明 細 書 熱線反射着色膜被覆ガラスとその製造方法 技術分野
本発明は、 熱線反射着色膜被覆ガラスとその製造方法に関する。 背景技術
近年、 自動車等の車両等の冷房効率を上げるための一手段として、 日射ェネル ギー透過率 (直接透過するエネルギーと入射する太陽エネルギーとの比) の低い 熱線反射ガラスが採用されるようになってきている。 日射エネルギ一透過率を低 くする方法としては、 着色ガラスを用いる方法と、 透明なソーダライムガラスや 透過率の高い着色ガラスに熱線反射能に優れた着色膜を被覆する方法があるが、 ガラスのリサイクル性と熱線反射能という点では後者の方が望ましい。
そのような熱線反射着色膜被覆ガラスにおいて求められることとしては、 日射 ェネルギ一透過率が低いこと、 可視光透過率が日射ェネルギ一透過率に比して高 いこと、 車雨用等としての十分な耐久性があること、 車両等のデザインを損なわ ない色調を持つこと、 シート抵抗が高いこと等が挙げられる。 これらの要求を満 たす熱線反射着色膜被覆ガラスとしては、 コバルト酸化物を主成分とし、 鉄を 1 0質量 6以上 (総金属量に対する割合、 以下も同様) 、 クロムを 5質量%以上含 有する酸化物膜をスプレー法により 1 0〜5 0 n mの厚さで成膜したガラスが知 られている。
しかし、 そのようなガラスは、 膜厚、 組成等のムラが多く、 歩留まりが悪いと いう問題があった。
コパルト酸化物を主成分とし、 鉄酸ィヒ物を 5質量%以上含有する膜を成膜した ガラスをスパッタリング法により得ることは文献的には知られている。 例えば、 特開平 9一 3 0 8 3 7号公報には、 コバルト : 6 5〜 9 6質量0 /0、 クロム : 2〜 2 5質量%、 鉄: 2〜3 3質量%の金属組成でこれらの酸ィヒ物の被膜を形成した
熱線反射ガラスが記載されており、 該被膜を形成する方法としてスパッタリング 法が挙げられている。
しかし、 成膜速度が従来法より飛躍的に速く、 膜厚および組成が均一な膜を大 量生産するのに適し、 かつ現在工業的に利用されているスパッタリング法である マグネトロンスパッタリング法においては、 コバルトおよび鉄からなる合金ター ゲッ トは強磁性体であるため、 マグネトロンの磁束がターゲッ ト表面に形成され なくなるので、 実質的に用いることができない。 上記公報においても、 スパッタ リング法についての具体的記載はなく、 スプレー法のみが具体的に記載されてい る。
また、 以前より、 自動車の窓ガラスの周辺部や中央部にセラミックカラー組成 物をペースト化したセラミックペーストをスクリーン印刷し、 乾燥し、 曲げ加工 工程において焼き付けることが行われている。 このセラミックカラーペーストは 、 ガラス周辺部等に焼き付けて着色不透明層を形成することにより、 接着剤の紫 外線による劣化を防止し、 また、 接着部を車外より透視できないようにするため に用いられる。 このようなセラミックカラー組成物としては、 ガラスフリッ トに 耐熱性着色顔料を混ぜたものが知られており、 通常、 黒色またはダークグレー色 の色調を呈している。 このようなものは、 黒セラミック塗料と称される。
し力 し、 従来のコバルト酸化物を主成分とし、 鉄を 1 0質量%以上、 クロムを 5質量%以上含有する酸ィ匕物膜をスプレー法により成膜したガラスに、 そのよう なセラミックカラーペーストをプリントすると、 白つぼくなり発色が、不良となる という問題があった。
さらに、 自動車のリアガラス等として用いる場合、 くもり防止のために発熱材 料である銀ペーストを線状に印刷焼成する、 いわゆる銀プリントが行われるが、 従来のコバルト酸ィヒ物を主成分とし、 鉄を 1 0質量%以上、 クロムを 5質量%以 上含有する酸化物膜をスプレー法により成膜したガラスは、 この銀プリントの発 色が悪い (例えば、 だいだい色に究色する) という問題もあった。
したがって、 上記熱線反射着色膜被覆ガラスは、 現実には、 マグネトロンスパ ッタリング法を用いて製造できるものではなく、 また上述したスプレー法で製造
する場合のムラの発生、 セラミックカラープリントにおける白つぼくなる発色不 良、 銀プリント発色の悪さという問題は、 解消されていない。
本発明は、 スパッタリング法により製造することができ、 膜厚および組成の均 一性に優れ、 熱線反射能に優れる熱線反射着色膜被覆ガラスとその製造方法を提 供することを目的とする。
また、 本発明は、 膜厚および組成の均一性に優れ、 セラミックカラープリント において白つぼくなる発色不良を 生させず、 銀プリント発色にも優れる熱線反 射着色膜被覆ガラスとその製造方法を提供することを目的とする。 発明の開示
本発明者は、 鋭意研究の結果、 1 ) ガラス基板と、 該ガラス基板の一方の側に スパッタリング法により順に積層してなる、 特定の第一層と、 特定の第二層とを 備える熱線反射着色膜被覆ガラスは、 膜厚および組成の均一性に優れ、 熱線反射 能に優れること、 また、 2 ) 該熱線反射着色膜被覆ガラスを熱処理することによ り得られる熱線反射着色膜被覆ガラスは、 日射エネルギー透過率が低いこと、 可 視光透過率が日射エネルギー透過率に比して高いこと、 車雨用等としての十分な 耐久性があること、 車両等のデザインを損なわない色調を持つこと、 シート抵抗 が高いこと等の基本的な要求特性を満たすだけでなく、 膜厚およぴ組成の均一性 に優れ、 セラミックカラープリントにおいて白っぽくなる発色不良を発生させず 、 銀プリント発色にも優れることを見出し、 本発明を完成した。
本発明は、 ガラス基板と、 該ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により 順に積層してなる、 鉄酸化物を含有する第一層と、 コバルト酸化物を含有する第 二層とを備える熱線反射着色膜被覆ガラスであって、
該第一層は、 総金属量に対する鉄の量が、 6 0質量%以上でぁり、
該第二層は、 総金属量に対するコバルトの量が、 6 0質量%以上であることを 特徴とする熱線反射着色膜被覆ガラス (以下 「熱線反射着色膜被覆ガラス A」 と もいう。 ) を提供する。
また、 本発明は、 ガラス基板と、 該ガラス基板の一方の側にスパッタリング法
により順に積層してなる、 コバルト酸化物を含有する第一層と、 鉄酸化物を含有 する第二層とを備える熱線反射着色膜被覆ガラスであって、
該第一層は、 総金属量に対するコバルトの量が、 6 0質量%以上であり、 該第二層は、 総金属量に対する鉄の量が、 6 0質量%以上であることを特徴と する熱線反射着色膜被覆ガラス (以下 「熱線反射着色膜被覆ガラス B」 ともいう
。 ) を提供する。
さらに、 本発明は、 ガラス基板と、 該ガラス基板の一方の側にスパッタリング 法により順に積層してなる、 鉄酸ィ匕物とクロム酸ィヒ物とニッケル酸ィ匕物とを含有 する第一層と、 コノ ルト酸化物を含有する第二層とを備える熱線反射着色膜被覆 ガラスであって、
該第一層は、 総金属量に対する鉄、 クロムおょぴニッケルの量が、
鉄 : 6 0質量%以上 8 5質量%以下、
クロム : 1 0質量%以上 2 8質量%以下、
ニッケル: 5質量%以上 2 質量%以下
であり、
該第二層は、 総金属量に対するコノ ルトの量が、 6 0質量%以上であることを 特徴とする熱線反射着色膜被覆ガラス (以下 「熱線反射着色膜被覆ガラス C」 と もいう。 ) を提供する。
さらに、 本発明は、 ガラス基板と、 該ガラス基板の一方の側にスパッタリング 法により順に積層してなる、 コバルト酸化物を含有する第一層と、 鉄酸化物とク ロム酸化物とニッケル酸化物とを含有する第二層とを備える熱線反射着色膜被覆 ガラスであって、
該第一層は、 総金属量に対する.コパルトの量が、 6 0質量%以上であり、 該第二層は、 総金属量に対する鉄、 クロムおよびニッケルの量が、
鉄 : 6 0質量%以上 8 5質量%以下、
クロム : 1 0質量%以上 2 8質量%以下、
ニッケル: 5質量%以上 2 4質量%以下
であることを特徴とする熱線反射着色膜被覆ガラス (以下 「熱線反射着色膜被覆
ガラス D」 ともいう。 ) を提供する。
さらに、 本発明は、 ガラス基板の一方の表面上に、 鉄酸化物を含有する金属酸 化物ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、 第一層を積層する工程 と、 ■
寒第一層の上に、 コバルトを含有す-る金属ターゲッ トを用い、 酸ィヒ性ガスを含 有するスパックガス雰囲気でスパッタリングすることにより、 または、 コバルト 酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲッ トを用い、 酸ィ匕性ガスを含有しないスパッ タガス雰囲気もしくは酸ィ匕性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリン グすることにより、 第二層を積層する工程と
を含む上記熱線反射着色膜被覆ガラス Aの製造方法を提供する。
さらに、 本発明は、 ガラス基板の一方の表面上に、 コバルトを含有する金属タ ーゲッ トを用い、 酸ィ匕性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングす ることにより、 または、 コバルト酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲッ トを用い 、 酸化性ガスを含有しないスノ、。ッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するス パックガス雰囲気でスパッタリングすることにより、 第一層を積層する工程と、 該第一層の上に、 鉄酸化物を含有する金属酸化物ターゲッ トを用いてスパッタリ ングすることにより、 第二層を積層する工程と
を含む上記熱線反射着色膜被覆ガラス Bの製造方法を提供する。
さらに、 本発明は、 ガラス基板の一方の表面上に、 鉄とクロムとニッケルとを 成分として含有する金属ターゲッ トを用い、 酸化性ガスを含有するスパッタガス 雰囲気中でスパッタリングすることにより、 第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、 コバルトを含有する金属ターゲッ トを用い、 酸化性ガスを含 有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、 または、 コバルト 酸ィ匕物を含有する金属酸化物ターゲッ トを用い、 酸化性ガスを含有しないスパッ タガス雰囲気もしくは酸ィヒ性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリン グすることにより、 第二層を積層する工程と
を含む上記熱線反射着色膜被覆ガラス Cの製造方法を提供する。
さらに、 本発明は、 ガラス基板の一方の表面上に、 コバルトを含有する金属タ
ーゲットを用い、 酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングす ることにより、 または、 コバルト酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲッ トを用い 、 酸ィ匕性ガスを含有しないスパッタガス雰囲気もしくは酸ィ匕性ガスを含有するス パッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、 第一層を積層する工程と、 該第一層の上に、 鉄とクロムとニッケルとを成分として含有する金属ターゲッ ト を用い、 酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気中でスパッ夕リングすること により、 第二層を積層する工程と
を含む上記熱線反射着色膜被覆ガラス Dの製造方法を提供する。
さらに、 本発明は、 上記熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cまたは Dを熱処 理することにより得られる熱線反射着色膜被覆ガラス (以下 「熱線反射着色膜被 覆ガラス E」 ともいう。 ) を提供する。
前記熱線反射着色膜被覆ガラス Eは、 膜被覆面の表面シ ト抵抗が、 1 05 Ω /[11以上であるのが好ましい。
前記熱線反身ォ着色膜被覆ガラス Eは、 可視光透過率が 2 0〜4 0 96であり、 膜 被覆面およぴ他方の面の可視光反射率がそれぞれ 2 0〜 4 0 %および 1 0〜 2 5 %であるのが好ましい。
さらに、 本発明は、 上記のいずれかの製造方法により得られる熱線反射着色膜 被覆ガラス A、 B、 Cまたは Dに、 セラミックカラーペーストおよび Zまたは銀 ペーストを塗布する工程と、
その後、 熱処理を行う工程と
を含む前記熱線反射着色膜被覆ガラス Eの製造方法を提供する。 発明を実施するための最良の形態
以下に、 本発明を詳細に説明する。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cおよび Dは、 いずれも、 ガラス 基板と、 該ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により順に積層してなる、 所定の第一層と、 所定の第二層とを備える熱線反射着色膜被覆ガラスである。 以 下、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cおよび Dについて説明する。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cおよび Dに用いられるガラス基 板は、 特に限定されず、 一般に広く用いられている無色透明なソーダライムガラ ス、 グリーン、 ブロンズ、 グレー等に着色された熱線吸収ガラスや、 熱線吸収' 紫外線吸収性を有するガラス等を用いることができる。
熱線反射着色膜被覆ガラス Aの第一層は、 鉄酸化物を含有する。 本発明におい ては、 下記組成の範囲内であれば、 鉄酸化物の他に、 クロム酸化物、 ニッケル酸 化物、 ニオブ酸化物、 モリブデン酸化物、 マンガン酸化物、 シリコン酸化物、 銅 酸化物、 バナジウム酸化物、 亜鉛酸化物、 ジルコニウム酸ィヒ物、 炭素等を含有す ることができる。
熱線反射着色膜被覆ガラス Aの第一層は、 総金属量に対する鉄の量が、 6 0質 量%以上である。 上限値は特に限定されず 1 0 0 %以下で用いられる。 また、 日 射エネルギ ^透過率低減の観点から、 9 0 %以上、 特に 9 7 %以上で用いられる ことが好ましい。
熱線反射着色膜被覆ガラス Aの第一層の厚さは、 所望の光学特性に応じて選択 することができる。 例えば、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスの可視光透過率 を 2 0〜 4 0 %とし、 膜被覆面および他方の面の可視光反射率をそれぞれ 2 0〜 4 0 %および 1 0〜2 5 %とする場合には、 第一層の厚さを 3〜 1 5 n mとする のが好ましい。
熱線反射着色膜被覆ガラス Aの第二層は、 コバルト酸ィヒ物を含有する。 本発明 においては、 下記組成の範囲内であれば、 コバルト酸ィ匕物の他に、 ニオブ酸^ (匕物 、 モリブデン酸ィ匕物、 マンガン酸化物、 シリコン酸ィ匕物、 銅酸化物、 バナジウム 酸化物、 亜鉛酸化物、 ジルコニウム酸ィヒ物、 炭素等を含有することができる。 熱線反射着色膜被覆ガラス Aの第二層は、 総金属量に対するコバルトの量が、 6 0質量%以上である。 上限値は特に限定されず 1 0 0 %以下で用いられる。 ま た、 日射エネルギー透過率低減の観点から、 9 0 %以上、 特に 9 7 %以上で用い られることが好ましい。
熱線反射着色膜被覆ガラス Aの第二層の厚さは、 所望の光学特性に応じて選択 することができる。 例えば、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスの可視光透過率
を 2 0〜 4 0 %とし、 膜被覆面および他方の面の可視光反射率をそれぞれ 2 0〜 4 0 %および 1 0〜2 5 %とする場合には、 第二層の厚さを 1 0〜 5 0 n mとす るのが好ましい。
熱線反射着色膜被覆ガラス Bの第一層は、 組成、 好適な厚さ等について、 前記 熱線反射着色膜被覆ガラス Aの第二層と同様である。
熱線反射着色膜被覆ガラス Bの第二層は、 組成、 好適な厚さ等について、 前記 熱線反射着色膜被覆ガラス Aの第一層と同様である。
熱線反射着色膜被覆ガラス Cの第一層は、 鉄酸化物とクロム酸化物とニッケル 酸化物とを含有する。 本発明においては、 下記組成の範囲内であれば、 これらの 酸化物の他に、 ニオブ酸化物、 モリブデン酸化物、 マンガン酸ィヒ物、 シリコン酸 化物、 銅酸化物、 バナジウム酸化物、 亜鉛酸化物、 ジルコニウム酸化物、 炭素等 を含有することができる。
熱線反射着色膜被覆ガラス Cの第一層は、 マグネトロンスパッタリング法によ る成膜のし易さと熱線反射性能の観点から、 総金属量に対する鉄、 クロムおょぴ ニッケルの量が、 鉄: 6 0質量%以上 8 5質量%以下、 クロム : 1 0質量 6以上 2 8質量%以下、 ニッケル: 5質量%以上 2 4質量%以下である。
熱線反射着色膜被覆ガラス Cの第一層の厚さは、 所望の光学特性に応じて選択 することができる。例えば、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスの可視光透過率 を 2 0〜 4 0 %とし、 膜被覆面および他方の面の可視光反射率をそれぞれ 2 0〜 4 0 %および 1 0〜 2 5 %とする場合には、 第一層の厚さを 3〜 1 5 n mとする のが好ましい。
熱線反射着色膜被覆ガラス Cの第二層は、 組成、 好適な厚さ等について、 前記 熱線反射着色膜被覆ガラス Aの第二層と同様である。
熱線反射着色膜被覆ガラス Dの第一層は、 組成、 好適な厚さ等について、 前記 熱線反射着色膜被覆ガラス Cの第二層と同様である。
熱線反射着色膜被覆ガラス Dの第二層は、 組成、 好適な厚さ等について、 前記 熱線反射着色膜被覆ガラス Cの第一層と同様である。
なお、 本発明においては、 耐久性を向上させたり、 反射率を変化させる等の目
的で、 第二層の上、 第一層とガラス基板との間、 または熱線反射着色膜の被覆面 とは反対側の面に、 該目的を達成する機能層を設けることができる。
該機能層としては、 シリコン、 チタン、 亜鉛、 錫、 銅、 ジルコニウム、 マンガ ン、 ニオブおよびアルミニウムからなる群から選ばれる 1種以上の元素や、 該元 素の酸化物や窒化物からなる層が挙げられる。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスは、 スパッタリング法で成膜可能な膜構成 であるので、 膜厚およぴ組成の均一性に優れている。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cおよび Dの製造方法は、 前記第 —層および前記第二層を前記ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により順 に積層すればよいが、 特に以下のようにするのが、 従来公知のスパッタリングタ 一ゲッ トを用いることができる点で好ましい。 なお、 以下の製造方法は、 好適な 具体例の一つであり、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cおよび Dの 製造方法はこれに限定されるものではない。
( 1 ) 熱線反射着色膜被覆ガラス Aの場合
ガラス基板の一方の表面上に、 鉄酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲッ トを用 いてスパッタリングすることにより、 第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、 コバルトを含有する金属ターゲッ トを用い、 酸化性ガスを含 有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、 または、 コバルト 酸化物を含有する金属酸化物ターゲッ トを用い、 酸化性ガスを含有しないスパッ 夕ガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリン グすることにより、 第二層を積層する工程と
を含む方法により、 熱線反射着色膜被覆ガラス Aを製造する。
第一層を積層する工程に用いられる金属酸化物ターゲッ トは、 鉄酸化物を含有 するものを用いる。 特に、 第一層の組成を上記のようにするためには、 鉄酸化物 を、 総金属量に対する鉄量で 6 0〜: L 0 0質量%含有するものが好ましい。 スパックガスは、 酸化性ガスを含有しないものを用いてもよく、 酸化性ガスを 含有するものを用いてもよい。
酸化性ガスを含有しないスパッタガスは、 例えば、 ヘリウム、 ネオン、 ァルゴ
ン、 クリプトン、 キセノン等の不活性ガスが挙げられる。 中でも、 経済性おょぴ 放電のしゃすさの点から、 アルゴンが好ましい。 これらは、 単独でまたは 2種以 上を混合して用いられる。
酸化性ガスは、 例えば、 酸素、 オゾンが挙げられ、 酸素とオゾンとの混合ガス でもよい。 酸ィ匕性ガスを含有するスパッタガスとして、 酸化性ガスおよび上述の 不活性ガスの混合ガスを用いることもできる。
スパッタリングには、 通常、 成膜速度等に優れるマグネト口ンスパッタリング 装置が用いられるが、 磁界を使用しないタイプのスパッタリング装置を用いるこ ともできる。
また、 電源には、 直流電源、 パルス波状に電力を印可する電源、 交流電源、 高 周波電源のいずれも用いることができる。
第二層を積層する工程に用いられるターゲッ トは、 コバルトを含有する金属タ ーゲット、 または、 コバルト酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲッ トを用いる。 特に、 第二層の組成を上記のようにするためには、 コバルトを含有する金属ター ゲッ トを用いる場合は、 コバルトを 6 0〜 1 0 0質量0 /0含有するものが好ましく 、 コバルト酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲッ トを用いる場合は、 コバルト酸 化物を、 総金属量に対するコノ ルト量で 6 0〜 1 0 0質量0 /0含有するものが好ま しい。
スパッタガスは、 コノ ルトを含有'する金属ターゲッ トを用いる場合は、 酸化性 ガスを含有するものを用いる。 酸ィ匕性ガスについては、 上述したものを用いるこ とができる。
また、 スパッタガスは、 コバルト酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲットを用 いる場合は、 酸化性ガスを含有しないものを用いてもよく、 酸化性ガスを含有す るものを用いてもよい。 これらも、 上述したものを用いることができる。
いずれのターゲットを用いる場合においても、 酸化性ガスと不活性ガスとの混 合ガス等を用いることができる。
スパッタリング装置は、 第一層を積層する工程の場合と同様である。
( 2 ) 熱線反射着色膜被覆ガラス Bの場合
ガラス基板の一方の表面上に、 コバルトを含有する金属ターゲットを用い、 酸 化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、 また は、 コバルト酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲッ トを用い、 酸化性ガスを含有 しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気で スパッタリングすることにより、 第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、 鉄酸化物を含有する金属酸化物ターゲッ トを用いてスパッタ リングすることにより、 第二層を積層する工程と
を含む方法により、 熱線反射着色膜被覆ガラス Bを製造する。
第一層を積層する工程に用いられる金属ターゲッ ト、 スパッタガスおよぴスパ ッタリング装置は、 (1 ) の第二層の場合と同様である。
第二層を積層する工程に用いられる金属ターゲッ ト、 スパッタガスおよぴスパ ッタリング装置は、 (1 ) の第一層の場合と同様である。
( 3 ) 熱線反射着色膜被覆ガラス。の場合
ガラス基板の一方の表面上に、 鉄とクロムとニッケルとを成分として含有する 金属ターゲットを用い、 酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気中でスパッタ リングすることにより、 第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、 コバルトを含有する金属ターゲッ トを用い、 酸化性ガスを含 有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、 または、 コバルト 酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲットを用い、 酸化性ガスを含有しないスパッ タガス雰囲気もしくは酸ィ匕性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリン グすることにより、 第二層を積層する工程と
を含む方法により、 熱線反射着色膜被覆ガラス Cを製造する。
第一層を積層する工程に用いられる金属ターゲッ トは、 構成、 構造が特に限定 されず、 鉄、 クロムおよびニッケルのうち、 2以上の金属が一つの結晶相を形成 していてもよく、 固溶体となっていてもよく、 また、 前記の 2以上の金属の結晶 相または非晶相が混在していてもよく、 さらには前記の 2以上の金属の塊がそれ ぞれ別個に存在していてもよい。 本発明においては、 放電の観点から金属ターゲ ッ トとして、 鉄とクロムとニッケルとを成分として含有する金属ターゲッ トを用
いる。 特に、 第一層の組成を上記のようにするために、
鉄 : 6 3〜 7 8質量%
クロム : 1 6〜2 4質量0 /0
ニッケル: 6〜1 3質量0 /0
という組成であるものが好ましい。 例えば、 非磁性ステンレス、 より具体的には 、 J I S G 4 3 0 4—1 9 8 7に規定されているオーステナイ ト系の非磁性ス テンレスが挙げられる。 中でも、 S U S 3 0 4が好ましい。
第二層を積層する工程に用いられるターゲッ トの好ましい例としては、 C o夕 ーゲッ トゃ C o 3 0 4ターゲッ トが'挙げられる。
スパッタガスは、 酸化性ガスを含有するものを用いる。 酸化性ガスについては 、 上述した通りである。 また、 酸ィヒ性ガスと不活性ガスとの混合ガスを用いるこ とができる。
スパッタリングに用いられる装置は、 (1 ) の第一層の場合と同様である。 第二層を積層する工程は、 (1 ) の場合と同様である。
( 4 ) 熱線反射着色膜被覆ガラス Dの場合
ガラス基板の一方の表面上に、 コバルトを含有する金属ターゲッ トを用い、 酸 化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパツタリングすることにより、 また は、 コバルト酸ィ匕物を含有する金属酸ィ匕物ターゲッ トを用い、 酸化性ガスを含有 しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気で スパッタリングすることにより、 第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、 鉄とクロムとニッケルとを成分として含有する金属ターゲッ トを用い、 酸ィ匕性ガスを含有するスパッタガス雰囲気中でスパッタリングするこ とにより、 第二層を積層する工程と
を含む方法により、 熱線反射着色膜被覆ガラス Dを製造する。
第一層を積層する工程に用いられる金属ターゲッ ト、 スパッタガスおよぴスパ ッタリング装置は、 (3 ) の第二層の場合と同様である。
第二層を積層する工程に用いられる金属タ ゲッ ト、 スパッタガスおよぴスパ ッタリング装置は、 (3 ) の第一層の場合と同様である。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cおよび Dは、 熱線反射能に優れ る。 具体的には、 日射エネルギー透過率が可視光透過率より小さいことが好まし く、 特に 4 0 %以下 (さらには 3 5 %以下) であるのが好ましい。
以上に説明したように、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cおよび Dは、 スパッタリング法により製造することができるので、 膜厚および組成の均 一性に優れる。 また、 優れた熱線反射能を発揮する。 さらに、 後述するように、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cおよび Dは、 本発明の熱線反射着 色膜被覆ガラス Eの製造に好適に用いられる。
つぎに、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eについて説明する。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスは、 前記熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B 、 Cまたは Dを熱処理することにより得られる。
熱処理により、 膜被覆面の表面シート抵抗が向上し、 膜被覆面の表面シート抵 抗が好ましくは 1 05 ΩΖ口以上となり、 電波透過性が向上する。 したがつて、 車両用、 建築用として好適に用いられる。
また、 熱処理により、 膜被覆面の可視光反射率が低下して、 好ましくは 2 0〜 4 0 96となり、 車両用として好適な値となる。
熱処理は、 特に限定されず、 所望の光学特性に応じて条件を変動させることが できる。 好適な具体例の一つとして、 酸素を含有する雰囲気 (例えば、 大気雰囲 気) の中で、 5 0 0〜7 0 0 °Cで 3〜5分間熱処理することが挙げられる。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eは、 自動車等の車両等に好適に用いられ る。 自動車の車両等に用いられるガラスは、 曲げ加工する場合、 大気雰囲気中で 、 6 3 0〜 6 9 0 °C以上で 3〜 7分間程度の熱処理を行う。 したがつて、 本発明 の熱線反射着色膜被覆ガラス; Eは、 熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cまたは Dを曲げ加工に供し、 その際の熱処理を利用することによって得ることもできる
また、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cまたは Dに、 黒セラミツ ク塗料等のセラミックカラーペーストによるプリントや、 銀プリントを施す場合
、 大気雰囲気中で、 6 3 0〜6 9 0 °C以上で 3〜 7分間程度の熱処理 (焼成) を
行う。 したがって、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eは、 熱線反射着色膜被 覆ガラス A B Cまたは Dにセラミックカラーペーストによるプリントや、 銀 プリントを施し、 その際の熱処理 (焼成) を利用することによって得ることもで きる。
さらには、 曲げ加工と、 セラミックカラーペーストによるプリントや銀プリン トとを同時に行い、 その際の熱処理を利用することもできる。
即ち、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eの製造方法としては、 上記の (1 ) (4 ) のいずれかの製造方法により得られる熱線反射着色膜被覆ガラス A B Cまたは Dに、 セラミックカラーペーストおよび/または銀ペーストを塗布 する工程と、
その後、 熱処理を行う工程と
を含む製造方法が好適に挙げられる。
セラミックカラーペーストおよび Zまたは銀ペーストの塗布は、 一般的な方法 により行うことができる。 例えば、 スクリーン印刷機を用いて、 スクリーン印刷 する方法が挙げられる。 セラミックカラーペーストおよぴ銀ペーストの両方を塗 布する場合には、 別々に塗布してもよいし、 同時に塗布してもよい。
熱処理の条件は、 これらを塗布しない場合と同様である。
セラミックカラーペーストとしては、 例えば、 結晶質ガラスフリツ ト (および または非晶質ガラスフリッ ト) 、 耐熱性着色顔料および耐火物フイラ を含む ものなどが挙げられる。 セラミックカラーペーストは、 例えば、 結晶質ガラスフ リット (および Zまたは非晶質ガラスフリッ ト) 、 耐熱性着色顔料および耐火物 フィラーを、 有機ビヒクルに均一に混合し、 塗布に適した粘度に調整して用いら "L ο
銀ペーストとしては、 銀の ί敷粒子とガラスフリットを、 有機ビヒクルに均一に 混合したものを、 塗布に適した粘度に調整して用いられる。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Εは、 熱線反射能に優れる。 具体的には、 日射エネルギー透過率が可視光透過率より小さいのが好ましく、 特に 4 0 %以下 (さらには 3 5 %以下) であるのが好ましい。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eは、 膜被覆面の表面シ一ト抵抗が 1 0 5 以上であるのが好ましい。 上記範囲であると、 自動車等の車両等において 、 ラジオ、 テレビ、 携帯電話、 自動車電話等の電波の透過性を十分に確保するこ とが'できる。
また、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eを自動車のリァガラスとして用い 、 アンテナを形成する場合等においては、 膜被覆面の表面シート抵抗が 1 06 Ω /□以上であるのが好ましい。 '
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eは、 可視光透過率が 2 0〜4 0 %であり 、 膜被覆面およぴ他方の面の可視光反射率がそれぞれ 2 0〜 4 0 %および 1 0〜 2 5 %であるのが、 好ましい値の一例である。 上記範囲であると、 自動車等の用 途において好適である。 - 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eは、 着色膜がスパッタリング法により成 膜されるので、 従来のスプレー法によるものと比べ、 膜厚および組成の均一性に 優れる。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eは、 理由は分かっていないが、 従来のコ バルト酸化物を主成分とし、 鉄を 1 0質量%以上、 クロムを 5質量 6以上含有す る酸ィ匕物膜をスプレー法により成膜したガラスとは異なり、 黒セラミック塗料等 のセラミックカラーペーストによるプリントを施した場合に、 白つぼくなり発色 が不良となることがない。
また、 本発明の熱線反射着色膜被覆 Eガラスは、 理由は分かっていないが、 従 来のコバルト酸ィヒ物を主成分とし、 鉄を 1 0質量%以上、 クロムを 5質量%以上 含有する酸ィ匕物膜をスプレー法により成膜したガラスとは異なり、 銀プリントの 発色に優れる。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eの用途は、 特に限定されない。 例えば、 自動車等の車両用や建築用の用途が挙げられる。
また、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスは、 合わせガラスゃ複層ガラスとし てもよい。
本発明の熱線反射着色膜被覆 Eガラスは、 基本的な要求特性を満たすだけでな
く、 膜厚おょぴ組成の均一性に優れ、 セラミックカラープリントにおいて白っぽ くなる発色不良を発生させず、 銀プリント発色にも優れるので、 各種用途に好適 に用いられる。
実施例
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、 本発明はこれらに限られ るものではない。
1. 熱線反射着色膜被覆ガラスの作製
(実施例 1 )
100mm角に切断した厚さ 3. 5 mmのグリーン着色ソーダライムガラスを 酸ィ匕セリウムの粉末と中性洗剤で洗浄した後、 純水とエタノールですすぎ、 基板 ガラスとした。 前記グリーン着色ソーダライムガラスの可視光透過率は 81. 6 96、 可視光反射率は 7. 4%、 日射透過率は 59. 5%、 日射反射率は 6. 2% であった。
この基板ガラスに、 直径 101. 6111111の? 60 (総金属量に対する鉄量: 9 9. 9質量0 /0) のスパッタリングターゲットを用いて、 直流マグネトロンスパッ タリング装置で、 A rガス圧 4. 8 X 10-1 P a、 投入電力 0. 3 kW、 成膜時 間 6秒間の条件で成膜を行い、 厚さ 6 nmの膜 (第一層) を作製した。
さらにその膜の上に、 直径 1 0 1. 6mmの C o3 04 (総金属量に対するコバ ルト量: 99. 9質量0 /0) のスパッタリングターゲッ トを用いて、 直流マグネト 口ンスパッタリング装置で、 A rガス圧 4 · 8 X 10"1 P a 投入電力 0. 3 k W、 成膜時間 147秒間の条件で成膜を行い、 厚さ 30 nmの膜 (第二層) を作 製し、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Aを得た。
つぎに、 セラミックカラーペーストおよび導電性銀ペーストをスクリーン印刷 に適した粘度に調節した後、 得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Aの膜被覆面に 、 セラミックカラーペーストをスクリーン印刷機により印刷し、 乾燥し、 ついで 、 導電性銀ペーストをスクリーン印刷機により印刷した。 120 °Cにて 10〜 1 5分間乾燥した後、 ベルト炉で、 大気雰囲気中、 約 1 5分間熱処理を行った。 5 00 以上で保持された時間は約 6分間、 最高温度 650 °Cで保持された時間は
約 3分間であった。 熱処理後、 放冷して、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス E を得た。
なお、 用いたセラミック力ラーペーストは、 非晶質ガラスフリット、 耐熱性着 色顔料および耐火物フイラ一を、 有機ビヒクルに均一に混合し、 塗布に適した粘 度に調整したものである。 また、 用いた導電性銀ペーストは、 銀の役 i粒子とガラ スフリッ トを、 有機ビヒクルに均一に混合したものを、 塗布に適した粘度に調整 したものである。
(実施例 2 )
第一層と第二層の成膜順序を逆にした以外は、 実施例 1と同様の方法により、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Bを得た。 第一層の厚さは 30 nm、 第二層 の厚さは 6 nmであった。
つぎに、 得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Bに対して実施例 1と同様の方法 により印刷、 熱処理した後、 放冷して、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eを 得た。
(実施例 3 )
1 00mm角に切断した厚さ 3, 5mmの実施例 1 と同じグリーン着色ソーダ ライムガラスを酸ィ匕セリウムの粉末と中性洗剤で洗诤した後、 純水とエタノール ですすぎ、 基板ガラスとした。
この基板ガラスに、 直径 1 52. 411101の31133 04ステンレス (鉄 74質 量%、 クロム 1 8質量0 /6、 ニッケル 8質量%) のスパッタリングターゲッ トを用 いて、 直流マグネト口ンスパッタリング装置で、 02 ガス圧 2. 6 X 1 0— 1 P a 、 投入電力 0. 5 kW、 成膜時間 3 0秒間の条件で成膜を行い、 厚さ 6 nmの膜 を作製した。
さらにその膜の上に、 直径 1 52. 4mm、 厚さ 3mmのコバルト (コノ レト 99. 9質量%) のスパッタリングターゲットを用いて、 直流マグネトロンスパ ッタリング装置で、 02 ガス圧 2. 6 X 1 0— 1 P a、 投入電力 0. 5 kW、 成膜 時間 1 50秒間の条件で成膜を行い、 厚さ 30 nmの膜を作製し、 本発明の熱線 反射着色膜被覆ガラス Cを得た。
つぎに、 得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Cに対して実施例 1と同様の方法 により印刷、 熱処理した後、 放冷して、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eを 得た。
(実施例 4 )
第一層と第二層の成膜順序を逆にした以外は、 実施例 3と同様の方法により、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Dを得た。 第一層の厚さは 3 0 n m、 第二層 の厚さは 6 n mであった。
つぎに、 得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Dに対して実施例 1と同様の方法 により印刷、 熱処理した後、 放冷して、 本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eを 得た。
2 . 熱線反射着色膜被覆ガラスの被膜の組成
実施例 1〜 4の上記製造過程において、 第一層成膜後第二層成膜前に第一層の 組成を分析し、 第二層成膜後熱処理前に、 第二層の組成を分析した。 組成の分析 は、 高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を用いた元素分析により行った。 その結果、 実施例 1において、 第一層における総金属量に対する鉄の量は、 9 9 . 9質量%であり、 第二層における総金属量に対するコバルトの量は、 9 9 . 9質量%であった。 実施例 2において、 第一層における総金属量に対するコバル トの量は、 9 9 . 9質量%であり、 第二層における総金属量に対する鉄の量は、 9 9 . 9質量%であった。
また、 実施例 3において、 第一層における総金属量に対する鉄、 クロムおよび ニッケルの量は、 鉄: 7 4質量96、 クロム : 1 8質量0 /0、 ニッケル: 8質量0 /0で あり、 第二層における総金属量に対するコバルトの量は、 9 9 . 9質量 6であつ た。 実施例 4において、 第一層における総金属量に対するコバルトの量は、 9 9 . 9質量%であり、 第二層における総金属量に対する鉄、 クロムおよびニッケル の量は、 鉄: 7 4質量%、 クロム: 1 8質量%、 ニッケル: 8質量0 /。であった。
3 . 日射エネルギー透過率の測定
実施例 1〜 4で得られた熱線反射着色膜被覆ガラス A〜Dについて、 日射エネ ルギ一透過率 (J I S R 3 1 0 6による) を分光測定器 (鳥津製作所製の分光
計 「UV— 3100 PC」 ) により測定した。
その結果、 日射エネルギー透過率は、 いずれも 30 %以下であった。
また、 実施例 1〜4で得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Eについて、 日射ェ ネルギ—透過率 (J I S R 3106による) を分光測定器 (鳥津製作所製の分 光計 「UV— 3100 PC」 ) により測定した。
その結果、 日射エネルギー透過率は、 いずれも 29%であった。
4. 表面シート抵抗の測定
実施例 1〜 4で得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Eについて、 シート抵抗測 定器を用いて、 膜被覆面の表面シート抵抗を測定した。
その結果、 膜被覆面の表面シート抵抗は、 いずれも 1. 0 X 109 Ωノロであ つた。
5. 可視光透過率および可視光反射率の測定
実施例 1〜 4で得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Eについて、 可視光透過率 (J I S R3106による) 、 ならびに、 膜被覆面および他方の面の可視光反 射率 (J I S R 3106による) を分光測定器 (島津製作所製の分光計 「UV 一 3100PCJ ) により C光源を用いて測定した。
その結果、 可視光透過率はいずれも 31%、 膜被覆面の可視光反射率はいずれ も 36%、 他方の面の可視光反射率はいずれも 21 %であった。
なお、 実施例 1〜 4で得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Eにおける測定部位 による差異は、 可視光透過率についてはいずれも 0. 5%以内であり、 可視光反 射率についてはいずれも 0. 596以内であった。 一方、 従来のスプレー法により 得られるサンプルでは、 測定部位による差異が、 可視光透過率については 1〜2 %であり、 可視光反射率については 1〜 2であった。 この結果から、 本発明の熱 線反射着色膜被覆ガラスは膜厚の均一性、 組成の均一性に優れることが判る。
6. 耐擦傷性の測定
実施例 1〜 4で得られた熱線反射着色月莫被覆ガラス Eについて、 J I S R 3 212の耐摩耗性試験に準じて、 テーバー試験機を用いて 4. 9 Nの荷重で 10 00回転の条件で膜被覆面側のテーバー試験を行い、 テーバー試験前後の可視光
透過率を比較した。
その結果、 可視光透過率の変化は、 いずれも +12%であり、 +20%以下で あるので実用上十分な耐擦傷性を有していた。
7. 耐薬品性の測定
実施例 1〜 4で得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Eを 0. 05mo lZL ( 5 Omo 1 /m3) 硫酸水溶液または 0. 1 m o 1 ZL ( 100 m o 1 /m3) 苛 性ソーダ水溶液に室温 20°Cで 24時間浸し、 水溶液に浸せきした前と後の可視 光透過率ならびに膜被覆面およぴ他方の面の可視光反射率を比較した。
その結果、 いずれの熱線反射着色膜被覆ガラス Eも、 硫酸水溶液または苛性ソ ーダ水溶液を用いた場合において、 可視光透過率と、 膜被覆面および他方の面の 可視光反射率の変化は 1 %よりも小さい値であった。
8. セラミックカラープリントおよぴ銀プリントの色調測定
実施例 1〜 4で得られた熱線反射着色膜被覆ガラス Eについて、 カラーメータ 一を用いて、 セラミックカラーペースト部のガラス面からの色調を測定した。 そ の結果、 色調は、 いずれも L= 39、 a = 7. 5、 b = 0. 0であった。 これは 、 従来のコバルトを 63質量%、 鉄を 26質量%、 クロムを 1 1質量%含有する 酸ィ匕物膜をスプレー法により成膜したガラスを用いた場合に比較して、 明度が低 く、 ニュートラルな色調に近い良好な発色であった。
また、 銀ペースト部は、 前記従来のスプレー法による膜が成膜されたガラスで は、 だいだい色に発色し、 良好な発色が得られないのに対し、 本発明のサンプル では、 いずれも赤褐色に発色し、 良好な発色を得ることができた。 産業上の利用可能性
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cおよび Dは、 マグネトロンスパ ッ夕リング法により調製することができ、 特に本発明の熱線反射着色膜被覆ガラ スの製造方法によれば従来公知のスパッタリングターゲットを用いることができ るので製造が容易であり、 かつ、 膜厚および組成の均一性に優れる。
また、 前記熱線反射着色膜被覆ガラス A、 B、 Cまたは Dを熱処理することに
より得られる本発明の熱線反射着色膜被覆ガラス Eは、 基本的な要求特性を満た すだけでなく、 膜厚および組成の均一性に優れ、 セラミックカラープリントにお いて白つぼくなる究色不良を発生させず、 銀プリント発色にも優れるので自動車 用窓ガラスとして好適である。