明細書 ペルフルォロ五員環化合物 ぐ技術分野 >
本発明は、 種々の機能性 *ί料やその中間体として有用であり、 かつ新規な 2— 置換 (ヘプ夕フルォロテトラヒドロフラン) 誘導体およびペルフルォロジォキソ ラン誘導体等の、 ペルフルォロ化された五員環化合物に関する。 より詳しくは、 本発明は、 フッ素樹脂用モノマー製造用中間体、 フッ素系溶剤、 およびこれらの 製造原料等として有用な新規な化合物に関する。 ぐ背景技術 >
ペルフルォロ化されたテトラヒドロフラン環構造およびペルフルォロ化された ジォキゾラン環構造等のペルフルォロ化された五員環構造を有する化合物は、 ぺ ルフルォロ化された 5員環の環状エーテル構造に基づく種々の物性が期待できる 化合物である。 これまでに本発明者らは、 より工業的に有利な方法で安価な原料 からペルフルォロ化されたテトラヒドロフラン環構造を有する化合物を製造する 方法を提供している (国際公開 0 2 Ζ 6 6 4 5 2号パンフレツト参照)。
一方、 ポリテトラフルォロエチレン (P T F E ) に代表されるフッ素樹脂は、 化学的安定性および熱的安定性に優れ、 かつ耐薬品性を有することから、 電子産 業等の種々の機能性材料として用いられている。 しかし、 汎用のフッ素樹脂は、 溶融粘度が高いために成形がしにくい問題や、 ポリマー主鎖の結晶性が高いため に透明性が低い等の欠点も有していた。 該欠点を改良する方法として、 鎖状のパ 一フルォ口アルキルピニルエーテル等のフッ素系モノマーを第 2成分として共重 合させたフッ素樹脂が提案されている (国際公開 0 0 / 0 2 9 3 5号パンフレツ ト参照)。 し力 ^し、ポリマー物性を充分に改良するには、第 2成分の共重合割合を 増加させる必要があり、 一方で、 第 2成分の共重合割合の増加はフッ素樹脂製品 の耐熱性を低下させる要因になる問題があった。
また、 1, 1, 2 _トリクロロー 1, 2 , 2—トリフルォロェタン (以下、 R
一 1 1 3と記す。) に代表されるクロ口フルォロカ一ボン (C F C ) は、 地球規模 の環境保護の観点からその製造および使用が制限されている。 C F Cの代替化合 物の 1つにヒドロフルォロエーテル (H F E) があり、 種々の構造の化合物が提 案されている。 該化合物としては、 ペルフルォロ化環状エーテル構造を有する化 合物が提案されていたが、 該化合物は製造がしにくい問題があった。 また、 フッ 素原子と水素原子の導入位置が制御された純度の高い化合物は提供されていなか つた。
本発明は上記の問題を解決する目的でなされたものである。 すなわちペルフル ォロ化されたテトラヒドロフラン環構造およびペルフルォロ化されたジォキソラ ン環構造等のペルフルォロ化された五員環構造を有する有用な化合物を新規に提 供する。 また、 本発明は該化合物を誘導体化することによって、 フッ素樹脂用モ ノマーとして有用な化合物、 および、 洗浄性およびその汎用性に優れ、 かつ、 環 境問題にも対応する化合物の提供を目的とする。
<発明の開示 >
本発明者らはペルフル口化された環状エーテル誘導体を製造する方法を検討し た。 その結果、 ペルフルォロテトラヒドロフラン骨格等のペルフルォロ化された 五員環構造を有する特定の環状エーテル化合物から、 新規なフッ素系モノマーお よびフッ素系溶剤として有用な新規な化合物が提供されることを見いだした。 すなわち本発明は、 以下に示す式で表される化合物を提供する。
1 . 下式 (1 ) で表される化合物。
ただし、 Q Q 2 Q 3、 および Q 4は、 それぞれ独立に、 — O—または一 C R a R b— (ただし、 R aおよび R bは、 それぞれ独立に、 フッ素原子またはペルフル ォロアルキル基であり、 ς^ 34から選ばれる、 隣り合う 2個以上の基は同時に —0—にはならない。) であり、 R 1はフッ素原子またはペルフルォロアルキル基
W
3 である
2. 下式 (l a) で表される化合物、 下式 (l b) で表される化合物、 または 下式 (1 c) で表される化合物。
3. 下式 (2) で表される化合物。
ただし、 (^ェ〜。4および R1は、 前記と同じ意味を示す。
4. 下式 (2 a) で表される化合物、 下式 (2 b) で表される化合物、 または 下式 (2 c) で表される化合物。
5. 下式 (3) で表される化合物。
(3)
ただし、 Qi Q
4および R
1は、 前記と同じ意味を示す。
6. 下式 (3 a) で表される化合物。
ぐ発明を実施するための最良の形態 >
本明細書においては、 式 (1) で表される化合物を化合物 (1) とも記す。 他 の式で表される化合物についても同様である。
本発明において、 Q1 Q2 Q3、 および Q4は、 それぞれ独立に、 一〇—また は— CRaRb— (ただし、 Raおよび Rbは、 それぞれ独立に、 フッ素原子または ペルフルォロアルキル基であり、 (^ェ〜。4から選ばれる、 隣り合う 2個以上の基 は同時に一〇一にはならない。) であり、 R1はフッ素原子またはペルフルォロア ルキル基である。 Ra Rbおよび R1がそれぞれペルフルォロアルキル基である
場合、 該基は直鎖構造または分岐構造であるのが好ましく、 また、 炭素数 1〜4 の基が好ましく、 トリフルォロメチル基が特に好ましい。 Qi Q4が、 それぞれ 一 CRaRb—である場合の Raおよび Rbは、それぞれ独立に、 フッ素原子または トリフルォロメチル基が好ましい。 また、 R1はフッ素原子またはトリフルォロ メチル基が好ましい。
式 (1)、 式 (2)、 および式 (3) において、 G^ Q4で形成される五員環の 基としては、 たとえば、 下式 (a) 〜 (s) で表される基が挙げられ、 フッ素樹 脂用モノマーおよびフッ素系溶剤としての有用性の点から下式 (a) 〜 (c) で 表される基のいずれかの基が好ましい。
(b) (c)
(P) (Q) (r) (s)
式 (1) で表される化合物としては、 後述する式 (1 a)、 式 (l b)、 又は式 (1 c) で表される化合物が好ましい。
本発明の式 (1) で表される化合物は、 つぎの方法で製造できる。
すなわち、 下式 (4) で表される化合物を原料とし、 これを本出願人による W 002/66452に記載する方法にしたがって、 エステル化、 フッ素化および エステル結合の分解反応を行うことにより、 下式 (7) で表されるペルフルォロ 化されたァシルフルオリドを得る。 次に、 下式 (7) で表されるペルフルォロ化 されたァシルフルオリドにへキサフルォロプロピレンォキシド (以下、 HFPO と記す。) を反応させる方法である。 化合物 (4) から化合物 (7) を製造するェ 程は、 WO02Z66452に記載する方法および条件と同様に実施できる。
ただし、 式中の (^ 〜。4、 および R1は前記と同じ意味を示す。 。 と。1、 Q ^と(32、 Q3Hと Q3、 Q4Hと Q4はそれぞれ対応し、 C^ Q4がそれぞれ一 O— である場合の Q1H〜Q4Hは _0_であり、 Q1〜Q4がーCRaRb—でぁる場合 の Q1H〜Q4Hは— CRaRb—中のフッ素原子を水素原子に置換した基である。ま た R1Hは R1に対応し、 R1がフッ素原子である場合の R1Hは水素原子、 R1がべ ルフルォ口アルキル基である場合の R 1 Hは該ペルフルォ口アルキル基と同一炭 素骨格を有するアルキル基である。
Rf は、 ペルフルォロ化された 1価有機基を示し、 ペルフルォロアルキル基、 または、 ペルフルォロ (エーテル性酸素原子含有アルキル基) が好ましい。 Rf の好ま し い例 としては、 一 CF2CF (CF3) 2、 -CF (CF3) OCF2 CF2CF3、 -CF (CF3) OCF2CF (CF3) O C F 2 C F 2 C F 3等が挙 げられる。 Xはハロゲン原子を示し、 フッ素原子が好ましい。
たとえば、 化合物 (l a) は、 2—テトラヒドロフルフリルアルコールに下式 (10) で表される化合物 (ただし、 Rf は前記と同じ意味を示す。) をエステ ル化反応させて下式 (5 a) で表される化合物とし、 該化合物 (5 a) を液相中
でフッ素と反応させることによってペルフルォロ化して下式 (6 a) で表される 化合物とし、 該化合物 (6 a) のエステル結合の分解反応を行うことによって下 式 (7 a) で表される 2, 3, 3, 4, 4, 5, 5—ヘプ夕フルォロテトラヒド 口フラン— 2—ァシルフルオリドを得る。 つぎに該化合物 (7 a) に HFPOを 反応させる方法で製造できる。
ジォキソラ ンに、 化合物 (10) (ただし、 R
f は前記と同じ意味を示す。) をエステル化反 応させて化合物 (5b) とし、 該化合物 (5b) を液相中でフッ素と反応させる ことによってペルフルォロ化して化合物 (6 b) とし、 該化合物 (6b) のエス テル結合の分解反応を行うことによってペルフルオロー 2, 2一ジメチルー 1, 3—ジォキソラン一 4ーァシルフルオリド (7 b) を得る。 つぎに該化合物 (7 b) に HFPOを反応させることによって製造できる。
化合物 (l c) は、 2, 4一ジメチルー 2—メチロール一 1, 3—ジォキソラ ンに、 化合物 (10) (ただし、 Rf は前記と同じ意味を示す。) をエステル化反 応させて化合物 (5 c) とし、 該化合物 (5 c) を液相中でフッ素と反応させる ことによってペルフルォロ化して化合物 (6 c) とし、 該化合物 (6 c) のエス テル結合の分解を行うことによってペルフルオロー 2, 4一ジメチルー 1, 3— ジォキソラン一 2—ァシルフルオリド (7 c) を得る。 つぎに該化合物 (7 c) に HFPOを反応させることによって製造できる。
また、 化合物 (7 c) は上記以外の方法 (たとえば、 米国特許 3475456 号公報に記載の方法等) によっても製造することができ、 該方法によって入手し た化合物 (7 c) に HFPOを反応させて化合物 (l c) を得てもよい。
化合物 (7) に HFPOを付加させて、 化合物 (1 a) 〜 (1 c) 等の化合物 (1) を得る反応は、 触媒の存在下に実施するのが好ましい。 この際、 化合物 ( 7) は、 HFPOに対して、 通常は 0. 5〜2. 0倍モルを反応させるのが好ま しく、 特には 0. 9〜1. 1倍モルを反応させるのが好ましい。
化合物 (7) と HFPOとの反応に用いうる触媒としては、 アルカリ金属フッ 化物およびアルカリ土類金属フッ化物の中から選ばれる 1種以上の金属フッ化物 が好ましい。 アルカリ金属フッ化物としては、 フッ化カリウム、 フッ化ナトリウ ム、 およびフッ化セシウム等が好ましく、 アルカリ土類金属フッ化物としては、 フッ化カルシウム等が好ましい。 アルカリ金属フッ化物またはアルカリ土類金属 フッ化物を使用する場合の量は、 HFPOに対して 0. 01〜0. 7倍モルが好 ましく、 0. 05〜0. 7倍モルが特に好ましく、 とりわけ 0. 1〜0. 4倍モ ルが好ましい。 化合物 (7) に対しては 0. 005〜0. 3倍モルが好ましく、 0. 01〜 0. 1倍モルが特に好ましい。 該量が多すぎると H F P O自体がォリ ゴメリ化して収率が低下するおそれがある。
化合物 (7) と HFPOとの反応は、 溶媒の存在下に行うのが好ましい。 溶媒
は、 非プロトン性極性有機溶媒を使用するのが好ましい。 非プロトン性極性有機 溶媒としては特に制限されず、 たとえば、 モノグライム、 ジグライム、 トリダラ ィム、 テトラグライム、 ジェチルエーテル、 ジブチルエーテル、 ジイソプロピル エーテル、 ジォキサン、 テトラヒドロフラン等のエーテル類、 ァセトニトリル、 プロピオ二トリル、 アジポニトリル等の二トリル類、 ジメチルホルムアミド、 ジ メチルァセトアミド等の鎖状アミド類、 および 1、 3—ジメチルー 2—イミダゾ リジノン、 N—メチル—2—ピロリドン等の環状アミド等から選ばれる 1種また は 2種以上の溶媒が挙げられる。
化合物 (7) と HFPOとの反応に溶媒を使用した場合には、 HFPOのオリ ゴメリ化が防止できるので、 溶媒は使用したほうがよい。 溶媒を使用する場合の 量は、 化合物 (7) および HFPOの合計量 (触媒を使用する場合には前記合計 量に触媒量を加えた量) に対して、 上限は 3倍質量が好ましく、 2倍質量が特に 好ましく、 0. 5倍質量がとりわけ好ましい。 下限は 0. 001倍質量が好まし く、 0. 01倍質量が好ましく、 0. 05倍質量がとりわけ好ましい。 通常の場 合の溶媒の使用量は 0. 01〜0. 5倍質量が好ましい。
化合物 (7) と HFPOとの反応においては、 反応の系中に水および Zまたは ルイス酸 (たとえばプロトン酸など) が存在すると、 好ましくない反応が起こる おそれがあるため、 系中のこれらの量をできるだけ少なくするのが好ましい。 反 応の系中に存在しうる水およびルイス酸の量は、 それぞれ 005質量%以下 にするのが好ましい。 系中の水分量を少なくすることにより、 化合物 (7) や H FPOが水と反応して反応収率が低下する現象を防止できる。 また、 ルイス酸量 を少なくすることにより、 触媒活性を長期に保つことができ、 かつ反応転化率が 高くなりうる。
化合物 (7) と HFPOとの反応において、 圧力は特に制限されず、 減圧、 常 圧、 または加圧系で反応は実施でき、 操作性等の観点からは 1. IMP a (ゲー ジ圧) 以下で反応を実施することが好ましい。 反応温度は、 反応溶媒の種類等に より適宜変更され、 通常は +80°C以下にするのが好ましく、 特に— 50°C〜十 8 Otにするのが好ましく、 一 20°C〜十 30°Cにするのがとりわけ好ましい。 反応温度を高温にしすぎると、 目的とする反応と同時に、 フッ素イオンを触媒と
した H F P〇のオリゴメリ化が競争的に進行し、 収率が低下する可能性がある。 化合物 (1 ) は、 それ自身が溶剤等として利用できる有用な化合物であり、 か つ新規な化合物である。 特に化合物 (1 a ) 〜 (1 c ) は、 含フッ素化合物を良 好に溶解しうる溶剤として有用である。 さらに該化合物 (1 ) は—C O F基の反 応性を利用して、 種々の有用な化合物に誘導体化できる。 たとえば、 化合物 (1 a ) 〜 (l c ) 等の化合物 (1 ) の気相熱分解反応またはカルボン酸塩の熱分解 により、 化合物 (2 ) が製造できる。
化合物 (1 ) を気相熱分解反応して化合物 (2 ) を得る反応は、 連続式反応で 行うのが好ましい。 連続式反応は、 加熱した反応管中に、 化合物 (1 ) を気体状 で通過させて、 分解反応を行い、 分解反応で生成した化合物 (2 ) を、 凝縮し、 連続的に回収する方法により実施するのが好ましい。 気相熱分解の反応温度は、 + 1 0 0〜+ 4 5 0でが好ましく、 とりわけ + 2 0 0〜十 4 0 0 °Cが好ましい。 反応温度が高くなりすぎると、 化合物 (2 ) がさらに分解して収率が低下するお それがある。 一方、 反応温度が低すぎると、 化合物 (1 ) の反応率が低下するお それがある。
化合物 (1 ) の気相熱分解反応においては、 管型反応器を用いるのが好ましい 。 管型反応器を用いる場合の滞留時間は、 空筒基準で 0 . 1秒〜 1 0分程度が好 ましい。 反応圧力は特に限定されない。 該管型反応器には、 反応を促進させる目 的で、 管中にガラス、 アルカリ金属の塩、 またはアルカリ土類金属の塩等を充填 するのが好ましい。 アルカリ金属の塩またはアルカリ土類金属の塩としては、 炭 酸塩が好ましい。 アルカリ金属の塩の具体例としては、 炭酸ナトリウム (軽灰等 であってもよい。)、 炭酸カリウム、 炭酸リチウム等が挙げられる。 アルカリ土類 金属の炭酸塩の具体例としては、 炭酸カルシウム、 炭酸マグネシウム、 炭酸バリ ゥム等が挙げられる。 ガラスとしては、 一般的なソーダライムガラスが挙げられ 、 特にビーズ状にして流動性を上げたガラスビーズが好ましい。 さらに、 管式反 応管中にガラス、 アルカリ金属の塩、 またはアルカリ土類金属の塩を充填させる 場合には、 粒径が 1 0 0〜2 5 0 程度であるものを用いると、 流動床型の反 応形式を採用できることから特に好ましい。
熱分解反応を気相反応で実施する場合は、 化合物 (1 ) の気化を促進する目的
で、 熱分解反応には直接は関与しない不活性ガスを存在させて反応を行うのが好 ましい。 不活性ガスとしては、 窒素ガス、 二酸化炭素ガス、 ヘリウムガス、 アル ゴンガス等が挙げられる。 不活性ガス量は、 化合物 (1) に対して 0. 01〜9 8体積%程度が好ましく、 0. 01〜50体積%程度が特に好ましい。 不活性ガ ス量が多すぎると、 化合物 (2) の回収量が低くなるおそれがある。
一方、 化合物 (1) をカルボン酸塩とした後に熱分解することによって化合物 (2) を製造する方法において、 カルボン酸塩としては、 アルカリ金属塩または アル力リ土類金属塩が好ましい。 アル力リ金属塩またはアル力リ土類金属塩は、 アル力リ金属水酸化物またはアル力リ土類金属水酸化物を水溶液とし、 該水溶液 に化合物 (1) を中和点まで加え、 つぎに水を除去して乾燥する方法により得る のが好ましい。 カルボン酸塩の熱分解反応は、 加熱することにより実施できる。 熱分解反応で発生するガス成分には化合物 (2) が含まれることから、 該ガスを 低温冷却した卜ラップ中に回収するのが好ましい。 熱分解反応の温度は +100 〜十 400°Cが好ましく、 + 200〜十 350°Cが特に好ましい。
熱分解反応によれば、 化合物 (1 a) からは化合物 (2 a) が得られ、 化合物 (l b) からは化合物 (2 b) が得られ、 化合物 (l c) からは化合物 (2 c) が得られる。
熱分解反応で得た化合物 (2) の用途は特に限定されない。 たとえば、 該化合 物は、 重合しうるフッ化ピニル基を有する化合物であることから、 フッ素樹脂用 モノマーとして有用であり、 かつ新規な化合物である。 化合物 (2) としては、 化合物 (2 a)、 化合物 (2 b)、 または化合物 (2 c) が好ましい。 該化合物 ( 2) は、 汎用のフッ素樹脂用モノマーと共重合させることによって、 有効に物性 が改良されたフッ素樹脂が提供されうる。 たとえば、 化合物 (2 a) を共重合さ せた共重合体は、 立体的に嵩高い基であるペルフルォロ化されたテトラヒドロフ ラン環構造を側鎖に持つ共重合体になり、 または化合物 (2b)、 または化合物 ( 2 c) を重合させた共重合体は、 立体的に嵩高い基であるペルフルォロ化された ジォキゾラン環構造を側鎖に持つ共重合体であるため、 たとえ少量の共重合であ つてもフッ素樹脂等の物性を有効に改良しうる。
化合物 (1) からは、 化合物 (3 a) 等の化合物 (3) もまた製造できる。 化
合物 (3) は、 化合物 (1) をカルボン酸塩とし、 つぎにプロトン性溶媒中で熱 分解することにより製造できる。 化合物 (3) としては、 下記化合物 (3 a)、 下 記化合物 (3 b)、 または下記化合物 (3 c) が好ましい。 化合物 (3 a) 等の化 合物 (3) は、 含フッ素溶剤等として有用な化合物である。
化合物 (1) から化合物 (3) を製造する方法において、 カルボン酸塩として は、 アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましい。 アルカリ金属塩また はアル力リ土類金属塩は、 アル力リ金属水酸化物またはアル力リ土類金属水酸化 物をプロトン性溶媒の溶液とし、 該溶液に化合物 (1) を中和点まで加えること により、 該塩の溶液または懸濁液として得るのが好ましい。 つぎに該カルボン酸 塩を、 プロトン性溶媒中で熱分解させる。 プロトン性溶媒としては、 水、 アルコ ール、 グリコール類等から選ばれる 1種または 2種以上の溶媒が好ましい。 プロ トン性溶媒の量は、 カルボン酸塩が溶解する量よりも多い量が好ましい。 また、 熱分解の温度は + 30〜十 200 °Cが好ましく、 +50〜十 200 °Cが特に好ま しく、 + 80〜十 150°Cがとりわけ好ましい。
該製造方法においては、 得られたカルボン酸塩をいつたん取り出して、 プロト ン性溶媒中で熱分解を行ってもよく、 カルボン酸塩を製造する工程と、 熱分解す る工程とを、 同一の反応器で連続して行ってもよい。
化合物 (3 a) 等の化合物 (3) は、 化合物 (2) に HFを付加することによ つても製造できる。 HFの付加反応は液相で行うのが好ましく、 反応条件は化合 物 (2) の反応性等により適宜設定される。
化合物 (3 a) 等の、 化合物 (3) は、 フッ素系溶剤としての安定性、 不燃性 、 および安全性等の性質を併せ持つ化合物である。 また、 溶剤特性、 洗浄特性な どのバランスにも優れることから、 フッ素系溶剤が適用される各種の用途に用い ることができる新規化合物である。 また、 化合物 (3) は、 炭化水素類や、 ハロ ゲン化合物、 エーテル類、 エステル類、 アルコール類等とも相溶しうることから 、 これらとの組成物を形成させて、 種々の用途に使用できる。 実施例
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、 本発明はこれらの例に限 定されない。 圧力は特に記載しない限りゲージ圧で表記し、 ガスクロマトグラフ ィーを GC、 ガスクロマトグラフ一質量分析法を GC— MSと表記する。
なお、 GC— MSは電子イオン化衝撃法により測定し、 'HNMRおよび19 FN M Rは下記の条件で測定した。
'HNMRの共鳴周波数は 300. 4MHz、溶媒は CDC 13 、標準物質は T MSとした。
19 FNMRの共鳴周波数は例 1— 2と例 1一 3においては 376. 0 MH z、 その他の例においては 282. 7MHz, 溶媒は CDC 13 、 標準物質は CC 1 3 Fとした。
[例 1] 化合物 (l a) の合成例
(例 1一 1) エステル化反応の例
2—テトラヒドロフルフリルアルコール (20 g) とトリエチルァミン (21 . 8 g) をフラスコに入れ、 氷浴下撹拌した。 FCOCF (CF3 ) OCF2 C F2 CF3 (71. 5 g) を内温を 10°C以下に保ちながら 1時間かけて滴下し た。 滴下終了後、 室温で 2時間撹拌し、 水 5 OmLを内温 15°C以下で加えた。 得られた粗液を分液し、 下層を水 5 OmLで 2回洗浄し、 硫酸マグネシウムで
乾燥した後、 ろ過し、 粗液を得た。 減圧蒸留で目的のエステル化合物 (66. 3 g) を 88〜89°CZ2. 7KP a (絶対圧) の留分として得た。 GC純度は 9 8%であった。 NMR分析により化合物 (5 a—l) の生成を確認した。
化合物 (5 a— 1) の NMRスペクトル;
]HNMR: δ (ppm) 1. 60〜: L. 73 (m, 1H), 1. 86〜2. 1 0 (m, 3H), 3. 76-3. 91 (m, 2H), 4. 14— 4. 22 (m, 1 H), 4. 28〜4. 47 (m, 2H)。
19 FNMR: δ (ppm) -79. 9 (1 F), 一 81. 3 (3 F), —82. 1 (3 F), -86. 4 (I F), — 129. 5 (2 F), -131. 5 (1 F)。
(例 1一 2) フッ素化反応の例
(5a-l) (6a-l)
50 OmLのニッケル製オートクレーブに、 R—113 (313 g) を加えて 撹拌し、 25 に保った。 オートクレープガス出口には、 20°Cに保持した冷却 器、 NaFペレット充填層、 および— 10^に保持した冷却器を直列に設置した 。 なお、 一10 に保持した冷却器からは凝集した液をオートクレープに戻すた めの液体返送ラインを設置した。 窒素ガスを 1. 0時間吹き込んだ後、 窒素ガス で 20%に希釈したフッ素ガス (以下、 20%フッ素ガスと記す。) を、 流速 8. 08 L/hで 1時間吹き込んだ。 つぎに、 20 %フッ素ガスを同じ流速で吹き込 みながら、 例 1一 1の方法で得た化合物 (5 a— 1) (5. 01 g) を R— 113 (100 g) に溶解した溶液を 4. 7時間かけて注入した。
さらに、 20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、 ベンゼン濃度が 0. 01 gZmLの R— 113溶液を 25 °Cから 40 にまで昇温しながら 9 mL注 入し、 オートクレーブのベンゼン注入口を閉め、 更にオートクレーブの出口バル ブを閉め、 圧力が 0. 2 OMP aになったところでォ一トクレーブのフッ素ガス 入り口バルブを閉めて、 0. 4時間撹拌を続けた。 つぎに圧力を常圧にし、 反応 器内温度を 40°Cに保ちながら、 上記のベンゼン溶液を 6 mL注入し、 オートク
レーブのベンゼン注入口を閉め、 更にオートクレープの出口バルブを閉め、 圧力 が 0. 2 OMP aになったところでオートクレープのフッ素ガス入り口バルブを 閉めて、 0. 4時間撹拌を続けた。 さらに、 同様の操作を 3回くり返した。 ベン ゼンの注入総量は 0. 33 g R— 113の注入総量は (33mL) であった。 さらに、 窒素ガスを 1. 0時間吹き込んだ。 目的物を19 FNMRで定量したとこ ろ、 化合物 (6 a_l) の生成が確認された。 収率は 64%であった。
化合物 (6 a— 1) の NMRスペクトル;
19 FNMR δ (ppm) — 80. 3 (1 F), 一 81. 9 (3 F), -82. 1 (3 F), -83. 5〜一 84. 8 (2 F), 一 85. 5〜― 88. 0 (3 F) , 一 126. 5 (I F), -127. 4 (I F), —128. 1 (I F), —130 • 2 (2 F), -130. 4 (1 F), -132. 2 (1 F), -135. 8 (1 F
(例 1一 3) 熱分解反応の例
(6a-l) (7a)
例 1一 2の方法で得た化合物 ( 6 a 1) (2 g) を NaF粉末 (0. 02 g) と共にフラスコに仕込み、 激しく撹拌を行いながらオイルバス中で 140 で 10時間加熱した。 フラスコ上部には一 10°Cに温度調節した還流器を設置し た。 冷却後、 液状サンプル (2. 0 g) を回収し、 これを精密蒸留して化合物 ( 7 a) (0. 8 g) を回収した。 化合物 (7 a) の構造は19 FNMRにより確認し た。
化合物 (7 a) の NMRスペクトル;
19 FNMR δ (ppm) 26. 6-26. 3 (1 F), —82. 6〜一 83. 9 (2 F), -117. 9〜― 118. 3 (1 F), -125. 7〜一 127. 0 (2 F), 一 128. 9— 129. 9 (1 F), -134. 4〜一 135. 3 ( 1 F)。
1 Lの内容積を持つハステロィー C製オートクレープ中に、 脱水乾燥した C s F (16. 5 g) を仕込んだ後に、 反応器内を脱気した。 この反応器中に例 1一 3の方法で得た化合物 (7 a) (662 g、 2. 7mo 1 ) とテトラグライム (1 39 g) を仕込んだ後に、 反応器を一 20°Cに冷却し、 反応器内圧が微減圧を保 つようにしながら H F P Oを連続的に供給した。 反応温度が 0 以上に上がらな いように供給量をコントロールしながら HFPO (450 g、 2. 7mo 1 ) を 供給した。反応終了後に分液ロートによりフルォロカーボン層 (下層) (1010 g) を回収した。 フルォロカーボン層に含まれる化合物が化合物 (l a) である ことを19 FNMR、 GC— MSスペクトル解析により決定した。 ただし、 下式に おいて Fに付した a〜pの記号は、 19 FNMRにおけるフッ素原子の帰属を特定 するための記号である。
化合物 (l a) の NMRスペクトル;
19 FNMR: δ (ppm) 26. 83 (Fp , s, 1 F), - 77. 58〜一 8 6. 56 (Fh and F ' , m, 2 F), - 82. 18 (Fk Fm and
Fn , s, 3F), — 83. 28〜― 84. 14 (Fa and Fb , m, 2 F), - 126. 40 (Fj , s, I F), - 126. 88〜一 128. 55 (F c and Fd , m, 2 F), — 129. 82〜一 136. 07 (Fe and
Ff , m, 2 F), 一 130. 98 (Fs , b s , I F).
化合物 (l a) の GC— MSスペクトル;
MS (m/ z) : 391 (M+ - F), 363, 341, 313, 301, 27 5, 247, 213, 197, 169, 150, 131, 119, 100, 97 , 69, 47 (c a l c u l a t e d Ex a c t ma s s o f C 8 F x 4 03 : 409. 96)。
[例 2] 化合物 (2 a) の合成例
例 1— 4で得たフルォロカーボン層をテトラグライムで 2回洗浄した後、 K O H (330 g) を溶解した水溶液中に滴下して、 中和した後に、 水を留去し、 得 られた白色固体を真空オーブン中で 100でで 2日間減圧乾燥を行った。 この後 、 減圧状態を保ったまま液体窒素温度に冷却した金属製トラップを接続し、 乾燥 機内の温度を 270°Cまで昇温した。 分解反応によって発生するガスを金属トラ ップ内に回収しながら、 ガス発生が終了するまで反応を継続し、 化合物 (2 a)
(700 g) を回収した。 化合物 (2 a) の構造は、 19 FNMR、 !HNMR, G C一 MSスペクトル解析により決定した。 ただし、 下式において Fに付した a〜 mの記号は、 " FNMRにおけるフッ素原子の帰属を特定するための記号である
化合物 (2 a) の NMRスぺクトル;
19 FNMR: δ (ppm) — 83. 56 (Fh , d, I F, J = 39Hz), - 83. 59 (F1 , I F, J = 39Hz), 一 83. 47〜一 83. 59, —84 . 03〜一 84. 09, - 84. 82〜一 84. 88, and - 85. 32〜
一 85. 39 (Fa and Fb , AB qu a r t e t, 2 F), -1 12.
例 1—4で得たフルォロカーボン層をテトラグライムで 2回洗浄した後、 KO H (330 g) を溶解した水溶液中に滴下し、 中和後、 テトラグライム (100 g) を添加して溶液を得た。 該溶液を耐圧反応器に仕込み、 120 まで加熱し 撹拌を行った。 反応の進行に伴って、 反応器内部の圧力上昇が確認された。 4時 間反応後、 室温まで冷却後に反応液を回収すると、 水相と有機相 (下相) に分離 したので、 有機相を回収し、 脱水した後に蒸留で精製して、 化合物(3 a) (75 0 g) を回収した。 化合物 (3 a) の構造は
19 FNMR、
!HNMR, GC— MS スペクトルにより決定した。ただし、下式において Fに付した a〜nの記号は、
1 9 FNMRにおけるフッ素原子の帰属を特定するための記号である。
化合物 (3 a) の NMRスペクトル;
19 FNMR: δ (p pm) - 82. 24〜一 82. 84 (F 1 , d d d, I F , J = 144Hz , 17Hz, 9Hz), 一 83. 48〜一 84. 12 (Fb , d dd, I F, J = 145Hz, 7Hz, 7Hz), 一 83. 59 and -83 . 97 (Fk, Fm and Fn, 3 F), 一 84. 71〜一 85. 29 (Fh
, d d d, I F, J = 144Hz, 16Hz, 6Hz), 一 86. 13〜一 86. 68 (F1 , dm, 1 F, J = 144Hz),- - 125. 64〜― 127. 88 ( Fe and F f , m, 2 F), - 126. 05〜一 127. 09 (Fg , m, IF), -128. 91〜一 129. 96 (Fc , dm, 1 F, J = 250Hz) , - 134. 33〜一 135. 30 (Fd, dm, 1 F, J = 250Hz), 一 1 44. 80〜一 145. 06 (FJ' , dm, 1 F, JH _ F =55Hz)0
'HNMR: δ (p pm) 6. 0 (d q, 1 H, Jgem = 54Hz, Jvic = 3H z)。
化合物 (3 a) の GC— MSスペクトル;
MS (m/ z): 345 (M+—F), 295, 247, 225, 197, 16 9, 167, 150, 131, 119, 101, 100, 97, 69, 51, 4 7 (c a l c u l a t ed Ex ac t ma s s o f C7 HF x O 363. 98)
[例 4] 化合物 (l b) の合成例
ハステロィ C の 2 Lのオートクレーブに 2, 2ージメチル一 4ーメチロール 一 1, 3—ジォキソラン (500 g) を入れた。 反応器を冷却して、 常圧で内温 が 30°C以下に保たれるようにゆっくりと FCOCF (CF3) OCF2CF (C F3) OCF2CF2CF3 (2070 g) を導入した。 同時に充分に撹拌しながら 、 窒素ガスをバブリングさせ、 反応により生じた HFを系外に追い出した。 FC OCF (CF3) OCF2CF (CF3) O C F 2 C F 2 C F 3の全量を投入後、 30 °Cでさらに 5時間反応させて生成物を得た。 生成物を GC分析した結果、 化合物 (5b_l) が 99. 0%生成しており、 未反応の 2, 2—ジメチルー 4ーメチ ロール一 1, 3—ジォキソランは検出されなかった。 この生成物は精製すること なく、 例 4一 2の反応に使用した。
化合物 (5 b— 1) の NMRスペクトル;
1 HNMR: δ (ppm) 1. 36 (3 H), 1. 42 (3H), 3. 75〜4. 16 (2H), 4. 28〜4. 53 (3H)0
19 FNMR: δ (ppm) -79. 0〜― 80. 1 (I F), -80. 6 (3 F ), 一 81. 9 (3 F), -82. 1 (2 F), -82. 7 (3 F), -84. 6〜 一 85. 6 (I F), -130. 1 (2 F), -132. 0 (I F), - 145. 6 (1 F)0
50 OmLのニッケル製オートクレープに、 例 1— 2と同様に. 冷却器、 Na Fペレット層、 液体返送ラインを設置した。 オートクレープに R 113 (31 2 g) を仕込んだ後に撹拌して 25 °Cに保った。 オートクレープに窒素ガスを室 温で 1時間吹き込んだ後、 20 %フッ素ガスを室温で流速 9. 90LZhで 1時 間吹き込んだ。 つぎに 20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、 例 4一 1 で得た化合物 (5 b— 1) (32 g) を R— 113 (256 g) に溶解した溶f友を 8. 3時間かけて注入した。
つぎに、 20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながらオートクレープ内圧力 を 0. 15MP aまで昇圧して、 ベンゼン濃度が 0. 01 gZmLである R_ 1 13溶液を 25°Cから 4 Otにまで昇温しながら 9mL注入し、 オートクレープ のベンゼン溶液注入口を閉め、 0. 3時間撹拌を続けた。
つぎに反応器内圧力を 0. 15MP aに、 反応器内温度を 40°Cに保ちながら 、 前記ベンゼン溶液を 6 mL注入し、 オートクレープのベンゼン溶液注入ロを閉 め、 0. 3時間撹拌を続けた。 ベンゼンの注入総量は 0. 15 g R— 1 13の 注入総量は 15mLであった。
さらに 20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら 1時間撹拌を続けた。 つ ぎに、 反応器内圧力を常圧にして、 窒素ガスを 1時間吹き込んだ。 生成物を19 F NMRで分析した結果、化合物(6 b—l)が収率 95%で含まれていること を確認した。
化合物 (6b— 1) の NMRスペクトル;
19 F NMR: δ (ppm) -77. 6 (1 F)、 -79. 0 80. 9 (1
0 F)、 —81. 4〜一 82. 2 (9 F)、 85. 0〜一 86. 8 (3 F)、 - 1 22. 4 (1 F), - 130. 1 (2 F)、 132. 0 (1 F)、 -145. 4 ( 1 F)。
(例 4一 3) 熱分解反応の例
(7b)
10°Cの還流器を備えた 2 Lのフラスコ内に、 例 4_ 2の方法で得た化合物 ( 6 b- 1) (2000 g) を KF粉末 (14 g) と共に仕込み、 熱媒温度を 100 〜130°Cに保って加熱撹拌を行った。 冷却後、 液状サンプルを回収し、 これを 精密蒸留して化合物 (7 b) (純度 99%、 580 g) を回収した。 化合物 (7 b ) の構造は19 FNMRにより確認した。
化合物 (7b) の NMRスペクトル;
19 FNMR: δ (ppm) 25. 0 (I F), — 73. 3〜― 73. 9 (I F) , 一 80. 2 (6 F), -82. 2〜一 82. 8 (1 F), 一 112. 7 (I F)
(例 4— 4) HFPOの付加反応の例
ハステロィ C製の 2 Lのオートクレープに、 脱水乾燥した C s F (13 g) を 仕込んだ後、 反応器内を脱気した。 この反応器中に例 4一 3の方法で得た化合物 (7 b) (540 g) とテトラグライム (66 g) を仕込み、 反応器を— 20でに
冷却して、 反応温度が 0 °C以上に上がらないように供給量をコントロールしなが ら HFPO (290 g) を連続的に供給した。 反応終了後、 分液ロートによりフ ルォロカーボン層 (下層) (780 g) を回収した。 フルォロカーボン層に含まれ る化合物が化合物 (l b) であることを19 FNMR、 GC— MSスペクトル解析 により決定した。
化合物 (l b) の NMRスペクトル;
19 FNMR: δ (ppm) 26. 5 (1 F), -76. 4〜― 78. 8 (2 F) , -80. 2 (6 F), -80. 3〜― 80. 8 (1 F), —81. 5 (3 F), 一 84. 3〜― 86. 0 (1 F), -121. 3 (1 F), 一 130. 1 (1 F)。 化合物 (1 b) の GC— MSスぺクトル;
MS (m/z) : 429 (M+— COF), 407, 313, 263, 213, 197, 169, 147, 131, 128, 119, 100, 97, 81, 78,
69, 50, 47 (c a l c u l a t e d Ex a c t m s s o f C9 F1 604 : 476. 07)。
[例 5] 化合物 (2 b) の合成例
例 4— 4で得たフルォロカーボン層を用い、 KOHの使用量を 92 gとするこ と以外は、 例 2と同様に反応を行い、 化合物 (2 b) (650 g) を回収した。 化 合物 (2 b) の構造は、 19FNMR、 GC— MSスペクトル解析により決定した 化合物 (2 b) の NMRスぺクトル;
19 FNMR: d (ppm) -76. 6〜77. 4 (1 F), —80. 4 (6 F) , —80. 8〜― 81. 4 (1 F), 一 83. 6〜― 85. 2 (2 F), -112 . 9〜一 113. 6 (1 F), —120. 9〜一 121. 7 (2 F), -134. 5〜一 135. 3 (1 F)0
化合物 (2 b) の GC—MSスぺクトル;
M S (m/ z ) : 410 , 313, 263, 169, 147, 131, 128, 119, 100, 97, 81, 78, 69, 50, 47 (c a l c u l a t e d Ex ac t ma s s o f C8F1 4O3 : 410. 06)。
[例 6] 化合物 (5 c_l) の合成例
(例 6— 1 ) エステル化反応の例
ハステロィ C製の 2 Lのオートクレーブに 2 , 4—ジメチルー 2—メチロール — 1, 3—ジォキソラン (500 g) と NaF (320 g) を入れた。 反応器を 冷却して、 常圧で内温が 30 以下に保たれるようにゆっくりと F CO CF (C F
3) OCF
2CF (CF
3) 〇CF
2CF
2CF
3 (2070 g) を導入した。 例 4 一 1と同様に反応させ、 得られた生成物を GC分析した結果、 化合物 (5 c— l ) が 98 · 5%生成しており、 未反応の 2, 4—ジメチルー 2—メチロール一 1 , 3—ジォキソランは検出されなかった。 この生成物は精製することなく、 例 6 一 2の反応に使用した。
化合物 (5 c_ l) の NMRスペクトル;
1 HNMR: δ (ppm) 1. 24〜: L. 30 (3H), 1. 38〜: L. 44 ( 3H), 3. 41〜3. 56 (1H), 4. 05〜4. 47 (4H)。
19 FNMR: δ (ppm) -79. 0〜一 80. 2 (1 F), 一 80. 6 (3 F ), 一 81. 9 (3 F), -82. 1 (2F), —82. 7 (3 F), 一 84. 5〜 -85. 6 (I F), - 130. 1 (2 F), -132. 1 (1 F), - 145. 6 (l F
(5c - 1)
ccl
- 1)
50 OmLのニッケル製オートクレープに、 例 1一 2と同様に、 冷却器、 Na
Fペレット層、 液体返送ラインを設置した。 オートクレープに R— 1 13 (31
2 g) を仕込んだ後に撹拌して 25 °Cに保った。 オートクレープに窒素ガスを室 温で 1時間吹き込んだ後、 20 %フッ素ガスを室温で流速 7. 35L/hで 1時 間吹き込んだ。 つぎに 20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、 例 6—1 で得た化合物 (5 c— 1) (5 g) を R— 113 (120 g) に溶解した溶液を 2
. 8時間かけて注入した。 つぎに、 20 %フッ素ガスを同じ流速で吹き込みなが らオートクレーブ内圧力を 0. 15 MP aまで昇圧して、 ベンゼン濃度が 0. 0
1 gZmLである R— 113溶液を 25°Cから 40°Cにまで昇温しながら 9mL 注入し、 オートクレープのベンゼン溶液注入口を閉め、 0. 3時間撹拌を続けた
。 つぎに反応器内圧力を 0. 15MP aに、 反応器内温度を 40°Cに保ちながら
、 前記ベンゼン溶液を 6 mL注入し、 オートクレープのベンゼン溶液注入ロを閉 め、 0. 3時間撹拌を続けた。 さらに同様の操作を 1回繰り返した。 ベンゼンの 注入総量は 0. 22 g、 R— 113の注入総量は 2 lmLであった。 さらに 20
%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら 1時間撹拌を続けた。 つぎに、 反応器 内圧力を常圧にして、 窒素ガスを 1時間吹き込んだ。 生成物を19 FNMRで分析 した結果、 化合物 (6 c— l) が収率 93%で含まれていることを確認した。 化合物 (6 c— l) の NMRスペクトル;
19 FNMR: δ (p pm) - 77. 6〜一 78. 9 (IF), - 79. 0〜一 8 0. 9 (10F)、 -81. 0〜一 82. 4 (9 F)、 -84. 0〜一 86. 7 (
3 F)、 - 123. 3 (1 F)、 一 130. 1 (2 F) 8 (1 F)、 一 145. 5 (1 F)。
(例 6— 3) 熱分解反応の例
HFPO付加反応の原料に、 例 6— 3の方法で得た化合物 (7 c) (540 g) を用いること以外は、 例 4一 4と同様に反応を行い、 フルォロカーボン層 (下層 ) (800 g) を回収した。 フルォロカーボン層に含まれる化合物が化合物(1 c ) であることを19 FNMR GC—MSスペクトル解析により決定した。
化合物 (l c) の NMRスペクトル;
19 FNMR: δ (p Dm) 26. 3 (1 F), 一 76. 6 79. 0 (2 F)
, -80. 3 (3F), -80. 8 (3 F), -81. 3〜― 82. 6 (3 F), 一 84. 5〜― 86. 7 (2 F), 一 123. 1 (1 F), 一 131. 0〜一 133
化合物 (l c) の GC— MSスペクトル
MS (m/ z ) : 429 (M+— COF), 407, 313, 285, 263, 213, 197, 169, 147, 131, 119, 100, 97, 81, 78,
69, 50, 47 (c a l c u l a t e d Ex a c t ma s s o f C9 Fj. 604 : 476. 07)。
[例 7] 化合物 (2 c) の合成例
例 6— 4で得たフルォロカーボン層を用い、 K〇Hの使用量を 94 gとするこ と以外は、 例 2と同様に反応を行い、 化合物 (2 c) (670 g) を回収した。 化 合物 (2 c) の構造は、 19FNMR、 GC—MSスペクトル解析により決定した 化合物 (2 c) の NMRスペクトル;
19 FNMR: δ (p pm) - 77. 9〜一 78. 1 (1 F), -80. 3〜― 8 0. 4 (3 F), —80. 9〜― 81. 1 (3F), 一 81. 4〜一 81. 6 (1 F), -84. 7〜― 85. 4 (2 F), —114. 0〜一 114. 1 (1 F), - 122. 2〜一 122. 4 (1 F), - 123. 2 (1 F), - 136. 1〜一 1 36. 2 (1 F)。
化合物 (2 c) の GC— MSスペクトル;
MS (m/z) : 410, 313, 285, 263, 247, 213, 197, 169, 147, 131, 119, 100, 97, 81, 78, 69, 50, 4 7 (^c a l c u l a t e d Ex a c t ma s s o f C8F1 /tO3 : 410 . 06)。
[参考例] 重合反応の例
1. 2 Lの撹拌機付き圧力容器に、 イオン交換水の 590 g、 CHFC 1 CF 2 CF2 C Iの 353 g、 化合物 (2 a) の 54. 8 g、 メタノールの 16. 4 gを仕込み、 5 CTCの内温で、 テトラフルォロエチレン (TFE) を圧力が 1. 2 IMP aになるまで仕込んだ。 ついで (CF3 CF2 CF2 COO) 2 の 0. 1%溶液 (溶媒: CHFC 1 CF2 CF2 C I) (以下、 開始剤溶液という。) の 3mLを仕込み、 50 で重合を開始させた。 重合中に開始剤溶液は断続的に仕 込み、 合計 20. 2mLを仕込んだ。 重合の進行にともない、 圧力が低下するの で、 圧力が一定になるように TFEを連続的に後仕込みした。 後仕込みの TFE 量が 145 gになったところで内温を室温まで冷却し、 未反応 TFEを空放し、 圧力容器を開放した。 圧力容器の内容物をガラスフィルターで濾過してスラリー 状の TFE共重合体を得た。 得られたスラリーを 120°Cで 8時間乾燥して白色 の TFE共重合体の 155 gを得た。 得られた TFE共重合体は、 TFEに基づ く重合単位 Z化合物 (2 a) に基づく重合単位のモル比が 98. 3/1. 7であ り、 Q値は 1. 7であった。 引張強度は 32. 6MP a、 引張伸度は 310%、 降伏強度は 14. 0 M P a、 引張弾性率は 154MP a、 MI T折り曲げ寿命は 123万回であった。
ぐ産業上の利用可能性 >
本発明によって提供される化合物 (2 a) 等の化合物 (2) はフッ素樹脂用モ ノマ一等として有用な化合物であり、 たとえば汎用のフッ素樹脂用モノマー等と 共重合させることによって、 有効に物性が改良されたフッ素樹脂が提供されうる また、 本発明によって提供される化合物 (3 a) 等の化合物 (3) は、 フッ素 系溶剤として有用に用いうる化合物であり、 洗浄剤や溶剤、 添加剤等に有効に用 いうる。
また、 本発明によって提供される化合物 (1 a) 等の化合物 (1) は、 化合物 (2) および化合物 (3) の製造用中間体として有用な化合物であり、 かつ該化 合物自身もまたフッ素系溶剤等として利用できる有用な化合物である。