明 細 書
プラズマ処理方法及び装置
技術分野
[0001] この発明は、例えば大気圧近傍の圧力(略常圧)環境でグロ一放電等によってブラ ズマを形成し、半導体基板などの被処理物を表面処理する方法及び装置に関する。 背景技術
[0002] 大気圧近傍の圧力の処理雰囲気においてプラズマ処理する方法は、種々提案さ れている。この種の方法では、一対の電極間に電界を印加し大気圧グロ一放電を起 こさせ、処理ガスをプラズマ化する。このプラズマ化した処理ガスを半導体基板など の被処理物に当て、成膜やエッチング等の表面処理を行なう。
例えば、特許文献;特開平 10-36537号公報に記載のものは、一対の電極を対向 配置し、少なくとも一方の電極の対向面に固体誘電体を設置してある。そして、大気 圧近傍の圧力下で、電極間にパルス電界を印加し、グロ一放電プラズマを形成する 。安定したプラズマ処理のための好ましいパルスの周波数は、 0. 5kHz— 100kHz の範囲としている。
特許文献;特開 2001—284099号公報では、雰囲気ガス種に依らずにグロ一放電 できる条件として、電極に被膜された誘電体の静電容量と給電周波数との比を 1400 pF/ (m2' kHz)以下にしてレ、る。
特許文献;特開平 10—154598号公報では、電極間の電界強度を 0. 1— 10kV/ mm、周波数を 0. 5 100kHz等と定めている力 これら数値は印加電界をパルス 波にした場合に限られ、正弦波等の連続波には適用されない。
[0003] 電極間への電界印加用の電源は、一般に、一次電圧をトランスで昇圧し、昇圧後 の二次電圧を電極に供給するようになっている。例えば、電極間距離を lmmとしたと きのピーク間電圧 Vppが 5kV程度の場合、希ガス雰囲気でしかグロ一放電せず、出 力の大きさ自体も十分でない。電極間距離を lmmとしたときのピーク間電圧 Vppを 1 0— 20kVにすると、空気や窒素等の希ガス以外の雰囲気でもグロ一放電を起こすこ とができる。周波数は、出力の安定が確保される数値 (例えば 10kHz)に固定してい
る。しかし、電力の供給効率が低ぐ十分な出力を得られていない。なお、ピーク間電 圧 Vppが 20kVを超えるとアーク放電になってしまう。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] 上掲の従来方法では、略常圧環境でグロ一放電を起こすための周波数等の具体 的な数値条件が種々提案されている力 それら数値は、電界の波形や処理ガスの種 類等が所定の場合に限り意味をなすものであり、汎用的でない。また、電源装置の出 力効率が考慮されておらず、ロスが大きくなる場合がある。電源からの電力供給効率 と、出力の安定性、さらには被処理物に対する高い処理能力を確保でき、しかも汎用 的に適用できる条件は未だ確立されていない。
課題を解決するための手段
[0005] 発明者は、上記事情に鑑み、鋭意研究、考察を行なった。すなわち、一対の対向 電極からなる電極構造は、電極間空間のインピーダンスと、少なくとも一方の電極の 対向面に設けられた固体誘電体のキャパシタンスとの直列接続と考えることができる 。また、一般に、電極構造と電源との間にはトランスが介在され、このトランスの二次コ ィルにホット側の電極が接続されている。トランスには漏れインダクタンスがあるので、 これと電極構造によって、 LC直列共振回路が構成されていると見ることができる。周 知の通り、 LC直列共振回路においては、共振周波数で電源を駆動したとき、出力を 最大にできる。一方、前記電極構造において、固体誘電体のキャパシタンスは容易 に求めることができる力 電極間空間のインピーダンスはプラズマの状態等によって 変動し、これを直接的に解析するのは容易でない。
[0006] ところで、放電していない状態であれば電極間空間のインピーダンスも一定してい る。このときの共振周波数は、処理ガスの誘電率等の物性が分かれば計算で求める ことができ、勿論、実測でも容易に求めることができる。
放電し出すと電極間空間のインピーダンスが低下すると考えられ、共振周波数が非 放電時よりも小さくなる。
更に、グロ一放電を通り越してアーク放電の状態になると、電極間空間を導体と見 做すことができるため、電極構造全体のインピーダンス力 固体誘電体のキャパシタ
ンス分だけになると考えられる。このときの共振周波数は、計算で求めることができる 。また、電極間空間を導体に置換した等価回路を用いることによって、測定も可能で める。
[0007] このような研究考察の結果、以下の知見を得た。すなわち、電極への通電周波数を 、非放電時の共振周波数と、電極間空間を導体と見做したときの共振周波数との間 の範囲内にすると、安定的なグロ一放電を得ることができる。そして、この範囲内に、 高出力が可能な周波数が必ず存在し得る。
[0008] 本発明の第 1特徴は、かかる知見の下になしたものであり、
互いに対向する一対の電極 1 1, 12とインダクタ 22bを含む電極回路 1を備え、少な くとも一方の電極の対向面には固体誘電体 13が設けられたプラズマ処理装置を用 レ、、前記電極どうし間の空間 10pに処理ガスを導入するとともに前記電極回路 1に給 電してプラズマ処理を行なう方法であって、
当該処理時における電極回路 1への給電周波数 fsを、非放電時における共振周波 数 f (以下、適宜「第 1共振周波数」という。)と、前記電極間空間を導体と見做せる時 rl
における共振周波数 f (以下、適宜「第 2共振周波数」という。)との間に設定すること
r2
にある。
また、
電源 21からの給電により処理ガスをプラズマ化しプラズマ処理を行なう装置であつ て、
互いに対向して間に処理ガスの導入される空間 10ρを形成するとともに少なくとも 一方の対向面には固体誘電体 13が設けられた一対の電極 11 , 12と、インダクタ 22 bを含み、前記電源 21から給電される電極回路 1と、
前記電源 21から前記電極回路 1への給電周波数 f sを、前記電極間空間 1 Opの非 放電時における共振周波数 f と、前記電極間空間 10pを導体と見做せる時における
rl
共振周波数 f との間に設定する周波数設定部 23と、
r2
を備えたことにある。
これによつて、安定した放電状態を得ることができ、し力、も高出力効率となるピーク 周波数の存在する周波数範囲を、汎用的に設定することができる。
[0009] ここで、前記電極間空間 10pで放電を起こしながら、電極回路 1への給電周波数 fs を前記第 1共振周波数 f と第 2共振周波数 f との間で調節し、電流がピークとなる周
r2
波数 f を求め、このピーク周波数 f またはその近傍に給電周波数 fsを設定して
PEAK PEAK
処理を実行することが望ましい。これによつて、高出力効率を確実に得ることができる
[0010] 前記一対の電極 11, 12を、処理ガスで満たされた非放電時の電極間空間 10pの キャパシタンス成分 Cpと固体誘電体 13のキャパシタンス成分 Cdの直列接続として、 前記第 1共振周波数 f を算出してもよレ、。また、前記一対の電極 11 , 12を、固体誘
rl
電体 13のキャパシタンス成分 Cdのみとして、前記第 2共振周波数 f を算出してもよ
r2
レ、。
[0011] 前記算出に代えて、前記電極回路 1への給電によって、放電の起きるしきい値未満 の振幅の電界を電極間に印加するとともにこの給電周波数を調節し、電流がピークと なる周波数を、前記第 1共振周波数 f としてもよい。また、前記一対の電極 11, 12ど
rl
うしを固体誘電体 13を挟んで当接させて電極間空間 1 Opを無くした状態(図 3の右側 の回路図)で給電周波数を調節し、電流がピークとなる周波数を、前記第 2共振周波 数 f としてもよレ、。
[0012] 前記プラズマ処理装置が、電源 21からの電圧をトランス 22で昇圧して前記電極回 路 1に給電するようになっており、前記トランス 22の漏れインダクタンス Lにより前記ィ ンダクタを構成するのが望ましレ、。
前記漏れインダクタンス Lからなるインダクタおよび前記一対の電極 11 , 12からなる キャパシタに、実物のインダクタ Lx, Lyまたはコンデンサ Cx, Cyをカロえることにより、 前記電極回路 1を構成してもよい。これにより、第 1、第 2共振周波数 f , f を調節で
rl r2
き、ひいては、処理時における給電周波数 fsの設定範囲を調節することができる。
[0013] また、発明者らは鋭意研究の結果、放電時の固有振動周波数に対する給電周波 数のずれ量と、電力効率および出力の安定性との間に一定の関係があることが判明 した。
すなわち、図 12の実線に示すように、放電時における(推定の)固有振動周波数 f
0 に対する給電周波数 fsのずれがプラス'マイマス両方向に極めて大きい領域 R3では
、電力供給効率が、非常に低ぐしかも給電周波数 fsの値に対して殆ど変化せずフラ ットになる。ここで、電力供給効率の指標として、入力電圧 Vとホット電極 11のピーク' トウ'ピーク電圧 Vppの比 Vpp/Vを用いている。フラット領域 R3よりも固有振動周波 数 f に近い側の一定領域 R2では、固有振動周波数 f に近づくにしたがって VppZV
0 0
が大きくなるようにスロープを描く。領域 R2, R3では、給電周波数 fsに対して VppZ Vがほぼ一義的に定まる。すなわち、 VppZVが時間的に変動することはなぐ安定 している。
[0014] スロープ領域 R2よりも固有振動周波数 f に近い側の一定範囲の領域 R1になると、
0
VppZVが時間の経過とともに上昇していく。ただし、その上昇度は比較的緩慢であ り、制御可能である。更に固有振動周波数 f に近づき、固有振動周波数
0 f を含む
0 一 定範囲の領域 R0になると、 Vpp/Vが瞬間的に跳ね上がり、制御不能になる。図 12 の破線は、緩慢変動領域 R1と瞬間変動領域 R0における放電開始直後の VppZV を示したものである。この Vpp/Vは、固有振動周波数 f においてピークになってい
0
る。
[0015] 固有振動周波数 f は、放電の状態によって変動し、特定が困難であるが、基本的
0
には電極 11, 12どうし間の印加電圧に依存するものと考えられることから、同じ印加 電圧での実験等により推定することが可能である。
[0016] 本発明の第 2特徴は、上記知見に基づいてなされたものであり、
一対の電極 11, 12とインダクタ 22bを含む LC回路を構成する電極回路 1に給電す ることにより、前記電極どうし間の略常圧の空間 10pに電界を印加して放電を起こし プラズマ処理を行なう方法であって、
前記電極どうし間の略常圧空間 10pでの放電時における前記電極回路 1すなわち LC回路の固有振動周波数 f を予め推定する工程と、
0
前記 LC回路 1への給電周波数 fsを、前記推定固有振動周波数 f からずらして設定
0
する設定工程と、
設定した周波数 fsで給電することによりプラズマ処理を行なう本処理工程と、 を実行することにある。
これによつて、電力効率を上げつつ安定性を確保可能な給電周波数 fsの範囲の汎
用的な設定方法を提供できる。
[0017] この第 2特徴において、雰囲気ガスは、ヘリウムやアルゴン等の希ガスでもよぐ空 気や窒素等の希ガス以外のガスでもよい。 LC回路 1への給電波形は、正弦波や方 形波等の連続波でもよぐパルス波等の間欠波でもよい。
ここで、略常圧(大気圧近傍の圧力)とは、 1. 013 X 104— 50. 663 X 104Paの範 囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、好ましくは、 1. 33 3 X 104 10. 664 X 104Paであり、より好ましくは、 9. 331 X 104 10. 397 X 104P aである。
[0018] 前記固有振動周波数 f の推定工程では、前記 LC回路 1に一時的に給電を行なつ
0
た後、該給電の切断により前記 LC回路 1に減衰振動を生じさせ、しかもこの減衰振 動の初期における電極 11 , 12間への印加電圧が本処理工程における設定印加電 圧と略等しくなるようにし、この減衰振動の初期の周波数を測定し、この測定値を前 記推定固有振動周波数 f としてもよい(図 11参照)。これにより、放電時の固有振動
0
周波数を確実に推定できる。前記一時的給電は、間欠波であってもよぐ連続波であ つてもよい。間欠波給電の場合、間欠波の各波要素のオフによって、前記給電切断 がなされることになる。したがって、間欠波の 1つの波要素と次の波要素の間の休止 期間中に前記 LC回路に生じる減衰振動の初期周波数を測定するとよい。休止期間 は、減衰が十分に収束する長さであるのが好ましい。連続波給電の場合、この連続 波をオフし、その後の減衰振動の初期周波数を測定するとよい。前記間欠波の各波 要素または連続波の波形は、種々選択でき、例えば方形波でもよぐ正弦波でもよく 、三角波でもよい。間欠波は、パルス波であってもよい。
また、前記推定工程において、前記電極間への印加電圧が本処理工程における 設定印加電圧と略等しくなるようにしながら給電周波数を掃引し、入出力比が極大に なる点における周波数を求め、これを前記推定固有振動周波数 f とすることにしても
0
よい。
[0019] 前記設定工程において、給電周波数 fsは、少なくとも、前記推定固有振動周波数 f の周辺における入出力比が瞬間的に変動する領域 R0からずらして設定するのが望
0
ましレ、。これによつて、出力が暴走するのを防止できる。出力の安定性の面からは、
前記推定固有振動周波数 f の周辺における入出力比が時間的に変動する領域すな
0
わち前記瞬間変動領域 R0だけでなく緩慢な変動領域 R1からもずらして設定するの が望ましい。すなわち、入出力比が時間的に安定な領域 R2, R3に設定するのが望 ましレ、。ただし、短時間の処理の場合には、前記緩慢変動領域 R1に設定することが できる。
[0020] より望ましくは、前記本処理工程において、給電周波数 fsを、入出力比が時間的に 安定でかつ給電周波数 fsに応じて増減するスロープ領域 R2に設定する。更に望ま しくは、給電周波数 fsを、入出力比が時間的に安定な領域 R2, R3における時間的 に変動する領域 RO, R1との境、すなわちスロープ領域 R2と緩慢変動領域 R1の境 に設定する。これによつて、出力の安定を確保できるとともに電力効率を高くすること ができる。
[0021] 前記 LC回路 1への給電が、インバータ 21aの出力電圧をトランス 22で昇圧すること によりなされるようになつており、前記トランス 22が、前記 LC回路 1のインダクタ成分 2
2bを構成してレ、ることが望ましレ、。
また、直流をインバータ 21aで交流に変換し、更にトランス 22で昇圧することにより、 前記 LC回路 1へ給電されるようになっている場合には、
前記電極 11 , 12間のピーク間電圧 Vppと、前記直流入力電圧 Vとの比(Vpp/V) をもって前記「入出力比」とし、これを前記推定工程又は設定工程を実行する際のパ ラメータとして用いるとよい。
[0022] 図 12に示すように、発明者らの実験によれば、給電周波数 fsのずれが推定固有振 動周波数 f の土約 25%内の範囲(fs = 0. 75f
0 0一 1. 25f )が、瞬間的変動領域 RO
0
であり、土約 25% 士約 50%の範囲(fs = 0. 5f
0一 0. 75f
0、 1. 25f
0一 1. 5f )力 S
0 、 緩慢変動領域 R1であり、土約 50% ±約 80%の範囲(fs = 0. 2f
0一 0. 5f
0、 1. 5f 0 一 1. 8f )が、入出力比が安定なスロープ領域 R2であり、土約 80%以上の範囲(fs
0
≤0. 2f , fs≥l . 8f )が、フラット領域 R3であった。したがって、前記本処理工程で
0 0
少なくとも出力の暴走を防止するには、設定工程において、給電周波数 fsを推定固 有振動周波数 f の ±約 25%以上ずらして設定する。安定性を確実に確保するには
0
、推定固有振動周波数 f の土約 50%以上ずらして設定するのが望ましい。安定で、
0
かつ電力効率も良好にするには、推定固有振動周波数 f の士約 50% (fs = 0. 5f
0 0、
1. 5f )に設定するのが望ましい。
0
[0023] 推定固有振動周波数 f に代えて入出力比(例えば Vpp/V)を基準にして、処理時
0
における給電周波数 fsを設定することにしてもよい。例えば、前記電極 11 , 12間へ の印加電圧を略常圧下での処理時における設定印加電圧と等しくしたうえで給電周 波数 fsを掃引し、給電周波数 fsと入出力比との関係を予め求めておく予備工程と、 処理時における給電周波数 fsを、前記入出力比がその極大値に対し所定% (例え ば約 70%)以下になる範囲で設定する設定工程と、設定した周波数 fsで給電するこ とによりプラズマ処理を行う本処理工程とを実行することにしてもよレ、。これによつて、 少なくとも瞬間変動領域 R0を避けることができる。
[0024] 本発明は、コロナ放電等ではなぐグロ一放電によるプラズマ処理を行なうものであ るので、電極は、平等電界を形成する形状になっているのが好ましい。電極 (または 誘電体)の放電する部分は、面状であることが好ましい(以下、この面状部分を「放電 面」という。)。また、一対の電極間の距離は、略一定(一対の電極の放電面どうしが 平行)であるのが好ましい。これにより、電界集中によるアーク放電を防止できるととも に、均一なグロ一放電を発生させることができる。放電面どうし間の距離は、 0. 5mm 以上、 20mm以下が好ましぐ 1mm以上 7mm以下がより好ましい。放電面は、曲面 であっても良いが、曲率半径は大きい方が好ましく(R= 5mm以上)、平面がより好ま しい。また、放電面は、平滑 (つるつる)であることが好ましい。凸凹や突起があると、 火花が目立つので、好ましくない。これら条件を満たす電極構造としては、一対の平 板状電極を平行に対向させた平行平板電極型、ロール状(円筒状)電極とその周面 に沿う円筒凹面を有する凹面電極とからなるロール-凹面電極型、同軸をなす内外 一対の円筒状電極力 なる同軸円筒電極型などが挙げられる。
発明を実施するための最良の形態
[0025] 以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
〔上記第 1特徴に係る実施形態〕
図 1に模式的に示すように、常圧プラズマ処理装置は、電極構造 10と電界印加装 置(電源装置) 20とを備えている。電極構造 10は、互いに対向する一対の電極 11 ,
12にて構成されている。一対の電極 11, 12のうち少なくとも一方の対向面には、固 体誘電体 13が設けられている。ここでは、アース電極 12にのみ設けられている力 ホ ット電極 11に設けてもよく、両方の電極 11, 12に設けてもよレ、。これら電極 11 , 12間 の空間 10p (ホット電極 11とアース電極 12の固体誘電体 13との間)には、図示しない 処理ガス導入部によって処理ガスが導入されるようになっている。
[0026] 電界印加装置 20は、交番電源 21とトランス 22とを有している。交番電源 21は、例 えば、商用交流を整流して直流電圧にする整流部と、この直流電圧をスイッチングし て所望周波数の交番電圧を出力するインバータ(図 10の符号 21a参照)とを有して いる。交番電源 21のインバータには、周波数設定部 23が接続されており、この周波 数設定部 23によって交番電圧の出力周波数すなわち電極回路 1への給電周波数 fs を設定 '調節できるようになつている。なお、出力は、正弦波等の連続波でもよぐパ ノレス波等の間欠波でもよい。
[0027] トランス 22は、交番電源 21のインバータに接続された一次コイル 22aと、電極 11に 接続された二次コイル 22bとを有し、交番電源 21の出力電圧を昇圧して電極 11に供 給するようになっている。
これによつて、電極間空間 10pに交番電界が印加されてグロ一放電が起き、前記 処理ガス導入部からの処理ガスがプラズマ化(活性化、イオン化等を含む)される。こ のプラズマ化された処理ガスが半導体基板などの被処理物に当てられることにより、 被処理物の表面処理がなされるようになつている。なお、この処理は大気圧近傍の圧 力(略常圧)下で行なわれる。
[0028] トランス 22の二次コイル 22bと電極構造 10によって、電極回路 1が構成されている 。トランス 22には、漏れインダクタンス Lがある。また、電極構造 10は、キャパシタと見 做せる。したがって、電極回路 1は、 LC直列共振回路と考えることができる。その共 振周波数 f は、次式で表される。
ここで、 Lは、コイル 22bの漏れインダクタンスであり、 Cは、電極構造 10のキャパシ
タンスである。
[0029] 図 2は、電極回路 1の等価回路である。電極構造 10は、電極間空間 10pでのインピ 一ダンス成分 Zpと、固体誘電体 13でのキャパシタンス成分 Cdの直列接続になって いる。電極間空間 10pでのインピーダンス成分 Zpは、当該電極間空間 10pのキャパ シタンス Cpと抵抗 Rの並列接続で表される。固体誘電体 13のキャパシタンス Cdは、 該固体誘電体 1 3の厚さおよび断面積などの寸法形状や誘電率によって決まり、容 易に算出することができる。
[0030] 電極間空間 10pで放電が起きていない時 (非放電時)は、等価回路において、 R = ∞になる。したがって、電極構造 10のキャパシタンス C ( = C )は、次のようになる。
1
[数 2]
1 1 1
— =— +— (式 2 )
Cl Cp Cd 非放電時の電極間空間 10pのキャパシタンス Cpは、該空間 10pの厚さおよび断面 積などの寸法形状、並びに該空間 1 Op内に満たされた処理ガスの誘電率などの物 性に基づいて、容易に算出することができる。ひいては、式(2)により、非放電時のキ ャパシタンス Cを容易に算出することができる。
1
また、非放電時の電極回路 1の共振周波数 f ( = f )は、次式で表される。
r rl
[数 1(a)] ん= ~ = (式 l a ) これら式(l a)、(2)により、非放電時の電極回路 1の共振周波数 f を容易に算出す
rl
ることができる。以下、非放電時の共振周波数 f を、適宜「第 1共振周波数 f 」という
rl rl
[0031] 一方、電極間空間 10pでアーク放電が起きている時は、電極間空間 10pを導体と 見做すことができる。この時、図 2の等価回路において、 R = 0になる。したがって、電 極構造 10のキャパシタンス C ( = C )は、
2
C = Cd (式 3)
2
となる。また、アーク放電時の電極回路 1の共振周波数 f ( = f )は、次式で表される
r r2
[数 1(b)] ん= (式 1 b )
2TT /LC,
:れら式(lb)、(3)により、アーク放電時の電極回路 1の共振周波数 f を容易に算
r2
出すること力 Sできる。以下、アーク放電時 (電極間空間 ΙΟρを導体と見做せる時)の共 振周波数 f を、適宜「第 2共振周波数 f 」という。第 2共振周波数 f は、第 1共振周波
r2 r2 r2 数 f より小さい。すなわち、
rl
f く f (式 4)
r2 rl
である。
[0032] なお、第 1、第 2共振周波数 f , f は、実測でも求めることができる。すなわち、電極
rl r2
11 , 12間に、放電が発生するしきい値未満の振幅の電界が印加されるように、交番 電源 21の出力電圧を設定する。そして、出力周波数をスキャンし、トランス 22の一次 側ほたは二次側)の電流を測定する。この電流測定値がピークとなった周波数が、 第 1共振周波数 frである(図 6参照)。
[0033] また、図 3に示すように、一対の電極 11, 12どうしを電極間空間 10pの厚さ分だけ 近付けることにより、固体誘電体 13を挟んで当接させて電極間空間 10pを無くした電 極構造 10Xを作る。これによつて、アーク放電状態(電極間空間 10pを導体と見做せ る状態)と回路的に等価にすることができる。そして、上記と同様に出力周波数をスキ ヤンし、電流測定を行なう。この電流測定値がピークとなった周波数が、第 2共振周 波数 f である(図 6参照)。
[0034] プラズマ処理装置によってプラズマ表面処理を実行する際は、周波数設定部 23に よって、交番電源 21の出力周波数すなわち電極回路 1への給電周波数 fsの大きさ 、上記の計算または測定により得られた第 1、第 2共振周波数 f , f の間に入るよう
rl r2
に調節する。すなわち、次式の範囲内になるように調節する。
f < fs< f (式 5)
r2 rl
これによつて、電極間空間 10pにおいて、安定したグロ一放電を起こすことができ、良 好なプラズマ表面処理を行なうことができる。
[0035] また、式(5)を満たす範囲内に、出力効率がピークとなる周波数 f が必ず存在す
PEAK
る(図 6参照)。すなわち、次式の関係が成立する。
f < f < f (式 6)
r2 PEAK rl
給電周波数 fsをこのピーク値 f に設定することによって、極めて良好な出力効率
PEAK
を得ることができる。なお、電極間空間 ΙΟρで反応が進行し過ぎると被処理物の表面 での反応が減退することもあるので、そのような場合には、給電周波数 fsをピークから ずらして設定すると良い。
[0036] 給電周波数 fsの上限と下限、すなわち第 1、第 2共振周波数 f , f の値は、任意に
rl r2
変更することができる。例えば、図 4に示すように、電極回路 1の電極構造 10の前段 または後段に、実物のインダクタ Lxや実物のキャパシタ Cxを直列に介在させたり、 図 5に示すように、実物のインダクタ Lyや実物のキャパシタ Cyを電極構造 10と並列 に設けたりする。これによつて、第 1、第 2共振周波数 f , f をずらすことができ、ひい
rl r2
ては周波数設定範囲を変更することができる。勿論、電極回路 1の変形例は、図 4、 図 5に記載のものに限られず、多様な回路構成を採ることができる。
[0037] 上記式(5)で示された周波数設定範囲は、出力波形や処理ガスの種類や処理内 容ゃ装置構成などに依らず、汎用的に適用することができる。すなわち、出力波形は 、パルスでも正弦波でも方形波でもよレ、。また、成膜、エッチング、洗浄、アツシング、 表面改質などの種々のプラズマ表面処理に遍く適用でき、処理ガスの種類や装置構 成が限定されることもない。被処理物を電極間空間 10pの外部に配置する所謂リモ ート式と、電極間空間 10pの内部に配置する所謂ダイレクト式の何れの方式にも適用 できる。さらには、大気圧近傍での常圧プラズマ処理に限らず、減圧プラズマ処理に も適用可能である。
[0038] 〔実施例 1〕
発明者は、図 1と同様のプラズマ処理装置において、第 1、第 2共振周波数 f , f
rl r2 を上記実施形態の手法で実測した。すなわち、電源 21の出力電圧を 50Vとし、電極 11 , 12間の電界が放電のしきい値を下回るようにした。そのうえで周波数をスキャン し、トランス 22の一次側の電流を測定したところ、図 6の一点鎖線に示すように、ほぼ 65kHz ( = f )で電流のピークが現れた。
また、 2つの電極 11, 12を図 3に示すように当接させ、電流測定したところ、図 6の 二点鎖線に示すように、ほぼ 20kHz ( = f )で電流のピークが現れた。
r2
なお、図 6の電流値は、各測定における最大値を 100として規格化して示してある( 後記図 7も同様)。また、共振周波数 f , f を求める段階での電流値は、ピークにお
rl r2
いても微弱であり、後記のグロ一放電処理時のものと比べると相当に小さい。
[0039] その後、電極間空間 10ρに処理ガスとして窒素ガス 100%を導入しながら、電源 21 の電圧を 250Vにし、電極 11, 12間に交番電界を印加した。そして、周波数と電流 の関係を測定した。その結果、図 6の実線に示すように、 55kHz ( = f )において、
PEAK
電流のピークが現れた。これによつて、上記式 (6)に示す関係式 f < f < f が成り
r2 PEAK rl 立つことが確認された。なお、 fs = 55kHzのときの一次側電流は、 9. 2Aであり、投 入電力すなわち出力は 2300Wであった。電極の単位面積当たりに換算すると、 12 W/ cm2であった。
[0040] また、図 7に示すように、出力に比例して放電の発光強度が大きくなり、 f = 55k
PEAK
Hzのとき、最大となり、極めて良好で安定したグロ一放電が確認された。
式(5)に示す関係式 f < fs< f が成り立つ 20kHz— 65kHzの範囲では、電極間
r2 rl
空間 10pの全域で安定した放電を得ることができた。 65kHz ( = f )以上および 20k Hz ( = f )以下では、所望の放電を得るのが困難であった。
2
[0041] さらに、出力 2500W、周波数 55kHzの条件(A)と、その約 1/2の出力 1200Wで 周波数 30kHzの条件(B)とで、ガラスの洗浄能力(接触角と搬送速度)を比較した。 ガラスの搬送速度は、 lm/minと 2m/minの 2通りとした。なお、条件 (A)では、直 流から変換した交番電界を印加したのに対し、条件 (B)では、パルス電界を印加した 。その結果、図 8に示すように、条件 (A)は、条件 (B)に対して 2倍の搬送速度で同 等の接触角となり、処理能力が出力とほぼ比例することが確認された。
[0042] 〔実施例 2〕
上記実施例 1と同じ装置を用い、処理ガスをアルゴンガスに代えて、周波数と電流 の関係を測定したところ、図 6とほぼ同じ結果が得られた。式(5)に示す関係式 f < f
r2 sく f が成り立つ 20kHz— 65kHzの範囲では、電極間空間 10pの全域で安定した rl
放電を得ることができた。 20kHz以下では出力を上げると火花放電へ移行した。 65k
Hz以上では瞬時にアーク放電に移行し、安定放電できなかった。
[0043] 〔実施例 3〕
第 1共振周波数 f = 190kHz、第 2共振周波数 f = 75kHzの装置において、処理
rl r2
ガスとして窒素ガスを用レ、、上記実施例 1と同様に周波数 f を測定した。その結果
PEAK
、f = 150kHzであり、上記式(6)に示す関係式 f < f < f が成り立つことが確
PEAK r2 PEAK rl
認された。 190kHz以上では針放電となった。 75kHz以下では放電が起きなかった
[0044] さらに、出力 2000W、周波数 150kHz、直流から変換した交番電界の条件(C)と、 その約 1Z2の出力 1200W、周波数 30kHz、パルス電界の条件(D)とで、ガラスの 洗浄能力(接触角と搬送速度)を比較した。その結果、図 9に示すように、条件 (C)は 、条件(D)に対して 2倍の搬送速度で同等の接触角となり、処理能力が出力とほぼ 比例することが確認された。
[0045] 〔上記第 2特徴に係る実施形態〕
次に、第 2特徴に係る実施形態を説明する。上記第 1実施形態と重複する構成に 関しては、同一符号を付し、説明を適宜省略する。
図 10に示すように、この実施形態の常圧プラズマ処理装置の電極 11, 12は、大気 圧の空気雰囲気中に配置されている。雰囲気ガスは、空気に代えて、窒素でもよぐ ヘリウムやアルゴン等の希ガスでもよレ、。電極 11 , 12間の空間 10pには、図示しない 処理ガス導入部によって処理ガスが導入されるようになっている。電極間空間 10pの 厚さは、例えば lmmである。一対の電極 11 , 12のうち少なくとも一方の対向面には 、固体誘電体 13が設けられているが、その図示は省略する。
[0046] 電源装置(電界印加装置) 20は、インバータ 21aとトランス 22を有している。インバ ータ 21aは、直流電圧 Vをスイッチングして交流に変換するようになっている。
[0047] トランス 22は、インバータ 21aに接続された一次コイル 22aと、電極 11に接続された 二次コイル 22bとを有し、インバータ 21aの出力電圧を昇圧してホット電極 11に供給 する。これによつて、厚さ lmmの電極間空間 10pに、例えば Vpp= 10kV、給電周波 数 fsの交流電圧が印加され、大気圧グロ一放電が起き、処理ガス導入部からの処理 ガスがプラズマ化され、被処理物の常圧プラズマ表面処理がなされるようになつてい
る。
[0048] 上記第 1実施形態で説明したように、トランス 22の二次コイル 22b (漏れインダクタン ス L)と電極 11 , 12 (キャパシタ)からなる電極回路 1は、 LC直列共振回路を構成して いる。
電極間空間 10pのコンダクタンスは、非放電時にはゼロである力 放電時にはゼロ 以外の、し力も放電状態によって変動する値を示す。したがって、電極回路 1すなわ ち LC回路の放電時の固有振動周波数は、放電状態によって異なることになる。 一方、放電状態は、基本的には電極間への印加電圧によって変わる。したがって、 放電時の固有振動周波数は、印加電圧に依存するものと考えられる。
[0049] 上記構成の常圧プラズマ処理装置において、処理時の電極回路 1への給電周波 数 fsを設定する手順について説明する。
〔固有振動周波数の推定工程〕
実際のプラズマ処理(以下「本処理」という。 )に先立ち、予め、電極回路 1の本処理 時 (放電時)における固有振動周波数 f を推定しておく。推定方法として、例えば次
0
の掃引式、減衰波式等がある。
[0050] (掃引式の推定方法)
電極 11への印加電圧が本処理時の大きさ(Vpp = 10kV)に維持されるようにイン バータ 21aの入力電圧 Vを調節しながら、給電周波数 fsを 0—数百 kHzの範囲で掃 引する。そして、電圧 Vの調節値から入出力比 Vpp/Vを算出する。これによつて、 図 12に示すようなデータを得ることができる。そして、入出力比 Vpp/Vが極大にな つた時の周波数 f を電極回路 1の固有振動周波数と推定する。この掃引式では、 Vp
0
pZVがピークになるあたりすなわち瞬間変動領域 R0での出力暴走に注意する。
[0051] (減衰波式の推定方法)
図 11に示すように、インバータ 21aからトランス 22に周波数 f の間欠波状の電圧 V
1 1 を入力する。この間欠波 Vの各波要素は、短周期(l/f )の方形波になっている。
1 1A
各波要素の振幅は、インバータ 21aの入力電圧 Vによって決まる。この間欠波電圧 V の給電によって電極回路 1の電極 11に振動電圧 Vが生じる。この電圧 Vは、上記
1 2 2 間欠波電圧 Vの各波要素が出力されている期間中は、該波要素と同じ周波数で振
動する。一方、波要素がオフになった瞬間から、電圧 Vは、電極回路 1に固有の振
2
動数で振動しながら減衰していく。この減衰振動の初期のピーク間電圧 V ppが、上
2 記本処理時のピーク間電圧 Vpp ( = 10kV)と等しくなるように、上記間欠波 Vの各波
1 要素の振幅すなわちインバータ 21aの入力電圧 Vを設定しておく。
[0052] これによつて、減衰振動の少なくとも初期においては、電極間空間 10pを本処理時 と同様の放電状態にすることができ、本処理時と同じ固有振動数にすることができる 。この減衰振動の初期の、特に第 1波の周波数 f を測定する。すなわち、間欠波 V
0 1 の波要素がオフになった瞬間からの電圧 Vの 1サイクル分の時間(周期: l/f )を測
2 0 定する。これを本処理時における固有振動周波数 f と推定する。
0
[0053] 上記の測定は、間欠波 Vの波要素がオフになる度に繰返し行なレ、、その平均を取
1
るのが好ましい。これによつて、推定精度を高めることができる。間欠波 Vの 1つの波 要素と次の波要素の間の休止期間 t (= (l/f )- (l/f ) )は、減衰が十分に収束
1 1 1A
し得る程度に設定するのが好ましい。これにより、次の減衰波との重畳を避けることが できる。
推定固有振動周波数 f は、例えば 100kHz乃至 120kHzとなる。
0
[0054] 〔設定工程〕
次に、上記推定固有振動周波数 f に基づいて本処理時における給電周波数 fsを
0
設定する。最も望ましくは、上記の推定固有振動周波数 f の ± 50%の大きさになるよ
0
うに設定する。すなわち、
fs = f X (1-0. 5) =0. 5f …(式 7)
0 0
又は fs = f X (1 + 0· 5) = 1 · 5f …(式 8)
o o
に設定する。これは、安定スロープ領域 R2における変動領域 R1との境界となる周波 数である。例えば f = 120kHzの場合、 fs = 60kHzとなる。
0
そして、本処理工程において、設定周波数 fsで給電しながら常圧プラズマ処理を 実行する。これによつて、出力を安定化でき、し力 電力効率を高めることができる。
[0055] なお、図 12に示すように、出力の安定性の観点からは、給電周波数 fsは、推定固 有振動周波数 f のちようど ± 50%に限られず、それ以上ずらして設定してもよい。す
0
なわち、次式 9, 10で示される安定領域 R2, R3内であればよい。
fs≤f X (1-0. 5) =0. 5f …(式 9)
o o
又は fs≥f X (1 + 0. 5)=1. 5f …(式 10)
o o
[0056] ただし、ずらす範囲は、 ±80%程度でとどめるのが好ましい。これ以上ずらすと電 力効率が低くなり過ぎ、所望の出力を得るのが困難になってしまう。すなわち、次式 1 1, 12で示すように、安定領域のうちフラット領域 R3を除く。
fs≥f X (1-0. 8) =0. 2f …(式 11)
0 0
又は fs≤f X (1 + 0. 8)=1. 8f …(式 12)
0 0
[0057] 式 9一 12をまとめると、出力の安定性を確保でき、かつ、電力効率も稼ぐことのでき る給電周波数 fsの設定範囲は、次式 13, 14で示される安定スロープ領域 R2となる。
0. 2f ≤fs≤0. 5f …(式 13)
0 0
又は 1. 5f ≤fs≤l. 8f …(式 14)
0 0
[0058] また、処理時間が短レ、(例えば数分一 10分程度の)場合には、給電周波数 fsを推 定固有振動周波数 f に対し少なくとも ±25%以上ずらせばよぐ ±50%より推定固
0
有振動周波数 f の側に設定してもよい。すなわち、次式 15, 16で示される緩慢変動
0
領域 R1内に設定してもよレ、。
0. 5f <fs≤0. 75f ( = f X (1-0. 25)) …(式 15)
0 0 0
又は 1· 5f >fs≥l. 25f ( = f X (1+0. 25)) …(式 16)
0 0 0
この緩慢変動領域 Rlでは、電力効率が非常に高くなり、大出力を得ることができる。 入出力比は経時的に上昇していくが、その程度は緩慢であり、瞬時に上昇することは なレ、。したがって、処理を短時間で終えてオフにすれば、インバータ 21aや電極 11, 12が破壊に至ることはない。
[0059] 給電周波数 fsを推定固有振動周波数 f に対し少なくとも ±25%以上ずらすことに
0
よって、入出力が瞬間的に変動する領域 R0(0. 75f <fs<l. 25f )を避けることが
0 0
でき、大電流によってインバータ 21aの素子や電極 11, 12が破壊されるのを防止す ること力 Sできる。
[0060] 上記では、推定固有振動周波数 f を基準にしていたが、それに代えて、入出力比
0
VppZVを基準にして給電周波数 fsを設定することにしてもよい。
詳述すると、先ず、予備工程として、給電周波数 fsと入出力比 Vpp/Vとの関係を
求めておく。その方法は、前述した「掃引式」と実質的に同じである。すなわち、電極 11への印加電圧が本処理時の大きさ(Vpp = 10kV)に維持されるようにインバータ 21aの一次側電圧 Vを調節しながら、給電周波数 fsを 0—数百 kHzの範囲で掃引す る。そして、電圧 Vを測定し、給電周波数 fsに対する入出力比 VppZVを算出してデ ータ化する。
[0061] 次に、設定工程として、本処理時における給電周波数 fsを、前記入出力比 Vpp/ Vがその極大値に対し例えば 70%以下になる範囲内で設定する。これによつて、少 なくとも瞬間変動領域 R0を避けることができ、電極 11, 12やインバータ 21aの破壊を 防止することができる。
産業上の利用可能性
[0062] この発明は、例えば、半導体の製造工程において、半導体基板の洗浄、成膜 (CV D)、エッチング等の表面処理技術に利用可能である。
図面の簡単な説明
[0063] [図 1]本発明の第 1特徴に係る実施形態を示し、常圧プラズマ処理装置の概略回路 図である。
[図 2]前記装置の電極回路の等価回路図である。
[図 3]前記装置において第 2共振周波数を測定する方法の解説図である。
[図 4]前記装置の電極回路の変形例を示す回路図である。
[図 5]前記装置の電極回路の他の変形例を示す回路図である。
[図 6]実施例 1による周波数と電流の関係の測定結果を示すグラフである。
[図 7]実施例 1による出力とプラズマの発光強度の関係の測定結果を示すグラフであ る。
[図 8]実施例 1による処理条件と処理能力(搬送速度ごとの接触角)の関係の測定結 果を示すグラフである。
[図 9]実施例 3による処理条件と処理能力(搬送速度ごとの接触角)の関係の測定結 果を示すグラフである。
[図 10]本発明の第 2特徴に係る実施形態を示し、常圧プラズマ処理装置の概略回路 図である。
[図 11]図 10の装置において固有振動周波数を減衰波式で推定するためのインバ タ出力電圧 VIと電極電圧 V2の波形グラフである。
[図 12]放電時の給電周波数に対する入出力比の関係を示すグラフである。
符号の説明
1 電極回路 (LC回路)
10 電極構造
10p 電極間空間
11 ホット電極
12 アース電極
13 固体誘電体
20 電界印加装置 (電源装置)
21 交番電源
21a インバータ
22 卜ランス
22a 一次コイル
22b 二次コイル(インダクタ)
23 周波数設定部
Lx, Ly 実物のインダクタ
Cx, Cy 実物のキャパシタ
fs 給電周波数
f ピーク周波数
PEAK
f 第 1共振周波数
rl
f 第 2共振周波数
f 推定固有周波数
0
R0 瞬間変動領域
R1 緩慢変動領域
R2 安定スロープ領域
R3 安定フラット領域