JP2008105387A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】種々の非吸収性被記録媒体を用いた場合でもインク滲みが効果的に抑制され、種々の被記録媒体間での画像均一性が高く、また液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制できるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供すること。高画質画像の高速記録が可能であるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】活性放射線の照射により硬化するインク組成物を被記録媒体16上に吐出して画像を記録するインクジェット記録方法において、(1)被記録媒体上に下塗り液を付与する工程と、(2)下塗り液を半硬化させる工程と、(3)半硬化された下塗り液上にインク組成物を吐出して画像形成を行う工程と、(4)画像形成後、インク組成物を大気中より低い酸素濃度の雰囲気下で硬化させる工程とを含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【選択図】図10

Description

本発明はインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関し、詳しくは、高速に、高画質な画像を形成するのに好適なインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
インク吐出口からインクを液滴で吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、被記録媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンタに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを液滴吐出する熱インクジェット方式は、高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
現在、インクジェットプリンタにより、普通紙あるいは、プラスチックなど非吸水性の被記録媒体にインクを打滴して印字する際の高速化、高画質化及び被記録媒体への定着性が重要な課題となっている。
インクジェット記録は、インクの液滴を画像データに従って吐出し、被記録媒体上にこれら液滴にて線画を形成したり、画像を形成するものであるが、特に上記非吸収性の被記録媒体に記録を行う場合には、打滴後の液滴の乾燥や被記録媒体への浸透に時間がかかると、画像に滲みが生じやすく、また、被記録媒体上で隣接するインク液滴間で混合が生じ、鮮鋭な画像形成の妨げとなるなど、実用上問題があった。液滴間での混合の際には、打滴された隣接の液滴が合一して液滴の移動が起こるために、着弾した位置からずれ、細線を描く場合には線幅の不均一が生じ、着色面を描く場合には色ムラ等が発生する(以下、打滴干渉と言う)。また、線幅の不均一と着色面の色ムラ発生の程度が被記録媒体表面のインク吸収性や濡れ性により異なるため、用いるインク及びその吐出条件を一定にしたとしても、種々の被記録媒体間で画像が異なってしまうという問題もあった。
また、上記問題に加えて、非吸収性の被記録媒体に記録した画像は、剥がれやすく、擦過性に劣るなど、画像の定着性の点でも問題になっている。
上記課題を解決する方法として、これまでに様々な技術が提案されてきた。
その例として、高精細な描画性を付与するために、反応性を有する2液式のインクを用い、被記録媒体上において両者を反応させるものがあり、例えば、塩基性ポリマーを有する液体を付着させた後、アニオン染料を含有するインクを記録する方法(例えば、特許文献1参照)や、カチオン性物質を含む液体組成物を適用した後、アニオン性化合物と着色剤を含有するインクを適用する方法(例えば、特許文献2参照)、等が開示されている。
また、インクとして紫外線硬化型インクを適用し、被記録媒体上に吐出した紫外線硬化型色インクのドットにそれぞれの吐出タイミングに合わせて紫外線を照射し、増粘させて隣接するドットが互いに混合しない程度にプレ硬化させ、その後さらに紫外線を照射して本硬化させるインクジェット記録方法が提案されている(特許文献5参照)。
さらに、透明又は半透明な非吸収性被記録媒体上に、放射線硬化型白色インクを下塗り層として均一に塗設し、放射線照射により固化あるいは増粘させた後に、放射線硬化型色インクセットを用いたインクジェット記録を行うことにより色インクの視認性、滲み、種々の被記録媒体間での画像が異なってしまう問題を改良する技術(特許文献3及び4参照)が提案されている。また、上記放射線硬化型白色インクに変えて、実質上、透明な活性光線硬化型インクをインクジェットヘッドにより塗設する技術(特許文献6参照)も提案されている。
特許文献7には、光硬化性インク滴が着弾した後にその滴の広がりを抑えることができるインクジェットプリンタを提供するとの課題に対し、光の照射により硬化する光硬化性インクを滴として被記録媒体に吐出するヘッドと、被記録媒体に着弾した光硬化性インク滴に光を照射する照射手段と、被記録媒体に着弾した光硬化性インク滴に対して前記照射手段により光が照射される領域を外気から遮断する遮断手段と、空気の窒素成分を濃縮して窒素ガスを発生させる窒素ガス発生手段を有し、前記領域に窒素ガスを供給する窒素ガス供給手段と、前記領域から排気を行うとともに、排気された気体を前記窒素ガス発生手段に供給する排気手段とを備えることを特徴とするインクジェットプリンタが開示されている。
特開昭63−60783号公報 特開平8−174997号公報 特開2003−145745号公報 特開2004−42525号公報 特開2004−42548号公報 特開2005−96254号公報 特開2003−285424号公報
特許文献2に記載の方法では、特定の基材に対しては打滴干渉や滲みの問題は回避できるが、画像の定着性の観点では不十分である。一方、特許文献5に記載の方法では、滲みは抑制され、画像の定着性は改善されているが、種々の被記録媒体間での画像が異なってしまう問題は残っており、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の解消には不十分である。また、特許文献3及び4に記載の方法では液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の解消には不十分である。更に、特許文献6に記載の方法によっても、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の問題が残る。
インク滴を効率的に定着させるために、下塗り液を光硬化させる過程で内部のみを硬化させてインク滴となじみやすくする必要があり、インク描画後に下塗り液及びインク滴による画像すべてを表面から内部まで完全に硬化させることが好ましい。特許文献7に記載のインクジェットプリンタは、インク描画時に表面から内部まで硬化させるため下塗り液とインク滴がなじまない。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、種々の非吸収性被記録媒体を用いた場合でもインク滲みが効果的に抑制され、種々の被記録媒体間での画像均一性が高く、また液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制できるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することを課題とする。
また、本発明は高画質画像の高速記録が可能であるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することをも課題とする。
本発明が解決しようとする課題は下記<1>及び<8>に記載の手段によって解決された。好ましい実施態様である<2>〜<7>及び<9>と共に以下に示す。
<1>活性放射線の照射により硬化するインク組成物を被記録媒体上に吐出して画像を記録するインクジェット記録方法において、(1)前記被記録媒体上に下塗り液を付与する工程と、(2)前記下塗り液を半硬化させる工程と、(3)半硬化された前記下塗り液上に前記インク組成物を吐出して画像形成を行う工程と、(4)画像形成後、前記インク組成物を大気中より低い酸素濃度の雰囲気下で硬化させる工程とを含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
<2>前記下塗り液を、活性放射線の照射により半硬化させる<1>に記載のインクジェット記録方法、
<3>前記下塗り液が、ラジカル重合性組成物を含む<1>又は<2>に記載のインクジェット記録方法、
<4>前記インク組成物が多色インクセットであり、被記録媒体上に吐出された少なくとも1色のインク組成物を半硬化させる工程を更に含む<1>〜<3>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<5>前記インク組成物及び前記下塗り液を完全に硬化させる工程を更に含む<1>〜<4>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<6>前記下塗り液の表面張力が、前記インク組成物の少なくとも1つの表面張力よりも小さい<1>〜<5>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<7>前記インク組成物の硬化感度が、前記下塗り液の硬化感度と同等又はそれ以上である<1>〜<6>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<8>前記被記録媒体上に下塗り液を付与する下塗り液付与手段と、前記下塗り液付与手段の下流に配置され、前記下塗り液を半硬化させる下塗り液半硬化手段と、前記下塗り液半硬化手段の下流に配置され、活性放射線の照射により硬化可能なインク組成物を、前記被記録媒体上に吐出して画像形成を行う画像形成手段とを備えるインクジェット記録装置、
<9>前記被記録媒体を搬送する手段と、前記画像形成手段の下流に配置され、前記画像形成手段で画像形成された被記録媒体に大気中より低い酸素濃度の雰囲気下で活性放射線を照射してインク組成物及び下塗り液を硬化させる活性放射線照射手段とを更に備え、前記画像形成手段が前記被記録媒体の搬送方向と直交する方向に配置した前記被記録媒体の記録可能幅の全幅に対応した長さである少なくとも1つのライン型インクジェットヘッドから前記インク組成物を吐出する画像形成手段である<8>に記載のインクジェット記録装置。
本発明により、種々の非吸収性被記録媒体を用いた場合でもインク滲みが効果的に抑制され、種々の被記録媒体間での画像均一性が高く、また液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制できるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができた。
また、本発明により、高画質画像の高速記録が可能であるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができた。
本発明のインクジェット記録方法は、活性放射線の照射により硬化するインク組成物(以下、本発明において「インク液」ともいう。)を被記録媒体上に吐出して画像を記録するインクジェット記録方法において、(1)前記被記録媒体上に下塗り液を付与する工程と、(2)前記下塗り液を大気中で半硬化させる工程と、(3)半硬化された前記下塗り液上に前記インク組成物を吐出して画像形成を行う工程と、(4)画像形成後、前記インク組成物を大気中より低い酸素濃度の雰囲気下で、硬化させることを特徴とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、被記録媒体に付与された少なくとも1種の下塗り液を半硬化させ、半硬化した下塗り液上に、活性放射線の照射により硬化する少なくとも1種のインク組成物を大気中で吐出して画像形成し、画像形成後に前記インク組成物を大気中より低い酸素濃度の雰囲気下(好ましくは0.1〜10体積%)で硬化させるインクジェット記録方法である。
後に詳述するが「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、下塗り液及び/又はインク液が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。
本発明において画像とは、文字、図表及び写真等を含む光学的情報であって、モノクロ、モノカラー及びフルカラーのいずれであってもよい。
一般にインクジェット記録方法においては、高い画像濃度を得るために互いに重なり部分を有して付与された隣接のインク液液滴が、乾燥前に被記録媒体上に留まって接触するため、隣接のインク液液滴が互いに合一して画像の滲みや細線の線幅の不均一が発生し、先鋭な画像の形成性が損なわれやすい。
しかし、本発明のインクジェット記録方法においては、被記録媒体上に下塗り層を付与し、下塗り液を半硬化させる構成とすることにより、半硬化状態の下塗り液上にインク液液滴が互いに重なり部分を有して付与されても、下塗り液とインク液液滴の相互作用により、これら隣接のインク液液滴間の合一を抑えることができる。これにより、画像の滲み、画像中の細線などの線幅の不均一及び着色面の色ムラの発生が効果的に防止される。したがって本発明のインクジェット記録方法によれば、均一幅で先鋭なライン形成が可能であり、反転文字など打滴密度の高いインクジェット画像の記録を再現よく行うことができる。
本発明のインクジェット記録方法は、例えば、被記録媒体として液体吸収性の低い非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体上に画像を記録する場合に特に有効である。
ここで、隣接のインク液液滴とは、単一色のインク液を用いてインク吐出口から打滴される液滴であって重なり部分を有して打滴されるもの、あるいは色違いのインク液を用いてインク吐出口から打滴される液滴であって重なり部分を有して打滴されるものを意味する。隣接のインク液滴は、打滴が同時である液滴であってもよいし、先行打滴と後続打滴の関係である先行液滴と後続液滴であってもよい。
本発明においては、画像を形成するための液体として、少なくとも1種のインク液と少なくとも1種の下塗り液とを用いる。下塗り液はインク液と組成が異なることが好ましい。また、下塗り液は、被記録媒体上にインク液液滴の吐出によって形成される画像と同一領域もしくは該画像より広い領域に付与することが好ましい。
また、本発明におけるインク組成物は、多色インクセットとして用いられることが好ましい。更に多色インクセットを用いる場合、各色のインク組成物吐出後に更にそのインク液液滴を半硬化させる構成とすることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法の具体的な構成の1つは、被記録媒体に打滴される複数色のインク液液滴が、前記画像を形成するための重合性又は架橋性の材料を含有しており、かつ下塗り液と組成が異なり、重合性又は架橋性の材料を含有する下塗り液を、前記インク液液滴で形成される画像と同一もしくは該画像よりも広い範囲に予め被記録媒体に付与する工程と、被記録媒体上に付与された前記下塗り液に活性放射線又は熱を与える工程と、活性放射線又は熱を与え半硬化させた後、前記被記録媒体の下塗り液が付与された側に、前記複数色のインク液液滴を大気中で打滴して画像を形成する工程と、前記画像を大気中より低い酸素濃度の雰囲気下で硬化させる工程とを設けた構成である。
大気中より低い酸素濃度は、0.1〜10体積%であることが好ましい。
上記のように予め下塗り液を付与しておき、その後に大気中で多色のインク液液滴全てを打滴した後に、大気中より低い酸素濃度の雰囲気下で活性エネルギーを付与することで、インク液液滴中に含まれる重合性又は架橋性材料の重合又は架橋による硬化反応を促進させ、より強固な画像をより効率よく形成することができる。
エネルギーの付与は、活性放射線照射又は加熱によって好適に行うことができる。活性放射線には後述する画像固定用のものを使用することができ、例えば、紫外線、可視光線など、並びにα線、γ線、X線、電子線などが挙げられ、コスト及び安全性の点で、紫外線、可視光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
また、加熱は、非接触型の加熱手段を使用して行うことができ、オーブン等の加熱炉内を通過させる加熱手段や、紫外光〜可視光〜赤外光等の全面露光による加熱手段等が好適である。加熱手段としての露光に好適な光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、水銀灯等が挙げられる。
重合開始剤を含む系では、活性放射線や加熱などの活性エネルギーの付与により重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性又は架橋性材料の重合又は架橋による硬化反応が促進される。
活性光の照射によりエネルギーを付与する場合に、硬化反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般には100〜10,000mJ/cm2程度が好ましい。
また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
−インク組成物及び下塗り液−
以下、本発明のインクジェット記録方法に用いるインク組成物及び下塗り液について詳細に説明する。
インク組成物は、少なくとも画像を形成するための組成となるように構成される。インク組成物は重合性又は架橋性材料を少なくとも1種含み、重合開始剤、着色剤及び他の成分を用いて構成される。
下塗り液は少なくとも前記インク組成物と組成が異なるように構成されることが好ましい。下塗り液は重合性又は架橋性材料を少なくとも1種含み、必要に応じて重合開始剤、着色剤及び他の成分を用いて構成される。
本発明において、前記重合開始剤は活性放射線によって重合反応又は架橋反応を開始させるものが好ましい。インク組成物及び下塗り液が重合開始剤を含むことにより、被記録媒体に付与されたインク組成物及び下塗り液を活性放射線の照射によって硬化させることができる。
本発明において、インク組成物及び下塗り液はラジカル重合性組成物を含むことが好ましい。本発明におけるラジカル重合性組成物とは少なくとも1種のラジカル重合性材料と少なくとも1種のラジカル重合開始剤とを含む組成物を意味する。ラジカル重合性組成物を含むことにより硬化反応を短時間で行うことができる。
本発明において、インク組成物は着色剤を含有するものであることが好ましい。また、インク組成物と組合わせて用いられる下塗り液は、着色剤を含有しないもしくは着色剤の含有量が1重量%未満の構成、又は、下塗り液が着色剤として白色顔料を含む構成のいずれかであることが好ましい。以下、インク組成物及び下塗り液を構成する各成分について詳述する。
(重合性又は架橋性材料)
本発明における重合性又は架橋性材料は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合又は架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
重合性又は架橋性材料としては、ラジカル重合反応、二量化反応など公知の重合又は架橋反応を生起する重合性又は架橋性材料を適用することができる。例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物、芳香核に隣接した光二量化可能な不飽和二重結合を有するシンナミル基、シンナミリデン基やカルコン基等を側鎖に有する高分子化合物などが挙げられる。
中でも、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物がより好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物(単官能又は多官能化合物)から選択されるものであることが特に好ましい。具体的には、本発明に係る産業分野において広く知られるものの中から適宜選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体及びオリゴマー)及びそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものが含まれる。
重合性又は架橋性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物を(A)単官能の重合性化合物、2個以上有する化合物を(B)多官能の重合性化合物ともいう。
本発明における重合性又は架橋性材料としては、特に、ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を起こさせる各種公知のラジカル重合性のモノマーが好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類及び内部二重結合を有する化合物(マレイン酸など)等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかをさし、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかをさす。
以下、(A)単官能の重合性化合物、及び(B)多官能の重合性化合物を詳細に例示する。
(A)単官能の重合性化合物
本発明に用いるインク組成物及び下塗り液に使用できる単官能の(メタ)アクリレート類の具体例として、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明に用いるインク組成物及び下塗り液に使用できる単官能の(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
本発明に用いるインク組成物及び下塗り液に使用できる単官能の前記芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3―オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
本発明に用いるインク組成物及び下塗り液に使用できる単官能ビニルエーテルの例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
(B)多官能の重合性化合物
本発明に用いるインク組成物及び下塗り液に使用できる多官能の(メタ)アクリレート類としては、例えば以下のものが挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、本発明に用いるインク組成物及び下塗り液に使用できる多官能ビニルエーテルの例として、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
上記以外に、本発明におけるラジカル重合性モノマーとしては、更に、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、シアン化ビニル((メタ)アクリロニトリルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)などが挙げられる。
本発明に用いるインク組成物において、重合性化合物は(メタ)アクリレート類及び/又は(メタ)アクリルアミド類であることが好ましい。これらの重合性化合物は硬化速度に優れる。
また、(A)単官能の重合性化合物と(B)多官能の重合性化合物との混合比は、重量比で(A):(B)が1:1〜1:4であることが好ましく、1:1.5〜1:3であることがより好ましく、1:2〜1:2.5であることが更に好ましい。
上記の数値の範囲内であると、硬化速度及び粘度が適度なインク組成物となる。
本発明に用いるインク組成物及び下塗り液中において、重合性化合物の含有量は各液滴の全固形分(重量)に対して、50〜99.6重量%の範囲が好ましく、70〜99.0重量%の範囲がより好ましく、80〜99.0重量%の範囲がさらに好ましい。
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全重量に対して、20〜98重量%の範囲が好ましく、40〜95重量%の範囲がより好ましく、50〜90重量%の範囲が特に好ましい。
(C)重合開始剤
本発明に用いるインク組成物及び下塗り液は重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤は、活性放射線、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応を開始、促進させ、インク組成物及び下塗り液を硬化させる化合物である。
本発明に用いるインク組成物において、ラジカル重合を起こさせる重合開始剤を含有することが好ましく、それらが光重合開始剤であることが特に好ましい。光重合開始剤は、光の作用や増感色素の電子励起状態との相互作用によって化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル発生剤であることが好ましい。
本発明における光重合開始剤としては、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用できる。例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載されている増感色素の電子励起状態との相互作用を経て酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も使用することができる。
本発明に用いるインク組成物において、好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
前記(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号明細書、ヨーロッパ特許0284561A1号明細書記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
前記(b)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、及び同422570号等の各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、及び同2833827号等の各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、及び特公昭46−42363号等の各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、及び同52−14279号等の各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
前記(c)「有機過酸化物」としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
前記(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
前記(e)ケトオキシムエステルとしては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
前記(f)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号等の各明細書に記載されている化合物が挙げられる。
前記(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、並びに特公昭46−42363号等の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
前記(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号等の各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
前記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
前記(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、及び同0388343号等の各明細書、米国特許3901710号、及び同4181531号等の各明細書、特開昭60−198538号、及び特開昭53−133022号等の各公報に記載されるニトロベンジルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、及び同0101122号等の各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、及び同4431774号等の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、及び特開平4−365048号等の各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、及び特開昭59−174831号等の各公報に記載される化合物等が挙げられる。
前記(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号等の明細書記載の化合物等を挙げることができる。
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等を挙げることができる。
本発明における光重合開始剤としては、例えば、以下に例示する化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
Figure 2008105387
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なお、重合開始剤は感度に優れるものが好ましいが、保存安定性の観点から、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を選択することが好ましい。
重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。
本発明に用いる下塗り液中における重合開始剤の含有量は、経時安定性と硬化性及び硬化速度との観点から、下塗り液中の重合性材料に対して0.5〜20重量%の範囲内が好ましく、1〜15重量%が更に好ましく、3〜10重量%が特に好ましい。含有量を前記範囲内とすることで経時による析出や分離が生じたり、硬化後のインク組成物の強度や擦り耐性などの性能が悪化したりすることを抑制できる。
本発明に用いるインク組成物中には、インク組成物の保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して重合開始剤を含有させることができる。インク組成物液滴中の重合開始剤の含有量は、インク組成物中の重合性又は架橋性化合物に対して、0.5〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましい。
(D)着色剤
本発明に用いるインク組成物は少なくとも1種の着色剤を含有することが好ましい。また、インク組成物以外に下塗り液が着色剤を含有してもよい。
本発明に用いることができる着色剤は特に制限はなく、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料等から適宜選択して用いることができる。中でも本発明に用いるインク組成物及び下塗り液は非水溶性の有機溶剤系であることが本発明の効果の観点から好ましく、非水溶性媒体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料、顔料が好ましい。
本発明に用いるインク組成物において、着色剤の含有量は好ましくはインク組成物中の1〜30重量%であり、更に好ましくは1.5〜25重量%であり、特に好ましくは2〜15重量%である。
また、本発明に用いる下塗り液において、白色顔料などの着色剤を含有する場合には、好ましくは下塗り液中の含有量が2〜45重量%であり、より好ましくは、4〜35重量%である。
以下、本発明に用いるインク組成物及び下塗り液に好適な顔料を詳細に説明する。
〈顔料〉
本発明において、着色剤として顔料を用いる態様が好ましい。顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、並びにシアン、マゼンタ、及びイエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
有機顔料としては、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン、イソビオラントロン系顔料及びそれらの混合物などが挙げられる。
更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメント・レッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメント・レッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメント・バイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメント・レッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメント・バイオレット42、C.I.ピグメント・レッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメント・レッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメント・レッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメント・レッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメント・オレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメント・ブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメント・バイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメント・イエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメント・イエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメント・オレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメント・レッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメント・イエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメント・イエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメント・イエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメント・イエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメント・オレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメント・オレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメント・オレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメント・レッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメント・レッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメント・レッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメント・レッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメント・レッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメント・レッド248、C.I.ピグメント・レッド262、もしくはC.I.ピグメント・ブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、C.I.ピグメント・イエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメント・イエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメント・イエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメント・レッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメント・レッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメント・イエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメント・イエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメント・レッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメント・レッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメント・オレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメント・レッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメント・ブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメント・グリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメント・グリーン36(C.I.番号74265)、ピグメント・グリーン37(C.I.番号74255)、ピグメント・ブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメント・ブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメント・ブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメント・ブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメント・バイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメント・レッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメント・レッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメント・レッド264、C.I.ピグメント・レッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメント・オレンジ71、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメント・レッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメント・イエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメント・オレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノ
ン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメント・レッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、又はC.I.ピグメント・バイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料が挙げられる。
本発明においては、2種類以上の有機顔料又は有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。さらに、樹脂被覆された顔料を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販品が入手可能である。
液中に含有される顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、10〜250nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは50〜200nmである。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの粒径分布測定装置により測定することができる。
着色剤は、1種単独のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、打滴する液滴及び液体ごとに異なる着色剤を用いてもよいし、同一の着色剤を用いてもよい。
(E)分散剤
着色剤の分散を行う際に分散剤を添加することが好ましい。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、好ましくは高分子分散剤を用いることが好ましい。
高分子分散剤としては、DisperBYK−101、DisperBYK−102、DisperBYK−103、DisperBYK−106、DisperBYK−111、DisperBYK−161、DisperBYK−162、DisperBYK−163、DisperBYK−164、DisperBYK−166、DisperBYK−167、DisperBYK−168、DisperBYK−170、DisperBYK−171、DisperBYK−174、DisperBYK−182(以上BYKケミー社製)、EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(以上エフカアディティブ社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ製)等の高分子分散剤;ソルスパース(Solsperse)3000,5000,9000,12000,13240,13940,17000,24000,26000,28000,32000,36000,39000,41000,71000などの各種ソルスパース分散剤、(アビシア社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)製)及びイソネットS−20(三洋化成(株)製)楠本化成社製「ディスパロン KS−860,873SN,874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
また、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745(エフカ社製))、ソルスパース5000,12000、ソルスパース22000(アビシア社製)等の顔料誘導体もあわせて使用することができる。
本発明のインク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜5重量%であることが好ましい。
(F)界面活性剤
本発明において、インク組成物には、長時間安定した吐出性を付与する目的で界面活性剤を添加することが好ましい。また、下塗り液には、被記録媒体に対する濡れ性の向上及びハジキの防止を目的として界面活性剤を添加することが好ましい。
本発明における界面活性剤は、ヘキサン、シクロヘキサン、p−キシレン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、シクロヘキサノン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、メタノール、水、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、好ましくは、ヘキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、特に好ましくは、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質である。
任意の溶媒に対してある化合物が強い表面活性を有する物質か否かは、下記の手順によって判断することができる。
(手順)
任意の溶媒を選択し該溶媒の表面張力γ溶媒(0)を測定する。前記γ溶媒(0)を求めた溶媒と同じ液に該化合物を添加し、該化合物の濃度を0.01質量%ずつ増加させ、該化合物濃度の変化に対する表面張力の変化が0.01mN/m以下になったときの溶液の表面張力γ溶媒(飽和)を測定する。前記γ溶媒(0)と前記γ溶媒(飽和)の関係が、
γ溶媒(0) − γ溶媒(飽和) > 1 (mN/m)
であれば、該化合物は該溶媒に対して強い表面活性を有する物質であると判断することができる。
本発明において、インク組成物及び下塗り液に使用される界面活性剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。その他、界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。
なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
具体的にはフッ素系添加剤(界面活性剤・表面改質剤)としてメガファックF−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−446、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−478、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−484、F−486、F−487、F−172D、F−178K、F−178RM、ESM−1、MCF−350SF、R−08,F−472SF、R−30、BL−20、R−61、及びR−90(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ヒドロキシ基含有ポリジメチルシロキサンなどシリコン系の界面活性剤を用いることができる。例えばBYK−306、BYK−307、BYK−308、BYK−310、BYK−330、BYK−333、BYK−341及びBYK−344(Chemie社製)等が挙げられる。これらの界面活性剤は高い表面張力低下能を有しており、支持体への濡れ性を向上し、ハジキを防止することができる。
本発明のインク組成物及び下塗り液中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、一般的には、インク組成物及び下塗り液全体の重量に対し、0.0001〜1重量%であることが好ましい。下塗り液の表面張力がインク組成物の少なくとも1つの表面張力よりも小さいことが好ましく上記の範囲内で必要に応じて界面活性剤の添加量を調節することができる。
(G)増感剤
本発明において、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感剤として増感色素を添加してもよい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2008105387
式(IX)中、A1は硫黄原子又は−NR50−を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、A2は硫黄原子又は−NR59−を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
前記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
Figure 2008105387
Figure 2008105387
(H)その他の成分
本発明に用いるインク組成物及び下塗り液において、上記の成分以外に、共増感剤、貯蔵安定剤、導電性塩類、溶剤及び重合禁止剤など公知の添加剤を目的に応じて併用することができる。
<共増感剤>
感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
<貯蔵安定剤>
本発明に用いるインク組成物及び下塗り液(好ましくはインク組成物に)には、保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性又は架橋性材料と共存させて用いることが好ましく、また、含有する液滴又は液体あるいは共存の他成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシルアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
貯蔵安定剤の添加量は、重合開始剤の活性や重合性又は架橋性材料の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と硬化性とのバランスの点で、インク組成物及び下塗り液中における固形分換算で、0.005〜1重量%が好ましく、0.01〜0.5重量%がより好ましく、0.01〜0.2重量%がさらに好ましい。
<導電性塩類>
導電性塩類は、導電性を向上させる固体の化合物である。本発明においては、保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで溶解性がよい場合には、適当量添加してもよい。前記導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
<溶剤>
本発明においては、必要に応じて公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、液(インク組成物及び下塗り液)の極性や粘度、表面張力、着色剤の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的で使用できる。
なお、溶剤は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことが、速乾性及び線幅の均一な高画質画像を記録する点で好ましいことから、高沸点有機溶媒を用いた構成とするのが望ましい。
本発明における高沸点有機溶媒としては、構成素材、特にモノマーとの相溶性に優れる性質を有するものが好ましい。
具体的には、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルが好ましい。
公知の溶剤としては、100℃以下の有機溶剤である低沸点有機溶媒も挙げられるが、硬化性に影響を与える懸念があり、また、低沸点有機溶媒は環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましい。使用する場合には、安全性の高いものを用いることが好ましく、安全性が高い溶媒とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒であり、100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上が更に好ましい。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
溶剤は1種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量は各液中0〜20重量%が好ましく、0〜10重量%が更に好ましく、実質的に含まないことが好ましい。本発明に係るインク組成物及び下塗り液に水を実質的に含まないことで、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性の点、及び非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いたときの乾燥性の点で好適である。なお、実質的に含まないとは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
<重合禁止剤>
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。また、本発明のインク組成物をインクジェット記録用インク組成物として使用する場合には、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、FIRSTCURE ST−1(ALBEMARLE社製)等が挙げられる。
<その他添加剤>
さらに、ポリマー、表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を併用することができる。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
また、上記のほか、混合により反応して凝集物を生成するか、増粘する1組の化合物をそれぞれ、本発明に係るインク組成物と下塗り液とに分けて含有することができる。前記1組の化合物は、凝集体を急速に形成させるか、あるいは液を急速に増粘させる特徴を有するものであり、これにより互いに隣接する液滴間の合一をより効果的に抑制することができる。
前記1組の化合物の反応例としては、酸/塩基反応、カルボン酸/アミド基含有化合物による水素結合反応、ボロン酸/ジオールに代表される架橋反応、カチオン/アニオンによる静電的相互作用による反応等が挙げられる。
(インク組成物及び下塗り液の物性)
インクジェット記録方式によって被記録媒体上に吐出されるインク組成物(液滴)の物性については、装置により異なるが一般には25℃での粘度が、5〜100mPa・sの範囲内であることが好ましく、10〜80mPa・sがより好ましい。また、下塗り液の半硬化前の粘度(25℃)は100〜5,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、200〜3,000mPa・s以内がより好ましい。
本発明においては、被記録媒体上に目的の大きさのドットを形成する観点から、下塗り液は界面活性剤を含有することが好ましく、下記の条件(A)、(B)及び(C)の全てを満たすことが好ましい。
(A)下塗り液の表面張力は、いずれかのインク組成物の表面張力よりも小さい。
(B)下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m)
の関係を満たす。
(C)下塗り液の表面張力は、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2
の関係を満たす。
ここで、γsは、下塗り液の表面張力の値である。γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
〈条件(A)〉
本発明において、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液の表面張力γsを、いずれかのインク組成物の表面張力γkよりも小さくすることが好ましい。
さらに、着滴から露光までの間のインクドットの拡大をより効果的に防ぐ観点から、γs<γk−3(mN/m)であることがより好ましく、γs<γk−5(mN/m)であることが特に好ましい。
また、フルカラーの画像を印字する場合は、画像の鮮鋭性を向上させる観点から、下塗り液の表面張力γsは、少なくとも視感度の高い着色剤を含有するインク組成物の表面張力よりも小さくすることが好ましく、全てのインク組成物の表面張力より小さくすることがより好ましい。なお、視感度の高い着色剤としては、マゼンタ、ブラック及びシアンの色を呈する着色剤が挙げられる。
また、インク組成物の表面張力γkと下塗り液の表面張力γsの値が上記の関係を満たしていても、両者の値が15mN/m未満であるとインクジェット打滴時に液滴の形成が困難になり不吐出が生じる場合がある。一方、50mN/mを超えると、インクジェットヘッドとの濡れ性が悪くなり不吐出の問題が生じる場合がある。したがって、吐出適正の観点から、インク組成物の表面張力γkと下塗り液の表面張力γsとは、それぞれ15mN/m以上50mN/m以下の範囲内であることが好ましく、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内であることがより好ましく、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内であることが特に好ましい。
ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃、60%RHにて測定した値である。
〈条件(B)と条件(C)〉
本発明において、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液は少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有することが好ましい。なお、この場合は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、下記の条件(B)を満たすことが好ましい。
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m) …条件(B)
さらに、下塗り液の表面張力は、下記の条件(C)の関係を満たすことが好ましい。
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2 …条件(C)
既述のように、γsは、下塗り液の表面張力の値である。また、γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、下塗り液に含有する界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
なお、前記γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値を測定することによって得られる。また、前記γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の含有濃度を0.01質量%ずつ増加させた場合に、界面活性剤濃度の変化に対する表面張力の変化量が0.01mN/m以下になったときの該液の表面張力を測定することによって得られる。
以下、前記γs(0)、γs(飽和)、γs(飽和)最大について具体的に説明する。
例えば、下塗り液(例1)を構成する成分が、高沸点溶媒(フタル酸ジエチル、和光純薬工業(株)製)、重合性材料(ジプロピレングリコールジアクリレート、Akcros社製)、重合開始剤(TPO、下記の開始剤−1)、フッ素系界面活性剤(メガファック
F475、大日本インキ化学工業(株)製)、炭化水素系界面活性剤(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム)とした場合、γs(0)、γs(飽和)1(フッ素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)2(炭化水素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)、及び、γs(飽和)最大は、下記の通りとなる。
Figure 2008105387
即ち、γs(0)は、下塗り液のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値であり、36.7mN/mとなる。また、該液に前記フッ素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)1としたとき、その値は20.2mN/mとなる。さらに、同様に該液に前記炭化水素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)2としたとき、その値は30.5mN/mとなる。
前記下塗り液(例1)は、前記条件(B)を満たす界面活性剤を2種類含有するため、γs(飽和)は、フッ素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和)1)と炭化水素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和)2)の2つの値をとり得る。ここでγs(飽和)最大は、前記γs(飽和)1及びγs(飽和)2のうちの最大値であることから、γs(飽和)2の値となる。
以上より、それらを纏めると下記のようになる。
γs(0)=36.7mN/m
γs(飽和)1=20.2mN/m(フッ素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)2=30.5mN/m(炭化水素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)最大=30.5mN/m
以上の結果から、下塗り液の表面張力γsとしては、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2=33.6mN/m
の関係を満たすことが好ましい。
なお、前記条件(C)については、着滴から露光までの間のインク組成物滴の拡大をより効果的に防ぐ観点から、下塗り液の表面張力としては、
γs<γs(0)−3×{γs(0)−γs(飽和)最大}/4
の関係を満たすことがより好ましく、
γs≦γs(飽和)最大
の関係を満たすことが特に好ましい。
インク組成物及び下塗り液は、所望の表面張力が得られるように組成を選択すればよいが、これらの液体は界面活性剤を含有することが好ましい。被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液は少なくとも1種の界面活性剤を含有することが好ましい。
(インク組成物及び下塗り液の硬化感度)
本発明においては、前記インク組成物の硬化感度が、前記下塗り液の硬化感度と同等又はそれ以上であることが好ましい。より好ましくは、インク組成物の硬化感度が、下塗り液の硬化感度以上かつ下塗り液の硬化感度の4倍以下である。更に好ましくは、インク組成物の硬化感度が、下塗り液の硬化感度以上かつ下塗り液の硬化感度の2倍以下である。 ここで硬化感度とは、水銀灯(超高圧、高圧、中圧等、好ましくは超高圧水銀灯)を使用してインク組成物及び/又は下塗り液を硬化させる場合において、完全に硬化させるために必要なエネルギー量をいい、前記エネルギー量が小さいほど高感度である。したがって硬化感度が2倍であるとは前記エネルギー量が1/2であることを意味する。また、硬化感度が同等であるとは、比較する両者の硬化感度の差が2倍以下であり、より好ましくは1.5倍以下であることをいう。なお、完全に硬化したかどうかは、普通紙などの浸透媒体を押し当てて、浸透媒体にインク組成物又は下塗り液表面が転写したかどうかによって判断することができる。
−被記録媒体−
本発明のインクジェット記録方法においては、被記録媒体として、浸透性の被記録媒体、非浸透性の被記録媒体、及び緩浸透性の被記録媒体のいずれも使用することができる。
中でも、本発明の効果がより顕著に奏される観点から、非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体が好ましい。ここで浸透性の被記録媒体とは、例えば、10pL(ピコリットル)の液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以下である被記録媒体をいう。また、非浸透性の被記録媒体とは、実質的に液滴が浸透しない被記録媒体をいう。「実質的に浸透しない」とは、例えば、1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、緩浸透性の被記録媒体とは、10pLの液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以上である被記録媒体をいう。
浸透性の被記録媒体としては、例えば、普通紙、多孔質紙及びその他液を吸収できる被記録媒体が挙げられる。
非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体としては、例えば、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器及び木材等が挙げられる。また本発明においては、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した被記録媒体も使用できる。
前記合成樹脂としては、いかなる合成樹脂も使用可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられる。合成樹脂を用いた場合の被記録媒体の厚みや形状としては、特に限定されるものではなく、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれの形状でもよく、また透明又は不透明のいずれであってもよい。
前記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状にして用いることも好ましく、各種非吸収性のプラスチックス及びそのフィルムを用いることができる。プラスチックスフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム、PPフィルム等が挙げられる。その他プラスチックスとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などを使用できる。
前記樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられる。特に好ましいのは、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
前記金属としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛等及びステンレス等、並びにこれらの複合材料が好適である。
また更に、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスク等を用いることも可能であり、レーベル面側にインクジェット記録することができる。
〜下塗り液の硬化過程〜
本発明においては、下塗り液の付与後から少なくとも1種のインク組成物液滴の打滴までの間に、付与された下塗り液を半硬化させる。
本発明において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、下塗り液及び/又はインク液が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。被記録媒体(基材)上に適用された下塗り液又は下塗り液上に吐出されたインク液が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよい。例えば、下塗り液及び/又はインク液は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。
下塗り液及び/又はインク液を半硬化させる方法としては、(1)酸性ポリマーに対して、塩基性化合物を付与する、又は塩基性ポリマーに対して、酸性化合物、金属化合物を付与するなど、いわゆる凝集現象を用いる方法、(2)下塗り液及び/又はインク液を予め高粘度に調整し、これに低沸点有機溶媒を添加することによって低粘度化しておき、低沸点有機溶媒を蒸発させて元の高粘度に戻す方法、(3)高粘度に調整した下塗り液及び/又はインク液を加熱しておき、冷却することによって元の高粘度に戻す方法、(4)下塗り液及び/又はインク液に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法など、既知の増粘方法が挙げられる。
中でも(4)下塗り液及び/又はインク液に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法が好ましくい。
活性エネルギー線又は熱を与えて半硬化反応を起こさせる方法とは、被記録媒体に付与された下塗り液及び/又はインク液の表面における重合性化合物の重合反応を不充分に行う方法である。
ラジカル重合性の下塗り液又はインク液を、空気中又は部分的に不活性ガスで置換した空気中等の酸素を多く含む雰囲気中で重合させる場合には、酸素のラジカル重合抑制作用のために、被記録媒体上に適用された下塗り液層又はインク液の液滴(以下、インク液液滴ともいう。)の表面においてラジカル重合が阻害される傾向がある。この結果、硬化は不均一となり、下塗り液層又はインク液液滴の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。ここで、下塗り液層とは、基材上に付与された下塗り液の層である。
カチオン重合性の下塗り液又はインク液を、湿気を有する雰囲気中で重合させる場合にも、水分のカチオン重合阻害作用があるために、被記録媒体上に適用された下塗り液層又はインク液液滴の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。
本発明において、ラジカル重合性の下塗り液又はインク液を、ラジカル重合抑制的な酸素の共存下で使用して、部分的に光硬化すると、下塗り液及び/又はインク液の硬化は外部よりも内部にて、より進行する。
特に、前記下塗り液の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害され易い。したがって活性エネルギー線又は熱の付与条件を制御することにより、下塗り液を半硬化させることができる。
下塗り液及び/又はインク液の半硬化に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、活性エネルギー線によりエネルギーを付与する場合には、1〜500mJ/cm2程度が好ましい。また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
活性光や加熱などの活性エネルギー線又は熱の付与により、重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性又は架橋性材料の重合もしくは架橋による硬化反応が促進される。
また、増粘(粘度上昇)も、活性光の照射、又は加熱によって好適に行うことができる。
半硬化の状態の下塗り液上にインク液が打滴され、又は、半硬化の状態のインク液上に、これとは異なるインク液(特に色相の異なるインク液)が打滴されると、得られる印刷物の品質に好ましい技術的効果をもたらす。また、その作用機構を印刷物の断面観察により確認できる。
基材上に設けられた、厚さが約5μmの厚さの半硬化状態の下塗り液上に約12pLのインク液を打滴した場合の高密度に打滴された部分(高濃度部分)を一例として説明する。
図1は、半硬化状態の下塗り液層上にインク液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図1では、下塗り液は半硬化され、基材側の方が表面層よりも硬化が進行している。図1では、半硬化状態の下塗り液層にインク液を付与された下塗り層14が示されている。
この場合には、得られる画像10の断面には、以下の3つの特徴が観察される。
(1)インク液硬化物12の一部は表面に出ている、
(2)インク液硬化物12の一部は下塗り層14に潜り込んでいる、かつ、
(3)インク液硬化物12の下側と被記録媒体16の間には下塗り層14が存在する。
すなわち、半硬化状態の下塗り液層上にインク液を付与することによって得られた印刷物は、図1で模式的に示されるような断面を有している。上記の(1)、(2)及び(3)の状態を満たす場合には、半硬化した下塗り液にインク液が付与されたといえる。この場合には、高密度に打滴されたインク液の液滴は相互に繋がって着色膜を形成しており、均一で高い色濃度を与える。なお、下塗り層とは、下塗り液層を硬化して得られた層の意である。
図2及び図3は、未硬化状態の下塗り液層上にインク液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図2及び図3では、未硬化状態の下塗り液層にインク液を付与された下塗り層18が示されている。
未硬化状態の下塗り液層にインク液を打滴した場合は、インク液の全部が下塗り液層に潜り込むか、及び/又は、インク液の下部には下塗り液が存在しない状態となる。具体的には、図2においては、得られる画像10の断面切片において、インク液硬化物12が、下塗り層18に完全に潜り込んでおり、インク液硬化物12の一部が表面に出ていない。また、図3に示すように、得られる画像10の断面切片において、インク液硬化物12の下部には、下塗り層18が存在しない。
この場合は、高密度にインク液を付与しても、液滴同士が独立するため、色濃度が低下する原因となる。
図4は、完全硬化状態の下塗り液層上にインク液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図4では、完全硬化状態の下塗り液層にインク液を付与された下塗り層20が示されている。
完全に硬化した下塗り液層にインク液を打滴した場合は、インク液は下塗り液層に潜り込まない状態となる。具体的には図4に示されるように、インク液硬化物12は、下塗り層20に潜り込んでいない。
このような状態は、打滴干渉の発生の原因となり、均一なインク液膜層が形成できず、色再現性の低下を招く。
高密度にインク液液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインク液の液層(着色膜)を形成する観点、及び、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりの下塗り液の転写量は、単位面積当たりに付与するインク液の最大液滴量よりも十分に少ないことが好ましい。すなわち、下塗り液層の単位面積当たりの転写量(重量)をM(下塗り液)とし、単位面積当たりに付与するインク液の最大重量をm(インク液)とすると、M(下塗り液)、m(インク液)は、以下の関係を満たすことが好ましい。
〔m(インク液)/30〕≦〔M(下塗り液)〕≦〔m(インク液)〕
また、
〔m(インク液)/20〕≦〔M(下塗り液)〕≦〔m(インク液)/3〕
であることがより好ましく、
〔m(インク液)/10〕≦M(下塗り液)≦〔m(インク液)/5〕
であることがさらに好ましい。ここで、単位面積当たりに付与するインク液の最大重量は1色当たりの最大重量である。
〔m(インク液)/30〕≦〔M(下塗り液)〕であると、打滴干渉の発生を抑制することができ、さらにドットサイズの再現性に優れるので好ましい。また、M(下塗り液)≦m(インク液)であると、均一なインク液の液層の形成ができ、濃度の高い画像を得ることができるので好ましい。
なお、単位面積当たりの下塗り液層の転写量は、以下に述べる転写試験により求めたものである。半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であってインク液の液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態の下塗り液層に押し当てて、浸透媒体に転写した下塗り液の量の重量測定によって定義するものである。
例えば、インク液の最大吐出量が、600×600dpiの打滴密度で、1画素(ドット)当たり12ピコリットルであったとすると、単位面積当たりに付与するインク液の最大重量m(インク液)は、0.74mg/cm2となる(ここでは、インク液の密度を約1.1g/cm3と仮定した。)。従って、下塗り液層の転写量は、単位面積当たり0.025mg/cm2以上0.74mg/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.037mg/cm2以上0.25mg/cm2以下であり、さらに好ましくは0.074mg/cm2以上0.148mg/cm2以下である。
インク液A及びインク液Bで2次色を形成する時は、半硬化状態のインク液A上にインク液Bを付与することが好ましい。
図5は、半硬化状態のインク液A上にインク液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図5では、半硬化状態のインク液Aにインク液Bを付与されて得られたインク液A硬化物24及びインク液B硬化物22が示されている。
半硬化状態のインク液A上にインク液Bを打滴した場合は、インク液Bの一部がインク液Aに潜り込み、かつ、インク液Bの下部にはインク液Aが存在する状態となる。すなわち、半硬化状態のインク液A上にインク液Bを付与することによって得られた印刷物は、図5で示されるように、インク液B硬化物22の一部が表面にでており、また、インク液B硬化物22の一部はインク液A硬化物24に潜り込んでいる。また、インク液B硬化物22の下部にはインク液A硬化物が存在している。インク液Aの硬化膜(着色膜A、図5のインク液A硬化物24)及びインク液Bの硬化膜(着色膜B、図5のインク液B硬化物22)が積層された状態になり、良好な色再現が可能となる。
図6及び図7は、未硬化状態のインク液A上にインク液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図6では、未硬化状態のインク液Aにインク液Bを付与されて得られたインク液A硬化物26及びインク液B硬化物22が示されている。
未硬化状態のインク液Aにインク液Bを打滴した場合は、インク液Bの全部がインク液Aに潜り込むか、及び/又は、インク液Bの下部にはインク液Aが存在しない状態となる。即ち、得られた画像の断面図を観察すると、図6に示すように、インク液B硬化物22の全部がインク液A硬化物26に潜り込んでいる、及び/又は図7に示すように、インク液B硬化物22の下層にはインク液A硬化物26が存在しない。この場合は、高密度にインク液Bの液滴を付与しても、液滴同士が独立するため、2次色の彩度低下の原因となる。
図8は、完全硬化状態のインク液A上にインク液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図8では、完全硬化状態のインク液Aにインク液Bを付与されて得られたインク液A硬化物28及びインク液B硬化物22が示されている。完全に硬化したインク液Aにインク液Bを打滴した場合は、インク液Bはインク液Aに潜り込まない状態となる。図8に示すように、得られる画像の断面図では、インク液B硬化物22がインク液A硬化物28に潜り込んでいない。このような状態は、打滴干渉の発生の原因となり、均一なインク液膜層が形成できず、色再現性の低下を招く。
高密度にインク液B液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインク液Bの液層を形成する観点、及び、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりのインク液Aの転写量は、単位面積当たりに付与するインク液Bの最大液滴量よりも十分に少ないことが好ましい。すなわち、インク液A層の単位面積当たりの転写量(重量)をM(インク液A)とし、単位面積当たりに吐出するインク液Bの最大重量をm(インク液B)とすると、M(インク液A)とm(インク液B)は、以下の関係を満たすことが好ましい。
〔m(インク液B)/30〕≦〔M(インク液A)〕≦〔m(インク液B)〕
また、
〔m(インク液B)/20〕≦〔M(インク液A)〕≦〔m(インク液B)/3〕
であることがより好ましく、
〔m(インク液B)/10〕≦〔M(インク液A)〕≦〔m(インク液B)/5〕
であることがさらに好ましい。
〔m(インク液B)/30〕≦〔M(インク液A)〕であると、打滴干渉の発生を抑制することができ、さらに、ドットサイズ再現性に優れるので好ましい。また、〔M(インク液A)〕≦〔m(インク液B)〕であると、均一なインク液の液層の形成ができ、濃度の高い画像を得ることができるので好ましい。
なお、単位面積当たりのインク液Aの転写量(重量)は、以下に述べる転写試験により求めたものである。半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であってインク液Bの液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態のインク液A層に押し当てて、浸透媒体に転写したインク液Aの量の重量測定によって定義するものである。
例えば、インク液Bの最大吐出量が、600×600dpiの打滴密度で、1画素当たり12ピコリットルであったとすると、単位面積当たりに吐出するインク液Bの最大重量m(インク液)は、0.74mg/cm2となる(ここでは、インク液Bの密度を約1.1g/cm3と仮定した。)。従って、インク液A層の転写量は、単位面積当たり0.025mg/cm2以上0.74mg/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.037mg/cm2以上0.25mg/cm2以下であり、さらに好ましくは0.074mg/cm2以上0.148mg/cm2以下である。
エチレン性不飽和化合物に基づく硬化反応の場合には、未重合率をエチレン性不飽和基の反応率により定量的に測定することができる(後述)。
前記下塗り液及び/又はインク液の半硬化状態を活性エネルギー線の照射や加熱によって重合を開始する重合性化合物の重合反応によって実現する場合は、印刷物の擦過性を向上させる観点から、未重合率(A(重合後)/A(重合前))は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
ここで、A(重合後)は、重合反応後の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合前)は、重合反応前の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度である。例えば、下塗り液及び/又はインク液の含有する重合性化合物がアクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマーである場合は、810cm-1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸光度で、前記未重合率を定義することが好ましい。
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型及び反射型のいずれでも良く、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RAD社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
〜下塗り液及びインク液液滴の付与〜
本発明のインクジェット記録方法においては、下塗り液を塗布装置又はインクジェットノズル等を用いて被記録媒体に付与することができる。また、インク液液滴はインクジェットノズル等を用いて打滴し半硬化された下塗り液上に付与する。
(i)塗布装置を用いた塗布
本発明においては、塗布装置を用いて下塗り液を被記録媒体上に塗布し、その後にインク液液滴をインクジェットノズルにより打滴することによって、画像記録する態様が好ましい。なお、インクジェットノズルについては後述する。
前記塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
(ii)インクジェットノズルによる吐出
本発明においては、インクジェットノズルによって下塗り液を吐出し、その後にインク液液滴をインクジェットノズルにより打滴することによって、画像記録する態様もまた好ましく用いられる。
インクジェットノズルによって下塗り液を塗布する条件としては、インク液吐出用のヘッドよりも吐出液滴量が大きくノズル密度の低いヘッドを被記録媒体の巾方向にフルラインヘッドユニットとして配置し、それによって下塗り液を吐出するのが望ましい。
このような吐出液滴量が大きいヘッドは、一般に吐出力が大きいため、高粘度な下塗り液に対応しやすく、またノズルのつまりの抑制にも有利である。また吐出液滴量が多いヘッドを使用した場合には、被記録媒体搬送方向の下塗り液の打滴解像力も落とせるため、駆動周波数が低い安価なヘッドを適用できるという利点もある。
また、上記いずれの態様においても、下塗り液及びインク液液滴以外の他の液体を更に付与することができる。他の液体の付与については、塗布装置による塗布や、インクジェットノズルによる吐出など、いかなる方法で被記録媒体上に付与してもよく、付与のタイミングも特に限定されるものではない。他の液体が着色剤を含有する場合には、インクジェットノズルでの吐出による方法が好ましく、下塗り液を付与した後に付与することが好ましい。
次に、インクジェットノズルによる吐出の方式(インクジェット記録方式)について説明する。
本発明においては、例えば、静電力を利用してインク液を吐出させる静電誘引方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインク液に照射して放射圧を利用してインク液を吐出させる音響インクジェット方式、インク液を加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式、等の公知の方式が好適である。
なお、インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインク液を小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインク液を用いて画質を改良する方式や無色透明のインク液を用いる方式が含まれる。
本発明において、半硬化した下塗り液上に吐出されるインク液液滴は、0.1pL(ピコリットル;以下同様)以上100pL以下の液滴サイズにて(好ましくはインクジェットノズルにより)打滴されることが好ましい。液滴サイズが前記範囲内であると、高鮮鋭度の画像を濃度で描写できる点で有効である。また、より好ましくは0.5pL以上50pL以下である。
また、下塗り液の付与量(単位面積あたりの質量比)は、インク液液滴量を1とした場合に0.05〜5の範囲内であることが好ましく、0.07〜4の範囲内がより好ましく、0.1〜3の範囲内が特に好ましい。
下塗り液が被記録媒体(基材)上に付与されて形成される下塗り液層及びこれを硬化した下塗り層の厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましく、3μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。
前記下塗り液層及び下塗り層の厚さが上記範囲内であると硬化画像の柔軟性、密着性が良好に保持できることから好ましい。
下塗り液の付与後、インク液液滴が打滴されるまでの打滴間隔としては、5μ秒以上10秒以下の範囲内であることが好ましい。打滴間隔が前記範囲内であると、本発明の効果を顕著に奏し得る点で有効である。インク組成物液滴の打滴間隔は、より好ましくは10μ秒以上5秒以下であり、特に好ましくは20μ秒以上5秒以下である。
−画像の記録原理及び記録装置−
次に、打滴干渉を回避しつつ被記録媒体に画像を形成する本発明の原理について、図9を参照して1例を説明する。
まず、図9(a)に示すように、下塗り液を被記録媒体16に付与し、被記録媒体16の表面に下塗り液層81を形成する。このような下塗り液の付与態様は、図では塗布による態様を示しているが、インクジェットヘッドによる打滴(「吐出」ともいう)、スプレー塗布等いずれの態様であってもよい。
付与した下塗り液層の厚みは、付与された下塗り液の体積を下塗り液が付与された部分の面積で除した平均厚みである。下塗り液が打滴にて付与される場合は、打滴された体積と下塗り液が打滴された部分の面積より求めることができる。下塗り液の液体膜の厚みは、均一で局所的な厚みの違いはないことが望ましい。この観点から、インクジェットヘッドから安定に吐出できる範囲で、下塗り液の被記録媒体上で濡れ拡がり易い物性、つまり静的な表面張力が小さいことが望ましい。
次に、図9(b)に示すように、光源W(103P)による活性放射線や熱などの活性光線の照射により下塗り液を半硬化させた(未硬化状態の下塗り液;81a、硬化状態の下塗り液;81b)のちに、インク液液滴82aを打滴する。この打滴により、図9(c)に示すように、下塗り液膜81にインク液液滴82aを着弾させる。この時、下塗り液層は半硬化状態であるため、インク液液滴82aとなじみやすい。
さらに、図9(d)に示すように、被記録媒体16上の下塗り液層が存在する領域内であって、先に打滴した第1の液滴82aの着弾位置近傍に、後続インク液液滴82bを打滴する。この時、下塗り液層は半硬化状態であるため、インク液液滴82bとなじみやすい。インク液液滴82aとインク液液滴82bに対して合一しようとする力が働くが、インク液液滴と下塗り層表面の密着性が良いこと及び合一しようとする際に硬化状態にある下塗り層内部がインク液液滴間の合一に対する抵抗力となること、により打滴干渉が抑制される。
従来は、打滴干渉を回避するためには、インク液に含まれる着色剤が凝集又は不溶化する化学反応を起こさせる物質を下塗り液に含有させていたが、本発明では、このような物質を下塗り液に含有させることなく、打滴干渉を回避できる。
また、図9(d)に示すように打滴干渉が回避されてインク液液滴82a、82bの形状が保たれている間に(本発明の場合、数百ミリ秒から5秒間)、すなわちドット形状が崩れないうちに、インク液液滴82a、82bを硬化あるいは形状が崩れない程度に半硬化させて、インク液液滴82a、82b中の着色剤を被記録媒体16に定着させる。少なくともインク液は、活性エネルギー線硬化型の重合性化合物を含有し、紫外線などの活性エネルギー線が照射されると、いわゆる重合反応により硬化する。下塗り液にも、重合性化合物を含有させることも可能であり、吐出した液体全体が硬化するので、密着性を高めるために好ましい。
次に、本発明のインクジェット記録装置を備えた画像記録装置の1例であるインラインラベル印刷機の全体構成について、図面を参照して説明する。
図10は、インラインラベル印刷機(画像記録装置)100の一例を示す全体構成図である。この画像記録装置100は、本発明のインクジェット記録部100Aと、描画された被記録媒体に後加工を施す後加工部100Bと、インクジェット記録部100Aと後加工部100Bとの間に緩衝部としてのバッファ104からなる。
本発明のインクジェット記録装置はインクジェット記録部100Aに適用されるものである。インクジェット記録部100Aは、被記録媒体16上に半硬化下塗り液層を形成するための下塗り液層形成部100A1、及び着色剤を含む4種のインク組成物を被記録媒体16の所定位置に付与して、所望の画像を被記録媒体16に形成する描画部100A2から構成される。
被記録媒体としては、特に浸透性がない被記録媒体(例えば、OPP(Oriented Polypropylene Film)、CPP(Casted Polypropylene Film)、PE(polyethylene)、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(Polypropylene)、浸透性が低い軟包材、ラミネート紙、コート紙、アート紙など)を用いたときに良好な画像を形成することができる。
図10において、インクジェット記録部100Aは、下塗り液をロールコーター102Pで塗布し、インク組成物をインクジェット打滴により被記録媒体16に付与する描画部100A2を備えている。
また、画像記録装置100は、下塗り液層形成部100A1及び描画部100A2に供給する下塗り液及びインク組成物を貯蔵しておく不図示の遮光された液体貯蔵/装填部と、被記録媒体16を供給する給紙部101と、描画部100A2によるインク組成物の打滴結果(インク組成物滴の着弾状態である)としての画像を読み取る画像検出部104cと、記録済みの被記録媒体を巻き取るラベル巻取り部109を備えている。
図10においては、給紙部101の一例としてロール紙(連続用紙)を給紙するものを示しているが、予めカットされているカット紙を給紙するものを用いてもよい。
インクジェット記録部100Aについてさらに説明する。インクジェット記録部100Aは、シングルパスで被記録媒体16にインク組成物を打滴するインク組成物用打滴ヘッド102Y、102C、102M、102K、及びピニング光源103Y、103C、103M、最終硬化光源103Fを含む描画部100A2、そしてロールコーター102P及び半硬化用紫外線光源103Pを含む下塗り液層形成部100A1によって構成されている。詳細には、被記録媒体16の記録可能幅の全幅に対応した長さのライン型ヘッドを媒体搬送方向(図10中に矢印Sで示す)と直交する方向に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。また図中、102Y、102C、102Mのそれぞれの下流には各色インク組成物で打滴されたドットを少なくともそれらのドット形状が崩れない程度に硬化させるピニング光源103Y、103C、103Mが配置されている。
ロールコーター102P、各打滴ヘッド102Y、102C、102M、102Kは、インクジェット記録部100Aが対象とする最大サイズの被記録媒体16の少なくとも一辺を超える長さにわたってコーター及び複数のノズル(液体吐出口)が配列されている。
また、媒体搬送方向Sに沿って、上流側(図2の左側)から、イエロー色のインク組成物(Y)、シアン色のインク組成物(C)、マゼンタ色のインク組成物(M)、黒色のインク組成物(K)の順に、各液体に対応した打滴ヘッド102Y、102C、102M、102Kが配置されており、被記録媒体16上にカラーの画像を形成し得る。
具体的には、まず、ロールコーター(102P)により被記録媒体16に下塗り液が均一塗布され、半硬化用紫外線光源103Pにより下塗り液の半硬化が行われる。次に、イエローインク組成物用打滴ヘッド102Yから被記録媒体16に向けてインク組成物が打滴され、ヘッド102Yの下流に配置されたピニング光源103Yにより被記録媒体上のイエローインク組成物が、表面が硬化しておらず且つ少なくともその形が崩れない程度に半硬化される。続いて、ヘッド102C、102Mで、上記イエローインク組成物と同様な工程が繰り返され、最後に黒インク組成物用打滴ヘッド102Kで打滴が行われた後に、下塗り液及び全てのインク組成物を完全に硬化させる能力を有する最終硬化光源103Fにより硬化を完了する。
ここで、下塗り液及びインク組成物をその付与後に大気中でピニング光源により照射して半硬化するようにさせることにより、打滴干渉が回避される。
また、フルライン型の打滴ヘッドからなる描画部100A2によれば、媒体搬送方向について被記録媒体16と描画部100A2を相対的に移動させる動作を一回行うだけで、被記録媒体16の全面に画像を記録することができる。これにより、被記録媒体を搬送しつつ、媒体搬送方向と直交する方向に打滴ヘッドを往復動作させるシャトル型ヘッドに比べて高速プリントが可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、YCMKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク組成物の色数や色の組み合わせについては本実施形態に示す例には限定されず、必要に応じて、淡インク組成物、濃インク組成物、白色又は他色の特色インク組成物、透明インク組成物等を追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インク組成物を吐出する打滴ヘッドを追加する構成、又は白色インク組成物による背景の描画を行う構成、透明インク組成物による光沢度調整等を行う構成も可能である。
UV光源である103P、103Y、103C、103M、103Fは、重合性化合物を含むインク組成物を硬化させるために被記録媒体16に向けて紫外線を照射するものである。紫外線発光光源としては公知の光源、例えば中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、紫外用蛍光灯、紫外LED、紫外LD等を用いることができるが、実用性の面から高圧水銀灯、超高圧水銀灯又はメタルハライドランプを用いるのが好ましい。またUV光源としては200nm〜400nmの波長範囲内に光量のピークをもつものが好ましく、光量ピーク波長において1〜500mW/cm2の範囲の照射光強度を持つものが好ましい。UV光源はリフレクタにコールドミラー、カバーガラスに赤外線カットガラスを用いることで、熱線照射による被記録媒体の温度上昇を防ぐ構成とするのが好ましい。
最終硬化光源103Fによる照射は、大気中より低い酸素濃度の雰囲気下で行われ、酸素濃度は0.1〜10体積%であることが好ましく、0.1〜8体積%であることがより好ましく、0.1〜5体積%であることがさらに好ましい。上記の数値の範囲であると硬化性、画質及び生産性に優れた印刷物を得ることができる。
ここで図10では省略したが、最終硬化光源103Fの活性放射線照射範囲には、混合気体を給排気する気体供給手段である気体供給・吸引機構を配置することができる。最終硬化光源103Fによる照射範囲を不活性ガス(窒素など)により置換することで酸素による重合阻害を抑制してより良好なインク組成物の硬化、定着を行うことができる。
最終硬化光源103Fの照射範囲を不活性ガスにより置換するために、最終硬化光源103Fと搬送ベルトとを覆うハウジングを備えていてもよい。このハウジング内で、最終硬化光源103Fの活性エネルギー照射位置の被記録媒体上に開口を向けた気体供給ノズル及び被記録媒体に向けた開口を持つ気体回収ノズルを備えることができる。
本実施形態に関し図11を用いて詳細に説明する。図11は図10に示した最終硬化光源103Fと搬送ベルトとを覆うハウジング62を示す外観斜視図である。
図11に示すように、最終硬化光源103Fの下流に配置された気体供給ノズル64は、気体供給用管65の先端部で被記録媒体の幅方向に長い先拡がり形状に形成されて、最終硬化光源103Fの照射位置へ向けて開口されている。
気体供給用管65は、不図示の気体貯蔵タンク及び圧送用ポンプに連通接続されている。気体貯蔵タンクには、二酸化炭素、ネオン、アルゴン及びキセノン等の酸素よりも重い気体と、ヘリウム、窒素等の酸素より軽い気体が貯蔵されており、必要に応じて1種以上の気体を供給することができ、例えば酸素より重い気体と軽い気体が混合された気体を供給することもできる。気体は圧送用ポンプによって、気体供給ノズル64からこの混合気体が被記録媒体上で最終硬化光源103Fの照射位置付近を中心に供給される。混合気体における酸素より重い気体の体積の比率は30%〜90%が好ましく、より好ましくは40〜80%である。
描画部102A2で画像形成が開始されると気体が被記録媒体上で最終硬化光源103Fの照射位置付近を中心に供給される。これにより、被記録媒体上に存在していた酸素を押し出すことができる。気体を酸素より重い気体と軽い気体の混合気体とすると該混合気体の供給により酸素はハウジング62内で上昇も下降もすることがないため、効率的に押し出すことができる。気体の供給により酸素は少なくとも最終硬化光源103Fの照射位置付近では被記録媒体上から速やかに排除され、空気中の酸素によるインク組成物硬化阻害を抑制することができる。
気体回収ノズル66は、気体回収用管67の先端部で被記録媒体の幅方向に長い先拡がり形状に形成されて、被記録媒体の画像形成面に向けて開口されている。
気体回収用管66は、不図示の気体回収タンクに吸引用ポンプを通じて連通接続されている。この吸引用ポンプが駆動されることで、気体回収ノズル66から混合気体及びハウジング62内の空気を吸引して気体回収タンクに回収する。
このような構成により、ハウジング外のインク組成物用打滴ヘッド先端部付近の雰囲気を通常の空気を残す状況とすることができ、インク吐出ノズル先端部でのインク組成物硬化阻害効果が無くなった時のインク組成物のこびり付きによるインク組成物吐出不良を抑制できる。
なお、気体回収用管67による混合気体回収動作については、画像形成が開始される前に混合気体の雰囲気を形成することが好ましく、この場合には、ハウジング62内に混合気体がある程度満たされた状態の後に気体回収用管67を作動開始することが好ましい。
本実施形態の記録装置の立ち上げに速度が必要な場合は、気体供給用管65と気体回収用管67とを同時に作動させ、吸引量を少なくすることで、ハウジング62内に混合気体の雰囲気を形成することができる。
いずれにしても、ハウジング62内の混合気体が安定した時点で、供給と吸引を同程度にし、混合気体のハウジング62外への漏れ出しを抑制する。
なお、気体回収ノズル66からハウジング62内の気体を吸引することで、ハウジング62内の塵埃等も一緒に吸引できるので、ハウジング62内をより清浄に保つことができる。また、これら回収された気体には、ハウジング62内の酸素などの活性気体も含まれるが、これら活性気体の除去処理を実施して、再利用することも可能である。これ以外として、これらの気体は回収することが好ましいが、環境的に全く無害であれは、空気中に放出することもできる。
また、図10及び図11に図示しないがこれら気体供給ノズル64及び気体回収ノズル66の動作中、ハウジング62外に設置されたヘッドユニットの上流側面に配置された酸素含有気体供給ノズルからインク組成物吐出ノズル先端へ向けて大気などの酸素を含む気体を供給する構成とすることができる。この構成により、ヘッドユニットのインク組成物吐出ノズル先端部の雰囲気に酸素を供給することができ、インク組成物吐出ノズル先端縁部でのみにインク組成物硬化阻害を働かせて、吐出不良の発生を抑制することができる。
また、図10に図示しないが、重合性化合物を含むインク組成物を硬化させるための手段として電子線照射装置を用いてもよい。
上記では、重合性化合物を硬化させる手段として、UV光源の例と電子線照射装置とを例示したが、これらの手段はここで示す例に限定されるものではなく、その他の輻射線、例えばα線、γ線、X線等を用いてもよい。
図10の画像検出部104cは、描画部100A2の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った画像からノズルの目詰まりその他の吐出異常をチェックする手段として機能する。
インクジェット記録部100Aと後加工部100Bとの間に緩衝部としてのバッファ104がある。インクジェット記録された被記録媒体は数個の上ローラ104aと数個の下ローラ104bから成るバッファ104の間を数回上下しながら通過する。バッファ104は上流のインクジェット記録部100Aと後述する下流の後加工部100Bの作業速度(被記録媒体16の搬送速度)が異なるので、この速度の差を吸収する調整部である。
バッファ104の下流はニスコーター105である。ニスコーター105で、ラベルの表面に薄くニスを塗って、ラベル表面の耐擦過性を向上するようにしている。
ニスコーター105の下流のラベルカッティング部106は、マーキングリーダ106aと、ダイカッタドライバ106bと、刃を有する巻き物(刃付版)106eを装着したダイカッター106cと、対向ローラ106dとから構成される。
ラベルカッティング部106のダイカッター106cでカッティングされたラベルは、分岐ローラ107の下流で、製品としてのラベルをラベル巻取り部109で巻取り、これ以外のカスは剥がして、カス取り部108で廃棄物として廃棄する。
−打滴ヘッドの構造−
図12(a)は、図2に示した打滴ヘッド102Y、102C、102M、102Kを代表する打滴ヘッドに符号50を付して、その打滴ヘッド50の基本的な全体構造の一例を示す平面透視図である。
図12(a)に一例として示す打滴ヘッド50は、いわゆるフルライン型のヘッドであり、被記録媒体16の搬送方向(図中に矢印Sで示す副走査方向)と直交する方向(図中に矢印Mで示す主走査方向)において、被記録媒体16の幅Wmに対応する長さにわたり、被記録媒体16に向けて液体を吐出する多数のノズル51(液体吐出口)を2次元的に配列させた構造を有している。
打滴ヘッド50は、ノズル51、ノズル51に連通する圧力室52、及び、液体供給口53を含んでなる複数の圧力室ユニット54が、主走査方向M及び主走査方向Mに対して所定の鋭角θ(0度<θ<90度)をなす斜め方向の2方向に沿って配列されている。なお、図12(a)では、図示の便宜上、一部の圧力室ユニット54のみ描いている。
ノズル51は、具体的には、主走査方向Mに対して所定の鋭角θをなす斜め方向において、一定のピッチdで配列されており、これにより、主走査方向Mに沿った一直線上に「d×cosθ」の間隔で配列されたものと等価に取り扱うことができる。
打滴ヘッド50を構成する一吐出素子としての前述の圧力室ユニット54について、図12(a)中のb−b線に沿った断面図を図12(b)に示す。
図4(b)に示すように、各圧力室52は液体供給口53を介して共通液室55と連通している。共通液室55は図示を省略した液体供給源たるタンクと連通しており、そのタンクから供給される液体が共通液室55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成する振動板56の上には圧電体58aが配置され、この圧電体58aの上には個別電極57が配置されている。振動板56は、接地されており、共通電極として機能する。これらの振動板56、個別電極57及び圧電体58aによって、液体吐出力を発生する手段としての圧電アクチュエータ58が構成されている。
圧電アクチュエータ58の個別電極57に所定の駆動電圧が印加されると、圧電体58aが変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力室52内の圧力の変化によって、ノズル51から液体が吐出される。液体吐出後、圧力室52の容積が元に戻ると共通液室55から液体供給口53を通って新しい液体が圧力室52に供給される。
なお、図12(a)には、被記録媒体16に高解像度の画像を高速で形成し得る構造として、複数のノズル51が2次元配列されている場合を例に示したが、本発明における打滴ヘッドは、複数のノズル51が2次元配列された構造に特に限定されるものではなく、複数のノズル51が1次元配列された構造であってもよい。また、打滴ヘッドを構成する吐出素子として図12(b)に示した圧力室ユニット54は、一例であって、このような場合に特に限定されない。例えば、圧力室52よりも下(すなわち圧力室52よりも吐出面50a側)に共通液室55を配置する代りに、圧力室52よりも上(すなわち吐出面50aとは反対側)に共通液室55を配置してもよい。また、例えば、圧電体58aを用いる代りに、発熱体を用いて、液体吐出力を発生するようにしてもよい。
なお、本発明に用いることができるインクジェット記録装置においては、下塗り液の被記録媒体上への付与手段として、塗布によるもののほかに、ノズルからの下塗り液の吐出等、他の手段を用いてもよい。
前記塗布に用いる装置としては特に制限はなく、公知の塗布装置を目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。
−液体供給系−
図13は、画像記録装置100における液体供給系統の構成を示した概要図である。
液体タンク60は、打滴ヘッド50に液体を供給するための基タンクである。液体タンク60と打滴ヘッド50を繋ぐ管路の途中には、液体タンク60から打滴ヘッド50へ液体を送液する液体供給ポンプ72が設けられている。液体タンク60及び打滴ヘッド50及び両者を繋ぐ管路は温度検出手段とヒーターにより内部のインクとともに温度調節されることが好ましい。このときのインク温度は40℃〜80℃に調節されることが好ましい。
また、画像記録装置100には、長期の吐出休止期間におけるノズル51のメニスカスの乾燥を防止又はメニスカス近傍の粘度の上昇を防止する手段としてのキャップ74と、吐出面50aを清掃する手段としてのクリーニングブレード76とが設けられている。キャップ74及びクリーニングブレード76を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって打滴ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から打滴ヘッド50の下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。
キャップ74は、図示しない昇降機構によって打滴ヘッド50に対して相対的に昇降される。昇降機構は、キャップ74を所定の上昇位置まで上昇させ、打滴ヘッド50に密着させることにより、吐出面50aの少なくともノズル領域をキャップ74で覆うようになっている。
また、好ましくは、キャップ74の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
クリーニングブレード76は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したクリーニングブレード用の移動機構により打滴ヘッド50の吐出面50aにおいて摺動可能である。吐出面50aに液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード76を吐出面50aにおいて摺動させることで吐出面50aを拭き取り、吐出面50aを清浄するようになっている。
吸引ポンプ77は、打滴ヘッド50の吐出面50aをキャップ74が覆った状態で、その打滴ヘッド50のノズル51から液体を吸引し、吸引した液体を回収タンク78へ送液する。
このような吸引動作は、画像記録装置100に液体タンク60が装填されて液体タンク60から打滴ヘッド50へ液体を充填するとき(初期充填時)のほか、長時間停止して粘度が上昇した液体を除去するとき(長時間停止の使用開始時)にも行われる。
ここで、ノズル51からの吐出について整理しておくと、第1に、紙などの被記録媒体に画像形成するために被記録媒体に向けて行う通常の吐出があり、第2に、キャップ74を液体受けとしてそのキャップ74に向けて行うパージ(空吐出ともいう)がある。
また、打滴ヘッド50のノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内の粘度上昇があるレベルを超えたりすると、前述の空吐出では液体をノズル51から吐出できなくなるので、打滴ヘッド50の吐出面50aにキャップ74を当てて打滴ヘッド50の圧力室52内の気泡が混入した液体又は増粘した液体を吸引ポンプ77で吸引する動作が行われる。
ここで、打滴ヘッド50、液体タンク60、液体供給ポンプ72、キャップ74、クリーニングブレード76、吸引ポンプ77、回収タンク78、及びこれらを繋ぐインク流路、並びにその他インクが直接触れる部材及び機器は、耐溶解性、耐膨潤性を持つことが好ましい。またこれらの部材及び機器は遮光性を持つことが好ましい。
−制御系−
図14は、画像記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。
図14において、画像記録装置100は、主として、描画部102、画像検出部104c、UV光源103、通信インターフェース110、システムコントローラ112、メモリ114、画像バッファメモリ152、搬送用のモータ116、モータドライバ118、ヒータ122、ヒータドライバ124、媒体種別検出部132、インク種別検出部134、照度検出部135、環境温度検出部136、環境湿度検出部137、媒体温度検出部138、給液部142、給液ドライバ144、プリント制御部150、ヘッドドライバ154、及び、光源ドライバ156を含んで構成されている。
なお、描画部102は図10に示した打滴ヘッド102Y、102C、102M、102Kを代表して表すものであり、UV光源103は図10に示した硬化光源103P、103Y、103C、103M、103Fを代表して表すものであり、画像検出部104cは図10に記載したものと同一であり既に説明したので、ここでは説明を省略する。
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ300から送信される画像データを受信する画像データ入力手段である。通信インターフェース110には、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394などの有線、又は、無線のインターフェースを適用することができる。この通信インターフェース110を介して画像記録装置100に入力された画像データは、画像データ記憶用の第1のメモリ114に一旦記憶される。
システムコントローラ112は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、第1のメモリ114に予め記憶された所定のプログラムに従って画像記録装置100の全体を制御する主制御手段である。すなわち、システムコントローラ112は、通信インターフェース110、モータドライバ118、ヒータドライバ124、媒体種別検出部132、インク種別検出部134、プリント制御部150等の各部を制御する。
搬送用のモータ116は、被記録媒体を搬送するためのローラやベルト等に動力を与える。この搬送用モータ116によって、描画部102を構成する打滴ヘッド50と被記録媒体とが相対的に移動する。モータドライバ118は、システムコントローラ112からの指示に従って搬送用のモータ116を駆動する回路である。
ヒータ122は、不図示のヒータ(あるいは冷却素子)122を駆動する回路であり、被記録媒体の温度を一定温度に保持するものである。ヒータドライバ124は、システムコントローラ112からの指示にしたがってヒータ122を駆動する回路である。
媒体種別検出部132は、記録媒体の種別を検出するものである。記録媒体の種別の検出態様には各種ある。例えば、不図示の給紙部にセンサを設けて検出する態様、ユーザの操作により入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力された画像データ(例えば、解像度や色)又はその画像データの付加データを解析することにより自動で検出するようにした態様がある。
インク種別検出部134は、インクの種別を検出するものである。インクの種別の検出態様には各種ある。例えば、不図示の液体貯蔵/装填部にセンサを設けて検出する態様、ユーザの操作により入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力された画像データ(例えば、解像度や色)又はその画像データの付加データを解析することにより自動で検出するようにした態様がある。
照度検出部135は、UV光源103から発せられた紫外線の照度を検出するものである。照度の検出態様としては例えば図2のUV光源103の近傍に照度センサを設けて検出する態様がある。この照度センサの出力に基づきUV光源の出力をフィードバックする。
環境温度検出部136は、外気又は画像記録装置内の温度を検出するものである。環境温度検出態様としては例えば装置外部又は装置内部に温度センサを設けて検出する態様がある。
環境湿度検出部137は、外気又は画像記録装置内の湿度を検出するものである。環境湿度検出態様としては例えば装置外部又は装置内部に湿度センサを設けて検出する態様がある。
媒体温度検出部138は、記録媒体の画像形成時の温度を検出するものである。媒体温度検出態様には各種ある。例えば、接触式の温度センサを設けて検出する態様、被記録媒体16の上方に非接触式の温度センサを設けて検出する態様があり、前述のヒータ122により被記録媒体の温度を一定に保つ。
給液部142は、図13の液体タンク60から描画部102へインクを流動させる管路及び給液ポンプ62などによって構成されている。
給液ドライバ144は、描画部102に液体が供給されるように、給液部142を構成する給液ポンプ62などを駆動する回路である。
プリント制御部150は、画像記録装置100に入力される画像データに基づいて、描画部102を構成する各打滴ヘッド50が被記録媒体に向けて吐出(打滴)を行うために必要なデータ(打滴データ)を生成する。すなわち、プリント制御部150は、システムコントローラ112の制御に従い、第1のメモリ114内の画像データから打滴データを生成するための各種の加工、補正などの画像処理を行う画像処理手段として機能し、生成した打滴データをヘッドドライバ154へ供給する。
プリント制御部150には第2のメモリ152が付随しており、プリント制御部150における画像処理時に打滴データ等が第2のメモリ152に一時的に格納される。
なお、図14において第2のメモリ152はプリント制御部150に付随する態様で示されているが、第1のメモリ114と兼用することも可能である。また、プリント制御部150とシステムコントローラ112とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ154は、プリント制御部150から与えられる打滴データ(実際には第2のメモリ152に記憶された打滴データである)に基づき、描画部102を構成する各打滴ヘッド50に対して吐出用駆動信号を出力する。このヘッドドライバ154から出力された吐出用駆動信号が各打滴ヘッド50(具体的には図12(b)に示すアクチュエータ58)に与えられることによって、打滴ヘッド50から被記録媒体に向けて液体(液滴)が吐出される。
光源ドライバ156は、プリント制御部150からの指示と照度検出部135によって検出された照度、環境温度検出部136によって検出された環境温度、環境湿度検出部137によって検出された環境湿度、媒体温度検出部138によって検出された媒体温度に基づいてUV光源103に入力する電圧、時間、タイミングを制御し、UV光源103を駆動する回路である。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
本発明で使用した素材は下記に示す通りである。
・ODA−N(オクチルデシルアクリレート、ダイセル・サイテック(株)製)
・Actilane 421(プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、Akcros Chemicals社製)
・Actilane 422(ジプロピレングリコールジアクリレート、Akcros Chemicals(株)製)
・Rapi−Cure DVE−3(トリエチレングリコールジビニルエーテル、ISP Europe(株)製)
・Ebecryl657(アクリレートオリゴマー、ダイセル・サイテック(株)製)
・DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート、Akcros Chemicals(株)製)
・Lucirin TPO(光重合開始剤、BASF(株)製)
・ベンゾフェノン(光重合開始剤、和光純薬(株)製)
・IRGACURE 184(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)
・Irg907(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−335 D(マゼンタ顔料、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント(株)製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)
・KRONOS2300(ホワイト顔料、KRONOS(株)製)
・Solsperse 32000(分散剤、Noveon(株)製)
・BYK 307(界面活性剤、BYK Chemie(株)製)
・メガファック F−475(界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製)
・FIRSTCURE ITX(増感剤、ALBEMARLE(株)製)
・ダロキュアITX(増感剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
・ダロキュアEDB(増感剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、ALBEMARLE(株)製)
(シアンミルベースAの調製)
IRGALITE BLUE GLVO 300部、
Actilane 421 500部、
Solsperse32000 200部、
を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
(マゼンタミルベースBの調製)
CINQUASIA MAGENTA RT−335 D 300部、
Actilane 421 300部、
Solsperse32000 400部、
を撹拌混合し、マゼンタミルベースB顔料インクを得た。なお、マゼンタミルベースBの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散を行った。
(イエローミルベースCの調製)
NOVOPERM YELLOW H2G 300部、
Actilane 421 300部、
Solsperse32000 400部、
を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、イエローミルベースCの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散を行った。
(ブラックミルベースDの調製)
SPECIAL BLACK 250 300部、
Actilane 421 300部、
Solsperse32000 400部、
を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、ブラックミルベースDの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで7時間分散を行った。
(ホワイトミルベースEの調製)
KRONOS2300 500部、
Actilane 421 400部、
Solsperse32000 100部、
を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、ホワイトミルベースEの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
〔実施例1〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、シアン色のUVインクジェット用インク組成物を得た。粘度は21mPa・sであった。表面張力は24.0mN/mであった。
(シアン色インク組成物)
・シアンミルベースA 6.0部
・ODA−N 25.0部
・Actilane 422 36.9部
・Rapi−Cure DVE−3 9.5部
・Ebecryl657 9.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.05部
・Lucirin TPO 8.5部
・ベンゾフェノン(光開始剤) 3.0部
・IRGACURE 184 2.0部
・BYK 307 0.05部
((A):(B)重量含有比が1:2.3)
<下塗り液の調製>
下記組成の成分を撹拌混合し溶解して、インクジェット記録用インクの下塗り液を調液した。粘度は160mPa・sであった。下塗り液の表面張力は23mN/mであった。
・DPGDA 11.9部
・Irg907 1.5部
・ダロキュアITX 0.75部
・ダロキュアEDB 0.75部
・メガファック F−475 0.1部
<画像記録及び評価>
調製したシアン色インク組成物を、インクジェットプリンタ(東芝テック社製ヘッド搭載=打滴周波数:6.2KHz、ノズル数:636、ノズル密度:300npi(ノズル/インチ、以下同様)、ドロップサイズ:6pl〜42plを7段階に可変のヘッドを2つ配列して600npiにしたものをフルライン配列したヘッドセットを搭載)に装填した。
シアンインク組成物用ヘッドの上流に下塗り液のロールコーター及び半硬化光源(超高圧水銀灯を被記録媒体巾方向に複数配置)を大気雰囲気下に設置した。
また、ヘッドの直下を被記録媒体が移動可能な構造に構成すると共に、シアン色インク組成物を装填したヘッドに対して被記録媒体の進行方向にそれぞれ上述の超高圧水銀灯を配置し、下流にはメタルハライドランプを設置し、本メタルハライドランプ近傍にガス供給口を配置し、光照射部の酸素濃度が10体積%以下に保たれるような実験機を作製した。被記録媒体の搬送はロール搬送とし、記録媒体上には、ドロップサイズを12ピコリットルに設定して600dpi×600dpiの画像を形成した。単位面積当たりのインク液の付与重量は、0.74〜0.87mg/cm2の範囲内であった。
まず、上記の実験機を用い、ロールコーターにより下塗り液を5μmの厚みに均一に付与した。シアン色インク組成物が装填されたヘッドによって、前記下塗り液が付与された被記録媒体上にシアン色インク組成物を吐出してピニング露光(光強度500mW/cm2)して、画像、及び「あいうえお」の5ptの反転文字を描画した(被記録媒体搬送速度50〜800mm/s、6〜18pLの4階調描画(ライン評価は6pL)。文字にはアンチエリアジング処理を実施。)。その後、メタルハライドランプにより紫外線(波長365nm)を光強度3,000mW/cm2にて酸素濃度が10体積%以下の条件で照射し、画像を硬化した。
ここで、シアン色インク組成物による描画前であって、下塗り液の付与後の超高圧水銀灯による露光強度は、500mW/cm2、2,000mW/cm2とし、下塗り液の付与からシアン色インク組成物の打滴までの間隔を0.2秒とした。
また、被記録媒体には、リンテックユポ80(リンテック(株)製)を用いた。
(下塗り液の粘度測定)
被記録媒体の表面全体に付与された下塗り液の粘度測定は、露光後の下塗り液を掻き集め、25℃に保って、ラボ用ハンディ型デジタル粘度計ビスコスティック(マルヤス工業(株)製)を用いて行った。500mW/cm2で露光した場合は、内部はほぼ完全硬化したが、表面部分は硬化せず、表面部分の粘度は1,200mPa・sであった。2,000mW/cm2で露光した場合は表面層も含め完全に硬化した。
(硬化性の測定方法)
上記インクジェット記録方法に従い、基材搬送速度を50〜800mm/sまで変化させ、画像描画を行い、紫外線照射後の画像面において、触診により、画像のべとつきの程度を評価した。また、硬化性は以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
3: 画像にべとつきなし。
2: 画像がややべとついている。
1: 未硬化のインクが手に転写するほど固まっていない。
(画質の測定方法)
上記インクジェット記録方法に従い、基材搬送速度を50〜800mm/sまで変化させ、画像描画を行い、紫外線照射後の画像面において、液滴合一によるドットの位置ずれから生じるムラを目視評価した。また、ムラは以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
3: 画像ムラなし。
2: 一部画像ムラ発生。
1: 全面に画像ムラ発生。
<未重合率の測定>
基材搬送速度50〜800mm/sにおける、半硬化状態にした下塗り液の膜の未重合率(A(重合後)/A(重合前))を測定した。結果を表1に示す。
A(重合後)は、露光光源1による露光後のアクリルオキシ基に帰属される810cm-1付近に観測された赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合前)は、露光光源1による露光前の同ピークの吸光度である。
前記赤外吸収ピークの吸光度は、BIO−RAD社製赤外分光光度計(FST−6000)を用い、透過型顕微分光法(BIO−RAD社製顕微分光ユニットUMA−500)によって測定した。また、測定サンプルの基材としては、赤外域の吸収の少ないポリプロピレンフィルム(東洋紡社製パイレンフィルム−OT)を用いた。
さらに、ピニング用光源にて露光を行った後の各インク組成物の未重合率を測定した。結果を表1に示す。
<転写量の測定>
基材搬送速度50〜800mm/sにおける、半硬化状態にした下塗り液の転写量を測定した。転写量の測定は以下の方法で行った。なお、ここでは被記録媒体としてリンテックユポ80(リンテック(株)製)を使用した。
半硬化状態にした下塗り液に対して、浸透媒体を重ね、25℃にて、500N/m2の圧力で1分間保持した。浸透媒体は普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2、商品コードV436)を用いた。その後、静かに浸透媒体を剥がした。浸透媒体の転写試験前後の重量を測定し、増加した重量分を転写量とし、透明液体組成物が付与されている面積から、単位面積当たりの転写量(g/cm2)を求めた。インク液を打滴付与する前にサンプルを抜き取り、転写試験により未硬化の下塗り液の重量を測定したところ、いずれの工程後においても、0.074mg/cm2から0.148mg/cm2の範囲内であった。従って、下塗り液層の未硬化部の単位面積当たりの重量M(下塗り液)と単位面積当たりに吐出する着色液の最大重量m(着色液)の関係は、「m(着色液)/10<M(下塗り液)<m(着色液)/5」であった。結果を表1に示す。
〔実施例2〜10〕
実施例1で用いたインクジェット画像記録方法における最終露光時の酸素濃度を10体積%以下にて実施した以外は、実施例1と同様に検討、評価した。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
実施例1で用いたインクジェット画像記録方法における露光時の酸素濃度を11体積%にて実施した以外は、実施例1と同様に検討、評価した。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
実施例1で実施した画像記録方法において、下塗り設置後のピニング露光からすべて酸素濃度を10体積%以下にて実施した以外は、実施例1と同様に検討、評価した。結果を表1に示す。
実施例1〜10に示すように、本発明の酸素濃度範囲にて硬化を実施することで、酸素濃度の高い比較例1に比べ、硬化性が良化し、酸素重合阻害により、ピニング露光時の表面非硬化状態(内部のみ硬化)は維持され、画質も良好に保たれた。一方、比較例2では、ピニング露光時の酸素濃度も同時に下げているため、下塗り及びインクが表面から内部まで完全に硬化してしまい、画質劣化を引き起こすことが明確である。この結果は、本発明の方法でメタルハライドランプによる最終露光工程のみ酸素濃度0.1〜10%範囲に制御すれば、ピニング露光時の下塗り及びインクの内部のみの硬化を維持でき、最終露光時に表面から内部まで高速に完全硬化できたことを示す。
〔実施例11〜15〕
シアン以外の各色インク及びクリアーインクにおいて、実施例1同様にインク組成物を作製した。
〔実施例11〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、マゼンタ色のUVインクジェット用インク組成物を得た。粘度は22mPa・sであった。表面張力は24.3mN/mであった。
(マゼンタ色インク組成物)
・マゼンタミルベースB 12.0部
・ODA−N 25.0部
・Actilane 422 30.9部
・Rapi−Cure DVE−3 8.5部
・Ebecryl657 9.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.05部
・Lucirin TPO 8.5部
・ベンゾフェノン 3.0部
・IRGACURE 184 3.0部
・BYK 307 0.05部
((A):(B)重量含有比が1:2.1)
〔実施例12〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、イエロー色のUVインクジェット用インク組成物を得た。粘度は23mPa・sであった。表面張力は23.8mN/mであった。
(イエロー色インク組成物)
・イエローミルベースC 12.0部
・ODA−N 25.0部
・Actilane 422 30.9部
・Rapi−Cure DVE−3 8.5部
・Ebecryl657 9.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.05部
・Lucirin TPO 8.5部
・ベンゾフェノン 3.0部
・IRGACURE 184 3.0部
・BYK 307 0.05部
((A):(B)重量含有比が1:2.1)
〔実施例13〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、ブラック色のUVインクジェット用インク組成物を得た。粘度は20mPa・sであった。表面張力は25.0mN/mであった。
(ブラック色インク組成物)
・ブラックミルベースD 6.0部
・ODA−N 25.0部
・Actilane 422 35.9部
・Rapi−Cure DVE−3 9.5部
・Ebecryl657 9.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.05部
・Lucirin TPO 8.5部
・ベンゾフェノン 3.0部
・IRGACURE 184 2.0部
・BYK 307 0.05部
((A):(B)重量含有比が1:2.3)
〔実施例14〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、ホワイト色のUVインクジェット用インク組成物を得た。粘度は24mPa・sであった。表面張力は24.5mN/mであった。
(ホワイト色インク組成物)
・ホワイトミルベースE 31.0部
・ODA−N 25.0部
・Actilane 422 12.9部
・Rapi−Cure DVE−3 9.5部
・Ebecryl657 9.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.05部
・Lucirin TPO 8.5部
・ベンゾフェノン 3.0部
・IRGACURE 184 2.0部
・BYK 0.05部
((A):(B)重量含有比が1:1.8)
〔実施例15〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、クリアーのUVインクジェット用インク組成物を得た。粘度は16mPa・sであった。表面張力は23.6mN/mであった。
(クリアー色インク組成物)
・ODA−N 25.0部
・Actilane 422 37.9部
・Rapi−Cure DVE−3 9.5部
・Ebecryl657 9.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.05部
・Lucirin TPO 8.5部
・ベンゾフェノン 3.0部
・IRGACURE 184 2.0部
・BYK 307 0.05部
((A):(B)重量含有比が1:1.9)
(実施例11〜15:インク硬化性の評価)
実施例11〜15で得られたインク組成物を用い、実施例1同様にインクジェット記録を行い、硬化性評価、画質評価、未重合率、転写量を実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
結果、作製した各色インク及びクリアーインクは、すべての実施例で、硬化性及び画質が実施例1と同様に良好であることが確認できた。
実施例1〜15、並びに、比較例1及び2の結果を表1に示す。なお表中3/3等は、(硬化性の評価結果が3)/(画質の評価結果が3)であることを示す。
Figure 2008105387
<画像切片の観察>
実施例1で得られた画像をミクロトームにより切断し、光学顕微鏡により観察した。
なお、切片を得るためにライカ社製ミクロトームRM2255を使用し、観察は、Nikon社製光学顕微鏡 measuring microscope MM−40で行った。
その結果、得られた画像はいずれも図1に示すように、インク液硬化物の一部が表面に出ており、また、その一部が下塗り層に潜り込んでいた。更に、インク液硬化物の下部には、下塗り層が観察された。
実施例2〜15で得られた画像を観察した場合においても実施例1と同じく、図1に示すように、インク液硬化物の一部が表面に出ており、また、その一部が下塗り層に潜り込んでいた。更に、インク液硬化物の下部には、下塗り層が観察された。
半硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。 未硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。 未硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の他の一実施態様を示す断面模式図である。 完全硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。 半硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。 未硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。 未硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の他の一実施態様を示す断面模式図である。 完全硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。 画像形成原理を説明するための工程図である。 本発明のインクジェット記録方法により画像を記録する画像記録装置の全体構成を示す概略断面図である。 最終硬化光源と搬送ベルトとを覆うハウジング外観斜視図である。 (a)は図10の打滴ヘッドの基本的な全体構造の例を示す平面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。 画像記録装置を構成する液体供給系統の構成例を示す概略図である。 画像記録装置を構成する制御システムの構成例を示すブロック図である。
符号の説明
10 画像
12 インク液硬化物
14 半硬化状態の下塗り液層にインク液を付与された下塗り層
16 被記録媒体
18 未硬化状態の下塗り液層にインク液を付与された下塗り層
20 完全硬化状態の下塗り液層にインク液を付与された下塗り層
22 インク液B硬化物
24 半硬化状態のインク液Aにインク液Bを付与されて得られたインク液A硬化物
26 未硬化状態のインク液Aにインク液Bを付与されて得られたインク液A硬化物
28 完全硬化状態のインク液Aにインク液Bを付与されて得られたインク液A硬化物
50 打滴ヘッド
50a 吐出面
51 ノズル
52 圧力室
53 液体供給口
54 圧力室ユニット
55 共通液室
56 振動板
57 個別電極
58 圧電アクチュエータ
58a 圧電体
60 液体タンク
62 ハウジング
64 気体供給ノズル
65 気体供給用管
66 気体回収ノズル
67 気体回収用管
72 液体供給ポンプ
74 キャップ
76 クリーニングブレード
77 吸引ポンプ
78 回収タンク
81 下塗り液層
81a 未硬化状態の下塗り液
81b 硬化状態の下塗り液
82a、82b インク液液滴
100 画像記録装置
100A インクジェット記録部
100A1 下塗り液層形成部
100A2 描画部
101 給紙部
102P ロールコーター
102Y,102C,102M,102K インク組成物用打滴ヘッド
103P 半硬化用紫外線光源
103Y,103M,103C ピニング光源
103F 最終硬化光源
104 バッファ
104a 上ローラ
104b 下ローラ
104c 画像検出部
100B 後加工部
105 ニスコーター
106 ラベルカッティング部
106a マーキングリーダー
106b ダイカッタドライバ
106c ダイカッター
106d 対向ローラ
106e 刃付版
107 分岐ローラ
108 カス取り部
109 ラベル巻取り部

Claims (9)

  1. 活性放射線の照射により硬化するインク組成物を被記録媒体上に吐出して画像を記録するインクジェット記録方法において、
    (1)前記被記録媒体上に下塗り液を付与する工程と、
    (2)前記下塗り液を半硬化させる工程と、
    (3)半硬化された前記下塗り液上に前記インク組成物を吐出して画像形成を行う工程と、
    (4)画像形成後、前記インク組成物を大気中より低い酸素濃度の雰囲気下で硬化させる工程とを含むことを特徴とする
    インクジェット記録方法。
  2. 前記下塗り液を、活性放射線の照射により半硬化させる請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記下塗り液が、ラジカル重合性組成物を含む請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記インク組成物が多色インクセットであり、被記録媒体上に吐出された少なくとも1色のインク組成物を半硬化させる工程を更に含む請求項1〜3いずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記インク組成物及び前記下塗り液を完全に硬化させる工程を更に含む請求項1〜4いずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記下塗り液の表面張力が、前記インク組成物の少なくとも1つの表面張力よりも小さい請求項1〜5いずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記インク組成物の硬化感度が、前記下塗り液の硬化感度と同等又はそれ以上である請求項1〜6いずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記被記録媒体上に下塗り液を付与する下塗り液付与手段と、前記下塗り液付与手段の下流に配置され、前記下塗り液を半硬化させる下塗り液半硬化手段と、前記下塗り液半硬化手段の下流に配置され、活性放射線の照射により硬化可能なインク組成物を、前記被記録媒体上に吐出して画像形成を行う画像形成手段とを備えるインクジェット記録装置。
  9. 前記被記録媒体を搬送する手段と、前記画像形成手段の下流に配置され、前記画像形成手段で画像形成された被記録媒体に大気中より低い酸素濃度の雰囲気下で活性放射線を照射してインク組成物及び下塗り液を硬化させる活性放射線照射手段とを更に備え、前記画像形成手段が前記被記録媒体の搬送方向と直交する方向に配置した前記被記録媒体の記録可能幅の全幅に対応した長さである少なくとも1つのライン型インクジェットヘッドから前記インク組成物を吐出する画像形成手段である請求項8に記載のインクジェット記録装置。
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