JP3856086B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に適した傾斜磁場コイルに係り、特にMRI装置での画像劣化の要因となる振動を低減する傾斜磁場コイルの支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、MRI装置では水平磁場方式の円筒型の静磁場発生源を用いたものと、垂直磁場方式の対向型の静磁場発生源を用いたものが使用されているが、前者は高磁場を発生するのに有利であるが、被検体にとっての開放性に欠ける点で不利であり、後者は被検体にとっての開放性やインターベンショナル(IV)―MRの適用の点では有利であるが、高磁場の発生や漏洩磁場の低減の点では不利である。しかし、最近では、垂直磁場方式の対向型磁石において、高磁場発生のための種々の改良が行われている。
【0003】
従来のMRI装置では、通常計測空間となる均一磁場領域に高周波コイルや傾斜磁場コイル(傾斜磁場発生装置)が配設され、それらの外側に静磁場発生源が配設されている。必要な場合には、静磁場発生源の外周に強磁性体から成る磁気シールドが配設されている。計測空間には静磁場発生源によって均一な静磁場が生成される。
【0004】
ここで、傾斜磁場コイルは一般に傾斜磁場コイルに近接する静磁場発生源又はその付帯物(容器など)に取付けられて支持される。このような構造のMRI装置では、傾斜磁場コイルの動作時の振動によって、核磁気共鳴画像(MR画像)が劣化する問題点を有している。これは、静磁場発生源又はその付帯物に支持されて、計測空間内に配置された傾斜磁場コイルには、動作時にパルス電流が流れるために、ローレンツ力が発生し、傾斜磁場コイル自体が振動することに起因する。傾斜磁場コイルの振動は、傾斜磁場コイルの支持系を介して静磁場発生源に伝わり、静磁場発生源を振動させる。静磁場発生源の振動は計測空間の磁場変動を発生させ、結果としてMR画像上にアーチファクトとなって現れる。
【0005】
MRI装置の傾斜磁場コイルで発生する振動に対し、この振動の発生を抑制する対策や、この振動が静磁場発生源に伝達するのを抑制する対策が種々検討されているが、その代表的なものについて、改良の内容と効果を以下に説明する。第1の公知例として、特開平8−332176号公報に開示されたものがある。この第1の公知例は、水平磁場方式の円筒型超電導磁石内に配設されるアクティブシールド方式の円筒型傾斜磁場コイルにおいて、主コイルとシールドコイルを取り外し可能な巻枠に巻回し、各コイルを一体化した後に、巻枠を取り除き、超電導磁石の内径部に装着するものである。主コイルとシールドコイルとの間には、その隙間を大きくするためにスペーサが挿入されている。第1の公知例では、各コイルを一体化した後、巻枠を除去して傾斜磁場コイルとしているので、広い内径空間すなわち広い計測空間を確保するとともに、主コイルとシールドコイルとの隙間を大きくすることができ、小さな励磁電流で所定の傾斜磁場が得られる。このように、第1の公知例では、傾斜磁場コイルの励磁電流を小さくすることができるので、振動、騒音の小さい傾斜磁場コイルが得られる。
【0006】
第2の公知例として、特開平9−308617号公報に開示されたものがある。第2の公知例は、垂直磁場方式の磁場発生装置において、3軸方向の傾斜磁場コイル導体を保持する平板状の保持部材に電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する素子として圧電素子を配置したものである。傾斜磁場コイルを駆動することによってコイル導体に励磁電流が印加されると、傾斜磁場コイルには面内方向のローレンツ力が発生し、これにより固有振動モードの振動が発生する。これに対し、圧電素子は上記のような振動の節を横切るように配置されていて、傾斜磁場コイルの駆動情報に基づき、圧電素子に所定のタイミングで所定の電圧を印加することにより、上記の振動モードによる振動を効率良くキャンセルすることができる。この結果、傾斜磁場コイルにより発生する振動、騒音を効果的に抑制することができる。
【0007】
第3の公知例として、特開平3−284244号公報に開示されたものがある。第3の公知例は、水平磁場方式の磁場発生装置において、直交座標系のX軸、Y軸、Z軸の方向の傾斜磁場を発生する各コイルを、互いに独立して配置したコイル支持体にそれぞれ固定し、各コイル支持体はそれぞれ独立の振動絶縁板を介して、中空円筒体の外周であって、各X、Y、Z軸上の所定位置に固定されている。従って、各コイルで発生した振動はコイル支持体によって抑制されるとともに、各コイルが互いに独立した支持体に固定され、しかも、支持体と中空円筒体との間に振動絶縁体を介在させることにより、発生した振動は中空円筒体全体に広がらない。その結果、騒音が効果的に抑制され、中空円筒体内部の被検体に苦痛を与えないという効果が得られる。
【0008】
第4の公知例として、特開平10−118403号公報に開示されたものがある。第4の公知例は、水平磁場方式の磁場発生装置において、傾斜磁場コイルを静磁場発生源に対して非結合又は略非結合の状態で保持し、支持体を介して、静磁場発生源の設置床面とは異なる設置床面に剛結合し、傾斜磁場コイル及び支持体の少なくとも一部は真空空間内に保持するものである。この第4の公知例では、傾斜磁場コイルで発生した振動及び騒音のうち、設置床面に剛結合した支持体を介しての固体伝搬の振動は設置床面などの質量効果による振動減衰により著しく減少し、また、傾斜磁場コイルからの空気伝搬の振動は真空空間にて遮断されるので、装置全体としての傾斜磁場コイルに起因する振動、騒音は低レベルまで抑制される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1及び第3の公知例では、静磁場発生源が円筒型超電導磁石であるため、装置の開放性、被検体へのアクセス性の点において問題があり、また傾斜磁場コイルも円筒状であるため、開放型MRI装置で使用されている平板状傾斜磁場コイルには適用できないという問題がある。
【0010】
また、第2の公知例は、対象が垂直磁場方式の磁場発生装置であるので、平板状傾斜磁場コイルの振動、騒音の低減に寄与する技術であるが、傾斜磁場コイルの保持部材の各所に圧電素子を配置し、これを傾斜磁場コイルの駆動条件に合わせて電圧印加の制御をすることになるので、装置が複雑化するとともに、その制御も複雑化するという問題がある。
【0011】
また、第4の公知例では、主として水平磁場方式の円筒型磁石において、傾斜磁場コイルの支持体を介しての固体伝搬の振動を剛結合した支持体を介して設置床面に伝え、設置床面の質量効果により低減されているので、平板状傾斜磁場コイルには適用できないこと及び支持体や設置床面を設けるための空間が必要となり、装置が大型になってしまうこと、また傾斜磁場コイルからの空気伝搬の振動を低減するため、真空空間を設けているので、この真空空間を囲って真空を保持するのに技術的困難を伴い、真空容器が変形しやすいことなどの問題がある。
【0012】
以上のことに鑑み、本発明では、開放型の超電導磁石装置と平板状の傾斜磁場コイルを備えたMRI装置において、傾斜磁場コイルで発生した振動が静磁場発生源に伝達するのを抑制できる傾斜磁場コイルの支持構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のMRI装置は、計測空間を挟んで対向して配置された1対の静磁場発生源と、該静磁場発生源を収容する1対の容器と、該1対の容器を接続する1本以上の連結管とを具備する超電導磁石装置と、前記計測空間を挟んで、前記容器の対向面側に、対向して配置された傾斜磁場コイルとを備え、前記1対の容器の各々は、該容器を貫通する少なくとも1つの貫通穴をもつ円環状の容器であり、少なくとも一方の傾斜磁場コイルが前記少なくとも1つの貫通穴の内の少なくとも一つの中に配設される傾斜磁場コイル支持手段を介して、前記容器の外部に配設されている構造物に支持されている。
【0014】
この構成では、開放型超電導磁石装置の計測空間に対向して配置された傾斜磁場コイルを、静磁場発生源を収容する容器に設けた中央穴を経由して配設した傾斜磁場コイル支持手段にて支持し、傾斜磁場コイル支持手段の端部を、構造物にて支持しているので、傾斜磁場コイルの支持系と、静磁場発生源の支持系とは機械的に分離される。この結果、傾斜磁場コイルで発生した振動が静磁場発生源に伝達することはなくなるので、静磁場発生源の振動は抑制され、計測空間の磁場均一度の変動はなくなる。また、傾斜磁場コイルの支持系は、装置の中心軸を経由して外部に引き出され、計測空間のまわりには存在しないので、被検体の開放感を阻害することはない。
【0015】
本発明のMRI装置では、更に前記構造物は前記超電導磁石装置を構成する連結管の外側部分である。また、前記傾斜磁場コイル支持手段と前記連結管の外側部分との間には、振動減衰材が挿入される。この構成では、構造物を超電導磁石装置の連結管の外側部分としているため、特別に余分な装置又は部材を設置することなく、傾斜磁場コイル支持手段を支持できるので、装置としては小型コンパクトにすることができる。傾斜磁場コイル支持手段は連結管まで長い構造体となっているので、通常この部分にて振動が減衰され、連結管との結合部では振動が小さくなっている。また、傾斜磁場コイル支持手段の剛性が高い場合には、連結管との結合部に振動減衰材を挿入することにより、振動は大幅に低減される。
【0016】
本発明のMRI装置では、更に前記構造物は前記超電導磁石装置とは独立して配設された固定柱である。この構成では、構造物を超電導磁石装置とは独立した固定柱としているため、傾斜磁場コイルの支持系と静磁場発生源の支持系とは完全に分離されるので、傾斜磁場コイルの振動の静磁場発生源への伝達が完全に阻止され、静磁場発生源の振動は大幅に低減される。
【0017】
本発明のMRI装置では、更に前記固定柱は前記連結管の近傍に配設されている。また、前記固定柱に対し前記計測空間の中心から見た見込み角度が、前記連結管に対する見込み角度とほぼ同じである。この構成では、固定柱が超電導磁石装置の連結管の近傍に配設されているため、装置の外形をそれほど大きくしないで済む。また、固定柱に対する計測空間の中心から見た見込み角度を連結管とほぼ同等とすることにより、計測空間に挿入された被検体にとっての開放感は傾斜磁場コイルの配設によって殆ど変化せず、大きな開放感が得られる。
【0018】
本発明のMRI装置では、更に前記構造物は前記MRI装置を設置する部屋の天井及び床面に設置された構造材のうちの少なくとも一方の構造材である。この構成では、傾斜磁場コイル支持手段が装置を据付けた検査室の天井及び床面に設置された構造材で支持されることになるので、傾斜磁場コイルの支持系と静磁場発生源の支持系が機械的に完全に分離されるので、傾斜磁場コイルの振動の静磁場発生源への伝達は完全に阻止される。また、傾斜磁場コイル支持手段を床面下で支持することにより、装置の高さを低くすることも可能となり、低い天井の部屋でも据付けが可能となる。
【0019】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイルは、少なくとも主コイルと高い剛性を有するコイル固定部材を備え、前記傾斜磁場コイル支持手段が前記コイル固定部材に結合されている。この構成では、傾斜磁場コイルが高い剛性のコイル固定部材を備えているため、このコイル固定部材を介して傾斜磁場コイルを傾斜磁場コイル支持手段に強固に結合することができるので、支持構造が簡素化し、さらに傾斜磁場コイルの支持系の剛性を高めることができる。
【0020】
本発明のMRI装置では、更に前記コイル固定部材は前記主コイルよりも前記容器に近い側に配置されている。この構成では、コイル固定部材が主コイルよりも容器に近い側に配置されているので、容器の中央穴に配設された傾斜磁場コイル支持手段とコイル固定部材との結合が容易になる。
【0021】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイルは主コイルと、第1のコイル固定部材と、シールドコイルと、第2のコイル固定部材とから成り、前記の順で配列、結合され、前記第2の固定部材が第1のコイル固定部材及び前記傾斜磁場コイル支持手段に結合されている。この構成では、傾斜磁場コイルが主として主コイルと第1のコイル固定材とシールドコイルから成り、これに第2のコイル固定材を裏打ちして傾斜磁場コイル全体を結合した上で、傾斜磁場コイル支持手段に結合されているため、傾斜磁場コイル全体の厚さを薄く構成することができる。
【0022】
本発明のMRI装置では、更に前記コイル固定部材は非磁性かつ非導電性の材料にて構成されている。この構成では、コイル固定部材が非磁性かつ非導電性であるので、コイル固定部材の配設によって傾斜磁場の分布に悪影響を与えることなく、またコイル固定部材によって主コイルとシールドコイルとの絶縁、シールドコイルと傾斜磁場コイル支持手段との絶縁も可能となる。
【0023】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイル支持手段は、前記傾斜磁場コイルに結合され前記容器の中央穴を通る円筒部と、前記構造物に支持される板状体部を具備する。また、前記円筒部と前記板状体部とは前記容器の中央穴の近傍にて接続されている。この構成では、傾斜磁場コイル支持手段が容器の中央穴を通る円筒部と板状体部から構成されるため、円筒部と傾斜磁場コイル及び板状体部と構造物との結合が容易となり、また傾斜磁場コイルの支持系と静磁場発生源の支持系との分離も容易に行うことができる。また、傾斜磁場コイルと円筒部との結合体を、装置のほぼ中心軸部にて板状体部と結合し接続しているので、傾斜磁場コイルを傾斜磁場コイル支持手段を介してバランスよく構造物にて支持することができる。
【0024】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイル支持手段の板状体部は、その周辺部が前記容器の外周部まで延在し、該周辺部の2個所において、前記構造物に支持されている。また、前記板状体部は前記容器の中央穴の中心軸に対しほぼ対称な位置にある周辺部の2個所において、前記構造物に支持されている。この構成では、傾斜磁場コイルが傾斜磁場コイル支持手段の板状体部の外周部において構造物に支持されているため、傾斜磁場コイルの支持は容易であり、計測空間の開放性を阻害することはない。また、傾斜磁場コイルから離れた位置で支持しているため、傾斜磁場コイルの振動の低減も可能となる。また、傾斜磁場コイル支持手段が装置の中心軸に対しほぼ対称な位置にある2個所において構造物で支持されているため、構造物の存在しない計測空間の前後方向が開放されている。
【0025】
本発明のMRI装置では、更に前記板状体部は前記容器の中央穴の中心軸に対し一方側に寄った位置にある周辺部の2個所において、前記構造物に支持されている。この構成では傾斜磁場コイル支持手段が装置の中心軸に対し一方側に寄った位置にある2個所において構造物に支持されているため、構造物の存在しない計測空間の前方向及び側方向が開放されている。
【0026】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイル支持手段の板状体部はその周辺部の1箇所において、前記構造物に支持されている。また、前記板状体部と前記容器の板状体部との対向面との間に振動減衰材が配設される。この構成では、傾斜磁場コイル支持手段がその板状体部の周辺部の1箇所において構造物に支持されているため、構造物の存在しない計測空間の前方向及び側方向が開放されている。また、板状体部と容器の対向面との間に振動減衰材を配設することにより、傾斜磁場コイル支持手段は構造物と容器によって支持されるため、傾斜磁場コイルの支持が安定するとともに、容器との間には振動減衰材が挿入されているので、傾斜磁場コイルの振動が容器を介して静磁場発生源に伝達するのが抑制される。
【0027】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイル支持手段の板状体部と前記構造物との間に固定部材を配設するものである。また、前記固定部材を振動減衰材とするものである。この構成では、傾斜磁場コイル支持手段と構造物との間に固定部材を配設することにより、傾斜磁場コイル支持手段の剛性に応じて固定部材の材質や剛性などの変更をすることが可能となる。その結果、傾斜磁場コイルの支持系全体で、傾斜磁場コイルの振動が静磁場発生源に伝達するのを抑制することができる。また、固定部材を振動減衰材とすることにより、この部分において傾斜磁場コイルの振動を低減することができる。
【0028】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイルへの配線用ケーブル及び冷却用配管のうちの少なくとも一方が、前記傾斜磁場コイル支持手段の円筒部の中心穴を通して配設される。この構成では、傾斜磁場コイルへの配線用ケーブルや冷却用配管が傾斜磁場コイル支持手段の円筒部の中心穴を経由して行われるので、余分な導管などの配設が不要となり、コンパクトに処理することができる。
【0029】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイル支持手段は非磁性の材料にて構成されている。この構成では、傾斜磁場コイル支持手段の材料が非磁性であるので、この傾斜磁場コイル支持手段の配設によって、計測空間の静磁場や傾斜磁場が乱されることがないので、安定したMR画像を得ることができる。
【0030】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイルの外周部と前記容器の傾斜磁場コイルとの対向面との間に振動減衰材を挿入し、前記傾斜磁場コイルの揺れを防止したものである。この構成では、傾斜磁場コイルが振動減衰材を介して、容器の外周部に支持されているので、傾斜磁場コイルの揺れが防止されるとともに、傾斜磁場コイルの振動の容器への伝達も抑制される。
【0031】
本発明のMRI装置では、更に前記容器の前記傾斜磁場コイル対向面及びその裏面のうち少なくとも一方の面に凹部を設けたものである。また、前者の凹部に前記傾斜磁場コイルの全部又は一部を収容し、後者の凹部に前記傾斜磁場コイル支持手段の板状体部の肉厚部の一部を収容するものである。この構成では、容器の傾斜磁場コイル対向面に凹部を設けているので、この凹部に傾斜磁場コイルの全体又は一部が収容可能となり、その結果、傾斜磁場コイルを収容するスペースの節約をすることができ、被検体を収容する空間を広げることができる。また、容器の傾斜磁場コイル対向面とは反対側の面に凹部を設けているので、この凹部に板状体部の一部を収容できるので、その分板状体部の一部を肉厚にすることができ、板状体部の剛性を向上させることができる。
【0032】
本発明のMRI装置では、更に前記傾斜磁場コイル支持手段の円筒部が外円筒と、内円筒と、両円筒を結合するように放射状に配設された複数個のリブとから構成される。この構成では、円筒部がリブで補強された内、外円筒から成るので、円筒部の剛性が増加し、傾斜磁場コイル支持手段の剛性が向上する。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に沿って説明する。
図1及び図2に、本発明に係るMRI装置の第1の実施例を示す。図1は装置本体の全体構成を示す縦断面図、図2は上面図である。図1において、本実施例のMRI装置1は、計測空間4を挟んで上下方向に対向して配置された1対の静磁場発生源2と、静磁場発生源2を収納する1対の真空容器3と、上下の真空容器3を接続する2本の連結管5と、計測空間4を挟んで、上下の真空容器3の内側に対向して配置された傾斜磁場コイル7a、7bと、傾斜磁場コイル7a、7bの支持系などを備えている。本実施例のMRI装置1では、傾斜磁場コイル7a、7bの支持系の構造に特徴がある。以下の説明では、計測空間4の中心を通る上下方向の中心軸(静磁場の中心軸に対応)をZ軸とし、2本の連結管5が配列される左右方向をX軸、これに直交する前後方向をY軸とする。
【0034】
本実施例において、静磁場発生装置は、主として静磁場発生源2と、真空容器3と、連結管5と、その他の付帯品などで構成された垂直磁場方式の超電導磁石装置である。静磁場発生源2は、円環状に巻かれた複数個の超電導コイルから成り、計測空間4に高強度で均一な垂直方向の静磁場を生成する主コイルと、この主コイルによって装置の周辺に発生する漏洩磁場を抑制するための磁場を生成するシールドコイルとを具備する。超電導コイル2は、液体ヘリウム等の冷媒に浸漬されて、冷却容器(図示せず)内に収容され、超電導特性を示す温度まで冷却され、保持される。冷却容器は真空容器3に内包されるが、冷却容器と真空容器3との間には通常1又は2層の熱シールド層(図示せず)が配設されている。また、冷却容器と熱シールド層は冷凍機(図示せず)などで冷却される。
【0035】
上下の真空容器3は計測空間4の左右方向(X軸方向)に配設された2本の連結管5によって接続されている。この2本の連結管5は、上下の真空容器3を支持するとともに、熱的にも接続している。連結管5の内部には、上下の冷却容器を接続する連結管と、熱シールド層を接続する連結管が配設されている。真空容器3と連結管5との結合体は、真空容器3より大きい外径の円環状の真空容器支持台12によって支持されている。ここで、真空容器3、連結管5、真空容器支持台12などの静磁場発生装置を構成する部材の材料には、主としてステンレス鋼、アルミニウムなどの非磁性の金属系材料が用いられている。
【0036】
本実施例も含め、本発明では、超電導コイル2を収納する真空容器3は円環状をしており、中央に傾斜磁場コイル7a、7bの支持系の部材を通すための中央穴11を備えている。このため、冷却容器も、熱シールド層も、真空容器3と同様に中央穴を備えている。
【0037】
本実施例では、傾斜磁場コイル7a、7bは傾斜磁場コイル支持体に支持され、傾斜磁場コイル支持体は静止物である連結管5の外側部分(端面)にて支持されている。傾斜磁場コイル支持体は円筒状の第1の傾斜磁場コイル支持体と板状体の第2の傾斜磁場コイル支持体とから成る。図1において、計測空間4の上側に配置された傾斜磁場コイル7aは、平板状に形成されており、その中央部において、上側の真空容器3の中央穴11内に配置された円筒状の第1の傾斜磁場コイル支持体8aの下端に結合されて、支持されている。第1の傾斜磁場コイル支持体8aの上端は、上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9のほぼ中央部に結合されている。第2の傾斜磁場コイル支持体9は細長い板状体で、その左右方向の両端において、間接的に連結管5の端面によって支持されている。第1の傾斜磁場コイル支持体8a、8b、第2の傾斜磁場コイル支持体9、10の材料としては、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属系材料やガラス繊維補強エポキシなどの合成樹脂系材料などの非磁性材料が用いられる。
【0038】
本実施例の場合、上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9と連結管5の端面との間には、硬質ゴムなどの振動減衰材から成る固定部材13が挿入される。この固定部材13にいわゆるダンパー作用を持たせることにより、磁石装置への振動伝達を抑制することができる。また、この固定部材13としてステンレス鋼やアルミニウムなどの金属材料を用いて、第2の傾斜磁場コイル支持体9を連結管5に強固に取り付けることも可能である。この場合、傾斜磁場コイル7aの振動が固定部材13まで来る間に十分に減衰しているか、連結管5への取り付け部分が強度的に十分な剛性を持っていて、振動による影響を受けにくい構造になっていることが必要である。
【0039】
図2は、本実施例のMRI装置の上面図で、上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9の構造例を示している。図示の如く、上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9は、装置の中心軸、すなわちZ軸に対して対称形をしており、第1の傾斜磁場コイル支持体8aの上端と結合する中央部の幅が広くなっていて、左右方向の端に行くにつれて幅が狭くなっている板状体で、両端にて固定部材13を介して2本の連結管5に支持されている。上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9と連結管5との結合は、間に固定部材13を挿入した方が、傾斜磁場コイル7aの振動を抑制するのに有利であるが、傾斜磁場コイル支持体の途中での振動の減衰が大きい場合には固定部材13を挿入しなくてもよい。
【0040】
図1において、計測空間4の下側に配置された傾斜磁場コイル7bは、上側のものと同様に平板状に形成されていて、その中央部において、下側の真空容器3の中央穴11内に配置された円筒状の第1の傾斜磁場コイル支持体8bの上端に結合されて、支持されている。第1の傾斜磁場コイル支持体8bの下側は第2の傾斜磁場コイル支持体10のほぼ中央部に結合されている。下側の第2の傾斜磁場コイル支持体10も板状体で、真空容器支持台12の内周に結合されて固定される。この場合、下側の第2の傾斜磁場コイル支持体10と真空容器支持台12との間には振動伝達防止のために固定部材13と同様の振動減衰材が挿入される。場合によっては、下側の第2の傾斜磁場コイル支持体10は真空容器支持台12に固定されず、床面上に置かれてもよい。また、下側の傾斜磁場コイル7bの支持構造を上側の支持構造と同じにしてよいことは言うまでもない。
【0041】
図3、図4には、本発明のMRI装置の第2、第3の実施例の上面図を示す。いずれの実施例も、上下の傾斜磁場コイル支持体の形状が第1の実施例と異なる。これは、上下の真空容器3を接続する連結管5の配置又は本数が異なるためである。図3に示す第2の実施例は、2本の連結管5がZ軸よりも後方に配設される非対称配置構造の例である。この実施例では、上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9aは、大略三角形状の板状体で、Z軸周辺の中央部にて上側の第1の傾斜磁場コイル支持体8aの上端に結合され、両端部にて固定部材13を介して連結管5に結合されている。また、下側の第2の傾斜磁場コイル支持体10aは、通常第1の実施例と同様に真空容器支持台12の内周に結合されて固定されるか、床面上に置かれるか、或いは連結管5の下端に結合されるかする。本実施例では、連結管5がZ軸より後方にあるため、計測空間4の前方及び側方が開放され、被検体に大きな開放感が与えられる。
【0042】
図4に示す第3の実施例は、4本の連結管5がZ軸に関しX軸方向(左右方向)及びY軸方向(前後方向)に対称に配設された対称配置構造の例である。この実施例では、上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9bは、大略長方形の板状体となり、Z軸周辺の中央部にて上側の第1の傾斜磁場コイル支持体8aの上端に結合され、長方形の四隅にて固定部材13を介して連結管5の上端に結合されている。また、下側の第2の傾斜磁場コイル支持体10bは、通常第1の実施例と同様に、真空容器支持台12の内周に結合されて固定されるか、床面上に置かれるか、又は連結管5の下端に結合されるかする。本実施例では、4本の連結管5の配置位置によって形成される長方形の左右方向の辺が長く、前後方向の辺が短いため、計測空間の前後方向が開放された装置となる。
【0043】
上記の第1〜第3の実施例では、静磁場発生装置の連結管5の本数が2本の場合と4本の場合について説明したが、連結管5の本数はこれに限定されず、1本以上何本でもよい。連結管5の本数が少ない場合には装置の開放性は向上するが、本数が多くなると装置の開放性が低下するので、開放型磁石では2本の場合が多い。
【0044】
図5に、第1の実施例における傾斜磁場コイルへの配線及び配管の例を示す。図5は、傾斜磁場コイルへの配線、配管を示す斜視図である。図5は上側の傾斜磁場コイル7aに対するものであるが、下側の傾斜磁場コイル7bに対しても同様に行われる。図5において、MRI装置の電源部から導かれた傾斜磁場コイル7aを駆動するための電流を流す配線用ケーブル15は、上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9の表面をはって、上側の第1の傾斜磁場コイル支持体8aの中央穴17を経由して上側の傾斜磁場コイル7aに配線される。また、傾斜磁場コイル7aを冷却するための冷媒や空気を導くために、冷却用配管16が配線用ケーブル15と平行して配設される。傾斜磁場コイル7の導体として銅パイプなどを用いる場合には、配線の導体に冷却用配管を兼用させて、一体化することも可能である。これらの配管には、非磁性材料のものが使用され、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属製のパイプや、テフロン、ビニールなどの合成樹脂製のパイプなどが使用されている。
【0045】
図6に、本発明に係るMRI装置の第4の実施例の斜視図を示す。本実施例は、傾斜磁場コイル7を支持するために、磁石構造物以外の独立した静止物を連結管5に近接して配設したものである。図6において、上下の傾斜磁場コイル7a、7bはそれぞれ、第1の実施例と同様に同筒状の第1の傾斜磁場コイル支持体8a、8bに支持され、更にこれらの第1の傾斜磁場コイル支持体8a、8bは左右方向(X軸方向)に細長い長方形の板状体である上下の第2の傾斜磁場コイル支持体19a、19bの中央部に結合されて支持されている。これらの第2の傾斜磁場コイル支持体19a、19bは両端部にて、上下の真空容器3の左右方向(X軸方向)の外側であって、連結管5に近接して配設された2本の固定柱20に結合され、支持されている。
【0046】
図6において、上下の超電導コイル2を内包する上下の真空容器3と、これらを接続する2本の連結管5との組立体は、4個の真空容器支持台12によって支持されている。また、上下の傾斜磁場コイル7a、7bを支持する上下の第2の傾斜磁場コイル支持体19a、19bと、これを支持する2本の固定柱20との結合体は2個の固定柱支持台22によって支持されている。その結果、両者は接触しないように完全に分離されている。このように構成したことにより、傾斜磁場コイル7a、7bで発生した振動が静磁場発生源である超電導コイル2を内包した真空容器3に伝達することは完全に抑制され、計測空間4の磁場均一度の変動もなくなる。
【0047】
固定柱20の形状は、板状体で、第2の傾斜磁場コイル支持体19a、19bと結合する両端部の幅が広く、中央部21の幅が狭くなっている。固定柱20の中央部21の幅は、隣接する連結管5の外径とほぼ同じで、計測空間4の中心から連結管5及び中央部21を見たとき、両者の見込み角がほぼ同じで、両者がほぼ重なって見える位がよい。このように構成することにより、固定柱20が装置の開放性を阻害することがないので、被検体にとっての開放性は良好に保持される。固定柱20や固定柱支持台22の材料として、ステンレス鋼やアルミニウムなどの非磁性の金属系材料が用いられる。
【0048】
図7に、本発明に係るMRI装置の第5の実施例の下側半分の縦断面図を示す。本実施例では、傾斜磁場コイル7を第1、第2の傾斜磁場コイル支持体8、9、10によって支持するとともに、真空容器3によっても支持するものである。図7において、下側の傾斜磁場コイル7b、下側の第1の傾斜磁場コイル支持体8b、下側の第2の傾斜磁場コイル支持体10bは、第1の実施例と同じ構造であるが、下側の傾斜磁場コイル7bの下面の外周部と下側の真空容器3の上面の外周部との間に適度な硬度を持つダンパー24が配設されている。ダンパー24は硬質ゴムなどからなる振動吸収材で、傾斜磁場コイル7bの振動による揺れを防止している。また、傾斜磁場コイル7bから真空容器3に振動が伝達するのを防止している。ダンパー24の配列は外周部の全域に配置してもよいが、点状に複数個配置してもよい。ダンパー24の材料としては硬質ゴムなどの振動吸収材が最適であるが、真空容器3の外周部の構造が強固で、振動による影響を受けにくい構造であれば、非磁性の金属材料の使用も可能である。
【0049】
図8には、本発明に係るMRI装置の第6の実施例の上側半分の縦断面図を示す。図9は図8の上面図である。本実施例は、上下の真空容器3を接続する連結管5が1本の場合の傾斜磁場コイル7の支持構造例である。図8において、上側の傾斜磁場コイル7aは、上側の真空容器3の中央穴11内に配置された円筒状の第1の傾斜磁場コイル8aの下端に結合されている。第1の傾斜磁場コイル8aの上端はZ軸の周辺部にて長円形状の上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9cの一端に結合されている。上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9cの他端は、固定部材13を介して連結管5の上端に結合され、連結管5によって支持されている。図示では、上側の傾斜磁場コイル7aの支持構造について示したが、下側の傾斜磁場コイル7bについても同様に支持される。また、下側の傾斜磁場コイル7bについては第1の実施例と同様に、下側の第2の傾斜磁場コイル支持体を真空容器支持台の内周に固定してもよいし、又は床に配設してもよい。このように、1本の連結管5によって支持することにより、計測空間4の周り、特に前方及び側方の開放性が大幅に向上し、被検体にとって大きな開放感が得られる。
【0050】
本実施例の場合、傾斜磁場コイル7aは1本の連結管5によって支持されているが、1本の連結管5のみでは剛性が不十分な場合には、図示の如く、第2の傾斜磁場コイル支持体9cの一端(Z軸周辺部)において、第2の傾斜磁場コイル支持体9cの外周を拡げて、上側の真空容器3の上面との間に、ダンパー25(材料は図7のダンパー24と同じ)を挿入して、真空容器3によって支持するとよい。ダンパー25の挿入位置は連結管5の位置と反対側の図示の位置が適当である。このように、ダンパー25を介して支持することにより、傾斜磁場コイル7aからの振動による揺れは抑制され、上側の真空容器3への振動の伝達も阻止される。ダンパー24の形状は、直方体のものを例示したが、円柱状など、その他の形状のものでもよい。
【0051】
また、図8においては、上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9cの他端を1本の連結管5によって支持しているが、この連結管5の代りに図6に示した第4の実施例と同様に、磁石構造物以外の独立した静止物、すなわち独立した固定柱を連結管5に隣接して配設して、支持してもよい。固定柱による支持の効果としては、第4の実施例と同様な効果が得られる。
【0052】
図10には、本発明に係るMRI装置の第7の実施例の縦断面図を示す。本実施例は、上下の傾斜磁場コイル7を天井及び床にて支持する構造例である。図10において、上下の真空容器3及び上下の傾斜磁場コイル7a、7bは計測空間4を挟んで上下に対向して第1の実施例とほぼ同様に配置されている。上下の真空容器3は第1の実施例よりも高さの低い真空容器支持台12aによって支持されているため、装置全体として高さの低い配置となっている。上側の傾斜磁場コイル7aは第1の実施例より長い上側の第1の傾斜磁場コイル支持体8aの下端によって支持され、上側の第1の傾斜磁場コイル支持体8aの上端は、板状体である上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9dのほぼ中央部にて支持され、上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9dは天井26に固定されている。上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9dの天井26への固定は、ボルトなどによる機械的な結合や接着による結合などによって行われる。下側の傾斜磁場コイル7bは下側の第1の傾斜磁場コイル支持体8bの上端によって支持され、下側の第1の傾斜磁場コイル支持体8bの下端は、板状体である下側の第2の傾斜磁場コイル支持体10dのほぼ中央部にて支持され、下側の第2の傾斜磁場コイル支持体10dは床14の下に埋め込まれて固定される。
【0053】
上下の傾斜磁場コイル7a、7bを、上記の如く天井26及び床14下に固定することにより、傾斜磁場コイル7の支持系が静磁場発生源2を内包する真空容器3の支持系とは分離されるので、傾斜磁場コイル7の振動が真空容器3に伝達するのが阻止される。また、下側の傾斜磁場コイル7bを支持する下側の第2の傾斜磁場コイル支持体10dを床14の下に埋め込んだことにより、床14の上に置く場合に比べてより強固に支持することができ、更に、真空容器支持台12aの高さを低くすることが可能となり、装置全体の高さを低く設置することができる。検査室の天井が低い場合などには有効である。
【0054】
図11には、本発明に係るMRI装置の第8の実施例の縦断面図を示す。図11は、上下、左右がほぼ対称であるので、上部左側の1/4の部分を示している。本実施例では、上下の真空容器それぞれの内周側上下面に凹部を設けて、それぞれの凹部に傾斜磁場コイル及び第2の傾斜磁場コイル支持体の肉厚部を収容できるような構造としたものである。図11において、連結管5の上端部で支持された上側の真空容器3aの内周側上下面には2つの凹部26、27が設けられている。上側の真空容器3aの下面には円形の第1の凹部26が設けられ、この第1の凹部26には上側の傾斜磁場コイル7aが収容されている。第1の凹部26の形状は円形に限定されず、傾斜磁場コイル7の形状に合わせて、他の形にしてもよい。第1の凹部26の深さは傾斜磁場コイル7a全体を収容できる程度のものがよいが、寸法的な余裕がない場合に一部を収容する程度のものでもよい。上側の真空容器3aの上面には円形の第2の凹部27が設けられ、この第2の凹部27には上側の第2の傾斜磁場コイル支持体9cの凸部(肉厚部)29の一部が収容されている。真空容器3a内では、内包される冷却容器内に複数個の超電導コイル(通常複数個の主コイルと複数個のシールドコイルから成る)2が配設されているが、これらの超電導コイル2は内周側上下面の近傍には殆ど配設されないので、本実施例では超電導コイル2の配設されない部分を利用している。
【0055】
図11において、上側の傾斜磁場コイル7aは、第1の実施例と同様に、第1の傾斜磁場コイル支持体8aと第2の傾斜磁場コイル支持体9eとの結合体によって支持され、この結合体は固定部材13を介して連結管5の上端面にて支持されている。このとき、第2の傾斜磁場コイル支持体9eの中央部は第2の凹部27を設けたことにより、その厚さを増すことができるので、第2の傾斜磁場コイル支持体9eの支持剛性を上げることが可能となる。また、本実施例の場合、傾斜磁場コイル7の全部又は一部が真空容器3a側に収容されることになるため、上下の傾斜磁場コイル7a、7bの設置スペースが節約され、同時に上下の傾斜磁場コイル7a、7b間の間隔を広げることが可能となるため、被検体を収容する空間を広げることが可能となる。
【0056】
図12には、本発明に係るMRI装置の第9の実施例の斜視図を示す。本実施例は、図1に示す第1の傾斜磁場コイル支持体8の強度を補強したものであるので、図12には第1の傾斜磁場コイル支持体の補強構造のみを示した。以下、図1、図5を参照しながら図12に基づいて説明する。図12において、第1の傾斜磁場コイル支持体30は、外円筒31と内円筒32と8個のリブ33から構成される。外円筒31の外径及び外円筒31、内円筒32の長さは第1の実施例の第1の傾斜磁場コイル支持体8の外径及び長さとほぼ同じである。外円筒31の外径は、図1の真空容器3の中心穴11を通過できる寸法であればよい。また、内円筒32の内径は、図5に示す配線用ケーブル15や冷却用配管16を収容できる寸法であればよい。リブ33は長方形の板状体で、半径方向に配列されて、内円筒32の外径及び外円筒31の内径に接着又はねじ締結などで結合されている。リブ33の数は図示の8個に限定されず、少なくても、多くてもよい。また、外円筒31、内円筒32、リブ33の材料としては、第1の傾斜磁場コイル支持体8と同じ材料が用いられる。このように第1の傾斜磁場コイル支持体30をリブ33にて補強することにより、第1の傾斜磁場コイル支持体30の剛性が増すため、傾斜磁場コイルの支持系全体の剛性を上げることができる。
【0057】
図13には、本発明に係るMRI装置の第10の実施例の縦断面図を示す。本実施例は、傾斜磁場コイル自体の構造を改良したものであるので、図13には上側の傾斜磁場コイル45aと、これに結合される上側の第1の傾斜磁場コイル支持体8aの構造のみを示した。下側の傾斜磁場コイル45bの構造も上側のものと同様である。図13において、本実施例の傾斜磁場コイル45aは、主コイル35と、シールドコイル36と、中間層38と、絶縁層39と、固定板37とから構成され、全体として平板状のものとなっている。主コイル35とシールドコイル36とは、中間層38によって適当な間隔をとって、主コイル35が計測空間の中心に近い側になるように配設される。中間層38は主コイル35とシールドコイル36を絶縁し、支持するもので、その材料としてはガラス繊維補強エポキシ樹脂などが用いられる。この材料としては、電気絶縁性と機械的強度を持つ非磁性材料が適用可能である。シールドコイル36と固定板37との間には絶縁層39が挿入され、固定板37はそのほぼ中央部にて上側の第1の傾斜磁場コイル支持体8aの下端に結合されて、支持される。固定板37は傾斜磁場コイル45a全体を固定するもので、ステンレス鋼やアルミニウムなどの非磁性の金属系材料、あるいはガラス繊維強化エポキシ樹脂などの電気絶縁材料からなる。絶縁層39はシールドコイル36、固定板37を絶縁するもので、その材料としては、ガラス繊維補強エポキシ樹脂、マイラー、ベークライトなどの電気絶縁性を持つ材料が用いられる。傾斜磁場コイル45aの各素子間の結合は、接着又はボルト締結などによって行われる。また、固定板37と第1の傾斜磁場コイル支持体8aとの結合は接着、溶接等によって行われる。上記の如く、傾斜磁場コイル45a全体が固定板37によって固定され、かつ固定板37を介して第1の傾斜磁場コイル支持体8aと結合されたことにより、傾斜磁場コイル自体の構造及び傾斜磁場コイル支持体との結合構造が簡素になり、かつ傾斜磁場コイル45a全体としての剛性も増加している。
【0058】
図14には、本発明に係るMRI装置の第11の実施例の縦断面図を示す。本実施例も、傾斜磁場コイル自体の構造の改良であるので、図14には上側の傾斜磁場コイル46aと、これに結合される上側の第1の傾斜磁場コイル支持体8a構造のみを示した。下側の傾斜磁場コイル46bの構造も上側のものと同様である。図14において、本実施例の傾斜磁場コイル46aは、主コイル35と、シールドコイル36と、第1の固定板40と、第2の固定板41とから構成され、全体として平板状のものとなっている。主コイル35と、シールドコイル36とは、第1の固定板40によって適当な間隔をとって固定され、三者は主コイル35が計測空間の中心に近い側になるように配設される。第1の固定板40は主コイル35とシールドコイル36の間を絶縁し、両者を固定、支持するものであるので、その材料としてはガラス繊維補強エポキシ樹脂などの電気絶縁性と機械的強度を持つ非磁性材料が用いられる。第2の固定板41は主コイル35と第1の固定板40とシールドコイル36との結合体を絶縁し、支持するもので、第1の固定板40を介して固定している。この固定はシールドコイル36に貫通穴をあけてボルト42にて固定される。第2の固定板41の材料としては、第1の固定板40の材料と同じものが用いられる。傾斜磁場コイル46aは第2の固定板41にて第1の傾斜磁場コイル支持体8aの下端と結合されている。この結合は接着などによって行われている。本実施例の場合、主コイル35とシールドコイル36との間に第1の固定板40を挿入して、両コイルの絶縁と支持を行っているので、傾斜磁場コイル全体の厚さを薄くすることができる。
【0059】
また、第10の実施例及び第11の実施例において、上側の傾斜磁場コイル45a、46aの最上層の固定板37又は第2の固定板41と、上側の傾斜磁場コイル支持体8aとを一体成形などして一体化することも可能である。この場合、両者の接着による結合は不要となり、剛性も増加する。また、傾斜磁場コイル45a、46aの外周寸法が大きい場合には、一体成形などが困難になるので、固定板37又は第2の固定板41を、外径の小さい円板部と外径の大きい本体部とに分割し、外径の小さい円板部と第1の傾斜磁場コイル支持体8aとを一体化し、後に外径の小さい円板部と外径の大きい本体部とを接着して結合することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によれば、開放型超電導磁石装置を具備するMRI装置において、傾斜磁場コイルを支持する傾斜磁場コイル支持手段を、静磁場発生源を収容する容器の中心軸周辺に設けた中央穴を経由して磁石装置の外側に引き出し、磁石装置の外周部にある静止物によって支持しているので、傾斜磁場コイルは磁石装置と直接接触することがなく、傾斜磁場コイルで発生した振動が静磁場発生源に伝達するのが抑制される。この結果、傾斜磁場コイルの振動によって計測空間の均一磁場が乱されることなく、安定に維持されるので、良好なMR画像が得られる。
【0061】
また、本発明によれば傾斜磁場コイルの背面側を除いて、その周囲に傾斜磁場コイル支持手段が配置されていないため、計測空間の周囲が開放され、かつ、装置のガントリ全体の直径が小さくなるので、装置の開放性及び操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るMRI装置の第1の実施例の縦断面図。
【図2】本発明に係るMRI装置の第1の実施例の上面図。
【図3】本発明に係るMRI装置の第2の実施例の上面図。
【図4】本発明に係るMRI装置の第3の実施例の上面図。
【図5】傾斜磁場コイルの配線、配管を示す斜視図。
【図6】本発明に係るMRI装置の第4の実施例の斜視図。
【図7】本発明に係るMRI装置の第5の実施例の下側半分の縦断面図。
【図8】本発明に係るMRI装置の第6の実施例の上側半分の縦断面図。
【図9】図8の上面図。
【図10】本発明に係るMRI装置の第7の実施例の縦断面図。
【図11】本発明に係るMRI装置の第8の実施例の縦断面図。
【図12】本発明に係るMRI装置の第9の実施例の第1の傾斜磁場コイル支持体の斜視図。
【図13】本発明に係るMRI装置の第10の実施例の傾斜磁場コイルの縦断面図。
【図14】本発明に係るMRI装置の第11の実施例の傾斜磁場コイルの縦断面図。
【符号の説明】
1…MRI装置
2…超電導コイル(静磁場発生源)
3、3a…真空容器
4…均一磁場領域(計測空間)
5…連結管
7、7a、7b、45、45a、45b、46、46a…傾斜磁場コイル
8、8a、8b、30…第1の傾斜磁場コイル支持体
9、9a、9b、9c、9d、9e、10、10b、10d、19、19a、19b…第2の傾斜磁場コイル支持体
11…中央穴
12、12a…真空容器支持台
13…固定部材
14…床
15…配線用ケーブル
16…冷却用配管
17…中心穴
20…固定柱
21…中央部
22…固定柱支持台
24、25…ダンパー
26…第1の凹部
27…第2の凹部
29…凸部(肉厚部)
31…外円筒
32…内円筒
33…リブ
35…主コイル
36…シールドコイル
37…固定板
38…中間層
39…絶縁層
40…第1の固定板
41…第2の固定板
42…ボルト
Claims (10)
- 計測空間を挟んで対向して配置された1対の静磁場発生源と、該静磁場発生源を収容する1対の容器と、該1対の容器を接続する1本以上の連結管とを具備する超電導磁石装置と、前記計測空間を挟んで、前記容器の対向面側に、対向して配置された傾斜磁場コイルとを備えた磁気共鳴イメージング装置において、前記1対の容器の各々は、該容器を貫通する少なくとも1つの貫通穴をもつ円環状の容器であり、少なくとも一方の傾斜磁場コイルが前記少なくとも1つの貫通穴の内の少なくとも一つの中に配設される傾斜磁場コイル支持手段を介して、前記容器の外部に配設されている構造物に支持されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
- 請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記構造物は前記超電導磁石装置を構成する連結管の外側部分であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
- 請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記構造物は前記超電導磁石装置とは独立して配設された固定柱であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
- 請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記固定柱は前記連結管の近傍に配設されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
- 請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記構造物は前記磁気共鳴イメージング装置を設置する部屋の天井及び床面に設置された構造材のうちの少なくとも一方の構造材であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
- 請求項1乃至5記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記傾斜磁場コイルは、少なくとも主コイルと高い剛性を有するコイル固定部材を備え、前記傾斜磁場コイル支持手段が前記コイル固定部材に結合されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
- 請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記コイル固定部材は前記主コイルよりも前記容器に近い側に配置されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
- 請求項6及び7記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記コイル固定部材は非磁性かつ非導電性の材料にて構成されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
- 請求項1乃至8記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記傾斜磁場コイル支持手段は、前記傾斜磁場コイルに結合され前記容器の中央穴を通る円筒部と、前記構造物に支持される板状体部を具備することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
- 請求項9記載の磁気共鳴イメージング装置において、前記傾斜磁場コイルへの配線用ケーブル及び冷却用配管のうちの少なくとも一方が、前記傾斜磁場コイル支持手段の円筒部の中心穴を通して配設されることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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