JP2004/005557
1 明細書 細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤 技術分野
本発明は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) の阻害剤に関する。 背景技術
正常細胞の癌細胞への転換は、 一連の遺伝的、 生化学的、 構造的変化を伴う。 その際に生じる分子レベルの違いを標的とする癌分子標的治療は、 癌細胞の増悪、 進展をより高い選択をもつて抑制する治療手段として期待される。 代表的な分子 標的薬として、 近年開発された慢性骨髄性白血病治療薬グリベック (bcr-abl遺 伝子から発現する p210 タンパク質キナーゼを標的とする) や肺癌治療薬ィレツ サ (上皮細胞成長因子の受容体型チロシンキナーゼを標的とする) などが挙げら れる。
細胞の癌化に伴う生化学的な変化という点で、 正常細胞と癌細胞のエネルギー 代謝に本質的な差異があることが古くから知られている (たとえば、 非特許文献 1および 2参照)。 ある種の癌細胞は正常細胞に比べて高い解糖速度を示するた め、 宿主のエネルギーを奪い衰弱させる。 エネルギー代謝の亢進した癌細胞では、 ATP の需要が酸化的リン酸化による供給を超えるためにアデニンヌクレオチド の存在比率 (ATP/ADP) が変わり、 解糖系の律速酵素に阻害がかからなくなる。 その際、 解糖によるピルビン酸生産速度がクェン酸サイクルによる処理速度を上 回ると、 好気条件で多量の乳酸が生産される。 乳酸は、 ATP を消費しながら解 糖系を逆行する糖新生系の主要な基質であり、 転移を伴う癌患者において、 この 乳酸からの糖新生系の亢進がエネルギー消費量の増加と体重の減少に関連してい ることが指摘されている (たとえば、 非特許文献 3参照)。
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2 さらに、 解糖系においてダリセルアルデヒドー 3—リン酸脱水素酵素が触媒す る反応段階で生成する ADH は、 リンゴ酸ーァスパラギン酸シャトルなどのシ ャトル系を介して細胞質からミ トコンドリァ内の電子伝達系に供給され、 酸化的 リン酸化の効率上昇に寄与している。 解糖系の亢進したある種の癌細胞では、 こ の NADHの輸送系が活発に機能しており、 酸化的リン酸化で生じる全 ATP量の 約 3分の 1がリンゴ酸ーァスパラギン酸シャトルで運ばれる NADH に由来する という報告がある (たとえば、 非特許文献 4参照)。 本シャ トル系に関与する酵 素として、 リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) とァスパラギン酸ァミノ基転移酵 素 (それぞれ、 細胞質型とミトコンドリア型の 2種類がある) が知られており、 癌細胞における活性の変化が指摘されている (たとえば、 非特許文献 5参照)。 以上の知見から、 糖新生やリンゴ酸一ァスパラギン酸シャトル、 およびそれら と同調しているクェン酸サイクル、 有機酸代謝、 アミノ酸代謝などを制御してい る代謝酵素群の中には、 有効な新規抗癌療法の分子標的となりうるものが含まれ ていると考えられる。 事実、 ァスパラギン酸ァミノ基転移酵素を阻害する レ glutamic acid γ -monohydroxamate力 in vitroなりぴに in vivoで、 ¾糸田月包 (L1210マ ウス白血病細胞、 B16マウスメラノーマ細胞) の増殖を抑制すること (たとえば、 非特許文献 6および 7参照)、 サイクリン依存型キナーゼ (CDK) およぴグリコ 一ゲン合成酵素キナーゼー 3 (GSK-3) の阻害剤として、 既に見出されていた抗 腫瘍性天然化合物 paulkme類の別の新たな細胞内標的がリンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) のミ トコンドリア型ァイソフォームであること (たとえば、 非特 許文献 8参照)、 リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) を含めて数多くの脱水素酵 素の活性を非選択的に阻害する天然化合物 gossypol が強い癌細胞増殖抑制活性 を有すること (たとえば、 非特許文献 9参照)、 などが報告されている。
リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) は、 リンゴ酸ーァスパラギン酸シャトルの みならず、 糖新生、 クェン酸サイクル、 アミノ酸代謝等にも関与しており、 細胞 質型とミ トコンドリア型の 2種類のァイソフォームが同定されている。 両ァイソ
フォームともに NAD NADHをコファクターとし、 リンゴ酸からォキザ口酢酸へ の変換過程を可逆的に触媒する。 両ァイソフォーム間のァミノ酸配列の相同性は 約 20〜25%程度と低いが (たとえば、 非特許文献 1 0参照)、 立体構造には高い 類似性が認められている (たとえば、 非特許文献 1 1参照)。 本酵素のミ トコン ドリア型ァイソフォームについて生化学的な機能解析が精力的に行われてきた一 方で、 細胞質型ァイソフォームに関しては、 機能的に未解明の部分が依然として 残されている。 癌遺伝子 srcの遺伝子産物のリン酸化基質が本細胞質型アイソフ オームであることを示唆する論文が発表されたが (たとえば、 非特許文献 1 2参 照)、 生理的意義についての報告はその後一切ない。
最近、 本細胞質型ァイソフォームが核酸類選択的な細胞膜チャネル (nucleic acid-conducting channel) の調節サブュニットであることが同定され、 この酵素の 機能に関して全く新たな一面が明らかとなった (たとえば、 非特許文献 3参 照)。
細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) を阻害する物質の活性を評価する 手段としては、 従来から、 本酵素によってォキザ口酢酸がリンゴ酸に還元される 際に認められる NADH由来の吸光度 (340 nm付近) の減少を分光光度計によつ てモニターする方法が用いられてきた。 検出感度の問題から、 この評価系では数 十 μΜ力 数 mM程度の濃度の NADHが通常必要とされる。 本方法により、 上 記の天然化合物 gossypolが NADH競合的に Ki値 3.0 μΜで本酵素を阻害するこ とが示されている (たとえば、 非特許文献 1 4参照)。
[非特 §午文献 1 J Lehninger A. L., Biocnemistry, second edition published by Wort h Puolishers, Inc. 1975
[非特許文献 2 ] Voet D. et al, Biochemistry, second edition published by John Wi ley & Sons, Inc. 1995
[非特許文献 3 ] Holroyde C. P. et al, Cancer Res. , 1975, 35, 3710-3714
特許文献 4 ] Greenhouse W. V. et al, Cancer Res. , 1977, 37, 4173-4181
[非特許文献 5 ] Mazurek S. et al, J. Cell. Physiol, 1999, 181, 136-146
[非特許文献 6 ] Vila J. et al, Int. J. Cancer, 1990, 45, 737-743
[非特許文献 7 ] Thomasset N. et al, Int. J. Cancer, 1992, 51, 329-332
[非特許文献 8 ] Knockart M. et al, J. Biol. Chem., 2002, 277, 25493-25501
特許文献 9 ] Liu S. et al, Anticancer Res., 2002, 22 (Suppl. 1A), 33-38 特許文献 1 0 ] Joh T. et al, J. Biol. Chem., 1987, 262, 15127-15131
[非特許文献 1 1 ] Birktoft J. J. et al, Biochemistry, 1989, 28, 6065-6081
特許文献 1 2 ] Rubsamen H. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1982, 79, 22 8-232
[非特許文献 1 3 ] Hanss B. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2002, 99, 1707-17 12
[非特許文献 1 4 ] Burgos C. et al, Biochem. Pharmacol, 1986, 35, 801-804 発明の開示
前述のように、 ミ トコンドリアリンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) の阻害剤 である paullone類が癌細胞の増殖を抑制するという報告 (Knockart M. et al, J. Biol. Chem., 2002, 277, 25493-25501, Schults C. et al, J. Med. Chem. , 1999, 42, 2909-2919 and Zaharevitz D. et al, Cancer Res., 1999, 59, 2566-2569)、 ならび に、 様々な脱水素酵素を非選択的に阻害する化合物である gossypol が癌細胞に 対する増殖抑制剤として働くという報告 (Liu S. et al, Anticancer Res. , 2002, 2 2 (Suppl. 1A), 33-38) がある。 しかしながら、 これまで、 細胞質リンゴ酸脱水素 酵素 (EC 1.1.1.37) の活性を選択的に阻害する物質、 または本酵素の活性阻害 を主たる作用機序とする抗癌物質については一切報告がない。
一方、 最近、 Cos7細胞内の非結合型 (フリー体) NADH の濃度が生理条件下 で 110 130 nMと見積られ、 報告されている (Zhang Q. et al, Science, 2002, 29 5, 1895-1897)。 そのため、 細胞質リンゴ酸脱水酵素の活性を阻害する物質 (特
に、 酵素への結合に関して NAD/NADHと競合するタイプの化合物) をより正確 にスクリーニングするためには、 従来よりもかなり低濃度の、 すなわち百〜数百 nM程度の NADHまたは NADをモニターできる高い検出感度の評価系を構築し て用いることが望まれる。
本発明の目的は、 抗癌療法にも利用可能な、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) の酵素活性の阻害剤を提供することである。
本発明者らは、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) の活性を阻害する 物質を効率的に見出すため、 従前の分光光度計に代えて、 高速液体クロマトグラ フィー (以下、 「HPLC」 という。) を用いる新規評価系を構築した。 本評価系は、 数百 nM程度の NADHまたは NADのモニターを可能にしたので、 特に、 本酵素 への結合に関して NAD/NADHと競合するタイプの化合物をより正確にスクリー ニングするのに適している。
そこで、 本発明では、 HPLC を用いたスクリーニング法を用いて、 鋭意検討し た結果、 N— (3—クロロー 1 H—インドール一 7—ィル) 一 4ースルファモイ ルベンゼンスルホンアミド(以下、 単に 「E7070」 ということもある。 )を代表と するスルホンアミド類が、 NAD/NADH競合的に細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) を阻害することを明らかにし、 本発明を完成するに至った。
すなわち、 本発明は、 抗癌作用を有する化合物を有効成分として含む、 細胞質 リンゴ酸脱水素酵素阻害剤を提供する。 具体的には、 本発明は、
下記式 (I )
(式中、 A環は、 置換基を有していてもよい、 単環式または二環式芳香環を示し
B環は、 置換基を有していてもよい、 6員環式不飽和炭化水素またはへテロ原 子として窒素原子を 1個含む不飽和 6員へテロ環を示し、
C環は、 置換基を有していてもよい、 窒素原子を 1または 2個含む 5員へテロ 環を示し、
Wは、 単結合または一 CH=CH—を示し、
Xは、 一 N (Ri) —または酸素原子を示し、
Yは、 炭素原子または窒素原子を示し、
Zは、 _N (R2) 一または窒素原子を示し、
Riおよび R2は、 同一または異なって水素原子または C1〜C6アルキル基を 示す。) で表されるスルホンアミド誘導体、 スルホン酸エステル誘導体またはそ れらの薬理学的に許容される塩を有効成分として含む、 細胞質リンゴ酸脱水素酵 素阻害剤を提供する。
本発明の細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤の好ましい態様によれば、 上記式 (I) において、 A環が置換基を有してもよい、 ベンゼンまたはピリジンであり、 B環が置換基を有してもよいベンゼンであり、 C環が置換基を有してもよいピロ ールであり、 Wが単結合であり、 Xおよび Zがいずれも— NH—である。
本発明の細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤のより好ましい態様によれば、 前記 阻害剤は、 N— (3—クロ口一 1 H—インドールー 7—ィル) ー4ースルファモ
(3—クロロー 1 H—ィンドール一 7—ィ ル) 一 4一 [2—(メタンスノレホンアミ ド)ェチノレ]ベンゼンスノレホンアミ ド、 4 - ァミノ一N— (3—クロロー 4—シァノー 1H—インドールー 7—ィル) ベンゼ ンスルホンアミ ド、 6一アミノー N— (3—シァノ一 1H—インドール一 7—ィ ル) 一 3—ピリジンスノレホンアミ ド、 3—クロ口一N— (3—シァノー 1 H—ィ ンドーノレ一 7—ィノレ) 一 2—メチノレベンゼンスノレホンアミ ド、 4ーシァノー N— (3—シァノ一 1 H—インドール一 7—ィル) ベンゼンスルホンアミ ド、 N— (3—クロ口一 1H—インドール一 7—ィル) 一 4— (2—スルファモイルェチ
ノレ) ベンゼンスノレホンアミ ド、 N— (3—シァノー 1 H—インドーノレ一 7—ィ ル) 一 5—メチルー 3—ピリジンスルホンアミ ド、 5—プロモ— N— ( 3—シァ ノー 1 H—インド—ルー 7—ィル) 一 2—ピリジンスルホンアミ ド、 4一アミノ 一 N— (5—プロモー 3—シァノー 1 H—インドーノレ一 7—ィノレ) ベンゼンスノレ ホンアミ ド、 N— ( 3—クロロー 1 H—インドールー 7—ィル) - 4 - (N—メ チルァセトアミ ド) ベンゼンスルホンアミ ドからなる群から選択される少なく と も 1種の化合物またはその薬理学的な塩を有効成分として含むことを特徴とする。 また、 本発明は、 抗癌作用を有する化合物の有効量を患者に投与する工程を含 む、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素の阻害方法、 上記式 (I ) で表されるスルホンァ ミド誘導体、 スルホン酸エステル誘導体またはそれらの塩の有効量を患者に投与 する工程を含む、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素の阻害方法、 特定の構造式を有する スルホンアミ ド類またはその薬理学的に許容な塩の有効量を、 患者に投与する細 胞質リンゴ酸脱水素酵素の阻害方法を提供する。
また、 本発明は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤を製造するための、 抗癌作 用を有する化合物、 具体的には、 上記式 (I ) で表されるスルホンアミ ド誘導体、 スルホン酸エステル誘導体またはそれらの薬理学的に許容な塩や、 特定の構造式 を有するスルホンアミ ド類またはその薬理学的に許容な塩の使用を提供する。 さらに、 本発明は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発現を阻 害する、 アンチセンス核酸またはリポザィムを提供する。
さらにまた、 本発明は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発現 を阻害する、 二本鎖 R A を提供する。 具体的には、 前記二本鎖 R Aは、 1 8 〜 3 0の塩基長をする二本鎖 RNAまたは二本鎖 RNA-DNAキメラ分子である。 別の態様では、 本発明は、 前記二本鎖 RNA を発現させる発現ベクターを提供 する。
そして、 本発明は、 前述したアンチセンス核酸、 リボザィム、 二本鎖 RNA、 もしくは前記発現ベクター、 またはそれらの薬理学的に許容な塩を有効成分とし
て含む、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤を提供する。
本発明は、 前述したアンチセンス核酸、 リボザィム、 二本鎖 RNA、 もしくは 前記発現ベクター、 またはそれらの薬理学的に許容な塩を有効成分として含む、 癌の予防および/または治療用組成物を提供する。 そして、 前記癌は、 膝臓癌、 胃癌、 肝臓癌、 肺癌、 大腸癌、 腎癌、 乳癌、 食道癌、 胆道癌、 脾臓癌、 前立腺癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 卵巣癌、 甲状腺癌、 脳腫瘍、 頭頸部癌、 皮膚癌または 血液腫瘍を含む。
また、 本発明は、 前述したアンチセンス核酸、 リボザィム、 二本鎖 R A、 も しくは前記発現ベクター、 またはそれらの薬理学的に許容な塩の有効量を、 患者 に投与する工程を含む、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素の阻害方法、 並びに癌の予防 および/または治療方法を提供する。 そして、 前記癌は、 滕臓癌、 胃癌、 肝臓癌、 肺癌、 大腸癌、 腎癌、 乳癌、 食道癌、 胆道癌、 脾臓癌、 前立腺癌、 膀胱癌、 子宮 癌、 精巣癌、 卵巣癌、 甲状腺癌、 脳腫瘍、 頭頸部癌、 皮膚癌または血液腫瘍を含 む。
さらに、 本発明は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤および癌の予防および/ま たは治療用組成物を製造するための、 前述したアンチセンス核酸、 リポザィム、 二本鎖 RNA、 もしくは前記発現ベクター、 またはそれらの薬理学的に許容な塩 の使用を提供する。 そして、 前記癌は、 膝臓癌、 胃癌、 肝臓癌、 肺癌、 大腸癌、 腎癌、 乳癌、 食道癌、 胆道癌、 脾臓癌、 前立腺癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 卵 巣癌、 甲状腺癌、 脳腫瘍、 頭頸部癌、 皮膚癌または血液腫瘍を含む。
くわえて、 本発明は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素を準備する工程と、 被検化合 物と前記細胞質リンゴ酸脱水素酵素とを接触させる工程と、 前記細胞質リンゴ酸 脱水素酵素により変換される NADHまたは NAD の量を検出することにより、 前記細胞質脱水素酵素の活性阻害の程度を測定する工程と、 含む抗癌剤のスクリ 一二ング方法であって、 前記 NADHまたは NADの濃度が 100〜1000 nMである スクリーニング方法と、 該方法を実施するためのスクリーニング用キットを提供
する。 ' 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明のスクリーニング法において、 被検化合物を添加しない反応液 を、 254 nmにて検出した際の HPLCクロマトグラムを示す。
図 2は、 本発明のスクリーニング法において、 被検化合物を添加しなレ、反応液 を、 338 nmにて検出した際の HPLCクロマトグラムを示す。
図 3は、 本発明のスクリーニング法における、 gossypolの細胞質リンゴ酸脱水 素酵素活性への影響を示す HPLCク口マトグラムを示す。 なお、 HPLCにおける 検出は、 254 nmにて行った。
図 4は、 本発明のスクリーニング法における、 被検化合物として E7070による、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素活性への影響を示す HPLCクロマトグラムを示す。 な お、 HPLCにおける検出は、 254 nmにて行った。
図 5は、 本発明のスクリーニング法における、 N— (3—クロロー 1 H—イン ドール一 7—ィル) 一4ースルファモイルペンズアミド (以下、 単に 「ER-
203805」 ということもある。) による細胞質リンゴ酸脱水素酵素活性への影響を 示す HPLCクロマトグラムを示す。 なお、 HPLCにおける検出は、 254 nmにて行 つに。
図 6は、 本発明の各種スルホンアミド類による、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素活 性を、 E7070を 1とした場合の比活性の値を示す。
図 7は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素の塩基配列情報をもとに、 本発明において 用いた、 siRNAのターゲット配列として選定した配列を示す。
図 8は、 本発明による RNAiに利用する、 shRNAの配列を示す。
図 9は、 本発明による RNAiに使用した各種ブラスミドにより、 細胞質リンゴ 酸脱水素酵素の mRNAの発現の、 コントロールに対する割合の結果を示す。
発明を実施するための最良の形態
以下に、 本願明細書において記载する用語等の意義、 本発明の実施の形態等を 示して、 本発明を詳細に説明する。
本願明細書において用いる用語 「抗癌作用を有する化合物」 とは、 腫瘍、 特に 悪性腫瘍の成長を抑制または停止させる作用を有する化合物をいう。
本願明細書において用いる用語 「阻害剤」 とは、 酵素の活性を阻害する物質を いう。
本発明の有効成分であるスルホンァミ ド誘導体またはスルホンエステル誘導体 は、 下記式 (I ) により表され、 たとえば、 特開平 7— 1 6 5 7 0 8号に記載の 方法に従い、 製造することができる。
(式中、 A環は、 置換基を有していてもよい、 単環式または二環式芳香環を示し、 B環は、 置換基を有していてもよい、 6員環式不飽和炭化水素またはへテロ原 子として窒素原子を 1個含む不飽和 6員へテロ環を示し、
C環は、 置換基を有していてもよい、 窒素原子を 1または 2個含む 5員へテロ 環を示し、
Wは、 単結合または一C H- C H—を示し、
Xは、 一 N (Ri) —または酸素原子を示し、
Yは、 炭素原子または窒素原子を示し、
Zは、 - N (R2) 一または窒素原子を示し、
Riおよび R2は、 同一または異なって水素原子または 一 C 6アルキル基を 示す。)
1 ここで、 上記一般式 (I) において、 A環の意味する 「置換基を有していても よい、 単環式または二環式芳香環」 とは、 芳香族炭化水素、 または窒素原子、 酸 素原子、 および硫黄原子のうち少なくとも 1個を含む芳香族へテロ環であり、 当 該環上には置換基 1〜 3個があってもよい。 A環に含まれる芳香環を例示すると、 ピロール、 ビラゾール、 イミダゾール、 チ才フェン、 フラン、 チアゾール、 ォキ サゾール、 ベンゼン、 ピリジン、 ピリミジン、 ピラジン、 ピリダジン、 ナフタレ ン、 キノリン、 イソキノリン、 フタラジン、 ナフチリジン、 キノキサリン、 キナ ゾリン、 シンノリン、 インドーノレ、 イソインドーノレ、 インドリジン、 ィンダゾ一 ノレ、 ベンゾフラン、 ベンゾチ才フェン、 ベンゾ才キザゾーノレ、 ベンズイミダゾー ル、 ベンゾピラゾール、 ベンゾチアゾール等が挙げられる。 本発明における A環 に含まれる芳香環としては、 ベンゼンまたはピリジンが好ましい。
上記芳香環は置換基 1〜 3個を有してもよく、 置換基が複数個ある場合には、 同一または異なっていてもよい。 A環の意味する 「置換基を有していてもよい、 単環式または二環式芳香環」 の 「置換基」 としては、 一 C6アルキル基、 ま たは C3— C6シクロアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、 じ 一〇6ァ ルキル基、 〇 1ー 6ァルコキシ基、 水酸基、 ニトロ基、 メルカプト基、 シァノ 基、 C — C 6アルキルチオ基、 ハロゲン基、 式一 a— b [式中、 aは単結合、 一 (CH2) k一、 一 O— (CH2) k一、 一 S— (CH2) k—または一 N (R 3) — (CH2) k一を、 kは 1〜5の整数を、 R3は水素原子または〇1〜〇6ァ ルキル基を、 bは一 CH2—d (式中、 dは Ci— Ceアルキル基で置換されてい てもよぃァミノ基、 ハロゲン基、 水酸基、 — C6アルキルチォ基、 シァノ基 または Ci— C6アルコキシ基を意味する) を意味する] で示される基、 式一 a - e - f [式中、 aは前記と同じ意味を、 eは _S (O) 一または一 S (O) 2 一を、 f ¾ C! - C 6アルキル基または C i一 C 6アルコキシ基で置換されていて もよぃァミノ基、 Ci一 C6アルキル基、 トリフルォロメチル基、 一 (CH2) m 一 bまたは一N (R4) — (CH2) ra-b (式中、 bは前記と同じ意味を示し、
R4は水素原子または Ci— Ceアルキル基を、 mは 1〜 5の整数を意味する) を 意味する] で示される基、 式一 a— g— h [式中、 aは前記と同じ意味を示し、 gは一C (O) 一または一 C (S) 一を、 hは Ci— C6アルキル基で置換され てもよぃァミノ基、 水酸基、 Ci— Ceアルキル基、 C — C6アルコキシ基、 一 (CH2) n—bまたは一 N (R5) 一 (CH2) n-b (式中、 bは前記と同じ意 味を示し、 R 6は水素原子または C 一 C 6アルキル基を、 nは 1〜5の整数を意 味する) を意味する] で示される基、 式一 a— N (R6) 一 g— i [式中、 aお よび gは前記と同じ意味を示し、 R 6は水素原子または C 一 C 6アルキル基を、 iは水素原子、 Ci— Ceアルコキシ基または f ( f は前記と同じ意味を示す) を意味する] で示される基、 式 _ a— N (R7) - e - f (式中、 a、 eおよび f は前記と同じ意味を示し、 R7は水素原子または 一 C6アルキル基を意味す る) で示される基、 または式一 (CH2) p- j - (CH2) q— b (式中、 jは 酸素原子または硫黄原子を意味し、 bは前記と同じ意味を示し、 pおよび qは同 一または異なって 1〜 5の整数を意味する) で示される基などを挙げることがで きる。
上記置換基例において、 ァミノ基が 2個のアルキル基で置換されている場合に は、 これらのアルキル基が結合して 5または 6員環を形成していてもよい。 また、 A環が水素基またはメルカプト基を有する含窒素へテロ環である場合には、 これ らの基が共鳴構造をとることにより、 ォキソ基またはチォキソ基の形になってい てもよい。
B環の意味する 「置換基を有していてもよい、 6員環式不飽和炭化水素または ヘテロ原子として窒素原子を 1個含む不飽和 6員へテロ環」 とは、 一部が水素化 されていてもよい、 ベンゼンまたはピリジンであり、 当該環上に置換基 1または 2個を有してもよく、 置換基が 2個ある場合には、 同一または異なっていてもよ ' い。
C環の意味する 「置換基を有していてもよい、 窒素原子を 1または 2個含む 5
3 員へテロ環」 とは、 一部が水素化されていてもよい、 ピロール、 ピラゾール、 ィ ミダゾールであり、 当該環上に置換基 1または 2個を有してもいてもよく、 置換 基 2個ある場合には、 同一または異なっていてもよい。
B環おょぴ C環が有していてもよい置換基としては、 ハロゲン基、 シァノ基、 C!一 C 6アルキル基、 C!一 C 6アルコキシ基、 水酸基、 ォキソ基、 式一 C ( O) - r (式中、 rは水素原子、 C i— C eアルキル基で置換されていてもよ ぃァミノ基、 一 C 6アルキル基、 一 c 6アルコキシ基または水酸基を意味 する)、 C i— C eアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、 トリフルォロメ チル基等を挙げることができる。
上記式 (I ) において、 R R 2および A環、 B環、 C環が有してもよい置 換基の定義中の Cエー C 6アルキル基としては、 炭素数 1〜6の直鎖もしくは分 岐状のアルキル基、 たとえば、 メチル基、 ェチル基、 n_プロピル基、 イソプロ ピル基、 n—プチル基、 イソブチル基、 sec—ブチル基、 tert—プチル基、 n—ぺ ンチル基 (ァミル基)、 イソペンチル基、 ネオペンチル基、 tert—ペンチル基、 1—メチルブチル基、 2—メチルプチル基、 1, 2—ジメチルプロピル基、 n—へ キシル基、 イソへキシル基、 1—メチルペンチル基、 2—メチルペンチル基、 3 ーメチルペンチル基、 1 , 1ージメチルブチル基、 1 , 2—ジメチルブチル基、
2 , 2—ジメチルプチル基、 1 , 3—ジメチルプチル基、 2 , 3—ジメチルプチル基
3 , 3—ジメチルブチル基、 1一ェチルプチル基、 2—ェチルプチル基、 1, 1 , 2 ートリメチルプロピル基、 1, 2, 2—トリメチルプロピル基、 1—ェチルー 1一 メチルプロピル基、 1—ェチルー 2—メチルプロピル基などを意味する。 これら のうち、 好ましい基としては、 メチル基、 ェチル基、 n—プロピル基、 イソプロ ピル基、 n—ブチル基、 ィソブチル基などを挙げることができる。 これらのうち 最も好ましい基としては、 メチル基、 ェチル基、 n—プロピル基、 イソプロピル 基を挙げることができる。
A環が有していてもよい置換基の定義中の C 3—〇6シクロアルキル基として
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4 は、 シクロプロピル基、 シクロペンチル基、 シクロへキシル基などを挙げること ができる。
A環、 B環および C環が有してもよい置換基の定義中の C i— C eアルコキシ 基としては、 メ トキシ基、 エトキシ基、 n—プロポキシ基、 イソプロポキシ基、 n—ブトキシ基、 イソブトキシ基、 tert—ブトキシ基など上記の C x - C 6アルキ ル基から誘導される C i一 C 6アルコキシ基を意味するが、 これらのうち最も好 ましい基としては、 メ トキシ基、 エトキシ基を挙げることができる。 また、 A環、 B環および C環が有してもよい置換基の定義中のハロゲン原子としては、 フッ素 原子、 塩素原子、 臭素原子等を挙げることができる。
本発明の有効成分としては、 好適には、 N— (3—クロ口一 1 H—インドール ー 7—ィノレ) 一 4—スノレファモイノレベンゼンスノレホンアミ ド、 N— (3—クロ口 一 1 H—インドールー 7—ィル) 一 4一 [ 2—(メタンスルホンァミ ド)ェチル]ベ ンゼンスルホンアミ ド、 4一アミノー N— (3—クロロー 4—シァノー 1 H—ィ ンドール一 7—ィル) ベンゼンスルホンアミ ド、 6—アミノー N— (3—シァノ 一 1 H—インドールー 7—ィノレ) 一 3—ピリジンスルホンアミ ド、 3 _クロロー N— ( 3—シァノー 1 H—インドーノレ一 7—ィノレ) 一 2—メチルベンゼンスルホ ンアミ ド、 4一シァノ一N— (3—シァノ一 1 H インドール一 7—ィル) ベン ゼンスルホンアミ ド、 N— (3—クロ口一 1 H—インドール一 7—ィル) 一4— ( 2—スルファモイルェチル) ベンゼンスルホンアミ ド、 N— ( 3—シァノー 1 H—インドール一 7—ィル) 一 5—メチルー 3—ピリジンスルホンアミ ド、 5— ブロモー N— (3—シァノー 1 H—インドールー 7—ィル) 一 2—ピリジンスル ホンアミ ド、 4—アミノー N— (5—ブロモー 3—シァノー 1 H—インドールー 7 fル) ベンゼンスルホンアミ ド、 N— ( 3—クロ口一 1 H—インドールー 7 一ィル) 一4一 (N—メチルァセトアミ ド) ベンゼンスルホンアミ ド等の化合物 を挙げることができる。
また、 本発明の有効成分の構造式は、 便宜上一定の異性体を表すことがあるが、
本発明の有効成分である化合物は、 この便宜上の式の記載に限定されるものでは なく、 構造上生ずる総べての幾何異性体、 不斉炭素に基づく光学異性体、 回転異 性体、 立体異性体、 互変異性体等の異性体ゃ該異性体混合物が含まれる。 また、 前記化合物には結晶多形が存在することもあるが、'同様に、 特定の結晶形に限定 されず、 いずれかの結晶形が単一または結晶形混合物であってもよい。
また、 本発明の有効成分は、 抗腫瘍作用を示すが、 生体内で酸化、 還元、 加水 分解、 抱合などの代謝を受けて抗腫瘍作用を有する上記化合物の誘導体をも包含 する。
本願明細書において用いる用語 「塩」 とは、 本発明の有効成分である化合物の ァミノ基のような塩基性の基を有する場合には酸との反応により、 また、 カルボ キシル基のような酸性基を有する場合には塩基との反応により、 生成する塩をい う。 具体的には、 無機酸との塩、 有機酸との塩、 無機塩基との塩、 有機塩基との 塩、 酸性または塩基性アミノ酸との塩などが挙げられ、 中でも薬理学的に許容さ れる塩が好ましい。
無機酸との塩の好ましい例としては、 例えば、 塩酸、 臭化水素酸、 硫酸、 硝酸、 燐酸等との塩が挙げられ、 有機酸との塩の好ましい例としては、 例えば、 酢酸、 コハク酸、 フマル酸、 マレイン酸、 酒石酸、 クェン酸、 乳酸、 ステアリン酸、 安 息香酸、 メタンスルホン酸、 エタンスルホン酸、 p—トルエンスルホン酸等との 塩が拳げられる。
無機塩基との塩の好ましい例としては、 例えば、 ナトリゥム塩、 力リゥム塩な どのアル力リ金属塩、 カルシウム塩、 マグネシウム塩などのアル力リ土類金属塩、 アルミニウム塩、 アンモ-ゥム塩などが拳げられる。 有機塩基との塩の好ましい 例としては、 例えば、 ジェチルァミン、 ジエタノールアミン、 メグノレミン、 N, N ' -ジベンジルエチレンジァミンなどとの塩が挙げられる。
また、 本発明において、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発現 の阻害は、 アンチセンス核酸を利用することも可能である。 本発明によるアンチ
6 センス核酸は、 前記細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列に 相補的な、 あるいは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有し、 該遺伝 子の発現を抑制し得る作用を有するものであれば、 V、ずれのアンチセンス核酸で あってもよいが、 アンチセンス DNAが好ましい。
本願明細書において用いる用語 「細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝 子に実質的に相補的な塩基配列」 とは、 たとえば、 本発明に用いる配列番号: 1 にて記載される塩基配列に相補的な塩基配列の全塩基配列あるいは部分塩基配列 と約 7 0 %以上、 好ましくは約 8 0 %以上、 より好ましくは約 9 0 %以上、 最も 好ましくは約 9 5 %以上の相同性を有する塩基配列、 またはその一部分を有する 塩基配列をいう。 本発明に用いるアンチセンス核酸は、 通例、 1 0〜4 0個程度、 好ましくは 1 5〜3 0個程度の塩基から構成される。 なお、 配列番号: 2には、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を記載する。
ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、 アンチセンス核酸 を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基 (ホスフェート) は、 たとえば、 ホスホ チォエート、 メチルホスホネート、 ホスホロジチォネートなどの化学修飾リン酸 残基に置換されていてもよい。 これらのアンチセンス核酸は、 公知の DNA合成 装置などを用いて製造することができる。 .
本発明によるアンチセンス核酸は、 RNA、 DNA あるいは修飾された RNAま たは DNAを含む。 修飾された核酸の具体例としては、 以下のものに限定される わけではないが、 核酸の硫黄誘導体ゃチォホスフェート誘導体や、 ポリヌクレオ チドアミ ドゃォリゴヌクレオチドアミ ドの分解に抵抗性のある核酸等が挙げられ る。 さらに、 本発明によるアンチセンス核酸は、 細胞内でのアンチセンス核酸を より安定なものにする、 アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、 目標とす るセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、 仮に毒性があるならアンチ センス核酸の毒性をより小さなものにするように修飾することも可能である'。 か かる修飾は、 当該技術分野では公知であり、 たとえば、 J. Kawakami et al., Pharm
Tech Japan, Vol. 8, pp247, 1992; Vol. 8, pp395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense
Research and Applications, CRC Press, 1993等に開示されている。 さらにまた、 本 発明によるアンチセンス核酸は、 リポゾーム、 ミクロスフエアのような特殊な形 態で供与されたり、 遺伝子治療により適用されたりすることができる。
さらに、 本発明において、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発 現の阻害は、 リボザィムを利用して行うことも可能である。 リポザィムとは触媒 活性を有する R A分子のことをいう。 リボザィムには種々の活性を有するもの が存在するが、 特に RNAを切断する酵素としてのリポザィムを利用することが できる。 リボザィムには、 高分子量リボザィムと低分子量リボザィムとに大別さ れるが、 双方とも本発明によるリボザィムに包含される。 高分子量リボザィムに は、 グループ Iイントロン型ゃ RNase Pのような 4 0 0ヌクレオチド以上のもの がある。 一方、 低分子量リポザィムには、 ハンマーヘッド型リポザィム、 ヘアピ ン型リポザィムゃ HDV リボザィムと称される 4 0ヌクレオチド程度の活性ドメ インを有するものがある。 ハンマーヘッド型リボザィムは、 三つのステムから構 成され、 触媒領域がハンマーへッド形をしており、 標的 RNAを Mg2+ィオン存在 下で NU(A,C,U)、 特に CUC配列の直ぐ後で切断する。 ヘアピン型リボザィムは 4つのヘリッタスと 2つのループからなり、 基質 RNAループの A G+i間のホス ホジエステル結合を特異的に切断する。 HDV リポザィムは、 4つのステムから なり、 ホルムアミ ドゃ尿素などの RNA変性剤で活性化される。
標的遺伝子を切断できるように設計されたリポザィムは、 該リボザィムをコー ドする遺伝子を、 細胞中で転写されるように、 プロモーター配列おょぴ転写終結 配列に連結して発現させることができる。 本発明に用いられるプロモーター配列 には、 発現させたい遺伝子の種類や宿主等により公知のプロモーターから適宜選 択して用いることができる。 たとえば、 サイトメガロウィルス (CMV) 由来プ 口モーター、 EF-1ひプロモーター、 ァクチンプロモーター、 SV40 プロモータ 一、 ΤΚプロモーター、 PLプロモーター、 SRaプロモーター、 RNA1.8プロモー
ター等が挙げられる。
さらにまた、 本発明において、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝子 の発現の阻害は、 二本鎖 RNAを用いた RNA interference (RNAi) によっても行 うことができる。 ここで、 本願明細書において用いる用語 「二本鎖 RNA」 とは、 細胞内における細胞質リンゴ酸脱水素酵素の発現を抑制する。 この二本鎖 RNA は、 二本鎖 R A分子だけでなく、 二本鎖 RNA-DNAキメラ分子を含み、 細胞質 リンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発現を抑制する作用を有する限りにお いて限定されず、 short interfering RNA (siRNA) や short hairpin RNA (s RNA) をも含む。 本発明による二本鎖 RNAは、 好ましくは 1 8〜 3 0塩基長を有する 二本鎖 RNA分子または二本鎖 RNA-DNAキメラ分子であり、 より好ましくは 2 0〜 2 8塩基長を有する二本鎖 RNA分子または二本鎖 RNA-DNAキメラ分子で ある。
本発明では、 具体的には、 以下の塩基配列を標的遺伝子配列とする二本鎖 RNA分子が挙げられ、 かかる RNA分子は、 二本鎖のうち一方を以下のいずれか の DNA塩基配列をセンス鎖とし、 他方はその相補鎖、 すなわち、 該センス配列 に対するアンチセンス鎖である。 なお、 二本鎖 RNAに用いる遺伝子は、 標的遺 伝子と完全に同一である必要はないが、 少なくとも 7 0 %以上、 好ましくは 8 0 %以上、 さらに好ましくは 9 0 %以上、 最も好ましくは 9 5 %以上の相同性の 配列を有する。
( 1 ) 5'-CTCTGATGGCAACTCCTATGGTGTT-3' (配列番号: 3 )
( 2 ) 5'-TCAGGGACATCTGGTTTGGAACCCCAG-3' (配列番号: 4 )
( 3 ) 5'-ACAACCGAGCTAAAGCTCAAATTGC-3' (配列番号: 5 )
( 4 ) 5'-TGGATCTTACTGCAAAGGAACTGAC-3' (配列番号: 6 )
( 5 ) 5'-CAAGGAAAGGAAGTTGGTGTTTATG-3' (配列番号: 7 ) 二本鎖 RNAを細胞に作用させる方法としては、 該ニ本鎖 RNAを直接細胞に 導入する方法のみならず、 プロモーターと、 当該プロモーターと機能的に結合し
た標的遺伝子と、 を含む遺伝子発現カセットを挿入した発現ベクターを細胞に導 入し、 細胞内で該ニ本鎖 RNAを発現させる方法をも挙げることができる。 なお、 本願明細書で用いる用語 「機能的に結合した」 とは、 プロモーターと結合するこ とにより、 下流側の遺伝子の転写が開始するように、 上流側のプロモーターと遺 伝子が結合することを意味する。
具体的には、 本発明では、 対象とする酵素をコードする遺伝子の塩基配列情報 をもとに、 前述のような数種類の配列を、 siRNA のターゲット配列として選定 する。 次に、 上記配列を標的とする siRNAへと変換される shRNAを発現するよ うなプラスミドを作製する。 上流側のプロモーター配列と機能的に結合させた、 前記配列番号 3ないし 7のうち何れか一つの配列を包含する発現カセットを作製 し、 市販のプラスミ ド、 ファージ等のべクタ一に揷入する。 本発明では、 プロモ 一ターとしては、 以下のもの限定されるわけではないが、 RNA Polymerase III系 の U6プロモーターや HI プロモーター等を挙げることができる。 本発明に用い るプラスミ ドとしては、 大腸菌 (pBR322、 pBR325、 pUC12、 pUC13 など) など のグラム陰性菌由来、 枯草菌 (pUB 110、 pTP5や pCl 94など) などのグラム陽性 菌由来、 Staphylococcus由来、 酵母由来 (pSH19や pSH15など) のものなどがあ り、 宿主に適合するように選択される。 また、 発現ベクターには、 所望により、 ェンハンサー、 スプライシングシグナル、 ポリ A付加シグナル、 薬剤耐性遺伝 子や栄養要求性を有する遺伝子などの選択マーカーなどを含有させて用いること もできる。
ベクターの細胞への導入方法としては、 宿主が大腸菌である場合には塩ィヒカル シゥム法、 枯草菌を宿主とする場合には、 コンビテントセル法や酢酸リチウム法、 枯草菌、 放射菌、 酵母などにはプロトプラスト法、 動植物細胞、 酵母、 細菌など に広く用いられる方法としてリン酸カルシウム共沈法、 エレクトロポレーシヨン 法、 DEAE—デキストランやポリプレンなどのポリマーと複合体を形成させる方法 などから適宜選択することができる。 また、 カチオン性脂質のリボソームと複合
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2 0 体を形成させるリポフエクトァミン (Invitrogen社) を用いることもできる。
さらには、 標的配列、 ループ配列および制限酵素配列を含むヌクレオチドを、 U6 プロモーターを含む発現ベクターである、 市販の pGE-1 shRNA expression vector、 pGE-1 -negative control vector、 pGE-l-shluc control vector、 pCMV-Luc control vector、 SCS-lhost strain (以上は、 フナコシ(株)製)や、 piGENE™ tR A シリーズの SV309、 SV310、 SV31K SV312 (以上は、 (株) iGENE製) などを 利用することも可能である。
そして、 本発明による、 配列番号: 3〜 7にて記載される標的遺伝子を含むプ ラスミ ド等の発現ベクターを用いて、 細胞をトランスフエクシヨンさせ、 R Ai の作用により細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする導伝子の発現を阻害させる ことができる。
RNAi の機構の詳細は明らかではないが、 本発明による二本鎖 RNA は、 標的 遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二本鎖 RNA分子または二本鎖 RNA-DNAキメラ分子を細胞、 組織あるいは個体内に導入すると、 その配列に相 同性を持つ mRNAの分解を促進し、 結果的に mR Aの鎳型となる遺伝子の発現 を阻害する。
本発明において利用する siR A を発現させる系は、 タンデムタイプと、 ステ ムタイプ (あるいはヘアピンタイプ) とに大別される。 タンデムタイプは、 二つ のプロモーター、 たとえば、 U6 プロモーターを有し、 それぞれ独立にセンス RNA とアンチセンス R A を転写する。 転写されたセンスおよびアンチセンス RNAは細胞内で二本鎖 RNAを形成し、 siRNAとして働く。 一方、 ステムタイプ は一つのプロモーター、 たとえば、 U6 プロモーターを有し、 その下流にセンス 鎖とアンチセンス鎖をループでつないだ構造を有する。 このステムループ RNA 構造をもった RNA、 いわゆる shRNAは、 ダイサーなどにより、 加水分解等のプ ロセッシングを受け、 siRNAが産出される。
次に、 本発明によるスクリーニング方法について説明する。 本発明によるスク
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2 リーニング方法は、 被検化合物による細胞質リンゴ酸脱水素酵素の活性阻害の程 度を、 前記細胞質リンゴ酸脱水素酵素により変換される NADH または NAD の 量を監視することにより評価する。 そして、 本発明では、 本発明の有効成分が抗 癌作用を有する化合物として公知であり (特開平 7— 1 6 5 7 0 8号)、 細胞質 リンゴ酸脱水素酵素の活性を阻害する知見を得たことから、 かかる阻害を監視す ることにより、 抗癌剤のスクリーニング方法を提供できる。
本発明のスクリ一ユング方法に使用する細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) は、 ( i ) 配列番号: 2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、 を意味する。 また、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素には、 ( i i ) 配列番号 2で表さ れるアミノ酸配列を含むポリペプチドと機能的に等価な改変ポリペプチド、 ( i i i ) 配列番号: 2で表されるァミノ酸配列を含むポリぺプチドのァミノ酸配列 に関して 7 0 %以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる相同ポリぺプチドが 含まれる。 なお、 前記ポリペプチドには、 ポリペプチドの塩が含まれ、 さらには 糖鎖を有しないものと糖鎖を有するものとの両方が含まれる。
ここで、 機能的に等価な改変ポリペプチド (以下、 「改変ポリペプチド」 と称 する) とは、 そのアミノ酸配列が、 配列番号: 2で表されるアミノ酸配列を含む ポリペプチドにおいて 1または複数個 (好ましくは 1または数個) のアミノ酸が 欠失、 置換、 揷入および/または付加されたアミノ酸配列であって、 しかも細胞 質リンゴ酸脱水素酵素と実質的に同じ活性を有するポリペプチドを意味する。 こ こで、 欠失、 置換、 揷入および Zまたは付カ卩されてもよいアミノ酸の数は、 例え ば 1〜 3 0個、 好ましくは 1〜 2 0個、 より好ましくは 1〜 1 0個、 さらに好ま しくは 1〜5個、 特に好ましくは 1〜2個である。 なお、 前記改変ポリペプチド には、 改変ポリペプチドの塩が含まれ、 さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有 するものとの両方が含まれる。 従って、 これらの条件を満たす限り、 前記改変ポ リペプチドの起源は、 ヒトに限定されない。 例えばヒト以外の生物 [例えば非ヒ ト哺乳動物 (例えばマウス、 ラット、 ハムスター、 プタ、 ィヌなど)、 鳥類、 爬
虫類、 両生類、 魚類、 昆虫類など] 由来の細胞質リンゴ酸脱水素酵素もしくはそ の変異体が含まれる。
上述の相同ポリぺプチドとは、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素のァミノ酸配列に関 して 7 0 %以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる限り、 特に限定されるも のではないが、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素に関して、 好ましくは 8 0 %以上、 よ り好ましくは 8 5 %以上、 さらに好ましくは 9 0 %以上、 さらにより好ましくは 9 5 %以上、 特に好ましくは 9 8 %以上、 そして最も好ましくは 9 9 %以上の相 同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であって、 しかも細胞質リンゴ 酸脱水素酵素と実質的に同じ活性を有するポリぺプチドを意味する。 ここで、 「相同性」 の数値はいずれも、 当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算 出される数値であればよく、 たとえば、 全米バイオテクノロジー情報センター
(NCBI) の相同性アルゴリズム BLAST (Basic local alignment search tool) http:〃 www/ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト (初期設定) のパラメ一 ターを用いることにより、 算出することができる。 なお、 前記相同ポリペプチド には、 相同ポリペプチドの塩が含まれ、 さらには糖鎖を有しないものと糖鎖を有 するものとの両方が含まれる。 従って、 これらの条件を満たす限り、 前記相同ポ リペプチドの起源は、 ヒトに限定されない。 例えばヒ ト以外の生物 [例えば非ヒ ト哺乳動物 (例えばマウス、 ラット、 ハムスター、 プタ、 ィヌなど)、 鳥類、 爬 虫類、 両生類、 魚類、 昆虫類など] 由来の細胞質リンゴ酸脱水素酵素もしくはそ の変異体が含まれる。
なお、 変異体とは、 「variation」、 すなわち、 同一種内の同一ポリペプチドにみ られる個体差、 あるいは、 数種間の相同ポリペプチドにみられる差異を意味する, これら本発明に使用する細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (すなわち、 細胞質リンゴ 酸脱水素酵素、 改変ポリペプチド、 相同ポリペプチド) は、 種々の公知の方法、 例えば遺伝子工学的手法、 合成法などによって得ることができる。 具体的には、 遺伝子工学的手法の場合、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードするポリヌクレオ
チドを適当な宿主細胞に導入し、 得られた形質転換体から発現可能な条件下で培 養し、 発現タンパク質の分離おょぴ精製に一般的に用いられる方法により、 その 培養物から所望のポリぺプチドを分離およぴ精製することによつて調製すること ができる。 また別の態様として、 合成法の場合は、 液相法、 固相法など常法に従 い合成することが可能であり、 通常、 自動合成機を利用することができる。 化学 修飾物の合成は常法により行なうことができる。 さらに別の態様によれば、 細胞 質リンゴ酸脱水素酵素の部分ポリべプチドは、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素を適当 なタンパク質分解酵素で切断することによつて調製することができる。
以下、 遺伝子工学的手法について、 より具体的には細胞質リンゴ酸脱水素酵素 を使用する場合について詳述するが、 その部分ポリべプチドについても後述のス クリ一二ング方法に使用可能であれば特に限定されない。 細胞質リンゴ酸脱水素 酵素をコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、 得られた形質転 換体から発現可能な条件下で培養し、 発現タンパク質の分離おょぴ精製に一般的 に用いられる方法により、 その培養物から所望のポリぺプチドを分離おょぴ精製 することにより調製することができる。
前記の細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードするポリヌクレオチドは、 本発明に 使用するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、 特に限定され るものではない。
なお、 本明細書における用語 「ポリヌクレオチド J には、 DNAおよび RNA の両方が含まれる。 本発明に使用するポリヌクレオチドには、 具体的には下記の ( a ) 〜 ( e ) からなる群より選択されるものが挙げられる。
( a ) 配列番号: 1で表される塩基配列からなる、 ポリヌクレオチド;
( b ) 「配列番号: 2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」 をコード する、 ポリヌクレオチド;
( c ) 「配列番号: 2で表されるアミノ酸配列を含み、 しかも、 前記の細胞質リ ンゴ酸脱水素酵素と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」 をコードする、 ポ
リヌクレオチド;
( d ) 「配列番号: 2で表されるァミノ酸配列の 1または複数個 (好ましくは 1 または数個) の箇所において、 1または複数個 (好ましくは 1または数個) のァ ミノ酸が欠失、 置換、 挿入および Zまたは付加されたアミノ酸配列を含み、 しか も、 前記の細胞質リンゴ酸脱水素酵素と実質的に同じ活性を有するポリべプチ ド」 をコードする、 ポリヌクレオチド;および
( e ) 「配列番号: 1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリン ジェントな条件下でハイブリダィズし、 しかも、 前記の細胞質リンゴ酸脱水素酵 素と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」 をコードする、 ポリヌクレオチド に関する。
本発明の一つの態様によれば、 本発明に使用するポリヌクレオチドは、 「配列 番号 2で表されるァミノ酸配列の 1または複数個 (好ましくは 1または数個) の 箇所において、 1または複数個 (好ましくは 1または数個) のアミノ酸が欠失、 置換、 挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、 しかも、 前記の細胞 質リンゴ酸脱水素酵素と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」 をコードして なるものである。 ここで、 欠失、 置換、 揷入および/または付加されてもよいァ ミノ酸の数は、 例えば 1〜 3 0個、 好ましくは 1〜 2 0個、 より好ましくは 1〜 1 0個、 さらに好ましくは 1〜5個、 特に好ましくは 1〜2個である。
本発明の別の一つの態様によれば、 本発明に使用するポリヌクレオチドは、 「配列番号 1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント な条件下でハイブリダィズし、 しかも、 前記の細胞質リンゴ酸脱水素酵素と実質 的に同じ活性を有するポリペプチド」 をコードしてなるものである。
ここで、 ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドとは 具体的には、 FASTA、 BLAST, Smith- Waterman [Met . Enzym., 164,765 (1998) ] 等の相同性検索ソフトウェアにより、 デフォルト (初期設定) のパラメーターを 用いて計算したときに、 配列番号: 1で表される塩基配列と少なくとも 7 0 %以
上、 好ましくは 8 0 %以上、 より好ましくは 8 5 %以上、 さらに好ましくは 9 0 %以上、 さらにより好ましくは 9 5 %以上、 特に好ましくは 9 8 %以上、 そし て最も好ましくは 9 9 %以上の相同性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。 また、 「ストリンジェントな条件下」 とは、 当業者が通常使用し得るハイブリダ ィゼーション緩衝液中で、 温度が 40〜 70。C、 好ましくは 60〜 65 °Cなどで 反応を行い、 塩濃度が 15〜 300 mmol/L、 好ましくは 15 〜 60 mmol/Lなどの 洗浄液中で洗浄する方法に従って行なうことができる。 温度、 塩濃度は使用する プローブの長さに応じて適宜調整することが可能である。
本発明に使用するポリヌクレオチドは、 たとえば、 天然由来のものであること もできるし、 または全合成したものであることもできる。 さらには、 天然由来の ものの一部を利用して合成を行なったものであることもできる。 本発明に使用す るポリヌクレオチドの典型的な取得方法としては、 たとえば、 市販のライブラリ 一または cDNA ライブラリーから、 遺伝子工学の分野で慣用されている方法、 例えば部分アミノ酸配列 (例えば配列番号: 2で表されるアミノ酸配列) の情報 を基にして作成した適当な DNAプローブを用いてスクリーユングを行う方法な どを挙げることができる。
本発明に使用するポリヌクレオチドとしては、 配列番号: 1で表される塩基配 列からなるポリヌクレオチドが好ましい。
前記形質転換に使用されるプラスミ ドは、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコード するポリヌクレオチドを含む限り、 特に限定されるものではなく、 用いる宿主細 胞に応じて適宜選択した公知の発現べクターに、 当該ポリヌクレオチドを揷入す ることにより得られるプラスミドを挙げることができる。
また、 前記形質転換体も、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードするポリヌクレ ォチドを含む限り、 特に限定されるものではなく、 たとえば当該ポリヌクレオチ ドが宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、 あるい は、 当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドの形で含有する形質転換体であるこ
ともできるし、 あるいは、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素を発現していない形質転換 体であることもできる。 当該形質転換体は、 たとえば前記プラスミ ドにより、 あ るいは、 前記ポリヌクレオチドそれ自体により、 所望の宿主細胞を形質転換する ことにより得ることができる。
前記宿主細胞としては、 たとえば通常使用される公知の微生物、 たとえば大腸 菌 (たとえば、 Escherichia coli JM109E株) または酵母 (たとえば、
Saccharomyces cerevisiae W303 株)、 あるいは、 公知の培養細胞、 たとえば動物 細胞 (たとえば CHO 細胞、 HEK-293 細胞、 または COS 細胞) または昆虫細胞 (たとえば、 BmN4細胞) などを挙げることができる。
また、 公知の前記発現ベクターとしては、 たとえば大腸菌に対しては、 pUC、 pTV、 pGEX、 pKK、 または pTrcHisを;酵母に対しては、 pEMBLYまたは pYES2 を; CHO 細胞、 HEK-293 細胞および COS 細胞に対しては、 pcDNA3、 pMAMneoまたは pBabe Puroを; BmN4 細胞に対しては、 カイコ核多角体ウィル ス (BmNPV) のポリヘドリンプロモーターを有するベクター (たとえば、 pBK283) を挙げることができる。
細胞質リンゴ酸脱水素酵素を含有する細胞は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素を発 現している限り、 特に限定されるものではなく、 たとえば前記形質転換体 (すな わち、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミ ドで形質転換された細胞) を、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素の発現が可能な条件下 で培養することにより得ることもできるし、 あるいは、 適当な細胞に、 細胞質リ ンゴ酸脱水素酵素をコードする RNAを注入し、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素の発 現が可能な条件下で培養することにより得ることもできる。
前記の発現タンパク質 (細胞質リンゴ酸脱水素酵素) の分離および精製に一般 的に用いられる方法により、 その培養物から所望のポリぺプチドを分離およぴ精 製することにより調製することができる。 前記の分離および精製方法としては、 たとえば硫安塩析、 イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグ
ラフィー、 分子篩ゲルを用いる分子籂カラムクロマトグラフィー、 プロテイン A 結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、 透析、 または凍結乾燥等 を挙げることができる。
また、 本発明の好ましい態様として、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする cDNAを導入したパキュロウィルスを感染させた昆虫細胞を培養することにより、 該細胞でリコンビナント細胞質リンゴ酸脱水素酵素を大量発現させて、 単離 ·精 製し、 酵素阻害のスクリーニング法に用いることができる。
次いで、 所定の濃度の Tris-HCl (pH 7.4)— NaCl あるいは HEPES—KOH (pH 6.8)—牛血清アルブミン等の反応バッファーに、 前記リコンビナントタンパク質 を加え、 被検化合物を添加し、 所望の時間インキュベーションしたのも、 所定の 濃度の NADHおよびォキザ口酢酸を添加する。 その後、 酵素活性の指標として の NADHまたは NADの量を、 HPLCにて測定し、 酵素活性の阻害の程度を評価 する。
本発明によるスクリ一二ング方法では、 特に NADHまたは NADの量が、 100 〜 1000 nM、 より好ましくは、 200 〜 800 nM、 さらに好ましくは、 300 〜 600 nMという低濃度で測定できる。
本発明に用いられるスクリーニング用キットは、 高感度な前記スクリーニング 方法を行うためのキットであって、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素、 バッファ一等の 試薬類を含む。 そして、 本発明によるスクリーニング用キットは、 前記酵素の活 性の阻害の程度を検出するための HPLC にて測定を行う。 本発明では、 かかる HPLC を利用することにより、 nM レベルの NADH濃度での検出を可能とする スクリ一二ング系が構築される。
本発明に係るスクリ一二ング方法が対象とする癌には、 以下のものに限定され るわけではないが、 勝臓癌、 胃癌、 肝臓癌、 肺癌、 大腸癌、 腎癌、 乳癌、 食道癌、 胆道癌、 脾臓癌、 前立腺癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 卵巣癌、 甲状腺癌、 脳腫 瘍、 頭頸部癌、 皮膚癌また血液腫瘍等が挙げられる。
本発明の抗癌作用を有する化合物、 すなわち、 前記一般式 ( I ) で表されるス ノレホンァミ ド誘導体もしくはスルホン酸エステル誘導体である化合物またはそれ らの薬理学的に許容される塩、 あるいは、 前記アンチセンス核酸、 前記リボザィ ムもしくは前記二本鎖 R Aまたはその二本鎖 RNAを発現させるベクターある いはそれらの薬理学的に許容される塩を、 有効成分として含む細胞質リンゴ酸脱 水素酵素阻害剤を提供する。 前記細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤は、 適宜、 賦 形剤、 希釈剤等と混合し、 たとえば、 錠剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 散剤もしくは シ口ップ剤等による、 経口的または注射剤もしくは坐剤による非経口的に投与す ることもできる。
また、 本発明は、 抗癌作用を有する化合物、 すなわち、 前記一般式 (I ) で表 されるスルホンアミ ド誘導体もしくはスルホン酸エステル誘導体である化合物ま たはそれらの薬理学的に許容される塩、 あるいは、 前記アンチセンス核酸、 前記 リボザィム、 前記二本鎖 RNA もしくはその二本鎖 RNAを発現させるベクター またはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量を、 患者に投与する工程を含む、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素の阻害方法を提供する。
さらに、 本発明は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤を製造するための、 抗癌 作用を有する化合物、 すなわち、 前記一般式 (I ) で表されるスルホンアミ ド誘 導体もしくはスルホン酸エステル誘導体である化合物またはそれらの薬理学的に 許容される塩、 あるいは、 前記アンチセンス核酸、 前記リポザィム、 前記二本鎖 RNAもしくはその二本鎖 R Aを発現させるベクターまたはそれらの薬理学的に 許容される塩の使用を提供する。 かかる化合物、 アンチセンス核酸、 リボザィム、 二本鎖 R Aまたはその二本鎖 RNAを発現させる発現ベクターは、 前記したよ うに、 合成、 作製することができる。
本発明に係る細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤、 または細胞質リンゴ酸脱水素 酵素の阻害方法は、 ヒトまたはヒト以外の哺乳類 (たとえば、 マウス、 ラット、 モルモッ ト、 ゥサギ、 ィヌ、 ゥマ、 サル等) の癌疾患、 特に、 ヒ トの癌疾患の予
防およひ 7または治療に有用である。
本発明が対象とする癌には、 特に限定されるわけではないが、 膝臓癌、 胃癌、 肝臓癌、 肺癌、 大腸癌、 腎癌、 乳癌、 食道癌、 胆道癌、 脾臓癌、 前立腺癌、 膀胱 癌、 子宮癌、 精巣癌、 卵巣癌、 甲状腺癌、 脳腫瘍、 頭頸部癌、 皮膚癌また血液腫 瘍等が挙げられる。
本発明の別の態様では、 本発明の細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害作用を有する 化合物、 すなわち、 前記一般式 ( I ) で表されるスルホンアミド誘導体もしくは スルホン酸エステル誘導体である化合物またはそれらの薬理学的に許容される塩、 あるいは、 前記アンチセンス核酸、 前記リボザィム、 前記二本鎖 RNA もしくは その二本鎖 R A を発現させるベクターまたはそれらの薬理学的に許容される塩 を有効成分として含む、 癌の予防および/または治療用組成物を提供する。 癌の 予防および/または治療用組成物として使用する場合、 前記化合物もしくはその 薬理学的に許容される塩、 または前記組成物は、 適宜、 賦形剤、 希釈剤等と混合 し、 たとえば、 錠剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 散剤もしくはシロップ剤等による経 口的または注射剤もしくは坐剤による非経口的に投与することもできる。
また、 本発明は、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害を有する化合物、 すなわち、 前記一般式 (I ) で表されるスルホンアミ ド誘導体もしくはスルホン酸エステル 誘導体である化合物またはそれらの薬理学的に許容される塩、 あるいは、 前記ァ ンチセンス核酸、 前記リポザィム、 前記二本鎖 RNA もしくはその二本鎖 R A を発現させるベクターまたはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量を投与す る工程を含む、 癌の予防および/または治療方法を提供する。
さらに、 本発明は、 癌の予防および/または治療用組成物を製造するために、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害作用を有する化合物、 すなわち、 前記一般式 ( I ) で表されるスルホンアミ ド誘導体もしくはスルホン酸エステル誘導体であ る化合物またはそれらの薬理学的に許容される塩、 あるいは、 前記アンチセンス 核酸、 前記リボザィム、 前記二本鎖 RNA もしくはその二本鎖 R A を発現させ
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3 0 るベクターまたはそれらの薬理学的に許容される塩の使用を提供する。 かかる化 合物、 アンチセンス核酸、 リボザィム、 もしくは二本鎖 RNA またはその二本鎖 RNA を発現させる発現ベクターは、 前記したように、 合成、 作製することがで さる。
本発明に係る癌の予防および/または治療用組成物、 癌の予防および/または治 療方法は、 ヒトまたはヒト以外の哺乳類 (たとえば、 マウス、 ラット、 モルモッ ト、 ゥサギ、 ィヌ、 ゥマ、 サル等) の癌疾患、 特に、 ヒトの癌疾患の予防おょぴ /または治療に有用である。
本発明が対象とする癌には、 特に限定されるわけではないが、 膝臓癌、 胃癌、 肝臓癌、 肺癌、 大腸癌、 腎癌、 乳癌、 食道癌、 胆道癌、 脾臓癌、 前立腺癌、 膀胱 癌、 子宫癌、 精巣癌、 卵巣癌、 甲状腺癌、 脳腫瘍、 頭類部癌、 皮膚癌また血液腫 瘍等が挙げられる。
投与量は、 投与対象、 投与ルート、 年齢、 体重等の条件により適宜定められる 、 経口投与の場合、 成人一日あたり、 0.01 mg 〜 1000 mg、 好ましくは 0.1 mg 〜 1000 mg、 より好ましくは、 0.1 mg 〜 100 mgを、 静脈内投与の場合、 成人 一日あたり、 0.01 mg 〜 500 mg、 好ましくは 0.1 mg 〜 500 mg、 より好ましく は 0.1 mg 〜 100 mgを、 症状に応じて、 一日あたり 1ないし 5回に分けて投与 することができる。
前記製剤は、 賦形剤、 滑沢剤、 結合剤、 崩壊剤、 安定剤、 矯味矯臭剤、 希釈剤 等の添加剤を用いて周知の方法で製造できる。
賦形剤の具体例としては、 乳糖、 白糖、 ぶどう糠、 トウモロコシ澱粉、 馬鈴薯 澱粉、 α澱粉、 デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセル ロース誘導体;アラビアゴム、 デキストリン;プルランのような有機系賦形剤: および、 軽質無水珪酸、 合成珪酸アルミニウム、 珪酸カルシウム、 メタ珪酸アル ミン酸マグネシゥムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシゥムのような燐酸 塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系
賦形剤等を挙げることができる。
滑沢剤の具体例としては、 ステアリン酸、 ステアリン酸カルシウム、 ステアリ ン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩; タルク ; コロイダルシリカ ; ビ 一ガム、 ゲイ蠟のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリゥムのよう な硫酸塩;グリコール; フマル酸;安息香酸ナトリウム; D Lロイシン ;脂肪酸 ナトリゥム塩; ラウリル硫酸ナトリゥム、 ラウリル硫酸マグネシウムのようなラ ゥリル硫酸塩;無水珪酸、 珪酸水和物のような珪酸類;および上記澱粉誘導体を 挙げることができる。
結合剤の具体例としては、 ヒ ドロキシプロピルセルロース、 ヒ ドロシキプロピ ルメチルセルロース、 ポリ ビニルピロリ ドン、 マクロゴール、 およぴ前記賦形剤 と同様の化合物を挙げることができる。
崩壊剤の具体例としては、 低置換度ヒ ドロシキプロピルセルロース、 カルボキ シメチルセルロース、 カルポキシメチルセルロースカルシウム、 内部架橋カルボ キシメチノレセノレロースナトリゥムのようなセノレロース誘導体;カノレボキシメチノレ スターチ、 カルボキシメチルスターチナトリゥム、 架橋ポリビュルピロリ ドンの ような化学修飾された澱粉、 セルロース類等を挙げることができる。
安定剤の具体例としては、 メチルパラベン、 プロピルパラベンのようなパラオ キシ安息香酸エステル類; クロロブタノール、 ベンジルアルコール、 フエニルェ チルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニゥム ; フエノール、 ク レゾールのようなフエノール類;チメ口サール;デヒ ドロ酢酸;およびソルビン 酸等を挙げることができる。
矯味矯臭剤の具体例としては、 通例、 製剤に使用される甘味料、 酸味料、 香料 等を挙げることができる。
また、 本発明による抗癌作用を有する、 前記式 ( I ) で表されるスルホンアミ ド誘導体、 スルホン酸エステル誘導体またはそれらの薬理学的に許容な塩を細胞 質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤として使用する場合には、 さらには、 本発明による
前記アンチセンス核酸、 前記リポザィム、 前記二本鎖 RNA もしくはその二本鎖 RNA を発現させる発現ベクターまたはそれらの薬理学的に許容される塩を、 細 胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害剤として使用する場合、 他の抗癌剤と組み合わせる こともできる。 他の抗癌剤としては、 以下のものに限定されるわけではないが、 塩酸ィリノテカン、 マイ トマイシン C、 5—フルォロウラシルおよびそのプロド ラッグ、 シスプラチン、 塩酸ゲムシタビン、 ドキソルビシン、 タキソール等を挙 げることができる。
なお、 本発明による抗癌作用を有する化合物またはその薬理学的に許容される 塩や、 本発明による前記アンチセンス核酸、 前記リボザィム、 もしくは前記二本 鎖 RNAまたはその二本鎖 RNA を発現させる発現ベクターあるいはそれらの薬 理学的に許容される塩を、 他の抗癌剤と組み合わせて併用する場合、 同時に投与 することも、 順次に投与することもできる。 同時に投与する場合には、 単一の組 成物中に、 本発明による細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害作用を有する化合物また はその薬理学的に許容な塩、 または前記アンチセンス核酸、 前記リボザィム、 も しくは前記二本鎖 RNAまたはその二本鎖 RNAを発現させる発現ベクターある いはそれらの薬理学的に許容される塩と、 前記他の抗癌剤が含まれていてもよい。 また、 本発明による細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害作用を有する、 前記一般式 ( I ) で表されるスルホンアミド誘導体もしくはスルホン酸エステル誘導体であ る化合物またはそれらの薬理学的に許容される塩を、 癌の予防および/または治 療用組成物として使用する場合、 さらには、 本発明による前記アンチセンス核酸、 前記リポザィム、 もしくは前記二本鎖 RNAまたはその二本鎖 RNA を発現させ る発現ベクターあるいはそれらの薬理学的に許容される塩を、 癌の予防および/ または治療用組成物として使用する場合、 他の抗癌剤と組み合わせることもであ る。 他の抗癌剤としては、 以下のものに限定されるわけではないが、 塩酸イリノ テカン、 マイ トマイシン C、 5—フルォロウラシルおよびそのプロドラッグ、 シ スプラチン、 塩酸ゲムシタビン、 ドキソルビシン、 タキソール等を拳げることが
できる。
なお、 本発明による細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻害作用を有する化合物または その薬理学的に許容される塩や、 本発明による前記アンチセンス核酸、 前記リボ ザィム、 もしくは前記二本鎖 RNAまたはその二本鎖 RNAを発現させる発現べ クタ一あるいはそれらの薬理学的に許容される塩を、 他の抗癌剤と組み合わせて 併用する場合、 同時に投与することも、 順次に投与することもできる。 同時に投 与する場合には、 単一の組成物中に、 本発明による細胞質リンゴ酸脱水素酵素阻 害作用を有する化合物またはその薬理学的に許容な塩、 または前記アンチセンス 核酸、 前記リポザィム、 もしくは前記二本鎖 R Aまたはその二本鎖 RNAを発 現させる発現ベクターあるいはそれらの薬理学的に許容される塩と、 前記他の抗 癌剤が含まれていてもよい。 '
[実施例 1]
以下に、 本発明の有利な効果を示すため、 実施例、 参考例を示すが、 これらは 例示的なものであって、 本発明はいかなる場合にも、 以下の具体例に制限される ものではない。 当業者は、 以下に示す実施例に記載の条件を適宜変更して本発明 を実施することができ、 かかる変更は本願特許請求の範囲に包含される。
本発明に利用される抗腫瘍物質の細胞質リンゴ酸脱水素酵素の酵素活性に対す る阻害効果について、 以下に示すような実験を行った。 すなわち、 まず、 細胞質 リンゴ酸脱水素酵素活性に対する評価系としてのスクリーユング法の確立し、 次 いで、 かか スクリーニング法を利用して、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素の阻害剤 の評価を行った。
(実験材料)
( 1 ) 細胞質リンゴ酸脱水素酵素 [cytosolic malate dehydrogenase, NAD (soluble) /malate dehydrogenase 1, NAD (soluble)/MDHl, NAD (soluble) 'L-malate: NAD
oxidoreductase, cytosolic (soluble)/EC number: EC 1.1.1.37]
定法【こ従レヽ (Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Editions published by
Cold Spring Harbor Laboratory Press)、 配列番号: 1に示す細胞質リンゴ酸脱水素 酵素 (EC 1.1.1.37) 遺伝子 (cDNA) をクローユングし、 本酵素の N末端を His-tag で標識した融合タンパク質をバキュ口ウィルスシステム (BAC-TO- BAC™ Baculovirus Expression Systems, Instruction Manual, INVITROGENE) を用い て発現させた。 精製は Ni-NTA resin (Ni-NTA Super Flow, QIAGEN) を用いて行 い、 その後、 酵素阻害実験に供した。
( 2 ) E7070 [N— ( 3—クロ口一 1 H—インドール一 7 _ィル) _ 4 _スルフ ァモイ/レベンゼンスノレホンァミ ド]
文献記載の方法により合成した (Owa T. et al. J. Med. Chem. 1999, 42, 3789-3799)。
( 3 ) ER-203805 [N _ ( 3 _クロ口 _ 1 H—インドール一 7—ィル) 一4—ス
文献記載の方法により合成した (Owa T. et al. J. Med. Chem. 2002, 45, 4913-4922)
( 4 ) Gossypol, NADH、 ォキザ口酢酸、 牛血清アルブミン
全て SIGMAより購入した。 カタログ番号はそれぞれ、 G8761、 N8129、 04126、 A0281である。
(実験条件)
( 1 ) 高速液体ク口マトグラフィー (HPLC) の測定条件
[カラム] YMC ODS-AQ 内径 4.6 x長さ 150 mm, S-5 (粒子径 5 μηι), カタログ 番号 AQ-302 (W), YMC社製 (京都市)
[移動相] Α液 50 mM酢酸アンモ-ゥム緩衝液、 B液 100 mM酢酸アンモニ ゥム緩衝液/ァセトニトリル (1/1, v/v)
[移動相の時間プログラム]
0分 A液 100%, B液 0%
1分 A液 100%, B液 0%
11分 A液 70%, B液 30%
12分 A液 0%, B液 100%
13分 A液 0%, B液 100%
13.1分 A液 100%, B液 0%
20分 終了
[流速」 毎分 l mL . [検出] UV 254 nmおよび 338 nm (二波長同時計測)
[温度] 室温 (20〜25°C)
( 2 ) 試料と反応条件
10 μΜの被験化合物を含む反応バッファー (10 mM Tris-HCl ( H 7.4)— 0.15 M NaClあるいは 0.1 M HEPES-KOH (pH 6.8)— 1%牛血清アルブミン) の lmL中に、 上記の細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) リコンビナントタンパク質 20 pmoleを加え、 10分から 5時間室温でプレインキュベーションした。 そこに 500 nM (final concentration) の NADHと 5 μΜ (final concentration) のォキザ口酢酸 を加えてさらに 10分間室温でインキュベーションを続けた。 そして、 その反応 液のうち 200 μΐを上記 HPLC システムに注入し、 補酵素である NADHが NAD に変換される量を測定した。
( 3 ) 254 nmで検出した場合のクロマトグラムを図 1に示す (試験化合物なし の場合)。 約 7.3分付近に溶出するピークが NAD、 約 8分付近に溶出するピーク が NADHである。
一方、 約 2 〜 3分にかけて溶出しているなだらかピークがォキザ口酢酸で、 3 〜 4分に溶出しているピークが還元生成物のリンゴ酸に相当するが、 夾雑物の 影響やピーク形状が悪いため、 これらは定量性に乏しい。
( 4 ) 338 nm で検出したときのクロマトグラムを図 2に示す (試験化合物なし の場合)。
本測定は上記と同時に行っている。 この波長では NADHのピークのみが特異的 に観測される (約 3分付近)。
( 3 ) および ( 4 ) より、 254 nm、 338 nm のいずれの検出波長においても NADH が検出されていることが分った。 よって、 以後のクロマトグラムとして は 254 nmにて検出したものを示す。
実験結果
(参考例)
Gossypolの細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC L1.1.37) 活性への影響
細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) を含め、 広範な脱水素酵素の活性を 阻害することが報告されている gossypol に関して (Burgos C. et al, Biochem. Pharmacol, 1986, 35, 801-804)、 我々の調製した上記リコンビナントタンパク質 の酵素活性に与える影響を調べた。 10 mM Tris-HCl(pH 7.4)— 0.15M NaCl中で本 酵素タンパク質と gossypol (10 μΜ) をあらかじめ 10分間室温でインキュベーシ ヨンし、 その後 500 nM NADH— 5 μΜォキザ口酢酸を加えてさらに 10分後に酵 素活性を測定した。 その結果を図 3に示す。 gossypol存在下では NADのピーク が僅かしか認めらず、 gossypolによる酵素活性の阻害が観察された。 この結果に より、 我々の用いている評価系の妥当性 (上記文献との一致) が示された。
(実施例)
E7070および ER-203805の細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) 活性への 影響
上記リコンビナントタンパク質を、 0.1M HEPES-KOH (pH 6.8)— 1%牛血淸アル ブミン溶液中で E7070 (10 μΜ) あるいは ER-203805 (10 μΜ) とあらかじめ 5時間 室温でィンキュベーシヨンした。 その後 5.00 nM NADH -5 μΜォキザ口酢酸を 加えてさらに 10分後に酵素活性を測定した。 Ε7070およびの ER-203805結果を それぞれ図 4およぴ図 5に示す。
上記と同様にして、 下記の化合物について本酵素活性への影響を調べた。 各化 合物は、 特開平 7— 165708号に従って合成した。 活性の評価に際しては、 クロマトグラムのパターン (NAD/NADH の比) から、 E7070 の阻害活性を 1と した時の各化合物の比活性を算出した。 結果を図 6に示す。 化合物 1 :特開平 7— 165708号の実施例 62
N— (3—クロロー 1H—インドーノレ一 7—ィノレ) 一 4一 [2—(メタンスノレホン アミ ド)ェチノレ]ベンゼンスノレホンアミ ド
化合物 2 :特開平 7— 165708号の実施例 32
4ーァミノ一 N— (3—クロロ一 4ーシァノー 1 H—ィン ドーノレ一 7—ィ /レ) ベ ンゼンスノレホンァミ ド
化合物 3 :特開平 7— 165708号の実施例 37
6—アミノー N— (3—シァノー 1 H—インドールー 7—ィル) 一 3—ピリジン スルホンアミ ド
化合物 4 :特開平 7— 165708号の実施例 45
3—クロ口一 N (3—シァノー 1 H—インドーノレ一 7—ィル) 一 2—メチノレベン ゼンスノレホンァミ ド
化合物 5 :特開平 7— 165708号の実施例 28
4—シァノ一N— (3—シァノ一 1H— ^ ンドール一 7—ィル) ベンゼンスルホ ンアミ ド
化合物 6 :特開平 7— 165708号の実施例 35
N— (3—クロ口一 1 H—インドール一 7—ィル) —4一 (2—スルファモイル ェチル) ベンゼンスルホアミ ド
化合物 7 :特開平 7- 1 65708号の実施例 60
N— (3—シァノー 1 H—インドーノレ一 7—ィノレ) 一 5—メチルー 3—ピリジン スルホンアミ ド
化合物 8 :特開平 7— 165708号の実施例 65
5ーブロモー N— (3—シァノー 1 H—ィンドール一 7—ィル) 一 2—ピリジン スノレホンアミ ド
化合物 9 :特開平 7— 165708号の実施例 68
4一アミノー N— (5—プロモ一 3—シァノー 1 H—ィンドール一 7—ィノレ) ベ ンゼンスノレホンアミ ド
化合物 10 :特開平 7— 165708号の実施例 79
N- (3—クロロー 1 H—インドールー 7—^ル) 一4一 (N—メチルァセトァ ミ ド) ベンゼンスルホンアミ ド 以上の実験結果より、 強い抗腫瘍活性を有する化合物である E7070 とその類 縁化合物が細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (EC 1.1.1.37) の阻害剤であることが示 された。 一方、 E7070 と構造類似であるものの有意な抗腫瘍活性を示さない ER- 203805 においては、 本酵素の阻害活性が認められなかった。 さらに、 10 μΜ の NADH を用いて同様に実験を行った場合、 本酵素に対する有意な阻害活性が Ε7070 とその類縁化合物に認められなかったことから、 これらの化合物の酵素阻 害様式が NAD/NADH競合的だると考えられた。
[実施例 2]
細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (cytosolic malate dehydrogenase, cMDH) 遺伝子に 対する RNA干渉法 (RNA interference, R Ai) の実施例
(1) RNAiの作製
配列番号: 1で記される細胞質リンゴ酸脱水素酵素 (cMDH) の塩基配列 (cDNA) に、 図 7に示す 5つの配列を、 short interfering RNA (siRNA) のター ゲット配列として選定した。
次いで、 細胞内で上記配列を標的とする siRNAに変換される short hairpin RNA
P T/JP2004/005557
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(shRNA) を発現するようなプラスミドを、 RNA polymerase III系プロモーター に属する U6プロモーターを含んで作製した。 なお、 プラスミドの配列を、 配列 番号: 8で表し、 配列番号: 8中の… nnn…は、 認識配列とループ配列を表し、 配列番号: 9〜1 3で記載される配列を有するものを、 実際に作製した。
図 8は、 本発明による RNAi に利用する、 shRNA の配列を示す。 図 8に示配 列を有するプラスミ ドについて、 RNAi による細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコー ドする遺伝子発現阻害の効果を評価した。
具体的には、 1 2 -ウェルマィクロプレートに、 HCT116-C9 ヒト大腸癌細胞 を播き込み、 約 5 0 %の細胞密度に達した時点で、 図 8に掲載するプラスミ ド 1.6 μgに対して、 リポフエクトァミン 2000 (Invitrogen社製) 4.0 μΐを用いてト ランスフエクションを行つた。 48時間後、 Rneasy 96 kit (Qiagen社製)を用いて、 全 RNAを回収し、 QuantiTect SYBR Green RT-PCR System (Quiagen社製)により、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素の mR A (以下、 「cMDH mRNA」 という。 )の発現 レベルを定量した。 定量のためのコントロールには、 細胞内にルシフェラーゼ遺 伝子に対する siRNAへと変換される shRNAを発現するプラスミド (hU6-Luc.) を導入したものを採用した。 そして、 図 8に示すプラスミ ドのトランスフエクシ ヨンによる cMDH mRNA発現の割合を、 コントロールに対して補正し、 算出し た。
図 9には、 本発明に使用した各種プラスミ ドの RNAi効果を、 コントロールに 対する cMDH mRNA の発現レベルの割合として示す。 図 9に示す結果から、 hu6-3F4 プラスミ ドのトランスフエクシヨンにより、 コント口一ルの約 1 0 %ま で、 cMDH mRNAの発現が抑制された。
以上の結果から、 cMDHに対する RNAi効果の最も強かった MJ6-3F4プラス ミ ドを用いてトランスフヱクシヨンを行い、 癌細胞の増殖への影響を調べた。 コントロールには、 癌細胞に、 hU6-Luc.プラスミドを導入したものを利用し、 このコント口ールの細胞数を基準に、 癌細胞の増殖を評価した。
本実験では、 ヒ ト白血病細胞 MOLT-4を、 2 4—ゥェルマィクロプレートに、 3.0 X 104細胞数 Zゥェルの割合で卷き込み、 プラスミ ド 300 ng に対して、 FuGENE 6 (口ッシュ社製) 2.0 μΐ を用いてトランスフエクシヨンを行った。 初回 のトランスフエクション以降、 72時間毎に、 回収 ·播き込み (3.0 X 104細胞数 Ζゥエル) とトランスフヱクシヨンを繰り返す操作を 3度行い、 4回目のトラン スフエクシヨンから 72 時間後に生細胞の数をカウントした。 その結果、 J6- 3F4 プラスミ ドで処理された MOLT-4細胞は、 hU6-Luc.プラスミドで処理された コントロールに比して、 5 6 %の細胞数であった。 つまり、 癌細胞の増殖抑制率 は 4 4 %であった。
以上のことから、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発現が、 in vitroで、 RNA干渉法により阻害され、 もつて癌細胞の増殖が抑制されることが 判明した。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 抗癌作用を有する化合物を有効成分として含む、 脱水素酵素 活性を阻害剤が提供される。 具体的には、 本発明では、 強い抗癌活性を示す N— ( 3—クロロー 1 H— ^ ンドーノレ一 7ーィノレ) 一 4—スノレファモイノレベンゼンス ルホンアミド (E7070) に代表されるスルホンアミ ド誘導体もしくはスルホン酸 ェステル誘導体またはそれらの薬理学的に許容される塩が細胞質リンゴ酸脱水素 酵素の阻害剤を開示する。
また、 本発明によれば、 RNAi による、 細胞質リンゴ酸脱水素酵素をコードす る遺伝子の発現を阻害する shRKAが開示され、 かかる shR Aが、 vi で、 癌 細胞の増殖抑制を示し、 癌細胞への新たな予防および/または治療方法が提供さ れる。