明 細 書
核酸検出方法
技術分野
[0001] 本発明は、標的核酸の検出方法に関する。
背景技術
[0002] RT— PCRは、増幅対象塩基配列が RNAである場合に、逆転写酵素を用いて RN Aを cDNAに転写し、その後 PCRを行うものである。したがって、 SARSウイノレス、ィ ンフルェンザウィルス、 HCVウィルス等のヒトに対して重篤な影響を与える RNAウイ ルスの検出には、 RT-PCR法が用いて cDNAを増幅し、増幅された cDNAをプロ一 ブで検出する方法が利用されてきた。
しかし、検出用プローブは、 DNAであるため、 DNA分解酵素に感受性であり、室 温での管理が困難である等の DNAの有する性質に由来する欠点を有していた。 この欠点を解消する方法として、 DNA分解酵素に耐性である PNAを用いる方法が 提唱されてレ、る(特許文献 1及び 2)。
また、 RT— PCR法による SARSコロナウィルス遺伝子の検出における RT-PCRの 感度は、使用する酵素のメーカーや PCRチューブの材質、サーマルサイクラ一の機 種によって大きく影響を受けることが知られている(非特許文献 1)。
したがって、優れた検出感度を有するウィルス検出方法及び検出用キットの開発が 望まれている。
特許文献 1:特許 2758988号公報
特許文献 2:特表平 11-512617号公報
非特許文献 1:国立感染症研究所ウィルス第三部第 1室、 RT— PCR法による SARS コロナウィルス遺伝子の検出、 [online]、平成 15年 5月 16日、 [平成 15年 7月 14日 ;^」、インタ1 ~~ネッ 、 http://idsc.mh.go.jp/otners/urgent/update56-b.html 発明の開示
[0003] したがって、本発明は、生物学的試料中において、優れた検出感度を有する核酸 検出方法及び検出用キットを提供することを目的とする。
[0004] 本発明者らは、従来技術の上記課題を解消すべく研究を重ねた結果、驚くべきこと に、ペプチド核酸を利用することによって、従来のウィルス検出法に比べて著しく優 れた検出感度を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
[0005] すなわち、この発明は、
下記工程:
(a)増幅された標的核酸を、固相担体に結合させた第 1のプローブと接触させ、増幅 された標的核酸を第 1のプローブに結合させる工程、
(b)結合しな力つた標的核酸を除去する工程、
(c)蛍光分子で標識された第 2のプローブを、第 1のプローブに結合した標的核酸と 接触させ、該第 2のプローブを標的核酸に結合させる工程
(d)結合しなかった第 2のプローブを除去する工程、及び
(e)標的核酸に結合した第 2のプローブの蛍光を検出する工程
を含む標的核酸を検出するための方法である。
[0006] また、この発明は、第 1のプローブ及び第 2のプローブが、ペプチド核酸である、標 的核酸を検出するための方法である。
[0007] また、この発明は、固相担体が、メチルベンズヒドリルァミン樹脂である、標的核酸を 検出するための方法である。
[0008] また、この発明は、固相担体の形状が、球状である、標的核酸を検出するための方 法である。
[0009] また、この発明は、固相担体当たりの第 1のプローブ数力 1一 100個である、標的 核酸を検出するための方法である。
[0010] また、この発明は、蛍光分子が、 Qdot (登録商標)である、標的核酸を検出するた めの方法である。
[0011] また、この発明は、上記工程 (a)の前に、さらに、標的核酸を増幅する工程を含む、 標的核酸を検出するための方法である。
[0012] また、この発明は、標的核酸が、生物学的試料中に存在する、標的核酸を検出す るための方法である。
[0013] また、この発明は、標的核酸が、ウィルスである、標的核酸を検出するための方法
である。
[0014] また、この発明は、ウィルス力 HBV、 HCV、 HIV、 SARSウィルス又はインフルェ ンザウィルスである、標的核酸を検出するための方法である。
[0015] また、この発明は、標的核酸当たりの第 2のプローブの数力 1一 20個である、標的 核酸を検出するための方法である。
[0016] また、この発明は、固相担体に結合させた第 1のプローブ及び蛍光分子で標識され た第 2のプローブを含む、核酸検出用キットである。
[0017] 本発明のウィルス検出方法は、生物学的試料において、従来のウィルス検出法に 比べて著しく優れた検出感度を有するという効果を有する。
発明を実施するための最良の形態
[0018] この発明において、標的核酸は、特に制限されることなぐ公知のいずれの DNA及 び RNAを用いることができる。好ましくは、標的核酸は、ウィルスであり、より好ましく は、 HBV、 HCV、 HIV, SARSウィルス又はインフルエンザウイルスのようなヒトに重 篤な影響を与える外来性ウィルスである。
[0019] 核酸の増幅は、特に限定されるものでなぐ公知のいずれの方法も採用することが でき、例えば、 DNAや cDNAの増幅には、 PCR法、 LAMP法(特許第 3313358号 公報)や ICAN法(特開 2001—136965)を用いることができる。
[0020] 本発明で PCR (ポリメラーゼチェイン反応)とは、 2本鎖の DNAの特定領域のみを 繰り返し複製し、増幅する方法をいい、また、 RT— PCRとは、増幅対象塩基配列が R NAである場合に、逆転写酵素を用いて RNAを cDNAに転写し、その後 PCRを行 い、増幅対象塩基配列の増幅を行うものをレ、う。
[0021] PCRや RT— PCRに用いる酵素、バッファ一等は、市販の RT— PCRキット、例えば 、プロメガ社製 ImProm—ΠΤΜ Reverse Transcription System 用いること力、 できる。また、 PCRや RT— PCRの実施条件は、製造業者の指示にしたがって行うこ とがでさる。
[0022] PCRの反応液は、通常、バッファー、 MgClや KC1等の塩類、プライマー、デォキ シリボヌクレオチド類、及び耐熱性ポリメラーゼを含む。上記塩類は、適宜、他の塩類 に変更して使用することができる。また、ゼラチン、アルブミン等のタンパク質、ジメチ
ルスルホキシドゃ界面活性剤等を添加することもできる。
[0023] 本発明でプローブとは、標的核酸の一部又は全部の塩基配列と同一又は相補的 な塩基配列を有する核酸をいい、標的核酸と特異的に結合することができるものをい う。プローブは、ペプチド核酸であることが好ましい。
[0024] 本発明で第 1のプローブとは、標的核酸の一部又は全部の塩基配列と相補的な塩 基配列を有する核酸であり、好ましくは、標的核酸の末端部分の塩基配列と相補的 な塩基配列を有する核酸である。固相担体当たりの第 1のプローブの数は、好ましく は、 1一 100個であり、より好ましくは、 1一 10個であり、最も好ましくは、 4一 6個であ る。
[0025] 本発明で第 2のプローブとは、蛍光分子で標識された、標的核酸の一部又は全部 の塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸であり、上記第 1のプローブの塩基配 歹 1Jと相互に重複しないことが望ましい。標的核酸当たりの第 2のプローブの数は、好 ましくは、 1一 20個であり、より好ましくは、 1一 10個であり、最も好ましくは、 3— 5個 である。
[0026] 本発明の蛍光標識としては、公知の任意の蛍光標識を用いることができ、好ましく は、フルォレセインイソチオシァネート、テトラメチルローダミンイソチオシァネート、 Q dot (登録商標)であり、より好ましくは Qdot (登録商標)である。
[0027] 本発明における固相担体としては、任意の樹脂を用いることができ、好ましくは、メ チルベンズヒドリルァミン樹脂、ラテックス樹脂又は磁性粒子であり、より好ましくは、メ チルベンズヒドリルァミン樹脂である。
[0028] 固相担体は、任意の形状であることができ、好ましくは、球状である。大きさ(粒径) は、好ましくは 20nm— 2000 z m、より好ましくは 20 30 μ mである。
[0029] ペプチド核酸 (PNA)は、ニールセンによって開発されたペプチド骨格に核酸塩基 を有する分子であり(Nielsen, P.E. et al、 Science, 254, (1991)、 1497-1500頁)、具体 的には、 2_アミノエチルダリシンを骨格単位とし、これにメチレンカルボ二ル基を介し て核酸塩基を結合させた構造を有する化合物である(特許第 2758988号公報)。
[0030] PNAは、 DNAや RNAにはない下記の利点を有する:
(a) DNAや RNAの糖リン酸骨格は、中性条件で負電荷を帯びていて相補鎖間の静
電的な反発があるが、 PNAの背骨構造は、もともと電荷を有さないので静電的な反 発がない。そのため、ハイブリダィゼーシヨン時の pHや塩濃度に依存しない。
(b) PNAや PNA/DNAは、核酸分解酵素やタンパク質分解酵素に対して耐性を 示すため、保存が容易であり、また、細胞内で用いることができる。
(c) PNA/DNA複合体は、 DNAZDNA複合体に比べてより安定であるので、 DN Aに比べてより短レ、長さのプライマーを用いることができる。
(d) PNAは、相補的な塩基配列を有する DNAや RNAに対して従来の核酸に比べ て非常に高い融解温度 (Tm)を示し、この融点は、ミスマッチと呼ばれる非相補的な 塩基力^つ導入されるだけで大きく低下することから、きわめて優れた塩基特異性を 有する。
[0031] PNAの合成は、 DNA又は RNAを構成する 4種の塩基(A、 T (U)、 C及び G)のい ずれかを導入したアミノ酸(特にグリシン)誘導体 (モノマーユニット)を、 目的とする塩 基配列にしたがって、通常の固相ペプチド合成法を用いて順次結合していくことによ つて行うことができる。
[0032] また、合成ペプチドと同様に、ペプチド合成機を用いて、従来の Fmoc法又は tBoc 法で合成することができる。
[0033] 蛍光色素のような機能性分子を導入した PNAは、例えば、特願 2002— 121667に 記載の方法にしたがって製造することができる。
[0034] 即ち、保護基によって保護されたアデニン、グァニン、シトシンまたはチミンを有する PNAモノマーユニットを、 Fmoc— ω—アミノ酸一 Β∞ΡΝΑ_ΟΗと反応させて PNAオリ ゴマーを合成した後、ピぺリジン処理によって Fmoc— ω—アミノ酸部位の脱保護を行 つて末端アミノ基を有する ω—アミノ酸へと変換し、該 ΡΝΑオリゴマ一一に遊離カル ボン酸を有する機能性分子を縮合導入し、さらに前記保護基の脱保護を超強酸処 理によって行うことで、機能性 ΡΝΑオリゴマーを製造することができる。
[0035] プローブの標的となる塩基配列としては、例えば、早期診断を目指すウィルス中の 比較的安定な塩基配列である。その配列の中から、 Tm、 GC含量、同一塩基の繰り 返し数、設計対象領域、ノ、イブリダィゼーシヨン時の塩濃度等の条件を考慮して、約 15塩基対の長さを有する塩基配列を 1箇所又は複数箇所を標的配列として選択す
ることができる。プローブの配列は、標的配列と相補的である力 お互いが重ならな レ、ように設計することが好ましレ、。
[0036] 本発明の生物学的試料としては、動植物組織、体液、排泄物等の生体にゆらいす る任意の試料を用いることができる。
実施例 1
[0037] SARS検出用 PNAの合成
( ¾§R歹 llf忍 il^雷 の キ尺)
検出対象ウィルスとして、 SARSウィルスを選択した。 SARSウィルスのゲノムは、一 本鎖、 +鎖の RNAからなる。 SARSウィルスの全ゲノム配列は、 2003年 4月 17日に 受入番号 AY278741で GenBankに登録されている。プローブは、 SARSウィルス の全ゲノム配列の中の比較的安定な領域である塩基配列 15271 15400の中から
、 3箇所の連続する 15塩基対からなる配列をプローブとして選択した (pSARlsl (1
5)、 pSARls2 (15)、 pSARls3 (15) )。また、これらの配列に相補的な配列もプロ ーブとして選択した(pSARlasl (15)、 pSARlas2 (15)、 pSARlas3 (15) )。さら に、これらの配列の中から連続する 12塩基対からなる配列をプローブとして選択した
。プローブとして選択した配列を下記に示す。
[0038] AAACATAACACTTGC pSARlsl (15)
TCACACCGTTTCTAC pSARls2 (15)
CTAACGAGTGTGCGC pSARls3 (15)
GCAAGTGTTATGTTT pSARlasl (15)
GTAGAAACGGTGTGA pSARlas2 (15)
GCGCACACTCGTTAG pSARlas3 (15)
CATAACACTTGC pSARlsl (12)
CACCGTTTCTAC pSARls2 (12)
ACGAGTGTGCGC pSARls3 (12)
AGTGTTATGTTT pSARlasl (12)
GAAACGGTGTGA pSARlas2 (12)
CACACTCGTTAG pSARlas3 (12)
[0039] (塩某配列認識領域: pSARlsl (15)の調製)
固相 Fmoc法 (Thomson, S. A.; Josey, J. A.;し aailla, R.; Gaul, M. D.; Hassmam,
C. F.; Lussio, M. J.; Pipe, A. J.; Reed, K.し; Ricca, D. J.; Wiethe, R. W.; Noble, S.
A. Tetrahedron 1995, 51, 6179-94)に従い、固相担体 MBHA(50mg、 24.5 μ mol
)に各塩基の PNAモノマーユニット(チミン 10. lmg、シトシン 14. Omg、アデニン 14.
Omg、グァニン 14.8mg;各 20 zmol;アプライドバイオシステムズ社から購入)と縮合 剤 HATU(7.6mg、 20 μ mol)と DIEA(7.0 zL、 20 μ mol)を用レヽて逐次伸長反応 を行った。
[0040] (アミノリンカ一部位の調製)
次いで、ァミノリンカ一用 ω—アミノ酸一 Boc— 7—ァミノヘプタン酸(5.2mg、 20/imol
)を、縮合剤 HBTU(7.6mg、 20 μ mol)と DIEA (ジイソプロピルェチルァミン; 7· 6 mg、 20 μ mol)を用いて縮合させた。
[0041] (pSARlsl (15, NH )の精製)
2
ユニットを逐次縮合したあと、常法 (TFA (トリフルォロ酢酸)/ TFMSA (トリフルォ ロメタンスルホン酸)/ p—タレゾール /チオア二ソール = 60/25/10/10)により 固相担体からの切り出しと Boc基の脱保護を同時に行レ、、後処理して、 目的とする p SARlsl(15, NH )を得た。分子量(C H N O の計算値)は、 4180.10であり
2 169 216 90 42
、 UV-max(H〇) ίま、 303及び 548 (nm)であった。
2
[0042] また、同様な手法を用いて、異なった塩基配列を有する 11種類の SARS検出用 P NAをさらに合成した。 名称 構造式 分子量
(計算値) pSARls2 (15,NH2) H2N- (CH2) 7 - CONH - TCACACCGTTTCTAC - C0NH2 4072.08 pSARls3 (15,NH2) H2N - (CH2) ,- CONH - CTAACGAGTGTGCGC - C0NH2 4244.10 pSARlasl (15,NH2) H2N- (CH2) 7 - CONH - GCAAGTGTT ATGTTT - C0NH2 4204.08 pSARlas2 (15,NH2) H2N- (CH2) 7 - CONH - GTAGAAACGGTGTGA - C0NH2 4332.18 pSARlas3 (15,NH2) H2N- (CH2) 7 - CONH - GCGCACACTCGTTAG - C0NH2 4264.12 pSARlsl (12,NH2) H2N- (CH2) 7 - CONH - CATAACACTTGC - C0NH2 4072.08 pSARls2 (12,NH2) H2N- (CH2) , - CONH - CACCGTTTCTAC - C0NH2 3293.30 pSARls3 (12,NH2) HZN- (CH2) 7 - CONH - ACGAGTGTGCGC - C0NH2 3451.34 pSARlasl (12,NH2) H2N- (CH2) 7 - CONH - AGTGTTATGTTT - C0NH2 3370.30 pSA las2 (12,NH2) H2N- (CH2) , - CONH - GAAACGGTGTGA - C0NH2 3499.39 pSARlas3 (12,NH2) H2N- (CH2) , - CONH - CACACTCGTTAG - C0NH2 3446.35
実施例 2
[0043] SARS検出用 PNAである pSARlsl (15,ピオチン)(構造式:ピオチン一 CONH—
(CH ) -CONH-AAACATAACACTTGC-CONH、ピオチンは、ビタミン Hの ことである。)の合成
[0044] 精製した pSARlsl (15, NH ) (lmg、 0. 25 μ mol)を DMF (ジメチルホルムアミド
; 100 し)、ビォチン0311 ( 111¾、 3 μ πιο1)と DIEA(lmg)を用いて縮合させた。後処 理して、 HPLCで精製して、 目的とする pSARlsl (15,ピオチン)を得た。分子量(C H N 〇 Sの計算ィ直) ίま、 4406. 41であった。
[0045] また、同様な手法を用いて、異なった塩基配列を有する 11種類の SARS検出用 Ρ NAをさらに合成した。
[0046] SARS検出用 PNAである pSARls2 (15, FITC) (構造式:フルォレセイン _CSN H-(CH ) _CONH-TCACACCGTTTCTAC— CONH )の合成
[0047] 精製した pSARls2 (15, NH ) (lmg、 O. 25 μ mol)を DMF (ジメチルホルムアミド
; 100 x L)に溶解し、 FITC (lmg、 3 μ mol)と DIEA(lmg)を用いて縮合させた。後 処理して、 HPLCで精製して、 目的とする pSARls2 (15, FITC)を得た。分子量(C H N 〇 Sの計算ィ直) ίま、 4406. 41であった。
[0048] また、同様な手法を用いて、異なった塩基配列を有する pSARls3 (15, FITC) ( 構造式:フルォレセイン—CSNH— (CH )— CONH— CTAACGAGTGTGCGC—
CONH )をさらに合成した。
実施例 4
[0049] SARS検出用 PNAを結合したマイクロビーズの調製(その 1)
pSARlas3 (15, NH ) (最終濃度 100 μ M)の 50mMリン酸バッファー (pH 6. 0) 溶液に l %Estapor (Duke Scientific Co卬 oration社製磁性粒子)を加え、 20分撹拌 した後、 WSCI塩酸塩 (最終濃度 100 /i M)をカ卩えて、縮合反応を室温で 3時間行つ た。反応終了後、磁石にて磁性粒子を固定した後、残りの反応溶液を捨て、次いで 5 OmMリン酸バッファー (pH 6. 0)溶液で 2回洗浄した。乾燥させた後、 50mMリン酸バ ッファー (pH 7. 2)溶液を加え、懸濁液として 4°Cで保存した。
実施例 5
[0050] SARS検出用 PNAを結合したマイクロビーズの調製(その 2)
pSARlas3 (15, NH ) (最終濃度 100 μ M)の 50mMリン酸バッファー (pH 6. 0) 溶液に 1 %試薬用ラテックス(Lot. # C97D07C,粒径 0. 304 μ πι)をカロえ、 20分撹 拌した後、 WSCI塩酸塩 (最終濃度 100 μ Μ)をカ卩えて、縮合反応を室温で 3時間行 つた。反応終了後、遠心操作(1000卬 m, 5分)して、ペレットを回収し、次いで 50mM リン酸バッファー(pH 6. 0)溶液で 2回洗浄した。乾燥させた後、 50mMリン酸バッフ ァー(pH 7. 2)溶液を加え、懸濁液として 4°Cで保存した。
実施例 6
[0051] SARS検出用 PNAを結合したマイクロプレートの調製
pSARlsl (12,ピオチン)、 pSARlas3 (12,ピオチン)、 pSARlsl (15,ビォチ ン)及び pSARlas3 (15,ピオチン)(各最終濃度 320nM)の lOOmMTris—HCKpH 7. 5)、 150mMNaClと 0. l%Tween20の混合溶液をストレプトアビジン塗布 96ゥヱ ルマイクロプレートの各ゥヱルに 50 を注ぎ、室温で 3時間撹拌した。各ゥヱルを 10 OmMTris-HCKpH 7. 5)、 150mM NaClと 0. 1% Tween20の混合溶液を用いて 3回洗浄した。
実施例 7
[0052] PNAマイクロビーズを用いた SARS検出擬似実験 (その 1)
pSARlslを結合した Estapor型磁性粒子懸濁液 5mLと SARSウィルス由来 cDN
GTGATAAGTTACAGCAAGTGTTATGTTT-3 ' ) (最終濃度 1 OnM)の反応 溶液 50mLを 94°Cで 5分間アニーリングし、 10分間放冷した。その後磁石で磁性粒 子を引き寄せた後、 50mM リン酸バッファー(pH 7. 2)で洗浄した。その後、 pSA Rls2 (15, FITC)と pSARls3 (15, FITC) (各最終濃度 lOnM)を加え、 10分撹拌 して、同様に洗浄した。対象群として、 Estapor型磁性粒子のみの群を設けた。
[0053] その結果、対象群においては、蛍光が検出されなかったのに対し、 pSARlsl処理 群では、強度の蛍光が目視によって観察された。
実施例 8
[0054] PNAマイクロビーズを用いた SARS検出擬似実験 (その 2)
pS AR1 s 1を結合したセキスィ試薬用ラテックス粒子懸濁液 5mLと S ARSウィルス由 来 cDNA断片 SARlas (5 ' -GCGCACACTCGTTAGCTAACCTGTAGAAA CGGTGTGATAAGTTACAGCAAGTGTTATGTTT-3 ' ) (最終濃度 1 OnM) の反応溶液 50mLを 94°Cで 5分間アニーリングし、 10分放冷した。その後磁石で磁 性粒子を引き寄せた後、 50mMリン酸バッファー (pH 7. 2)で洗浄した。その後、 pSA Rls2 (15, FITC)と pSARls3 (15, FITC) (各最終濃度 lOnM)を加え、 10分撹拌 して、同様に洗浄した。対象群として、ラテックス粒子懸濁液のみの群を設けた。
[0055] その結果、対象群においては、蛍光が検出されなかったのに対し、 pSARlsl処理 群では、強度の蛍光が目視によって観察された。
実施例 9
[0056] PNAマイクロプレートを用いた SARS検出擬似実験
Nunc社製アビジン固定プレートに pSARls2を 1ゥエル当たり 100 μ 1添加し、室温 で 30分インキュベートした。各ゥエルを PBS— Τにて洗浄した後、ピオチンの PBS溶 液を 1ゥヱル当たり ΙΟΟ μ Ι添加し、さらに各ゥヱルを PBS-Tにて洗浄し、未反応のァ ビジンを処理した。本反応プレートに SARSウィルス由来 DNA断片 SARlas (5 ' _G
TTAG— 3' )の PBS溶液を 1ゥヱル当たり ΙΟΟ μ Ι添加し、室温で 30分インキュベート した。各ゥエルを PBS— Τにて洗浄した後、 SARS検出用 ΡΝΑである pSARlsl (15
,ピオチン)(構造式:ピオチン—CONH— (CH ) -CONH-AAACATAACACTT
GC-CONH、ピオチンは、ビタミン Hのことである。)の PBS溶液を 1ゥエル当たり 10
Ο μ ΐ添カロし、室温で 30分インキュベートした。各ゥエルを PBS— Τにて洗浄した後、ァ ビジン標識 HRPの PBS溶液を 1ゥヱル当たり 100 ζ 1添加し、室温で 30分インキュべ ートした。各ゥヱルを PBS— Τにて洗浄した後、 Η Ο含有 ΤΜΒ溶液を 1ゥヱル当たり
2 2
100 μ ΐ添カロし、室温で 30分間発色反応を行った。各ゥヱルを PBS— Τにて洗浄した 後、 2ΝΗ SOを 1ゥヱル当たり 50 μ ΐ添カ卩し、反応を停止し、分光光度計にて波長 4
2 4
50nmでの吸光度を測定した。
[0057] その結果、 SARSウィルス由来 DNA断片 SARlasの濃度依存的に、蛍光強度の 増大が観察された。
DNA (nM) 吸光度(450nm)
0. 00 0. 0538
0. 25 0. 0600
0. 74 0. 1990
2. 22 0. 5120
6. 67 0. 8600
20. 00 1. 2249
60. 00 1. 7388
実施例 10
[0058] PNAマイクロプレートを用いた SARS検出擬似実験(その 2)
Nunc社製化学結合用カルボン酸固定プレートに pSARls3 (15, NH )の EDC含
2 有溶液を 1ゥヱル当たり 100 μ ΐ添加し、室温で 30分インキュベートした。各ゥヱルを Ρ BS— Τにて洗浄した後、本反応プレートに SARSウィルス由来 DNA断片 SARlas (
CTCGTTAG-3' )の PBS溶液を 1ゥエル当たり 100 μ 1添加し、室温で 30分インキ ュペートした。各ゥエルを PBS— Τにて洗浄した後、 SARS検出用 ΡΝΑである pSAR ls2 (15,ビォチン)の PBS溶液を 1ゥヱル当たり 100 μ ΐ添加し、室温で 30分インキュ ペートした。各ゥエルを PBS— Τにて洗浄した後、アビジン標識 HRPの PBS溶液を 1
ウエノレ当たり 100 z l添カロし、室温で 30分インキュベートした。各ゥエルを PBS—Tにて 洗浄した後、 Η Ο含有 ΤΜΒ溶液を 1ゥヱル当たり 100 μ ΐ添カ卩し、室温で 30分間発
2 2
色反応を行った。各ゥヱルを PBS— Τにて洗浄した後、 2ΝΗ SOを 1ゥヱル当たり 50
〇 〇 〇 〇 2 4
μ ΐ添カ卩し、反応 〇O Lを停止し、分光光度計にて波長 490nmでの吸光度を測定した。
〇0 0
[0059] その結果、 SARSウィルス由来 DNA断片 SARlasの濃度依存的に、蛍光強度の 増大が観察された。
DNA (nM) 吸光度(450nm)
0. 00
0. 08
0. 25 0. 12
0. 74
2. 22
6. 67 2. 47
20. 00 測定範囲超過
60. 00 測定範囲超過
[0060] また、 pSARls2 (15,ピオチン)を固定した Nunc社製アビジン固定プレートと比較し た場合、 DNAの検出感度の 10倍程度の増大が認められた。
[0061] 実施例 10において、反応プレート上に SARSウィルス由来 DNA断片 SARlas、 SA RS検出用 PNAである pSARls2 (15,ピオチン)を段階的にハイブリダィゼーシヨン させたが、反応プレート上に SARSウィルス由来 DNA断片 SARlasと SARS検出用 pSARls2 (15,ピオチン)を同時にハイブリダィゼーシヨンさせた場合も、実施例 10 と同様な感度の高い検出能が得られた。
[0062] 以上の結果から、生体内ウィルスの、複数の検出用 PNAによる同時検出が可能であ ることが示された。これは、複数のハイブリダィゼーシヨンを一括して行うことができる ことを意味し、迅速且つ高感度な標的核酸検出が可能であることを示した。
産業上の利用可能性
[0063] 本標的核酸の検出方法を用いることにより、第 2プローブ集積に伴った検出感度の 著しい増加が予想される。このことは、従来の検出方法では検出できなかった極微量
にしか存在しない生体内ウィルスの有無を、 PCR法等の増幅方法をとらなくても、確 認できることを示す。極微量ウィルスの検出は人類の感染症問題を解決する手段とし て、また、感染症予防の観点からも、必須な事柄であり、今後この検出方法は新規産 業創出のシーズとなり得る。