WO2004055122A1 - インクジェットインク及び記録方法 - Google Patents

Abstract

水性媒体中に少なくとも色材、紫外線重合性化合物及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化性のインクジェットインクであって、25℃における該インクジェットインク中の溶存酸素濃度が0.1～2ppmであることを特徴とするインクジェットインク。以上の構成により長期に渡って記録を行っても、安定した射出性能が得られる紫外線硬化性のインクジェットインク及びインクジェット記録方法を提供することができる。

Description

明細書 インクジェットィンク及ぴ記録方法 技術分野

本発明は、紫外線を照射することによって反応■硬化可能な紫外線硬化性のィン クジエツトインク及びインクジエツト記録方式により画像を形成、定着するインク ジエツト記録方法に関し、特に、経時射出安定性の高いインクジエツトインク及び ィンクジェット記録方法に関する。 背景技術

近年、 インクジエツト記録方式は簡便、 安価に画像を作成できるため、 写真、 各 種印刷、 マーキング、 カラーフィルタ一等の特殊印刷等、様々な印刷分野に応用さ れてきている。 特に微細なドットを射出、 制御する記録装置、 色再現域、 耐久性、 射出適性を改善したィンクジ ットインク及びその吸収性、色材の発色性、表面光 沢等を飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可 能となっている。 このように、インクジェット記録方式の画質向上は記録装置、 ィ ンクジェットインク （以下、 単にインクともいう）、 専用紙が全て揃って初めて達 成されている。

しかしながら、専用紙を必要とするインクジエツトシステムは、記録媒体が制限 されることにより、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで専用紙と異なる 被転写媒体ヘインクジェット記録方式により記録する試みが多数なされている。具 体的には、 室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジエツト記録方式、 速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジエツト記録 方式、記録後、紫外線 (U V) 光により架橋させる紫外線硬化性インクを用いる U Vィンクジェット記録方式等である。

中でも UVインクジエツト記録方式は、ソルベント系インクジエツト方式に比べ、 比較的低臭気であり、速乾性、プラスチック支持体等のィンク吸収性のない記録媒 体への記録ができる点で、 近年注目されつつある。

しかしながら、非特許文献 1に見られるように U Vィンクジェット記録方式には さまざまな課題が残されている。また特許文献 1〜 3には紫外線硬化性ィンクが開 示されているが、 さまざまな支持体に対する密着性、高感度化、 インクの保存安定 性及ぴィンクの出射安定性について充分とは言いがたいのが現状である。

紫外線硬化性ィンクは、非硬化性の溶剤をほとんど含まない無溶剤型の U Vィン クと、水性媒体等に光重合性化合物を溶解あるいは分散した水性 U Vインクとに大 別される。

無溶剤型の U Vィンクは、紫外線照射のみでィンクを硬化、乾燥できることから 高速記録に適すること、 V O C等有害物質の発生がない等の利点があり、既に実用 化されている。 しかしながら、無溶剤型の U Vインクは硬化後の体積収縮がないた め、記録基材上でインクが盛り上がったままの状態で固着されるため、凹凸感が生 じてしまう。 U V照射のタイミングゃィンク物性の改良でィンクをレベリングさせ ることで、ある程度の凹凸感は解消されるが、 ドット間の摻みや過度の光沢により —般の印刷と質感が異なってしまうという問題がある。

一方、水性媒体を用いた水性 U Vインクは水性溶媒で希釈するため、無溶剤型の U Vインクに比べ、高粘度の重合性化合物が使える、 U V硬化後に水性媒体を揮発 させることで、インク体積を減少させて基材上の質感を向上できる、サーマルタイ プのインクジエツト記録方式を利用できるといった特徴がある。このインクには一 般にラジカル重合性の化合物が広く用いられる。 ラジカル反応は、活性種であるラ ジカルが酸素によってタエンチされることが知られている。

無溶剤型の U Vィンクは、一般の UV硬化性塗料等に比べ低粘度であることから、 インクへの酸素拡散性が高い。 このため、紫外線の照射照度を高める、光開始剤の 濃度を上げる等して、酸素の拡散より大きい速度で活性種を発生させる工夫がなさ れる。

水性 UVィンクは主な媒体が水であるため、疎水性の有機溶剤に比べて溶存酸素 量が少なく重合阻害を受け難いため、無溶剤型の UVィンクより感度の面で有利で ある。

通常の水性ィンクジェットインクは、溶存空気及び気泡核が存在すると、インク ジエツトノズル内で生じる加圧'減圧の繰り返しにより、キヤビテーシヨン等の問 題が生じるため、 可能な限りインク中の溶存空気を取り除く努力がなされる。

しかしながら、過度に溶存空気を除去してしまった水性 U Vインクを用い、長期 間の記録及び紫外線照射を行った場合、射出が不安定化するという問題があること が検討の結果分かってきた。

【非特許文献 1】

色材、 2 0 0 2年、 第 7 5卷、 第 8号、 p . 3 9 4 - 4 0 0 【特許文献 1】

特公平 5 _ 5 4 6 6 7号公報

【特許文献 2】

特開平 6— 2 0 0 2 0 4号公報

【特許文献 3】 特表 2000-504778号公報 発明の開示

本発明の目的は、長期に渡って記録を行っても、安定した射出性能が得られる紫 外線硬化性のィンクジェットィンク及ぴィンクジェット記録方法を提供すること にあ ό。

(1) 上記目的を達成するため、 本発明の一実施例は、 水性媒体中に少なくとも 色材、紫外泉重合性化合物及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化性のィンクジ ットインクであって、 25 °Cにおける該インクジエツトインク中の溶存酸素濃度が 0. 1〜2 p pmであることを特徴とするインクジェットインクである。

(2) また、 本発明の一実施例は、 2. 25°Cにおける溶存酸素濃度が 0. 1〜 2 p p mである紫外線硬化性のィンクジェットインクを基材面に射出し、次いで紫 外線を照射することによつて画像形成することを特徴とするインクジェット記録 方法である。 発明を実施するための最良の形態

本努明に係るインクジェットインクおよび記録方法は、その好ましい一実施形 態において、紫外線硬化性のィンクジュットインク中の溶存酸素濃度が特定の範囲 にあることが特徴である。 U Vインクには一般にラジカル重合性の化合物が用いら れるカ S、インク中の溶存酸素濃度を特定の範囲にすることによって、 この酸素が活 性種であるラジカルをタエンチし、紫外線照射前の不要な重合を防ぎ、長期に渡つ て記録を行っても、 安定した射出性能が得られるものと思われる。

溶存酸素濃度が 0. 1 p pmより少ないと、溶存酸素による重合阻害が起こりに くくなる。その場合、インクジェットノズルに隣接して配置された紫外線照射装置 からの漏れ光によって、徐々にィンクジェットノズル面に付着したィンクが反応し、 長期間に渡って記録、紫外線照射を行うと射出が不安定になってしまう。溶存酸素 濃度が 2 p p mより大きいと、インク流路に残った気泡核や、色材として顔料を用 いた場合に顔料表面の残きれた気泡核が元になつてキヤビテーションを起こして しまう。 また、溶存酸素により硬化感度が低下するといつた問題が生じる。溶存酸 素濃度のより好ましい範囲は 0 . 5〜2 p p mである。

もう一つの本発明は、溶存酸素濃度が特定の範囲にあるインクジェットインクを 基材面に射出し、次いで紫外線を照射することによつて画像形成することが特徴で ある。ィンク自体は外気と接触すると、溶存酸素量が更に増加してしまうため、 0 . 1〜2 p p mを保つようインク液供給系は空気を遮断する素材を使用するのが好 ましい。

溶存酸素濃度を調整するには、仕上がったィンクを減圧処理することによって溶 存酸素を減少させることができ、空気に接触させることによつて増加させることが できる。

溶存酸素量の測定は、ポーラログラフィ一型、ガルバ二式等の測定器を用いて行 うことができるが、ポーラログラフィー型の方が再現性もよく好ましい。測定器に は、 例えば、 溶存酸素測定装置 D〇_ 3 2 A (東亜ディーケーケ一（株） 製） が使 用できる。

本発明に用いられる色材、 紫外線重合性化合物 （紫外線重合性物質)、 光重合開 始剤、水性媒体は特開 2 0 0 0— 1 1 7 9 6 0に記載の化合物を用いることができ る。

典型的なインクの構成例としては、色材としてビグノントイエロー 7 4、 ピグメ ントレッド 1 2 2、 ピグメントブルー 1 5 : 3、 ピグメントブラック 7等の顔料を 水中に分散し、 これに水溶性の紫外線重合性化合物として化合物 1、化合物 2等の 高粘度、高反応性、水溶性の化合物、 これに水溶性の光重合開始剤として化合物 3 を組み合わせた構成である。

化合物 1

化合物

化合物 3

なお、本発明においては紫外線重合性化合物としてラジカル重合性化合物を用い ることで効果が発揮される。これは水溶性媒体中に溶存する酸素量を適度に調整す ることで、インクジェットノズノレ付近への紫外線もれ光によるインクの重合を抑制 することが可能となるからである。

ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平 7— 1 5 9 9 8 3号、特公平 7 一 3 1 3 9 9号、特開平 8— 2 2 4 9 8 2号、同 1 0— 8 6 3号に記載の化合物を 挙げることができる。

ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化 合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも 1つ 有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、 オリゴマー、 ポリマー 等の化学形態を有するものが含まれる。ラジカル重合性化合物は 1種のみ用いても よく、また目的とする特性を向上するため、任意の比率で 2種以上を併用してもよ レ、。

ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、ァクリ /レ酸、 メタタリル酸、 イタコン酸、 クロトン酸、 イソクロトン酸、 マレイン酸等の 不飽和カルボン酸及びそれらの塩、 エステル、 ウレタン、 アミ ドゃ無水物、 アタリ ロニトリノレ、 スチレン、 更に種々の不飽和ポリエステノレ、不飽和ポリエーテノレ、 不 飽和ポリアミド、不飽和ゥレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的 には、 2—ェチルへキシルァクリレート、 2—ヒドロキシェチルァクリレート、 ブ トキシェチルァクリレート、カルビトールァクリレート、 シク口へキシルァクリレ ート、 テトラヒドロフズレフリノレアクリレート、 ペンジノレアクリレート、 ビス （4一 ァクリロキシポリエトキシフエニル） プロパン、ネオペンチルグリコールジァクリ レート、 1， 6—へキサンジォーノレジアタリレート、 エチレングリコーノレジアタリ レート、 ジエチレングリコーノレジァクリレート、 トリエチレングリコーノレジァクリ レート、テトラエチレングリコ一/レジァクリレート、 ポリエチレングリコーノレジァ クリレート、ポリプロピレングリコールジァクリレート、ペンタエリスリ トーノレト リアタリレート、ペンタエリスリ トールテトラァクリレート、 ジペンタエリスリ ト ールテトラアタリレート、 トリメチロールプロパントリアタリレート、テトラメチ ロールメタンテトラァクリレート、オリゴエステルァクリレート、 N—メチロール アクリルアミ ド、 ジアセトンァクリルアミ ド、エポキシァクリレート等のアクリル 酸誘導体、 メチルメタタリレート、 11一ブチルメタタリレート、 2—ェチルへキシ メタタリレート、 ラウリルメタタリレート、 ァリルメタタリレート、 グリシジル メタタリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルァミノメチルメタクリレート、 1 , 6一へキサンジオー^/ジメタクリレート、エチレングリコ一/レジメタクリレー ト、 トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタク リレート、ポリプロピレンダリコーノレジメタクリレート、 トリメチローノレエタント リメタクリレート、 トリメチロールプロパントリメタタリレート、 2, 2一ビス（ 4 —メタクリロキシポリエトキシフエ-ノレ）プロパン等のメタクリル誘導体、その他、 ァリルグリシジルエーテル、 ジァリルフタレート、 トリアリルトリメリテート等の ァリル化合物の誘導体が挙げられ、 更に具体的には、 山下晋三編、 「架橋剤ハンド プック」、 (1 98 1年大成社）；加藤清視編、 「U V · E B硬化ハンドブック （原料 編)」 （1 98 5年、高分子刊行会）；ラドテック研究会編、 「UV■ EB硬化技術の 応用と市場」、 79頁、 （1 9 8 9年、 シーエムシー） ；滝山栄一郎著、 「ポリエステ ル樹脂ハンドプック」、 (1 9 8 8年、 日刊工業新聞社）等に記載の市販品もしくは 業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、ォリゴマー及びポリマーを 用いることができる。

ラジカル重合性化合物の添加量はィンク組成物に対し、 好ましくは 1〜 9 7質 量％であり、 より好ましくは 30〜 9 5質量％である。

(基材）

本発明で用いることのできる基材としては、通常の非コート紙、 コート紙等の他 に、 非吸収性支持体を用いることができるが、 その中でも、 基材として非吸収性支 持体を用いることが好ましい。

本発明においては、非吸収性支持体としては、各種非吸収性のプラスチック及び そのフィルムを用いることができ、 各種プラスチックフィルムとしては、 例えば、 PETフイノレム、 OP Sフイノレム、 OP Pフイノレム、 ON yフイノレム、 PVCフィ ルム、 PEフィルム、 T ACフィルムを挙げることができる。 その他のプラスチッ クとしては、ポリカーボネート、ァクリル樹脂、 AB S、ポリアセタール、 PVA、 ゴム類等が使用できる。 また、金属類や、 ガラス類にも適用可能である。 これらの 記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、 PETフィルム、 OP Sフィルム、 OPPフィルム、 ON yフィルム、 PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明 の構成は、有効となる。 これらの基材は、 インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱等 により、 フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、 インク膜が基材の収 縮に追従し難い。

これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料 によってインク着弹後のドット径が変わってしまうこと力 従来から問題となって いた。本発明の構成では、表面エネルギーの低い OP Pフィルム、 OPSフィルム や表面エネルギーの比較的大きい PETまでを含む力 基材として、濡れ指数が 4 0〜6 OmN/mであることが好ましい。

[実施例 1]

(インクの作製）

表 1に示す組成のイェロー、 マゼンタ、 シアン及びブラックインクを作製した。

表 1 紫外線重合性 重 A

顔料水分散液 水 インクの 化合物 1 化合物 2 開始剤

色材 量 (g) 化合物 s(g) 化合物 量 (g) 化合物 量 (g) 量 (g)

(質量％)

イェロー ピグメントイェロー 74 10 30.0 1 4.0 2 13.0 3 0.5 52.5 マでンタ ピグメントレツド 122 10 30.0 1 4.0 2 13.0 3 0.5 52.5 シアン ピグメントブルー 15 20 15.0 1 4.0 2 13.0 3 0.5 67.5 ブラック ピグメントブラック 7 15 20.0 1 4.0 2 13.0 3 0.5 62.5 各インクとも顔料水分散液には分散剤として数平均分子量 3000のポリウレタン樹脂を含む

この後、減圧脱気を行い溶存酸素濃度を 0 . 6 p p mに調整した。 なお、 実施例 における溶存酸素濃度の測定は溶存酸素測定装置 D O— 3 2 A (東亜ディーケーケ 一 （株） 製） を用い、 2 5 °C、 相対湿度⁵0%の条件で測定した。

次いで、 P F A製のタンク、配管を用い、 ピエゾ型のインクジェットヘッドに各 インクを供給した。 このように、インクタンクからインクジェットノスレまでの流 路ではガス透過个生の低い素材とした。

次に、インクジェットキヤリツジの両端に紫外線ランプを搭載したィンクジェッ トプリンタ一にて、紫外線を点灯しながら連続して記録を行った。 2時間以上連続 して記録を行っても安定した射出が得られた。

次に、インク作製の後の上記減圧脱気を強化し （4 0 °Cに加温しながら脱気）溶 存酸素量を 0 . 0 8 p p m未満として、 同様に評価を行ったところ、 2時間連続し て記録を行うと、 幾つかのノズルは曲がり、詰まりが生じた。 ィンクジェットノズ ル面を観察すると、 ノズルプレート上に硬化あるいは増粘したインクが見られた。 これは、溶存酸素が少ないため、僅かな紫外線により、 ノズルプレート上のインク が重合反応を起こしてしまったものと考えられる。

インク作製後、減圧脱気せずに同様に評価を行った。 このときのインクの溶存酸 素は 8 . 5 p p mであつた。 2時間連続記録すると、 ノズノレ欠が生じた。 このとき ノズル面は硬化あるいは増粘したインクが見られなかった。これは溶存空気により、 キヤビテーションが発生したため射出性が劣化したものと考えられる。 そのまま、 放置し、 改めて記録を行うと再開直後は全ノズルから射出を行うことができた。 産業上の利用可能性

本発明により、長期に渡って記録を行っても、安定した射出性能が得られる紫外 2 線硬化性のィンクジェットインク及びィンクジェット記録方法を提供することが できる。

Claims

請求の範囲

1 . 水性媒体中に少なくとも色材、紫外線重合性化合物及び光重合開始剤を含有 する紫外線硬化性のインクジエツトインクであって、 2 5 °Cにおける該インクジェ ットインク中の溶存酸素濃度が 0 . 1〜2 p p mであることを特徴とするインクジ エツトインク。

2. 2 5 °Cにおける溶存酸素濃度が 0 . 1〜 2 p p mである紫外線硬化性のィン クジェットインクを基材面に射出し、次いで紫外線を照射することによつて画像形 成することを特徴とするインクジエツト記録方法。