明 細 書 心筋症の予防及び/又は治療のための医薬 技術分野
本発明は、 ピラゾロン誘導体又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として 含む心筋症の予防及びノ又は治療のための医薬に関する。 背景技術
糖尿病性心筋症は、 糖尿病によって起こる二次性の心筋症を指し、 糖尿痫以外 に原因が判明しない心筋症とされている (Rubier, S. , et al. , Am. J. Cardiol. , 30, 595, 1972)。 病理学的には、 Fisherらは冠動脈バイパス術時の心筋生検の結 果、 糖尿病患者では基底板の肥 J¥が顕著であり、 心筋の肥大と間質の繊維化が強 いと報告している (Fisher, V. W. , et al. , Diabetes, 28, 173, 1979)。
糖尿病の発症と酸化的ストレスとの関係については近年-多くの研究が進み、 ί¾ί 者には密接な関係があることが明らかになつている。 例えば、 糖尿病では、 糖化 タンパク質とそれらの細胞表面結合部位との相互作用が酸化的ストレスを誘導し、 ス トレス性タンパク質ヘムォキシゲナーゼ (Η0) 1の発現が增加する (Foresti, R. , Clark, J. E. , Green, C. J. , J. Biol. Chem. , 272, 18411 18247, 1997及び Ishizaka, N. , Aizawa, T. , Mori, I. et al. , Am. Physiol. Heart Circ. Physiol. , 279, H672-8, 2000)。
また、 酸化的ス トレスはヒ ドロキシラジカルの産生増加及びノ又は非効率的な 捕捉によって増大するが、 これが結果的に心異常を引き起こすという証拠も塯ぇ つつある (Kaul, N. , Sivesld Iliskovic, N. , Hill, Μ. et al. , J. Pharmacol. Toxicol. Meth. , 30, 55 - 63, 1993及び Pennathur, S. , Wagner, JD. , Leeuwenburgh, C. et al. , J. Clin. Invest. , 107, 853-860, 2001)。
このように、 糖尿病に起因する心異常と酸化的ストレスの関係が明らかになつ
てきていることから、 抗酸化作用を有する薬剤を糖尿病性心疾患の治療に利用す る試みがなされている。 例えば、 脂質低下剤であるプロブコールは LDLの酸化的 修飾を阻止することにおいて強い抗酸化効果を有しているが、 糖尿病性心筋症は 抗酸化剤の欠損と関連があり、 プロブコール処理が効率的であることが報告され てレヽる(Kaul, N. , Siveski-I l i skovi c, N. , Hi l l, Μ. , et al . , Mol . Cel . Bi ochem. , 160/161, 283-288, 1996)。
- -方、 エダラボン (3—メチルー 1 一フエ二ルー 2—ピラゾリン 5 - オン) は TPA ( 12— 0—テトラデカノィルーフオルボール一 13—酢酸塩) —白血球系にお いて酸素一誘導フリーラジカルによって生じる化学発光に対して完全な消光活性 を有する (Murota, S. , Mori ta, I . , Suda, N. , Ann. New York Acad. Sc i . , 598, 182-187, 1990)。 エダラボンはヒ ドロキシル化サリチル酸塩形成を阻害すること からヒ ドロキシラジカル捕捉作用を有することが知られている (Watanabe, T. , Yuki , S. , Egawa, Μ. , Nishi , Η· , J. Parmacol. Exp. Ther. , 268, 1597-1604, 1993)。 また、 エダラボンは培養ゥシ大動脈內皮細胞のヒ ドロキシバーオキシド --誘導拟 傷を顕著に抑制し、 同じ系におけるプロスタグランジン合成を高める。
このように、エダラボンは活性酸素をはじめとする種々のフリ一ラジカルを「消 去する (スカベンジ)」 ことで、 細胞障害などを防ぐ働きをするフリーラジカルス 力ベンジャーである。 本発明者らは先にヒ ドロキシラジカルによる脬ランゲルハ ンス島の細胞破壊に起因する血糖上昇に対してピラゾ口ン誘導体の保護効果を検 討したところ、 ェダラボンがピラゾ口ン誘導体の中では最も強力な血糖上^抑制 作用を有することを見出した (特許第 2 9 0 6 5 1 3 ¾-) ο さらに、 エダラボンは おそらくフリーラジカル捕捉及び抗酸化作用によって、 ラットにおける脳虚血、 心筋虚血に対する防御効果を発揮することもまた示されている (Yanagi sawa, A. , Mi yagawa, M. , Ishikawa, K. , Murota, S. , Int. J. Angi o丄., 3, 12 - 15, 1994 及び Abe, K. , Yuki , S. , Kogure, K. , Stroke, 19, 480-485, 1998)。 また、 ェ ダラボンの上記効果は経口によっても効果があると報告されている (Awano, II. , Soej ima, J. , Inoune, Η. , Pharmacol. Ther. , 25 (suppl) , 161-162, 1997)。 し
かしながら、 これらの知見はエダラボンが酸化的ストレスが関与する疾患に有効 であることを示すものではなく、 特に酸化的ストレスが関与する糖尿病性の心 ¾ 常に対してのエダラボンが有効であることを示唆ないし教示するものではない。 発明の開示
本発明の課題は、 糖尿病に起因する心筋症の予防及び/又は治療に有用な 薬 を提供することにある。
本発明者らは、糖尿病に起因する心異常と酸化的ストレスとの関連性に着 し、 上記課題を解決すべく種々の検討を行った結果、 式 ( I ) で示されるピラゾロン 誘導体又は薬学的に許容されるその塩が自然発症型糖尿病のモデル動物である
OLETF (Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty)ラットに兌られる左心室 (LV)機能 の低下、 心筋細胞の肥大を顕著に抑制するとともに心筋細胞の微細構造を保護す ることを見出し、 本発明を完成するに至った。
即ち、 本発明によれば、 下記式 ( I ) で示されるピラゾロン誘導体又は薬学的 に許容されるその塩を有効成分として含む心筋症の予防及び/又は治療のための 医薬が提供される。
(式中、 R 1は、 水素原子、 ァリール基、 炭素数 1〜5のアルキル基又は総炭素 数 3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し; R 2は、 水素原子、 ァリー ルォキシ基、 ァリールメルカプト基、 炭素数 1〜 5のアルキル基又は炭素数 1〜 3のヒ ドロキシアルキル基を表し;あるいは、 R 1及び R 2は、 共同して^尜数 3 〜 5のアルキレン基を表し; R 3は、 水素原子、 炭素数 1〜 5のアルキル基、 / 素数 5〜 7のシクロアルキル基、 炭素数 1〜3のヒ ドロキシアルキル基、 ベンジ ル基、 ナフチル基、 フエ二ル基、 又は炭素数 1〜 5のアルキル基、 炭素数 1〜5
のアルコキシ基、 炭素数 1〜 3のヒ ドロキシアルキル基、 総炭素数 2〜 5のアル コキシカルボニル基、 炭素数 1〜3のアルキルメルカプト基、 炭素数 1〜4のァ ルキルアミノ基、 総炭素数 2〜 8のジアルキルアミノ基、 ハロゲン原子、 トリフ ルォロメチル基、 カルボキシル基、 シァノ基、 水酸基、 ニトロ基、 アミノ基及び ァセトアミ ド基からなる群から選ばれる同- -若しくは異なる 1〜 3個の^換某で 置換されたフエ二ル基を表す。 )
本発明の好ましい態様によれば、 式 ( I ) で示されるピラゾロン誘導体が 3— メチルー 1 一フエ二ルー 2―ビラゾリンー 5—オン又は薬学的に許容されるその 塩である上記医薬、 及び心筋症が拡張型うつ血性心筋症、 肥大型心筋症、 又は糖 尿病性心筋症である上記医薬が提供される。
本発明の別の側面によれば、 上記式 ( I ) で示されるピラゾロン誘導体又は薬 学的に許容されるその塩の予防及び 又は治療有効量をヒ トを含む哺乳動物に投 与する工程を含む、 心筋症の予防及び/又は治療方法が提供される。 本発明のさ らに別の側面によれば、 上記医薬の製造のための式 ( I ) で示されるピラゾロン 誘導体又はその薬学的に許容される塩の使用が提供される。 図面の簡単な説明
第 1図は、 LET0及び 0LETF (32週齢) の心筋細胞の微細構造及び H0— 1に対す る免疫反応性試験の光顕微鏡写真を示す。
第 2図は、 LET0及び 0LETF (30週齢、 32週齢) の心筋細胞の微細構造の電子 顕微鏡写真を示す。 発明を実施するための最良の形態
本発明の心筋症の予防及び Z又は治療のための医薬は、 本明細書に定義する式 ( I ) で示されるピラゾロン誘導体又は薬学的に許容されるその塩を含む。
本発明で用いる式( I )で示される化合物は、互変異性により、以下の式( I ' ) 又は ( 1 ") で示される構造をもとりうる。 本明細書の式 ( I ) には、 便¾:上、 7ί.
変異性体のうちの 1つを示したが、 当業者には下記の互変異性体の存在は ίι明で ある。 本発明の医薬の有効成分としては、 下記の式 ( ι ' ) 又は ( ') で表され る化合物又は薬学的に許容されるその塩を用いてもよい。
式 ( I ) において、 R
1の定義におけるァリール基は単環性又は多環性ァリー ル基のいずれでもよい。例えば、 フエニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、 ブチル基などのアルキル基、 メ トキシ基、 ブトキシ基などのアルコキシ基、 塩素 原子などのハロゲン原子、 又は水酸基等の置換基で置換されたフエニル基等が挙 げられる。 ァリール部分を有する他の置換基 (ァリールォキシ基など) における ァリール部分についても同様である。
R R 2及び R 3の定義における炭素数 1〜5のアルキル基は直鎖状、 分枝鎖状 のいずれでもよい。例えば、 メチル基、ェチル基、 プロピル基、ィソプロピル基、 ブチル基、 イソブチル基、 sec—ブチル基、 tert—ブチル基、 ペンチル基等が挙げ られる。 アルキル部分を有する他の置換基 (アルコキシカルボニルアルキル基) におけるアルキル部分についても同様である。
R 1の定義における総炭素数 3〜6のアルコキシカルボニルアルキル ¾としては、 メ トキシカルボ-ルメチル基、 エトキシカルボニルメチル基、 プロポキシカルボ ニルメチル基、 メ トキシカルボニルェチル基、 メ トキシカルボニルプロピル基等 が挙げられる。
R 2の定義におけるァリールォキシ基としては、 p —メチルフエノキシ甚、 p ーメ トキシフエノキシ基、 p—クロロフエノキシ基、 p —ヒ ドロキシフエノキシ 基等が挙げられ、 ァリールメルカプト基としては、 フエ二ルメルカプト基、 p—
メチルフエ二ルメルカプト基、 p—メ トキシフエ二ルメルカプト基、 p —クロ口 フエ-ルメルカプト基、 p —ヒ ドロキシフエ二ルメルカプト基等が挙げられる。
R 2及び R 3の定義における炭素数 1〜3 のヒ ドロキシアルキル基としては、 ヒ ドロキシメチル基、 2—ヒ ドロキシェチル基、 3—ヒ ドロキシプロピル基等が挙げ られる。 R 3の定義における炭素数 5〜7のシクロアルキル基としては、 シクロべ ンチル基、 シクロへキシル基、 シクロへプチル基等が挙げられる。
R 3の定義において、 フエニル基の置換基における炭素数 1〜5のアルコキシ基 としては、 メ トキシ基、 エトキシ基、 プロポキシ基、 イソプロポキシ某、 ブトキ シ基、ペンチルォキシ基等が挙げられ、総炭素数 2〜5のアルコキシカルボニル a としては、 メ トキシカルボニル基、 エトキシカルボニル基、 プロポキシカルボ二 ル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数 1〜3のアルキルメルカプト ¾ としては、 メチルメルカプト基、 ェチルメルカプト基、 プロピルメルカプト基等 が挙げられ、炭素数 1〜4のアルキルァミノ基としては、 メチルァミノ基、 ェチル アミノ基、 プロピルアミノ基、 プチルァミノ基等が挙げられ、 総炭素数 2〜8のジ アルキルアミノ基としては、 ジメチルァミノ基、 ジェチルァミノ基、 ジプロピル アミノ基、 ジブチルァミノ基等が挙げられる。
本発明の医薬の有効成分として好適に用いられる化合物( I ) として、例えば、 以下に示す化合物が挙げられる。
3ーメチノレー 1 一フエ二ルー 2 一ビラゾリン一 5—オン、
3—メチル一 1— ( 2 —メチルフエニル) 一 2 —ピラゾリン一 5—オン、
3—メチル一 1— ( 3 —メチルフエニル) 一 2 —ピラゾリン一 5 —オン、
3—メチノレー 1一 (4—メチルフエニル) 一 2 —ピラゾリン一 5 —オン、
3—メチルー 1一 (3 , 4—ジメチルフエニル) 一 2 —ピラゾリン一 5 —オン、
1一 (4—ェチルフエニル) 一 3 —メチル一 2 —ピラゾリン一 5 —オン、
3—メチルー:!一 (4 —プロピノレフェュル) 一 2 —ピラゾリン一 5 —オン、
1一 (4ーブチノレフエニル) 一 3 —メチノレー 2 —ピラゾリン一 5 —オン、
1— ( 3 —トリフルォロメチルフエニル) 一 3—メチルー 2 —ピラゾリン一 5—
オン、
1一 (4一トリフルォロメチルフヱニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5— オン、
1 - (2—メ トキシフエニル) 一 3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—オン、 1 - (3—メ トキシフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、 1 - (4—メ トキシフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、 1— (3, 4ージメ トキシフエニル)一 3—メチル一 2—ビラゾリンー 5—オン、 1 - (4—エトキシフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
3—メチル一 1一 (4一プロポキシフエニル) 一 2—ピラゾリン一 5—オン、 1— (4—ブトキシフエニル) 一 3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—オン、
1一 (2—クロ口フエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 - (3—クロ口フエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 - (4一クロ口フエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 - (3, 4ージクロ口フエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 - (4—ブロモフエニル) 一3—メチル一2—ピラゾリン一 5—オン、
1一 (4—フルオロフェニル) 一3—メチル一2—ピラゾリン一 5—オン、
1 - (3—クロロー 4—メチルフエニル) 一 3—メチル— 2—ピラゾリン一 5— オン、
1 - (3—メチルメルカプトフエニル) 一3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—ォ ン、
1一 (4ーメチルメルカプトフエニル) 一 3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—ォ ン、
4一 (3—メチルー 5—ォキソ一 2—ピラゾリン一 1ーィノレ) 安息香酸、
1一 (4一エトキシカルボニノレフヱニル) 一 3—メチル一 2 _ピラゾリン一 5— オン、
1 - (4—ニトロフエニル) 一 3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—オン、 3—ェチル一 1—フエニル一 2—ビラゾリン一 5—オン、
1一フエニノレー 3—プロピノレ一 2—ビラゾリンー 5—オン、
1, 3—ジフヱ二ルー 2—ピラゾリン一 5—オン、
3—フエニル— 1— ( p— トリル) 一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 - ( 4—メ トキシフエニル) 一 3—フエ二ルー 2—ピラゾリン一 5—オン、 1 - ( 4—クロ口フエニル) 一 3—フエ二ルー 2—ピラゾリン一 5—オン、 3, 4—ジメチル一 1—フエニル一 2 -ビラゾリン一 5—オン、
4一^ {ソブチル一 3—メチル一 1一フエニル一 2—ビラゾリンー 5—オン、
4— ( 2—ヒ ドロキシェチル) 一 3—メチル一 1—フエニノレー 2 _ピラゾリン一 5一オン、
3—メチル一 4一フエノキシ一 1ーフヱニル一 2—ビラゾリン一 5—オン、
3—メチル一 4—フエ二ルメルカプト一 1—フヱ二ルー 2—ピラゾリン一 5—ォ ン、
2, 3 a , 4, 5, 6, 7—へキサヒ ドロー 2—フエ二ルインダゾール一 3—ォ ン、
3—(ェトキシカルボ二ルメチル)一 1一フエニル一 2—ビラゾリン一 5—オン、
1—フエ二ノレ一 2—ピラゾリン一 5—オン、
3—メチノレ一 2—ビラゾリン一 5—オン、
1, 3—ジメチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1ーェチルー 3—メチル一 2―ビラゾリン一 5—オン、
1—ブチル一 3—メチル一 2 -ビラゾリン一 5—オン、
1 - ( 2—ヒ ドロキエチル) 一 3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—オン、
1—シク口へキシル一 3—メチル一 2―ビラゾリン一 5—オン、
1—ベンジル一 3—メチル一 2—ビラゾリン一 5—オン、
1一 (α—ナフチル) 一 3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—オン、
1ーメチル一 3—フエニル一 2—ビラゾリン一 5—オン、
3—メチル _ 1一 (4—メチルフエニル) 一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 - ( 4ーブチノレフエ二ノレ) 一 3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 - ( 4—メ トキシフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 一 ( 4—ブトキシフエニル) 一 3 _メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 一 ( 4—クロ口フエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 一 ( 4—ヒ ドロキシフエニル) 一 3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 一 ( 3, 4ージヒ ドロキシフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—ォ ン、
1 - ( 2—ヒ ドロキシフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、 1 - ( 3—ヒ ドロキシフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、 1 - ( 4—ヒ ドロキシフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、 1— ( 3, 4—ヒ ドロキシフエニル)一 3—メチノレ一 2—ビラゾリン一 5—オン、 1— ( 4—ヒ ドロキシフエニル) 一 3—フエ二ノレ一 2—ピラゾリン一 5—オン、 1一 (4—ヒ ドロキシメチルフエ二ノレ) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—ォ ン、
1一 (4—ァミノフエ二ル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、
1 - ( 4—メチルァミノフエニル) 一 3—メチルー 2—ピラゾリン一 5—オン、 1一 (4—ェチルァミノフエニル) 一 3 _メチル一 2—ピラゾリン一 5 _オン、 1 一 ( 4 _ブチルアミノフヱニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、 1 _ ( 4—ジメチルァミノフエニル)一 3—メチル一 2—ピラゾリン _ 5—オン、 1 - (ァセトアミ ドフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン、 1 - ( 4—シァノフエニル) 一 3—メチル一 2—ピラゾリン一 5—オン。
本発明の医薬の有効成分としては、 式 ( I ) で表される遊離形態の化合物のほ 力、 薬学的に許容される塩を用いてもよい。 薬学的に許容される塩としては、 塩 酸、 硫酸、 臭化水素塩、 リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、 p—トルェ ンスルホン酸、 ベンゼンスルホン酸、 酢酸、 グリコーノレ酸、 グルクロン酸、 マレ イン酸、 フマル酸、 シユウ酸、 ァスコルビン酸、 クェン酸、 サリチル酸、 ニコチ ン酸、酒石酸等の有機酸との塩;ナトリゥム、力リゥム等のアルカリ金属との塩; マグネシウム、 カルシウム等のアル力リ土類金属との塩;アンモニア、 トリス (ヒ
ドロキシメチル) ァミノメタン、 N, N—ビス (ヒ ドロキシェチル) ピぺラジン、 2—アミノー 2—メチノレー 1—プロパノール、エタノーノレアミン、 N—メチノレグノレ タミン、 L一グルタミン等のァミンとの塩が挙げられる。 また、 グリシンなどのァ ミノ酸の塩を用いてもよい。
本発明の医薬の有効成分としては、 上記式 (I ) で表される化合物又は薬学的 に許容される塩の水和物又は溶媒和物を用いてもよい。 溶媒和物を形成する有機 溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、 メタノール、エタノール、エーテル、 、クオキサン、テトラヒドロフランなどを例示することができる。また、上記式( I ) で表される化合物は、置換基の種類により 1以上の不斉炭素を有する場合があり、 光学異性体又はジァステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合ある。 本発 明の医薬の有効成分としては、 純粋な形態の立体異性体、 立体異性体の任意の混 合物、 ラセミ体などを用いてもよレ、。
式 ( I ) で表される化合物はいずれも公知の化合物あり、 特公平 5— 3 1 5 2 3号公報などに記載された方法により当業者が容易に合成できる。
本発明の医薬の投与量は特に限定されないが、通常は、 有効成分である式(I ) で示される化合物の重量として一般に経口投与の場合には一日あたり .0. 1〜 1000mg/kg, 好ましくは一日あたり 0. 5〜50mg/kgであり、 非経口投与の場合には 一日あたり 0. 01〜100mg/kg、 好ましくは 0. l〜10mg/kgである。 上記投与量は 1 日 1回又は 2〜3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜 増減してもよい。
本発明の医薬としては、 上記一般式 (I ) で表される化合物及び薬学的に許容 されるその塩、 並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ば れる物質をそのまま投与してもよいが、 一般的には、 有効成分である上記の物質 と製剤用添加物とを含む医薬組成物を調製して投与することが好ましい。
固体状の製剤用添加物の例としては、 乳糖、 白陶土 (カオリ ン)、 ショ糖、 結晶 セノレロース、 コーンスターチ、 タノレク、 寒天、 ぺクチン、 アカシア、 ステアリン 酸、 ステアリン酸マグネシウム、 レシチン、 塩化ナトリウム等が挙げられる。 液
状の製剤用添加物の例としては、 シロップ、 グリセリン、 落花生油、 ポリビニル ピロリ ドン、 ォリーブ油、 エタノーノレ、 ペンジノレア コー^/、 プロピレングリコ ール、 水等が挙げられる。
本発明の医薬の形態は特に限定されず、 当業者に利用可能な種々の形態をとる ことができる。
経口投与に適する医薬として、 例えば、 固体の製剤用添加物を用いて錠剤、 散 剤、 顆粒剤、 硬ゼラチンカプセル剤、 坐剤、 又はトローチ剤などを調製すること ができ、 液状の製剤用添加物を用いてシロップ剤、 乳剤、 軟ゼラチンカプセル剤 などを調製することができる。 また、 非経口投与に適する医薬として、 注射剤、 点滴剤、吸入剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などを調製することができる。 本発明の医薬は、 糖尿病に伴う心臓疾患の予防及び 又は治療に有効である。 糖尿病に伴う心臓疾患としては、 代表的には糖尿病に起因する心筋症、 具体的に は糖尿病に起因する肥大型(閉塞性及び非閉塞性)心筋症、拡張型心筋症のほか、 糖尿病に起因する心不全、 心筋梗塞、 狭心症、 及び不整脈などが挙げられる。 心筋症は、 心臓の下側の部屋 (心室) の筋肉の壁の構造が変化したり、 その機 能が低下したりする進行性の疾患である。 心筋症は、 多くの既知の病気によって 惹き起こされることもあるが、 特定できる原因がないこともある。 拡張型うつ血 性心筋症は、 心室は拡大するが、 身体が必要とするだけの血液を拍出することが できないために心不全に至る一群の心疾患である。 肥大型心筋症は、 心室の壁が 厚くなる一群の心疾患である。 通常、 心筋の壁の肥厚はどれも仕事負荷の増加に 对する筋肉の反応である。 代表的な原因には、 高血圧、 大動脈弁の狭窄 (大動脈 弁狭窄)、血液が心臓から流出する際の抵抗を高める他の疾患などがある。糖尿病 性心筋症は、 糖尿病患者において心筋の微小循環障害や心筋細胞内の代謝障害等 により惹き起こされる疾患である。
なお、 本明細書において 「糖尿病に起因する心筋症 (又は糖尿病性心筋症)」 の 用語は、 糖尿病によって起こる二次性の心筋症を意味しており、 糖尿病以外に原 因が判明しない心筋症として診断される疾患であり、 その判断基準はルブラーら
により明確にされている (Rubier, S. , et al. , Am. J. Cardiol. , 30, 595, 1972)。 また、病理学的にもフィッシヤーらにより判断基準が示されている(Fisher, V. W. , et al. , Diabetes, 28, 173, 1979)。 従って、 本発明の医薬の適用の適否はこれ らの判断基準により判断することができる。 実施例
以下、 本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、 本発明は下記の実施 例により限定されるものではない。
実施例 1 :
(実験方法) .
( 1 ) 被験動物
雄性 0LETFラット(n =25)及ぴそれらの糖尿病一耐性相同体、 LETO (Long- Evans Tokushima Otsuka)フット 、n =10) を用レヽ 7こ (Kawano, K. , Hirashiraa, T. , Mori, S. , et al. , Dabetes, 41, 1442-1428, 1992及び Yagi, K. , Kim, S. , Wanibuchi, H. , et al. , Hypertension, 29, 728-735, 1997)。 全ての動物は制御された室温 (20— 24°C) 及び湿度 (40— 70%) 下、 12時間の照射サイクルで特定の病原菌一 フリーな施設で飼育し、 標準実験ラット食 (MF、 Oriental Yeast, Tokyo, Japan) 及びタップ水を自由に与えた。 全ての手順は動物調査協会の指針に従った。
( 2 ) 実験手順
インスリン非依存型糖尿病を示す 30週齢の 10 匹の 0LETF ラット(Sato, T. , Asahi, Y., Toide, K. , Nakayama, Ν., Diabetologia, 38, 1033-1041, 1995)を 基礎対照 (n = 10) として麻酔下で屠殺した。 15匹の 0LETFラットを 2つの群に 分け、 エダラボン 15mg/kg又は溶媒のみを 2週間経口によって一日 2回与えた。 対照の LET0ラットを含む全ての動物において、 2 Fマイクロ—チップカテーテル を用いる心カテーテルによる血行動態測定、 血糖及び酸化的ストレスのマーカー としてチォバルビタール酸反応物質 (TBARS)の測定のために血液採取した後、 心 臓を麻酔下で切り出した。左心室の部分を光顕微鏡研究のために 10%ホルムアル
デヒ ド中で固定し、 そして心臓の残りを電子顕微鏡研究のために 0. 25%グルタ ルアルデヒ ド及び 4. 5%スクロースを含む 4%パラホルムアルデヒ ド中で固定し た (Hayashi, T. , James, ΤΝ· , Am. Heart J., 129, 946—959, 1995)。
( 3 ) 免疫組織化学
免疫組織化学的光顕微鏡研究のために、 更なる切片をパラフィンプロックから 得た。 切片をヘム—ォキシナーゼ (H0) _1 (sc— 1797, Santa Cruz Biotechlonogy, Inc. U. K. )に対するポリクローナル抗体といっしょに 4°Cで終夜インキュベート した。 第二抗体とのインキュベーション後、 切片を Vectastain El ite ABC試薬 (Vector Laboratories, Burlingame, CA)と反応させ、 その後ノ ーォキシダーゼ 基 質溶液 ( Vectastain 3' 3' -diaminobenzidine substrate kit, Vector Laboratories, Burlingame, CA)と反応させた(Hayashi, T. , Ijiri, Υ. , Toko, Η. , et al. , Eur. Heart J. , 21, 296-305, 2000)。
( 4 ) 統計学的分析
全ての結果は平均土標準偏差 (SD) として表し、 統計学的分析を 1 一ウェイ AN0VAによって行った。顕著な違いが認識されたとき、 Scheffeの多重範囲テスト を用いて有意差のレベルを決定した。 p < 0 . 0 5のとき統計学的に有意差あり と判定した。
(実験結果)
各測定事項の結果を表 1に示す。
LETO OLETF (B) OLETF (V) OLETF (Ed) 心重量 (g) 1.2土0.1 1· 7±0.2* 1.6±0.1* 1.4±0.1## 体重 (g) 479 ±25 543±51 571土 56* 540 ±49 心拍数 (bpm) 381 ±65 240 ±10* 254±53* 225 ±15* 左心室収縮期圧(mmHg) 97±5 118±6* 114±6* 117±7* 左心室末端拡張期圧 (mmHg) 6±2 9±2 12±3* 12土 2* 最大陽性 dP/dt (隱 Hg/sec) 3554±70 4333±416 3083±348# 3900 ±258* 最大陰性 dP/dt (mmHg/sec) 3522±265 3733±305 2483±282*# 3275±457## 心筋細胞横径 (j m) 17.6±1.0 19.9土 0.5* 23.1±1.4*# 16.2±0.9## 血糖 (mg/dl) 128±52 264±46* 352±71*# 358±35*
TBARS (nM/ml) 2.8±0.6 3·3±0·4 6.9 ±2.5*# 3.8士 0.5##
B:ベース (30週齢)、 V: ビ-一クル、 Ed:エダラボン
* : ρく 0.05 対 LET0
# : ρく 0.05 対 OLETF (B)
##: p<0.05 対 OLETF (V)
(1) 心重量、 体重、 心筋細胞平均横径、 血糖及び TBARS
表 1に示されるように、 30週齢の 0LETFは LET0 (対照; n=10) に比べて心重 量が顕著に増加し、 32週齢の 0LETFは体重も顕著に増加した。 32週齢の 0LETF の心重量は 30週齢の 0LETFとほぼ変わらなかつた。
30週齢の 0LETFは LET0に比較して血糖 (BS; 264±46対 128±5211^ノ(11)、 心 筋細胞の平均横径 (19. 9±0. 5対 17. 6±1. 0 μ m) がともに増加したが、 血漿 中のチォバルビタール酸反応物質 (TBARS; 3. 3±0. 4対 2. 8±0. 6 nM/ml) はほぼ同じであった。 32週齢の 0LETFは 30週齢の 0LETFに比べて血糖、 TBARS、 心筋細胞の平均横径が増加した。 エダラボンによる処理で血糖の増加は抑制され なかったが、 TBARSの増加、 心筋細胞の肥大は顕著に抑制された。
(2) 血行動態データ (心拍数、 左心室 (LV)収縮期圧、 LV 末端一拡張期圧、 ピ ークのポジティブ及びネガティブ dP/dt)
表 1に示されるように、 30週齢の 0LETFは LET0に比べて左心室 (LV)収縮期圧 が増加し、 心拍数は顕著に減少した。 32週齢の 0LETF は LV末端—拡張期圧も増 加したが、 ピークのポジティブ及ぴネガティブ dPZdtは顕著に減少した。ェダラ ボンによる処理でピークのポジティブ及びネガティブ dP/dt の低下は抑制され たが、 LV収縮期圧及び末端一拡張期圧は何ら変化がなかつた。
( 3 ) 光及び電子顕微鏡的研究
LET0及び 0LETF (32週齢)の心筋細胞の微細構造及び H0— 1に対する免疫反応 性試験の光顕微鏡写真を第 1図に示す。
LET0は正常な形態を示し (第 1図 A)、 HO- 1は検出されなかった (第 1図 D )。 32週齢の OLETFでは心筋細胞肥大、 筋線維の錯綜配列、 筋原線維の疎少化、 及び 血管周囲の線維化が観察された (第 1図 B )。 H0-1は OLETFでは顕著に増加した (第 1図 E )。これらの変化はエダラボンによって抑制された(第 1図 C及び F )。
LET0及び 0LETF (30週齢、 32週齢) の心筋細胞微細構造の電子顕微鏡写真を 第 2図に示す。
LET0は正常な形態を示した (第 2図 A)。 30週齢の OLETFでは肥厚した毛管血 管の基底膜、間質の線維化が観察されたが筋原線維の変性所見は軽度であった(第 2図 B )。 32週齢の 0LETF は筋線維融解、 空胞形成、 及び異常形状のミ トコンド リアが観察された(第 2図 C )。エダラボンは間質の線維化に対し何ら顕著な改善 効果は示さなかったが、 微細構造を保護した (第 2図 D )。
( 4 ) 免疫組織化学
H0- 1に対する免疫反応性は 32週齢の 0LETFラットで顕著に增加したが、 それ はエダラボン投与の 0LETFラットでは減少する傾向にあった (第 1図)。 産業上の利用可能性
本発明の医薬は糖尿病に起因する心筋症の予防及び/又は治療に有用である。 特に、本発明の医薬は糖尿病に伴って発生する左心室 (LV)機能の低下、 心筋細胞 の肥大などの心異常を顕著に抑制することができる。