例。
【図8】代表的なMRI装置の第1の従来例の超電導磁石の断面図。
【図9】第1の従来例に使用されている傾斜磁場コイルの外観図。
【図10】代表的なMRI装置の第2の従来例の磁石全体の外観図。
【図11】第2の従来例の装置の下側半分の傾斜磁場コイルの周辺部の外観図と断面図。
【図12】MRI装置の第3の従来例の磁石と傾斜磁場コイルとの組合せを示す断面図。
【符号の説明】
1…超電導磁石
2…冷却容器
3…均一磁場領域(測定空間)
4…傾斜磁場コイル
5…主コイル
6…シールドコイル
7…静磁場発生源
8…永久磁石
9…ポールピース(磁極)
10…磁気回路
11…中心面
13…中間部材
14…傾斜磁場コイル組立体(コイル組立体)
20…梁状体
21…固定具
25、40…ボルト
26…ボルト穴
27…ワッシヤ−
28…ナット
29、31、32…穴
30、36、44、46、47…振動減衰材
34…溝
38…座ぐり
42…座
48…第1振動減衰材
49…第2振動減衰材
50…第3振動減衰材
51…第4振動減衰材
Claims (2)
- 対向配置され間に均一磁場領域を形成する静磁場発生源と、前記静磁場発生源の対向面側に均一磁場領域を挟んで対向配置されたほぼ平坦な傾斜磁場コイルを備え、前記傾斜磁場コイルは主として均一磁場領域に傾斜磁場を発生させるための主コイルと、前記主コイルの均一磁場領域と反対側に発生する磁場をシールドするための磁場を発生させ、前記主コイルと静磁場発生源との間に位置するシールドコイルとから構成される磁気共鳴イメージング装置において、
前記傾斜磁場コイルは、主コイルとシールドコイルの間に配置された中間部材と、前記主コイルまたは前記シールドコイルから生じる振動を抑制するための振動減衰材が前記中間部材の上面及び下面に固着して備えられていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 前記振動減衰材のさらに前記均一磁場領域側に前記主コイルが、さらに前記均一磁場領域と反対側にシールドコイルが固着されていることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
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